JP2023073988A - 中性子遮蔽材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、中性子遮蔽材及びその製造方法に関し、より詳細には良好な光透過性を有し、かつ、熱中性子線に対する遮蔽性能に優れた中性子遮蔽材及びその製造方法に関する。
中性子線は線量換算係数のエネルギー依存性が非常に大きいため、エネルギーの高い高速中性子線は人体の外部被ばくに非常に大きな影響を与える。そのため、原子炉や高速増殖炉等の原子力施設・核融合施設、及び患部医療用中性子線治療施設等では、中性子線を適切に遮蔽し、作業員等の保護を図ることが重要な課題となる。
特に、遠隔操作等で必要となる監視部(のぞき窓)、作業員の安全管理面用具及びカメラ(例えば、緊急事態発生時等に於ける作業員、緊急救援施設及び車両等、並びに患部医療用中性子線治療施設における治療中の患者の様子を観察するためのもの)等に対し、中性子線に対する遮蔽性能に優れ、かつ視認性に優れた光透過性を有する成形防護品の開発が望まれている。
一般に、高速中性子線を遮蔽するためには、水素原子の様な質量が軽い原子と弾性散乱させ、これにより高速中性子線を減速させることが有効であり、かつ知られている。そのため、安価で取り扱いが容易な高水素含有材料が中性子遮蔽材として利用されている。高水素含有材料としては水素数が比較的多い炭化水素系化合物、より具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂及びパラフィン類等が用いられている。
さらに、中性子遮蔽材によって減速された熱中性子線を遮蔽するためには、中性子捕獲断面積が大きい元素で熱中性子線を吸収することが有効である。中性子捕獲断面積の大きい元素としては3He、6Li及び10B等が挙げられる。
ここで、特許文献1には、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを必須成分とする透明な中性子遮蔽材用樹脂組成物が開示されている。そして、特許文献1では、エポキシ樹脂として脂環骨格を有するエポキシ樹脂を用い、アミン系硬化剤として脂環式ジアミン硬化剤を用いることで、水素原子個数密度を6.78×1022原子/cm3以上にし、高速中性子線に対する遮蔽性能を向上させている。しかし、特許文献1に開示の中性子遮蔽材用樹脂組成物は、高速中性子線の減速には一定の効果を示すものの、減速された熱中性子線を効率よく吸収する元素が含まれていないため、熱中性子線の遮蔽性能が十分とはいえない。
また、特許文献2には、エポキシ樹脂、ポリエチレン及び無機ホウ素化合物を含む混合物を、アミン系硬化剤により硬化してなる中性子遮蔽材が開示されている。しかしこの中性子遮蔽材では光透過性が不十分であるため視認性に劣る。
本発明は、前記問題点に鑑みなされたものであり、良好な光透過性を有し、かつ熱中性子線に対する遮蔽性能に優れた中性子遮蔽材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る中性子遮蔽材は、前記の課題を解決するために、光透過性材料と、質量数10のホウ素同位体に濃縮されたホウ素化合物とを含み、光透過性を有する成形物からなることを特徴とする。
前記構成に於けるホウ素化合物は、天然存在比が19.9%の質量数10のホウ素(10B)同位体に濃縮された化合物である。そのため、80.1%の天然存在比で存在する11Bを含むホウ素化合物を用いる場合と比較して、ホウ素(すなわち、ホウ素化合物)の含有量を抑制しながら、熱中性子線に対する優れた遮蔽性能を発揮させることができる。そして、ホウ素化合物の含有量の抑制により、当該ホウ素化合物の含有に起因して生じる光透過性の低下も抑制することができる。その結果、前記の構成によれば、良好な光透過性を有し、かつ熱中性子線に対する優れた遮蔽性能を有する中性子遮蔽材を提供することができる。
前記の構成に於いては、前記ホウ素化合物に於ける質量数10のホウ素同位体の濃縮度が50%以上であることが好ましい。これにより、11B同位体のホウ素化合物の含有割合を低減できるので、ホウ素化合物の含有量をさらに抑制し光透過性の向上を一層図ることができる。また、熱中性子線に対する遮蔽性能も一層向上させることができる。
前記の構成に於いては、前記ホウ素化合物の含有量が、前記中性子遮蔽材の全質量に対し、ホウ素原子換算で0.001質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。ホウ素化合物の含有量を0.001質量%以上にすることにより、熱中性子線に対する良好な遮蔽性能を維持することができる。その一方、ホウ素化合物の含有量を30質量%以下にすることにより、良好な光透過性を維持することができる。
