JP2023089497A - 塗工液、塗工物、成形体及び剥離紙 - Google Patents

塗工液、塗工物、成形体及び剥離紙 Download PDF

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Abstract

【課題】透気度、シリコーン硬化性及び基材との密着性に優れる塗工液を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む塗工液とする。
【化1】
Figure 2023089497000016
上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
【選択図】なし

Description

本開示は、塗工液、塗工物、成形体及び剥離紙に関する。
ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある)は、親水性かつ結晶性を有する特異な合成高分子であり、紙分野において、紙力増強剤、蛍光白色顔料の分散剤、無機物(炭酸カルシウム、クレー、シリカ等)のバインダーとして使用されている。また、PVAは造膜性に優れるため、紙に塗工することにより、ガスなどに対するバリア性や耐油性を付与できる。
PVAが塗工された紙はバリア紙として用いられることがあり、バリア紙の代表例として、剥離紙原紙が挙げられる。剥離紙原紙は、通常、セルロース基材の表面にPVAを塗工することにより製造される。そして、この剥離紙原紙の表面に剥離層(シリコーン層)を形成することにより剥離紙が得られる。剥離紙におけるPVAは、高価なシリコーンや白金の基材中への浸透を抑制する目止め剤の役割を担っている。昨今、このような目止め性に加え、剥離層のシリコーンの硬化を促進したり、PVA層とシリコーン層の密着性を改良できる剥離紙原紙が求められている。
特許文献1には、特定の条件を満たしたシリル基を有するPVAを塗工した剥離紙原紙が記載されている。また、特許文献2には、アセタール化反応によって側鎖に二重結合が導入されたPVAが記載されている。しかし、これら文献には、透気度、シリコーン硬化性及び基材との密着性に優れる塗工液については開示されていない。
特開2005-194672号公報 特表2013-531136号公報
本開示は、透気度、シリコーン硬化性及び基材との密着性に優れる塗工液、該塗工液を基材に塗工してなる塗工物、成形体及び剥離紙を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、特定の基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む塗工液とすることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は以下に開示の形態を包含する。
[1]下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む塗工液;
Figure 2023089497000001
上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
[2]上記変性ビニルアルコール系重合体におけるR2が下記式(2)で表される基である、[1]の塗工液;
Figure 2023089497000002
上記式(2)中、複数のR3は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素数2~5のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化フェニル基、炭素数1~8のアミノアルキル基、炭素数1~8のメルカプトアルキル基、水酸基、又は-OQで表される基である。Qは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。
[3]上記変性ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対する上記シロキサン構造の含有量が、0.001モル%以上である、[1]又は[2]の塗工液;
[4]上記変性ビニルアルコール系重合体におけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記シロキサン構造の含有量が、50モル%以上である、[1]~[3]の塗工液;
[5]上記変性ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が500以上5000以下であり、けん化度が70モル%以上99.9モル%以下である、[1]~[4]の塗工液;
[6]塗工液における変性ビニルアルコール系重合体の不溶解分が1000ppm以下である、[1]~[5]の塗工液;
[7]シリル基含有単量体に由来し且つシランカップリング剤により変性された単量体単位を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む塗工液;
[8]上記変性ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対する上記シランカップリング剤の変性量が、0.001モル%以上である、[7]の塗工液;
[9]上記変性ビニルアルコール系重合体におけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記シランカップリング剤の変性量が、50モル%以上である、[7]又は[8]の塗工液;
[10][1]~[9]のいずれかの塗工液を基材に塗工してなる塗工物。
[11]下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む層を備える成形体;
Figure 2023089497000003
上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
[12]基材、シリコーン目止め層、及び剥離層を備える剥離紙であって、前記シリコーン目止め層が下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む、剥離紙;
Figure 2023089497000004
上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
[13]上記剥離層が付加型シリコーン及び白金を含み、付加型シリコーン100重量部に対する白金の配合量が0.001~0.05重量部である、[12]の剥離紙
本開示によれば、剥離紙原紙に塗工した際にシリコーンの目止め性に優れ、剥離層のシリコーンの硬化を促進させ、かつ基材と剥離層との密着性を向上させることができる塗工液、及びそれを用いた剥離紙原紙を提供することができる。また、本開示によれば、当該剥離紙原紙を用いて得られる剥離紙を提供することができる。
<変性ビニルアルコール系重合体>
ビニルアルコール系重合体(PVA)は、ビニルアルコール単位を単量体単位として有する重合体である。PVAはその原料モノマーであるビニルエステル系単量体を重合してなるビニルエステル系重合体をけん化することで得られ、けん化後のPVAはビニルアルコール単位の他にビニルエステル単位を含み得る。
またPVAは、その原料モノマーであるビニルエステル系単量体と、他の単量体とを共重合させてなる共重合体をけん化して、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単量体単位を含むPVAとすることや、けん化中あるいはけん化後のPVAに対し特定の化学種を反応させて特定の官能基を導入したPVAとすることが可能である。本開示においてはこれらのようなPVAを「変性ビニルアルコール系重合体(変性PVA)」と称し、また上記ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単量体単位を含むPVAの原料モノマーである、ビニルエステル系単量体以外の単量体を「変性種」と称する場合がある。また、本開示においては、(変性)PVAをけん化する前の(変性)ビニルエステル系重合体を、(変性)PVAの「前駆体」と称する場合がある。なお、ここで「変性ビニルエステル系重合体」とは、ビニルエステル単位以外の単量体単位を含むビニルエステル系重合体である。
本開示の塗工液は、下記の式(1)で表される構成単位を有する変性PVAを含む。
Figure 2023089497000005
ここで上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
変性PVAが上記式(1)で表される基を有することで、変性PVAの水溶性が向上する。その理由は必ずしも明らかでないが、変性PVAが式(1)で表される基を有することで、ケイ素原子を含む反応性の高い部位(例えば、シラノール部位)の周囲が嵩高くなり、変性PVAにおけるケイ素原子を含む反応性の高い部位とビニルアルコール部位の相互作用が適度に弱められるためと推測される。
