JP2023077116A - 空気二次電池用の空気極及び空気二次電池 - Google Patents

空気二次電池用の空気極及び空気二次電池 Download PDF

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剛史 梶原
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茂和 安岡
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Abstract

【課題】従来よりも放電反応における過電圧を低減し放電電圧を高めることに貢献することができる空気二次電池用の空気極及びこの空気極を含む空気二次電池を提供する。【解決手段】電池2は、容器4と、容器4内にアルカリ電解液82とともに収容された電極群10と、を備え、電極群10は、セパレータ14を介して重ね合わされた空気極16及び負極12を含んでおり、空気極16は、空気極用基材、及び空気極用基材に保持された空気極合剤を備えており、この空気極合剤は、酸素触媒と、導電材と、フッ素樹脂からなる撥水剤とを含んでおり、空気極16に含浸されているアルカリ電解液82の重量をAとし、空気極16の重量をBとした場合に、空気極16の重量に対するアルカリ電解液の重量の比率を表すA/Bが、19.1%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、空気二次電池用の空気極及びこの空気極を含む空気二次電池に関する。
近年、大気中の酸素を正極活物質とする空気電池が、エネルギー密度が高く、小型、軽量化が容易であること等の理由から注目を集めている。このような空気電池においては、亜鉛空気一次電池が補聴器用の電源として実用化されている。
また、充電が可能な空気電池として、負極用金属に、Li、Zn、Al、Mgなどを用いる空気二次電池の研究がなされており、このような空気二次電池は、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を超える可能性がある新しい二次電池として期待されている。
このような空気二次電池の一種として、電解液にアルカリ性水溶液(以下、アルカリ電解液とも表記する)を用い、負極活物質に水素を用いる空気水素二次電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に代表されるような空気水素二次電池は、負極用金属として水素吸蔵合金を用いているが、空気水素二次電池における負極活物質は、上記した水素吸蔵合金に吸蔵及び放出される水素であるので、電池における充放電の際の化学反応(以下、電池反応とも表記する)にともない水素吸蔵合金自体の溶解析出反応は起こらない。このため、空気水素二次電池は、負極用金属が樹枝状に析出するいわゆるデンドライト成長による内部短絡の発生やシェイプチェンジによる電池容量の低下といった問題が起こらないメリットを有している。
上記の空気水素二次電池のようにアルカリ電解液を用いる空気二次電池では、正極(以下、空気極とも表記する)において以下に示すような充放電反応が起こる。
充電(酸素発生反応):4OH→O+2HO+4e・・・(I)
放電(酸素還元反応):O+2HO+4e→4OH・・・(II)
空気二次電池においては、正極である空気極として、上記した充放電反応を促進させる触媒(酸素触媒)が用いられている。この酸素触媒は、酸素還元及び酸素発生の二元機能を有している。
空気極は、上記した酸素触媒を含む空気極合剤を保持している。この空気極合剤は、多数の微細な空孔を含む多孔質構造をなしており、この空孔にアルカリ電解液や酸素が取り込まれる。空気極においては、表面部分をはじめ、上記した空孔において充放電反応が進行する。
ここで、空気二次電池は、充電時に空気極で酸素が発生する。この酸素は、空気極内部の空孔を通って、空気極における大気に開放されている部分から大気中に放出される。一方、放電時は、大気中から取り込まれた酸素が還元されて水が生成される。
特許第4568124号公報
ところで、空気二次電池においては、様々な用途への応用が期待されていることから、更なるエネルギー効率の向上や高出力化が望まれている。特に高出力化のためには、放電電圧を現状よりも高める必要がある。
ここで、上記した空気二次電池において、充電反応は固体(触媒)と液体(電解液)とから形成される二相界面で進行する。一方、放電反応は固体、液体、及び気体(酸素)が同時に存在する三相界面でのみ進行する。したがって、空気極が、電解液と接していない乾燥状態や電解液に完全に浸漬し、内部の空孔も電解液で満たされている浸漬状態では、充電反応や放電反応の良好な進行が妨げられて過電圧の上昇を招く。詳しくは、上記した乾燥状態では、充放電反応の両方が阻害されて充電反応の過電圧及び放電反応の過電圧が極端に高くなる。また、上記した浸漬状態では、放電反応が阻害されて放電反応の過電圧が極端に高くなる。
以上のようなことから、空気極においては、固体、液体、及び気体のバランスがとれた良好な三相界面が形成されており、その三相界面が形成されている部分が空気極の表面部分をはじめ内部にも多く存在すれば、放電反応の過電圧を低下させることができると考えられる。
よって、良好な三相界面を数多く含む空気極が得られれば、放電反応の過電圧を下げることができ、空気二次電池の放電電圧を高めることができると考えられる。
しかしながら、良好な三相界面を数多く含む空気極を得るための諸条件は未だ解明されてはいないのが現状である。
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、従来よりも放電反応における過電圧を低減し放電電圧を高めることに貢献することができる空気二次電池用の空気極及びこの空気極を含む空気二次電池を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明によれば、空気二次電池内にアルカリ電解液とともに収容されている電極群に組み込まれており、前記アルカリ電解液が含浸されている空気極であって、空気極用基材、及び前記空気極用基材に保持された空気極合剤を備えている空気二次電池用の空気極において、前記空気極合剤は、酸素触媒と、導電材と、フッ素樹脂からなる撥水剤とを含んでおり、前記空気極に含浸されている前記アルカリ電解液の重量をAとし、前記空気極用基材及び前記空気極合剤の合計の重量である前記空気極の重量をBとした場合に、前記空気極の重量に対する前記アルカリ電解液の重量の比率を表すA/Bが、19.1%以下である、空気二次電池用の空気極が提供される。