前記の構成に於いては、前記ホウ素化合物が、酸化ホウ素、ホウ酸、ボラン、ボロキシン、ボロントリハライド、無機ホウ酸塩、ホウフッ化物、ホウ化物、水素化ホウ素化合物、ヘテロ化合物、ボロン酸、有機ホウ酸塩、ホウ酸エステル、ボリン酸エステル、ボロン酸エステル、有機ボラン、カルボラン、カルボラン酸、及びホウ素含有錯体化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記の構成に於いては、前記光透過性材料が、ガラス状物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマー樹脂の何れかであることが好ましい。これらの光透過性材料は水素原子を有しているため、高速中性子線に対し弾性散乱により減速させることができる。その結果、前記の構成によれば、高速中性子線に対しても良好な遮蔽性能を発揮させることができる。
さらに前記の構成に於いては、前記光透過性材料が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂及びケイ素含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係る中性子遮蔽材の製造方法は、前記の課題を解決するために、光透過性を有する成形物からなる中性子遮蔽材の製造方法であって、光透過性材料と、質量数10のホウ素同位体に濃縮されたホウ素化合物とを混合させる混合工程と、前記光透過性材料と前記ホウ素化合物との混合物を固化させる固化工程とを含むことを特徴とする。
前記の構成によれば、中性子遮蔽材の材料として、天然存在比が19.9%の10B同位体に濃縮されたホウ素化合物を用いるので、80.1%の天然存在比で11Bが存在するホウ素化合物を用いる場合と比較して、ホウ素(すなわち、ホウ素化合物)の含有量を抑制して中性子遮蔽材を製造することができる。これにより、ホウ素化合物の含有に起因して生じる光透過性の低下を抑制しながら、熱中性子線に対して優れた遮蔽性能を有する中性子遮蔽材を製造することができる。
前記の構成に於いては、前記ホウ素化合物に於ける質量数10のホウ素同位体の濃縮度が50%以上であることが好ましい。これにより、11B同位体のホウ素化合物の含有割合を低減できるので、ホウ素化合物の含有量をさらに抑制した中性子遮蔽材を製造することができる。その結果、光透過性及び熱中性子線に対する遮蔽性能に一層優れた中性子遮蔽材を製造することができる。
前記の構成に於いては、前記ホウ素化合物の含有量が、前記中性子遮蔽材の全質量に対し、ホウ素原子換算で0.001質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。ホウ素化合物の含有量を0.001質量%以上にすることにより、熱中性子線に対する遮蔽性能を良好に維持した中性子遮蔽材を製造することができる。その一方、ホウ素化合物の含有量を30質量%以下にすることにより、光透過性を良好に維持した中性子遮蔽材を製造することができる。
前記の構成に於いては、前記ホウ素化合物が、ボラン、ボロキシン、ボロントリハライド、無機ホウ酸塩、ホウフッ化物、ホウ化物、水素化ホウ素化合物、ヘテロ化合物、ボロン酸、有機ホウ酸塩、ホウ酸エステル、ボリン酸エステル、ボロン酸エステル、有機ボラン、カルボラン、カルボラン酸、及びホウ素含有錯体化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記の構成に於いては、前記光透過性材料が、ガラス状物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマー樹脂の何れかであることが好ましい。これらの光透過性材料は水素原子を有しているため、高速中性子線に対し弾性散乱により減速させることができる。その結果、前記の構成によれば、高速中性子線に対しても良好な遮蔽性能を発揮する中性子遮蔽材を製造することができる。
さらに前記の構成に於いては、前記光透過性材料が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂及びケイ素含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記の構成に於いて、前記混合工程は、粉体状の前記ホウ素化合物、固体状の前記ホウ素化合物が溶媒に溶解した溶液、固体状の前記ホウ素化合物が分散媒中に分散した分散液、及び液体状のホウ素化合物の少なくとも何れかを、前記光透過性材料と混合する工程であることが好ましい。
また前記の構成に於いては、前記光透過性材料が主剤と硬化剤とを含有する2液系熱硬化性樹脂であり、前記混合工程は、前記硬化剤と前記ホウ素化合物とを混合した後、さらに前記主剤を添加して混合する工程であることが好ましい。
本発明によれば、良好な光透過性を有し、かつ熱中性子線に対する遮蔽性能に優れた中性子遮蔽材及びその製造方法を提供することができる。
(中性子遮蔽材)
本発明の実施の形態に係る中性子遮蔽材について、以下に説明する。
