JP2023080740A - 電極、溶融塩電解装置及び金属マグネシウムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】塩化マグネシウムの溶融塩電解において極間距離を適切に維持することが可能な電極を提供する。【解決手段】電極10であって、第1電解面14及び第1電解面14と反対側を向く第2電解面15を含む、黒鉛製の複極本体11と、複極本体11内に形成され、第1電解面14から第2電解面15まで貫通する、少なくとも1つの貫通孔12と、電極10の隣に配置される他の電極との間の極間距離を確保するスペーサ13とを備え、スペーサ13は、貫通孔12内を通って延びる貫通部16、貫通部16の一端側で第1電解面14上に設けられる第1固定部17、及び一端と反対側の他端側で第2電解面15上に設けられ、第1固定部17との間に複極本体11をその厚さ方向に挟み込んで固定する第2固定部18を含み、貫通部16及び第1固定部17が、セラミック製であり、第2固定部18が、鋼製である。【選択図】図1B

Description

本発明は、電極、溶融塩電解装置及び金属マグネシウムの製造方法に関する。
金属チタンの鋳塊等は、工業的にはクロール法によって製造されたスポンジチタンを使用して製造されている。そして、このクロール法を含むスポンジチタン製造プロセスは、塩化工程、還元分離工程、破砕工程及び電解工程の四工程に大別しうる。これらの工程のうち、還元分離工程では、四塩化チタンを金属マグネシウムで還元してスポンジチタンを製造する。そして、電解工程は、還元分離工程の副生成物である塩化マグネシウムを、溶融塩電解により分解して、金属マグネシウムを得る工程である。
溶融塩電解に用いられる溶融塩電解装置の電解槽内には、陽極(アノード)、複極、陰極(カソード)が並んで配列されている。このとき、陽極、複極、陰極はそれぞれ、電解槽内のレンガ製等の耐火物台座に載置させることがある。
塩化マグネシウムの溶融塩電解では、腐食、高温、および溶融塩浴の流動環境で電解槽を長期間操業する場合がある。その間、複極には種々の応力が作用し、それにより複極の位置ずれや形状変化が生じることがある。このことは、電流効率の低下や短絡の発生を招く。例えば、複極の位置ずれにより複極と複極、複極と陽極、又は複極と陰極との間で極間距離が適切に保たれず電流効率が低下し、塩化マグネシウムの電気分解による金属マグネシウムの生産性が低下することがある。これを防ぐため、様々な技術が知られている。
例えば、特許文献1には、「溶融塩化マグネシウムの電解槽において、アノードおよびカソードもしくは複極、または炉壁に埋め込まれたスペーサーによって、前記アノードおよび前記カソードもしくは前記複極のそれぞれの電極間隔が所定間隔に保持され、前記スペーサーが窒化珪素セラミックで構成されていることを特徴とする電解槽」が記載されている。当該スペーサーは、「アノードおよび複極の表面に複極の厚さの半分ほどの深さの孔に彫り込みが設けられ、この孔に挿入して固定され、またアノード7およびカソード8並びに複極12、13のそれぞれの電極間隔を保持するようにしている。」ことが記載されている(特許文献1の図2参照)。
特開2006-028570号公報
特許文献1を参照し、絶縁性セラミックであるアルミナ製スペーサを、黒鉛製複極の表面に設けられた凹部孔に挿入し設置した後、塩化マグネシウムの電気分解行った。特許文献1ではスペーサが設置されているが、電気分解で発生する塩素ガスは発生量が多く、かつ浮上速度も速いため、複極は振動しやすい。この場合、電気分解の間に、主に塩素ガスの上昇に起因する溶融塩浴の流動等によりスペーサが揺れ動き、その揺動でスペーサを埋め込んだ複極が欠けたり損耗したりし、複極に埋め込まれたスペーサが脱落することがあった。その結果、複極の位置がずれて極間距離の維持がされないようになり、塩化マグネシウムの電解効率が低下した。
そこで、本発明は一実施形態において、塩化マグネシウムの溶融塩電解において極間距離を適切に維持することが可能な電極を提供することを目的とする。また、かかる電極を複極として電解槽内に配置することで、塩化マグネシウムの溶融塩電解において金属マグネシウムを安定して得ることが可能な溶融塩電解装置及び、金属マグネシウムの製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は一側面において、塩化マグネシウムの溶融塩電解において溶融塩浴に浸漬配置される複極として使用される電極であって、第1電解面及び該第1電解面と反対側を向く第2電解面を含む、黒鉛製の複極本体と、前記複極本体内に形成され、前記第1電解面から前記第2電解面まで貫通する、少なくとも1つの貫通孔と、当該電極の隣に配置される他の電極との間の極間距離を確保するスペーサとを備え、前記スペーサは、前記貫通孔内を通って延びる貫通部、該貫通部の一端側で第1電解面上に設けられる第1固定部、及び該一端と反対側の他端側で第2電解面上に設けられ、前記第1固定部との間に前記複極本体をその厚さ方向に挟み込んで固定する第2固定部を含み、前記貫通部及び前記第1固定部が、セラミック製であり、前記第2固定部が、鋼製である、電極である。
本発明に係る電極の一実施形態においては、前記複極本体の厚さ(T)と、該複極本体の厚さ方向における前記第1電解面から前記第1固定部の先端までの距離(d)との比(d/T)が5%以上15%以下の範囲内である。
また、本発明は別の側面において、電解槽と、電解槽内に配置された陽極、複極及び陰極とを備え、前記複極の少なくとも1つが、上記いずれかの電極である溶融塩電解装置である。
