JP2023067516A - 被膜の製造方法 - Google Patents

被膜の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023067516A
JP2023067516A JP2021178842A JP2021178842A JP2023067516A JP 2023067516 A JP2023067516 A JP 2023067516A JP 2021178842 A JP2021178842 A JP 2021178842A JP 2021178842 A JP2021178842 A JP 2021178842A JP 2023067516 A JP2023067516 A JP 2023067516A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
composition
mass
component
less
skin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021178842A
Other languages
English (en)
Inventor
昭泳 朴
Soyoung Park
宗紀 坂田
Munenori Sakata
友美 萩尾
Tomomi Hagio
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2021178842A priority Critical patent/JP2023067516A/ja
Publication of JP2023067516A publication Critical patent/JP2023067516A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】静電スプレーにより皮膚上に形成された被膜が長時間経過後も損傷を生じず、更に仕上がり感も良好な被膜の製造方法を提供すること。【解決手段】A)成分(a)及び成分(b)を含有する組成物Xを静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する工程と、(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、(b)被膜形成能を有するポリマーB)成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有する、組成物X以外の組成物Yを皮膚に適用する工程とを、この順で又は逆の順で有する、皮膚上への被膜の製造方法。(c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー1質量%以上20質量%以下、(d)水酸基を2個有するポリオール【選択図】なし

Description

本発明は、皮膚上への被膜の製造方法に関する。
静電スプレーによって皮膚上に被膜を形成する方法が報告されている。例えば、特許文献1には、皮膚に組成物を静電スプレーすることを含む皮膚を処理する方法が記載されている。この方法で用いられる組成物は、液体絶縁性物質と、導電性物質と、粒子状粉末物質と、増粘剤とを含んでいる。この組成物としては、典型的には顔料を含む化粧品やスキンケア組成物が用いられている。具体的には、組成物として化粧用ファンデーションが用いられている。すなわち、特許文献1に記載の発明は、美容の目的で化粧用ファンデーションを静電スプレーして、皮膚を化粧することを主として想定している。また特許文献2には、化粧品の静電スプレー装置に使用するための使い捨てカートリッジが記載されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法に従い静電スプレーを行い皮膚に被膜を形成した場合、皮膚と静電スプレーによって形成された被膜との密着性が十分でなく、摩擦等の外力に起因して被膜が損傷したり剥離したりすることがあることが判明した。そこで、本出願人は、静電スプレーによる被膜形成の前又は後に、水、ポリオール又は20℃で液体の油を含有する液剤を塗布すれば、静電スプレーによって得られた被膜の密着性が向上することを見出し、特許出願した(特許文献3)。更に、形成された被膜が長時間経過後も損傷を生じなくするため、皮膚に静電スプレーによる被膜形成の前又は後に、少量の接着性ポリマーと、グリセリンなどのポリオール又は液状油とを含有する組成物を皮膚に適用する方法を特許出願した(特許文献4)。
特開2006-104211号公報 特表2003-507165号公報 特開2017-78062号公報 特開2020-26398公報
しかしながら、特許文献4記載の方法によって得られる皮膚上の被膜は長時間経過後も損傷が生じないもののその効果は未だ十分とは言えず、また得られる皮膚上の被膜の仕上がり感が十分でないため、例えば、良好にメイクアップするにはファンデーションを塗布する方法を工夫する必要があった。
従って、本発明の課題は、静電スプレーによって皮膚上に形成された被膜が長時間経過後も損傷を生じず、更に仕上がり感も良好な被膜の製造方法を提供することにある。
そこで本発明者は、静電スプレーによる皮膚上への被膜の形成の前又は後に塗布する組成物の組成について更に検討したところ、静電スプレーに用いる組成物とは相違する、ガラス転移点が特定の範囲にある水不溶性ポリマーと水酸基を2個有するポリオールとを一定の比率で含有する組成物を用いれば、長時間経過後もはがれや破れが生じ難い被膜が形成できるだけでなく、なめらかでつやのある仕上がり感が得られ、その仕上がり感も長時間持続することから、その後は例えばファンデーションの塗布だけで良好にメイクアップできることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[3]を提供するものである。
[1]A)成分(a)及び成分(b)を含有する組成物Xを静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する工程と、
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
(b)被膜形成能を有するポリマー
B)成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有する、組成物X以外の組成物Yを皮膚に適用する工程とを、この順で又は逆の順で有する、皮膚上への被膜の製造方法。
(c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
(d)水酸基を2個有するポリオール
[2]静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する前又はその後に、皮膚に適用して皮膚上に被膜を製造するために用いる組成物Yであって、成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有する組成物Y。
(c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
(d)水酸基を2個有するポリオール
[3]組成物Xと組成物Yとを含有する皮膚上に被膜を製造するためのキットであって、
組成物Xは、成分(a)及び成分(b)を含有し、静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成するための組成物であり、
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
(b)被膜形成能を有するポリマー
組成物Yは、成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有し、組成物Xを静電スプレーすることによる被膜の形成の前又はその後に皮膚に適用するための組成物である、キット。
(c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
(d)水酸基を2個有するポリオール
本発明方法により皮膚上に形成された被膜が、長時間経過後も密着性が向上し、はがれや破れが生じ難い被膜が形成できるだけでなく、なめらかさ、つやなどの仕上がり感が長時間持続し、例えば、ファンデーションを塗布した場合でも化粧の持続性に優れる。
図1は、本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を示す概略図である。 図2は、静電スプレー装置を用いて静電スプレー法を行う様子を示す模式図である。
本発明においては、A)組成物Xを静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する工程(工程A)と、B)組成物Yを皮膚に適用する工程(工程B)とを含む。
工程Aにおける被膜の形成方法として、本発明では静電スプレー法を採用している。静電スプレー法は、組成物に正又は負の高電圧を印加して該組成物を帯電させ、帯電した該組成物を対象物に向けて噴霧する方法である。噴霧された組成物はクーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間に広がり、その過程で、又は対象物に付着した後に、揮発性物質である溶媒が乾燥することで、対象物の表面に被膜を形成する。
形成される被膜は、多孔性被膜であるのが好ましく、繊維の堆積物からなる多孔性被膜であるのがより好ましい。ここで、繊維の堆積物からなる被膜とは、成分(a)による繊維の堆積物からなる被膜を意味し、繊維以外の部分、例えば繊維周囲に液状物が存在するものであってもよい。また、このような多孔性被膜を形成する観点から、静電スプレーは、エレクトロスピニングであることが好ましい。
