JP2023076283A - 多孔質シリコンの製造方法 - Google Patents

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泰弘 山口
Yasuhiro Yamaguchi
正則 原田
Masanori Harada
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Abstract

【課題】製造された多孔質シリコンにMg2Si及びSiO2が含まれることを抑制する。【解決手段】多孔質シリコンの製造方法は、減圧下、及び下記反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧の条件において、SiO2を含む原料にMg蒸気を接触させることにより、Si及びMgOを含む中間生成物を得る還元工程と、中間生成物からMgOを除去する洗浄工程とを備える。JPEG2023076283000009.jpg10167【選択図】図2

Description

本発明は、多孔質シリコンの製造方法に関する。
非特許文献1に開示される多孔質シリコンの製造方法は、還元工程及び洗浄工程を備える。還元工程は、金属Mgを加熱して発生させたMg蒸気を用いて、多孔質の珪藻土に含まれるSiOを還元することにより、Si及びMgOを含む中間生成物を生成する工程である。洗浄工程は、中間生成物を酸で洗浄してMgOを除去することにより、多孔質シリコンを得る工程である。
Nature 2007,446,172-175
従来の製造方法の還元工程における金属Mgの仕込み量は、通常、珪藻土に含まれるSiOのモル数に対して1モル当量を超えるMg蒸気を発生させる量に調整される。この場合、生成されたSiとMg蒸気とが反応することにより、副反応物であるMgSiが生成する。生成したMgSiは、洗浄工程において、酸と反応してシランガスとなった後、酸化されてSiOとなり、多孔質シリコンに含まれる不純物になる。加えて、シランガスは、大気中で発火することから取り扱いが難しい。そのため、シランガスを発生させる処理は、できる限り避けたい。
一方、金属Mgの仕込み量を、1モル当量以下のMg蒸気を発生させる量とすると、Mg蒸気が不足することにより、未反応物であるSiOが残る。SiOは、洗浄工程にて除去されないため、多孔質シリコンに含まれる不純物になる。SiOは、フッ酸で処理することにより除去可能であるが、人体に有害な物質であるフッ酸による処理は、できる限り避けたいという実情がある。したがって、MgSi及びSiOを生じさせないように還元工程を行うことが好ましい。
しかしながら、上記のとおり、従来の製造方法の場合、金属Mgの仕込み量を増やすとMgSiが生成され、金属Mgの仕込み量を減らすとSiOが残る。そのため、従来の製造方法は、MgSi及びSiOを生じさせないように還元工程を行うことが難しい。
上記の目的を達成する多孔質シリコンの製造方法は、多孔質シリコンの製造方法であって、減圧下、及び下記反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧の条件において、SiOを含む原料にMg蒸気を接触させることにより、Si及びMgOを含む中間生成物を得る還元工程と、前記中間生成物からMgOを除去する洗浄工程とを備える。
Figure 2023076283000002
上記多孔質シリコンの製造方法において、前記Mg蒸気は、前記原料に対して非接触の状態で配置されたMg合金を加熱することにより発生するMg蒸気であり、前記Mg合金は、前記Mg蒸気を発生させる反応の平衡圧が反応式(1)の平衡圧以下であることが好ましい。
上記多孔質シリコンの製造方法において、前記Mg合金は、MgSi、MgCa合金、MgCu、MgNi、及びMgSn合金から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
上記多孔質シリコンの製造方法において、前記還元工程を700℃以下で行うことが好ましい。
上記多孔質シリコンの製造方法において、前記多孔質シリコンは、BJH法に基づいて算出される20nm以下の細孔量が0.6cm/g以上であることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、多孔質シリコンにMgSi及びSiOが含まれることを抑制できる。