本発明に係る溶融塩電解装置の一実施形態においては、前記電解槽内に、前記陽極、少なくとも1つの前記複極及び前記陰極がこの順序で配列されて配置され、前記複極の前記第1固定部が前記陰極側に位置する。
本発明に係る溶融塩電解装置の一実施形態においては、陽極、複極及び陰極の配列方向で、前記第1電解面から前記複極の第1固定部の先端までの距離が、前記第1電解面から該複極と隣り合う陰極又は複極までの極間距離の、50%以上90%以下の範囲内である。
また、本発明は別の側面において、上記いずれかの溶融塩電解装置を使用し、塩化マグネシウムを電気分解して金属マグネシウムを製造する電解工程を含む、金属マグネシウムの製造方法である。
本発明の一実施形態によれば、塩化マグネシウムの溶融塩電解において極間距離を適切に維持することができる。また、本発明の更なる一実施形態によれば、かかる電極を複極として電解槽内に配置することで、塩化マグネシウムの溶融塩電解において金属マグネシウムを安定して得ることができる。
本発明に係る電極の実施形態を模式的に示す斜視図である。 図1AのX-X線における断面図である。 図1Aの複極本体に形成される貫通孔を示す、第1電解面の正面図である。 図1Aの複極本体に形成される貫通孔の別の配置例を示す、第1電解面の正面図である。 本発明に係る溶融塩電解装置の実施形態を模式的に示す断面図である。 図2AのY-Y線における断面図である。 複極本体の貫通孔及びスペーサの別の配置例を示す、図2Bと同様の断面図の別の例である。 本発明に係る溶融塩電解装置の別の実施形態を模式的に示す断面図である。 図3AのZ-Z線における断面図である。 比較例1における溶融塩電解装置の陽極、複極及び陰極を示す断面図である。
本発明は以下に説明する各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して発明を形成してもよい。なお、図面では、発明に含まれる実施形態等の理解を助けるために模式的に示す部材もあり、図示の大きさや位置関係等については必ずしも正確でない場合がある。
さらに、本明細書において、「上方」は、例えば図2A、図2B、図2C、図3A及び図4において矢印で示すように、電解槽120の底壁123側から上蓋130側へ向かう方向を意味し、「下方」は、上蓋130側から電解槽120の底壁123側へ向かう方向を意味する。また、本明細書において、「溶融金属マグネシウム」は、塩化マグネシウムを電解分解したことで得られた溶融状態の金属マグネシウムを意味する。溶融塩電解において外部から別途供給する溶融塩はその組成を適宜調整可能であり、例えば、塩化マグネシウムとすることができるし、また溶融塩浴と同様の組成とすることができる。
[1.電極]
図1A及び図1Bに示す電極10は、塩化マグネシウムの溶融塩電解において溶融塩浴に浸漬配置される複極として使用されるものであって、複極本体11と、貫通孔12と、スペーサ13とを備える。
従来は、先述したように、図4に示すような電解槽が知られており、電解中、複極310a、310bに埋め込まれたスペーサ313a、313bが脱落して複極の配置がずれることで、電流効率が低下したり、短絡したりすることがある。また、スペーサ313a、313bが脱落するとまではいかずともその配置が傾いてしまい極間距離が保てなくなることがある。また、スペーサ313a、313bが設けられた凹部孔がスペーサ313a、313bの揺動などによりさらに必要以上に深くなり、スペーサ313a、313bが複極内部に引っ込んで極間距離が保てなくなることがある。この問題は、以下のような要因で発生すると考えられる。複極310a、310bの材質は黒鉛であり、スペーサ313a、313bの材質はセラミックである。一般的にセラミックは黒鉛よりも硬度が高い。塩素ガスの上昇やこれに伴う塩化マグネシウムを含む溶融塩浴の流動等の負荷がスペーサ313a、313bにかかると、高硬度を有するスペーサ313a、313bが埋め込まれた複極310a、310b内で揺れ動くに従って、複極310a、310bの、スペーサ313a、313bが埋め込まれた凹部孔の周囲の接触部が徐々に磨耗されていく。スペーサ313a、313bとの接触部の磨耗が激しくなると凹部孔に欠けが生じ、スペーサ313a、313bが脱落して、該スペーサ313a、313bが埋め込まれていた複極310a、310bと隣り合う複極310a、310bとの極間距離が適切に維持されなくなり、複極310a、310bが傾くことがある。この複極310a、310bの傾きは、スペーサ313a、313bの単なる脱落により生じることがある他、スペーサ313a、313bが極間に挟まることにより生じることもある。このような場合、傾いた複極310a、310bの電解面では電圧や電流の分布がばらつき、電気分解による塩化マグネシウムの生成量が変化する。すなわち、塩化マグネシウムの電気分解のバランスが失われると考えられる。
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、塩素ガスの上昇や溶融塩浴の流動等による応力に対してセラミック製のスペーサが黒鉛製の複極内で揺動し難くなるように、複極本体を貫通する貫通孔を形成し、その貫通孔にスペーサの一部を挿入して該スペーサを取り付けることを案出するに至った。このとき、スペーサの第1固定部及び第2固定部で複極本体を第1電解面側及び第2電解面側の両側から挟むことにより、該スペーサが強固に固定されるので、仮に貫通孔の一部が破壊されてもスペーサの脱落が抑制され、極間距離を安定して維持できる。