なお、静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する工程としては、(1)直接皮膚に静電スプレーして、被膜を形成する工程(以下、直接法ともいう。);及び(2)使用者又は使用補助者が、組成物を皮膚以外の対象物に静電スプレーして繊維からなるシートを作製し、そのシートを皮膚に塗布する工程(以下、間接法ともいう)が挙げられる。この場合の静電スプレー装置はハンディな手で把持できる静電スプレー装置であり、静電紡糸スプレー装置ともいう。
また、皮膚以外の対象物としては、金属基材、樹脂基材、発泡剤基材、ゴム状基材、布基材、不織布基材、木材基材などが挙げられ、中でも発泡剤基材が好ましく、具体的には化粧用パフなどが挙げられる。
本発明において用いられる前記の組成物X(以下、この組成物Xのことを「噴霧用組成物」ともいう。)は、静電スプレー法が行われる環境下において液体のものである。この組成物Xは、以下の成分(a)及び成分(b)を含んでいる。
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質。
(b)被膜形成能を有するポリマー。
なお、「噴霧用組成物」とは、吐出時に霧のような微細であるが、電気クーロン反発により引き延ばされるため、「静電吐出用組成物」ともいうことができる。
以下、各成分について説明する。
成分(a)の揮発性物質は、液体の状態において揮発性を有する物質である。噴霧用組成物において成分(a)は、電界内に置かれた該噴霧用組成物を十分に帯電させた後、ノズル先端から皮膚に向かって吐出され、成分(a)が蒸発していくと、噴霧用組成物の電荷密度が過剰となり、クーロン反発によって更に微細化しながら成分(a)が更に蒸発していき、最終的に乾いた被膜を皮膚上に形成させる目的で配合される。この目的のために、揮発性物質はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい。
成分(a)の揮発性物質のうち、アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはC1~C6アルコールが、一価の環式脂肪族アルコールとしてはC4~C6環式アルコールが、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n-プロパノール、n-ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
成分(a)の揮発性物質のうち、ケトンとしてはジC1-C4アルキルケトン例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのケトンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
成分(a)の揮発性物質は、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上を含むものであり、より好ましくはエタノール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上を含むものであり、そして更に好ましくは少なくともエタノールを含む揮発性物質である。成分(a)はアルコール、ケトンから選ばれる1種又は2種以上に加えて水を含むものであっても良い。
噴霧用組成物における成分(a)の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが一層好ましい。また97質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることが更に好ましく、92質量%以下であることが一層好ましい。噴霧用組成物における成分(a)の含有量は、30質量%以上97質量%以下であることが好ましく、55質量%以上94質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以上92質量%以下であることが一層好ましい。
この割合で噴霧用組成物中に成分(a)を含有することで、静電スプレー法を行うときに噴霧用組成物を十分に揮発させることができる。
また、エタノールは成分(a)の揮発性物質の全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが一層好ましい。また100質量%以下であることが好ましい。エタノールは成分(a)の揮発性物質の全量に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、65質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが一層好ましい。
更に、水は、繊維形成性と導電性の観点から、(a)の揮発性物質の全量に対して50質量%未満であることが好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが一層好ましく、5質量%以下であることがより一層好ましく、0.01質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることが更に好ましい。
成分(b)である被膜形成能を有するポリマーは、一般に、成分(a)の揮発性物質に溶解又は分散することが可能な物質である。ここで、溶解するとは20℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態であることを言う。
被膜形成能を有するポリマーとしては、成分(a)の揮発性物質の性質に応じて適切なものが用いられる。具体的には、被膜形成能を有するポリマーは水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとに大別される。本明細書において「水溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1gを秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が水に溶解する性質を有するものをいう。一方、本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が溶解しない性質を有するものをいう。
水溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ-γ-グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子などが挙げられる。これらの水溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性ポリマーのうち、被膜の製造が容易である観点から、プルラン、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。水溶性ポリマーとしてポリエチレンオキサイドを用いる場合、その数平均分子量は、5万以上300万以下であることが好ましく、10万以上250万以下であることが一層好ましい。
一方、水不溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、例えば被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水不溶性ポリマーのうち、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート及びツエインから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましく、ポリビニルブチラール樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上を用いることがより好ましい。
噴霧用組成物における成分(b)の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることが更に好ましく、6質量%以上であることが一層好ましい。また50質量%以下であることが好ましく、43質量%以下であることが更に好ましく、36質量%以下であることが一層好ましい。噴霧用組成物における成分(b)の含有量は、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、4質量%以上43質量%以下であることが更に好ましく、6質量%以上36質量%以下であることが一層好ましい。この割合で噴霧用組成物中に成分(b)を配合することで、繊維の堆積物からなり、素肌の表面をマスキングし、時間を経過しても、よれにくく、化粧持続性に優れる被膜を首尾よく形成することができる。
噴霧用組成物中の成分(a)と成分(b)の含有量の比率((a)/(b))は、静電スプレー法を行うときに成分(a)を十分に揮発させることができる観点から、0.5以上40以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、2以上25以下が更に好ましい。
また、噴霧用組成物中のエタノールと成分(b)の含有量の比率((a)/(b))は、静電スプレー法を行うときに成分(a)を十分に揮発させることができる観点から、0.5以上40以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、2以上25以下が更に好ましい。
更に、噴霧用組成物中にポリオールを含有させることができる。ポリオールとしては、20℃で液体のポリオールが好ましい。
