JP2023093272A - 熱可塑性樹脂組成物及びフィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びフィルム Download PDF

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将平 富田
Shohei Tomita
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Abstract

【課題】ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂の相溶性を良好にしながら、耐熱性が高く、かつ優れた低誘電特性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位(a)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位(b)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を50モル%以上含むポリエステル樹脂(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物。JPEG2023093272000021.jpg23100JPEG2023093272000022.jpg20100[式(1)及び式(2)中、X、Yはそれぞれ独立に単結合、酸素原子、硫黄原子、及び二価の有機基(ただし、無置換を除く)から選ばれる少なくとも1種である。Rx及びRyはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基である。]【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムに関する。
近年、電気、電子機器の高性能、高機能化に伴い、情報の高速通信対応が必要とされている。例えば、スマートフォンにおいては、5G(第五世代移動通信システム)の高速通信サービスの開始に伴い、民生分野だけではなく、産業分野(工場、自動車などの車両等)でも高速通信サービスが普及する状況にある。
5Gの高速大容量のデータ通信には、「ミリ波」(波長1~10mm、周波数30~300GHz)帯の電波が用いられる。ミリ波の長所としては、一度に送信できるデータが大容量であること、得られる画像が高精細化できること等が挙げられる。
一方で、回路基板に前記ミリ波のような高周波のデジタル信号を流すと、送信されたデジタル信号の一部が回路基板の配線上で熱として消費される誘電損失が起こり、減衰したデジタル信号として受信側に到達する、いわゆる「伝送損失」が発生する。そのため、使用する部材においても、伝送損失低減対策が必要とされる状況にある。前記伝送損失は、誘電損失と導体損失の総和であり、誘電損失の低い材料が求められている。
ところで、汎用性が高い樹脂フィルムとして、ポリエステルフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐候性、機械的強度、透明性などに優れており、かつ、価格的にも入手し易いことから、包装材料、光学用途などの各種用途に使用されているが、低誘電特性に関してはあまり検討されていない。
例えば、特許文献1には、優れた低誘電特性を有するポリエステルフィルムとして、内部に5~45体積%の空洞を含有する積層二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。空洞を含有することで、空隙(空気)を分散させることができ、低誘電率化や低誘電正接化を達成している。
しかしながら、特許文献1に記載の空洞含有積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、異種材料を混合して空洞を形成するものであるため、空洞のサイズあるいは異種材料の分散状態を制御することが難しく、例えば、異種材料の分散状態が不十分な場合には、所望する低誘電特性が得られないことがある。
さらに、使用する異種材料によっては、ポリエステルフィルム本来の透明性が得られない場合がある。それに加えて、空洞の界面で光が屈折することで、透明性が低下してしまう場合があった。
ところで、ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、電気特性、透明性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとして、電気・電子機器分野、自動車分野等様々な分野において幅広く利用されている。
特許文献2では、特定の置換基を有するビスフェノールを原料としたポリカーボネート樹脂を使用することで、誘電正接が下がり、75GHz~81GHzのミリ波透過性が向上したミリ波レーダー用カバーが提案されている。
特許文献3では、特定の2種類の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂を含むことで、マイクロ波及び/又はミリ波帯域の電波透過性が優れると共に、耐熱性及び難燃性にも優れた熱可塑性樹脂組成物及びその成形品、並びにマイクロ波及び/又はミリ波用アンテナを内蔵する通信機器用筐体が提案されている。
特開2006-352470号公報 特開2019-197048号公報 国際公開第2021/039970号
ポリエステルフィルムは、上述のように、加工性、耐候性、機械的強度、透明性などに優れるが、低誘電特性については十分とは言えない。一方、ポリカーボネート樹脂については、上述のように、耐熱性、機械的強度、電気特性、透明性に優れ、特に特許文献2及び3に開示されるポリカーボネート樹脂は、低誘電特性を有する。したがって、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とを組み合わせて使用することにより、ポリエステル樹脂の特性を生かしつつ、低誘電特性を付与し得ることが期待される。
また、回路基板を作製する際には、レジスト乾燥や半田リフロー工程などが含まれるため、このような分野で使用される材料には、適度な耐熱性を有することが求められる。
しかしながら、特許文献2及び3に開示されるポリカーボネート樹脂は低誘電特性はあるものの、一般にポリエステル樹脂との相溶性が悪く、耐熱性も低いため、両者を混合して使用することは困難であった。
そこで、本発明は、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂の相溶性を良好にしながら、耐熱性が高く、かつ優れた低誘電特性を有する熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂の共重合成分を調整することにより、両者の相溶性を向上させることができ、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成したものであり、その要旨は、以下の態様を有する。なお、本発明は以下の態様に限定されるものではなく、当業者において、置換、変更等し得る範囲をも包含するものである。
[1]下記一般式(1)で表される繰り返し単位(a)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位(b)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を50モル%以上含むポリエステル樹脂(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2023093272000001
Figure 2023093272000002