さらに、電解槽内に陽極、複極及び陰極をこの順序で配列させて配置した溶融塩電解装置において、スペーサの第1固定部及び第2固定部のうち、陰極側(複極において塩素ガスが発生する側)に位置する第1固定部をセラミック製とし、陽極側(複極において金属マグネシウムが生成する側)に位置する第2固定部を鋼製とすることが有利である。このようにすれば、塩素ガスの上昇や溶融塩浴の流動等によるスペーサの揺動で貫通孔が若干広がって隙間が形成されたとしても、複極本体とスペーサとの隙間には、陰極側では溶融塩浴が浸入し、陽極側では金属マグネシウムが浸入し、いずれの側でも隙間が埋まりやすい。特に、陽極側に位置する鋼製の第2固定部は、その鉄成分と、その隙間に浸入する金属マグネシウムとが合金を形成しうると考えられ、スペーサをさらに強固に固定する。その結果、塩化マグネシウムの電気分解の間に、スペーサの脱落がより確実に抑制され、長期間にわたって極間距離を安定して維持できる。
以下、好適な態様について図面を使用しながら説明する。
(複極本体)
複極本体11は、第1電解面14及び該第1電解面14と反対側を向く第2電解面15を含む。複極本体11の材質は黒鉛であり、複極本体11は一枚の板から製造してもよいが、加工性を考慮し、複数枚の板を組合せて製造してもよい。また、複極本体11の形状は限定されるものではないが、例えば板状、角筒状(図3B参照)及び円筒状が挙げられる。
(貫通孔)
貫通孔12は、複極本体11内に第1電解面14から第2電解面15まで貫通するように形成される。当該貫通孔12は、複極本体11内に少なくとも1つ形成されている。複極本体11に設けるスペーサ13の数により貫通孔12の数は適宜調整可能である。複極本体11内における貫通孔12の数が複数である場合、各貫通孔12に取り付けられたスペーサ13間で第1固定部17同士及び隣り合う第2固定部18同士が接触しないように、複数の貫通孔12を相互に所定の間隔で離して設けてよい。また、複極本体11内に複数の貫通孔12を、例えば規則的又は不規則的に配置してもよい。規則的な配置の例としては、図1Cに示すように、隣り合う貫通孔12をそれぞれほぼ等しい離間距離となるように配置してもよく、図1Dに示すように、各貫通孔12を千鳥状に配置してもよい。
なお、複極本体11の厚み方向に直交する方向における貫通孔12の断面形状は、後述するスペーサ13の貫通部16の断面形状にも依存するが、例えば多角形状や、真円、楕円その他の円形状等が挙げられる。
(スペーサ)
スペーサ13は、当該電極10の隣に配置される他の電極との間の極間距離を確保する。スペーサ13の、セラミック製である第1固定部17が極間距離の適切な維持に主として貢献する。ここで、「極間距離」とは、電極の隣に、他の電極として複極又は陰極が配置されている場合、電極と複極との間又は電極と陰極との間の距離を意味する。
スペーサ13は、貫通孔12内を通って延びる貫通部16、該貫通部16の一端側で第1電解面14上に設けられる第1固定部17、及び該一端と反対側の他端側で第2電解面15上に設けられ、第1固定部17との間に複極本体11をその厚さ方向に挟み込んで固定する第2固定部18を含む。これにより、塩化マグネシウムの電気分解の間に、塩素ガスや溶融塩浴の流動をスペーサ13及び複極本体11に受けても、複極本体11からスペーサ13が外れることを良好に抑制することができる。このように複極本体11にスペーサ13が強固に固定されるので、そのスペーサ13で所要の極間距離を長期間にわたって維持することができる。なお、陽極および陰極は電解槽の外側まで延びて配置されるので、複極に比べると固定しやすい。これに対し、複極である電極は電解槽内に配置されるので、陽極や陰極に比べてその配置が変動しやすい。スペーサ13は、当該複極の配置変動を抑制し、極間距離を適切に維持するためのものである。
(貫通部、第1固定部)
貫通部16及び第1固定部17は、短絡の発生を回避し、かつ塩化マグネシウムを含む溶融塩浴の流動に耐えうる硬さを有する観点から、セラミック製とする。セラミックの具体例としては、酸化アルミニウム、窒化ケイ素及び炭化ケイ素等が挙げられる。
また、第1固定部17の形状としては円柱状や角柱状等が挙げられる。第1固定部17の形状が円柱状である場合、溶融塩浴の溶融塩がその周囲を円滑に流れて浴流れが阻害されにくくなるので、第1固定部17にかかる負荷を軽減することが可能である。このため、複極本体11からのスペーサ13の落下が良好に抑制され、一定の極間距離を保持しやすい。また、例えば第1固定部17の形状が円柱状であり且つ貫通孔12の形状が円柱状である場合、第1固定部17の直径は、貫通孔12の直径よりも大きいことが好ましい。これにより、複極本体11を第2固定部18と挟み込んで固定するだけでなく、塩化マグネシウムの電解中、溶融塩が貫通孔12へ侵入することが抑制されるので、複極本体11からのスペーサ13の落下が良好に抑制される。
また、貫通部16の形状は、貫通孔12の形状に合わせ適宜調整すればよい。例えば、貫通孔12の断面形状が円形状である場合、貫通部16の断面形状も円形状とすることができる。なお、複極本体11からのスペーサ13の落下の抑制の観点から、貫通部16の直径を貫通孔12の直径とほぼ同じ大きさとして、貫通部16が貫通孔12内に摩擦係合されるようにすることが好ましい。貫通孔12と貫通部16との間にクリアランスを設けても良いが、該クリアランスは、複極本体11へのスペーサ13取付作業の容易化とスペーサ13の複極本体11への適切な固定とを並立する観点から、例えば1mm以下であることが好適である。黒鉛はなめらかな材質であるのでクリアランスはほぼないとしてもスペーサ13を複極本体11に取り付けることができる。
