JP2023081506A - 横孔付きシャフト部品及びこれを製造するための鋼材 - Google Patents

横孔付きシャフト部品及びこれを製造するための鋼材 Download PDF

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Abstract

【課題】Niを含有することなく、Ni含有鋼を用いた場合と同等以上の強度を有し、被削性に優れたシャフト部品及びこれを製造するための鋼材を提供すること。【解決手段】内孔2を有すると共に、内孔2に連通するよう径方向に設けられた横孔3を有し、外表面11及び横孔3の内表面に浸炭硬化層を備えたシャフト部品1である。化学成分組成は、式1及び式2を具備する。式1:25<(Si-0.41)2×100+9Cr+18Mo+16。式2:<-Cr+0.5/Si+0.01/Nb+0.6-0.7Mn。内部硬さが400~500HVであり、横孔の特定位置の内表面の硬さが800HV以上であり、特定位置の浸炭異常層の厚みが20μm以下であり、特定位置のトルースタイト組織の面積率が1.00%以下であり、横孔の開口部の角部に円相当径が0.1μm以上の炭化物が網目状に配列された網目状炭化物が存在していない。【選択図】図1

Description

本発明は、横孔付きシャフト部品及びこれを製造するための鋼材に関する。
動力を伝達するシャフト部品は、ねじり強度が必要とされる。エンジン、トランスミッション等の高容量化に伴いシャフト部品に入力されるトルクも増大し、従来と比較し高い静ねじり強度(比例限度)と疲労強度が要求される。通常、シャフト部品は浸炭処理が施されるが、鋼材としては、Cr汎用鋼やCr-Mo汎用鋼が使用され、更に強度が必要な場合はNi-Cr-Mo汎用鋼が使用される。しかし、これらの汎用鋼を用いたシャフト部品が昨今の高強度化ニーズに対して十分に応えているとは言い難い。また、含Ni鋼は、強度は優れるものの、素材コストが高いという問題と、Ni添加により被削性が低下し、機械加工時に工具摩耗量が増加するという問題がある。
シャフト部品による動力伝達力増加の手段として、シャフト部品径を大径化することは、容易に考えることができる。しかし、この方法は、ユニットの大型化・重量増加を招き、燃費が悪化するため、適切な手段ではない。そのため、同じ大きさの動力を伝えるのに、より細い径のシャフト部品で適用を可能にする技術の開発が、強く望まれている。
また、シャフト部品には、潤滑等を目的として油孔を設ける場合が多い。具体的には、シャフト部品の中心軸に沿った内孔を有すると共に、外表面から内孔に連通するよう径方向に設けられた横孔(油孔)を有する場合が多い。このような横孔を有するシャフト部品では、横孔の開口部の角部に応力集中が起こりやすく、横孔が存在しない場合よりもさらに高強度化を図らなければならない。従来のシャフト部品の高強度化を図る技術としては、例えば、特許文献1~3に記載の技術が提案されている。
特開2013-28860号公報 特開2000-2229号公報 特開2005-256082号公報
横孔付きシャフト部品においては、横孔がない場合に比べ、(1)横孔が存在することによる応力集中による強度低下の問題、(2)細径である横孔内部表面については、浸炭処理中に浸炭ガスが十分に循環しにくいため、シャフト外径表面に比較して浸炭されにくくなるという問題、(3)(2)の問題対応のため、C.P.(カーボンポテンシャル)を高めて浸炭することにより、横孔内部表面の浸炭状況改善を図ろうとすると、今度は、特に浸炭されやすい部位である横孔開口部の角部(以下、適宜、単に、「角部」という。)に粒界への網目状炭化物が生成しやすくなり、それにより強度が低下するという問題等の課題が増え、より高い高強度化対策が必要となる。
従来の高強度化対策のうち、シャフト部品を大径化することは、上述したように、重量がアップすることから採用することは困難である。また、用いる鋼材にNiを添加して高強度化を図ることは、素材コストが増加すると共に被削性が悪化して加工コストが増大するため、これも採用することは困難である。従って、高価な元素を添加することなく、細径である横孔内部表面や開口部角部等の浸炭状態を改善できる新しい技術開発が求められている。