本明細書に於いて中性子遮蔽材に於ける「中性子」とは、高速中性子及び熱中性子を含む意味である。従って、本明細書に於いて「中性子」という場合、「高速中性子」及び「熱中性子」の何れか一方、又は両者を意味する。また、本明細書に於いて「高速中性子」及び「高速中性子線」とは、エネルギーレベルが0.1MeV以上の中性子(線)を意味する。さらに、本明細書に於いて「熱中性子」及び「熱中性子線」とは、エネルギーレベルが0.1MeV未満の中性子(線)を意味する。
本発明の実施の形態に係る中性子遮蔽材について、以下に説明する。
本明細書に於いて中性子遮蔽材に於ける「中性子」とは、高速中性子及び熱中性子を含む意味である。従って、本明細書に於いて「中性子」という場合、「高速中性子」及び「熱中性子」の何れか一方、又は両者を意味する。また、本明細書に於いて「高速中性子」及び「高速中性子線」とは、エネルギーレベルが0.1MeV以上の中性子(線)を意味する。さらに、本明細書に於いて「熱中性子」及び「熱中性子線」とは、エネルギーレベルが0.1MeV未満の中性子(線)を意味する。
本実施の形態に係る中性子遮蔽材は、光透過性材料と、質量数10のホウ素(10B)同位体に濃縮されたホウ素化合物とを少なくとも含む成形物からなる。また、本実施の形態の中性子遮蔽材は光透過性を有する。尚、本実施の形態の中性子遮蔽材は、光透過性材料及びホウ素化合物のみからなる成形物であってもよい。
ここで、本明細書に於いて「成形物」とは、例えば、板状等の成形体の他、粒子状、ペレット状のものを含む意味である。また、本明細書に於いて「光透過性」とは、可視光の少なくとも一部を透過させる性質を意味し、例えば、中性子遮蔽材に対し、波長域が400nm以上、1000nm以下の範囲での光透過率が、当該中性子遮蔽材が存在しない場合に対し80%以上であることを意味する。また光透過性には、中性子遮蔽材が無色である場合の他、有色である場合も含む。
本実施の形態に於いてホウ素化合物は、10B同位体に濃縮されたホウ素化合物である。10Bは中性子吸収断面積が大きい(3840バーン)。そのため、10B同位体に濃縮されたホウ素化合物は、中性子遮蔽材に於いて熱中性子吸収剤として機能する。尚、11B同位体は中性子とは反応しない。
ここで、本明細書に於いて「質量数10のホウ素同位体に濃縮された」とは、質量数10のホウ素同位体が天然存在比よりも同位体濃縮されていることを意味する。ホウ素原子に於いては、天然では質量数10のホウ素原子と、質量数11のホウ素原子とが、10B:11B=19.9%:80.1%の割合で存在する。従って、「質量数10のホウ素同位体に濃縮された」とは、10Bの存在比が天然存在比の19.9%よりも大きくなるように濃縮されていることを意味する。
ホウ素化合物に於ける10B同位体の濃縮度は50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。10B同位体の濃縮度を50%以上にすることで、熱中性子線に対する良好な遮蔽性能を維持するためのホウ素化合物の含有量を低減することができる。その結果、ホウ素化合物の含有に起因して生じる光透過性の低下を抑制することができる。
ホウ素化合物の含有量に関し、その下限値は、中性子遮蔽材の全質量に対し0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が特に好ましい。また、その上限値は、中性子遮蔽材の全質量に対し、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。ホウ素化合物の含有量の下限値を0.001質量%以上にすることにより、熱中性子線に対する良好な吸収性能を維持し、優れた遮蔽効果を維持することができる。その一方、ホウ素化合物の含有量の上限値を30質量%以下にすることにより、ホウ素化合物の含有に起因して生じる光透過性の低下を抑制し、中性子遮蔽材の良好な光透過性を維持することができる。
ホウ素化合物としては、中性子遮蔽材の光透過性を過度に損なわない範囲であれば特に限定されない。ホウ素化合物は、ボラン、ボロキシン、ボロントリハライド、無機ホウ酸塩、ホウフッ化物、ホウ化物、水素化ホウ素化合物、ヘテロ化合物、ボロン酸、有機ホウ酸塩、ホウ酸エステル、ボリン酸エステル、ボロン酸エステル、有機ボラン、カルボラン、カルボラン酸、及びホウ素含有錯体化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ホウ素化合物のうちホウ素含有無機化合物としては特に限定されず、例えば、酸化ホウ素、ホウ酸、モノボラン、ジボラン及びアンモニアボラン等のボラン;ボロキシン;ボロントリクロリド、ボロントリフルオリド及びボロントリブロミド等のボロントリハライド;メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、ポリホウ酸ナトリウム及びメルカプトドデカホウ酸ナトリウム等の無機ホウ酸塩;ホウフッ化リチウム及びホウフッ化カリウム等のホウフッ化物;二ホウ化アルミニウム、四ホウ化鉄、炭化ホウ素、窒化ホウ素及びリン化ホウ素等のホウ化物;水素化ホウ素アルミニウム及び水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素化合物;ボラフラーレン及びヘテロダイヤモンド等のヘテロ化合物等が挙げられる。
