JP2023072831A - 搬送流増幅装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】紙幣の安定搬送を妨げるような圧力差を搬送管内に生じさせることなく搬送流を増幅させ、紙幣の搬送効率を下げることのない搬送流増幅装置を提供する。【解決手段】搬送トルクの衰えた搬送流を吸引する吸引部94の下流部と、搬送トルクの高い空気流を搬送路21へ噴出させる噴出部の上流部とが重なるように、吸引オーバーラップ領域と噴出オーバーラップ領域を増幅管9に設け、吸引部94から吸引空部9b内へ搬送用エアを引き込む吸引方向VD9が搬送方向TDと成す鋭角(吸引導入角α9)を35〔°〕以下とし、吸引部94の下流部でも十分な搬送トルクを紙幣に与えられるようにする。【選択図】図12
Description
本発明は、上流から下流に向けて搬送用流体が流れる搬送路が形成された搬送管にて、紙面が搬送方向と平行に配された紙葉類を上流から下流へ搬送する紙葉類搬送装置に適用され、搬送流により紙葉類に与える搬送トルクを高めるように搬送流を増幅させる搬送流増幅装置に関する。
従来、薄いプラスチック製あるいは紙製のカードや紙幣といった紙葉類を搬送するとき、ベルトやローラを用いて紙葉類を挟み込んで送り出す紙葉類搬送装置が知られており、市場にも普及している。例えば、パチンコやスロットマシン等の遊技機が設置された遊技場においては、遊技機に隣接させて遊技媒体貸出装置等が設けられており、この遊技媒体貸出装置内で紙幣をストックせずに、紙葉類回収装置の機能を備える紙幣金庫部等まで搬送する場合に紙葉類搬送装置が用いられる。
このような紙葉類搬送装置では、ベルトやローラ等で紙葉類(例えば紙幣)を挟み込む機構を使って搬送しているために、ベルトやローラの継ぎ渡し部分にて紙幣詰まりがしばしば発生することが問題であった。紙幣詰まりを解消するためには、遊技機で遊技中の遊技者に遊技を中断してもらい、遊技島内の不具合箇所を特定し、詰まった紙幣を取り除かなければならず、来店客に迷惑をかけると共に、遊技店員にとっての負担も少なくなかった。
近年においては、搬送管内に搬送用の空気流を発生させ、空気流に乗せて紙幣を搬送する紙葉類搬送装置が提案されている。空気流により紙幣を搬送するなら、ベルトやローラといった機構を使わないので、機構部分で紙幣が詰まるリスクがない。空気搬送の紙葉類搬送装置として、紙幣の後端部をL字状、アール(円弧)状、筒状あるいはジグザグ状に変形させ、変形部に空気流の風圧を作用させることにより、紙幣の搬送をスムーズにしたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、空気流によって紙葉類を直接搬送するのではなく、空気流によって上流から下流へ移動して行く搬送補助体で紙葉類を後方から押し動かして紙葉類を搬送し、搬送管の終端で搬送補助体と紙葉類を分離するようにした技術も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
このような紙葉類搬送装置では、最上流から空気を送り込むと共に最下流で空気を引き込むことで発生させた空気流により紙葉類を搬送するため、長距離搬送路や垂直上昇搬送路などでは、搬送流による紙葉類の搬送トルクが流路全体で十分に保持されていない場合がある。そこで、搬送流の搬送トルクが低減していると想定される搬送路の途中で搬送流を増幅し、紙葉類を下流まで搬送できるような工夫が行われている。
特許文献1に記載の紙葉類搬送装置では、必要時にコンプレッサを駆動して、ノズルの噴出孔から送風管内に圧縮空気を高速で吹き込み、空気流の流速を大きくするブースター(搬送流増幅装置)を適所に設ける技術が開示されている。本特許文献1に記載のブースターを用いれば、管路抵抗によって流速が低下していた空気流の流速を大きくできるので、紙葉類をスムーズに搬送できると記載されている。
また、特許文献2に記載の紙葉類搬送装置では、搬送管による往路と復路の端部でU字状に折り返すターン部の往路側に第1補助流発生装置を、復路側に第2補助流発生装置を夫々設けておき、第1補助流発生装置と第2補助流発生装置を用いて吸引補助動作および押し補助動作を行うものとなっている。吸引補助動作は、第1補助流発生装置側のシャッタ部を閉状態にすると共に第2補助流発生装置側のシャッタ部を開状態に制御することで、ターン部の復路側に開設された空気吸引用の穴から搬送管内の空気を吸い出し、紙幣と搬送補助体をターン部の復路側へ移動させる制御である。押し補助動作は、搬送補助体および紙幣が第1補助流発生装置を過ぎて第2補助流発生装置へ到達する前に開始する制御である。具体的には、第1補助流発生装置側のシャッタ部を開状態にすると共に第2補助流発生装置側のシャッタ部を閉状態に制御することで、ターン部の往路側に開設された空気取り込み用の穴から搬送管の復路側に向けて空気を吹き出し、紙幣と搬送補助体を復路の終端へ押し出す制御である。
また、薄板(例えば、板厚20μm程度のアモルファスリボン)の搬送方向に形成されたコアンダ壁面に沿った沿面流が流れるように、コアンダノズルから高速で圧力流体(例えば、エア)を吹出させ、薄板を沿面流で搬送する薄板の搬送装置も提案されている(例えば、特許文献3を参照)。沿面流を用いた搬送装置は、コアンダ効果による沿面流を生じさせるノズル本体と、ノズル本体に形成されたコアンダ壁面の下流側に連続する送風面が形成された送風ガイドから構成されている。ノズル本体には上流側に突出するような構造がないので、複数の搬送装置を上流から下流に向かって連続配置して、連続した流路を形成できる。各搬送装置から沿面流を吹出させることで、上流側の搬送装置からの沿面流が弱っても、下流側の搬送装置で適切な沿面流に増幅することができる。
しかしながら、特許文献1に記載された発明のように、ブースターによって搬送管内に圧縮空気を送り込むと、搬送管内の空気量が増えることで内圧が高まり、搬送管内の圧力が均一に保たれないことが問題となる。搬送管内の圧力に不均衡があると、その圧力差を解消するように拡散が生じるため、ブースターより上流側にも圧縮空気が拡散することで搬送用の空気流が不安定になり、紙葉類の安定搬送に悪影響が及ぶのである。
また、特許文献2に記載された発明のように、吸引補助動作と押し補助動作を切り換えるために、空気吸引用の穴を開閉するシャッタ部と、空気取り込み用の穴を開閉するシャッタ部とを同時に切り換えなければならないので、制御が複雑になってしまう。しかも、第1補助流発生装置により空気を送り込む部位と、第2補助流発生装置により空気を吸い込む部位は、ある程度以上の距離を離して設けなければならないので、装置全体が大型化してしまうことも問題となる。
さらに、特許文献2に記載の手法では、シャッタ部の動作切り換えに応じて、第1補助流発生装置もしくは第2補助流発生装置の何れか一方が搬送管内の空気流に作用するため、ターン部の内部だけでなく、その上流と下流でも搬送流は一定に保たれない。すなわち、搬送対象である搬送補助体および紙幣の移送位置に応じて、シャッタ部の状態制御を行い、「搬送補助体および紙幣を引き込む空気流」から「搬送補助体および紙幣を後方より押し出す空気流」に切り替えなければ、搬送補助体および紙幣を復路の終端まで搬送できない。よって、本特許文献2に記載の紙葉類搬送装置では、複数の搬送補助体および紙幣を同時並行的に処理できず、搬送効率が低くなることも問題となる。
また、特許文献3に記載された発明のように、コアンダ効果による沿面流を薄板の搬送に用いる場合、コアンダノズルから吹出す沿面流は微量であり、周囲のエアを巻き込んで層流が形成されないと、安定した薄板の搬送は困難である。したがって、上流端から下流端まで密閉度の高い構造の搬送管内で紙葉類を搬送する紙葉類搬送装置の搬送流増幅装置として、特許文献3に記載の搬送技術を単純に適用することはできない。
そこで、本発明は、紙葉類の安定搬送を妨げるような圧力差を搬送管内に生じさせることなく搬送流を増幅させることが可能で、紙葉類の搬送効率を下げることのない搬送流増幅装置の提供を目的とする。
