JP2023081334A - バリアコート紙及びバリアコート用原紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたバリア性を有しつつ再利用がし易いバリアコート紙及び係るバリアコート紙に用いられているバリアコート用原紙を提供する。【解決手段】本発明のバリアコート紙は、紙基材と紙基材の少なくとも一方の面上に目止め部材と微細セルロース繊維とを含有する目止め層が積層したバリアコート用原紙と、バリアコート用原紙の目止め層の上に積層されたバリア層と、を有するシート状の積層体であり、バリアコート用原紙の水蒸気透過度が、1000g/(m2・24hr)以上であり、前記積層体のJIS Z 8808-2013に準拠して測定される通気量が、1(L/min)未満である。【選択図】図1

Description

本発明は、バリアコート紙及びバリアコート用原紙に関する。さらに詳しくはバリアコート紙と当該バリアコート紙に用いられるバリアコート用原紙に関する。
食品の包装に用いられる包装用シートは、内容物の酸化防止や変質を防ぐために酸素透過性の低い機能(ガスバリア性)および高い防湿性(水蒸気バリア性)を有するものが求められている。例えば、ポリエチレンラミネート紙は、紙にポリエチレンフィルムがラミネート加工されたシートであり、紙とポリフィルムの両方の特性(撥水性や防湿性、柔軟性など)を有することから、食品用の包装シートとして普及している。しかし、原料のポリエチレンは水に溶解しないので、古紙として再利用するにはコストや手間がかかることから、通常は使用後に焼却処分されている。一方、近年、脱石油資源が求められていることから、プラスチック包装から紙ベースの包装への転換思考が高まっており、食品包装分野においても同様の動きが起きている。
そこで、再利用することを考慮した食品包装用のシートの開発が進められている(特許文献1、2)。例えば、特許文献2には、紙基材の表面に水性の樹脂を塗工したバリアコート紙が提案されている。ガスバリア性等に寄与する樹脂が水性であるので、かかる樹脂の水への離解性を利用することにより、基材の紙を古紙として再利用することが可能になる。
特開2020-66216号公報 特開2014-173202号公報
しかしながら、上記特許文献のバリアコート紙の場合、ポリエチレン等の合成樹脂フィルムを積層した包装材料と比べて、ガスバリア性等が得られ難い傾向にある。また、同等の機能を発揮させるには、塗工層が厚くなり、取り扱い性が低下し、コストも増加するという問題もある。
本発明は上記事情に鑑み、優れたバリア性を有しつつ再利用がし易いバリアコート紙及び係るバリアコート紙に用いられているバリアコート用原紙を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、バリア層の目止め機能を発揮させる層を設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
第1発明のバリアコート紙は、紙基材と該紙基材の少なくとも一方の面上に目止め部材と微細セルロース繊維とを含有する目止め層が積層したバリアコート用原紙と、該バリアコート用原紙の前記目止め層の上に積層されたバリア層と、を有するシート状の積層体であり、前記バリアコート用原紙の水蒸気透過度が、1000g/(m・24hr)以上であり、前記積層体のJIS Z 8808-2013に準拠して測定される通気量が、1(L/min)未満であることを特徴とする。
第2発明のバリアコート紙は、第1発明において、前記目止め層は、塗工量が固形分質量で1g/m以上10g/m以下であり、前記前記バリア層は、塗工量が固形分質量で2g/m以上10g/m以下であることを特徴とする。
第3発明のバリアコート紙は、第1発明または第2発明において、前記積層体の水蒸気透過度が、1000g/(m・24hr)未満であることを特徴とする。
第4発明のバリアコート紙は、第1発明または第2発明において、前記目止め層において、前記目止め部材の含有量は、固形分質量で、0.5g/m以上8g/m以下であり、前記微細セルロース繊維の含有量は、固形分質量で、0.001g/m以上0.2g/m以下であることを特徴とする。
第5発明のバリアコート紙は、第1発明または第2発明において、前記目止め層における前記微細セルロース繊維の含有量は、固形分質量比で、前記目止め部材100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることを特徴とする。
第6発明のバリアコート紙は、第1発明または第2発明において、前記目止め層がバインダー材を含んでおり、該バインダー材の含有量は、固形分質量で、0.1g/m以上3.3g/m以下であることを特徴とする。
第7発明のバリアコート紙は、第6発明において、前記目止め層における前記バインダー材の含有量は、固形分質量比で、前記目止め部材100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることを特徴とする。
第8発明のバリアコート紙は、第1発明または第2発明において、前記微細セルロース繊維は、セルロースの構成単位の少なくとも一部にアニオン性の置換基が導入された化学変性微細セルロース繊維を含むことを特徴とする。
第9発明のバリアコート紙は、第1発明または第2発明において、前記バリア層が、水分散性のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする。
第10発明のバリアコート紙は、第1発明または第2発明において、前記目止め層中の目止め部材が、カオリン、デラミカオリン、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、シリカ、二酸化チタン、マイカから選ばれる1種以上であることを特徴とする。
第11発明のバリアコート用原紙は、第1発明または第2発明のバリアコート紙に用いられるバリアコート用原紙であって、紙基材の少なくとも一方の面に積層した目止め層を有しており、該目止め層が、目止め部材と、微細セルロース繊維と、を含有しており、水蒸気透過度が、1000g/(m・24hr)以上であることを特徴とする。
第12発明のバリアコート用原紙は、第11発明において、前記バリアコート用原紙のJIS Z 8808-2013に準拠して測定される通気量が、1(L/min)以上であることを特徴とする。
第13発明のバリアコート用原紙は、第11発明または第12発明において、前記目止め層は、塗工量が固形分質量で1g/m以上10g/m以下であることを特徴とする。
第14発明のバリアコート用原紙は、第11発明または第12発明において、前記目止め層において、前記目止め部材の含有量は、固形分質量で、0.5g/m以上8g/m以下であり、前記微細セルロース繊維の含有量は、固形分質量で、0.001g/m以上0.2g/m以下であることを特徴とする。
第15発明のバリアコート用原紙は、第11発明または第12発明において、前記目止め層における前記微細セルロース繊維の含有量は、固形分質量比で、前記目止め部材100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることを特徴とする。
第16発明のバリアコート用原紙は、第11発明または第12発明において、前記目止め層がバインダー材を含んでおり、該バインダー材の含有量は、固形分質量で、0.1g/m以上3.3g/m以下であることを特徴とする。
第17発明のバリアコート用原紙は、第16発明において、前記目止め層における前記バインダー材の含有量は、固形分質量比で、前記目止め部材100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることを特徴とする。
第18発明のバリアコート用原紙は、第11発明または第12発明において、前記微細セルロース繊維は、セルロースの構成単位の少なくとも一部にアニオン性の置換基が導入された化学変性微細セルロース繊維を含むことを特徴とする。
第19発明のバリアコート用原紙は、第11発明または第12発明において、前記目止め層中の目止め部材が、カオリン、デラミカオリン、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、シリカ、二酸化チタン、マイカから選ばれる1種以上であることを特徴とする。
本発明のバリアコート紙は、紙基材の面に接して積層した目止め層をバリア層の目止め機能として発揮させることにより、バリア層の機能を適切に発揮させることができる。このため、優れたバリア性を発揮させつつ、経済的かつ再処理性を向上させることができる。
また、本発明のバリアコート用原紙を用いることにより本発明のバリアコート紙に上記機能を適切に付与することができる。
本実施形態のバリアコート紙の概略断面図である。 実験の評価方法の一例を示した図である。 実験結果の一例を示した図である。 実験結果の一例を示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態のバリアコート紙(以下、本バリアコート紙という)は、紙基材の面上に目止め層を有し、この目止め層の上にバリア層を有する積層構造にすることにより、バリア層の厚みが薄くても優れた水蒸気バリア性および/またはガスバリア性を発揮させることができるようにしたことに特徴を有している。そして、上記紙基材の面上に目止め層が積層したものが本実施形態のバリアコート用原紙である。
(本バリアコート紙10の概略説明)
まず、本バリアコート紙10を詳細に説明する前に、その概略を説明する。
図1に示すように、本バリアコート紙10は、紙基材12と、目止め層13と、バリア層14と、を有するシート状の積層体である。この目止め層13とバリア層14は、この順で紙基材12の面上に積層されている。
具体的には、本バリアコート紙10は、紙基材12の面上に積層した目止め層13を有するバリアコート用原紙11と、このバリアコート用原紙11の面上に積層したバリア層14と、を有するシート状の積層体である。
本バリアコート紙10のバリアコート用原紙11の紙基材12は、繊維からなる内部に複数の空隙を有するシート状の部材である。この紙基材12の面(例えば、表面)には、複数の空隙の開口が形成されている。
本バリアコート紙10のバリアコート用原紙11の目止め層13は、目止め部材を含有しており、この目止め部材が、紙基材12の面上に分散させた状態で配置されている。つまり、本バリアコート紙10のバリアコート用原紙11は、紙基材12の面上に分散した目止め部材により、紙基材12の面に形成された複数の空隙の開口が塞がれた状態になっている。そして、この目止め層13の上にバリア層14が積層されている。このバリア層14は、水分散性のバリアコート剤を含有しており、本バリアコート紙10におけるバリア機能(水蒸気バリア性および/またはガスバリア性)を発揮させるための層である。