[式(1)中、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び二価の有機基(ただし、無置換を除く)から選ばれる少なくとも1種である。Rx及びRyはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基である。式(2)中、Yは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び二価の有機基(ただし、無置換を除く)から選ばれる少なくとも1種である。]
[2]前記式(1)中、Xが下記式(3)で表される二価の有機基である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2023093272000003
[式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~24の一価の炭化水素基、又は炭素数1~24のアルコキシ基である。R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。*は、式(1)中のベンゼン環への結合手である。]
[3]前記式(3)中、R1及びR2がいずれもメチル基である上記[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]前記Rx及びRyがいずれもメチル基である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]前記一般式(2)中、Yが下記式(4)で示される二価の有機基である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2023093272000004
[式(4)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~24の一価の炭化水素基、又は炭素数1~24のアルコキシ基である。R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。*は、式(2)中のベンゼン環への結合手である。)
[6]前記式(2)が下記式(5)で示される上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2023093272000005
[7]前記ポリエステル樹脂(B)のジオール成分として、1,4-シクロヘキサンジメタノール以外の脂環族ジオールをさらに含む上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8]前記ポリカーボネート樹脂(A)の繰り返し単位(a)と(b)のモル比が95:5~40:60である上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9]前記ポリエステル樹脂(B)がジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位を50モル%以上含む上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[10]樹脂成分全量中の前記ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が10~80質量%であり、前記ポリエステル樹脂(B)の含有量が20~90質量%である上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[11]JIS K7244(1999年)に準じて測定されるガラス転移温度が単一である上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[12]JIS K7244(1999年)に準じて測定されるガラス転移温度が110℃以上である上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[13]上記[1]~[12]のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。
本願発明によれば、ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂の相溶性を良好にすることができ、耐熱性が高く、かつ優れた低誘電特性を有する熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムを提供することができる。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(a)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位(b)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を50モル%以上含むポリエステル樹脂(B)とを含有する。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するポリカーボネート樹脂(A)は、上述のように、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(a)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位(b)を含む。
Figure 2023093272000006
Figure 2023093272000007
上記式(1)及び(2)におけるX及びYは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び二価の有機基(ただし、無置換を除く)から選ばれる少なくとも1種である。Rx及びRyはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基である。
(繰り返し単位(a))
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の繰り返し単位(a)は、下記式(1)で表される。
Figure 2023093272000008
式(1)中、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び二価の有機基(ただし、無置換を除く)から選ばれる少なくとも1種を表す。
Xの二価の有機基としては、特に制限はなく、例えば、下記式(3)で表される有機基が好適に挙げられる。
Figure 2023093272000009
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~24の一価の炭化水素基、又は炭素数1~24のアルコキシ基を表す。また、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。
上記の中でも、R及びRは炭素数1~24の一価炭化水素基であることが好ましい。
上記炭素数1~24の一価炭化水素基としては、炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアリールアルキル基等が挙げられる。
炭素数1~24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基及び脂環式構造を含むアルキル基が挙げられる。中でも炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数1~12の脂環式構造を含むアルキル基であることが好ましく、さらに炭素数1~12の直鎖状のアルキル基であることが特に好ましい。炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
