JP2023085896A - 吸収性物品 - Google Patents

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Kanako Tsuru
幸恵 北畑
Yukie Kitahata
智嗣 松本
Tomotsugu Matsumoto
邦彦 石▲崎▼
Kunihiko Ishizaki
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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、吸液2回目の液戻り量を低減した吸収性物品を提供することにある。【解決手段】本発明の吸収性物品は、透過性のトップシート、特定の物性を有するポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂と親水性繊維材料とを含む吸収体、及び液不透過性のバックシートをこの順に備える吸収性物品である。【選択図】なし

Description

本発明は、吸収性物品に関する。より具体的に、本発明は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂を含む吸収体を備える吸収性物品に関する。
吸収性物品としては、体液を吸収する紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料が知られている。近年、前記衛生材料には、特に体液吸収の観点から、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料の構成材(吸収体)として吸水性樹脂が利用されている。
このような吸水性樹脂としては、例えば、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物等が知られているが、吸水性能の観点から、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を単量体の主成分として用いたポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、工業的に最も多く生産されている。
ところで、吸収性物品において、使用時に液だまり、または液戻りが生じる場合がある。これらは吸収性物品の着用時の不快感の原因となるため、そのような液だまり、または液戻り生じにくい吸収性物品が望まれている。
吸収性物品における、上記の液だまり、または液戻りの原因の一つとして、吸水性樹脂のゲルブロッキングによる吸水性能の低下が知られている。特許文献1~3には吸水後の弾性力(ゲル弾性)に優れる吸水性樹脂を吸収体に使用することで、ゲルブロッキングを抑制し、吸収性物品の吸水性能を改善する技術が開示されている。
WO2020/218160 WO2020/218161 WO2020/218162
しかしながら、上記の従来の吸水性樹脂を用いた吸収性物品(吸収体)は、ゲルブッキングが抑制されているにも関わらず、局所的に荷重(例えば、使用者の体重)がかかった場合、吸液2回目以降に液戻りが生じる問題があり、この点からさらなる改善の余地があった。
本発明の一側面は、吸液2回目の液戻り量が低減された吸収性物品を提供することを目的とする。
本発明者らは、吸収性樹脂に異なる条件で荷重をかけた際の、ゲルの保形性の変動を示すゲル移動指数が小さい吸水性樹脂を含む吸収体を備える吸収性物品において、該吸収性物品に局所的に荷重がかかった場合に、吸液2回目の液戻り量を抑えられることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の一実施形態は以下である。
<1>液透過性のトップシート、吸水性樹脂と親水性繊維材料とを含む吸収体、及び液不透過性のバックシートをこの順に備える吸収性物品であって、前記吸収体は、吸水性樹脂の層と、親水性繊維材料の層、とを有し、前記吸水性樹脂の層は、前記液透過性のトップシート側に配置され、前記親水性繊維材料の層は、前記液不透過性のバックシート側に配置されており、前記親水性繊維材料の層の目付量は、100g/m以下であり、
前記吸水性樹脂は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系単量体に由来する構造単位を含む架橋重合体、を含む粒子状の吸水性樹脂であって、下記の手順により求められるゲル移動指数が0.20以下であり、かつ吸水速度(Vortex法)が50秒以下である:
(1)胴径55mm、高さ70mmの容量100mLビーカーに、25℃の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液38g及び吸水性樹脂2.00gを投入し膨潤ゲルを形成させる。
(2)円板部と、該円板部の中央に一端が接続された棒状部を備える圧縮治具(円板部は表裏に平坦面を有し、かつ直径が2.5cm、厚さ1cmの円盤状であり、棒状部の長さは5.5cmである)を、(1)の膨潤ゲルが収容されたビーカーの中央部に位置するように配置し、該圧縮治具の円板部の下面と該膨潤ゲルの表面とを接触させた後、該圧縮治具を、該円板部の下面が該膨潤ゲルの表面から、鉛直方向に0.05mm上昇させた位置となるような、測定開始位置に配置する。
(3)該測定開始位置に配置した圧縮治具を、該膨潤ゲルに10cm/minの速度で、鉛直方向に10.0mm押し込む。
(4)(3)にて、該圧縮治具を、該測定開始位置から鉛直方向に8.0mmの位置に押し込んだときに、該圧縮治具に付加される荷重(N)を観測し、ゲル保形力Aとする。
(5)該圧縮治具を押し込む速度を1mm/minに変更すること以外は、(1)~(4)と同様の操作を行い、該圧縮治具に付加される荷重(N)を観測し、ゲル保形力Bとする。
(6)下記式(1)に従い、ゲル移動指数を算出する
ゲル移動指数=(ゲル保形力A/ゲル保形力B)-1 (1)。
<2>前記吸水性樹脂は、球状粒子の凝集体状粒子である、<1>に記載の吸収性物品。
<3>前記吸水性樹脂は、水不溶性無機微粒子を含む、<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>前記吸水性樹脂は、ゲル保形力Aが10.0N以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<5>前記吸水性樹脂は、AAPが15g/g以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<6>前記吸収体の含む、前記吸水性樹脂の質量が前記吸水性樹脂と前記親水性繊維材料との合計質量の50質量%以上100質量%未満である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
本発明に係る吸水性樹脂によれば、局所的に荷重がかかった場合に、吸液2回目の液戻り量が低減された吸収性物品を提供することができる。
吸水性樹脂のゲル移動指数の測定に使用した圧縮治具の概略図である。 吸水性樹脂の参考評価用吸収シートの作製過程での平面図である。 吸水性樹脂の参考評価用吸収シートの断面図である。
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、液透過性のトップシート、吸水性樹脂と親水性繊維材料とを含む吸収体、及び液不透過性のバックシートをこの順に備える吸収性物品であって、前記吸収体は、吸水性樹脂の層と、親水性繊維材料の層、とを有し、前記吸水性樹脂の層は、前記液透過性のトップシート側に配置され、前記親水性繊維材料の層は、前記液不透過性のバックシート側に配置されており、前記親水性繊維材料の層の目付量は、100g/m以下であり、前記吸水性樹脂は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系単量体に由来する構造単位を含む架橋重合体、を含む粒子状の吸水性樹脂であって、ゲル移動指数が0.20以下であり、かつ吸水速度(Vortex法)が50秒以下である。
本発明者らは、以下の新規の知見に基づき、局所的に荷重がかかった場合に、吸液2回目の液戻り量が抑えられる吸収性物品である、本発明の一実施形態に係る吸収性物品を発明するに至った。
・ゲル移動指数が小さい吸水性樹脂は、吸液し、膨潤した状態であっても、吸収体の中での膨潤ゲルの移動(ゲルの偏り)を抑制できる(耐変形性に優れるとも言える)。そのため、該吸水性樹脂を含む吸収体は、2回目の吸液後でも、十分な吸水性能が維持できる。
・さらに、このようなゲル移動指数が小さい吸水性樹脂を、親水性繊維材料の層の上、すなわち、前記液透過性のトップシート側(肌側)に配置することにより、吸水性樹脂の層の耐変形性の向上効果がより顕著に発揮され、膨潤ゲルの移動をさらに低減できる。
また、従来の吸収性物品の分野においては、親水性繊維材料の層の目付量が大きいほど、吸収性物品の吸収力、局所荷重に対するクッション性が上がり、吸液2回目の戻り量も低減すると考えられていた。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、かえって親水性繊維材料の層の目付量を低くすることにより、吸収性物品の吸液2回目の戻り量をより低減できることも新たに見出した。本発明は、これらの本発明者らが見出した多数の新規の知見に基づく発明である。
〔1.用語の定義〕
[1-1.吸水性樹脂]
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、以下の物性を満たすものをいう。即ち、「水膨潤性」として、ERT441.2-02で規定されるCRCが5g/g以上、かつ、「水不溶性」として、ERT470.2-02で規定されるExtが50重量%以下の物性を満たす高分子ゲル化剤を指す。
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜、設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、吸水性樹脂の全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記物性(CRC、Ext)を満足する範囲内で、添加剤等を含んだ吸水性樹脂組成物であってもよい。
更に、本発明における吸水性樹脂は、最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体や乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もあり、上記吸水性樹脂組成物と合わせて、これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。なお、吸水性樹脂の形状として、シート状、繊維状、フィルム状、粒子状、ゲル状等が挙げられるが、本発明では粒子状の吸水性樹脂が好ましい。
[1-2.「EDANA」及び「ERT」]
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定/公知文献)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
[1-3.その他]
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。
本明細書において、特記しない限り、「ppm」は、「質量ppm」を意味する。
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂」は、繰り返し単位として(メタ)アクリル酸(塩)を主成分とする吸水性樹脂を意味し、具体的には重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)のうち、(メタ)アクリル酸(塩)を好ましくは50~100モル%、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは90~100モル%、特に好ましくは実質100モル%を含む吸水性樹脂をいう。
本明細書においては、体積の単位「リットル」を「l」又は「L」と表記する場合がある。
本明細書においては、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。
〔2.吸収性物品〕
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、液透過性のトップシート、吸水性樹脂と親水性繊維材料とを含む吸収体、及び液不透過性のバックシートをこの順に備える。以下において、「本発明の一実施形態に係る吸収性物品」を、「本吸収性物品」と称する場合がある。
本吸収性物品は、上記構成を有するために、局所的に荷重がかかった場合において、吸液2回目の液戻り量が抑えられ、装着時の不快感を低減できる。
<2-1.液透過性のトップシート>
本吸収性物品の備える液透過性のトップシート(本発明の一実施形態に係る液透過性のトップシート)は、本吸収性物品の吸収対象の液体が浸入する側の最外部に配置されている。本吸収性物品の装着時において、液透過性のトップシートは、本吸収体の内側(すなわち、使用者側)に配置されるものであり、液不透過性のバックシートとは反対側の最外部に配置されるものであるとも言える。
本発明の一実施形態に係る液透過性のトップシートとしては、適度な親水性を有するシート状部材である限り特に限定されず、例えば、樹脂又は繊維等から形成されたシート状の部材であってよい。液透過性のトップシートの材料は、吸収性物品の液体浸透性、柔軟性及び強度の観点から、適宜選択することができる。より具体的には、パルプ繊維、コットンリンター架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート及びビニロン等の親水性繊維;サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布及びポイントボンド不織布等の不織布ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;並びにレーヨンのような合成樹脂、又はこれら合成樹脂を含む合成繊維;綿、絹、麻、等の天然繊維であってもよい。これらの材料は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、安価で柔軟性が高いという利点があることから、不織布が好ましい。さらに、不織布としては、複合不織布も使用できる。複合不織布としては、例えば、スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンドのような不織布(SMMS不織布)が挙げられる。
液透過性のトップシートは、吸収性物品に、良好な液体浸透性、柔軟性、強度及びクッション性を付与できる観点、吸収性物品の液体浸透速度を速める観点、及びトップシート自体が過度に液を保持し、荷重がかかった際に肌側に戻らないようにする観点から目付量及び厚みが選択される。
液透過性のトップシートの目付量は、好ましくは5~70g/mであり、より好ましくは10~50g/mであり、さらに好ましくは10~30g/mである。また、液透過性のトップシートの厚さは、50~500μmであること好ましく、100~300μmであることがより好ましく、150~250μmであることがさらに好ましい。
