JP2023072852A - エラストマー組成物及び成形体 - Google Patents

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柊 照井
Shu Terui
洋之 市野
Hiroyuki Ichino
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Abstract

【課題】低温条件下において耐衝撃性に優れたエラストマー組成物を得る。【解決手段】ブロック共重合体(I)と、環状オレフィン系樹脂(II)を含有し、質量比:(I)/(II)=1/99~90/10であり、成分(I)が、条件(i)~(iii)を満たすエラストマー組成物。<条件(i)>ビニル芳香族単量体単位の含有量が成分(I)の総量に対して1.0~30質量%である。<条件(ii)>:ビニル結合量が1.0~55%である。<条件(iii)>:ビニル水素添加率が5.0~55%である。【選択図】なし

Description

本発明は、エラストマー組成物及び成形体に関する。
ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンの殆どは不透明なプラスチックである。これは、ポリオレフィンの大半が結晶性をもつためである。ポリオレフィンは、非晶部の中に結晶部が分散したような構造をとり、結晶部と非晶部とは密度が異なるため、光の屈折率に違いが生じて光が散乱することで不透明になる。また、結晶部と非晶部とは収縮率が異なるため、ポリオレフィンのほとんどは寸法安定性が悪い。
一方において、環状オレフィン樹脂は、立体障害が大きい嵩高い構造である脂環構造を有しているため、結晶性を持ちにくく、透明性や寸法安定性に優れる。
前記環状オレフィン樹脂は、立体障害が大きい嵩高い構造を有していることにより、分子鎖が剛直となり運動が制限されるため、ガラス転移温度が高く、高耐熱性を発現する。
また、環状オレフィン樹脂は、極性基や二重結合を殆ど含まないため、吸湿による変形や、酸や塩基による変質、光や熱による劣化が殆ど生じない。さらに重合工程で生じた二重結合に水素を付加することで上記特性をさらに改善することができる。
上述のような特徴的な構造を有する環状オレフィン樹脂は、透明性、低複屈折、高耐熱性、低吸湿性、ガスバリア性、耐薬品性、及び衛生性に優れていることから、従来から、光学部品、医薬品容器、エレクトロニクス用途等の幅広い分野で注目されている。
しかしながら、環状オレフィン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が室温よりも非常に高いため、室温付近ではガラス状の硬質で脆い材料である。そこで、十分な破壊強度、耐衝撃性を付与することができれば、使用温度範囲の拡大が期待できる。特に、室温状態での使用に限らず低温条件下での使用を想定した耐衝撃性の向上のニーズは、冷蔵機器の部品、低温条件下での貯蔵・保管が必須となる医薬品、使用地域の広がりといった観点から高まりつつある。
上述したような観点から、環状オレフィン樹脂に熱可塑性エラストマーを添加し、耐衝撃性を改良した環状オレフィン樹脂組成物に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許第4951883号公報
しかしながら、前記特許文献1に開示されている環状オレフィン樹脂組成物は、-30℃以下の低温条件下においては、耐衝撃性が未だ不十分であり、改善の余地がある、という問題点を有している。
低温条件下における耐衝撃性の向上を図るためには、改質剤である熱可塑性エラストマーのガラス転移温度が使用温度よりも低い、つまり低温条件下においても前記熱可塑性エラストマーが低剛性であることが好ましいが、前記特許文献1に開示されている環状オレフィン樹脂組成物に添加されている熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル単量体単位の含有量が高く、高剛性であり、高水素添加率であるため、ガラス転移温度が高く、低温条件下における耐衝撃性にさらなる改善の余地がある。
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、低温条件下においても優れた耐衝撃性を有するエラストマー組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記従来技術の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、環状オレフィン樹脂に、特定の構造及び物性を有するブロック共重合体を添加することで、前記従来技術の問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
成分(I):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体(I)と、
成分(II):環状オレフィン系樹脂と、
を、含有し、
前記成分(I)と前記成分(II)との質量比が、成分(I)/成分(II)=1/99~90/10であり、
前記成分(I)が、下記条件(i)~(iii)を満たす、エラストマー組成物。
<条件(i)>:
前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(I)の総量に対して、1.0~30質量%である。
<条件(ii)>:
前記重合体ブロック(B)が、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)と、1,4-結合に由来する単位(b)を含み、前記単位(a)の含有量が、前記重合体ブロック(B)の総量に対して、1.0~55%である。
<条件(iii)>:
前記重合体ブロック(B)が、前記1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の水素添加されたアルケニル単量体単位(a1)と、前記1,4-結合に由来する単位(b)の水素添加されたアルケニル単量体単位(b1)を含み、前記アルケニル単量体単位(a1)の含有量及び前記アルケニル単量体単位(b1)の含有量の合計量が、前記重合体ブロック(B)の総量に対して、5.0~55%である。
〔2〕
前記成分(I)が、さらに、下記条件(iv)を満たす、前記〔1〕に記載のエラストマー組成物。
<条件(iv)>:
前記1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の水素添加されたアルケニル単量体単位(a1)の含有量が、前記1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の総量に対して80%以上である。
〔3〕
前記〔1〕又は〔2〕に記載のエラストマー組成物の成形体。
本発明によれば、低温条件下においても耐衝撃性に優れたエラストマー組成物が得られる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではなく、本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔エラストマー組成物〕
本実施形態のエラストマー組成物は、
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(以下、「重合体ブロック(A)」ともいう。)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(以下、「重合体ブロック(B)」ともいう。)を有するブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(I)」又は「成分(I)」と記載する場合もある。)と、前記成分(I)以外の環状オレフィン系樹脂(「環状オレフィン系樹脂(II)」又は「成分(II)」と記載する場合もある。)と、を含む。
前記成分(I)と、前記成分(II)との質量比(成分(I)/成分(II))は、1/99~90/10である。
本実施形態のエラストマー組成物は、成分(I)が、下記条件(i)~(iii)を満たす。
<条件(i)>:
ビニル芳香族単量体単位の含有量が、成分(I)の総量に対して、1.0~30質量%である。
<条件(ii)>:
前記重合体ブロック(B)が、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)(以下、単に「単位(a)」と記載する場合もある。)、1,4-結合に由来する単位(b)(以下、単に「単位(b)」と記載する場合もある。)を含み、前記単位(a)の含有量が、前記重合体ブロック(B)の総量に対して、1.0~55%である。
<条件(iii)>:
前記重合体ブロック(B)が、前記1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の水素添加されたアルケニル単量体単位(a1)(以下、「アルケニル単量体単位(a1)」と記載する場合もある。)、及び前記1,4-結合に由来する単位(b)の水素添加されたアルケニル単量体単位(b1)(以下、「アルケニル単量体単位(b1)」と記載する場合もある。)を含み、前記アルケニル単量体単位(a1)の含有量及び前記アルケニル単量体単位(b1)の含有量の合計量が、前記重合体ブロック(B)の総量に対して、5.0~55%である。
上記構成を有することにより、低温条件下においても、耐衝撃性に優れたエラストマー組成物が得られる。
(成分(I):ブロック共重合体(I))
本実施形態のエラストマー組成物は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体(I)を含む。
前記共役ジエン単量体単位は、共役ジエン化合物を重合することにより形成される。
共役ジエン化合物は、1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。
共役ジエン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは1,3-ブタジエン、イソプレンであり、より好ましくは1,3-ブタジエンである。
1,3-ブタジエンやイソプレンは、汎用されており入手が容易である他、コストの点でも有利であり、ビニル芳香族化合物として汎用されるスチレンとの共重合も容易である。また、1,3-ブタジエンは、ブロック共重合体(I)のtanδピークを-30℃以下の低温以下及び/又は-50℃以下の超低温以下に調整することが最も容易である。
1,3-ブタジエンが重合するとき、多量体は主鎖に二重結合をもつ1,4-結合、側鎖に二重結合をもつ1,2-結合及び3,4-結合(ビニル結合ともいう。)の結合形式となる。1,3-ブタジエンを重合単量体として用いたブロック共重合体(I)のガラス転移温度は、1,3-ブタジエンの結合様式や、重合体に残る二重結合への水素添加に依存するため、この結合形式、主鎖及び側鎖に存在する二重結合への水素添加反応を調整することにより、ブロック共重合体(I)のtanδピークを制御することができる。
共役ジエン化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本明細書における共役ジエン単量体単位とは、共役ジエン化合物が重合して生成する重合体中の当該共役ジエン化合物に由来する構成単位を指す。
前記ビニル芳香族単量体単位は、ビニル芳香族化合物を重合することにより形成される。
ビニル芳香族化合物は、ビニル結合を有する芳香族化合物である。
ビニル芳香族化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはスチレンである。
ビニル芳香族化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本明細書におけるビニル芳香族単量体単位とは、ビニル芳香族化合物が重合して生成する重合体中の当該ビニル芳香族化合物に由来する構成単位を指す。
成分(I)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体であって、後述する条件(iii)を満たすとおり、水添物である。
本明細書において、重合体ブロック(A)がビニル芳香族単量体単位を主体とすることについて、「主体とする」とは、ビニル芳香族単量体単位の含有量が、重合体ブロック(A)の総量に対して、70質量%以上であることを意味する。
重合体ブロック(A)におけるビニル芳香族単量体単位の含有量は、重合体ブロック(A)の総量に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%(他のモノマーは、意図的に添加されていない)である。
本明細書において、重合体ブロック(B)が共役ジエン単量体単位を主体とすることについて、「主体とする」とは、共役ジエン単量体単位の含有量が、重合体ブロック(B)の総量に対して、70質量%以上であることを意味する。
重合体ブロック(B)における共役ジエン単量体単位の含有量は、重合体ブロック(B)の総量に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%(他のモノマーは、意図的に添加されていない)である。
成分(I)中の重合体ブロック(A)の含有量は、例えば、四酸化オスミウムを触媒として水素添加前の共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族単量体のブロック成分の質量(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族単量体ブロック成分は除かれている)を用いて、次の式から求めることができる。
重合体ブロック(A)の含有量(質量%)=(水素添加前のブロック共重合体中のビニル芳香族単量体のブロック成分の質量/水素添加前のブロック共重合体の質量)×100
成分(I)中の重合体ブロック(B)の含有量は、成分(I)が重合体ブロック(A)及び(B)のみからなる場合には、成分(I)の総量から重合体ブロック(A)の含有量を減ずればよく、また、上述した重合体ブロック(A)の含有量を求める方法と同様の方法により求めてもよい。
成分(I)は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を基本骨格とし、これら基本骨格が繰り返し構造を有するブロック共重合体であることが好ましい。
前記成分(I)は、下記条件(i)~(iii)を満たす。
<条件(i)>:
前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(I)の総量に対して、1.0~30質量%である。
成分(I)の総量に対して、ビニル芳香族単量体単位の含有量が30質量%以下であることにより、本実施形態のエラストマー組成物は、低温条件下でゴム状態かつ低剛性なものとなる。よって低温条件下における耐衝撃性に優れたものとなる。より低温条件下における剛性及び耐衝撃性を改善する観点から、前記ビニル芳香族単量体単位の含有量は、28質量%以下が好ましく、27質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、23質量%以下がさらにより好ましい。
一方、成分(I)の総量に対するビニル芳香族単量体単位の含有量は、より少ない方が低温条件下での耐衝撃性の観点から好ましいが、疑似架橋点となるビニル芳香族単量体単位の重合体ブロックを有することにより、実用上十分に良好な疲労回復性や引張強度を維持できる。
上述した観点から、成分(I)の総量に対するビニル芳香族単量体単位の含有量は、1.0質量%以上であるものとし、また、ブロック共重合体(I)の貯蔵、保管、輸送中のブロッキングを低減する観点から、成分(I)の総量に対し、5.0質量%
以上であることが好ましく、7.0質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
成分(I)の総量に対するビニル芳香族単量体単位の含有量は、3.0~28質量%であることが好ましく、5.0~27質量%であることがより好ましく、7.0~25質量%であることがさらに好ましく、10~23質量%であることがさらにより好ましい。
ブロック共重合体(I)中のビニル芳香族単量体単位含有量は、単量体の添加量、添加のタイミング、重合温度等の重合条件を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。また、ブロック共重合体(I)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、実施例に記載する方法により算出可能である。
<条件(ii)>
前記共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)が、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)と、1,4-結合に由来する単位(b)を含み、前記単位(a)の含有量が、重合体ブロック(B)の総量に対して、1.0~55%である。
前記単位(a)の含有量が重合体ブロック(B)の総量に対して55%以下であることにより、ブロック共重合体(I)の低温条件下におけるゴム状態を維持することができる。また、プラスチックのような性質を持つ1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)を1.0質量%以上含むことにより良好な押出加工性が得られる。
重合体ブロック(B)の総量に対する前記単位(a)の含有量は、好ましくは5.0~50%であり、より好ましくは10~45%であり、さらに好ましくは15~40%である。
前記重合体ブロック(B)の総量に対する、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の含有量は、ブロック共重合体(I)の重合時に、極性化合物等の調整剤を使用することにより制御可能であり、後述する実施例に記載の方法で算出することができる。