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量1000以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。これらのうち、良好に繊維が形成され、被膜形成対象物の表面上に繊維の堆積物からなる被膜を効率よく形成する観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、分子量1000以下のポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが好ましく、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンがより好ましく、少なくとも、分子量1000以下のポリエチレングリコールを含むことが更に好ましい。
20℃で液体のポリオールの含有量は、噴霧用組成物中に0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。好ましくは0.2質量%以上9質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上8質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以上6質量%以下である。
更に、20℃で液体の油成分を含有することができる。20℃で液体の油成分であれば、特に制限されないが、20℃で液体のエステル油、20℃で液体の高級アルコール、20℃で液体の炭化水素油、20℃で液体のシリコーン油等が挙げられる。
このうち、良好に繊維が形成され、被膜形成対象物の表面上に繊維の堆積物からなる被膜を効率よく形成する観点から、20℃で液体のエステル油、20℃で液体の炭化水素油、20℃で液体の高級アルコール、20℃で液体のシリコーン油が好ましく、少なくとも20℃で液体のエステル油を含むものがより好ましい。
前記液体のエステル油としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステルが挙げられる。具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、オクタン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。
これらの中では、良好に繊維が形成され、被膜形成対象物の表面上に繊維の堆積物からなる被膜を効率よく形成する観点から、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールから選ばれる1種又は2種以上含むものが好ましい。
また、前記液体のエステル油としては、上記エステル油を含む植物油、動物油を用いることが可能であり、例えばオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などが挙げられる。
前記液体の高級アルコールとしては、炭素数12~20の液状の高級アルコールが挙げられ、分岐脂肪酸を構成要素とする高級アルコールが好ましく、具体的にはイソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。
前記液体の炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n-オクタン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、ポリブテン、ポリイソブテン等が挙げられ、使用感の観点から流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、n-オクタン、n-ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
前記液体のシリコーン油としては、シリコーン油、変性シリコーン油を含有することができる。揮発性シリコーン油と不揮発性シリコーン油が挙げられ、揮発性シリコーン油を含有することが好ましい。ここでいう揮発性シリコーン油において、揮発性とは、35~87℃の引火点を有するものである。
揮発性シリコーン油としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等の直鎖状ジメチルポリシロキサン;メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等の分岐状シロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシロキサンなどが挙げられる。
20℃で液体の油成分の含有量は、噴霧用組成物中に0.1質量%以上25質量%以下が好ましい。好ましくは0.2質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上18質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以上16質量%以下である。
噴霧用組成物中には、上述した成分(a)及び成分(b)のみが含まれていてもよく、あるいは成分(a)及び成分(b)に加えて他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、前記成分以外に、固形の油成分、界面活性剤、着色顔料、体質顔料、染料、UV吸収剤、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン等を含んでいてもよい。
なお、これらの各剤は、各剤としての用途に限られず、目的に応じて他の用途として使用することができる。噴霧用組成物中に他の成分が含まれる場合、当該他の成分の含有割合は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
本発明方法においては、後述する工程Bの前又は後に、前記直接法又は間接法により、噴霧用組成物を静電スプレーすることにより皮膚表面上に被膜を形成する。
静電スプレー法を行う場合、噴霧用組成物として、その粘度が、25℃において、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上、更に好ましくは50mPa・s以上であるものを用いる。また粘度が、25℃において、好ましくは5000mPa・s以下、より好ましくは2000mPa・s以下、更に好ましくは1500mPa・s以下であるものを用いる。噴霧用組成物の粘度は、25℃において、好ましくは1mPa・s以上5000mPa・s以下であり、より好ましくは10mPa・s以上2000mPa・s以下であり、更に好ましくは50mPa・s以上1500mPa・s以下である。この範囲の粘度を有する噴霧用組成物を用いることで、静電スプレー法によって被膜、特に繊維の堆積物からなる多孔性被膜を首尾よく形成することができる。多孔性被膜の形成は、皮膚の蒸れ防止等を向上させる観点、被膜の皮膚への密着性を向上させる観点、皮膚から被膜を剥がす際に、容易、かつ綺麗に剥がすことができる等の観点から有利なものである。噴霧用組成物の粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定される。E型粘度計としては例えば、例えば東京計器株式会社製のE型粘度計を用いることができる。その場合のローターとしては、ローターNo.43を用いることができる。
噴霧用組成物は、前記直接法又は間接法による静電スプレー法によって、ヒトの皮膚表面上に被膜を形成するために用いられる。以下においては、前記直接法を採用した場合について、好ましい実施態様を説明する。
静電スプレー法は、静電スプレー工程において、静電スプレー装置を用いて、皮膚に噴霧用組成物を静電スプレーして、被膜を形成する工程を含む。該静電スプレー装置は、噴霧用組成物を収容する容器と、噴霧用組成物を吐出するノズルと、容器中に収容されている噴霧用組成物をノズルに供給する供給装置と、ノズルに電圧を印加する電源とを備える。図1には、本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を表す概略図が示されている。図1に示す静電スプレー装置10は、低電圧電源11を備えている。低電圧電源11は、数Vから十数Vの電圧を発生させ得るものである。静電スプレー装置10の可搬性を高める目的で、低電圧電源11は1個又は2個以上の電池からなることが好ましい。また、低電圧電源11として電池を用いることで、必要に応じ取り替えを容易に行えるという利点もある。電池に代えて、ACアダプタ等を低電圧電源11として用いることもできる。
静電スプレー装置10は、高電圧電源12も備えている。高電圧電源12は、低電圧電源11と接続されており、低電圧電源11で発生した電圧を高電圧に昇圧する電子回路(図示せず)を備えている。昇圧電子回路は一般にトランス、キャパシタ及び半導体素子等から構成されている。
静電スプレー装置10は、補助的電気回路13を更に備えている。補助的電気回路13は、上述した低電圧電源11と高電圧電源12との間に介在し、低電圧電源11の電圧を調整して高電圧電源12を安定的に動作させる機能を有する。更に補助的電気回路13は、後述するポンプ機構14に備えられているモータの回転数を制御する機能を有する。モータの回転数を制御することで、後述する噴霧用組成物の容器15からポンプ機構14への噴霧用組成物の供給量が制御される。補助的電気回路13と低電圧電源11との間にはスイッチSWが取り付けられており、スイッチSWの入り切りによって、静電スプレー装置10を運転/停止できるようになっている。
静電スプレー装置10は、ノズル16を更に備えている。ノズル16は、金属を初めとする各種の導電体や、プラスチック、ゴム、セラミックなどの非導電体からなり、その先端から噴霧用組成物の吐出が可能な形状をしている。ノズル16内には噴霧用組成物が流通する微小空間が、該ノズル16の長手方向に沿って形成されている。この微小空間の横断面の大きさは、直径で表して100μm以上1000μm以下であることが好ましい。