浸炭処理については、ガス浸炭、減圧浸炭、滴注式浸炭等、種々の浸炭処理方法を採用することができるが、いずれの処理方法であっても、従来鋼より高強度が得られるよう、成分最適化を図りつつ、横孔開口部角部での網目状炭化物生成を防止しつつ、比較的細い孔である横孔内部奥の表面における浸炭状態を、強度と共に同時に改善することは容易ではない。そのため、優れた浸炭品質が確保できるように、材料自体を改善する必要がある。
たとえば、浸炭異常層を薄くするためSi含有率を低くすることが考えられるが、Si含有率が低すぎると、特に減圧浸炭の場合に、角部における粒界への網目状炭化物の生成可能性が高くなると考えられる。そのため、Si含有率の大幅低減は困難である。
また、Ni添加により角部の粒界への網目状炭化物生成を抑えることも考えられるが、上述したように、Ni添加によるコスト高及び被削性悪化の可能性がある。そのため、Ni添加は採用できない。
また、SiとBの複合添加による粒界強化を図ることも考えられるが、この場合には、狙いの結晶粒度確保のためNb添加が必須となる。しかし、SiとNbの複合添加は、Crとのバランスにもよるが、浸炭性を悪化させ、横孔内部表面での浸炭層のトルースタイト組織の増加、硬さ不足を招くおそれがある。そのため、これらの元素については、得られる浸炭性が適正となるように、最適な添加範囲を見極める必要がある。
また、前記した提案されているシャフト部品の高強度化技術について検討すると、まず特許文献1では、ねじり疲労強度を向上させることが記載されているが、孔付部品に適用することの記載がなく、横孔を設けた場合にどのような問題が生じ、どうすれば横孔付部品で浸炭後に問題ない浸炭状態を確保しつつ、優れた強度改善効果が得られるか不明であり、浸炭異常層に関する具体的な記載もない。
また、特許文献2及び3においては、横孔を有するシャフト部品の記載はあるものの、Si含有率が低く、その結果として、Si、B複合添加による粒界強化を図ることや、横孔角部における粒界への網目状炭化物の生成を防止することが、行いにくいと予想され、優れた強度、適正な浸炭層が得られないと考えられる。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、Niを積極添加することなく、Ni含有鋼を用いた場合と同等以上の強度を有し、被削性についてもNiを積極添加しない浸炭用鋼と比べ、同等以上を確保可能であって、浸炭後の横孔角部及び内部の組織状態を適正に保つことのできる横孔付きシャフト部品及びこれを製造するための鋼材を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、中心軸に沿った内孔を有すると共に、外表面から上記内孔に連通するよう径方向に設けられた横孔を有し、少なくとも、上記外表面及び上記横孔の内表面に浸炭硬化層を備えたシャフト部品であって、
質量%にて、C:0.19~0.28%、Si:0.50~1.00%、Mn:0.35~1.60%、Cr:0.45~1.50%、Al:0.020~0.080%、Ti:0.01~0.08%、B:0.0010~0.0050%、Nb:0.01~0.07%、N:0.0020~0.0100%を含有し、任意元素として、Mo:0.80%以下を含有し、下記式1及び式2を具備し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる化学成分組成を有し、
式1:25<(Si-0.41)2×100+9Cr+18Mo+16、
式2:<-Cr+0.5/Si+0.01/Nb+0.6-0.7Mn、
(ただし、式1及び式2における元素記号は、各元素の含有率(質量%)の値を意味する。)
内部硬さが、400~500HVであり、
上記横孔の開口部から上記径方向に当該横孔の全長(=シャフト部品の半径-内孔半径)の3/4の位置までの上記内表面の平均硬さが800HV以上であり、
