JP2023070057A - 異方性希土類焼結磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Nd2Fe14B型結晶の化合物を主相とし、かつCeを含有する異方性希土類焼結磁石において、良好な磁気特性を示す異方性希土類焼結磁石およびその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の異方性希土類焼結磁石は、組成が式Rx(Fe1-aCoa)100-x-y-zByMz(Rは希土類元素から選ばれ、かつNd及びCeを必須とする2種以上の元素)で表される異方性希土類焼結磁石であって、主相がNd2Fe14B型結晶の化合物からなり、粒の中心部におけるCe/R’比(R’は希土類元素から選ばれ、かつNdを必須とする1種以上の元素)が粒の外殻部におけるCe/R’比より低い主相粒10が存在するとともに、粒界部20にCeを含むR’リッチ相及びCeを含むR’(Fe,Co)2相が存在することを特徴とする。本発明の異方性希土類焼結磁石の製造方法は、本発明の異方性希土類焼結磁石の製造方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、NdFe14B型結晶の化合物を主相とし、かつCeを含有する異方性希土類焼結磁石及びその製造方法に関する。
Nd-Fe-B焼結磁石は、自動車の電動化や 産業用モータの高性能化・省電力化などを背景に、今後さらに需要が高まり、生産量が増加すると予想されている。しかし原料として用いられるNd、Pr、DyやTbなどの希土類元素は高価であり、また将来的な供給安定性へのリスクも有する。このためNdの一部を、地殻中の元素含有率がより高く、安価であるCeなどで置き換える研究が行われている。
例えば特許文献1では、主相及び粒界相を備え、全体組成が(R (1-x) Fe(100-y-w-z-v)Co ・(R (1-p) (ただし、RはCe、La、Y、及びScから選ばれる元素、R及びRはNd、Pr、Gd、Tb、Dy、及びHoから選ばれる元素、Mは所定の元素等、MはRと合金化する遷移金属元素等)で表され、主相がRFe14B型の結晶構造を有し、主相の平均粒径が1~20μmであり、主相がコア部及びシェル部を有し、シェル部の厚さが25~150nmであり、かつ、コア部の軽希土類元素比をa、シェル部の軽希土類元素比をbとしたとき、0≦b≦0.30及び0≦b/a≦0.50を満足する、保磁力と残留磁化の両方に優れる希土類磁石及びその製造方法が示されている。
また特許文献2では、R、T及びBを含む主相粒子と、粒界相とを備え、RはNd及びCeを含み、TはFeを含み、粒界相はR‐T相及びRリッチ相を含み、R‐T相はR及びTの金属間化合物を含有し、Rリッチ相におけるRの含有量はR‐T相におけるRの含有量よりも大きく、R‐T相におけるCe/R×100=65~100、Rリッチ相におけるRの含有量が70~100原子%である希土類磁石が示されている。
特許文献3では、全体組成が、式(Nd(1-x-y)Ce (Fe(1-z)Co(100-p-q-r-s)Ga(ただし、Rは、Nd及びCe以外の希土類元素及びYから選ばれる1種以上、Mは、Al、Cu、Au、Ag、Zn、In、Mn、Zr、及びTiから選ばれる1種以上並びに不可避的不純物元素であり、かつ、12≦p≦20、4.0≦q≦6.5、0≦r≦1.0、0≦s≦0.5、0<x≦0.35、0≦y≦0.10、及び0.050≦z0.140)で表され、かつ、磁性相、及び前記磁性相の周囲に存在する粒界相を備える、希土類磁石及びその製造方法が示されている。
特許文献4では、希土類元素R、遷移金属元素T、及びホウ素Bを含有する複数の主相粒子と、複数の主相粒子の間に位置する粒界相とを備え、RがNd及びCeを含み、TがFeを含み、永久磁石におけるRの含有量の合計が[R]原子%であり、永久磁石におけるTの含有量の合計が[T]原子%であり、永久磁石におけるBの含有量が[B]原子%であり、永久磁石におけるCeの含有量が[Ce]原子%であり、[Ce]/[R]が0.1~0.6であり、[T]/[B]が14~18であり、粒界相が、R及びTの金属間化合物を含有するR‐T相を含み、永久磁石の単位断面の面積がA0 であり、単位断面におけるR‐T相の面積の合計がAL であり、AL /A0 が0.05~0.5である、抗折強度が高い永久磁石が示されている。
特許文献5では、(CeNd(1-x)Fe(100-y-w-z-v)Co(式中、MはGa、Al、Cu、Au、Ag、Zn、In、Mnの少なくとも1種であり、0≦x≦0.75、5≦y≦20、4≦z≦6.5、0≦w≦8、0≦v≦2)の全体組成を有する結晶粒であって、コア部1とその周囲のシェル部2とから構成され、コア部1よりもシェル部2においてNd濃度が高い結晶粒を備えている希土類磁石が示されている。
特許文献6では、Rとして、R1とCeを必須とするR-T-B系磁石において、原料となるR-T-B系磁石に長時間熱処理を施すことにより、主相粒子をコアシェル化し、コア部におけるR1とCeの質量濃度をそれぞれαNd、αCe、前記シェル部におけるR1とCeの質量濃度をそれぞれβR1、βCe、としたときに、前記シェル部におけるR1とCeの質量濃度比率(βR1/βCe=B)と、前記コア部におけるR1とCeの質量濃度比率(αR1/αCe=A)の比(B/A)が1.1以上とすることで、Ce添加によりめっきとの密着強度を向上させつつ、保磁力低下を抑制するR-T-B系焼結磁石が示されている。
特開2021-44361号公報 特開2020-95989号公報 特開2019-179796号公報 特開2018-174323号公報 特開2016-111136号公報 特開2014-216339号公報
上述したように、Ceを含有するR-T-B系磁石において、コアシェル構造を有する主相粒を備えたり、あるいはR-T金属間化合物を粒界相としたりすることで、良好な特性が得られることが提示されている。しかし主相であるRFe14B化合物の室温における磁気特性は、R=Ndのときに飽和磁化M1.60T、異方性磁界μ6.7Tであるのに対して、R=CeではM1.17T、μ3.0Tと低いため、Ce含有量が多いと磁石特性が低下する課題を解決するのは難しい。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、NdFe14B型結晶の化合物を主相とし、かつCeを含有する異方性希土類焼結磁石において、良好な磁気特性を示す異方性希土類焼結磁石およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、NdFe14B型結晶の化合物を主相とし、かつCeを含有する異方性希土類焼結磁石において、粒の中心部におけるCe/R’比(R’は希土類元素から選ばれ、かつNdを必須とする1種以上の元素)が粒の外殻部におけるCe/R’比より低い主相粒が存在するとともに、粒界部にCeを含むR’リッチ相及びCeを含むR’(Fe,Co)相が存在するときに良好な磁気特性が得られることを見出し、本発明を完成した。
従って、本発明は下記の異方性希土類焼結磁石及びその製造方法を提供する。
(1)組成が式R(Fe1-aCo100-x-y-z(Rは希土類元素から選ばれ、かつNd及びCeを必須とする2種以上の元素、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、Biからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、x、y、z、aは各々、12≦x≦17原子%、3.5≦y≦6.0原子%、0≦z≦3原子%、0≦a≦0.1)で表される異方性希土類焼結磁石であって、主相がNdFe14B型結晶の化合物からなり、粒の中心部におけるCe/R’比(R’は希土類元素から選ばれ、かつNdを必須とする1種以上の元素)が粒の外殻部におけるCe/R’比より低い主相粒が存在するとともに、粒界部にCeを含むR’リッチ相及びCeを含むR’(Fe,Co)相が存在することを特徴とする異方性希土類焼結磁石。
(2)前記主相と前記R’(Fe,Co)相の間に、20原子%以上のRを含み、かつ厚さが20nm以下の境界相が形成されていることを特徴とする(1)に記載の異方性希土類焼結磁石。
(3)前記主相粒において、中心部のR’にCeが含まれない主相粒が存在することを特徴とする(1)または(2)に記載の異方性希土類焼結磁石。