また、ホウ素化合物のうちホウ素含有有機化合物としては特に限定されず、例えば、ボロンフェニルアラニン及びフルオロボロンフェニルアラニン等のボロン酸;リチウムビス(オキサラート)ボレート等の有機ホウ酸塩;ホウ酸トリメチル及びホウ酸トリエチル等のホウ酸エステル;ジフェニルボリン酸2-アミノエチル(2-アミノエトキシ)ジフェニルボラン及びジシクロヘキシル(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ボランジシクロヘキシルボロントリフラート等のボリン酸エステル;2-(2-ヨードフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン1-ヨード-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン2-ヨードフェニルボロン酸ピナコール等のボロン酸エステル;トリエチルボラン及びトリメチルボラン等の有機ボラン;カルボラン、カルボラン酸等が挙げられる。
また、ホウ素化合物のうちホウ素含有有機無機化合物としては特に限定されず、例えば、トリエチルアミンボラン、ジメチルスルフィドボラン、三フッ化ホウ素モノエチルアミン及び三フッ化ホウ素ピペリジン等のホウ素含有錯体化合物等が挙げられる。
尚、例示したホウ素化合物は単独で、又は2種以上を併用することができる。
またホウ素化合物としては、光透過性材料に対する分散性を向上させるために表面処理を施したものを用いてもよい。これにより、中性子遮蔽材中にホウ素化合物が偏在するのを防止し、中性子遮蔽材の光透過性及びその均一性を向上させることができる。表面処理の方法としては特に限定されないが、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、脂肪酸、界面活性剤、変性ポリマーを用いた表面処理等が挙げられる。
光透過性材料としては、ガラス状物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマー樹脂の何れかであることが好ましい。これらの光透過性材料は水素原子を有しているため、高速中性子線に対し弾性散乱により減速させることができる。そして本実施の形態の中性子遮蔽材に於いては、ホウ素化合物が、減速された高速中性子線、すなわち、熱中性子線を吸収する性能を有している。その結果、本実施の形態の中性子遮蔽材に於いては、熱中性子線の他、高速中性子線に対しても良好な遮蔽性能を発揮することができる。
光透過性材料は、より具体的には、例えば、石英(SiO2)ガラス、ホウケイ酸ガラス、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂及びケイ素含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの光透過性材料は、前述の例示したホウ素化合物と任意に組み合わせて用いることができる。
光透過性材料の含有量に関し、その下限値は、中性子遮蔽材の全質量に対し90質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。光透過性材料の含有量の下限値を90質量%以上にすることにより、高速中性子線に対する良好な吸収性能を維持し、優れた遮蔽効果を維持することができる。
本実施の形態の中性子遮蔽材に於いては、その機械的強度、熱伝導率、熱膨張率又は耐候性等の特性を向上又は低下を抑制する目的で、添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、中性子に対する遮蔽性能及び光透過性等の本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。添加剤の具体例としては、例えば、充填材、希釈剤、可塑剤、揺変剤、水分吸収剤(保存安定性改良剤)、接着性付与剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、物性調整剤、難燃剤、粘着付与剤、垂れ防止剤、着色剤、ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
本実施の形態の中性子遮蔽材は成形物からなり、板状等の成形体である場合の他、粒子状、ペレット状であってもよい。粒子状又はペレット状の中性子遮蔽材の場合には、さらに中性子遮蔽製品の原料として用いることができる。