液透過性のトップシートは、吸収性物品の液体吸収性能の観点から、適度な親水性を有していることが好ましい。その観点から、液透過性のトップシートは、紙パルプ技術協会による紙パルプ試験方法No.68(2000)の測定方法に従って測定される親水度が5~200であることが好ましく、10~150であることがより好ましい。紙パルプ試験方法No.68の詳細については、例えばWO2011/086843号を参照することができる。
上述のような適度な親水性を有する液透過性のトップシートを提供する方法としては、例えば、液透過性のトップシートをレーヨン繊維のように適度な親水度を示す繊維によって形成する方法、あるいは、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維を、親水化処理して形成する方法が挙げられる。このような親水化処理としては、例えば、親水化剤を使用する方法が挙げられる。親水化剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、及びポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂からなるステイン・リリース剤等を使用することができる。
<2-2.吸収体>
本吸収性物品の備える吸収体(本発明の一実施形態に係る吸収体であり、以下、「本吸収体」と称する場合もある)は、吸水性樹脂と親水性繊維材料とを含む。まず、本吸収体の含む吸水性樹脂(本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂であり、以下、「本吸水性樹脂」と称する場合もある)について、詳説する。
(吸水性樹脂の形状)
本発明において、吸水性樹脂の形状は、好ましくは粒子状である。粒子状の形状としては、より具体的には、不定形破砕状、球状、フットボール状、凝集体状等が挙げられる。中でも粒子形状が球状であることにより、又は、特に凝集体状であることにより、吸収速度が速く吸水性樹脂が液を取り込み液戻り量が抑えられることから、一次粒子(球状粒子)の凝集体状粒子であることが特に好ましい。このような一次粒子の凝集体状粒子の吸水性樹脂は、例えば、逆相懸濁重合により得られる球状粒子の吸水性樹脂を、整粒(例えば、押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置を用いて整粒)することにより得ることができる。なお、本明細書において、「球状」とは真球だけでなく、アスペクト比が1.0~1.2である略球状のものも含む。
(吸水性樹脂の含有する添加剤)
本発明の一実施形態において、吸水性樹脂は、種々の機能を発現するための添加剤を含むこともできる。該添加剤として、具体的には、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、水不溶性無機微粒子、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられる。これらの中でも、水不溶性無機微粒子を含むことが好ましい。これら添加剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、上記水不溶性無機微粒子としては、国際特許公開第2011/040530号の「〔5〕水不溶性無機微粒子」に開示された化合物が本発明に適用される。これら水不溶性無機微粒子のうち、特に親水性微粒子(欧州特許第0629411号に記載されている親水性度(水/メタノール=70/30の混合液中にコロイド状に懸濁する微粒子の割合で表される)が高い(例えば70%以上の)もの、および/または、特許第6837139号に記載されている、水に対する接触角が低い(例えば10°以下の)もの)、例えば、シリカ(二酸化珪素)やハイドロタルサイトを含むことで、膨潤した吸水性樹脂(膨潤ゲル)同士に適度な引っかかりが生じ、局所的に荷重がかかっても吸収体内で膨潤ゲルが動きにくく(すなわち、膨潤ゲルが偏りにくく)、優れた吸収性能を示すため、換言すると、吸液2回目の液戻り量が低い吸水性樹脂となるので好ましい。
本発明の吸水性樹脂における水不溶性無機微粒子の含有量は、吸水性樹脂(例えば吸水性樹脂粒子)の液なじみを良くする観点から、吸水性樹脂100質量部に対して、0.01質量部~5質量部であり、より好ましくは0.05質量部~3質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部~1質量部であり、特に好ましくは0.2質量部~0.5質量部である。
ここで、水不溶性無機微粒子は、通常、吸水性樹脂の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、水不溶性無機微粒子の平均粒子径は、0.01μm~50μm、0.1μm~30μm、又は、1μm~20μmであってよい。水不溶性無機微粒子の平均粒子径は、粒子の特性に応じて、細孔電気抵抗法又はレーザー回折・散乱法によって測定できる。
(CRC)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下での吸水倍率を意味する。
本発明の吸水性樹脂のCRCは、好ましくは30g/g以上であり、より好ましくは32g/g以上である。上限については特に限定されず、より高いCRCが好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは50g/g以下であり、より好ましくは48g/g以下、46g/g以下、44g/g以下、42g/g以下、40g/g以下、38g/g以下、36g/g以下である。
吸水性樹脂のCRCが30g/g以上であれば、液体の吸収量が十分であるため、該吸水性樹脂を含む吸収体を備える吸収性物品は、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適である。また、上記CRCが50g/g以下であれば、尿や血液等の体液等を吸収する速度の低下が防止され、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適する。なお、吸水性樹脂のCRCの値は、内部架橋剤や表面架橋剤等の種類や量を変更することで制御することができる。
(Ext)
「Ext」は、Extractables(水可溶分)の略称であり、吸水性樹脂から抽出される可溶分量を意味する。Extは、EDANA法(ERT470.2-02)に準拠して測定される。
本吸水性樹脂のExtは、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。下限については特に制限されず、例えば、0質量%以上であるが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上である。
吸水性樹脂のExtが30質量%以下であれば、尿や血液等の体液等を吸収する速度の低下が防止されるため、当該吸水性樹脂を含む吸収体を備える吸収性物品は、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適する。また、膨潤ゲルが滑りにくくなり、かつ、異なる荷重を加えた際の膨潤ゲルの保形性の変動が小さくなるため好ましい。なお、吸水性樹脂のExtの値は、重合開始剤、内部架橋剤、又は表面架橋剤等の種類や量を変更することで制御することができる他、重合工程で連鎖移動剤を使用することでも制御できる。
(AAP)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下における吸水倍率を意味する。本明細書において、AAP(加圧下吸収倍率)は、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更する以外は、EDANA法(ERT442.2-02)に準拠して測定される。具体的には、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を用い、吸水性樹脂0.9gを1時間、4.83kPaの加圧下で膨潤させた後、AAP(加圧下吸収倍率)(g/g)を測定する。
本発明の吸水性樹脂のAAPは、衛生材料に用いた際の優れた吸水特性の観点から、好ましくは15g/g以上、より好ましくは16g/g以上、さらに好ましくは17g/g以上である。また、上記吸水性樹脂のAAPの上限は、特に制限されないが、好ましくは40g/g以下である。
(含水率)
「含水率」は、試料量を1.0g、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更する以外は、EDANA法(ERT430.2-02)に準拠して測定される。
本発明の吸水性樹脂の含水率は特に制限されないが、好ましくは1質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~15質量%、さらに好ましくは2質量%~13質量%、さらに好ましくは5質量%~13質量%、さらに好ましくは8質量%~13質量%、特に好ましくは10質量%~13質量%である。吸水性樹脂の含水率が1質量%~20質量%であれば、尿や血液等の体液等を吸収する速度の低下が防止され、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適する。
(質量平均粒子径(D50))
吸水性樹脂の「質量平均粒子径(D50)」は、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された「(3)Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」に準拠して測定される。
本吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200μm~700μm、より好ましくは250μm~600μm、更に好ましくは250μm~500μm、特に好ましくは300μm~450μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。吸水性樹脂の質量平均粒子径が200μm以上であれば粉塵が少なく取り扱い性がよい。また、吸水性樹脂の質量平均粒子径が700μm以下であれば、尿や血液等の体液等を吸収する速度の低下が防止されるため、当該吸水性樹脂を含む吸収体を備える吸収性物品は、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適する。
(数平均粒子径)
吸水性樹脂が一次粒子の凝集した凝集体状の粒子形状である場合合、吸水性樹脂の数平均粒子径とは、該凝集体を構成する一次粒子の数平均粒子径であり、電子顕微鏡を用いて測定する値である。吸水性樹脂の一次粒子の数平均粒子径は、好ましくは5μm~1000μmであり、より好ましくは5μm~800μmであり、さらに好ましくは8μm~500μm、より一層好ましくは10μm~300μmであり、さらに一層好ましくは10μm~200μm、特に好ましくは30μm~100μmである。
(嵩密度)
吸水性樹脂の「嵩密度」は、EDANA法(ERT460.2-02)に準拠して測定される。
本吸水性樹脂の嵩密度は、好ましくは0.68g/cm~1.00g/cm、より好ましくは0.69g/cm~0.95g/cm、最も好ましくは0.68g/cm~0.90g/cmである。吸水性樹脂の嵩密度が0.68~1.00g/cmであれば、尿や血液等の体液等を吸収する速度の低下が防止され、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適する。また、膨潤ゲル同士に適度な引っかかりが生じ、異なる荷重を加えた際のゲルの保形性の変動が小さいことで、吸収コア内でゲルが動きにくく、優れた吸収性能を示すので好ましい。
(表面張力)
本明細書における吸水性樹脂の「表面張力」とは、吸水性樹脂を0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に分散させた際の、水溶液の表面張力であり、WO2015/129917に記載の方法で測定される。
本吸水性樹脂の表面張力は、74mN/m以下であってよく、55mN/m以上であってよく、好ましくは60mN/m以上、より好ましくは65mN/m以上、さらに好ましくは67mN/m以上、特に好ましくは70mN/m以上である。吸水性樹脂の表面張力が上記の範囲では、膨潤ゲルの滑りが抑制され、吸収体内でゲルが動きにくく、優れた吸収性能を示すので好ましい。
(吸水速度)
本明細書において、吸水性樹脂の「吸水速度」は日本工業規格JIS K 7224(1996)のVortex法に準拠して測定される。すなわち、吸水速度(Vortex法)は、スターラーチップによって600rpmで攪拌された0.9質量%塩化ナトリウム水溶液50g中に吸水性樹脂2.0gを添加し、該スターラーチップが試験液に覆われるまでの時間のことをいう。
「吸水速度」に優れる吸水性樹脂は、吸収性物品として使用した場合において、すばやく液を取り込み、液戻り量が抑えられるため好ましい。「吸水速度」は、50秒以下、好ましくは45秒以下、さらに好ましくは40秒以下である。下限は特に制限されないが、10秒以上、15秒以上、20秒以上であって良い。
(ゲル保形力)
本明細書において、吸水性樹脂の「ゲル保形力」とは、吸水したゲル状の吸水性樹脂(膨潤ゲル)に所定の荷重を加えたときの負荷(ゲル保形性)を表わす新規な物性値である。「ゲル保形力」は後述する実施例に記載の方法により測定される。
本明細書においては、円板部と、該円板部の中央に一端が接続された棒状部とを備える圧縮治具(円板部は表裏に平坦面を有し、かつ直径が2.5cm、厚さ1cmの円盤状であり、棒状部の長さは5.5cmである)を、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液により20倍に膨潤したゲル(20倍膨潤ゲル)に対して、10cm/minの速度で10.0mm押し込み、該圧縮治具を、8.0mmの位置に押し込んだときに、該圧縮治具に負荷される荷重(N)をゲル保形力Aとし、押し込み速度を1mm/minに変えて同様に測定したときに、該圧縮治具に負荷される荷重(N)を、ゲル保形力Bとする。
ゲル保形力Aは、6.0N以上が好ましく、8.0N以上がより好ましく、10.0N以上がさらに好ましく、10.4N以上がよりさらに好ましく、10.6N以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、15.0N以下、14.0N以下、13.0N以下であって良い。ゲル保形力Bは、5.0N以上が好ましく、7.0N以上がより好ましく、9.0N以上がさらに好ましく、9.1Nがよりさらに好ましく、9.2Nが特に好ましい。上限は特に制限されないが、14.0N以下、13.0N以下、12.0N以下であって良い。
「ゲル保形力」が高い吸水性樹脂(例えば、ゲル保形力Aが、10.0N以上である吸水性樹脂)は、吸収性物品とした場合、特に薄型の吸収性物品とした場合において、吸水した後に荷重(体重)がかかっても、ゲルが変形ないし移動しにくいため、吸収体内でゲルの偏りが生じにくく、吸収性能を損なわないため好ましい。
(ゲル移動指数)
本発明者らは、上記の本願の課題について研究を進めるうちに、吸収性物品において、局所的に荷重がかかった場合、吸収体内部でゲルの偏りが生じ、該偏りに起因して吸収体の吸水性能にも偏りが生じることが、吸液2回目以降に液戻りが生じることの原因となっているという知見を初めて得た。
