JP2023089516A - 正極活物質、正極および二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたサイクル特性を得ることが可能である二次電池を提供する。【解決手段】正極活物質を含む正極と負極と電解液とを備え、その正極活物質は、下式で表されるリチウムコバルト複合酸化物を含み、充電されることにより、電圧と容量を電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す充電時のdQ/dV曲線が得られると共に、放電されることにより、電圧と容量を電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す放電時のdQ/dV曲線が得られた際、電圧差が0.01V以上0.08V以下である。Li1+xCo1-yMyO2-z(Mは、Ni、Mn、Al、Mg、Zr、V、W、Mo、Cr、Bi、Cu、Ti、Si、Fe、P、F、B、La、GaおよびClのうちの少なくとも1種である。x、yおよびzは、0≦x≦0.1、0≦y≦0.2および0≦z≦0.02を満たす。)【選択図】図1

Description

本技術は、正極活物質、正極および二次電池に関する。
携帯電話機などの多様な電子機器が普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度を得ることが可能である電源として二次電池の開発が進められている。この二次電池は、正極および負極と共に電解液を備えており、その正極は、正極活物質を含んでいる。
二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている。具体的には、正極が層状岩塩型のリチウム複合酸化物を備えている二次電池において、電圧Vと微分値dQ/dVとの間の相関関係に基づいて、その微分値dQ/dVのピーク強度などの適正範囲が規定されている(例えば、特許文献1~7参照。)。
特開2018-056118号公報 特開2016-095980号公報 特開2013-161621号公報 特開2017-188421号公報 特開2017-152359号公報 特開2016-143539号公報 特開2018-147635号公報
二次電池の構成に関して様々な検討がなされているが、サイクル特性は未だ十分でないため、改善の余地がある。
よって、優れたサイクル特性を得ることが可能である正極活物質、正極および二次電池が望まれている。
本技術の一実施形態の正極活物質は、下記の式(1)で表されるリチウムコバルト複合酸化物を含むものである。このリチウムコバルト複合酸化物を含む正極活物質を備えた二次電池が下記の式(2)の条件において充電されることにより、電圧と容量を電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す充電時のdQ/dV曲線が得られると共に、その二次電池が下記の式(3)の条件において放電されることにより、電圧と容量を電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す放電時のdQ/dV曲線が得られた際、下記の式(4)で表される電圧差が0.01V以上0.08V以下である。
Li1+x Co1-y y 2-z ・・・(1)
(Mは、Ni、Mn、Al、Mg、Zr、V、W、Mo、Cr、Bi、Cu、Ti、Si、Fe、P、F、B、La、GaおよびClのうちの少なくとも1種である。x、yおよびzは、0≦x≦0.1、0≦y≦0.2および0≦z≦0.02を満たす。)
充電方法=定電流充電,環境温度=25℃,充電電流=0.01C,充電電圧=リチウム金属基準電位(vs Li/Li+ )において3.00V以上4.60V以下 ・・・(2)
放電方法=定電流放電,環境温度=25℃,放電電流=0.01C,放電電圧=リチウム金属基準電位において3.00V以上4.60V以下,定電流放電後の緩和時間=なし ・・・(3)
ED=E1-E2 ・・・(4)
(EDは、電圧差である。E1は、充電時のdQ/dV曲線において微分値が最大になる時の電圧である。E2は、放電時のdQ/dV曲線において微分値が最大になる時の電圧である。)
本技術の一実施形態の正極は、正極活物質を含み、その正極活物質が上記した本技術の一実施形態の正極活物質の構成および物性と同様の構成および物性を有するものである。
本技術の一実施形態の二次電池は、正極と負極と電解液とを備え、その正極が上記した本技術の一実施形態の正極の構成および物性と同様の構成および物性を有するものである。
ここで、充電時のdQ/dV曲線を得るために充電される二次電池は、後述する安定化処理が施された二次電池である。具体的には、充電されるために用いられる二次電池は、その二次電池の組み立て後に1サイクル以上充放電されているため、正極および負極のそれぞれの表面に被膜が形成されている二次電池であり、すなわち安定化処理により電気化学的に安定化されている二次電池である。もちろん、放電時のdQ/dV曲線を得るために放電される二次電池は、上記した充電後の二次電池が放電されるため、安定化処理が施された二次電池である。
充電電流および放電電流のそれぞれの値である0.01Cとは、二次電池の電池容量(理論容量)を100時間で充電しきる電流値である。充電電圧および放電電圧のそれぞれの値は、上記したように、リチウム金属の電位を基準とした値である。
本技術の一実施形態の正極活物質、正極または二次電池によれば、その正極活物質が上記したリチウムコバルト複合酸化物を含んでおり、充電時のdQ/dV曲線および放電時のdQ/dV曲線に基づいて算出される電圧差が上記した範囲内であるので、優れたサイクル特性を得ることができる。
なお、本技術の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
本技術の一実施形態における正極活物質を備えた二次電池に関する充電時のdQ/dV曲線の一例を表している。 本技術の一実施形態における正極活物質を備えた二次電池に関する放電時のdQ/dV曲線の一例を表している。 本技術の一実施形態における二次電池の構成を表す斜視図である。 図3に示した電池素子の構成を表す断面図である。 二次電池の適用例の構成を表すブロック図である。 試験用の二次電池の構成を表す断面図である。
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.正極活物質
1-1.構成
1-2.物性
1-3.作用および効果
2.二次電池(正極)
2-1.構成
2-2.動作
2-3.製造方法
2-4.作用および効果
3.変形例
4.二次電池の用途
<1.正極活物質>
まず、本技術の一実施形態の正極活物質に関して説明する。
この正極活物質の用途は、特に限定されないため、任意に設定可能である。正極活物質の用途の一例は、電気化学デバイスであり、その電気化学デバイスの具体例は、二次電池およびキャパシタなどである。
以下では、正極活物質が二次電池に用いられる場合に関して説明する。ここで説明する二次電池は、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池である。この二次電池は、正極および負極と共に電解液を備えており、その正極は、正極活物質を含んでいる。
電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属の具体例は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属の具体例は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
<1-1.構成>
正極活物質は、リチウムを吸蔵放出する材料を含んでいる。
[リチウムコバルト複合酸化物]
具体的には、正極活物質は、下記の式(1)で表されるリチウムコバルト複合酸化物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、そのリチウムコバルト複合酸化物は、層状岩塩型の結晶構造を有している。
Li1+x Co1-y y 2-z ・・・(1)
(Mは、Ni、Mn、Al、Mg、Zr、V、W、Mo、Cr、Bi、Cu、Ti、Si、Fe、P、F、B、La、GaおよびClのうちの少なくとも1種である。x、yおよびzは、0≦x≦0.1、0≦y≦0.2および0≦z≦0.02を満たす。)