前記課題を解決するために、上流から下流に向けて搬送用流体が流れる搬送路が形成された搬送管にて、紙面が搬送方向と平行に配された紙葉類を上流から下流へ搬送する紙葉類搬送装置に適用され、搬送流により前記紙葉類に与える搬送トルクを高めるように前記搬送流を増幅させる搬送流増幅装置であって、前記紙葉類は、前記搬送方向と平行な向きに配される2つの搬送平行辺と前記搬送方向と直交する向きに配される2つの搬送直交辺とを備える矩形状とし、上流の前記搬送路から流れてくる上流搬送流の一部を、前記紙葉類の前記搬送平行辺に対向する吸引部から吸引する搬送流吸引手段と、下流の前記搬送路に向けて流す下流搬送流の一部を、前記紙葉類の紙面に対向する噴出部から噴出する搬送流噴出手段と、を設け、前記搬送流吸引手段により搬送トルクの衰えた前記搬送流を吸引すると共に、前記搬送流噴出手段により搬送トルクの高い空気流を前記搬送路内へ噴出させ、前記搬送流吸引手段の前記吸引部における下流側に設けた吸引オーバーラップ領域と、前記搬送流噴出手段の前記噴出部における上流側に設けた噴出オーバーラップ領域とが、前記搬送方向に重なって生ずるようにし、前記搬送流吸引手段は、前記搬送路を流れる前記搬送用流体が前記吸引部を介して導入される吸引路の少なくとも上流部における吸引方向が、前記搬送路における前記搬送方向と成す鋭角である吸引導入角を、所定の円滑導入角度以下に制限したことを特徴とする。
また、上記構成において、前記円滑導入角度は、35〔°〕であってもよい。
また、上記構成において、前記吸引部は、前記吸引導入角に応じて増減する前記吸引路の前記上流部における吸引量が、必要十分な基準吸引量となる位置に上流端部を備えるものでもよい。
本発明によれば、搬送流吸引手段により搬送トルクの衰えた搬送流を吸引すると共に、搬送流噴出手段により搬送トルクの高い空気流を搬送路へ噴出させることにより、搬送流増幅装置の上流側と下流側で紙葉類の安定搬送を妨げるような圧力差を生じさせない。また、搬送路内で複数の紙葉類が比較的近接した状態で搬送されていても、それぞれの紙葉類に与える搬送トルクを高めることができるので、紙葉類の搬送効率を低下させることもない。更に、搬送流吸引手段の吸引オーバーラップ領域と搬送流噴出手段の噴出オーバーラップ領域とが、搬送方向に重なって生ずるようにすることで、搬送トルクの衰えた搬送流の吸引動作から搬送トルクの高い搬送流の噴出動作へ滑らかに移行させることができる。加えて、搬送路から吸引路へ搬送用流体を吸引する吸引方向と搬送方向とが成す鋭角である吸引導入角を、所定の円滑導入角度以下に制限することで、紙葉類に与える搬送トルクが極端に減ぜられる事を防ぎ、円滑な紙幣搬送を可能にする。
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る搬送流増幅装置を適用可能な紙葉類搬送装置の実施形態につき説明する。なお、搬送対象である紙葉類とは、紙幣や書面といった保形性のある紙類(ティッシュペーパーのように、搬送流に対して保形性を有しないものを除く)、樹脂製のフィルム(プラスティック紙幣を含む)や薄いカード類などが適用できる。以下においては、紙製の紙幣(一対の長辺と一対の短辺からなる矩形状の紙幣)を搬送対象とした紙幣搬送装置として説明する。また、搬送用流体としては、気体に限らず液体を用いることも可能であるが、以下の紙幣搬送装置においては、空気(エア)を搬送用流体として用いる。
なお、本発明の実施形態を説明するに先立ち、図1~図10に基づいて、参考形態である搬送流増幅装置を説明する。この参考形態は、本実施形態の搬送流増幅装置で用いる増幅管とは異なる構造の増幅管を用いているため、本発明と同等の効果を発揮できないが、本実施形態の搬送流増幅装置における増幅管と同様の基本構造を備えるものである。
図1(A),(B)に示す紙幣搬送装置1は、例えば遊技店に設置され、遊技媒体貸出装置やカード販売装置等へ投入された紙幣PMを回収して一箇所へ集めるような使い方が可能である。種々の搬送管2(例えば、直線搬送管2aや湾曲搬送管2b、捻れ管等)を繋いで最上流から最下流まで連続した搬送路21を形成する。この搬送路21は、上流端と下流端が隣接するU字状の流路である(特に、図1(A)を参照)。なお、図1(B)は湾曲搬送管2bの下流側となる搬送路21を側方から見た図である。以下では、便宜上、紙幣PMが搬送される搬送方向に向かって紙面の左側を左方向、同じく紙面の右側を右方向、紙幣PMの紙面に直交する縦方向を上下方向と呼ぶ。
遊技店において多数の遊技機が列設された島設備に紙幣搬送装置1を適用する場合、島設備の一端に設けられた島金庫3に搬送流発生装置31と紙幣回収装置32を設ければ、搬送流発生装置31が搬送路21の最上流となり、紙幣回収装置32が搬送路21の最下流となる。そして、搬送管2の途中に適宜接続された紙葉類送り込み装置としての紙幣送り込み装置41から搬送路21へ送り込まれた紙幣PMが搬送対象となり、下流に向けて搬送されて行くのである。すなわち、搬送流発生装置31により発生させた搬送流TF(搬送方向に向かう搬送用エアの流れ)を下流へ導く搬送路21が形成された搬送管2にて、紙葉類としての紙幣PMを上流から下流へ搬送し、最下流に設けられた紙葉類回収装置としての紙幣回収装置32にて紙幣PMを回収する紙幣搬送装置1となる。搬送管2内を搬送されてくる紙幣PMは、図1(B)に示すように、搬送方向と平行な長辺である第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bと、搬送方向に直交する短辺である第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bとを備える長四角形状である。
なお、搬送流発生装置31は、搬送管2の最上流部から搬送用エアを吐出して搬送流TFを生じさせると共に、紙幣回収装置32に到達した搬送用エアの吸引を行うことにより、搬送管2と島金庫3の内部で搬送用エアを循環させている。また、紙幣送り込み装置41の手前側には紙幣識別機42が設けられ、遊技媒体貸出装置やカード販売装置等へ投入された紙幣PMの真贋判定を紙幣識別機42にて行う。紙幣識別機42にて適正と判定された紙幣PMだけが紙幣送り込み装置41へ導入され、紙幣送り込み装置41から搬送管2に送り込まれ、搬送流TFによって搬送路21の最下流まで搬送され、紙幣回収装置32にて回収される。
理想的に密閉された搬送路21内においては、基本的に圧力一定の法則が成立し、搬送管2内の圧力及び速度が一定となる搬送流TFが生ずるはずであるが、現実には搬送管2内を完全に密閉空間とすることは困難である。紙幣搬送装置1を施工する際に、各搬送管2や紙幣送り込み装置41の接続部位に密閉処理を施すが、搬送流TFの漏れを完全に防ぐことは困難であり、流路長が長い搬送路21の下流側ほど搬送流TFの圧力及び速度が下がる傾向となる。また、紙幣搬送装置1のように湾曲搬送管2bを用いた湾曲状の流路や、紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bが縦向きから横向きへ90゜回転する捻れ管を用いた捻れ流路では、流路形状に応じた流動抵抗の違いによって、搬送流TFの圧力及び速度に違いが発生する。更に、紙幣PMを低位置から高位置へ上向きに搬送する垂直流路があるような場合、紙幣PMを水平方向に搬送する場合と比べて強い搬送力が必要になる。従って、搬送路21の流路長が長い場合、湾曲流路や捻れ流路や垂直流路がある場合には、適宜なタイミングで搬送流TFを増幅して紙幣PMに与える搬送トルクを高める必要がある。
上述した紙幣搬送装置1は長距離流路であると共に、途中で搬送方向が180゜変わる湾曲流路を含むものである。搬送用エアを吐出する最上流端と、搬送用エアを吸引する最下流端においては、紙幣PMの搬送に必要十分な搬送トルクを与えられる搬送流TFが流れるものの、その途中においては、紙幣PMの搬送に十分な搬送トルクを与えることができない場合がある。特に、湾曲搬送管2bの下流側では、搬送流TFの圧力や速度が衰えてしまい、紙幣PMの安定搬送が妨げられる危険性もある。そこで、湾曲搬送管2bの下流側適所には、搬送流増幅装置5を設けてある。