本発明に係る空気二次電池用の空気極は、空気二次電池内にアルカリ電解液とともに収容されている電極群に組み込まれており、前記アルカリ電解液が含浸されている空気極であって、空気極用基材、及び前記空気極用基材に保持された空気極合剤を備えている空気二次電池用の空気極において、前記空気極合剤は、酸素触媒と、導電材と、フッ素樹脂からなる撥水剤とを含んでおり、前記空気極に含浸されている前記アルカリ電解液の重量をAとし、前記空気極用基材及び前記空気極合剤の合計の重量である前記空気極の重量をBとした場合に、前記空気極の重量に対する前記アルカリ電解液の重量の比率を表すA/Bが、19.1%以下である。上記したA/Bの値が19.1%以下の範囲にあると、空気極が良好な三相界面を数多く含む状態となり、放電反応の過電圧が低下する。そのため、この空気二次電池用の空気極を用いた空気二次電池は、従来よりも放電反応における過電圧を低減し放電電圧を高めることに貢献することができる空気二次電池用の空気極及びこの空気極を含む空気二次電池を提供することができる。
一実施形態に係る空気水素二次電池を概略的に示した断面図である。 空気極合剤中のフッ素樹脂の比率と、空気極のアルカリ電解液の保液率A/Bとの関係を示したグラフである。 空気極のアルカリ電解液の保液率A/Bと、空気二次電池(空気水素二次電池)の放電中間電圧との関係を示したグラフである。
以下、一実施形態に係る空気二次電池用の空気極を含む空気水素二次電池(以下、電池とも表記する)2について図面を参照して説明する。
図1に示すように、電池2は、容器4と、この容器4の中にアルカリ電解液82とともに収容された電極群10とを備えている。
電極群10は、負極12と、空気極(正極)16とがセパレータ14を介して重ね合わされて形成されている。
負極12は、多孔質構造をなし多数の空孔を有する導電性の負極基材と、前記した空孔内及び負極基材の表面に担持された負極合剤とを含んでいる。上記したような負極基材としては、例えば発泡ニッケルを用いることができる。
負極合剤は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末と、導電材と、結着剤とを含む。ここで、導電材としては、黒鉛の粉末、カーボンブラックの粉末等を用いることができる。
水素吸蔵合金粒子を構成する水素吸蔵合金としては、特に限定されるものではないが、例えば、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を用いることが好ましい。この希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金の組成は自由に選択できるが、例えば、
一般式:Ln1-aMgNib-c-dAl・・・(III)
で表されるものを用いることが好ましい。
ただし、一般式(III)中、Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、Y、Zr及びTiよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Mは、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Ga、Zn、Sn、In、Cu、Si、P及びBよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、添字a、b、c、dは、それぞれ、0.01≦a≦0.30、2.8≦b≦3.9、0.05≦c≦0.30、0≦d≦0.50の関係を満たす数を表す。
ここで、水素吸蔵合金粒子は、例えば以下のようにして得られる。
まず、所定の組成となるように金属原材料を計量して混合し、この混合物を不活性ガス雰囲気下にて、例えば、高周波誘導溶解炉で溶解した後、冷却してインゴットにする。得られたインゴットは、不活性ガス雰囲気下にて900~1200℃に加熱され、その温度で5~24時間保持する熱処理が施され均質化される。この後、インゴットを粉砕し、篩分けを行うことにより所望粒径の水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末を得る。
結着剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム等が用いられる。
ここで、負極12は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末、導電材、結着剤及び水を混練して負極合剤ペーストを調製する。得られた負極合剤ペーストは負極基材に充填され、その後、乾燥処理が施される。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等が付着した負極基材はロール圧延されて、単位体積当たりの合金量を高められ、その後、裁断がなされ、これにより負極12が得られる。この負極12は、全体として板状をなしている。負極12に含まれる負極合剤層は、水素吸蔵合金の粒子、導電材の粒子等により形成されているので、粒子間に隙間があり、全体として多孔質構造をなしている。
次に、空気極16は、導電性の空気極用基材、及び前記した空気極用基材に保持された空気極合剤(正極合剤)により形成された空気極合剤層(正極合剤層)を備えている。
上記したような空気極用基材としては、金属多孔体を用いることができる。この金属多孔体としては、発泡金属を用いることが好ましい。ここで、上記した金属多孔体としては、ニッケルメッシュやニッケルの粉末を焼結させたニッケル焼結体を用いることもできる。また、上記した発泡金属としては、発泡ニッケルを用いることが好ましい。
空気極合剤は、酸素触媒、導電材、及び撥水剤を含む。更に、空気極合剤には、粘度調整材を添加することが好ましい。
酸素触媒としては、酸化還元の二元機能を有するものを用いる。このような二元機能を有する触媒は、充電過程でも、放電過程でも電池の過電圧を低減させることに寄与する。このような酸素触媒としては、例えば、パイロクロア型のビスマスルテニウム複合酸化物を用いることが好ましい。このビスマスルテニウム複合酸化物は、酸素発生及び酸素還元の二元機能を有している。