上記のごとく、本バリアコート紙10は、紙基材12の面上に形成された複数の空隙の開口が目止め層13の目止め部材により塞がれたバリアコート用原紙11を備え、このバリアコート用原紙11の目止め層13上にバリア層14が積層された積層体となっている。そして、本バリアコート紙10の紙基材12と積層面に形成された開口が上記のように目止め部材によって塞がれているので、紙基材12の積層面とバリア層14との境界(いわゆる界面)が適切に形成されている。具体的には、本バリアコート紙10の紙基材12の積層面(つまり紙基材12の目止め層13及びバリア層14が積層された面)において、目止め部材で塞がれた紙基材12の積層面に形成された開口から紙基材12内の空隙内へバリア層14の一部が侵入するのが抑制された状態でバリア層14が積層されている。言い換えれば、本バリアコート紙10の目止め層13は、あくまでもバリア層14が紙基材12の空隙内に侵入するのを抑制するための目止めとして機能する層である。なお、この目止め層13が、かかる機能を発揮することは、後述する。
上記のごとくバリア層14と紙基材12との界面が適切に形成されている(つまりバリア層14が紙基材12の空隙内に侵入するのが抑制された状態になっているので)ので、本バリアコート紙10は、バリア層14の有する機能(水蒸気バリア性および/またはガスバリア性)を適切に発揮させることができる(詳細は後述する)。
しかも、本バリアコート紙10は、バリア層14のロス(つまり紙基材12に侵入するバリア層14)を抑制できるので、従来技術のバリア層と比べて、バリア層14の厚みを薄く(つまり塗工量を少なく)することができる。
さらに、本バリアコート紙10は、バリア層14の厚みを薄くした状態であっても従来のバリアコート紙と同等のバリア機能(水蒸気バリア性および/またはガスバリア性)を発揮できるようになっている。このため、バリア層14の厚みを従来のバリアコート紙と比べて、薄くできるので、取り扱い性を向上させることができる。
また、本バリアコート紙10は、バリア層14の厚みを薄くしても上述したようにバリア機能を適切に発揮させることができるので、コスト増につながるバリア層14の塗工量を従来のバリアコート紙のバリア層と比べて少なくできる。このため、本バリアコート紙10の製造コストを抑制できる。しかも、塗工量を少なくできるので、従来のバリアコート紙と比べて、生産性を向上させることができる。
さらに、本バリアコート紙10のバリア層14が、バリアコート剤として水分散性のものを含有することにより、再利用の際に紙基材12からバリア層14を容易に剥離することができる。そして、上述したようにバリア層14の塗工量を従来のバリアコート紙と比べて少なくできるので、本バリアコート紙10の再利用性を向上させることができる。
よって、取り扱い性に優れ、しかも優れたバリア機能(水蒸気バリア性および/またはガスバリア性)を有しつつ、使用用途に応じて再利用性に優れた本バリアコート紙10を提供することができる。
なお、目止め部材が紙基材12の積層面に形成された空隙の開口を塞ぐ状態とは、目止め部材により、空隙の開口の開口面積が減少されるような状態や、空隙の開口を通る水蒸気や気体の通気量が減少するような状態を意味する。
例えば、空隙の開口が目止め部材により完全に覆われて気体等が通気できないような状態はもちろん、一部が塞がれて気体等の通気量は減少するような状態や、空隙の開口から内方に目止め部材が侵入して空隙の流路が完全または一部が塞がれた状態などの状態が含まれる。
(本バリアコート紙10の詳細説明)
つぎに、本バリアコート紙10を詳細に説明する。
図1に示しように、本バリアコート紙10は、紙基材12の積層面(以下の説明では、表面の場合を代表として説明する)上に目止め層13が積層したバリアコート用原紙11と、このバリアコート用原紙11の目止め層13の面上にバリア層14を有するシート状の積層体である。
つまり、本バリアコート紙10は、紙基材12の表面に接するように目止め層13が塗工により積層されたバリアコート用原紙11と、このバリアコート用原紙11の目止め層13の上にさらにバリア層14が塗工により積層されたシート状の積層体であり、この積層体断面において、紙基材12の層、目止め層13、バリア層14の順に各層を有するシート状の積層体である。
なお、本バリアコート紙10は、バリアコート用原紙11の目止め層13の上にバリア層14を有するように積層されていれば、両者間(バリアコート用原紙11とバリア層14の間)に他の層(例えば中間層)を有してもよい。
例えば、中間層としては、目止め層13とバリア層14を接着する接着層などを挙げることができる。なお、以下の説明では、この中間層を有しない状態、つまり紙基材12の面上に目止め層13とバリア層14の2層が連続して積層した構造を代表として説明する。
(紙基材12)
本バリアコート紙10のバリアコート用原紙11の紙基材12は、繊維からなる部材であり、繊維がパルプ繊維を含有しているものであれば、とくに限定されない。また、この繊維は、パルプ繊維を含んでいれば、とくに限定されない。例えば、パルプ繊維100%のものや、他の繊維(例えば、化学繊維)を含んだものであってもよい。パルプ繊維のみからなる紙基材としては、例えば、上質紙や、晒両更クラフト紙、片艶晒クラフト紙、両更クラフト紙などを、本バリアコート紙10の紙基材12として用いることができる。
紙基材12の坪量は、とくに限定されない。
例えば、坪量が、40g/m以上のものを採用することができる。一方、紙基材12は、坪量が大きくなると取り扱い性が低下する傾向にある。例えば、紙基材12の坪量が100g/mを超えると、本バリアコート紙10を包装用に用いる場合には包装する際の作業性が低下する可能性がある。
したがって、紙基材12は、坪量が40g/m以上、100g/m以下が好ましく、より好ましくは40g/m以上、80g/m以下である。
とくに、紙基材12を構成する繊維がパルプ繊維を含有すれば、後述する目止め層13に含まれる微細セルロース繊維とパルプ繊維が水素結合により結合し易くできるので好ましい。この理由は、後述する目止め層13の項目で説明する。
(目止め層13)
図1に示すように、本バリアコート紙10のバリアコート用原紙11の目止め層13は、紙基材12の表面に目止め層13が接して積層された層であり、バリア層14の紙基材12内部への侵入を抑制するための目止め機能を有する層である。
このバリアコート用原紙11の目止め層13は、目止め部材と、微細セルロース繊維と、を含有している。
目止め層13中の目止め部材は、紙基材12の表面に分散して配置されている。そして、紙基材12の表面に分散されて配置された目止め部材が微細セルロース繊維によって、目止め部材同士が互いに連結され、しかも紙基材12の表面に連結されている。
(目止め層13の塗工量)
本バリアコート紙10において、目止め層13は、塗工量が固形分質量で1g/m以上10g/m以下である。この値は、好ましくは1g/m以上8g/m以下である。1g/mに満たない場合、目止め層13が薄くなりすぎて目止め機能が不足するためバリア層14のバリア機能が得にくくなる。一方、10g/mより多い場合には、目止め層13が厚くなりすぎて目止め機能が頭打ち(目止め機能の向上曲線の傾きが低下する)になる傾向にある。
したがって、目止め層13は、塗工量が固形分質量で上記範囲内となるように塗工することにより、上記機能を適切に発揮させることができる。
(目止め部材)
目止め層13の目止め部材は、上述した機能(紙基材12面に形成された空隙の開口を塞ぐ機能)を有するものであれば、とくに限定されない。
例えば、目止め部材として、無機化合物や合成高分子化合物などを採用することができる。
例えば、無機化合物としては、顔料として用いられるデラミネーテッドカオリン(以下、単にデラミカオリンという)等のカオリンやタルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、シリカ、二酸化チタン、マイカ等を挙げることができる。
また、合成高分子化合物としては、例えば、密実型、中空型、またはコアシェル型等のタイプのプラスチックピグメントを挙げることができる。プラスチックピグメントの重合体成分としては、スチレン及び/またはメチルメタアクリレート等のモノマーを主成分とし、必要に応じてこれらと共重合可能な他のモノマーを用いることができる。
目止め部材の形状や大きさは、紙基材12の表面に形成された空隙の開口を塞いでバリア層14が空隙内に侵入するのを抑制できれば、とくに限定されない。
例えば、目止め部材の大きさは、平面視において、空隙の開口面積と同程度かよりも大きなものや、やや小さいものを用いることができる。なお、平均粒径(この平均粒径は、レーザー回折・散乱法により測定した粒径分布に基づいて計算される体積基準積算分布が50%となる値である)としては、0.1μm~10μmのものを用いることができる。
目止め部材の形状は、例えば、塊状のものや四角形状のもの、板状(扁平状)、紡錘状、針状、柱状、角状、球状など様々な形状のものを用いることができる。
とくに、板状(扁平状)のものであれば、空隙の開口を塞ぎ易くなるので、少ない量でかかる機能を発揮させることができる。しかも、大きさを基材11の空隙の開口よりも小さくても複数個が開口から内部に入れば、入り口付近で重なって空隙の開口部を塞ぐことができる。とくに、カオリンのうちデラミカオリンは、粒径が細かく薄層六角板状をしているので好ましい。
(目止め部材の含有量)
この目止め部材の含有量は、本バリアコート紙10の単位面積(m)当たりの固形分質量で表すことができる。
例えば、本バリアコート紙10の目止め層13における目止め部材の含有量は、本バリアコート紙10の単位面積(m)当たりの固形分質量で、0.5g/m以上8g/m以下である。この値は、好ましくは0.7g/m以上8g/m以下であり、より好ましくは0.7g/m以上7g/m以下であり、さらに好ましくは0.7g/m以上6g/m以下である。
なお、バリアコート用原紙11の目止め層13は、目止め部材と、微細セルロース繊維とを含有した目止め塗工液を紙基材12の表面に塗工して形成されている。
この目止め塗工液中の目止め部材の含有量は、固形分濃度(質量%)で、5質量%以上50質量%以下である。目止め部材の含有量が50質量%を超えると、塗工液の粘度が高くなるゆえ均一な塗工が難しくなる。また、目止め部材の含有量が5質量%未満であれば、バリア層14の目止め効果を適切に発揮させることができない。
したがって、目止め塗工液中の目止め部材の含有量は、上記範囲内が好ましく、より好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましく15質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上30質量%以下である。