なお、貫通部16と第1固定部17とは成形加工等により一体に構成されていてもよいし、貫通部16と第1固定部17とは組み立て可能に構成されてもよい。
(第2固定部)
第2固定部18は、鋼製とする。第1固定部17および貫通部16が複極本体11から脱落することを防ぐために、第2固定部18は貫通部16と係合して使用される。これにより、スペーサ13が複極本体11に強固に固定されるので、複極本体11からのスペーサ13の落下が良好に抑制される。その作用機序は必ずしも明らかではないものの、鋼製である第2固定部18を使用する利点は次のように考えられる。例えば溶融塩電解装置(図2A及び図2B参照)では、塩化マグネシウムの電気分解を行うと、陽極141と複極本体111aの第2電解面115aとの極間であって第2電解面115a側から生成される金属マグネシウムが、第2固定部118aと第2電解面115aとの間に侵入して該第2固定部118a中の鉄成分と合金化され、また、該合金の形成により第2固定部118aや貫通部116aと第2電解面115aや貫通孔112aとの隙間が埋まり、この結果スペーサ113aと複極本体111aとがより強固に接合されると考えられる。当該鋼の具体例としては、例えば炭素鋼及びステンレス鋼等が挙げられ、製造される金属マグネシウムへの不純物混入抑制の観点から炭素鋼が好ましい。
また、第2固定部18を貫通部16に取り付ける方法は特に限定されず、例えば貫通部16の先端部の表面に凹部孔を形成し且つ第2固定部18に貫通孔を形成し、鋼製の連結ピンをその貫通孔に通すとともに凹部孔内まで挿入する方法や、貫通部16の先端部の外面に螺旋状の溝(雄ネジ部)を形成し、また第2固定部18の第2電解面15側の表面に凹部孔を形成させ、その凹部孔の内面に螺旋状の溝を(雌ネジ部)を形成し、それらの雄ネジ部と雌ネジ部を螺合させる方法が挙げられる。
また、第2固定部18の形状としてはピン形状、リング状、円柱状や角柱状等が挙げられる。第2固定部18の形状が円柱状である場合、溶融塩浴の流動が円滑になり、第2固定部18の負荷を軽減することが可能である。このため、複極本体11からのスペーサ13の落下が良好に抑制され、一定の極間距離を保持しやすい。また、例えば第2固定部18の形状が円柱状であり且つ貫通孔12の形状が円柱状である場合、第2固定部18の直径が貫通孔12の直径よりも大きいことが好ましい。これにより、複極本体11が当該第2固定部18と第1固定部17との間に、より確実に挟み込まれて固定され、複極本体11からのスペーサ13の落下が良好に抑制される。
なお、第2固定部18の厚さ(複極本体11の厚さ方向における第2電解面15から第2固定部18の先端までの距離)は、スペーサ13が落下しないように複極本体11を挟める程度の大きさであればよい。当該第2固定部18の厚さは、導電性を有することがある鋼製の第2固定部18が塩化マグネシウムの電気分解に悪影響を及ぼさないように、例えば0.3mm~2.0mmの範囲内であればよい。
スペーサの脱落を抑制することで塩化マグネシウムの溶融塩電解において極間距離を安定させる観点から、図1Bに示すように、複極本体11の厚さ(T)と、該複極本体11の厚さ方向における第1電解面14から第1固定部17の先端までの距離(d)との比(d/T)は、5%以上15%以下の範囲内であることが好ましい。より具体的には、距離(d)は、極間距離も考慮して決定されうるが、例えば3mm~10mmの範囲内である。
[2.溶融塩電解装置]
図2Aに示す溶融塩電解装置100は、電解槽120と、上蓋130とを備える。電解槽120は、後述する第1の隔壁121及び第2の隔壁122の存在により、電解室140と、金属回収室150とに区画されている。さらに、図2Bに示すように、電解槽120の電解室140には、陽極141と、第1複極110a及び第2複極110bと、陰極142とがこの順序で配列されており、それらの陽極141、第1複極110a及び第2複極110b並びに陰極142は、電解槽120内に貯留される溶融塩浴Bfに浸漬させて配置されている。上下方向に直交する方向で、陽極141、複極110a及び110b並びに陰極142が配列された方向を、配列方向という。図示の電解室140内には、複極110a及び110bが2つ配置されているが、複極は少なくとも1つ配置されていればよい。なお、第1複極110a及び第2複極110bのうちの少なくとも1つが、先述した電極10であればよい。
(電解槽)
電解槽120は、上側に開口部が形成された容器形状であり、例えば主として酸化アルミニウム等の耐火煉瓦その他の適切な材料からなる。図2Aに示す電解槽120は、底壁123と該底壁123に連結されて上方に延在した2対の側壁124とで構成される。この電解槽120には、その内部に供給された金属塩化物を含む溶融塩からなる溶融塩浴Bfが貯留される。電解室140で塩化マグネシウムの電解で生成された金属マグネシウムを金属回収室150に送るとともに、溶融塩を金属回収室150から電解室140に送って、溶融塩浴を循環させるため、第1の隔壁121及び第2の隔壁122が配置される。ここでは、溶融塩電解装置100は、第1の隔壁121と第2の隔壁122との間に、流通口125を形成したことで、矢印Aに示す溶融塩浴の流動(電解室140から金属回収室150への流れ)を確保することができる。また、第2の隔壁122の下面側にも溶融塩浴の流動が可能な通路が形成されており、矢印Bの流動(金属回収室150から電解室140への流れ)を確保できる。
(溶融塩)