ビスマスルテニウム複合酸化物は、組成式がBi2-xRu7-z(ただし、0≦x≦1、zは0≦z≦1の関係を満たしている。)で表されるパイロクロア型の結晶構造を有している。
上記したようなパイロクロア型のビスマスルテニウム複合酸化物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
Bi(NO・5HO及びRuCl・3HOを準備する。そして、モル比でRuが1.00に対し、Biが0.50以上0.80未満となるように、Bi(NO・5HOと、RuCl・3HOとを計量する。計量されたBi(NO・5HO及びRuCl・3HOを所定の溶液の中に投入し、撹拌してBi(NO・5HO及びRuCl・3HOの混合水溶液を調製する。このとき、所定の溶液としては、蒸留水、希硝酸水溶液等が挙げられ、これらの溶液の温度は、60℃以上、90℃以下とする。そして、この混合水溶液に、1mol/L以上、3mol/L以下のNaOH水溶液を加えて前駆体を析出させる(共沈工程)。この前駆体が沈殿した後、当該混合水溶液を撹拌する。この撹拌操作は、酸素バブリングをともなって12時間~60時間行う。ここで、撹拌操作を行っている間、当該混合水溶液については、pHが10~12となるように維持するとともに、温度が60℃以上、90℃以下になるように維持する。撹拌操作の終了後、混合水溶液を12時間~60時間静置する。静置した後、生じた沈殿物を吸引ろ過して回収する。回収された沈殿物は、80℃以上、100℃以下に保持して水分の一部を蒸発させてペーストを形成する。このペーストを蒸発皿に移し、100℃以上、150℃以下に加熱し、その状態で1時間以上、5時間以下保持して乾燥させ、ペーストの乾燥物を得る。得られたペーストの乾燥物を乳鉢に入れ、乳棒ですりつぶして粉砕し、前駆体の粉末を得る。
次に、前駆体の粉末を、空気雰囲気下で400℃以上、700℃以下の温度に加熱し、0.5時間以上、4時間以下保持することにより熱処理を施す(焼成工程)。熱処理が終了した粉末は、60℃以上、90℃以下の蒸留水を用いて水洗された後、乾燥処理が施される。この乾燥処理は、水洗後の粉末を60℃以上、130℃以下で1時間以上、12時間以下保持することにより行われる。これにより、パイロクロア型のビスマスルテニウム複合酸化物(Bi2-xRu7-z)が得られる。
次に、得られたビスマスルテニウム複合酸化物を硝酸水溶液に浸漬させ、酸処理を施すことが好ましい。具体的には、以下の通りである。
まず、硝酸水溶液を準備する。ここで、硝酸水溶液の濃度は、5mol/L以下とすることが好ましい。硝酸水溶液の量は、ビスマスルテニウム複合酸化物1gに対して20mLの割合となる量を準備することが好ましい。硝酸水溶液の温度は、20℃以上、25℃以下に設定することが好ましい。
そして、準備された硝酸水溶液の中に、ビスマスルテニウム複合酸化物を浸漬し、1時間以上、6時間以下撹拌する。所定時間撹拌した後、硝酸水溶液中からビスマスルテニウム複合酸化物を吸引濾過する。濾別されたビスマスルテニウム複合酸化物は、60℃以上、80℃以下に設定された蒸留水に投入され洗浄される。
洗浄されたビスマスルテニウム複合酸化物は、60℃以上、130℃以下で1時間以上、12時間以下保持され、乾燥処理が施される。
以上のようにして、酸処理が施されたビスマスルテニウム複合酸化物を得る。このように酸処理を施すことにより、ビスマスルテニウム複合酸化物の焼成工程で生じる副生成物を除去することができる。なお、酸処理に用いられる酸性水溶液は、硝酸水溶液に限定されるものではなく、硝酸水溶液の他に塩酸水溶液、硫酸水溶液を用いることができる。これら、塩酸水溶液及び硫酸水溶液においても、硝酸水溶液と同様に副生成物を除去できるという効果が得られる。
次に、導電材について説明する。導電材は、空気二次電池の高出力化を図るべく内部抵抗を低下させるため、及び、上記した酸素触媒を担持する担体として用いられる。
このような導電材(触媒担持導電材)としては、例えば、炭素材料やニッケルを用いることが好ましい。ニッケルとしては、ニッケル粒子の集合体であるニッケル粉末を用いることが好ましい。ニッケル粉末としては、カーボニルニッケルの粉末を用いることが好ましい。より好ましくは、フィラメント状のニッケル粉末を用いる。上記したニッケル粒子の平均粒径としては、特に限定されるものではなく、空気極に所望の導電性を付与できる大きさとすることが好ましい。
炭素材料としては、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等を用いることができる。ここで、耐酸化性に優れている観点から黒鉛を用いることが好ましい。黒鉛としては、黒鉛粒子の集合体である黒鉛粉末を用いることが好ましい。ここで、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置により測定した黒鉛粒子の体積平均粒径(MV)は、1μm以上、5μm以下とすることが好ましい。
上記した導電材は、空気極合剤中において、20重量%以上含有させることが好ましい。この導電材の含有量の上限は、空気極合剤における他の構成材料との関係から50重量%以下とすることが好ましい。
撥水剤は、空気極16に適切な撥水性を付与する。ここで、撥水剤としてはフッ素樹脂が用いられる。このフッ素樹脂としては、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカンポリマー(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等を用いることができる。ここで、充放電反応に対する安定性に優れている観点からFEPを用いることが好ましい。
上記したフッ素樹脂は、空気極合剤中において、19.8重量%以上含有させることが好ましい。このフッ素樹脂の含有量が40重量%を超えると充放電反応に寄与する酸素触媒の含有量が相対的に減り、電池特性の低下を招くので、空気極合剤中におけるフッ素樹脂の含有量の上限は、40重量%以下とすることが好ましい。
ここで、空気極合剤には、必要に応じで結着剤を添加してもよい。ただし、上記したフッ素樹脂のうちの一部は、空気極合剤の他の構成材料を結着させる働きも有するので、結着剤と兼ねることができる。このように他の構成材料を結着させる働きも有するフッ素樹脂を採用した場合は、別途の結着剤は不要である。
粘度調整材は、後述する空気極合剤スラリーを調製する際に、空気極合剤スラリーの粘度を調整する働きをする。この粘度調整材としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を用いることが好ましい。