(4)前記主相粒において、中心部のR’がNd、またはNd及びPrからなる主相粒が存在することを特徴とする(1)~3のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(5)前記R’(Fe,Co)相が、室温以上でフェロ磁性又はフェリ磁性を示す相であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(6)前記R’(Fe,Co)相におけるCe/R’比が主相粒外殻部のCe/R’比より高いことを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(7)前記R’リッチ相におけるCe/R’比が主相粒外殻部のCe/R’比より高いことを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(8)前記R’リッチ相及びR’(Fe,Co)相を、合計で1体積%以上含むことを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(9)前記焼結体の組成におけるCe/R’比が0.01以上0.3以下であることを特徴とする(1)~(8)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(10)前記焼結磁石に含まれるBリッチ相が5体積%以下であることを特徴とする(1)~(9)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(11)隣接する主相粒の間に二粒子間粒界相が形成されていることを特徴とする(1)~(10)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(12)前記主相と前記R’(Fe,Co)相の間に形成された前記の境界相におけるCe/R’が、前記の隣接する主相粒の間に形成された二粒子間粒界相におけるCe/R’よりも高いことを特徴とする(11)に記載の異方性希土類焼結磁石。
(13)室温の保磁力HcJ(room)が10kOe以上であり、保磁力の温度係数βの値が、β≧(0.01×HcJ(室温)-0.720)%/Kで示されることを特徴とする(1)~(12)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石。
(14)NdFe14B型結晶の化合物相を含む合金と、それよりR’組成比及びCe/R’比が高い合金を粉砕、混合し、磁場印加中で圧粉成形して成形体とした後、800℃以上1200℃以下の温度で焼結することを特徴とする(1)~(13)に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
(15)NdFe14B型結晶の化合物相を含む合金を粉砕し、磁場印加中で圧粉成形して成形体とした後、800℃以上1200℃以下の温度で焼結し、その焼結体にCeを含む材料を接触させて、600℃以上焼結温度以下の温度で熱処理を施すことによりCeを焼結体内部に拡散させることを特徴とする(1)~(14)に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
(16)焼結体に接触させるCeを含む材料が、Ce金属、Ce含有合金、Ceを含む化合物から選ばれる1種以上であり、またその形態が、粉末、薄膜、薄帯、箔、及び気体から選ばれる1種以上であることを特徴とする(15)に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
(17)焼結体に300~800℃の温度で熱処理を施すことを特徴とする(14)~(16)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
(18)焼結体に600~1000℃の温度で熱処理を施した後、少なくとも550℃以下まで1℃/分以上50℃/分以下の冷却速度で冷却し、さらに300~800℃の温度で熱処理を施すことを特徴とする(14)~(17)のいずれかに記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
本発明によれば、NdFe14B型結晶の化合物を主相とし、かつCeを含有する異方性希土類焼結磁石において、良好な磁気特性を示す異方性希土類焼結磁石を得ることができる。
図1は、二合金法で作製された、粒界部にR’リッチ相及びR’(Fe,Co)相が存在する本発明の異方性焼結磁石の一例の組織の模式図である。 図2は、粒界拡散法で作製された、粒界部にR’リッチ相及びR’(Fe,Co)相が存在する本発明の異方性焼結磁石の一例の組織の模式図である。 図3は、粒界部にR’リッチ相及びR’(Fe,Co)相が存在し、主相とR(Fe,Co)相の間に境界相が形成されている本発明の異方性焼結磁石の一例の組織の模式図である。 図4は、実施例11において、主相とR’(Fe,Co)相の間に形成された境界相を示すHAADF像である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の磁石は、組成が下式
(Fe1-aCo100-x-y-z
で表され、NdFe14B型結晶の化合物が主相であり、主相粒子には粒の中心部と外殻部でCe/R’比率が異なる粒子が存在し、また粒界部にはCeを含むR’リッチ相及びCeを含むR’(Fe,Co)相が存在する異方性希土類焼結磁石である。まず各成分について以下に説明する。なお、Rは希土類元素から選ばれ、かつNd及びCeを必須とする2種以上の元素、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、Biからなる群より選ばれる1種以上の元素である。また、x、y、z、aは各々、12≦x≦17原子%、3.5≦y≦6.0原子%、0≦z≦3原子%、0≦a≦0.1である。さらに、R’は希土類元素から選ばれ、かつNdを必須とする1種以上の元素である。
なお、R’リッチ相はR’が40原子%を超えて含まれる相である。またR’(Fe,Co)相はMgCu構造を有し、ラーベス(Laves)相と呼ばれる化合物相である。
上述したように、Rは希土類元素から選ばれ、かつNd及びCeを必須とする2種以上の元素である。具体的には、RはNd及びCeを必ず含有し、さらにSc、Y、La、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuより選ばれる1種以上の元素を含んでもよい。Rは主相であるNdFe14B型結晶構造の化合物を形成するのに必要な元素である。Rの含有量は12原子%以上17原子%以下とする。12.5原子%以上16原子%以下であれば、より好ましい。12原子%未満ではα-Fe相が析出して焼結し難しく、一方、17原子%を超えるとNdFe14B型化合物相の体積比が低下して良好な磁気特性が得られない。NdFe14B型化合物はRがNdのとき特に高い磁気特性を示すので、本発明の異方性希土類焼結磁石はNdを必須とする。また磁石の低コスト化と元素の供給安定化を図るために、希土類元素の中で元素存在比の高いCeを必ず含むものとする。焼結体組成のRに含まれるCeは、原子比でRの1%以上30%以下であることが好ましく、3%以上25%以下であればさらに好ましく、5%以上20%以下が特に好ましい。Ce比がこのような範囲であることで、高い残留磁束密度Bと高い保磁力HcJ、さらに良好なHcJ温度特性を兼ね備えた異方性焼結磁石が得られる。
BもNdFe14B型化合物を形成するのに必須の元素である。Bの含有量は、3.5原子%以上6.0原子%以下とする。5.0原子%以上5.8原子%以下であれば、より好ましい。3.5原子%未満ではRFe17相やα-Fe相などの磁気特性に悪影響を与える相が析出し、一方、6.0原子%を超えるとBリッチ相などの異相が形成されて主相の体積比が低下し、良好な磁気特性が得られない。
上述したように、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb及びBiより選ばれる1種以上の元素である。これらの元素は、NdFe14B型化合物主相中に固溶したり、粒界相を形成したりしてHcJを増大させる効果を有するが、過剰に含まれると、磁石のBrを低下させる。そのためMを含む場合、その含有量は全て合わせて3原子%以下とする。2原子%以下であればさらに好ましく、1原子%以下は特に好ましい。
本発明の異方性希土類焼結磁石は、R、BとともにFeを必須の構成元素とする。さらにCoでFeの一部を置換しても良い。Coによる置換は、主相であるNdFe14B型化合物のキュリー温度Tを高める効果がある。Coの置換率は原子比で10%以下とする。置換率が10%を超えるとMは逆に低下する。Fe及びCoの割合は、R、B及びMの残部とする。この他に、原材料から取り込まれたり、製造工程で混入したりする不可避不純物、具体的にはH、C、N、O、F、P、S、Mg、Cl、Caなどを含有してもよいが、良好な磁気特性を得る観点から、含有量は合計で3重量%以下が好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。特にC、N、Oは合計で1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましく、0.3重量%以下が特に好ましい。
