JP2023069413A - 被膜の皮膚保湿効果の評価方法 - Google Patents

被膜の皮膚保湿効果の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被膜の皮膚保湿効果を評価すること。【解決手段】被膜の皮膚保湿効果を評価するためのマーカー、ならびに該マーカーを用いた被膜の皮膚保湿効果の評価方法及び皮膚保湿効果を有する被膜の選択方法。【選択図】なし

Description

本発明は、被膜の皮膚保湿効果の評価のためのマーカー、並びにそれを用いた被膜の皮膚保湿効果の評価方法及び皮膚保湿効果を有する被膜の選択方法に関する。
正常な皮膚には水分を保つ機能(保湿機能)が備わっている。この保湿機能によって、皮膚は柔軟性を保ち、またバリア機能を維持して良好な状態を保つことができる。一方、皮膚が低湿度環境に晒されたり皮膚保湿機能が低下して皮膚が乾燥したりすると、皮膚の状態が悪化し、肌荒れが発生する。皮膚は人体の器官のうち最外層に位置し、他の器官に比べて周辺環境の影響を受け易い。例えば、低湿度環境の恒温恒湿室(相対湿度20%、23℃)に健常なヒトを6時間滞在させた際には、顔面部のシワや表面粗さの指標、角層水分量の指標が悪化することが報告されている(非特許文献1、2)。斯様に、たとえ短時間であっても、皮膚が低湿度環境に晒されることは皮膚の乾燥を引き起こし、皮膚表面形状悪化などの美容上、健康上の皮膚トラブルに結び付くと考えられる。
従来の皮膚の乾燥の評価方法としては、プローブを皮膚表面に押し当てて角層水分量(Capacitance値、Conductance値)や経皮水分蒸散量(Trans Epidermal Water Loss;TEWL値)についての客観的数値を取得する方法が挙げられる。また、専用のカメラ付きプローブを用いて皮膚表面形状を数値化したもの(Surface Evaluation of Living Skin;SELS parameters)を取得する方法、印象材を用いて皮膚表面のレプリカを作製し光学装置を用いてシワや表面粗さを数値化する方法や、事前に定めた指標に基づいて専門パネリストが皮膚乾燥の程度を目視評価する方法などが存在する。
また、所見や自覚などに現れる表現型(フェノタイプ)を機器や目視で指標化するだけでなく、生体試料中の核酸やタンパク質発現等の生物学的指標に基づいて皮膚の乾燥状態を評価する方法が報告されており(特許文献1及び非特許文献3)、生物学的指標に基づいた乾燥の評価と抗乾燥技術の提供を高精度かつ効率的に行うことにつながると考えられている。
外用で用いる既存の抗乾燥技術としては、一般に軟膏、クリーム剤、ローション剤などが考えられる。近年、皮膚の表面に形成する繊維層を備える被膜が、使用感に優れながら皮膚からの水分蒸散を適度に抑制し、皮膚健常化用の被膜または荒れ肌改善用の被膜として用いることができることが報告されている(特許文献2)。斯かる被膜について、その皮膚保湿効果を簡便に評価できれば、皮膚状態に応じて適切な被膜を使用でき、早期の皮膚健常化または荒れ肌改善に資することになる。しかしながら、生物学的指標に基づいて、該被膜が持つ皮膚保湿効果を簡便に評価する方法は十分に存在しない。
近年、生体試料中のDNAやRNA等の核酸の解析によりヒトの生体内の現在さらには将来の生理状態を調べる技術が開発されている。生体由来の核酸は、血液等の体液、分泌物、組織等から抽出することができる。さらに最近、皮膚表上脂質(skin surface lipids;SSL)に含まれるRNAを生体の解析用の生物学的指標として利用可能であることが報告されている(特許文献3)。
特開2015-227865号公報 特開2020-90487号公報 国際公開公報第2018/008319号
Tsukahara et al. Skin Res Technol. 13:184-188, 2007. Egawa et al. Skin Res Technol. 8:212-218, 2002. Delattre et al. Exp Dermatol. 21:205-210, 2012.
本発明は、被膜の皮膚保湿効果の評価のためのマーカー、ならびにそれを用いた被膜の皮膚保湿効果の評価方法及び皮膚保湿効果を有する被膜の選択方法を提供することに関する。
本発明は、被験者における被膜の皮膚保湿効果を評価する方法であって、被膜を適用した被験者の皮膚から採取された生体試料について、以下の遺伝子:TTYH3、DOT1L、ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、方法を提供する。
また本発明は、被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜を選択する方法であって、被膜を適用した被験者の皮膚から採取された生体試料について、前記遺伝子及び該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、方法を提供する。
また本発明は、前記遺伝子及び該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、被膜の皮膚保湿効果の評価のためのマーカーを提供する。
本発明の被膜の皮膚保湿効果の評価のためのマーカーは、被膜を適用した被験者における該被膜の皮膚保湿効果を評価するための指標を提供する。該マーカーを用いることで、該被験者における該被膜の皮膚保湿効果を容易に評価することが可能になり、ひいては該被膜が該被験者の皮膚にもたらす保湿状態の正しい把握、及び該被験者の皮膚状態に応じて適した被膜を提供することが可能になる。
被験者の皮膚の対照部位及び被膜適用部位における低湿度環境による刺激前後のCapacitance値の差(ΔCapacitance値)。黒丸は各被験者のΔCapacitance値を表し、同一被験者における対照部位と被膜適用部位の値を実線で結ぶ。白抜きの棒グラフは対照部位及び被膜適用部位のそれぞれにおける全被験者のΔCapacitance値の平均値を表す。
本明細書中で引用された全ての特許文献、非特許文献、及びその他の刊行物は、その全体が本明細書中において参考として援用される。
本明細書において、「核酸」又は「ポリヌクレオチド」と云う用語は、DNA又はRNAを意味する。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれ、「RNA」には、total RNA、mRNA、rRNA、tRNA、non-coding RNA及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
本明細書において「遺伝子」とは、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAの他、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、当該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片を包含するものであって、DNAを構成する塩基の配列情報の中に、何らかの生物学的情報が含まれているものを意味する。
また、本明細書における「遺伝子」には、特定の塩基配列で表される「遺伝子」だけではなく、その同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型等の変異体、及び誘導体が包含される。
本発明において、遺伝子の「発現産物」とは、遺伝子の転写産物及び翻訳産物を包含する概念である。「転写産物」とは、遺伝子(DNA)から転写されて生じるRNAであり、「翻訳産物」とは、RNAに基づき翻訳合成される、遺伝子にコードされたタンパク質を意味する。
本明細書中に開示される遺伝子の名称(Gene Symbol)及びGene IDは、NCBI([www.ncbi.nlm.nih.gov/])に記載のあるOfficial Symbol及びGene IDに従う。
本明細書において、「生体試料」とは、皮膚から採取可能な生体構成物の全てを指し、例えば、細胞、角層、組織(生検等)、体液(血液、組織浸出液等)、汗、皮膚表上脂質(skin surface lipids;SSL)などが挙げられる。好ましくは皮膚表上脂質(SSL)である。
本明細書において、「皮膚表上脂質」とは、皮膚の表上に存在する脂溶性画分をいい、皮脂と呼ばれることもある。一般に、SSLは、皮膚にある皮脂腺等の外分泌腺から分泌された分泌物を主に含み、皮膚表面を覆う薄い層の形で皮膚表上に存在している。
本明細書において、「皮膚」とは、特に限定しない限り、角層、表皮、真皮、毛包、ならびに汗腺、皮脂腺及びその他の腺などの組織を含む領域の総称である。好ましくは、ヒトの皮膚である。
本明細書において、「被膜」とは、皮膚表面を覆う剥離可能なシート状の膜を指し、その皮膚保湿効果の評価を所望する被膜であれば、特に制限されない。被膜は、テープ剤、フィルム、ポリマー、繊維などをシート状に加工した状態で皮膚に適用するものであっても、ポリマー、繊維などを直接皮膚上でシート状に形成して適用するものであってもよい。被膜としては、皮膚上において被膜形成能を有する繊維により形成する堆積物である繊維集合体である被膜が好ましく、このような皮膚上に形成する被膜であって適度な透湿度を有する被膜がより好ましい。適度な透湿度を有する被膜とは、例えば、300~3000g/m2・24hの透湿度を維持可能である被膜が挙げられるが、この限りではない。本明細書における「被膜」は、より好ましくは美容のための材料である。
ここで、被膜の透湿度は、JIS Z2080(1976)法に基づいて測定すればよい。皮膚上に形成する被膜については、皮膚上に形成した被膜の透湿度を直接測定するのではなく、同じ条件で製造した被膜の透湿度を同等のものとして測定すればよい。
本明細書において、「乾燥」とは、乾燥環境、低湿度環境、乾燥状態、低湿度状態、大気の乾燥状態、空気の乾燥状態、空間の乾燥状態などの用語で言い換えることもできる。具体的には、相対湿度が40±5%以下の状態であり、好ましくは30±5%以下、より好ましくは25±5%以下の状態を指す。また、相対湿度は好ましくは気温が23±2℃における相対湿度である。
本明細書において、「皮膚保湿効果」とは、皮膚の角層水分量を維持又は改善する効果とも言い換えることができる。「皮膚保湿効果」は、市販の機器によって測定した角層水分量で評価することができ、該角層水分量としては、例えば、Corneometer(Courage+Khazaha社)により測定したCapacitance値、SKICON(株式会社ヤヨイ)により測定したConductance値で表される角層水分量が挙げられる。好ましくは、本明細書においては、「皮膚保湿効果」はCapacitance値に反映される皮膚保湿効果である。