空気極16は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、ビスマスルテニウム複合酸化物粒子の集合体である触媒粉末、導電材としての炭素材料の粒子の集合体である導電材粉末、撥水剤、粘度調整材及び水を準備する。そして、これら触媒粉末、導電材粉末、撥水剤、粘度調整材及び水を混錬して空気極合剤スラリーを調製する。
一方、空気極用基材としての金属多孔体のシートを準備する。準備された金属多孔体のシートは、予めロール圧延が施され所定の厚みに調整される。そして、この金属多孔体のシートに上記のようにして得られた空気極合剤スラリーを充填する。空気極合剤スラリーは、金属多孔体内の空孔の内部に充填されて保持されるとともに、金属多孔体の表面にも保持された状態となる。空気極合剤スラリーを保持した空気極用基材は、50℃以上、80℃以下の雰囲気下で0.5時間以上、2時間以下の間保持され乾燥処理が施される。乾燥処理後、空気極合剤スラリーの水分は蒸発し、空気極用基材に空気極合剤が保持された状態となる。その後、空気極合剤を保持した空気極用基材にはロール圧延処理が施される。ロール圧延処理が施された後、空気極合剤を保持した空気極用基材は、所定形状に裁断され、これにより、空気極16が得られる。
次いで、得られた空気極16は、熱処理炉に投入され熱処理(焼成処理)が施される。この焼成処理は、製造上不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましいが、大気雰囲気中で焼成処理を行ってもよい。この不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスやアルゴンガスが用いられる。焼成処理の条件としては、200℃以上、400℃以下の温度に加熱し、この状態で、10分以上、40分以下の間保持する。その後、空気極16を熱処理炉内で自然冷却し、空気極16の温度が150℃以下になったところで大気中に取り出す。これにより、焼成処理が施された空気極16が得られる。この空気極16は、空気極合剤により形成された空気極合剤層を備えている。斯かる空気極合剤で形成された空気極合剤層は、全体として多数の微細な空孔を含む多孔質構造をなしている。
上記のようにして得られた空気極16及び負極12は、セパレータ14を介して積層され、これにより電極群10が形成される。このセパレータ14は、空気極16及び負極12の間の短絡を避けるために配設され、電気絶縁性の材料が採用される。このセパレータ14に採用される材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの等を用いることができる。
形成された電極群10は、容器4の中に入れられる。この容器4としては、電極群10とアルカリ電解液とを収容できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、箱状の容器4が用いられる。この容器4は、例えば、図1に示すように、容器本体6と、蓋8とを含んでいる。また、容器4の材質に関しては、アルカリ電解液に耐えられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、金属材料等を挙げることができる。
容器本体6は、底壁18と、底壁18の周縁部から上方に延びる側壁20とを有する箱形状をなしている。側壁20の上端縁21で囲まれた部分は、開口している。つまり、底壁18の反対側には、開口部22が設けられている。また、側壁20においては、右側壁20R及び左側壁20Lの所定位置に、それぞれ貫通孔が設けられており、これら貫通孔は、後述するリード線の引出口24、26となる。
更に、容器本体6には、電解液貯蔵部80が取り付けられている。この電解液貯蔵部80は、アルカリ電解液82を収容する容器であり、例えば、底壁18に設けられた貫通孔19と連通する連結部84を介して取り付けられている。連結部84は、容器4の内部と電解液貯蔵部80との間を連通するアルカリ電解液82の流路である。このように、容器4の内部と電解液貯蔵部80とは連通しているため、アルカリ電解液82は、容器4の内部と電解液貯蔵部80との間を移動することができる。
蓋8は、容器本体6の平面視形状と同じ平面視形状をなしており、容器本体6の上部に被せられ、開口部22を塞ぐ。蓋8と、側壁20の上端縁21との間は液密に封止される。
蓋8において、容器本体6の内側に臨む内面部28には、通気路30が設けられている。通気路30は、容器本体6の内側に面する部分が開放されており、全体として1本のサーペンタイン形状をなしている。更に、蓋8の所定位置には、厚さ方向に貫通する入側通気孔32及び出側通気孔34が設けられている。入側通気孔32は、通気路30の一方端と連通しており、出側通気孔34は、通気路30の他方端と連通している。つまり、通気路30は、入側通気孔32及び出側通気孔34を介して大気に開放されている。なお、入側通気孔32には、図示しない圧送ポンプを取り付けることが好ましい。この圧送ポンプを駆動することにより入側通気孔32から通気路30に空気を送り込むことができる。
容器本体6の底壁18の上には、必要に応じて、調整部材36を配置する。調整部材36は、容器4内において、電極群10の高さ方向の位置合わせに用いられる。調整部材36としては、例えば、発泡ニッケルのシートが用いられる。
調整部材36の上には、電極群10が配設される。このとき、電極群10の負極12は、調整部材36と接するように配設される。
一方、電極群10の空気極16側には、空気極16と接するように撥水通気部材40が配設される。この撥水通気部材40は、PTFE多孔膜42に不織布拡散紙44が組み合わされたものである。撥水通気部材40は、PTFEにより撥水効果を発揮するとともに、気体の通過を許容する。撥水通気部材40は、蓋8と空気極16との間に介在し、蓋8及び空気極16の両方に密着している。この撥水通気部材40は、蓋8の通気路30、入側通気孔32及び出側通気孔34の全体をカバーする大きさを有している。
上記のような、電極群10、調整部材36及び撥水通気部材40を収容した容器本体6には、蓋8が被せられる。そして、図1において概略的に描かれているように、容器4(容器本体6及び蓋8)の周端縁部46、48が連結具50、52により上下から挟みこまれる。その後、所定量のアルカリ電解液82が電解液貯蔵部80から注入され、容器4内にアルカリ電解液82が導入される。このようにして、電池2が形成される。
