JP2023075831A - 炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法 - Google Patents

炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】個々人における鱗屑又は角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのマーカー、並びに当該マーカーを用いた被験者における炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法の提供。【解決手段】被験者から採取された皮膚表上脂質について、以下の遺伝子:PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94、並びに当該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者における鱗屑の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法の提供。【選択図】なし

Description

本発明は、個々人における鱗屑又は角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのマーカー、並びに当該マーカーを用いた被験者における炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法に関する。
皮膚は生体の最外層に存在する臓器であり、気温、湿度、紫外線、細菌等の様々な外部環境の影響を受ける。皮膚の重要な機能は、これら外部環境から身体を保護するための物理的バリアである。皮膚のバリアを担うのは、表皮の最外層にある角質層(角層)である。角層は、乾燥性の外部環境で経皮蒸発水分損失を遅らせる透過性バリアとしての役割を有する。角層は平坦な無核角質細胞からなる多層組織であり、セラミド、遊離脂肪酸及びコレステロールで構成される高度に秩序化された脂質ラメラに埋め込まれた角質細胞で構成されている。角層の細胞外ドメイン内におけるこれら高度疎水性の脂質の局在化は、水の外側への移動を抑制する。さらに、角層内には天然保湿因子が存在する。表皮分化及び脂質組成の変化に伴う角層の異常は、アトピー性皮膚炎における環境アレルゲンの侵入、免疫反応及び炎症に繋がるような皮膚バリア機能の破綻をもたらす。
皮膚バリア機能の破綻により肌荒れした皮膚表面では、きめが乱れ、更には鱗屑が発生し、滑らかさに欠けた肌触りになる。鱗屑では、角層が皮膚表面で剥がれてめくれあがったような外観となる。このような状態はドライスキンとも呼ばれ、角層の水分保持能(保湿能)の低下として捕らえられる。
皮膚の状態を評価する方法としては、角層水分量(Capacitance値、Conductance値)や経皮水分蒸散量(Trans Epidermal Water Loss;TEWL値)について客観的数値を取得する方法がある。また、専用のカメラ付きプローブを用いて皮膚表面形状を数値化したもの(例えば、Surface Evaluation of Living Skin;SELS parameters)を取得する方法、印象材を用いて皮膚表面のレプリカを作製し、光学装置を用いてシワや表面粗さを数値化する方法、事前に定めた指標に基づいて専門パネリストが皮膚乾燥の程度や肌荒れの状態を目視評価する方法等がある。
さらに、所見や自覚等に現れる表現型(フェノタイプ)を機器や目視で指標化するだけでなく、生体試料中の核酸やタンパク質発現の指標に基づいて皮膚の状態を評価する方法が報告されており(特許文献1及び非特許文献1)、分子機序に基づいた皮膚状態の評価と保湿技術の提供を高精度かつ効率的に行うことにつながると考えられている。
従来、皮膚の保湿・肌荒れ改善に、ローション、軟膏、クリーム等の皮膚外用製剤の塗布がされている。近年では、炭酸ガスあるいは炭酸ガス発生物を配合した炭酸ガス製剤について水分保持能及び鱗屑の改善効果が知られ、これを活用すべく種々の開発がなされている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、皮膚は個人差が生じやすい臓器であると考えられ、皮膚外用製剤の皮膚に対する作用も個々によってその有効性に差が生じ得る。必ずしも全ての者において、一様に、皮膚外用剤の効果が最大限発揮されるわけではない。
そのため、予め皮膚外用製剤についてその有効性を簡便に評価でき、個々にとって適切な製剤を選択し、使用できれば、早期の皮膚健常化又は肌荒れ改善に資することになる。
近年、生体試料中のDNAやRNA等の核酸の解析によりヒトの生体内の現在さらには将来の生理状態を調べる技術が開発されている。生体由来の核酸は、血液等の体液、分泌物、組織等から抽出することができる。さらに最近、皮膚表上脂質(skin surface lipids;SSL)に含まれるRNAを生体の解析用の試料として利用可能であることが報告されている(特許文献3)。
特開2015-227865号公報 特開2014-129306号公報 国際公開公報第2018/008319号
Delattre et al. Exp Dermatol. 21:205-210, 2012.
本発明は、個々人における鱗屑又は角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのマーカー、並びに当該マーカーを用いた被験者における炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法を提供することに関する。
本発明者は、炭酸ガスを含有する製剤の塗布によって鱗屑の改善及び角層水分量の増加が見られる者と見られない者の皮膚からSSLを採取し、SSL中に含まれるRNAの発現状態をシーケンス情報として網羅的に解析した。その結果、炭酸ガス製剤に対する被験者の感受性が、当該炭酸ガス製剤の塗布前の皮膚における特定の遺伝子の発現レベルに反映されており、当該遺伝子の発現レベルを指標として被験者における鱗屑又は角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)~5)に係るものである。
1)被験者から採取された皮膚表上脂質について、以下の遺伝子:PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94、並びに当該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者における鱗屑の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法。
2)被験者から採取された皮膚表上脂質について、以下の遺伝子:HERC3、BSG及びKHNYN、並びに当該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者における角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法。
3)以下の遺伝子:PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94、並びに当該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、鱗屑の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのマーカー。
4)以下の遺伝子:HERC3、BSG及びKHNYN、並びに当該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのマーカー。
5)前記マーカーである核酸と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は前記マーカーであるタンパク質を認識する抗体を含有する、1)の方法に用いられる被験者における鱗屑の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのキット、又は2)の方法に用いられる被験者における角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのキット。
本発明によれば、個々人における鱗屑又は角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を、当該炭酸ガス製剤を実際に用いることなく容易に検出することができる。従って、当該個々人は、予め自身の鱗屑又は角層水分量に対して炭酸ガス製剤が有効かどうかを把握することができる。
nonResponder群及びResponder群の(a)鱗屑指標であるSEsc値の変化量、(b)角質水分量の指標であるConductance値の変化量を示すグラフ。図中、「Placebo」はプラセボ製剤塗布側、「Active」は炭酸ガス製剤塗布側を表す。 SSL中の標的遺伝子のRNA発現量と鱗屑指標であるSEsc値との関係を示すグラフ。 SSL中の標的遺伝子のRNA発現量と角質水分量の指標であるConductance値との関係を示すグラフ。
本明細書中で引用された全ての特許文献、非特許文献、及びその他の刊行物は、その全体が本明細書中において参考として援用される。
本発明において、「核酸」又は「ポリヌクレオチド」と云う用語は、DNA又はRNAを意味する。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれ、「RNA」には、total RNA、mRNA、rRNA、tRNA、non-coding RNA及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
本発明において「遺伝子」とは、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAの他、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、当該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片を包含するものであって、DNAを構成する塩基の配列情報の中に、何らかの生物学的情報が含まれているものを意味する。
また、本発明における「遺伝子」には、特定の塩基配列で表される「遺伝子」だけではなく、その同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型等の変異体、及び誘導体が包含される。
ここで、本明細書中に開示される遺伝子の名称は、NCBI([www.ncbi.nlm.nih.gov/])に記載のあるOfficial Symbolに従う。
本発明において、遺伝子の「発現産物」とは、遺伝子の転写産物及び翻訳産物を包含する概念である。「転写産物」とは、遺伝子(DNA)から転写されて生じるRNAであり、「翻訳産物」とは、RNAに基づき翻訳合成される、遺伝子にコードされたタンパク質を意味する。
本発明において、「皮膚表上脂質(SSL)」とは、皮膚の表上に存在する脂溶性画分をいい、皮脂と呼ばれることもある。一般に、SSLは、皮膚にある皮脂腺等の外分泌腺から分泌された分泌物を主に含み、皮膚表面を覆う薄い層の形で皮膚表上に存在している。SSLは、皮膚細胞で発現したRNAを含む(前記特許文献3参照)。
また本発明において、「皮膚」とは、特に限定しない限り、角層、表皮、真皮、毛包、並びに汗腺、皮脂腺及びその他の腺等の組織を含む領域の総称である。本発明において、「皮膚」は、好ましくはヒトの皮膚である。