上記横孔の上記開口部から上記径方向に1mmの位置において、上記内表面からの浸炭異常層の厚みが20μm以下であると共に、上記内表面から150μm深さまでの範囲においてトルースタイト組織の面積率が1.00%以下であり、
上記横孔の上記開口部の角部に円相当径が0.1μm以上の炭化物が網目状に配列された網目状炭化物が存在していない、横孔付きシャフト部品にある。
本発明の他の態様は、上記横孔付きシャフト部品を製造するための鋼材であって、上記化学成分組成を有する、鋼材にある。
上記横孔付きシャフト部品は、Niを積極添加しない一方、他の元素を上記特定の範囲に制限するとともに、式1及び式2を具備することを必須とする特定の化学成分組成を有している。これにより、従来のNi含有鋼を用いた場合と同等以上の強度を確保することができ、特に横孔を備えたシャフト部品であっても、浸炭処理した際に、横孔開口部角部及び横孔内部奥の表面浸炭層について、共に適切な組織を得ることができ、優れた耐久性を発揮しうるものとなる。また、Niを添加しないことにより、素材コストを低減させることができるとともに、従来のNiを積極添加しない浸炭用鋼と比較して同等以上の被削性を確保することができる。
また、SiとBの複合添加によって、粒界強度を強化し、粒界破壊の抑制による強度向上を図ることができ、さらに、Si、Bも含めた成分の最適化によって、浸炭等の熱処理後に、内部硬さ400~500HVを確保することができる。そして、この内部硬さを確保することにより、静ねじり強度を向上させることができる。
また、上記化学成分組成は、式1を満たしている。これにより、ガス浸炭処理をする場合においても、浸炭処理により発生しうる浸炭異常層の厚みを薄くすることが可能となる。そして、これにより、亀裂発生を抑制することが可能となる。勿論、減圧浸炭により、浸炭異常層が生成しないようにして処理することも可能である。
また、上記化学成分組成は、式2を満たしている。これにより、Cr、Si、Nb、Mnの含有率の関係を適正化することによって、Si及びNb含有率を比較的高くした状態でもCr含有率を適正範囲に制限することにより、問題のない浸炭性を確保することが可能となる。そして、これにより、浸炭処理中に浸炭ガスが循環しにくく、浸炭が進みにくい細径の横孔奥部においても、浸炭処理後に浸炭層トルースタイト組織の抑制と横孔内表面の高い硬さ確保が可能となり、さらに浸炭されやすい部位である角部の粒界への網目状炭化物の生成回避が可能となる。
このように、上記特定の化学成分組成を採用し、式1及び式2を満足することを必須とすることにより、内部硬さが400~500HVであることに加えて、横孔の上記特定位置の内表面の硬さを800HV以上とし、横孔の上記特定位置の浸炭異常層の厚みが20μm以下であると共に、内表面から150μm深さまでの範囲においてトルースタイト組織を抑制し、かつ、横孔の角部に円相当径が0.1μm以上の炭化物が網目状に配列された網目状炭化物が存在していない状態を得ることができる。そして、これにより、静的ねじり強度及びねじり疲労強度に優れた横孔付きシャフト部品を得ることができる。
実施例における、横孔付きシャフト部品の正面図。 図1のA-A線矢視断面図。 実施例における、実施例E1及び比較例C4の横孔内表面の硬さについて、横孔開口部からの距離との関係を示す説明図。
まず、上記横孔付きシャフト部品の化学成分組成の限定理由を説明する。
C:0.19~0.28%;
C(炭素)は、焼入れ処理後の硬さを向上させ、強度確保のための内部硬さを得るために必要な元素である。この効果を得るために、Cは0.19%以上含有させる。一方、Cの過剰添加は、靭性の低下及び硬さ上昇による被削性低下につながるため、それを防止すべくC含有率の上限は0.28%とする。
Si:0.50~1.00%;
Si(ケイ素)は、粒界強度の強化、被削性確保、炭化物生成抑制、浸炭異常層抑制等の効果を発揮するため、0.50%以上含有させる。一方、Siの過剰添加は、硬さ上昇による被削性低下につながるため、それを防止すべくSi含有率の上限は1.00%とする。
Mn:0.35~1.60%;
