JP2023075972A - 呼吸器感染症の重篤度判別方法および試薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】呼吸器感染症の重篤度判別方法、及び前記方法に利用できる試薬を提供する。【解決手段】患者由来の検体中のTFPI2量を測定することを特徴とする、呼吸器感染症の重篤度判別方法。また、NT-TFPI2及びインタクトTFPI2を特異的に認識する抗体を呼吸器感染症の重篤度判別方法に利用する試薬に含める。【選択図】図1

Description

本発明は、組織因子経路インヒビター2(Tissue Factor Pathway Inhibitor 2;TFPI2)を測定対象とする呼吸器感染症の重篤度判別方法および試薬に関する。
呼吸器感染症は、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などの病原体が、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺に感染することで発症する疾患の総称である。呼吸器感染症は、生体が持つ防御機構を乗り越えて病原体が定着、感染および増殖することで、咳嗽、喀痰、発熱や呼吸困難など様々な呼吸器症状を呈する。重症化した場合、酸素投与や気管挿管などの介入が必要になり、場合によっては死亡することもある。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染により生じる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、中国武漢を発端として世界規模で感染拡大が継続している。COVID-19は主に肺炎等の合併症により重症化することが知られており、高齢者または慢性腎臓病、高血圧および脂質異常症等の基礎疾患保有者において重症化リスクが高いとされている。
中等症以上の入院加療が行われる患者においては、血液検査として生化学検査や血清検査等が必要に応じて実施されており、血清診断としてはフェリチン、DダイマーおよびCRP等が病態モニタリングのために測定されている(非特許文献1)。Dダイマーは血液凝固/線溶系において安定化フィブリンがプラスミンによって分解されて生じる産物である。Dダイマーは血栓症診断に高い特異度を有するマーカーであり、静脈血栓塞栓症(VTE)の除外診断用途だけでなく、抗凝固療法の継続期間や終了時期の判断、再発可能性の評価を行う上でも有用であることが示されている。一方、凝固系が亢進しているがん患者や妊婦、手術後患者などでもDダイマーが高値を示すことが報告されている(非特許文献2)。CRPは全身性炎症マーカーとして有用であり、感染症、がん、膠原病等でも上昇する。また、重症化予測マーカーとしてIFN-λ3およびTARC(CCL17)が本邦で保険収載されている(非特許文献3)。
新型コロナ感染症の重症化を防ぐための治療法として様々な治療方法が検討されている。その中で抗IL-6受容体阻害抗体薬である自己免疫疾患治療薬のトシリズマブはFDA
で緊急使用許可が迅速承認され、日本でも治験が進んでいる。しかしながら、トシリズマブ投与例ではIL-6阻害により肝臓からのCRPおよびフェリチンの産生が阻害されることから、病態の進行に関わらず血中CRPおよびフェリチンは低下することが知られている(非特許文献4)
組織因子経路インヒビター2(TFPI2)は、胎盤タンパク質5(Placental Protein 5;PP5)と同一のタンパク質であり、3つのクニッツ型プロテアーゼインヒビタードメインを含む胎盤由来セリンプロテアーゼインヒビターである。TFPI2は卵巣がん細胞株において明細胞がん細胞株から特異的に産生され、卵巣がん患者組織における遺伝子発現は明細胞がん患者のみで特異的に向上することを明らかにし(特許文献1)、血中TFPI2の測定により卵巣明細胞がんを検出する方法を開示した(特許文献2、3および4、非特許文献5、6および7)。
しかし今日まで、体液中のTFPI2タンパク質が呼吸器感染症の重篤度判別に適用できるかは不明であった。
特許第5224309号公報 特許第6074676号公報 特許第6737504号公報 特許第6760562号公報
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.3版 Tripodi A.,et al.,Clin.Chem.,57、1256-1262(2011) Sugiyama, M., et al. Gene766 (2021): 145145. Salvarani, C., et al. JAMA internal medicine 181.1 (2021): 24‐31. Arakawa, N., et al., J. Proteome Res., 2013, 12 (10), pp 4340-4350 Arakawa, N., et al., PloS one 11.10 (2016): e0165609. Miyagi, E., et al.,Int. J. of Clinical Oncology 26.7 (2021): 1336-1344.