このリチウムコバルト複合酸化物は、式(1)から明らかなように、リチウム(Li)と、コバルト(Co)と、酸素(O)とを構成元素として含んでいる。
ただし、リチウムコバルト複合酸化物は、さらに追加元素(M)のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいてもよいし、その追加元素を構成元素として含んでいなくてもよい。追加元素の種類は、上記したニッケル(Ni)などのうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。
正極活物質がリチウムコバルト複合酸化物を含んでいるのは、その正極活物質を備えた二次電池において、高い充電電圧で充放電することが可能になるため、高容量化を図ることができるからである。
中でも、リチウムコバルト複合酸化物は、追加元素を含んでいることが好ましい。具体的には、追加元素は、アルミニウム(Al)を含んでいることが好ましく、そのアルミニウムと共にマンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)およびガリウム(Ga)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることがより好ましい。後述する正極活物質の物性に関する条件(電圧差ED=0.01V~0.08V)が満たされやすくなるからである。
正極活物質がリチウムコバルト複合酸化物を含んでいるか否かを調べるためには、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma(ICP))発光分光分析法、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy(XPS))およびX線回折分析法(XRD)などの分析法のうちのいずれか1種類または2種類以上を用いて正極活物質を分析することにより、その正極活物質の組成および結晶構造などを特定すればよい。
[他の化合物]
なお、正極活物質は、さらに、リチウムを吸蔵放出する他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
他の材料の種類は、特に限定されないが、具体的には、リチウム含有化合物である。ただし、上記したリチウムコバルト複合酸化物は、ここで説明するリチウム含有化合物から除かれる。
このリチウム含有化合物は、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を構成元素として含む化合物であり、さらに1種類または2種類以上の他元素を構成元素として含んでいてもよい。他元素の種類は、リチウムおよび遷移金属元素のそれぞれ以外の元素であれば、特に限定されないが、具体的には、長周期型周期表中の2族~15族に属する元素である。リチウム含有化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。
酸化物の具体例は、LiNiO2 、LiNi0.5 Co0.2 Mn0.3 2 、LiNi0.8 Co0.15Al0.052 、LiNi0.33Co0.33Mn0.332 、Li1.2 Mn0.52Co0.175 Ni0.1 2 、Li1.15(Mn0.65Ni0.22Co0.13)O2 およびLiMn2 4 などである。リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 、LiMnPO4 、LiFe0.5 Mn0.5 PO4 およびLiFe0.3 Mn0.7 PO4 などである。
<1-2.物性>
このリチウムコバルト複合酸化物を含んでいる正極活物質の物性に関しては、以下で説明する条件が満たされている。
図1は、正極活物質を備えた二次電池に関する充電時のdQ/dV曲線の一例(dQ/dV曲線C1)を表していると共に、図2は、正極活物質を備えた二次電池に関する放電時のdQ/dV曲線の一例(dQ/dV曲線C2)を表している。
以下では、dQ/dV曲線C1,C2の取得手順に関して説明すると共に、電圧差EDの算出手順に関して説明したのち、正極活物質の物性条件に関して説明する。
[充電時のdQ/dV曲線の取得手順]
図1に示した充電時のdQ/dV曲線C1は、リチウムコバルト複合酸化物を含む正極活物質を備えた二次電池が下記の式(2)の条件において充電されることにより得られる物性曲線であり、その二次電池の主要な構成材料である正極活物質の充電時の物性を非破壊で評価するために用いられる。
充電方法=定電流充電,環境温度=25℃,充電電流=0.01C,充電電圧=リチウム金属基準電位において3.00V以上4.60V以下 ・・・(2)
具体的には、dQ/dV曲線C1を得る場合には、後述する手順により、正極活物質(リチウムコバルト複合酸化物)を含む正極を作製したのち、その正極と共に負極および電解液を用いて二次電池を組み立てる。
ただし、式(2)の条件における充電電圧の値は、上記したように、リチウム金属の電位を基準とした値であるため、dQ/dV曲線C1を得るために使用される二次電池を作製する場合には、負極としてリチウム金属が用いられる。
続いて、二次電池の電気化学的な状態を安定化させるために、その二次電池に後述する安定化処理を施す。具体的には、組み立て後の二次電池を1サイクル以上充放電させることにより、正極および負極のそれぞれの表面に被膜を形成する。
二次電池に安定化処理が施されるのは、dQ/dV曲線C1の安定性および再現性が向上するため、半値幅EDの算出精度が担保されるからである。
詳細には、二次電池の組み立て後における最初の充放電時(=1サイクル目の充放電時)には、反応性を有する正極および負極のそれぞれの表面を保護するために被膜が形成される。この場合には、主に電解液の分解反応を利用して被膜が形成されるため、その被膜の形成過程である最初の充放電時において電解液が過度に消費される。これにより、二次電池に安定化処理が施されていないと、電解液の過度な分解反応に起因してdQ/dV曲線C1の安定性および再現性が低下するため、半値幅EDの算出程度も低下する。
これに対して、安定化処理が施された二次電池、すなわち組み立て後において1サイクル以上充放電された二次電池では、正極および負極のそれぞれの表面に既に被膜が形成されているため、その二次電池がさらに充放電されても電解液が過度に消費されない。これにより、二次電池に安定化処理が施されていると、電解液の過度な分解反応の影響を受けないことに応じてdQ/dV曲線C1の安定性および再現性が向上するため、半値幅EDの算出程度も向上する。
続いて、式(2)の条件において二次電池を充電させることにより、充電曲線(図示せず)を得る。すなわち、二次電池は、常温環境中(温度=25℃)において、0.01Cの電流で電圧が3.00Vから4.60Vに到達するまで定電流充電される。この充電曲線は、電圧E(V)と容量Q(mAh・mg)との間の相関関係を表しているため、その充電曲線では、横軸が電圧Eを表していると共に縦軸が容量Qを表している。
一般的な充電電圧の上限値は、約4.20V~4.40Vである。このため、式(2)の条件における充電電圧の上限値(=4.60V)は、一般的な充電電圧の上限値よりも大幅に高い値である。なお、充電電流の値である0.01Cとは、二次電池の電池容量(理論容量)との関係において決定される電流値であり、より具体的には、上記したように、その電池容量を100時間で放電しきる電流値である。
すなわち、二次電池が充電される場合には、電流が低いと共に充電電圧の上限値が高い条件(充電電流=0.01Cおよび充電電圧の上限値=4.60V)において二次電池が定電流充電される。
最後に、充電曲線に基づいて、容量Qを電圧Eで微分した値(微分値dQ/dV)を算出すると共に、その微分値dQ/dVを電圧Eに対してプロットする。これにより、電圧Eと微分値dQ/dVとの間の相関関係が表されるため、充電時のdQ/dV曲線C1が得られる。図1では、dQ/dV曲線C1(充電電圧=3.00V~4.60V)の一部(電圧E=4.40V~4.60Vの範囲)だけを示している。
このdQ/dV曲線C1では、図1に示したように、電圧Eの増加に応じて微分値dQ/dVが増加したのちに減少するため、上向き凸型のピークP1が得られる。
[放電時のdQ/dV曲線の取得手順]
図2に示した放電時のdQ/dV曲線C2は、上記した充電後の二次電池が下記の式(3)の条件において放電されることにより得られる物性曲線であり、正極活物質の放電時の物性を非破壊で評価するために用いられる。