本参考形態に係る搬送流増幅装置5は、搬送流TFにより紙幣PMに与える搬送トルクを高めるように搬送流TFを増幅させる装置で、例えば、上流の搬送管2と下流の搬送管2の間に連結する増幅管6と、ブロワ7と、吸引パイプ81と、吐出パイプ82等で構成する。増幅管6は、内空部が搬送路21の一部として機能する紙幣搬送体61と、紙幣搬送体61の上面と下面に夫々設けた第1吸引体62aおよび第2吸引体62bと、紙幣搬送体61の左右両側面に夫々設けた第1噴出体63aおよび第2噴出体63bと、を備える。なお、本参考形態の搬送流増幅装置5では、単独のブロワ7によって第1,第2吸引体62a,62bからの吸引動作と第1,第2噴出体63a,63bへの吐出動作を全て行うものとしたが、吸引器や送風器を用いて、個別に吸引動作や吐出動作を行うようにしても構わない。
増幅管6の第1,第2吸引体62a,62bは、吸引パイプ81を介してブロワ7の吸引口に接続することで搬送路吸引手段として機能し、上流の搬送路21から流れてくる上流搬送流の一部を、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bに対向する吸引部から吸引する。また、増幅管6の第1,第2噴出体63a,63bは、吐出パイプ82を介してブロワ7の吐出口に接続することで搬送流噴出手段として機能し、下流の搬送路21に向けて流す下流搬送流の一部を、紙幣PMの紙面に対向する噴出部から噴出する。このように、搬送流吸引手段により搬送トルクの衰えた上流搬送流を吸引すると共に、搬送流噴出手段により搬送トルクの高い空気流を上流搬送流の一部として搬送路21内へ噴出させれば、増幅管6の上流側と下流側で紙幣PMの安定搬送を妨げるような圧力差を生じさせない。また、搬送路21内で複数の紙幣PMが比較的近接した状態で搬送されていても、それぞれの紙幣PMに与える搬送トルクを高めることができるので、紙幣PMの搬送効率を低下させることもない。
なお、搬送流増幅装置5では、搬送路21内を搬送される紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bに対向する上部および下部から搬送用エアを吸引し、紙幣PMの左右側面に向けて搬送用エアを噴出させることが重要である。本参考形態の搬送流増幅装置5と対比するために、紙幣搬送装置101が備える第1対比用搬送流増幅装置105の動作状態を図2に示す。
第1対比用搬送流増幅装置105は、上流側の搬送管102と下流側の搬送管102と接続される増幅管106の紙幣搬送部1061から吸引パイプ1062a,1062bを介して搬送用エアを吸引し、その下流適所に接続された吐出パイプ1063a,1063bを介して搬送用エアを噴出する。搬送用エアの吸引及び噴出のためにブロワ107a,107bを用いる。このような構造の第1対比用搬送流増幅装置105では、図2(A)に示すように、上流の搬送路1021から流れてくる上流搬送流TF-Uの一部を吸引し、増幅した搬送用エアの流れを下流搬送流TF-Dの一部として噴出することが期待される。
しかしながら、第1対比用搬送流増幅装置105の構造では、紙幣搬送部1061の左右からほぼ均等に搬送用エアを吸引しているため、紙幣PMの通過位置が中心から左右にずれると、吸引パイプ1062a,1062bの吸引流に巻き込まれて、吸引口を塞ぐように張り付いてしまう危険性がある。加えて、吸引口よりも下流に噴出口を設けてあっても、吐出パイプ1063a,1063bから噴出された搬送用エアの一部は、下流へ向かわないで、上流の吸引口へ回り込み、吸引口から吸い込まれてしまう逆流を生じさせてしまう(図2(B)を参照)。搬送流TFと逆向きの気流が搬送路1021内に生じてしまうと、紙幣PMが増幅管106の途中で停滞する現象が発生し、紙幣PMの安定搬送を阻害することとなる。
このように、増幅管106における上流の側面から管内の搬送用エアを吸引して下流の側面から管内へ搬送用エアを噴出する構造の第1対比用搬送流増幅装置105では、有効な増幅機能を発揮できるとは言えない。そこで第1対比用搬送流増幅装置105とは逆に、下流の側面から管内の搬送用エアを吸引して下流の側面から管内へ搬送用エアを噴出する第2対比用搬送流増幅装置205を備えた紙幣搬送装置201を図3に示す。
第2対比用搬送流増幅装置205は、上流側の搬送管202と下流側の搬送管202と接続される増幅管206の紙幣搬送部2061から吸引パイプ2062a,2062bを介して搬送路2021内の搬送用エアを吸引し、その上流適所に接続された吐出パイプ2063a,2063bを介して搬送路2021へ搬送用エアを噴出する。搬送用エアの吸引及び噴出のためにブロワ207a,207bを用いる。このような構造の第2対比用搬送流増幅装置205では、図3(A)に示すように、上流の搬送路2021から流れてくる上流搬送流TF-Uに搬送トルクを高めた空気流を吐出パイプ2063a,2063bから噴出して合流させ、その一部を下流の吸引パイプ2062a,2062bから吸引する。そして、吸引パイプ2062a,2062bから吸引されずに下流へ至った搬送トルクの高い気流が十分に含まれる下流搬送流TF-Dとなることで、搬送流TFを増幅させることが期待される。
しかしながら、第2対比用搬送流増幅装置205の構造では、吐出パイプ2063a,2063bから噴出された高搬送トルクの搬送用エアの殆どは吸引パイプ2062a,2062bから吸引される循環流となってしまう(図3(B)を参照)。このため、第2対比用搬送流増幅装置205による増幅効果は殆ど無いか微量にとどまり、下流搬送流TF-Dの搬送トルクを十分に高められるものではない。
次に、これら第1,第2対比用搬送流増幅装置105,205で生ずる不具合を解消できる本参考形態の搬送流増幅装置5について説明する。図4は増幅管6を上流側より見た俯瞰斜視図で、図5は増幅管6を下流側より見た俯瞰斜視図で、図6は増幅管6の搬送方向に平行な縦断面図(図4におけるVI-VI線の矢視断面図)である。増幅管6は、内部に紙幣搬送空部6aが形成される紙幣搬送体61と、内部に吸引空部6bが形成される第1吸引体62aおよび第2吸引体62bと、内部に噴出空部6cが形成される第1噴出体63aおよび第2噴出体63bと、を備える。
紙幣搬送体61は、四側壁で囲まれて上流端と下流端が解放された縦長直方体の紙幣搬送空部6aが形成されるように、第1長壁部611と第2長壁部612と第1短壁部613と第2短壁部614とで構成する。第1長壁部611は、紙幣PMの一方(例えば、搬送方向に向かって左側)の面に対向する側壁部として機能する。第2長壁部612は、紙幣PMの他方(例えば、搬送方向に向かって右側)の面に対向する側壁部として機能する。第1短壁部613は、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aに対向する上壁部として機能する。第2短壁部614は、紙幣PMの第2搬送平行辺PM1bに対向する下壁部として機能する。また、紙幣搬送体61の上流側には上流側搬送管連結部615aを、下流側には下流側搬送管連結部615bを夫々設け、上流側の搬送管2および下流側の搬送管2と接続することで、紙幣搬送空部6aが搬送路21の一部となる。
第1吸引体62aは、上流端が紙幣搬送体61の第1短壁部613に接続されて紙幣搬送空部6aと連通し、下流端が解放される吸引空部6bが形成されるように、第1側壁部621と第2側壁部622と上流突出壁部623と下流突出壁部624とで構成する。第1側壁部621は、紙幣搬送体61の第1長壁部611を上方へ延長して上流突出壁部623と下流突出壁部624の間を接続する壁体形状である。第2側壁部622は、第1側壁部621と左右対称な壁体形状である。上流突出壁部623は、紙幣搬送体61の第1短壁部613の上流適所(例えば、上流側搬送管連結部615aの後端位置)から徐々に上方への突出量が増えつつ略水平方向へ滑らかに変化する内壁面623a(例えば、図6を参照)を呈する壁体形状である。下流突出壁部624は、上流突出壁部623の内壁面623aから吸引部64(例えば、図6を参照)を隔てた下流位置にて徐々に上方への突出量が増えつつ略水平方向へ滑らかに変化する内壁面624a(例えば、図6を参照)を呈する壁体形状である。また、第1吸引体62aの最下流部には、吸引路接続部625を設けてあり、この吸引路接続部625を介して吸引パイプ81を接続すれば、ブロワ7への吸引路が形成される。