本開示において、「シロキサン構造」とは、1つの酸素原子と1つのケイ素原子とが結合してなる構造(-O-Si-)をいう。シロキサン構造は、シロキサン結合と称してもよい。1つのシロキサン構造を構成する1つのケイ素原子の4つの結合手のうちの当該シロキサン構造を構成する酸素原子と結合していない3つの結合手が結合する原子の種類は、特に限定されない。1つのシロキサン構造を構成する1つの酸素原子の2つの結合手のうちの当該シロキサン構造を構成するケイ素原子と結合していない結合手が結合する原子の種類も、特に限定されない。但し、1つのシロキサン構造を構成する1つの酸素原子の2つの結合手のうちの当該シロキサン構造を構成するケイ素原子と結合していない結合手も、別のケイ素原子と結合していることが好ましい。上記別のケイ素原子は、式(1)中のSiで表されているケイ素原子であることが好ましい。
1で表される炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。このアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましく、1又は2がより好ましい。
1で表される炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。このアルコキシ基が有するアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましく、1又は2がより好ましい。
Mで表されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。Mで表されるアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
式(1)中のnが1又は2である場合、1つ又は2つのR1には、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基が含まれていることが好ましい。また、R1は、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基であることが好ましい。
式(1)におけるR2で表される基(シロキサン構造を含む基)としては、シロキサン構造を構成する酸素原子が、式(1)中のSiで表されるケイ素原子と結合した基が好ましく、下記式(2)で表される基であることがより好ましい。R2で表される基としては、その他、複数のシロキサン構造(例えばポリシロキサン鎖)を含む基等であってもよい。
Figure 2023089497000006
上記式(2)中、複数のR3は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素数2~5のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化フェニル基、炭素数1~8のアミノアルキル基、炭素数1~8のメルカプトアルキル基、水酸基、又は-OQで表される基である。Qは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。
3で表される炭素数1~20のアルキル基としては、R1で表される炭素数1~8のアルキル基として例示したもの等が挙げられる。R3で表されるアルキル基の炭素数としては、1~8が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
3で表される炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基としては、R1で表される炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基として例示したもの等が挙げられる。R3で表されるアルコキシ基が有するアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましく、1又は2がより好ましい。
3で表される炭素数2~5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2-メチルアリル基等が挙げられる。R3で表されるアルケニル基の炭素数としては、2~4が好ましく、2がより好ましい。
3で表される炭素数1~8のハロゲン化アルキル基及びハロゲン化フェニル基が有するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。
3で表される炭素数1~8のアミノアルキル基としては、アミノメチル基、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基等が挙げられる。R3で表されるアミノアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましい。
3で表される炭素数1~8のメルカプトアルキル基としては、メルカプトメチル基、2-メルカプトエチル基、3-メルカプトプロピル基等が挙げられる。R3で表されるメルカプトアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましい。
Qで表されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。Qで表されるアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
式(2)中の3つのR3には、アルコキシ基が含まれていることが好ましい。式(2)中の3つのR3中のアルコキシ基の数としては1又は2が好ましい。粘度安定性の観点からは、式(2)中の3つのR3中のアルコキシ基の数としては1が好ましい。フィルム耐水性の観点からは、式(2)中の3つのR3中のアルコキシ基の数としては2が好ましい。
式(1)中のnは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
変性PVAにおける全単量体単位に対する、式(1)で表される基の含有量の下限は0.001モル%が好ましく、0.005モル%がより好ましく、0.01モル%がさらに好ましく、0.05モル%がよりさらに好ましく、0.10モル%がよりさらに好ましく、0.16モル%が特に好ましい場合がある。また、全単量体単位に対する式(1)で表される基の含有量の上限は特に限定されないが、例えば0.30モル%であってもよく、0.25モル%であってもよい。また、変性PVAにおける全単量体単位に対する、式(1)で表される基の含有量は0.001モル%以上0.30モル%以下が好ましく、0.005モル%以上0.30モル%以下がより好ましく、0.01モル%以上0.30モル%以下がさらに好ましく、0.05モル%以上0.30モル%以下がよりさらに好ましく、0.10モル%以上0.30モル%以下がよりさらに好ましく、0.16モル%以上0.25モル%以下が特に好ましい場合がある。また、例えば後述する一実施態様の変性PVAにおいては、式(1)で表される基の含有量はシリル基変性量と同じ値であってもよい。すなわち例えば、変性PVAに導入されたシリル基含有変性種由来の単量体単位が全て式(1)で表される基を有していてもよい。
本開示において、「単量体単位」とは、単量体に由来し、主鎖を含む部分を有する最小の繰り返し単位をいう。一つの単量体単位は、一つの単量体のみから形成されるものであってもよく、一つの単量体とそれ以外の一つ又は複数の化合物(例えば後述するシランカップリング剤等)とから形成されるものであってもよい。
変性PVAにおける全単量体単位に対するシロキサン構造(-O-Si-)の含有量の下限は0.001モル%が好ましく、0.005モル%がより好ましく、0.01モル%がさらに好ましく、0.05モル%がよりさらに好ましく、0.10モル%がよりさらに好ましく、0.16モル%が特に好ましい場合がある。また、全単量体単位に対するシロキサン構造の含有量の上限は特に限定されないが、例えば0.30モル%であってもよく、0.25モル%であってもよい。また、変性PVAにおける全単量体単位に対するシロキサン構造(-O-Si-)の含有量は0.001モル%以上0.30モル%以下が好ましく、0.005モル%以上0.30モル%以下がより好ましく、0.01モル%以上0.30モル%以下がさらに好ましく、0.05モル%以上0.30モル%以下がよりさらに好ましく、0.10モル%以上0.30モル%以下がよりさらに好ましく、0.16モル%以上0.25モル%以下が特に好ましい場合がある。