放電方法=定電流放電,環境温度=25℃,放電電流=0.01C,放電電圧=リチウム金属基準電位において3.00V以上4.60V以下,定電流放電後の緩和時間=なし ・・・(3)
具体的には、dQ/dV曲線C2を得る場合には、dQ/dV曲線C1を得るために式(2)の条件において充電された二次電池を式(3)の条件において放電させることにより、放電曲線(図示せず)を得る。すなわち、二次電池は、常温環境中(温度=25℃)において、0.01Cの電流で電圧が4.60Vから3.00Vに到達するまで定電流放電される。この場合には、定電流充電後に緩和時間が設けられないため、その定電流充電が完了したのちに速やかに定電流放電が行われる。この放電曲線は、電圧E(V)と容量Q(mAh・mg)との間の相関関係を表しているため、その放電電曲線では、横軸が電圧Eを表していると共に縦軸が容量Qを表している。
放電電流の値(=0.01C)に関する詳細は、上記した通りである。もちろん、dQ/dV曲線C2を得るために放電される二次電池は、上記した充電後の二次電池が放電されるため、安定化処理が施された二次電池である。
こののち、放電曲線に基づいて、容量Qを電圧Eで微分した値(微分値dQ/dV)を算出すると共に、その微分値dQ/dVを電圧Eに対してプロットする。これにより、電圧Eと微分値dQ/dVとの間の相関関係が表されるため、放電時のdQ/dV曲線C2が得られる。図2では、dQ/dV曲線C2(充電電圧=3.00V~4.60V)の一部(電圧E=4.40V~4.60Vの範囲)だけを示している。
このdQ/dV曲線C2では、図2に示したように、電圧Eの増加に応じて微分値dQ/dVが減少したのちに増加するため、下向き凸型のピークP2が得られる。
[電圧差の算出手順]
電圧差EDを算出する場合には、最初に、dQ/dV曲線C1に基づいて、ピークP1の頂点に対応する電圧E、すなわち微分値dQ/dVが最大になる時の電圧Eを特定することにより、その電圧Eを最大電圧E1(V)とする。
続いて、dQ/dV曲線C2に基づいて、ピークP2の頂点に対応する電圧E、すなわち微分値dQ/dVが最小になる時の電圧Eを特定することにより、その電圧Eを最小電圧E2(V)とする。
最後に、最大電圧E1および最小電圧E2に基づいて、下記の式(4)で表される電圧差EDを算出する。
ED=E1-E2 ・・・(4)
(EDは、電圧差である。E1は、充電時のdQ/dV曲線C1において微分値dQ/dVが最大になる時の電圧Eである。E2は、放電時のdQ/dV曲線C2において微分値dQ/dVが最大になる時の電圧Eである。)
[正極活物質の物性条件]
正極活物質の物性を表す電圧差EDは、十分に小さい値であり、具体的には、0.01V~0.08Vである。電圧差EDが上記した範囲内であるのは、その電圧差EDが上記した範囲外である場合とは異なり、リチウムコバルト複合酸化物の結晶構造が安定化するため、その結晶構造に関する相転移の可逆性が向上するからである。ここで説明した理由の詳細に関しては、後述する。
<1-3.作用および効果>
この正極活物質によれば、その正極活物質がリチウムコバルト複合酸化物を含んでおり、充電時のdQ/dV曲線C1および放電時のdQ/dV曲線C2に基づいて算出される電圧差EDが0.01V~0.08Vである。よって、以下で説明する理由により、正極活物質を備えた二次電池において優れたサイクル特性を得ることができる。
電圧差EDが上記した範囲外である場合には、正極活物質(リチウムコバルト複合酸化物)を用いた二次電池が高い充電電圧の上限値(=4.60V)に到達するまで充電されると、そのリチウムコバルト複合酸化物の結晶構造では、電圧Eが約4.45V~4.60Vの範囲においてH1-3構造とO3構造との間の相転移が急激な速度で進行するため、その相転移の可逆性が低下する。
これにより、リチウムコバルト複合酸化物の結晶構造が不安定化するため、正極活物質においてリチウムの吸蔵放出の安定性が低下すると共に、二次電池の充放電が繰り返されると放電容量が減少しやすくなる。よって、正極活物質を用いた二次電池において、優れたサイクル特性を得ることが困難である。
ここで説明したリチウムコバルト複合酸化物の結晶構造が不安定化する問題は、充電電圧の上限値が高い値(=4.60V)となるように設定された場合に発生する特有の問題であり、その充電電圧の上限値が低い値(=約4.40V未満)となるように設定された場合には発生しない問題である。
これに対して、電圧差EDが上記した範囲内である場合には、正極活物質(リチウムコバルト複合酸化物)を用いた二次電池が高い充電電圧の上限値に到達するまで充電されても、上記した相転移が緩やかな速度で進行するため、その相転移の可逆性が向上する。
これにより、リチウムコバルト複合酸化物の結晶構造が安定化するため、正極活物質においてリチウムの吸蔵放出の安定性が向上すると共に、二次電池の充放電が繰り返されても放電容量が減少しにくくなる。よって、正極活物質を用いた二次電池において、優れたサイクル特性を得ることができる。
<2.二次電池(正極)>
次に、上記した正極活物質を用いた本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。なお、本技術の一実施形態の正極は、ここで説明する二次電池の一部(一構成要素)であるため、その正極に関しては、以下で併せて説明する。
ここで説明する二次電池は、上記したように、リチウムイオン二次電池である。この二次電池では、負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するためである。
<2-1.構成>
図3は、二次電池の斜視構成を表していると共に、図4は、図3に示した電池素子20の断面構成を表している。ただし、図1では、外装フィルム10と電池素子20とが互いに分離された状態を示していると共に、XZ面に沿った電池素子20の断面を破線で示している。図2では、電池素子20の一部だけを示している。
この二次電池は、図3および図4に示したように、外装フィルム10と、電池素子20と、正極リード31と、負極リード32と、封止フィルム41,42とを備えている。ここで説明する二次電池は、可撓性または柔軟性を有する外装フィルム10を用いたラミネートフィルム型の二次電池である。
[外装フィルムおよび封止フィルム]
外装フィルム10は、図3に示したように、電池素子20を収納する外装部材であり、その電池素子20が内部に収納された状態において封止された袋状の構造を有している。このため、外装フィルム10は、後述する正極21および負極22と共に電解液を内部に収納している。
ここでは、外装フィルム10は、1枚のフィルム状の部材であり、折り畳み方向Fに折り畳まれている。この外装フィルム10には、電池素子20を収容するための窪み部10U(いわゆる深絞り部)が設けられている。
具体的には、外装フィルム10は、融着層、金属層および表面保護層が内側からこの順に積層された3層のラミネートフィルムであり、その外装フィルム10が折り畳まれた状態において、互いに対向する融着層の外周縁部同士が互いに融着されている。融着層は、ポリプロピレンなどの高分子化合物を含んでいる。金属層は、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。表面保護層は、ナイロンなどの高分子化合物を含んでいる。
ただし、外装フィルム10の構成(層数)は、特に、限定されないため、1層または2層でもよいし、4層以上でもよい。
封止フィルム41は、外装フィルム10と正極リード31との間に挿入されていると共に、封止フィルム42は、外装フィルム10と負極リード32との間に挿入されている。ただし、封止フィルム41,42のうちの一方または双方は、省略されてもよい。
この封止フィルム41は、外装フィルム10の内部に外気などが侵入することを防止する封止部材である。また、封止フィルム41は、正極リード31に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでおり、そのポリオレフィンの具体例は、ポリプロピレンなどである。
封止フィルム42の構成は、負極リード32に対して密着性を有する封止部材であることを除いて、封止フィルム41の構成と同様である。すなわち、封止フィルム42は、負極リード32に対して密着性を有するポリオレフィンなどの高分子化合物を含んでいる。
[電池素子]
