JP2023072735A - 乾皮症の治療又は予防用経口組成物 - Google Patents

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光俊 冨永
Mitsutoshi Tominaga
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崇一 草野
Shuichi Kusano
有里 矢野
Yuri Yano
孝典 稲井
Takanori Inai
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Abstract

【課題】 食品由来成分を有効成分として用いた乾皮症の治療又は予防用経口組成物を開発し、特にかゆみ過敏を伴う乾皮症の治療もしくは予防用の内服剤又は飲食品組成物を提供すること。【解決手段】 ノビレチン及び/又は4’-デメチルノビレチンを有効成分として含有する、乾皮症の治療又は予防用経口組成物、好適にはかゆみ過敏を伴う乾皮症の治療又は予防用である医薬品、医薬部外品又は飲食品組成物を提供する。ノビレチン及び4’-デメチルノビレチンは、食経験が豊富な植物であるカンキツ類の果実を原料としているため、これらを有効成分とする本発明の経口組成物は、安全性が高く副作用の心配がない。【選択図】 なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年11月27日 第13回セラミド研究会学術集会 [刊行物等] 令和2年12月4日 ノビレチン研究会第4回学術研究会ホームページ https://sites.google.com/view/nobiletinresearch/meeting/anr2020 [刊行物等] 令和2年12月12日 ノビレチン研究会第4回学術研究会 [刊行物等] 令和3年6月24日 第21回日本抗加齢医学会総会ホームページ https://site.convention.co.jp/21jaam/ https://site.convention.co.jp/21jaam/program/ [刊行物等] 令和3年6月26日 第21回日本抗加齢医学会総会 [刊行物等] 令和3年8月10日 第17回加齢皮膚医学研究会 予稿集、第29頁、加齢皮膚医学研究会 [刊行物等] 令和3年8月21日 第17回加齢皮膚医学研究会 [刊行物等]令和3年11月15日 第5回ノビレチン研究会学術研究会 予稿集、第46頁、ノビレチン研究会 [刊行物等] 令和3年11月15日 第5回ノビレチン研究会学術研究会 予稿集、第31頁、ノビレチン研究会 [刊行物等] 令和3年11月15日 第5回ノビレチン研究会学術研究会 予稿集、第22頁、ノビレチン研究会
本発明は、ノビレチン及び/又は4’-デメチルノビレチンを有効成分として含有する乾皮症の治療又は予防用経口組成物、好適にはかゆみ過敏を伴う乾皮症の治療又は予防用の医薬品、医薬部外品又は飲食品組成物に関する。
肌は角層のバリア機能によって、外界からの異物の侵入を防ぎ、また体表からの水分の喪失を防いでいるが、水分保持のためには角層内脂質が重要な役割をもつことが知られている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら、年を重ねるとバリア機能に必要な皮脂やうるおいが低下し、保湿機能は低下してくる。これに伴い、肌のかさつきやかゆみが生じるようになる。特に、冬の時期は、空気が乾燥し、高齢者においては膝から下のかさつきや入浴後にかゆみを生じやすい。また、高齢者に限らなくても、冷暖房や入浴時のこすり過ぎ、石鹸の使い過ぎ等、様々な理由で乾燥肌によるかゆみの悩みを抱えている人の割合は非常に多い。
このように、肌の乾燥状態であるドライスキン又は乾燥肌はかゆみを生じやすく、病名としては乾皮症と呼ばれる。乾燥状態を放置しておくと、皮膚表面近くまで神経線維が伸びてきて、衣服のこすれ等のわずかな外的刺激でも、過敏なかゆみ反応を呈する「かゆみ過敏(=痒覚過敏、アロネーシス)」となる(例えば非特許文献2参照)。
乾皮症やかゆみ過敏の治療薬としての基本は外用の保湿剤であり、主にヘパリン類似物質含有製剤、尿素製剤、ワセリンが用いられている。その他、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬やステロイド薬も用いられる。抗ヒスタミン薬は、神経線維の末端にあるかゆみを感じるレセプターのうち、ヒスタミンが結合するレセプターをブロックする。
一方、カンキツ類特有のポリメトキシフラボノイドであるノビレチン(3',4',5,6,7,8-ヘキサメトキシフラボン)は、近年、がん予防、老化抑制、抗動脈硬化作用等さまざまな生理作用が知られるようになってきた(例えば非特許文献3参照)。
本発明者らは、ノビレチンを多く含有するカンキツ類の果皮を用い、特定種類の麹菌で発酵することにより、ノビレチンが脱メチル化して4’-デメチルノビレチン(3',5,6,7,8-ペンタメトキシ-4'-ヒドロキシフラボン)に変換することを明らかにした。また、本発明者らは、4’-デメチルノビレチンが、優れた記憶改善作用を有することも見出した(例えば特許文献1参照)。
G. Imokawa, M. Hattori, J.Invest.Dermatol., 84, 282-284 (1985). 高森建二、日本香粧品学会誌 38,92-95(2014) A. Minagawa et.al., Jpn J. Cancer Res. 92(12):1322-8(2001)
特許第5667561号公報
しかしながら、上記した外用の保湿剤では、乾皮症やかゆみ過敏に対して十分な治療効果は得られない。また、かゆみを知覚するレセプターのうち、ヒスタミンが結合するレセプターはごく一部である。したがって、抗ヒスタミン薬によりヒスタミンのレセプターをブロックしても、かゆみを止めることはできない(例えば、非特許文献2及びM. Tominaga, K. Takamori (2013) Biol Pharm Bull., 36, 1241-1247参照)。さらに、ステロイド薬には副作用の問題がある。
このように、乾皮症やそれに伴うかゆみ過敏については、高い効果が得られ、かつ副作用の心配がない、実用的な治療薬がないのが現状である。かかる状況下、特に、簡便に使用でき、かつ安全性の高い内服剤の開発が望まれている。
本発明は、食品由来の安全性の高い成分を有効成分とする、乾皮症の治療又は予防用経口組成物を開発し、特にかゆみ過敏を伴う乾皮症の予防もしくは治療用の医薬品、医薬部外品又は飲食品組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、さらにノビレチン及び4’-デメチルノビレチンの機能性について検討を重ねた結果、驚くべきことに、ノビレチン及び4’-デメチルノビレチンの経口投与が、乾皮症モデルマウスにおいてかゆみ、特にかゆみ過敏(アロネーシス)に対する優れた抑制効果を奏することを発見した。そして、当該作用により、乾皮症及び乾皮症に伴うかゆみの予防又は治療に対しても、ノビレチン及び4’-デメチルノビレチンが有効であるものと推測された。これらの知見に基づいて、本発明者らは本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、ノビレチン及び/又は4’-デメチルノビレチンを有効成分として含有する乾皮症の治療又は予防用経口組成物に関する。