次に、本発明の異方性希土類焼結磁石を構成する相について説明する。
本発明の異方性希土類焼結磁石における主相は、NdFe14B型結晶構造の化合物からなる。主相の平均結晶粒径は1μm以上15μm以下が好ましい。1.5μm以上10μm以下の範囲であればさらに好ましく、2μm以上5μm以下が特に好ましい。平均結晶粒径をこのような範囲とすることで、結晶粒の配向度の低下による残留磁束密度Bの減少や、保磁力HcJの低下を抑制できる。主相の体積率は、良好なBやHcJを得る観点から、磁石全体に対して80体積%以上99体積%未満が好ましく、90体積%以上99体積%以下であればさらに好ましい。
なお、主相の結晶粒径については、焼結磁石の断面を鏡面になるまで研磨し、エッチング液(硝酸+塩酸+グリセリンの混合液など)に浸漬して粒界相を選択的に除去した後、この断面の任意の10箇所以上についてレーザー顕微鏡で観察を行い、得られた観察像から画像解析により各粒子の断面積を算出し、これらを円とみなした時の平均直径を平均結晶粒径とすることで算出することができる。
また、主相及び各相の体積率については、焼結磁石の断面を鏡面になるまで研磨した後、EPMAを用いて異方性希土類焼結磁石の組織観察と各相の組成分析を行い、主相、R’リッチ相及びR’(Fe,Co)相の存在を確認した上で、反射電子像の画像における面積比が各相の体積率に等しいものとして算出することができる。
R’Fe14B化合物は、R’=Ndのときに飽和磁化Mが最も高く、Ndの一部をCeで置換した場合は、Ce置換量が大きいほどMが低下する。そのため本発明の磁石では、Ce置換による磁石のB減少の影響を小さくするために、主相粒の中心部と外殻部でCe/R’比(R’に対するCeの原子比率)が異なり、粒の中心部におけるCe/R’比が粒の外殻部におけるCe/R’比より低い主相粒が存在するものとする。ただし、Ce濃度分布が均一である主相粒が一部含まれても良い。ここで、外殻部とは主相粒の表面を含む領域であり、中心部とはそれ以外の内部領域を指すものとする。このような組織形態をとることにより、Ce/R’比の低い主相粒の中心付近の領域ではM低下が抑制され、Ce置換による磁石のB減少量を小さくすることができる。主相粒の中心部のR’にCeが含まれない場合はより好ましく、粒中心部のR’がNd、またはNd及びPrからなる場合はさらに好ましい。
一方、後述するように、粒界部にCeを含むR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が形成されると、室温でのHcJが増大するとともに、HcJの温度変化が小さくなり、優れた磁気特性を示すようになる。これらの相を効率良く形成するため、本発明の磁石では、主相粒外殻部のCe/R’比が主相粒中心部のCe/R’比より高い構造とする。これにより粒界部のCe濃度も高まり、R’(Fe,Co)相が粒界部に形成されやすくなる。これに対し、粒のCe/R’比が均一な場合は、R’(Fe,Co)相を有意に形成するために、焼結体のCe置換量を高める必要があり、Mの大幅な低下を招く。
粒の外殻部におけるCe/R’比が高いと、粒表面のHは低下するが、Ceを含有するR’リッチ相やR’(Fe,Co)相によるHcJの増大効果が大きいため、Hの低下による負の効果は低減する。
上述とは逆に、粒の中心部におけるCe/R’比が粒の外殻部におけるCe/R’比より高い主相粒が存在する場合は、Ce/R’比の高い主相粒の中心近傍の領域でのM低下が顕著となるため、本発明の磁石における指針と相容れない。このため、本発明の磁石において、粒の中心部におけるCe/R’比が粒の外殻部におけるCe/R’比より高い主相粒は存在しないものとする。
Ce/R’比の高い外殻部の厚みは特に限定されないものの、外殻部の内側の部分の体積率を大きくする観点から、1nm~2μmが好ましく、2nm~1μmであれば特に好ましい。
R’リッチ相及びR’(Fe,Co)相は、磁石組織の粒界部に形成される。粒界部には粒界三重点に加えて二粒子間粒界相なども含まれる。ここで、R’が40原子%を超えて含まれる相とする。本発明者らは、粒界部にCeを含有するR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が存在するときに、磁石の室温におけるHcJが向上し、さらにHcJの温度特性も向上することを見出した。2つの相が共存する組織を得るために、焼結体の組成におけるCe/R’比は0.01以上0.3以下であることが好ましい。0.01未満ではR’(Fe,Co)相が形成されず、0.3を超えるとR’リッチ相が存在し難くなる。0.03以上0.25以下であればさらに好ましく、0.05以上0.2以下が特に好ましい。
R’リッチ相とR’(Fe,Co)相は、主として4つの効果をもたらす。第1の効果は、焼結を促進させる作用である。焼結温度ではR’リッチ相もR’(Fe,Co)相も溶融して液相となるため、液相焼結が進行し、これらの相を含まない場合の固相焼結に比べて速やかに焼結が完了する。またR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が共存することで、液相生成温度はどちらか一方の相のみの場合より降下する傾向を示し、液相焼結がより速やかに進行する。
第2の効果は、主相粒表面のクリーニングである。本発明の異方性希土類焼結磁石は核発生型の保磁力機構を有するため、逆磁区の核生成が生じにくくなるように、主相粒表面が平滑であることが望ましい。R’リッチ相とR’(Fe,Co)相は、焼結工程、もしくはその後の時効工程において、主相粒の表面を平滑化する役割を果たしており、このクリーニング効果によって保磁力低減の要因となる逆磁区の核生成が抑制される。R’(Fe,Co)相は、R’が40原子%未満の他相、例えば、R’M、R’M、R’(Fe,Co)MやR’(Fe,Co)などの化合物相と比べて主相に対する濡れ性が比較的高い。特に、この相はR’リッチ相と共存することで主相粒の表面を被覆しやすくなり、大きなクリーニング効果が生じる。これにより逆磁区の核生成が抑制され、室温での保磁力が増加するとともに、高温下での保磁力低下も小さくなり、良好なHcJの温度依存性を示すようになると考えられる。
第3の効果は、主相粒間の磁気的相互作用を弱める効果である。R’リッチ相とR’(Fe,Co)相が存在する磁石では、最適な焼結処理、もしくは時効処理を行うことで、隣接する主相粒間に、主相よりR’を多く含有する二粒子間粒界相が形成される。これにより主相粒間の磁気的相互作用が弱まり保磁力が発現するが、二粒子間粒界相がCeを含有すると、主相粒間の磁気的相互作用を弱める効果はより大きくなり、保磁力をさらに増大させる方向に作用すると考えられる。
第4の効果は、R’(Fe,Co)相と主相の間での境界相形成を促進する効果である。粒界部にR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が存在する磁石では、組成や粉末粒径などの条件に合わせて焼結や、その後の熱処理を最適に行うことにより、主相粒間だけでなく、R’(Fe,Co)相と主相粒の間にも薄い厚みを有する境界相が形成される。本発明の磁石におけるR’(Fe,Co)相は磁性相であるが、この薄い境界相が形成されることで、R’(Fe,Co)相と主相の間の磁気的相互作用が弱まって、高い保磁力が得られる。
粒界部にR’リッチ相が存在しない磁石では、R’(Fe,Co)相と主相粒間の薄い境界相や主相粒間の二粒子間粒界相が形成されにくい、あるいは主相粒の表面がこれらで完全に被覆された組織となりにくいため、十分な保磁力を示す磁石が得られにくい。
R’リッチ相は、上記のとおり、R’が少なくとも40原子%を超えて含まれるものとする。R’が40原子%を超えていると、主相との濡れ性がさらに良好となり、上述の効果がさらに得られやすくなる。R’を50原子以上含有するとさらに好ましく、60原子以上含有すれば特に好ましい。R’リッチ相はR’メタル相でも良いし、アモルファス相やR’(Fe,Co,M)、R’(Fe,Co,M)、R’(Fe,Co,M)、R’(Fe,Co,M)のように高R’組成で低融点の金属間化合物であっても良い。またFe、Co、M元素や、H、B、C、N、O、F、P、S、Mg、Cl、Caなどの不純物元素を、合計で60原子%未満まで含んで良い。
また、Rリッチ相のCe/R比が高いほど、主相粒間の磁気的相互作用が低減する効果は大きくなる。そのため、Ceを効率よく磁気特性の向上に作用させるために、Rリッチ相におけるCe/R比は、主相粒外殻部のCe/R比よりも高いことが好ましい。
一方、R’(Fe,Co)相はMgCu型結晶のLaves化合物であるが、EPMAなどを用いて組成分析した場合、測定ばらつきなどを考慮して、R’を20原子%以上40原子%未満含有するものとする。また、M元素によりFe、Coの一部が置換されても良い。ただし、Mの置換量はMgCu型結晶構造が保持される範囲内とする。