前記調整剤としては、例えば、第3級アミン化合物又はエーテル化合物を使用でき、第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
第3級アミン化合物は、一般式R123N(式中、R1、R2、R3は、炭素数1~20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基である。)で表される化合物である。
第3級アミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’-ジオクチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
ブロック共重合体(I)の重合時における調整剤の使用量は、後述する重合開始剤1mоlに対して2mоl以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mоl以下であり、さらに好ましくは1.0mоl以下である。
<条件(iii)>
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)が、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の水素添加されたアルケニル単量体単位(a1)、及び1,4-結合に由来する単位(b)の水素添加されたアルケニル単量体単位(b1)を含み、アルケニル単量体単位(a1)の含有量及びアルケニル単量体単位(b1)の含有量の合計量が、前記重合体ブロック(B)の総量に対して5.0~55%である。
前記アルケニル単量体単位(a1)の含有量及び前記アルケニル単量体単位(b1)の含有量の合計量が、前記重合体ブロック(B)の総量に対して55%以下であることにより、ブロック共重合体(I)のtanδ曲線の主分散ピーク温度を-35℃以下とすることができる。
一般に、前記重合体ブロック(B)の総量に対して、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の含有量や、前記アルケニル単量体単位(a1)と前記アルケニル単量体単位(b1)の合計量が多いとき、ブロック共重合体(I)のtanδのピーク温度は高くなり、低温条件下での耐衝撃性が低下する傾向にある。このため、上述した<条件(ii)>のように、前記重合体ブロック(B)の総量に対する、前記、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の含有量は55%以下であるものとし、<条件(iii)>のように、前記アルケニル単量体単位(a1)と前記アルケニル単量体単位(b1)の合計含有量は、前記重合体ブロック(B)の総量に対して55%以下であるものとする。これにより、ブロック共重合体(I)において、優れた熱安定性が得られる。
前記重合体ブロック(B)の総量に対する記アルケニル単量体単位(a1)と前記アルケニル単量体単位(b1)の合計含有量は、好ましくは5.0~50%であり、より好ましくは10~45%であり、さらに好ましくは15~40%である。
前記重合体ブロック(B)の総量に対する、前記アルケニル単量体単位(a1)と前記アルケニル単量体単位(b1)の含有量の合計量は、ブロック共重合体(I)の水素添加工程における、反応温度、反応時間、水素供給量、触媒量等を適宜調整することにより、上述した数値範囲に制御することができる。
(成分(II)によるエラストマー組成物の改質)
一般的なポリマーアロイにおいて、マトリックス樹脂中に所定のエラストマーを分散させることによって耐衝撃性を付与した場合、衝撃や延伸を加えると、マトリックス樹脂に分散したエラストマー相自体にボイドが発生し、エラストマー相を起点として破壊が生じる。
このとき、マトリックス樹脂に対するエラストマー相の剛性は小さい方が界面に応力集中する。よって、低温条件下においても高い改質効果を発現するためには、低温条件下においてエラストマー成分がより柔軟であることが好ましい。すなわり、低温条件下で高い耐衝撃性を発現させるためには、添加するエラストマーがその低温条件下において低剛性なゴム状態であることが必要である。
上記の物性発現メカニズムは、成分(I)と成分(II)とを含有するエラストマー組成物においても同様のことがいえる。ガラス転移温度が高く高剛性な環状オレフィン系樹脂(II)に、低温条件下においても低剛性なブロック共重合体(I)を分散させることにより、低温条件下での優れた耐衝撃性を発現する。
ある温度条件下でエラストマーがゴム状態であるか否かは、当該エラストマー主鎖のミクロブラウン運動(主分散)が生じる温度、すなわち粘弾性スペクトルにおけるtanδ曲線の主分散ピーク温度によって近似的に判別することができる。主分散ピーク温度より高温であれば、エラストマーはゴム状態を示す。
エラストマー中のビニル結合量や水素添加率が、tanδ曲線の主分散ピーク温度に影響し、低温条件下での剛性はビニル芳香族単量体単位の含有量に依存し易いため、エラストマーの構造を設計するに当たっては、必要な性能に応じて、ビニル結合量、水素添加率、及びビニル芳香族単量体単位の含有量を設定することが必要である。
前記tanδ曲線の主分散ピーク温度は、主に共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)の結合状態及び水素添加量を調整することにより制御することができる。
本実施形態のエラストマー組成物を構成するブロック共重合体(I)の粘弾性スペクトルにおけるtanδ曲線の主分散ピークは、-35℃以下に存在することが好ましく、より好ましくは-45℃以下に存在し、-55℃以下に存在することがさらに好ましい。
「tanδの主分散ピーク」とは、分子構造における主鎖の運動で、溶融前のtanδ曲線の最大値を指す。最大値を示す温度が-35℃以下であることにより、低温条件下において優れた耐衝撃性を発現する。
また、tanδの主分散ピーク温度の下限値は、特に限定されず、より小さい値に存在することが好ましい。 「tanδの主分散ピーク温度」は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
水素添加したブロック共重合体(I)を作製する方法としては、特に制限されるものではなく、従来から公知の方法を適用できるが、例えば水素添加触媒を用いた方法があげられる。
水素添加触媒としては、例えば、(1)ニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、珪藻土等に担持させた担持型不均一系触媒、(2)ニッケル、コバルト、鉄、クロム等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニュウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水素添加触媒、(3)チタン、ルテニウム、ロジウム、ジルコニウム等の有機金属塩化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水素添加触媒が用いられる。
水素添加触媒としては、具体的には、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報に記載された水素添加触媒を使用することができる。
好ましい水素添加触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特開平8-109219号公報に記載された化合物が使用できる。チタノセン化合物としては、例えば、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格、又はフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。チタノセン化合物は、上記の骨格を1種単独又は2種組み合わせて含んでいてもよい。
還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、及び有機亜鉛化合物等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上述の通り、ブロック共重合体(I)は、低温条件下においてゴム状態かつ低剛性であることが重要である。
<条件(iv)>
本実施形態のブロック共重合体(I)は、前記ブロック(B)中の1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の水素添加されたアルケニル単量体単位(a1)の含有量(以下「ビニル水素添加率」ともいう。)が、単位1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の総量に対して、80%以上であることが好ましい。