ノズル16は、管路17を介してポンプ機構14と連通している。管路17は導電体でもよく、あるいは非導電体でもよい。また、ノズル16は、高電圧電源12と電気的に接続されている。これによって、ノズル16に高電圧を印加することが可能になっている。この場合、ノズル16に人体が直接触れた場合に過大な電流が流れることを防止するために、ノズル16と高電圧電源12とは、電流制限抵抗19を介して電気的に接続されている。
管路17を介してノズル16と連通しているポンプ機構14は、容器15中に収容されているポンプ機構14をノズル16に供給する供給装置として機能する。ポンプ機構14は、低電圧電源11から電源の供給を受けて動作する。また、ポンプ機構14は、補助的電気回路13による制御を受けて所定量の噴霧用組成物をノズル16に供給するように構成されている。
ポンプ機構14には、フレキシブル管路18を介して容器15が接続されている。容器15中には噴霧用組成物が収容されている。ポンプ機構14としては、ギヤポンプ式、ピストンポンプ式が好ましい。
容器15は、カートリッジ式の交換可能な形態をしていることが好ましい。
以上の構成を有する静電スプレー装置10は、例えば図2に示すように使用することができる。図2には、片手で把持できる寸法を有するハンディタイプの静電スプレー装置10が示されている。同図に示す静電スプレー装置10は、図1に示す構成図の部材のすべてが円筒形の筐体20内に収容されている。筐体20の長手方向の一端10aには、ノズル(図示せず)が配置されている。ノズルは、その組成物の吹き出し方向を、筐体20の縦方向と一致させて、被膜形成対象物である肌側に向かい凸状になるように該筐体20に配置されている。ノズル先端が筐体20の縦方向においてに被膜形成対象物に向かい凸状になるように配置されていることによって、筐体に噴霧用組成物が付着しにくくなり、安定的に被膜を形成することができる。
被膜形成対象皮膚が使用者の自身の皮膚である場合、静電スプレー装置10を動作させるときには、使用者、すなわち静電スプレーによって自己の皮膚に被膜を形成する者が該装置10を手で把持し、ノズル(図示せず)が配置されている該装置10の一端10aを、静電スプレーを行う対象部位に向ける。図2では、使用者の前腕部内側に静電スプレー装置10の一端10aを向けている状態が示されている。この状態下に、装置10のスイッチをオンにして静電スプレー法を行う。装置10に電源が入ることで、ノズルと皮膚との間には電界が生じる。図2に示す実施形態では、ノズルに正の高電圧が印加され、皮膚が負極となる。ノズルと皮膚との間に電界が生じると、ノズル先端部の噴霧用組成物は、静電誘導によって分極してその先端部分がコーン状になり、コーン先端から帯電した噴霧用組成物の液滴が電界に沿って、皮膚に向かって空中に吐出される。空間に吐出され且つ帯電した噴霧用組成物から溶媒である成分(a)が蒸発していくと、噴霧用組成物表面の電荷密度が過剰となり、クーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間に広がり、皮膚に到達する。この場合、噴霧用組成物の粘度を適切に調整することで、噴霧された該組成物を液滴の状態で皮膚に到達させることができる。あるいは、空間に吐出されている間に、溶媒である揮発性物質の成分(a)を該組成物から揮発させ、溶質である被膜形成能を有するポリマーを固化させつつ、電位差によって伸長変形させながら繊維を形成し、その繊維を皮膚の表面に堆積させることもできる。例えば、噴霧用組成物の粘度を高めると、該組成物を繊維の形態で皮膚の表面に堆積させやすい。これによって、繊維の堆積物からなる被膜が皮膚の表面に形成される。繊維の堆積物からなる被膜は、ノズルと皮膚との間の距離や、ノズルに印加する電圧を調整することでも形成することが可能である。
静電スプレー法を行っている間は、被膜形成対象物である皮膚とノズルとの間に高い電位差が生じている。しかし、インピーダンスが非常に大きいので、人体を流れる電流は極めて微小である。例えば通常の生活下において生じる静電気によって人体に流れる電流よりも、静電スプレー法を行っている間に人体に流れる電流の方が数桁小さいことを、本発明者は確認している。
静電スプレー法によって繊維の堆積物を形成する場合、該繊維の太さは、円相当直径で表した場合、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることが更に好ましい。また3000nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることが更に好ましい。繊維の太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(繊維の塊、繊維の交差部分、液滴)を除き、繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き、繊維径を直接読み取ることで測定することができる。
前記の繊維は、製造の原理上は無限長の連続繊維となるが、少なくとも繊維の太さの100倍以上の長さを有することが好ましい。本明細書においては、繊維の太さの100倍以上の長さを有する繊維のことを「連続繊維」と定義する。そして、静電スプレー法によって製造される被膜は、連続繊維の堆積物からなる多孔性の不連続被膜であることが好ましい。このような形態の被膜は、集合体として1枚のシートとして扱えるだけでなく、非常に柔らかい特徴を持っており、それに剪断力が加わってもばらばらになりにくく、身体の動きへの追従性に優れるという利点がある。また、皮膚から生じた汗の放散性に優れるという利点もある。更に、被膜の剥離が容易であるという利点もある。これに対して、細孔を有さない連続被膜は剥離が容易でなく、また汗の放散性が非常に低いので、皮膚に蒸れが生じやすい。
繊維状となった噴霧用組成物は、帯電した状態で皮膚に到達する。先に述べたとおり皮膚も帯電しているので、繊維は静電力によって皮膚に密着する。皮膚の表面には肌理等の微細な凹凸が形成されているので、その凹凸によるアンカー効果と相まって繊維は皮膚の表面に一層密着する。このようにして静電スプレーが完了したら、静電スプレー装置10の電源を切る。これによってノズルと皮膚との間の電界が消失し、皮膚の表面は電荷が固定化される。その結果、被膜の密着性が一層発現する。
以上の説明は、被膜として繊維の堆積物からなる多孔性被膜についてのものであったが、被膜の形態はこれに限られず、細孔を有さない連続被膜を形成してもよく、繊維の堆積物以外の形態を有する多孔性被膜、例えば連続被膜に不規則に又は規則的に複数の貫通孔が形成されてなる多孔性被膜、すなわち不連続被膜を形成してもよい。上述のとおり、噴霧用組成物の粘度、ノズルと皮膚との間の距離、及びノズルに印加する電圧などを制御することで任意の形状の被膜を形成することができる。
ノズルと皮膚との間の距離は、ノズルに印加する電圧にも依存するが、50mm以上、150mm以下であることが、被膜を首尾よく形成する上で好ましい。ノズルと皮膚との間の距離は、一般的に用いられる非接触式センサ等で測定することができる。
静電スプレー法によって形成された被膜が多孔性のものであるか否かを問わず、被膜の坪量は、0.1g/m2以上であることが好ましく、1g/m2以上であることが更に好ましい。また30g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以下であることが更に好ましい。例えば被膜の坪量は、0.1g/m2以上30g/m2以下であることが好ましく、1g/m2以上20g/m2以下であることが更に好ましい。被膜の坪量をこのように設定することで、被膜の密着性を向上させることができる。なお、静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する工程としては、(1)直接皮膚に静電スプレーして、被膜を形成する工程;及び(2)使用者又は使用補助者が、組成物を皮膚以外の対象物に静電スプレーして繊維からなるシートを作製し、そのシートを皮膚に塗布する工程が挙げられる。この場合の静電スプレー装置はハンディな手で把持できる静電スプレー装置であり、静電紡糸スプレー装置ともいう。
次に、工程Bについて説明する。
工程Bは、成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2以下となる量含有する、組成物X(噴霧用組成物)以外の組成物Yを皮膚に適用する工程である。この工程Bは、静電スプレー工程Aの前又は後に行われる。
(c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
(d)水酸基を2個有するポリオール。
この工程Bは、組成物Yを静電スプレー以外の手段により皮膚に適用する工程である。
組成物Yに用いられる(c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマーは、静電スプレーにより皮膚上に形成された被膜のネットワークを強化するだけでなく、皮膚との接着性も高めるので、長時間経過後の密着性の向上、耐摩擦性の向上に寄与するだけでなく、当該被膜のなめらかさ、つやなどの仕上がり性が向上し、その持続性も向上する。また、ファンデーション塗布後の皮脂による化粧崩れが抑制され、Tゾーンのテカリも改善する。
ここで、組成物Yに用いられる水不溶性ポリマー(c)のガラス転移点は、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、-20℃以上25℃以下が好ましく、-20℃以上20℃以下がより好ましく、-20℃以上10℃以下が更に好ましく、-15℃以上5℃以下がより更に好ましい。
また、組成物Yに用いられるポリマー(c)は、水不溶性ポリマーであるのが、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、好ましい。ここで、水不溶性ポリマーにおける水不溶性とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が溶解しない性質を有することをいう。
