JP2023076335A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】複雑な適合を行うことなく、エンジン始動時の制御量を精度良く算出する。【解決手段】エンジンの始動に際して、所定条件が成立した場合には、エンジンの角加速度の目標値と制御量としてのエンジンのトルク及びクラッチのトルク容量との関係を定式化した運動方程式に、トルク分担割合を適用することでエンジンの角加速度の目標値を実現させる制御量を決定する予め定められた始動時モデルを用いて、制御量が算出されるので、エンジンの角加速度の目標値とトルク分担割合とを設定するだけであり、適合工数の削減が可能である。又、制御中に変動する可能性のある電動機の回転速度やアクセル開度の影響を制御量に反映でき、複雑な適合も不要となる。よって、複雑な適合を行うことなく、エンジン始動時の制御量を精度良く算出することができる。【選択図】図6
Description
本発明は、エンジンと電動機との間に設けられたクラッチを備えた車両の制御装置に関するものである。
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結された電動機と、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記電動機との間に設けられたクラッチと、を備えた車両の制御装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された車両の運転制御装置がそれである。この特許文献1には、エンジンの始動に際して、予め実験などで取得されたマップに、電動機の回転速度とクラッチの作動に用いられる作動油の温度とを適用することで、クラッチを解放状態から係合状態へと切り替えるのに要する移行時間を設定することが開示されている。
ところで、クラッチの係合状態への切替えを伴うエンジンの始動制御において、所望する応答性やショック感度を満たすように、目標値とその目標値を実現する為の制御量との関係例えばマップを予め定めることが考えられる。しかしながら、例えばアクセル操作などによって、エンジンの始動時にエンジンの回転速度と同期させられる電動機の回転速度が変動させられるなどする為、種々の走行状況や車両状態を考慮して細かくマップを定めることは容易なことではない。そうすると、特定の走行状況下においては、マップを用いて設定した制御量が適切な値ではないおそれがある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、複雑な適合を行うことなく、エンジン始動時の制御量を精度良く算出することができる車両の制御装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結された電動機と、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記電動機との間に設けられたクラッチと、を備えた車両の、制御装置であって、(b)前記エンジンの始動に際して、前記エンジンが運転状態とされるように前記エンジンのトルクを制御するエンジン制御部と、(c)前記エンジンの始動に際して、前記クラッチの制御状態を解放状態から係合状態へ切り替えるように前記クラッチのトルク容量を制御するクラッチ制御部と、(d)前記エンジンの始動に際して、前記クラッチのトルク容量に対する反力トルクを補償するように前記電動機のトルクを制御する電動機制御部と、(e)前記エンジンの始動に際して、予め定められた適合値を用いて、前記エンジンの角加速度の目標値を実現させる制御量としての、前記エンジン制御部により制御される前記エンジンのトルク及び前記クラッチ制御部により制御される前記クラッチのトルク容量を、算出する制御量算出部と、を含んでおり、(f)前記制御量算出部は、前記エンジンの始動に際して、所定条件が成立した場合には、前記適合値を用いることに替えて、前記エンジンの角加速度の目標値と前記制御量との関係を定式化した、前記エンジンと前記クラッチとを連結する連結軸における運動方程式に、前記エンジンのトルクと前記クラッチのトルク容量とのトルク分担割合を適用することで前記エンジンの角加速度の目標値を実現させる前記制御量を決定する予め定められた始動時モデルを用いて、前記制御量を算出することにある。
また、第2の発明は、前記第1の発明に記載の車両の制御装置において、前記制御量算出部は、前記始動時モデルでは、前記エンジンの回転速度から前記電動機の回転速度を減算したときの値である前記クラッチの差回転速度が正値であるか負値であるかに基づいて、前記エンジンの角加速度の目標値の算出方法を切り替えることにある。
また、第3の発明は、前記第2の発明に記載の車両の制御装置において、前記制御量算出部は、前記クラッチの差回転速度が正値であるときには、前記エンジンのフリクショントルクを前記エンジンのイナーシャで除算した値を前記エンジンの角加速度の目標値とする一方で、前記クラッチの差回転速度が負値であるときには、前記電動機の角加速度の実際値に、前記クラッチの差回転速度の絶対値を所定同期時間でゼロにするときの前記エンジンの角加速度を加算した値を前記エンジンの角加速度の目標値とすることにある。
また、第4の発明は、前記第1の発明から第3の発明の何れか1つに記載の車両の制御装置において、前記制御量算出部は、前記エンジンの始動方法が、前記エンジンの回転速度と前記電動機の回転速度とが同期するまで前記クラッチの係合によって前記エンジンの回転速度を上昇させる第1始動方法であるか、前記エンジンの回転速度と前記電動機の回転速度とが同期するまでの過程で前記エンジンの自立回転によって前記エンジンの回転速度を上昇させる第2始動方法であるか、に基づいて前記トルク分担割合を設定することにある。
また、第5の発明は、前記第4の発明に記載の車両の制御装置において、前記制御量算出部は、前記エンジンの始動方法が前記第1始動方法であるときに、前記エンジンの回転速度が前記電動機の回転速度よりも大きい場合には、前記エンジンのトルクのみで前記エンジンの角加速度の目標値を実現させる前記トルク分担割合を設定し、前記エンジンの回転速度が前記電動機の回転速度よりも小さい場合には、前記クラッチのトルク容量のみで前記エンジンの角加速度の目標値を実現させる前記トルク分担割合を設定する一方で、前記エンジンの始動方法が前記第2始動方法であるときに、前記エンジンの回転速度と前記電動機の回転速度との回転速度差の絶対値が大きい場合には、小さい場合に比べて、前記エンジンのトルクの分担が大きくされる前記トルク分担割合を設定することにある。
また、第6の発明は、前記第5の発明に記載の車両の制御装置において、前記制御量算出部は、前記エンジンの始動方法が前記第2始動方法であるときに、前記回転速度差の絶対値が所定回転速度差よりも大きい場合には、前記クラッチの耐久性低下が抑制される予め定められた所定トルク分担割合を設定する一方で、前記回転速度差の絶対値が前記所定回転速度差よりも小さい場合には、前記所定トルク分担割合に比べて前記エンジンのトルクの分担が小さくされる予め定められた第2所定トルク分担割合を設定することにある。
また、第7の発明は、前記第4の発明から第6の発明の何れか1つに記載の車両の制御装置において、前記制御量算出部は、前記始動時モデルを用いて算出する前記制御量が実現可能な値となるように、前記エンジンの角加速度の目標値が正値であるか負値であるか、及び前記エンジンの回転速度から前記電動機の回転速度を減算したときの値である前記クラッチの差回転速度が正値であるか負値であるか、に基づいて、前記トルク分担割合の制限値を設定することにある。
また、第8の発明は、前記第1の発明から第7の発明の何れか1つに記載の車両の制御装置において、前記制御量算出部は、前記始動時モデルでは、前記エンジンの回転速度から前記電動機の回転速度を減算したときの値である前記クラッチの差回転速度が正値であるか負値であるかに基づいて、前記エンジンの角加速度の目標値の制限値を設定することにある。
また、第9の発明は、前記第8の発明に記載の車両の制御装置において、前記制御量算出部は、前記クラッチの差回転速度が正値である場合には、前記電動機に対して電力を授受する蓄電装置の充電制限によって、前記反力トルクを補償するように回生作動する前記電動機のトルクが制限されたことによる前記クラッチのトルク容量の制御可能範囲に応じた前記エンジンの角加速度の目標値の制限値を設定する一方で、前記クラッチの差回転速度が負値である場合には、駆動トルク分を確保することによって、前記反力トルクを補償するように力行作動する前記電動機のトルクが制限されたことによる前記クラッチのトルク容量の制御可能範囲に応じた前記エンジンの角加速度の目標値の制限値を設定することにある。
また、第10の発明は、前記第1の発明から第9の発明の何れか1つに記載の車両の制御装置において、前記制御量算出部は、前記エンジンの回転速度と前記電動機の回転速度との同期の際に、前記エンジンの回転速度が前記電動機の回転速度を超えないように、前記トルク分担割合に上限値及び下限値を設定することにある。
前記第1の発明によれば、エンジンの始動に際して、所定条件が成立した場合には、エンジンの角加速度の目標値と制御量としてのエンジンのトルク及びクラッチのトルク容量との関係を定式化した運動方程式に、トルク分担割合を適用することでエンジンの角加速度の目標値を実現させる制御量を決定する予め定められた始動時モデルを用いて、制御量が算出されるので、エンジンの角加速度の目標値とトルク分担割合とを設定するだけであり、適合工数の削減が可能である。又、制御中に変動する可能性のある電動機の回転速度やアクセル開度の影響を制御量に反映でき、複雑な適合も不要となる。よって、複雑な適合を行うことなく、エンジン始動時の制御量を精度良く算出することができる。
また、前記第2の発明によれば、始動時モデルでは、クラッチの差回転速度が正値であるか負値であるかに基づいて、エンジンの角加速度の目標値の算出方法が切り替えられるので、クラッチの差回転速度が正値であるか負値であるかによってエンジンの回転速度と電動機の回転速度とを同期させるように作用可能なトルク要素(エンジンのトルク、クラッチのトルク容量)が相違することに対応することができ、一層精度良く制御量を算出することができる。
また、前記第3の発明によれば、クラッチの差回転速度が正値であるときには、エンジンのフリクショントルクをエンジンのイナーシャで除算した値がエンジンの角加速度の目標値とされる一方で、クラッチの差回転速度が負値であるときには、電動機の角加速度の実際値に、クラッチの差回転速度の絶対値を所定同期時間でゼロにするときのエンジンの角加速度を加算した値がエンジンの角加速度の目標値とされるので、エンジンの角加速度の目標値が適切に設定され、一層精度良く制御量を算出することができる。
また、前記第4の発明によれば、エンジンの始動方法が、エンジンの回転速度と電動機の回転速度とが同期するまでクラッチの係合によってエンジンの回転速度を上昇させる第1始動方法であるか、エンジンの回転速度と電動機の回転速度とが同期するまでの過程でエンジンの自立回転によってエンジンの回転速度を上昇させる第2始動方法であるか、に基づいてトルク分担割合が設定されるので、エンジンの作動状態が異なる第1始動方法と第2始動方法とに合わせた、エンジンの角加速度の目標値を実現させる制御量を算出することができる。
また、前記第5の発明によれば、エンジンの始動方法が第1始動方法であるときに、エンジンの回転速度が電動機の回転速度よりも大きい場合には、エンジンのトルクのみでエンジンの角加速度の目標値を実現させるトルク分担割合が設定され、エンジンの回転速度が電動機の回転速度よりも小さい場合には、クラッチのトルク容量のみでエンジンの角加速度の目標値を実現させるトルク分担割合が設定されるので、基本的には始動過渡中のエンジンのトルクがフリクショントルクとされる第1始動方法において、エンジンの角加速度の目標値を適切に実現させることができる。一方で、エンジンの始動方法が第2始動方法であるときに、エンジンの回転速度と電動機の回転速度との回転速度差の絶対値が大きい場合には、小さい場合に比べて、エンジンのトルクの分担が大きくされるトルク分担割合が設定されるので、エンジンのトルクによってエンジンの回転速度が上昇させられる第2始動方法において、クラッチの差回転速度の絶対値が大きい程エンジンのトルクが大きくされ、クラッチの耐久性低下を抑制することができる。
また、前記第6の発明によれば、エンジンの始動方法が第2始動方法であるときに、エンジンの回転速度と電動機の回転速度との回転速度差の絶対値が所定回転速度差よりも大きい場合には、クラッチの耐久性低下が抑制される予め定められた所定トルク分担割合が設定される一方で、その回転速度差の絶対値が所定回転速度差よりも小さい場合には、所定トルク分担割合に比べてエンジンのトルクの分担が小さくされる予め定められた第2所定トルク分担割合が設定されるので、クラッチの差回転速度の絶対値が大きい程エンジンのトルクが適切に大きくされ、クラッチの耐久性低下を適切に抑制することができる。