変性PVAにおける全単量体単位に対する式(2)で表される基の含有量の下限は0.001モル%が好ましく、0.005モル%がより好ましく、0.01モル%がさらに好ましく、0.05モル%がよりさらに好ましく、0.10モル%がよりさらに好ましく、0.16モル%が特に好ましい場合がある。また、全単量体単位に対する式(2)で表される基の含有量の上限は特に限定されないが、例えば0.30モル%であってもよく、0.25モル%であってもよい。また、変性PVAにおける全単量体単位に対する式(2)で表される基の含有量は0.001モル%以上0.30モル%以下が好ましく、0.005モル%以上0.30モル%以下がより好ましく、0.01モル%以上0.30モル%以下がさらに好ましく、0.05モル%以上0.30モル%以下がよりさらに好ましく、0.10モル%以上0.30モル%以下がよりさらに好ましく、0.16モル%以上0.25モル%以下が特に好ましい場合がある。なお、上記式(1)中のR2が上記式(2)で表される基である場合、他の変性等がなされていない限り、通常、上記式(2)で表される基の含有量は、シロキサン構造の含有量に等しい。
変性PVAにおける式(1)で表される基又はシロキサン構造は、例えば1H-NMRによって測定できる。例えば、後述するような本開示の変性PVAの一態様である、酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランとの共重合体をメチルトリメトキシシラン存在下でけん化してなる変性PVAの場合では、1H-NMRにより測定される該変性PVA中のメチルトリメトキシシラン由来の構造からシロキサン構造を確認できる。その場合の具体的な測定方法の一例は以下の通りである。該変性PVAをD2Oに溶解した試料を400MHzの1H-NMRで室温にて測定すると、ビニルアルコール単位のメチン基由来のピークは3.3~4.2ppm(積分値α)、メチルトリメトキシシラン由来の構造におけるメチル基由来のピークは-0.5~0.5ppm付近(積分値β)に帰属される。積分値α、βから、下記式(I)により全単量体単位に対するメチルトリメトキシシラン由来の構造、すなわちシロキサン構造の含有量を算出できる。
シロキサン構造(メチルトリメトキシシラン由来の構造)の含有量(モル%)
={(β/3)/(α+β/3)}×100 ・・・(I)
上記方法により求められる含有量は、Si-O-Si構造の含有量に等しい。また、酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランとの共重合体をメチルトリメトキシシラン存在下でけん化してなる変性PVA等の場合、上記方法により求められる全単量体単位に対するシロキサン構造の含有量は、全単量体単位に対する式(2)で表される基の含有量に等しい。さらに、酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランとの共重合体をメチルトリメトキシシラン存在下でけん化してなる変性PVA等の場合、立体障害等の関係から、ビニルトリメトキシシランに由来する1つの単量体単位に対して、2以上のメチルトリメトキシシランは反応し難いと考えられる。すなわち、上記式(1)におけるnは、通常、1になると考えられる。そのため、上記方法により求められる全単量体単位に対するシロキサン構造の含有量は、全単量体単位に対する式(1)で表される基の含有量に実質的に等しいと考えられる。
本開示における変性PVAは、通常、上記式(1)で表される基を有する単量体単位を有する。上記式(1)で表される基を有する単量体単位としては、例えば下記式(3)で表される単量体単位が挙げられる。
Figure 2023089497000007
式(3)中、R4は、水素原子又はメチル基である。R5は、単結合又は2価の連結基である。R6は、上記式(1)で表される基である。
5で表される2価の連結基としては、例えば、-(CH2m-(mは、1~4の整数である。)、-CONR7-(CH2q-(R7は、水素原子又はメチル基である。qは、0~4の整数である。)等が挙げられる。また、2価の連結基は、上記-(CH2m-及び上記-CONR7-(CH2q-で表される基の炭素-炭素結合間に-O-、-NR8-(R8は、水素原子又はメチル基である。)等の2価のヘテロ原子含有基を含むものであってもよい。
本開示における変性PVAの好ましい一実施態様は、シリル基を有する単量体(以下、「シリル基含有単量体」又は「シリル基含有変性種」とも称する。)とビニルエステル系単量体とを共重合させてなる変性ビニルエステル系重合体(以下、「シリル基変性ビニルエステル系重合体」とも称する。)を、シランカップリング剤存在下でけん化して、PVAの側鎖に式(1)で表される基を導入した変性PVAである。すなわち、シリル基含有単量体に由来し且つシランカップリング剤により変性された単量体単位を有する変性PVAも、本開示における変性PVAの一態様である。
本開示において、「シリル基」とは、-SiH3で表される基、及び-SiH3で表される基が有する3つの水素原子のうちの1つ以上が、他の原子又は置換基に置換されてなる基をいう。反応性等の観点から、シリル基は、水酸基を有するもの、又は加水分解等により水酸基が現れる基(アルコキシ基等)を有するものが好ましい。
変性PVAにおける全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量の下限は0.001モル%が好ましく、0.005モル%がより好ましく、0.01モル%がさらに好ましく、0.05モル%がよりさらに好ましく、0.10モル%がよりさらに好ましく、0.16モル%が特に好ましい場合がある。また、変性PVAにおける全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量の上限は特に限定されないが、例えば0.30モル%であってもよく、0.25モル%であってもよい。また、変性PVAにおける全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量は0.001モル%以上0.30モル%以下が好ましく、0.005モル%以上0.30モル%以下がより好ましく、0.01モル%以上0.30モル%以下がさらに好ましく、0.05モル%以上0.30モル%以下がよりさらに好ましく、0.10モル%以上0.30モル%以下がよりさらに好ましく、0.16モル%以上0.25モル%以下が特に好ましい場合がある。
シランカップリング剤の変性量とは、結合したシランカップリング剤の量である。具体的には、変性PVAにおける全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量とは、変性PVAにおける全単量体単位の数に対するシランカップリング剤に由来する構造の数である。例えば上記した酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランとの共重合体をメチルトリメトキシシラン存在下でけん化してなる変性PVAの場合では、シランカップリング剤であるメチルトリメトキシシランが1つ結合すると、1つのメチルトリメトキシシラン由来の構造が形成される。そのため、上記式(I)で求められる全単量体単位に対するシロキサン構造(メチルトリメトキシシラン由来の構造)の含有量(モル%)が、全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量(モル%)に等しい。
変性PVAにおけるシリル基変性量の下限は0.05モル%が好ましく、0.08モル%がより好ましく、0.1モル%がさらに好ましい場合もある。またシリル基変性量の上限は1.0モル%が好ましく、0.8モル%がより好ましく、0.5モル%がさらに好ましい場合もある。また、変性PVAにおけるシリル基変性量は0.05モル%以上1.0モル%以下が好ましく、0.08モル%以上0.8モル%以下がより好ましく、0.1モル%以上0.5モル%以下がさらに好ましい場合がある。シリル基変性量が上記範囲であることで、シリル基の効果がより良好に発現する傾向にあり、また得られる変性PVAの水溶性がより良好となる傾向にある。なお、本開示における変性PVAのシリル基変性量とは、変性PVAにおける全単量体単位に対する、シリル基含有単量体(シリル基含有変性種)に由来する全ての単量体単位の含有量である。
シリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位には、シリル基含有単量体に由来し、シランカップリング剤により変性されていない単量体単位、及びシリル基含有単量体に由来し且つシランカップリング剤により変性された単量体単位の双方を含む。すなわち、上記式(1)で表される基を有する単量体単位も、シリル基含有単量体に由来する単量体単位の一つである。また、シリル基含有単量体に由来する単量体単位には、加水分解等、シランカップリング剤による変性以外の変性がされたものも含まれる。