中性子遮蔽材が成形体である場合、中性子遮蔽材はホウ素化合物を含有する成形体と、ホウ素化合物を含有しない光透過性材料からなる他の成形体とを接合させた接合体であってもよい。また、異なる種類のホウ素化合物がそれぞれ含有された成形体同士を接合させた接合体でもよい。さらに、それぞれ同一種類のホウ素化合物を含有するが、当該ホウ素化合物の含有量及び/又は10B同位体の濃縮度がそれぞれ異なる成形体同士を接合させた接合体であってもよい。これらの接合体に於いては、各成形体を任意の順序で少なくとも一層ずつ積層させた積層体として構成することができる。また、各成形体が同一面内で任意の位置に並置させた形態として構成することもできる。後者の接合体の場合、例えば、面内の特定の領域でのみ本発明の効果が奏するように設計することも可能になり、設計の自由度が高い。尚、各成形体を接合する方法として特に限定されず、例えば、両者の接合面に於ける熱融着や接着剤により接着する方法等が挙げられる。
(中性子遮蔽材の製造方法)
次に、本実施の形態の中性子遮蔽材の製造方法について、以下に説明する。
本実施の形態の透明中性子遮蔽材料の製造方法は、光透過性材料とホウ素化合物とを混合させる混合工程、及び光透過性材料とホウ素化合物との混合物を固化させる固化工程を少なくとも含む。
次に、本実施の形態の中性子遮蔽材の製造方法について、以下に説明する。
本実施の形態の透明中性子遮蔽材料の製造方法は、光透過性材料とホウ素化合物とを混合させる混合工程、及び光透過性材料とホウ素化合物との混合物を固化させる固化工程を少なくとも含む。
混合工程に於けるホウ素化合物の形態については、固体状のホウ素化合物が溶媒に溶解した溶液である場合、固体状のホウ素化合物が分散媒中に分散した分散液である場合、及び液体状のホウ素化合物である場合の少なくとも何れかが挙げられる。ホウ素化合物がこれらの形態であると、ホウ素化合物を中性子遮蔽材中に均一に存在させることが可能になり、中性子に対する遮蔽性能及び光透過性の向上と面内での均一化とが図れる。尚、ホウ素化合物は粉体状であってもよい。
固体のホウ素化合物を溶解させる、分散させる、又は、液体状のホウ素化合物と相溶させる溶媒としては、中性子線に対する遮蔽性能及び光透過性等の本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。具体的には、例えば、水、アルコール、アミン等が挙げられる。
混合工程に於ける光透過性材料とホウ素化合物との混合方法としては特に限定されず、種々の方法を採用することができる。例えば、光透過性材料がガラス状物質である場合、固体のガラス状物質と固体のホウ素化合物とを混合した後、その混合物を加熱して熱溶融する方法が挙げられる。加熱時間及び加熱温度は、固体のガラス状物質及び固体のホウ素化合物の種類に応じて適宜設定することができる。
また、光透過性材料が熱可塑性樹脂である場合、2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサ又は押出機等を用いて、熱可塑性樹脂とホウ素化合物とを混錬する方法が挙げられる。
さらに、光透過性材料が主剤と硬化剤とを含有する2液系熱硬化性樹脂である場合、硬化剤に固体状のホウ素化合物を溶解させる等して混合した後、さらに主剤を添加して混合する方法が挙げられる。この様な混合方法に於いても、ホウ素化合物を中性子遮蔽材中に均一に存在させることが可能になり、中性子に対する遮蔽性能及び光透過性の向上と面内での均一化とが図れる。
ここで硬化剤は、触媒の存在下でエポキシ基同士を付加重合させて架橋構造を形成させたり、2以上のエポキシ基を有する化合物と2以上の活性水素を有する化合物とで架橋構造を形成させたりする目的で添加する。
硬化剤としては、中性子線に対する遮蔽性能及び光透過性等の本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。具体的には、例えば、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン、ポリアミド、ジシアンジアミド、ポリメルカプタン、酸無水物、BF3錯体、イミダゾール化合物、フェノールノボラック、フェノールレゾール等が挙げられる。また、触媒としては、大きな歪エネルギーを有する3員環であるエポキシ基の歪エネルギーを開放するカチオン又はアニオンが挙げられる。
硬化剤の配合量は、硬化剤の種類により適宜設定することができる。
固化工程は、光透過性材料とホウ素化合物との混合物の形態に応じて適宜行われる。例えば、光透過性材料がガラス状物質であり、ホウ素化合物と混合して熱溶融させる場合、固化工程では熱溶融された混合物に対し冷却が行われる。また、光透過性材料が熱可塑性樹脂であり、熱可塑性樹脂とホウ素化合物とを混錬させる場合も、固化工程では、熱可塑性樹脂とホウ素化合物の混練物に対し冷却が行われる。光透過性材料が主剤と硬化剤とを含有する2液系熱硬化性樹脂である場合、固化工程は室温で、又は加熱による硬化(熱硬化)が行われる。さらに、固化工程に於いては、硬化後にポストキュアを行ってエポキシ樹脂の硬化を一層促進させてもよい。