本明細書において「乾皮症」とは、ドライスキン、乾燥肌を含む肌の乾燥状態のことを指す。そして、上記乾皮症は、かゆみ及び/又はかゆみ過敏を伴う乾皮症であってもよい。
また、上記経口組成物は、医薬品、医薬部外品又は飲食品組成物の形態であってもよい。
本発明は、ノビレチン及び/又は4’-デメチルノビレチンを有効成分として含有する乾皮症の治療又は予防用経口組成物、特にかゆみ過敏を伴う乾皮症の治療もしくは予防用である内服剤又は飲食品組成物を提供することを可能とする。
また、ノビレチンはカンキツ類特有の成分である。4’-デメチルノビレチンは、ノビレチンの代謝産物のひとつであるが、ノビレチン又はそれを豊富に含むカンキツ類の果実から麹菌発酵法により生物変換して得ることができる。これらは食経験が豊富な植物であるカンキツ類の果実を原料としていることから、本発明の乾皮症の治療又は予防用経口組成物は、安全性が高く副作用の心配がない。
AEW処置マウスの皮膚乾燥の状態を示す写真像図である(試験例1)。図中、(A)はW処置+0.5%CMC投与群、(B)はAEW処置+0.5%CMC投与群、(C)はAEW処置+ノビレチン(NOB)投与群、(D)はAEW処置+4’-デメチルノビレチン(4’NOB)投与群、を表す。 AEW処置マウスの皮膚乾燥スコアに対するノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与の影響を示すグラフである(試験例1)。図中、縦軸は皮膚乾燥スコア、横軸は各群を表す。箱ひげ図は、それぞれ上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。 AEW処置マウスの皮膚バリア機能に対するノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与の影響を示すグラフである(試験例1)。図中、(A)は経表皮水分蒸散量(単位:g/m/h)、(B)は角層水分量(単位:a.u.)の分布を表す。横軸は各群を表し、箱ひげ図は、それぞれ上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。 AEW処置マウスの掻破行動に対するノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与の影響を示すグラフである(試験例1)。図中、縦軸は掻破行動回数(2時間)、横軸は各群を表し、箱ひげ図は、それぞれ上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。 AEW処置マウスのアロネーシス(かゆみ過敏)に対するノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与の影響を示すグラフである(試験例1)。図中、(A)は0.07g、(B)は0.16gのvon Freyフィラメントを用いた場合のアロネーシスアッセイの結果を表す。縦軸はアロネーシススコア、横軸は各群を表し、箱ひげ図は、それぞれ上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。 AEW処置マウスの自発的運動量に対するノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与の影響を示すグラフである(試験例1)。図中、縦軸は自発的運動量(単位:cm)、横軸は各群を表し、箱ひげ図は、それぞれ上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。 ヒト3次元培養表皮モデルに対して4’-デメチルノビレチン(DeNOB)を添加したときの角層セラミド合成への効果を示すグラフである(試験例2)。図中、(A)はトータルセラミド、(B)はセラミドEOS、(C)はセラミドNS/NDS、(D)はセラミドNPの結果を表す。縦軸はセラミド産生量(単位:μg/mg蛋白)、バーは標準偏差を表す。 ヒト3次元培養表皮モデルに対して4’-デメチルノビレチン含有組成物(DeNOBエキス)を添加したときの角層セラミド合成への効果を示すグラフである(試験例2)。図中、(A)はトータルセラミド、(B)はセラミドNS/NDS、(C)はセラミドNPの結果を表す。縦軸はセラミド産生量(単位:μg/mg蛋白)、バーは標準偏差を表す。 セラミド生合成経路と関連遺伝子を示す図である。 ヒト3次元培養表皮モデルに対して4’-デメチルノビレチン(DeNOB)を添加したときのセラミド生合成関連遺伝子への効果を示す図である(試験例3)。図中、(A)はCERS1、(B)はCERS2、(C)はUGCGの結果を表す。グラフの縦軸は、無添加の対照(Control)におけるmRNA発現量を1としたときの、mRNA発現量の割合(相対的mRNA発現量)を表す。バーは標準偏差を表す。 ヒト3次元培養表皮モデルに対して4’-デメチルノビレチン含有組成物(DeNOBエキス)を添加したときのセラミド生合成関連遺伝子への効果を示す図である(試験例3)。図中、(A)はCERS1、(B)はCERS2、(C)はUGCG、(D)はSMS2の結果を表す。グラフの縦軸は、無添加の対照(Control)におけるmRNA発現量を1としたときの、mRNA発現量の割合(相対的mRNA発現量)を表す。バーは標準偏差を表す。
以下、本願の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態は、ノビレチン及び/又は4’-デメチルノビレチンを有効成分として含有する乾皮症の治療又は予防用経口組成物に関する。
本実施形態に係る経口組成物は、乾皮症、好ましくはかゆみを伴う乾皮症、特に好ましくはかゆみ過敏を伴う乾皮症の予防もしくは治療効果を有することから、これらの効果を目的とした医薬品、医薬部外品とすることができる。
また、本実施形態に係る経口組成物は、乾皮症、好ましくはかゆみを伴う乾皮症、特に好ましくはかゆみ過敏を伴う乾皮症の予防もしくは改善効果を有することから、これらの効果を目的とした飲食品組成物とすることができる。
〔ノビレチン〕
本実施形態の有効成分であるノビレチン(式I)は、市販品を用いることができる。また、ノビレチンは、カンキツ類の‘果実’(果皮、果汁、果肉、種子などを含む果実全体)に多く含まれる。したがって、ノビレチンは、カンキツ類の果実、特には、ノビレチンの含有率、廃棄物の有効利用の観点から、‘果皮’を原料とするノビレチン含有組成物として用いることができる。
Figure 2023072735000001
カンキツ類の果皮は、マーマレード、砂糖煮などのお菓子の原料として利用され、また、ノビレチン含量の高いマンダリンオレンジ(Citrus reticulata)の果皮はチンピとして長年の食経験があり、ノビレチン及びその含有組成物は、非常に安全性が高い。
また、カンキツ類の種類としては、ノビレチンを含有するカンキツ類であれば、如何なる品種、系統のもの(例えば、ポンカン、シークワーシャ、タンジェリン、タチバナなど)も用いることもできる。
なお、原料としては、カンキツ類の植物体の他の部分(例えば、葉、芽、茎、花、など)を含むものを用いてもよいが、ノビレチンの含有率の点でこれらを含まないものであることが望ましい。
ノビレチン含有組成物は、植物体そのままの形態、もしくは、細片化、破砕、擂潰、粉末化、乾燥などの加工処理のうちいずれか1つ以上を施したものであってもよい。