本明細書において、皮膚保湿効果の「評価」は、検出、検査、測定又は判定などの用語で言い換えることもできる。なお、本明細書における皮膚保湿効果の「評価」、「検出」、「検査」、「測定」又は「判定」という用語は、医師による皮膚保湿効果の診断を含むものではない。
(1.被膜の皮膚保湿効果の評価のためのマーカー)
後述する実施例に示すように、本発明者は、適度な透湿度を有し、水分蒸散を適度に抑制し得ることが公知の被膜を、健常な皮膚状態を有する被験者に乾燥環境下一定期間適用し、被膜適用前後の被膜を適用した部位(被膜適用部位)及び同期間被膜を適用しなかった部位(対照部位)の皮膚の角層水分量の変化量(一定期間経過後のCapacitance値から適用開始前の初期のCapacitance値を減じた値:以下、ΔCapacitance値と称す。)を調べた。その結果、対照部位と比べて被膜適用部位で有意にΔCapacitance値が大きく、被膜適用部位で角層水分量の改善度が大きく、該被膜が皮膚保湿効果を有することが確認された。また、一定期間経過後の被膜適用部位と対照部位から採取されたSSL中のRNA発現解析を行ったところ、対照部位と比較して被膜適用部位において有意に発現量が増加した遺伝子と有意に発現量が低下した遺伝子(両者を合わせて、以下、発現変動遺伝子と称す)が確認された。そして、被膜適用前後の被膜適用部位の皮膚の角層水分量の変化量(ΔCapacitance値)と、被膜適用後に同部位から採取されたSSL中のRNA発現解析を行った結果を比較解析したところ、前記発現変動遺伝子のうち、被膜適用後の被膜適用部位における発現レベルが被膜適用部位のΔCapacitance値と正の相関を示す遺伝子が見出された。さらに、被膜適用後の同一被験者の被膜適用部位と同時期の対照部位の間におけるSSL中のRNA発現レベルの差(同一被験者の被膜適用後の被膜適用部位の発現レベルから同時期の対照部位の発現レベルを減じた値:以下、Δ発現レベルと称す。)と、同一被験者の被膜適用部位と対照部位の間におけるΔCapacitace値の差(同一被験者の被膜適用部位のΔCapacitance値から対照部位のΔCapacitance値を減じた値:以下、ΔΔCapacitance値と称す。)を比較解析したところ、前記発現変動遺伝子のうち、Δ発現レベルの値がΔΔCapacitance値と正の相関又は負の相関を示す遺伝子が見出された。そして、これらの遺伝子から、これまでに皮膚乾燥との関連が報告されていない遺伝子が見出された。このような遺伝子又はその発現産物は、被膜の皮膚保湿効果を反映しており、被膜の皮膚保湿効果を評価するためのマーカーとして使用できる。例えば、該遺伝子又はその発現産物の発現レベルを指標に、被験者における被膜の皮膚保湿効果を評価することや、被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜を選択することが可能となる。
したがって、一態様において本発明は、被膜の皮膚保湿効果を評価するためのマーカーを提供する。一実施形態において、本発明で提供される被膜の皮膚保湿効果を評価するためのマーカー(以下、本発明のマーカーともいう)は、被験者における被膜の皮膚保湿効果の程度を評価するため又は被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜を選択するためのマーカーとして使用できる。
本発明のマーカーは、下記表1Aに示す2遺伝子、表1Bに示す2遺伝子及び表1Cに示す1遺伝子の計5遺伝子、ならびにそれらの発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。以下、表1Aに示す遺伝子及び発現産物をまとめて表1Aのマーカーともいい、表1Bに示す遺伝子及び発現産物をまとめて表1Bのマーカーともいい、表1Cに示す遺伝子及び発現産物をまとめて表1Cのマーカーともいう。本発明のマーカーは、下記表1A、表1B又は表1Cに示す遺伝子であっても、又はその発現産物であっても、それらの組み合わせであってもよい。一実施形態において、本発明のマーカーは、該遺伝子のDNA、その転写産物であるRNA等の核酸マーカーである。別の一実施形態において、本発明のマーカーは、該遺伝子の翻訳産物であるタンパク質マーカーである。好ましくは、本発明のマーカーは核酸マーカーである。
Figure 2023069413000001
表1A、表1B及び表1Cに示される遺伝子は、それ自体又はそれに由来する発現産物が、被膜の皮膚保湿効果を評価するためのマーカーとして機能する限り、NCBIに登録されているヌクレオチド配列からなるものの他、該登録されている配列と実質的に同一の配列からなるものを包含する。ここで、実質的に同一の配列とは、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLASTを用い、期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3の条件にて検索をした場合、当該遺伝子のヌクレオチド配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましく98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性がある配列を意味する。
後述する実施例に示すように、表1Aのマーカーは、被膜適用後の被膜適用部位における発現レベルが、被膜適用前後の被膜適用部位における角層水分量の変化量と正の相関を示した。すなわち、表1Aのマーカーは、被膜適用後の被膜適用部位における発現レベルが、被膜による皮膚の角層水分量の改善度と正の相関を示すポジティブマーカーである。一方、表1Bのマーカーは、同一被験者の被膜適用後の被膜適用部位の発現レベルから同時期の対照部位の発現レベルを減じた値が、同一被験者の被膜適用部位における被膜適用前後の角層水分量の変化量から対照部位における同期間の角層水分量の変化量を減じた値と正の相関を示した。すなわち、表1Bのマーカーは、被膜適用後の被膜適用部位と同時期の対照部位における発現レベルの差(Δ発現レベル)が、被膜による皮膚保湿効果の対照部位に対する優位性の高さ(例えば、ΔΔCapacitance値の大きさ)と正の相関を示すポジティブマーカーである。また、表1Cのマーカーは、同一被験者の被膜適用後の被膜適用部位の発現レベルから同時期の対照部位の発現レベルを減じた値が、同一被験者の被膜適用部位における被膜適用前後の角層水分量の変化量から対照部位における同期間の角層水分量の変化量を減じた値と負の相関を示した。すなわち、表1Cのマーカーは、被膜適用後の被膜適用部位と同時期の対照部位における発現レベルの差(Δ発現レベル)が、被膜による皮膚保湿効果の対照部位に対する優位性の高さ(例えば、ΔΔCapacitance値の大きさ)と負の相関を示すネガティブマーカーである。本発明においては、表1Aのマーカーからなる群、表1Bのマーカーからなる群、表1Cのマーカーからなる群のいずれか一群からマーカーを選択して使用してもよく、又は任意のマーカーを組み合わせて使用してもよい。
好ましい一実施形態において、本発明のマーカーは、被膜の皮膚保湿効果を評価するためのマーカーであり、例えば、被験者における被膜の皮膚保湿効果の程度を評価することができるマーカーである。当該マーカーは、TTYH3及びDOT1L、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
これらのマーカーは、表1Aに含まれるポジティブマーカーである。一定期間の被膜適用後の被験者における被膜適用部位における該ポジティブマーカーの発現レベルは、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果、例えば、被膜適用部位のΔCapacitance値と正の相関を示す。
別の好ましい一実施形態において、本発明のマーカーは、被膜の皮膚保湿効果を評価するためのマーカーであり、例えば、被験者における被膜の皮膚保湿効果の程度を対照部位との比較の観点からどれだけ優れているかを評価することができるマーカーである。当該マーカーは、ZNF160及びNSMAF、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
これらのマーカーは、表1Bに含まれるポジティブマーカーである。一定期間の被膜適用後の被験者における被膜適用部位と同時期の対照部位における該ポジティブマーカーの発現レベルの差(Δ発現レベル)は、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果、例えば、被膜適用部位と対照部位のΔCapacitance値の差(ΔΔCapacitance値)と正の相関を示す。
別の好ましい一実施形態において、本発明のマーカーは、被膜の皮膚保湿効果を評価するためのマーカーであり、例えば、被験者における被膜の皮膚保湿効果の程度を対照部位との比較の観点からどれだけ優れているかを評価することができるマーカーである。当該マーカーは、TMEM164及び該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
これらのマーカーは、表1Cに含まれるネガティブマーカーである。一定期間の被膜適用後の被験者における被膜適用部位と同時期の対照部位における該ネガティブマーカーの発現レベルの差(Δ発現レベル)は、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果、例えば、被膜適用部位と対照部位のΔCapacitance値の差(ΔΔCapacitance値)と負の相関を示す。
本発明のマーカーは、常法により被験者から採取した生体試料から、常法に従って調製することができる。例えば、生体試料からの核酸又はタンパク質の調製には、市販のキットを使用することができる。好ましくは、本発明のマーカーは核酸マーカーであり、生体試料から調製される核酸の好ましい例としては、ゲノムDNA等のDNA、及びmRNA等のRNAなどが挙げられる。
本発明のマーカーを含む生体試料を採取される被験者としては、対象となる被膜の皮膚保湿効果の程度を評価する必要又は希望のある被験者、対照部位に比べた該被膜の皮膚保湿効果の程度を評価する必要又は希望のある被験者、2種類以上の被膜において、いずれの被膜が他の被膜に比べて皮膚保湿効果が優れているかを評価する必要又は希望のある被験者、などが挙げられる。