また、前記第7の発明によれば、始動時モデルを用いて算出する制御量が実現可能な値となるように、エンジンの角加速度の目標値が正値であるか負値であるか及びクラッチの差回転速度が正値であるか負値であるかに基づいて、トルク分担割合の制限値が設定されるので、エンジンの角加速度の目標値を物理特性上実現できないトルク分担割合が設定され難くされる。
また、前記第8の発明によれば、始動時モデルでは、クラッチの差回転速度が正値であるか負値であるかに基づいてエンジンの角加速度の目標値の制限値が設定されるので、実現可能なエンジンの角加速度の目標値が設定される。
また、前記第9の発明によれば、クラッチの差回転速度が正値である場合には、蓄電装置の充電制限によって、回生作動する電動機のトルクが制限されたことによるクラッチのトルク容量の制御可能範囲に応じたエンジンの角加速度の目標値の制限値が設定される一方で、クラッチの差回転速度が負値である場合には、駆動トルク分を確保することによって、力行作動する電動機のトルクが制限されたことによるクラッチのトルク容量の制御可能範囲に応じたエンジンの角加速度の目標値の制限値が設定されるので、出力可能な電動機のトルクの範囲内で実現可能なエンジンの角加速度の目標値が設定される。
また、前記第10の発明によれば、エンジンの回転速度と電動機の回転速度との同期の際に、エンジンの回転速度が電動機の回転速度を超えないように、トルク分担割合に上限値及び下限値が設定されるので、エンジンの回転速度が電動機の回転速度に対して吹き上がってしまうことが抑制される制御量が設定され、ショック等によるドライバビリティーの悪化が抑制される。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、動力源SPとして機能する、エンジン12及び電動機MGを備えたハイブリッド車両である。又、車両10は、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16と、を備えている。
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置90によって、車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン12のトルクであるエンジントルクTeが制御される。
電動機MGは、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。電動機MGは、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられたバッテリ54に接続されている。バッテリ54は、電動機MGに対して電力を授受する蓄電装置である。電動機MGは、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、電動機MGのトルクであるMGトルクTmが制御される。MGトルクTmは、例えば電動機MGの回転方向がエンジン12の運転時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。具体的には、電動機MGは、バッテリ54から供給される電力により動力を発生する。又、電動機MGは、エンジン12の動力や駆動輪14側から入力される被駆動力により発電を行う。バッテリ54は、電動機MGの発電による電力を充電する。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギーも同意である。前記動力は、特に区別しない場合には駆動力、トルク、及び力も同意である。
動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース18内において、K0クラッチ20、トルクコンバータ22、自動変速機24等を備えている。K0クラッチ20は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路におけるエンジン12と電動機MGとの間に設けられたクラッチである。トルクコンバータ22は、K0クラッチ20を介してエンジン12に連結されている。自動変速機24は、トルクコンバータ22に連結されており、トルクコンバータ22と駆動輪14との間の動力伝達経路に介在させられている。自動変速機24は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路における電動機MGと駆動輪14との間に設けられた変速機である。又、動力伝達装置16は、自動変速機24の出力回転部材である変速機出力軸26に連結されたプロペラシャフト28、プロペラシャフト28に連結されたディファレンシャルギヤ30、ディファレンシャルギヤ30に連結された1対のドライブシャフト32等を備えている。又、動力伝達装置16は、エンジン12とK0クラッチ20とを連結する連結軸であるエンジン連結軸34、K0クラッチ20とトルクコンバータ22とを連結する電動機連結軸36等を備えている。
電動機MGは、ケース18内において、電動機連結軸36に動力伝達可能に連結されている。つまり、電動機MGは、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路、特にはK0クラッチ20とトルクコンバータ22との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結されている。見方を換えれば、電動機MGは、K0クラッチ20を介することなくトルクコンバータ22や自動変速機24と動力伝達可能に連結されている。
トルクコンバータ22は、電動機連結軸36と連結されたポンプ翼車22a、及び自動変速機24の入力回転部材である変速機入力軸38と連結されたタービン翼車22bを備えている。トルクコンバータ22は、動力源SPからの動力を流体を介して電動機連結軸36から変速機入力軸38へ伝達する流体式伝動装置である。トルクコンバータ22は、ポンプ翼車22aとタービン翼車22bとを連結する、つまり電動機連結軸36と変速機入力軸38とを連結する直結クラッチとしてのLUクラッチ40を備えている。LUクラッチ40は、公知のロックアップクラッチである。
LUクラッチ40は、車両10に備えられた油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるLU油圧PRluによりLUクラッチ40のトルク容量であるLUトルクTluが変化させられることで、作動状態つまり制御状態が切り替えられる。LUクラッチ40の制御状態としては、LUクラッチ40が完全に解放された状態である解放状態、LUクラッチ40が滑りを伴って係合された状態であるスリップ状態、及びLUクラッチ40が完全に係合された状態である係合状態がある。LUクラッチ40が解放状態とされることにより、トルクコンバータ22はトルク増幅作用が得られるトルクコンバータ状態とされる。又、LUクラッチ40が係合状態とされることにより、トルクコンバータ22はポンプ翼車22a及びタービン翼車22bが一体回転させられるロックアップ状態とされる。
自動変速機24は、例えば不図示の1組又は複数組の遊星歯車装置と、複数の係合装置CBと、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、例えば公知の油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。
自動変速機24は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合されることによって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度ωi/AT出力回転速度ωo)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。自動変速機24は、後述する電子制御装置90によって、ドライバー(=運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるギヤ段が切り替えられる。AT入力回転速度ωiは、変速機入力軸38の回転速度であり、自動変速機24の入力回転速度である。AT入力回転速度ωiは、トルクコンバータ22の出力回転速度であるタービン回転速度ωtと同値である。AT入力回転速度ωiは、タービン回転速度ωtで表すことができる。AT出力回転速度ωoは、変速機出力軸26の回転速度であり、自動変速機24の出力回転速度である。
K0クラッチ20は、例えば多板式或いは単板式のクラッチにより構成される油圧式の摩擦係合装置である。K0クラッチ20は、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるK0油圧PRk0によりK0クラッチ20のトルク容量であるK0トルクTk0が変化させられることで、係合状態、スリップ状態、解放状態などの制御状態が切り替えられる。
車両10において、K0クラッチ20の係合状態では、エンジン12とトルクコンバータ22とが動力伝達可能に連結される。一方で、K0クラッチ20の解放状態では、エンジン12とトルクコンバータ22との間の動力伝達が遮断される。電動機MGはトルクコンバータ22に連結されているので、K0クラッチ20は、エンジン12を電動機MGと断接するクラッチとして機能する。
動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ20が係合された場合に、エンジン連結軸34から、K0クラッチ20、電動機連結軸36、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、及びドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。又、電動機MGから出力される動力は、K0クラッチ20の制御状態に拘わらず、電動機連結軸36から、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、及びドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。
車両10は、機械式のオイルポンプであるMOP58、電動式のオイルポンプであるEOP60、ポンプ用モータ62等を備えている。MOP58は、ポンプ翼車22aに連結されており、動力源SPにより回転駆動させられて動力伝達装置16にて用いられる作動油OILを吐出する。ポンプ用モータ62は、EOP60を回転駆動する為のEOP60専用のモータである。EOP60は、ポンプ用モータ62により回転駆動させられて作動油OILを吐出する。MOP58やEOP60が吐出した作動油OILは、油圧制御回路56へ供給される。油圧制御回路56は、MOP58及び/又はEOP60が吐出した作動油OILを元にして各々調圧した、LU油圧PRlu、CB油圧PRcb、K0油圧PRk0などを供給する。
車両10は、更に、車両10の制御装置を含む電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、電動機制御用、クラッチ制御用等の各コンピュータを含んで構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、タービン回転速度センサ72、出力回転速度センサ74、MG回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、スロットル弁開度センサ80、ブレーキスイッチ82、バッテリセンサ84、油温センサ86など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度ωe、AT入力回転速度ωiと同値であるタービン回転速度ωt、車速Vに対応するAT出力回転速度ωo、電動機MGの回転速度であるMG回転速度ωm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、油圧制御回路56内の作動油OILの温度である作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。