Mn(マンガン)は、焼入れ性向上効果を得るために、0.35%以上含有させる。一方、Mnの過剰添加は、硬さ上昇による被削性低下あるいは残留オーステナイトの増加による浸炭層の硬さ低下につながるため、それを防止すべくMn含有率の上限は1.60%とする。
Cr:0.45~1.50%;
Cr(クロム)は、焼入れ性を高める効果を得るために、0.45%以上含有させる。一方、Crの過剰添加は、硬さ上昇による被削性低下および網目状炭化物生成による疲労強度低下につながるため、それを防止すべくCr含有率の上限は1.50%とする。
Al:0.020~0.080%;
Al(アルミニウム)は、製鋼時の脱酸剤として使用される元素であるとともに、Nと結合して微細なAlNとして存在する場合に、浸炭時の異常粒成長を抑制する効果を発揮する。これらの効果を得るために、Al含有率は0.020%以上とする。一方、Alの過剰添加は、アルミナ等の酸化物系介在物が増加し、強度低下を招くため、Al含有率の上限は0.080%とする。
Ti:0.01~0.08%;
Ti(チタン)は、NがBと結びつき、B添加による粒界強度向上効果が消失するのを防止するため、TiNとしてNを消費する作用、いわゆるNキル作用を得るのに有効であるため、0.01%以上含有させる。一方、Ti含有率が高すぎると、TiN生成による強度低下及び被削性低下招くため、Ti含有率は0.08%以下とする。
B:0.0010~0.0050%;
B(ホウ素)は、粒界強度強化による強度向上効果を得るため、0.0010%以上含有させる。一方、B含有率が高くなりすぎても、前述の効果が飽和するため、上限を0.0050%とする。
Nb:0.01~0.07%;
Nb(ニオブ)は、結晶粒微細化の効果を得るため、0.01%以上含有させる。一方、Nb含有率が高すぎると、コスト増になるだけでなく、浸炭性が低下するおそれがあるため、0.07%以下に制限する。
N:0.0020~0.0100%;
N(窒素)は、Nb(C、N)、AlNとなって、ピン止め効果により結晶粒粗大化を抑制する効果があるため、0.0020%以上含有させる。一方、N含有率が高すぎると、加工性が低下するため、0.0100%以下とする。
Mo(任意元素):0.80%以下;
Mo(モリブデン)は、任意添加元素であり、積極的に含有させる必要はなく、含有率0%でもよいが、スクラップを用いた電気炉溶解の場合は、少量不純物として含有される場合もある。そして、Moは、その含有により、焼入れ性向上に有効な元素であるので、必要に応じ少量添加することもできる。一方、Mo含有率が高すぎると、コストアップにつながるため、0.80%以下に制限する。
その他、上記横孔付きシャフト部品の化学成分組成として明記はしていないが、P(リン)、S(硫黄)は、製造上含有が避けられない元素であり、不純物として、0.030%以下程度の含有が許容される。
式1:25<(Si-0.41)2×100+9Cr+18Mo+16;
(ただし、式1における元素記号は、各元素の含有率(質量%)の値を意味する。)
式1は、これまでの多くの実験から導き出された浸炭異常層の厚さに関連する関係式であり、この関係を満足することにより、浸炭異常層を薄くすることが可能となる。
式2:0<-Cr+0.5/Si+0.01/Nb+0.6-0.7Mn;
(ただし、式2における元素記号は、各元素の含有率(質量%)の値を意味する。)
式2は、これまでの多くの実験から導き出された浸炭性に関する関係式であり、この関係を満足することにより、細い横孔奥においても、浸炭処理後に浸炭層トルースタイト組織が増加したり、浸炭層表面の硬さが大きく低下することがない、優れた浸炭性を確保することができる。
以上のような式1及び式2の関係を含む上記特定の化学成分組成を有することにより、上記横孔付きシャフト部品は、以下の特性を備えることができる。
まず、内部硬さは、400~500HVの範囲内である。内部硬さは、上記シャフト部品の断面において、表面の浸炭硬化層よりも深い位置であるD/4(Dはシャフト部品の外径直径)の位置で測定した硬さとする。この内部硬さを400HV以上とすることにより、静ねじり強度及びねじり疲労強度を向上させることができる。一方、内部硬さが高くなりすぎても上記効果が飽和するため、内部硬さの上限値は500HVでよい。