水不溶性ポリマー(c)としては、例えば、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマーのうちガラス転移点が-20℃以上25℃以下のものが挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。また水不溶性ポリマー(c)としては、非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーから選択される少なくとも1種を使用することができる。水不溶性ポリマー(c)は、成分(b)のポリマー以外のポリマーが好ましい。
ゴム系ポリマーとしては、例えば、天然ゴム;ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、これらの変性体等の合成ゴム等をベースポリマーとするゴム系ポリマーが挙げられる。
これらのゴム系ポリマーのうち、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリイソブチレン、イソプレンゴム及びシリコーンゴムから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。ゴム系ポリマーの市販品としては、ヨドゾールGH41F(アクゾノーベル社製)(Tg:5℃)が挙げられる。
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系ポリマー等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。
これらのベースポリマーとともに用いられる副モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル等が挙げられる。アクリル系ポリマーの市販品としては、ヨドゾールGH256F(粒子径20~40nm;アクゾノーベル社製)(Tg:5℃)、ヨドゾールGH34F(アクゾノーベル社製)(Tg:-5℃)、ヨドゾールGH800F(アクゾノーベル社製)(Tg:-15℃)、ヨドゾールGH810F(アクゾノーベル社製)(Tg:20℃)、ダイトゾール5000AD(大東化成工業社製)(Tg:-14℃)、ダイトゾール5000SJ(大東化成工業社製)(Tg:-13℃)等が挙げられる。
シリコーン系ポリマーとして、例えば、オルガノポリシロキサンを含むシリコーンゴム又はシリコーンレジン等をベースポリマーとするシリコーン系ポリマーが好ましく用いられる。シリコーン系ポリマーを構成するベースポリマーとして、上記シリコーンゴム又はシリコーンレジンを、架橋して得られたベースポリマーを用いてもよい。シリコーンゴムとしては、例えば、ジメチルシロキサンを構成単位として含むオルガノポリシロキサン等が挙げられる。オルガノポリシロキサンには、必要に応じて、官能基(例えば、ビニル基)が導入されていてもよい。シリコーンレジンとしては、例えば、R3SiO1/2構成単位、SiO2構成単位、RSiO3/2構成単位及びR2SiO構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を含むオルガノポリシロキサンが挙げられる。シリコーン系ポリマーは架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、シロキサン系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられる。過酸化物系架橋剤としては、任意の適切な架橋剤が用いられ得る。過酸化物系架橋剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイト等が挙げられる。シロキサン系架橋剤としては、例えば、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン等が挙げられる。
ウレタン系ポリマーとしては、ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂からなるものが挙げられる。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。ウレタン系ポリマーの市販品としては、Baycusan C1003(Covestro Deutschland AG社製)(Tg:5℃)等が挙げられる。
非イオン性ポリマーとしては特に限定されず、化粧料の分野に通常用いられる、非イオン性ポリマーであればいずれも使用することができる。前記成分(c)としては、1種又は2種以上の非イオン性ポリマーを含むことができ、この非イオン性ポリマーと組み合わせて、1種以上のアニオン性、カチオン性及び/又は両性ポリマーを更に含むことができる。
非イオン性ポリマーの例としては、(メタ)アクリル系水溶性ノニオン重合体、(メタ)アクリル系非水溶性ノニオン重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、低鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以下)、中性多糖及びその誘導体(そのエーテルやエステル等)が挙げられる。中性糖類及びその誘導体としては、中性ガム類(グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー等)、セルロースエーテル(ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、その疎水化誘導体(HM-EHEC等))、デンプン及びその誘導体(デキストリン等)などが挙げられる。
以下に、前記(メタ)アクリル系水溶性ノニオン重合体、(メタ)アクリル系非水溶性ノニオン重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、低鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以下)等の非イオン性ポリマーを構成可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
ノニオン性の単量体の例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸無水物;マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-ステアリルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N-ポリアルキレンオキシ(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリルアミドと炭素数2~4のアルキレンオキシドとから誘導されるモノマー;N-ビニルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルモルフォリン、アクリルアミド等の親水性ノニオン性モノマー;などが挙げられる。
これらのうち、(メタ)アクリル系非水溶性ノニオン重合体、ポリビニルピロリドン、低鹸化ポリビニルアルコール(けん化度60mol%以下)から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。市販品としては、例えば、MAS683(コスメディ製薬社製)、ポリビニルピロリドンK-90(BASF社製)やJMR-150L(日本酢ビポバール社製)を挙げることができる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」の表記は「アクリル又はメタクリル」を意味する。
アニオン性ポリマーとしては特に限定されず、化粧料の分野に通常用いられるアニオン性ポリマーであればいずれも使用することができる。前記液剤は、1種又は2種以上のアニオン性ポリマーを含むことができ、このアニオン性ポリマーと組み合わせて、1種以上の非イオン性、カチオン性及び/又は両性ポリマーを更に含むことができる。
アニオン性ポリマーの例としては、例えば、アニオン性多糖及びその誘導体(アルギン酸塩、ペクチン、ヒアルロン酸塩等)、アニオン性ガム(キサンタンガム、デヒドロキサンタンガム、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム等)、アニオン性セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、(メタ)アクリル系水溶性アニオン重合体、アクリルアミド系水溶性アニオン重合体などが挙げられる。
以下に、前記(メタ)アクリル系水溶性アニオン重合体等のアニオン性ポリマーを構成可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。アニオン性の単量体の例として、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸化合物;不飽和多塩基酸無水物(例えば無水コハク酸、無水フタル酸等)と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)との部分エステル化合物;スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有する化合物;アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート等のリン酸基を有する化合物;等が挙げられる。これらのアニオン性不飽和単量体は、酸のままもしくは部分中和又は完全中和して使用することができ、又は酸のまま共重合に供してから部分中和又は完全中和することもできる。中和に使用する塩基性化合物としては例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア水、モノ-、ジ-、トリ-エタノールアミン、トリメチルアミン等のアミン化合物がある。