本発明は、呼吸器感染症の重篤度判別方法、及び前記方法に利用できる試薬を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、血中TFPI2値は呼吸器感染症である新型コロナウイルス感染症患者において気管挿管を施行された重篤例で急性増悪に伴い上昇することを見出し、TFPI2が高い精度をもって呼吸器感染症の重篤度を判別しうることに想到し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]検体において、TFPI2量を測定することを含む、呼吸器感染症の重篤度判別方法。
[2]前記TFPI2量の測定値が、予め設定した基準値を超えた場合に、呼吸器感染症が重篤であるとする、[1]に記載の方法。
[3]前記TFPI2量が、TFPI2プロセシングポリペプチド量及びインタクトTFPI2量の合計である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記TFPI2量の測定が、配列番号1のアミノ酸配列の23残基目のアスパラギン酸から131残基目のヒスチジン又は130残基目のシステインまでの領域内の抗原決定基に結合する抗体を用いた抗原抗体反応により行われるものである、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記抗体が、TFPI2のクニッツドメイン1を認識する抗体である、[4]に記載の方法。
[6]質量分析法を用いて測定を行う、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]配列番号1に示すアミノ酸配列の23残基目のアスパラギン酸から131残基目のヒスチジン又は130残基目のシステインまでの領域内の抗原決定基に結合する抗体を含む、呼吸器感染症の重篤度を判別するための試薬。
本発明により、呼吸器感染症の重篤度を簡便かつ高い精度で判別する方法、及び前記方
法に利用できる試薬が提供される。
健常人群、新型コロナウイルス感染症患者(無症候例から重篤例)におけるTFPI2測定値のボックスプロット(Box Plot)を示した図。縦軸は血中TFPI2量を表す。 新型コロナウイルス感染症患者(無症候例から重篤例)におけるCRP測定値のボックスプロット(Box Plot)を示した図。縦軸は血中CRP量を表す。 新型コロナウイルス感染症患者(無症候例から重篤例)におけるDダイマー測定値のボックスプロット(Box Plot)を示した図。縦軸は血中Dダイマー量を表す。 男女別に区分した新型コロナウイルス感染症重篤者群におけるTFPI2測定値を示したブロット図。縦軸は血中TFPI2量を表す。 男女別に区分した新型コロナウイルス感染症重篤者群におけるCRP測定値を示したブロット図。縦軸は血中CRP量を表す。 男女別に区分した新型コロナウイルス感染症重篤者群におけるDダイマー測定値を示したブロット図。縦軸は血中Dダイマー量を表す。 新型コロナウイルス感染症患者(無症候例から重篤例)におけるTFPI2とCRPの、採血期間における各マーカーの最大値の相関を示した図。 新型コロナウイルス感染症患者(無症候例から重篤例)におけるTFPI2とDダイマーの、採血期間における各マーカーの最大値の相関を示した図。 新型コロナウイルス感染症患者(無症候例から重篤例)におけるCRPとDダイマーの、採血期間における各マーカーの最大値の相関を示した図。 新型コロナウイルス感染症患者(無症候例から重篤例)におけるTFPI2とCRPの、採血期間におけるTFPI2最大値時の各マーカー値の相関を示した図。 新型コロナウイルス感染症患者(無症候例から重篤例)におけるTFPI2とDダイマーの、採血期間におけるTFPI2最大値時の各マーカー値の相関を示した図。 新型コロナウイルス感染症患者(無症候例から重篤例)におけるCRPとDダイマーの、採血期間におけるTFPI2最大値時の各マーカー値の相関を示した図。 TFPI2、CRPおよびDダイマーによる新型コロナウイルス感染症重篤者群と非重篤者群の受信者動作特性(ROC)曲線を示した図。縦軸は感度、横軸は1-特異度を表す。 新型コロナウイルス感染症重篤者における入院期間中の経時変化を示した図。縦軸は血中TFPI2量、横軸は発症後の経過日数を表す。 新型コロナウイルス感染症重症者における入院期間中の経時変化を示した図。縦軸は血中TFPI2量、横軸は発症後の経過日数を表す。 新型コロナウイルス感染症中等症~無症候における入院期間中の経時変化を示した図。縦軸は血中TFPI2量、横軸は発症後の経過日数を表す。 トシリズマブ投与例(患者Pos51)の入院期間中の経時変化を示した図。右縦軸は血中TFPI2量、左縦軸はP/F比並びに血中CRP量及び血中Dダイマー量、横軸は発症後の経過日数を表す。 トシリズマブ投与例(患者Pos56)の入院期間中の経時変化を示した図。右縦軸は血中TFPI2量、左縦軸はP/F比並びに血中CRP量及び血中Dダイマー量、横軸は発症後の経過日数を表す。 トシリズマブ投与例(患者Pos60)の入院期間中の経時変化を示した図。右縦軸は血中TFPI2量、左縦軸はP/F比並びに血中CRP量及び血中Dダイマー量、横軸は発症後の経過日数を表す。 トシリズマブ投与例(患者Pos74)の入院期間中の経時変化を示した図。右縦軸は血中TFPI2量、左縦軸はP/F比並びに血中CRP量及び血中Dダイマー量、横軸は発症後の経過日数を表す。 トシリズマブ投与例(患者Pos75)の入院期間中の経時変化を示した図。右縦軸は血中TFPI2量、左縦軸はP/F比並びに血中CRP量及び血中Dダイマー量、横軸は発症後の経過日数を表す。 トシリズマブ投与例(患者Pos76)の入院期間中の経時変化を示した図。右縦軸は血中TFPI2量、左縦軸はP/F比並びに血中CRP量及び血中Dダイマー量、横軸は発症後の経過日数を表す。