炭素数2~24のアルケニル基としては、直鎖状、分岐状のアルケニル基、一部脂環式構造を含むアルケニル基などが挙げられるが、中でも直鎖状のアルケニル基であることが好ましい。このような炭素数2~24のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、n-プロぺニル基、n-ブテニル基、n-ペンテニル基、n-ヘキセニル基、n-へプテニル基、n-オクテニル基等が挙げられる。
炭素数6~24のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基などのアルキル基等の置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
炭素数7~24のアリールアルキル基としては、ベンジル基などが挙げられる。
炭素数1~24のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、一部脂環式構造を含むアルコキシ基などが挙げられるが、なかでも直鎖状のアルコキシ基が好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
及びRが互いに結合して環を形成している場合、その炭素数は特に限定されないが、通常5以上20以下であり、好ましくは6以上12以下である。R及びRが互いに結合して環を形成している場合の例としてはシクロアルキリデン基が挙げられ、より具体的には、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロへプチリデン基等が挙げられる。これらの置換基には、さらに炭素数1~12の一価炭化水素基が置換されていてもよい。
これらの中でXはより好ましくは、単結合、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、置換基を有してもよいシクロヘキシル基であり、耐熱性向上、ヤケ発生抑制の観点から、好ましくはイソプロピリデン基、シクロヘキシル基であり、最も好ましくはイソプロピリデン基(即ち、上記式(3)において、R、Rがいずれもメチル基)である。
上記式(1)におけるRx及びRyは、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基であり、機械的特性の観点からは、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
以上のように、好ましい態様は、Xがイソプロピリデン基、Rx及びRyがいずれもメチル基の場合である2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)又は、Xがシクロヘキシル基、Rx及びRyがいずれもメチル基の場合である1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンから得られる繰り返し単位であり、中でも、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)が特に好ましい。
(繰り返し単位(b))
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の繰り返し単位(b)は、下記式(2)で表される。
Figure 2023093272000010
式(2)中、Yは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び二価の有機基(ただし、無置換を除く)から選ばれる少なくとも1種を表す。
Yの二価の有機基としては、特に制限はなく、例えば、下記式(4)で表される有機基が挙げられる。
Figure 2023093272000011
式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~24の一価の炭化水素基、又は炭素数1~24のアルコキシ基を表す。また、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。
上記の中でも、R及びRは炭素数1~24の一価炭化水素基であることが好ましい。
上記炭素数1~24の一価炭化水素基としては、炭素数1~24のアルキル基、炭素数2~24のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアリールアルキル基等が挙げられる。
炭素数1~24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
炭素数2~24のアルケニル基としては、直鎖状、分岐状のアルケニル基、一部脂環式構造を含むアルケニル基などが挙げられるが、中でも直鎖状のアルケニル基であることが好ましい。このような炭素数2~24のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、n-プロぺニル基、n-ブテニル基、n-ペンテニル基、n-ヘキセニル基、n-へプテニル基、n-オクテニル基等が挙げられる。
炭素数6~24のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基などのアルキル基等の置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
炭素数7~24のアリールアルキル基としては、ベンジル基などが挙げられる。
炭素数1~24のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、一部脂環式構造を含むアルコキシ基などが挙げられるが、なかでも直鎖状のアルコキシ基が好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
及びRが互いに結合して環を形成している場合、その炭素数は特に限定されないが、通常5以上20以下であり、好ましくは6以上12以下である。R及びRが互いに結合して環を形成している場合の例としてはシクロアルキリデン基が挙げられ、より具体的には、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロへプチリデン基等が挙げられる。これらの置換基には、さらに炭素数1~12の一価炭化水素基が置換されていてもよい。
これらの中でYは炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8の炭化水素基であることがさらに好ましい。また、炭素数1又は2の炭化水素基であってもよく、メチル基であってもよい。このような繰り返し単位(b)としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が挙げられる。
また、耐熱性の観点からは、R及びRが互いに結合して環を形成することが好ましく、すなわち、繰り返し単位(b)は下記式(6)が好ましい。
Figure 2023093272000012
前記式(6)中、Rは互いに独立して炭素数1~4のアルキル基を表し、nは0~3の整数である。
前記式(6)中、Rの炭素数1~4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。これらの中でRは好ましくは、メチル基である。
前記式(6)中、nは0~3の整数である。nは0~3の整数であれば特に制限されないが、好ましくは、nが0又は3であり、特に好ましくはnが3である。