第2吸引体62bは、上流端が紙幣搬送体61の第2短壁部614に接続されて紙幣搬送空部6aと連通し、下流端が解放される吸引空部6bが形成されるように、第1側壁部621と第2側壁部622と上流突出壁部623と下流突出壁部624とで構成する。なお、第2吸引体62bは、上述した第1吸引体62aと上下対称な構造であるから、詳細な構造説明は省略する。
第1噴出体63aは、上流端が解放され、下流端が紙幣搬送体61の第1側壁部621に接続されて紙幣搬送空部6aと連通する噴出空部6cが形成されるように、上流側壁部631と下流側壁部632と第1端壁部633と第2端壁部634とで構成する。上流側壁部631は、上流から下流に向かって徐々に第1側壁部621に近づき、噴出部65(例えば、図6を参照)の上流端にて第1側壁部621と接続される縦方向の壁体形状である。下流側壁部632は、上流側壁部631よりも外側に位置し、上流から下流に向かって徐々に第1側壁部621に近づき、噴出部65の下流端にて第1側壁部621と接続される縦方向の壁体形状である。第1端壁部633は、紙幣搬送体61の第1短壁部613を第1長壁部611よりも左側方へ延長して上流側壁部631と下流側壁部632の上端間を接続する壁体形状である。第2端壁部634は、紙幣搬送体61の第2短壁部614を第1長壁部611よりも左側方へ延長して上流側壁部631と下流側壁部632の下端間を接続する壁体形状である。また、第1噴出体63aの最上流部には、噴出路接続部635を設けてあり、この噴出路接続部635を介して吐出パイプ82を接続すれば、ブロワ7からの噴出路が形成される。
第2噴出体63bは、上流端が解放され、下流端が紙幣搬送体61の第2側壁部622に接続されて紙幣搬送空部6aと連通する噴出空部6cが形成されるように、上流側壁部631と下流側壁部632と第1端壁部633と第2端壁部634とで構成する。なお、第2噴出体63bは、上述した第1噴出体63aと左右対称な構造であるから、詳細な構造説明は省略する。
上記のように構成した増幅管6における吸引部64は、最上流の第1吸引口641と、その下流に位置する第2吸引口642と、その下流に位置する第3吸引口643と、最下流に位置する第4吸引口644とを介して、紙幣搬送空部6a内から搬送用エアを吸引する。これら第1~第4吸引口641~644は、紙幣搬送体61もしくは第1,第2吸引体62a,62bの一構造として形成しても良いが、本増幅管6においては、吸引ガイド部材66によって形成するものとした。
吸引ガイド部材66の詳細構造を図7に基づき説明する。図7(A)は、吸引ガイド部材66を吸引空部6b側より見た斜視図である。図7(B)は、吸引ガイド部材66を紙幣搬送空部6a側より見た斜視図である。吸引ガイド部材66は、平板な板状の遮蔽ベース661に開設した略四角形状の貫通孔を第1~第4吸引口641~644とするもので、左右一対の取付片662,662によって、第1,第2長壁部611,612の上部あるいは下部に取り付ける。
吸引ガイド部材66を取り付けることで吸引部64に形成される第1~第4吸引口641~644は、下流ほど搬送方向に直交する方向(左右方向)の開口幅を狭めて開口面積を小さくするようにした。すなわち、最上流の第1吸引口641が最も左右方向の開口幅が広く、その下流に位置する第2吸引口642の左右方向開口幅は若干狭く、更に下流に位置する第3吸引口643の左右方向開口幅は更に狭く、最下流に位置する第4吸引口644の左右方向開口幅は最も狭くした(特に、図7(B)を参照)。このようにすれば、最上流の第1吸引口641の開口面積が最も大きく、その下流に位置する第2吸引口642の開口面積は若干小さくなり、更に下流に位置する第3吸引口643の開口面積は更に小さく、最下流に位置する第4吸引口644の開口面積は最も小さくなる。
なお、第1~第4吸引口641~644おける搬送方向と同じ方向の開口幅はほぼ同じになるよう形成したので、第1~第4吸引口641~644における左右方向開口幅の違いが吸引量の違いとなる。よって、最上流の第1吸引口641から吸引空部6bに吸引される吸引量が最も多く、その下流に位置する第2吸引口642から吸引空部6bに吸引される吸引量は若干少なくなり、その下流に位置する第3吸引口643から吸引空部6bに吸引される吸引量は更に少なくなり、最下流に位置する第4吸引口644から吸引空部6bに吸引される吸引量は最も少なくなる。すなわち、吸引部64は、上流側での吸引量が多く、下流に行くほど吸引量が少なくなってゆくのである。
ここで、紙幣搬送空部6a内から搬送用エアを吸引空部6bに吸引する吸引部64と、噴出空部6cから紙幣搬送空部6aに搬送用エアを噴出する噴出部65について説明する。本例の増幅管6における吸引部64は、紙幣搬送体61の上下部で第1,第2吸引体62a,62bが接続される部位に形成される領域である。一方、本例の増幅管6における噴出部65は、紙幣搬送体61の左右側部で第1,第2噴出体63a,63bが接続される部位に形成される領域である。いわば、吸引部64は紙幣搬送体61の第1,第2短壁部613,614側である横面上に形成されており、噴出部65は紙幣搬送体61の第1,第2長壁部611,612側である縦面上に形成されているので、横面上の吸引部64と縦面上の噴出部65が重なることはない。しかしながら、搬送方向に直交する面内で見ると、上流からある部分までは吸引部64のみが存在する範囲があり、その下流側には吸引部64と噴出部65が同時に存在する範囲があり、更に下流側には噴出部65のみが存在する範囲がある。したがって、吸引部64は、噴出部65と搬送方向に重なっていない上流側の吸引独立領域64aと、噴出部65と搬送方向に重なっている下流側の吸引オーバーラップ領域64bとに分けられる。同様に、噴出部65は、吸引部64と搬送方向に重なっていない下流側の噴出独立領域65aと、吸引部64と搬送方向に重なっている上流側の噴出オーバーラップ領域65bとに分けられる。搬送方向に対して吸引オーバーラップ領域64bと噴出オーバーラップ領域65bとが重なっている範囲の紙幣搬送空部6aでは、吸引空部6bへの吸引動作と噴出空部6cからの噴出動作が同時に行われるので、相互に影響し合って不具合を生じないような配慮が必要である。
上述したように、吸引部64の第1~第4吸引口641~644は、下流ほど左右方向の開口面積を狭めており、吸引オーバーラップ領域64bに設けた第3,第4吸引口643,644から吸引空部6bへの吸引量は低く抑えられるので、噴出部65へ悪影響が及ぶことを抑制できる。その一方、吸引独立領域64aに設けた第1,第2吸引口641,642の開口面積は大きいので、紙幣搬送空部6a内の搬送用エアを吸引空部6bへ十分に吸引することができる。したがって、第1~第4吸引口641~644の開口面積が下流ほど狭まるように形成されていても、吸引部64全体としては、必要十分な吸引能力を発揮できるのである。
また、吸引部64の第1~第4吸引口641~644は、第1誘導片663と第2誘導片664と第3誘導片665とによって、格子状に区画形成されている。これら第1~第3誘導片663~665は、第1~第4吸引口641~644から吸引された搬送用エアを吸引方向へ誘導する誘導片として機能する。
第1誘導片663は、第1吸引口641と第2吸引口642を区画する部位に設けられた翼状の薄板材で、上流突出壁部623の内壁面623aおよび下流突出壁部624の内壁面624aに沿った吸引方向と略平行に吸引空部6b内へ延出する。第1誘導片663における上流側の面である上流側誘導面663aは吸引方向と略平行な平坦面である。一方、第1誘導片663における下流側の面である下流側誘導面663bは、第1,第2吸引口641,642の開口近傍で一旦膨らみ、延出側端部で上流側誘導面663aと交わる膨出面である。すなわち、第1誘導片663の縦断面は、航空機の翼断面に類似した形状となり(特に、図7(C)を参照)、紙幣搬送空部6aから吸引空部6bへ搬送用エアを吸い込む吸引効率を高めるように機能する。以下、第1誘導片663による誘導機能を説明する。