本発明の異方性希土類焼結磁石におけるR’(Fe,Co)相は磁性相である。ここでいう磁性相とは、フェロ磁性もしくはフェリ磁性を示し、キュリー温度Tが室温(23℃)以上である相とする。R’FeはCeFeを除いてTが室温以上であり、CeFeもR’の10%以上が他の元素で置換されればTは室温以上になる。一方、R’CoはGdCoを除いてTが室温以下、もしくは常磁性相だが、本発明の異方性希土類焼結磁石ではCoによるFeの置換原子比率が0.1以下なので、ほとんどの場合R’(Fe,Co)相は磁性相となる。一般に、組織中に含まれる軟磁性相は磁気特性に悪影響を及ぼすことが多いが、本発明の異方性希土類焼結磁石ではR’(Fe,Co)相による主相粒表面のクリーニング効果や二粒子間粒界相を形成する効果の方が大きく、磁性相であっても室温HcJの増大やHcJの温度依存性改善に寄与すると考えられる。
また、R’(Fe,Co)相は、R’がNd、Prのみでは安定に存在し難く、Ceを含むことで平衡相として粒界部に形成される。そのため、R’(Fe,Co)相のCe/R’比は、主相粒外殻部のCe/R’比よりも高いことが好ましい。
R’リッチ相とR’(Fe,Co)相の形成量は、合わせて1体積%以上であることが好ましく、1体積%以上20体積%未満とすることがより好ましい。また、1.5体積%以上15体積%未満がさらに好ましく、2体積%以上10体積%未満の範囲がよりさらに好ましい。またR’リッチ相とR’(Fe,Co)相は、各々0.5体積%以上であることが好ましい。このような範囲とすることで、主相粒と接する面積が確保され、HcJ増大の効果が得られやすい。また、Bの低下も抑えられ、所望の磁気特性が得られやすい。
本発明の焼結磁石における、より好ましい組織では、R’(Fe,Co)相と主相の間に薄い厚みを有する境界相が形成される。R’(Fe,Co)相と主相がこの薄い境界相で隔てられることで両相間の磁気的相互作用が弱まり、室温HcJやHcJの温度依存性がさらに改善される。
この境界相は、原子配列の乱れたアモルファス状であっても良いし、原子配列に規則性を有しても良い。STEM(走査透過電子顕微鏡)などの装置を用いて境界相を観察した場合、その組成は20原子%以上のR’を含むものとする。R’の含有量が20原子%以上であれば、境界相による保磁力改善効果が得られやすい。R’の含有量は25原子%以上であればより好ましく、30原子%以上であればさらに好ましい。また、R’やFe,Co,Mの他にC、N、Oなどの元素を含んでもよい。
境界相の厚さは0.1nm以上20nm以下であることが好ましい。このような範囲であれば、R(Fe,Co)相と主相間の磁気的相互作用が弱まる効果が生じ、かつ境界相形成による主相の体積率減少も抑えることができる。厚さは0.2nm以上10nm以下がさらに好ましく、0.5nm以上5nm以下が特に好ましい。
R’(Fe,Co)相と主相の間に形成されたこの薄い境界相のCe/R’は、主相粒間に形成される二粒子間粒界相のCe/R’よりも高いことが好ましい。境界相はCeを多く含有するR’(Fe,Co)相と隣接しているため、高いCe/R’組成を安定に実現しやすい。Ce/R’が高いほど磁気的相互作用を弱める効果は大きくなるので、主相粒表面がこの相で覆われる面積が増えると、磁石はさらに高い室温HcJを示すようになる。境界相のCe/R’の値は0.2以上が好ましい。0.3以上がさらに好ましく、0.35以上が特に好ましい。
このように、主相粒とR’(Fe,Co)相の間にCe/R’の高い境界相が形成される組織形態をとることで、主相-R’(Fe,Co)相間の磁気的相互作用が弱まり、高い室温HcJと良好なHcJ温度依存性が得られる。
なお、上述したR’(Fe,Co)相と主相の間に形成された境界相や、主相粒間の二粒子間粒界相の厚さは、例えば、STEM装置(日本電子株式会社製JEM-ARM200F)を用いて、主相粒同士が隣接する箇所、及びR’(Fe,Co)相と主相が隣接する箇所の観察を行い、得られたHAADF像(High-Angle Annular Dark Field)から算出することができる。
この他、本発明の異方性希土類焼結磁石には、不可避的に混入したC、N、O によって形成されるR’酸化物、R’炭化物、R’窒化物、R’オキシカーバイド、M炭化物などが含まれても良い。磁気特性の劣化を抑制する観点から、これらの体積比は10体積%以下が好ましく、5体積%以下がさらに好ましい。
上記以外の相はできるだけ少ない方が好ましく、例えばR’1+ε(Fe,Co)で表されるBリッチ相は、主相やR’リッチ相、R’(Fe,Co)相の体積比率の低下を抑えるために、5体積%以下であることが好ましい。また著しい磁気特性の低下を防ぐ観点から、α-(Fe,Co)相やR’(Fe,Co,M)17相は、本発明の異方性希土類焼結磁石には含まれないことが好ましい。
次に、製造方法について説明する。本発明の異方性希土類焼結磁石は粉末冶金法によって製造されるが、主相粒の中心部と外殻部でCe/R’比の異なる構造を有する磁石を製造する手段として、たとえば二合金法や粒界拡散法などの例を挙げることができる。
まず原料合金を作製するために、R’、Fe、Co、Mのメタル原料、合金、フェロ合金などを用い、製造工程中の原料ロス等を考慮した上で、最終的に得られる焼結体が所定の組成になるよう調整する。これらの原料を、高周波炉、あるいはアーク炉などで溶解して合金を作製する。溶湯からの冷却は鋳造法でもよいし、ストリップキャスト法で薄片としてもよい。ストリップキャスト法の場合は、冷却速度を調整して主相の平均結晶粒径、もしくは平均の粒界相間隔が1μm以上となるように合金を作製するのが好ましい。1μm未満では、微粉砕後の粉末が多結晶となり、磁場中成形の工程において主相結晶粒が十分に配向せずBの低下を招く。平均結晶粒径は、例えば、合金の断面を研磨してエッチング処理後に組織観察を行い、ロール接触面に平行な線を等間隔に20本引き、これらの線がエッチングで除去された粒界相部と交わる交点を数えることで算出できる。合金中にα-Feが析出する場合は、α-Feを除去してNdFe14B型化合物相の形成量が増えるように、合金に熱処理を施しても良い。
上記の原料合金を、ブラウンミルなどの機械粉砕や水素化粉砕などの手段により平均粒径0.05~3mmの粉末になるよう粗粉砕する。あるいはHDDR法(水素不均化脱離再結合法)を適用しても良い。さらに粗粉をボールミルや高圧窒素などを用いたジェットミルなどにより微粉砕し、平均粒径0.5~20μm、より好ましくは1~10μmの粉末とする。なお微粉砕工程の前後に、必要に応じて潤滑剤等を添加してもよい。
二合金法を用いる場合は、組成の異なる2種の原料合金を作製する。なお、3種類以上の合金を用いてもよい。このとき、NdFe14B型化合物相を主体としてCe/R’比が相対的に低い合金Aと、それより相対的にR’組成比及びCe/R’比が高い合金Bを組み合わせて、平均組成が所定の組成となるよう調整するのが好ましい。これらの合金を鋳造法やストリップキャスト法で作製し、粉砕する。各合金粉末を混合する工程は、微粉砕前の粗粉状態で行っても良いし、微粉砕後に行っても良い。
次に磁場プレス装置を用いて、合金粉末の磁化容易軸を印加磁場中で配向させながら成形し、圧粉成形体とする。成形は、合金粉末の酸化を抑制するために真空、窒素ガス雰囲気、Arなどの不活性ガス雰囲気などで行うのが好ましい。
圧粉成形体を焼結する工程は、焼結炉を用いて真空または不活性雰囲気中で、800℃以上1200℃以下の温度で行うものとする。800℃未満では焼結が進行し難いため高い焼結密度が得られず、1200℃を超えるとNdFe14B型化合物の主相が分解してα-Feが析出する。焼結温度は特に900~1100℃の範囲が好ましい。焼結時間は0.5~20時間が好ましく、1~10時間がより好ましい。焼結は、昇温した後、一定温度で保持するパターンでも良いし、結晶粒の微細化を図るために、第1の焼結温度まで昇温後により低い第2の焼結温度で所定時間保持する2段階焼結パターンを用いても良い。また、複数回の焼結を行っても良いし、あるいは放電プラズマ焼結法などを適用しても良い。焼結後の冷却速度は特に制限されないが、少なくとも600℃以下、好ましくは200℃以下まで、好ましくは1℃/分以上100℃/分以下、より好ましくは5℃/分以上50℃/分以下の冷却速度で冷却することができる。室温保磁力と保磁力の温度特性を向上させるため、さらに300~800℃で0.5~50時間の時効熱処理を施すことが好ましい。時効熱処理後は、少なくとも200℃以下、好ましくは100℃以下まで、好ましくは1℃/分以上100℃/分以下、より好ましくは5℃/分以上50℃/分以下の冷却速度で冷却することができる。時効熱処理は複数回行ってもよい。また焼結熱処理と時効熱処理の間に、600~1000℃で0.5~50時間の中間熱処理を施してもよい。