本発明において、「鱗屑」は、表皮の乾燥や角化不全などにより、角層が皮膚表面で剥がれてめくれた状態を指す。「鱗屑の改善」は、鱗屑の症状又は状態の好転、悪化の防止、抑制もしくは遅延、あるいは鱗屑の症状又は状態の進行の逆転、防止、抑制もしくは遅延をいう。
鱗屑の程度は、皮膚表面における剥がれてめくれた角層の占める面積の割合を指標として表すことができる。例えば2次元皮膚表面キメ解析装置(Visioscan VC98、Courage + Khazaka Electronic GmbH)により取得した画像より、SELS(Surface Evaluation of the Living Skin)プログラムを用いて算出されるSkin Evaluation of Scaliness値(SEsc値)で表すことができる。本発明において、鱗屑の改善効果は、皮膚表面における剥がれてめくれた角層の占める面積の低下、好ましくは当該SEsc値の低下に対応する鱗屑の改善効果である。
本発明において、「角層水分量」は、角層に含まれる水分量である。角層水分量の増加は、角層に含まれる水分量が増加することをいい、角層中に水分を補うことによる水分量の増加、角層の水分の蒸散を抑制することによる水分量の増加を含む。
角層水分量は、例えば、Corneometer(Courage+Khazaha社)により測定されるCapacitance値、SKICON 200-EX(IBS株式会社)により測定される皮膚表面の電気伝導度(Conductance)値で表すことができる。本発明において、角層水分量の増加効果は、好ましくは当該Conductance値の増加に対応する角層水分量の増加効果である。
本発明において、「炭酸ガス製剤」は、炭酸ガスを皮膚角層に供給できる製剤である。炭酸ガスの供給手段は特に限定されるものではなく、例えば、噴射剤として炭酸ガスを封入したエアゾール化粧料のような皮膚外用剤(特開2014-129306号公報、特開2017-125003号公報等)、水分と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生剤を含有する発泡性の皮膚外用剤、不織布シート(特開2015-105451号公報)、入浴剤(特開平9-2942号公報、特開2000-191429号公報等)、パッド(特開2006-249025号公報等)が挙げられる。
炭酸ガスを皮膚外用剤に噴射剤として封入する場合、噴射剤の総量を基準として、炭酸ガスを90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことがより好ましく、98質量%以上含むことがさらに好ましく、100質量%含むことがさらに好ましい。
炭酸ガスを噴射剤として封入したエアゾール製剤を調製する場合における、皮膚外用剤(原液)と炭酸ガスを含む噴射剤の質量割合は、94:6~99.5:0.5が好ましく、95:5~99:1がより好ましく、96.5:3.5~98.5:1.5がさらに好ましい。エアゾール製剤の噴射の形態としては、噴射剤として配合した炭酸ガスを皮膚上に持続的に滞留させる観点から、皮膚外用剤が泡状に吐出されるフォームタイプとするのが好ましい。
原液として用いる皮膚外用剤には、化粧料、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤に通常使用される各種の成分を配合することができる。具体的には、皮膚外用剤を泡状に吐出させ、皮膚における泡ののびを良好とし、使用感に優れ、泡を持続させ炭酸ガスの効果を高める観点から、粉体、油剤、界面活性剤、水溶性増粘剤、水等の成分を含有させることが好ましい。
粉体としては、平均粒子径0.01~30μmを有する酸化ケイ素、酸化チタン、(メタ)アクリル酸又はその塩/(メタ)アクリル酸アルキルクロスポリマー及びシリコーンラストマーから選ばれる1種以上の粉体が挙げられる。
(メタ)アクリル酸若しくはその塩/(メタ)アクリル酸アルキルクロスポリマーは、(メタ)アクリル酸若しくはその塩から選ばれる少なくとも1種の単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種の単量体とを、共重合してなる架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体である。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸との総称であり、(メタ)アクリル酸アルキルとは、アクリル酸アルキルとメタクリル酸アルキルとの総称をいう。具体的には、メタクリル酸ラウリル・ジメタクリル酸エチレングリコール・メタクリル酸ナトリウム共重合体が挙げられる。
シリコーンエラストマーは、モノマーの重合によって得られた架橋構造を有するシリコーン及びその誘導体の総称であり。例えば、ジメチコン、ビニルジメチコン、フェニルビニルジメチコン、ラウリルジメチコン及びラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン等から選ばれるモノマーを重合又は共重合させて得られるシリコーン及びその誘導体が好ましく、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマーがより好ましく、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマーがさらに好ましく、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーがよりさらに好ましい。
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとしては、固体状のもとして、トレフィルE-506S(有効分100質量%)(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられ、液状油と混合したものとしては、デカメチルシクロペンタシロキサン(KF-995)との混合物であるKSG-15(有効分7質量%)、低粘度ジメチルポリシロキサン(KF-96A-6cs)との混合物であるKSG-16(有効分25質量%)(以上、信越化学工業社製)、ジメチコンとの混合物であるトレフィルE-508(有効分70質量%)等が挙げられ、水と混合したものとしては、BY29-119(有効分63質量%)、BY29-129(有効分63質量%)等の市販品を用いることができる。(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーとしては、液状油と混合したものとして、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(KF-56A)との混合物であるKSG-18A(有効分15質量%)(信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
原液における粉体の含有量は、炭酸ガスを含有する泡の皮膚への均一な塗布性及び炭酸ガスの皮膚への浸透性を向上させる観点から、本発明における原液中に0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上がさらに好ましく、また2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下さらに好ましい。具体的な含有量の範囲は、0.1~2.5質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましく、0.8~1.5質量%がさらに好ましい。
油剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、例えば、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、エーテル油、フッ素油等が挙げられる。より具体的には、例えば、軽質イソパラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;ジメチルポリシロキサン、シクロメチコン、ジメチコン、トリシロキサンメチルトリメチコン、エチルトリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、安息香酸と炭素数12~15の脂肪族アルコールとのエステルである安息香酸アルキル(C12-15)等のモノエステル油、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等のジエステル油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、2-エチルヘキサン酸トリグリセリル等のトリエステル油;アルキル-1,3-ジメチルブチルエーテル、ジカプリリルエーテル、ジカプリリルエーテル等のエーテル油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素油等が挙げられ、泡の伸びを向上させる観点から、炭化水素油、エステル油及びシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、炭化水素油、モノエステル油、トリエステル油、シリコーン油がより好ましく、モノエステル油、シリコーン油が好ましい。
油剤の粘度としては、炭酸ガスの皮膚への浸透性を向上させる観点から、1mPa・s以上であり、2mPa・s以上が好ましく、3mPa・s以上がより好ましく、4mPa・s以上がさらに好ましく、100mPa・s以下であり、50mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以下がよりさらに好ましい。また、油剤は、1~100mPa・sのものであり、2~50mPa・sのものが好ましく、3~30mPa・sのものがより好ましく、4~20mPa・sのものがさらに好ましい。
ここで、粘度は、25℃で、BM粘度計(東機産業社製)(ローターNo.1、60rpm、1分)により測定される。
油剤は、1種又は2種以上を用いることができ、炭酸ガスの皮膚への浸透性、塗布後の皮膚の皮膜感を向上させる観点から、その含有量は、原液中に1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、25質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましい。また、油剤の含有量は、原液中に1~25質量%であり、2~15質量%が好ましく、4~12質量%がさらに好ましい。
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられるが、本発明では、炭酸ガスの原液への溶解量、溶解性促進と塗布時の泡立ち性の観点から非イオン界面活性剤が好ましく用いられる。本発明で使用される非イオン界面活性剤は、HLB3~20の非イオン界面活性剤であり、非イオン界面活性剤のHLBは、泡の皮膚への浸透感、組成物の保存安定性を向上させる観点から、7以上が好ましく、9以上がより好ましく、11以上がさらに好ましく、塗布後の皮膚の皮膜感を向上させる観点から、18以下が好ましく、16以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。また、非イオン界面活性剤のHLBは、7~18が好ましく、9~16がより好ましく、11~15がさらに好ましい。