電子制御装置90は、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいてバッテリ充電量SOC[%]を算出する。バッテリ充電量SOCは、バッテリ54の充電量であって、バッテリ54の充電状態を示す値つまり充電状態値である。電子制御装置90は、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ充電量SOCに基づいてバッテリ54の充電可能電力Win[W]や放電可能電力Wout[W]を算出する。バッテリ54の充電可能電力Winは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能な最大電力であり、バッテリ54の入力制限つまり充電制限を示している。バッテリ54の放電可能電力Woutは、バッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能な最大電力であり、バッテリ54の出力制限つまり放電制限を示している。充電可能電力Win及び放電可能電力Woutは、各々、例えばバッテリ温度THbatが常用域より低い低温域ではバッテリ温度THbatが低い程小さくされ、又、バッテリ温度THbatが常用域より高い高温域ではバッテリ温度THbatが高い程小さくされる。又、充電可能電力Winは、例えばバッテリ充電量SOCが高い領域ではバッテリ充電量SOCが高い程小さくされる。又、放電可能電力Woutは、例えばバッテリ充電量SOCが低い領域ではバッテリ充電量SOCが低い程小さくされる。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、ポンプ用モータ62など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、電動機MGを制御する為のMG制御指令信号Sm、係合装置CBを制御する為のCB油圧制御指令信号Scb、K0クラッチ20を制御する為のK0油圧制御指令信号Sk0、LUクラッチ40を制御する為のLU油圧制御指令信号Slu、EOP60を制御する為のEOP制御指令信号Seopなど)が、それぞれ出力される。
各油圧制御指令信号Sについて、K0油圧制御指令信号Sk0を例示して説明する。電子制御装置90は、K0油圧PRk0の指令値として、K0油圧PRk0の要求値を実現する、油圧制御回路56により調圧されたK0油圧PRk0を供給させる為の油圧指令値であるK0油圧指令値Spk0を算出する。K0油圧PRk0の要求値すなわち要求K0油圧PRk0dは、例えばK0クラッチ20のパック詰め完了前では、K0クラッチ20のパック詰めに必要なK0油圧PRk0であり、K0クラッチ20のパック詰め完了後では、K0トルクTk0の要求値を発生させるのに必要なK0油圧PRk0をパック詰めに必要なK0油圧PRk0に加算した合計のK0油圧PRk0である。K0クラッチ20のパック詰めは、K0クラッチ20の摩擦プレート等におけるパッククリアランスを詰められた状態とすることである。K0トルクTk0の要求値すなわち要求K0トルクTk0dは、例えばエンジン12の始動制御時であれば、エンジン12のクランキングやK0クラッチ20を係合状態へ切り替える為に要求されるK0トルクTk0である。電子制御装置90は、K0油圧指令値Spk0を、油圧制御回路56に備えられたK0ソレノイドSLk0を駆動する為のK0指示電流値Sik0に変換する。K0ソレノイドSLk0は、K0油圧PRk0を出力するK0クラッチ20用のソレノイドバルブである。K0指示電流値Sik0は、電子制御装置90に備えられた、K0ソレノイドSLk0を駆動する駆動回路であるソレノイド用ドライバに対する指示電流である。K0油圧制御指令信号Sk0は、K0指示電流値Sik0に基づいて、ソレノイド用ドライバがK0ソレノイドSLk0を駆動する為の駆動電流又は駆動電圧である。つまり、K0油圧指令値Spk0は、K0油圧制御指令信号Sk0に変換されて油圧制御回路56へ出力される。本実施例では、便宜上、K0油圧指令値Spk0とK0油圧制御指令信号Sk0とを同意に取り扱う。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現する為に、動力源制御手段すなわち動力源制御部92、クラッチ制御手段すなわちクラッチ制御部94、及び制御量算出手段すなわち制御量算出部96を備えている。
動力源制御部92は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部92aとしての機能と、インバータ52を介して電動機MGの作動を制御する電動機制御手段すなわち電動機制御部92bとしての機能と、を含んでおり、それらの制御機能によりエンジン12及び電動機MGによるハイブリッド駆動制御等を実行するハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部である。
動力源制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量DEMを算出する。前記駆動要求量マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である。駆動要求量DEMは、例えば駆動輪14における要求駆動トルクTrdemである。要求駆動トルクTrdem[Nm]は、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPrdem[W]である。駆動要求量DEMとしては、駆動輪14における要求駆動力Frdem[N]、変速機出力軸26における要求AT出力トルク等を用いることもできる。駆動要求量DEMの算出では、車速Vに替えてAT出力回転速度ωoなどを用いても良い。動力源制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機24の変速比γat等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御するエンジン制御指令信号Seと、電動機MGを制御するMG制御指令信号Smと、を出力する。尚、駆動トルクTrなどの車両10の出力を制御すること以外の制御では、駆動要求量DEMは、例えば単にアクセル開度θaccやスロットル弁開度θth等を用いることもできる。
動力源制御部92は、電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合には、車両10を駆動する駆動モードをBEV駆動モードとする。BEV駆動モードは、K0クラッチ20の解放状態において、電動機MGのみを動力源SPに用いて走行するモータ走行(=BEV走行)が可能なモータ駆動モードである。一方で、動力源制御部92は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求駆動トルクTrdemを賄えない場合には、駆動モードをエンジン駆動モードつまりHEV駆動モードとする。HEV駆動モードは、K0クラッチ20の係合状態において、少なくともエンジン12を動力源SPに用いて走行するエンジン走行つまりハイブリッド走行(=HEV走行)が可能なハイブリッド駆動モードである。他方で、動力源制御部92は、電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合であっても、バッテリ54の充電が必要な場合やエンジン12等の暖機が必要な場合などには、HEV駆動モードを成立させる。
動力源制御部92は、エンジン12の制御状態を停止状態から運転状態へ切り替えるエンジン始動要求の有無を判定する。例えば、動力源制御部92は、BEV駆動モード時に、要求駆動トルクTrdemが電動機MGの出力のみで賄える範囲よりも増大したか否か、又は、エンジン12等の暖機が必要であるか否か、又は、バッテリ54の充電が必要であるか否かなどに基づいて、エンジン始動要求が有るか否かを判定する。
クラッチ制御部94は、動力源制御部92によりエンジン始動要求が有ると判定された場合には、エンジン12の始動制御を実行するようにK0クラッチ20を制御する。例えば、クラッチ制御部94は、クランキングトルクTcrをエンジン12側へ伝達する為のK0トルクTk0が得られるように、解放状態のK0クラッチ20を係合状態に向けて制御する為のK0油圧指令値Spk0を出力する。つまり、クラッチ制御部94は、エンジン12の始動に際して、K0クラッチ20の制御状態を解放状態から係合状態へ切り替えるようにK0トルクTk0を制御する為のK0油圧指令値Spk0を出力する。クランキングトルクTcrは、エンジン回転速度ωeを引き上げるエンジン12のクランキングに必要なトルクである。
動力源制御部92は、エンジン始動要求が有ると判定した場合には、エンジン12の始動制御を実行するようにエンジン12及び電動機MGを制御する。例えば、電動機制御部92bは、K0クラッチ20の係合状態への切替えに合わせて、電動機MGがクランキングトルクTcrを出力する為のMG制御指令信号Smをインバータ52へ出力する。又、エンジン制御部92aは、K0クラッチ20の係合状態への切替えに合わせて、燃料供給やエンジン点火などを開始する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。エンジン制御部92aは、エンジン12の点火を開始した初爆後にエンジン12の爆発による自立回転が安定した状態すなわちエンジン12が完爆した状態となるようにエンジントルクTeを出力する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。このように、エンジン制御部92aは、エンジン12の始動に際して、エンジン12が運転状態とされるようにエンジントルクTeを制御する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。
エンジン12のクランキング時には、K0クラッチ20の係合に伴う反力トルクが生じる。この反力トルクは、例えばBEV走行時には、エンジン始動中のエンジン12等のイナーシャによる駆動トルクTrの落ち込みを生じさせる。その為、エンジン12を始動する際にクランキングトルクTcrに向けて増加させられるMGトルクTmは、この反力トルクを打ち消す為のMGトルクTmであって、この反力トルクを補償するMGトルクTm分すなわち反力補償用のMGトルクTmである。クランキングトルクTcrは、エンジン12のクランキングに必要なK0トルクTk0であり、電動機MG側からK0クラッチ20を介してエンジン12側へ流れる、エンジン12のクランキングに必要なMGトルクTmである。クランキングトルクTcrは、例えばエンジン12の諸元、エンジン12の始動方法等に基づいて予め定められた例えば一定のトルクである。このように、電動機制御部92bは、エンジン12の始動に際して、K0クラッチ20を介して伝達されるクランキングトルクTcrを電動機MGが出力するように、すなわちK0トルクTk0に対する反力トルクを補償するようにMGトルクTmを制御する為のMG制御指令信号Smをインバータ52へ出力する。従って、電動機制御部92bは、BEV走行中のエンジン12の始動の際には、BEV走行用のMGトルクTmつまり駆動トルクTrを生じさせるMGトルクTmに加えて、クランキングトルクTcr分のMGトルクTmを電動機MGから出力させる。
制御量算出部96は、エンジン12の始動に際して、エンジン角加速度dωe/dtの目標値を実現させる、エンジントルクTeの要求値すなわち要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dを算出する。エンジン角加速度dωe/dtは、エンジン12の角加速度であって、エンジン回転速度ωeつまりエンジン12の角速度の時間変化率すなわち時間微分であり、エンジン回転速度ωeの変化速度である。本実施例では、エンジン角加速度dωe/dtの目標値を目標エンジン角加速度dωetと表す。要求エンジントルクTedは、例えばエンジン12の始動制御時であれば、エンジン12を運転状態へ切り替える為に要求されるエンジントルクTeであって、エンジン制御部92aにより制御されるエンジントルクTeである。要求K0トルクTk0dは、クラッチ制御部94により制御されるK0トルクTk0である。要求エンジントルクTedと要求K0トルクTk0dとは、目標エンジン角加速度dωetを実現させる制御量である。