主相粒とR(Fe,Co)粒界相の間に薄い境界相を形成するには、中間熱処理後に1℃/分以上50℃/分以下、好ましくは2℃/分以上30℃/分以下の冷却速度で、少なくとも550℃以下、好ましくは400℃以下まで冷却することが好ましい。
上記の中間熱処理や時効熱処理を、組成や粉末粒径などに合わせて最適な条件で行うことにより、粒界部にRリッチ相とR(Fe,Co)相が形成される。より好ましい場合には、隣接する主相粒間に二粒子間粒界相が形成され、さらにR(Fe,Co)相と主相粒との間に薄い境界相が形成される。これにより、室温保磁力の増大と保磁力の温度特性向上がもたらされる。焼結体を所定の形状に切断・研削し、着磁を施すことで焼結磁石となる。
図1に示すように、二合金法による焼結磁石では、主として合金Aの成分によりNdFe14B型化合物からなる主相が形成され、主として合金Bの成分によりR’リッチ相、R’(Fe,Co)相や主相粒10の外殻部が形成される。そのため、粒界部20に形成されたR’リッチ相やR’(Fe,Co)相のCe/R’原子比は、主相粒内部のCe/R’原子比より高くなる。また粒界部20のCeの一部は主相粒10の表層部でR’原子を置換し、中心部と外殻部でCe濃度が異なるコアシェル構造を形成する。
一方、粒界拡散法では、まず上述と同様に単合金法又は二合金法により焼結体を作製する。このとき焼結体組成のR’はCeを含まない方が好ましい。
次に、得られた焼結体に対してCeの粒界拡散を施す。焼結体を必要に応じて切断、研削した後、その表面上にCeを含む金属、合金、酸化物、フッ化物、酸フッ化物、水素化物、炭化物等のCeを含む化合物から選ばれる拡散材料を、粉末、薄膜、薄帯、箔などの形態で設置する。例えば、上記材料の粉末を水もしくは有機溶媒などと混合してスラリーとし、それを焼結体上にコーティングした後、乾燥させても良いし、蒸着、スパッタ、CVDなどの手段で上記物質を薄膜として焼結体表面に設置しても良い。設置量としては、10~1000μg/mmであることが好ましく、特に20~500μg/mmが好ましい。このような範囲であれば、HcJの増大が十分に得られ、また、CeによるBの低下を低減できる。
この焼結体を、表面にCeを設置した状態で真空中又は不活性ガス雰囲気中で熱処理する。熱処理温度は600℃以上焼結温度以下が好ましく、700℃以上1000℃以下が特に好ましい。熱処理時間は0.5~50時間が好ましく、特に1~20時間が好ましい。熱処理後の冷却速度は特に限定されないが、1~20℃/分、特に2~10℃/分が好ましい。焼結体上に配置されたCeは、この拡散熱処理により粒界部を経由して焼結体内部へと浸透していく。このとき、図2に示すように主相粒10の表層部のR’原子がCeで置換され、主相粒10の中心部と外殻部でCe/R’比が異なるコアシェル構造が形成されるとともに、粒界部20にCeを含むR’リッチ相やR’(Fe,Co)相が形成され、HcJが増大する。
拡散熱処理された焼結体は、室温保磁力と保磁力の温度特性を向上させるため、二合金法の場合と同様に、さらに300~800℃で0.5~50時間の時効熱処理を施すことが好ましい。
主相粒とR(Fe,Co)粒界相の間に薄い境界相を形成するために、拡散処理後の焼結体に対して、二合金法の場合と同様の中間熱処理を行ってもよいが、この場合は拡散熱処理と兼ねることで省略することもできる。焼結体組成や粉末粒径、拡散材料などに合わせて最適な熱処理を施すことで、粒界部にRリッチ相とR(Fe,Co)相が形成され、さらにR(Fe,Co)相と主相粒との間に薄い境界相が形成される。より好ましい場合には、隣接する主相粒間に二粒子間粒界相が形成され、室温保磁力の増大と保磁力の温度特性向上が図られる。
また、さらなる磁気特性向上のため、この焼結体の表面に、別途またはCeと同時に、DyやTbを設置して拡散熱処理を施してもよい。
このようにして作製された本発明の異方性希土類焼結磁石は、室温で少なくとも12kG以上の残留磁束密度Bと、10kOe以上の保磁力HcJを示す。また保磁力の温度係数βは、β≧(0.01×HcJ(室温)-0.720)%/Kなる特性を示す。ここでβ=ΔHcJ/ΔT×100/HcJ(室温)、(ΔHcJ=HcJ(室温)-HcJ(140℃)、ΔT=室温-140(℃))とする。β≧(0.01×HcJ(室温)-0.7)%/Kであればさらに好ましい。本発明の異方性希土類焼結磁石は、Ceを含まないNd-Fe-B焼結磁石に比べて保磁力の温度変化が小さく、高温での使用に適している。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
Ndメタル、Prメタル、電解鉄、Coメタル、フェロボロン、Alメタル、Cuメタルを用いて、組成がNd10.6原子%、Pr2.7原子%、Co1.0原子%、B6.0原子%、Al0.5原子%、Cu0.1原子%、残部Feとなるよう調整し、高周波誘導炉を用いてArガス雰囲気中で溶解後、周速2m/secで回転する水冷Cuロール上でストリップキャストすることにより、厚さ0.2~0.4mm程度の合金薄帯を作製した。この合金の断面を研磨してエッチング処理後、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製、LEXT OLS4000)にて組織観察を行った。観察した箇所は薄帯が冷却ロールに接触した面から約0.15mmの位置とし、20箇所の観察を行った。各画像についてロール接触面に平行な線を等間隔に20本引き、これらの線がエッチングで除去された粒界相部と交わる交点を数えて、平均の粒界相間隔を算出したところ、4.7μmであった。この合金に常温で水素吸蔵処理を行った後、真空中400℃で加熱する脱水素化処理を施して粗粉末とした(これを実1A粉末とする)。次に、Ceメタルと電解鉄を原料とし、高周波誘導炉を用いて組成がCe33原子%、残部Feとなるよう調整した合金インゴットを製造し、870℃で20時間熱処理した後、機械粉砕により粗粉末とした(実1B粉末とする)。実1A粉末と実1B粉末を重量比93:7で混合した後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して、平均粒径3.1μmの微粉末とした。次に、微粉末を不活性ガス雰囲気中で成形装置の金型に充填し、15kOe(=1.19MA/m)の磁界中で配向させながら、磁界に対して垂直方向に0.6Ton/cmの圧力で加圧成形した。得られた圧粉成形体を真空中1040℃で3時間焼結した後、室温まで冷却して一旦取り出し、さらに510℃で2時間の熱処理を施して、実施例1の焼結体サンプルを得た。
得られた焼結体サンプルを、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、SPS3520UV-DD)を使用して高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP‐OES)で分析した結果、組成はNd9.9Pr2.5Ce1.8Febal.Co1.05.6Al0.5Cu0.1であった。サンプルの一部を粉砕した粉末のX線回折測定から、主相の結晶構造はNdFe14B型であることを確認した。EPMA装置(日本電子株式会社製、JXA-8500F)を用いて焼結体の組織観察と各相の組成分析を行ったところ、主相粒の中心部と外殻部で組成が異なるコア/シェル構造が形成されていた。コアに相当する中心部のR’にはCeが含まれておらず、粒外殻部のR’はCeを含んでいた。また、粒界部にはR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が各々1体積%以上存在することを確認した。各相の体積比率は、反射電子像の画像における面積比に等しいものとして算出している。α-Fe相やR’(Fe,Co,M)17相は観察されなかった。なお酸化物などの相も存在するため、相比の合計は100%に満たない。R’(Fe,Co)相の分析値をもとに同じ組成の合金をアーク溶解で作製し800℃10hrの均質化処理後、VSMで磁化-温度測定を行ったところ、キュリー温度Tは66℃であった。
この焼結体サンプルに、エッチングを行って観察した結果から上述のように算出した主相の平均結晶粒径は、4.3μmであった。磁気特性をB-Hトレーサで測定したところ、室温でB14.0kG、HcJ13.6kOeの値を示した。またHcJの温度係数βは-0.575%/Kであった。表1に、焼結体のICP組成分析値、平均結晶粒径、主相の結晶構造を示す。また表2に、焼結熱処理と時効熱処理の条件、B-Hトレーサで測定した磁気特性の結果を、表3にEPMAで測定した各相の組成分析値を示す。
[比較例1]