〔溶媒抽出〕
なお、純度の点を鑑みると、本実施形態の経口組成物の製造においては、前記ノビレチン含有組成物に対して溶液抽出を行って、抽出物を得ることが望ましい。
溶液抽出工程に用いる溶媒は、水、緩衝液、有機溶媒、又はそれらの含水溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールのような低級脂肪族アルコールや、アセトン、酢酸エチル、クロロホルムなどが挙げられる。
これらの溶媒の中でも、水、エタノールあるいは含水エタノールが抽出効率や取り扱いやすさ、安全性の面で特に好ましい。
また、特には、終濃度60%以上、好ましくは終濃度70%以上、さらに好ましくは終濃度90%以上(いずれも容量比)のエタノールを用いて抽出を行うことで、不純物である多糖類の溶出を抑制でき、ノビレチンの抽出効率を向上できるため好ましい。
抽出条件としては、前記カンキツ類原料(好ましくは細片化物)に対して、前記溶媒を、1から50倍量、好ましくは2~15倍量(いずれも質量比)加え、0℃~溶媒の沸点の温度条件、好ましくは室温~溶媒の沸点以下の温度で、5分~1ヶ月間、好ましくは20分~1週間、浸漬もしくは振盪することにより、抽出することが可能である。
得られた抽出液は、凍結乾燥やエバポレーター等を用いて乾燥させることで、濃縮乾固物とすることができる。
また、溶液抽出工程は、異なる複数の溶媒で、複数回行うこともできる。特に、一度目の抽出を水や低濃度の含水アルコールで行った場合、次に前記特定濃度以上のエタノールを用いた抽出を行うことで、ノビレチンの抽出効率を向上させることができる。
上記により得られた抽出物(前記抽出液や濃縮乾固物)は、そのまま本実施形態の経口組成物の有効成分として用いることができる。
〔精製〕
また、上記抽出物に対して、精製工程を行うことによって、ノビレチンの純度をさらに高めることができる。
精製工程としては、液-液分離抽出や、シリカゲル、化学修飾シリカゲル、活性炭、合成吸着樹脂担体等によるカラム精製により、高純度化を行うことができる。以下に好適な精製条件の一例を示す。
まず、抽出物(具体的にはエタノール抽出により得られた抽出物)を40%エタノール溶液に溶かし、40%エタノール(v/v)溶液で平衡化した多孔性合成吸着樹脂(具体的には、ダイヤイオンHP20〔三菱化学社製〕)のカラムに供する。そして、40~50%(具体的には45%)(v/v)エタノール溶液で溶離される成分を除去する。次に、45~60%(具体的には50%)(v/v)エタノールで溶出する成分を回収することより、ノビレチン高含有組成物を得ることができる。
また、上記のように得られたノビレチン高含有組成物は、さらにODSカラムクロマトグラフィー(具体的には60%(v/v)メタノール溶出)、ODS-HPLC(具体的には40%(v/v)アセトニトリル・水の混合溶媒)に供し、目的ピークを採取することで、ノビレチンの純品を単離することができる。
ノビレチンは、経口投与により、乾皮症に伴うかゆみ、特にかゆみ過敏の改善効果を有するものである。
したがって、ノビレチンは、乾皮症、好ましくはかゆみ、特にかゆみ過敏を伴う乾皮症の治療もしくは予防用である経口組成物、具体的には、医薬品又は医薬部外品の有効成分として用いることができる。
また、ノビレチンは、乾皮症、好ましくはかゆみ、特にかゆみ過敏を伴う乾皮症の改善もしくは予防用である経口組成物、具体的には、飲食品組成物の有効成分として用いることができる。
〔4’-デメチルノビレチン〕
4’-デメチルノビレチン(式II)は市販されていないが、合成品を用いることができる。あるいは、上記した特許文献1の方法により、ノビレチンを含有するカンキツ類の果実、特に果皮を用いた麹菌発酵により得られた4’-デメチルノビレチン純品(単離物)又は4’-デメチルノビレチン含有組成物を用いることができる。合成品よりも、麹菌発酵によるノビレチンの生物変換を利用する特許文献1の方法の方が簡便かつ安価なため、好適である。
Figure 2023072735000002
4’-デメチルノビレチンは、ノビレチンが体内で吸収された後にできる代謝産物の一つでもある。前述の通り、カンキツ類の果皮は長年の食経験があることから、4’-デメチルノビレチン及びその含有組成物は、非常に安全性が高い。
特許文献1に記載された方法に準じた、4’-デメチルノビレチン及びその含有組成物の製造方法について、以下に説明する。
〔発酵原料〕
麹菌発酵の原料は、ポリメトキシフラボノイドであるノビレチンを含有するカンキツ類の果実であるが、特には、前述の理由から果皮を用いることが望ましい。ここで、「カンキツ類」の種類及び「果実」については、前述した通りである。
なお、発酵原料としては、カンキツ類の植物体の他の部分(例えば、葉、芽、茎、花、など)を含むものを用いてもよいが、ノビレチンの含有率の点でこれらを含まないものであることが望ましい。
上記カンキツ類は、収穫・採取した生のもの、水洗いしたもの、を用いることが望ましいが、乾燥、凍結、長期保存したものなどであっても用いることができる。
また、カンキツ類はそのままの形態で用いてもよいが、刻むか、砕片化するか、擂潰するかのいずれか1以上の処理を行うことが望ましい。
当該工程は、カンキツ類をいくつかの破片に大きめに刻むこと、細かい小片に細断すること、破砕すること、擂り潰すこと、粉末状にすること、等、幅広い行為を含むものである。好ましくは、1~数cm程度に大きめに刻んだ状態にすることによって、行うことができる。
またさらには、これら発酵原料から、予めノビレチンを抽出して得た抽出物(エキス、乾燥物)や、純品のノビレチンとして単離したものを用いることもできる。
なお、これら発酵原料は、後記の麹菌発酵を行う前に、加熱処理を行って、原料中の雑菌を殺菌しておくことが好ましい。
〔麹菌発酵〕
前記発酵原料を発酵させる麹菌としては、例えばアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、リゾプス属糸状菌(別名クモノスカビ)、などを用いることができる。また、これらを混合させて用いてもよい。
前記麹菌のうち好ましくは、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、を用いると、4’-デメチルノビレチンを高い含有率で得ることができる。
発酵原料へ前記麹菌を接種する方法としては、麹菌の胞子を発酵原料に直接振りかけて付着させることができる。また、予め前記麹菌を液体培養により予備発酵した培地を、発酵原料全体に行き渡るように接種してもよい。
前記麹菌を発酵原料に接種する場合の微生物発酵条件としては、好気的条件で行うことが望ましいことから、例えば有底円筒状の底部が広く深さが浅い容器が好適である。
このような容器の底部に、発酵原料を万遍なく広げ、空気との接触面積が大きくなるようにするとよい。
発酵温度としては、前記麹菌の生育に好適な条件として、好ましくは10~40℃、より好ましくは20~40℃、さらに好ましくは25~32℃で行われる。加えて、前記麹菌の生育に好適な条件として、暗所で発酵させるのが好ましい。また、原料中に十分な水分が含まれている状態であることが好ましい。
4’-デメチルノビレチンを多量に得るための微生物発酵の発酵期間としては、1~14日間とすることができ、好ましくは2~14日間、より好ましくは2~10日間、さらに好ましくは2~4日間である。