<1>本発明の呼吸器感染症の重篤度を判別する方法
呼吸器感染症は、鼻腔、咽頭、気管、気管支および肺胞などの器官に病原体が感染することで生じる疾患である。代表的な病原体はウイルス、細菌、真菌または寄生虫などが挙げられる。ウイルスとしては、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルスなどが挙げられる。ヒトに感染するコロナウイルスはαコロナウイルス(229E、NL63)またはβコロナウイルス(OC43、HKU1、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、SARS-CoV-2)が知られている。SARSコロナウイルスは2002年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスであり、SARS-CoV-2は2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである。細菌としては、肺炎球菌やインフルエンザ菌、クレブシエラ菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ属菌、マイコプラズマ、緑膿菌などが知られている。
本発明の第一の態様は、呼吸器感染症の重篤度を判別する方法であり、検体においてTFPI2量を測定することを含む。これは、健常人と比べて、血液等の呼吸器感染症患者生体試料中において重篤度に伴ってTFPI2量が上昇することに基づく方法である。検体におけるTFPI2量の測定は、通常インビトロ(in vitro)で行われる。この方法により、後述する実施例が示す通り、高い精度で呼吸器感染症の重篤度を判別することができる。
本発明の実施対象者は重篤な呼吸器感染症が疑われる者や既に呼吸器感染症と確定診断された患者であり、気管支炎や肺炎等により肺のガス交換機能低下の兆候(呼吸困難、呼吸促迫、チアノーゼ、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)低下、動脈血酸素分圧(PaO2)低下など)を認める者や、胸部X線写真やCTなどで肺炎像を呈する者や、急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome)または敗血症に進行した患者が挙げられる。
本発明の方法は、呼吸器感染症の重篤度を推察する段階までを含むものであり、呼吸器感染症の重篤度の診断に関する最終的な判断行為は含まれない。医師は、本発明の方法による判別結果等を総合的に勘案して、呼吸器感染症の重篤度を診断したり治療方針を立てたりする。
本発明において測定されるTFPI2は、特に限定はなく、例えばインタクトTFPI2(以降、「I-TFPI2」とも記す)、TFPI2プロセシングポリペプチド(以降、「NT-TFPI2」とも記す)、又はそれらの両方であってもよい。
配列番号1に、ヒトTFPI2のcDNAに基づくアミノ酸配列を示す。配列番号1において、開始メチオニンから22残基目のグリシンまではシグナルペプチドである。
「インタクトTFPI2」とは、配列番号1のアミノ酸配列の23残基目から235残基目で表されるペプチドをいう。
また、「NT-TFPI2」は、特許文献3に記載されるように、インタクトTFPI
2のN末端側に位置するクニッツドメイン1を含むペプチド断片をいう。より具体的には、NT-TFPI2は、配列番号1のアミノ酸配列の23残基目のアスパラギン酸から131残基目のヒスチジン又は130残基目のシステインまでの配列を少なくとも含むペプチド、または、前記配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドである。前記同一性は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。また、このポリペプチドは、前記配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。なお、数個とは、好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個、さらに好ましくは2~5個をいう。また、前記配列の両側に他のペプチドフラグメントを有していてもよいが、TFPI2のクニッツドメイン3を認識する抗体の抗原決定基を有しないことが好ましい。