以上より、本実施の形態の中性子遮蔽材の製造方法であると、良好な光透過性を有し、かつ、少なくとも熱中性子線に対する遮蔽性能に優れた透明中性子遮蔽材を簡便に製造することができる。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、各実施例に記載される材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(実施例1)
<中性子遮蔽材の製造>
本実施例に於いては、光透過性材料として高透明エポキシ樹脂(株式会社ITW製、商品名:デブコン(登録商標)ET)を用い、ホウ素化合物として10B同位体に濃縮されたホウ酸(以下、「10B濃縮ホウ酸」という。ステラケミファ株式会社製)を用いた。10B濃縮ホウ酸に於ける10B同位体の濃縮度は96%であった。
<中性子遮蔽材の製造>
本実施例に於いては、光透過性材料として高透明エポキシ樹脂(株式会社ITW製、商品名:デブコン(登録商標)ET)を用い、ホウ素化合物として10B同位体に濃縮されたホウ酸(以下、「10B濃縮ホウ酸」という。ステラケミファ株式会社製)を用いた。10B濃縮ホウ酸に於ける10B同位体の濃縮度は96%であった。
先ず、高透明エポキシ樹脂の主剤であるビスフェノールA系エポキシ樹脂45.0gと芳香族ポリアミン系硬化剤22.5gを計量した。次に、芳香族ポリアミン系硬化剤に10B濃縮ホウ酸を0.0675g添加し溶解させた。その後、10B濃縮ホウ酸を溶解させた芳香族ポリアミン系硬化剤と、ビスフェノールA系エポキシ樹脂とを混合して混合液を作製した(混合工程)。
続いて、混合液を150mm×150mmのシリコーン樹脂型枠に流し込み、室温で12時間静置して硬化させた(固化工程)。これにより、10B濃縮ホウ酸の含有量が1000ppm(0.1質量%)であり、150mm(縦)×150mm(横)×2.5mm(厚さ)の成形体からなる中性子遮蔽材を製造した。
(実施例2)
本実施例に於いては10B濃縮ホウ酸の添加量を0.3375gに変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で本実施例に係る中性子遮蔽材を製造した。尚、中性子遮蔽材に於ける10B濃縮ホウ酸の含有量は5000ppm(0.5質量%)であった。
本実施例に於いては10B濃縮ホウ酸の添加量を0.3375gに変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で本実施例に係る中性子遮蔽材を製造した。尚、中性子遮蔽材に於ける10B濃縮ホウ酸の含有量は5000ppm(0.5質量%)であった。
(比較例1)
本比較例に於いては、10B濃縮ホウ酸を添加しなかった。それ以外は実施例1と同様の方法で本比較例に係る中性子遮蔽材を製造した。
本比較例に於いては、10B濃縮ホウ酸を添加しなかった。それ以外は実施例1と同様の方法で本比較例に係る中性子遮蔽材を製造した。
(比較例2)
本比較例に於いては、10B濃縮ホウ酸に代えて、天然存在比のホウ酸を用いた。それ以外は実施例2と同様の方法で本比較例に係る中性子遮蔽材を製造した。尚、中性子遮蔽材に於けるホウ酸の含有量は5000ppm(0.5質量%)であった。
本比較例に於いては、10B濃縮ホウ酸に代えて、天然存在比のホウ酸を用いた。それ以外は実施例2と同様の方法で本比較例に係る中性子遮蔽材を製造した。尚、中性子遮蔽材に於けるホウ酸の含有量は5000ppm(0.5質量%)であった。
(中性子遮蔽性能の測定)
中性子線源として熱中性子ビーム(熱中性子束:4.0×105n/cm2/s at1MW)を使用し、中性子線源とLiCaFシンチレータとの間に、各実施例又は各比較例で製造した中性子遮蔽材を配置した。配置する中性子遮蔽材については、中性子遮蔽材を複数枚重ね合わせることで全体として所定の厚さになるように調整した。
中性子線源として熱中性子ビーム(熱中性子束:4.0×105n/cm2/s at1MW)を使用し、中性子線源とLiCaFシンチレータとの間に、各実施例又は各比較例で製造した中性子遮蔽材を配置した。配置する中性子遮蔽材については、中性子遮蔽材を複数枚重ね合わせることで全体として所定の厚さになるように調整した。
続いて、熱中性子ビームをLiCaFシンチレータに向けて照射し、中性子遮蔽材を透過した熱中性子線についてのイベント数を計測し、これにより各厚さ毎の熱中性子線に対する中性子透過率を算出した。結果を図1に示す。
図1から分かる通り、熱中性子線の遮蔽性能を評価した結果、実施例1及び2の中性子遮蔽材に於ける熱中性子線の中性子透過率は比較例1及び2よりも低く、熱中性子線を効果的に遮蔽していることが明らかとなった。
(光透過性の評価)