ビニル水素添加率:(a1)/(a)が80%以上であることにより、ブロック共重合体(I)は、tanδ曲線の主分散ピーク温度が、-55℃以下となり、極低温条件下における耐衝撃性が向上する。
ブロック共重合体(I)は、重合後、脱溶剤する過程や、本実施形態のエラストマー組成物を構成する環状オレフィン樹脂(II)と溶融下で混錬する過程において、高温下で溶融し剪断をうける。従って、これら高温下に晒された際の熱劣化(分子切断、架橋、ゲル化等の副反応)で高剛性化やtanδピーク温度の高温化が生じて、低温条件下での耐衝撃性を十分に発現しない可能性がある。また、成分(I)の1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)は、側鎖に二重結合を有するため、1,4-結合に由来する単位(b)に比べて上記の熱劣化を起こしやすいと考えられる。
よって、特に、本実施形態のエラストマー組成物に、フィラー等が高配合量で添加されている場合や、従来のエラストマー組成物よりも高温での溶融混練及び/又は成形が必要となる場合には、上記熱劣化による高剛性化や、tanδピーク温度の高温化を抑制するという観点、及び本実施形態のエラストマー組成物の耐衝撃性の向上を図る観点から、ビニル水素添加率(a1)/(a)は、80%以上であることが好ましく、83%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。
なお、アルケニル単位(a1)の含有量及びアルケニル単位(b1)の含有量の合計量が、1,4-結合に由来する単位(b)の含有量以下である場合、上記合計量に対して、アルケニル単位(b1)の含有量の割合:(b1)/((a1)+(b1))は80%以上であることが好ましく、85%以上であればより好ましく、90%以上であればさらに好ましい。これにより、上記熱劣化による高剛性化やtanδピーク温度の高温化を抑制することができ、低温条件下でも十分な耐衝撃性を発現し、本実施形態のエラストマー組成物の耐衝撃性が向上する。
前記ビニル水素添加率(a1)/(a)を80%以上とするためには、上述したブロック共重合体(I)の水素添加反応を、上述の水素添加触媒を用いて、好ましくは55~200℃、より好ましくは60~170℃、さらに好ましくは65~160℃、さらにより好ましくは70~150℃で行うことが有効である。水素添加温度を55℃以上とすることにより、ビニル水素添加率:(a1)/(a)が80%以上となる傾向にあり、水素添加温度が200℃以下であることによって、上述の熱劣化を防ぎ、tanδピーク温度が低温側にシフトする傾向にある。
また、水素添加反応に使用される水素の圧力は、通常0.1MPaであり、好ましくは0.2~10MPa、より好ましくは0.3~5MPaである。
また、水素添加反応時間は、通常3分~10時間であるものとし、好ましくは10分~5時間である。
水素添加反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらいずれの組み合わせでも可能である。
<ブロック共重合体(I)の重量平均分子量>
ブロック共重合体(I)の重量平均分子量は、好ましくは5.0×103~1.0×106であり、より好ましくは1.0×104~5.0×105、さらに好ましくは3.0×104~3.0×105、さらに好ましくは5.0×104~2.0×105である。
ブロック共重合体(I)の重量平均分子量が5.0×103以上であることで、ロック共重合体(I)のべたつきが低減されるため、取り扱い性が向上し、貯蔵・運搬時のブロッキングも抑制できる。また、重量平均分子量が1.0×106以下であることにより、成形加工性に優れる傾向にある。
(成分(II):環状オレフィン系樹脂)
本実施形態のエラストマー組成物は、上述したブロック共重合体(I)と、環状オレフィン系樹脂(II)を含む。
環状オレフィン系樹脂とは、環状オレフィン単量体の重合体であって、側鎖に環状構造を有し、示差走査熱量計(DSC)測定による融点が観測されない非晶質の性質を有するものを指す。
環状おオレフィン系樹脂は、環状オレフィン単量体単位の含有率が高いほど非晶性になり、共重合成分であるエチレン成分の含有率が高くなるほど結晶性を示しやすい。
本実施形態において用いる環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンモノマーの単独重合体、もしくはDSC測定による融点が観測されない程度のエチレンが共重合された環状オレフィン共重合体である。
本実施形態のエラストマー組成物において、環状オレフィン系樹脂(II)として、市販のものを使用する場合は、結晶性か非結晶性かの表示を、目的とするエラストマー組成物の特性に応じて利用する。
環状オレフィンの付加単独重合体、環状オレフィンとα-オレフィンとの付加共重合体、環状オレフィンの開環重合体の主鎖は、その一部もしくは全部が水素添加されていてもよい。
環状オレフィン系樹脂(II)の製造に用いる環状オレフィンとしては、ビシクロ(2.2.1)-2-ヘプテン、5-メチルビシクロ(2.2.1)-2-ヘプテン、5,6-ジメチルビシクロ(2.2.1)-2-ヘプテン、テトラシクロ(4.4.0.12,5.17,10)-3-ドデセン、8-メチルテトラシクロ(4.4.0.12,5.17,10)-3-ドデセン、8,9-ジメチルテトラシクロ(4.4.0.12,5.17,10)-3-ドデセン等が挙げられる。
また、DCPD(ジシクロペンタジエン)、CPD(シクロペンタジエン)とオレフィンとのディールス・アルダー付加体等も、げられる。これらの環状オレフィンは、1種のみを単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
環状オレフィン樹脂(II)が付加共重合体である場合、当該環状オレフィン樹脂(II)を製造するために用いる共重合成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等の、炭素数2~20のα-オレフィン等が挙げられる。
これらのα-オレフィンは、環状オレフィンに対して通常50~90モル%、好ましくは50~70モル%使用される。α-オレフィンの共重合量が多過ぎる場合は、得られる付加共重合体の結晶性が現れることがある。
環状オレフィン樹脂(II)が、開環重合体である場合、当該環状オレフィン樹脂(II)を製造する場合の環状オレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、ビシクロ(2.2.1)-2-ヘプテン、5-メチルビシクロ(2.2.1)-2-ヘプテン、5,6-ジメチルビシクロ(2.2.1)-2-ヘプテン、5-カルボキシメチルビシクロ(2.2.1)-2-ヘプテン、ジシクロペンタジエン、2,3-ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロ(4.4.0.12,5.17,10)-3-ドデセン、8-メチルテトラシクロ(4.4.0.12,5.17,10)-3-ドデセン、8-エチルテトラシクロ(4.4.0.12,5.17,10)-3-ドデセン、8-カルボキシメチルテトラシクロ(4.4.0.12,5.17,10)-3-ドデセン、8-メチル-8-カルボキシメチルテトラシクロ(4.4.0.12,5.17,10)-3-ドデセン等が挙げられる。
付加重合により環状オレフィン樹脂(II)を製造する方法としては、既知の種々の方法を採用することが出できる。
例えば、チーグラー触媒、メタロセン触媒を使用して重合することができる。
より具体的には、環状オレフィンとエチレン等の共重合成分をシクロヘキサン等の炭化水素溶媒中で、可溶性バナジウム化合物、可溶性チタン化合物、可溶性ジルコニウム化合物等と有機アルミニウム化合物等の助触媒を組合わせた触媒を使用して、通常-50~100℃の温度範囲、通常0~50kg/cm2の圧力範囲にて重合することができる。
開環重合により環状オレフィン樹脂(II)を製造する方法も、既知の種々の方法を採用することができる。
例えば、環状オレフィンを、遷移金属化合物又は白金族金属化合物と、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物とを含む触媒系において、必要に応じて、脂肪族、又は芳香族3級アミン等の添加剤の存在下に、通常-20~100℃の温度範囲、通常0~50kg/cm2の圧力範囲にて重合することができる。さらに、重合後の水素添加反応についても既知の水素化触媒の存在下で行うことができる。
環状オレフィン樹脂(II)としては、環状オレフィンとα-オレフィンの付加共重合体又はその水素化物が好ましい。
環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン樹脂としては、市販されている汎用のものを用いることもできる。市販されている環状オレフィン系樹脂としては、例えば、TOPAS(登録商標)(ポリプラスチック社製)、APEL(登録商標)(三井化学社製)、ZEONOR(登録商標)(日本ゼオン社製)、ZEONEX(登録商標)(日本ゼオン社製)、ARTON(登録商標)(JSR社製)等が挙げられる。