この発酵期間が1日間未満の場合には、前記麹菌による微生物発酵がほとんど進行していないことから十分な4’-デメチルノビレチンが得られない。また、逆に14日間を超える場合には、微生物変換により生成された4’-デメチルノビレチンの分解が進み、またカンキツ類由来の好ましい芳香が消失する。
また、当該麹菌発酵においては、麹菌から分泌される酵素によって、ノビレチンがデメチル化され、4’-デメチルノビレチンへと変換させるものである。
したがって、麹菌発酵を行う代わりに、当該麹菌もしくは発酵後に得られる発酵物から溶液抽出を行ってノビレチンをデメチル化する酵素を含む酵素液を得、当該酵素を用いて前記原料と酵素反応を行って反応物を得ることで、4’-デメチルノビレチンを得ることも可能である。
具体的には、当該麹菌発酵後の発酵物からの水溶解物を回収し、粗酵素液として用いることで、酵素反応を行うことができる。
上記の麹菌発酵を行うことによって、前記カンキツ類原料に含有されるポリメトキシフラボノイドであるノビレチンは、すべて4’-デメチルノビレチンに変換される。
具体的には、前記カンキツ類原料を麹菌発酵することによって、4’-デメチルノビレチンが乾燥重量あたり約0.5~1.5質量%(具体的には、約1質量%)という、高い含有率の麹菌発酵物を得ることができる。
したがって、ここで得られた麹菌発酵物を、得られたそのままの形態で、もしくは、加工(例えば、細片化、擂潰、粉末化、乾燥、など)して、本実施形態の経口組成物の有効成分として用いることができる。
〔溶液抽出〕
なお、4’-デメチルノビレチンの純度の点を鑑みると、本実施形態の経口組成物の製造においては、前記麹菌発酵の後に得られる発酵物から溶液抽出を行って、抽出物を得ることが望ましい。
当該溶液抽出工程は、前記麹菌発酵物に対して直接行うこともできるが、前記麹菌発酵物について、さらに細片化、破砕、擂潰、粉末化、乾燥などの加工処理のうちいずれか1つ以上を行った後に得られたものに対して行うことが望ましい。
溶液抽出工程に用いる溶媒については、前述のノビレチンの場合と同様である。特には、終濃度55%以上、好ましくは終濃度60%以上、さらに好ましくは終濃度80%以上(いずれも容量比)のエタノールを用いて抽出を行うことで、不純物である多糖類の溶出を抑制でき、4’-デメチルノビレチンの抽出効率を向上できるため好ましい。
抽出条件については、前述のノビレチンの場合と同様である。得られた抽出液は、凍結乾燥やエバポレーター等を用いて乾燥させることで、濃縮乾固物とすることができる。
また、溶液抽出工程は、異なる複数の溶媒で、複数回行うこともできる。特に、一度目の抽出を水や低濃度の含水アルコールで行った場合、次に前記特定濃度以上のエタノールを用いた抽出を行うことで、4’-デメチルノビレチンの抽出効率を向上させることができる。
上記により得られた抽出物(前記抽出液や濃縮乾固物)は、そのまま本実施形態の経口組成物の有効成分として用いることができる。
〔精製〕
また、上記抽出物に対して、精製工程を行うことによって、4’-デメチルノビレチンの純度をさらに高めることができる。
精製工程としては、液-液分離抽出や、シリカゲル、化学修飾シリカゲル、活性炭、合成吸着樹脂担体等によるカラム精製により、高純度化を行うことができる。以下に好適な精製条件の一例を示す。
まず、抽出物(具体的にはエタノール抽出により得られた抽出物)を30%(v/v)エタノール溶液に溶解し、30~40%(具体的には35%)(v/v)エタノール溶液で平衡化した多孔性合成吸着樹脂(具体的には、ダイヤイオンHP20〔三菱化学社製〕)のカラムに供する。そして、39~43%(具体的には43%)(v/v)エタノール溶液で溶出される成分を除去する。次に、44~46%(具体的には45%)(v/v)エタノール溶液で溶出される成分を回収することにより、4’-デメチルノビレチン高含有組成物を得ることができる。
また、上記のように得られた4’-デメチルノビレチン高含有組成物は、さらにODSカラムクロマトグラフィー(具体的には60%(v/v)メタノール溶出)、ODS-HPLC(具体的には38%(v/v)アセトニトリル・水の混合溶媒)に供し、目的ピークを採取することで、4’-デメチルノビレチンの純品を単離することができる。
上記により得られる4’-デメチルノビレチンは、4’位が脱メチル化したノビレチンのモノデメチル体である。4’-デメチルノビレチンは脱メチル化により極性が高くなり、ノビレチンに比べてアルコール、水への溶解性に優れる。
4’-デメチルノビレチンは、経口投与により、乾皮症及び/又はそれに伴うかゆみ、特にかゆみ過敏の改善効果を有するものである。ここで、後述の試験例1において認められるかゆみ過敏の抑制メカニズムとしては、乾燥により誘発される神経線維の表皮への侵入を抑制することによるものと考えられる。
一方、4’-デメチルノビレチンは、後述の試験例2及び3に示されるように角層セラミド合成促進作用をも有することから、皮膚バリア機能を向上させる、もしくは皮膚バリア機能の低下を抑制することによって、乾皮症及び/又はそれに伴うかゆみ、特にかゆみ過敏の改善効果が期待される。
このように、4’-デメチルノビレチンは神経線維の表皮への侵入抑制と皮膚バリア機能の両面から、乾皮症の治療又は予防に対して有効であると考えられる。
したがって、4’-デメチルノビレチンは、乾皮症、好ましくはかゆみ、特にかゆみ過敏を伴う乾皮症の治療もしくは予防用である経口組成物、具体的には、医薬品又は医薬部外品の有効成分として用いることができる。
また、4’-デメチルノビレチンは、乾皮症、好ましくはかゆみ、特にかゆみ過敏を伴う乾皮症の改善もしくは予防用である経口組成物、具体的には、飲食品組成物の有効成分として用いることができる。
〔乾皮症の治療又は予防用経口組成物〕
本実施形態の治療又は予防用経口組成物は、ノビレチン及び/又は4’-デメチルノビレチンを有効成分として含有することを特徴とする。
また、前記経口組成物としては、具体的には、乾皮症、好ましくはかゆみ、特にかゆみ過敏を伴う乾皮症の治療もしくは予防用の医薬品、医薬部外品;乾皮症、好ましくはかゆみ、特にかゆみ過敏を伴う乾皮症の改善もしくは予防用の飲食品組成物;を挙げることができる。
ノビレチン及び4’-デメチルノビレチンは、上記工程で得られる各組成物(‘発酵物を直接含有する組成物’‘溶液抽出物’‘高含有組成物’)や、‘単離物’として各種原料に混合することで、本実施形態の経口組成物、医薬品、医薬部外品又は飲食品組成物の有効成分として用いることができる。
ここにおいて、「飲食品組成物」には、一般的な飲食物と機能性食品、機能性飲料が含まれる。
また、前記医薬品、医薬部外品は、内服剤の形態とすることが好ましい。
内服剤や飲食品組成物としてのノビレチン及び4’-デメチルノビレチンの有効摂取量は、それぞれ体重60kgの成人1日あたり、1mg以上、好ましくは5mg以上である。上記の量を経口摂取することにより、皮膚の乾燥により誘発されるかゆみ及びかゆみ過敏に対する優れた抑制作用が得られるとともに、角層セラミド合成促進作用に基づく皮膚バリア機能の改善作用が得られ、したがって乾皮症やそれに伴うかゆみ、特にかゆみ過敏に対する優れた治療、改善もしくは予防作用を得ることができる。