塩化マグネシウムの電気分解により、溶融金属として金属マグネシウム(Mg)が生成されるとともに、ガスとして塩素ガス(Cl2)が発生する。溶融塩には、上記の塩化マグネシウム(MgCl2)の他、支持塩として、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)及び/又は、フッ化カルシウム(CaF2)等を含ませる場合がある。支持塩として使用される成分は、塩化マグネシウムよりも電気分解される電圧が高いものを使用することが好ましい。金属マグネシウムは、金属チタンを製造するクロール法における四塩化チタンの還元に、また塩素ガスは、チタン鉱石の塩化にそれぞれ用いることができる。この電気分解の原料とする塩化マグネシウムとしては、クロール法で副次的に生成されるものを使用可能である。
(上蓋)
上蓋130は、溶融塩浴Bfが高温であることから電解槽120の外部に対する断熱の役割を果たす。また、上蓋130を配置して電解槽120を閉空間とし、溶融塩電解時に陽極141から生じる塩素ガスの漏洩を防止するために外部に対して電解槽120内を負圧にする。
また、上蓋130の材質は特に限定されるものではないが、溶融塩電解時に上蓋130と陽極との間で生じる短絡を防ぐ観点から、該上蓋130の溶融塩浴Bf側である蓋裏面131側が絶縁性材料であればよく、また上蓋130の溶融塩浴Bf側の蓋裏面131側にセラミック材料を配置してよく、また、キャスタブル耐火物を施工してもよい。このキャスタブル耐火物を設ける方法は公知の方法でよく、例えば乾式吹付けや湿式吹付け等にて蓋裏面131側にキャスタブル耐火物を施工すればよい。
上蓋130には、第1のガス回収口132と、第2のガス回収口133と、給排口134とが設けられてよい。これらの口はそれぞれ1つでもよく、複数でもよい。
第1のガス回収口132は、電解室140において塩化マグネシウムの電気分解により生成した塩素ガスを回収することに用いられる。第1のガス回収口132は、電解室140が位置する領域に設けられている。
また、第2のガス回収口133では、電解室140において塩化マグネシウムの電気分解により生成したガスが回収されることがある。第2のガス回収口133は、金属回収室150が位置する領域に設けられている。第2のガス回収口133は、電気分解で発生したガスのうち、第1のガス回収口132で回収されずに金属回収室150に流れた残りのガスの回収に用いられることがある。
また、給排口134は、電解室140において塩化マグネシウムの電気分解により生成した溶融金属マグネシウムの回収や、電解槽120内への溶融塩の供給に使用される。給排口134は、金属回収室150が位置する領域に設けられている。
(電解室)
電解室140では、塩化マグネシウムを電気分解して、該電気分解により溶融金属マグネシウム及び塩素ガスが生成される。図2Bに示すように、電解槽120の電解室140では、貯留される溶融塩浴Bfに陽極141と、第1複極110a及び第2複極110bと、陰極142との配列方向で浸漬配置されてよい。このとき、電解室140内において、陽極141、第1複極110a及び第2複極110b、陰極142の各電解面は、溶融塩浴Bfの深さ方向(図2Aでは上下方向)と略平行となるように配置されている。
陽極141は、上蓋130に挿通され下方に延在し、溶融塩浴Bfにその一部が浸漬するように配置されている。陽極141の形状としては特に限定されず、例えば板状、円柱状及び角柱状等が挙げられる。溶融金属マグネシウムの製造効率の観点から、溶融塩電解装置100は陽極141及び陰極142をそれぞれ複数備えるものとしてよい。
なお、陽極141の材質は特に限定されるものではないが、黒鉛等が挙げられる。
第1複極110a及び第2複極110bは、耐火煉瓦製の台座126a、126bの上にそれぞれ配置されてよい。図2Bに示すスペーサ113a、113bの配置例では、第1複極110aの第1固定部117aと第2複極110bの第2固定部118bとが、上下方向の同じ高さの位置で、配列方向において対向するようにそれぞれ配置されている。
また、図2Cに示すスペーサ113a、113bの配置例のもう一つとしては、スペーサ同士の接触をより確実に回避する観点から、配列方向において、第1複極110aの第1固定部117aと第2複極110bの第2固定部118bとが対向しないように、上下方向にずれて配置されてもよい。すなわち、第1複極110aの第1固定部117aと第2複極110bの第2固定部118bは、第1複極110aの第1電解面114aにおいて第1固定部117aが存在する領域と、第2複極110bの第2電解面115bにおいて第2固定部118bが存在する領域とが配列方向で重ならないように配置されている。
配列方向で、複極110a、110bの第1電解面114a、114bから第1固定部117a、117bの先端までの各距離は、第1電解面114a、114bから該複極110aと隣り合う陰極142までの極間距離又は該複極110bまでの極間距離の、50%以上90%以下であることが好ましい。
より詳細には、配列方向で、第1複極110aの第1電解面114aから第1固定部117aの先端までの距離d1は、第1複極110aの第1電解面114aから該第1複極110aと隣り合う第2複極110bまでの極間距離L1の、50%以上90%以下であることが好ましい。
また、配列方向で、第2複極110bの第1電解面114bから第1固定部117bの先端までの距離d2は、第2複極110bの第1電解面114bから該第2複極110bと隣り合う陰極142までの極間距離L2の、50%以上90%以下であることが好ましい。
それぞれ上記範囲内であることにより、塩化マグネシウムの溶融塩電解中、第1複極110aと第2複極110bとの極間距離L1、及び第2複極110bと陰極142との極間距離L2を適切に維持しやすい。