これらのうち、アクリル系非水溶性アニオン重合体が特に好ましい。市販品としては、例えば、MASCOS10(コスメディ製薬社製)、HiPAS10(コスメディ製薬社製)を挙げることができる。
また、これら非イオン性ポリマーやアニオン性ポリマーを含む乳化増粘剤を用いることもできる。例えば、ポリアクリルアミド/(C13,C14)イソパラフィン/ラウレス-7(Seppic社製、Sepigel305)等が挙げられる。
カチオン性ポリマーとしては特に限定されず、化粧料の分野に通常用いられるカチオン性増粘性ポリマーであればいずれも使用することができる。前記液剤は1種又は2種以上のカチオン性ポリマーを含むことができ、このカチオン性ポリマーと組み合わせて、一種以上の非イオン性、アニオン性及び/又は両性ポリマーを更に含むことができる。
カチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム基等のカチオン性基、又はカチオン性基にイオン化することができる第一級、第二級又は第三級アミノ基等の基を有するポリマーである。カチオン性ポリマーは、典型的には、アミン基若しくはアンモニウム基を高分子鎖の側鎖に含むポリマー又は構成単位としてジアリル四級アンモニウム塩を含むポリマーである。
好ましいカチオン性ポリマーとしては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン性スターチ、カチオン性グアーガム、第四級アンモニウム側鎖を有するビニル系又は(メタ)アクリル系ポリマー又はコポリマー、四級化ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート/アミノアクリレートコポリマー、アミン置換ポリ(メタ)アクリレートクロスポリマー、(メタ)アクリル系水溶性カチオン重合体、アクリルアミド系水溶性カチオン重合体などが挙げられる。
以下に、前記(メタ)アクリル系水溶性カチオン重合体等のカチオン性ポリマーを構成可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。カチオン性単量体の例として、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、p-ジメチルアミノメチルスチレン、p-ジメチルアミノエチルスチレン、p-ジエチルアミノメチルスチレン、p-ジエチルアミノエチルスチレン等を、カチオン化剤(例えば、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル類、ジメチル硫酸等のジアルキル硫酸類、N-(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド等の第3級アミン鉱酸塩のエピクロルヒドリン付加物、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等の無機塩、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸等)でカチオン化したカチオン性単量体が挙げられる。
カチオン化セルロースの具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドをヒドロキシエチルセルロースに付加することにより得られる第四級アンモニウム塩のポリマー(ポリクオタニウム-10)、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリドコポリマー(ポリクオタニウム-4)、並びにヒドロキシエチルセルロースをトリメチルアンモニウム置換エポキシド及びラウリルジメチルアンモニウム置換エポキシドと反応させることにより得られる第四級アンモニウム塩のポリマー(ポリクオタニウム-67)が挙げられる。
第四級アンモニウム側鎖を有するビニル系又は(メタ)アクリル系ポリマー又はコポリマーの例としては、ポリ(2-メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)(ポリクオタニウム-37)を挙げることができる。
四級化ポリビニルピロリドンの具体例としては、ビニルピロリドン(VP)及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルのコポリマーと硫酸ジエチルとから合成される第四級アンモニウム塩(ポリクオタニウム-11)が挙げられる。
(メタ)アクリレート/アミノアクリレートコポリマーの例としては、(アクリレーツ/アミノアクリレーツ/C10-30アルキルPEG-20イタコン酸)コポリマーを挙げることができる。
アミン置換ポリ(メタ)アクリレートクロスポリマーの例としては、ポリアクリレート-1 クロスポリマー、ポリクオタニウム-52を挙げることができる。
これらの中で、アクリルアミド系水溶性カチオン重合体が特に好ましい。市販品としては、例えば、t-ブチルアクリルアミド/エチルアクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体(RP77S、花王製)を挙げることができる。
両性ポリマーは、カチオン性基及びアニオン性基の両方を含むポリマーである。構造的な観点からいえば、両性ポリマーは、上述のカチオン性ポリマーのいずれかにアニオン性基又はコモノマーを更に導入することによって誘導することができる。
両性ポリマーとしては、化粧料の分野に通常用いられる両性ポリマーであればいずれも使用することができる。前記液剤は1種又は2種以上の両性ポリマーを含むことができ、この両性ポリマーと組み合わせて非イオン性、アニオン性及び/又はカチオン性ポリマーを更に含むことができる。
両性ポリマーの例としては、カルボキシル変性又はスルホン酸変性カチオン性多糖(カルボキシメチルキトサン等)、ホスホベタイン基やスルホベタイン基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系ポリマーや、(メタ)アクリル系両イオン性重合体などが挙げられる。
以下に、前記(メタ)アクリル系両イオン性重合体等の両性ポリマーを構成可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。両イオン性単量体の具体例としては、前述のカチオン性単量体前駆体の具体例に、ハロ酢酸ナトリウムもしくはカリウム等の変性化剤を作用させることによって得られる化合物が挙げられる。また、分極性単量体の具体例としては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、p-ジメチルアミノメチルスチレン、p-ジメチルアミノエチルスチレン、p-ジエチルアミノメチルスチレン、p-ジエチルアミノエチルスチレン等のアミンオキサイド化物;等が挙げられる。
他の例としては、カチオン性ビニル系又は(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸とのコポリマー(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸コポリマー(ポリクオタニウム-22)等)が挙げられる。
組成物Yに用いられる水不溶性ポリマー(c)としては、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、アクリル系ポリマーが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系ポリマーがより好ましい。
水不溶性ポリマー(c)は、組成物Y中にエマルジョンとして含有しているのが好ましく、エマルジョンの平均粒子径は、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、10nm以上400nm以下が好ましく、10nm以上300nm以下がより好ましく、20nm以上200nm以下が更に好ましい。ここで、エマルジョンの平均粒子径は、光散乱法にて測定する。(例えば、大塚電子社製のゼータ電位・粒径測定システム ELSZ-1000ZSを使用して測定できる。)
組成物Y中の水不溶性ポリマー(c)の含有量は、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、固形分換算で、1質量%以上20質量%以下であるのが好ましい。より好ましくは1.5質量%以上であり、更に好ましくは2質量%以上であり、より更に好ましくは2.5質量%以上である。また、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下であり、より更に好ましくは8質量%以下である。具体的には、1.5質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましく、2.5質量%以上8質量%以下が更に好ましい。
組成物Yに用いられる成分(d)は、水酸基を2個有するポリオールである。
成分(d)として、水酸基を2個有するポリオールを用いることにより、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上が達成できる。
水酸基を2個有するポリオールとしては、炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を有するジオール、炭素数3以上の環式脂肪族炭化水素基を有するジオールが挙げられ、炭素数2~6の脂肪族炭化水素基を1又は2個有するジオール、炭素数3~6の環式脂肪族炭化水素基を1又は2個有するジオールが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジアルキレングリコール類が挙げられる。ここで、アルキレングリコール及びジアルキレングリコールのアルキレン基としては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましい。