Ndメタル、Prメタル、Ceメタル、電解鉄、Coメタル、フェロボロン、Alメタル、Cuメタルを用いて組成を調整し、ストリップキャスト合金薄帯を作製した。この合金の断面画像から算出した平均の粒界相間隔は4.4μmであった。この合金に、水素吸蔵処理及び真空中400℃で加熱する脱水素化処理を施して粗粉末とした後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して平均粒径3.1μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体とした後、真空中1040℃で3時間の焼結を行い、室温まで冷却して一旦取り出し、さらに510℃で2時間の熱処理を施して、比較例1の焼結体サンプルを得た。
ICP分析より、比較例1の焼結体組成はNd10.0Pr2.6Ce1.8Febal.Co1.05.6Al0.4Cu0.1であった。主相はNdFe14B型結晶構造であることをX線回折で確認した。EPMA装置で組織観察と各相の組成分析を行ったところ、主相粒内の組成はほぼ均一であり、中心部と外殻部でCe濃度に差はなかった。また、粒界部にR’リッチ相は存在していたが、R’(Fe,Co)相は確認できなかった。主相の平均結晶粒径は、4.0μmであった。B-Hトレーサで測定した磁気特性は、室温でB13.7kG、HcJ9.8kOeであり、HcJの温度係数βは-0.641%/Kであった。結果を表1~3に示す。
[実施例2、比較例2]
実施例2では、実施例1と同様に、組成がNd12.8原子%、Co1.0原子%、B5.9原子%、Al0.2原子%、Zr0.05原子%、残部Feで、厚さ0.2~0.4mm程度、平均の粒界相間隔3.9μmのストリップキャスト合金薄帯を作製し、水素吸蔵処理及び脱水素化処理を施して粗粉末(実2A粉末)とした。一方、組成がCe80原子%、Cu10原子%、残部Feとなるよう調整した合金を、高周波誘導炉を用いて石英管内で溶解し、周速23m/secで回転するCuロール上に噴射して、厚さ100~250μm程度の急冷合金薄帯を作製した。この合金薄帯をボールミル粉砕により粗粉末(実2B粉末)とした。実2A粉末と実2B粉末を重量比96:4で混合した後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して、平均粒径2.8μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体とした後、真空中で1020℃2時間の焼結を行い、室温まで冷却して一旦取り出し、さらに530℃で4時間の熱処理を施して、実施例2の焼結体サンプルを得た。
比較例2では、組成がNd7.8原子%、Ce5.0原子%、Co1.0原子%、B5.9原子%、Al0.2原子%、Zr0.05原子%、残部Feで、厚さ0.2~0.4mm程度、平均の粒界相間隔4.2μmのストリップキャスト合金薄帯を作製し、水素吸蔵処理及び脱水素化処理を施して粗粉末(比2A粉末)とした。一方、組成がNd80原子%、Cu10原子%、残部Feとなるよう調整した合金を、高周波誘導炉を用いて石英管内で溶解し、周速22m/secで回転するCuロール上に噴射して、厚さ100~250μm程度の急冷合金薄帯を作製した。この合金薄帯をボールミル粉砕により粗粉末(比2B粉末)とした。比2A粉末と比2B粉末を重量比96:4で混合した後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して、平均粒径2.8μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体とした後、真空中で1020℃2時間の焼結を行い、室温まで冷却して一旦取り出し、さらに530℃で4時間の熱処理を施して、比較例2の焼結体サンプルを得た。
実施例2及び比較例2の焼結体組成は、ICP分析で各々Nd12.4Ce1.7Febal.Co1.05.7Al0.1Cu0.2Zr0.1及びNd9.2Ce4.9Febal.Co0.95.8Al0.1Cu0.2Zr0.1であった。組織観察したところ、実施例2は、中心部にCeを含まず、粒外殻部にCeを含有する主相粒が多く存在しており、また粒界部にはR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が各々1体積%以上存在していた。R’(Fe,Co)相の分析値をもとにアーク溶解で作製した同組成の合金のTは74℃であった。一方、比較例2は主相粒の中心部、外殻部ともにCeを含んでおり、Ce/R’比は粒中心部の方が粒外殻部より高かった。また、粒界部にはR’(Fe,Co)相とR’Cu相が形成されており、R’リッチ相は確認できなかった。主相の平均結晶粒径は、実施例2が3.8μm、比較例2が3.6μmであった。結果を表1~3に示す。実施例2は室温磁気特性、HcJの温度特性ともに比較例2より良好であった。
[実施例3~5]
実施例3は、組成がNd13.0原子%、B6.1原子%、残部Feとなるよう調整したストリップキャスト合金と、組成がCe70原子%、La5原子%、Ni6原子%、残部Alとなるよう調整しアーク溶解した合金を作製し、実施例1と同様に粗粉末として重量比94:6で混合した。ジェットミル粉砕、磁界中加圧成形で作製した圧粉成形体を、1010℃の真空中で3時間焼結した。その後、480℃で1時間の時効熱処理を行って焼結体サンプルとした。
実施例4は、組成がNd12.8原子%、B6.0原子%、Al0.5原子%、Cr0.2原子%、Ti0.3原子%、残部Feとなるよう調整したストリップキャスト合金と、組成がCe28原子%、Gd7原子%、Co30原子%、残部Feとなるよう調整した鋳造合金を作製し、実施例1と同様に粗粉末として重量比90:10で混合した。ジェットミル粉砕、磁界中加圧成形で作製した圧粉成形体を、1030℃の真空中で1.5時間焼結した。得られた焼結体を900℃で1時間熱処理し、冷却速度3.8℃/分で500℃以下まで冷却した後、600℃で3時間の時効熱処理を行って焼結体サンプルとした。
実施例5は、組成がNd13.0原子%、B6.0原子%、残部Feとなるよう調整したストリップキャスト合金と、組成がCe56原子%、Y9原子%、Si10原子%、Ga8原子%、残部Coとなるよう調整しアーク溶解した合金を作製し、実施例1と同様に粗粉末として重量比95:5で混合した。ジェットミル粉砕、磁界中加圧成形で作製した圧粉成形体を、1060℃の真空中で2時間焼結した。得られた焼結体を960℃で2時間熱処理し、冷却速度4.5℃/分で500℃以下まで冷却した後、680℃で3時間の時効熱処理を行って焼結体サンプルとした。
実施例3~5の結果を表1~3に示す。いずれの焼結体組織も、粒中心部にCeを含まず、粒外殻部にCeを含有する主相粒が多く存在しており、粒界部にはR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が合計で1体積%以上存在していた。また、磁気特性はいずれも室温のHcJが10kOe以上、HcJの温度係数βが(0.01×HcJ(室温)-0.720)%/K 以上であり、良好な磁気特性を示した。
[実施例6、比較例3]
Ndメタル、電解鉄、Coメタル、フェロボロン、Alメタルを用いて組成を調整し、ストリップキャスト合金薄帯を作製した。この合金の断面画像から算出した平均の粒界相間隔は4.8μmであった。この合金に、水素吸蔵処理及び真空中400℃で加熱する脱水素化処理を施して粗粉末とし、窒素気流中のジェットミルで粉砕して平均粒径3.5μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体として、真空中1040℃で3時間の焼結を行った。さらに、得られた焼結体を切削加工して10×10×3mmのサイズとした。
次に、Ceメタル、Dyメタル、電解鉄、Coメタル、Cuメタルを原料とし、高周波誘導炉を用いて組成がCe25原子%、Dy8原子%、Co30原子%、Cu10原子%、残部Feとなるよう調整した合金インゴットを製造し、420℃で20時間熱処理した後、ボールミルで粉砕して平均粒径14.6μmの粉末とした。この粉末とエタノールを重量比で1:1の割合で混合・攪拌した液中に、上記の焼結体を浸して引き上げ、送風で乾燥して、焼結体表面への粉末塗布を行った。この試料に真空中で870℃、10時間の拡散熱処理を施してから冷却速度5℃/分で500℃以下まで冷却し、さらにArガス雰囲気中560℃で2時間の時効熱処理を施して、実施例6の焼結体サンプルとした。一方、上記の粉末塗布と拡散熱処理を行わず、Arガス雰囲気中560℃で2時間の時効熱処理のみ施したものを、比較例3の焼結体サンプルとした。