また、上記横孔の開口部から、径方向に当該横孔の全長(=シャフト部品の半径-内孔半径)の3/4の位置における上記内表面の硬さが800HV以上である。この特定の位置の内表面硬さを800HV以上とすることにより、この特定位置から横孔の開口部(角部)までを、確実に800HV以上の硬さとすることができ、応力集中が生じた際においても優れたねじり疲労特性を確保することができる。一方、上記特定位置の内表面硬さが800HV未満の場合には、上記の特性が十分に得られないおそれがある。
また、上記横孔の上記開口部から、シャフト部品の径方向に1mmの位置において、内表面からの浸炭異常層の厚みが20μm以下である。この特定位置における浸炭異常層の厚みを20μm以下とすることにより、横孔の開口部(角部)の浸炭異常層の厚みも十分に薄くすることができ、角部近傍から亀裂が進展することを抑制することが可能となる。一方、上記特定位置における浸炭異常層の厚みが20μmを超える場合には、このような効果が十分に得られないおそれがある。
また、上記横孔の上記開口部から1mm深さの位置において、内表面から150μm深さまでの範囲においてトルースタイト組織が存在しないか、あるいは存在しても面積率1.00%以下となって実質的に存在しない範囲に抑制される。この特定位置においてトルースタイト組織を抑制することは、表面硬化層が焼戻しマルテンサイト主体の組織から構成されていることとなり、優れた強度特性を確保することができる。
また、上記横孔の上記開口部の角部に円相当径が0.1μm以上の炭化物が網目状に配列された網目状炭化物が存在していない。横孔の開口部の角部において上記のような網目状炭化物が存在しないことにより、得られたシャフト部品の、応力集中を防ぐという効果が得られ、一方、円相当径が0.1μm以上の炭化物が存在すると、このような効果が得られない。なお、ここで問題にしている炭化物とは、ピン止め粒子として利用されるAlNやNb炭窒化物のようなnmオーダーの大きさの炭化物とは異なるものであって、粒界上に網目状に生成される、大きさが0.1~1.0μm程度の炭化物のことを言う。
次に、上記横孔付きシャフト部品は、少なくとも、上記外表面には、ショットピーニング処理が施されたことにより圧縮残留応力が付与された、圧縮残留応力付与層を有することが好ましい。上記圧縮残留応力付与層の存在により、さらに、シャフト部品の疲労強度を向上させることができる。圧縮残留応力層の圧縮残留応力は、上記横孔の上記開口部から、シャフト部品の径方向に1mm入った位置における上記内表面の最表面の圧縮残留応力が、-500MPa以下(ここで、「-」は圧縮であることを意味し、「以下」とはより圧縮応力の絶対値が大きいことを意味している。)であることが好ましい。この範囲を確保することによって、上記効果を確実に得ることができる。
本発明の横孔付きシャフト部品及びこれを製造するための鋼材に係る実施例について説明する。本例では、表1及び表2に示すように、21種類の鋼材(実施例E1~E13、比較例C1~C12(比較例C11はNiを含有する従来鋼であるSNCM420であり、比較例C12は、浸炭用鋼として最も多く使われている従来鋼SCM420である。)を準備し、図1及び図2に示す横孔付きシャフト部品1を作製し、種々の特性について評価を行った。ここで、表1に示す実施例E6は、Moを積極添加せず、不純物として含有する鋼である。また、P、Sについては、後述の表2を含めて記載していないが、全ての鋼材が、不純物として0.010~0.025%含有している。
<シャフト部品の作製>
各鋼材を真空溶解炉にて溶解・鋳造を行って鋼塊を得て、当該鋼塊に鍛伸加工を加えてΦ50mmの棒鋼を得た。従来鋼については、量産設備で製造した棒鋼からサンプル採取した。この棒鋼に機械加工を加えて、図1及び図2に示す横孔付きシャフト部品1を作製した。これらの図に示すように、横孔付きシャフト部品1は、シャフト本体10の内部に、中心軸に沿った内孔2を有すると共に、外表面11から内孔2に連通するよう径方向に設けられた横孔3を有するものである。