なお、上記したアルカリ電解液82としては、アルカリ二次電池に用いられる一般的なアルカリ電解液が好適に用いられ、具体的には、NaOH、KOH及びLiOHのうち、少なくとも1種を溶質として含む水溶液が用いられる。
ここで、電池2においては、蓋8の通気路30は撥水通気部材40に相対している。撥水通気部材40は、気体は通すが水分は遮断するので、空気極16は撥水通気部材40、通気路30、入側通気孔32及び出側通気孔34を介して大気に開放されることになる。つまり、空気極16は、撥水通気部材40を通じて大気と接することになる。
また、この電池2においては、空気極(正極)16に空気極リード(正極リード)54が電気的に接続されており、負極12に負極リード56が電気的に接続されている。これら空気極リード54及び負極リード56は、図1中においては概略的に描かれているが、気密性及び液密性を保持した状態で引出口24、26から容器4の外に引き出されている。そして、空気極リード54の先端には空気極端子(正極端子)58が設けられており、負極リード56の先端には負極端子60が設けられている。したがって、電池2においては、これら空気極端子58及び負極端子60を利用して充放電の際の電流の入力及び出力が行われる。
ここで、本願の発明者は、空気極の放電反応の過電圧を下げるべく鋭意研究を行った結果、以下のような知見を得た。
空気極の放電反応は三相界面でのみ進行するので、効率良く放電反応を進行させ、放電反応の過電圧の上昇を抑えるためには、固体、液体、及び気体のバランスがとれた良好な三相界面が形成されている部分が空気極の表面部分をはじめ内部にも多く存在させることが重要である。このような良好な三相界面を形成するには、空気極の撥水性の適正化が必要であると考えられる。ここで、撥水性とは、濡れ性に含まれる概念であり、液体と固体表面との相互作用に関わる特性の一つでる。撥水性が悪いとは濡れ性が良い状態を指し、そのような状態を親水性であるという。一方、撥水性が良いとは濡れ性が悪い状態を指し、そのような状態を撥水性であるという。つまり、固体表面に液体が濡れ広がるほど親水性であり、固体表面で液体がはじかれ球形に近くなるほど撥水性である。一般的に、撥水性の程度を定量化する指標として接触角が挙げられる。接触角は0度から180度までの値をとり得る。接触角が0度に近いほど親水性の度合いが高く、接触角が180度に近いほど撥水性の度合いが高い。
アルカリ電解液(液体)と酸素触媒(固体)との間の撥水性の度合いを接触角で規定することは、理想的ではあるが、実際の製品においては上記した微細な細孔を含む多孔質構造を有しており、固体表面の液体の形状が歪な形状になりやすく定量化が難しいので、本実施形態では避けた。
酸素触媒の表面の撥水性に影響を与える因子としては、空気極を形成した後の焼成条件、空気極合剤に含まれているフッ素樹脂の量等が考えられる。これらについて検討を行ったが、酸素触媒の表面の性質は、フッ素樹脂の量及び焼成条件が複雑に関与して変化するので、これらの因子を特定しても、撥水性、延いては放電過電圧とのはっきりした傾向は見出されなかった。
そこで、本発明者は、得られた空気極に関し、アルカリ電解液を空気極の内部にどの程度取り込めるかによって撥水性の度合いが間接的に把握できると考えた。つまり、撥水性の度合いが高ければアルカリ電解液の取り込み量は少なく、撥水性の度合いが低ければアルカリ電解液の取り込み量は多くなる。実際に空気二次電池に組み込み、アルカリ電解液が含浸された空気極を空気二次電池から取り出し、アルカリ電解液を含んだ状態の空気極の重量(合計重量)を測定した。その後、この空気極をイオン交換水で洗浄してアルカリ電解液を完全に取り除いた後、減圧乾燥させた。そして、この乾燥状態の空気極の重量を測定した。得られた合計重量から空気極の重量を減算することによりアルカリ電解液の重量を求めた。このアルカリ電解液の重量をAとし、上記した空気極の重量をBとした場合に、以下の(IV)式で表される空気極の重量に対するアルカリ電解液の重量の比率である保液率A/Bを求めた。
保液率A/B[%]=(A/B)×100・・・(IV)
この保液率A/Bの値が大きいほど空気極に含まれているアルカリ電解液の量は多く、保液率A/Bの値が小さいほど空気極に含まれているアルカリ電解液の量は少ない。
本発明者は、この保液率A/Bと放電電圧との関係を調査したところ特定の傾向が見られ、保液率A/Bがある範囲にあると放電電圧が高まる、すなわち放電過電圧が低下することを見出した。具体的には、保液率A/Bの値を19.1%以下にすると、放電過電圧が低減されることを見出した。よって、保液率A/Bの値を19.1%以下に限定することとした。
ここで、撥水性に関しては、フッ素樹脂の量に依存するようにも考えられ、フッ素樹脂の量と保液率A/Bとの間にも相関があるようにも考えられた。しかしながら、図2に示すように、空気極合剤に含まれるフッ素樹脂の比率と、保液率A/Bとの関係を求めたところ、相関は見られなかった。つまり、フッ素樹脂の比率と保液率A/Bとは単純な関係にはなっていない。
保液率A/Bは、最終的に得られた空気極の撥水性の度合いが反映されているので、空気極における酸素触媒の表面の性質に影響を与える因子と考えられるフッ素樹脂の量や焼成条件等で規定するよりも有効であると考えられる。
ここで、保液率A/Bの値が10.0%未満となると、空気極内に保持されるアルカリ電解液の量が少なくなり、乾燥状態になる。そうなると充電反応に必要な二相界面の部分が減少するので、充電反応の過電圧の増加や、充電受入れ性の低下を招く。よって、保液率A/Bの下限値は、10.0%以上とすることが好ましい。
なお、空気極の撥水性の適正化に関しては、燃料電池の分野でも研究が行われている。しかしながら、燃料電池は、放電のみ行うので、放電性能(酸素還元反応)に特化した研究がメインである。これに対し、空気二次電池は、放電反応だけではなく充電反応(酸素発生反応)も考慮する必要があるため、放電反応及び充電反応の両方にとって良好な条件を検討する必要がある。このため、空気二次電池で求められる撥水性や作用効果は、燃料電池で求められる撥水性や作用効果とは全く異なっているので、燃料電池の構成を空気二次電池にそのまま転用することはできず、上記のような知見を燃料電池の分野から得ることはできない。