ここで、HLB(親水性-親油性のバランス〈Hydrophilic-Lypophilic Balance〉)とは、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。2種以上の非イオン界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLBは、各非イオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて相加算平均することにより求められる。
具体的な非イオン界面活性剤としてしては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられ、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油がより好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油がさらに好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、炭酸ガスの皮膚への浸透性、泡の安定性を向上させる観点から、エチレンオキサイドの平均付加モル数が、20~90であるのが好ましく、30~80がより好ましく、50~70がさらに好ましい。
非イオン界面活性剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、その含有量は、泡ののび、炭酸ガスの皮膚への浸透性、塗布後の皮膚の皮膜感を向上させる観点から、原液中に0.05質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、6質量%以下であり、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。また、非イオン界面活性剤の含有量は、原液中に0.05~6質量%であり、0.1~2質量%が好ましく、0.3~1質量%がより好ましい。
水溶性増粘剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば良く、例えば、カラギーナン、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、カルボキシメチルキチン、キトサン等が挙げられる。これらは、原液の粘度を高め、急激な泡の発生を抑制し、安定性を向上させる効果を有する。さらに炭酸ガスの皮膚への浸透性、塗布後の皮膚の皮膜感を向上させる観点から、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が好ましく、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体がより好ましい。ここで、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とは、C10-30アルキルアクリル酸とアクリル酸、メタクリル酸又はこれらの低級アルキルエステルとの共重合体であって、ショ糖のアリルエーテル又はペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したものであり、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2、カーボポールETD2020、カーボポール1342、カーボポール1382(以上、Lubrizol Advanced Materials 社)等の市販品を用いることができる。
水溶性増粘剤は、上記から選ばれる1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、その含有量は、原液中に0.1質量%以上であり、0.15質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、1質量%以下であり、0.8質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。また、水溶性増粘剤の含有量は、原液中に0.1~1質量%であり、0.15~0.8質量%が好ましく、0.2~0.5質量%がより好ましい。
水は、溶媒として働き、原液中に、55質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。また、水の含有量は、原液中に、55~95質量%が好ましく、65~93質量%がより好ましく、75~90質量%がさら好ましい。
原液は、安定性、泡の吐出性、炭酸ガスの皮膚への浸透性を向上させる観点から、25℃における粘度が、500mPa・s以上であるのが好ましく、1000mPa・s以上がより好ましく、1500mPa・s以上がさらに好ましく、20000mPa・s以下が好ましく、10000mPa・s以下がより好ましく、7000mPa・s以下がさらに好ましい。原液は、25℃における粘度が、500~20000mPa・sであるのが好ましく、1000~10000mPa・sがより好ましく、1500~7000mPa・sがさらに好ましい。
ここで、粘度は、25℃で、BM粘度計(東機産業社製)を用いて、ローターNo.3、12rpm、1分で測定し、粘度が10000mPa・sを超えた場合は、ローターNo.3、6rpm、1分で測定した値である。
発泡性皮膚外用剤において用いられる炭酸ガス発生剤としては、通常、炭酸ガス発生物質と酸性物質からなり、水と接触することにより両者が反応し、炭酸ガスを発生する製剤が挙げられる。
ここで、酸性物質としては、無機酸、有機酸のいずれでもよく、これらの1種又は2種以上が用いられる。有機酸としては、例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸及びサリチル酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。また、無機酸としては、具体的には、例えば、リン酸、ホウ酸、メタケイ酸及び無水ケイ酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、炭酸ガス発生量を確保する観点から、有機酸が好ましく、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸及び酒石酸から選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましく、クエン酸、リンゴ酸及びフマル酸から選ばれる1種又は2種以上であることがさらに好ましい。
炭酸ガス発生物質としては、炭酸塩が挙げられ、具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、炭酸塩としては、炭酸ガス発生量を確保する観点から、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
斯かる炭酸ガス発生剤は、酸性物質、炭酸ガス発生物質を同一剤に含んでいてもよく、また複数の剤に分けて含有していてもよい。
発泡性皮膚外用剤の剤形は、固形状、液体状、ジェル状等いずれでもよい。固形状の場合、顆粒状、細粒状、粉末状であり得る。当該皮膚外用剤は、化粧料、医薬部外品、医薬品のいずれの形態でもよいが、化粧品又は医薬部外品として用いることが好ましい。具体的には、化粧水、乳液、美容ジェル、パック料、育毛料、洗顔料、クレンジング料、シャンプー、コンディショナー等、様々な形態を挙げることができ、また発泡性皮膚外用剤をシート状素材に担持させた形態としても良い。使用に際しては、手のひらの上、容器内あるいはシート状素材内で含水物質と混合し、発泡させて使用する態様が好ましい。
シート状素材としては、粉体である炭酸ガス発生剤(酸性物質及び炭酸ガス発生物質)を担持することができ、皮膚に適用する前又は皮膚に貼付した後、該シートに水や湯をかけるのみで、シート内において十分な量の炭酸ガスを発生させることができる素材であれば特に限定されないが、好ましくは不織布シートが挙げられる。
具体的には、(A)有機酸及び無機酸から選ばれる粉体、(B)炭酸塩である粉体、(C)融点が50℃以上110℃以下であり、かつ25℃で固体である物質(例えば、ポリエチレングリコール等のポリエーテルやヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体のような高分子化合物;ミリスチン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸;セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;グルコース、マルトース等の糖類)、及び(D)繊維を含有する不織布シートが挙げられる。
入浴剤としては、(a)界面活性剤を10質量%以上及び炭酸塩を該界面活性剤の2質量倍以上含む固体状賦形物、(b)炭酸塩又は炭酸水素塩、(c)有機酸を含有し、成分(a)の含有量が入浴剤中3~20質量%である発泡性錠剤型入浴剤(特開平9-2942号公報)や、(A)常温で固体の酸又は水に溶解したときに酸性を示す無機物、(B)炭酸塩、(C)冷感剤又は温感剤を含有する発泡性化粧料(特開2000-191429号公報)が挙げられる。
パッドとしては、吸水性を有する基底層と、該基底層を被覆するように設けられたガスバリア性を有する保護層と、該保護層と前記基底層の間に封入された、炭酸ガス発生剤を含んでなり、保護層の周縁部分で皮膚に貼着できるようにされたパッド(特開2006-249025号公報)等が挙げられる。
本発明において、炭酸ガス製剤の有効性の「検出」は、検査、測定判定又は評価等の用語で言い換えることもできる。本明細書における炭酸ガス製剤の有効性の「検出」、「検査」、「測定」、「判定」又は「評価」という用語は、医師による診断を含むものではない。
(1.マーカー)
後述する実施例に示すように、本発明者は、炭酸ガスを含む炭酸ガス製剤と、炭酸ガスを含まないプラセボ製剤を試験品とし、被験者の顔全面の左右半顔いずれか一方ずつに経皮的に塗布した後、塗布部位の皮膚について、鱗屑指標であるSEsc値の変化量(塗布後のSEsc値から塗布前のSEsc値を減じた値:ΔSEsc値)と、角質水分量の指標であるConductance値の変化量(塗布後のConductance値から塗布前のConductance値を減じた値:ΔConductance値)を調べた。この時、SEsc値の変化量及びConductance値の変化量を指標に、プラセボ製剤塗布と比較して、炭酸ガス製剤塗布において相対的に鱗屑が改善、若しくは角層水分量が増加した被験者をResponder群と定義し、他方、鱗屑の改善及び角層水分量の増加が見られなかった被験者をnonResponder群と定義した。
また、試験品塗布前に、塗布部位の皮膚からSSLを採取し、SSL中に含まれるRNAの発現状態をシーケンス情報として網羅的に解析した。
その結果、Responder群とnonResponder群との間で、炭酸ガス製剤塗布前において、下記表1に示す175種の遺伝子の発現パターンが有意に異なっていた。
Figure 2023075831000001
Figure 2023075831000002
そして、表1に示す175種の遺伝子を用いた判別式(Responder群かnonResponder群かを判別する予測モデル)で推定誤答率を算出したところ15%、すなわち正答率が85%と高く、被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性の予測が可能であることが示された。表1に示す遺伝子は、その発現に炭酸ガス製剤への被験者の感受性が反映されていると考えられる。