本発明のマーカーを被験者から採取したSSLから調製する場合、皮膚から採取したSSLから常法に従って調製することができる。例えば、SSLからの核酸又はタンパク質の調製には、市販のキットを使用することができる。好ましくは、本発明のマーカーは、被験者のSSLから調製される核酸又はタンパク質、より好ましくは核酸、さらに好ましくはmRNAである。SSLが採取される皮膚は、SSLを採取し得る動物の皮膚であればよく、ヒトの皮膚が好ましく、健常なヒトの皮膚がより好ましい。SSLが採取される皮膚の部位としては、頭、顔、首、体幹、手足等の身体の任意の部位の皮膚が挙げられ、皮脂の分泌が多い部位、例えば顔の皮膚が好ましい。「被膜適用部位」の皮膚からSSLを採取する場合には、被膜で被覆されていた皮膚の部位から採取すればよい。一方、「対照部位」の皮膚からSSLを採取する場合には、被膜で被覆されていなかった皮膚の部位から採取すればよく、被膜適用部位と被膜の有無以外は同環境下にさらされる部位、例えば身体の正中線に対して左右対称となる部位(例えば被膜適用部位が右頬の場合の左頬など)の皮膚から採取するのが好ましい。
皮膚からのSSLの採取には、皮膚からのSSLの回収又は除去に用いられているあらゆる手段を採用することができる。好ましくは、後述するSSL吸収性素材、SSL接着性素材、又は皮膚からSSLをこすり落とす器具を使用することができる。SSL吸収性素材又はSSL接着性素材としては、SSLに親和性を有する素材であれば特に限定されず、例えばポリプロピレン、パルプ等が挙げられる。皮膚からのSSLの採取手順のより詳細な例としては、あぶら取り紙、あぶら取りフィルム等のシート状素材へSSLを吸収させる方法、ガラス板、テープ等へSSLを接着させる方法、スパーテル、スクレイパー等によりSSLをこすり落として回収する方法、皮膚に適用した被膜がSSLを吸収する素材である場合はその被膜自体から回収する方法、あるいはこれらの方法により回収したSSLを混合する方法、などが挙げられる。SSLの吸着性を向上させるため、脂溶性の高い溶媒を予め含ませたSSL吸収性素材を用いてもよい。一方、SSL吸収性素材は、水溶性の高い溶媒や水分を含んでいるとSSLの吸着が阻害されるため、水溶性の高い溶媒や水分の含有量が少ないことが好ましい。SSL吸収性素材は、乾燥した状態で用いることが好ましい。
採取されたSSLは、直ちに後述の核酸又はタンパク質の抽出工程に用いられてもよく、又は、該核酸又はタンパク質抽出工程に用いるまで保存されてもよい。保存する場合、SSLは、好ましくは低温条件で保存される。SSLの保存の温度条件は、0℃以下であればよく、好ましくは-20±20℃~-80±20℃、より好ましくは-20±10℃~-80±10℃、さらに好ましくは-20±20℃~-40±20℃、さらに好ましくは-20±10℃~-40±10℃、さらに好ましくは-20±10℃、さらに好ましくは-20±5℃である。SSLの保存の期間は、特に限定されないが、好ましくは12ヶ月以下、例えば6時間以上12ヶ月以下、より好ましくは6ヶ月以下、例えば1日間以上6ヶ月以下、さらに好ましくは3ヶ月以下、例えば3日間以上3ヶ月以下である。
採取したSSLからの核酸又はタンパク質の抽出には、生体試料からの核酸又はタンパク質の抽出又は精製に通常使用される方法を使用することができる。核酸の抽出又は精製方法の例としては、フェノール/クロロホルム法、AGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法、又はTRIzol(登録商標)、RNeasy(登録商標)、QIAzol(登録商標)などのカラムを用いた方法、シリカをコーティングした特殊な磁性体粒子を用いる方法、Solid Phase Reversible Immobilization磁性体粒子を用いる方法、ISOGEN等の市販のRNA抽出試薬による抽出、などが挙げられる。タンパク質の抽出又は精製には、QIAzol Lysis Reagent(Qiagen)等の市販のタンパク質抽出試薬を用いることができる。
(2.被験者における被膜の皮膚保湿効果の評価方法)
別の一態様において、本発明は、上記1.で説明した本発明のマーカーを用いた、被験者における被膜の皮膚保湿効果の評価方法を提供する。本発明による被験者における被膜の皮膚保湿効果の評価方法(以下、本発明の方法という)では、被膜を適用した被験者の皮膚における本発明のマーカーの発現レベルに基づいて、該被膜の被験者における皮膚保湿効果を評価する。一実施形態において、本発明の方法では、本発明のマーカーの発現レベルを指標に、被験者における被膜の皮膚保湿効果の程度を評価する。また別の一実施形態において、本発明のマーカーの発現レベルを指標に、被験者により適した皮膚保湿効果を有する被膜を選択する。
被験者の皮膚に被膜を適用する手法としては、実環境を考慮し、皮膚に被膜を貼付すること、被膜を構成する材料を直接皮膚にエレクトロスピニング装置、エアゾール容器、蓄圧式トリガースプレー容器などを用いて吐出することにより被膜を形成すること、などが挙げられる。このうち、直接皮膚に被膜を形成する手法が好ましい。
皮膚に対する被膜の適用サイズは、被膜適用部位から本発明のマーカーの発現レベルを測定するのに必要な生体試料が採取可能な適用サイズであれば特に限定されないが、生体試料がSSLの場合、好ましくは1~250cm2であり、より好ましくは2~150cm2である。
一実施形態において、本発明の方法は、被験者の皮膚に被膜を一定期間適用することをさらに含んでいてもよい。被膜の適用手順は、上述したとおりであり、皮膚に貼付された又は皮膚に形成された被膜が皮膚から剥離しないように皮膚上に一定期間維持されればよい。該一定期間は、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは3時間以上であり、また、好ましくは48時間以下であり、より好ましくは24時間以下であり、さらに好ましくは12時間以下である。また、好ましくは1~48時間であり、より好ましくは3~24時間であり、さらに好ましくは3~12時間である。続いて、該被膜を剥離し、その後に皮膚から採取した生体試料(例えば、該生体試料がSSLである場合には適用時間に蓄積した全てのSSLの混合物、適用時間終了後に採取したSSLなど)における本発明のマーカーの発現レベルを測定すればよい。
本発明の方法において、被膜を皮膚に適用する際の周囲環境は、特に限定されないが乾燥条件下であることが好ましい。乾燥条件とは、例えば、温度23±2℃における相対湿度が40±5%以下の状態であり、好ましくは30±5%以下、より好ましくは25±5%以下の状態を指す。
(2.1 マーカー発現の解析)
本発明の方法で用いる皮膚は、上述した本発明のマーカーを含む生体試料を採取される被験者の皮膚と同様である。好ましい実施形態において、本発明の方法は、被膜を適用した皮膚から採取した生体試料における本発明のマーカーの発現レベルを測定することを含む。一実施形態において、本発明の方法は、該皮膚から生体試料を採取することをさらに含んでいてもよい。生体試料の採取手順、及び生体試料からのマーカーの抽出手順は、上述したとおりである。
本発明のマーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられる核酸又はタンパク質の定量法に従って、測定することができる。測定されるマーカーの発現レベルは、生体試料中の該標的マーカーの絶対量に基づく発現レベルであっても、他の標準物質や、全核酸又は全タンパク質の発現レベルに対する相対発現レベルであってもよい。
例えば、核酸マーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられる遺伝子発現解析の手順に従って測定すればよい。遺伝子発現解析の手法の例としては、PCR、マルチプレックスPCR、リアルタイムPCR、ハイブリダイゼーション(DNAチップ、DNAマイクロアレイ、ドットブロットハイブリダイゼーション、スロットブロットハイブリダイゼーション、ノーザンブロットハイブリダイゼーション等)、シーケンシング、クロマトグラフィーなどの核酸又はその増幅産物を定量する方法が挙げられる。核酸がRNAの場合は、RNAを逆転写によりcDNAに変換した後、上記方法で定量することが好ましい。
タンパク質マーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられるタンパク質定量法、例えば免疫測定法(例えば、ウェスタンブロット、ELISA、免疫染色等)、蛍光法、電気泳動、プロテインチップ、クロマトグラフィー、質量分析(例えば、LC-MS/MS、MALDI-TOF/MS)、1-ハイブリッド法(PNAS 100, 12271-12276(2003))、2-ハイブリッド法(Biol. Reprod. 58, 302-311 (1998))などを用いて測定することができる。あるいは、本発明のマーカーである核酸又はタンパク質と相互作用する分子を測定することで、本発明のマーカーの発現レベルを測定してもよい。本発明のマーカーと相互作用する分子としては、DNA、RNA、タンパク質、多糖、オリゴ糖、単糖、脂質、脂肪酸、及びこれらのリン酸化物、アルキル化物、糖付加物等、及び上記いずれかの複合体が挙げられる。
好ましくは、本発明の方法で使用されるマーカーは、SSL由来RNAである。この場合には、SSLに含まれるRNAの発現レベルが測定される。好ましくは、SSLから抽出したRNAを逆転写によりcDNAに変換した後、該cDNA又はその増幅産物を上記の手法で定量することで、該SSL由来RNAの発現レベルが測定される。
RNAの逆転写には、解析したい特定のRNAを標的としたプライマーを用いてもよいが、より包括的な核酸の保存及び解析のためにはランダムプライマーを用いることが好ましい。該逆転写には、一般的な逆転写酵素又は逆転写試薬キットを使用することができる。好適には、正確性及び効率性の高い逆転写酵素又は逆転写試薬キットが用いられ、その例としては、M-MLV Reverse Transcriptase及びその改変体、あるいは市販の逆転写酵素又は逆転写試薬キット、例えばPrimeScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(タカラバイオ社)、SuperScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(Thermo Scientific社)等が挙げられる。SuperScript(登録商標)III Reverse Transcriptase、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(いずれもThermo Scientific社)等が挙げられる。