電池素子20は、図3および図4に示したように、正極21と、負極22と、セパレータ23と、電解液(図示せず)とを含む発電素子であり、外装フィルム10の内部に収納されている。
この電池素子20は、いわゆる巻回電極体である。すなわち、正極21および負極22は、セパレータ23を介して互いに積層されていると共に、Y軸方向に延在する仮想軸である巻回軸Pを中心としてセパレータ23を介して互いに対向しながら巻回されている。
電池素子20の立体的形状は、特に限定されない。ここでは、電池素子20は、扁平状であるため、巻回軸Pと交差する電池素子20の断面(XZ面に沿った断面)は、長軸J1および短軸J2により規定される扁平形状を有している。この長軸J1は、X軸方向に延在すると共に短軸J2よりも大きい長さを有する仮想軸であると共に、短軸J2は、X軸方向と交差するZ軸方向に延在すると共に長軸J1よりも小さい長さを有する仮想軸である。ここでは、電池素子20の立体的形状は、扁平な円筒状であるため、その電池素子20の断面の形状は、扁平な略楕円形状である。
(正極)
正極21は、図4に示したように、正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bを含んでいる。
正極集電体21Aは、正極活物質層21Bが設けられる一対の面を有している。この正極集電体21Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料の具体例は、アルミニウムなどである。
正極活物質層21Bは、上記した正極活物質を含んでいるため、その正極活物質は、リチウムコバルト複合酸化物を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
ここでは、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの両面に設けられている。ただし、正極活物質層21Bは、正極21が負極22に対向する側において正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。正極活物質層21Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムの具体例は、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物の具体例は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドおよびカルボキシメチルセルロースなどである。
正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
(負極)
負極22は、図4に示したように、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bを含んでいる。
負極集電体22Aは、負極活物質層22Bが設けられる一対の面を有している。この負極集電体22Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料の具体例は、銅などである。
負極活物質層22Bは、リチウムを吸蔵放出可能である負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層22Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
ここでは、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの両面に設けられている。ただし、負極活物質層22Bは、負極22が正極21に対向する側において負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。負極活物質層22Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
負極活物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、炭素材料および金属系材料のうちの一方または双方などである。高いエネルギー密度が得られるからである。炭素材料の具体例は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛(天然黒鉛および人造黒鉛)などである。金属系材料は、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料であり、その金属元素および半金属元素の具体例は、ケイ素およびスズのうちの一方または双方などである。この金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよいし、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。金属系材料の具体例は、TiSi2 およびSiOx (0<x≦2、または0.2<x<1.4)などである。
負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細は、正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。
(セパレータ)
セパレータ23は、図4に示したように、正極21と負極22との間に介在している絶縁性の多孔質膜であり、その正極21と負極22との接触(短絡)を防止しながらリチウムイオンを通過させる。このセパレータ23は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでいる。
(電解液)
電解液は、液状の電解質である。この電解液は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに含浸されており、溶媒および電解質塩を含んでいる。
ここでは、溶媒は、非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。この非水溶媒は、エステル類およびエーテル類などであり、より具体的には、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などである。
炭酸エステル系化合物は、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルなどである。環状炭酸エステルの具体例は、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンなどであると共に、鎖状炭酸エステルの具体例は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルなどである。カルボン酸エステル系化合物は、鎖状カルボン酸エステルなどである。鎖状カルボン酸エステルの具体例は、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、トリメチル酢酸エチル、酪酸メチルおよび酪酸エチルなどである。ラクトン系化合物は、ラクトンなどである。ラクトンの具体例は、γ-ブチロラクトンおよびγ-バレロラクトンなどである。なお、エーテル類は、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランおよび1,4-ジオキサンなどでもよい。
電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上である。リチウム塩の具体例は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(LiN(FSO2 2 )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 )、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 3 )、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C2 4 2 )およびジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C2 4 )F2 )などである。
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、具体的には、溶媒に対して0.3mol/kg~3.0mol/kgである。高いイオン伝導性が得られるからである。