本発明における患者由来の検体(被検試料)は、全血、血球、血清、血漿などの血液成分、細胞または組織の抽出液、尿、脳脊髄液、気管吸引液、気管支肺胞洗浄液などが挙げられる。また、肺組織生検サンプルを検査対象としてもよいが、その場合は生検試料の抽出液または培養上清を測定する。血液成分、尿、脳脊髄液、気管吸引液や気管支肺胞洗浄液などの体液を検体として用いると、簡便かつ非侵襲的に行うことができるため好ましく、検体採取の容易性、2次感染の危険性、他の検査項目への汎用性を考慮すると、血液成分を検体として用いるのが特に好ましい。検体の希釈倍率は無希釈から100倍希釈の中から使用する検体の種類や状態に応じて適宜選択すればよい。
本発明の呼吸器感染症の重篤度判別方法において、本発明によるTFPI2を測定する方法と呼吸器感染症の診断で汎用されている他のマーカーとを組合わせて用いることが好ましい。その組み合わせ方は、特に制限されない。
本発明の呼吸器感染症の重篤度判別方法において、組合わせて使用するTFPI2以外のマーカーは、従来知られている生化学または免疫法で測定されるマーカーから適宜選択すればよく、一例として、CRP、Dダイマー、フェリチン、LDH、プロカルシトニン、IFN-λ3、TARC、IL-6等が挙げられる。このうち、特に新型コロナウイルス感染症のモニタリングマーカーとして汎用されているCRP、Dダイマーおよびフェリチンは臨床的有用性が多数報告されている点で好ましい。また、本発明の呼吸器感染症の重篤度判別方法においてTFPI2と組み合わせて使用されるマーカーは、1種のみであってもよく、2種またはそれ以上であってもよい。
また、本発明における検体の採取時期は、特に限定されない。例えば、入院時または呼吸器感染症と確定診断後の経過観察時にかけていつでもよく、確定診断前後、治療開始前後など、いずれの段階で採取した検体であっても、本発明の方法に供することができる。
本発明の判別方法では、測定により得たTFPI2量が、予め設定した基準値(Cutoff値)を超えた場合に、呼吸器感染症が重篤であると判別することが好ましい。ここで、TFPI2量は、インタクトTFPI2量、NT-TFPI2量、又はインタクトTFPI2量及びNT-TFPI2量の合計のいずれでもよいが、インタクトTFPI2量及びNT-TFPI2量の合計が測定のしやすさと十分な感度・特異度との両立の観点からより好ましい。
判別に用いる基準値は、測定値もしくは換算濃度値のいずれでもよい。なお、換算濃度値は、TFPI2を標準試料として作成された検量線に基づいて測定値から換算される値をいう。
呼吸器感染症の重篤度判別基準値(Cutoff値)は、呼吸器感染症の重篤者と非重篤者をそれぞれ測定し、受信者動作特性(ROC)曲線解析により最適な感度と特異度を示す測定値に適宜設定することができる。例えば、TFPI2の重篤度判別基準値(Cutoff値)は後述の実施例で示す通り感度及び特異度が最大となる548.3 pg/
mLと設定してもよいがその限りではない。
以降、TFPI2の測定方法について説明する。
本発明において、検体中のNT-TFPI2量又はインタクトTFPI2量を個別に測定してもよく、またその値を合計して合計量としてもよい。また、検体中のNT-TFPI2とインタクトTFPI2の合計量を一度に測定できる測定系で測定してもよい。あるいは、後述するように、両方の測定による合計量とインタクトTFPI2単独の測定量とから間接的にNT-TFPI2量を測定してもよい。
本発明の方法において、NT-TFPI2量及び/又はインタクトTFPI2量を測定する方法は特に制限されない。例えば、NT-TFPI2及び/又はインタクトTFPI2を認識する抗体を用いる抗原抗体反応を利用した方法や、質量分析法を利用した方法が例示できる。
(a)標識した測定対象及び測定対象を認識する抗体を用い、標識した測定対象及び検体に含まれる測定対象が、前記抗体に競合的に結合することを利用した競合法。
(b)測定対象を認識する抗体を固定化したチップに検体を接触させ、当該抗体と測定対象との結合に依存したシグナルを検出する表面プラズモン共鳴を用いた方法。
(c)蛍光標識した測定対象を認識する抗体を用い、当該抗体と測定対象とが結合することで蛍光偏光度が上昇することを利用した蛍光偏光免疫測定法。
(d)測定対象を認識する抗体であって、抗原決定基の異なる2種類の抗体(うち1つは標識した抗体)を用い、当該2つの抗体と測定対象との3者の複合体を形成させるサンドイッチ法。
(e)前処理として測定対象を認識する抗体により検体中の測定対象を濃縮後、その結合タンパクのポリペプチドを質量分析装置等により検出する方法。
(d)、(e)の方法が簡便かつ汎用性が高いが、多検体を処理する上では(d)の方法が試薬及び装置に関する技術が十分確立されている点でより好ましい。
抗原抗体反応を利用してNT-TFPI2量及び/又はインタクトTFPI2量を測定する方法は、具体的に以下のものが挙げられる。
(A)NT-TFPI2とインタクトTFPI2の両方を認識する抗体を用いて、NT-TFPI2及びインタクトTFPI2の合計量を測定する方法(NT+I-TFPI2測定系)。なお、前記NT-TFPI2とインタクトTFPI2の両方を認識する抗体は、配列番号1で表されるTFPI2アミノ酸配列の23残基目のアスパラギン酸から131残基目のヒスチジン又は130残基目のシステインまでの領域内の抗原決定基に結合する抗体であることが好ましく、TFPI2のクニッツドメイン1内の抗原決定基に結合する抗原認識部位を有する抗体であることがさらに好ましい。また、この方法で前述したサンドイッチ法を用いる場合は、通常、前記抗体は抗原決定基の異なる2種類を用いる。