該逆転写における伸長反応では、温度を好ましくは42℃±1℃、より好ましくは42℃±0.5℃、さらに好ましくは42℃±0.25℃に調整し、一方、反応時間を好ましくは60分間以上、より好ましくは80~120分間に調整することが好ましい。
PCRを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、必要に応じて生体試料由来のRNAをcDNAに逆転写した後、プライマーペアを用いて該生体試料由来のDNAを増幅する。PCRでは、解析したい特定のDNAを標的としたプライマーペアを用いて該特定の1種のDNAのみを増幅してもよいが、複数のプライマーペアを用いて同時に複数の特定のDNAを増幅してもよい。好ましくは、該PCRはマルチプレックスPCRである。マルチプレックスPCRは、PCR反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで、複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法である。マルチプレックスPCRは、市販のキット(例えば、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit;ライフテクノロジーズジャパン株式会社等)を用いて実施することができる。
該PCRにおけるアニーリング及び伸長反応の温度は、使用するプライマーに依存するため一概には言えないが、上記のマルチプレックスPCRキットを用いる場合、好ましくは62℃±1℃、より好ましくは62℃±0.5℃、さらに好ましくは62℃±0.25℃である。したがって、該PCRでは、好ましくはアニーリング及び伸長反応が1ステップで行われる。該アニーリング及び伸長反応のステップの時間は、増幅すべきDNAのサイズ等に依存して調整され得るが、好ましくは14~18分間である。該PCRにおける変性反応の条件は、増幅すべきDNAに依存して調整され得るが、好ましくは95~99℃で10~60秒間である。上記のような温度及び時間での逆転写及びPCRは、一般的にPCRに使用されるサーマルサイクラーを用いて実行することができる。
当該PCRで得られた反応産物の精製は、反応産物のサイズ分離によって行われることが好ましい。サイズ分離により、目的のPCR反応産物を、PCR反応液中に含まれるプライマーやその他の不純物から分離することができる。DNAのサイズ分離は、例えば、サイズ分離カラムや、サイズ分離チップ、サイズ分離に利用可能な磁気ビーズ等によって行うことができる。サイズ分離に利用可能な磁気ビーズの好ましい例としては、Ampure XP等のSolid Phase Reversible Immobilization(SPRI)磁性ビーズが挙げられる。
精製したPCR反応産物に対して、その後の定量解析を行うために必要なさらなる処理を施してもよい。例えば、DNAのシーケンシングのために、精製したPCR反応産物を、適切なバッファー溶液へと調製したり、PCR増幅されたDNAに含まれるPCRプライマー領域を切断したり、増幅されたDNAにアダプター配列をさらに付加したりしてもよい。例えば、精製したPCR反応産物をバッファー溶液へと調製し、増幅DNAに対してPCRプライマー配列の除去及びアダプターライゲーションを行い、得られた反応産物を、必要に応じて増幅して、定量解析のためのライブラリーを調製することができる。これらの操作は、例えば、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×VILO RT Reaction Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×Ion AmpliSeq HiFi Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Core Panelを用いて、各キット付属のプロトコルに従って行うことができる。
リアルタイムPCRを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、必要に応じて生体試料由来のRNAをcDNAに逆転写した後、予め放射性同位元素(RI)、蛍光物質等で標識しておいたプライマーを用いてPCRを行い、産生される標識二本鎖DNAを検出、定量する。
ノーザンブロットハイブリダイゼーションを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、例えば、常法に従ってメンブレン上に生体試料由来のRNAをトランスファーし、次いでRI、蛍光物質等で標識したプローブDNAを該RNAにハイブリダイズさせる。形成された標識プローブDNAとRNAとの二重鎖から該標識に由来するシグナルを検出することにより、核酸マーカーの発現レベルを測定することができる。
DNAマイクロアレイを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、例えば、支持体上に標的の核酸マーカーに特異的にハイブリダイズする核酸(cDNA又はDNA)を固定化したマイクロアレイを用いる。生体試料から調製した核酸(cDNA又はcRNA)をマイクロアレイ上に結合させ、マイクロアレイ上の標識を検出することによって、生体試料中の核酸マーカーの発現レベルを測定することができる。
前記マイクロアレイに固定化される核酸としては、ストリンジェントな条件下に標的の核酸マーカーに特異的(すなわち、実質的に標的の核酸マーカーのみに)にハイブリダイズする核酸であればよく、本発明の核酸マーカーの全配列を有する核酸であっても、部分配列からなる核酸であってもよい。該「部分配列」としては、少なくとも15~25塩基からなる核酸が挙げられる。ここでストリンジェントな条件としては、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の洗浄条件、好ましくは「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度の条件、さらに好ましくは「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の条件を挙げることができる。ストリンジェントなハイブリダイズ条件は、例えばJ. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載されている。
シーケンシングを用いて核酸マーカーの発現レベルを測定する場合、好ましくは次世代シーケンサー(例えばIon S5/XLシステム、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いることができる。シーケンシングで作成されたリードの数(リードカウント)に基づいて、DNA又はRNAの発現レベルを測定することができる。
シーケンシングにより複数の核酸マーカーの発現レベルを測定する場合は、上記したリードカウントを発現レベルのデータとして用いることができる。あるいは、該リードカウントにおけるサンプル間の総リード数の違いを補正した、該リードカウントのRPM(Reads per million mapped reads)値、該RPM値の対数値(Log2RPM値、又はLog2(RPM+1)値)、DESeq2(Love MI et al., Genome Biol, 2014)を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)又はその対数値(Log2(Normalized count+1)値)、などを発現レベルのデータとして用いることができる。あるいは、発現レベルのデータとして、RNA-seqの定量値として一般的な、Fragments per kilobase of exon per million reads mapped (FPKM)、reads per kilobase of exon per million reads mapped (RPKM)、transcripts per million (TPM)などを用いることができる。
核酸マーカーの測定に用いられるプローブ又はプライマーは、例えば、本発明の核酸マーカーを特異的に増幅するためのプライマー、又は該核酸マーカーを特異的に検出するためのプローブであり得る。ここで「特異的」とは、例えばノーザンブロット法において、実質的に本発明のマーカーのみが検出されること、又はPCRにおいて、実質的に本発明のマーカーのみが増幅されることなど、実質的に本発明のマーカーに由来する生成物又は検出物が生成するように核酸を認識又は検出できることを意味する。これらのプローブ又はプライマーは、該核酸マーカーのヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。
該プローブ又はプライマーの具体的な例としては、本発明の核酸マーカーの全配列又は部分配列からなるオリゴヌクレオチド又はその相補鎖を利用することができる。該「相補鎖」とは、標的マーカーを特異的に認識する限り、完全に相補的な配列に限られず、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは99%以上の配列同一性を有する配列であればよい。配列の同一性は、上述したNCBI BLAST等のアルゴリズムにより決定することができる。
該核酸マーカーの測定に用いられるプライマーの例としては、標的の核酸マーカーに対して特異的なアニーリング及び鎖伸長ができるものであって、好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、さらに好ましくは20塩基以上、かつ好ましくは100塩基以下、より好ましくは50塩基以下、さらに好ましくは35塩基以下の鎖長を有するものが挙げられる。
該核酸マーカーの測定に用いられるプローブの例としては、標的の核酸マーカーに対して特異的なハイブリダイゼーションができるものであって、好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、かつ好ましくは100塩基以下、より好ましくは50塩基以下、さらに好ましくは25塩基以下の鎖長を有するものが挙げられる。
該プローブ又はプライマーは、DNAあるいはRNAであることができ、合成されたものでも天然のものでもよい。ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、通常、標識したものが用いられる。