この目止め塗工液は、目止め部材と微細セルロース繊維を溶剤に分散して調製された液体である。この目止め塗工液は、水性であり、溶剤は水である。
目止め塗工液は、後述するバインダー材を含んでもよく、その他、pH調整剤、スライムコントロール剤、消泡剤、ダスティング防止剤、保水剤等を使用してもよい。
また、目止め塗工液は水性であるから、塗工後の乾燥時は水分のみの蒸発のため、有機溶剤を使用した場合に発生する揮発性有機化合物の対策の必要がないという利点がある。
(微細セルロース繊維)
目止め層13中の微細セルロース繊維の詳細は後述するが、平均繊維幅が1nm~100nm程度の非常に細い繊維である。
この微細セルロース繊維は、隣接する微細セルロース繊維や目止め部材と結合することができる。しかも、紙基材12の表面を構成する繊維とも結合することができる。
このため、微細セルロース繊維は、紙基材12の表面に位置する目止め部材と紙基材12の表面を構成する繊維の両者間に位置する場合には、両者を互いに強力に連結させることができる。つまり、紙基材12の表面に配置した目止め部材を配置された場所で強固に固定することができるので、目止め部材の目止め機能を適切に発揮させることができる。
また、この微細セルロース繊維は、目止め塗工液中において、隣接する微細セルロース繊維同士が互いに電子反発等により分散した状態になる。
このため、目止め塗工液中では、目止め部材に結合して、目止め部材同士が凝集したり、沈降したりするのを抑制することができる。つまり、この微細セルロース繊維は、目止め塗工液中において、目止め部材の分散剤としても機能する。
目止め層13は、微細セルロース繊維により目止め部材が分散した状態で含有した目止め塗工液を紙基材12の表面に塗工されているので、目止め層13においては、紙基材12の表面に目止め部材を分散させて配置することができるようになる。
目止め部材を適切に分散させて紙基材12の表面に配置することにより、紙基材12の表面を構成するパルプ繊維上はもちろん、紙基材12の表面に形成された空隙の開口部を塞ぐ位置にも配置されている。
紙基材12の表面に配置された目止め部材には、上述したように微細セルロース繊維が結合している。この微細セルロース繊維は、紙基材12を構成する繊維と結合する性質を有している。とくにこの繊維がパルプ繊維の場合、水素結合により強く結合することができる。このため、基材11の表面に接して配置された目止め部材は、微細セルロース繊維により紙基材12の表面に強く連結された状態になっている。
したがって、目止め層13の上にバリア層14を塗工する際には、目止め層13の目止め部材の位置がずれるのを抑制できるので、バリア層14を適切に塗工することができる。しかも、目止め部材の位置がずれるのを抑制できるので、バリア層14が基材11内に侵入するのを適切に抑制できるようになる。このため、上述したようにバリア層14の厚みを薄くすることができる。
この微細セルロース繊維は、平均繊維幅が、1nm~30nmとなるように調製されているのが好ましい。より好ましくは2nm以上、30nm以下である。この場合、目止め層13および目止め塗工液中で上記機能をより発揮させることができる。また、目止め塗工液の粘度を調整し、塗工性を向上させることもできる。
(微細セルロース繊維の含有量)
この微細セルロース繊維の含有量は、本バリアコート紙10の単位面積(m)当たりの固形分質量で表すことができる。
例えば、本バリアコート紙10の目止め層13における微細セルロース繊維の含有量は、本バリアコート紙10の単位面積(m)当たりの固形分質量で、0.001g/m以上0.2g/m以下である。この値は、好ましくは0.005g/m以上0.1g/m以下であり、より好ましくは0.005g/m以上0.08g/m以下であり、さらに好ましく0.005g/m以上0.06g/m以下である。
この目止め層13中の微細セルロース繊維の含有量は、目止め部材100質量部に対する固形分質量比で表すことができる。
例えば、目止め層13中の微細セルロース繊維の含有量は、固形分質量比で、目止め部材100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である。この値は、好ましくは0.3質量部以上3質量部以下であり、より好ましくは0.4質量部以上3質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上2質量部以下である。
なお、バリアコート用原紙11の目止め層13は、上述した目止め塗工液を紙基材12の表面に塗工して形成されている。
この目止め塗工液中における微細セルロース繊維の含有量は、固形分濃度(質量%)で、0.01質量%以上1.0質量%以下である。微細セルロース繊維の含有量が1.0質量%を超えると分散性は頭打ちとなるし、塗工液の粘度が上昇し塗工が難しくなる。また、微細セルロース繊維の含有量が0.01質量%未満であれば、目止め部材の分散性を適切に発揮させることができない。
したがって、目止め塗工液中の微細セルロース繊維の含有量は、上記範囲内が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましく0.1質量%以上0.3質量%以下である。
つぎに、目止め層13中の微細セルロース繊維を調製する方法について説明する。
微細セルロース繊維を調製する方法は、上記機能を発揮するような微細繊維であれば、とくに限定されない。例えば、以下のような製法を採用して製造することができる。
原料となる繊維原料を機械的処理で解繊(この処理を以下、微細化処理という)して、微細セルロース繊維を製造することができる。
また、微細化処理に共する前に化学処理等の前処理工程を行った化学変性パルプ繊維を微細化処理して微細セルロース繊維を製造してもよいし、微細化処理したものを含むパルプ繊維を微細化処理して微細セルロース繊維を製造してもよい。
原料となる繊維原料は、セルロースを含むものであれば、とくに限定されない。例えば、一般的にパルプといわれるものを用いてもよいし、ホヤや海藻などから単離されるセルロースなどを含むものを繊維原料として採用することができるが、セルロース分子で構成されたものであれば、どのようなものであってもよい。
上記パルプとしては、例えば、木材系のパルプ(以下単に木材パルプという)や、溶解パルプ、コットンリンタなどの綿系のパルプ、麦わらや、バガス、楮、三椏、麻、ケナフのほか、果物等などの非木材系のパルプ、新聞古紙、雑誌古紙やダンボール古紙などから製造された古紙系のパルプなどを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、入手のし易さの観点から、木材パルプが繊維原料として採用しやすい。
この木材パルプには、様々な種類が存在するが、使用に際してとくに限定されない。
例えば、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの製紙用パルプなどを挙げることができる。なお、繊維原料として、上記パルプを使用する場合に上述した種類のパルプ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
機械的な微細化処理としては、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、カッターミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用のミキサーなどを使用することができるが、処理装置は、これらの装置に限定されるものではない。これらのうち、材料に均等に力を加えることができ、均質化に優れているという点で、高圧ホモジナイザーを用いるのが望ましいが、かかる装置に限定されない。
(化学変性微細セルロース繊維)
つぎに、化学変性微細セルロース繊維について説明する。
微細セルロース繊維は、上述したようにセルロースの水酸基がアニオン性の置換基で置換した構造を有する化学変性微細セルロース繊維を含んだものであってもよい。なお、微細セルロース繊維は、化学変性微細セルロース繊維のみからなるものであってもよく、化学変性微細セルロース繊維と他の微細繊維を含有するものであってもよい。
以下、化学変性微細セルロース繊維の製造方法を具体的に説明する。
この化学変性微細セルロース繊維は、原料となる繊維原料を化学変性処理(以下、この処理工程を化学処理工程という)した化学変性パルプ繊維を調製し、この化学変性パルプ繊維を微細化処理することにより製造することができる。
この化学処理工程は、供給された繊維原料を反応液に接触(接触工程)させた後、加熱反応(反応工程)に供してセルロースに所定の置換基を導入するというものである。つまり、セルロース(セルロース分子ともいう)は、下記一般式(1)(式中のmは整数を示す。)によって示されるD-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子であり、このセルロースが複数集合したものがパルプ繊維である。そして、このセルロースに所定のアニオン性の置換基(SO Z、CO Z、PO 2-Z)が導入されたパルプ繊維が化学変性パルプ繊維である。具体的には、この化学変性パルプ繊維は、セルロースの構成単位の少なくとも一部に一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)からなる群から選ばれる1種の構造を有するように製造されたパルプ繊維である。
なお、本明細書にいう繊維原料とは、セルロース分子を含む繊維状の部材をいい、例えば、木材等を原料するパルプなどが含まれる。パルプとは、パルプ繊維が集合した部材(パルプ繊維の集合体)であり、パルプ繊維とは、複数のセルロース繊維から構成された繊維状の部材を意味する。そして、セルロース繊維とは、複数の微細繊維(例えば、ミクロフィブリル等)が集合した繊維状の部材であり、微細繊維とは、D-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子であるセルロース分子(セルロース)が複数集合した部材を意味する。
以下、化学処理工程の各工程について説明する。
(接触工程)
化学処理工程における接触工程は、繊維原料に対して反応液に含まれるアニオン性の置換基の導入に必要な化合物を接触させる工程である。
接触工程における接触方法は、とくに限定されない。例えば、反応液に繊維原料(例えば、木材パルプなど)を浸漬等して繊維原料に反応液を含浸させてもよいし、繊維原料に対して反応液を塗布してもよいし、繊維原料に対して上記化合物を直接塗布(複数の化合物を使用する場合にはそれぞれ別々に塗布)したり、含浸させたり、スプレー噴霧してもよい。例えば、反応液に繊維原料を浸漬させる方法を採用すれば、均質に繊維原料と反応液を接触させ易いという利点が得られる。
反応液に用いる化合物は、上述したようにセルロース(一般式(1)に示す)に所定の置換基を導入できるものであれば、とくに限定されない。