[実施例]
1.電池の製造
(実施例1)
(1)空気二次電池用の酸素触媒の合成
1)共沈工程
Bi(NO・5HO及びRuCl・3HOを準備した。そして、モル濃度比でRuが1.00に対し、Biが0.75となるように、Bi(NO・5HOと、RuCl・3HOとを計量した。計量されたBi(NO・5HO及びRuCl・3HOをあわせて75℃の希硝酸水溶液の中に投入し、撹拌してBi(NO・5HO及びRuCl・3HOの混合水溶液を調製した。そして、得られた混合水溶液に、2mol/LのNaOH水溶液を徐々に加えて前駆体を析出させた。この時、NaOH水溶液の滴下量は析出した前駆体1g当たり76.3gとなるように調整した。上記した前駆体が沈殿した後、当該混合水溶液を撹拌した。この撹拌操作は、酸素バブリングを行いながら24時間行った。この撹拌操作を行っている間、当該混合水溶液については、pHを10.7に維持するとともに、温度を75℃に維持した。撹拌操作の終了後、当該混合水溶液を48時間静置した。静置した後、生じた沈殿物をろ過することにより回収した。回収された沈殿物は、85℃に保持して水分の一部を蒸発させてペースト状とした。得られたペーストを蒸発皿に移し、120℃に加熱し、その状態で3時間保持して乾燥処理を施し、前駆体の乾燥物を得た。得られた前駆体の乾燥物を乳鉢に入れ、乳棒ですりつぶして粉砕し、粉末状とした。
2)焼成工程
得られた前駆体の粉末を、空気雰囲気下で500℃の焼成温度に加熱し3時間保持する焼成処理を施した。当該焼成処理が終了した後の前駆体の粉末を、70℃の蒸留水を用いて水洗した後、吸引濾過し、120℃で3時間保持する乾燥処理を施した。これにより、パイロクロア型のビスマスルテニウム複合酸化物(酸素触媒)を得た。
3)酸処理工程
ビスマスルテニウム複合酸化物の粉末1gに対して20mLの割合となるように硝酸水溶液を準備した。そして、この硝酸水溶液とビスマスルテニウム複合酸化物の粉末とをスターラーの撹拌槽に入れ、当該硝酸水溶液の温度を25℃に保持したまま1時間撹拌して酸処理を施した。ここで、硝酸水溶液の濃度は2mol/Lとした。
撹拌が終了した後、硝酸水溶液中からビスマスルテニウム複合酸化物の粉末を吸引濾過することにより取り出した。取り出されたビスマスルテニウム複合酸化物の粉末は、75℃に加熱した蒸留水1リットルで洗浄した。洗浄後、ビスマスルテニウム複合酸化物の粉末を、120℃の雰囲気下で3時間保持することにより乾燥させた。
以上のようにして、酸処理されたビスマスルテニウム複合酸化物の粉末、すなわち、空気二次電池用の酸素触媒の粉末を得た。得られた空気二次電池用の酸素触媒においては、上記したように酸処理を施すことにより、ビスマスルテニウム複合酸化物の製造過程で生じる副生成物が除去された。
4)分析
得られたビスマスルテニウム複合酸化物の粉末につき、粉末X線回折法による分析を行った。このX線回折(XRD)分析には平行ビームX線回折装置を用いた。ここでの分析の条件は、X線源がCuKα、管電圧が40kV、管電流が15mA、スキャンスピードが1度/min、ステップ幅が0.01度とした。分析の結果、得られたXRDプロファイルから、パイロクロア型のBiRuのピーク位置に対応する位置に回折ピークが存在しているため、得られた粉末はパイロクロア型の結晶構造を有しているBiRuであることが確認できた。
(2)空気極合剤のスラリーの製造
導電材の炭素材料として、高純度天然黒鉛粒子の集合体である黒鉛粉末(SECカーボン株式会社製SNO-1T)を準備した。この黒鉛粒子は、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置により測定した体積平均粒径(MV)が1~2μmであった。
更に、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)ディスパージョン(三井・ケマーズフロロプロダクツ社製、120-JRB、平均粒径0.2μm)、粘度調整材としてのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びイオン交換水を準備した。
上記のようにして得られたビスマスルテニウム複合酸化物の粉末(酸素触媒)50重量部に、黒鉛粉末30重量部、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)ディスパージョンを固形分比率換算で30重量部、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を1重量部及びイオン交換水130重量部を加え、これらを自転公転ミキサーの撹拌容器に投入し、この自転公転ミキサーを駆動することにより混合・撹拌した。これにより固形分比34.5%の空気極合剤のスラリーを製造した。
(3)空気極の製造
空気極用基材としてシート状の発泡ニッケル(厚さが1.6mm、平均孔径が580μm、目付が575g/m)を準備した。そして、この発泡ニッケルのシートにロール圧延を施し、厚さを0.45mmに調整した。
次いで、厚さ調整済みの発泡ニッケルのシートに上記のようにして得られた空気極合剤のスラリーを充填した。その後、空気極用合剤のスラリーを保持した発泡ニッケルのシートを60℃の雰囲気下で1時間保持して乾燥させた。この乾燥処理を施した後、空気極用合剤を保持した発泡ニッケルのシートをロール圧延して、厚さが0.25mmとなるまで圧縮した。これにより、空気極の中間製品を得た。
次に、得られた中間製品に熱処理(焼成処理)を施した。具体的には、中間製品を焼成用の電気炉に投入した。焼成処理の条件は、電気炉内に1L/minの流量で窒素ガスを流して窒素ガス雰囲気を形成し、この窒素ガス雰囲気下で250℃の焼成温度に加熱し、この温度で13分間保持した。焼成処理された中間製品は、縦40mm、横40mmに裁断され、これにより、空気極16を得た。
(3)負極の製造
Nd、Mg、Ni、Alの各金属材料を所定のモル比となるように混合した後、高周波誘導溶解炉に投入しアルゴンガス雰囲気下にて溶解させ、得られた溶湯を鋳型に流し込み、25℃の室温まで冷却してインゴットを製造した。