変性PVAのシリル基変性量は、例えば1H-NMRを用いて求めることができ、例えば変性PVAの前駆体であるシリル基変性ビニルエステル系重合体を1H-NMRで測定することで、変性PVAのシリル基変性量を求めることが可能である。例えばシリル基含有変性種としてビニルトリメトキシシランを用いた変性PVAの場合、該変性PVAの前駆体であるシリル基変性ビニルエステル系重合体を1H-NMRによって測定しシリル基変性量を求めてもよい。その場合の具体的な測定方法の一例は以下の通りである。試料のシリル基変性ビニルエステル系重合体の再沈精製をn-ヘキサンとアセトンの混合溶液を用いて3回以上行った後、80℃で3日間減圧乾燥して分析用の変性ビニルエステル系重合体を作製する。次いで該分析用の変性ビニルエステル系重合体をDMSO-d6に溶解し、20℃で1H-NMR(400MHz)を測定する。測定されたビニルエステル単位の主鎖メチンプロトンに由来するピーク(積分値A:4.5~5.2ppm)と、シリル基(トリメトキシシリル基)のメチルプロトンに由来するピーク(積分値B:3.4~3.6ppm)を用い、下記式(II)によりシリル基変性量を算出することができる。
シリル基変性量(モル%)
={(B/9)/(A+B/9)}×100 ・・・(II)
変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、上記式(1)で表される基、上記式(2)で表される基又はシロキサン構造の含有量の下限は、例えば40モル%であってもよいが、50モル%が好ましく、60モル%がより好ましい。同様に、変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、シランカップリング剤の変性量の下限は、例えば40モル%であってもよいが、50モル%が好ましく、60モル%がより好ましい。このような場合、シリル基含有単量体に由来する単量体単位が多くの割合でシランカップリング剤により変性されているため、シランカップリング剤変性による効果を特に十分に発揮することができる。変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、上記式(1)で表される基、上記式(2)で表される基又はシロキサン構造の含有量の上限、及び変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、シランカップリング剤の変性量の上限は、例えば100モル%であってよい。但し、シリル基含有単量体に由来する単量体単位に対して、複数のシランカップリング剤が反応する場合があるため、変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記式(2)で表される基又はシロキサン構造の含有量、及び変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量は、100モル%を超えてもよい。また、変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、上記式(1)で表される基、上記式(2)で表される基又はシロキサン構造の含有量は、50モル%以上100モル%以下が好ましく、60モル%以上80モル%以下がより好ましい場合もある。同様に、変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、シランカップリング剤の変性量は50モル%以上100モル%以下が好ましく、60モル%以上80モル%以下がより好ましい場合もある。
本開示の変性PVAは、ビニルエステル系単量体に由来する単量体単位(ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位)、及びシリル基含有単量体に由来する単量体単位に加え、さらに他の単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。例えば本開示の好ましい一実施態様に係る変性PVAは、エチレン単位を含有する。変性PVAの全単量体単位に対するエチレン単位の含有量(エチレン変性量)は、20モル%未満が好ましく、10モル%未満がより好ましい場合もある。エチレン変性量が上記範囲であることで、変性PVAの水溶性がより良好となる場合がある。変性PVAの全単量体単位に対するエチレン単位の含有量(エチレン変性量)の下限は、例えば0.1モル%であってもよく、1モル%であってもよい。エチレン変性量が上記下限以上である場合、得られるフィルムの耐水性をより高めることなどができる。
変性PVAがエチレン単位を含む場合、そのエチレン変性量は、例えば1H-NMRを用いて求めることができる。例えば上述のシリル基変性量と同様に、変性PVAの前駆体である変性ビニルエステル系重合体を1H-NMRで測定することで、変性PVAのエチレン変性量を求めることが可能である。
本開示の変性PVAにおける全単量体単位に対するビニルアルコール単位の割合の下限としては、35モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましく、80モル%がよりさらに好ましく、90モル%が特に好ましい場合もある。一方、上記ビニルアルコール単位の割合の上限は、99.95モル%が好ましい場合もある。
本開示の変性PVAにおける全単量体単位に対する、ビニルエステル系単量体に由来する単量体単位、シリル基含有単量体に由来する単量体単位、及びエチレン単位以外の他の単量体単位の含有量の上限は、10モル%が好ましく、1モル%又は0.1モル%がより好ましい場合もある。このような場合、シリル基変性による効果をより十分に発揮することなどができる。
変性PVAの粘度平均重合度の下限は100が好ましく、200がより好ましく、500がさらに好ましく、1,000がよりさらに好ましく、2,000がよりさらに好ましいこともある。また、変性PVAの粘度平均重合度の上限は5,000が好ましく、4,000がより好ましく、3,000がさらに好ましいこともある。また、変性PVAの粘度平均重合度は100以上5,000以下であることが好ましく、500以上5,000以下であることがより好ましく、1,000以上3,000以下であることがさらに好ましいこともある。粘度平均重合度が上記範囲であることで、製造がより容易となる傾向がある。粘度平均重合度はJIS K 6726:1994に準じて測定して得られる値である。具体的には、変性PVAのけん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化した変性PVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて、下記式により粘度平均重合度が得られる。
P=([η]×104/8.29)(1/0.62)
変性PVAのけん化度の下限は30モル%が好ましく、65モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましく、80モル%がよりさらに好ましく、85モル%がよりさらに好ましく、90モル%が特に好ましいこともある。一方、当該変性PVAのけん化度の上限は99.9モル%が好ましく、99.0モル%がより好ましく、98.5モル%がさらに好ましいこともある。また変性PVAのけん化度は30モル%以上99.9モル%以下が好ましく、65モル%以上99.9モル%以下がより好ましく、70モル%以上99.9モル%以下がさらに好ましく、80モル%以上99.0モル%以下がよりさらに好ましく、85モル%以上99.0モル%以下がよりさらに好ましく、90.0モル%以上98.5モル%以下が特に好ましいこともある。変性PVAのけん化度を上記範囲とすることで、水溶性の向上効果をより高めることができ、また変性PVAを工業的により安定に製造することができる傾向にある。変性PVAのけん化度はJIS K 6726:1994に記載の方法により測定される。
<変性ビニルアルコール系重合体の製造方法>
本開示の変性PVAの製造方法は、シリル基を有する変性ビニルエステル系重合体をシランカップリング剤存在下でけん化する工程を備えることが好ましい。
また、本開示の変性PVAの製造方法における好ましい一実施態様は、シリル基含有単量体(シリル基含有変性種)とビニルエステル系単量体とを共重合させてシリル基変性ビニルエステル系重合体を得る工程(重合工程)、及び該シリル基変性ビニルエステル系重合体(シリル基を有する変性ビニルエステル系重合体)をシランカップリング剤存在下でけん化する工程(けん化工程)を備える。例えば、上記のようにシランカップリング剤の存在下でシリル基変性ビニルエステル系重合体をけん化することで、得られる変性PVAにシロキサン構造を導入することができ、式(1)で表される基を有する変性PVAを得ることができる。シリル基含有変性種とシランカップリング剤とは同一であってもよく、それぞれ異なる化学種であってもよい。