陽極141と陰極142とは、ブスバーや導電線等を介して電源に接続されている。溶融塩電解では、該陽極141及び該陰極142で、例えば下記化学式(1)等といった所定の反応に基づいて、塩化マグネシウムが塩素と金属マグネシウムに分解される。より詳細には、溶融塩浴Bf中にて、陰極142側を向く陽極141の電解面、第1複極110aの第1電解面114a及び第2複極110bの第1電解面114bで、酸化反応により塩素ガスが生じる。また、溶融塩浴Bf中にて、陽極141側を向く第1複極110aの第2電解面115a、第2複極110bの第2電解面115b及び陰極142の電解面で、還元反応により金属マグネシウムが生成される。
MgCl2→Mg+Cl2・・・化学式(1)
なお、陰極142の材質は特に限定されるものではないが、黒鉛、炭素鋼等が挙げられる。
陰極142は、図2Aに示すように、外側に延長する延長部分142aを有し、この延長部分142aが、側壁124を貫通して電解槽120の外部へ突き出るように配置されている。陰極142の形状は、板状とすることがあるが、陽極141の形状等を勘案して適宜変更可能であり、角筒状や円筒状等でもよい。この場合であっても、前記延長部分142aを陰極142は有する。例えば、図3A及び図3Bに示す溶融塩電解装置200では、陽極241から配列方向に沿って(図示の態様では陽極241から離れる方向において)、陽極241、第1複極210a、第2複極210b、陰極242の順に配列されている。より詳細には、陽極241の周囲を取り囲んで陽極241から間隔をおいて、台座226a上に角筒状の第1複極210aが配置され、第1複極210aの周囲を取り囲んで第1複極210aから間隔をおいて、台座226b上に角筒状の第2複極210bが配置され、第2複極210bの周囲を取り囲んで第2複極210bから間隔をおいて角筒状の陰極242が配置されている。陰極242は、角筒状の一部から外側に延長する延長部分242aをさらに有し、この延長部分242aが、側壁124を貫通して電解槽120の外部へ突き出るように配置されている。このとき、図3Bでは、第1複極210a内のスペーサ213aの第1固定部217aと第2複極210b内のスペーサ213bの第2固定部218bとが対向するようにそれぞれ配置されているが、第1複極210aの第1固定部217aと第2複極210bの第2固定部218bとが対向しないように配置されてもよい。
なお、陽極と複極、陰極と複極、複極と複極の極間距離はそれぞれ、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
(金属回収室)
金属回収室150では、電解室140において電気分解により生成した溶融金属を回収する。金属回収室150は、電解室140と連通しており、熱交換器(不図示)を有することがある。熱交換器は、電解槽120内の溶融塩浴Bfの温度を調整することができる。該熱交換器は、流体を流す流入口と、流体を排出する流出口と、該流入口と流出口とを連結する管とを備えている構成としてよい。そして、管は鋼(炭素鋼またはステンレス鋼)製であってよい。
なお、別の実施形態としては、溶融塩電解装置に、横方向に並んで電解室、金属回収室の他、熱交換器(不図示)を有する熱交換室(不図示)を更に備えてもよい。例えば、溶融金属の回収は金属回収室の給排口を使用して行い、溶融塩化マグネシウム等の溶融塩の補充は熱交換室に対して行うことができる。その結果、金属回収室内にて溶融金属をより安定して貯留できる。熱交換室はこれらの他、溶融塩浴を撹拌するための撹拌機(不図示)を更に有してよい。
[3.金属マグネシウムの製造方法]
本発明に係る金属マグネシウムの製造方法の一実施形態は、先述した溶融塩電解装置100、200等を用いて塩化マグネシウムを電気分解して金属マグネシウムを製造する電解工程を含んでいる。以下、図2A及び図2Bに示す溶融塩電解装置100を用いた場合を例として各工程について好適な態様を説明する。
<電解工程>
電解工程においては、溶融塩浴Bfに含有される塩化マグネシウムの電気分解を実施する。溶融塩浴Bfが、図2Aに示す矢印Aのように電解室140から流通口125を通って金属回収室150に流動し、図2Aに示す矢印Bのように金属回収室150から第2の隔壁122の下側を通って電解室140に流動する。電解室140では、溶融塩浴Bf中の塩化マグネシウムが電気分解されて、溶融金属マグネシウムが生成される。そして、この溶融金属マグネシウムは、溶融塩浴Bfの流動によって金属回収室150に流入する。その後、溶融塩に対する比重の小さい溶融金属マグネシウムは、金属回収室150の浅い箇所に浮上してそこに溜まる。金属回収室150で浮上した溶融金属マグネシウムは、給排口134に回収用のパイプ等を挿通して回収することができる。
本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例及び比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための試験的な具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものではない。
[実施例1]
(溶融塩電解槽の操業準備)