ついで、このインゴットに対し、温度1000℃のアルゴンガス雰囲気下にて10時間保持する熱処理を施した後、25℃の室温まで冷却した。冷却後、当該インゴットをアルゴンガス雰囲気下で機械的に粉砕して、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金粉末を得た。得られた希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金粉末について、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置により体積平均粒径(MV)を測定した。その結果、体積平均粒径(MV)は60μmであった。
この水素吸蔵合金粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)によって分析したところ、組成は、Nd0.89Mg0.11Ni3.33Al0.17であった。
得られた水素吸蔵合金の粉末100重量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウムの粉末0.2重量部、カルボキシメチルセルロースの粉末0.04重量部、スチレンブタジエンゴムのディスパージョン3.0重量部、カーボンブラックの粉末0.5重量部、及び水22.4重量部を添加して25℃の環境下において混練し、負極合剤ペーストを調製した。
この負極合剤ペーストを面密度(目付)が約300g/m、厚みが約0.6mmの発泡ニッケルのシートに充填した。そして、負極合剤ペーストを乾燥させ、負極合剤が充填された発泡ニッケルのシートを得た。得られたシートは圧延され、単位体積当たりの合金量を高められた後、縦40mm、横40mmに裁断された。このようにして負極12を得た。なお、負極12の厚さは、0.77mmであった。なお、負極の設計容量は2500mAhである。
(4)空気水素二次電池の製造
得られた空気極16及び負極12を、これらの間にセパレータ14を挟んだ状態で重ね合わせ、電極群10を製造した。この電極群10の製造に使用したセパレータ14はスルホン基を有するポリプロピレン繊維製不織布により形成されており、その厚みは0.1mm(目付量53g/m)であった。
次いで、アクリル樹脂製の容器本体6を準備し、この容器本体6内に上記した電極群10を収容した。このとき、容器本体6の底壁18の上に調整部材36としての発泡ニッケルのシートを配置し、この調整部材36の上に電極群10を載置した。ここで、調整部材36としての発泡ニッケルのシートは、厚さが1mmであり、縦40mm、横40mmの正方形状をなしている。
次いで、電極群10の上(空気極16の上)に撥水通気部材40を配設した。ここで、撥水通気部材40は、縦が45mm、横が45mm、厚さが0.1mmであるPTFE多孔膜42と、縦が40mm、横が40mm、厚さが0.2mmである不織布拡散紙44とが組み合わされて形成されている。
次いで、容器本体6の開口部22を塞ぐようにアクリル樹脂製の蓋8を被せた。このとき、蓋8の内面部28における通気路30、入側通気孔32及び出側通気孔34を含むエリアの全体が撥水通気部材40で覆われるように、当該エリアと撥水通気部材40とを密着させる。ここで、通気路30は、全体として1本のサーペンタイン形状をなしている。通気路30の横断面は、矩形状をなしており、当該矩形における縦寸法が1mm、横寸法が1mmである。この通気路30は、撥水通気部材40側が開放されている。
容器本体6及び蓋8が組み合わされて形成された容器4については、その周端縁部46、48が連結具50、52により上下から挟みこまれる。なお、容器本体6と蓋8との接触部には、図示しない樹脂製のパッキンが配設されており、アルカリ電解液の漏れを防止する。
次いで、電解液貯蔵部80にアルカリ電解液82として5mol/LのKOH水溶液を注入した。なお、このとき注入したKOH水溶液の量は50mLであった。
以上のようにして、図1に示すような電池2を製造した。
なお、空気極16には空気極リード54が、負極12には負極リード56が、それぞれ電気的に接続されており、これら空気極リード54及び負極リード56は、容器4の気密性及び液密性を保持した状態でリード線の引出口24、26から容器4の外側へ適切に延びている。また、空気極リード54の先端には空気極端子58が取り付けられており、負極リード56の先端には負極端子60が取り付けられている。
(実施例2)
空気極合剤のスラリーの製造に際し、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)ディスパージョンの添加量を固形分比率換算で20重量部に変更したことを除いて、実施例1と同様にして空気水素二次電池を製造した。
(実施例3)
空気極合剤のスラリーの製造に際し、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)ディスパージョンの添加量を固形分比率換算で40重量部に変更したことを除いて、実施例1と同様にして空気水素二次電池を製造した。
(実施例4)
空気極の製造に際し、焼成処理の条件に関し、電気炉内へ窒素ガスを流すことを行わず雰囲気を大気雰囲気としたこと、及び焼成時間を10分に変更したことを除いて、実施例1と同様にして空気水素二次電池を製造した。
(実施例5)
空気極の製造に際し、焼成処理の条件に関し、電気炉内へ窒素ガスを流すことを行わず雰囲気を大気雰囲気としたこと、及び焼成時間を15分に変更したことを除いて、実施例1と同様にして空気水素二次電池を製造した。
(実施例6)
空気極の製造に際し、焼成処理の条件に関し、電気炉内へ窒素ガスを流すことを行わず雰囲気を大気雰囲気としたこと、及び焼成時間を20分に変更したことを除いて、実施例1と同様にして空気水素二次電池を製造した。
(比較例1)
空気極合剤のスラリーの製造に際し、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)ディスパージョンの添加量を固形分比率換算で10重量部に変更したことを除いて、実施例1と同様にして空気水素二次電池を製造した。
2.電池の評価
(1)電池特性の評価
実施例1~6、及び比較例1の空気水素二次電池について、60℃にて12時間エージングを行った後、室温まで冷却し、負極容量の80%に相当する2000mAhを1Itとし、0.1It×10時間の充電と、0.2Itの放電(放電終止電圧E.V.=0.4V)を繰り返し実施した。ここで、1サイクル目の放電容量を求めた。更に、1サイクル目において、電池の容量が1サイクル目の放電容量の半分の容量に到達した時の電池電圧を放電中間電圧として測定した。そして、放電中間電圧の結果を表1に記載した。