本発明者らは係る知見に基づきさらに鋭意検討を進めた結果、膨潤ゲルに異なる荷重を加えた際のゲルの保形性の変動を表わす新規な物性値である「ゲル移動指数」によって、吸水性樹脂の局所的に荷重(体重)がかかった場合の2回目吸液後の液戻り量を評価できることを新たに見出した。
本明細書において、「ゲル移動指数」とは、下記式(1)で規定される値である;
ゲル移動指数=(ゲル保形力A/ゲル保形力B)-1 (1)
前記「ゲル移動指数」は、吸水性樹脂の膨潤時の移動しやすさを表す新規の物性値である。従来、膨潤ゲルに圧縮治具を押し込むことで、膨潤ゲルの物性を測定する方法が知られているが、該従来の方法においては、圧縮治具の押し込み速度は1点だけであり、このような方法では、膨潤ゲルの強度を測定することしかできなかった。一方で、「ゲル移動指数」の測定においては、異なる2点の圧縮治具の押し込み速度を測定している。押し込み速度が変われば、膨潤ゲルの再配列の状態が変わるため、異なる押し込み速度のデータを比較することにより、従来の方法では定量化できなかった吸水性樹脂の膨潤時(膨潤ゲル)の移動のしやすさを、「ゲル移動指数」として定量化できる。なお、ゲル移動指数の具体的な測定方法は、実施例に記載の通りである。
「ゲル移動指数」が小さい吸水性樹脂は、吸収性物品とした場合、特に薄型の吸収性物品とした場合において、吸水した後に荷重(体重)がかかってもゲル層の変形が抑えられ、吸収コア内でゲルの偏りが生じにくく、吸収性能を損なわないため好ましい。本発明の吸水性樹脂のゲル移動指数は、0.20以下、より好ましくは0.18以下、さらに好ましくは0.16以下である。下限は特に制限されないが、負の値を示しても良く、0.00以上であっても良い。
なお、吸水性樹脂の「ゲル移動指数」は、例えば、吸水性樹脂の原料、添加剤、重合方法、分級、および/または形状等を調整することにより制御することができる。
(吸水性樹脂の液戻り量)
吸水性樹脂の液戻り量は、2回目吸液後の液戻り量がより低減された吸収性物品を提供する観点から、1.0g以下が好ましく、0.8g以下がより好ましく、0.7g以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、吸水性樹脂の液戻り量は、評価用吸収シートを用いて測定される値である。吸水性樹脂の液戻り量は、評価用吸収シートの液戻り量であるとも言える。吸水性樹脂の液戻り量(評価用吸収シートの液戻り量)は、実施例に記載の方法により測定される値である。
<吸水性樹脂の製造方法>
本発明の吸水性樹脂の製造方法は、所望の物性を有する吸水性樹脂を得ることができる限り特に限定されず、水溶液重合、逆相懸濁重合、気相液滴重合、または、その他の重合方法の何れを用いてもよいが、吸水性樹脂の物性を制御しやすい点から、逆相懸濁重合が好ましい。以下、逆相懸濁重合を一例として説明する。
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、疎水性有機溶媒に単量体を含む液滴が分散又は懸濁した状態で、前記単量体を重合して含水ゲル重合体を得る重合工程と、前記含水ゲル重合体を、乾燥(例えば、攪拌型乾燥機を用いて乾燥)して、粒子状の乾燥重合体を得る乾燥工程と、を含む。本明細書において、「含水ゲル重合体」を、単に「含水ゲル」と称する場合がある。
本発明の吸水性樹脂の製造方法における重合方法としては、疎水性有機溶媒からなる液相に単量体を含む液滴が分散又は懸濁した状態で前記単量体を重合して得る、逆相懸濁重合により含水ゲル重合体を得られれば良く、その重合方法としては、バッチ式でも連続式でも良い。バッチ式製造方法とは、反応装置中で疎水性有機溶媒中に単量体水溶液を添加又は滴下して混合することにより、単量体水溶液を分散又は懸濁させたのち、重合を行い、含水ゲル重合体を得る製造方法である。一方、連続式製造方法とは、単量体水溶液を連続的に反応装置中の疎水性有機溶媒に送液し、分散又は懸濁させたのち重合させ、重合反応により形成される含水ゲル重合体と疎水性有機溶媒とを連続的に反応装置から排出する方法である。本発明の好ましい実施形態は、連続式の逆相懸濁重合(連続重合)であり、さらに好ましくは、単量体水溶液を連続的に疎水性有機溶媒中に分散させ重合を行う液相液滴連続重合である。
このような連続式の製造プロセスの場合、各工程及び各工程間におけるそれぞれの操作を連続的に実施でき、長時間の運転により大量生産が可能となる点で好ましい。また、吸水性樹脂の物性の点からも連続式の逆相懸濁重合は好ましい形態である。本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法においては、重合工程で得られた含水ゲル重合体と疎水性有機溶媒とを分離する分離工程を設けてもよい。連続式の製造プロセスにおいては、分離工程において含水ゲル重合体から分離された疎水性有機溶媒を回収し、重合工程の疎水性有機溶媒として再利用することが好ましい。このような循環型の製造プロセスとすることにより、有機溶媒の使用量を削減できるため、製造コストや廃液処理の点で好ましい。
なお、連続重合は、分散装置において連続的に単量体水溶液が疎水性有機溶媒中に液滴として懸濁又は分散し、当該分散/懸濁液が反応装置へと連続的に供給される形態であるため、分散と重合とが1つの装置で行われる形態(回分操作、バッチ式)とは明確に区別される。また、連続的に操作を行う場合、その運転時間としては、1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましく、さらに好ましくは8時間以上、さらには24時間以上が好ましい。また、通常1年以下である。
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、任意の単量体水溶液調製工程;任意の分散工程;重合工程;任意の逆相懸濁重合ゲル(含水ゲル)の分離工程(分離工程);任意のゲル整粒工程;乾燥工程を含む。また、乾燥工程の後に、任意に、冷却工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、含水(再湿潤)工程、その他の添加剤添加工程、整粒工程、微粉除去工程、造粒工程及び微粉再利用工程などを含むことができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等をさらに含んでもよい。
特に、本発明の吸水性樹脂の製造方法は、分離工程、ゲル整粒工程、乾燥工程(好ましくは熱風乾燥)、および、表面架橋工程(好ましくは粉体表面処理)を含むことが好ましい。上記構成によれば、重合後の疎水性有機溶媒中での共沸脱水工程、および、分散系での表面架橋工程を含む一般的な逆相懸濁重合と比して、得られる吸水性樹脂のゲル保形力が高められるという利点を有する。
以下、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法の含み得る各工程について説明する。
[単量体水溶液調製工程]
単量体水溶液は、吸水性樹脂の原料となる(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を含む水溶液であり、逆相懸濁重合を行うため、疎水性有機溶媒に分散又は懸濁させる溶液である。
単量体水溶液の溶媒としては水、若しくは、水及び水溶性有機溶媒(例えば、アルコール等)の混合物が好適に用いられ、水であることがより好ましい。単量体水溶液の溶媒が水と水溶性有機溶媒の混合物である場合、水溶性有機溶剤(例えば、アルコール等)は30質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
単量体水溶液は、(メタ)アクリル酸に加え、(メタ)アクリル酸以外の水溶性エチレン性不飽和単量体(その他の水溶性エチレン性不飽和単量体)を含んでもよい。その他の水溶性エチレン性不飽和単量体の例としては、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、N-ビニルアセトアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和単量体;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;N-ビニルピロリドン等のラクタム基含有不飽和単量体等が挙げられる。
なお、上記(メタ)アクリル酸系単量体、および、その他の水溶性エチレン性不飽和単量体(単量体成分とも称する)の安定性を考慮して、必要に応じて単量体水溶液に重合禁止剤を添加してもよい。
単量体成分のうち、上記(メタ)アクリル酸系単量体、および、カルボキシル基等の酸基を有するその他の水溶性エチレン性不飽和単量体(以下、酸基を有する単量体成分を、酸基含有不飽和単量体と称する場合がある)は、当該単量体の有する酸基が中和された中和塩として用いることができる。この場合、上記酸基含有不飽和単量体の中和塩としては一価のカチオンとの塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、アルカリ金属塩であることがさらに好ましく、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種であることがよりさらに好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、単量体成分は、好ましくは酸基含有不飽和単量体及び/又はその塩であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、(無水)マレイン酸(塩)、イタコン酸(塩)、および、ケイ皮酸(塩)から選択される少なくとも1種以上であり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)であり、特に好ましくはアクリル酸(塩)である。
単量体として酸基含有不飽和単量体を用いる場合、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、その酸基含有不飽和単量体の中和塩と併用することが好ましい。吸水性能の観点から、酸基含有不飽和単量体とその中和塩の合計モル数に対する中和塩のモル数(以下、「中和率」と称する)は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは40モル%~95モル%、さらに好ましくは50モル%~90モル%、さらにより好ましくは55モル%~85モル%、特に好ましくは60モル%~80モル%である。
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法では、上記単量体水溶液の調製において、上記例示した単量体のいずれかを単独で使用してもよく、任意の2種以上の単量体を適宜混合して使用してもよい。また、本発明の目的が達成される限り、さらに他の水溶性エチレン性不飽和単量体以外の単量体を混合することもできる。
上記単量体水溶液の調製において、2種以上の単量体を併用する場合、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、単量体成分は、主成分として、(メタ)アクリル酸(塩)を含むことが好ましい。主成分として、(メタ)アクリル酸(塩)を含むとは、重合に用いられる単量体の全量に対する(メタ)アクリル酸(塩)の割合が、例えば50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることを意図する。
上記単量体水溶液の調製においては、必要に応じて、内部架橋剤を用いることができる。内部架橋剤としては、1分子内に2個以上の重合性不飽和基や2個以上の反応性基を有する従来公知の内部架橋剤が挙げられる。内部架橋剤としては、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの内部架橋剤は1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法において、内部架橋剤の使用量は、所望する吸水性樹脂の物性により適宜決定されればよいが、例えば、単量体水溶液の含む単量体に対して0.0001モル%~5モル%、より好ましくは0.001モル%~3モル%、さらにより好ましくは0.005モル%~1.5モル%である。
また、以下に例示する物質(以下、「その他の物質」と称する)を単量体水溶液に添加することもできる。
その他の物質の具体例としては、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、次亜リン酸塩類等の連鎖移動剤;炭酸塩、重炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤;エチレンジアミン4酢酸の金属塩、ジエチレントリアミン5酢酸の金属塩等のキレート剤;ポリアクリル酸(塩)及びこれらの架橋体、澱粉、セルロース、澱粉-セルロース誘導体、ポリビニルアルコール等が挙げられる。その他の物質は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
その他の物質の使用量は、特に限定されないが、その他の物質の全濃度としては、好ましくは、単量体水溶液の含む単量体の全量に対して10質量%以下であり、より好ましくは1質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。ただし、ポリアクリル酸(塩)及びこれらの架橋体、澱粉、セルロース、澱粉-セルロース誘導体、ポリビニルアルコールの全濃度(合計量)としては、単量体水溶液の含む単量体の全量に対して30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらにより好ましくは10質量%以下である。
また、本発明の一実施形態において、単量体水溶液中の溶存酸素を、昇温又は不活性ガスとの置換により低減させてもよい。
(重合開始剤)
上記単量体水溶液の調製において、重合開始剤を用いてもよい。なお、単量体水溶液の調製に重合開始剤を使用する場合は、単量体水溶液のゲル化や粘度増大が起こる恐れがあるため、重合開始剤の添加は(i)単量体水溶液を疎水性有機溶媒に分散/懸濁させる直前に行う、(ii)単量体水溶液を冷却し常温より低温(20℃以下、好ましくは0℃付近)で重合開始剤と混合する、(iii)単量体水溶液と重合開始剤をラインミキシングしながら分散工程に供する、等の方法で行うことが好ましい。重合開始剤としては、熱分解型重合開始剤が好ましく用いられる。該熱分解型重合開始剤とは、熱によって分解しラジカルを発生する化合物を意図する。熱分解型重合開始剤の10時間半減期温度は、貯蔵安定性や吸水性樹脂の生産効率の観点から、好ましくは0℃~120℃、より好ましくは30℃~100℃、さらに好ましくは50℃~80℃である。
取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤が好ましく、水溶性のラジカル重合開始剤がより好ましい。
水溶性のラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸力リウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテー卜、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩等の水溶性アゾ系化合物;などが挙げられる。重合開始剤としては、これらの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、好ましくは過硫酸塩又は水溶性アゾ系化合物、より好ましくは過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、又は、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ニ塩酸塩さらに好ましくは過硫酸ナトリウムが使用される。