これらのうち、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、仕上がり性の向上、仕上がり性の持続性の向上の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコールが好ましく、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオールがより好ましく、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオールが更に好ましい。
これらの水酸基を2個有するポリオールは、1種又は2種以上を用いることができる。
組成物Y中の成分(d)の含有量は、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、0.2質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上10質量%以下が更に好ましく、1質量%以上8質量%以下がより更に好ましい。
組成物Y中の成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))は、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、0.25以上2.5以下である。また、被膜の長時間経過後の密着性の向上、仕上がり性の向上、仕上がり性の持続性の向上の観点から、(d)/(c)は、0.28以上2以下が好ましく、0.3以上2以下がより好ましい。
組成物Yには、前記成分(c)及び成分(d)以外に、(e)炭化水素油、エステル油及びエーテル油から選ばれる1種又は2種以上の液状油を含有することができる。これらの液状油の含有量は、組成物Y中に、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、0.2質量%以下であるのが好ましい。
なお、液状油は、20℃で液状である油である。
前記液状の炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n-オクタン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、ポリブテン、ポリイソブテン等が挙げられ、使用感の観点から流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、n-オクタン、n-ヘプタン、シクロヘキサンが好ましく、流動パラフィン、スクワランがより好ましい。また、静電スプレーされた被膜の密着性、耐摩擦性の観点から、炭化水素油の20℃における粘度は、好ましくは1mPa・s以上であり、より好ましくは3mPa・s以上である。ここでの粘度は、20℃においてBM型粘度計(トキメック社製、測定条件:ローターNo.1、60rpm、1分間)により測定される。
前記エステル油としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステルが挙げられる。具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、オクタン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。
これらの中では、静電スプレーされた被膜を皮膚に密着させる観点及び皮膚に塗布した際の感覚に優れる点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる1種が好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
また、エステル油としては、上記エステル油を含む植物油、動物油を用いることが可能であり、例えばオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などが挙げられる。
前記エーテル油としては、セチルジメチルブチルエーテル等のアルキル-1,3-ジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル、ジカプリリルエーテル等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
前記エーテル油としては、セチル-1,3-ジメチルブチルエーテルを用いることが更に好ましい。
組成物Yには、前記の液状油(e)に加えて、20℃で固形の油剤(固形油)も用いることができる。20℃で固形の油剤(固形油)の含有量は、組成物Y中に、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、0.2質量%以下であるのが好ましく、実質含まないことがより好ましい。
なお、20℃で固形の油剤は20℃で固体の性状を示し、融点が40℃以上のものである。20℃で固形の油剤としては、炭化水素ワックス、エステルワックス、パラオキシ安息香酸エステル、高級アルコール、炭素数14以上の直鎖脂肪酸エステル、炭素数12以上直鎖脂肪酸3つを構成要素とするトリグリセライド、シリコーンワックス等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2以上を含有させることができる。かかるワックスとしては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、例えば、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、木ロウ、サンフラワーワックス、水添ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;シリコーンワックス、フッ素系ワックス、合成ミツロウ等の合成ワックス;脂肪酸、高級アルコール及びこれらの誘導体が挙げられる。また、炭素数12以上直鎖脂肪酸3つを構成要素とするトリグリセライドとしては、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル等が挙げられる。
組成物Yには、前記成分の他、増粘剤、界面活性剤、水溶性高分子、酸化防止剤、香料、色素、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤等が含まれていてもよい。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
組成物Yの形態としては、前記被膜の長時間経過後の密着性の向上、なめらかさ、つやなどの仕上がり性の持続性の向上、ファンデーション塗布後の化粧の持続性の向上の観点から、水系組成物であるのが好ましい。ここで、水系組成物は、水をベースとする組成物であり、水溶液、水に他の成分が分散している水分散液、水中油型乳化組成物などが挙げられる。
組成物Yを皮膚に適用する工程(工程B)は、工程Aの前であっても後であってもよく、工程Aの前に適用するのが好ましい。また組成物Yを皮膚に適用する手段は、静電スプレー以外の手段であればいずれの手段でもよい。手指等で皮膚に塗布する手段、好ましくは静電スプレー以外の手段でミストやスプレーで吐出し皮膚に適用する手段、例えばパフや不織布、コットン等のアプリケータを用いて皮膚に適用する手段等が挙げられる。
また、工程A及び工程Bの前、中間又は後に、粉体を含有する化粧料を皮膚に塗布することにより(工程C)皮膚を化粧することもできる。例えば、工程A、工程B、工程Cの順;工程B、工程A、工程Cの順で行うことができる。この工程Cも静電スプレー以外の手段で実施するのが好ましい。
工程Cの化粧料に用いられる粉体としては、着色顔料、体質顔料、パール顔料、有機粉体等が挙げられる。着色顔料としては、無機着色顔料、有機着色顔料、有機色素が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
無機着色顔料としては、具体的には、ベンガラ、水酸化鉄、チタン酸鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、紺青、群青、紺青酸化チタン、黒色酸化チタン、チタン・酸化チタン焼結物、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機有色顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、カラミン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、これらの複合体等の無機白色顔料が挙げられる。これらを1種又は2種以上用いることができる。
これらのうち、少なくとも、酸化鉄、酸化チタン及び酸化亜鉛から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄及び黒酸化鉄から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
有機着色顔料・有機色素としては、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の有機タール系顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の有機色素が挙げられる。また、セルロース、ポリメタクリル酸エステル等の高分子で被覆したもの等が挙げられる。これらのうち、少なくとも赤色102号が含まれることが好ましい。