[正極リードおよび負極リード]
正極リード31は、図3および図4に示したように、正極21の正極集電体21Aに接続されている正極端子であり、外装フィルム10の内部から外部に導出されている。この正極リード31は、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料の具体例は、アルミニウムなどである。正極リード31の形状は、特に限定されないが、具体的には、薄板状および網目状などのうちのいずれかである。
負極リード32は、図3および図4に示したように、負極22の負極集電体22Aに接続されている負極端子であり、外装フィルム10の内部から外部に導出されている。この負極リード32は、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料の具体例は、銅などである。ここでは、負極リード32の導出方向および形状に関する詳細は、正極リード31の導出方向および形状と同様である。
<2-2.動作>
二次電池の充電時には、電池素子20において、正極21からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、二次電池の放電時には、電池素子20において、負極22からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極21に吸蔵される。これらの充電時および放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵および放出される。
<2-3.製造方法>
二次電池を製造する場合には、以下で説明する一例の手順により、正極21および負極22のそれぞれを作製すると共に、電解液を調製したのち、その正極21、負極22および電解液を用いて二次電池を組み立てると共に、その組み立て後の二次電池に安定化処理を施す。
[正極の作製]
最初に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤が互いに混合された混合物(正極合剤)を溶媒に投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。この溶媒は、水性溶媒でもよいし、有機溶剤でもよい。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層21Bを形成する。最後に、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、正極活物質層21Bを加熱してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが形成されるため、正極21が作製される。
[負極の作製]
上記した正極21の作製手順と同様の手順により、負極22を形成する。具体的には、最初に、負極活物質、負極結着剤および負極導電剤が互いに混合された混合物(負極合剤)を溶媒に投入することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製する。溶媒に関する詳細は、上記した通りである。続いて、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層22Bを形成する。最後に、負極活物質層22Bを圧縮成型する。これにより、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが形成されるため、負極22が作製される。
[電解液の調製]
溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
[二次電池の組み立て]
最初に、溶接法などの接合法を用いて、正極21の正極集電体21Aに正極リード31を接続させると共に、溶接法などの接合法を用いて、負極22の負極集電体22Aに負極リード32を接続させる。
続いて、セパレータ23を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回体(図示せず)を作製する。この巻回体は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子20の構成と同様の構成を有している。続いて、プレス機などを用いて巻回体を押圧することにより、扁平形状となるように巻回体を成型する。
続いて、窪み部10Uの内部に巻回体を収容したのち、外装フィルム10(融着層/金属層/表面保護層)を折り畳むことにより、その外装フィルム10同士を互いに対向させる。続いて、熱融着法などの接着法を用いて、互いに対向する外装フィルム10(融着層)のうちの2辺の外周縁部同士を互いに接着させることにより、袋状の外装フィルム10の内部に巻回体を収納する。
最後に、袋状の外装フィルム10の内部に電解液を注入したのち、熱融着法などの接着法を用いて外装フィルム10(融着層)のうちの残りの1辺の外周縁部同士を互いに接着させる。この場合には、外装フィルム10と正極リード31との間に封止フィルム41を挿入すると共に、外装フィルム10と負極リード32との間に封止フィルム42を挿入する。
これにより、巻回体に電解液が含浸されるため、巻回電極体である電池素子20が作製される。よって、袋状の外装フィルム10の内部に電池素子20が封入されるため、二次電池が組み立てられる。
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、正極21および負極22のそれぞれの表面に被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。よって、二次電池が完成する。
<2-4.作用および効果>
この二次電池によれば、正極21が上記した正極活物質を含んでいる。この場合には、正極活物質に関して説明した場合と同様の理由により、その正極活物質においてリチウムの吸蔵放出の安定性が向上すると共に、二次電池の充放電が繰り返されても放電容量が減少しにくくなる。よって、優れたサイクル特性を得ることができる。
これにより、高容量化のために充電電圧の上限値を高くしても、容量特性およびサイクル特性のそれぞれが担保される。この場合には、特に、高温環境中において二次電池を繰り返して使用しても放電容量が十分に減少しにくくなるため、十分なサイクル特性が得られる。
また、正極21によれば、上記した正極活物質を含んでいる。よって、正極活物質に関して説明した場合と同様の理由により、正極21を用いた二次電池において優れたサイクル特性を得ることができる。
<3.変形例>
次に、変形例に関して説明する。
上記した二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例は、互いに組み合わされてもよい。
[変形例1]
多孔質膜であるセパレータ23を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、セパレータ23の代わりに、高分子化合物層を含む積層型のセパレータを用いてもよい。
具体的には、積層型のセパレータは、一対の面を有する多孔質膜と、その多孔質膜の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいる。正極21および負極22のそれぞれに対するセパレータの密着性が向上するため、電池素子20の巻きずれが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が発生しても、二次電池が膨れにくくなる。高分子化合物層は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。ポリフッ化ビニリデンなどは、物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。
なお、多孔質膜および高分子化合物層のうちの一方または双方は、複数の絶縁性粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。二次電池の発熱時において複数の絶縁性粒子が放熱を促進させるため、その二次電池の安全性(耐熱性)が向上するからである。絶縁性粒子は、無機粒子および樹脂粒子のうちの一方または双方などである。無機粒子の具体例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ベーマイト、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムなどの粒子である。樹脂粒子の具体例は、アクリル樹脂およびスチレン樹脂などの粒子である。