免疫測定法を用いてタンパク質マーカーの発現レベルを測定する場合、例えば、該タンパク質マーカーに対する抗体を生体試料と接触させ、該抗体に結合したタンパク質マーカーを定量すればよい。例えば、ウェスタンブロットでは、該タンパク質マーカーに対する一次抗体を用いた後、RI、蛍光物質、酵素等で標識した二次抗体を用いて該一次抗体を標識し、次いで該標識由来のシグナルを測定することで該タンパク質マーカーの発現レベルを測定することができる。該タンパク質マーカーに対する抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。これらの抗体は、公知の方法に従って製造することができる。
(2.2 マーカーの発現レベルに基づく被膜の皮膚保湿効果の評価)
本発明の方法の一実施形態においては、被膜を適用した被験者の皮膚に由来する本発明のマーカー(該皮膚から採取した生体試料中に含まれる本発明のマーカー)の発現レベルに基づいて、該被験者における該被膜の皮膚保湿効果を評価する。
上述したように、表1Aのマーカーは、被膜適用後の被膜適用部位における発現レベルが被膜の皮膚保湿効果に応じて変動するマーカーである。より詳細には、表1Aのマーカーは、被膜適用後の被膜適用部位における発現レベルが、被膜の皮膚保湿効果と正の相関を示す、ポジティブマーカーである。したがって、好ましい一実施形態において、該ポジティブマーカーの発現レベルを指標として、被験者における被膜の皮膚保湿効果を評価することができる。
本実施形態の好ましい一例において、本発明の方法で評価される被膜の皮膚保湿効果は、被膜が皮膚にもたらす保湿効果であり、例えば、Capacitance値に反映される皮膚保湿効果である。本評価に使用されるマーカーは、上述した被膜の皮膚保湿効果の評価のためのマーカー、例えば、Capacitance値に反映される皮膚保湿効果を評価することができるマーカーである。これらのマーカーはポジティブマーカーであり、被膜適用後の被膜適用部位におけるその発現レベルは、被膜の皮膚保湿効果、例えば被膜適用部位のΔCapacitance値と正の相関を示す。該マーカーの発現レベルを指標として、被験者における被膜の皮膚保湿効果の程度を評価することができる。
本実施形態においては、被膜適用後の被膜適用部位の被験者の皮膚から採取した生体試料における、該ポジティブマーカーから選択される1種以上のマーカーを、上述した評価の指標として用いる標的マーカーとすることができる。該ポジティブマーカーは、上述したように、被膜適用部位のΔCapacitance値に相関するマーカーである。本実施形態においては、被膜適用部位のΔCapacitance値に相関する少なくとも1種のマーカーを標的マーカーとして用いればよい。本発明の方法においては、該ポジティブマーカーのいずれか1種を標的マーカーとして用いてもよく、又は、該ポジティブマーカーから選択される2種以上を組み合わせて標的マーカーとして用いてもよい。
一実施形態においては、皮膚保湿効果の評価の対象である被膜を適用した被験者の皮膚の被膜適用後の被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料について標的マーカーの発現レベルを測定し、測定した標的マーカーの発現レベルを、予め設定した基準値と比較することによって、該被験者における該被膜の皮膚保湿効果の程度を評価することができる。
一例において、該基準値は、皮膚保湿効果を有することが公知である被膜の皮膚保湿効果の程度(従来の皮膚保湿効果の評価に基づいて分類された皮膚保湿効果のレベルまたは皮膚保湿効果に係るスコア値)、例えば被膜適用前後の被膜適用部位の角層水分量の変化量(ΔCapacitance値)と標的マーカーの発現レベルの関係に基づき、予め決定することができる。例えば、任意の集団に対して、皮膚保湿効果を有することが公知の被膜を一定期間適用し、被膜適用前後の被膜適用部位の角層水分量の変化量(ΔCapacitance値)を測定し、被膜の皮膚保湿効果の程度が異なる2以上の複数の群に分け、適用後の各群における被膜適用部位の標的マーカーの発現レベルの統計値(例えば平均値)に基いて、それぞれの群への属否を判別する基準値を設定することができる。基準値の算出に用いられる群の例としては、前記測定したΔCapacitance値などに基づく、被膜の皮膚保湿効果が軽度の群(軽度群)、中等度の群(中等度群)、高度の群(高度群)などが挙げられる。また対照として、被膜の皮膚保湿効果が無い群を設けてもよい。該集団としては、健常者の集団が好ましい。
標的マーカーとして複数種のマーカーを用いる場合は、各々のマーカーについて基準値を求めることが好ましい。
本実施形態において、標的マーカーはポジティブマーカーであることから、その発現レベルがより高い発現レベルであるほど、被験者における被膜の皮膚保湿効果はより高いと評価される。一方、その発現レベルがより低い発現レベルであるほど、被験者における被膜の保湿効果はより低いと評価される。さらに、本発明の方法を繰り返し用いて、2種以上の被膜について、それぞれを同一被験者に適用した場合の被膜適用部位における標的マーカーの発現レベルを比較することで、それら被膜間で該被験者における皮膚保湿効果の高低を評価することができ、標的マーカーの発現レベルが高い被膜ほど、該被験者における皮膚保湿効果がより高いと評価される。該標的マーカーは、複数の被膜の皮膚保湿効果の相対評価に有用である。
上述したように、表1B及び表1Cのマーカーは、同一被験者の被膜適用後の被膜適用部位の発現レベルから同時期の対照部位の発現レベルを減じた値(Δ発現レベル)が、被膜の皮膚保湿効果の対照部位に比べた優位性の高さに応じて変動するマーカーである。より詳細には、表1Bのマーカーは、Δ発現レベルが被膜の皮膚保湿効果の対照部位に比べた優位性と正の相関を示す、ポジティブマーカーであり、一方、表1Cのマーカーは、Δ発現レベルが被膜の皮膚保湿効果の対照部位に比べた優位性と負の相関を示す、ネガティブマーカーである。したがって、別の好ましい一実施形態において、該ポジティブマーカー又は該ネガティブマーカーのΔ発現レベルを指標として、被験者における被膜の皮膚保湿効果の程度(対照部位に比べた被膜適用部位における皮膚保湿効果の優位性の高さの程度)を評価することができる。すなわち、該ポジティブマーカーの発現レベルの差(Δ発現レベル)を指標とする場合、該Δ発現レベルの値が大きいほど、被験者における被膜の皮膚保湿効果は高いと評価される。一方、該ネガティブマーカーの発現レベルの差(Δ発現レベル)を指標とする場合、該Δ発現レベルの値が小さいほど、被験者における被膜の皮膚保湿効果は高いと評価される。
本実施形態の好ましい一例において、本発明の方法で評価される被膜の皮膚保湿効果は、被膜が被験者の皮膚にもたらす保湿効果であり、例えば、対照部位におけるCapacitance値の変動の影響を排除した被膜適用部位におけるCapacitance値に反映される皮膚保湿効果である。本評価に使用されるマーカーは、上述した被膜の皮膚保湿効果の評価のためのマーカー、例えば、対照部位におけるCapacitance値の変動の影響を排除した被膜適用部位におけるCapacitance値(具体的には被膜適用部位と対照部位のΔCapacitance値の差であるΔΔCapacitance値)に反映される皮膚保湿効果を評価することができるマーカーである。これらのマーカーはポジティブマーカー又はネガティブマーカーであり、そのΔ発現レベルは、被膜の皮膚保湿効果、例えばΔΔCapacitance値と正の相関又は負の相関を示す。該マーカーのΔ発現レベルを指標として、被験者における被膜の皮膚保湿効果の程度を評価することができる。
本実施形態においては、被膜適用後の被膜適用部位及び同時期の対照部位の皮膚から採取した生体試料における、該ポジティブマーカー及び該ネガティブマーカーから選択される1種以上のマーカーを、上述した評価の指標として用いる標的マーカーとすることができる。該ポジティブマーカー及び該ネガティブマーカーは、上述したように、ΔΔCapacitance値に相関するマーカーである。本実施形態においては、ΔΔCapacitance値に相関する少なくとも1種のマーカーを標的マーカーとして用いればよく、2種以上を組み合わせて標的マーカーとして用いてもよい。本発明の方法においては、該ポジティブマーカーと該ネガティブマーカーのいずれか1種を標的マーカーとして用いてもよく、又は、該ポジティブマーカー及び該ネガティブマーカーから選択される2種以上を組み合わせて標的マーカーとして用いてもよい。
一実施形態においては、皮膚保湿効果の評価の対象である被膜を適用した被験者の皮膚の被膜適用後の被膜適用部位及び同時期の対照部位の皮膚から採取された生体試料について標的マーカーの発現レベルを測定し、測定した標的マーカーのΔ発現レベルを、予め設定した基準値と比較することによって、該被験者における該被膜の皮膚保湿効果の程度を評価することができる。
一例において、該基準値は、皮膚保湿効果を有することが公知である被膜の対照部位に対する相対的な皮膚保湿効果の程度(従来の皮膚保湿効果の評価に基づく対照部位と比較した皮膚保湿効果のレベルまたは皮膚保湿効果に係るスコア値)、例えば被膜適用前後の被膜適用部位の皮膚の角層水分量の変化量と同期間の対照部位の皮膚の角層水分量の変化量の差(ΔΔCapacitance値)と標的マーカーのΔ発現レベルの関係に基づき、予め決定することができる。例えば、任意の集団に対して、皮膚保湿効果を有することが公知の被膜を一定期間適用し、被膜適用前後の被膜適用部位の角層水分量の変化量と同期間の対照部位の角層水分量の変化量の間の差(ΔΔCapacitance値など)を測定し、対照部位に対する被膜適用部位における被膜の皮膚保湿効果の優位性の高さの程度が異なる2以上の複数の群に分け、各群それぞれにおける被膜適用後の被膜適用部位の標的マーカーの発現レベルと同時期の対照部位の標的マーカーの発現レベルの差(Δ発現レベル)の統計値(例えば平均値)を参考に、それぞれの群への属否を判別する基準値を設定することができる。基準値の算出に用いられる群の例としては、前記測定したΔΔCapacitance値などに基づく、対照部位に対する被膜の皮膚保湿効果の優位性が軽度の群(軽度群)、中等度の群(中等度群)、高度の群(高度群)などが挙げられる。対照として、対照部位に対する被膜の皮膚保湿効果の優位性が無い群を含めてもよい。該集団としては、健常者の集団が好ましい。
標的マーカーとして複数種のマーカーを用いる場合は、各々のマーカーについて基準値を求めることが好ましい。