したがって、炭酸ガス製剤を実際に用いずとも、表1に示された遺伝子群より選択される遺伝子又はその発現産物を評価マーカーとし、その発現レベルに基づいて、被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出することができる。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤の使用により鱗屑又は角層水分量が改善する被験者(Responder)を選択することができる。
当該175種の遺伝子のうち、表1Aに示す104種の遺伝子は、Responder群において発現レベルが高いポジティブマーカーである。他方、表1Bに示す71種の遺伝子は、Responder群において発現レベルが低いネガティブマーカーである。
さらに、後述する実施例に示すように、表1に示す175種のRNAについて、炭酸ガス製剤塗布前の発現量と、炭酸ガス製剤塗布部位のΔSEsc値及びΔConductance値とのピアソン相関解析を行った。その結果、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種の遺伝子は、炭酸ガス製剤塗布部位のΔSEsc値と有意に正の相関又は負の相関を示すことが見出された。当該8種の遺伝子は、これまでに鱗屑との関係が報告されていない遺伝子である。
また、HERC3、BSG及びKHNYNの3種の遺伝子は、炭酸ガス製剤塗布部位のΔConductance値と有意に正の相関又は負の相関を示すことが見出された。当該3種の遺伝子は、これまでに角層水分量との関係が報告されていない遺伝子である。
そして、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種と、HERC3、BSG及びKHNYNの3種の計11種の遺伝子を用いた判別式(Responder群か否かを判別する予測モデル)で推定誤答率を算出したところ15%、すなわち正答率が85%と高く、被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性の予測が可能であることが示された。
したがって、これら11種の遺伝子群より選択される遺伝子又はその発現産物を評価マーカーとし、その発現レベルに基づいて、被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出することができる。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤の使用により鱗屑又は角層水分量が改善する被験者(Responder)を選択することができる。
さらに、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種の遺伝子群より選択される遺伝子又はその発現産物を評価マーカーとし、その発現レベルに基づいて、被験者に対する炭酸ガス製剤の有効性のうち、特に鱗屑に対する有効性をより高精度に検出することができる。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤に対するレスポンダーのうち特に鱗屑の改善についてのレスポンダーを選択することができる。
またさらに、HERC3、BSG及びKHNYNの3種の遺伝子群より選択される遺伝子又はその発現産物を評価マーカーとし、その発現レベルに基づいて、被験者に対する炭酸ガス製剤の有効性のうち、特に角層水分量に対する有効性をより高精度に検出することができる。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤に対するレスポンダーのうち特に角層水分量の改善についてのレスポンダーを選択することができる。
表1に示す遺伝子より、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種と、HERC3、BSG及びKHNYNの3種を除いた164種の遺伝子を下記表2に示す。
Figure 2023075831000003
Figure 2023075831000004
本発明では、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種の遺伝子、並びにHERC3、BSG及びKHNYNの3種の遺伝子の計11種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種をマーカーとし、その発現レベルに基づいて、鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出する。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤の使用により鱗屑又は角層水分量が改善する被験者(Responder)を選択することができる。
さらに当該11種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種と共に、表2に示す164種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種をマーカーとし、その発現レベルに基づいて被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出することが可能である。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤に対するResponderを選択することが可能である。
本発明において、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種の遺伝子、並びにHERC3、BSG及びKHNYNの3種の遺伝子の計11種の遺伝子は、それぞれ単独で被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を評価するためのマーカーとなり得るが、精度向上の観点から、このうち、好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、さらに好ましくは5種以上、よりさらに好ましくは11種全ての組み合わせを用いる。
また本発明では、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種をマーカーとし、その発現レベルに基づいて、被験者に対する炭酸ガス製剤の有効性のうち、特に鱗屑に対する有効性をより高精度に検出する。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤に対するレスポンダーのうち特に鱗屑の改善についてのレスポンダーを選択する。
さらに当該8種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種と共に、HERC3、BSG及びKHNYNの3種、並びに表2に示す164種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種をマーカーとし、その発現レベルに基づいて被験者に対する炭酸ガス製剤の有効性のうち、特に鱗屑の改善に対する有効性を検出することが可能である。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤に対するレスポンダーのうち特に鱗屑の改善についてのレスポンダーを選択することが可能である。
本発明において、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種の遺伝子は、それぞれ単独で被験者に対する炭酸ガス製剤の有効性、特に鱗屑に対する有効性を評価するためのマーカーとなり得るが、精度向上の観点から、このうち、好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、さらに好ましくは8種全ての組み合わせを用いる。
また本発明では、HERC3、BSG及びKHNYNの3種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種をマーカーとし、その発現レベルに基づいて、被験者に対する炭酸ガス製剤の有効性のうち、特に角層水分量に対する有効性をより高精度に検出する。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤に対するレスポンダーのうち特に角層水分量の改善についてのレスポンダーを選択する。
さらに当該3種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種と共に、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種、並びに表2に示す164種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種をマーカーとし、その発現レベルに基づいて被験者に対する炭酸ガス製剤の有効性のうち、特に角層水分量に対する有効性を検出することが可能である。また、その検出結果に基づき、炭酸ガス製剤に対するレスポンダーのうち特に角層水分量の改善についてのレスポンダーを選択することが可能である。
本発明において、HERC3、BSG及びKHNYNの3種の遺伝子は、それぞれ単独で被験者に対する炭酸ガス製剤の有効性、特に角層水分量に対する有効性を評価するためのマーカーとなり得るが、精度向上の観点から、このうち、好ましくは2種以上、より好ましくは3種全ての組み合わせを用いる。
一実施形態において、本発明のマーカーは、表1に示す遺伝子のDNA、その転写産物であるRNA等の核酸マーカーである。別の一実施形態において、本発明のマーカーは、当該遺伝子の翻訳産物であるタンパク質マーカーである。本発明のマーカーは、好ましくは核酸マーカーである。
前記の被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのマーカーとなり得る遺伝子(以下、「標的遺伝子」とも称す)には、被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのバイオマーカーとなり得る限り、当該遺伝子を構成するDNAの塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子も包含される。ここで、実質的に同一の塩基配列とは、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLASTを用い、期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3の条件にて検索をした場合、当該遺伝子を構成するDNAの塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましく98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性があることを意味する。
本発明のマーカーは、皮膚から採取したSSLから常法にしたがって調製することができる。例えば、SSLからの核酸又はタンパク質の調製には、市販のキットを使用することができる。好ましくは、本発明のマーカーは、被験者のSSLから調製される核酸又はタンパク質、より好ましくは核酸、さらに好ましくはRNA、よりさらに好ましくはmRNAである。