実施例1においては、図2A及び図2Bに示す構成を備える溶融塩電解装置100を使用した。溶融塩電解装置100は、電解槽120、第1の隔壁121、第2の隔壁122、及び台座126a、126bの材質がそれぞれ酸化アルミニウムを含む定型耐火物(耐火煉瓦)とし、上蓋130の材質は炭素鋼であり、その上蓋130の蓋裏面131に絶縁性であるキャスタブル耐火物の層を施工した。また、陽極141、陰極142、2枚の複極110a、110bはいずれも板状とした。各スペーサ113a、113bを用い、第1固定部117a、117bと第2固定部118a、118bとの間に複極本体111a、111bをその厚さ方向にそれぞれ挟み込んで固定した。
次に、溶融塩電解装置100に、溶融塩を投入して、溶融塩の温度を650~700℃に調整した。なお、溶融塩の組成は塩化マグネシウム-塩化カルシウム-塩化ナトリウムの三元浴とし、塩化マグネシウムは10~25質量%の範囲内とした。また、陽極141の材質は黒鉛とし、陰極142の材質は炭素鋼とした。第1複極110a及び第2複極110bの各複極本体111a、111bの材質は黒鉛とした。表1に示すように、スペーサ113a、113bについて、第1固定部117a、117b及び貫通部116aおよび116bは酸化アルミニウム製とし、これらは一体の構成とした。第2固定部118a、118bは炭素鋼製とした。また、図示は省略するが、貫通部116aおよび116bの先端部の表面に凹部孔を形成し且つ第2固定部118a、118bに貫通孔を形成し、鋼製の連結ピンをその貫通孔に通すとともに凹部孔内まで挿入した。
なお、以下に電解条件を示す。なお、以下に示す条件において複極に関し、極間距離は複極本体を基準にして示す。複極の厚さは、複極本体の厚さである。
(電解条件)
陽極141と、第1複極110aとの極間距離:10mm
第1複極110aと、第2複極110bとの極間距離:10mm
第2複極110bと、陰極142との極間距離:10mm
第1複極110a及び第2複極110bの厚さ:80mm
第1複極110a及び第2複極110bの各第1固定部117a、117bの大きさ:φ40mm×9mmt
第1複極110a及び第2複極110bの各第2固定部118a、118bの大きさ:φ40mm×0.5mmt
第1複極110a内のスペーサ113a:8個(配列:3個、2個、3個(上下方向))
第2複極110b内のスペーサ113b:8個(配列:3個、2個、3個(上下方向))
貫通孔112a、112bの断面形状:円状
貫通孔112a、112bの内径:31mm
貫通部116a、116bの外径:30mm
(金属マグネシウムの製造)
電源から導電線を介して陽極141と陰極142との間に電流を供給することで電解工程を実施した。電気分解の開始時から24ヶ月経過した後、電流の供給を停止した。
[評価]
(短絡の有無)
溶融塩電解装置100の操業中、急激な電圧低下の確認をした場合、短絡発生と判断した。その結果を表2に示す。
(操業終了後の観察)
溶融塩電解装置100の操業終了後、溶融塩電解装置100を解体し、スペーサの脱落や位置ずれの有無を確認した。その結果を表2に示す。
(電流効率)
まず、電流効率は、下記式(1)に基づき算出した。
A[%]=(M1/M0)×100
A:電流効率
1:電解槽から回収した金属マグネシウムの質量
0:理論生成金属マグネシウムの質量
次に、後述する比較例1の上記電流効率を100%とした場合における、各実施例の電流効率の相対値を算出した。
[実施例2]
実施例2においては、図3A及び図3Bに示す溶融塩電解装置200を用いて表1に示すように、角筒状の第1複極210a、第2複極210b及び陰極242を用いたこと以外、実施例1と同様に溶融塩電解装置200の操業を24ヶ月間実施した。なお、以下に電解条件を示す。以下に示す条件において複極に関し、極間距離は複極本体を基準にして示す。複極の厚さは、複極本体の厚さである。
(電解条件)
陽極241と、第1複極210aとの極間距離:10mm
第1複極210aと、第2複極210bとの極間距離:10mm
第2複極210bと、陰極242との極間距離:10mm
第1複極210a及び第2複極210bの厚さ:70mm
第1複極210a及び第2複極210bの各第1固定部217a、217bの大きさ:φ40mm×9mmt
第1複極210a及び第2複極210bの各第2固定部218a、218bの大きさ:φ40mm×0.5mmt
第1複極210a内のスペーサ213a:30個(配列:10個、10個、10個(上下方向))
第2複極210b内のスペーサ213b:30個(配列:10個、10個、10個(上下方向))
各スペーサ213a、213bの各第1固定部217a、217b及び各貫通部216a、216bの材質:酸化アルミニウム
各スペーサ213a、213bの各第2固定部218a、218bの材質:炭素鋼
貫通孔212a、212bの断面形状:円状
貫通孔212a、212bの内径:31mm
貫通部216a、216bの外径:30mm
そして、実施例1と同様、評価を実施した。その結果を、表2に示す。
[比較例1]
比較例1においては、図4に示すように、複極本体311a、311bの各第1電解面314a、314bに凹部孔を形成し、その凹部孔に酸化アルミニウム製の円柱形状スペーサ313a、313bを埋め込んだこと以外、実施例1と同様に溶融塩電解装置の操業を24ヶ月間実施した。操業開始時から15ヶ月目で電圧の急激な低下を確認したが、どの極間で短絡があったか不明であった。なお、以下に電解条件を示す。
(電解条件)
陽極141と、第1複極310aとの極間距離:10mm
第1複極310aと、第2複極310bとの極間距離:10mm
第2複極310bと、陰極142との極間距離:10mm
第1複極310a及び第2複極310bの厚さ:80mm
スペーサを凹部孔に埋め込むことで形成された突出部:φ40mm×9mmt