[重合工程]
本開示の変性PVAの前駆体となる変性ビニルエステル系重合体は、ビニルエステル系単量体とシリル基含有単量体、あるいはさらに他の単量体とを、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の従来公知の方法で重合して製造できる。本開示の効果を高める点では、低級アルコールを用いて重合を行う溶液重合法が好ましい。低級アルコールに特に限定はないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数3以下のアルコールが好ましく、メタノールがより好ましい。重合操作は、回分法、半回分法及び連続法のいずれの重合方式も採用できる。
ビニルエステル系単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。中でも酢酸ビニルが好ましい。
シリル基含有単量体(シリル基含有変性種)は、下記式(4)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2023089497000008
式(4)中、ここで、R11は重合性多重結合を有する官能基である。R12及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基又はアセトキシ基である。R14は、炭素数1~8のアルキル基、芳香族炭化水素基又はアセチル基である。
11で表される重合性多重結合を有する官能基としては、炭素-炭素不飽和二重結合を有する基が好ましく、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアルキル基等が挙げられる。
12及びR13としては、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基が好ましく、炭素数1~4、更には炭素数1又は2のアルキル基を有するアルコキシ基がより好ましい。
14で表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。R14としては、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~4、更には炭素数1又は2のアルキル基がより好ましい。
シリル基含有単量体(シリル基含有変性種)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルメトキシジブトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシヘキシロキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、2-(メタ)アクリルアミド-エチルトリメトキシシラン、1-(メタ)アクリルアミド-メチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-イソプロピルトリメトキシシラン、N-(2-(メタ)アクリルアミド-エチル)-アミノプロピルトリメトキシシラン、(3-(メタ)アクリルアミド-プロピル)-オキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリアセトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-エチルトリアセトキシシラン、4-(メタ)アクリルアミド-ブチルトリアセトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリプロピオニルオキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロピルトリアセトキシシラン、N-(2-(メタ)アクリルアミド-エチル)-アミノプロピルトリアセトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルイソブチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-エチルジメチルメトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルメチルジアセトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロピルハイドロジェンジメトキシシラン、3-(N-メチル-(メタ)アクリルアミド)-プロピルトリメトキシシラン、2-(N-エチル-(メタ)アクリルアミド)-エチルトリアセトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどが挙げられる。この中でもビニルトリメトキシシランは、工業的な製造が容易で安価に入手できることから好ましく用いることができる。
なお、シリル基含有単量体がアセトキシ基等のアシロキシ基を有する場合(例えば上記式(4)におけるR12又はR13がアセトキシ基である場合、及びR14がアセチル基である場合)、通常、加水分解により水酸基等を有する単量体単位が形成される。水酸基は、塩の状態である場合もある。但し、アセトキシ基等のアシロキシ基の状態のままの単量体単位が変性PVA中に存在していてもよい。
また、本開示の変性PVAにおいては、本開示の趣旨を損なわない範囲でビニルエステル系単量体及びシリル基含有単量体以外の他の単量体を共重合させてもよい。他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン等のα-オレフィン;(メタ)アクリル酸及びその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びその誘導体等のアクリルアミド系化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用できる。他の単量体の共重合量(他の単量体の変性量)は、10モル%以下であることが好ましい。なお、本開示において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリルとアクリルの総称である。
重合の際に使用される重合開始剤は、公知の開始剤(例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤など)から選択できる。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。過酸化物系開始剤としては、例えば、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。これらの開始剤に、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて開始剤としてもよい。レドックス系開始剤としては、例えば、上記過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L-アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた開始剤が挙げられる。共重合を高温で行った場合に、ビニルエステル系単量体の分解に起因する着色が見られることがある。その場合、着色の防止を目的として、酒石酸のような酸化防止剤を、ビニルエステル系単量体に対して1~100ppm程度、重合系に添加してもよい。
重合温度に特に限定はなく、0~180℃が好ましく、20~160℃がより好ましく、30~150℃がさらに好ましい。重合工程で使用する溶媒の沸点以下で重合する際は減圧下で溶媒を沸騰させながら重合を行う減圧沸騰重合、及び常圧下で溶媒を沸騰させない条件で重合を行う常圧非沸騰重合のいずれも選択できる。また重合工程で使用する溶媒の沸点以上で重合する際は加圧下で溶媒を沸騰させない条件で重合を行う加圧非沸騰重合、加圧下で溶媒を沸騰させながら重合を行う加圧沸騰重合のいずれも選択できる。
本開示の一実施態様である変性PVAがエチレン単位を含む、即ちエチレン変性されたPVAである場合、その製造方法としては、ビニルエステル系単量体とシリル基含有単量体共存下でエチレンを加圧しながら共重合することが好ましい。その際の重合反応器内のエチレン圧力は特に限定されないが0.01~2.0MPaが好ましく、0.05~1.0MPaがより好ましく、0.1~0.65MPaがさらに好ましい場合もある。重合反応器の出口でのビニルエステル系単量体の重合率は特に限定されないが、5~90%が好ましく、15~85%がより好ましい場合もある。
[けん化工程]