制御量算出部96は、エンジン12の始動制御の開始時に、例えばエンジン12の始動応答性やショック感度を考慮して予め定められた目標エンジン角加速度マップにK0差回転Δωk0を適用することで、目標エンジン角加速度dωetを算出する。K0差回転Δωk0は、K0クラッチ20の差回転速度であって、K0クラッチ20の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差である。K0クラッチ20の入力回転速度は、エンジン連結軸34の回転速度であって、エンジン回転速度ωeと同値である。K0クラッチ20の出力回転速度は、電動機連結軸36の回転速度であって、MG回転速度ωmと同値である。つまり、K0差回転Δωk0は、エンジン回転速度ωeとMG回転速度ωmとの回転速度差である。本実施例では、エンジン回転速度ωeからMG回転速度ωmを減算したときの値をK0差回転Δωk0(=ωe-ωm)とする。制御量算出部96は、エンジン12の始動制御の開始時に、予め定められた制御量マップに目標エンジン角加速度dωetを適用することで、要求エンジントルクTedと要求K0トルクTk0dとを算出する。このように、制御量算出部96は、エンジン12の始動に際して、予め定められた適合値を用いて、目標エンジン角加速度dωetを実現させる制御量としての、要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dを、算出する。
動力源制御部92は、エンジン12の制御状態を運転状態から停止状態へ切り替えるエンジン12の停止要求であるエンジン停止要求の有無を判定する。例えば、動力源制御部92は、HEV駆動モード時に、要求駆動トルクTrdemが電動機MGの出力のみで賄える範囲内であって、エンジン12等の暖機が不要であり、バッテリ54の充電が不要であるか否かなどに基づいて、エンジン停止要求が有るか否かを判定する。
動力源制御部92は、エンジン停止要求が有ると判定した場合には、エンジントルクTeを漸減する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。その後、動力源制御部92は、クラッチ制御部94によってK0クラッチ20が解放状態へ切り替えられた後に、エンジン12への燃料供給を停止するフューエルカットを実施する為のエンジン制御指令信号Seをエンジン制御装置50へ出力する。
クラッチ制御部94は、例えば予め定められた関係である変速マップを用いて自動変速機24の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機24の変速制御を実行する為のCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力する。前記変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機24の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。前記変速マップでは、車速Vに替えてAT出力回転速度ωoなどを用いても良いし、又、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。
図2は、エンジン12の始動制御が実行された場合のタイムチャートの一例を示す図である。図2において、t1時点は、例えばBEV走行中に、運転者によるアクセルペダルの踏み増し操作に伴ってエンジン始動要求が有ると判定されたことにより、エンジン12の始動制御が開始された時点を示している。エンジン12の始動制御の開始後、K0クラッチ20のパック詰めを行う制御すなわちK0パック詰め制御が実行される(t1時点-t2時点参照)。K0パック詰め制御では、先ず、K0油圧PRk0の初期応答性を向上させる為に、一時的に高いK0油圧指令値Spk0を出力するクイックアプライ(=QA)が実行され(a部参照)、次いで、K0クラッチ20のパック詰めを完了させる為に、一定圧で待機するパック詰め用定圧待機が実行される(b部参照)。パック詰め用定圧待機における破線では、K0クラッチ20をパック詰め完了状態に維持する為のK0油圧PRk0である一定のパック圧PRk0pkとするK0油圧指令値Spk0が出力されている。パック詰め用定圧待機における実線では、パック圧PRk0pkに、クランキングトルクTcrに相当するK0油圧PRk0分を加えた合計のK0油圧PRk0とするK0油圧指令値Spk0が出力されている。破線に示すK0油圧指令値Spk0と実線に示すK0油圧指令値Spk0とでは、K0パック詰め制御の期間は本来は異なるが、図2では便宜上同じ長さとしている。
K0パック詰め制御の終了後、エンジン12をクランキングする為に、クランキングトルクTcrをエンジン12側へ伝達するK0クラッチ20によるクランキングすなわちK0クランキングが実行される(t2時点-t3時点参照)。K0クランキング時のK0油圧指令値Spk0は、クランキングトルクTcrに相当するK0油圧PRk0分をパック圧PRk0pkに加えた合計のK0油圧PRk0を実現する為のK0油圧指令値Spk0であって、クランキングトルクTcrをK0クラッチ20が伝達するようにK0油圧PRk0を調圧するK0油圧指令値Spk0である。K0クランキング時には、クランキングトルクTcrに相当する大きさのMGトルクTmすなわち反力補償用のMGトルクTmが電動機MGから出力させられる。K0クランキング時において、エンジン回転速度ωeが引き上げられると、エンジン点火などが開始されてエンジン12が初爆させられる。
K0クランキングの終了後、K0クラッチ20の係合状態への切替えを待機する為に、K0トルクTk0をクランキングトルクTcrよりも低下させて所定トルクTk0fに維持するクランキング後定圧待機が実行される(t3時点-t4時点参照)。所定トルクTk0fは、クランキングの終了後に、エンジン12の完爆の外乱とならない為の、クランキングトルクTcrよりも小さな予め定められたK0トルクTk0である。エンジン12の完爆の外乱とならないということとは、エンジン12の初爆後に、エンジン12の自立回転を妨げないということである。別の観点では、エンジン12の点火後に自立回転でエンジン回転速度ωeを上昇させるに当たり、K0クラッチ20が例えばクランキングトルクTcr相当のK0トルクTk0を持っているとK0クラッチ20よりも下流側の電動機MG等のイナーシャ分の影響により始動ショックが増大する可能性がある。所定トルクTk0fは、エンジン12のクランキングの終了後に、エンジン12の自立回転でエンジン回転速度ωeを上昇させる際の始動ショックを低減する為の、クランキングトルクTcrよりも小さな予め定められたK0トルクTk0である。クランキング後定圧待機時のK0油圧指令値Spk0は、例えばK0クラッチ20をパック詰め完了状態に維持する値と同程度又はそれよりも大きく、エンジン12の完爆の外乱とならないK0トルクTk0を実現する為のK0油圧指令値Spk0であって、K0トルクTk0をクランキングトルクTcrよりも低下させて一時的に所定トルクTk0fに維持するようにK0油圧PRk0を調圧するK0油圧指令値Spk0である。クランキング後定圧待機の実行中、エンジン回転速度ωeは、K0トルクTk0によってではなく、専らエンジン12の燃焼トルクによって上昇させられる。尚、本実施例では、クランキング後定圧待機の実行に先立って、K0油圧PRk0の初期応答性を向上させる為に、一時的に低いK0油圧指令値Spk0を出力するクイックドレン(=QD)が実行されている(c部参照)。
クランキング後定圧待機の実行中に、エンジン12の爆発による自立回転が安定した状態となると、すなわちエンジン12が完爆した状態となると、エンジン12と電動機MGとの回転同期制御、つまりエンジン回転速度ωeとMG回転速度ωmとを同期させるK0クラッチ20による同期制御すなわちK0同期制御が実行される(t4時点以降参照)。エンジン回転速度ωeとMG回転速度ωmとを同期させることとは、K0クラッチ20の入力回転速度と出力回転速度とを同期させることと同意である。エンジン12の完爆は、例えばエンジン制御部92aから完爆通知が出力されたときに判断される。エンジン12の完爆通知は、例えばエンジン回転速度ωeが予め定められたエンジン12の完爆回転速度に到達した時点からの経過時間が予め定められた完爆通知待機時間を超えたときに、エンジン制御部92aにより出力される。この完爆通知待機時間は、例えばエンジン12の排ガス要件が考慮されて予め定められている。K0クラッチ20の入力回転速度と出力回転速度との同期すなわちK0同期が完了した後、つまりK0クラッチ20の係合状態への切替えすなわちK0係合が完了した後、K0クラッチ20を完全係合状態へ移行するK0完全係合制御が実行される。K0完全係合制御によってK0クラッチ20が完全係合状態とされた後、エンジン12の始動制御が完了させられ(t5時点参照)、K0クラッチ20の完全係合状態が維持される(t5時点以降参照)。
本実施例では、図2に示すように、クランキング後定圧待機を実行してエンジン12の自立回転でエンジン回転速度ωeを上昇させるエンジン12の始動方法を、TDC始動方法と称する。エンジン12の自立回転でエンジン回転速度ωeを上昇させるエンジン12の始動方法としては、TDC始動方法とは別に、例えばエンジン12のクランキングと同時に又はクランキングよりも前にエンジン12に着火して始動させる着火始動方法、エンジン12の制御状態を運転状態から停止状態へ切り替える過渡中にエンジン12の再始動が要求されたことに伴ってフューエルカットを解除し、クランキングを行うことなくエンジン12を点火することによって始動させる自律復帰始動方法などがある。
尚、クラッチ制御部94は、エンジン12の始動に際して、クランキング後定圧待機を実行せず、K0クランキングやK0同期制御の実行によってエンジン回転速度ωeをMG回転速度ωmと同期させるまで引き上げるようにK0油圧指令値Spk0を出力することも可能である。この場合、エンジン制御部92aは、K0同期近傍で又はK0同期後にエンジン12の点火を開始する。本実施例では、K0クラッチ20や電動機MGによってK0同期近傍まで又はK0同期までエンジン回転速度ωeを引き上げた後にエンジン12を点火するエンジン12の始動方法を、PUSH始動方法と称する。
PUSH始動方法は、エンジン回転速度ωeとMG回転速度ωmとが同期するまでK0クラッチ20の係合によってエンジン回転速度ωeを上昇させる第1始動方法である。TDC始動方法、着火始動方法、及び自律復帰始動方法は、各々、エンジン回転速度ωeとMG回転速度ωmとが同期するまでの過程でエンジン12の自立回転によってエンジン回転速度ωeを上昇させる第2始動方法であり、PUSH始動以外の始動方法である。
ここで、前述したように、エンジン12の始動制御では、ショック感度や始動応答性が適切であるかを実車にて評価しつつ適合により予め定められた制御量マップを用いて、要求エンジントルクTedと要求K0トルクTk0dとを算出する手法を採用している。ところで、始動過渡中のMG回転速度ωmは、例えばアクセル操作、LUクラッチ40の制御状態、自動変速機の24の変速制御、他システムの要求等の複数種類の変動因子によって変化させられる。その為、制御量マップを用いる場合には、これらの変動因子によってMG回転速度ωmが変化させられることに合わせた異なる制御量マップを作成することが考えられる。この場合、制御量マップの適合作業に多くの工数等が必要となったり、制御量マップの作成に複雑な適合が必要となったりする。又、別の観点では、作成した制御量マップがハードばらつきによって合っていない車両がある可能性がある。
そこで、制御量算出部96は、エンジン12の始動に際して、所定条件CDfが成立した場合には、適合値(制御量マップ)を用いることに替えて、目標値(目標エンジン角加速度dωet)を実現させる制御量(要求エンジントルクTed、要求K0トルクTk0d)を決定する予め定められた始動時モデルMDstを用いて、要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dを算出する。本実施例では、始動時モデルMDstを用いた制御をモデルベース制御CTmdlと称する。
所定条件CDfは、例えば始動時モデルMDstを用いた制御を適切に行うことができると判断する為の予め定められた条件である。具体的には、速やかなK0同期を実現する為に安定したエンジントルクTeの制御ができるのは、例えばK0同期制御を実行しているときである。つまり、所望のK0同期を実現する要求エンジントルクTedを出力できるのは、K0同期制御を実行しているときである。その為、モデルベース制御CTmdlは、例えばK0同期制御の実行中に行われることが好ましい。従って、所定条件CDfは、K0同期制御の実行中であるという条件を含んでいる。
又、作動油温THoilが低いと、K0油圧指令値Spk0に対するK0油圧PRk0の実際値の追従性が低下し、始動時モデルMDstを用いた要求K0トルクTk0dの算出値が適切な値からずれ易い。又、アクセル開度θaccが大きなときは、エンジン特性の変化が大きい為、始動時モデルMDstを用いてK0油圧PRk0等を漸増させるよりも、適合値を用いてK0油圧PRk0を一気に増大した方が良い。その為、モデルベース制御CTmdlは、例えば作動油温THoilが所定油温THoilf以上且つアクセル開度θaccが所定アクセル開度θaccf以下であるというモデルベース制御実施条件CDmdlfが成立しているときに行われることが好ましい。従って、所定条件CDfは、モデルベース制御実施条件CDmdlfが成立しているという条件を含んでいる。所定油温THoilfは、例えばK0油圧PRk0の応答性が確保される予め定められた作動油温THoilの下限値である。所定アクセル開度θaccfは、例えばエンジン特性の変化が小さくされる予め定められたアクセル開度θaccの上限値である。