中でも、繰り返し単位(b)は、色調向上の観点から下記式(5)の構造で示される(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC))が特に好ましい。
Figure 2023093272000013
ポリカーボネート樹脂(A)は、本発明の目的を損なわない範囲において、繰り返し単位(a)及び繰り返し単位(b)以外の、その他の構造単位(c)を1種又は2種以上含んでいてもよい。
その他の構造単位(c)としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン(SBI)等の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が挙げられるが、中でも、ビスフェノールA、ビフェノールに由来する繰り返し単位が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するポリカーボネート樹脂(A)は、上記繰り返し単位(a)及び繰り返し単位(b)を含むことで、耐熱性、低誘電特性、ポリエステル樹脂(B)との相溶性を高めることができる。
繰り返し単位(a)及び繰り返し単位(b)の含有量の和は、ポリカーボネート樹脂(A)の全カーボネート構造単位中、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
また、繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)のモル比は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に限定されないが、(a):(b)=95:5~40:60の範囲であることが好ましく、90:10~45:55の範囲であることがより好ましく、85:15~50:50の範囲であることがさらに好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の繰り返し単位(b)は、ポリエステル樹脂(B)の1,4-シクロヘキサンジメタノール単位と相溶しやすい傾向にあるため、繰り返し単位(b)のモル比が上記下限値以上であると、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との相溶性が良好となる。また、繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)のモル比が上記範囲であると、耐熱性及び低誘電特性の観点からも好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、特に制限はないが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは10,000~35,000である。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が上記下限以上であれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物の比誘電率や誘電正接が低くなるため好ましい。また、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が上記上限以下であれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性が良好なものとなり好ましい。このような観点により、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは13,000以上、特に好ましくは、14,000以上である。また、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは28,000以下、特に好ましくは26,000以下である。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒として塩化メチレンを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での固有粘度(極限粘度)[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、即ち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。また固有粘度(極限粘度)[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2023093272000014
<ポリエステル樹脂(B)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するポリエステル樹脂(B)は、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を50モル%以上含むことを必須とする。1,4-シクロヘキサンジメタノール単位は、ポリカーボネート樹脂(A)の繰り返し単位(b)と相溶しやすい傾向にあるため、1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を50モル%以上含むと、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性を高めることができる。
1,4-シクロヘキサンジメタノール単位の含有量としては、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、65モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。上限については特に制限はなく、1,4-シクロヘキサンジメタノール単位の含有量が100モル%であってもよい。
ポリエステル樹脂(B)のジオール成分としては、上記1,4-シクロヘキサンジメタノール以外の他のジオール成分(以下「他のジオール成分」ということがある。)を共重合成分として含有していてもよく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;4,4'-チオジフェノール、4,4'-メチレンジフェノール、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-およびp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオールおよびそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール等が挙げられる。
これらのうち、他のジオール成分としては力学特性や耐熱性向上の観点から、脂環族ジオールが好ましい。
また、これらの他のジオール成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のジオール成分の含有量としては、45モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、35モル%以下であることがさらに好ましく、30モル%以下であることがよりさらに好ましく、他のジオール成分は含まれていなくてもよい。
ポリエステル樹脂(B)のジカルボン酸成分としては、特に限定されず、テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、ジフェン酸、4,4'-オキシジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