重合開始剤の使用量は、単量体及び重合開始剤の種類等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、生産効率の観点から、単量体水溶液の含む単量体の全量に対して、好ましくは0.001g/モル以上、より好ましくは0.005g/モル以上、さらに好ましくは0.01g/モル以上である。また、吸水性樹脂の吸水性能向上の観点から、好ましくは2g/モル以下、より好ましくは1g/モル以下である。
また、必要に応じて、光分解型重合開始剤等、他の重合開始剤と、熱分解型重合開始剤とを併用することもできる。該光分解型重合開始剤として、具体的には、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体等が挙げられる。
また、上記熱分解型重合開始剤と還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤とすることもできる。上記レドックス系重合開始剤では、熱分解型重合開始剤が酸化剤として機能する。用いられる還元剤としては、特に限定されないが、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸塩;第一鉄塩等の還元性金属塩;L-アスコルビン酸(塩)、アミン類等が挙げられる。
(単量体水溶液における単量体の濃度)
本発明において、単量体水溶液中の単量体の濃度は、選択された単量体及び疎水性有機溶媒の種類等に応じて選択されるが、生産効率上、下限は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらにより好ましくは30質量%以上である。また、上限は、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下であり、さらにより好ましくは70質量%以下である。
本発明の目的が阻害されない限り、単量体水溶液に、内部架橋剤、界面活性剤、密度調整剤、増粘剤、キレート剤等の添加物を配合することも可能である。なお、添加物の種類及び添加量は、用いられる単量体及び疎水性有機溶媒の組合せにより、適宜選択されうる。
[分散工程]
分散工程は、疎水性有機溶媒に単量体水溶液(単量体を含む液滴)を分散又は懸濁する工程である。なお、以下、単に「分散」と記載した場合には、懸濁も含む概念とする。分散工程は、より具体的には、上記単量体水溶液を、疎水性有機溶媒に添加して混合、攪拌することにより分散させる。例えば、攪拌翼(プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、平板翼等)を備えた攪拌装置を用いてもよい。このような攪拌翼を有する攪拌装置を用いる場合、分散液滴径は、攪拌翼の種類、翼径、回転数当により調節することができ、バッチ式逆相懸濁重合を行う場合に特に好適に使用できる。また国際公開第2009/025235号、国際公開第2013/018571号等に記載された方法で分散液を得ることができる。連続式逆相懸濁重合を行う場合には、分散工程は、単量体水溶液及び疎水性有機溶媒を、分散装置に別々に連続的に供給し、疎水性有機溶媒中に分散する単量体を含む液滴を作製することが好ましい。
連続式逆相懸濁重合を行う場合に、分散工程において用いられる分散装置としては、スプレーノズルや高速回転せん断型撹拌機(ロータリーミキサー型、ターボミキサー型、ディスク型、二重円筒型等)、ニードル等の円筒ノズル、プレートに多数の孔を直接設けたオリフィスプレート、スプレーノズル、回転ホイール等の遠心アトマイザーなどが挙げられるが特に制限はない。
(疎水性有機溶媒)
好ましい疎水性有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒が挙げられる。具体例には、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロルベンゼン、ブロムベンゼン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素が例示される。これらの中でも、入手容易性及び品質安定性の観点から、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンが好ましい。疎水性有機溶媒としては、これらのうち1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を混合した混合溶媒として用いることも可能である。
本発明の一実施形態においては、本発明の目的が阻害されない限り、必要に応じて、疎水性有機溶媒に、界面活性剤や高分子添加剤等の分散助剤を添加してもよい。分散助剤の種類は、用いられる疎水性有機溶媒及び単量体の組合せにより、適宜選択されるが、使用できる分散助剤としては、以下の界面活性剤や高分子添加剤が例示される。
上記界面活性剤として、具体的には、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、界面活性剤としては、重合性を有する重合性界面活性剤を使用することもできる。重合性界面活性剤として、具体的には下記の構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2023085896000001
なお、式中、R及びRは、互いに独立して、水素、メチル又はエチルであり、nは、3~20の整数を意味する。
上記の界面活性剤の中では、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類が好ましく、中でも、HLB値が、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは3~6の範囲にあるショ糖脂肪酸エステルが好ましい。
上記高分子添加剤としては、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。中でも、単量体水溶液の分散安定性の観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び酸化型エチレン・プロピレン共重合体が好ましい。これらのうち、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一実施形態において、分散助剤として、上記高分子添加剤を用いることが好ましく、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体を用いることがより好ましい。また、上記高分子添加剤と上記界面活性剤とを併用してもよく、界面活性剤を用いずに高分子添加剤を単独で用いてもよい。
上記分散助剤の使用量は、重合形態、単量体水溶液及び疎水性有機溶媒の種類等に応じて適宜設定される。具体的には、疎水性有機溶媒中の分散助剤の濃度として、好ましくは0.0001~2質量%であり、より好ましくは0.0005~1質量%である。
[重合工程]
重合工程は、上記分散工程において得られた単量体を含む液滴を重合して、含水ゲル重合体(以下、単に含水ゲルとも称する)を得る工程である。
(反応装置)
重合工程で用いられる反応装置は、上記分散工程で用いられた分散装置をそのまま用いてもよいし、別の装置であってもよい。バッチ式逆相懸濁重合の場合、分散工程で用いた装置をそのまま反応装置として用いることができ、作業性の面で好適である。反応装置が分散装置と別の装置である場合、分散工程で得られた単量体の分散液が反応装置に供給される。
また、重合反応が行われる反応装置の形状は特に限定されず、公知の反応装置を用いることができる。上述したように、分散工程で好適に使用できる攪拌装置が重合反応においても好適に使用できる。連続式製造方法の場合、好ましくは、この反応装置内に形成された連続相である疎水性有機溶媒中を、上記単量体(水溶液)が液滴状の分散相として移動しながら重合反応しうる形状である。このような反応装置として、例えば、管状の反応管を、縦型、横型又は螺旋型に配置した反応装置が挙げられる。この態様では、単量体(水溶液)が、反応部内を移動する疎水性有機溶媒中に供給されるため、単量体水溶液からなる液滴が滞留することなく、疎水性有機溶媒と共に移動する。これにより、重合率の異なる単量体反応物同士の接触が抑制される。
また、上記反応装置には、必要に応じて、外部から反応装置内部の連続相を加熱又は冷却できるように、温度調整手段が備えられていてもよい。
(重合温度)
重合工程における反応温度である重合温度としては、使用する重合開始剤の種類や量によって適宜設定すればよいが、好ましくは20℃~100℃、より好ましくは40℃~90℃である。重合温度が100℃以下であれば、急激な重合反応を抑制することができる。なお、本明細書において、重合温度とは、分散媒である疎水性有機溶媒の温度(以下、「Td」と称する)を意図する。
重合工程においては、上記単量体(水溶液)が液滴状で疎水性有機溶媒に分散していることから、単量体水溶液の温度は、疎水性有機溶媒からの熱移動によって速やかに上昇する。液滴に含まれる重合開始剤が熱分解型重合開始剤である場合には、上記昇温に伴って熱分解型重合開始剤が分解してラジカルが発生する。そして、発生したラジカルによって重合反応が開始し、重合反応の進行に伴って含水ゲル重合体が形成される。
連続式製造方法の場合、形成された含水ゲルは、移動する連続相(疎水性有機溶媒)によって反応装置の内部を移動し、連続相をなす疎水性有機溶媒とともに反応装置から排出される。
上記単量体水溶液が熱分解型重合開始剤を含む場合、上記Tdは、重合率の観点から、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。Tdの上限は特に限定されないが、安全性の観点から、連続相をなす疎水性有機溶媒の沸点を超えない範囲内で、適宜選択される。
(多段逆相懸濁重合)
本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法において、適度な凝集粒径を得る観点から、多段重合を行ってもよい。具体的には、一段目の重合工程の終了後に、単量体水溶液を再度添加し重合反応を行う等により、多段重合を行うことができる。
(無機微粒子)
本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法において、重合中、又は、重合終了後の含水ゲル重合体に対して、適度な凝集粒径を得る観点から無機微粒子を添加してもよい。無機微粒子は、粉末状無機凝集剤ともいえる。
本発明で使用できる無機微粒子としては、例えば二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、珪藻土、ベントナイト、ゼオライト、その他の金属酸化物などがあげられる。特に二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化チタンが好ましい。無機微粒子の添加量は、含水ゲル重合体100質量部に対して、例えば、0.001~1質量部、好ましくは0.001~0.5質量部の割合で使用すると好結果が得られる。無機微粒子の添加量が上記の範囲にあることで、無機微粒子の添加効果が効率的に発言し、また吸水性能に与える影響も少ないので好ましい。
[分離工程]
分離工程は、上記重合工程において得られた含水ゲル重合体と、疎水性有機溶媒とを分離する工程である。分離工程で用いる装置の種類及び構造については特に限定されないが、例えば、ろ過、沈降、遠心分離、圧搾等の公知の装置を利用することができる。また、重合工程で用いた攪拌羽を有する攪拌装置を用いて常圧又は減圧下で加熱し、蒸留することにより疎水性有機溶媒と分離してもよい。バッチ式逆相懸濁重合においては常圧又は減圧下での蒸留が好適に行われる。
[ゲル整粒工程]
本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法は、ゲル整粒工程を含んでもよい。ゲル整粒工程では、上記分離工程で疎水性有機溶媒から分離された含水ゲル重合体を、押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置を用いて整粒する。これにより、整粒された含水ゲル重合体(以後、ゲル整粒後の含水ゲル重合体を整粒ゲルと表す)が得られる。ゲル整粒工程を有することで、吸水性樹脂の膨潤ゲルの保形力を制御しやすくなる。
本発明の一実施形態において、ゲル整粒工程に供される含水ゲル重合体は、球形ゲルの単粒子(一次粒子)形状又は球形ゲルの集合体(一次粒子の凝集した二次粒子)形状である。当該含水ゲル重合体の平均粒径の下限は特に制限されないが、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上、一層好ましくは0.1mm以上である。上限に関しても特に制限されないが、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下である。また、単粒子形状である場合はその粒子径を、集合体形状である場合は当該集合体を構成する各球形ゲル(一次粒子)の粒子径を、一次粒子径と称する。本発明において、含水ゲル重合体を構成する一次粒子の平均一次粒子径は特に制限されないが、乾燥工程における微粉の発生を抑制できるという観点から、好ましくは1~2000μmであり、より好ましくは1~1000μmであり、さらに好ましくは5~800μmであり、一層好ましくは8~500μm、さらに一層好ましくは10~300μmであり、特に好ましくは10~200μmである。
なお、上記押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置の前にカッターを有する装置を設置して、含水ゲル重合体に含まれる大きい凝集物を解砕してもよい。
(含水ゲル温度)
ゲル整粒装置に供する含水ゲル重合体の温度の下限は特に制限されないが、造粒効率及び含水ゲルへのダメージの抑制の観点から好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。ゲル整粒装置投入時の含水ゲル重合体の温度の上限は特に制限されないが、例えば、100℃以下である。
(ゲル整粒装置)
本明細書において、「ゲル整粒」とは、含水ゲル重合体(粉体の湿塊)を多孔板の小孔から円柱状に押し出すことにより、湿粉状の原料からほぼ均一な形状及びサイズを有する粒状のゲル(整粒ゲル)を作製する操作である。つまり、多孔板を用いることにより、分離工程で過度に凝集した粗大凝集物の形状になっている含水ゲルは解砕され、小粒径の単粒子状の含水ゲルは適度に凝集される。したがって、本工程によって、比較的粒子径の均一な造粒形状の含水ゲル(整粒ゲル)を得ることができる。なお、整粒ゲルは単粒子状の含水ゲルを含んでいてもよい。
ゲル整粒工程において使用される「押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置」としては、押出作用部と、多孔板(ダイ又はスクリーン)とを有し、押出作用部が通常は多孔板に向かって内容物を押出し供給する押出し部材を有し、多孔板から材料を押し出すことにより一定サイズの粒を作製可能な装置であれば特に限定されず、例えば、多孔板を有する押出機である。また、これらの装置を直列に並べて使用してもよい。