第1複極210a内のスペーサ313a:8個(配列:3個、2個、3個(上下方向))
第2複極210b内のスペーサ313b:8個(配列:3個、2個、3個(上下方向))
各スペーサ313a、313bの材質:酸化アルミニウム
なお、実施例1と同様、評価を実施した。その結果を、表2に示す。
[比較例2]
比較例2においては、複極本体に貫通孔を形成せず、スペーサを用いなかったこと以外、実施例1と同様に溶融塩電解装置の操業を12ヶ月間実施した。操業開始時から6ヶ月目で電圧の急激な低下を確認したが、どの極間で短絡があったか不明であった。
なお、実施例1と同様、評価を実施した。その結果を、表2に示す。
Figure 2023080740000002
Figure 2023080740000003
(実施例による考察)
実施例1~2では、比較例1~2と比較し、溶融塩電解槽の操業中、電極のスペーサが、貫通孔内を通って延びるセラミック製貫通部、該貫通部の一端側で第1電解面上に設けられるセラミック製第1固定部、及び該一端と反対側の他端側で第2電解面上に設けられ、第1固定部との間に前記複極本体をその厚さ方向に挟み込んで固定する鋼製第2固定部を含むことで、複極の位置ずれを確認しなかった。なお、複極の位置ずれを確認しなかった理由としては、鋼が金属マグネシウムに濡れやすいため、複極の陰極側で生成する金属マグネシウムが第2固定部の表面上に層状に覆われ合金化し、当該合金の融点が金属マグネシウムの融点よりも高いので固化したことで、スペーサが強固に固定されていたと推測される。
すなわち、実施例1~2では、塩化マグネシウムの溶融塩電解において極間距離を適切に維持することができたことを確認した。さらに、実施例1~2では、電極を複極として電解槽内に配置することで、塩化マグネシウムの溶融塩電解において金属マグネシウムを安定して得ることができた。
一方、比較例1では、溶融塩電解槽の操業中、主に塩素ガスの上昇に起因する溶融塩浴の流動等によりスペーサが揺れ動き、その揺動でスペーサを埋め込んだ複極が欠けたり損耗したりし、複極に埋め込まれたスペーサが脱落したと推察される。
なお、比較例2では、スペーサを設置しなかったことで、溶融塩電解槽の操業中、複極の位置ずれが生じたと推察される。
10 電極
11 複極本体
12 貫通孔
13 スペーサ
14 第1電解面
15 第2電解面
16 貫通部
17 第1固定部
18 第2固定部
100、200 溶融塩電解装置
110a、210a、310a 第1複極(複極)
110b、210b、310b 第2複極(複極)
111a、111b、211a、211b、311a、311b 複極本体
112a、112b、212a、212b 貫通孔
113a、113b、213a、213b、313a、313b スペーサ
114a、114b、214a、214b、314a、314b 第1電解面
115a、115b、215a、215b 第2電解面
116a、116b、216a、216b 貫通部
117a、117b、217a、217b 第1固定部
118a、118b、218a、218b 第2固定部
120 電解槽
121 第1の隔壁
122 第2の隔壁
123 底壁
124 側壁
125 流通口
126a、126b、226a、226b 台座
130 上蓋
131 蓋裏面
132 第1のガス回収口
133 第2のガス回収口
134 給排口
140 電解室
141、241 陽極
142、242 陰極
142a、242a 延長部分
150 金属回収室
A、B 矢印
Bf 溶融塩浴

Claims (6)

  1. 塩化マグネシウムの溶融塩電解において溶融塩浴に浸漬配置される複極として使用される電極であって、
    第1電解面及び該第1電解面と反対側を向く第2電解面を含む、黒鉛製の複極本体と、
    前記複極本体内に形成され、前記第1電解面から前記第2電解面まで貫通する、少なくとも1つの貫通孔と、
    当該電極の隣に配置される他の電極との間の極間距離を確保するスペーサとを備え、
    前記スペーサは、前記貫通孔内を通って延びる貫通部、該貫通部の一端側で第1電解面上に設けられる第1固定部、及び該一端と反対側の他端側で第2電解面上に設けられ、前記第1固定部との間に前記複極本体をその厚さ方向に挟み込んで固定する第2固定部を含み、
    前記貫通部及び前記第1固定部が、セラミック製であり、
    前記第2固定部が、鋼製である、電極。
  2. 前記複極本体の厚さ(T)と、該複極本体の厚さ方向における前記第1電解面から前記第1固定部の先端までの距離(d)との比(d/T)が5%以上15%以下の範囲内である、請求項1に記載の電極。
  3. 電解槽と、電解槽内に配置された陽極、複極及び陰極とを備え、
    前記複極の少なくとも1つが、請求項1又は2に記載の電極である溶融塩電解装置。
  4. 前記電解槽内に、前記陽極、少なくとも1つの前記複極及び前記陰極がこの順序で配列されて配置され、
    前記複極の前記第1固定部が前記陰極側に位置する、請求項3に記載の溶融塩電解装置。
  5. 陽極、複極及び陰極の配列方向で、前記第1電解面から前記複極の第1固定部の先端までの距離が、前記第1電解面から該複極と隣り合う陰極又は複極までの極間距離の、50%以上90%以下の範囲内である、請求項4に記載の溶融塩電解装置。
  6. 請求項3~5のいずれか一項に記載の溶融塩電解装置を使用し、塩化マグネシウムを電気分解して金属マグネシウムを製造する電解工程を含む、金属マグネシウムの製造方法。
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