反応式(1)の温度-Mg蒸気圧曲線である。 還元工程の説明図である。 実施例1の中間生成物のX線回折パターンである。 実施例1の多孔質シリコンのX線回折パターンである。 実施例5の中間生成物のX線回折パターンである。 実施例5の多孔質シリコンのX線回折パターンである。 比較例3の中間生成物のX線回折パターンである。 比較例6の中間生成物のX線回折パターンである。 実施例1の窒素吸脱着等温線である。 実施例1の細孔分布プロットである。 実施例2の窒素吸脱着等温線である。 実施例2の細孔分布プロットである。
以下、本発明を具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態の多孔質シリコンの製造方法は、以下に記載する還元工程及び洗浄工程を備える。
<還元工程>
還元工程は、SiOを含む原料(以下、Si原料と記載する。)にMg蒸気を接触させてSiOを還元する還元反応により、Si及びMgOを含む中間生成物を得る工程である。
(Si原料)
Si原料としては、例えば、石英、シリカゲル、珪藻土、砂が挙げられる。Si原料は、SiO以外の成分を含有するものであってもよい。Si原料に占めるSiOの割合は、例えば、50質量%以上であり、好ましくは、90質量%以上であり、より好ましくは99%以上である。
Si原料の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、製造する多孔質シリコンの用途などに応じて適宜、選択できる。Si原料は、例えば、粒状である。粒状のSi原料の平均粒子径は、例えば、100μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。なお、本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー・回折散乱法により測定されるメジアン径(d50)を意味する。
(圧力条件)
上記還元反応の第1圧力条件は、減圧下である。減圧下は、1気圧(101325Pa)未満の圧力下である。減圧下は、例えば、100Pa以下であることが好ましく、20Pa以下であることがより好ましい。還元工程における圧力が低くなるにしたがって、反応系内にMg蒸気が拡散しやすくなる。これにより、Si原料とMg蒸気との接触機会が増加し、その結果、還元工程における還元反応が進みやすくなる。また、還元反応が進みやすくなることにより、還元工程を進行させるために必要な温度を下げることができる。
上記還元反応の第2圧力条件は、下記の反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧である。
Figure 2023076283000003
反応式(1)は、MgSiをMg蒸気及びSiに分解する可逆的な分解反応を示している。反応式(1)の温度-Mg蒸気圧曲線を図1に示す。反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧は、曲線1よりも低いMg蒸気圧である。反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧においては、MgSiをMg蒸気及びSiに分解する正反応が進行し、Mg蒸気及びSiからMgSiを生成する逆反応は進行しない、又は殆ど進行しない。そのため、還元反応によりSiOから生成したSiと、Mg蒸気とが反応してMgSiが生成することを抑制できる。
(Mg蒸気の発生方法)
上記の第2圧力条件を満たすように、Si原料にMg蒸気を接触させることが可能であれば、Mg蒸気を発生させる方法は特に限定されるものではない。Mg蒸気を発生させる方法としては、例えば、Mg合金及び金属MgなどのMg源となる還元材を加熱することにより、Mg蒸気を発生させる方法が挙げられる。
これらの中でも、Mg蒸気を発生させる反応の平衡圧が反応式(1)の平衡圧以下であるMg合金(以下、低平衡圧Mg合金と記載する。)を用いる方法が特に好ましい。低平衡圧Mg合金からMg蒸気を発生させる反応系内では、Mg蒸気圧は、反応式(1)の平衡圧を超えることはない。そのため、低平衡圧Mg合金からMg蒸気を発生させる反応と、Si原料にMg蒸気を接触させる反応とを同一の反応系内で行うことができる。この場合、還元工程に用いる設備を簡素化できる。
低平衡圧Mg合金としては、例えば、MgSi、MgCa合金、MgCu、MgNi、及びMgSn合金が挙げられる。下記の表1に、低平衡圧Mg合金からMg蒸気を発生させる反応の600℃、700℃、800℃の各温度における平衡圧を示す。なお、表1のMg蒸気圧の数値は、常用対数で表した数値である。表1におけるMgSiに関する数値は、反応式(1)の平衡圧である。
低平衡圧Mg合金の中でも、Mg蒸気を発生させる反応の平衡圧が反応式(1)の平衡圧に近いものが好ましい。
Figure 2023076283000004