SSLが採取される皮膚は、SSLを採取し得る動物の皮膚であればよく、ヒトの皮膚が好ましく、健常なヒトの皮膚がより好ましい。SSLが採取される皮膚の部位としては、頭、顔、首、体幹、手足等の身体の任意の部位の皮膚が挙げられ、皮脂の分泌が多い部位、例えば、顔の皮膚が好ましい。
皮膚からのSSLの採取には、皮膚からのSSLの回収又は除去に用いられているあらゆる手段を採用することができる。好ましくは、後述するSSL吸収性素材、SSL接着性素材、又は皮膚からSSLをこすり落とす器具を使用することができる。
SSL吸収性素材又はSSL接着性素材としては、SSLに親和性を有する素材であれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、パルプ等が挙げられる。皮膚からのSSLの採取手順のより詳細な例としては、あぶら取り紙、あぶら取りフィルム等のシート状素材へSSLを吸収させる方法、ガラス板、テープ等へSSLを接着させる方法、スパーテル、スクレイパー等によりSSLをこすり落として回収する方法、等が挙げられる。SSLの吸着性を向上させるため、脂溶性の高い溶媒を予め含ませたSSL吸収性素材を用いてもよい。一方、SSL吸収性素材は、水溶性の高い溶媒や水分を含んでいるとSSLの吸着が阻害されるため、水溶性の高い溶媒や水分の含有量が少ないことが好ましい。SSL吸収性素材は、乾燥した状態で用いることが好ましい。
採取されたSSLは一定期間保存されてもよい。採取されたSSLは、含有するRNAの分解を極力抑えるために、採取後できるだけ速やかに低温条件で保存することが好ましい。本発明における当該RNA含有SSLの保存の温度条件は、0℃以下であればよく、好ましくは-20±20℃~-80±20℃、より好ましくは-20±10℃~-80±10℃、さらに好ましくは-20±20℃~-40±20℃、さらに好ましくは-20±10℃~-40±10℃、さらに好ましくは-20±10℃、さらに好ましくは-20±5℃である。当該RNA含有SSLの当該低温条件での保存の期間は、特に限定されないが、好ましくは12か月以下、例えば6時間以上12ヶ月以下、より好ましくは6ヶ月以下、例えば1日間以上6ヶ月以下、さらに好ましくは3ヶ月以下、例えば3日間以上3ヶ月以下である。
SSLからの核酸又はタンパク質の抽出には、生体試料からの核酸又はタンパク質の抽出又は精製に通常使用される方法を使用することができる。核酸の抽出又は精製方法の例としては、フェノール/クロロホルム法、AGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法、又はTRIzol(登録商標)、RNeasy(登録商標)、QIAzol(登録商標)等のカラムを用いた方法、シリカをコーティングした特殊な磁性体粒子を用いる方法、Solid Phase Reversible Immobilization磁性体粒子を用いる方法、ISOGEN等の市販のRNA抽出試薬による抽出、等が挙げられる。タンパク質の抽出又は精製には、QIAzol Lysis Reagent(Qiagen)等の市販のタンパク質抽出試薬を用いることができる。
(2.評価方法)
別の一態様において、本発明は、前記1.で説明した本発明のマーカーを用いた、被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を評価する方法を提供する。
本発明の被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を評価する方法(以下、「本発明の方法」とも称す)では、被験者から採取されたSSLについて、本発明のマーカーの発現レベルを測定し、さらにその発現レベルに基づいて、当該被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を評価する。
本発明における被験者は、例えばヒト又は非ヒト哺乳動物であって、鱗屑及び/又は角層水分量の低下が見られ、鱗屑の改善及び/又は角層水分量の増加を所望するか又は必要とする者が挙げられる。被験者は、好ましくはヒトである。
一実施形態において、本発明の方法は、被験者からSSLを採取する工程をさらに含んでいてもよい。SSLの採取手順、及びSSLからのマーカーの抽出手順は、上述したとおりである。
(2.1 マーカー発現の解析)
本発明のマーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられる核酸又はタンパク質の定量法にしたがって、測定することができる。測定されるマーカーの発現レベルは、SSL中の当該マーカーの絶対量に基づく発現レベルであっても、他の標準物質や、全核酸又は全タンパク質の発現レベルに対する相対発現レベルであってもよい。
例えば、核酸マーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられる遺伝子発現解析の手順にしたがって測定すればよい。遺伝子発現解析の手法の例としては、PCR、マルチプレックスPCR、リアルタイムPCR、ハイブリダイゼーション(DNAチップ、DNAマイクロアレイ、ドットブロットハイブリダイゼーション、スロットブロットハイブリダイゼーション、ノーザンブロットハイブリダイゼーション等)、シーケンシング、クロマトグラフィー等の核酸又はその増幅産物を定量する方法が挙げられる。核酸がRNAの場合は、RNAを逆転写によりcDNAに変換した後、前記方法で定量することが好ましい。
タンパク質マーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられるタンパク質定量法、例えば免疫測定法(例えば、ウェスタンブロット、ELISA、免疫染色等)、蛍光法、電気泳動、プロテインチップ、クロマトグラフィー、質量分析(例えば、LC-MS/MS、MALDI-TOF/MS)、1-ハイブリッド法(PNAS 100, 12271-12276(2003))、2-ハイブリッド法(Biol. Reprod. 58, 302-311 (1998))等を用いて測定することができる。あるいは、本発明のマーカーである核酸又はタンパク質と相互作用する分子を測定することで、本発明のマーカーの発現レベルを測定してもよい。本発明のマーカーと相互作用する分子としては、DNA、RNA、タンパク質、多糖、オリゴ糖、単糖、脂質、脂肪酸、及びこれらのリン酸化物、アルキル化物、糖付加物等、及び前記いずれかの複合体が挙げられる。
好ましくは、本発明の方法で使用されるマーカーは、SSL由来mRNAである。この場合には、SSLに含まれるmRNAの発現レベルが測定される。好ましくは、SSLから抽出したmRNAを逆転写によりcDNAに変換した後、当該cDNA又はその増幅産物を前記の手法で定量することで、当該SSL由来mRNAの発現レベルが測定される。
mRNAの逆転写には、解析したい特定のRNAを標的としたプライマーを用いてもよいが、より包括的な核酸の保存及び解析のためにはランダムプライマーを用いることが好ましい。この逆転写には、一般的な逆転写酵素又は逆転写試薬キットを使用することができる。好適には、正確性及び効率性の高い逆転写酵素又は逆転写試薬キットが用いられ、その例としては、M-MLV Reverse Transcriptase及びその改変体、あるいは市販の逆転写酵素又は逆転写試薬キット、例えばPrimeScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(タカラバイオ社)、SuperScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(Thermo Scientific社)等が挙げられる。SuperScript(登録商標)III Reverse Transcriptase、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(いずれもThermo Scientific社)等が挙げられる。
逆転写における伸長反応では、温度を好ましくは42℃±1℃、より好ましくは42℃±0.5℃、さらに好ましくは42℃±0.25℃に調整し、一方、反応時間を好ましくは60分間以上、より好ましくは80~120分間に調整することが好ましい。
PCRを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、必要に応じてSSL由来のmRNAをcDNAに逆転写した後、プライマーペアを用いて当該SSL由来のmDNAを増幅する。PCRでは、解析したい特定のDNAを標的としたプライマーペアを用いて当該特定の1種のDNAのみを増幅してもよいが、複数のプライマーペアを用いて同時に複数の特定のDNAを増幅してもよい。好ましくは、当該PCRはマルチプレックスPCRである。マルチプレックスPCRは、PCR反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで、複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法である。マルチプレックスPCRは、市販のキット(例えば、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit;ライフテクノロジーズジャパン株式会社等)を用いて実施することができる。
当該PCRにおけるアニーリング及び伸長反応の温度は、使用するプライマーに依存するため一概には言えないが、前記のマルチプレックスPCRキットを用いる場合、好ましくは62℃±1℃、より好ましくは62℃±0.5℃、さらに好ましくは62℃±0.25℃である。したがって、当該PCRでは、好ましくはアニーリング及び伸長反応が1ステップで行われる。当該アニーリング及び伸長反応のステップの時間は、増幅すべきDNAのサイズ等に依存して調整され得るが、好ましくは14~18分間である。当該PCRにおける変性反応の条件は、増幅すべきDNAに依存して調整され得るが、好ましくは95~99℃で10~60秒間である。前記のような温度及び時間での逆転写及びPCRは、一般的にPCRに使用されるサーマルサイクラーを用いて実行することができる。
前記PCRで得られた反応産物の精製は、反応産物のサイズ分離によって行われることが好ましい。サイズ分離により、目的のPCR反応産物を、PCR反応液中に含まれるプライマーやその他の不純物から分離することができる。DNAのサイズ分離は、例えば、サイズ分離カラムや、サイズ分離チップ、サイズ分離に利用可能な磁気ビーズ等によって行うことができる。サイズ分離に利用可能な磁気ビーズの好ましい例としては、Ampure XP等のSolid Phase Reversible Immobilization(SPRI)磁性ビーズが挙げられる。
精製したPCR反応産物に対して、その後の定量解析を行うために必要なさらなる処理を施してもよい。例えば、DNAのシーケンシングのために、精製したPCR反応産物を、適切なバッファー溶液へと調製したり、PCR増幅されたDNAに含まれるPCRプライマー領域を切断したり、増幅されたDNAにアダプター配列をさらに付加したりしてもよい。例えば、精製したPCR反応産物をバッファー溶液へと調製し、増幅DNAに対してPCRプライマー配列の除去及びアダプターライゲーションを行い、得られた反応産物を、必要に応じて増幅して、定量解析のためのライブラリーを調製することができる。これらの操作は、例えば、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×VILO RT Reaction Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×Ion AmpliSeq HiFi Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Core Panelを用いて、各キット付属のプロトコルにしたがって行うことができる。