例えば、下記の一般式(2)で示す構成単位を少なくとも有する場合には、スルファミン酸を挙げることができ、下記の一般式(3)で示す構成単位を少なくとも有する場合には、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)を挙げることができる。また、下記の一般式(4)で示す構成単位を少なくとも有する場合には、リン酸二水素アンモニウムを挙げることができる。
なお、アニオン性の置換基を導入することを本明細書では単に置換といい、反応後にセルロースを構成する少なくとも一部の水酸基に、置換反応や酸化反応などにより所定のアニオン性の置換基が結合した状態のことを意味する。
具体的には、本明細書のセルロースが構成単位であるDグルコースにSO Zが1個以上導入されたものや、CO Zが1個以上導入されたもの、PO 2-Zが1個以上導入されたDグルコースをセルロースの構成単位の一部に少なくとも有することを意味する。
例えば、セルロースの構成単位であるDグルコースの6位の水酸基が置換反応によりアニオン性のSO ZまたはPO 2-Zが導入された構造(上記置換基がいわゆるエステル結合した構造、例えば一般式(5)や一般式(7))や、Dグルコースの6位の水酸基が酸化反応によりCO Zに置き換わった(置換された)構造(例えば、一般式(6))を挙げることができる。
なお、Dグルコースの6位にのみ上記置換基が導入された構造としては、一般式(5)、一般式(6)または一般式(7)を挙げることができるが、置換基の導入位置はこれらに限定されない。例えば、上述したようにDグルコースの2位、3位、6位のいずれかに上記置換基のいずれかが導入された構造のほか、これらの導入可能な位置に2つ導入された構造や、3つ導入された構造であってもよい。
(一般式(1))
Figure 2023081334000002
(一般式(2))
Figure 2023081334000003

(式中、Rは、SO Z又はHを示す。ただし、Rは、同一でも異なっていてもよい。またSO Zを少なくとも1以上含む。Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。nは1以上の整数を示す。)
なお、SO Zは、セルロースのD-グルコースに最大で3個結合することができる。このため、Zは、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、1価の遷移金属イオン、オニウムイオン(アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオン等)、カチオン性高分子よりなる群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。また、Zが、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオン、ジアミンのようなカチオン性官能基を分子内に2以上含有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の場合もある。
(一般式(3))
Figure 2023081334000004

(式中、Rは、CO Z又はHを示す。ただし、Rは、同一でも異なっていてもよい。またCO Zを少なくとも1以上含む。Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。nは1以上の整数を示す。)
なお、CO Zは、セルロースのD-グルコースに最大で3個結合することができる。このため、Zは、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、1価の遷移金属イオン、オニウムイオン(アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオン等)、カチオン性高分子よりなる群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。また、Zが、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオン、ジアミンのようなカチオン性官能基を分子内に2以上含有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の場合もある。
(一般式(4))
Figure 2023081334000005

(式中、Rは、PO 2-Z又はHを示す。ただし、Rは、同一でも異なっていてもよい。またPO 2-Zを。少なくとも1以上含む。Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。nは1以上の整数を示す。)
なお、PO 2-Zは、セルロースのD-グルコースに最大で3個結合することができる。このため、Zは、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、1価の遷移金属イオン、オニウムイオン(アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオン等)、カチオン性高分子よりなる群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。また、Zが、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオン、ジアミンのようなカチオン性官能基を分子内に2以上含有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の場合もある。
(一般式(5))
Figure 2023081334000006
(一般式(6))
Figure 2023081334000007
(一般式(7))
Figure 2023081334000008
なお、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)の式中のnは、1以上の整数である。式中のnは、セルロースに導入されるアニオン性の置換基の導入量に応じて適宜調整される。例えば、化学変性パルプ繊維を構成するセルロースの重合度が3000とした場合、nは60以上であり、好ましくは300以上であり、より好ましくは600以上である。
また、上記例では、本実施形態の化学変性パルプ繊維を構成するセルロースの構成単位の少なくとも一部のDグルコースにおいて、2位、3位、6位に置換反応や酸化反応により上記置換基(SO Z、CO Z、またはPO 2-Z)が導入された場合について説明したが、上記構造以外に、各位の炭素に上記置換基が導入されたDグルコース(例えば、-C-SO Z、-C-CO Z、-C-PO 2-Zを有する構造)を構成単位に有していても良い。これらの構造としては、例えば、上述したようにDグルコースの2位、3位、6位のいずれかの炭素に上記置換基のいずれかが直接導入された構造のほか、これらの導入可能な位置に上記置換基のいずれかが2つ導入された構造や、上記置換基のいずれかが3つ導入された構造であってもよい。
(構成単位に一般式(2)を有する場合)
以下、化学変性パルプ繊維のセルロースの構成単位の一部に上記一般式(2)を有する場合(セルロースにSO Zが導入されたもの)について具体的に説明する。
まず、反応液には、スルファミン酸と尿素を水に溶解させた溶液を用いることができる。なお、接触工程により繊維原料に反応液(スルファミン酸と尿素)を接触させた状態のものを以下、反応液含浸繊維という。なお、反応液に含まれる尿素は、主に触媒として機能するものである。
(反応液の混合比)
反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に対して反応液を含浸させる方法を採用する場合、反応液に含まれるスルファミン酸と尿素の混合比は、とくに限定されない。例えば、後述する実施例に記載の混合比にすることができる。
(反応液の接触量)
繊維原料に接触させる反応液の量は、繊維原料に対して反応液中のスルファミン酸と尿素が所定の割合となるように接触させる。
具体的には、後述する反応工程に供する際の反応液含浸繊維中の繊維原料に対する反応液中のスルファミン酸の量と尿素の量が適切な量となるように接触させる。
次工程の反応工程に供する際の反応液含浸繊維の状態としては、例えば、反応液含浸繊維をそのままの状態つまり繊維原料と反応液を接触させた状態のままで積極的な水分除去を行わない状態のものや、繊維原料と反応液を接触させた状態のものから水分を積極的に除去した状態のもの、などを挙げることができる。
前者(積極的な水分除去を行わない状態)の反応液含浸繊維とは、繊維原料と反応液を接触させた状態(例えば、スラリー状の状態などを含む)のものや、反応液と繊維原料を接触させた状態のものから繊維原料を取り出して静置して調製したものなどを含むことを意味する。
一方、後者(積極的な水分除去を行った状態)の反応液含浸繊維とは、繊維原料と反応液を接触させた状態から水分を意識的に除去したものをいい、例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態から繊維原料を取り出して風乾等により自然乾燥させて調製したものや、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを脱水ろ過して調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに風乾して調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに循環送風式の乾燥機を用いて乾燥し調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを循環送風式の乾燥機や加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、などを含むことを意味する。
反応工程に供する際の反応液含浸繊維は、上述した積極的な水分除去を行わない状態のものや、積極的な水分除去を行ってある程度の水分を除去した状態のままであってよい。また、乾燥により水分を除去する場合には、乾燥後の水分率が1%程度であってもとくに問題がない。後者の方法を採用すれば、反応工程へ供給する際の反応液含浸繊維中の水分を低くできるので、反応工程の加熱反応における反応時間を短くできる。このため、後者の方法を採用すれば、スルホン化パルプの生産性を向上させることができるという利点が得られる。また、脱水処理を行う方法を採用すれば、反応液を多量に処理する際より効率よく反応液含浸繊維を調製することができるという利点が得られる。
なお、積極的に乾燥する方法を採用する場合、反応液含浸繊維の水分率が1%程度まで乾燥してもよく、1%よりもかなり低い絶乾状態にまで乾燥する方法で水分を除去してもよい。