これらのうち、耐熱性等の機械的強度を付与できる点から、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸単位を50モル%以上含むことが好ましい。テレフタル酸単位の含有比率としては、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%(テレフタル酸のみ)であってもよい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸を共重合成分として用いる場合には、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が好ましく、イソフタル酸が特に好ましい。
<(A)成分及び(B)成分の含有量>
本発明の熱可塑性樹脂組成物における樹脂成分全量中のポリカーボネート樹脂(A)の含有量は10~80質量%であることが好ましく、ポリエステル樹脂(B)の含有量は20~90質量%の範囲であることが好ましい。
(A)成分と(B)成分の含有量が上記範囲であると、相溶性が向上し、耐熱性が高く、低誘電特性を有する樹脂組成物が得られやすい。
以上の観点から、(A)成分の含有量は15~70質量%の範囲であることがより好ましく、20~65質量%の範囲であることがさらに好ましい。また、(B)成分の含有量は、30~85質量%の範囲であることがより好ましく、35~80質量%の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における樹脂成分としては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、上記ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)以外の樹脂や添加剤を含んでいてもよいが、通常は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、及び、着色剤などが挙げられる。
<ガラス転移温度(Tg)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。(以下、単に「ガラス転移温度」又は「Tg」ということがある。)Tgは耐熱性の指標であり、Tgが110℃以上であると十分な耐熱性が得られる。Tgが複数あるときは、すべてのTgが110℃以上であることが好ましい。さらに耐熱性は高いほど好ましく、Tgが115℃以上がさらに好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が単一であることが好ましい。Tgが単一であることは、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の相溶性が高いことを意味する。
したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、Tgが単一であり、かつTgが120℃以上であることが特に好ましい。
なお、Tgは実施例に記載の方法で測定した値である。
[フィルム]
本発明の熱可塑性樹脂組成物からフィルムを成形することができ、該フィルムも本発明の一形態である(以下「本発明のフィルム」と記載する。)。
本発明のフィルムは、上記の本発明の熱可塑性樹脂組成物を一般の成形法、例えば押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって得ることができる。それぞれの成形方法において、装置及び加工条件は特に限定されない。
なお、本発明のフィルムは単層であっても多層であってもよく、多層の場合の製造方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
本発明のフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、一軸又は二軸延伸フィルムであってもよい。延伸する場合は、フィルムの長手方向(MD)及びこれと直角な幅方向(TD)で、延伸効果、フィルム強度等の点から、少なくとも一方向に通常1.1~6.0倍、好ましくは縦横二軸方向に各々1.1~6.0倍の範囲で延伸する。
二軸延伸の方法としては、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、従来公知の延伸方法がいずれも採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、未延伸フィルムを、本樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)に対して、Tg~Tg+50℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に1.1~6.0倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によってTg~Tg+50℃の温度範囲内で横方向に1.1~6.0倍に延伸することにより製造することができる。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、Tg~Tg+50℃の温度範囲において、縦横同時に各軸方向に1.1~6.0倍に延伸することにより製造することができる。
上記方法により延伸された二軸延伸フィルムは、引き続き熱固定されることが好ましい。熱固定をすることにより常温における寸法安定性を付与することができる。この場合の処理温度は、好ましくは前記樹脂組成物の結晶融解温度(Tm)に対して、Tm-1~Tm-50℃の範囲を選択することが好ましい。熱固定温度が上記範囲内にあれば、熱固定が十分に行われ、延伸時の応力が緩和され、十分な耐熱性や機械特性が得られ、破断やフィルム表面の白化などのトラブルがない優れたフィルムが得られる。
本発明のフィルムにおいては、熱固定による結晶化収縮の応力を緩和させる為に、熱固定中に幅方向に0~15%、好ましくは3~10%の範囲で弛緩を行うことが好ましい。弛緩が十分に行われ、フィルムの幅方向に均一に弛緩されると、幅方向の収縮率が均一になり、常温寸法安定性に優れたフィルムが得られる。また、フィルムの収縮に追従した弛緩が行われる為、フィルムのタルミ、テンター内でのバタツキがなく、フィルムの破断もない。
本発明のフィルムの厚みは、1~500μmであることが好ましく、5~300μmであることがより好ましく、10~250μmであることがさらに好ましい。1μm以上とすることで、フィルム強度が実用範囲内に保たれ、500μm以下とすることで、光学用途等に好適に用いることができる。
なお、フィルムの厚みは、延伸条件等によって調整することができる。また、厚みの測定は、1/1000mmのダイヤルゲージ等を用いて測定することができる。
本発明のフィルムのヘーズ値は、200μm厚のフィルムにおいて5.0%以下であることが好ましく、4.0%以下であることがより好ましく、3.0%以下であることがさらに好ましく、2.5%以下であることが特に好ましい。本フィルムのヘーズ値が上記上限値以下であれば、フィルムとして使用するのに十分な透明性を有する。
なお、ヘーズ値の測定方法は実施例に記載される方法により測定された値である。
本発明のフィルムの測定周波数10GHzにおける誘電正接は、0.006未満であることが好ましく、0.0055未満であることがより好ましく、0.005未満であることがさらに好ましく、0.0045未満であることが特に好ましい。上記上限値未満であると、電気特性に優れ、例えば情報の高速通信が必要とされる電子機器等に有用な材料となる。