本開示の好ましい一実施態様に係る変性PVAは、ビニルエステル系単量体とシリル基含有単量体を共重合して得られたシリル基変性ビニルエステル系共重合体を、シランカップリング剤存在下でけん化することにより得られる。けん化反応の方法としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒、p-トルエンスルホン酸などの酸性触媒等を用いた、加アルコール分解反応又は加水分解反応が挙げられる。この反応に使用し得る溶媒としては、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトンメチルエチルケトンなどのケトン類:ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、メタノール又はメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒としてけん化することが簡便であり好ましい。
シランカップリング剤は、上記式(1)で表される基を導入できる化学種である。シランカップリング剤は、例えば上記式(4)で表される構造有するシリル基含有変性種(シリル基含有単量体)であってもよく、下記式(5)で表される構造を有するシランカップリング剤であってもよく、またそれらの混合物であってもよい。
Figure 2023089497000009
式(5)中、複数のR3は、式(2)中のR3と同義である。R15は、炭素数1~5のアルキル基を有するアルコキシ基、又は水酸基である。
式(5)中のR3の具体的形態及び好適形態は、式(2)におけるR3の具体的形態及び好適形態と同様である。R15としては、アルコキシ基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基を有するアルコキシ基がより好ましい。
シランカップリング剤は、例えば、トリメチルシラノール、メトキシトリメチルシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、テトラエトキシシラン、プロポキシトリメチルシラン、ジプロポキシジメチルシラン、トリプロポキシメチルシラン、テトラプロポキシシラン、イソプロポキシトリメチルシラン、ジイソプロポキシジメチルシラン、トリイソプロポキシメチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ブトキシトリメチルシラン、ジブトキシジメチルシラン、トリブトキシメチルシラン、テトラブトキシシラン、イソブトキシトリメチルシラン、ジイソブトキシジメチルシラン、トリイソブトキシメチルシラン、テトライソブトキシシラン、ターシャリーブトキシトリメチルシラン、ジターシャリーブトキシジメチルシラン、トリターシャリーブトキシメチルシラン、テトラターシャリーブトキシシラン、フェノキシトリメチルシラン、ジフェノキシジメチルシラン、トリフェノキシメチルシラン、テトラフェノキシシラン、メトキシトリエチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、トリメトキシエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、メトキシトリプロピルシラン、ジメトキシジプロピルシラン、トリメトキシプロピルシラン、エトキシトリプロピルシラン、ジエトキシジプロピルシラン、トリエトキシプロピルシラン、トリメトキシブチルシラン、トリメトキシヘプチルシラン、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシドデシルシラン、トリメトキシテトラデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシベンジルシラン、トリエトキシブチルシラン、トリエトキシヘプチルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリエトキシドデシルシラン、トリエトキシテトラデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリエトキシベンジルシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-ブロモプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-ブロモプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。この中でもメトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、ビニルトリメトキシシランなどが好適に用いられる。
<塗工液>
上述の通り、本開示の塗工液は上記変性PVAを含む。本開示の塗工液は、好ましくは紙基材やフィルム基材用の塗工液であり、剥離紙や離型フィルムを製造する際に使用する塗工液であってもよい。
塗工液における変性PVAの不溶解分の上限は1000ppmが好ましく、500ppmがより好ましく、200ppmがさらに好ましく、100ppmがよりさらに好ましく、70ppmが特に好ましく、50ppmがより特に好ましく、10ppmがさらに特に好ましい場合もある。また、塗工液における変性PVAの不溶解分の下限は0ppmが好ましく、1ppmであってもよい。なお本開示における塗工液における変性PVAの不溶解分とは、塗工液中に溶け残る変性PVA由来成分の重量比率であり、具体的には以下の方法により測定される。
塗工液を目開き63μmの金属製フィルターに通し、さらにフィルターを90℃の温水で洗浄して、塗工液中に未溶解で残留する変性PVAの固体を得、ろ過前の塗工液中に含まれる変性PVAの重量に対する、未溶解の変性PVAの固体の重量の割合を算出し、これを塗工液における変性PVAの不溶解分とする。
塗工液中の変性PVAの濃度の下限は2質量%が好ましく、5質量%がより好ましいこともある。また塗工液中の変性PVAの濃度の上限は30質量%が好ましく、25質量%がより好ましいこともある。塗工液中の変性PVAの濃度が上記範囲であることで、塗布効率がより向上し、高速塗工性により優れる。
本開示の塗工液は変性PVAを含有する水溶液であることが好ましい。この場合、当該水溶液には、少量の有機溶媒が含まれていてもかまわないし、水に不溶な有機粒子や無機粒子が少量含まれていてもかまわない。水溶液中の変性PVAの濃度は1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
本開示の塗工液の製造方法は特に限定されない。例えば、変性PVAの粒子を水に溶解させることによって、塗工液を得ることができる。
上記塗工液には、本開示の効果が損なわれない範囲で、本開示のビニルアルコール系重合体以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、SBRラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリルエステル系エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョンなどの水性分散性樹脂;小麦、コーン、米、馬鈴薯、甘しょ、タピオカ、サゴ椰子などから得られる生澱粉;酸化澱粉、デキストリンなどの生澱粉分解産物;エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉誘導体;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体;グルコース、フルクトース、異性化糖、キシロースなどの単糖類;マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、パラチノース、還元麦芽糖、還元パラチノース、還元乳糖などの二糖類;水あめ、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳糖オリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、カップリングシュガー、シクロデキストリン化合物などのオリゴ糖類;プルラン、ペクチン、寒天、コンニャクマンナン、ポリデキストロース、キサンタンガムなどの多糖類;アルブミン、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アニオン変性PVA、アルギン酸ナトリウム、水溶性ポリエステルなどが挙げられる。上記塗工液におけるこれら成分の含有量は、通常、10質量%以下である。
上記塗工液には、本開示の効果が損なわれない範囲で、顔料が含まれていても良い。顔料としては、一般に塗工紙製造分野で使用される無機顔料(クレー、カオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルクなど)および有機顔料(プラスチックピグメントなど)が挙げられる。上記塗工液におけるこれら顔料成分の含有量は、50質量%以下であることが好ましい。