実施例1、2及び比較例1、2で作製した中性子遮蔽材について、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、商品名;V-670ODS)を用いて400nm~1000nmの範囲に於ける全光線透過率をそれぞれ測定して、光透過性の評価を行った。また、全光線透過率の測定では、表1に示す通り、中性子遮蔽材を複数枚重ね合わせて全体としての総厚を調整し、それぞれの総厚について行った。測定結果を表1に示す。
実施例1、2及び比較例1、2で作製した中性子遮蔽材について、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、商品名;V-670ODS)を用いて400nm~1000nmの範囲に於ける全光線透過率をそれぞれ測定して、光透過性の評価を行った。また、全光線透過率の測定では、表1に示す通り、中性子遮蔽材を複数枚重ね合わせて全体としての総厚を調整し、それぞれの総厚について行った。測定結果を表1に示す。
表1から分かる通り、実施例1及び2の中性子遮蔽材では、何れの総厚でも全光線透過率が80%以上を示し、良好な光透過性を有していることが確認された。すなわち、10B濃縮ホウ酸を含有しても、光透過性材料であるエポキシ樹脂本来の光透過性は失われていないことが明らかとなった。
(熱中性子線照射後のカメラ映像の観察)
次に、各実施例及び比較例の中性子遮蔽材に於ける熱中性子線に対する遮蔽性能について、カメラにより撮影された映像の変化を観察して評価を行った。
次に、各実施例及び比較例の中性子遮蔽材に於ける熱中性子線に対する遮蔽性能について、カメラにより撮影された映像の変化を観察して評価を行った。
先ず、カメラの映像変化の観察方法について、図2に基づき説明する。図2は、熱中性子線照射後のカメラ映像の観察に用いたカメラを模式的に表す説明図である。
図2(a)に示すように、カメラにより撮影された映像の変化を観察するにあたっては、観察用カメラとしてネットワークカメラ1(アクシス コミュニケーションズAB製、商品名:P1214E、撮像素子:CCD)を用いた。また、図2(b)に示すように、このネットワークカメラ1の周囲をポリエチレンカバー2で覆うことにより、左右の側面や上面及び下面から熱中性子線が照射されるのを防止した。ポリエチレンカバー2としては、フッ化リチウムをポリエチレンカバー2の全質量に対し50質量%含有したものを用いた。また、カメラの前面には、各実施例又は各比較例で作製した中性子遮蔽材3を1枚配置して、カメラの前面を遮蔽した。
次に、中性子源として熱中性子ビームを使用し、カメラの前面に対し3.7×1011個/cm2の中性子束を照射した。
照射後のカメラ映像を図3~図6に示す。また、撮影画面の全領域のドット数を計測し、単位面積あたりのドット数(ドット数/cm2)を算出した。結果を表2に示す。
熱中性子線が照射されていないときのカメラ映像では、画面上にドットは観察されなかったが、熱中性子線が照射された後のカメラ映像では、画面上にドットが発生していることが確認された(図3~図6参照)。これは、照射された熱中性子線により、ネットワークカメラ1のカメラ素子が損傷したためと考えられる。但し、実施例1及び2の中性子遮蔽材でカバーしたカメラの映像では、比較例1及び2の中性子遮蔽材でカバーしたカメラの映像と比較して、ドット数が少なかった(図3~図6及び表2参照)。これにより、本実施例1及び2に係る中性子遮蔽材が、熱中性子線に対して優れた遮蔽性能を有していることが確認された。その結果、本実施例1及び2に係る中性子遮蔽材は、例えば、中性子発生施設内で使用されるカメラの保護部材等に有用であり、熱中性子線の照射によるカメラ映像の劣化を防止できることが示された。
同様に、中性子遮蔽材に於ける熱中性子線に対する遮蔽性能について、使用するカメラを変更して撮影された映像の変化を観察して評価を行った。
カメラの映像変化の観察方法については、使用する観察用カメラをビデオカメラ(Panasonic株式会社製、商品名:HC-V480MS、撮像素子:CMOS)に変更した。また、図2(b)に示すように、カメラの前面には、実施例2又は比較例1で作製した中性子遮蔽材3を1枚配置して、カメラの前面を遮蔽した。
次に、中性子源として熱中性子ビームを使用し、カメラの前面に対し3.7×1011個/cm2の中性子束を照射した。
照射後、比較例1の中性子遮蔽材でカバーしたカメラには、すぐにカメラ映像にノイズが入ったり、カメラがブラックアウトする現象が起こった。これは照射された熱中性子線により、撮像素子がダメージを受けたことによる。この画像の乱れは前記ネットワークカメラを使用したときよりも速やかに起こった。その一方、実施例2の中性子遮蔽材でカバーしたカメラでは、熱中性子線を照射してもカメラ映像にノイズが生じたり、ブラックアウトする現象は起こらなかった。これにより、実施例2に係る中性子遮蔽材は、熱中性子線に対して優れた遮蔽性能を有していることが確認された。その結果、実施例2に係る中性子遮蔽材は、例えば、中性子発生施設内で使用されるカメラの保護部材等に有用であり、熱中性子線の照射によるカメラ映像の劣化を防止できることが示された。特にこの効果は撮像素子の制御系がより微細で、損傷が迅速に起こるカメラに於いて顕著である。