本例では、シャフト部品1の外径D1はΦ22.4mm、内孔2の内径D2はΦ7.0mm、横孔3の内径D3はΦ4.0mm、深さHは約7.7mmとした。また、横孔3の開口部31の角部33は、C=0.5mmの面取り(図面上では省略)を施した。なお、これらの寸法は、シャフト部品1の使用部位、用途等に応じて適宜変更可能である。例えば、シャフト部品1の外径D1はΦ15~35mm程度、内孔2の内径D2はΦ5から15mm程度、横孔3の内径D3はΦ1~8mm程度(内孔径より小さい)の範囲で変更することもできる。また、シャフト部品1の両端には、後述するねじり試験を行うために、シャフト本体10よりも大径化するとともに、軸方向に平行な基準平面を設けた掴み部(図示略)を設けた。
上記のシャフト部品1は、ガス浸炭あるいは減圧浸炭のいずれかを含む浸炭焼入れ処理を施し、その後、掴み部のみ仕上げの機械加工を施して試験材としてのシャフト部品1を得た。
ガス浸炭・焼入れ処理は、シャフト部品1を浸炭ガス雰囲気中に保持温度950℃で130分間保持して浸炭処理を行った後、850℃まで冷却してその温度に30分間保持し、その後、油浴中に投入する油焼入れを行う条件で行った。さらに、その後、シャフト部品1を150℃に1時間保持する焼戻し処理も加えた。
減圧浸炭・焼入れ処理は、処理温度は950℃とし、減圧雰囲気下においてパルス状の浸炭性ガスを導入し浸炭処理を行った後、850℃まで冷却してその温度に30分間保持し、その後、油浴中に投入する油焼入れを行う条件で行った。さらに、その後、シャフト部品1を150℃に1時間保持する焼戻し処理も加えた。
なお、実施例E11、E13については、掴み部仕上げの機械加工の後に、ショットピーニング処理を加えた。ショットピーニング処理の条件は、1段目はショット粒Φ0.6mm前後、アークハイト0.3~0.6mmA、2段目はショット粒Φ0.3mm前後、アークハイト0.1~0.3mmN、カバレージはともに200%以上という条件とした。
Figure 2023081506000002
Figure 2023081506000003
<浸炭異常層、トルースタイト組織及び網目状炭化物の評価>
図2に示すシャフト部品1の横断面にナイタール腐食を施した後、光学顕微鏡で観察して得られた画像を用い、横孔3の開口部31から、シャフト部品1の径方向に1mm入った位置P1において、内表面32から矢印L方向における浸炭異常層の厚みを測定した。測定結果は、後述する表3に記載した。
また、上記画像を用い、矢印L方向における内表面32から150μm深さまでの範囲における、浸炭異常層の部分を除いた部分のトルースタイト組織の面積率を画像解析ソフトにて測定した。測定結果は、後述する表3に記載した。
また、上記画像を用い、横孔3の開口部31の角部33近傍を観察し、円相当径が0.1μm以上の炭化物が網目状に配列された網目状炭化物が存在しているか否かを観察した。円相当径が0.1μm以上の炭化物がない場合には、「なし」、あるい場合には、「有り」を表3に記載した。
<硬さ測定>
シャフト部品1の内部硬さは、図2に示すシャフト部品1の横断面における外径D1に対して外表面からD1の1/4の深さの位置P2のビッカース硬さ(HV)を測定した。測定結果は、後述する表3に記載した。
横孔3の内表面の硬さは、図2示すシャフト部品1の横断面における、開口部31から、シャフト部品1の径方向に0.05mmの位置P3(内表面そのものではなく、実際には、平坦な横断面上における内表面から0.05mmの深さの位置)から7.0mmの位置P4(P3と同じ深さの横断面上の位置)までを0.05mm、0.10mm又は0.20mmピッチで、マイクロビッカース硬さ(mHV)を測定した。そして、この測定範囲の測定値の平均値を、後述する表3に記載した。また、代表例として、実施例E1と比較例C4について、測定結果をグラフにして図3に示した。同図から、実施例E1の方が比較例C4よりも、横孔3のより深いところまで高い硬さが確保されていることがわかる。また、表3に記載の通り、実施例E1では、トルースタイト生成量は1.00%未満に抑制されていたが、比較例C4については、面積率1.00%を超えるトルースタイトの生成が確認された。