(B)NT-TFPI2を認識せずインタクトTFPI2を認識する抗体を用いて、インタクトTFPI2単独の量を測定する方法(I-TFPI2測定系)。なお、前記NT-TFPI2を認識せずインタクトTFPI2を認識する抗体は、TFPI2のクニッツドメイン3に抗原認識部位を有する抗体であること好ましい。また、この方法で前述したサンドイッチ法を用いる場合は、通常、前記抗体は抗原決定基の異なる2種類を用い、うち少なくとも1種類はNT-TFPI2を認識せずインタクトTFPI2を認識する抗体を用い、もう1種類はNT-TFPI2を認識せずインタクトTFPI2を認識する抗体であってもNT-TFPI2とインタクトTFPI2の両方を認識する抗体であってもよい。
(C)(A)のNT+I-TFPI2測定系で測定したNT-TFPI2及びインタクトTFPI2の合計量から、(B)のI-TFPI2測定系で測定したインタクトTFPI2単独量を減じることにより、NT-TFPI2単独の量を算出する方法。
(D)インタクトTFPI2を認識せずNT-TFPI2を認識する抗体を用いて、NT-TFPI2単独の量を測定する方法。なお、前記インタクトTFPI2を認識せずNT-TFPI2を認識する抗体は、例えば、NT-TFPI2のC末端部分のペプチド配列を特異的に認識する抗体が挙げられる。前述したサンドイッチ法を用いる場合は、例えば、当該抗体を固相抗体とし、クニッツドメイン1に認識部位を有する抗体を検出抗体とする。
本発明の呼吸器感染症の重篤度を判別する方法においては、前述した(C)や(D)の方法で測定したNT-TFPI2単独の量を判定の基準に用いてもよいが、(A)の方法で測定したNT-TFPI2及びインタクトTFPI2の合計量を判定の基準に用いても十分な感度と特異度が得られるうえ、抗体の取得しやすさや測定が一段階で簡便なことから、後者がより好ましい。
NT-TFPI2及び/又はインタクトTFPI2を認識する抗体は、NT-TFPI2ポリペプチドまたはタンパク質、インタクトTFPI2ポリペプチド又はTFPI2タンパク質の部分領域からなるオリゴペプチド、NT-TFPI2ポリペプチド又はTFPI2タンパク質のインタクトまたは部分領域をコードするポリヌクレオチドなどを免疫原として、動物に免疫することで得ることができる。前記タンパク質または前記オリゴペプチドやポリペプチドは生体内のTFPI2の立体構造を反映していない、あるいは調製する過程でその構造が変化する可能性がある。そのため、得られた抗体が、所望の生体内のTFPI2に対して高い特異性や結合力を有さない可能性があり、本抗体を用いて測定系を構築しても結果として検体中に含まれるTFPI2濃度を正確に定量できなくなる可能性がある。
一方、免疫原としてTFPI2ポリペプチド又はインタクトTFPI2タンパク質のインタクトまたは部分領域をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを用いることで、免疫動物の体内でTFPI2ポリペプチド又はインタクトTFPI2タンパク質のインタクトまたは部分領域が発現され免疫応答が惹起されるため、検体中のTFPI2に対して高い特異性及び結合力(すなわち高親和性)を有した抗体が得られるためより好ましい。
免疫に用いる動物は、抗体産生能を有するものであれば特に限定はなく、マウス、ラット、ウサギなど通常免疫に用いる哺乳動物でもよいし、ニワトリなど鳥類を用いてもよい。
さらに、血中にはTFPI2の相同体として知られるTFPI1も存在する。したがって、TFPI1と交叉せずTFPI2のみを特異的に認識する抗体を用いることが望ましい。
TFPI2を認識する抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体であるのが好ましい。
TFPI2を認識する抗体を産生するハイブリドーマ細胞の樹立は、技術が確立された方法の中から適宜選択して行えばよい。一例として、前述した方法で免疫した動物からB細胞を採取し、前記B細胞とミエローマ細胞とを電気的にまたはポリエチレングリコール存在下で融合させ、HAT培地により所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞の選択を行い、選択したハイブリドーマ細胞を限界希釈法によりモノクローン化を行うことで、TFPI2を認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を樹立することができる。
本発明で用いるTFPI2を認識するモノクローナル抗体の選定は、宿主発現系に由来
する、GPI(glycosylphosphatidylinositol)アンカー型TFPI2または分泌型TFPI2に対する親和性に基づいて行えばよい。