本発明の中性子遮蔽材は、良好な光透過性を有し、かつ、少なくとも熱中性子線に対して優れた遮蔽性能を有しており、視認性及び中性子遮断性を要する部材に広く適用することができる。そのため、本発明の産業上の利用可能性は極めて高い。
1 ネットワークカメラ
2 ポリエチレンカバー
3 中性子遮蔽材
2 ポリエチレンカバー
3 中性子遮蔽材
Claims (14)
- 光透過性材料と、質量数10のホウ素同位体に濃縮されたホウ素化合物とを含み、光透過性を有する成形物からなる中性子遮蔽材。
- 前記ホウ素化合物に於ける質量数10のホウ素同位体の濃縮度が50%以上である請求項1に記載の中性子遮蔽材。
- 前記ホウ素化合物の含有量が、前記中性子遮蔽材の全質量に対し、ホウ素原子換算で0.001質量%以上、30質量%以下である請求項1に記載の中性子遮蔽材。
- 前記ホウ素化合物が、酸化ホウ素、ホウ酸、ボラン、ボロキシン、ボロントリハライド、無機ホウ酸塩、ホウフッ化物、ホウ化物、水素化ホウ素化合物、ヘテロ化合物、ボロン酸、有機ホウ酸塩、ホウ酸エステル、ボリン酸エステル、ボロン酸エステル、有機ボラン、カルボラン、カルボラン酸、及びホウ素含有錯体化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の中性子遮蔽材。
- 前記光透過性材料が、ガラス状物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマー樹脂の何れかである請求項1に記載の中性子遮蔽材。
- 前記光透過性材料が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂及びケイ素含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の中性子遮蔽材。
- 光透過性を有する成形物からなる中性子遮蔽材の製造方法であって、
光透過性材料と、質量数10のホウ素同位体に濃縮されたホウ素化合物とを混合させる混合工程と、
前記光透過性材料と前記ホウ素化合物との混合物を固化させる固化工程とを含む中性子遮蔽材の製造方法。 - 前記ホウ素化合物に於ける質量数10のホウ素同位体の濃縮度が50%以上である請求項7に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
- 前記ホウ素化合物の含有量が、前記中性子遮蔽材の全質量に対し、ホウ素原子換算で0.001質量%以上、30質量%以下である請求項7に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
- 前記ホウ素化合物が、ボラン、ボロキシン、ボロントリハライド、無機ホウ酸塩、ホウフッ化物、ホウ化物、水素化ホウ素化合物、ヘテロ化合物、ボロン酸、有機ホウ酸塩、ホウ酸エステル、ボリン酸エステル、ボロン酸エステル、有機ボラン、カルボラン、カルボラン酸、及びホウ素含有錯体化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
- 前記光透過性材料が、ガラス状物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマー樹脂の何れかである請求項7に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
- 前記光透過性材料が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂及びケイ素含有高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
- 前記混合工程は、粉体状の前記ホウ素化合物、固体状の前記ホウ素化合物が溶媒に溶解した溶液、固体状の前記ホウ素化合物が分散媒中に分散した分散液、及び液体状のホウ素化合物の少なくとも何れかを、前記光透過性材料と混合する工程である請求項7に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
- 前記光透過性材料が主剤と硬化剤とを含有する2液系熱硬化性樹脂であり、
前記混合工程は、前記硬化剤と前記ホウ素化合物とを混合した後、さらに前記主剤を添加して混合する工程である請求項7に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
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