さらに、この多孔板(ダイ又はスクリーン)の孔の形は特に限定されず、真円状、楕円状、六角形等の多角形、三角形状等、使用に適した形状に任意に選択することが可能であるが、整粒強度の観点から真円状、楕円状が好ましい。孔径についても特に制限されないが、1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらにより好ましい。多孔板の孔径が1.5mm以下であることで、得られる整粒ゲルのサイズが必要以上に増大することが防止され、下流工程における撹拌型乾燥機を用いた乾燥の際に発生する微粉量を低減させることができる。また、多孔板の孔径は、好ましくは0.3~1.5mmであり、より好ましくは0.3~0.8mmである。多孔板の孔径が0.3mm以上であれば、押出し操作を実施する際に効率よく押出すことができる。
なお、上記多孔板の孔径については以下のように定義する。まず、孔が真円でない場合は孔の短径と長径の相乗平均値を孔径として採用する。また、多孔板の孔の各孔径が異なる場合は、全ての孔の孔径を算出し、その相加平均値を多孔板の孔の孔径として採用する。さらに多孔板の押出し作用部側からその反対側までの間で多孔板の孔径が変化する(多孔板の厚み方向において孔径が変化する)場合は、その中で孔径が最少となる値を採用する。
ゲル整粒工程において、さらにゲル整粒工程に供される含水ゲル重合体に対して添加剤を添加してもよい。本工程で添加できる添加剤としては、重合開始剤、酸化剤、還元剤、キレート剤、増粘剤、界面活性剤、架橋剤、酸、塩基、発泡剤、有機又は無機の微粒子、多価金属塩等が挙げられるが、中でも凝集度を制御できる添加剤として、例えば、澱粉、セルロース、澱粉-セルロース誘導体、ポリビニルアルコール等の増粘剤、界面活性剤、吸水性樹脂の微粉、架橋剤、多価金属塩等が好ましい。
[乾燥工程]
乾燥工程は、含水ゲルを乾燥する工程である。本発明において、乾燥工程における乾燥の手法としては、特に限定されず、従来公知の方法(例えば、疎水性分散溶媒中の共沸脱水)を用いてもよいが、本発明の吸水性樹脂を逆相懸濁重合で得る観点から、より好適な手法としては、攪拌乾燥、または、静置乾燥を採用できる。中でも、上記ゲル整粒工程で制御したゲルの粒子径を維持するため、攪拌乾燥が好ましい。
本乾燥工程で得られる粒子からなる乾燥重合体を、そのまま吸水性樹脂として各用途に供することもできる。また、本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法において、乾燥工程で得られる乾燥重合体を後述する表面架橋工程に供することも可能である。この場合、後述する表面架橋工程に供される乾燥重合体を、便宜上「吸水性樹脂粉末」とも称する。
(添加剤)
本発明の効果が阻害されない限り、乾燥工程に供される含水ゲルに添加剤を添加してもよい。添加は、回転容器による撹拌(回転)及び/又は加熱手段による加熱中に添加してもよいし、乾燥工程前(回転容器のよる撹拌(回転)及び加熱手段による加熱前)であってもよい。さらには、乾燥工程以前の任意の工程で添加してもよい。添加剤によって乾燥時の含水ゲル同士の過度の付着が低減でき、吸水速度に優れた吸水性樹脂を得ることができる。
含水ゲルに添加される添加剤の例としては、例えば、乾燥助剤が挙げられる。
具体的には、工業的な効率の観点から、特に、直径1mm以下の粒子状含水ゲルを扱う時に乾燥助剤を添加することが好ましい。特に本発明の乾燥工程以前に乾燥助剤を添加することにより、吸水速度に優れた吸水性樹脂が得られる。すなわち本発明の好適な一実施形態は、含水ゲル重合体に乾燥助剤を添加する工程を有する。
(乾燥助剤)
乾燥助剤は、乾燥工程における攪拌乾燥時に流動性を保つことを目的として添加されるものである。乾燥助剤としては、具体的には、界面活性剤や高分子滑材が挙げられる。乾燥助剤として、高分子滑剤と界面活性剤とを併用してもよい。本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法において、含水ゲル同士の付着を低減して均一に乾燥させ、含水ゲルの粒子強度に偏りを生じず、かつ、優れた保形性を得る観点から、乾燥助剤を使用することが好ましい。
乾燥助剤の添加量は、乾燥助剤の含水率や、乾燥助剤に含まれる各成分(例えば、ゲル流動化剤等)の種類及び量に応じて適宜設定される。乾燥工程における、乾燥助剤の合計添加量は、含水ゲルの固形分に対して、好ましくは0.001質量%~0.5質量%、より好ましくは0.01質量%~0.3質量%、更に好ましくは0.02質量%~0.2質量%である。
また、得られた含水ゲルを回転型乾燥機を用いて乾燥する場合、含水ゲルが融着しにくく、解砕等による粒径の調整が容易になることから、乾燥助剤の使用量を減らすことができる。本発明の好適な一実施形態は、乾燥工程において、含水ゲル重合体が、該含水ゲル重合体の固形分に対して0.08質量%未満の乾燥助剤を含む。
含水ゲル重合体への乾燥助剤の添加は、乾燥工程以前の工程で行うことが好ましく、(i)分離工程で疎水性有機溶媒から分離した含水ゲルに添加する、(ii)乾燥工程に供する前の整粒ゲルに添加する、(iii)単量体水溶液調製工程で単量体水溶液に添加する、(iv)分散工程で疎水性有機溶媒に添加する等が挙げられる。中でも、乾燥工程の直前の工程での添加が好ましく、より具体定には、乾燥工程の前工程(例えば、ゲル整粒工程)の後、乾燥工程の前に行うことがより好ましい。さらには、乾燥工程の前工程(例えば、ゲル整粒工程)において乾燥助剤を添加後、さらに、乾燥工程の前工程(例えば、ゲル整粒工程)の後、乾燥工程前に乾燥助剤の添加(計2回の乾燥助剤の添加)を行うことも好ましい形態である。また、乾燥工程前の乾燥助剤の添加形態は、例えば、乾燥機に含水ゲル重合体及び乾燥助剤を投入する形態;乾燥機の投入前に含水状ゲル重合体に乾燥助剤を添加する形態などが挙げられる。また、乾燥助剤は、分散工程で分散助剤として用いる界面活性剤、高分子添加剤と重複してもよい。
乾燥助剤に用いられる界面活性剤として、具体的には、(1)ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステルなどのノニオン性界面活性剤、(2)カプリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジアルキルアミノ酢酸ベタイン;ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルヒドロキシスルホベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、(3)ラウリルアミノジ酢酸モノナトリウム、ラウリルアミノジ酢酸カリウム、ミリスチルアミノジ酢酸ナトリウム等のアルキルアミノジ酢酸モノアルカリ金属などのアニオン性界面活性剤、(4)長鎖アルキルジメチルアミノエチル4級塩などのカチオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
乾燥助剤に用いられる高分子滑剤としては、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。これらの分子量(重量平均分子量)は、好ましくは200~200万、より好ましくは400~100万の範囲で適宜選択される。これらのうち、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
(乾燥重合体の粒度分布)
上記乾燥工程で得られた乾燥重合体の粒度分布としては、粒子径850μm以上の割合(目開き850μmの篩を通過しなかった粒子の割合)が好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。本実施形態の方法によれば、撹拌型乾燥機を用いた乾燥と組み合わせることにより、粗大粒子の形成が有意に抑制されるために、上記好ましい範囲とすることが可能となる。また、乾燥重合体の粒子径1400μm以上の割合(目開き1400μmの篩を通過しなかった粒子の割合)は好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
[表面架橋工程]
上記乾燥工程(及びその後の任意の工程)を経て得られる吸水性樹脂粉末は、表面架橋剤によって表面架橋されることが好ましい。この表面架橋は、吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に架橋密度の高い部分を設ける処理である。表面架橋処理を行うことで、吸水性樹脂の各種吸水特性を向上させることができる。特に、吸水性樹脂(粉末)の架橋密度を適宜調整することで、優れた加圧下吸収倍率を有する吸水性樹脂を得ることができる。なお、本発明においては、疎水性有機溶媒に分散させた状態での表面架橋、または、乾燥状態の粉体への表面架橋等の、従来公知の表面架橋技術を適宜適用できるが、得られる吸水性樹脂の加圧下吸収倍率向上の観点から、ゲル分離工程と乾燥工程を経た吸水性樹脂を表面架橋工程することが好ましい。なお、本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法における、表面架橋工程で用いられる表面架橋剤は、単量体水溶液調製工程で使用される内部架橋剤と区別するため、公知技術では「後架橋剤」としても示されるものである。
本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法において、本発明において表面架橋工程は、上記の乾燥工程後であってもよいし、乾燥工程中に行ってもよい。公知の表面架橋工程では、一般的に、含水ゲル架橋重合体又はその乾燥物の架橋重合体に表面架橋剤を混合し、その混合物を加熱して架橋反応を行うが、本発明においては、これらの工程を上記の乾燥工程後に別途設けてもよいし、乾燥工程において表面架橋剤を添加し表面架橋反応と乾燥を同時に行ってもよい。また、バッチ式の逆相懸濁重合法で吸水性樹脂の製造を行う場合は、重合反応後の分離工程においては蒸留を行うことにより溶媒と含水ゲル重合体を分離することができるが、当該分離工程の途中においても表面架橋剤を添加することにより表面架橋した吸水性樹脂粒子を得ることができる。
[その他の工程]
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、上述した各工程以外に、必要に応じて、冷却工程、粉砕工程、含水(再湿潤)工程、その他の添加剤添加工程、分級工程、整粒工程、及び微粉再利用工程を含むことができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等をさらに含んでもよい。
(冷却工程)
本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法において、任意に実施される冷却工程では、乾燥工程において得られた粒子状の乾燥重合体を、公知の冷却手段を用いて冷却することにより、所望の温度まで冷却された粒子状の乾燥重合体を得ることができる。
(粉砕工程)
本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法は、上記乾燥工程(及びその後の任意の冷却工程)で得られた粒子状の乾燥重合体を粉砕する粉砕工程を経ることが好ましい。粉砕工程を経ることによって、粒子径又は粒度分布が制御された吸水性樹脂粉末を得ることができる。
上記粉砕工程では、粉砕手段として、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が適宜選択されて用いられる。
(再湿潤工程)
本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法において、任意に実施される再湿潤工程は、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、多価金属塩、カチオン性ポリマー、キレート剤、無機還元剤、α-ヒドロキシカルボン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加する工程である。
再湿潤工程において上記の添加剤は、水溶液又は分散液(スラリー)の状態で吸水性樹脂に添加することが好ましい。なお、当該添加剤は上述した表面架橋剤溶液と同時に添加・混合してもよい。
再湿潤工程として、具体的には、国際特許公開第2015/053372号「(2-7)再湿潤工程」記載の方法が本発明にも適用される。
(その他の添加剤添加工程)
本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法においては、上述した添加剤以外の添加剤(その他の添加剤)を、吸水性樹脂に種々の機能を付加させるため添加することもできる。該添加剤として、具体的には、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、水不溶性無機微粒子、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられる。なお、上記水不溶性無機微粒子は、国際特許公開第2011/040530号の「〔5〕水不溶性無機微粒子」に開示された化合物が本発明に適用される。これら水不溶性無機微粒子を添加することで、吸水性樹脂粒子同士の摩擦力が向上し、吸水コア内でのゲルの移動が抑えられ吸収コアが変形しにくくなるため好ましく、特にシリカ(二酸化珪素)を添加することが好ましい。ここで、水不溶性無機微粒子は、重合工程等で添加する無機微粒子(粉末状無機凝集剤)を兼ねても良いし、別途添加しても良い。
(吸水性樹脂粉末整粒工程)
「吸水性樹脂粉末整粒工程」とは、上記表面架橋工程を経て緩く凝集した吸水性樹脂粉末をほぐして粒子径を整える工程を意味する。なお、この整粒工程は、表面架橋工程以降の微粉除去工程及び分級工程を含むものとする。本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂の粒子径を整え、安定した吸水物性を得る観点から、吸水性樹脂粉末整粒工程を含むことが好ましい。吸水性樹脂粉末整粒工程の具体的態様としては、特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂粉末を、篩(例えば、JIS標準篩)に通過させる方法等が挙げられる。
(微粉再利用工程)
「微粉再利用工程」とは、上記各工程で篩分級等により発生した微粉をそのまま、又は微粉を造粒した後にいずれかの工程に供給する工程を意味する。本発明の一実施形態に係る吸収性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂の生産ロスを低減する観点から、微粉再利用工程を含むことが好ましい。
(親水性繊維材料)
本吸収体は、親水性繊維材料を含む。かかる親水性繊維材料としては、パルプ繊維、コットンリンター架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート及びビニロン等の親水性繊維を使用することができる。なお、親水性繊維材料としては、上記の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。ただし、本明細書において、布状のもの(織布または不織布)は、親水性繊維とはみなさない。