なお、前記宿主としては特に限定はなく、当業者がタンパク質の発現に通常用いる、大腸菌や酵母などの微生物細胞、昆虫細胞、動物細胞、または小麦胚芽や哺乳細胞を基に開発された無細胞発現系の中から適宜選択すればよいが、ジスルフィド結合もしくは糖鎖付加といった翻訳後修飾により、天然型のTFPI2に近い構造を有するタンパク質の発現が可能な、哺乳細胞を宿主として用いると好ましい。哺乳細胞の一例としては、従来用いられている、ヒト胎児腎臓由来細胞(HEK)293T細胞株、サル腎臓細胞COS7株、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはヒトから単離されたがん細胞などが挙げられる。
本発明で用いられる抗体の精製は、技術が確立された方法の中から適宜選択して行えばよい。一例として、前述した方法で樹立した、抗体を産生するハイブリドーマ細胞を培養後、その培養上清を回収し、必要に応じ硫酸アンモニウム沈殿による抗体濃縮後、プロテインA、プロテインG、またはプロテインLなどを固定化した担体を用いたアフィニティークロマトグラフィー及び/またはイオン交換クロマトグラフィーにより、抗体の精製が可能である。
なお、前述したサンドイッチ法で抗原抗体反応を行う際に用いる標識した抗体は、前述した方法で精製した抗体をペルオキシダーゼやアルカリ性ホスファターゼなどの酵素で標識すればよく、その標識も技術が十分確立された方法を用いて行えばよい。
本発明の方法において、質量分析法を利用してTFPI2量を測定する方法について、以下に具体的に説明する。
検体が血液である場合は、前処理工程として血液に多く含まれるアルブミン、イムノグロブリン、トランスフェリン等の主要タンパク質をAgilent Human 14等で除去した後、イオン交換、ゲル濾過または逆相HPLC等でさらに分画することが好ましい。または、抗TFPI2抗体を用いた免疫的手法によりTFPI2のみを特異的に回収することも可能である。
測定は、タンデム質量分析(MS/MS)、液体クロマトグラフィ・タンデム質量分析(LC/MS/MS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(matrix assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry、MALDI-TOF/MS)、表面増強レーザーイオン化質量分析(surface enhanced laser desorption ionization mass spectrometry、SELDI-MS)等により行うことができる。
本発明の呼吸器感染症の重篤度判別方法は、呼吸器感染症を治療する方法に適用することができる。すなわち、本発明により、被験体における呼吸器感染症を治療する方法であって、
(i)TFPI2量の測定値が予め設定した基準値を超えるものとして被験体が重篤な呼吸器感染症患者であると同定する工程、及び
(ii)前記同定された被験体に対して、治療を施す工程を含む、方法が提供される。
前記呼吸器感染症を治療する方法の好ましい態様において、前記TFPI2量は、TFPI2プロセシングポリペプチド量及びインタクトTFPI2量の合計である。
また、前記工程(i)の同定において、TFPI2量の測定は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列の23残基目のアスパラギン酸から131残基目のヒスチジン又は13
0残基目のシステインまでの領域内の抗原決定基に結合する抗体を用いた抗原抗体反応により行われる。より好ましくは、前記抗体は、TFPI2のクニッツドメイン1を認識する抗体である。
また、前記工程(i)の同定において、TFPI2量の測定は、質量分析法を用いて行われてもよい。
前記工程(ii)の治療としては、薬物療法、外科手術療法、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)による呼吸管理等が挙げられるが特に限定されない。
<2>本発明の呼吸器感染症の重篤度を判別するための試薬
本発明の試薬を前述したサンドイッチ法に利用する場合は、前記抗体として抗原決定基の異なる2種類の抗体を含むことが好ましい。
本発明の試薬に含まれる抗体は、抗体そのものであってもよく、標識されていてもよく、固相に固定化されていてもよい。
本発明の試薬のうち、前述したサンドイッチ法の一態様である2ステップサンドイッチ法に利用する場合について、以下に具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、本発明の試薬は、以下の(I)から(III)に示す方法で作製することができる。
(I)まず、サンドイッチ法で用いる、TFPI2を認識する、抗原決定基の異なる2種類の抗体(以下、「抗体1」及び「抗体2」とする)のうち、抗体1をイムノプレートや磁性粒子等のB/F(Bound/Free)分離可能な担体に結合させる。結合方法は、疎水結合を利用した物理的結合であってもよいし、2物質間を架橋可能なリンカー試薬などを用いた化学的結合であってもよい。
(II)担体に前記抗体1を結合させた後、非特異的結合を避けるため、担体表面を牛血清アルブミン、スキムミルク、市販のイムノアッセイ用ブロッキング剤、タンパク質吸着抑制用化学合成ポリマーなどでブロッキング処理を行い1次試薬とする。