搬送流増幅装置5が動作しているとき、吸引空部6bは紙幣搬送空部6aよりも陰圧であるから、搬送用エアが紙幣搬送空部6aから吸引空部6bへ向かう気流が生じており、第1吸引口641および第2吸引口642を通過する搬送用エアの一部は、上流側誘導面663aまたは下流側誘導面663bに至る。吸引方向に平坦な上流側誘導面663aは、搬送用流体を吸引方向へ誘導する安定した気流を生じさせる。一方、搬送方向から吸引空部6b内の吸引方向へ滑らかに湾曲する誘導曲面である下流側誘導面663bは、コアンダ効果により搬送用エアを引き込んで気流の速度を高めるので、単位時間当りの吸引量を増やすことができる。
第2誘導片664は、第2吸引口642と第3吸引口643を区画する部位に設けられた翼状の薄板材で、上流側誘導面664aおよび下流側誘導面664bを備える。第3誘導片665は、第3吸引口643と第4吸引口644を区画する部位に設けられた翼状の薄板材で、上流側誘導面665aおよび下流側誘導面665bを備える。これら第2,第3誘導片664,665も、第1誘導片663と同様の誘導機能を発揮する。なお、第1吸引口641の上流側には誘導片を設けていないが、遮蔽ベース661の上流端に上流側誘導面661aを設けて、上流突出壁部623の内壁面623aへ段差無く滑らかに連なる誘導曲面が形成されるようにした。
また、第1~第3誘導片663~665を設けることで、紙幣搬送空部6aを通過中の紙幣が吸引空部6bへ引き込まれることを防止できる。そもそも、吸引部64を設けてある上下部から紙幣搬送空部6a内の搬送用エアを吸引して生じる吸引流が、搬送中の紙幣PMに対して与える影響は無視できる程度である。しかしながら、長手方向に折り目を付けられた紙幣PMは、上下方向の吸引流から影響を受けて吸引部64に引き込まれる危険性があるので、第1~第3誘導片663~665によって格子構造にしておけば、紙幣PMの引込み防止に有効である。
次に、増幅管6における噴出部65について説明する。図6に示すように、噴出部65の噴出オーバーラップ領域65bには第1噴出口651を設け、噴出独立領域65aには上段第2噴出口652aおよび下段第2噴出口652b、上段第3噴出口653aおよび下段第3噴出口653bを設けた。なお、噴出独立領域65aと噴出オーバーラップ領域65bに夫々設ける噴出口の数は特に限定されず、より多くの噴出口を分散配置するようにしても構わない。例えば、噴出オーバーラップ領域65bに複数の噴出口を設けることで、噴出オーバーラップ領域65bからより多くの噴出流を噴出させるようにしても良い。
噴出オーバーラップ領域65bに設けられる第1噴出口651は、第1吸引体62a側の吸引オーバーラップ領域64bと第2吸引体62b側の吸引オーバーラップ領域64bからほぼ等しく離隔するように、第1,第2長壁部611,612の上下方向の中央部に設けた開口である。上述したように、吸引オーバーラップ領域64bでの吸引流を弱めるようにしたことに加え、噴出オーバーラップ領域65bの第1噴出口651を両側の吸引オーバーラップ領域64bから離隔させた中央部に設けることで、第1噴出口651からの噴出流が吸引部64に吸い込まれて循環流になることを効果的に抑制できる。
一方、噴出独立領域65aの上流側の上部には上段第2噴出口652aを設け、その下方に下段第2噴出口652bを設ける。上段第2噴出口652aの適宜下流には上段第3噴出口653aを設け、その下方に下段第3噴出口653bを設ける。噴出独立領域65aに設ける噴出口は、上側(第1吸引体62a側)或いは下側(第2吸引体62b側)に寄せるように設けても、噴出口からの噴出流が吸引部64に吸引されて循環流となる可能性は極めて低い。
噴出部65に設ける第1噴出口651、上段第2噴出口652a、下段第2噴出口652b、上段第3噴出口653aおよび下段第3噴出口653bは、全て噴出空部6cと連通するように流路が形成されている(特に、図8(A),(B)を参照)。第1,第2噴出体63a,63bの下流側壁部632の下流側内面に沿うように配された縦方向の第1仕切体636は、上段第3噴出口653aおよび下段第3噴出口653bへ向かう流路と、第1噴出口651および上段第2噴出口652aおよび下段第2噴出口652bへ向かう流路とを仕切る壁体である。また、上流側壁部631と第1仕切体636の間を横方向に仕切る上側の壁体である第2上段仕切体637aによって、上段第2噴出口652aへ向かう流路と、第1噴出口651へ向かう流路とが仕切られる。また、上流側壁部631と第1仕切体636の間を横方向に仕切る下側の第2下段仕切体637bによって、第1噴出口651へ向かう流路と、下段第2噴出口652bへ向かう流路とが仕切られる。このように、ブロワ7から供給された高圧・高速の気流は噴出空部6c内で分岐し、各噴出口から紙幣搬送空部6a内に噴出されることとなる。
第1長壁部611の内壁面611aと、第2長壁部612の内壁面612aは、搬送方向とほぼ平行な平坦面であり、そのまま上流端から下流端まで平坦面のままでも構わないが、本構成例の増幅管6においては、一部で紙幣搬送空部6a(搬送路21)の左右幅を狭める突出形状とした。具体的には、第1,第2長壁部611,612における第1噴出口651の下流側に、上流から下流に向かって滑らかに突出量が増える曲面形状の湾曲面616aを備える突壁部616を設けた(特に、図9(A)を参照)。突壁部616の下流端である下流端面616bは、第1,第2長壁部611,612の内壁面611a、612aと面一になるように窪む平坦面で、この下流端面616bに上段第2噴出口652aおよび下段第2噴出口652bが開口する(特に、図9(B)を参照)。最下流の上段第3噴出口653aおよび下段第3噴出口653bは、第1,第2長壁部611,612の内壁面611a、612aに開口し、適宜な角度で下流に向かって吹き出すような誘導構造が第1,第2長壁部611,612の壁内に設けられている。
第1長壁部611と第2長壁部612において噴出オーバーラップ領域65bが対向する部位に突壁部616を設けることで、搬送路21の横幅(紙幣搬送空部6aの左右幅)を狭めて搬送流TFの流動抵抗を高める隘路構造BNが形成される。上述したように、紙幣搬送空部6aの上部および下部の吸引部64から搬送用エアが吸引されるため、噴出オーバーラップ領域65bに至る部位では路内圧力が低下してしまうが、噴出オーバーラップ領域65bに隘路構造BNを設けて流動抵抗を高めれば、路内圧力を高めることができる(例えば、図10を参照)。噴出オーバーラップ領域65bでは、下流ほど路内圧力が高まるので、噴出独立領域65aと噴出オーバーラップ領域65bとの境界部位において極端な路内圧力差が生じることを防げる。仮に、噴出オーバーラップ領域65bの路内が噴出独立領域65aの路内よりも顕著な陰圧になっていた場合、噴出独立領域65aの上段第2噴出口652aおよび下段第2噴出口652bから噴出された搬送用エアが上流側の吸引部64に吸引され易くなり、下流から上流に向かう逆流が生じる危険性がある。したがって、噴出オーバーラップ領域65bに隘路構造BNを設け、敢えて流動抵抗を高めることにより、吸引部64の下流側に噴出部65を重ねるようにて設けても、噴出独立領域65aからの噴出流が上流の吸引部64より吸引される逆流現象を防ぐことができ、紙幣PMの安定搬送に有効である。