<塗工物>
本開示の好適な実施態様は、上記塗工液が基材の表面に塗工されてなる塗工物である。基材としては紙基材やフィルム基材が好ましい。塗工物の製造方法は特に限定されず、例えば塗工液を基材に塗工する工程と、塗工した後に基材を乾燥する工程とを備える製造方法であってもよい。
上記紙基材としては、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ等の化学パルプやGP(砕木パルプ)、RGP(リファイナーグランドパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)等の機械パルプ等を抄紙して得られる公知の紙または合成紙を用いることができる。また、上記紙基材としては、上質紙、中質紙、アルカリ性紙、グラシン紙、セミグラシン紙、または段ボール用、建材用、白ボール用、チップボール用等に用いられる板紙、白板紙等も用いることができる。なお、紙基材中には、有機および無機の顔料、並びに紙力増強剤、サイズ剤、歩留まり向上剤等の抄紙補助薬品が含まれてもよい。また、紙基材は各種表面処理が施されたものであってもよい。
上記フィルム基材は熱可塑性樹脂からなるフィルム基材であることが好ましい。熱可塑
性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。
塗工設備としては、2-ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、メタリングサイズプレス、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター等が挙げられる。塗工速度は100~2,000m/分であることが好ましい。また塗工速度は300m/分以上であることがより好ましく、1,800m/分以下であることがより好ましいこともある。塗工速度がこの範囲であることで、生産効率をより高めることができ、また均一に塗工することがより容易になる。塗工量は紙の性状に応じて任意に選択することができるが、紙の片面当たり0.05~10g/m2程度が好適である。
塗工後の乾燥は、例えば熱風、赤外線、加熱シリンダーやこれらを組み合わせた方法により行うことができる。乾燥した塗工物は、調湿およびカレンダー処理することにより、バリア性を更に向上させることができる。調湿条件としては、紙中水分率が5~20質量%となるような条件が望ましい。また、カレンダー処理条件としては、ロール温度が常温~200℃、ロール線圧20~350kg/cmが好ましい。
塗工物の透気度の下限は400秒が好ましく、2,000秒がより好ましく、5,000秒がさらに好ましく、7,000秒がよりさらに好ましく、10,000秒が特に好ましいこともある。塗工物の透気度の上限は特に限定されないが、20,000秒であってもよい。
塗工物における基材の種類は、特に限定されず、剥離紙原紙、バリア紙、耐油紙、包装紙、板紙、ポリエチレン系離型フィルム、ポリプロピレン系離型フィルム、ポリエステル系離型フィルム、などが挙げられる。中でも、上記塗工液が紙基材の表面に塗工されてなる剥離紙原紙が本開示の好適な実施態様である。剥離紙原紙の表面には離型層(剥離層)が形成されてもよい。離型層の形成に際しては、溶剤系のシリコーンや非溶剤系(エマルジョン系、オリゴマー系)のシリコーンなどが好適に用いられる。このとき、溶剤系のシリコーンには溶剤(トルエンなど)が含まれているため、本開示の剥離紙原紙は溶剤に対するバリア性を有することが好ましい。また、非溶剤系のシリコーンを用いる場合には耐水性が要求されることがあるため、本開示の剥離紙原紙は耐水性を有することが好ましい。本開示においては、当該剥離紙原紙と、該剥離紙原紙の表面に形成される離型層とを有する剥離紙も好適な実施態様である。
<成形体>
本開示の一実施態様は、上記変性PVAを含む層を備える成形体である。
成形体としては、特に限定はなく、例えば立体的形状を有する造形物であってもよく、シート状物であってもよい。成形体を構成する材質としては特に限定されず、例えば金属、セラミックス、ガラス、樹脂、コンクリート等が挙げられる。金属としては、例えば、鉄、鋼、アルミニウム、ステンレス、金、銀、銅等であってもよい。また成形体は、上述の基材であってもよく、基材としては紙基材、フィルム基材が好ましい。
成形体における変性PVAを含む層は、上述の塗工液を対象となる成形体に塗布して形成される塗膜であってもよい。
<剥離紙>
本開示の一実施態様は剥離紙であり、該剥離紙は、基材、シリコーン目止め層、及び剥離層を備え、シリコーン目止め層は上記変性PVAを含む。剥離紙は、基材、シリコーン目止め層、及び剥離層がこの順番で積層されていることが好ましい。
剥離層は付加型シリコーン及び白金を含むことが好ましく、付加型シリコーン100重量部に対する白金の配合量が0.001~0.05重量部であることが好ましい。これにより、剥離層における付加型シリコーンの硬化性をより向上させることができる。また、付加型シリコーンの硬化速度を促進させることができるため、シリコーンの硬化工程に要する時間を短縮できる、もしくは、白金の使用量を低減できる等製造コストの低減が期待できる。
剥離紙における基材としては、例えば上述の基材が挙げられ、紙基材、フィルム基材が好適に採用される。なお、本開示においては、基材、シリコーン目止め層及び剥離層を備える剥離紙において、例えば基材がフィルム基材のみからなる場合であっても「剥離紙」と称する場合がある。
本開示は、本発明の効果を奏する限り、本開示の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施態様を含む。
以下、実施例を用いて本開示を更に具体的に説明する。以下において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準を意味する。
[粘度平均重合度]
原料PVA又は変性PVAの粘度平均重合度はJIS K 6726:1994に準じて測定した。
[けん化度]
PVA(原料PVA又は変性PVA)のけん化度(モル%)は、JIS K 6726:1994に記載の方法により求めた。
[変性PVAのシリル基変性量]
変性PVAのシリル基変性量(モル%)は、1H-NMRを用いて求めた。
[変性PVAのシロキサン構造の含有量]
変性PVAのシロキサン構造の含有量(モル%)は、1H-NMRを用いて求めた。
[不溶解分]
変性PVAの不溶解分を次のようにして測定した。20℃に設定した水浴中に、攪拌機及び還流冷却管を装着した500mLのフラスコを準備し、前記フラスコに蒸留水を285g投入して、300rpmで攪拌を開始した。変性PVA粒子15gを秤量し、フラスコ中に該変性PVA粒子を徐々に投入した。変性PVA粒子を全量(15g)投入したのち、30分かけて水浴の温度を90℃まで上昇させることにより変性PVA粒子を溶解させて、変性PVA溶液を得た。水浴の温度が90℃に到達後、さらに60分間300rpmで攪拌しながら溶解を継続した。その後、前記変性PVA溶液を用いて、未溶解で残留する変性PVAの粒子(未溶解粒子)を目開き63μmの金属製フィルターでろ過した。次いで、フィルターを90℃の温水でよく洗浄し、フィルターに付着した変性PVA溶液を取り除き、フィルター上に未溶解粒子のみを残した後、フィルターを120℃の加熱乾燥機で1時間乾燥した。乾燥後のフィルターの重量とろ過に使用する前のフィルターの重量とを比較し、未溶解粒子の重量を算出した。最初に水へ投入した変性PVAの重量(15g)に対する、未溶解粒子の重量の割合を不溶解分(%)とした。
<製造例1>
[変性PVA1の製造]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口および開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル850g、メタノール150g、及びシリル基含有変性種としてビニルトリメトキシシラン1.6gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてビニルトリメトキシシランをメタノールに溶解して濃度10%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後ヒドロキノン0.4gを添加し、冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー(シリル基含有変性種)の総量は2.6gであった。また重合停止時の固形分濃度は24.8%であり、重合率は30%であった。続いて50℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、シリル基変性ビニルエステル系重合体のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したシリル基変性ビニルエステル系重合体のメタノール溶液571.4g(溶液中のシリル基変性ビニルエステル系重合体200.0g)に、シランカップリング剤としてメチルトリメトキシシラン3.17gを添加し良く混合した後に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のシリル基変性ビニルエステル系重合体濃度25%、酢酸ビニル単位に対するシランカップリング剤のモル比1.0モル%、水酸化ナトリウムのモル比3.0モル%)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して変性PVA1を得た。変性PVA1の粘度平均重合度は2,500、けん化度は98.5モル%、シリル基変性量は0.30モル%、シロキサン構造の含有量は0.20モル%であった。