以下において、始動時モデルMDstを用いたエンジン12の始動制御について図3等を参照して詳述する。図3は、エンジン12から駆動輪14までの駆動装置のうちの、トルクコンバータ22や自動変速機24よりも前段部となるフロントモジュールFRMにおける運動方程式を説明する図である。図3において、フロントモジュールFRMは、破線で示すエンジン12からK0クラッチ20の入力回転部材までのモジュールEと、実線で示す、電動機MGを含むK0クラッチ20の出力回転部材からポンプ翼車22aまでのモジュールMと、を備えている。フロントモジュールFRMにおける運動方程式は、次式(1)及び次式(2)で表される。次式(1)は、モジュールEの回転要素つまりエンジン連結軸34における運動方程式であり、次式(2)は、モジュールMの回転要素つまり電動機連結軸36における運動方程式である。これらの運動方程式は、各モジュールの回転要素におけるイナーシャと角加速度との積で表されるトルクを、各モジュールの回転要素に作用するトルクにて規定した運動方程式である。次式(1)及び次式(2)において、「Ie」はエンジン12の慣性モーメントつまりイナーシャを、「dωe」はエンジン角加速度dωe/dtを、「Te」はエンジントルクを、「Tk0」はK0トルクを、「Im」は電動機MGの慣性モーメントつまりイナーシャを、「dωm」は電動機MGの角加速度であるMG角加速度dωm/dtを、「Tm」はMGトルクを、「Tin」はトルクコンバータ22の入力トルクを、それぞれ表している。又、次式(2)におけるMGトルクTmは、次式(3)に示すように、「Tme」で表される反力補償用のMGトルクTmと、「Tmp」で表される駆動トルクTrを生じさせるMGトルクTmと、の合計トルクである。
Ie×dωe = Te+Tk0 ・・・(1)
Im×dωm = -Tk0+Tm-Tin ・・・(2)
Tm = Tme+Tmp ・・・(3)
Im×dωm = -Tk0+Tm-Tin ・・・(2)
Tm = Tme+Tmp ・・・(3)
前記式(1)にエンジン12とK0クラッチ20とで分担するトルクの割合、つまりエンジントルクTeとK0トルクTk0とのトルク分担割合であるトルク分担率α(0≦α≦1)を拘束条件として設定することで、目標値(目標エンジン角加速度dωet)を実現させる制御量(要求エンジントルクTed、要求K0トルクTk0d)を決定することができる。具体的には、次式(4)を定義し、前記式(1)を分解すると、次式(5)及び次式(6)を導くことができる。次式(5)及び次式(6)の各「dωe」に目標エンジン角加速度dωetを代入し、トルク分担率αを設定することで、次式(5)の「Te」にて要求エンジントルクTedが算出され、次式(6)の「Tk0」にて要求K0トルクTk0dが算出される。又、「Tme」で表される反力補償用のMGトルクTmは、次式(7)に示すように、次式(6)の「Tk0」の値に、K0クラッチ20における差回転速度(=ωm-ωe)に基づいて決定された正負の符号が付される。尚、次式(7)のK0クラッチ20における差回転速度は、K0差回転Δωk0(=ωe-ωm)とは正負の符号が反転している。
Te:Tk0 = 1-α:α ・・・(4)
Te = (1-α)×Ie×dωe ・・・(5)
Tk0 = |α×Ie×dωe| ・・・(6)
Tme = sgn(ωm-ωe)×Tk0 ・・・(7)
Te = (1-α)×Ie×dωe ・・・(5)
Tk0 = |α×Ie×dωe| ・・・(6)
Tme = sgn(ωm-ωe)×Tk0 ・・・(7)
このように、制御量算出部96は、エンジン12の始動に際して、所定条件CDfが成立した場合には、適合値を用いることに替えて、目標エンジン角加速度dωetと制御量(要求エンジントルクTed、要求K0トルクTk0d)との関係を定式化したエンジン連結軸34における運動方程式に、トルク分担率αを適用することで目標エンジン角加速度dωetを実現させる制御量を決定する予め定められた始動時モデルMDstを用いて、要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dを算出する。
制御量算出部96は、始動時モデルMDstでは、目標エンジン角加速度マップを用いて目標エンジン角加速度dωetを算出することに替えて、目標エンジン角加速度dωetとしてFF目標エンジン角加速度dωetffを算出する。FF目標エンジン角加速度dωetffの「FF」はフィードフォワードを意味している。
エンジン12の始動方法がPUSH始動方法の場合、K0同期が完了するまでエンジン12はフューエルカットが実施されてエンジントルクTeはフリクショントルクTefとされている為、K0差回転Δωk0が正値であるときに、すなわちエンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも大きいときに、K0トルクTk0が主となってK0同期制御を進行させると、K0同期時にショックが発生する恐れがある。従って、K0同期に近づけるようにエンジン連結軸34に作用することが可能なトルク要素はエンジントルクTeとK0トルクTk0とであるが、K0差回転Δωk0が正値であるときは、エンジン12のフリクショントルクTefを主としてK0同期制御を進行させる。制御量算出部96は、エンジン12の始動方法がPUSH始動方法の場合に、K0差回転Δωk0が正値であるときには、エンジン12のフリクショントルクTefをエンジン12のイナーシャIeで除算した値をFF目標エンジン角加速度dωetff(=Tef/Ie)とする。エンジン12の始動時におけるフリクショントルクTefは、ポンピングロスに相当するコンプレッショントルクと、摺動抵抗に相当するメカニカルフリクショントルクと、吸排気弁装置等のメカニカルフリクショントルクと、の合計トルクである。
一方で、エンジン12の始動方法がPUSH始動方法の場合であって、K0差回転Δωk0が負値であるときは、すなわちエンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも小さいときは、又は、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法の場合は、エンジントルクTeとK0トルクTk0とのトルク要素でK0同期制御を進行させる為、エンジン連結軸34にトルク要素が作用可能な範囲で目標エンジン角加速度dωetを設定する。制御量算出部96は、エンジン12の始動方法がPUSH始動方法の場合に、K0差回転Δωk0が負値であるときには、又は、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法の場合には、MG角加速度dωm/dtの実際値に、相対目標エンジン角加速度dωetrを加算した値をFF目標エンジン角加速度dωetff(=dωmr+dωetr)とする。「dωmr」は、MG角加速度dωm/dtの実際値である実MG角加速度を表している。相対目標エンジン角加速度dωetrは実MG角加速度dωmrに対する相対的な値であり、FF目標エンジン角加速度dωetffは絶対的な値である。制御量算出部96は、K0差回転Δωk0の絶対値を所定同期時間TMsycでゼロにするときのエンジン角加速度dωe/dtを相対目標エンジン角加速度dωetr(=|Δωk0|/TMsyc)として算出する。所定同期時間TMsycは、ショック感度や始動応答性を考慮して予め定められた目標K0同期制御時間である。尚、PUSH始動以外の始動方法の場合には、K0差回転Δωk0の正負に関係なく所定同期時間TMsycに基づいて相対目標エンジン角加速度dωetrが算出されるので、「|Δωk0|/TMsyc」の値に対し、K0差回転Δωk0の正負に応じて正負の符号が付される。つまり、「|Δωk0|/TMsyc」は、K0差回転Δωk0が正値(ωe>ωm)のときは負値で算出され、K0差回転Δωk0が負値(ωe<ωm)のときは正値で算出される。
このように、制御量算出部96は、始動時モデルMDstでは、K0差回転Δωk0が正値であるか負値であるかに基づいて、目標エンジン角加速度dωetの算出方法を切り替える。又、制御量算出部96は、始動時モデルMDstでは、エンジン12の始動方法がPUSH始動方法であるかPUSH始動以外の始動方法であるかに基づいて、目標エンジン角加速度dωetの算出方法を切り替える。
反力補償用のMGトルクTm(=Tme)は、例えばバッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout、又は、駆動トルクTrを生じさせるMGトルクTm(=Tmp)に因って、出力可能な範囲が決められる。反力補償用のMGトルクTmの出力可能な範囲が決められるということは、この範囲内となるように、制御可能なK0トルクTk0の範囲が制限され、実現可能な目標エンジン角加速度dωetの範囲が制限されるということである(前記式(6)、(7)参照)。
具体的には、K0差回転Δωk0が正値であるときは、すなわちエンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも大きいときは、反力補償用のMGトルクTm(=Tme)は負値となり(前記式(7)参照)、電動機MGは回生作動するので、バッテリ54は充電側の電力が供給される。従って、反力補償用のMGトルクTmは、基本的には制限を受けないが、バッテリ54の充電可能電力Winが小さくされている状況では充電可能電力Winに基づく発電可能なMGトルクTmの範囲内に制限される。制御量算出部96は、K0差回転Δωk0が正値である場合には、バッテリ54の充電可能電力Winによって、K0クラッチ20の係合に伴う反力トルクを補償するように回生作動する電動機MGのMGトルクTmが制限されたことによるK0トルクTk0の制御可能範囲に応じた目標エンジン角加速度dωetの制限値を設定する。
一方で、K0差回転Δωk0が負値であるときは、すなわちエンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも小さいときは、反力補償用のMGトルクTm(=Tme)は正値となり(前記式(7)参照)、電動機MGは力行作動するので、バッテリ54は放電側の電力を出力させられる。従って、反力補償用のMGトルクTmは、バッテリ54の放電可能電力Woutに基づく出力可能なMGトルクTmに対して駆動トルクTr分のMGトルクTmが確保される範囲内に制限される。制御量算出部96は、K0差回転Δωk0が負値である場合には、駆動トルクTr分を確保することによって、K0クラッチ20の係合に伴う反力トルクを補償するように力行作動する電動機MGのMGトルクTmが制限されたことによるK0トルクTk0の制御可能範囲に応じた目標エンジン角加速度dωetの制限値を設定する。
このように、制御量算出部96は、始動時モデルMDstでは、K0差回転Δωk0が正値であるか負値であるかに基づいて、目標エンジン角加速度dωetの制限値を設定する。尚、目標エンジン角加速度dωetは、エンジントルクTeの出力可能な範囲でも制限を受ける。この際、エンジントルクTeの最大値や最小値はK0差回転Δωk0の正負に依存することなくエンジン連結軸34に作用することが可能であるので、K0差回転Δωk0の正負に基づく制限値の設定は不要となる。
エンジン12の始動方法がPUSH始動方法の場合、基本的には、K0同期が完了するまでエンジン12はフューエルカットが実施されるので、始動過渡中のエンジントルクTeがフリクショントルクTefとされる。フューエルカットの状態では、K0差回転Δωk0の正負によって、K0同期に近づけるようにエンジン連結軸34に作用するトルク要素が異なる。その為、目標エンジン角加速度dωetを実現させる為のトルク要素が異なる。