したがって、この必要量を確保できる形態や摂取方法(回数、量)で、本実施形態の経口組成物、医薬品、医薬部外品又は飲食品組成物を摂取することで、上記薬理作用が得られることが期待される。ただし、対象の年齢、体重、症状、摂取スケジュール、製剤形態などにより、摂取量を適宜決定することが望ましい。
また、経口組成物、医薬品、医薬部外品又は飲食品組成物におけるノビレチン及び4’-デメチルノビレチンの含有量としては、それぞれ上記必要な摂取量を担保できるように含有するものであればよいが、具体的には、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上となるように含有させることができる。また、上限としては、20質量%以下を挙げることができる。
経口組成物、医薬品、医薬部外品の形態としては、例えば、粉末状、細粒状、顆粒状、などとすることができ、カプセルに充填する形態の他、水に分散した溶液の形態、クリーム状、賦形剤等と混和して得られる錠剤の形態とすることもできる。
本実施形態の経口組成物、医薬品、医薬部外品には、ノビレチン、4’-デメチルノビレチン又はその含有組成物以外にも、本発明の効果を奏する範囲内で、各種担体や添加剤、他の薬効成分などが含まれていても良い。
また、飲食品組成物としては、種々の食品原料や添加剤などと混合して、例えば、ビスケット、スナック菓子、ガム、チュアブル錠、清涼飲料水、ドリンク、スープ、ゼリー、キャンディ等の形態とすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。なお、以下において「%」とは、特別な記載がない場合、「質量%」を意味する。
<実施例1> ノビレチン含有組成物の調製
ポンカン果皮から以下の通り抽出し、ノビレチン含有組成物を調製した。
すなわち、ポンカン果皮8kgを刻んで細片化し、90%(v/v)エタノール80Lを添加し、80℃において1時間エキス抽出して抽出液を得た。当該抽出液を、あらかじめ40%(v/v)エタノールで平衡化したダイヤイオンHP20(多孔性合成吸着樹脂カラム)に供し、6Lの45%(v/v)エタノールで非吸着成分を除いた後、12Lの50%(v/v)エタノールで溶出する成分を回収した。当該回収物をロータリーエバポレーターで濃縮乾固することにより、ノビレチン19%含有組成物を得た。
<実施例2> ノビレチン単離物の調製
実施例1により得られたノビレチン含有組成物を以下の通り精製し、ノビレチンを単離した。
すなわち、ノビレチン含有組成物3gを40%(v/v)メタノールに溶解し、ODSカラムクロマトグラフィー(内径40mmφ、長さ20cmカラムに和光ゲル50C18を120g詰めた)に供した。40%(v/v)メタノールで溶出する成分を除去し、60%(v/v)メタノールで溶出する成分を得た。
そして、得られた画分を、分取HPLCカラム(Mightysil RP-18GP Aqua 250-20(5μm)、関東化学(株)製)に供し、40%(v/v)アセトニトリルの移動層によって、純品のノビレチン35mgを得た。
<実施例3> 4’-デメチルノビレチン含有組成物の調製
特許文献1に記載の方法に準じて、ポンカン果皮を麹菌発酵することによりノビレチン変換物4’-デメチルノビレチン含有組成物を調製した。
すなわち、ポンカン果皮30kgを刻んで細片化し、蒸煮処理により滅菌処理を行った。得られたポンカン果皮に、全体に行き渡るようにアスペルギルス・アワモリ((株)ビオック製)を接種した。そして、30℃の恒温室内にて発酵処理(麹菌発酵)を好気的に4日間行うことで、麹菌発酵物を得た。
得られた麹菌発酵物6kgに対して80%(v/v)エタノール75Lを添加し、80℃において1時間エキス抽出して抽出液を得た。当該抽出液を、あらかじめ40%(v/v)エタノールで平衡化したダイヤイオンHP20(多孔性合成吸着樹脂カラム)に供し、3Lの43%(v/v)エタノールで非吸着成分を除いた後、10Lの45%(v/v)エタノールで溶出する成分を回収した。当該回収物をロータリーエバポレーターで濃縮乾固することにより、4’-デメチルノビレチン20%含有組成物を得た。
<実施例4> 4’-デメチルノビレチン単離物の調製
実施例3により得られた4’-デメチルノビレチン含有組成物を以下の通り精製し、4’-デメチルノビレチンを単離した。
すなわち、4’-デメチルノビレチン含有組成物6gを30%(v/v)メタノールに溶解し、ODSカラムクロマトグラフィー(内径40mmφ、長さ20cmカラムに和光ゲル50C18を120g詰めた)に供した。40%(v/v)メタノールで溶出する成分を除去し、60%(v/v)メタノールで溶出する成分を得た。
そして、得られた画分を、分取HPLCカラム(Mightysil RP-18 GP Aqua 250-20(5μm)、関東化学(株)製)に供し、38%(v/v)アセトニトリルの移動層によって、純品の4’-デメチルノビレチン122mgを得た。
<試験例1> 乾皮症モデルマウスを用いた経口投与試験
アセトン/エーテル/水(AEW)反復塗布(以下、「AEW処置」と呼ぶ。)によって作製した乾皮症モデルマウスを用いて、皮膚バリア機能、かゆみ行動ならびにドライスキン誘発のアロネーシス(かゆみ過敏)に対するノビレチン及び4’-デメチルノビレチン(経口投与)の有効性について検討した。
(方法)
乾皮症モデルマウスの作製及びアロネーシスアッセイは、先の文献(Akiyama T. et al.,Mouse Model of Touch-Evoked Itch (Alloknesis), J. Invest. Dermatol. (2012) 132, 1886-1891; Bourane S. et al., Gate control of mechanical itch by a subpopulation of spinal cord interneurons, Science (2015) 350(6260):550-554)に基づいて行った。
すなわち、AEW処置開始3日前にC57BL6/Jマウスの背部を剃毛した。剃毛皮膚にAEW処置(7日間、朝夕2回)することで乾皮症モデルマウスを作製した。AEW処置は、アセトン(A)とジエチルエーテル(E)を容量比1:1で混ぜたAE溶液をコットンに染み込ませ、剃毛部に15秒間塗布した。次に滅菌水をコットンに染み込ませ、剃毛部に30秒間塗布した(AEW群)。コントロール群には、滅菌水を45秒間塗布した(W群)。
被験物質として25mg/kg体重のノビレチン(実施例2調製品)又は25mg/kg体重の4’-デメチルノビレチン(実施例4調製品)を1日1回、AEW処置前にディスポーザブル経口ゾンデ(フチガミ器械社製)を用いてマウスに経口投与した。コントロール群のマウスには、被験物質の代わりに100μL/10g体重の0.5%CMC(カルボキシメチルセルロース)を経口投与した。
最後のAEW処置終了後に、剃毛部の経表皮水分蒸散量(TEWL)及び角層水分量(SC hydration)を測定することにより、乾皮症モデルマウスの皮膚バリア機能を評価した。剃毛部の皮膚状態は、発赤・出血、痂皮形成・乾燥、浮腫、擦傷・組織欠損の4つの指標について各3点、合計12点満点の皮膚乾燥スコアで評価した。
最後のAEW処置から16時間後に、次世代型擦過行動定量化システム「SCLABA(登録商標)-Real」(ノベルテック社製)を用いて掻破行動を2時間測定し、ドライスキンによって誘発される自発的掻破行動を評価した。SCLABA(登録商標)-Realで得られたデータを元に、SCLABA(登録商標)-Real Trackingソフトウェアを用いて自発的運動量を測定した。