本明細書中では、反応液含浸繊維の水分率が1%以上の非絶乾状態のものを湿潤状態ともいう。例えば、反応液を含浸等させたままの状態のものやある程度脱水処理した状態のものはもちろん、ある程度乾燥処理した状態のものも本願明細書では湿潤状態ということがある。
また、本明細書中の絶乾とは、例えば、塩化カルシウムや五酸化二リンなどの乾燥剤を入れたデシケーター等で減圧したり、長時間加熱乾燥処理を行って水分率を1%よりも低くした状態のものを意味する。
したがって、接触工程において、上記後者の方法を採用する場合には、反応液含浸繊維の水分率を非絶乾状態にする方法を採用してもよいし、絶乾状態にする方法を採用してもよいが、好ましくは非絶乾状態の方法を採用するのがよい。
なお、本明細書中の水分率は、下記式を用いて算出される。

水分率(%)=100-(反応液含浸繊維における固形分質量(g)/水分率測定時における反応液含浸繊維(g))×100
なお、反応液を接触させる際の繊維原料の状態はとくに限定されない。例えば、乾燥した状態であってもよいしウェットの状態(つまり湿潤状態)であってもよい。
(反応工程)
上記のごとく接触工程で調製された反応液含浸繊維は、次工程の反応工程へ供給される。
化学処理工程における反応工程は、接触工程から供給された反応液含浸繊維中の、繊維原料に含まれるセルロースとスルファミン酸と尿素とを反応させる工程である。具体的には、反応液含浸繊維に含まれるパルプ等を構成するセルロースにSO Zで導入する工程(上述した二種類の構造にする工程)である。
この反応工程は、反応液含浸繊維の繊維原料中のセルロースにSO Zを導入することができる反応であれば、とくに限定されない。
例えば、反応液含浸繊維を加熱することにより反応化を促進させる方法(加熱反応)を採用することができる。以下では、反応工程において、加熱反応を用いた製法を代表として説明する。
(反応工程における反応温度)
反応工程における反応温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、上記繊維原料を構成するセルロースにSO Zを導入できる温度であれば、とくに限定されない。
例えば、反応工程に供給した反応液含浸繊維の雰囲気温度が100℃以上200℃以下となるように調整する。好ましくは雰囲気温度が120℃以上200℃以下である。
加熱時における雰囲気温度が200℃よりも高くなると、繊維の熱分解が起こったり、繊維の変色の進行が早くなったりする。一方、反応温度が100℃よりも低くすると、得られる反応後の繊維の透明性が低くなる傾向にある。
したがって、得られる反応後の繊維の透明性を向上させるという観点では、反応工程における反応温度(具体的には雰囲気温度)は、100℃以上200℃以下が好ましい。より好ましくは120℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは120℃以上160℃以下である。
なお、反応工程に用いられる加熱器などは、接触工程後の反応液含浸繊維を直接的または間接的に上記要件を満たしながら加熱することができるものであれば、とくに限定されない。
例えば、公知の乾燥機や、減圧乾燥機、マイクロ波加熱装置、オートクレーブ、赤外線加熱装置、熱プレス機を用いたホットプレス法等を採用することができる。とくに、操作性の観点では、反応工程でガスが発生する可能性があるので、循環送風式の乾燥機を使用するのが好ましい。
(反応工程における反応時間)
反応工程として上記加熱方法を採用した場合の加熱時間(つまり反応時間)は、反応液含浸繊維を構成するセルロースにSO Zを適切に導入することができれば、とくに限定されない。
例えば、反応工程における反応時間は、反応温度を上記範囲となるように調整した場合、1分以上となるように調整することができる。好ましくは、5分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは15分以上である。加熱時間をあまり長くしてもSO Zの導入量の向上が期待できない傾向にある。
したがって、反応工程として上記加熱方法を採用した場合の反応時間は、反応時間や操作性の観点においては、5分以上300分以内が好ましい。より好ましくは5分以上120分以内とするのがよい。
(接触工程の予備乾燥工程)
上記例で、接触工程における反応液含浸繊維の調製方法において、積極的な水分除去を行った状態の反応液含浸繊維を調製する方法について説明したが、この製法で加熱しながら水分を除去する方法(予備乾燥工程)を採用する場合(例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを直接加熱乾燥したり、脱水処理したものを加熱乾燥するような場合など)には、加熱温度が所定の温度以下となるように調整するのが望ましい。
この予備乾燥工程における乾燥温度は、反応液含浸繊維に含まれる水分や周囲の水分を除去でき、かつ上記反応が進行しない程度の温度となるように調整されていれば、とくに限定されない。
例えば、予備乾燥工程における乾燥温度として、反応液含浸繊維の雰囲気温度が100℃以下となるように調整することができる。この乾燥温度は、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは70℃以上100℃以下である。
(接触工程における水分調整工程)
接触工程において、反応液と接触させる繊維原料を水分率が所定の範囲内に入るように水分調整工程を含んでもよい。
この水分調整工程は、繊維原料が所定の水分率となるように乾燥したり、加湿したりして所望の水分量となるように調整する工程である。この水分調整工程を含むことにより、反応液等と接触させる際の繊維原料中の水分量をある程度均質にすることができるので、連続操業における製品安定性を向上させる可能性がある。
また、繊維原料をある程度乾燥して水分量を少なくすれば(例えば、水分率が1%以上10%以下)、保管性を向上させることができるという利点がある。
(反応工程の後の洗浄工程)
化学処理工程における反応工程の後に、反応後の繊維を洗浄する洗浄工程を含んでもよい。SO Zを導入した後の繊維は、スルファミン酸等の影響により表面が酸性になっていることがある。また、反応液を過剰に接触させれば、未反応の反応液が残存する可能性がある。このような場合、反応を確実に終了させ、余分な反応液を除去して中性状態にする洗浄工程を設けることにより、取り扱い性を向上させることが可能となる。
この洗浄工程は、反応後の繊維を水で洗浄した際の洗浄水がほぼ中性になるように洗浄することができれば、とくに限定されない。例えば、反応後の繊維が中性になるまで純水等を用いて洗浄してもよいし、アルカリ等を用いた中和洗浄を行ってもよい。
上記のごとき製法を用いることにより、アニオン性であるSO Zが所定の範囲内となるように導入された本実施形態の化学変性パルプ繊維を得ることができる。
本実施形態の化学変性パルプ繊維におけるSO Zの導入量は、例えば、0.8mmol/g以上、7mmol/g以下である。より好ましくは、1mmol/g以上、5mmol/g以下である。
なお、本実施形態の化学変性パルプ繊維は、上述したようにセルロースの構成単位に上記一般式(2)を有する以外にも、上述した水酸基が結合している2位、3位、6位の一部または全部の炭素に直接SO Zが結合した構造を構成単位の一部に有していてもよい。
また、本明細書では、セルロースの構成単位のDグルコースにSO Zが導入された構造にすることを、エステル化またはエステル化反応と称することがある。
(構成単位に一般式(3)を有する場合)
以下、本実施形態の化学変性パルプ繊維のセルロースの構成単位の一部に上記一般式(3)を有する場合について具体的に説明する。
繊維原料を構成するセルロースの構成単位であるDグルコースにCO Zを導入するには、TEMPO酸化触媒反応を採用することができる。繊維原料に対して水中でTEMPO(またはその誘導体)-触媒/臭化ナトリウム-酸化促進剤/次亜塩素酸ナトリウム-酸化剤を接触させ、室温で反応することによりカルボキシ基が導入される。このTEMPO酸化触媒反応の具体的な操作に関しては、例えば Tsuguyuki Saito, Satoshi Kimura, Yoshiharu Nishiyama and Akira Isogai, Biomacromolecules, 8 (8), 2485-2491 (2007).を参考とすることができる。
(TEMPO酸化触媒)
繊維原料を酸化する際に用いるTEMPO酸化触媒は、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシルの分子骨格を有する誘導体を用いても良い。具体的には、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカルを発生する化合物が好ましい。
(酸化促進剤)
繊維原料の酸化に用いる臭化物またはヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などを使用することができる。臭化物またはヨウ化物の使用量は酸化反応を促進できる範囲で選択できる。
(酸化剤)
繊維原料の酸化に用いる酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。中でも、生産コストの観点から、現在工業プロセスにおいて最も汎用されている安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。
TEMPO酸化触媒反応は、温和な条件であっても繊維原料の酸化反応を円滑に効率良く進行させることができるため、反応温度は15~30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められるが、酸化反応を効率良く進行させるためには水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して反応液のpHを9~12、好ましくは10~11程度に維持することが望ましい。
反応の終点は、pHの低下が認められなくなるまで行うことが望ましい。しかしながら、長時間アルカリ性溶液に繊維原料を接触すると繊維の分解によって短繊維化を生じる恐れがあることと、生産効率の観点から、2時間程度が望ましい。
また、CO Zが導入された化学変性パルプ繊維におけるアニオン性のCO Zの導入量は、例えば、0.8mmol/g以上7mmol/g以下である。より好ましくは、0.8mmol/g以上5mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.8mmol/g以上2.5mmol/g以下である。
(構成単位に一般式(4)を有する場合)
以下、本実施形態の化学変性パルプ繊維のセルロースの構成単位の一部に上記一般式(4)を有する場合について具体的に説明する。