<製造例2~7>
[変性PVA2~7の製造]
重合条件及びけん化条件を表1に記載のとおり変更した以外は、製造例1と同様にして、変性PVA2~7を製造した。
Figure 2023089497000010
[実施例1~6,比較例1]
製造例1~7で得られた変性PVA1~7を用いて以下の方法にて剥離紙原紙を作製し、評価した。
[剥離紙原紙の作製]
変性PVAの6質量%水溶液を調製しそれを塗工液とした。この塗工液を、ワイヤーバーを用いて、透気度100秒のグラシン紙に塗工量が乾燥質量で約2.0g/m2となるように塗工した。塗工後、100℃5分間乾燥させることで塗工紙を得た。得られた塗工紙をスーパーカレンダーにて、70℃、400kg/cm2で2回処理することで剥離紙原紙を得た。この剥離紙原紙には上記塗工液に由来する塗工層、すなわちシリコーン目止め層が形成されている。
[剥離紙原紙の透気度評価]
剥離紙原紙の透気度(秒)を、JIS P 8117(2009年)に準じて王研式透気度試験機を用いて測定し、この透気度を剥離紙原紙におけるシリコーンの目止め性の指標とした。透気度が高いほどシリコーンの目止め性に優れる傾向にある。結果を表2に示す。
[シリコーン硬化性の評価]
付加型シリコーンとして東レダウコーニング社製のLTC1056Lを、白金触媒としてSRX212を用い、付加型シリコーンと白金との比が100/0.007になるように混合した溶液を、得られた剥離紙原紙のシリコーン目止め層上に塗工固形分量2.0g/m2となるようにブレードコーターで塗工した。こうすることによって剥離紙原紙上にシリコーン層を形成させた。そして、110℃で熱処理してシリコーンが硬化するまでの時間を計測した。ここで、シリコーンが硬化するまでの時間とは、所定時間間隔でシリコーン層を指で強く10回擦り、シリコーン層が全く剥がれなくなるまでに要した時間(秒)のことをいう。結果を表2に示す。
[剥離層の密着性評価]
付加型シリコーンとして東レダウコーニング社製のLTC1056Lを、白金触媒としてSRX212を用い、付加型シリコーンと白金との比が100/0.009になるように混合した溶液を、得られた剥離紙原紙上のシリコーン目止め層上に塗工固形分量2.0g/m2となるようにブレードコーターで塗工し、110℃で90秒熱処理し、剥離紙原紙上に剥離層(シリコーン層)が形成された剥離紙を得た。得られた剥離紙を下記の指標で評価した。結果を表2に示す。
+:40℃、90%RHの条件下で、1週間放置した後、剥離層を指で強く擦った。その結果、剥離層は剥がれなかった。同じ条件下で、さらに1週間放置した後、剥離層を指で強く擦った。その結果、剥離層は剥がれなかった。
A:40℃、90%RHの条件下で、1週間放置した後、剥離層を指で強く擦った。その結果、剥離層は剥がれなかった。しかしながら、同じ条件下で、さらに1週間放置した後に剥離層を指で強く擦ったら剥離層は剥がれた。
B:40℃、90%RHの条件下で、1週間放置した後、剥離層を指で強く擦った。その結果、剥離層は剥がれた。
C:40℃、90%RHの条件下で、1週間放置した後、剥離層を指で軽く擦った。その結果、剥離層は剥がれた。
Figure 2023089497000011
実施例の塗工液は、シリコーン硬化性及び密着性に優れる一方、比較例1は変性PVAの不溶解分が多く塗工液を調製することができなかった。
本開示の変性PVAを用いた塗工液は、例えば剥離紙原紙及び剥離紙に有用である。

Claims (13)

  1. 下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む塗工液。
    Figure 2023089497000012
    上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
  2. 上記変性ビニルアルコール系重合体におけるR2が下記式(2)で表される基である、請求項1に記載の塗工液。
    Figure 2023089497000013
    上記式(2)中、複数のR3は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素数2~5のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化フェニル基、炭素数1~8のアミノアルキル基、炭素数1~8のメルカプトアルキル基、水酸基、又は-OQで表される基である。Qは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。
  3. 上記変性ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対する上記シロキサン構造の含有量が、0.001モル%以上である、請求項1又は2に記載の塗工液。
  4. 上記変性ビニルアルコール系重合体におけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記シロキサン構造の含有量が、50モル%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗工液。
  5. 上記変性ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が500以上5000以下であり、けん化度が70モル%以上99.9モル%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の塗工液。
  6. 塗工液における変性ビニルアルコール系重合体の不溶解分が1000ppm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の塗工液。
  7. シリル基含有単量体に由来し且つシランカップリング剤により変性された単量体単位を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む塗工液。
  8. 上記変性ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対する上記シランカップリング剤の変性量が、0.001モル%以上である、請求項7に記載の塗工液。
  9. 上記変性ビニルアルコール系重合体におけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記シランカップリング剤の変性量が、50モル%以上である、請求項7又は8に記載の塗工液。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の塗工液を基材に塗工してなる塗工物。
  11. 下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む層を備える成形体。
    Figure 2023089497000014
    上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
  12. 基材、シリコーン目止め層、及び剥離層を備える剥離紙であって、前記シリコーン目止め層が下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む、剥離紙。
    Figure 2023089497000015
    上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
  13. 上記剥離層が付加型シリコーン及び白金を含み、付加型シリコーン100重量部に対する白金の配合量が0.001~0.05重量部である、請求項12に記載の剥離紙。
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