成分(II)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のエラストマー組成物は、成分(I)と成分(II)との質量比(成分(I)/成分(II))は、1/99~90/10であり、10/90~90/10であることが好ましく、10/90~70/30であることがより好ましく、10/90~50/50であることがさらに好ましい。
成分(I)/成分(II)の質量比が1/99~90/10であることにより、低温条件下での耐衝撃性を発現するエラストマー組成物が得られる。また1/99~30/70の範囲であることにより、本実施形態のエラストマー組成物の成形体において、高い寸法安定性を維持することができる。
(ブロック共重合体(I)の製造方法)
ブロック共重合体(I)は、例えば、炭化水素溶媒中で、有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いてリビングアニオン重合を行うことにより製造できる。
炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
重合開始剤としては、一般的に共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等の有機アルカリ金属化合物が挙げられる。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
有機アルカリ金属化合物としては、以下に限定されないが、例えば、炭素数1~20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物が挙げられ、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が含まれる。
有機アルカリ金属化合物としては、具体的には、n-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec-ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec-ブチルリチウムと少量の1,3-ブタジエンの反応生成物等が挙げられる。さらに、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1-(t-ブトキシ)プロピルリチウム及びその溶解性改善のために1~数分子のイソプレンモノマーを挿入したリチウム化合物、英国特許2,241,239号明細書に開示されている1-(t-ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム、米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミドリチウム及びヘキサメチルジシラジドリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。
重合開始剤として有機アルカリ金属化合物を用いて、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン重合体を重合する方法としては、従来公知の方法を適用できる。
重合の方法としては、例えば、バッチ重合、連続重合、あるいはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。特に、耐熱性に優れたブロック共重合体(I)を得るためにはバッチ重合が好適である。
重合温度は、0℃~180℃が好ましく、30℃~150℃がより好ましい。重合時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1~10時間である。また、重合系の雰囲気としては、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気が好ましい。重合圧力は、上記温度範囲においてモノマー及び溶媒を液相に維持することができる圧力範囲に設定すればよく、特に限定されるものではない。さらに、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガス等が混入しないように留意する必要がある。
また、上記重合工程の終了時に、2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行ってもよい。
2官能カップリング剤としては、従来公知のものを適用でき、特に限定されるものではない。
2官能カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
また、3官能以上の多官能カップリング剤としては、従来公知のものを適用でき、以下に限定されないが、例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA、1,3-ビス(N-N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の多価エポキシ化合物;一般式R4-nSiXn(ここで、Rは炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3~4の整数を示す)で表されるハロゲン化珪素化合物、例えば、メチルシリルトリクロリド、t-ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素及びこれらの臭素化物等;一般式R4-nSnXn(ここで、Rは炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3~4の整数を示す)で表されるハロゲン化錫化合物、例えば、メチル錫トリクロリド、t-ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等を使用してもよい。
重合工程後に得られたブロック共重合体(I)の溶液は、必要に応じて触媒残渣を除去し、溶媒を分離することによりブロック共重合体(I)が得られる。
溶媒の分離の方法としては、例えば、水素添加反応後の反応液に、アセトン又はアルコール等のブロック共重合体(I)に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えてブロック共重合体(I)を沈殿させて回収する方法、反応液を攪拌下の熱水中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、及び直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等が挙げられる。
なお、ブロック共重合体(I)には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
本実施形態のエラストマー組成物に用いるブロック共重合体(I)は、低温条件下での耐衝撃性を損なわない範囲で、「極性基」を有していてもよい。
極性基はゲル化が起こらない程度の極性基濃度であることが好ましい。
「極性基」は、以下に限定されないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、ボロン酸塩基、アルコキシスズ基、及びフェニルスズ基等からなる群より選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。
上記「極性基」は、ブロック共重合体に対して変性剤を用いることにより形成できる。
変性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、4-メトキシベンゾフェノン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、N-メチルピロリドン、マレイン酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸イミド、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジルメタクリル酸エステル、クロトン酸等が挙げられる。
「極性基」を形成する方法としては、公知の方法が適用でき、特に限定されないが、例えば、溶融混練方法や、各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法等が挙げられる。
また、リビングアニオン重合により、官能基を有する重合開始剤や官能基を有する不飽和単量体を用いて重合する方法、リビング末端に官能基形成もしくは含有する変性剤を付加反応させたりすることによって変性を行う方法、ブロック共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加したブロック重合体に官能基を有する変性剤を付加反応させる方法も挙げられる。
(エラストマー組成物の製造方法)