[用途]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の相溶性が良好であり、耐熱性が高く、透明かつ優れた低誘電特性を有する。よって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は高周波数帯域の電波を送受信する通信機器部材に好適である。
上記通信機器部材の具体例としては、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン、又はルーター装置等のマイクロ波及び/又はミリ波用アンテナを内蔵する通信機器用筐体や、基地局用基板、ルーター用基板、サーバー用基板、CPU基板などのアンテナ基板材料が挙げられる。
次に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
<評価方法>
(1)ガラス転移温度
粘弾性スペクトロメーターDVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、JIS K7244(1999年)に準じて、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を用い、損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度を測定した。
耐熱性の評価は、ピーク温度をガラス転移温度とし、以下の基準で行った。
〇(gооd);ピーク温度が120℃以上
△(fair);ピーク温度が110℃以上120℃未満
×(pооr);ガラス転移温度が110℃未満
なお、ガラス転移温度が複数ある場合は、すべてのガラス転移温度のうち最も低いものを選択し、上記基準で評価した。
(2)誘電正接
空洞共振器法を用いて、23℃におけるフィルムの面内方向の誘電正接を測定し、下記の基準により評価した。測定周波数は10GHzとした。
誘電特性の評価は、以下の基準で行った。
〇(gооd);誘電正接が0.005未満
△(fair);誘電正接が0.005以上0.006未満
×(pооr);誘電正接が0.006以上
(3)ヘーズ
ヘーズメーター(日本電色工業製「NDH 7000II」)を用いて、JIS K 7136に準じてヘーズを測定した。
透明性の評価は、ヘーズが5%未満であるものを○(gооd)とし、ヘーズが5%以上であるものを×(pооr)とした。
<材料>
(ポリカーボネート樹脂(A))
(A-1):下記調製例1により合成された、ビスフェノールC及びビスフェノールTMCを共重合したポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC:ビスフェノールTMC=60:40(モル比)の共重合体
(A-2):下記調製例2により合成された、ビスフェノールC及びビスフェノールTMCを共重合したポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC:ビスフェノールTMC=80:20(モル比)の共重合体
(A-3):1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン及びビスフェノールAを共重合したポリカーボネート樹脂、ジメチルビスフェノールシクロヘキサン:ビスフェノールA=48:52(モル比)の共重合体(Sabic社製「LEXAN DMX1435」)
(A-4):ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバレックスMF7526」)
[調製例1]
反応器攪拌機、反応器加熱装置、反応器圧力調整装置を付帯した内容量150mlのガラス製反応器に、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(BPC)(本州化学社製)67.19g(約0.263mol)、4,4’-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(BP-TMC)(本州化学社製)54.24g(0.175mol)と、ジフェニルカーボネート(DPC)96.39g(約0.450mol)、及び触媒として炭酸セシウム0.4質量%水溶液を、炭酸セシウムが全ジヒドロキシ化合物1mol当たり1.5μmolとなるように添加して原料混合物を調製した。
次に、ガラス製反応器内を約50Pa(0.38Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、反応器外部温度を220℃にし、反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、100rpmで撹拌機を回転させた。そして、反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応器外部温度を250℃に昇温、40分間かけて反応器内圧力を絶対圧で13.3kPa(100Torr)から399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、反応器外部温度を285℃に昇温、反応器内の絶対圧を30Pa(約0.2Torr)まで減圧し、重縮合反応を行った。反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。
次いで、反応器内を、窒素により絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、反応器の槽底からポリカーボネート樹脂をストランド状に抜き出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た後、回転式カッターを使用してペレット化し、ポリカーボネート樹脂(A-1)を得た。得られたポリカーボネート樹脂(A-1)の粘度平均分子量(Mv)は22,000であった。
[調製例2]
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(BPC)(本州化学社製)の量を89.59g(約0.350mol)とし、4,4’-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(BP-TMC)(本州化学社製)の量を27.12g(0.087mol)としたこと以外は調製例1と同じ方法で合成し、ポリカーボネート樹脂(A-2)を得た。得られたポリカーボネート樹脂(A-2)の粘度平均分子量(Mv)は23,000であった。
(ポリエステル樹脂(B))
(B-1):酸成分としてテレフタル酸92mоl%及びイソフタル酸8mоl%を含み、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール100mоl%を含むポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(SKケミカル社製「SKYPURA1631」)
(B-2);酸成分としてテレフタル酸100mоl%を含み、ジオール成分としてスピログリコール14mоl%及び1,4-シクロヘキサンジメタノール86mоl%を含むポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(三菱ガス化学社製「ALTESTER SC」)
(B-3):酸成分としてテレフタル酸100mоl%を含み、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール66mоl%及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール34mоl%を含むポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(イーストマン社製「Tritan FX200」)