より2回目の液戻り量を低減でき、使用感のよい吸収性物品を提供できることから、親水性繊維材料(親水性繊維材料の層)の目付量は、100g/m以下であることが好ましく、90g/m以下であることが好ましく、80g/m以下であることが好ましい。また、目付量の下限は1g/m以上であることが好ましく、10g/m以上であることが好ましい。なお、親水性繊維材料(親水性繊維材料の層)の目付量は実施例に記載の方法で測定される。
本吸収体100質量%中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度)としては、好ましくは30質量%以上、100質量%未満、より好ましくは40質量%以上、100質量%未満、さらに好ましくは50質量%以上、100質量%未満、さらにより好ましくは60質量%以上、100質量%未満、特に好ましくは70質量%以上、100質量%未満、最も好ましくは75質量%~95質量%である。
また、本吸収体における、吸水性樹脂と親水性繊維材料との合計100質量%中の吸水性樹脂の含有量は、好ましくは50質量%以上100質量%未満、より好ましくは60質量%以上100質量%未満、より好ましくは70質量%以上100質量%未満、より好ましくは80質量%以上100質量%未満、さらに好ましくは90質量%以上100質量%未満、特に好ましくは90質量%~95質量%である。
吸水性樹脂の含有量を上記範囲とすることで、(i)当該吸収体を備える吸収性物品について、清浄感のある白色状態に保つことができる。さらに、(ii)当該吸収体は尿や血液等の体液等の拡散性に優れるため、効率的な液分配がなされることにより、吸収量の向上が見込める。
<添加剤>
本吸収体は、上記吸水性樹脂および親水性繊維材料に加えて、任意で添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、吸収性物品における吸収体に一般に含まれ得る添加剤を使用することができ、例えば、無機粉末(例えば非晶質シリカ)、消臭剤、抗菌剤、香料等を挙げることができる。また、本吸収体に含まれる吸水性樹脂が無機粒子を含む場合、本吸収体は吸水性樹脂の含む無機粒子とは別に、無機粉末を含んでいてもよい。本吸収体の含み得る無機粉末と、本吸収体に含まれる吸水性樹脂が含む無機粒子とは、同じものを使用してもよく、それぞれ異なるものを使用してもよい。前記無機粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト、カオリンおよびクレイ等が挙げられる。
(吸収体の製造方法)
本吸収体の製造方法は特に限定されないが、例えば、層状に敷き詰めた親水性繊維材料状に、吸水性樹脂を積層することにより、本吸収体を製造することができる。このようにして製造された吸収体は、吸水性樹脂の層と、親水性繊維材料の層、とを有する吸収体であるとも言える。
本吸収体が、吸水性樹脂の層と、親水性繊維材料の層、とを有する吸収体である場合、該吸収体の吸液性能を向上させ、より2回目以降の吸液量に優れる吸収性物品を提供できることから、前記吸水性樹脂の層は、前記液透過性のトップシート側に配置されることが好ましく、この場合、前記親水性繊維材料の層は、前記液不透過性のバックシート側に配置されることが好ましい。
また、本吸収体は、コアラップにより被覆されていてもよい。コアラップにより本吸収体を被覆することで、本吸収体の形状を保形することができる。コアラップとしては、ティッシュ、不織布等を好適に使用できる。また、本吸収体は、2枚のコアラップにより、吸水性樹脂の層側の表面と、親水性繊維材料の層側の表面と、をそれぞれ被覆する(挟み込む)ことにより保形されていてもよく、折りたたまれた一枚のコアラップにより両面を被覆することで保形されてもよく、袋状のコアラップ内に収納することで保形されてもよい。
<液不透過性のバックシート>
液不透過性のバックシートは、本吸収性物品において液透過性のトップシートとは反対
側の最外部に配置されている。本吸収性物品の装着時において、液不透過性のバックシートは、本吸収体の下側に配置される。液不透過性のバックシートは、液透過性のトップシートを介して本吸収体に吸収された液体が、液不透過性のバックシート側から、本吸収性物品外部へ漏れ出すことを防止する。
本吸収性物品の備える液不透過性のバックシートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなるシート、耐水性のメルトブローン不織布を高強度のスパンボンド不織布で挟んだスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布等の不織布からなるシート、これらの合成樹脂と不織布(例えば、スパンボンド不織布、スパンレース不織布)との複合材料からなるシートなどが挙げられる。液不透過性のバックシートとしては、装着時のムレが低減されて、着用者に与える不快感を軽減することができることから、通気性を有していることが好ましく、より具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とする合成樹脂からなるシートを用いることが好ましい。
吸収性物品の着用感を損なわず、かつ、柔軟性を確保する観点から、液不透過性のバックシートの目付量は、10g/m~50g/mであることが好ましい。
(吸収性物品の2回目の液戻り量(Rewet))
本吸収性物品の2回目の液戻り量は、0.6g未満であることが好ましく、0.5g以下であることがより好ましい。2回目の液戻り量が0.6g未満である吸収性物品は、装着時の不快感を低減できるため好ましい。なお、本吸収性物品の2回目の液戻り量は、実施例に記載の方法により測定することができる。

〔3.吸収性物品の製造方法〕
本吸収性物品の製造方法は特に限定されないが、例えば、液透過性のトップシート、吸収体、液不透過性のバックシートをこの順で積層することで、本吸収体を製造することができる。本吸収体は、液透過性のトップシート、吸収体、液不透過性のバックシートがこの順で積層してなる積層体であるとも言える。また、必要に応じて、得られた積層体を加圧してもよく、外縁部を接着剤等で接着してもよい。
〔4.吸収性物品の用途〕
本吸収性物品の用途は、特に限定されないが、吸液2回目の液戻り量が抑えられ、装着時の不快感を低減できることから、紙オムツ(幼児用、成人用)、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生用品として好適に使用することができる。特に、局所的に荷重(体重)がかかった場合にその箇所のゲルが移動して偏りが生じ、複数回に渡る液の吸収の効率低下が問題となっていた薄型の高濃度紙オムツとして好適に使用することができる。また、本吸収性物品は、その他の吸収性物品としても使用することができる。その他の吸収性物品をとしては、例えば、土壌保水剤、育苗用シート、結露防止シート、ドリップ吸収材、鮮度保持材、冷却用バンダナ、保冷剤、医療用廃液固化剤、残土固化材、水損防止廃液ゲル化剤、吸水土のう、災害用簡易トイレ、湿布材、電気・電子材料通信ケーブル用止水材、ガスケットパッキング、ペットシート、創傷保護用ドレッシング材、結露防止用建築資材等の樹脂用添加剤などが挙げられる。
以下の実施例・比較例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定解釈されるものではなく、各実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれるものとする。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)、相対湿度40~55%で行われる。なお、実施例及び比較例で使用する電気機器(吸水性樹脂の物性測定も含む)は、特に注釈のない限り、200V又は100Vで60Hzの電源を使用した。
(数平均粒子径)
吸水性樹脂又は吸水性樹脂粉末の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を撮影した。写真の中から凝集体状粒子の正面にある50個の一次粒子を無作為に選択し、各粒子の長径と短径とを測定して平均化した値を一次粒子径とした。各粒子の一次粒子径の平均値を算出し、その平均値を該吸水性樹脂の数平均粒子径とした。
(含水率)
吸水性樹脂の含水率は、EDANA法(ERT430.2-02)に準拠して測定した。なお、測定に際し、試料の質量を1.0gに、乾燥温度を180℃に、乾燥時間を3時間にそれぞれ変更した。具体的には、底面の直径が50mmのアルミカップに含水ゲル又は吸水性樹脂を1.0g投入した後、試料(含水ゲル又は吸水性樹脂)及びアルミカップの総質量W1(g)を正確に秤量した。次に、前記試料をアルミカップに投入した状態で、雰囲気温度180℃に設定されたオーブン内に静置した。3時間経過後、該試料をアルミカップとともに前記オーブンから取り出し、乾燥後の試料及びアルミカップの総質量W2(g)を正確に秤量した。本測定に供された試料の質量をM(1.0g)としたときに、下記式(1)にしたがって、試料の含水率α(質量%)を求めた。
含水率α(質量%)={(W1-W2)/M}×100 式(1)
(質量平均粒子径(D50))
吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50)は、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された「(3)Mass-Average Particle Diameter(D50) and Logarithmic Standard Deviation(σζ) of Particle Diameter Distribution」に記載の方法に従って測定した。
(CRC)
吸水性樹脂のCRC(遠心分離機保持容量)は、EDANA法(ERT441.2-02)に準拠して測定した。具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で3分間、水切りした後の吸水倍率(g/g)を求めた。
(AAP)
吸水性樹脂のAAP(加圧下吸収倍率)は、EDANA法(ERT442.2-02)に準拠して測定した。なお、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更した。
(Ext)
吸水性樹脂のExt(水可溶分)は、EDANA法(ERT470.2-02)に準拠して測定した。
(嵩密度)
吸水性樹脂の嵩密度は、EDANA法(ERT460.2-02)に準拠して測定した。
(表面張力)
吸水性樹脂の表面張力は、WO2015/129917に記載の方法で測定した。
(吸水速度(Vortex法))
吸水性樹脂の吸水速度は、日本工業規格JIS K 7224(1996)に準拠して測定した。
(ゲル保形力)
吸水性樹脂のゲル保形力を以下の方法により測定した。
(1)膨潤ゲルの作製
平坦な測定台上に設置された、室温(25℃)の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液38gが入った胴径55mm、高さ70mmの容量100mlのビーカー(例えば相互理化学硝子製作所が販売するJISR-3503に準拠したビーカー)に吸水性樹脂2.00gを、400rpmの撹拌下で投入した。
撹拌には、円筒型テフロン(登録商標)製マグネット式撹拌子(長さ:25mm、直径:8mm、リングなし)を用いた。投入した吸水性樹脂が膨潤し、液表面の渦が収束したことが確認された後、撹拌を止めた。その後10分間静置し、20倍膨潤ゲルを得た。
(2)膨潤ゲルの保形力の測定
(ゲル保形力Aの測定)
ゲル保形力Aの測定には、オートグラフ AG-X(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフ AG-X)を用いた。上述のビーカーに収容された20倍膨潤ゲルに対して、圧縮治具を、特定の条件下でゲルの表面に接触させた際に、該圧縮治具に負荷される荷重の応答をロードセルが観測し、試験力として測定画面上に表示される該荷重の値をゲル保形力A(N)とした。より具体的な測定方法は、下記の通りであった。
オートグラフ AG-Xに、ロードセル(SLBL-50N/株式会社島津製作所製)、及び、図1に示す円板部1と、該円板部の中央に一端が接続された棒状部2を備える圧縮治具100(円板部1は表裏に平坦面を有し、かつ直径が2.5cm、厚さ1cmの円盤状であり、棒状部2は、長さが5.5cmであり、横断面が0.52cmの円形である)を、該円板部1の平坦面が下面となるよう装着した。次いで、装着した圧縮治具100について、鉛直方向における該圧縮治具100の位置を調整した。具体的には、オペレーションソフトウェア(島津オートグラフ用ソフトウェア トラペジウムX(株式会社島津製作所製))上で、「新規試験条件作成」をクリックし、以下に示すように試験条件を設定した。
(試験条件)
「システム」
試験モード:シングル
試験種類:圧縮
ロードセル極性:圧縮
移動方向:ダウン
単位:SI
書式:四捨五入
「センサー」
試験力
チャンネル:試験力アンプ
名称:試験力
フルスケール:50N
リミット:50N(チェックを入れる)
応力名称:応力
真応力を使用する:チェックをはずす
ストローク
名称:ストローク
リミット:500mm(チェックを入れる)
ストローク(ひずみ)名称:ストローク(ひずみ)
真ひずみを使用する:チェックをはずす
たわみ補正を行う:チェックをはずす
変位計
変位計1
チャンネル:なし
幅計
チャンネル:なし
その他
その他1
チャンネル:なし
「試験制御」
伸び原点:最初から
エリア1
制御動作:負荷
コントロール:ストローク
V1:10cm/min
エリア1とエリア2の間の設定
目標値チャンネル
ストローク
10mm
エリア2
制御動作:OFF
終了条件
破断設定:全てチェックをはずす
試験後動作:ストップ
破断検出開始点:0.035%
サンプリング
時間:10msec
予備負荷
全てチェックをはずす
「試験片」
材質:プラスチック
形状:平板
バッチ数:1
サブバッチ数:1
寸法単位:mm
「データ処理項目」
特に設定しなくてよい
「グラフ」
任意に設定してよい
「レポート」
任意に設定してよい
(試験力の観測)
試験力の観測は温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で行った。
20倍膨潤ゲルが収容された上述のビーカーの中央部に、上記圧縮治具100が配置されるように測定台上に置いた。
次に、圧縮治具100に接続しているロードセルが0.01Nの試験力を感知するまで該圧縮治具100を下げ、該圧縮治具100の円板部1の下面と該膨潤ゲル表面とを接触させた。次に、該圧縮治具100を0.05mm上昇させることにより、該圧縮治具100を測定開始位置(該膨潤ゲルの表面から、鉛直方向に0.05mm上昇させた位置)に配置した。
続いて、該圧縮治具100を、該膨潤ゲルに10cm/minの速度で、鉛直方向に10.0mm押し込んだ。
該圧縮治具100を該測定開始位置から鉛直方向に8.0mmの位置に押し込んだときに、観測された試験力(該圧縮治具100に負荷される荷重)をゲル保形力A(N)とした。
(ゲル保形力Bの測定)
圧縮治具100を押し込む速度を1mm/minに変更したこと以外は、上記(ゲル保形力Aの測定)と同様の操作を行い、20倍膨潤ゲルに、圧縮治具100を測定開始位置から鉛直方向に8.0mmの位置に押し込んだときに、観測された試験力(該圧縮治具100に負荷される荷重))をゲル保形力B(N)とした。なお、オペレーションソフトウェア上での試験条件の変更点は下記の通りであった。