また、表1には、参考として、金属MgからMg蒸気を発生させる反応の上記各温度における平衡圧を併せて示している。表1に示すように、金属MgからMg蒸気を発生させる反応の平衡圧は、反応式(1)の平衡圧よりも高い。そのため、金属MgからMg蒸気を発生させる反応系内のMg蒸気圧は、反応式(1)の平衡圧よりも高くなる。金属MgからMg蒸気を発生させる方法を採用する場合、反応系内のMg蒸気圧を低下させる処理を行う。上記処理としては、例えば、Ca、Cu、Sn、Ni等のSiよりもMgと結合しやすい金属を別途、反応系内に配置する方法が挙げられる。Mg蒸気を発生させる反応の平衡圧が反応式(1)の平衡圧を超えるMg合金からMg蒸気を発生させる方法を採用する場合も同様である。
Mg合金及び金属MgなどのMg源となる還元材の仕込み量は、Si原料に含まれるSiOのモル数に対して1モル当量を超えるMg蒸気を発生させる量である。換言すると、還元材の仕込み量は、Si原料に含まれる全てのSiOを還元できる量以上である。例えば、Si原料に含まれるSiOのモル数に対して1モル当量のMg蒸気を発生させる還元材の量を基準量とする。このとき、還元材の仕込み量は、基準量の1倍以上であり、好ましくは1.1倍以上であり、より好ましくは1.2倍以上であり、更に好ましくは1.3倍以上である。また、還元材の仕込み量は、例えば、基準量の2倍以下である。
(温度条件)
上記還元反応の温度は、反応式(1)の平衡圧以下でMg蒸気が存在する温度であれば特に限定されるものではない。上記還元反応の温度は、例えば、500℃以上900℃以下である。また、細孔径の小さい細孔を有する多孔質シリコンを製造する場合には、上記還元反応の温度を低くすることが好ましい。上記還元反応の温度を低くすることにより、多孔質シリコンが有する細孔径20nm以下の細孔を増加させることができる。この場合の上記還元反応の温度は、例えば、700℃以下であり、650℃以下であることが好ましく、600℃以下であることがより好ましい。また、上記還元反応の温度を低くすることにより、Siの結晶子のサイズが小さい多孔質シリコンを製造できる。
(反応時間)
上記還元反応の反応時間は、上記圧力条件及び上記温度条件に応じて適切な時間を適宜、選択できる。上記還元反応の反応時間は、例えば、3時間以上24時間以下である。
(還元工程の具体例)
図2を参照して、還元工程の一具体例について説明する。
ステンレス製の反応容器10は、容器の内外の気体の流通を許容するように構成された容器である。反応容器10内には、原料皿11及び還元皿12が収容されている。原料皿11は、反応容器10の底部から直立する脚部11aの上に配置されている。原料皿11は、通気性を有するメッシュ状の皿である。原料皿11には、粉末状のSi原料Aが配置されている。還元皿12は、反応容器10の底部における原料皿11の下方に配置されている。還元皿12には、粉末状の低平衡圧Mg合金Bが配置されている。したがって、反応容器10内において、Si原料A及び低平衡圧Mg合金Bは、互いに非接触の状態で配置されている。
Si原料A及び低平衡圧Mg合金Bを収容した反応容器10を真空炉13内に入れる。そして、真空炉13内を減圧するとともに、低平衡圧Mg合金BからMg蒸気が発生する温度に真空炉13内を加熱する。低平衡圧Mg合金Bから発生したMg蒸気は、反応容器10内に拡散される。そして、Mg蒸気が原料皿11内のSi原料Aに接触することにより、Si原料Aに含まれるSiOがSi及びMgOに還元される。所定の反応時間が経過した後、真空炉13から反応容器10を取り出し、反応容器10の原料皿11内に生成されたSi及びMgOを含む中間生成物を回収する。
<洗浄工程>
洗浄工程は、還元工程により得られた中間生成物を酸などで処理することにより、MgOを除去する工程である。中間生成物からMgOが除去されることにより、目的の多孔質シリコンが得られる。
洗浄工程に用いる酸は特に限定されるものではなく、MgOを除去可能な酸であればよい。洗浄工程に用いる酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸が挙げられる。洗浄工程に用いる酸の濃度は、酸の種類に応じて、適切な濃度を適宜、選択できる。
洗浄工程は、必要に応じて、酸による洗浄後の固形分を、蒸留水やアルコールなどを用いて更に洗浄する処理を備える。また、洗浄工程は、必要に応じて、洗浄後の固形分を乾燥させる処理を備える。
<多孔質シリコン>