本実施形態のエラストマー組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が適用できる。
本実施形態のエラストマー組成物の製造方法としては、例えば、公知の各樹脂成分を均一に混合し得る混錬装置を用いて、上述した成分(I)、成分(II)、必要に応じてその他の添加剤を混練し、エラストマー組成物を製造する方法が挙げられる。
混錬装置としては、特に制限されるものでははく、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を挙げることができる。
溶融混錬の温度は100℃~400℃が好ましく、150~350℃がより好ましい。
また、各種ミキサーでのドライブレンドを行うことも可能であり、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、ニーダー、多軸スクリュー押出機、ロール等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。
本実施形態のエラストマー組成物の製造においては押出機による溶融混合法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。
本実施形態のエラストマー組成物の形状は、特に限定されないが、例えば、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等が挙げられる。また、溶融混練後、直接成形品を製造することもできる。
〔成形体〕
本実施形態の成形体は、上述した本実施形態のエラストマー組成物の成形体である。
本実施形態のエラストマー組成物を加工及び/又は成形することによって、超低温条件下で使用するシート、フィルム、容器、筐体等、各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成形品、真空成形品、押出成形品、プレス成形品等、多種多様の成形体を得ることができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態について具体的に説明するが、本実施形態は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例に用いたブロック共重合体(成分(I))の構造の同定及び物性の測定は、次のようにして行った。
〔ブロック共重合体の構造の同定及び物性の測定方法〕
((1)ブロック共重合体のビニル芳香族単量体単位の含有量)
水添前のブロック共重合体のビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)を、紫外分光光度計(島津製作所社製「UV-2450」)を用いて測定した。
((2)ブロック共重合体のビニル結合量)
ビニル結合量は、水添前のブロック共重合体における、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)の総量に対する、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の含有量である。
水添前のブロック共重合体のビニル結合量(%)を、赤外分光光度計(日本分光社製「FT/IR-230」)を用いて測定した。このビニル結合量はハンプトン法により算出した。
((3)分子量及び分子量分布)
水添前のブロック共重合体の分子量分布を、下記のとおりGPC〔装置:LC-10(島津製作所社製商品名)、カラム:TSKgelGMHXL(島津製作所社製商品名、4.6mm×30cm)〕により求めた。
GPCにおいて、溶媒はテトラヒドロフランを用いた。
測定条件は、温度35℃であった。
ブロック共重合体の分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量(Mw)とした。なお、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量とした。
また、ブロック共重合体の分子量分布は、分子量と、分子量と同様に市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)とした。
なお、上記(1)~(3)で測定した値は、水添前のブロック共重合体を試料として測定されているものの、後述する実施例や比較例における水素添加の操作によって、それらの値が変更されるものではない。
((4)水素添加率、ビニル水素添加率)
水素添加率は、上記単位(a)の水素添加されたアルケニル単量体単位(a1)の含有量、及び1,4-結合に由来する単位(b)の水素添加されたアルケニル単量体単位(b1)の含有量の合計量の、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)の総量に対する比率である。
水素添加後の水添ブロック共重合体の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率(%)を、核磁気共鳴装置(BRUKER社製「DPX-400」)を用いて測定した。
また、ビニル水素添加率(%)は、単位(a)に対する単位(a1)の率(ビニル水添率:(a1)/(a))として算出した。
((5)tanδピーク温度)
まず、水添後のブロック共重合体を試料とし、これらの試料を、幅10mm、長さ40mmのサイズのシート状の成形体にカットして測定用サンプルとした。
次に、この測定用サンプルを、装置ARES(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の捻りタイプのジオメトリーにセットし、実効測定長さ25mm、ひずみ0.3%、周波数1Hz、昇温速度3℃/分の条件下で求めた。
tanδピーク温度は、RSI Orchestrator(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の自動測定より検出されるピークから求めた値とした。
〔水添触媒の調製〕
後述する実施例及び比較例において、水添ブロック共重合体を作製する際に用いる水添触媒を、下記の方法により調製した。
攪拌装置を具備する反応容器を窒素置換しておき、これに、乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込んだ。
次に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加した。これを十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。これにより水添触媒を得た。
〔ブロック共重合体の水添物〕
ビニル芳香族化合物と共役ジエンとのブロック共重合体の水添物:水添ブロック共重合体(1)~(14)を、下記のようにして調製した。
得られた水添ブロック共重合体の物性、粘弾性スペクトルにより得られたtanδピーク温度を、下記表1及び表2に示す。
(水添ブロック共重合体(1))
攪拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
まず、スチレン6.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、全モノマー100質量部に対して、重合開始剤としてn-ブチルリチウム0.11質量部と、n-ブチルリチウム1モルに対して、テトラメチルエチレンジアミン(以下TMEDA)0.2モルを添加し、70℃で20分間重合した。
次に、ブタジエン87質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で45分間重合した。
次いで、スチレン6.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。その後ヘプタノールを添加して重合反応を停止させ、ブロック共重合体(1)を得た。
得られたブロック共重合体(1)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の含有量(ビニル結合量:単位(a)/重合体ブロック(B))は25%、重量平均分子量7.60×104であった。
得られたブロック共重合体(1)に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で90ppm添加後、0.2L/sで水素を供給し、温度80℃で水素添加反応を15分間行い、水添ブロック共重合体の溶液を得た。
得られた水添ブロック共重合体の溶液を以下に示す脱灰操作を行うことで、重合開始剤及び水添触媒に起因する金属量の低減を図った。具体的には、水添ブロック共重合体100質量部に対して30質量部の水/硫酸の混合液を添加した。なお、硫酸の添加量は、後工程でデカンターにより除去される水のpHが7.0になるように調製した。
当該溶液をデカンターにより水の量が3質量部になるまで、大部分の水を除去し、炭酸ガスを重合開始剤の金属1モルに対し、0.4モル添加し混合した。その後、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.3質量部添加した。