リアルタイムPCRを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、必要に応じてSSL由来のRNAをcDNAに逆転写した後、予め放射性同位元素(RI)、蛍光物質等で標識しておいたプライマーを用いてPCRを行い、産生される標識二本鎖DNAを検出、定量する。
ノーザンブロットハイブリダイゼーションを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、例えば、常法にしたがってメンブレン上にSSL由来のRNAをトランスファーし、次いでRI、蛍光物質等で標識したプローブDNAを当該RNAにハイブリダイズさせる。形成された標識プローブDNAとRNAとの二重鎖から当該標識に由来するシグナルを検出することにより、核酸マーカーの発現レベルを測定することができる。
DNAマイクロアレイを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、例えば、支持体上に標的の核酸マーカーに特異的にハイブリダイズする核酸(cDNA又はDNA)を固定化したマイクロアレイを用いる。SSLから調製した核酸(cDNA又はcRNA)を標識後、マイクロアレイ上に結合させ、マイクロアレイ上の標識を検出することによって、SSL中の核酸マーカーの発現レベルを測定することができる。
前記マイクロアレイに固定化される核酸としては、ストリンジェントな条件下に標的の核酸マーカーに特異的(すなわち、実質的に標的の核酸マーカーのみに)にハイブリダイズする核酸であればよく、本発明の核酸マーカーの全配列を有する核酸であっても、部分配列からなる核酸であってもよい。当該「部分配列」としては、少なくとも15~25塩基からなる核酸が挙げられる。ここでストリンジェントな条件としては、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の洗浄条件、好ましくは「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度の条件、さらに好ましくは「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の条件を挙げることができる。ストリンジェントなハイブリダイズ条件は、例えばJ. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載されている。
シーケンシングを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、好ましくは次世代シーケンサー(例えばIon S5/XLシステム、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いることができる。シーケンシングで作成されたリードの数(リードカウント)に基づいて、DNA又はRNAの発現レベルを測定することができる。
シーケンシングにより複数の核酸マーカーの発現レベルを測定する場合は、前記したリードカウントを発現レベルのデータとして用いることができる。あるいは、当該リードカウントにおけるサンプル間の総リード数の違いを補正した、当該リードカウントのRPM(Reads per million mapped reads)値、当該RPM値の対数値(Log2RPM値、又はLog2(RPM+1)値)、DESeq2(Love MI et al.,Genome Biol,2014)を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)又はその対数値(Log2(Normalized count+1)値)、等を発現レベルのデータとして用いることができる。あるいは、発現レベルのデータとして、RNA-seqの定量値として一般的な、Fragments per kilobase of exon per million reads mapped (FPKM)、reads per kilobase of exon per million reads mapped (RPKM)、transcripts per million (TPM)等を用いることができる。
核酸マーカーの測定に用いられるプローブ又はプライマーは、例えば、本発明の核酸マーカーを特異的に増幅するためのプライマー、又は当該核酸マーカーを特異的に検出するためのプローブであり得る。ここで「特異的」とは、例えばノーザンブロット法において、実質的に本発明のマーカーのみが検出されること、又はPCRにおいて、実質的に本発明のマーカーのみが増幅されること等、実質的に本発明のマーカーに由来する生成物又は検出物が生成するように核酸を認識又は検出できることを意味する。これらのプローブ又はプライマーは、当該核酸マーカーのヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。
プローブ又はプライマーの具体的な例としては、本発明の核酸マーカーの全配列又は部分配列からなるオリゴヌクレオチド又はその相補鎖を利用することができる。前記「相補鎖」とは、標的マーカーを特異的に認識する限り、完全に相補的な配列に限られず、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有する配列であればよい。配列の同一性は、上述したNCBI BLAST等のアルゴリズムにより決定することができる。
前記核酸マーカーの測定に用いられるプライマーの例としては、標的の核酸マーカーに対して特異的なアニーリング及び鎖伸長ができるものであって、好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、さらに好ましくは20塩基以上、かつ好ましくは100塩基以下、より好ましくは50塩基以下、さらに好ましくは35塩基以下の鎖長を有するものが挙げられる。
前記核酸マーカーの測定に用いられるプローブの例としては、標的の核酸マーカーに対して特異的なハイブリダイゼーションができるものであって、好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、かつ好ましくは100塩基以下、より好ましくは50塩基以下、さらに好ましくは25塩基以下の鎖長を有するものが挙げられる。
前記プローブ又はプライマーは、DNAあるいはRNAであることができ、合成されたものでも天然のものでもよい。ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、通常、標識したものが用いられる。
免疫測定法を用いてタンパク質マーカーの発現レベルを測定する場合、例えば、当該タンパク質マーカーに対する抗体を生体試料と接触させ、当該抗体に結合したタンパク質マーカーを定量すればよい。例えば、ウェスタンブロットでは、当該タンパク質マーカーに対する一次抗体を用いた後、RI、蛍光物質、酵素等で標識した二次抗体を用いて当該一次抗体を標識し、次いで当該標識由来のシグナルを測定することで当該タンパク質マーカーの発現レベルを測定することができる。当該タンパク質マーカーに対する抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。これらの抗体は、公知の方法にしたがって製造することができる。
(2.2 マーカーの発現レベルに基づく検出方法)
本発明の一実施形態においては、本発明のマーカーの発現レベルについてのデータを用いて構築した予測モデルに基づいて、被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出する。
例えば、予め十分な母数を有する任意の集団において炭酸ガス製剤を塗布し、塗布前における本発明の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを説明変数とし、当該集団から得た塗布前後における鱗屑指標であるSEsc値の変化量(炭酸ガス製剤塗布後のSEsc値から塗布前のSEsc値を減じた値:ΔSEsc値)や角質水分量の指標であるConductance値の変化量(炭酸ガス製剤塗布後のConductance値から塗布前のConductance値を減じた値:ΔConductance値)を元にラベル付けした炭酸ガス製剤が有効な被験者(Responder群)か否か(nonResponder群)を目的変数とする機械学習を行うことにより、当該発現レベルから被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するための最適な予測モデルを構築する。ここでResponder群かnonResponder群のラベル付けは、炭酸ガス製剤塗布前後のΔSEsc値やΔConductance値に元に行われるが、好ましくは炭酸ガス製剤塗布と並行して炭酸ガス成分を含まないプラセボ製剤の塗布を行い、参照値としてプラセボ製剤塗布前後におけるΔSEsc値やΔConductance値を算出し、炭酸ガス製剤塗布とプラセボ製剤塗布との対比からResponder群かnonResponder群のラベル付けを行う。
次いで、構築された予測モデルに基づいて、炭酸ガス製剤の有効性を検出対象である被験者における標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルから、当該被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出することができる。
予測モデルの構築に用いられる集団としては、対象となる被験者の属性(性別、人種、年代等)が一致した集団であることが好ましい。
発現レベルとしては、上記したように、発現量のデータであるリードカウント値、当該リードカウント値をサンプル間の総リード数の違いを補正したRPM値、当該RPM値を底2の対数値に変換した値(Log2RPM値)又は整数1を加算した底2の対数値(log2(RPM+1)値)、あるいはDESeq2(Love MI et al.Genome Biol.2014)を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)又は整数1を加算した底2の対数値(log2(Normalized count+1)値)を指標として用いるのが好ましい。また、RNA-seqの定量値として一般的な、fragments per kilobase of exon per million reads mapped (FPKM)、reads per kilobase of exon per million reads mapped (RPKM)、transcripts per million (TPM)等によって算出される値であってもよい。また、マイクロアレイ法によって得られるシグナル値、及びその補正値であってもよい。また、RT-PCR等により特定の標的遺伝子のみの解析を行う場合には、対象遺伝子の発現量をハウスキーピング遺伝子の発現量を基準とする相対的な発現量に変換して解析する方法、又は標的遺伝子の領域を含むプラスミドを用いて絶対的なコピー数を定量(絶対定量)して解析する方法が好ましい。デジタルPCR法によって得られるコピー数であってもよい。