具体的には、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも大きい、K0差回転Δωk0が正値である場合は、専らエンジン12のフリクショントルクTefで目標エンジン角加速度dωetを実現させる。又、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも小さい、K0差回転Δωk0が負値である場合は、エンジントルクTeはK0同期に近づくことを妨げるようにエンジン連結軸34に作用する為、専らK0トルクTk0を制御することによって目標エンジン角加速度dωetを実現させる。つまり、制御量算出部96は、エンジン12の始動方法がPUSH始動方法であるときに、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも大きい場合には、エンジントルクTeのみで目標エンジン角加速度dωetを実現させるトルク分担率αすなわちトルク分担率αとして「0」を設定する(前記式(4)参照)。又、制御量算出部96は、エンジン12の始動方法がPUSH始動方法であるときに、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも小さい場合には、K0トルクTk0のみで目標エンジン角加速度dωetを実現させるトルク分担率αすなわちトルク分担率αとして「1」を設定する(前記式(4)参照)。
一方で、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法の場合、エンジントルクTe(>0)やK0トルクTk0によってエンジン回転速度ωeが上昇させられる。K0同期制御の過渡中においてK0差回転Δωk0の絶対値が大きい程、K0トルクTk0を付加したときにK0クラッチ20の耐久性が低下し易い。その為、K0同期に近づく過渡中にK0差回転Δωk0の絶対値が大きなあいだは、大きなエンジントルクTeにてエンジン回転速度ωeが上昇させられるように要求エンジントルクTedを大きくする。つまり、制御量算出部96は、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法であるときに、エンジン回転速度ωeとMG回転速度ωmとの回転速度差例えばK0差回転Δωk0の絶対値が大きい場合には、小さい場合に比べて、エンジントルクTeの分担が大きくされるトルク分担率αすなわち小さな値のトルク分担率αを設定する(前記式(4)参照)。
例えば、制御量算出部96は、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法であるときに、K0差回転Δωk0の絶対値が所定回転速度差Δωk0fよりも大きい場合には、トルク分担率αとして、K0クラッチ20の耐久性低下が抑制される予め定められた所定トルク分担割合αfを設定する。一方で、制御量算出部96は、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法であるときに、K0差回転Δωk0の絶対値が所定回転速度差Δωk0fよりも小さい場合には、トルク分担率αとして、所定トルク分担割合αfに比べて、エンジントルクTeの分担が小さくされる予め定められた第2所定トルク分担割合αf2つまり大きな値の第2所定トルク分担割合αf2を設定する。所定回転速度差Δωk0fは、例えばK0同期制御の過渡中にK0トルクTk0を付加したときにK0クラッチ20の耐久性が低下し易い予め定められたK0差回転Δωk0の絶対値範囲の下限値である。
このように、制御量算出部96は、エンジン12の始動方法がPUSH始動方法であるかPUSH始動以外の始動方法であるかに基づいてトルク分担率αを設定する。
物理特性上、目標エンジン角加速度dωetを実現させる制御量(要求エンジントルクTed、要求K0トルクTk0d)を決定するという観点で、つまり前記式(4)、(5)の解が存在するという観点で、トルク分担率αの制限値を設定することについて図4、図5等を参照して詳述する。
図4は、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法例えばTDC始動方法であって、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも小さい、K0差回転Δωk0が負値である場合に設定されるトルク分担率αの制限値を説明する図である。K0差回転Δωk0が負値である場合、エンジントルクTe及びK0トルクTk0は共に目標エンジン角加速度dωetの正値を実現する為に用いられ得る。K0トルクTk0は、反力補償用のMGトルクTm(=Tme>0)の出力可能な範囲で用いられ得る(前記式(7)参照)。つまり、K0トルクTk0は、反力補償用のMGトルクTmの最大値である最大Tme(=Tmmax)の範囲内で用いられ得る。従って、目標エンジン角加速度dωetの正値の領域では、K0トルクTk0の要件に基づけば、α≦Tmmax/(Ie×dωet)が設定される(前記式(6)参照)。線L1は、α=Tmmax/(Ie×dωet)を示している。目標エンジン角加速度dωetの正値の領域では、エンジントルクTeの最大値である最大Te(=Temax)と最大Tmeとで目標エンジン角加速度dωetの上限値(Temax+Tmmax)/Ieが設定される。図4の網掛け部A1に示すように、目標エンジン角加速度dωetが値Tmmax/Ieから上限値までの範囲では、必ずエンジントルクTeが必要な領域すなわちトルク分担率αを1に設定できない領域がある。つまり、トルク分担率αは、網掛け部A1の領域で上限が制限される。
又、エンジントルクTeは、最大Teの範囲内で用いられ得る。従って、目標エンジン角加速度dωetの正値の領域では、エンジントルクTeの要件に基づけば、α≧1-Temax/(Ie×dωet)が設定される(前記式(5)参照)。線L2は、α=1-Temax/(Ie×dωet)を示している。図4の斜線部A2に示すように、目標エンジン角加速度dωetが値Temax/Ieから上限値までの範囲では、必ずK0トルクTk0が必要な領域すなわちトルク分担率αを0に設定できない領域がある。つまり、トルク分担率αは、斜線部A2の領域で下限が制限される。よって、目標エンジン角加速度dωetが正値且つK0差回転Δωk0が負値である場合、トルク分担率αの制限値つまりトルク分担率αが許容される範囲であるトルク分担率αの制限範囲(アベイラビリティ)としては、0≦α≦1のうちの図4の網掛け部A1及び斜線部A2で示す領域が制限され、実現可能な目標エンジン角加速度dωetの範囲つまり目標エンジン角加速度dωetの有効範囲としてのアベイラビリティ内において、MAX(0、1-Temax/(Ie×dωet))≦α≦MIN(1、Tmmax/(Ie×dωet))が設定される。「MAX」は、マックスセレクトつまり最大値を選択することを表している。「MIN」は、ミニマムセレクトつまり最小値を選択することを表している。
K0差回転Δωk0が負値である場合、目標エンジン角加速度dωetの負値を実現する為には、K0トルクTk0は妨げることしかできないので、エンジントルクTeが主体的になる。よって、目標エンジン角加速度dωetが負値且つK0差回転Δωk0が負値である場合、トルク分担率αの制限値としては、図4に示すように、実現可能な目標エンジン角加速度dωetの範囲内において、α=0が設定され、トルク分担率αは0に固定される。
図5は、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法例えばTDC始動方法であって、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも大きい、K0差回転Δωk0が正値である場合に設定されるトルク分担率αの制限値を説明する図である。K0差回転Δωk0が正値である場合も、K0差回転Δωk0が負値である場合と考え方は同じである。K0差回転Δωk0が正値である場合、反力補償用のMGトルクTm(=Tm<0)は負トルクであるので、K0トルクTk0は、反力補償用のMGトルクTmの最小値である最小Tme(=Tmmin)の絶対値|Tmmin|の範囲内で用いられ得る。従って、目標エンジン角加速度dωetの負値の領域では、K0トルクTk0の要件に基づけば、α≦Tmmin/(Ie×dωet)が設定される(前記式(6)参照)。線L3は、α=Tmmin/(Ie×dωet)を示している。目標エンジン角加速度dωetの負値の領域では、エンジントルクTeの最小値である最小Te(=Temin)と最小Tmeとで目標エンジン角加速度dωetの下限値(Temin+Tmmin)/Ieが設定される。図5の網掛け部A3に示すように、目標エンジン角加速度dωetが値Tmmin/Ieから下限値までの範囲では、必ずエンジントルクTeが必要な領域がある。つまり、トルク分担率αは、網掛け部A3の領域で上限が制限される。
又、エンジントルクTeは、最小Teの範囲内で用いられ得る。従って、目標エンジン角加速度dωetの負値の領域では、エンジントルクTeの要件に基づけば、α≧1-Temin/(Ie×dωet)が設定される(前記式(5)参照)。線L4は、α=1-Temin/(Ie×dωet)を示している。図5の斜線部A4に示すように、目標エンジン角加速度dωetが値Temin/Ieから下限値までの範囲では、必ずK0トルクTk0が必要な領域がある。つまり、トルク分担率αは、斜線部A4の領域で下限が制限される。よって、目標エンジン角加速度dωetが負値且つK0差回転Δωk0が正値である場合、トルク分担率αの制限値としては、0≦α≦1のうちの図5の網掛け部A3及び斜線部A4で示す領域が制限され、実現可能な目標エンジン角加速度dωetの範囲内において、MAX(0、1-Temin/(Ie×dωet))≦α≦MIN(1、Tmmin/(Ie×dωet))が設定される。
目標エンジン角加速度dωetが正値且つK0差回転Δωk0が正値である場合、エンジントルクTeが主体的になる為、トルク分担率αの制限値としては、図5に示すように、実現可能な目標エンジン角加速度dωetの範囲内において、α=0が設定され、トルク分担率αは0に固定される。
このように、制御量算出部96は、始動時モデルMDstを用いて算出する制御量(要求エンジントルクTed、要求K0トルクTk0d)が実現可能な値となるように、目標エンジン角加速度dωetが正値であるか負値であるか、及びK0差回転Δωk0が正値であるか負値であるか、に基づいて、トルク分担率αの制限値(つまり制限範囲)を設定する。制御量算出部96は、例えば設定した所定トルク分担割合αf又は第2所定トルク分担割合αf2などをトルク分担率αの制限値によって制限するガード処理を行う。
K0同期制御の際には、ショック感度等のドライバビリティーを考慮すれば、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmを超えないこと、つまりエンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmに対して吹き上がらないことが望ましい。その為、K0同期制御の際は、エンジン12の始動応答性が所望する範囲に入ることを前提として、K0同期制御をゆっくりと行えば良い。エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmに対して吹き上がらないように、K0クラッチ20を係合するK0トルクTk0がエンジン回転速度ωeを上昇させるエンジントルクTeに打ち勝つトルク分担率αが設定される為の上下限制限が設けられる。
制御量算出部96は、K0同期の際に、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmを超えないように、トルク分担率αに上限値及び下限値を設定する。制御量算出部96は、例えば目標エンジン角加速度dωet、要求K0トルクTk0d、エンジントルクTeの出力可能範囲などに基づいて、トルク分担率αに上限値及び下限値を設定する。制御量算出部96は、設定したトルク分担率αを上限値及び下限値によって制限するガード処理を行う。
トルク分担率αに上限値及び下限値を設定しても、K0同期制御の際に、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmに対して吹き上がってしまう可能性がある。この場合、算出された要求エンジントルクTedを一時的に用いずに、予め定められた最小のエンジントルクTeが用いられる。
具体的には、制御量算出部96は、K0同期の際に、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmに対して過剰に吹き上がったか否かを、例えばK0差回転Δωk0が所定差回転Δωk0os以上となったか否かに基づいて判定する。所定差回転Δωk0osは、例えばエンジン回転速度ωeの過剰な吹きが発生したと判断する為の予め定められた閾値である。制御量算出部96は、K0同期の際に、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmに対して過剰に吹き上がったと判定した場合には、算出した要求エンジントルクTedを一時的に予め定められた最小のエンジントルクTeに読み替える。