(B-4):酸成分としてテレフタル酸100mоl%を含み、ジオール成分としてエチレングリコール100mоl%を含むポリエチレンテレフタレート(三菱ケミカル社製「ノバペックスGM341」)
(B-5):酸成分としてテレフタル酸100mоl%を含み、ジオール成分としてエチレングリコール52mоl%、ジエチレングリコール5mоl%及びスピログリコール43mоl%を含むポリエチレンテレフタレート(「ALTESTER S4500」)
実施例1~8及び比較例1~5、及び参考例1~5
<樹脂組成物及びフィルムの作製>
表1に示す組成で各原料をドライブレンドし、(株)東洋精機製作所製のプラストグラフミキサーに供給し、温度:280℃、回転数:40rpmで5分溶融混練し、樹脂組成物を得た。
該樹脂組成物を2枚の金属板間に挟み込み、温度:280℃、圧力:3MPa、成形時間:10秒の条件でプレス成形し、その後100℃以下まで水冷により急冷することで、厚さ200μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートについて上記評価を実施した。結果を表1に示す。

Figure 2023093272000015


表1の結果から、実施例1~8の熱可塑性樹脂組成物は、Tgが単一であり、かつ110℃以上であった。すなわち、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の相溶性が良好であり、かつ耐熱性が高いことがわかる。特に実施例1~7の熱可塑性樹脂組成物のTgは120℃以上であり、優れた耐熱性を示した。
一方、比較例1、2、4及び5の熱可塑性樹脂組成物は、Tgが2つ見られ、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の相溶性が不十分であることがわかる。また、比較例1、2及び4の熱可塑性樹脂組成物は、Tgが110℃以下であり、耐熱性が不十分であることがわかる。
さらに、実施例1~8の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムは、誘電正接が低く、かつヘーズ値が小さい。すなわち、本発明のフィルムは、電気特性に優れ、かつ透明性が高いことがわかる。
一方、比較例1~5の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムはヘーズ値が高く、透明性が不十分であることがわかる。
以上のように、本発明の熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムは、耐熱性が高く、優れた低誘電特性を有し、かつ高い透明性を有することから、低誘電特性を必要とされる光学フィルム用途等に非常に有用である。

Claims (13)

  1. 下記一般式(1)で表される繰り返し単位(a)及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位(b)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を50モル%以上含むポリエステル樹脂(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2023093272000016

    Figure 2023093272000017

    [式(1)中、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び二価の有機基(ただし、無置換を除く)から選ばれる少なくとも1種である。Rx及びRyはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基である。式(2)中、Yは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び二価の有機基(ただし、無置換を除く)から選ばれる少なくとも1種である。]
  2. 前記式(1)中、Xが下記式(3)で表される二価の有機基である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2023093272000018

    [式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~24の一価の炭化水素基、又は炭素数1~24のアルコキシ基である。R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。*は、式(1)中のベンゼン環への結合手である。]
  3. 前記式(3)中、R1及びR2がいずれもメチル基である請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記Rx及びRyがいずれもメチル基である請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記一般式(2)中、Yが下記式(4)で示される二価の有機基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2023093272000019

    [式(4)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~24の一価の炭化水素基、又は炭素数1~24のアルコキシ基である。R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。*は、式(2)中のベンゼン環への結合手である。)
  6. 前記式(2)が下記式(5)で示される請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2023093272000020
  7. 前記ポリエステル樹脂(B)のジオール成分として、1,4-シクロヘキサンジメタノール以外の脂環族ジオールをさらに含む請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 前記ポリカーボネート樹脂(A)の繰り返し単位(a)と(b)のモル比が95:5~40:60である請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. 前記ポリエステル樹脂(B)がジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位を50モル%以上含む請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  10. 樹脂成分全量中の前記ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が10~80質量%であり、前記ポリエステル樹脂(B)の含有量が20~90質量%である請求項1~9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  11. JIS K7244(1999年)に準じて測定されるガラス転移温度が単一である請求項1~10のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  12. JIS K7244(1999年)に準じて測定されるガラス転移温度が110℃以上である請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。

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