当該溶液を特公平05-54845号公報に記載のスチームストリッピング法を用い、90~98℃の水中で溶媒の大部分を除去した。その後、クラム濃度が約5質量%の水分散スラリーを二軸押出機に投入することで脱溶剤した。これにより、水添ブロック共重合体(1)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(1)の、重合体ブロック(B)の総含有量を100%としたときの、上記単位(a)の水素添加された単量体単位(水添ビニル結合単位(a1))の含有量、及び1,4―結合に由来する単位(b)の水素添加されたアルケニル単量体単位(b1)の含有量の合計量(水素添加率:((a1)+(b1))/(B))は34%、単位(a)に対する単位(a1)の比率(以下、ビニル水素添加率ともいう)は93%であった。
(水添ブロック共重合体(2))
攪拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
まず、スチレン13.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、全モノマー100質量部に対して、n-ブチルリチウム0.11質量部とn-ブチルリチウム1モルに対して、TMEDA0.2モルを添加し、70℃で20分間重合した。
次に、ブタジエン73質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で45分間重合した。
次いで、スチレン13.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
その後、ヘプタノールを添加して重合反応を停止させ、前記水添ブロック共重合体(1)と同様の水素添加反応を13分行った。
これにより、水添ブロック共重合体(2)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(2)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量27質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量7.80×104であり、水素添加率34%、ビニル水素添加率95%であった。
(水添ブロック共重合体(3))
n―ブチルリチウム1モルに対して、TMEDAの添加量を0.11モルに変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(3)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(3)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量15%、重量平均分子量7.20×104であり、水素添加率34%、ビニル水素添加率95%であった。
(水添ブロック共重合体(4))
n-ブチルリチウム1モルに対して、TMEDAの添加量を0.25モルに変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(4)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(4)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量30%、重量平均分子量7.30×104であり、水素添加率34%、ビニル水素添加率90%であった。
(水添ブロック共重合体(5))
n―ブチルリチウム1モルに対して、TMEDAの添加量を0.74モルに変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(5)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(5)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量50%、重量平均分子量7.30×104であり、水素添加率34%、ビニル水素添加率88%であった。
(水添ブロック共重合体(6))
水素添加反応時間を11分に変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(6)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(6)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量7.60×104であり、水素添加率25%、ビニル水素添加率95%であった。
(水添ブロック共重合体(7))
水素添加反応時間を20分に変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(7)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(7)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量7.60×104であり、水素添加率45%、ビニル水素添加率95%であった。
(水添ブロック共重合体(8))
水素添加反応時間を24分に変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(8)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(8)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量7.40×104であり、水素添加率55%、ビニル水素添加率94%であった。
(水添ブロック共重合体(9))
攪拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
まず、全モノマー100質量部に対して、重合開始剤としてn-ブチルリチウム0.12質量部と、n-ブチルリチウム1モルに対して、TMEDA0.19モルを添加した。
次に、ブタジエン100質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で45分間重合した。その後、ヘプタノールを添加して重合反応を停止させ、前記水添ブロック共重合体(1)と同様の水素添加反応を18分行い、水添ブロック共重合体(9)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(9)は、ビニル結合量25%、重量平均分子量6.80×104であり、水素添加率34%、ビニル水素添加率95%であった。
(水添ブロック共重合体(10))
攪拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
まず、スチレン17.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、全モノマー100質量部に対して、重合開始剤としてn-ブチルリチウム0.10質量部と、n-ブチルリチウム1モルに対して、TMEDA0.2モルを添加し、70℃で20分間重合した。
次に、ブタジエン65質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で45分間重合した。
次いで、スチレン17.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。その後ヘプタノールを添加して重合反応を停止させ、水添ブロック共重合体(1)と同様の水素添加反応を12分行い、水添ブロック共重合体(10)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(10)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量35質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量8.50×104であり、水素添加率34%、ビニル水素添加率93%であった。
(水添ブロック共重合体(11))
n-ブチルリチウム1モルに対して、TMEDAの添加量を1.2モルに変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(11)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(11)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量60%、重量平均分子量7.30×104であり、水素添加率34%、ビニル水素添加率87%であった。
(ブロック共重合体(12))