積層型のセパレータを作製する場合には、高分子化合物および溶媒などを含む前駆溶液を調製したのち、多孔質膜の片面または両面に前駆溶液を塗布する。この場合には、多孔質膜に前駆溶液を塗布する代わりに、その前駆溶液中に多孔質膜を浸漬させてもよい。また、前駆溶液中に複数の絶縁性粒子を添加してもよい。
この積層型のセパレータを用いた場合においても、正極21と負極22との間においてリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、上記したように、二次電池の安全性が向上するため、より高い効果を得ることができる。
[変形例2]
液状の電解質である電解液を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、電解液の代わりに、ゲル状の電解質である電解質層を用いてもよい。
電解質層を用いた電池素子20では、セパレータ23および電解質層を介して正極21および負極22が互いに積層されていると共に、その正極21、負極22、セパレータ23および電解質層が巻回されている。この電解質層は、正極21とセパレータ23との間に介在していると共に、負極22とセパレータ23との間に介在している。ただし、電解質層は、正極21とセパレータ23との間だけに介在していてもよいし、負極22とセパレータ23との間だけに介在していてもよい。
具体的には、電解質層は、電解液と共に高分子化合物を含んでおり、その電解液は、高分子化合物により保持されている。電解液の漏液が防止されるからである。電解液の構成は、上記した通りである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。電解質層を形成する場合には、電解液、高分子化合物および溶媒などを含む前駆溶液を調製したのち、正極21および負極22のそれぞれの片面または両面に前駆溶液を塗布する。
この電解質層を用いた場合においても、正極21と負極22との間において電解質層を介してリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、上記したように、電解液の漏液が防止されるため、より高い効果を得ることができる。
<4.二次電池の用途>
最後に、二次電池の用途(適用例)に関して説明する。
二次電池の用途は、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、電子機器および電動車両などの主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、主電源の代わりに用いられる電源でもよいし、主電源から切り替えられる電源でもよい。
二次電池の用途の具体例は、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオおよび携帯用情報端末などの電子機器である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。電子機器などに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用または産業用のバッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。これらの用途では、1個の二次電池が用いられてもよいし、複数個の二次電池が用いられてもよい。
電池パックは、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、その二次電池以外の駆動源を併せて備えたハイブリッド自動車でもよい。家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に蓄積された電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能である。
ここで、二次電池の用途の一例に関して具体的に説明する。以下で説明する構成は、あくまで一例であるため、適宜、変更可能である。
図5は、二次電池の適用例である電池パックのブロック構成を表している。ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた電池パック(いわゆるソフトパック)であり、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。
この電池パックは、図5に示したように、電源51と、回路基板52とを備えている。この回路基板52は、電源51に接続されていると共に、正極端子53、負極端子54および温度検出端子55を含んでいる。
電源51は、1個の二次電池を含んでいる。この二次電池では、正極リードが正極端子53に接続されていると共に、負極リードが負極端子54に接続されている。この電源51は、正極端子53および負極端子54を介して外部と接続されることにより、充放電可能である。回路基板52は、制御部56と、スイッチ57と、熱感抵抗素子(いわゆるPTC素子)58と、温度検出部59とを含んでいる。ただし、PTC素子58は省略されてもよい。
制御部56は、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでおり、電池パック全体の動作を制御する。この制御部56は、必要に応じて電源51の使用状態に関する検出および制御を行う。
なお、制御部56は、電源51(二次電池)の電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ57を切断することにより、電源51の電流経路に充電電流が流れないようにする。過充電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、4.20V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、2.40V±0.10Vである。
スイッチ57は、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでおり、制御部56の指示に応じて電源51と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ57は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などを含んでおり、充放電電流は、スイッチ57のON抵抗に基づいて検出される。
温度検出部59は、サーミスタなどの温度検出素子を含んでおり、温度検出端子55を用いて電源51の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部56に出力する。温度検出部59により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部56が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部56が補正処理を行う場合などに用いられる。
本技術の実施例に関して説明する。
<実施例1~6および比較例1,2>
以下で説明するように、二次電池を作製したのち、その二次電池の特性評価を行った。
[特性評価用の二次電池の作製]
以下で説明する手順により、特性評価用の二次電池として、図3および図4に示したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池を作製した。
(正極の作製)
最初に、正極活物質(リチウムコバルト複合酸化物)90質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)5質量部と、正極導電剤(ケッチェンブラック)5質量部とを互いに混合させることにより、正極合剤とした。リチウムコバルト複合酸化物の組成(式(1)に示したLi1+x Co1-y y 2-z )に関する詳細は、表1に示した通りである。