また、隘路構造BNにおける路内圧力が、下流に位置する噴出独立領域65aの路内圧力よりも高くなるときには、圧力差を減少させるように、隘路構造BNの流路を抜ける搬送流TFの速度が上がるので、紙幣PMに与える搬送トルクを高めることに寄与できる。この隘路構造BNによって流路幅をどの程度狭くするかは、突壁部616の突出量によって任意に設定できるので、吸引部64による吸引状態や噴出部65による噴出状態等の諸要件を勘案して適宜に設定すればよい。さらに、隘路構造BNの下流端となる下流端面616bに上段第2噴出口652aおよび下段第2噴出口652bを設けておけば、隘路構造BNを抜けた紙幣PMが第1長壁部611または第2長壁部612の内壁面に張り付いて停滞するような事態を効果的に防げる。
また、噴出オーバーラップ領域65bに隘路構造BNを形成するだけであれば、突壁部616の一面を湾曲面616aとせず、突出量が搬送方向の距離に比例する平坦な傾斜面としても構わない。しかしながら、本構成例の増幅管6においては、第1仕切体636の内面が第1噴出口651に至る曲面と滑らかに繋がるように、突壁部616の湾曲面616aを形成した。突壁部616に湾曲面616aを設けておくと、第1噴出口651を抜けた噴出流は、コアンダ効果により突壁部616の湾曲面616aに沿って隘路構造BNの流路内をスムーズに下流へ向かい、隘路構造BNを抜けるので、噴出オーバーラップ領域65bから噴出独立領域65aへ抜ける円滑な流れが生ずる。すなわち、噴出流にコアンダ効果を生じさせる湾曲面616aを突壁部616に設けることで、上流からの搬送流TFが隘路構造BNに阻まれて拡散することを抑制し、紙幣PMが隘路構造BNを通過する際に減速あるいは停滞してしまう不具合を効果的に回避できる。
上述した参考形態における搬送流増幅装置5でも、紙幣PMに与える搬送トルクを高めるように搬送流TFを増幅させることが可能であるが、本実施形態の搬送流増幅装置によれば、より効果的に搬送流TFを増幅させることができる。図11に示すのは、本実施形態の搬送流増幅装置に適用する増幅管9と、増幅管9の第1,第2吸引体92a,92bに連結する吸引ガイド部材83と、増幅管9の第1,第2噴出体93a,93bに連結する噴出ガイド部材84である。
増幅管9は、前述した増幅管6と基本構造は同じであり、内空部が搬送路21の一部として機能する紙幣搬送体91と、紙幣搬送体91の上面と下面に夫々設けた第1吸引体92aおよび第2吸引体92bと、紙幣搬送体91の左右両側面に夫々設けた第1噴出体93aおよび第2噴出体93bと、を備える。
吸引ガイド部材83は、増幅管9の吸引パイプ81と接続する汎用的な構造体であり、例えば、第1吸引方向変換部831a、第2吸引方向変換部831b、第1吸引合流部832a、第2吸引合流部832b、吸引合流連結部833を備える。第1吸引方向変換部831aは、増幅管9の第1吸引体92aと連結されて、例えば第2噴出体93bを設けた側に吸引方向を変える機能を有する。第2吸引方向変換部831bは、増幅管9の第2吸引体92bと連結されて、第1吸引方向変換部831aと同じ向きに吸引方向を変える機能を有する。第1吸引合流部832aは、第1吸引方向変換部831aの下流端に連なる流路を構成する。また、第2吸引合流部832bは、第2吸引方向変換部831bの下流端に連なる流路を構成する。そして、第1吸引合流部832aの下流端と第2吸引合流部832bの下流端とで流路が交わり、単一の流路として吸引合流連結部833に連なる。この吸引合流連結部833を介して吸引パイプ81が接続され、ブロワ7による吸引動作が行われる。
噴出ガイド部材84は、増幅管9と吐出パイプ82との間に接続される汎用的な構造体であり、例えば、第1噴出方向変換部841a、第2噴出方向変換部841b、第1噴出分岐部842a、第2噴出分岐部842b、噴出分岐連結部843を備える。第1噴出方向変換部841aは、増幅管9の第1噴出体93aと連結されて、例えば、第1吸引体92aを設けた側に噴出方向を変える機能を有する。第2噴出方向変換部841bは、増幅管9の第2噴出体93bと連結されて、第1噴出方向変換部841aと同じ向きに噴出方向を変える機能を有する。第1噴出分岐部842aは、第1噴出方向変換部841aの下流端に連なる流路を構成する。また、第2噴出分岐部842bは、第2噴出方向変換部841bの下流端に連なる流路を構成する。そして、第1噴出分岐部842aの上流端と第2噴出分岐部842bの上流端とで流路が交わっており、噴出分岐連結部843に連なる。この噴出分岐連結部843を介して吐出パイプ82が接続され、ブロワ7による吐出動作が行われる。
これら吸引ガイド部材83および噴出ガイド部材84を用いれば、吸引パイプ81および吐出パイプ82を増幅管9の第1,第2吸引体92a,92bや第1,第2噴出体93a,93bに直接連結するよりも作業効率が良い。また、吸引ガイド部材83および噴出ガイド部材84を汎用化しておくことで、増幅管9だけでなく、前述した増幅管6に接続して使うこともできる。ただし、吸引ガイド部材83および噴出ガイド部材84を汎用的に利用するためには、増幅管9における第1,第2吸引体92a,92bの相対位置と、増幅管6における第1,第2吸引体62a,62bの相対位置が同じになる設計としておく必要がある。
ここで、増幅管9と増幅管6との相違点の一つを、図12に基づき説明する。
増幅管9の第1,第2吸引体92a,92bの内部に形成された吸引空部9bの少なくとも上流部には、紙幣搬送空部9a内の搬送用エアを、吸引部94を介して吸引方向VD9に引き込む上流吸引路が形成される。なお、吸引空部9bの下流部は、吸引ガイド部材83の第1,第2吸引方向変換部831a,831bと連結可能なように搬送方向TDに吸引方向が変わる下流吸引路である。また、増幅管9における吸引方向VD9は、第1,第2吸引体92a,92bの上流突出壁部923の内壁面923aおよび下流突出壁部924の内壁面924aとほぼ平行な向きとして定まる。同様に、増幅管6における吸引方向VD6は、第1,第2吸引体62a,62bの上流突出壁部623の内壁面623aおよび下流突出壁部624の内壁面624aとほぼ平行な向きとして定まる。
そして、増幅管9においては、吸引方向VD9が搬送方向TDと成す鋭角である吸引導入角α9が約25〔°〕である。一方、増幅管6においては、吸引導入角α6が約35〔°〕である。主に搬送方向TDへ搬送用エアが流れる紙幣搬送空部9aから、吸引方向VD9,VD6へ搬送用エアを引き込む場合、吸引方向に応じて搬送用エアの流下方向が変化することで、搬送方向TDと平行な成分が低下する。吸引導入角α6のように、角度が大きい(90〔°〕に近い)場合、それだけ、搬送方向TDへ向かわせる搬送トルクが紙幣PMに与えられなくなり、吸引部94の下流側で紙幣PMが流れ難くなる懸念がある。これに対して、吸引導入角α9のように、角度が小さい(0〔°〕に近い)場合、それだけ、搬送方向TDへ向かわせる搬送トルクを紙幣PMに多く与えることができ、吸引部94の下流側でも紙幣PMが安定して流れるようになる。
そこで、本実施形態では、増幅管9の吸引導入角α9が、紙幣PMの安定搬送に必要十分なトルクを与えることができる所定の円滑導入角度以下になるよう制限したのである。円滑導入角度としては、例えば、30〔°〕以下が望ましい。なお、増幅管6のように吸引導入角α6が35〔°〕となる場合(30〔°〕を超える場合)でも、大半の紙幣PMは紙幣搬送空部9a内で滞留することなく流れてゆくので、実用上は問題ない。しかしながら、増幅管6のように吸引導入角α6を35〔°〕とした場合、強い巻き癖や折り目がついている癖札を投入すると、紙幣搬送空部9a内で速度が落ちるような現象が見られたので、一層の安定搬送を実現する円滑導入角度は33〔°〕以下、より望ましくは30〔°〕以下とする。この円滑導入角度は、全ての搬送流増幅装置に適用できる一定の値ではなく、増幅管9における紙幣搬送空部9aや噴出空部9cの構造、ブロワ7の吸引力や吐出力等に応じて変化する値である。一例として、日本の紙幣を搬送対象とし、搬送管2内の搬送用エアによって紙幣PMに安定した搬送トルクを与えられる管路構造の紙幣搬送装置に適用できる搬送流増幅装置に対しては、吸引導入角を円滑導入角度33〔°〕以下に制限することが有効なのである。