本実施形態において、標的マーカーとしてポジティブマーカーを用いる場合、そのΔ発現レベルの値がより大きいほど、被験者における被膜の皮膚保湿効果はより高いと評価される。また、本発明の方法を繰り返し用いて、2種以上の被膜について、それぞれを同一被験者に適用した場合の標的マーカーの被膜適用後の被膜適用部位と同時期の対照部位間の発現レベル差(Δ発現レベル)の値を比較することで、それら被膜間で該被験者における皮膚保湿効果の高低を評価することができ、標的マーカーのΔ発現レベルの値がより大きい被膜ほど、該被験者における皮膚保湿効果がより高いと評価される。一方、標的マーカーとしてネガティブマーカーを用いる場合、そのΔ発現レベルの値がより小さいほど、被膜の皮膚保湿効果はより高いと評価される。また、本発明の方法を繰り返し用いて、2種以上の被膜について、それぞれを同一被験者に適用した場合の標的マーカーの被膜適用後の被膜適用部位と同時期の対照部位間の発現レベル差(Δ発現レベル)の値を比較することで、それら被膜間で該被験者における皮膚保湿効果の高低を評価することができ、標的マーカーのΔ発現レベルの値がより小さい被膜ほど、該被験者における皮膚保湿効果がより高いと評価される。該標的マーカーは、複数の被膜の皮膚保湿効果の相対評価に有用である。
基準値の設定、及び該基準値に基づく被膜の皮膚保湿効果の評価の具体的手法は、当業者の技術常識に従って適宜実施することができる。
本発明の方法の一実施形態においては、本発明のマーカーの発現レベルが、基準値に対して好ましくは99%以下、より好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下であれば、該マーカーの発現レベルは基準値より低いと判断され得、本発明のマーカーの発現レベルが、基準値に対して好ましくは101%以上、より好ましくは105%以上、さらに好ましくは110%以上であれば、該マーカーの発現レベルは基準値より高いと判断され得る。あるいは、被験者由来のマーカーの発現レベルと基準値との差異は、例えば両者が統計学的に有意に異なるか否かによって判断することができる。標的マーカーとして複数のマーカーを用いる場合には、個々の標的マーカーの発現レベルを基準値と比較し、一定割合、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%のマーカーの発現レベルが基準値と異なるか否かを調べることで、被膜の皮膚保湿効果を評価することができる。
(2.3 マーカーの発現レベルに基づく、被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜の選択)
本発明の被膜の皮膚保湿効果の評価方法においては、上述のとおり、本発明のマーカーの発現レベルを指標として、被験者における被膜の皮膚保湿効果を評価する。
一例として、表1Aのマーカーの発現レベルを指標とする場合、被膜適用後の被験者の被膜適用部位の発現レベルを指標として、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果の程度が評価される。そして目的とする皮膚保湿効果の水準を予め設定しておき、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果の程度が該水準以上である場合は、該被膜を該被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜として選択することができる。あるいは、被膜適用後の被験者の被膜適用部位の発現レベルが、別の被膜適用後の同被験者の被膜適用部位の発現レベルと比較して高ければ、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果はより高いと評価され、該被膜を該被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜として選択することができる。
別の一例として、表1Bのマーカーの発現レベルを指標とする場合、被膜適用後の被験者の被膜適用部位と同時期の対照部位の発現レベルの差(Δ発現レベル)の値を指標として、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果の程度が評価される。そして目的とする皮膚保湿効果の水準を予め設定しておき、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果の程度が該水準以上である場合は、該被膜を該被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜として選択することができる。あるいは、被膜適用後の被験者の被膜適用部位と同時期の対照部位の発現レベルの差(Δ発現レベル)の値が、別の被膜適用後の同被験者のΔ発現レベルの値と比較して大きければ、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果はより高いと評価され、該被膜を該被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜として選択することができる。
別の一例として、表1Cのマーカーの発現レベルを指標とする場合、被膜適用後の被験者の被膜適用部位と同時期の対照部位の発現レベルの差(Δ発現レベル)の値を指標として、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果の程度が評価される。そして目的とする皮膚保湿効果の水準を予め設定しておき、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果の程度が該水準以上である場合は、該被膜を該被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜として選択することができる。あるいは、被膜適用後の被験者の被膜適用部位と同時期の対照部位のΔ発現レベルの値が、別の被膜適用後の同被験者のΔ発現レベルの値と比較して小さければ、該被膜の該被験者における皮膚保湿効果はより高いと評価され、該被膜を該被験者に適した皮膚保湿効果がより高い被膜として選択することができる。
(3.被膜の皮膚保湿効果の評価キット)
さらなる一態様において、本発明は、上記2.で説明した本発明の方法に従って被膜の皮膚保湿効果を評価するためのキットを提供する。一実施形態において、本発明のキットは、上述した本発明のマーカーの発現レベルを測定するための試薬又は器具を備える。例えば、本発明のキットは、本発明の核酸マーカーを増幅又は定量するための試薬(例えば、逆転写酵素、PCR用試薬、プライマー、プローブ、シーケンシング用アダプター配列等)、又は本発明のタンパク質マーカーを定量するための試薬(例えば、免疫学的測定のための試薬、抗体など)を備え得る。好ましくは、本発明のキットは、本発明の核酸マーカーと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(例えば、PCR用のプライマー、又はプローブ)、あるいは、本発明のタンパク質マーカーを認識する抗体を含有する。好ましくは、本発明のキットは、本発明のマーカーの発現レベルを評価するための指標又はガイダンスを備える。例えば、本発明のキットは、被膜の皮膚保湿効果の評価のために各マーカーの発現レベルの基準値を説明するガイダンスなどを備え得る。また本発明のキットは、生体試料採取デバイス(例えば、上記のSSL吸収性素材又はSSL接着性素材)、生体試料から本発明のマーカーを抽出するための試薬(例えば核酸精製用試薬)、生体試料採取後の試料採取デバイスの保存剤や保存用容器などをさらに備えていてもよい。
本発明の例示的実施形態として、以下の物質、製造方法、用途、方法等をさらに本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕被験者における被膜の皮膚保湿効果を評価する方法であって、被膜を適用した被験者の皮膚から採取された生体試料について、以下の遺伝子:TTYH3、DOT1L、ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、方法。
〔2〕被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜を選択する方法であって、被膜を適用した被験者の皮膚から採取された生体試料について、以下の遺伝子:TTYH3、DOT1L、ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、方法。
〔3〕前記遺伝子又は発現産物が以下の遺伝子:TTYH3及びDOT1L、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔4〕前記被験者の皮膚に前記被膜を一定期間適用すること、及び
該期間経過後、被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料について、以下の遺伝子:TTYH3及びDOT1L、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定すること、
を含む、〔3〕記載の方法。
〔5〕前記遺伝子又は発現産物の発現レベルに基づいて前記被膜の皮膚保湿効果を評価することをさらに含む、〔4〕記載の方法。
〔6〕前記遺伝子又は発現産物の発現レベルが高いほど、前記被膜の前記被験者における皮膚保湿効果は高いと評価される、〔5〕記載の方法。
〔7〕前記遺伝子又は発現産物の発現レベルを基準値と比較することをさらに含む、〔4〕記載の方法。
〔8〕前記遺伝子又は発現産物が以下の遺伝子:ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔9〕前記被験者の皮膚に前記被膜を一定期間適用すること、及び
該期間経過後、被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料及び対照部位の皮膚から採取された生体試料について、以下の遺伝子:ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定すること、
を含む、〔8〕記載の方法。
〔10〕前記遺伝子又は発現産物の発現レベルに基づいて前記被膜の皮膚保湿効果を評価することをさらに含む、〔9〕記載の方法。
〔11〕前記遺伝子又は発現産物が以下の遺伝子:ZNF160及びNSMAF、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料における該遺伝子又は発現産物の発現レベルと前記対照部位の皮膚から採取された生体試料における該遺伝子又は発現産物の発現レベルの差(Δ発現レベル)の値が大きいほど、前記被膜の前記被験者における皮膚保湿効果は高いと評価される、〔10〕記載の方法。