繊維原料であるパルプ繊維を構成するセルロースの構成単位であるDグルコースにPO 2-Zを導入するには、リン酸エステル化反応を採用することができる。繊維原料に対して水中でリン酸二水素アンモニウム-リン酸化剤/尿素-触媒を接触させ、120℃から180℃で加熱反応することによりPO 2-Zが導入される。このリン酸化反応の具体的な操作に関しては、例えば Yuichi Noguchi, Ikue Homma and Yusuke Matsubara, Cellulose, 24, 1295-1305 (2017). を参考とすることができる。
(リン酸化剤)
繊維原料と反応するような化合物として、リン酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらの塩またはエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、低コストであり、扱いやすく、PO 2-Zを有する化合物が好ましいが、特に限定されない。
PO 2-Zを有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、PO 2-Z導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウムがより好ましく、リン酸二水素アンモニウムがさらに好ましいが、特に限定されない。
(PO 2-Z導入工程)
繊維原料へのリン酸基導入時の反応を促進するため、加熱する方法が特に有効である。PO 2-Zの導入における加熱処理温度は特に限定されないが、該繊維原料の熱分解や加水分解等が起こりにくい温度帯であることが好ましい。
例えば、繊維原料としてセルロースを含む繊維原料を選択した場合は熱分解温度の観点から、250℃以下であることが好ましく、セルロースの加水分解を抑える観点から、100~180℃で加熱処理することが好ましい。また、加熱処理時間は該繊維原料の熱分解や加水分解等を抑制する観点、および製造効率の観点から短時間であることが望ましく、具体的には2時間以内が望ましい。
また、PO 2-Zが導入された化学変性パルプ繊維におけるアニオン性のPO 2-Zの導入量は、0.8mmol/g以上7mmol/g以下である。より好ましくは、0.8mmol/g以上5mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.8mmol/g以上2.5mmol/g以下である。
以上のごとき方法で調製された化学変性パルプ繊維を上述した微細化処理工程に供して微細化すれば、化学変性微細セルロース繊維が製造できる。
(バインダー材)
なお、目止め層13は、バインダー材を含有してもよい。
このバインダー材は、目止め部材同士の接着剤や目止め層13と紙基材12の接着剤や目止め層13とバリア層14の接着剤として機能するものである。バインダー材としては、かかる機能を発揮するものであり、使用する目止め部材、紙基材、バリア材との相性により、適宜調整することができる。
例えば、水溶性高分子樹脂や水分散性高分子樹脂などを採用することができる。水溶性高分子樹脂としては、ポリビニルアルコールやポリ酢酸ビニル樹脂、澱粉などを採用することができる。水分散性高分子樹脂としては、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン-メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルの共重合体ラテックスやメタクリル酸エステルの共重合体ラテックス等のアクリル系共重合体ラテックス等のラテックスが挙げられる。
(バインダー材の含有量)
このバインダー材の含有量は、バリアコート紙10の単位面積(m)当たりの固形分質量で表すことができる。
例えば、本バリアコート紙10の目止め層13におけるバインダー材の含有量は、バリアコート紙10の単位面積(m)当たりの固形分質量で、0.1g/m以上3.3g/m以下である。この値は、好ましくは0.15g/m以上3g/m以下であり、より好ましくは0.2g/m以上3g/m以下である。
この目止め層13中のバインダー材の含有量は、目止め部材100質量部に対する固形分質量比で表すこともできる。
例えば、目止め層13中のバインダー材の含有量は、固形分質量比で、目止め部材100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下である。この値は、好ましくは8質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは8質量部以上80質量部以下であり、さらに好ましくは8質量部以上70質量部以下である。また、この値の下限値は上記のごとき5質量部以上であり、好ましくは8質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上である。
なお、バリアコート用原紙11の目止め層13は、上述し目止め塗工液を紙基材12の表面に塗工して形成されている。
この目止め塗工液中におけるバインダー材は、固形分濃度(質量%)で、1質量%以上、20質量%以下である。バインダー材の含有量が20質量%を超えると効果が頭打ちとなる。また、バインダー材の含有量が1質量%未満であれば、接着力が弱いため目止め部材が脱落したり、後述するヒートシール強度が不足したりする。
したがって、目止め塗工液中のバインダー材の含有量は、上記範囲内が好ましく、より好ましくは3質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましく3質量%以上12質量%以下である。
(バリアコート用原紙11の水蒸気透過度、通気量)
上記のごとく、本実施形態のバリアコート用原紙11の目止め層13は、上記のごとく紙基材12の表面に塗工して積層して形成される。
しかしながら、かかる状態(紙基材12の表面に目止め層13のみを有する状態、つまりバリアコート用原紙11の状態)では、上述したように、バリア機能(水蒸気バリア性および/またはガスバリア性)を発揮しない。
例えば、本バリアコート紙10は、紙基材12の表面に目止め層13を積層した状態(本実施形態のバリアコート用原紙11の状態)におけるバリア機能としての水蒸気透過度が、1000g/(m・24hr)以上となるように形成されている。この値は、より好ましくは、本バリアコート紙10のバリアコート用原紙11の水蒸気透過度が、1000~5000g/(m・24hr)である。
なお、この水蒸気透過度の算出は、実施例に記載の方法により算出される。また、この水蒸気透過度が、水蒸気バリア性を評価する値である。
また、本バリアコート紙10は、バリアコート用原紙11の状態におけるバリア機能としての通気量が、1(L/min)以上となるように形成されている。この値は、より好ましくは、2(L/min)以上である。
なお、この通気量の算出は、JIS Z 8808-2013に準拠して測定された値であり、詳細は実施例に記載の方法により算出される。また、この通気量が、ガスバリア性を評価する値である。
つまり、本バリアコート紙10は、上記のごときバリアコート用原紙11の状態(目止め層13を紙基材12の表面に積層したのみの状態)において、バリア機能(水蒸気透過度を抑制する機能および通気量を抑制する機能)を適切に発揮させることができない状態となるように形成されている。言い換えれば、本バリアコート紙10の目止め層13は、あくまでもバリア層14が紙基材12の空隙内に侵入するのを抑制するための目止めとして機能する層であり、本バリアコート紙10のバリア機能を発揮させるために設けられた層ではない。
(バリア層14)
つぎに、本バリアコート紙10のバリア層14について詳細に説明する。
図1に示すように、本バリアコート紙10のバリア層14は、水蒸気が透過するのを抑制したり、ガスの通気量を抑制する機能を有する層である。具体的には、バリア層14は、水分散性のバリアコート剤を含有する層であり、バリアコート用原紙11の表面上(つまり目止め層12の表面)に積層して、本バリアコート紙10のバリア機能(水蒸気バリア性および/またはガスバリア性)を発揮するための層である。
このバリア層14は、上記機能を発揮するものであれば、とくに限定されない。
例えば、このバリア層14の水分散性のバリアコート剤としては、水分散性のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂などから選ばれる1種以上の化合物を含有していれば、とくに限定されず、例えば、市販の上記化合物を含有するものをバリア層14として使用することができる。
なお、スチレンフリー、つまり、スチレンモノマーを原料に使用していないバリアコート剤を採用すれば、欧州で先行するスチレン規制に対応できるので好ましい。
(バリア層14の塗工量)
本バリアコート紙10において、バリア層14は、塗工量が固形分質量で2g/m以上10g/m以下である。この値は、好ましくは、2g/m以上8g/m以下である。2g/mに満たない場合には、バリア層14が薄くなりすぎて均一なバリア層が得られずバリア性が不足する。一方、10g/mを超えるとバリア層14が厚くなりすぎてバリア性は頭打ちとなり、コスト高となる。
したがって、バリア層14は、塗工量が固形分質量で上記範囲内となるように塗工することにより、厚みが薄くても上記機能を適切に発揮させることができる。
なお、このバリア層14を形成するための塗工液を、バリア塗工液という。
このバリア層14は、上述した目止め層13と同様の成分、例えば、pH調整剤、スライムコントロール剤、消泡剤、ダスティング防止剤、保水剤等を使用してもよい。
(本バリアコート紙10のバリア機能の評価)
上述したように、本バリアコート紙10は、紙基材12の表面に目止め層13が積層したバリアコート用原紙11と、このバリアコート用原紙11の目止め層13上にバリア層14を順に積層したシート状の積層体である。
この積層体の状態における本バリアコート紙10は、以下のような優れたバリア機能(水蒸気バリア性およびガスバリア性)を発揮させることができる。
なお、この水蒸気バリア性(つまり防湿性)は、上記のごとく水蒸気透過度で評価することができる。また、このガスバリア性(つまり酸素透過性の低い機能)は、上記のごとく通気量で評価することができる。
例えば、本バリアコート紙10は、バリア機能としての通気量が、1(L/min)未満となるように調製されている。この通気量は、より好ましくは0.5(L/min)以下であり、さらに好ましくは0.3(L/min)以下となるように調製されている。
また、例えば、本バリアコート紙10は、バリア機能としての水蒸気透過度が、1000g/(m・24hr)未満となるように調製されている。この水蒸気透過度は、好ましくは900g/(m・24hr)以下であり、より好ましくは600g/(m・24hr)以下であり、さらに好ましくは500g/(m・24hr)以下であり、さらに好ましくは300g/(m・24hr)以下となるように調製されている。