(変更点)
「試験制御」
伸び原点:最初から
エリア1
制御動作:負荷
コントロール:ストローク
V1:1mm/min
サンプリング
時間:1sec
(ゲル移動指数)
下記式(1)より、ゲル移動指数を算出した。
ゲル移動指数=(ゲル保形力A/ゲル保形力B)-1 (1)。
(親水性繊維材料の層の目付量)
後述の実施例および比較例にて使用した吸収体における親水性繊維材料の層の面積および重量を用いて、以下の式に基づき、当該吸収体における親水性繊維材料の層の目付量を算出した:
親水性繊維材料の層の目付量(g/m)=親水性繊維材料の層の重量(g)/親水性繊維材料の層の面積(m)。
(液透過性のトップシート、コアラップ、および液不透過性のバックシートの厚み)
液透過性のトップシート、コアラップ、および液不透過性のバックシートの厚みは、ダイヤルシックネスゲージ 大型タイプ(厚み測定器)(株式会社 尾崎製作所製、型番:J-B、測定子:アンビル上下φ50mm)を用い、厚み測定器の上部測定子を液透過性のトップシートおよびコアラップから2~3mmの高さ位置まで近づけた後、ハンドルからゆっくりと手を離すことで、測定した。
(参考評価用吸収シートの液戻り量の測定)
(1)参考評価用吸収シートの作製
図2および図3に示す参考評価用吸収シート200(以下、吸収シート200と称する場合がある)を用いて、該吸収シート200の液戻り量(すなわち、吸水性樹脂の液戻り量)の測定を行った。具体的な吸収シート200の作製手順は以下の通りである。
まず、10cm×10cmにカットした粘着テープ20(NITTO DENKO製ビニールテープNo.21S)の粘着面に、該粘着テープ20の四辺の端部から2.75cmずつ内側の領域(吸水性樹脂散布領域21)に吸水性樹脂23を0.50g散布し、さらにその上から10cm×10cmの不織布22(エアレイド不織布、目付量46.6g/m)を載せ、上記粘着テープ20の四辺の粘着面と貼り合わせて、図3に示す積層構造(粘着テープ20、吸水性樹脂23、不織布22、がこの順に積層した構造)を有する評価用吸収シート200を作製した。
(2)液戻り量の測定
作製した吸収シート200を、不織布面22を上面として、平面な台上に設置し、シリンジ(シリンジ針のゲージ:21G)を用いて、その先端を該吸収シート200の中央部に接触させながら、20℃の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液10mLを1分間かけて添加した。該0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の添加開始から10分後に、Φ25mm・重量500gの錘を該吸収シート200の中央部に載せ、さらに1分後に錘を取り除いた。続いて、シリンジを用いて、シリンジの先端を該吸収シート200の中央部に接触させながら、20℃の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液5mLを10秒かけて追加添加した。該0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の追加添加終了後、直ちに、3cm×3cmにカットした、総重量K1(g)のキッチンペーパー(王子ネピア株式会社製キッチンタオル)36枚を重ねて、該吸収シート200上に載せ、さらに、該キッチンペーパーの最上部にΦ25mm・重量100gの錘を置き、該キッチンペーパー及び該錘を載せてから30秒後に該キッチンペーパー及び該錘を取り除いて、該キッチンペーパー36枚の総重量K2(g)を測定し、下記式に基づいて、キッチンペーパーが吸収した液量として液戻り量を算出した:
液戻り量(g)=K2-K1。
(吸収性物品の2回目の液戻り量(Rewet))
吸収性物品の2回目の液戻り量(Rewet)は、下記に示す手順に従い測定した:
吸収性物品を平面の台に設置し、吸収性物品の中央部に対して5mmの高さから送液チューブ(内径1mm)を介して0.9質量%塩化ナトリウム水溶液25gを液添加開始から40秒をかけて添加し、添加終了後すぐに、吸収性物品の中央部に直径30mmの円柱の錘380gを載せた。
液添加開始から10分後、錘を取り除き、吸収性物品の中央部に対して5mmの高さから0.9質量%塩化ナトリウム水溶液20gをシリンジ(テルモシリンジ(R)30mL 横口)で20秒かけて追加添加した。追加液の液添加開始から30秒後に4cm×4cmにカットした総重量K3(g)のキッチンペーパー(王子ネピア株式会社製 激吸収キッチンタオル)20枚を、上記吸収性物品の中央部に載せ、それと同時に該キッチンペーパーの最上部に、直径30mmの円柱の錘380gを載せた。該キッチンペーパー及び該錘を載せてから30秒後に、該キッチンペーパー及び該錘を取り除いて、該キッチンペーパー20枚の総重量K4(g)を測定し、下記式に基づいて、該キッチンペーパーが吸収した液量として吸収性物品の2回目の液戻り量(Rewet)を算出した:
吸収性物品の2回目の液戻り量(Rewet)(g)=K4-K3
[製造例1]
国際公開第2020/067310号の図1に示す製造プロセスに従って、分離装置16から排出された含水ゲル重合体(1)を得た。ここで、分散装置12としては国際公開第2020/067310号の図8に示し、実施例1で用いた二重円筒型の高速回転せん断型攪拌機(分散装置12G)を使用した。具体的には下記の通りであった。
重合反応の準備段階として、疎水性有機溶媒であるn-ヘプタン21000gを、上記分散装置、反応装置14、上記分離装置16及びこれらを接続する配管(接合部を含む)内に投入した。
続いて、送液ポンプ18を稼働させて、流量300mL/分で疎水性有機溶媒の循環を開始した。さらに、熱交換器20を稼働させて、設定温度(反応装置において下記単量体水溶液(1)が投入される領域に存在する疎水性有機溶媒の温度)が90℃となるように、上記循環する疎水性有機溶媒を加熱した。さらに、分散助剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(商品名・ハイワックス(登録商標)2203A/三井化学株式会社)を、上記疎水性有機溶媒100質量%に対して0.11質量%の量で添加した。
続いて、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸、及びイオン交換水を混合し、さらに、内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート(平均重合度:9)及びジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウムを配合して単量体(アクリル酸(塩))を含む溶液を作製した(単量体水溶液調製工程)。
続いて、上記操作で得られた単量体を含む溶液と、過硫酸ナトリウムとを混合装置10に供給して混合することで、単量体水溶液(1)を作製した。該単量体水溶液(1)の単量体濃度(モノマー濃度)は43質量%であり、単量体の中和率は73モル%であった。また、ポリエチレングリコールジアクリレートの量は単量体(アクリル酸(塩))100モル%に対して0.008モル%、ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウムの量は単量体(アクリル酸(塩))に対して50ppm、過硫酸ナトリウムの量は単量体(アクリル酸(塩))に対して0.12g/モルであった。
上記分散装置12G(二重円筒型の高速回転せん断型撹拌機)のローターを、回転数が3600rpm(せん断速度2765[1/s])となるように回転させた。次に、単量体水溶液(1)を、流量40mL/分(47.2g/分)で、分散装置の配管に送液した。供給された上記単量体水溶液(1)を、分散装置によって上記疎水性有機溶媒中で液滴状に分散し、分散液を得た(分散工程)。
次いで、上記のようにして得られた分散液を、反応装置14に供給した。分散液中の上記単量体水溶液(1)からなる液滴は、上記連続相である疎水性有機溶媒が満たされた反応装置内を落下しながら重合し、反応装置の排出口付近において、微小な球形の含水ゲル重合体(1)を得た(重合工程)。上記一連の操作で得られた含水ゲル重合体(1)を、上記疎水性有機溶媒とともに連続的に反応装置から接合部を介して分離装置16に供給し、該分離装置16において、該含水ゲル重合体(1)と有機溶媒とを分離した(分離工程)。分離装置16において含水ゲル重合体(1)は微小な球形粒子が凝集した凝集物であった。該凝集物の平均粒径は5~10mmであり、平均一次粒子径は80μmであった。
スクリューと孔径0.8mmの多孔板を有するゲル整粒装置に、予め乾燥助剤として3.5質量%のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液(得られた含水ゲル重合体(1)の固形分率に対して0.20質量%)を添加混合した含水ゲル重合体(1)(ゲル温度:90℃)を投入し、ゲル整粒装置から排出させることで整粒ゲル(1)を得た(ゲル整粒工程)。その後、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインを700ppm、整粒ゲル(1)に添加した。
続いて、加熱管付き回転型乾燥機を用いて、整粒ゲル(1)を乾燥した(乾燥工程)。該回転型乾燥機は、内部に回転軸方向に延在する10本の加熱管と2枚の障壁(中心部に一つの円形開口部を有するドーナツ状の仕切り板、開口率50%)とを有する円筒状の回転容器(容積100L)を備えている。10本の加熱管は回転容器の回転軸を中心とする円周上に、間隔を空けて配置されている。さらに回転容器内の取出し口側の端部には、中心に一つの円形開口部(開口率24%)を有するドーナツ状の仕切り板(別称;排出堰)を有している。
はじめに、各加熱管に2.7MPa(温度228.1℃)の水蒸気を導入して、回転容器内部(接触温度計で規定)を予め200℃超に加熱した後、さらに回転容器の外壁もスチームトレースにより十分に加熱(温度200℃)した。次いで、回転容器を30rpm、フルード数0.15となるように回転させて、90℃に加温した上記整粒ゲル(1)を供給し、乾燥時間50分で乾燥を行い、乾燥重合体(1)を得た。乾燥時、回転容器の内部の外気に対する気圧差が-20Pa、排気露点が85~90℃になるように、窒素(キャリアーガス;140℃)の供給量、排気量を調整した。
続いて、得られた乾燥重合体(1)をロールミル(粉砕機)に供給して粉砕することにより粒度を調節し(粉砕工程)、さらに目開き150μmの篩を用いて分級し、吸水性樹脂粉末(1)を得た。吸水性樹脂粉末(1)の平均粒子径 は340μmであった。
得られた吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、エチレンカーボネート0.385質量部、プロピレングリコール0.644質量部及びイオン交換水2.6質量部からなる表面架橋剤溶液をスプレーで噴霧して、高速連続混合機を用いて均一に混合し、混合物を得た(表面架橋工程)。
得られた混合物を雰囲気温度195℃±2℃に調温した熱処理機に導入して、25分間加熱処理を行った後、粉温(混合物の温度)を60℃まで強制的に冷却することで(冷却工程)、表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)を得た。
得られた表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)を、含水率が11.8質量%になるように含水させ、目開き1000μmのJIS標準篩に通過させることで整粒し(吸水性樹脂粉末整粒工程)、吸水性樹脂粒子(1)を得た。
得られた吸水性樹脂粒子(1)100質量部に、水不溶性無機微粒子として微粒子状の二酸化珪素(商品名・アエロジル(登録商標)200、日本アエロジル株式会社製)0.3質量部を添加、混合して(その他の添加剤添加工程)、粒子状の吸水性樹脂である吸水性樹脂(1)を得た。得られた吸水性樹脂(1)の物性を表1に示す。なお、得られた吸水性樹脂(1)の粒子形状は、球状粒子の凝集体状であった。
[製造例2]
製造例1と同様の製造プロセスを実施した。具体的には下記の通りであった。
重合反応の準備段階として、疎水性有機溶媒であるn-ヘプタン21000gを、分散装置、反応装置、分離装置及びこれらを接続する配管(接合部を含む)内に投入した。
続いて、送液ポンプを稼働させて、流量240mL/分で疎水性有機溶媒の循環を開始した。さらに、熱交換器を稼働させて、設定温度(反応装置において下記単量体水溶液(2)が投入される領域に存在する疎水性有機溶媒の温度)が85℃となるように、上記循環する疎水性有機溶媒を加熱した。さらに、分散助剤としてショ糖脂肪酸エステル(商品名・S-370、三菱ケミカル株式会社製)を、上記疎水性有機溶媒100質量%に対して0.11質量%の量で添加した。
続いて、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸、及びイオン交換水を混合し、さらに、内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート(平均重合度:9)を配合して単量体を含む溶液を作製した。
続いて、上記操作で得られた単量体を含む溶液と過硫酸カリウムとを混合装置に供給して混合することで、単量体水溶液(2)を作製した。該単量体水溶液(2)のモノマー濃度は43質量%であり、単量体の中和率は75モル%であった。また、ポリエチレングリコールジアクリレートの量は単量体(アクリル酸(塩))100モル%に対して0.02モル%、過硫酸カリウムの量は単量体(アクリル酸(塩))に対して0.10g/モルであった。
分散装置(二重円筒型の高速回転せん断型撹拌機)のローターを、回転数が3600rpm(せん断速度2765[1/s])となるように回転させた。次に、単量体水溶液(2)を、流量40mL/分(47.2g/分)で、分散装置の配管に送液した。供給された上記単量体水溶液(2)を、分散装置によって上記疎水性有機溶媒中で液滴状に分散し、分散液を得た。
次いで、上記のようにして得られた分散液を、反応装置に供給した。分散液中の上記単量体水溶液(2)からなる液滴は、上記連続相である疎水性有機溶媒が満たされた反応装置内を落下しながら重合し、反応装置の排出口付近において、微小な球形の含水ゲル重合体(2)を得た。上記一連の操作で得られた含水ゲル重合体(2)は、上記疎水性有機溶媒とともに連続的に反応装置から接合部を介して分離装置に供給され、該分離装置において、該含水ゲル重合体(2)と有機溶媒とを分離した。分離装置において含水ゲル重合体(2)は微小な球形粒子が凝集した凝集物であり、該凝集物を構成する球形粒子(一次粒子)の平均粒径は5~10mmであり、平均一次粒子径は65μmであった。
スクリューと孔径0.8mmの多孔板を有するゲル整粒装置に、予め乾燥助剤として3.5質量%のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液(得られた含水ゲル重合体(2)の固形分率に対して0.20質量%)を添加、混合した含水ゲル重合体(2)(ゲル温度:90℃)を投入し、ゲル整粒装置から排出させることで整粒ゲル(2)を得た。その後、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインを700ppm、整粒ゲル(2)に添加した。