本実施形態の製造方法により製造される多孔質シリコンは、3次元的に連なった細孔を有する。多孔質シリコンが有する細孔の細孔径(直径)は、例えば、1nm以上1000nm以下である。多孔質シリコンは、例えば、細孔の細孔径が2nm未満であるミクロポーラス材料、細孔の細孔径が2~50nmであるメソポーラス材料、及び細孔の細孔径が50nmよりも大きいマクロポーラス材料である。
本実施形態の製造方法は、還元工程における上記還元反応の温度を調整することによって、製造される多孔質シリコンが有する細孔の大きさの分布及びSiの結晶子サイズを調整できる。そのため、本実施形態の製造方法は、小さな細孔を多く有する多孔質シリコン及びSiの結晶子サイズの小さい多孔質シリコンを製造する場合に適している。
小さな細孔を多く有する多孔質シリコンの一例は、BJH法に基づいて算出される20nm以下の細孔量が0.5cm/g以上であり、好ましくは20nm以下の細孔量が0.6cm/g以上である。
小さな細孔を多く有する多孔質シリコンの一例は、BJH法に基づいて算出される46nm以下の細孔量が0.6cm/g以上であり、好ましくは46nm以下の細孔量が0.7cm/g以上である。
小さな細孔を多く有する多孔質シリコンの一例は、BJH法に基づく細孔分布プロットのメインピークの値Pが3nm以上20nm以下であり、かつBJH法に基づいて算出される上記値P+10nm以下の細孔量が0.5cm/g以上である。なお、細孔分布プロットのメインピークの値Pは、多孔質シリコンが有する主たる細孔の細孔径である。
Siの結晶子サイズの小さい多孔質シリコンの一例は、結晶子サイズが100nm以下であり、好ましくは結晶子サイズが70nm以下である。結晶子サイズは、シェラーの式により算出される数値である。
多孔質シリコンは、種々の用途に使用できる。多孔質シリコンの用途としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の蓄電装置の負極材料が挙げられる。特に、Siの結晶子サイズの小さい多孔質シリコンは、充放電時の膨張収縮に有利であることからリチウムイオン二次電池の負極材料として適している。
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)多孔質シリコンの製造方法は、還元工程と洗浄工程とを備える。還元工程は、減圧下、及び反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧の条件において、Si原料にMg蒸気を接触させることにより、Si及びMgOを含む中間生成物を得る工程である。洗浄工程は、中間生成物からMgOを除去する工程である。
上記構成によれば、上記還元反応を減圧下で行っている。この場合、Mg蒸気が反応系内に拡散しやすくなることにより、Si原料とMg蒸気との接触機会が増加して還元反応が進みやすくなる。したがって、中間生成物中にSiOが残ることを抑制できる。
加えて、上記構成によれば、Si原料に含まれるSiOを還元する還元反応を、反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧となる条件で行っている。この場合、MgSiをMg蒸気及びSiに分解する正反応が進行し、Mg蒸気及びSiからMgSiを生成する逆反応は進行しない、又は殆ど進行しない。そのため、還元反応により生じたSiとMg蒸気とが混在する反応系において、還元反応により生じたSiとMg蒸気とからMgSiを生成する反応が抑制される。また、MgSiが生成されたとしても、生成されたMgSiは、Mg蒸気及びSiに分解される。
したがって、上記構成の場合、中間生成物中にSiOが残らないように、SiOに対して等量以上のMg蒸気を反応系内に供給しても、MgSiの生成が抑制される。そのため、中間生成物中にMgSi及びSiOを生じさせない還元工程を容易に行うことができる。そして、MgSi及びSiOを含まない中間生成物が得られる結果、洗浄工程を経て得られる多孔質シリコンに、MgSi及びSiOが含まれることを抑制できる。
(2)還元工程に用いるMg蒸気は、Si原料に対して非接触の状態で配置されたMg合金を加熱することにより発生するMg蒸気である。Mg合金は、Mg蒸気を発生させる反応の平衡圧が反応式(1)の平衡圧以下である低平衡圧Mg合金である。
上記構成によれば、Si原料が配置された反応系内において、低平衡圧Mg合金を加熱してMg蒸気を発生させることにより、反応系内のMg蒸気圧は、反応式(1)の平衡圧以下になる。そのため、反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧となる条件を満たした上記還元反応を容易に行うことができる。
(3)還元工程における還元反応の温度は、700℃以下である。