続いて、溶媒(有機溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体21A(厚さ=12μmであるアルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層21Bを形成した。続いて、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型(ロール温度=130℃,線圧=0.7t/cm,プレス速度=10m/分)した。最後に、正極活物質層21Bが形成された正極集電体21Aを帯状(幅=48mm,長さ=300mm)となるように切断した。これにより、正極21が作製された。
(負極の作製)
最初に、負極活物質(炭素材料である人造黒鉛)90質量部と、負極結着剤(ポリイミドを含むN-メチル-2-ピロリドン溶液(濃度=20重量%))10質量部とを互いに混合させたのち、そのN-メチル-2-ピロリドン溶液を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。続いて、バーコータ(ギャップ=35μm)を用いて負極集電体22A(厚さ=15μmである銅箔)の両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥(乾燥温度=80℃)させた。続いて、ロールプレス機を用いて負極合剤スラリーの塗膜を圧縮成型した。続いて、負極合剤スラリーの塗膜を加熱(加熱温度=70℃,加熱時間=3時間)することにより、負極活物質層22Bを形成した。最後に、負極活物質層22Bが形成された負極集電体22Aを帯状(幅=50mm,長さ=310mm)となるように切断した。これにより、負極22が作製された。
(電解液の調製)
溶媒(環状炭酸エステルである炭酸エチレンおよび鎖状炭酸エステルである炭酸エチルメチル)に電解質塩(六フッ化リン酸リチウム)を添加したのち、その溶媒を撹拌した。この場合には、溶媒の混合比(重量比)を炭酸エチレン:炭酸エチルメチル=50:50とすると共に、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/l(=1mol/dm3 )とした。これにより、電解液が調製された。
(二次電池の組み立て)
最初に、正極21の正極集電体21Aに正極リード31(アルミニウム箔)を溶接したと共に、負極22の負極集電体22Aに負極リード32(銅箔)を溶接した。
続いて、セパレータ23(厚さ=15μmである微多孔性ポリエチレンフィルム)を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回体を作製した。続いて、プレス機を用いて巻回体をプレスすることにより、扁平形状となるように巻回体を成型した。
続いて、窪み部10Uの内部に収容された巻回体を挟むように外装フィルム10(融着層/金属層/表面保護層)を折り畳んだのち、その外装フィルム10(融着層)のうちの2辺の外周縁部同士を互いに熱融着させることにより、袋状の外装フィルム10の内部に巻回体を収納した。外装フィルム10としては、融着層(厚さ=30μmであるポリプロピレンフィルム)と、金属層(厚さ=40μmであるアルミニウム箔)と、表面保護層(厚さ=25μmであるナイロンフィルム)とが内側からこの順に積層されたアルミラミネートフィルムを用いた。
最後に、袋状の外装フィルム10の内部に電解液を注入したのち、減圧環境中において外装フィルム10(融着層)のうちの残りの1辺の外周縁部同士を互いに熱融着させた。この場合には、外装フィルム10と正極リード31との間に封止フィルム41(厚さ=5μmであるポリプロピレンフィルム)を挿入したと共に、外装フィルム10と負極リード32との間に封止フィルム42(厚さ=5μmであるポリプロピレンフィルム)を挿入した。
これにより、巻回体に電解液が含浸されたため、電池素子20が作製された。よって、外装フィルム10の内部に電池素子が封入されたため、二次電池が組み立てられた。
(二次電池の安定化)
常温環境中(温度=25℃)において二次電池を1サイクル充放電させた。充電時には、0.1Cの電流で電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電したのち、その4.2Vの電圧で電流が0.05Cに到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.1Cの電流で電圧が3.0Vに到達するまで定電流放電した。0.1Cとは、電池容量(理論容量)を10時間で放電しきる電流値であると共に、0.05Cとは、電池容量を20時間で放電しきる電流値である。
これにより、正極21および負極22のそれぞれの表面に被膜が形成されたため、二次電池の状態が電気化学的に安定化した。よって、ラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池が完成した。
[試験用の二次電池の作製]
図6は、試験用の二次電池の断面構成を表しており、その二次電池は、いわゆるコイン型の二次電池である。以下で説明する手順により、半値幅EDを算出するために使用される二次電池として、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製した。
この二次電池では、図6に示したように、外装カップ64の内部に試験極61が収容されていると共に、外装缶62の内部に対極63が収容されている。試験極61および対極63は、セパレータ65を介して互いに積層されていると共に、外装缶62および外装カップ64は、ガスケット66を介して互いに加締められている。電解液は、試験極61、対極63およびセパレータ65のそれぞれに含浸されている。
この二次電池を作製する場合には、最初に、正極集電体21Aの片面だけに正極活物質層21Bを形成したと共に、その正極活物質層21Bが形成された正極集電体21Aを円形(外径=15mm)となるように切断したことを除いて、上記した正極21の作製手順と同様の手順により、試験極61を作製した。
続いて、外装カップ64の内部に試験極61を収容したと共に、外装缶62の内部に対極63(外径=17mmである円形のリチウム金属板)を収容した。
続いて、電解液が含浸されているセパレータ65(厚さ=25μmである微多孔性のポリエチレンフィルム)を介して、外装カップ64の内部に収容されている試験極61と、外装缶62の内部に収容されている対極63とを互いに積層させた。電解液の組成は、上記した通りである。この場合には、外装カップ64と外装缶62との間にガスケット66を介在させた。
続いて、ガスケット66を介して外装カップ64および外装缶62を互いに加締めた。これにより、外装カップ64および外装缶62の内部に試験極61、対極63およびセパレータ65が封入されたため、二次電池が組み立てられた。
最後に、組み立て後の二次電池を1サイクル充放電させることにより、その二次電池の状態を電気化学的に安定化した。二次電池の安定化時の充放電条件は、上記した通りである。よって、コイン型のリチウムイオン二次電池が完成した。
[電圧差の算出]
以下で説明する手順により、図6に示した試験用の二次電池を用いて電圧差ED(V)を算出した。
最初に、二次電池を充電させることにより、充電曲線を得た。この場合には、常温環境中(温度=25℃)において、0.01Cの電流で電圧Eが3.00Vから4.60Vに到達するまで二次電池を定電流充電させた。
続いて、緩和時間を設けずに充電後の二次電池を放電させることにより、放電曲線を得た。この場合には、常温環境中(温度=25℃)において、0.01Cの電流で電圧Eが4.60Vから3.00Vに到達するまで二次電池を定電流放電させた。
続いて、充電曲線に基づいて、電圧Eに対して微分値dQ/dVをプロットすることにより、充電時のdQ/dV曲線C1(図1参照)を得たと共に、放電曲線に基づいて、電圧Eに対して微分値dQ/dVをプロットすることにより、放電時のdQ/dV曲線C2(図2参照)を得た。
最後に、上記した手順により、dQ/dV曲線C1,C2に基づいて、電圧差ED(V)を算出した。電圧差EDの算出結果は、表1に示した通りである。
[電池特性の評価]
以下で説明する手順により、図3および図4に示した特性評価用の二次電池を用いてサイクル特性を評価したところ、表1に示した結果が得られた。
サイクル特性を評価する場合には、最初に、常温環境中(温度=25℃)において二次電池を充放電させることにより、放電容量を測定した。充電時には、0.5Aの電流で電圧が4.50Vに到達するまで定電流充電したのち、その4.50Vの電圧で電流が0.05Aに到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.2Aの電流で電圧が3.00Vに到達するまで定電流放電した。