続いて、製造例1と同様にして乾燥工程を行い、乾燥重合体(2)を得た。得られた乾燥重合体(2)を、ロールミル(粉砕機)に供給して粉砕することにより粒度を調節し、さらに目開き150μmの篩を用いて分級し、吸水性樹脂粉末(2)を得た。吸水性樹脂粉末(2)の平均粒子径は340μmであった。
得られた吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.015質量部、プロピレングリコール1.0質量部及びイオン交換水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液をスプレーで噴霧して、高速連続混合機を用いて均一に混合し、混合物を得た。
得られた混合物を、雰囲気温度195℃±2℃に調温した熱処理機に導入して、40分間加熱処理を行った後、粉温(混合物の温度)を60℃まで強制的に冷却することで表面架橋された吸水性樹脂粉末(2)を得た。
得られた表面架橋された吸水性樹脂粉末(2)を、含水率が11.0質量%となるよう含水させ、目開き1000μmのJIS標準篩に通過させることで整粒し(吸水性樹脂粉末整粒工程)、吸水性樹脂粒子(2)を得た。
得られた吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、水不溶性無機微粒子として微粒子状の二酸化珪素(商品名・アエロジル(登録商標)200、日本アエロジル株式会社製)0.1質量部を添加、混合して、吸水性樹脂(2)を得た。得られた吸水性樹脂(2)の物性を表1に示す。なお、得られた吸水性樹脂(2)の粒子形状は、球状粒子の凝集体状であった。
[比較製造例1]
製造例1において、架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレートの量を単量体(アクリル酸(塩))100モル%に対して0.007モル%に変更した他は製造例1と同様に重合工程、続く分離工程、ゲル整粒工程、乾燥工程を行い、比較乾燥重合体(1)を得た後、ロールミル(粉砕機)に供給して粉砕することにより粒度を調節し、さらに目開き150μmの篩を用いて分級し、比較吸水性樹脂粉末(1)を得た。比較吸水性樹脂粉末(1)の平均粒子径は390μmであった。
得られた比較吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、エチレンカーボネート0.385質量部、プロピレングリコール0.644質量部及びイオン交換水2.6質量部からなる表面架橋剤溶液をスプレーで噴霧して、高速連続混合機を用いて均一に混合し、混合物を得た。
得られた混合物を雰囲気温度195℃±2℃に調温した熱処理機に導入して、10分間加熱処理を行った後、粉温(混合物の温度)を60℃まで強制的に冷却することで、表面架橋された比較吸水性樹脂粉末(1)を得た。
得られた比較吸水性樹脂粉末(1)を、含水率が12.0質量%になるように含水させ、目開き1000μmのJIS標準篩に通過させることで整粒し、比較吸水性樹脂(1)を得た。得られた比較吸水性樹脂(1)の物性を表1に示す。なお、得られた比較吸水性樹脂(2)の粒子形状は、球状粒子の凝集体状であった。
[比較製造例2]
製造例1において、分散助剤である無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体に代えて、ショ糖脂肪酸エステル(商品名・S-370、三菱ケミカル株式会社製)を0.11質量%使用した他は製造例1と同様に重合工程、続く分離工程、ゲル整粒工程、乾燥工程を行い、比較乾燥重合体(2)を得た後、ロールミル(粉砕機)に供給して粉砕することにより粒度を調節し、さらに目開き150μmの篩を用いて分級し、比較吸水性樹脂粉末(2)を得た。
得られた比較吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、エチレンカーボネート0.385質量部、プロピレングリコール0.644質量部及びイオン交換水2.6質量部からなる表面架橋剤溶液をスプレーで噴霧して、高速連続混合機を用いて均一に混合し、混合物を得た。
得られた混合物を雰囲気温度195℃±2℃に調温した熱処理機に導入して、20分間加熱処理を行った後、粉温(混合物の温度)を60℃まで強制的に冷却することで表面架橋された比較吸水性樹脂粉末(2)を得た。
得られた表面架橋された比較吸水性樹脂粉末(2)を、含水率が13.6質量%となるよう含水させ、目開き1000μmのJIS標準篩に通過させることで整粒し、比較吸水性樹脂粒子(2)を得た。
得られた比較吸水性樹脂粒子(2)100質量部に、水不溶性無機微粒子として微粒子状の二酸化珪素(商品名・アエロジル(登録商標)200、日本アエロジル株式会社製)0.1質量部を添加、混合して、比較吸水性樹脂(2)を得た。得られた比較吸水性樹脂(2)の物性を表1に示す。なお、得られた比較吸水性樹脂(2)の粒子形状は、球状粒子の凝集体状であった。
Figure 2023085896000002
表1から明らかなように、製造例1、2で得られた吸水性樹脂(1)~(2)は、ゲル移動指数が0.20以下かつ吸水速度が50秒以下であり、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂である。一方で、比較製造例1~2で得られた比較吸水性樹脂(1)~(2)は、ゲル移動指数が0.20以上であり、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂には該当しない。
[実施例1]
(吸収性物品の作製)
縦12cm、横12cmに切断したポリプロピレン製の不織布1(スパンボンド、コアラップに相当する。厚さ0.18mm、目付量:13g/m。)の四辺の端部から1.5cmずつ内側の、縦9cm、横9cmの正方形の部分に粉砕パルプ(親水性繊維材料に相当する。)を目付量が15g/mになるように0.12g均一に散布し、親水性繊維材料の層を形成した。次に、粉砕パルプの上に吸水性樹脂(2)を1.65g均一に散布した。
次に、吸水性樹脂(2)の上に、縦12cm、横12cmに切断したポリプロピレン製の不織布(スパンボンド、液透過性のトップシートに相当する。厚さ0.18mm、目付量:13g/m。)を重ねて、吸水性樹脂の層と、親水性繊維材料の層とを、スパンボンド不織布(液透過性のトップシートおよびコアラップ)で挟んだ。前記スパンボンド織布の四辺の端部から1.0cmずつ内側をヒートシーラーで加熱圧着することで、両面が不織布(液透過性のトップシートおよびコアラップ)で挟まれた吸収体を得た。
さらに、液不透過性のバックシートとして、大倉工業株式会社製のOK袋 No.7(厚み0.03mm)を縦16cm、横14cmに切断し、その中央に前記不織布で挟まれた吸収体を、コアラップ面の不織布が、前記液不透過性のバックシートと接するよう配置して(すなわち、前記親水性繊維材料の層が、バックシート側に配置されるよう)配置して吸収性物品(1)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[実施例2]
実施例1において、親水性繊維材料の使用量を0.26gに変更することにより、親水性繊維材料層の目付量を32g/mに変更したこと以外は実施例1と同様にして吸収性物品(2)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[実施例3]
実施例1において、親水性繊維材料の使用量を0.45gに変更することにより、親水性繊維材料層の目付量を55g/mに変更したこと以外は実施例1と同様にして吸収性物品(3)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[実施例4]
実施例1において、親水性繊維材料の使用量を0.62gに変更することにより、親水性繊維材料層の目付量を77g/mに変更したこと以外は実施例1と同様にして吸収性物品(4)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[実施例5]
実施例1において、吸水性樹脂(2)から吸水性樹脂(1)に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較吸収性物品(5)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[比較例1]
実施例1において、親水性繊維材料の使用量を1.00gに変更することにより、親水性繊維材料層の目付量を123g/mに変更したこと以外は実施例1と同様にして比較吸収性物品(1)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[比較例2]
実施例1において、粉砕パルプを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして比較吸収性物品(2)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[比較例3]
実施例1において、粉砕パルプの代わりに、エアレイド不織布(目付量46.6g/m)に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較吸収性物品(3)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[比較例4]
実施例1において、親水性繊維材料の層と吸水性樹脂の層の順番を入れ替えたこと以外は実施例1と同様にして比較吸収性物品(4)を得た。具体的には、縦12cm、横12cmに切断したポリプロピレン製の不織布1(スパンボンド、コアラップに相当する。厚さ0.18mm、目付量:13g/m。)の四辺の端部から1.5cmずつ内側の、縦9cm、横9cmの正方形の部分に吸水性樹脂(2)を1.65g均一に散布した。次に、吸水性樹脂(2)の上に粉砕パルプ(親水性繊維状物に相当する。)を目付量が15g/mになるように均一に散布したこと以外は、実施例1と同様にして比較吸収性物品(4)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[比較例5]
実施例1において、吸水性樹脂(2)から比較吸水性樹脂(1)に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較吸収性物品(5)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
[比較例6]
実施例1において、吸水性樹脂(2)から比較吸水性樹脂(2)に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較吸収性物品(6)を得た。得られた吸収性物品の物性を表2に示す。
Figure 2023085896000003
[まとめ]
表2より明らかなように、実施例1~4と、比較例1及び2との比較より、親水性繊維材料を含まない、あるいは、親水性繊維材料の層の目付量が100g/m超である場合、2回目の液戻り量が多く、使用感が不快な吸収性物品となることが分かる。また、比較例3から、親水性繊維材料は不織布では代用できないことが分かる。比較例4から、親水性繊維材料の位置を変更(トップシート側に配置)した場合、2回目の液戻り量が多く、使用感が不快な吸収性物品となることが分かる。さらに、実施例1及び5と比較例5及び6との比較より、ゲル移動指数が0.20以下で吸水速度が50秒以下である吸水性樹脂を使用することにより、2回目の液戻り量が少なく、使用者に液戻りを感じさせず、快適に使用できる吸収性物品を提供できることが分かる。
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、紙おむつ、生理用ナプキン、成人向け失禁用製品(失禁パッド)、ペット用シート等の衛生材料(衛生用品)等、の様々な吸収性物品としての用途に好適に利用することができる。
1 :円板部
2 :棒状部
20 :粘着テープ
21 :吸水性樹脂散布領域
22 :不織布
23 :吸水性樹脂
100:圧縮治具
200:参考評価吸収シート

Claims (6)

  1. 液透過性のトップシート、吸水性樹脂と親水性繊維材料とを含む吸収体、及び液不透過性のバックシートをこの順に備える吸収性物品であって、
    前記吸収体は、吸水性樹脂の層と、親水性繊維材料の層、とを有し、
    前記吸水性樹脂の層は、前記液透過性のトップシート側に配置され、
    前記親水性繊維材料の層は、前記液不透過性のバックシート側に配置されており、
    前記親水性繊維材料の層の目付量は、100g/m以下であり、
    前記吸水性樹脂は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系単量体に由来する構造単位を含む架橋重合体、を含む粒子状の吸水性樹脂であって、下記の手順により求められるゲル移動指数が0.20以下であり、かつ吸水速度(Vortex法)が50秒以下である:
    (1)胴径55mm、高さ70mmの容量100mLビーカーに、25℃の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液38g及び吸水性樹脂2.00gを投入し膨潤ゲルを形成させる。
    (2)円板部と、該円板部の中央に一端が接続された棒状部と、を備える圧縮治具(円板部は表裏に平坦面を有し、かつ直径が2.5cm、厚さ1cmの円盤状であり、棒状部の長さは5.5cmである)を、(1)の膨潤ゲルが収容されたビーカーの中央部に位置するように配置し、該圧縮治具の円板部の下面と該膨潤ゲルの表面とを接触させた後、該圧縮治具を、該円板部の下面が該膨潤ゲルの表面から、鉛直方向に0.05mm上昇させた位置となるような、測定開始位置に配置する。
    (3)該測定開始位置に配置した圧縮治具を、該膨潤ゲルに10cm/minの速度で、鉛直方向に10.0mm押し込む。
    (4)(3)にて、該圧縮治具を、該測定開始位置から鉛直方向に8.0mmの位置に押し込んだときに、該圧縮治具に付加される荷重(N)を観測し、ゲル保形力Aとする。
    (5)該圧縮治具を押し込む速度を1mm/minに変更すること以外は、(1)~(4)と同様の操作を行い、該圧縮治具に付加される荷重(N)を観測し、ゲル保形力Bとする。
    (6)下記式(1)に従い、ゲル移動指数を算出する
    ゲル移動指数=(ゲル保形力A/ゲル保形力B)-1 (1)。
  2. 前記吸水性樹脂は、球状粒子の凝集体状粒子である、請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記吸水性樹脂は、水不溶性無機微粒子を含む、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
  4. 前記吸水性樹脂は、ゲル保形力Aが10.0N以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  5. 前記吸水性樹脂は、AAPが15g/g以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  6. 前記吸収体の含む、前記吸水性樹脂の質量が前記吸水性樹脂と前記親水性繊維の合計質量の50質量%以上100質量%未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
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