〔12〕前記遺伝子又は発現産物が以下の遺伝子:TMEM164、及び該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料における該遺伝子又は発現産物の発現レベルと前記対照部位の皮膚から採取された生体試料における該遺伝子又は発現産物の発現レベルの差(Δ発現レベル)の値が小さいほど、前記被膜の皮膚保湿効果は高いと評価される、〔10〕記載の方法。
〔13〕前記被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料における前記遺伝子又は発現産物の発現レベルと前記対照部位の皮膚から採取された生体試料における前記遺伝子又は発現産物の発現レベルの差(Δ発現レベル)の値を基準値と比較することをさらに含む、〔9〕記載の方法。
〔14〕前記生体試料が皮膚表上脂質である、〔1〕~〔13〕のいずれか1項記載の方法。
〔15〕前記被膜が、乾燥条件下で前記被験者の皮膚に適用される、〔1〕~〔14〕のいずれか1項記載の方法。
〔16〕前記被膜が、前記被験者の皮膚に好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、また、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下、あるいは、好ましくは1~48時間、より好ましくは3~24時間、さらに好ましくは3時間~12時間適用される、〔1〕~〔15〕のいずれか1項記載の方法。
〔17〕前記皮膚保湿効果が角層水分量を維持又は改善するものである、〔1〕~〔16〕のいずれか1項記載の方法。
〔18〕前記遺伝子又は発現産物の発現レベルがmRNAの発現レベルである、〔1〕~〔17〕のいずれか1項記載の方法。
〔19〕以下の遺伝子:TTYH3、DOT1L、ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、被膜の皮膚保湿効果の評価のためのマーカー。
〔20〕TTYH3及びDOT1L、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔19〕記載のマーカー。
〔21〕核酸マーカーである、〔19〕又は〔20〕記載のマーカー。
〔22〕前記核酸がmRNAである、〔21〕記載のマーカー。
〔23〕〔19〕又は〔20〕記載のマーカーである核酸と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は〔19〕又は〔20〕記載のマーカーであるタンパク質を認識する抗体を含有する、〔1〕~〔18〕のいずれか1項記載の方法に用いられる被膜の皮膚保湿効果を評価するためのキット。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 SSL由来RNAを用いた、被膜が持つ保湿効果の評価マーカーの探索
1)被膜形成のための繊維用組成物の調製
被膜形成のための各成分を、表2に示す量となるようにガラス容器に測り取り、マグネチックスターラーを用いて常温にて12時間程度撹拌し、均一透明な溶液を得た。これを繊維用組成物、本実施例においてはエレクトロスピニング用組成物として、以下に示す条件でエレクトロスピニング法により繊維の堆積層を形成した。
Figure 2023069413000002
2)被膜の適用前の角層水分量測定
健常な皮膚状態を有する成人14名(22~56歳、女性)を被験者とした。各被験者は恒温恒湿室1(相対湿度50±5%、23±2℃)に入室し、洗顔を行った。30分の馴化ののち、各被験者は恒温恒湿室2(相対湿度20±5%、23±2℃)へ移動し、その直後に、Corneometer(CM825、Courage+Khazaha社)を用いて左右それぞれの頬の角層水分量(Capacitance値)の測定を受けた。
3)エレクトロスピニングによる被膜(繊維集合体)の適用
次に、右半顔のみ(額及び頬)に、エレクトロスピニング装置を用いた以下の条件で繊維集合体からなる被膜を皮膚上に形成させ適用した(前述の特許文献2を参照)。なお、以下においては、被膜を適用していない左半顔又は左頬を対照部位、被膜を適用した右半顔又は右頬を被膜適用部位とも称する。
・印加電圧:10kV
・ノズルと皮膚との距離:100mm
・吐出時間:45sec
・エレクトロスピニング用組成物の吐出量:0.10mL/min
4)低湿度環境における、被膜が持つ保湿効果の検証
被験者は、被膜適用部位である右半顔に被膜適用を受けたあと、低湿度環境の恒温恒湿室2(相対湿度20±5%、23±2℃)に6時間滞在した。低湿度環境への暴露開始から3時間後、各被験者の対照部位である左半顔(額、鼻、頬、フェイスラインを含む)のみからあぶら取りフィルム(5×8cm、ポリプロピレン製、3M社)1枚を用いてSSLを採取した。低湿度環境への暴露開始から6時間後、被膜適用部位から被膜を剥離した後、各被験者の対照部位である左半顔(額、鼻、頬、フェイスラインを含む)と被膜適用部位である右半顔(額、鼻、頬、フェイスラインを含む)のそれぞれからのあぶら取りフィルム(5×8cm、ポリプロピレン製、3M社)1枚を用いたSSL採取と、左右それぞれの頬のCapacitance値の測定を行った。SSLを採取した該あぶら取りフィルム3枚、及び剥離した該被膜をバイアルに移し、RNA抽出に使用するまで-80℃で約1ヶ月間保存した。
以下においては、低湿度環境への暴露開始から3時間後に対照部位からあぶら取りフィルムで採取したSSLと、6時間後に対照部位からあぶら取りフィルムで採取したSSLを合わせて「刺激後の対照部位のSSL」と称する。また、低湿度環境への暴露開始から6時間後に被膜適用部位から剥離した被膜に含まれるSSLと、6時間後に被膜適用部位からあぶら取りフィルムで採取したSSLを合わせて「刺激後の被膜適用部位のSSL」と称する。恒温恒湿室2への入室直後に測定したCapacitance値を「刺激前のCapacitance値」と称し、低湿度環境への暴露開始から6時間後に測定したCapacitance値を「刺激後のCapacitance値」と称する。さらに、対照部位である左頬のCapacitance値を「対照部位のCapacitance値」、被膜適用部位である右頬のCapacitanceを「被膜適用部位のCapacitance」と称する。例えば、恒温恒湿室2への入室直後に左頬から測定したCapacitance値は「刺激前の対照部位のCapacitance値」であり、低湿度環境への暴露開始から6時間後に右頬から測定したCapacitance値は「刺激後の被膜適用部位のCapacitance値」である。
5)RNA調製及びシーケンシング
以下、上記4)で対照部位からSSLを採取した3時間後と6時間後のあぶら取りフィルムを合わせて、また、被膜適用部位からSSLを採取した6時間後のあぶら取りフィルムと剥離した被膜を合わせて、それぞれRNA調製に供した。あぶら取りフィルム又は剥離した被膜を適当な大きさに切断し、QIAzol Lysis Reagent(Qiagen)を用いて、付属のプロトコルに準じてRNAを水層に移行させた。該水層から、RNA抽出用スピンカラムを用いた市販のRNA抽出キットを用いて、付属のプロトコルに従いRNAを抽出した。抽出されたRNAを、SuperScript VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて42℃、90分間逆転写し、cDNAを合成した。逆転写反応のプライマーには、キットに付属しているランダムプライマーを使用した。得られたcDNAから、マルチプレックスPCRにより20802遺伝子に由来するDNAを含むライブラリーを調製した。マルチプレックスPCRは、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて、[99℃、2分→(99℃、15秒→62℃、16分)×20サイクル→4℃、Hold]の条件で行った。得られたPCR産物は、Ampure XP(ベックマン・コールター株式会社)で精製した後に、バッファーの再構成、プライマー配列の消化、アダプターライゲーションと精製、及び増幅を行い、ライブラリーを調製した。調製したライブラリーをIon 540 Chipにローディングし、Ion S5/XLシステム(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いてシーケンシングした。シーケンシングで得られた各リード配列をヒトゲノムのリファレンス配列であるhg19 AmpliSeq Transcriptome ERCC v1を用いて遺伝子マッピングすることで各リード配列の由来する遺伝子を決定した。
6)データ解析
i)使用データ
上記5)で測定した各被験者の刺激後の対照部位及び刺激後の被膜適用部位のSSL由来のRNAの発現量のデータ(リードカウント値)において、DESeq2という手法を用いて補正した。但し、全サンプル被験者の発現量データのうち90%以上のサンプル被験者で欠損値ではない発現量データが得られている4764遺伝子のみ以下の解析に使用した。解析には、DESeq2法を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)を用いた。
ii)RNA発現解析
上記i)で測定した各被験者の刺激後の対照部位及び刺激後の被膜適用部位のSSL由来RNA発現量(Normalized count値)を基に、対照部位と比較して被膜適用部位おいて、対応のある2群間の尤度比検定によるp値の補正値(FDR)が0.05未満であり、なおかつLog2(FoldChange)が-1未満または1より大きいRNA(発現変動遺伝子)を同定した。その結果、刺激後において、対照部位に対して被膜適用部位で発現が高かった(HIGH)174種のRNAと発現が低かった(LOW)95種のRNAが、発現変動遺伝子として同定された。
iii)刺激による皮膚の角層水分量変化、及びその対照部位と被膜適用部位の差
上記2)または上記4)において測定した、刺激前の対照部位のCapacitance値、刺激後の対照部位のCapacitance値、刺激前の被膜適用部位のCapacitance値、刺激後の被膜適用部位のCapacitance値を用いて、刺激前から刺激後にかけてのCapacitance値の変化量が、対照部位と被膜適用部位で差があるかどうか解析した。刺激後の対照部位のCapacitance値から刺激前の対照部位のCapacitance値を減じた値を対照部位のΔCapacitance値、刺激後の被膜適用部位のCapacitance値から刺激前の被膜適用部位のCapacitance値を減じた値を被膜適用部位のΔCapacitance値とした。14名の各被験者のΔCapacitance値を基に、対応のある2群間検定(Paired t-test)を行ったところ、対照部位と比べて被膜適用部位で有意にΔCapacitance値が大きく、被膜適用部位では低湿度環境における角層水分量の改善度が大きいことが確認された(図1、p<0.01)。