なお、上記した充放電操作において、充放電に関わらず、入側通気孔32から空気を入れ、出側通気孔34から空気を排出するようにして、通気路30には、33mL/minの割合で常に空気を供給し続けた。
(2)空気極の保液率
上記した電池特性の評価をした後の電池を解体し、空気極を取り出し、当該空気極の重量を測定した。電池から取り出した直後の空気極は、アルカリ電解液が滴らない程度に湿潤しており、この状態の空気極の重量は、空気極に含浸されているアルカリ電解液の重量(A)と、空気極の重量(B)との合計の重量(A+B)となる。
次に、イオン交換水で満たされたガラスビーカーの中に空気極を投入し、空気極をイオン交換水に浸漬した状態で30分間放置した。30分間放置した後、イオン交換水をガラスビーカーから排出し、新たなイオン交換水をガラスビーカーに投入し、再度、空気極をイオン交換水に浸漬した状態で30分間放置した。この操作を合計5回(2時間30分)繰り返した。これにより、空気極に含浸されているアルカリ電解液を取り除いた。
その後、当該空気極を減圧乾燥機に投入し、減圧乾燥処理を施した。これにより、空気極を完全に乾燥させ、この状態の空気極の重量(B)を測定した。
そして、先に測定しておいた電池から取り出した直後の空気極の重量(A+B)から、乾燥状態の空気極の重量(B)を減算し、空気極に含浸されていたアルカリ電解液の重量(A)を求めた。これらの結果から、上記した(IV)式で表される保液率を求めた。得られた保液率は表1に示した。なお、アルカリ電解液の重量(A)と空気極の重量(B)も併せて表1に示した。
また、保液率A/Bと、放電中間電圧との関係を図3に示した。
なお、表1には、空気極合剤に含まれるフッ素樹脂の重量%、空気極の焼成処理の条件も併せて示した。
Figure 2023077116000002
(3)考察
表1及び図3より、実施例1~6の空気水素二次電池の放電中間電圧は、0.691[V]~0.719[V]であるのに対し、比較例1の空気水素二次電池の放電中間電圧は0.566[V]となっており、実施例1~6の空気水素二次電池は、比較例1の空気水素二次電池に比べ放電中間電圧が良好な値を示している。つまり、実施例1~6に係る空気極は、比較例1に係る空気極よりも放電反応の過電圧が低下しているといえる。
実施例1~6の空気極の保液率A/Bは、19.1%以下である。特に保液率A/Bが13.1%以上、15.2%以下の場合、優れた放電電圧値が得られた。
一方、比較例1の空気極の保液率A/Bは、20.2%であったが、実施例に比べ放電中間電圧が極端に低下している。
このことから、空気極の保液率A/Bが一定の値(19.1%)を超えると空気極内に含浸されているアルカリ電解液の量が増え、放電反応に必要な三相界面が不足するため、過電圧が上昇するものと考えられる。
よって、放電反応における過電圧を低減し放電電圧を高めるには、空気極の保液率A/Bを19.1%以下とすることが重要であるといえる。
また、アルカリ電解液の保液率が極端に少ない場合は、空気極の内部にアルカリ電解液がほとんど取り込まれず、空気極の表面にだけアルカリ電解液が付着しているような状態となる。この場合、空気極の表面でのみ充放電反応が進行し、空気極の厚み方向の空気極合剤層はデッドスペースとなる。このような空気極は反応面積が極端に低下し、充放電の過電圧は増加する。特に、保液率A/Bが10%未満となると充電反応に必要な二相界面の形成も困難になってくるので、保液率A/Bは10%以上とすることが好ましいと考えられる。
以上のように、本発明によれば、空気極の保液率A/Bを制御することにより、空気極の撥水性と親水性との均衡をとることができ、それにより放電反応の過電圧を低減させることができ、高出力の空気二次電池を提供することができる。
なお、本発明は上記した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、負極用金属としては、水素吸蔵合金に限定されるものではなく、負極用金属をLi、Zn、Al、Mg等に変更した空気二次電池に本発明を適用することもできる。
2 電池(空気水素二次電池)
4 容器
6 容器本体
8 蓋
10 電極群
12 負極
14 セパレータ
16 空気極(正極)
30 通気路
40 撥水通気部材

Claims (11)

  1. 空気二次電池内にアルカリ電解液とともに収容されている電極群に組み込まれており、前記アルカリ電解液が含浸されている空気極であって、空気極用基材、及び前記空気極用基材に保持された空気極合剤を備えている空気二次電池用の空気極において、
    前記空気極合剤は、酸素触媒と、導電材と、フッ素樹脂からなる撥水剤とを含んでおり、
    前記空気極に含浸されている前記アルカリ電解液の重量をAとし、前記空気極用基材及び前記空気極合剤の合計の重量である前記空気極の重量をBとした場合に、前記空気極の重量に対する前記アルカリ電解液の重量の比率を表すA/Bが、19.1%以下である、空気二次電池用の空気極。
  2. 前記A/Bが、10.0%以上である、請求項1に記載の空気二次電池用の空気極。
  3. 前記空気極用基材は、金属多孔体である、請求項1又は2に記載の空気二次電池用の空気極。
  4. 前記金属多孔体は、発泡金属である、請求項3に記載の空気二次電池用の空気極。
  5. 前記発泡金属は、発泡ニッケルである、請求項4に記載の空気二次電池用の空気極。
  6. 前記フッ素樹脂は、前記空気極合剤に19.8重量%以上含まれている、請求項1~5の何れかに記載の空気二次電池用の空気極。
  7. 前記フッ素樹脂は、パーフルオロエチレンプロペンコポリマーである、請求項1~6の何れかに記載の空気二次電池用の空気極。
  8. 前記導電材は、黒鉛である、請求項1~7の何れかに記載の空気二次電池用の空気極。
  9. 前記酸素触媒は、パイロクロア型のビスマスルテニウム複合酸化物である、請求項1~8の何れかに記載の空気二次電池用の空気極。
  10. 容器と、
    前記容器内にアルカリ電解液とともに収容された電極群と、を備えており、
    前記電極群は、セパレータを介して重ね合わされた空気極及び負極を含んでおり、
    前記空気極は、請求項1~9の何れかに記載の空気二次電池用の空気極である、空気二次電池。
  11. 前記負極は、水素吸蔵合金を含んでいる、請求項10に記載の空気二次電池。
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