また、増幅管9のように、吸引導入角α9を実現するには、第1,第2吸引体92a,92bのように、上流突出壁部923および下流突出壁部924の上流側が突出する角度を小さくしなければならない。例えば、増幅管6における第1,第2吸引体62a,62bの上流突出壁部623と下流突出壁部624の突出する角度を、そのまま35〔°〕から25〔°〕に変えると、上流突出壁部623の内壁面623aから下流突出壁部624の内壁面624aまでの離隔距離β6が縮むこととなる。すなわち、吸引空部6bにおける離隔距離β6が縮むと、吸引方向VD6に直交する流路断面積が減るために、吸引部64からの吸引量が減ったり、吸引速度が異常に上がったりして、紙幣PMの安定搬送を阻害する懸念が生じる。加えて、前述した汎用的な吸引ガイド部材83を用いる場合には、第1,第2吸引体62a,62bにおける吸引路接続部625の相対位置を変えないように調整する必要がある。
そこで、本構成例の増幅管9は、吸引部94の搬送方向長さを上流側へ適宜ずらした位置に上流端部94uを設けることで、上流突出壁部923の内壁面923aから下流突出壁部924の内壁面924aまでの離隔距離β9が、増幅管6における離隔距離β6と同程度となるように調整した。図12に示すように、増幅管6の吸引部64における上流端部64uよりも、増幅管9の吸引部94における上流端部94uを距離Lだけ上流側に設定すると、吸引空部9bの吸引量を増幅管6における吸引空部6bの吸引量と同程度に高めることができる。例えば、吸引導入角度に応じて増減する上流吸引路の吸引量が必要十分である基準量を基準吸引量とする。吸引導入角α6の増幅管6における上流吸引路の吸引量を基準吸引量に設定した場合、吸引導入角α9である増幅管9の吸引部94は、増幅管6の上流端部64uより距離Lだけ上流側に上流端部94uを備えていれば、吸引空部9bの上流吸引路は基準吸引量を満たすのである。また、増幅管9における第1,第2吸引体92a,92bの吸引路接続部925は、増幅管6の吸引路接続部625に比べて若干下流側に突出しているものの、増幅管9の第1,第2吸引体92a,92bにおける吸引路接続部925の相対位置は、増幅管6における吸引路接続部625の相対位置と同じ状態を保持できる。
上記のように構成した増幅管9の内部構造を、図13、図14に示す。吸引部94は、噴出部95と搬送方向に重なっていない上流側の吸引独立領域94aと、噴出部95と搬送方向に重なっている下流側の吸引オーバーラップ領域94bとに分けられる。同様に、噴出部95は、吸引部94と搬送方向に重なっていない下流側の噴出独立領域95aと、吸引部94と搬送方向に重なっている上流側の噴出オーバーラップ領域95bとに分けられる。搬送方向に対して吸引オーバーラップ領域94bと噴出オーバーラップ領域95bとが重なっている範囲の紙幣搬送空部9aでは、吸引空部9bへの吸引動作と噴出空部9cからの噴出動作が同時に行われる。
吸引部94は、例えば、紙幣搬送体91の第1短壁部913および第2短壁部914と一体に形成するものとした。すなわち、第1,第2短壁部913,914の最下流側に開設した略四角形状の第1吸引口941、その下流に位置する第2吸引口942、その下流に位置する第3吸引口943、その下流に位置する第4吸引口944、最下流に位置する第5吸引口945によって、吸引部94が構成される。また、吸引部94の第1~第5吸引口941~945は、第1誘導片926aと第2誘導片926bと第3誘導片926cと第4誘導片926dとによって、格子状に区画形成されている。これら第1~第4誘導片926a~926dは、第1~第5吸引口941~945から吸引された搬送用エアを吸引方向へ誘導する誘導片として機能する。なお、吸引部94に形成される第1~第3吸引口941~943は、搬送方向に直交する方向(左右方向)の開口幅を同じにしてあるが、その下流である第4吸引口944の左右方向開口幅は若干狭く、最下流に位置する第5吸引口945の左右方向開口幅は最も狭い。このように調整しておけば、吸引部94の吸引独立領域94aでは吸引量が多く、吸引オーバーラップ領域94bでの吸引量が少なくなり、噴出オーバーラップ領域95bから噴出された搬送用エアを吸引してしまう可能性を低減できる。
噴出部95は、噴出オーバーラップ領域95bに第1噴出口951を備え、噴出独立領域95aに上段第2噴出口952aおよび下段第2噴出口952b、上段第3噴出口953aおよび下段第3噴出口953bを備える。噴出オーバーラップ領域95bに設けられる第1噴出口951は、第1吸引体92a側の吸引オーバーラップ領域94bと第2吸引体92b側の吸引オーバーラップ領域94bからほぼ等しく離隔するように、第1,第2長壁部911,912の上下方向の中央部に設けた開口である。噴出独立領域95aの上流側の上部には上段第2噴出口952aを設け、その下方に下段第2噴出口952bを設ける。上段第2噴出口952aの適宜下流には上段第3噴出口953aを設け、その下方に下段第3噴出口953bを設ける。さらに、第1長壁部911と第2長壁部912の内壁面は、搬送方向とほぼ平行な平坦面であるが、第1噴出口951の下流側に、上流から下流に向かって滑らかに突出量が増える曲面形状の湾曲面916aを備える突壁部916を設けた(特に、図14を参照)。突壁部916の下流端である下流端面916bは、第1,第2長壁部911,912の内壁面と面一になるように窪む平坦面であり、前述した増幅管6と同様な隘路構造が形成される。
本実施形態の搬送流増幅装置に適用する増幅管9と、前述した増幅管6との相違点の一つは、第1,第2長壁部911,912の内壁面(紙幣搬送空部9aに臨む側の壁面)に、それぞれ誘導突出体としての第1短壁部側誘導リブ917と第2短壁部側誘導リブ918を設けたことである。
第1短壁部側誘導リブ917および第2短壁部側誘導リブ918は、第1,第2長壁部911,912の内壁面側に突出する断面三角形状の突出体であり、例えば、噴出オーバーラップ領域95bよりも適宜上流側から噴出オーバーラップ領域95bにかけて設けられる。また、第1短壁部側誘導リブ917と第2短壁部側誘導リブ918は上下方向に対称であり、第1短壁部側誘導リブ917は上側(第1短壁部913側)に寄せて設けられ、第2短壁部側誘導リブ918は、下側(第2短壁部914側)に寄せて設けられる。なお、図示を省略したが、第2長壁部912に設ける第1,第2短壁部側誘導リブ917,918の配置は、第1長壁部911における第1,第2短壁部側誘導リブ917,918の配置に対して鏡面対称となる。
これら第1,第2短壁部側誘導リブ917,918は、噴出オーバーラップ領域95bに設けられた第1噴出口951より噴出された搬送用エアが吸引オーバーラップ領域94bに向かって吸引されることを抑制する搬送用流体誘導手段として機能する。また、搬送用流体誘導手段としての第1,第2短壁部側誘導リブ917,918は、第1,第2長壁部911,912に沿って下流へ流れる搬送用エアを吸引オーバーラップ領域94bの下流部(例えば、最下流に位置する第5吸引口945)に向けて誘導する。なお、搬送用流体誘導手段として機能する誘導突出体は、第1,第2長壁部911,912の内面側に突出するリブ(突起構造)に限らず、第1,第2長壁部911,912の内面側に突出する板壁状の誘導壁で構成することもできる。また、誘導突出体は第1,第2長壁部911,912と一体に形成するものに限らず、別部材で構成し、第1,第2長壁部911,912の内面側に取り付けるようにしても良い。
第1短壁部側誘導リブ917は、紙幣PMの搬送方向とほぼ平行に配置された第1誘導部917aと、第1誘導部917aの下流端に連なり、第1短壁部913側に向かう傾斜状に配置された第2誘導部917bとを備え、少なくとも第2誘導部917bの上流側が噴出オーバーラップ領域95b内に位置する。なお、第2誘導部917bは、第1噴出口951の上流端と一致する配置としているため、第1噴出口951より噴出した搬送用エアの噴出方向は、必ず第2誘導部917bの影響を受ける。また、第2誘導部917bの下流部は、突壁部916の湾曲面916aに到達しているが、第2誘導部917bの突出量は変化させないので、湾曲面916aの突出量が第2誘導部917bの突出量と等しくなる部位が第2誘導部917bの下流端となる。