最後に、von Freyフィラメントを用いて乾燥状態の皮膚に軽微な機械的刺激を与え、刺激直後に掻破行動が生じるか否かを解析するアロネーシスアッセイを行うことで、かゆみ過敏を評価した。
前処置として、1ケージにつき1匹ずつAEW処置マウス(もしくはW処置マウス)を入れ、少なくとも1時間、馴化した。マウス後頚部(AEW処置部位又はW処置部位)に、屈曲力0.07g又は0.16gのvon Freyフィラメントを垂直に押し当てる触刺激を、少なくとも5秒以上の間隔を空けて、3回与えた。この各3回の触刺激を1セットとして、10セット実施した。各セットの間隔は、平均約7分30秒とした。30回(3回×10セット)の各触刺激の直後にマウスが刺激部位に対し掻破行動を示した回数を1点として、アロネーシススコアを算出した。
各試験区の群分けは以下の通りである。
(1)W処置マウス+0.5%CMC投与群 (n=11)
(2)AEW処置マウス+0.5%CMC投与群 (n=11)
(3)AEW処置マウス+25mg/kgノビレチン投与群 (n=11)
(4)AEW処置マウス+25mg/kg4’-デメチルノビレチン投与群 (n=10)
(結果)
結果を図1~図5に示す。図1は、AEW処置終了後の各群のマウスの皮膚乾燥の状態を示す写真像図である。図1中、(A)はW処置+0.5%CMC投与群、(B)はAEW処置+0.5%CMC投与群、(C)はAEW処置+ノビレチン(NOB)投与群、(D)はAEW処置+4’-デメチルノビレチン(4’NOB)投与群、を表す。図2は、各群のマウスの皮膚乾燥スコアの分布を示すグラフである。図2中、横軸は各群を表し、箱ひげ図はそれぞれ、上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。なお、**、***はW+0.5%CMC群に比べて各々p<0.01、p<0.001で有意差があることを表す。
W+0.5%CMC群との外観及び皮膚乾燥スコアの比較において、AEW+0.5%CMC群では、AEW反復塗布によって有意にドライスキン(皮膚乾燥)が誘発されることが示された(図1、図2)。一方、ノビレチン及び4’-デメチルノビレチンの経口投与は、AEW処置による皮膚乾燥に対して影響を与えなかった(図2)。
図3は、各群のマウスの(A)経表皮水分蒸散量(単位:g/m/h)及び(B)角層水分量(単位:a.u.)の分布を示すグラフである。図3中、横軸は各群を表し、箱ひげ図はそれぞれ、上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。なお、**、***、****はW+0.5%CMC群に比べて各々p<0.01、p<0.001、p<0.0001で有意差があることを表す。
皮膚乾燥の評価は、経表皮水分蒸散量(TEWL)及び角層水分量(SC hydration)の2つのパラメーターを用いて行った。コントロールであるW+0.5%CMC群と比較して、AEW+0.5%CMC群では、有意なTEWL値の増加とSC hydrationの低下が認められた。このことから、AEW処置によって皮膚バリア機能が破綻し、ドライスキンが誘発されていることが確認された。ノビレチン及び4’-デメチルノビレチンの経口投与は、ドライスキンのパラメーターであるTEWL及びSC hydrationを有意に抑制しなかったが、これらパラメーターの改善傾向が認められた(図3)。
なお、後に詳述するように、4’-デメチルノビレチンには角層セラミド合成促進作用が認められるが、本試験例ではAEW処置によって角層セラミドを繰り返し除去してしまっているため、4’-デメチルノビレチンの経口投与による効果は出難いものと推察される。
図4は、各群のマウスの掻破行動回数(2時間)の分布を示すグラフである。図4中、横軸は各群を表し、箱ひげ図はそれぞれ、上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。
ドライスキンによって生じる自発的かゆみ行動を評価するために、SCLABA(登録商標)-Realを用いて掻破行動を2時間測定した。その結果、W+0.5%CMC群と比較し、AEW+0.5%CMC群ではドライスキンによる自発的かゆみ行動が増加傾向を示した(有意差無し)。またAEW+0.5%CMC群と比較し、4’-デメチルノビレチン投与群ではドライスキンによる自発的かゆみ行動回数の減少傾向が認められた(図4)。
図5は、各群のマウスのアロネーシスアッセイの結果を示すグラフである。図5中、(A)は0.07g、(b)は0.16gのvon Freyフィラメントを用いた場合のアロネーシススコアの分布を表す。また、横軸は各群を表し、箱ひげ図はそれぞれ、上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。なお、*、***、****はAEW+0.5%CMC群に比べて各々p<0.05、p<0.001、p<0.0001で有意差があることを表す。
ドライスキン誘発性アロネーシス(かゆみ過敏)に対するノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与の影響を検討するために、屈曲力0.07g及び0.16gのvon Freyフィラメントを用いてアロネーシスアッセイを行った。その結果、W+0.5%CMC群と比較し、AEW+0.5%CMC群ではアロネーシススコアが有意に高値を示したことから、ドライスキン誘発性アロネーシスを発症していることが確認された。このAEW+0.5%CMC群のアロネーシスは、(A)0.07g及び(B)0.16gのいずれにおいても、ノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与により有意に抑制された(図5)。
図6は、各群のマウスの自発的運動量(単位:cm)の分布を示すグラフである。図6中、横軸は各群を表し、箱ひげ図はそれぞれ、上から最大値、75%、50%、25%、最小値を表す。
最後に、ノビレチン及び4’-デメチルノビレチンを投与したマウスの自発的運動量をSCLABA(登録商標)-Real Trackingソフトウェアを用いて、各マウスの移動距離(2時間)を算出し、被験物質による鎮静効果の有無について検討した。その結果、AEW+0.5%CMC群とノビレチン又は4’-デメチルノビレチン投与群の間で自発的運動量に有意な差は認められなかった(図6)。
本試験例では、AEW処置による乾皮症モデルマウスを用いて、乾皮症に伴うかゆみ及びアロネーシス(かゆみ過敏)に対するノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与の影響を検討した。その結果、ノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与は、乾皮症に伴うアロネーシスを有意に抑制した(図5)。また、ノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与は、皮膚バリア機能及び乾皮症に伴う自発的かゆみ行動に対して改善傾向を示した(図3、図4)。
以上のことから、ノビレチン及び4’-デメチルノビレチン経口投与は、乾皮症ならびに乾皮症に伴うかゆみ及びかゆみ過敏に対する治療・予防効果を発揮することが示唆された。なお、図5において認められるかゆみ過敏の抑制メカニズムとしては、乾燥により誘発される神経線維の表皮への侵入を抑制することによるものと考えられる。