一方、ΔSEsc値及びΔConductance値としては、例えば実測値に整数1を加算した自然対数値(ln(測定値+1)値)を用いることができる。
予測モデルの構築に用いるアルゴリズムとしては、機械学習に用いるアルゴリズム等の公知のものを利用することができる。機械学習アルゴリズムの例としては、ランダムフォレスト(Random forest)、線形カーネルのサポートベクターマシン(SVM linear)、rbfカーネルのサポートベクターマシン(SVM rbf)、ニューラルネットワーク(Nerural net)、一般線形モデル(Generalized linear model)、正則化線形判別分析(Regularized linear discriminant analysis)、正則化ロジスティック回帰(Regularized logistic regression)、ラッソ(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)回帰等が挙げられる。構築した予測モデルに検証用のデータを入力して予測値を算出し、当該予測値が実測値と最も適合するモデル、例えば正解率(Accuracy)が最も大きいモデルを最適な予測モデルとして選抜することができる。また、予測値と実測値から検出率(Recall)、精度(Precision)、及びそれらの調和平均であるF値を計算し、そのF値が最も大きいモデルを最適な予測モデルとして選抜することができる。また、予測値と実測値の二乗平均平方根誤差(RMSE)を予測モデルの精度評価指標として用い、そのRMSEの最も小さいモデルを最適な予測モデルとして選抜することができる。
本発明の方法の別の一実施形態においては、被験者から採取されたSSLについて本発明のマーカーの発現レベルを測定し、測定したマーカーの発現レベルを、予め設定した基準値と比較することによって、当該被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を評価することができる。
一例において、当該基準値は、鱗屑指標であるSEsc値や、角質水分量の指標であるConductance値と、本発明の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルの関係に基づき、予め決定することができる。例えば、ある集団に対し炭酸ガス製剤を塗布し、塗布前後におけるSEsc値の変化量(炭酸ガス製剤塗布後のSEsc値から塗布前のSEsc値を減じた値:ΔSEsc値)とConductance値の変化量(炭酸ガス製剤塗布後のConductance値から塗布前のConductance値を減じた値:ΔConductance値)基づき、該集団を、Responder群、nonResponder群の群に分ける。ここでResponder群かnonResponder群かの群分けは、炭酸ガス製剤塗布前後のΔSEsc値やΔConductance値に元に行われるが、好ましくは炭酸ガス製剤塗布と並行して炭酸ガス成分を含まないプラセボ製剤の塗布を行い、参照値としてプラセボ製剤塗布前後におけるΔSEsc値やΔConductance値を算出し、炭酸ガス製剤塗布とプラセボ製剤塗布との対比からResponder群かnonResponder群かの群分けを行う。
そして、それぞれの群における標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルの平均値や標準偏差等の統計値を参考に決定した値を、それぞれの群への属否を判別する基準値として決定することができる。
標的遺伝子として複数種の遺伝子を用いる場合は、それぞれ各々の遺伝子又はその発現産物について基準値を求めることが好ましい。
集団としては、対象となる被験者の属性(性別、人種、年代等)が一致した集団であることが好ましい。
基準値の決定方法は特に制限されず、公知の手法に従って決定することができる。例えば、判別式(予測モデル)を使用して作成されたROC(Receiver Operating Characteristic Curve)曲線より求めることができる。ROC曲線では、縦軸にResponder群において炭酸ガス製剤が有効であるとの結果がでる確率(感度)と、横軸にnonResponder群において炭酸ガス製剤が有効ではないとの結果がでる確率(特異度)を1から減算した値(偽陽性率)がプロットされる。ROC曲線に示される「真陽性(感度)」及び「偽陽性(1-特異度)」に関し、「真陽性(感度)」-「偽陽性(1-特異度)」が最大となる値(Youden index)を基準値とすることができる。
本実施形態において、本発明のマーカーがポジティブマーカーである場合、被験者に由来する測定したマーカーの発現レベルがResponder群と同等又はそれよりも高い場合は、当該被験者は、鱗屑及び/又は角層水分量に対して炭酸ガス製剤が有効に作用する者、言い換えれば、炭酸ガス製剤は、当該被験者の鱗屑及び/又は角層水分量に対して有効(鱗屑改善効果有り、角層水分量増加効果有り)と評価される。あるいは、被験者に由来する測定したマーカーの発現レベルがnonResponder群より高い場合は、当該被験者は、同様に、鱗屑及び/又は角層水分量に対して炭酸ガス製剤が有効に作用する者と評価される。
一方、被験者に由来する測定したマーカーの発現レベルがnonResponder群と同等又はそれよりも低い場合や、Responder群よりも低い場合は、当該被験者は、鱗屑及び/又は角層水分量に対して炭酸ガス製剤が有効に作用する者とは評価されない。言い換えれば、炭酸ガス製剤は、当該被験者の鱗屑及び/又は角層水分量に対して有効でない(鱗屑改善効果なし、角層水分量増加効果なし)と評価される。
本実施形態において、本発明のマーカーがネガティブマーカーである場合、被験者に由来する測定したマーカーの発現レベルがResponder群と同等又はそれよりも低い場合は、当該被験者は、鱗屑及び/又は角層水分量に対して炭酸ガス製剤が有効に作用する者、言い換えれば、炭酸ガス製剤は、当該被験者の鱗屑及び/又は角層水分量に対して有効(鱗屑改善効果有り、角層水分量増加効果有り)と評価される。あるいは、被験者に由来する測定したマーカーの発現レベルがnonResponder群より低い場合は、当該被験者は、同様に、鱗屑及び/又は角層水分量に対して炭酸ガス製剤が有効に作用する者と評価される。
一方、被験者に由来する測定したマーカーの発現レベルがnonResponder群と同等又はそれよりも高い場合や、Responder群よりも高い場合は、当該被験者は、鱗屑及び/又は角層水分量に対して炭酸ガス製剤が有効に作用する者とは評価されない。言い換えれば、炭酸ガス製剤は、当該被験者の鱗屑及び/又は角層水分量に対して有効でない(鱗屑改善効果なし、角層水分量増加効果なし)と評価される。
本発明に方法によって、炭酸ガス製剤は、被験者の鱗屑又は角層水分量に対して有効(鱗屑改善効果有り、角層水分量増加効果有り)と評価されれば、当該被験者を炭酸ガス製剤の適用に適した被験者として選択することができる。反対に、炭酸ガス製剤は、被験者の鱗屑又は角層水分量に対して有効でない(鱗屑改善効果なし、角層水分量増加効果なし)と評価されれば、当該被験者を炭酸ガス製剤の適用から除外することができる。
本発明の方法の一実施形態においては、本発明のマーカーの発現レベルが、基準値に対して好ましくは91%以下、より好ましくは83%以下、さらに好ましくは77%以下であれば、当該マーカーの発現レベルは基準値より低いと判断され得、本発明のマーカーの発現レベルが、基準値に対して好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは130%以上であれば、当該マーカーの発現レベルは基準値より高いと判断され得る。あるいは、被験者由来のマーカーの発現レベルと基準値との差異は、例えば両者が統計学的に有意に異なるか否かによって判断することができる。
標的遺伝子として複数種の遺伝子を用いる場合は、一定割合、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%の遺伝子又はその発現産物の発現レベルが基準値を満たすか否かに基づいて、被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を評価することができる。
(3.評価キット)
さらなる一態様において、本発明は、前記2.で説明した本発明の方法にしたがって被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を評価するためのキットを提供する。
一実施形態において、本発明のキットは、上述した本発明のマーカーの発現レベルを測定するための試薬又は器具を備える。例えば、本発明のキットは、本発明の核酸マーカーを増幅又は定量するための試薬(例えば、逆転写酵素、PCR用試薬、プライマー、プローブ、シーケンシング用アダプター配列等)、又は本発明のタンパク質マーカーを定量するための試薬(例えば、免疫学的測定のための試薬、抗体等)を備え得る。好ましくは、本発明のキットは、本発明の核酸マーカーと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(例えば、PCR用のプライマー、又はプローブ)、あるいは、本発明のタンパク質マーカーを認識する抗体を含有する。好ましくは、本発明のキットは、本発明のマーカーの発現レベルを評価するための指標又はガイダンスを備える。例えば、本発明のキットは、被験者の鱗屑又は角層水分量に対する炭酸ガス製剤の有効性を評価するために各マーカーの発現レベルの基準値を説明するガイダンス等を備え得る。また、本発明のキットは、生体試料採取デバイス(例えば、前記のSSL吸収性素材又はSSL接着性素材)、生体試料から本発明のマーカーを抽出するための試薬(例えば核酸精製用試薬)、生体試料採取後の試料採取デバイスの保存剤や保存用容器等をさらに備えていてもよい。
実施例1
1)試験品
表3に示す処方成分のうち、成分(1)、(2)及び(15)を60℃で撹拌し、さらに(10)を混合して撹拌した。その後、残りの成分を加え、撹拌して均一にし、25℃まで冷却して、原液を得、これを「プラセボクリーム」(プラセボ製剤)とした。得られた原液を耐圧容器に充填し、密封後、炭酸ガスを充填して「炭酸ガス含有クリーム」(炭酸ガス製剤)とした。これら両製剤を試験品として、以下のヒト試験を実施した。
Figure 2023075831000005
2)ヒト試験
本試験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守して実施した。
試験参加者候補として25~50歳の健常男性50名を対象に、左右頬部の皮膚表面を観察し、左右両頬に鱗屑を認めた20名を被験者として選定した。選定した被験者に、プラセボクリーム(プラセボ製剤)及び炭酸ガス含有クリーム(炭酸ガス製剤)を顔全面の左右半顔のいずれか一方ずつに、1日2回(朝と夜の洗顔後)、連続1週間塗布させた。1回の塗布量について、予め被験者には、プラセボクリームは3プッシュ分、炭酸ガス含有クリームは100円玉大と説明し、塗布量がいずれも0.5gとなるよう規定した。使用前及び使用1週後に物性値測定、皮膚表面画像取得を行った。尚、使用1週後の測定日は、測定2時間前に試験品を塗布させた。
3)物性値測定とnonResponder群及びResponder群の選別