<静ねじり試験>
各シャフト部品1について、図示しない両端の掴み部をねじり試験機のチャックに保持させて、静ねじり試験を実施し、比例限度を測定した。具体的には、各試料に一定の角速度でねじりトルクを負荷し、角度-トルク線図をそれぞれ求めた。そして、弾性変形域での直線関係が外れた時点のねじりトルクを比例限度の値として求めた。比例限度は、比較例C11(従来鋼SNCM420)の値を基準として、これに対する比率で求め、15%以上向上した場合を合格「○」、向上率が15%未満の場合を不合格「×」として、表3に示した。
<ねじり疲労試験>
各シャフト部品1について、上記と同様にねじり試験機にセットしてねじり疲労試験を実施し、200万回耐久限を測定した。具体的には、軸方向一方から見て右ねじり側と左ねじり側に、それぞれ同じ最大トルクが加わるようなトルクの範囲で5Hzの周期で繰り返しトルクを変動させながら、疲労寿命が200万回となる際の、前記最大ねじりトルクの値により評価した。200万回耐久限は、比較例C11(従来鋼SNCM420)の値を基準として、これに対する比率で求め、15%以上向上した場合を合格「○」、向上率が15%未満の場合を不合格「×」として、表3に示した。
<残留応力測定>
ショットピーニング処理を行った試験材である実施例E11、E13について、X線応力装置を用いてΨ0一定法という方法により、表面の圧縮残留応力を測定した。測定結果は、表3に示した。
<被削性試験>
まず、シャフト部品を想定した被削性試験用試験片を作製した。具体的には、従来鋼(C11、C12)を除く各鋼材を真空溶解炉にて溶解・鋳造を行って鋼塊を得て、当該鋼塊に鍛伸加工を加えてΦ42mm×600mm長さの棒鋼を得た。比較鋼C11、C12については、量産設備で製造された同寸法の棒鋼を準備した。この棒鋼を900℃に1時間保持したのち、600℃まで4時間かけて降温し、その後炉冷する焼鈍を実施した。その後、棒鋼を、Φ40mm×250mm長さの棒鋼からなる被削性試験用試験片を得た。
得られた試験片に対して、旋盤により切削する場合の切削工具の摩耗量によって評価した。切削条件は、切削速度250m/min、送り速度0.4mm/rev、切り込み:0.8mm、潤滑wetの条件とした。2600mの切削後に切削工具の逃げ面の摩耗量を測定し、その値が比較例C12(従来鋼SCM420)を基準として同等以下の摩耗量の場合を合格「○」、そうでない場合を不合格「×」として表3に示した。
Figure 2023081506000004
表3から理解できるように、実施例E1~E13については、内部硬さ、横孔の特定位置の内表面の硬さ、特定位置の浸炭異常層の厚み、特定位置のトルースタイト組織の面積率が全て適切範囲にあり、かつ、角部に網目状炭化物が存在していないものとなっていた。その結果、被削性、静的ねじり強度、疲労強度という全ての特性において、優れた結果を発揮した。また、表3に数値では示していないが、ショットピーニングを実施した実施例E11、E13については、他の実施例に比較して特に優れた疲労強度が得られることが確認できた。
一方、比較例C1は、C(炭素)含有率が低く、式1も満たさないため、浸炭異常層が厚くなりすぎ、内部硬さ及び横孔の特定位置の内表面の硬さが低くなりすぎ、静的ねじり強度及び疲労強度が劣る結果となった。
比較例C2は、C(炭素)含有率が高く、式1も満たさないため、浸炭異常層が厚くなりすぎて、疲労強度が劣るとともに、焼鈍後の硬度(表3には未記載)が十分に低下せず、被削性が劣る結果となった。
比較例C3は、Si(ケイ素)含有率が低く、式1も満たさないため、浸炭異常層の厚みが厚くなりすぎ、疲労強度が劣る結果となった。
比較例C4は、Si(ケイ素)含有率が高く、式2も満たさないため、横孔の内表面の硬さ及びトルースタイト組織の面積率が悪化し、被削性及び疲労強度が劣る結果となった。