<実施例5> 4’-デメチルノビレチン含有組成物及び単離物の調製
実施例3と同様にして、ポンカン果皮10kgを麹菌発酵することによりノビレチン変換物4’-デメチルノビレチン21%含有組成物を調製した。
得られた4’-デメチルノビレチン含有組成物2gを20%(v/v)メタノールに溶解し、ODSカラムクロマトグラフィー(内径20mmφ、長さ30cmカラムに和光ゲル50C18を30g詰めた)に供した。40%(v/v)メタノールで溶出する成分を除去し、60%(v/v)メタノールで溶出する成分を得た。
次いで、得られた成分について、展開溶媒ヘキサン/エタノール=7:3の条件で分取TLCクロマトグラフィー(シリカゲル70PF254プレートワコー、膜厚0.75mm、和光純薬製)を行い、4’-デメチルノビレチンを含む画分を、UVランプを用いて確認しながら採取した。
そして、得られた画分を、分取HPLCカラム(TSK GEL ODS、東ソー社製、4.6mm×25cm)に供し、37%(v/v)アセトニトリルの移動層によって、純品の4’-デメチルノビレチン20mgを得た。
<試験例2>4’-デメチルノビレチンの角層セラミド合成への効果
実施例5で調製した4’-デメチルノビレチン純品又は4’-デメチルノビレチン含有組成物をヒト3次元培養表皮モデル(角層モデル)に添加し、角層セラミド合成への効果を調べた。
(方法)
ヒト3次元培養表皮モデルはLabCyte EPI-MODEL 6D(J-TEC社)を用いた。当該表皮モデルの開封後1日間は、付属の専用アッセイ培地([EPI-MODEL][CORNEA-MODEL](J-TEC社))で培養した。その後、上記アッセイ培地に対し、4’-デメチルノビレチン(10μM)もしくは4’-デメチルノビレチン含有組成物(4.5,9,18μg/mL)を溶解した培地で培養を行い、培養6日目で組織を回収した。なお、培地交換は1日おきに実施した。対照(Control)として、4’-デメチルノビレチン又は4’-デメチルノビレチン含有組成物の代わりにDMSOを0.1%(容量比)添加したアッセイ培地を用いて、同様に培養を行った。
角層セラミド産生量は、トータルセラミド、セラミドEOS、セラミドNS/NDS(NSとNDSの合計)、セラミドNPについて評価した(サンプル数:n=3)。各セラミドの定量方法は以下の通りである。
培養6日目に回収した組織をトリプシン処理し、角層を分離させた。得られた角層をPBSで複数回洗浄後、抽出液(クロロホルム:メタノール:PBS=1:2:0.8(容量比))の入ったガラスホモジナイザーで角層を一定時間破砕した。破砕後は、角層を試験管に移し、ボルテックスで20分間振盪した後、遠心分離にて沈殿物と上清を分離した。当該沈殿物はBCA法にてタンパク定量し、角層タンパク重量あたりのセラミド量の算出に使用した。
一方、上記の上清に抽出液(クロロホルム:PBS=1:1(容量比))を加え、ボルテックスで20分間振盪したのち、遠心分離にて層を分離した。ガラスシリンジで下層のみを回収し、窒素乾固で完全に溶媒を除去した後、クロロホルム・メタノール混合液(クロロホルム:メタノール=2:1(容量比))を所定量加えて溶解するまでボルテックス処理することで、サンプル溶液とした。
セラミドの定量は、「機能性化粧品素材開発のための実験法-in vitro/細胞/組織培養-」(芋川玄爾 監修、2007年、シーエムシー出版)を参考にして、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用して行った。標準物質として使用したnon hydroxy ceramide及びhydroxy ceramideはMatreya, LLC社より購入し、Ceramide III及びCeramide VIはEvonik Industries AG社(Essen)より、Ceramide TIC-001は高砂香料工業株式会社より、それぞれ供与された。各標準物質は、0.2mg/mLとなるように、クロロホルム・メタノール混合液(クロロホルム:メタノール=2:1(容量比))に溶解し、標準液とした。
所定量のサンプル溶液及び標準液をシリカゲルプレート(HPTLCガラスプレート シリカゲル60 F254(Merck社))に供与し、展開溶媒(クロロホルム:メタノール:酢酸=190:9:1(容量比))で展開した。取り出したTLCプレートを室温で風乾後、展開溶媒(クロロホルム:メタノール:酢酸=197:2:1(容量比))で再度展開した。取り出したTLCプレートは室温で風乾した後、10%硫酸銅・8%リン酸(各質量比)の混合溶液を噴霧し、180℃で6分間加熱してスポットを発色させた。発色したTLCプレートはスキャン後、Image J(Wayne Rasband)にて解析し、各スポットの濃度及び大きさに基づいて各セラミドを定量した。
なお、セラミドNS/NDSの定量においては、non hydroxy ceramideを標準物質として用いた。セラミドASの定量には、hydroxy ceramideを標準物質として用いた。セラミドNPの定量においては、Ceramide IIIを標準物質として用いた。セラミドAPの定量においては、Ceramide VIを標準物質として用いた。セラミドNDSの定量においては、Ceramide TIC-001を標準物質として用いた。トータルセラミドの定量においては、上記で求めたセラミドを含む、セラミドEOS、NS、NDS、NP、EOH、AS、NH、AP及びAHの合計量として算出した。
(結果)
結果を図7、図8に示す。図7は、ヒト3次元培養表皮モデルに対して4’-デメチルノビレチン(DeNOB)を添加したときの角層セラミド合成への効果(6日後)を示すグラフである。図7中、(A)はトータルセラミド、(B)はセラミドEOS、(C)はセラミドNS/NDS、(D)はセラミドNPの結果を表す。また、縦軸はセラミド産生量(単位:μg/mg蛋白)、バーは標準偏差を表し、*、**は無添加の対照(Control)に比べて各々p<0.05、p<0.01で有意差があることを表す。
4’-デメチルノビレチンの添加により、トータルセラミドは1.54倍、セラミドEOSは1.50倍、NS/NDSは1.59倍、セラミドNPは1.57倍へとそれぞれ有意に増大した(図7)。
図8は、ヒト3次元培養表皮モデルに対して4’-デメチルノビレチン(DeNOB)含有組成物を添加したときの角層セラミド合成への効果(6日後)を示すグラフである。図8中、(A)はトータルセラミド、(B)はセラミドNS/NDS、(C)はセラミドNPの結果を表す。また、縦軸はセラミド産生量(単位:μg/mg蛋白)、バーは標準偏差を表し、*は無添加の対照(Control)に比べてp<0.05で有意差があることを示す。
4’-デメチルノビレチン含有組成物の添加により、トータルセラミドは1.36倍、NS/NDSは1.34倍、セラミドNPは1.40倍へとそれぞれ有意に増大した(図8)。
(結論)
以上のことから、4’-デメチルノビレチン及び4’-デメチルノビレチン含有組成物の角層セラミド合成促進作用が明らかとなった。これにより、4’-デメチルノビレチンが皮膚バリア機能を向上させ、乾皮症の治療・予防効果を発揮する可能性が示唆された。
<試験例3> 4’-デメチルノビレチンのセラミド合成酵素遺伝子発現への効果