上記構成によれば、細孔径の小さい細孔を有する多孔質シリコンを製造できる。また、上記構成によれば、Siの結晶子のサイズが小さい多孔質シリコンを製造できる。
<実施例1~4>
(MgSiの合成)
300μm以下のSi粉末(30g)と、180μm以下の金属Mg粉末(53.5g)を混合した。得られた混合物を、蓋つきのステンレス容器に入れて、Ar雰囲気下、600℃にて6時間、加熱することにより、粉末状のMgSiを得た。
(還元工程)
図2に示すように、ステンレス製の反応容器10内の原料皿11にSi原料を配置するとともに、反応容器10内の還元皿12に、MgSiを配置した。反応容器10を真空炉13に入れて、ロータリーポンプで真空引きしながら真空炉13を、600℃~800℃にて6~12時間、加熱した。このときの真空炉13内の圧力は、20Paである。加熱処理後、原料皿11内の粉末状の中間生成物を回収した。
原料には、平均粒子径0.8μmの石英の粉末(2g)を用いた。
Mg合金の仕込み量は、上記基準量の2倍(5.1g)又は1.3倍(3.3g)の量とした。
表2に示すように、実施例1~4は、MgSiの仕込み量、加熱温度、及び加熱時間を異ならせている。また、反応容器10内のMg蒸気圧の計算値を表2に示す。表2のMg蒸気圧の数値は、常用対数で表した数値である。図1及び表2に示すように、実施例1~4における反応容器10内のMg蒸気圧は、反応式(1)の平衡圧以下である。
(洗浄工程)
中間生成物を15質量%のHCl水溶液に投入して、0℃に保持しながら20時間以上撹拌した後、ろ過により固形分を回収した。次に、回収した固形分を蒸留水、エタノールで洗浄し、120℃で12時間、真空乾燥することにより粉末状の多孔質シリコンを得た。
<実施例5~6>
Si原料として、石英の粉末に代えて、シリカゲルを粉砕することにより得られた平均粒子径6μmの粉末を用いた。Si原料を変更した点を除いて、実施例1~4と同様の還元工程及び洗浄工程を行うことにより中間生成物及び多孔質シリコンを得た。実施例5~6の還元工程におけるMgSiの仕込み量、加熱温度、及び加熱時間は、表2に示すとおりである。また、反応容器10内のMg蒸気圧の計算値を表2に示す。図1及び表2に示すように、実施例5~6における反応容器10内のMg蒸気圧は、反応式(1)の平衡圧以下である。
<比較例1~5>
MgSiに代えて、金属Mgの粉末を用いた。金属Mgを用いた点、及び金属Mgの仕込み量を変更した点を除いて、実施例1~4と同様の還元工程及び洗浄工程を行うことにより中間生成物及び多孔質シリコンを得た。比較例1~5の還元工程における金属Mgの仕込み量、加熱温度、及び加熱時間は、表2に示すとおりである。また、反応容器10内のMg蒸気圧の計算値を表2に示す。図1及び表2に示すように、比較例1~5における反応容器10内のMg蒸気圧は、反応式(1)の平衡圧よりも高い。
<比較例6>
還元工程において、減圧下にて真空炉13を加熱することに代えて、Ar雰囲気下、1気圧にて真空炉13を加熱した。Ar雰囲気下、1気圧にて真空炉13を加熱した点を除いて、実施例1~4と同様の還元工程及び洗浄工程を行うことにより中間生成物及び多孔質シリコンを得た。比較例6の還元工程におけるMg合金の仕込み量、加熱温度、及び加熱時間は、表2に示すとおりである。また、反応容器10内のMg蒸気圧の計算値を表2に示す。図1及び表2に示すように、比較例6における反応容器10内のMg蒸気圧は、反応式(1)の平衡圧以下である。
Figure 2023076283000005
<X線回折法による分析>
各実施例及び各比較例における還元工程後の中間生成物及び洗浄工程後の多孔質シリコンをX線回折法により分析した。実施例1~4を代表して、実施例1の還元工程後及び洗浄工程後のX線回折パターンを図3及び図4に示す。実施例5~6を代表して、実施例5の還元工程後及び洗浄工程後のX線回折パターンを図5及び図6に示す。比較例1~5を代表して、比較例3の還元工程後のX線回折パターンを図7に示す。比較例6の還元工程後のX線回折パターンを図8に示す。
図3及び図5に示す実施例1及び実施例5の還元工程後のX線回折パターンから、実施例1及び実施例5の中間生成物には、Si及びMgOが含まれており、未反応物であるSiO及び副生成物であるMgSiが含まれていないことが確認できる。そして、図4及び図6に示す実施例1及び実施例5の洗浄工程後のX線回折パターンから、実施例1及び実施例5の多孔質シリコンには、MgOが除去されて、Siの結晶により構成された物質になっていることが確認できる。X線回折パターンの図示は省略するが、実施例2~4も実施例1と同様の結果であった。