ICP分析より、実施例6、比較例3の焼結体組成は、各々Nd13.6Dy0.1Ce0.6Febal.Co1.25.8Al0.2Cu0.1,Nd14.0Febal.Co0.46.0Al0.1であった。焼結体表面から500μm深さ位置でのEPMA組織観察より、実施例6では、中心部にCeを含まず、粒外殻部にCeを含有する主相粒が多く存在しており、また粒界部にはR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が各々1体積%以上存在していた。R’(Fe,Co)相の分析値をもとにアーク溶解で作製した同組成の合金のTは131℃であった。一方、比較例3はCeを含まず、粒界部にはR’リッチ相が存在していたが、R’(Fe,Co)相は確認できなかった。主相の平均結晶粒径は、実施例6、比較例3いずれも4.6μmであった。結果を表1、2及び4に示す。実施例6は、比較例3よりも良好なHcJの温度特性を示した。
[実施例7~9]
実施例7では、Ndメタル、Prメタル、電解鉄、Coメタル、フェロボロン、Alメタル、純シリコン、Nbメタルを用いて、組成がNd11.6原子%、Pr2.9原子%、B5.7原子%、Co1.0原子%、Al0.3原子%、Si0.3原子%、Nb0.5原子%、残部Feとなるよう調整し、ストリップキャスト合金薄帯を作製した。この合金の断面画像から算出した平均の粒界相間隔は4.4μmであった。この合金に、水素吸蔵処理及び真空中400℃で加熱する脱水素化処理を施して粗粉末とし、窒素気流中のジェットミルで粉砕して平均粒径3.1μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体として、真空中1040℃で3時間の焼結を行った。得られた焼結体を切削加工により10×10×3mmのサイズとした。
次に、スパッタリング装置(キャノンアネルバ株式会社製、EB1000)に、直径2インチ、厚み3mmの金属Ceターゲットを設置し、投入電力300W、Ar圧0.5Paでスパッタリングを40分間行って、上記焼結体の10×10mm面の1面にCe膜を成膜した。この試料に真空中800℃、15時間の拡散熱処理を施してから冷却速度5.3℃/分で500℃以下まで冷却し、さらにArガス雰囲気中550℃で1時間の時効熱処理を施して、実施例7の焼結体サンプルとした。
実施例8では、組成がNd14.1原子%、B6.0原子%、Al0.5原子%、Cu0.1原子%、残部Feとなるよう調整したストリップキャスト合金を作製し、ストリップキャスト合金薄帯を作製した。この合金の断面画像から算出した平均の粒界相間隔は4.8μm であった。この合金に、水素吸蔵処理及び真空中400℃で加熱する脱水素化処理を施して粗粉末とし、窒素気流中のジェットミルで粉砕して平均粒径3.3μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体として、真空中1030℃で2時間の焼結を行った。得られた焼結体を切削加工により10×10×3mmのサイズとした。
次に、Ce酸化物粉、純水を重量比で3:2の割合で混合・攪拌した液中に、上記の焼結体を浸して引き上げ、送風で乾燥して、焼結体表面への粉末塗布を行った。この試料に真空中880℃、20時間の拡散熱処理を施してから冷却速度4.2℃/分で450℃以下まで冷却し、さらにArガス雰囲気中510℃で2時間の時効熱処理を施して、実施例8の焼結体サンプルとした。
実施例9では、組成がNd14.5原子%、Co1.0原子%、B6.2原子%、Al0.2原子%、Cu0.1原子%、Zr0.05原子%、残部Feとなるよう調整したストリップキャスト合金と、組成がCe30原子%、Co35原子%、残部Feとなるよう調整しアーク溶解した合金を作製し、実施例1と同様に粗粉末として重量比95:5で混合し、窒素気流中のジェットミルで粉砕して平均粒径3.7μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体として、真空中1020℃で3時間の焼結を行った。得られた焼結体を切削加工により10×10×3mmのサイズとした。
次に、Tb酸化物粉、純水を重量比で1:1の割合で混合・攪拌した液中に、上記の焼結体を浸して引き上げ、送風で乾燥して、焼結体表面への粉末塗布を行った。この試料に真空中830℃、20時間の拡散熱処理を施してから冷却速度5℃/分で500℃以下まで冷却し、さらにArガス雰囲気中530℃で1.5時間の時効熱処理を施して、実施例9の焼結体サンプルとした。
実施例7~9の結果を表1、2及び4に示す。いずれの焼結体組織も、中心部にCeを含まず、粒外殻部にCeを含有する主相粒が多く存在しており、粒界部にはR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が各々1体積%以上存在していた。また、磁気特性はいずれも室温のHcJが10kOe以上、HcJの温度係数βが(0.01×HcJ(室温)-0.720)%/K 以上であり、良好な磁気特性を示した。
[実施例10、比較例4]
組成がNd13.5原子%、B6.0原子%、Al0.5原子%、Cu0.2原子%、残部Feで、厚さ0.2~0.4mm程度、平均の粒界相間隔4.1μmのストリップキャスト合金薄帯を作製し、水素吸蔵処理及び脱水素化処理を施して粗粉末(実10A粉末)とした。次に、アーク溶解炉を用いて組成がCe35原子%、Co10原子%、残部Feとなるよう調整した合金を作製し、850℃で15時間熱処理した後、機械粉砕により粗粉末(実10B粉末)とした。実10A粉末と実10B粉末を重量比92:8で混合した後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して、平均粒径3.6μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体とした後、真空中で1000℃2時間の焼結を行い、室温まで冷却して一旦取り出し、さらに500℃で3時間の熱処理を施して、実施例10の焼結体サンプルを得た。
一方、焼結までの工程を実施例10と同様に作製したサンプルに、980℃で1時間の熱処理を施し、その後Ar雰囲気中で冷却したものを、比較例4とした。
ICP分析より、実施例10及び比較例4の焼結体組成はNd12.5Ce2.1Febal.Co0.75.8Al0.4Cu0.1であった。EPMA組織観察では、どちらも中心部にCeを含まず、粒外殻部にCeを含有する主相粒が多く存在していた。実施例10では、粒界部にR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が各々1体積%以上存在していた。R’(Fe,Co)相の分析値をもとにアーク溶解で作製した同組成の合金のTは70℃であった。一方、比較例4は、粒界部にR’リッチ相が存在していたが、R’(Fe,Co)相は確認できなかった。主相の平均結晶粒径は、実施例10、比較例4いずれも4.9μmであった。結果を表1、2及び4に示す。実施例10は、比較例4よりも室温HcJが高く、HcJの温度特性も良好であった。
[実施例11]
組成がNd13.5原子%、B5.9原子%、Co1.0原子%、Al0.5原子%、Cu0.2原子%、Zr0.1原子%、残部Feで、厚さ0.2~0.4mm程度、平均の粒界相間隔4.2μmのストリップキャスト合金薄帯を作製し、水素吸蔵処理及び脱水素化処理を施して粗粉末(実11A粉末)とした。次に、アーク溶解炉を用いて組成がCe33.3原子%、Co1.0原子%、残部Feとなるよう調整した合金インゴットを作製し、860℃で18時間熱処理した後、機械粉砕により粗粉末(実11B粉末)とした。実11A粉末と実11B粉末を重量比93:7で混合した後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して、平均粒径2.9μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体とした後、真空中で1020℃3時間の焼結を行い、室温まで冷却して一旦取り出した。次に、Ar雰囲気中で900℃1時間の中間熱処理を行い、その後5℃/分の冷却速度で450℃以下まで冷却してから、引き続き510℃で3時間の低温熱処理を行い、実施例11の焼結体サンプルを得た。
この焼結体の組成は、ICP分析よりNd12.7Ce1.8Febal.Co1.15.6Al0.5Cu0.1Zr0.1であった。EPMA組織観察では、中心部にCeを含まず、粒外殻部にCeを含有する主相粒が多く存在していた。また、粒界部にR’リッチ相とR’(Fe,Co)相が各々1体積%以上存在していた。R’(Fe,Co)相の分析値をもとにアーク溶解で作製した同組成の合金のTは68℃ であった。主相の平均結晶粒径は、3.9μmであった。結果を表1、2及び5に示す。
FIB-SEM装置(FEI社製Scios)を用いて、実施例11のサンプルから観察用試料を切り出し、STEM装置(日本電子株式会社製JEM-ARM200F)で観察したところ、図5のHAADF像で示すように、粒界部のR’(Fe,Co)相と主相の間に境界相が形成されていることを確認した。この境界相の厚みは平均で1.4nmであり、EDS分析で測定した境界相の組成はNd22.5Ce13.5Febal.Co3.0Cu1.7であった。一方、隣接するR’(Fe,Co)相のEDS分析組成はNd14.7Ce19.5Febal.Co2.3Cu0.1であった。これより、この境界相がR’(Fe,Co)相とは異なる組成を有する相であることがわかる。