続いて、高温環境中(温度=45℃)において二次電池を充放電させることにより、2サイクル目の放電容量を測定した。2サイクル目の充放電条件は、充電時の電流を0.5Cに変更したと共に、放電時の電流を0.2Cに変更したことを除いて、1サイクル目の充放電条件と同様にした。ここで説明する0.5Cとは、1サイクル目に得られた放電容量を基準として、その放電容量を2時間で放電しきる電流値である。また、0.2Cとは、1サイクル目に得られた放電容量を基準として、その放電容量を5時間で放電しきる電流値である。
続いて、同環境中においてサイクル数が300サイクルに到達するまで二次電池を繰り返して充放電させることにより、300サイクル目の放電容量を測定した。充放電条件は、2サイクル目の充放電条件と同様にした。
最後に、容量維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100という計算式に基づいて、サイクル特性を評価するための指標である容量維持率を算出した。
Figure 2023089516000002
[考察]
表1に示したように、容量維持率は、電圧差EDに応じて変動した。
具体的には、電圧差EDが適正範囲(=0.01V~0.08V)の範囲外である場合(比較例1,2)には、容量維持率が著しく減少した。これに対して、電圧差EDが適正範囲の範囲内である場合(実施例1~6)には、容量維持率が著しく増加した。
[まとめ]
表1に示した結果から、正極活物質がリチウムコバルト複合酸化物を含んでおり、充電時のdQ/dV曲線C1および放電時のdQ/dV曲線C2に基づいて算出される電圧差VDが0.01V~0.08Vであると、高い容量維持率が得られた。よって、二次電池において優れたサイクル特性を得ることができた。
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されないため、種々に変形可能である。
具体的には、二次電池の電池構造がラミネートフィルム型である場合に関して説明した。しかしながら、二次電池の電池構造は、特に限定されないため、円筒型、角型、コイン型およびボタン型などでもよい。
また、電池素子の素子構造が巻回型である場合に関して説明した。しかしながら、電池素子の素子構造は、特に限定されないため、積層型および九十九折り型などでもよい。この積層型では、正極および負極が互いに積層されていると共に、九十九折り型では、正極および負極がジグザグに折り畳まれている。
さらに、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。具体的には、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。
21…正極、22…負極。

Claims (3)

  1. 正極活物質を含む正極と、負極と、電解液とを備え、
    前記正極活物質は、下記の式(1)で表されるリチウムコバルト複合酸化物を含み、
    前記正極、前記負極および前記電解液を備えた二次電池が下記の式(2)の条件において充電されることにより、電圧と容量を前記電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す充電時のdQ/dV曲線が得られると共に、
    前記二次電池が下記の式(3)の条件において放電されることにより、電圧と容量を前記電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す放電時のdQ/dV曲線が得られた際、
    下記の式(4)で表される電圧差は、0.01V以上0.08V以下である、
    二次電池。
    Li1+x Co1-y y 2-z ・・・(1)
    (Mは、Ni、Mn、Al、Mg、Zr、V、W、Mo、Cr、Bi、Cu、Ti、Si、Fe、P、F、B、La、GaおよびClのうちの少なくとも1種である。x、yおよびzは、0≦x≦0.1、0≦y≦0.2および0≦z≦0.02を満たす。)
    充電方法=定電流充電,環境温度=25℃,充電電流=0.01C,充電電圧=リチウム金属基準電位(vs Li/Li+ )において3.00V以上4.60V以下 ・・・(2)
    放電方法=定電流放電,環境温度=25℃,放電電流=0.01C,放電電圧=リチウム金属基準電位において3.00V以上4.60V以下,定電流放電後の緩和時間=なし ・・・(3)
    ED=E1-E2 ・・・(4)
    (EDは、電圧差である。E1は、充電時のdQ/dV曲線において微分値が最大になる時の電圧である。E2は、放電時のdQ/dV曲線において微分値が最大になる時の電圧である。)
  2. 正極活物質を含み、
    前記正極活物質は、下記の式(1)で表されるリチウムコバルト複合酸化物を含み、
    前記正極活物質を含む正極を備えた二次電池が下記の式(2)の条件において充電されることにより、電圧と容量を前記電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す充電時のdQ/dV曲線が得られると共に、
    前記二次電池が下記の式(3)の条件において放電されることにより、電圧と容量を前記電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す放電時のdQ/dV曲線が得られた際、
    下記の式(4)で表される電圧差は、0.01V以上0.08V以下である、
    正極。
    Li1+x Co1-y y 2-z ・・・(1)
    (Mは、Ni、Mn、Al、Mg、Zr、V、W、Mo、Cr、Bi、Cu、Ti、Si、Fe、P、F、B、La、GaおよびClのうちの少なくとも1種である。x、yおよびzは、0≦x≦0.1、0≦y≦0.2および0≦z≦0.02を満たす。)
    充電方法=定電流充電,環境温度=25℃,充電電流=0.01C,充電電圧=リチウム金属基準電位(vs Li/Li+ )において3.00V以上4.60V以下 ・・・(2)
    放電方法=定電流放電,環境温度=25℃,放電電流=0.01C,放電電圧=リチウム金属基準電位において3.00V以上4.60V以下,定電流放電後の緩和時間=なし ・・・(3)
    ED=E1-E2 ・・・(4)
    (EDは、電圧差である。E1は、充電時のdQ/dV曲線において微分値が最大になる時の電圧である。E2は、放電時のdQ/dV曲線において微分値が最大になる時の電圧である。)
  3. 下記の式(1)で表されるリチウムコバルト複合酸化物を含み、
    前記リチウムコバルト複合酸化物を含む正極活物質を備えた二次電池が下記の式(2)の条件において充電されることにより、電圧と容量を前記電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す充電時のdQ/dV曲線が得られると共に、
    前記二次電池が下記の式(3)の条件において放電されることにより、電圧と容量を前記電圧で微分した微分値との間の相関関係を表す放電時のdQ/dV曲線が得られた際、
    下記の式(4)で表される電圧差は、0.01V以上0.08V以下である、
    正極活物質。
    Li1+x Co1-y y 2-z ・・・(1)
    (Mは、Ni、Mn、Al、Mg、Zr、V、W、Mo、Cr、Bi、Cu、Ti、Si、Fe、P、F、B、La、GaおよびClのうちの少なくとも1種である。x、yおよびzは、0≦x≦0.1、0≦y≦0.2および0≦z≦0.02を満たす。)
    充電方法=定電流充電,環境温度=25℃,充電電流=0.01C,充電電圧=リチウム金属基準電位(vs Li/Li+ )において3.00V以上4.60V以下 ・・・(2)
    放電方法=定電流放電,環境温度=25℃,放電電流=0.01C,放電電圧=リチウム金属基準電位において3.00V以上4.60V以下,定電流放電後の緩和時間=なし ・・・(3)
    ED=E1-E2 ・・・(4)
    (EDは、電圧差である。E1は、充電時のdQ/dV曲線において微分値が最大になる時の電圧である。E2は、放電時のdQ/dV曲線において微分値が最大になる時の電圧である。)
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