実施例5で調製した4’-デメチルノビレチン純品又は4’-デメチルノビレチン含有組成物をヒト3次元培養表皮モデル(角層モデル)に添加し、角層セラミド合成酵素遺伝子発現への効果を調べた。図9は、セラミド生合成経路と関連遺伝子を示す図である。本試験例では、セラミド合成関連遺伝子として、セラミド合成酵素1(CERS1)、2(CERS2)、グルコシルセラミド合成酵素(UGCG)、スフィンゴミエリン合成酵素2(SMS2)について検討した。
(方法)
ヒト3次元培養表皮モデルを上記試験例2と同様に培養し、評価物質添加後培養3日目に回収した組織から、トリプシン処理で表皮細胞を取り出した。ここで、アッセイ培地に対する4’-デメチルノビレチンの添加量は10μM、4’-デメチルノビレチン含有組成物の添加量は9,18μg/mLとした。対照(Control)として、4’-デメチルノビレチン又は4’-デメチルノビレチン含有組成物の代わりにDMSOを0.1%(容量比)添加したアッセイ培地を用いて、同様に培養を行った。
得られた表皮細胞から、RNeasy Mini Kit(Qiagen社)を用いて総RNAを抽出し、Rever TraAce qPCR RT kit(TOYOBO社)を用いて、総RNAからcDNA合成を行った。次に、得られたcDNAを用いて、リアルタイムRT-PCR法により、セラミド生合成関連酵素(CERS1、CERS2、UGCG及びSMS2)の遺伝子発現量を定量した。リアルタイムRT-PCR法には、TB Green Fast qPCR Mix(TaKaRa社)を使用し、CERS1、CERS2、UGCG及びSMS2のプライマーは表1に示す塩基配列からなるものを用いた。
なお、内部標準としてGAPDHを用いた。リアルタイムRT-PCRの操作は定められた方法に従い、CERS1、CERS2、UGCG及びSMS2のmRNAの発現量を、内部標準であるGAPDH mRNAの発現量に対する割合として求めた。CERS1、CERS2、UGCG及びSMS2の発現率は、対照(DMSO 0.1%)のmRNA発現量に対する4’-デメチルノビレチンもしくは4’-デメチルノビレチン含有組成物添加群のmRNA発現量の比率として算出した(サンプル数:n=3)。
Figure 2023072735000003
(結果)
結果を図10及び図11に示す。図10は、ヒト3次元培養表皮モデルに対して4’-デメチルノビレチン(DeNOB)を添加したときのセラミド関連遺伝子への効果(3日後)を示すグラフである。図10中、(A)はCERS1、(B)はCERS2、(C)はUGCGの結果を表す。グラフの縦軸は、無添加の対照(Control)におけるmRNA発現量を1としたときの、mRNA発現量の割合(相対的mRNA発現量)を表す。また、バーは標準偏差を表し、*は無添加の対照(Control)に比べてp<0.05で有意差があることを示す。4’-デメチルノビレチンの添加により、CERS1、CERS2、UGCG共に発現量の有意な上昇が示された(図10)。
図11は、ヒト3次元培養表皮モデルに対して4’-デメチルノビレチン含有組成物(DeNOBエキス)を添加したときのセラミド関連遺伝子への効果を示す図である。図11中、(A)はCERS1、(B)はCERS2、(C)はUGCG、(D)はSMS2の結果を表す。グラフの縦軸は、無添加の対照(Control)におけるmRNA発現量を1としたときの、mRNA発現量の割合(相対的mRNA発現量)を表す。また、バーは標準偏差を表し、#、*は無添加の対照(Control)に比べて各々p<0.1で傾向、p<0.05で有意差があることを表す。4’-デメチルノビレチン含有組成物の添加により、CERS1、CERS2、UGCG、SMS2それぞれについて発現量の有意な上昇が示された(図11)。
(結論)
以上のことから、4’-デメチルノビレチン又は4’-デメチルノビレチン含有組成物の培養細胞への添加により、セラミド合成酵素活性が亢進したことで、角層セラミド合成が促進されたことが裏付けられた。これにより、4’-デメチルノビレチンが皮膚バリア機能を向上させ、乾皮症の治療・予防効果を発揮する可能性が示唆された。
<実施例6> 内服剤の処方例
処方例1
以下の量で各原料を配合し、常法によりノビレチン配合製剤(300mg錠剤)を製造した。
ノビレチン含有組成物(実施例1調製品) 50mg
デキストリン 160mg
結晶セルロース、マルチトール、ショ糖脂肪酸エステル 90mg
処方例2
以下の量で各原料を配合し、常法により4’-デメチルノビレチン配合製剤(300mg錠剤)を製造した。
4’-デメチルノビレチン含有組成物(実施例3調製品) 50mg
デキストリン 160mg
結晶セルロース、マルチトール、ショ糖脂肪酸エステル 90mg
処方例3
以下の量で各原料を配合し、常法によりノビレチン配合製剤(300mg錠剤)を製造した。
ノビレチン(実施例2調製品) 5mg
デキストリン 205mg
結晶セルロース、マルチトール、ショ糖脂肪酸エステル 90mg
処方例4
以下の量で各原料を配合し、常法により4’-デメチルノビレチン配合製剤(300mg錠剤)を製造した。
4’-デメチルノビレチン(実施例4調製品) 5mg
デキストリン 205mg
結晶セルロース、マルチトール、ショ糖脂肪酸エステル 90mg
<実施例7> 飲食品組成物の製造例
以下の量で各原料を配合し、常法によりノビレチン配合飲料(180mL)を製造した。
ノビレチン含有組成物(実施例1調製品) 0.025g
りんご濃縮果汁 5g
乳糖 2g
果糖ブドウ糖液糖 5g
酸味料(クエン酸) 0.3g
甘味料(スクラロース) 0.01g
保存料(安息香酸Na) 0.03g
水 残分
上記の飲料において、ノビレチン含有組成物に代えて同量の4’-デメチルノビレチン含有組成物(実施例3調製品)を使用したこと以外は、上記と同様にして4’-デメチルノビレチン配合飲料(180mL)を製造した。
以上、図面を参照して、本発明の実施形態及び実施例について詳述してきたが、具体的な構成は、これらに限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、ポンカン果皮から抽出、精製されたノビレチン及び4’-デメチルノビレチン又はこれらの含有組成物による乾皮症改善効果について説明したが、これに限定されるものではなく、ポンカンの代わりにノビレチンを含有する任意のカンキツ類を抽出原料とするノビレチン及び4’-デメチルノビレチンを有効成分とする乾皮症の治療又は予防用経口組成物も、本発明に含めることができる。
本発明は、安全性の高い原料であるノビレチン及び4’-デメチルノビレチンを有効成分として含有することにより、乾皮症及びそれに伴うかゆみ過敏に対する鎮掻効果を有し、乾皮症及びそれに伴うかゆみ過敏の治療又は予防用の医薬品、医薬部外品、飲食品組成物等に利用されることが期待される。

Claims (3)

  1. ノビレチン及び/又は4’-デメチルノビレチンを有効成分として含有する、乾皮症の治療もしくは予防用経口組成物。
  2. かゆみ過敏を伴う乾皮症の治療もしくは予防用の医薬品又は医薬部外品である、請求項1記載の経口組成物。
  3. かゆみ過敏を伴う乾皮症の改善もしくは予防用の飲食品組成物である、請求項1記載の経口組成物。
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