目標エンジン角加速度dωetとエンジン角加速度dωe/dtの実際値とにずれが生じる可能性がある。本実施例では、エンジン角加速度dωe/dtの実際値を実エンジン角加速度dωerと表す。そこで、制御量算出部96は、算出した要求K0トルクTk0dを、フィードバック(=FB)制御によって補正する。
具体的には、制御量算出部96は、例えば作動油温THoilが第2所定油温THoilf2以上且つアクセル開度θaccが第2所定アクセル開度θaccf2以下であるというFB制御実施条件CDfbfが成立し、エンジントルクTeが安定している場合には、目標エンジン角加速度dωetに対して、公知の無駄時間処理を含む一次遅れ処理を施し、FB目標エンジン角加速度dωetfbを算出する。第2所定油温THoilf2は、例えばFB制御が適切に実施できる程にK0油圧PRk0の応答性が確保される予め定められた作動油温THoilの下限値である。第2所定アクセル開度θaccf2は、例えばFB制御が適切に実施できる程にエンジン特性の変化が小さくされる予め定められたアクセル開度θaccの上限値である。上記一次遅れ処理における時定数は、エンジン制御用(エンジン制御部92a)、電動機制御用(電動機制御部92b)、クラッチ制御用(クラッチ制御部94)等の各コンピュータ間での通信遅れ時間、作動油温THoil、エンジン12の冷却水の温度等によって変化させられても良い。制御量算出部96は、実エンジン角加速度dωerがFB目標エンジン角加速度dωetfbとなるようにFB制御によって要求K0トルクTk0dを補正する。尚、始動時モデルMDstでは、目標エンジン角加速度dωetとしてFF目標エンジン角加速度dωetffが用いられる。
図6は、電子制御装置90の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、複雑な適合を行うことなくエンジン始動時の制御量を精度良く算出する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。図7、図8は、図6のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
図6において、フローチャートの各ステップは制御量算出部96の機能に対応している。ステップ(以下、ステップを省略する)S10において、K0同期制御の実行中であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合はS20において、モデルベース制御実施条件CDmdlfが成立しているか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合はS30において、適合値が用いられることによって、目標エンジン角加速度dωetを実現させる、要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dが算出される。一方で、上記S20の判断が肯定される場合はS40において、始動時モデルMDstが用いられることによって、相対目標エンジン角加速度dωetrが算出され(PUSH始動方法且つK0差回転Δωk0が負値の場合、又は、PUSH始動以外の始動方法の場合)、目標エンジン角加速度dωetとしてFF目標エンジン角加速度dωetffが算出される。この際、目標エンジン角加速度dωetに上限値及び下限値が設定され、FF目標エンジン角加速度dωetffに対して上下限ガード処理が施される。次いで、S50において、トルク分担率αが算出される。次いで、S60において、トルク分担率αに上限値及び下限値が設定され、トルク分担率αに対して上下限ガード処理が施される。次いで、S70において、運動方程式(前記式(5)、(6)参照)にトルク分担率αが適用されることによって、FF目標エンジン角加速度dωetffを実現させる、要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dが算出される。次いで、S80において、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmに対して過剰に吹き上がったか否かが判定される。このS80の判断が肯定される場合はS90において、算出された要求エンジントルクTedが予め定められた最小のエンジントルクTeに読み替えられる。上記S30に次いで、又は、上記S80の判断が否定される場合は、又は、上記S90に次いで、S100において、FB制御実施条件CDfbfが成立しているか否かが判定される。このS100の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。上記S100の判断が肯定される場合はS110において、エンジントルクTeが安定しているか否かが判定される。このS110の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。上記S110の判断が肯定される場合はS120において、目標エンジン角加速度dωetに対して無駄時間処理を含む一次遅れ処理が施され、FB目標エンジン角加速度dωetfbが算出される。次いで、S130において、実エンジン角加速度dωerがFB目標エンジン角加速度dωetfbとなるようにFB制御によって要求K0トルクTk0dが補正される。
図7は、例えばエンジン12の始動制御がTDC始動方法によって実施された際に、K0同期制御においてエンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも小さい、K0差回転Δωk0が負値である場合の一例である。図7において、t1b時点は、例えばBEV走行中に、運転者によるアクセルペダルの踏み増し操作に伴ってエンジン始動要求が有ると判定されたことにより、エンジン12の始動制御が開始された時点を示している。エンジン12の始動制御の開始後、K0パック詰め制御、K0クランキング等が実行され、エンジン12の初爆後、自立回転によってエンジン回転速度ωeが上昇させられる(t1b時点-t2b時点参照)。その後、K0同期制御が開始され(t2b時点参照)、モデルベース制御CTmdlが実施される(t2b時点-t4b時点参照)。モデルベース制御CTmdlにおいて、K0差回転Δωk0の絶対値が大きい区間(t2b時点-t3b時点参照)では、小さい区間(t3b時点-t4b時点参照)に比べて、エンジントルクTeの分担が大きくされるトルク分担率αすなわち小さな値のトルク分担率αが設定されている。例えば、K0差回転Δωk0の絶対値が大きい区間では、トルク分担率αとして所定トルク分担割合αfが設定されている。K0差回転Δωk0の絶対値が小さい区間では、トルク分担率αとして、所定トルク分担割合αfよりも大きな値の第2所定トルク分担割合αf2が設定されている。又、実MG角加速度dωmrに相対目標エンジン角加速度dωetrが加算された値がFF目標エンジン角加速度dωetffとされる。そして、運動方程式(前記式(5)、(6)参照)にトルク分担率αが適用されることによって、FF目標エンジン角加速度dωetffを実現させる、要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dが算出される。加えて、モデルベース制御CTmdlにおいて、FF目標エンジン角加速度dωetffに対して無駄時間処理を含む一次遅れ処理が施されてFB目標エンジン角加速度dωetfbが算出され、実エンジン角加速度dωerがFB目標エンジン角加速度dωetfbとなるように、FB制御によって要求K0トルクTk0dが補正される為の補正量であるFBK0トルクTk0fbが算出される。要求K0トルクTk0dは、FBK0トルクTk0fbが加算された補正後の要求K0トルクTk0dとされる。このFB制御は、エンジントルクTeが安定するまで開始が遅延させられる。
図8は、例えばエンジン12の始動制御がTDC始動方法によって実施された際に、K0同期制御においてエンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも大きい、K0差回転Δωk0が正値である場合の一例である。図8において、t1c時点は、例えばBEV走行中に、運転者によるアクセルペダルの踏み増し操作に伴ってエンジン始動要求が有ると判定されたことにより、エンジン12の始動制御が開始された時点を示している。エンジン12の始動制御の開始後、K0パック詰め制御、K0クランキング等が実行され、エンジン12の初爆後、自立回転によってエンジン回転速度ωeが上昇させられる(t1c時点-t2c時点参照)。その後、K0同期制御が開始され(t2c時点参照)、モデルベース制御CTmdlが実施される(t2c時点-t4c時点参照)。モデルベース制御CTmdlにおいて、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも大きいときには、正値のエンジントルクTeはK0同期に近づくことを妨げるようにエンジン連結軸34に作用する為、K0トルクTk0のみで目標エンジン角加速度dωetを実現させるトルク分担率αすなわちトルク分担率αとして「1」が設定されている。又、エンジン12のフリクショントルクTefがエンジン12のイナーシャIeで除算された値がFF目標エンジン角加速度dωetffとされる。そして、運動方程式(前記式(5)、(6)参照)にトルク分担率αが適用されることによって、FF目標エンジン角加速度dωetffを実現させる、要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dが算出される。この際、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmに対して過剰に吹き上がっている場合には、算出された要求エンジントルクTed(二点鎖線参照)が一時的に予め定められた最小のエンジントルクTe(実線参照)に読み替えられる。加えて、モデルベース制御CTmdlにおいて、FF目標エンジン角加速度dωetffに対して無駄時間処理を含む一次遅れ処理が施されてFB目標エンジン角加速度dωetfbが算出され、実エンジン角加速度dωerがFB目標エンジン角加速度dωetfbとなるように、FB制御によって要求K0トルクTk0dが補正される為の補正量であるFBK0トルクTk0fbが算出される。
上述のように、本実施例によれば、エンジン12の始動に際して、所定条件CDfが成立した場合には、目標エンジン角加速度dωetと制御量としての要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dとの関係を定式化したエンジン連結軸34における運動方程式に、トルク分担率αを適用することで目標エンジン角加速度dωetを実現させる制御量を決定する予め定められた始動時モデルMDstを用いて、要求エンジントルクTed及び要求K0トルクTk0dが算出されるので、目標エンジン角加速度dωetとトルク分担率αとを設定するだけであり、適合工数の削減が可能である。又、制御中に変動する可能性のあるMG回転速度ωmやアクセル開度θaccの影響を制御量に反映でき、複雑な適合も不要となる。よって、複雑な適合を行うことなく、エンジン始動時の制御量を精度良く算出することができる。
加えて、エンジン12の始動に際して、所定条件CDfが不成立の場合には、適合値(制御量マップ)を用いて、目標エンジン角加速度dωetを実現させる制御量(要求エンジントルクTed、要求K0トルクTk0d)が算出されるので、始動時モデルMDstを用いない制御が併用される。これにより、K0油圧PRk0の応答性が低下したり、エンジン特性の変化が大きい、始動時モデルMDstによる制御量の算出が適切に行われ難い状況下においてもエンジン12の始動制御を適切に行うことができる。
また、本実施例によれば、始動時モデルMDstでは、K0差回転Δωk0が正値であるか負値であるかに基づいて、目標エンジン角加速度dωetの算出方法が切り替えられるので、K0差回転Δωk0が正値であるか負値であるかによってK0同期に近づけるように作用可能なトルク要素(エンジントルクTe、K0トルクTk0)が相違することに対応することができ、一層精度良く制御量を算出することができる。
また、本実施例によれば、K0差回転Δωk0が正値であるときには、エンジン12のフリクショントルクTefをエンジン12のイナーシャIeで除算した値がFF目標エンジン角加速度dωetffとされる一方で、K0差回転Δωk0が負値であるときには、実MG角加速度dωmrに相対目標エンジン角加速度dωetrを加算した値がFF目標エンジン角加速度dωetffとされるので、目標エンジン角加速度dωetが適切に設定され、一層精度良く制御量を算出することができる。