一方、図7に示す比較例3の還元工程後のX線回折パターンから、比較例3の中間生成物には、Si及びMgOに加えてMgSiが含まれていることが確認できる。X線回折パターンの図示は省略するが、比較例2,4,5の中間生成物も比較例3と同様に、MgSiが含まれていた。また、X線回折パターンの図示は省略するが、比較例1の中間生成物には、MgSiは含まれていなかったが、未反応物であるSiOが残っていた。
実施例1~6のMgSiの仕込み量は、基準量の1.3倍又は2.0倍である。上記の実施例1~6及び比較例1~5の結果から、反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧で還元反応を行うことにより、SiOに対して等量以上のMg蒸気を供給しつつも、MgSiの生成を抑制できることが分かる。また、この結果は、Si原料として、石英及びシリカゲルのいずれを用いた場合も上記の結果は同様であったことから、Si原料の形態に依存しないと考えられる。
また、図8に示す比較例6の還元工程後のX線回折パターンから、非減圧下で還元反応を行った比較例6の中間生成物には、Siが生成しておらず、未反応物であるSiOが残っていることが確認できる。
<細孔の分析>
比表面積・細孔分布計を用いて、各実施例の多孔質シリコンの粒子の窒素吸脱着等温線をガス吸着法により測定した。得られた窒素吸脱着等温線に基づいて、BJH(Barret-Joyner-Halenda)法及びBET(Brunauer-Emmett-Teller)法を用いて、細孔分布プロットを作成し、粒子を構成するSiの結晶子サイズ、比表面積(BET値)、ピーク値P、及びサイズごとの細孔量を算出した。その結果を表3及び表4に示す。
実施例を代表して、実施例1の吸脱着等温線及び細孔分布プロットを図9及び図10に示し、実施例2の吸脱着等温線及び細孔分布プロットを図11及び図12に示す。なお、表3に示すピーク値Pは、細孔分布プロットのメインピークの値である。
Figure 2023076283000006
Figure 2023076283000007
実施例1~6の結果から、還元工程における還元反応の温度が低くなるにしたがって、多孔質シリコンに含まれるSiの結晶子のサイズが小さくなることが分かる。また、還元反応の温度が低くなるにしたがって、多孔質シリコンのピーク値Pが小さくなることが分かる。この傾向は、表4に示すサイズごとの細孔量の数値とも一致する。特に、還元反応の温度が800℃である実施例4と比較して、還元反応の温度が700℃以下である他の実施例は、20nm以下の細孔量が顕著に増加している。
比較例1~6は、実施例1~6と比較して、多孔質シリコンに含まれるSiの結晶子のサイズが大きい傾向があった。比較例1~6の多孔質シリコンについては、還元反応の温度とSiの結晶子のサイズとの相関関係は確認できなかった。また、比較例1~6は、実施例1~6と比較して、10nm以下、20nm以下、46nm以下の各細孔量が少ない傾向があった。
A…Si原料
B…低平衡圧Mg合金
10…反応容器
11…原料皿
11a…脚部
12…還元皿
13…真空炉

Claims (5)

  1. 多孔質シリコンの製造方法であって、
    減圧下、及び下記反応式(1)の平衡圧以下のMg蒸気圧の条件において、SiOを含む原料にMg蒸気を接触させることにより、Si及びMgOを含む中間生成物を得る還元工程と、
    前記中間生成物からMgOを除去する洗浄工程とを備えることを特徴とする多孔質シリコンの製造方法。
    Figure 2023076283000008
  2. 前記Mg蒸気は、前記原料に対して非接触の状態で配置されたMg合金を加熱することにより発生するMg蒸気であり、
    前記Mg合金は、前記Mg蒸気を発生させる反応の平衡圧が反応式(1)の平衡圧以下である請求項1に記載の多孔質シリコンの製造方法。
  3. 前記Mg合金は、MgSi、MgCa合金、MgCu、MgNi、及びMgSn合金から選ばれる少なくとも一種である請求項2に記載の多孔質シリコンの製造方法。
  4. 前記還元工程を700℃以下で行う請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質シリコンの製造方法。
  5. 前記多孔質シリコンは、BJH法に基づいて算出される20nm以下の細孔量が0.6cm/g以上である請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質シリコンの製造方法。
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