iv)被膜適用部位における角層水分量増加と関連して発現上昇する遺伝子の抽出
上記ii)において、刺激後に対照部位に対して発現が高かった174遺伝子について、刺激後の被膜適用部位のSSL由来の発現レベルが、被膜適用部位のΔCapacitance値と正の相関を示すものを探索した。各被験者における、刺激後の被膜適用部位のSSL由来の各174遺伝子発現レベルと被膜適用部位のΔCapacitance値のスピアマンの相関係数Rs及びそのp値を算出した。次に、Elsevier Text Miningを用いてこれまで皮膚乾燥(「dry skin」、「xerosis」または「dermatitis」のタキソノミーに登録される単語)との関連が報告されていない遺伝子を選択した。その結果、表3に示す2遺伝子は、刺激後の被膜適用部位のSSL由来の発現レベルが、被膜適用部位のΔCapacitance値と正の相関を示し、なおかつp値が0.1を下回った。これら2遺伝子は、一定期間の被膜適用後に該適用部位から採取された生体試料における発現レベルを測定することで、その部位の角層水分量の改善度の程度を評価することのできるポジティブマーカーである。すなわち、これら2遺伝子は、被膜による皮膚の角層水分量の改善度の程度を評価することのできるマーカーであり、被膜の皮膚保湿効果の評価に用いることができる。
Figure 2023069413000003
v)被膜適用部位における角層水分量増加と関連して発現低下する遺伝子の抽出
上記ii)において、刺激後に対照部位に対して発現が低かった95遺伝子について、刺激後の被膜適用部位のSSL由来の発現レベルが、被膜適用部位のΔCapacitance値と負の相関を示すものを探索した。各被験者における、刺激後の被膜適用部位のSSL由来の各95遺伝子発現レベルと被膜適用部位のΔCapacitance値のスピアマンの相関係数Rs及びそのp値を算出した。その結果、刺激後の被膜適用部位のSSL由来の発現レベルが、被膜適用部位のΔCapacitance値と負の相関を示す遺伝子は存在しなかった。
vi)被膜適用部位と対照部位における角層水分量増加の差と関連して発現レベルに差がある遺伝子の抽出(1)
上記ii)において、刺激後に対照部位に対して発現が高かった174遺伝子について、刺激後の被膜適用部位と対照部位のSSL由来の発現レベルの差(Δ発現レベル)が、被膜適用部位と対照部位のΔCapacitance値の差と正の相関を示すものを探索した。刺激後の被膜適用部位の発現レベルから刺激後の対照部位の発現レベルを減じた値をΔ発現レベルとし、被膜適用部位のΔCapacitance値から対照部位のΔCapacitance値を減じた値をΔΔCapacitance値とした。各被験者における、各174遺伝子のΔ発現レベルと、ΔΔCapacitance値のスピアマンの相関係数Rs及びそのp値を算出した。次に、Elsevier Text Miningを用いてこれまで皮膚乾燥(「dry skin」、「xerosis」または「dermatitis」のタキソノミーに登録される単語)との関連が報告されていない遺伝子を選択した。その結果、表4に示す2遺伝子は、刺激後の被膜適用部位と対照部位のSSL由来の発現レベルの差(Δ発現レベル)が、被膜適用部位と対照部位のΔCapacitance値の差と正の相関を示し、なおかつp値が0.1を下回った。これら2遺伝子は、一定期間の被膜適用後に該適用部位及び対照部位から採取された生体試料における発現レベルの差(Δ発現レベル)を測定することで、各部位における角層水分量の改善度の差を評価することのできるポジティブマーカーである。すなわち、これら2遺伝子は、被膜による皮膚の角層水分量の改善度の程度が、被膜適用部位でどれだけ大きいかを評価することのできるマーカーであり、被膜の皮膚保湿効果の評価に用いることができる。
Figure 2023069413000004
vii)被膜適用部位と対照部位における角層水分量増加の差と関連して発現レベルに差がある遺伝子の抽出(2)
上記ii)において、刺激後に対照部位に対して発現が低かった95遺伝子について、刺激後の被膜適用部位と対照部位のSSL由来の発現レベルの差(Δ発現レベル)が、被膜適用部位と対照部位のΔCapacitance値の差と負の相関を示すものを探索した。上記vi)と同様に、各被験者における、各95遺伝子のΔ発現レベルと、ΔΔCapacitance値のスピアマンの相関係数Rs及びそのp値を算出した。次に、Elsevier Text Miningを用いてこれまで皮膚乾燥(「dry skin」、「xerosis」または「dermatitis」のタキソノミーに登録される単語)との関連が報告されていない遺伝子を選択した。その結果、表5に示す遺伝子TMEM164は、刺激後の被膜適用部位と対照部位のSSL由来の発現レベルの差(Δ発現レベル)が、被膜適用部位と対照部位のΔCapacitance値の差と負の相関を示し、なおかつp値が0.1を下回った。この遺伝子TMEM164は、一定期間の被膜適用後に該適用部位及び対照部位から採取された生体試料における発現レベルの差(Δ発現レベル)を測定することで、各部位における角層水分量の改善度の差を評価することのできるネガティブマーカーである。すなわち、該遺伝子は、被膜による皮膚の角層水分量の改善度の程度が、被膜適用部位でどれだけ大きいかを評価することのできるマーカーであり、被膜の皮膚保湿効果の評価に用いることができる。
Figure 2023069413000005

Claims (17)

  1. 被験者における被膜の皮膚保湿効果を評価する方法であって、被膜を適用した被験者の皮膚から採取された生体試料について、以下の遺伝子:TTYH3、DOT1L、ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、方法。
  2. 被験者に適した皮膚保湿効果を有する被膜を選択する方法であって、被膜を適用した被験者の皮膚から採取された生体試料について、以下の遺伝子:TTYH3、DOT1L、ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、方法。
  3. 前記遺伝子又は発現産物が以下の遺伝子:TTYH3及びDOT1L、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記被験者の皮膚に前記被膜を一定期間適用すること、及び
    該期間経過後、被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料について、以下の遺伝子:TTYH3及びDOT1L、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定すること、
    を含む、請求項3記載の方法。
  5. 前記遺伝子又は発現産物の発現レベルに基づいて前記被膜の皮膚保湿効果を評価することをさらに含む、請求項4記載の方法。
  6. 前記遺伝子又は発現産物の発現レベルが高いほど、前記被膜の前記被験者における皮膚保湿効果は高いと評価される、請求項5記載の方法。
  7. 前記遺伝子又は発現産物が以下の遺伝子:ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2記載の方法。
  8. 前記被験者の皮膚に前記被膜を一定期間適用すること、及び
    該期間経過後、被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料及び対照部位の皮膚から採取された生体試料について、以下の遺伝子:ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定すること、
    を含む、請求項7記載の方法。
  9. 前記遺伝子又は発現産物の発現レベルに基づいて前記被膜の皮膚保湿効果を評価することをさらに含む、請求項8記載の方法。
  10. 前記遺伝子又は発現産物が以下の遺伝子:ZNF160及びNSMAF、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料における該遺伝子又は発現産物の発現レベルと前記対照部位の皮膚から採取された生体試料における該遺伝子又は発現産物の発現レベルの差(Δ発現レベル)の値が大きいほど、前記被膜の前記被験者における皮膚保湿効果は高いと評価される、請求項9記載の方法。
  11. 前記遺伝子又は発現産物が以下の遺伝子:TMEM164、及び該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記被膜適用部位の皮膚から採取された生体試料における該遺伝子又は発現産物の発現レベルと前記対照部位の皮膚から採取された生体試料における該遺伝子又は発現産物の発現レベルの差(Δ発現レベル)の値が小さいほど、前記被膜の前記被験者における皮膚保湿効果は高いと評価される、請求項9記載の方法。
  12. 前記生体試料が皮膚表上脂質である、請求項1~11のいずれか1項記載の方法。
  13. 前記被膜が、乾燥条件下で前記被験者の皮膚に適用される、請求項1~12のいずれか1項記載の方法。
  14. 前記皮膚保湿効果が角層水分量を維持又は改善するものである、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
  15. 前記遺伝子又は発現産物の発現レベルがmRNAの発現レベルである、請求項1~14のいずれか1項記載の方法。
  16. 以下の遺伝子:TTYH3、DOT1L、ZNF160、NSMAF、及びTMEM164、ならびに該遺伝子の発現産物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、被膜の皮膚保湿効果の評価のためのマーカー。
  17. 請求項16記載のマーカーである核酸と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は請求項16記載のマーカーであるタンパク質を認識する抗体を含有する、請求項1~15のいずれか1項記載の方法に用いられる被膜の皮膚保湿効果を評価するためのキット。
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