第1誘導部917aは、第1短壁部913側の吸引側誘導面917a1と、第2短壁部側誘導リブ918側の搬送方向誘導面917a2とを備え、第1長壁部911の内壁面に沿って流れてきた搬送用エアを、第1短壁部913側と第2短壁部側誘導リブ918側に分岐させて搬送方向へ誘導する。なお、第1誘導部917aの上流部には、上流端から下流に向かって徐々に突出量が増加する上流テーパー部917a3を設けてあり、搬送用エアの流下勢が第1短壁部側誘導リブ917の上流端で低減しないようにした。第2誘導部917bは、第1短壁部913側の吸引方向誘導面917b1と、第2短壁部側誘導リブ918側の噴出方向誘導面917b2とを備える。吸引方向誘導面917b1は、吸引側誘導面917a1により下流へ誘導されてきた搬送用エアを第1短壁部913側へ誘導することで、吸引オーバーラップ領域94bの下流部から吸引空部9b内へ吸引されることを促す(図14を参照)。噴出方向誘導面917b2は、搬送方向誘導面917a2により下流へ誘導されてきた搬送用エアを更に下流へ誘導すると共に、第1噴出口951より噴出した搬送用エアが吸引オーバーラップ領域94bの下流部へ向かうような拡散流となることを規制し、噴出独立領域95aへ向かうように誘導する(図14を参照)。
一方、第2短壁部側誘導リブ918は、紙幣PMの搬送方向とほぼ平行に配置された第1誘導部918aと、第1誘導部918aの下流端に連なり、第2短壁部914側に向かう傾斜状に配置された第2誘導部918bとを備え、少なくとも第2誘導部918bの上流側が噴出オーバーラップ領域95b内に位置する。なお、第2誘導部918bは、第1噴出口951の下流端と一致する配置としているため、第1噴出口951より噴出した搬送用エアの噴出方向は、必ず第2誘導部918bの影響を受ける。また、第2誘導部918bの下流部は、突壁部916の湾曲面916aに到達しているが、第2誘導部918bの突出量は変化させないので、湾曲面916aの突出量が第2誘導部918bの突出量と等しくなる部位が第2誘導部918bの下流端となる。
第1誘導部918aは、第2短壁部914側の吸引側誘導面918a1と、第1短壁部側誘導リブ917側の搬送方向誘導面918a2とを備え、第1長壁部911の内壁面に沿って流れてきた搬送用エアを、第2短壁部914側と第1短壁部側誘導リブ917側に分岐させて搬送方向へ誘導する。なお、第2誘導部918bの上流部には、上流端から下流に向かって徐々に突出量が増加する上流テーパー部918a3を設けてあり、搬送用エアの流下勢が第2短壁部側誘導リブ918の上流端で低減しないようにした。第2誘導部918bは、第2短壁部914側の吸引方向誘導面918b1と、第1短壁部側誘導リブ917側の噴出方向誘導面918b2とを備える。吸引方向誘導面918b1は、吸引側誘導面918a1により下流へ誘導されてきた搬送用エアを第2短壁部914側へ誘導することで、吸引オーバーラップ領域94bの下流部から吸引空部9b内へ吸引されることを促す(図14を参照)。噴出方向誘導面918b2は、搬送方向誘導面918a2により下流へ誘導されてきた搬送用エアを更に下流へ誘導すると共に、第1噴出口951より噴出した搬送用エアが吸引オーバーラップ領域94bの下流部へ向かうような逆流となることを規制し、噴出独立領域95aへ向かうように誘導する(図14を参照)。
このように、搬送用流体誘導手段として機能する誘導突出体(第1,第2短壁部側誘導リブ917,918)を設ければ、噴出オーバーラップ領域95bの第1噴出口951より噴出された搬送用エアが吸引オーバーラップ領域94bに向かって吸引されるような逆流現象を抑制でき、紙幣PMの安定搬送に貢献する。加えて、搬送用流体誘導手段としての誘導突出体(第1,第2短壁部側誘導リブ917,918)は、第1,第2長壁部911,9125に沿って下流へ流れる搬送用エアを吸引オーバーラップ領域94bの下流部に向けて誘導できるので、吸引オーバーラップ領域94bでの吸引効率を高める効果もある。なお、第1,第2短壁部側誘導リブ917,918を搬送用流体誘導手段として機能させるには、第1噴出口951から搬送用エアが噴出している噴出オーバーラップ領域95bに第2誘導部917b,918bを設けるだけでも十分である。しかしながら、第1誘導部917a,918aによって第2誘導部917b,918bの上流端まで搬送用エアを誘導しておくことで、第2誘導部917b,918bによる搬送用エアの誘導を円滑に行うことが可能となり、搬送用流体誘導手段としての機能を一層高められる。
以上、本発明に係る搬送流増幅装置を実施形態に基づき説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての搬送流増幅装置を権利範囲として包摂するものである。
1 紙幣搬送装置
2 搬送管
21 搬送路
5 搬送流増幅装置
9 増幅管
92a 第1吸引体
92b 第2吸引体
923 上流突出壁部
923a 内壁面
924 下流突出壁部
924a 内壁面
93a 第1噴出体
93b 第2噴出体
94 吸引部
94b 吸引オーバーラップ領域
95 噴出部
95b 噴出オーバーラップ領域
7 ブロワ
81 吸引パイプ
82 吐出パイプ
PM 紙幣
PM1a 第1搬送平行辺
PM1b 第2搬送平行辺
PM2a 第1搬送直交辺
PM2b 第2搬送直交辺
TF 搬送流
TD 搬送方向
VD9 吸引方向
α9 吸引導入角
2 搬送管
21 搬送路
5 搬送流増幅装置
9 増幅管
92a 第1吸引体
92b 第2吸引体
923 上流突出壁部
923a 内壁面
924 下流突出壁部
924a 内壁面
93a 第1噴出体
93b 第2噴出体
94 吸引部
94b 吸引オーバーラップ領域
95 噴出部
95b 噴出オーバーラップ領域
7 ブロワ
81 吸引パイプ
82 吐出パイプ
PM 紙幣
PM1a 第1搬送平行辺
PM1b 第2搬送平行辺
PM2a 第1搬送直交辺
PM2b 第2搬送直交辺
TF 搬送流
TD 搬送方向
VD9 吸引方向
α9 吸引導入角
Claims (3)
- 上流から下流に向けて搬送用流体が流れる搬送路が形成された搬送管にて、紙面が搬送方向と平行に配された紙葉類を上流から下流へ搬送する紙葉類搬送装置に適用され、搬送流により前記紙葉類に与える搬送トルクを高めるように前記搬送流を増幅させる搬送流増幅装置であって、
前記紙葉類は、前記搬送方向と平行な向きに配される2つの搬送平行辺と前記搬送方向と直交する向きに配される2つの搬送直交辺とを備える矩形状とし、
上流の前記搬送路から流れてくる上流搬送流の一部を、前記紙葉類の前記搬送平行辺に対向する吸引部から吸引する搬送流吸引手段と、
下流の前記搬送路に向けて流す下流搬送流の一部を、前記紙葉類の紙面に対向する噴出部から噴出する搬送流噴出手段と、
を設け、
前記搬送流吸引手段により搬送トルクの衰えた前記搬送流を吸引すると共に、前記搬送流噴出手段により搬送トルクの高い空気流を前記搬送路内へ噴出させ、
前記搬送流吸引手段の前記吸引部における下流側に設けた吸引オーバーラップ領域と、前記搬送流噴出手段の前記噴出部における上流側に設けた噴出オーバーラップ領域とが、前記搬送方向に重なって生ずるようにし、
前記搬送流吸引手段は、前記搬送路を流れる前記搬送用流体が前記吸引部を介して導入される吸引路の少なくとも上流部における吸引方向が、前記搬送路における前記搬送方向と成す鋭角である吸引導入角を、所定の円滑導入角度以下に制限したことを特徴とする搬送流増幅装置。 - 前記円滑導入角度は、35〔°〕であることを特徴とする請求項1に記載の搬送流増幅装置。
- 前記吸引部は、前記吸引導入角に応じて増減する前記吸引路の前記上流部における吸引量が、必要十分な基準吸引量となる位置に上流端部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送流増幅装置。
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