また、本実施例によれば、エンジン12の始動方法がPUSH始動方法であるかPUSH始動以外の始動方法であるかに基づいてトルク分担率αが設定されるので、エンジン12の作動状態が異なるPUSH始動方法とPUSH始動以外の始動方法とに合わせた、目標エンジン角加速度dωetを実現させる制御量を算出することができる。
また、本実施例によれば、エンジン12の始動方法がPUSH始動方法であるときに、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも大きい場合には、エンジントルクTeのみで目標エンジン角加速度dωetを実現させるトルク分担率αすなわちトルク分担率αとして「0」が設定され、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmよりも小さい場合には、K0トルクTk0のみで目標エンジン角加速度dωetを実現させるトルク分担率αすなわちトルク分担率αとして「1」が設定されるので、基本的には始動過渡中のエンジントルクTeがフリクショントルクTefとされるPUSH始動方法において、目標エンジン角加速度dωetを適切に実現させることができる。一方で、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法であるときに、K0差回転Δωk0の絶対値が大きい場合には、小さい場合に比べて、エンジントルクTeの分担が大きくされるトルク分担率αすなわち小さな値のトルク分担率αが設定されるので、エンジントルクTeによってエンジン回転速度ωeが上昇させられるPUSH始動以外の始動方法において、K0差回転Δωk0の絶対値が大きい程エンジントルクTeが大きくされ、K0クラッチ20の耐久性低下を抑制することができる。
また、本実施例によれば、エンジン12の始動方法がPUSH始動以外の始動方法であるときに、K0差回転Δωk0の絶対値が所定回転速度差Δωk0fよりも大きい場合には、トルク分担率αとして、K0クラッチ20の耐久性低下が抑制される予め定められた所定トルク分担割合αfが設定される一方で、K0差回転Δωk0の絶対値が所定回転速度差Δωk0fよりも小さい場合には、所定トルク分担割合αfに比べてエンジントルクTeの分担が小さくされる予め定められた第2所定トルク分担割合αf2が設定されるので、K0差回転Δωk0の絶対値が大きい程エンジントルクTeが適切に大きくされ、K0クラッチ20の耐久性低下を適切に抑制することができる。
また、本実施例によれば、始動時モデルMDstを用いて算出する制御量(要求エンジントルクTed、要求K0トルクTk0d)が実現可能な値となるように、目標エンジン角加速度dωetが正値であるか負値であるか、及びK0差回転Δωk0が正値であるか負値であるか、に基づいて、トルク分担率αの制限値が設定されるので、目標エンジン角加速度dωetを物理特性上実現できないトルク分担率αが設定され難くされる。
また、本実施例によれば、始動時モデルMDstでは、K0差回転Δωk0が正値であるか負値であるかに基づいて目標エンジン角加速度dωetの制限値が設定されるので、実現可能な目標エンジン角加速度dωetが設定される。
また、本実施例によれば、K0差回転Δωk0が正値である場合には、バッテリ54の充電可能電力Winによって、回生作動する電動機MGのMGトルクTmが制限されたことによるK0トルクTk0の制御可能範囲に応じた目標エンジン角加速度dωetの制限値が設定される一方で、K0差回転Δωk0が負値である場合には、駆動トルクTr分を確保することによって、力行作動する電動機MGのMGトルクTmが制限されたことによるK0トルクTk0の制御可能範囲に応じた目標エンジン角加速度dωetの制限値が設定されるので、出力可能なMGトルクTmの範囲内で実現可能な目標エンジン角加速度dωetが設定される。
また、本実施例によれば、K0同期の際に、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmを超えないように、トルク分担率αに上限値及び下限値が設定されるので、エンジン回転速度ωeがMG回転速度ωmに対して吹き上がってしまうことが抑制される制御量が設定され、ショック等によるドライバビリティーの悪化が抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、トルク分担率αを、K0差回転Δωk0の絶対値に応じて所定トルク分担割合αfと第2所定トルク分担割合αf2との二段階で設定したが、K0差回転Δωk0の絶対値に応じて三段階以上に設定しても良い。
また、前述の実施例では、自動変速機24として遊星歯車式の自動変速機を例示したが、この態様に限らない。自動変速機24は、公知のDCT(Dual Clutch Transmission)を含む同期噛合型平行2軸式自動変速機などであっても良い。要は、エンジンと電動機との間に設けられたクラッチを備えた車両であれば、本発明を適用することができる。
また、前述の実施例では、流体式伝動装置としてトルクコンバータ22が用いられたが、この態様に限らない。例えば、流体式伝動装置として、トルクコンバータ22に替えて、トルク増幅作用のないフルードカップリングなどの他の流体式伝動装置が用いられても良い。又は、流体式伝動装置は、必ずしも備えられている必要はなく、例えば発進用のクラッチに置き換えられても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
12:エンジン
14:駆動輪
20:K0クラッチ(クラッチ)
34:エンジン連結軸(連結軸)
54:バッテリ(蓄電装置)
90:電子制御装置(制御装置)
92a:エンジン制御部
92b:電動機制御部
94:クラッチ制御部
96:制御量算出部
MG:電動機
12:エンジン
14:駆動輪
20:K0クラッチ(クラッチ)
34:エンジン連結軸(連結軸)
54:バッテリ(蓄電装置)
90:電子制御装置(制御装置)
92a:エンジン制御部
92b:電動機制御部
94:クラッチ制御部
96:制御量算出部
MG:電動機
Claims (10)
- エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結された電動機と、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記電動機との間に設けられたクラッチと、を備えた車両の、制御装置であって、
前記エンジンの始動に際して、前記エンジンが運転状態とされるように前記エンジンのトルクを制御するエンジン制御部と、
前記エンジンの始動に際して、前記クラッチの制御状態を解放状態から係合状態へ切り替えるように前記クラッチのトルク容量を制御するクラッチ制御部と、
前記エンジンの始動に際して、前記クラッチのトルク容量に対する反力トルクを補償するように前記電動機のトルクを制御する電動機制御部と、
前記エンジンの始動に際して、予め定められた適合値を用いて、前記エンジンの角加速度の目標値を実現させる制御量としての、前記エンジン制御部により制御される前記エンジンのトルク及び前記クラッチ制御部により制御される前記クラッチのトルク容量を、算出する制御量算出部と、
を含んでおり、
前記制御量算出部は、前記エンジンの始動に際して、所定条件が成立した場合には、前記適合値を用いることに替えて、前記エンジンの角加速度の目標値と前記制御量との関係を定式化した、前記エンジンと前記クラッチとを連結する連結軸における運動方程式に、前記エンジンのトルクと前記クラッチのトルク容量とのトルク分担割合を適用することで前記エンジンの角加速度の目標値を実現させる前記制御量を決定する予め定められた始動時モデルを用いて、前記制御量を算出することを特徴とする車両の制御装置。 - 前記制御量算出部は、前記始動時モデルでは、前記エンジンの回転速度から前記電動機の回転速度を減算したときの値である前記クラッチの差回転速度が正値であるか負値であるかに基づいて、前記エンジンの角加速度の目標値の算出方法を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
- 前記制御量算出部は、前記クラッチの差回転速度が正値であるときには、前記エンジンのフリクショントルクを前記エンジンのイナーシャで除算した値を前記エンジンの角加速度の目標値とする一方で、前記クラッチの差回転速度が負値であるときには、前記電動機の角加速度の実際値に、前記クラッチの差回転速度の絶対値を所定同期時間でゼロにするときの前記エンジンの角加速度を加算した値を前記エンジンの角加速度の目標値とすることを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
- 前記制御量算出部は、前記エンジンの始動方法が、前記エンジンの回転速度と前記電動機の回転速度とが同期するまで前記クラッチの係合によって前記エンジンの回転速度を上昇させる第1始動方法であるか、前記エンジンの回転速度と前記電動機の回転速度とが同期するまでの過程で前記エンジンの自立回転によって前記エンジンの回転速度を上昇させる第2始動方法であるか、に基づいて前記トルク分担割合を設定することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両の制御装置。
- 前記制御量算出部は、前記エンジンの始動方法が前記第1始動方法であるときに、前記エンジンの回転速度が前記電動機の回転速度よりも大きい場合には、前記エンジンのトルクのみで前記エンジンの角加速度の目標値を実現させる前記トルク分担割合を設定し、前記エンジンの回転速度が前記電動機の回転速度よりも小さい場合には、前記クラッチのトルク容量のみで前記エンジンの角加速度の目標値を実現させる前記トルク分担割合を設定する一方で、前記エンジンの始動方法が前記第2始動方法であるときに、前記エンジンの回転速度と前記電動機の回転速度との回転速度差の絶対値が大きい場合には、小さい場合に比べて、前記エンジンのトルクの分担が大きくされる前記トルク分担割合を設定することを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
- 前記制御量算出部は、前記エンジンの始動方法が前記第2始動方法であるときに、前記回転速度差の絶対値が所定回転速度差よりも大きい場合には、前記クラッチの耐久性低下が抑制される予め定められた所定トルク分担割合を設定する一方で、前記回転速度差の絶対値が前記所定回転速度差よりも小さい場合には、前記所定トルク分担割合に比べて前記エンジンのトルクの分担が小さくされる予め定められた第2所定トルク分担割合を設定することを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
- 前記制御量算出部は、前記始動時モデルを用いて算出する前記制御量が実現可能な値となるように、前記エンジンの角加速度の目標値が正値であるか負値であるか、及び前記エンジンの回転速度から前記電動機の回転速度を減算したときの値である前記クラッチの差回転速度が正値であるか負値であるか、に基づいて、前記トルク分担割合の制限値を設定することを特徴とする請求項4から6の何れか1項に記載の車両の制御装置。
- 前記制御量算出部は、前記始動時モデルでは、前記エンジンの回転速度から前記電動機の回転速度を減算したときの値である前記クラッチの差回転速度が正値であるか負値であるかに基づいて、前記エンジンの角加速度の目標値の制限値を設定することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の車両の制御装置。
- 前記制御量算出部は、前記クラッチの差回転速度が正値である場合には、前記電動機に対して電力を授受する蓄電装置の充電制限によって、前記反力トルクを補償するように回生作動する前記電動機のトルクが制限されたことによる前記クラッチのトルク容量の制御可能範囲に応じた前記エンジンの角加速度の目標値の制限値を設定する一方で、前記クラッチの差回転速度が負値である場合には、駆動トルク分を確保することによって、前記反力トルクを補償するように力行作動する前記電動機のトルクが制限されたことによる前記クラッチのトルク容量の制御可能範囲に応じた前記エンジンの角加速度の目標値の制限値を設定することを特徴とする請求項8に記載の車両の制御装置。
- 前記制御量算出部は、前記エンジンの回転速度と前記電動機の回転速度との同期の際に、前記エンジンの回転速度が前記電動機の回転速度を超えないように、前記トルク分担割合に上限値及び下限値を設定することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の車両の制御装置。
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