比較例C5は、Mn(マンガン)含有率が低く、内部硬さ、横孔の内表面の硬さが悪化し、静的ねじり強度及び疲労強度が劣る結果となった。
比較例C6は、Mn(マンガン)含有率が高く、焼鈍後の硬度(表3には未記載)が十分に低下せず、被削性が劣る結果となった。
比較例C7は、Cr(クロム)含有率が低く、内部硬さ、横孔の内表面の硬さが悪化し、静的ねじり強度及び疲労強度が劣る結果となった。
比較例C8は、Cr(クロム)含有率が高く、式2も満たさないため、トルースタイト組織の面積率が悪化し、角部に網目状炭化物が生成していたため、静的ねじり強度及び疲労強度が劣る結果となった。
比較例C9は、Ti(チタン)及びB(ホウ素)が未添加で、N(窒素)の含有率が高すぎ、Bの粒界強度向上効果が十分に得られていない影響で、疲労強度が劣る結果となった。
比較例C10は、個々の成分は範囲内であるが、式2を満たさいないため、トルースタイト組織の面積率が悪化し、疲労強度が劣る結果となった。
比較例C11は、Niを含む従来鋼SNCM420であり、被削性を除く各特性の基準(目標)を定めるための比較例として記載したものである。前記している通り、Niを含有するため、強度は従来鋼の中で優れているが、被削性が劣り、コスト高の鋼である。
比較例C12は、Niを含まない従来鋼SCM420であり、被削性評価の基準(目標)を定めるための比較例として記載したものである。被削性は問題ないものの、本発明で提案している強度改善策が全く反映されていないため、静的強度、疲労強度共に大きく劣るものである。
1 横孔付きシャフト部品
10 シャフト本体
11 外表面
2 内孔
3 横孔
31 開口部
32 内表面
33 角部

Claims (4)

  1. 中心軸に沿った内孔を有すると共に、外表面から上記内孔に連通するよう径方向に設けられた横孔を有し、少なくとも、上記外表面及び上記横孔の内表面に浸炭硬化層を備えたシャフト部品であって、
    質量%にて、C:0.19~0.28%、Si:0.50~1.00%、Mn:0.35~1.60%、Cr:0.45~1.50%、Al:0.020~0.080%、Ti:0.01~0.08%、B:0.0010~0.0050%、Nb:0.01~0.07%、N:0.0020~0.0100%を含有し、任意元素として、Mo:0.80%以下を含有し、下記式1及び式2を具備し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる化学成分組成を有し、
    式1:25<(Si-0.41)2×100+9Cr+18Mo+16、
    式2:0<-Cr+0.5/Si+0.01/Nb+0.6-0.7Mn、
    (ただし、式1及び式2における元素記号は、各元素の含有率(質量%)の値を意味する。)
    内部硬さが、400~500HVであり、
    上記横孔の開口部から上記径方向に当該横孔の全長の3/4の位置までの上記内表面の平均硬さが800HV以上であり、
    上記横孔の上記開口部から上記径方向に1mmの位置において、上記内表面からの浸炭異常層の厚みが20μm以下であると共に、上記内表面から150μm深さまでの範囲においてトルースタイト組織の面積率が1.00%以下であり、
    上記横孔の上記開口部の角部に円相当径が0.1μm以上の炭化物が網目状に配列された網目状炭化物が存在していない、横孔付きシャフト部品。
  2. 少なくとも、上記外表面には、ショットピーニング処理が施されたことにより圧縮残留応力が付与された圧縮残留応力付与層を有する、請求項1に記載の横孔付きシャフト部品。
  3. 上記圧縮残留応力付与層は、上記横孔の上記開口部から、上記径方向に1mm入った位置における上記内表面の最表面の圧縮残留応力が、-500MPa以下である、請求項2に記載の横孔付きシャフト部品。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の横孔付きシャフト部品を製造するための鋼材であって、上記化学成分組成を有する、鋼材。
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