(ヒートシール性)
とくに、バリア層14は、紙基材12に積層した状態において、バリア層14の表面が露出するように積層するように形成してもよい。つまり、紙基材12、目止め層13、バリア層14の順に積層した状態において、このバリア層14が本バリアコート紙10の表層(つまり本バリアコート紙10の最表層)に位置するように積層することができる。
この場合、バリア層14の表面が本バリアコート紙10の一の面(例えば、表面)に相当するので、このように積層するバリア層14にヒートシール加工性を有するバリアコート剤を含有させれば、本バリアコート紙10のシール性を向上させることができる。
このようなバリア機能を発揮しつつ、ヒートシール性を有するバリアコート剤としては、例えば、水分散性のポリオレフィン系樹脂を採用することができる。とくにポリオレフィン系樹脂の中でも、例えば、ポリエチレンエマルションやポリエチレン-ポリブテン混合体エマルションなどやこれらの混合物が上記機能を発揮させる上で好ましい。
なお、バリアコート剤は、上記バリア機能を有する素材(例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂など)とヒートシール性を有する素材を含有するようにしてもよい。
また、ヒートシール性を有する素材としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体エマルション、アクリル酸エステル重合体エマルション、スチレン-ブタジエン共重合体エマルション等が挙げられるが、かかる化合物に限定されず、加熱すれば熱融着し得る機能(ヒートシール機能)を有するものであれば、とくに限定されない。
上記のごとき構成(つまりヒートシール性を有する構成)の本バリアコート紙10は、例えば、一の面同士(つまり上記バリア層14の表面同士)を重ねた状態でヒートシールを行えば、重ねた部分同士を熱融着により連結させることができる。つまり、上記のごとき積層した本バリアコート紙10は、一の面(上記バリア層14の表面)同士を重ねた状態で加熱すると、熱融着する機能(ヒートシール性)を有するように形成することができる。このため、本バリアコート紙10を用いてヒートシール加工すれば、本バリアコート紙10を袋状に形成することができる。
すると、袋状にした本バリアコート紙10の内部の収容空間内に食品や化粧品や医薬品等を収容して、ヒートシール加工により密閉にすれば、収容物が吸湿したり、酸化して変質するのを適切に抑制することができる。
(積層方法)
つぎに、本バリアコート紙10の製造方法について説明する。
本バリアコート紙10は、上記のごときシート状の積層体となるように形成することができれば、その製造方法はとくに限定されない。
例えば、以下のようにして本バリアコート紙10を製造することができる。
(バリアコート用原紙11を調製)
まず、本バリアコート紙10のバリアコート用原紙11を調製する。
本実施形態のバリアコート用原紙11は、紙基材12の表面上に上記の目止め塗工液(少なくとも目止め部材と微細セルロース繊維が溶剤に分散した分散体)を塗工して形成する。
この塗工方法は、とくに限定されない。例えば、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、フィルムトランスファーコーターなどの塗工機を用いて塗工することができる。
紙基材12に目止め塗工液が塗工されたシート状の部材は、乾燥工程に供される。この乾燥工程に用いられる乾燥装置は、とくに限定されない。例えば、多筒ドライヤーのほか、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤーなどの熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を使用することができる。とくに、非接触式の乾燥装置を用いて乾燥すれば、紙基材12の表面上に目止め層13を有するバリアコート用原紙11を適切に調製することができる。
(目止め層13の表面粗さ)
乾燥後の目止め層13の表面(つまりバリアコート用原紙11の表面)は、バリア層14が均一に塗工され易い粗さに調整されているのが好ましい。
例えば、かかる状態における目止め層13の表面粗さが、1.0μm以上2.0μm以下となるように形成する。より好ましくは1.0μm以上1.8μm以下であり、さらにより好ましくは1.2μm以上1.7μm以下である。
なお、この乾燥後の目止め層13の表面の表面粗さは、後述する実施例に記載の方法であるISO 25178に準拠して測定した算術平均高さ(Sa)であり、得られた値を平均化した値である。
上記のごとく調製したバリアコート用原紙11の表面上(つまり紙基材12の表面上に積層した目止め層13の表面上)に上記のバリア塗工液を上記と同様の方法により塗工する。塗工後、上記の同様の方法で乾燥すれば、本バリアコート紙10を製造することができる。
(本バリアコート紙10の用途)
本バリアコート紙10は、上記のごとく優れたバリア機能(水蒸気バリア性およびガスバリア性)を有しており、取り扱い性も優れているので、とくに包装用シートとして適している。しかも、再利用性も向上させているので、環境負荷の低減も向上させることができる。このため、本バリアコート紙10は、例えば、食品、化粧品、医薬品などの包装に使用することができる。
本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によってなんら制限を受けるものではない。なお、とくに断らない限り、部および%は、質量部、質量%を示す。
本実験では、以下の方法によりバリアコート紙に関する評価を行った。
(評価方法)
(水蒸気透過度(水蒸気バリア性))
図2に示すように、容量200m、口径30mmlのガラス瓶に、蒸留水を20g入れ、測定サンプルの塗工面が容器の内側に位置するように、測定サンプルで蓋をして50℃の熱風乾燥機に6時間入れた。
乾燥機に入れる前と乾燥処理後の蒸留水の減少量に基づいて水蒸気透過度を算出した。蒸留水の減量分が測定サンプルを透過した水量になるので、この値を1m、24時間に換算(g/(m・24hr))した。
(通気量(ガスバリア性))
JISZ8808-2013「排ガス中のダスト濃度の測定方法」に準拠し、測定ヘッド(開口面積920mm)、エアーポンプ、流量計、積算計を備える装置を用いて測定した。測定ヘッドは、測定ヘッドと重りで荷重3kgとなるようにする。ポンプ流量は、無負荷時15L/min、ゴムシートでの封止時0L/minとした。測定時間は1minとした。
測定サンプルは、塗工していない面をエアーポンプ側にセットして測定した。
(表面粗さ)
バリアコート用原紙の表面の表面粗さは、ワンショット3D形状測定機(株式会社キーエンス製、VR3200)を用いて測定し、算術平均高さ(Sa)を求めた。
バリアコート用原紙の表面の表面粗さは、1.0μm~2.0μmであった。
(塗工量)
塗工層の塗工量(g/m)は、塗工前後の絶乾質量から、単位面積あたりの絶乾塗工量を求めた。
(紙基材)
紙基材には、両更晒クラフト紙60g/m(丸住製紙(株)製、スターパックB-S)を用いた。
(目止め層用の目止め塗工液の調製)
目止め部材としての顔料と、分散剤としての微細セルロース繊維と、バインダー材(表中ではバインダーと表記)と、を水で希釈して、目止め塗工液(表中の第一塗工層用)を調製した。
各成分およびその含有量は、表1、2、3に示す。
実験に使用した顔料のカオリンの平均粒径は約10μmであり、平均アスペクト比は約100であった。
実験に使用した顔料のデラミカオリンの平均粒径は約0.15μmであった。
実験に使用した顔料の炭酸カルシウムの平均粒径は約1.2μmであった。
また、実験に使用した分散剤としての微細セルロース繊維(表2のD1、丸住製紙(株)製、ステラファイン(登録商標))は、実施形態におけるセルロースのセルロースの構成単位の少なくとも一部に上記一般式(2)で示すアニオン性の置換基が導入された構造を有する化学変性微細セルロース繊維である。
(バリア層用のバリア塗工液の調製)
バリアコート剤として水分散性のバリア剤(表2)を用い、水で希釈して、バリア塗工液(表中の第二塗工層用)を調製した(表1、表3)。
(バリアコート紙の作製)
紙基材の表面上に、目止め塗工液(表中の第一塗工層用)を、固形分質量で塗工量が所定の値(表1、表3)となるようにメイヤーバーを用いて片面塗工し乾燥(熱風乾燥機を用いて設定温度120℃、2分間乾燥)して目止め層(表中の第一塗工層)を形成し、バリアコート用原紙とした。ついで、目止め層(表中の第一塗工層)の表面上にバリア塗工液(表中の第二塗工層用)を、固形分質量で塗工量が所定の値(表1、表3)となるようにメイヤーバーを用いて片面塗工し、同様に乾燥してバリア層(表中の第二塗工層)を形成し、本発明のバリアコート紙を作製した。
なお、紙基材の表面上に、目止め層(表中の第一塗工層)を有するシート部材が、実施形態のバリアコート用原紙に相当する。
(比較例)
目止め層用の目止め塗工液を塗工しない以外は、実施例と同様にして比較サンプルを作製し、実施例と同様にバリア機能を評価した。成分や含有量は、表2および表4に示す。
Figure 2023081334000009
Figure 2023081334000010
Figure 2023081334000011
Figure 2023081334000012
実験結果から、以下のことが確認できた。
(1) 本発明のバリアコート紙は、第一塗工層(目止め層)だけの状態(実施形態のバリアコート用原紙)では、塗工量を固形分質量で1g/m以上6g/m以下にしても、水蒸気透過度及び通気量を下げることができない(表3参照)。しかし、第一塗工層(目止め層)の面上に第二塗工層(バリア層)を積層することにより水蒸気透過度及び通気量を大きく下げることができる(表1、表3参照)。
(2) 本発明のバリアコート紙は、第一塗工層(目止め層)を設けることにより、第二塗工層(バリア層)の塗工量を固形分質量で8g/m以下にすることができる(表1、表3参照)ので、バリア剤の使用量を低減できる。
(3) 表4の比較例1に示すように、バリア剤を本発明のバリアコート紙と同程度の塗工量で第一層塗工するだけでは、本発明のバリアコート紙と同様の水蒸気透過度(1000g/(m・24hr)未満)及び通気量(1(L/min)未満)を得ることができない。また、表4の比較例3,4に示すように、バインダー材を本発明の第一塗工層と同程度の塗工量で第一層塗工するだけでも、本発明のバリアコート紙と同様の水蒸気透過度(1000g/(m・24hr)未満)及び通気量(1(L/min)未満)を得ることができない。一方、比較例2、5のようにバリア剤の塗工量を11g/m以上(バリア層を2層塗工する場合も含む)に増量して初めて、本発明のバリアコート紙と同等の水蒸気透過度や通気量にできる。