水素添加反応時間を0分に変更した以外は上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応を行い、ブロック共重合体(12)を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体(12)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量7.60×104であり、水素添加率0%、ビニル水素添加率0%であった。
(水添ブロック共重合体(13))
水素添加反応時間を27分に変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(13)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(13)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量7.60×104であり、水素添加率60%、ビニル水素添加率98%であった。
(水添ブロック共重合体(14))
水素添加反応温度を45℃に変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(14)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(14)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量7.60×104であり、水素添加率34%、ビニル水素添加率78%であった。
(水添ブロック共重合体(15))
水素添加反応時間を45分に変更した以外は、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の操作を行い、重合反応及び水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(15)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(15)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量13質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量7.60×104であり、水素添加率95%、ビニル水素添加率98%であった。
(水添ブロック共重合体(16))
攪拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
まず、スチレン2.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、全モノマー100質量部に対して、重合開始剤としてn-ブチルリチウム0.11質量部と、n-ブチルリチウム1モルに対して、TMEDA0.2モルを添加し、70℃で20分間重合した。
次に、ブタジエン95質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で45分間重合した。
次いで、スチレン2.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。その後ヘプタノールを添加して重合反応を停止させ、上述の水添ブロック共重合体(1)と同様の水素添加反応を16分行い、水添ブロック共重合体(16)を得た。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体(16)は、ビニル芳香族単量体単位の含有量5質量%、ビニル結合量25%、重量平均分子量7.30×104であり、水素添加率34%、ビニル水素添加率93%であった。
Figure 2023072852000001
Figure 2023072852000002
〔実施例1~16〕、〔比較例1~9〕
エラストマー組成物は、得られた水添ブロック共重合体(1)~(16)の成分(I)と、下記成分(II)とを用いて、以下の調製方法に従って調製した。
各例における成分比及び評価結果を、下記表3~5に示す。
(成分(II):環状オレフィン系樹脂)
成分(II)として、以下の市販品を使用した。
環状オレフィン・コポリマー:
TOPAS 8007F(ポリプラスチック社製、表中「8007F」と略記する。)
(エラストマー組成物の調製方法)
二軸押出機の長さ方向の全域の温度設定を180~200℃として、二軸押出機で成分(I)、成分(II)をコンパウンドした。
押出条件は、スクリュー回転速度250rpm、押出量5kg/hとした。
成分(I)、成分(II)は、概して二軸押出機のスロートから供給した。
二軸押出機から吐出したストランドをペレット化し、50℃のオーブンで乾燥させた。
乾燥させたペレットを用いて、物性測定用のASTMダンベルをシリンダー温度250℃、金型温度40℃の条件で射出成形した。
(エラストマー組成物の評価方法)
<(1)耐衝撃性>
上述のASTMダンベルを切り出し、63.5mm×12.7mm×4mmの短冊状の試験片を作製した。
作製した試験片を用いて、JIS K 7110;1999に準じてノッチ付きアイゾット衝撃強さを測定し、耐衝撃性として評価した。
測定温度は23℃、-30℃、-50℃とした。単位はkJ/m2である。
アイゾッド衝撃強さの値が大きいほど、耐衝撃性に優れることを示す。
特に、実施例1、3、4、6では、常温で14.0kJ以上、極低温条件下においても3.5kJ以上の衝撃強さを発現した。
また、実施例11~16において、水添ブロック共重合体(1)の添加量を増やすことで極低温条件下での衝撃強さが向上していることが分かった。
一方、水素添加率0%のブロック共重合体(12)を添加した比較例4及びビニル水素添加率の低いブロック共重合体(14)を添加した実施例9のエラストマー組成物は、上記影響により耐衝撃性が低下した。
<(2)曲げ弾性率>
JIS K 7074に準じて応力-歪曲線を測定し、曲げ弾性率を評価した。
試験片は前記ASTMダンベルを用いて、三点曲げ試験で得られた応力-歪曲線から割線法により、曲げ弾性率を算出した。この値が小さいほど低剛性、つまり柔軟であることを示す。
成分(I)の水添ブロック共重合体を、エラストマー組成物中、1質量以上%の含有量で、成分(II)に添加することで、曲げ弾性率が2000MPa以下となった。
また、比較例8~9から、成分(I)水添ブロック共重合体の添加量を1質量%未満にすると、十分な柔軟性は得られなかったことが分かった。
Figure 2023072852000003
Figure 2023072852000004
Figure 2023072852000005
本発明のエラストマー組成物は、 使用時に極低温環境下に晒される航空機器、冷蔵機器の部品、低温での貯蔵・保管・輸送が必須となる医薬品容器、食品包装材等の用途において、産業上の利用可能性を有している。

Claims (3)

  1. 成分(I):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体(I)と、
    成分(II):環状オレフィン系樹脂と、
    を、含有し、
    前記成分(I)と前記成分(II)との質量比が、成分(I)/成分(II)=1/99~90/10であり、
    前記成分(I)が、下記条件(i)~(iii)を満たす、エラストマー組成物。
    <条件(i)>:
    前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(I)の総量に対して、1.0~30質量%である。
    <条件(ii)>:
    前記重合体ブロック(B)が、1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)と、1,4-結合に由来する単位(b)を含み、前記単位(a)の含有量が、前記重合体ブロック(B)の総量に対して、1.0~55%である。
    <条件(iii)>:
    前記重合体ブロック(B)が、前記1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の水素添加されたアルケニル単量体単位(a1)と、前記1,4-結合に由来する単位(b)の水素添加されたアルケニル単量体単位(b1)を含み、前記アルケニル単量体単位(a1)の含有量及び前記アルケニル単量体単位(b1)の含有量の合計量が、前記重合体ブロック(B)の総量に対して、5.0~55%である。
  2. 前記成分(I)が、さらに、下記条件(iv)を満たす、
    請求項1に記載のエラストマー組成物。
    <条件(iv)>:
    前記1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の水素添加されたアルケニル単量体単位(a1)の含有量が、前記1,2-結合及び/又は3,4-結合に由来する単位(a)の総量に対して80%以上である。
  3. 請求項1又は2に記載のエラストマー組成物の成形体。
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