同じ試料の別の箇所では、隣接する主相粒の間に平均厚み約2.4nmの二粒子間粒界相が存在しており、その平均組成は、EDS分析値でNd26.8Ce6.9Febal.Co7.4Cu12.5Zr0.5であった。これより、主相とR’(Fe,Co)相の間に形成された境界相、及び主相粒間の二粒子間粒界相についてCe/R’を算出すると、各々0.37,0.20となり、前者の方が高いCe/R’を示すことがわかる。
[実施例12]
組成がNd10.6原子%、Pr2.5原子%、B5.9原子%、残部Feで、厚さ0.2~0.4mm程度、平均の粒界相間隔4.0μmのストリップキャスト合金薄帯を作製し、水素吸蔵処理及び脱水素化処理を施した後、窒素気流中のジェットミルで粉砕して、平均粒径3.0μmの微粉末とした。磁界中加圧成形により圧粉成形体とし、真空中で1040℃2時間の焼結を行って得られた焼結体を切削加工により10×10×3mmのサイズとした。
次に、組成がCe30Febal.Co20Al20Cuで直径2インチ、厚み3mmのターゲットを用い、投入電力250W、Ar圧0.4Paでスパッタリングを90分間行って、上記焼結体の10×10mm面の1面にCe膜を成膜した。この試料に真空中840℃、25時間の拡散熱処理を施した後、4.5℃/分の冷却速度で500℃以下まで冷却してから、さらにArガス雰囲気中540℃で3時間の時効熱処理を施して、実施例12の焼結体サンプルとした。
実施例12の焼結体組成は、ICP分析よりNd10.2Pr2.4Ce1.0Febal.Co0.65.6Al0.2Cu0.10.1であった。EPMA組織観察では、中心部にCeを含まず、粒外殻部にCeを含有する主相粒が多く存在していた。また粒界部には、R’リッチ相とR’(Fe,Co)相が各々1体積%以上存在していた。R’(Fe,Co)相の分析値をもとにアーク溶解で作製した同組成の合金のTは78℃であった。結果を表1、2及び5に示す。
実施例12の組織についてSTEM観察を行い、R’(Fe,Co)相と主相の間に平均厚み1.6nmで、組成がNd20.1Pr2.6Ce13.7Febal.Co2.5Cu1.9の境界相が形成されていることを確認した。これより境界相のCe/R’は0.38と計算される。一方、同じ試料の別箇所では、隣接する主相粒の間に、平均の厚みが約1.8nmの二粒子間粒界相が存在しており、その平均組成はNd17.7Pr6.2Ce6.9Febal.Co7.3Cu8.90.4であった。(Ce/R’=0.22)これより主相とR’(Fe,Co)相の間に形成された境界相のCe/R’は、二粒子間粒界相のCe/R’より高いことがわかる。
Figure 2023070057000002
Figure 2023070057000003
Figure 2023070057000004
Figure 2023070057000005
Figure 2023070057000006
11 主相(Ce/R’が高い領域)
12 主相(Ce/R’が低い領域)
21 R’リッチ相
22 R’(Fe,Co)
31 隣接する主相粒の間に形成された二粒子間粒界相
32 R’(Fe,Co)相と主相の間に形成された境界相

Claims (18)

  1. 組成が式R(Fe1-aCo100-x-y-z(Rは希土類元素から選ばれ、かつNd及びCeを必須とする2種以上の元素、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、Biからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、x、y、z、aは各々、12≦x≦17原子%、3.5≦y≦6.0原子%、0≦z≦3原子%、0≦a≦0.1)で表される異方性希土類焼結磁石であって、主相がNdFe14B型結晶の化合物からなり、粒の中心部におけるCe/R’比(R’は希土類元素から選ばれ、かつNdを必須とする1種以上の元素)が粒の外殻部におけるCe/R’比より低い主相粒が存在するとともに、粒界部にCeを含むR’リッチ相及びCeを含むR’(Fe,Co)相が存在することを特徴とする異方性希土類焼結磁石。
  2. 前記主相と前記R’(Fe,Co)相の間に、20原子%以上のRを含み、かつ厚さが20nm以下の境界相が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の異方性希土類焼結磁石。
  3. 前記主相粒において、中心部のR’にCeが含まれない主相粒が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  4. 前記主相粒において、中心部のR’がNd、またはNd及びPrからなる主相粒が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  5. 前記R’(Fe,Co)相が、室温以上でフェロ磁性又はフェリ磁性を示す相であることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  6. 前記R’(Fe,Co)相におけるCe/R’比が主相粒外殻部のCe/R’比より高いことを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  7. 前記R’リッチ相におけるCe/R’比が主相粒外殻部のCe/R’比より高いことを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  8. 前記R’リッチ相及びR’(Fe,Co)相を、合計で1体積%以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  9. 前記焼結体の組成におけるCe/R’比が0.01以上0.3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  10. 前記焼結磁石に含まれるBリッチ相が5体積%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  11. 隣接する主相粒の間に二粒子間粒界相が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  12. 前記主相と前記R’(Fe,Co)相の間に形成された前記の境界相におけるCe/R’が、前記の隣接する主相粒の間に形成された二粒子間粒界相におけるCe/R’よりも高いことを特徴とする請求項11に記載の異方性希土類焼結磁石。
  13. 室温の保磁力HcJ(room)が10kOe以上であり、保磁力の温度係数βの値が、β≧(0.01×HcJ(室温)-0.720)%/Kで示されることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石。
  14. NdFe14B型結晶の化合物相を含む合金と、それよりR’組成比及びCe/R’比が高い合金を粉砕、混合し、磁場印加中で圧粉成形して成形体とした後、800℃以上1200℃以下の温度で焼結することを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
  15. NdFe14B型結晶の化合物相を含む合金を粉砕し、磁場印加中で圧粉成形して成形体とした後、800℃以上1200℃以下の温度で焼結し、その焼結体にCeを含む材料を接触させて、600℃以上焼結温度以下の温度で熱処理を施すことによりCeを焼結体内部に拡散させることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
  16. 焼結体に接触させるCeを含む材料が、Ce金属、Ce含有合金、Ceを含む化合物から選ばれる1種以上であり、またその形態が、粉末、薄膜、薄帯、箔、及び気体から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項15に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
  17. 焼結体に300~800℃の温度で熱処理を施すことを特徴とする請求項14に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
  18. 焼結体に600~1000℃の温度で熱処理を施した後、少なくとも550℃以下まで1℃/分以上50℃/分以下の冷却速度で冷却し、さらに300~800℃の温度で熱処理を施すことを特徴とする請求項14に記載の異方性希土類焼結磁石の製造方法。
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