(III)他方の抗体2を標識し、得られた標識抗体を含む溶液を2次試薬として準備する。抗体2に標識する物質としては、ペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼといった酵素、蛍光物質、化学発光物質、ラジオアイソトープなどの検出装置で検出可能な物質、又はビオチンに対するアビジンなど特異的に結合する相手が存在する物質等が好ましい。また、2次試薬の溶液としては、抗原抗体反応が良好に行える緩衝液、例えばリン酸緩衝液、Tris-HCl緩衝液などが好ましい。このようにして作製した本発明の試薬は必要に応じ凍結乾燥させてもよい。
なお、1ステップサンドイッチ法の場合は、前述した(I)~(II)同様に担体に抗体1を結合させブロッキング処理を行ったものを作製し、前記抗体固定化担体に、標識した抗体2を含む緩衝液をさらに添加して試薬を作製すればよい。
次に、前述した方法で得られた試薬を用いて、2ステップサンドイッチ法でTFPI2を検出し測定するには、以下の(IV)から(VI)に示す方法で行えばよい。
(IV)(II)で作製した1次試薬と検体とを一定時間、一定温度のもと接触させる。反応条件は、温度4℃から40℃の範囲で、5分から180分間反応させればよい。
(V)未反応物質をB/F分離により除去し、続いて(III)で作製した2次試薬と一定時間、一定温度のもと接触させ、サンドイッチ複合体を形成させる。反応条件は、温度4℃から40℃の範囲で、5分から180分間反応させればよい。
(VI)未反応物質をB/F分離により除去し、標識抗体の標識物質を定量し、既知濃度のTFPI2溶液を標準とし作成した検量線により、検体中のヒトTFPI2を定量する。
本発明の試薬に含まれる抗体等の試薬成分の量は、検体量、検体の種類、試薬の種類、測定の手法等の諸条件に応じて適宜設定すればよい。具体的には、例えば、後述するように検体として血清や血漿を20μL使用して、サンドイッチ法によりTFPI2量の測定を行う場合、当該検体20μLを抗体と反応させる反応系当たり、担体へ結合させる抗体量が100ngから1000μgであってよく、標識抗体量が2ngから20μgであってよい。
本発明の試薬は、用手法での測定にも利用可能であり、自動免疫診断装置を用いた測定にも利用可能である。特に自動免疫診断装置を用いた測定は、検体中に含まれる内在性の測定妨害因子や競合酵素の影響を受けることなく測定が可能で、かつ短時間に検体中のTFPI2が定量可能であるため、好ましい。
本発明の別の側面は、TFPI2量を測定する試薬の、呼吸器感染症の重篤度を判別するための試薬の製造における使用である。また本発明の別の側面は、TFPI2量を測定する試薬の、呼吸器感染症の重篤度の判別におけるインビトロでの使用である。
ここで、前記TFPI2量を測定する試薬は、TFPI2プロセシングポリペプチド量及びインタクトTFPI2量の合計を測定する試薬であることが好ましい。また、前記TFPI2量を測定する試薬は、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列の23残基目のアスパラギン酸から131残基目のヒスチジン又は130残基目のシステインまでの領域内の抗原決定基に結合する抗体であり、より好ましくはTFPI2のクニッツドメイン1を認識する抗体である。
以下に本発明を具体的に説明するために実施例を示すが、これら実施例は本発明の一例を示すものであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
<実施例1> 臨床検体の評価
本実施例で使用した臨床検体の内訳を表1に示す。健常人血清241例(男性102例、女性139例)、無症候性から重篤例の新型コロナウイルス感染症患者血清(男性 42
例、女性 15例、透析患者は除外)のうち、男性健常人を除く症例は横浜市立大学にて収
集された検体であり、インフォームドコンセントの承諾及び横浜市立大学倫理委員会の承認を受けて提供された。男性健常人はインフォームドコンセントの承諾及び東ソー社内倫理委員会の承認を受けた社内ボランティア検体を用いた。
Figure 2023075972000002
TFPI2測定試薬はEテスト「TOSOH」2(TFPI2)(東ソー社製:製造販売届出番号30200EZX00040000)を、評価用装置は全自動エンザイムイムノアッセイ装置AIA-2000(東ソー社製:製造販売届出番号13B3X90002000009)を用いた。全自動エンザイムイムノアッセイ装置AIA-2000によるTFPI2の測定は、以下の手順で行った。
(1)サンプル20μLと界面活性剤を含む希釈液100μLをTFPI2測定試薬を収容した容器に自動で分注し、
(2)37℃恒温下で10分間の抗原抗体反応を行い、
(3)B/F分離後、界面活性剤を含む緩衝液にて8回の洗浄を行い、
(4)4-メチルウンベリフェリルリン酸塩を添加し、単位時間当たりのアルカリフォスファターゼによる4-メチルウンベリフェロン生成濃度をもって測定値(TFPI2 intensity、nmol/(L・s))とした。
(5)製品付属の標準品にて検量線を作成し、検体中のTFPI2濃度を算出した。
血中CRPおよびDダイマーは保険診療で得られた電子カルテ記載の測定値を引用した。
<実施例2>健常人および新型コロナウイルス感染症患者におけるTFPI2、CRPおよびDダイマーの比較