(4) 本発明のバリアコート紙は、第一塗工層(目止め層)と第二塗工層(バリア層)を組み合わせることにより、第一塗工層(目止め層)の塗工量が1g/m以上8g/m以下であっても、優れたバリア機能(水蒸気バリア性およびガスバリア性)を発揮させることができる。しかも、第一塗工層(目止め層)の塗工量が1g/mでも十分なバリア機能を発揮させることができる。
(5) 本発明のバリアコート紙は、第一塗工層(目止め層)の塗工量を増加させて、第二塗工層(バリア層)の塗工量と同程度の6~8g/mにしても、バリア機能は大きく向上しない。
以上の実験結果から、第一塗工層(目止め層)が本発明のバリアコート紙のバリア機能の発現に寄与していることが確認できた。
また、第一塗工層(目止め層)の塗工量が固形分質量で、第二塗工層(バリア層)と同程度か、それ以下(1g/m~8g/m)が好ましいことが確認できた。この現象としては、以下の理由が推察される。
まず、本発明のバリアコート紙は、紙基材に目止め塗工液を塗工し乾燥して第一塗工層(目止め層)を形成した後、この第一塗工層(目止め層)の表面上にバリア塗工液を塗工して第二塗工層(バリア層)を形成して作製される。このバリア塗工液中の水分の含有量は、50質量%~90質量%である。
(1) 第一塗工層(目止め層)の塗工量が多くなりすぎると、第一塗工層がバリア性を発揮するようになってくる。このため、第二塗工層(バリア層)を乾燥する際に、第二塗工層(バリア層)中の水分が第一塗工層(目止め層)側への移動するのを制限される。すると、第二塗工層(バリア層)を形成する際の乾燥工程において、第二塗工層(バリア層)中の水分は、第二塗工層(バリア層)の外気に接する面側へ向かって移動し、かかる面から蒸発するようになる。この現象が連続することにより、第二塗工層(バリア層)中に、第二塗工層(バリア層)の表面に開口を有する孔が形成される。この孔がバリア性の低下の要因になると推察される。
図3には、紙基材にバリア層のみを塗工量5g/mとなるように塗工したもの(図3(A)の電子顕微鏡写真)と、紙基材にバインダー材のみを含有した塗工液を塗工量6g/mとなるように塗工してバリア層を形成し、さらにその上に第二塗工層(バリア層)を塗工量5g/mとなるように塗工したもの(図3(B)の電子顕微鏡写真)を示す。後者の写真には、多数の孔(口径10μm程度の孔)が確認できた。そして、後者のバリア性は、前者と比べて低かった。
(2) 第一塗工層(目止め層)内に微小なクラックが発生し、このクラックがバリア性の低下の要因になったものと推察される。この理由としては、第一塗工層(目止め層)の塗工量が多くなりすぎると、第二塗工層(バリア層)を形成する際に、第一塗工層(目止め層)における第二塗工層(バリア層)に面する界面部分がバリア塗工液から水分を吸収してしまう。すると、第一塗工層(目止め層)内において、紙基材側と第二塗工層(バリア層)側に伸縮の差が生じてしまい、第一塗工層(目止め層)内に微小なクラックが発生するものと推察される。
また、第二塗工層(バリア層)の塗工量が、10g/m以下が好ましいことが確認できた。この現象としては、以下の理由が推察される。
第二塗工層(バリア層)の塗工量を多くすると、バリア塗工液の濃度を上げる必要が生じる可能性がある。この場合、バリア塗工液の粘度が高くなる傾向にあることから、乾燥する際、水分の抜け道(孔の流路径や口径など)が大きくなって、バリア性の低下の要因になると推察される。
つぎに、実施例で使用した目止め層に含有する分散剤としての微細セルロース繊維の目止め部材として顔料に対する分散性を確認した。
この実験(実施例)では、表5(表5中のA1、B2及びD1は表2と同じ)のとおり、分散剤の濃度を変えた塗工液を調製した。
分散性の評価は、50mlのガラス製メスシリンダーに塗工液を50ml入れて静置し、懸濁液と透明液の界面高さを測定した。
なお、比較例(比較例6、7)として、塗工紙製造における顔料分散剤として使用されているアクリルポリマー系分散剤(アロン(登録商標)-T50、東亞合成株式会社製、表5ではD2と表記)を用いた。
Figure 2023081334000013
結果を図4に示す。
図4に示すように、本発明のバリアコート紙の目止め層の塗工液において、分散剤として微細セルロース繊維を用いることにより、一般的な塗工印刷用紙製造における塗料の顔料分散剤として使用されているアクリルポリマー系分散剤と比べて、界面高さの時間変化を小さくできることが確認できた。また、分散剤濃度を非常に低濃度0.01質量%にした状態であっても、長時間にわたって良好な分散性が得られることが確認できた。
一般的な塗工印刷用紙の塗料のバインダー材の含有量は、顔料100質量部に対し5~15質量部程度であるが、本発明のバリアコート紙の目止め層の微細セルロース繊維を用いることにより、バインダー材の含有量が15質量部以上、さらに20質量部以上であっても、良好な顔料分散性が得られることが確認できた。
本発明のバリアコート紙は、食品などの包装用シートとして適している。
10 バリアコート紙
11 バリアコート用原紙
12 紙基材
13 目止め層
14 バリア層

Claims (19)

  1. 紙基材と該紙基材の少なくとも一方の面上に目止め部材と微細セルロース繊維とを含有する目止め層が積層したバリアコート用原紙と、該バリアコート用原紙の前記目止め層の上に積層されたバリア層と、を有するシート状の積層体であり、
    前記バリアコート用原紙の水蒸気透過度が、1000g/(m・24hr)以上であり、
    前記積層体のJIS Z 8808-2013に準拠して測定される通気量が、1(L/min)未満である
    ことを特徴とするバリアコート紙。
  2. 前記目止め層は、塗工量が固形分質量で1g/m以上10g/m以下であり、
    前記前記バリア層は、塗工量が固形分質量で2g/m以上10g/m以下である
    ことを特徴とする請求項1記載のバリアコート紙。
  3. 前記積層体の水蒸気透過度が、1000g/(m・24hr)未満である
    ことを特徴とする請求項1または2記載のバリアコート紙。
  4. 前記目止め層において、
    前記目止め部材の含有量は、固形分質量で、0.5g/m以上8g/m以下であり、
    前記微細セルロース繊維の含有量は、固形分質量で、0.001g/m以上0.2g/m以下である
    ことを特徴とする請求項1または2記載のバリアコート紙。
  5. 前記目止め層における前記微細セルロース繊維の含有量は、
    固形分質量比で、前記目止め部材100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である
    ことを特徴とする請求項1または2記載のバリアコート紙。
  6. 前記目止め層がバインダー材を含んでおり、
    該バインダー材の含有量は、固形分質量で、0.1g/m以上3.3g/m以下である
    ことを特徴とする請求項1または2記載のバリアコート紙。
  7. 前記目止め層における前記バインダー材の含有量は、
    固形分質量比で、前記目止め部材100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下である
    ことを特徴とする請求項6記載のバリアコート紙。
  8. 前記微細セルロース繊維は、
    セルロースの構成単位の少なくとも一部にアニオン性の置換基が導入された化学変性微細セルロース繊維を含む
    ことを特徴とする請求項1または2記載のバリアコート紙。
  9. 前記バリア層が、
    水分散性のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂から選ばれる1種以上を含有する
    ことを特徴とする請求項1または2記載のバリアコート紙。
  10. 前記目止め層中の目止め部材が、
    カオリン、デラミカオリン、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、シリカ、二酸化チタン、マイカから選ばれる1種以上である
    ことを特徴とする請求項1または2記載のバリアコート紙。
  11. 請求項1または請求項2に記載のバリアコート紙に用いられるバリアコート用原紙であって、
    紙基材の少なくとも一方の面に積層した目止め層を有しており、
    該目止め層が、
    目止め部材と、微細セルロース繊維と、を含有しており、
    水蒸気透過度が、1000g/(m・24hr)以上である
    ことを特徴とするバリアコート用原紙。
  12. 前記バリアコート用原紙のJIS Z 8808-2013に準拠して測定される通気量が、1(L/min)以上である
    ことを特徴とする請求項11記載のバリアコート用原紙。
  13. 前記目止め層は、塗工量が固形分質量で1g/m以上10g/m以下である
    ことを特徴とする請求項11または12記載のバリアコート用原紙。
  14. 前記目止め層において、
    前記目止め部材の含有量は、固形分質量で、0.5g/m以上8g/m以下であり、
    前記微細セルロース繊維の含有量は、固形分質量で、0.001g/m以上0.2g/m以下である
    ことを特徴とする請求項11または12記載のバリアコート用原紙。
  15. 前記目止め層における前記微細セルロース繊維の含有量は、
    固形分質量比で、前記目止め部材100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である
    ことを特徴とする請求項11または12記載のバリアコート用原紙。
  16. 前記目止め層がバインダー材を含んでおり、
    該バインダー材の含有量は、固形分質量で、0.1g/m以上3.3g/m以下である
    ことを特徴とする請求項11または12記載のバリアコート用原紙。
  17. 前記目止め層における前記バインダー材の含有量は、
    固形分質量比で、前記目止め部材100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下である
    ことを特徴とする請求項16記載のバリアコート用原紙。
  18. 前記微細セルロース繊維は、
    セルロースの構成単位の少なくとも一部にアニオン性の置換基が導入された化学変性微細セルロース繊維を含む
    ことを特徴とする請求項11または12記載のバリアコート用原紙。
  19. 前記目止め層中の目止め部材が、
    カオリン、デラミカオリン、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、シリカ、二酸化チタン、マイカから選ばれる1種以上である
    ことを特徴とする請求項11または12記載のバリアコート用原紙。

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