試験品使用前及び使用1週後において、全顔を洗顔した後、環境可変室(温度20℃±2℃・湿度40±5%)にて、15分間以上の馴化を行った。その後、左右頬部について、SKICON 200-EX(IBS)を用いて角層水分量の指標となるConductanceを測定し、Visioscan VC98(Courage + Khazaka Electronics GmbH)を用いて皮膚表面拡大画像を取得した。更に取得した皮膚表面拡大画像から、SELS (Surface Evaluation of the Living Skin)プログラムを用いて鱗屑の指標となるSEsc値を算出した。
得られたConductance及びSEscの値について、プラセボクリーム(プラセボ製剤)及び炭酸ガス含有クリーム(炭酸ガス製剤)塗布前後の変化量をそれぞれ算出した。この時、プラセボクリームと比較して炭酸ガス含有クリーム塗布時にConductance又はSEscの各変化量の少なくとも一方がより改善していた被験者をResponder群(12名)、どちらも改善が認められない群をnonResponder群(8名)と定義した。
nonResponder群及びResponder群の(a)鱗屑指標であるSEsc値の変化量、(b)角質水分量の指標であるConductance値の変化量を図1に示す。
4)SSL採取、RNA抽出、前処理、シーケンシング
試験品使用前において、前記物性値測定における洗顔の前に、左右の顔半面よりあぶら取りフィルム(5.0cm×8.0cm、白元アース)により皮脂(SSL)を採取した。採取されたSSLを含む脂取りフィルムを適当な大きさに裁断した後、QIAzol Lysis Reagent(Qiagen)を用いて、付属のプロトコルに準じてRNAを水層に移行させた。該水層から、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)のRNA抽出用スピンカラムを用いて、付属のプロトコルに従いRNAを抽出した。抽出されたRNAを、SuperScript VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて42℃、90分間逆転写し、cDNAを合成した。逆転写反応のプライマーには、キットに付属しているランダムプライマーを使用した。得られたcDNAから、マルチプレックスPCRにより20802遺伝子に由来するDNAを含むライブラリーを調製した。マルチプレックスPCRは、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて、[99℃、2分→(99℃、15秒→62℃、16分)×20サイクル→4℃、Hold]の条件で行った。得られたPCR産物は、Ampure XP(ベックマン・コールター株式会社)で精製した後に、バッファーの再構成、プライマー配列の消化、アダプターライゲーションと精製、及び増幅を行い、ライブラリーを調製した。調製したライブラリーをIon 540 Chipにローディングし、Ion S5/XLシステム(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いてシーケンシングした。シーケンシングで得られた各リード配列をヒトゲノムのリファレンス配列であるhg19 AmpliSeq Transcriptome ERCC v1を用いて遺伝子マッピングすることで各リード配列の由来する遺伝子を決定した。
5)データ解析
得られた各被験者の試験品塗布前のSSL由来のRNAの発現量のデータ(リードカウント値)において、DESeq2という手法を用いて補正した。但し、全被験者の発現量データのうち90%以上の被験者で欠損値ではない発現量データが得られている遺伝子のみ以下の解析に使用した。解析には、DESeq2法を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)を用いた。
6)RNA発現解析
取得された各被験者のSSL由来のRNA発現量(Normalized count値)を基に、試験品塗布前のResponder群及びnonResponder群においてStudent’s t testの結果、p<0.05を満たすRNA(発現変動遺伝子)として、前記表1A、Bの175遺伝子抽出した。
7)相関解析
RNA発現解析によって同定された175遺伝子について、発現量と、炭酸ガス製剤塗布部位におけるConductance値及びSEsc値の変化量(ΔConductance値及びΔSEsc値)とのピアソン相関解析を行った。その結果、p<0.05を満たす、ΔConductance値又はΔSEsc値と相関性の高いRNAが抽出された。
該抽出されたΔConductanceと相関する遺伝子を表4に、ΔSEsc値と相関する遺伝子を表5に示す。また、図2及び図3に、各相関する遺伝子発現量と、ΔConductance又はΔSEsc値との相関を表した散布図を示す。
Figure 2023075831000006
Figure 2023075831000007
表4及び図2に示すとおり、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種の遺伝子は、炭酸ガス製剤塗布部位のΔSEsc値と有意に正の相関又は負の相関を示すことが見出された。
また、表5及び図3に示すとおり、HERC3、BSG及びKHNYNの3種の遺伝子は、炭酸ガス製剤塗布部位のΔConductance値と有意に正の相関又は負の相関を示すことが見出された。
8)予測モデル構築
試験品塗布前にResponder群とnonResponder群との間で発現変動が確認された175遺伝子の発現量データを、負の二項分布に従うRPM値から正規分布に近似するため、整数1を加算した底2の対数値(Log2(RPM+1)値)に変換した。得られた発現量データのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、Responder群かnonResponder群かを目的変数として判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。
結果を表6に示す。表6のとおり、推定誤答率15%(正答率85%)であり、上記175遺伝子の発現量データに基き、炭酸ガス製剤の有効性をその塗布前に予測可能であることが確認された。
Figure 2023075831000008
また、175遺伝子の中でも物性値の変化量と相関が認められた上記11遺伝子を用いて、同様の方法でResponder群かnonResponder群かを判別する予測モデルを構築し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。
結果を表7に示す。表7のとおり、推定誤答率15%(正答率85%)であり、上記11種の遺伝子の発現量データに基き、炭酸ガス製剤の有効性をその塗布前に予測可能であることが確認された。
Figure 2023075831000009

Claims (14)

  1. 被験者から採取された皮膚表上脂質について、以下の遺伝子:PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94、並びに当該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者における鱗屑の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法。
  2. さらに、HERC3、BSG及びKHNYNの3種、並びに下記表1に示す164種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定する工程を含む、請求項1記載の方法。
    Figure 2023075831000010
    Figure 2023075831000011
  3. 前記遺伝子又はその発現産物の発現レベルに基づいて前記被験者における鱗屑の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出することを含む請求項1又は2記載の方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項記載の方法により有効性ありと検出された被験者を、炭酸ガス製剤の使用により鱗屑が改善する被験者として選択する方法。
  5. 被験者から採取された皮膚表上脂質について、以下の遺伝子:HERC3、BSG及びKHNYN、並びに当該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者における角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出する方法。
  6. さらに、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種、並びに上記表1に示す164種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定する工程を含む、請求項5記載の方法。
  7. 前記遺伝子又はその発現産物の発現レベルに基づいて前記被験者における角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出することを含む請求項5又は6記載の方法。
  8. 請求項5~7のいずれか1項記載の方法により有効性ありと検出された被験者を、炭酸ガス製剤の使用により角層水分量が改善する被験者として選択する方法。
  9. 前記遺伝子又はその発現産物の発現レベルがmRNAの発現量である請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
  10. 以下の遺伝子:PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94、並びに当該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、鱗屑の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのマーカー。
  11. さらに、HERC3、BSG及びKHNYNの3種、並びに上記表1に示す164種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項10記載のマーカー。
  12. 以下の遺伝子:HERC3、BSG及びKHNYN、並びに当該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、角層水分量の改善に対する炭酸ガス製剤の有効性を検出するためのマーカー。
  13. さらに、PSMA7、SNORA5A、VPS37C、C22orf28、RAPGEF2、NT5C2、HSPA4及びSNORD94の8種、並びに上記表1に示す164種の遺伝子又はその遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項12記載のマーカー。
  14. 請求項10~13のいずれか1項記載のマーカーである核酸と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は請求項10~13のいずれか1項記載のマーカーであるタンパク質を認識する抗体を含有する、請求項1~9のいずれか1項記載の方法に用いられるキット。
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