健常人および新型コロナウイルス感染症患者におけるTFPI2、CRPおよびDダイマー(採血期間の最大値)のBoxPlotを図1~3に示す。TFPI2は、健常人、新型コロナウイルス感染症患者無症候例、軽症例と比較して重症例の一部と重篤例において明らかな高値化する傾向が認められた。CRPおよびDダイマーについても重篤化に伴って高値化する傾向が認められた。
<実施例3>新型コロナウイルス感染症重篤患者における性差
新型コロナウイルス感染症重篤患者を性別毎で分類した時のTFPI2、CRPおよびDダイマー(採血期間の最大値)のPlotを図4~6に示す。いずれのマーカーも性差による影響は生じないことが示された。
<実施例4>新型コロナウイルス感染症患者におけるTFPI2、CRPおよびDダイマーの相関
新型コロナウイルス感染症患者全症例を対象に、TFPI2、CRPおよびDダイマーの検体採取期間の最大値を用いた相関を表2及び図7~9に、TFPI2最大値を示した検体におけるCRPおよびDダイマーの相関を表3及び図10~12にそれぞれ示す。TFPI2はいずれのマーカーとも相関は認められなかったものの、CRPとDダイマーは特に検体採取期間の最大値で強い相関関係が認められた(相関係数:0.69)。本結果より、TFPI2はCRPまたはDダイマーとは独立した指標となる可能性が示唆された。
Figure 2023075972000003
Figure 2023075972000004
<実施例5>TFPI2、CRPおよびDダイマーによる新型コロナウイルス感染症重篤度判別性能の比較(ROC解析)
新型コロナウイルス感染症重篤例と非重篤例(無症候~重症)におけるTFPI2、CRPおよびDダイマーのROC解析結果と曲線下面積(AUC)を図13に示す。TFPI2は0.8953と最も高いAUCを示したことから、新型コロナウイルス感染症重篤度判別性能を有することが示された。
<実施例6> TFPI2、CRPおよびDダイマーによる新型コロナウイルス感染症重篤度判別性能の比較(感度/特異度)
実施例5記載のROC解析結果を基にYouden index(特異度+感度-1)最大値をカットオフ値と設定した場合のTFPI2、CRPおよびDダイマーの感度/特異度を表4に示す。TFPI2(カットオフ値:548.3pg/mL)は感度100.0%/特異度82.6%となり、CRPまたはDダイマーと比べて同等以上の高い重篤度判別性能を有することが示された。
Figure 2023075972000005
<実施例7>新型コロナウイルス感染症患者におけるTFPI2の経時変化
新型コロナウイルス感染症患者を重篤患者群、重症患者群、中等症/軽傷/無症候患者群に分類し、TFPI2の発症日からの経時変化を図14~16に示す。TFPI2は、重篤例では発症10日後から30日後にかけて劇的に変動し、30日以降で低値化する傾向が認められた。重症例では一部の症例でTFPI2が上昇するものの、多くの重症患者と中等症/軽傷/無症候患者では総じてTFPI2は低値で推移する傾向が認められた。
<実施例8>トシリズマブ投与患者におけるTFPI2、CRP、Dダイマーおよび酸素化指数(P/F比)の経時変化
6例のトシリズマブ投与患者におけるTFPI2、CRP、DダイマーおよびP/F比の発症日からの経時変化を図17~22に示す。トシリズマブ投与患者ではCRPは一律に低下するものの、TFPI2とDダイマーは変動する傾向が認められた。
本発明により、簡便かつ患者負担が比較的少ない血液検査による呼吸器感染症の重篤度判別方法が提供される。既存マーカーであるCRPまたはDダイマーと相関しないTFPI2により、特に新興感染症である新型コロナウイルス感染症診療への貢献が期待され、産業上非常に有用である。

Claims (7)

  1. 検体において、TFPI2量を測定することを含む、呼吸器感染症の重篤度判別方法。
  2. 前記TFPI2量の測定値が、予め設定した基準値を超えた場合に、呼吸器感染症が重篤であるとする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記TFPI2量が、TFPI2プロセシングポリペプチド量及びインタクトTFPI2量の合計である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記TFPI2量の測定が、配列番号1のアミノ酸配列の23残基目のアスパラギン酸から131残基目のヒスチジン又は130残基目のシステインまでの領域内の抗原決定基に結合する抗体を用いた抗原抗体反応により行われるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記抗体が、TFPI2のクニッツドメイン1を認識する抗体である、請求項4に記載の方法。
  6. 質量分析法を用いて測定を行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 配列番号1に示すアミノ酸配列の23残基目のアスパラギン酸から131残基目のヒスチジン又は130残基目のシステインまでの領域内の抗原決定基に結合する抗体を含む、呼吸器感染症の重篤度を判別するための試薬。
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