体質顔料としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、クレー、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、スメクタイト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、合成マイカ、合成セリサイト、金属石鹸、硫酸バリウム処理マイカ等が挙げられる。これらを1種又は2種以上用いることができる。
これらのうち、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、無水ケイ酸、タルク、窒化ホウ素、合成マイカが含まれることが好ましい。
パール顔料(光輝性粉体)としては、魚鱗箔、酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン酸化鉄被覆雲母、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆合成雲母、酸化チタン被覆板状シリカ、中空板状酸化チタン、酸化鉄被覆雲母、板状酸化鉄(MIO)、アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、酸化チタン被覆板状アルミナ、ガラスフレーク、酸化チタン被覆ガラスフレーク、真珠殻、金箔、金蒸着樹脂フィルム、金属蒸着樹脂フィルム等が挙げられる。これらを1種又は2種以上用いることができる。
有機粉体としては、シリコーンゴム粉体、シリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉体、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリアミドパウダー、ナイロンパウダー、ポリエステルパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ビニル樹脂パウダー、尿素樹脂パウダー、フェノール樹脂パウダー、フッ素樹脂パウダー、ケイ素樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダー、メラミン樹脂パウダー、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、ウールパウダー、セルロースパウダー、長鎖アルキルリン酸金属塩、N-モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸、これらの複合体等が挙げられる。これらを1種又は2種以上用いることができる。
これらのうち、セルロースパウダー、シリコーンゴム粉体、シリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉体、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリル樹脂パウダー、ナイロンパウダーが含まれることが好ましい。
本発明で用いる粉体は、いずれも、そのまま使用することができ、これらの1種又は2種以上が疎水化処理されたものを用いることもできる。疎水化処理としては、通常の化粧料用粉体に施されている処理であれば制限されず、フッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、アミノ酸系化合物、レシチン、アルキルシラン、油剤、有機チタネート等の表面処理剤を用い、乾式処理、湿式処理等を行えばよい。
表面処理剤の具体例としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルアルコキシシラン、フッ素変性シリコーン等のフッ素系化合物;ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状シリコーン、片末端又は両末端トリアルコキシ基変性オルガノポリシロキサン、架橋型シリコーン、シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン等のシリコーン系化合物;ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸;プロリン、ヒドロキシプロリン、アラニン、グリシン、サルコシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン及びそれらの誘導体等のアミノ酸系化合物;レシチン、水添レシチン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン;ポリイソブチレン、ワックス、油脂等の油剤;トリイソステアリン酸イソプロピルチタン等の有機チタネートなどが挙げられる。
また、本発明で用いる粉体は、更に、これらの1種又は2種以上が親水化処理されたものを用いることもできる。親水化処理としては、通常の化粧料用粉体に施されている処理であれば制限されない。
例えば、アラビアゴム、トラガカント、アラビノガラクタン、ローカストビーンガム(キャロブガム)、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、アルゲコロイド、トラントガム、ローカストビーンガム等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、デオキシリボ核酸(DNA)及びその塩等の動物系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールシラン等のポリオキシエチレン系高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリル酸アミド等のアクリル系高分子など、更に、シリカなど無機ケイ酸系化合物などが挙げられる。
粉体としては、化粧料に通常用いられる粉体であれば、球状、板状、針状、不定形状等の形状、煙霧状、微粒子状、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等のものを用いることができる。
粉体の平均粒子径は、肌の皮丘・皮溝・毛穴に均一に密着し、自然な化粧感を与える点から平均粒子径0.001μm以上200μm以下が好ましく、0.01μm以上50μm以下がより好ましく、0.02μm以上20μm以下が更に好ましく、0.05μm以上10μm以下が更に好ましい。
本発明において、粉体の平均粒子径は、電子顕微鏡観察、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定機によって、測定される。具体的には、レーザー回折/散乱法の場合、エタノールを分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(例えば、セイシン企業社製、LMS-350)で測定する。なお、粉体を疎水化処理又は親水化処理した場合、成分(c)の平均粒子径、含有量は、疎水化処理又は親水化処理した剤を含めての平均粒子径、質量を意味する。
粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、化粧料の形態により相違するが、仕上がりの観点から、化粧料中に1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましい。また、粉体の含有量は、化粧料中に1質量%以上99質量%以下が好ましく、3質量%以上95質量%以下がより好ましく、5質量%以上90質量%以下が更に好ましい。
全粉体に対する着色顔料の質量割合〔着色顔料/全粉体〕は、仕上がり、粉体を含有する化粧料が時間を経過しても、よれにくく、化粧持続性に優れる観点からが0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましく、また1.0以下が好ましい。
工程Cに用いられる化粧料の種類は、粉体含有化粧料であれば特に限定されず、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料;日焼け止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料などとして適用することができる。なかでも、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、日焼け止め乳液、日焼け止めクリームがより好ましく、ファンデーションが更に好ましい。
また、当該化粧料の形態も特に限定されず、粉末化粧料、固形粉末化粧料、リキッド化粧料、油性化粧料、乳化化粧料、油性固形化粧料のいずれでもよい。
工程Cに用いられる化粧料に含有される粉体以外の成分としては、油剤(液体油及び固形油を含む)、乳化剤、水溶性高分子、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、血行促進剤、各種ビタミン、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤等が挙げられる。
工程Cの化粧料の塗布は、静電スプレー以外の手段であって、化粧料の種類に応じた通常の塗布手段で行えばよく、例えば指や手のひらを用いてのび広げたり、おさえたりして塗布、専用の道具を用いてのび広げたり、おさえたりして塗布する等が挙げられる。
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の被膜の製造方法、組成物及びキットを開示する。
<1>A)成分(a)及び成分(b)を含有する組成物Xを静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する工程と、
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
(b)被膜形成能を有するポリマー
B)成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有する、組成物X以外の組成物Yを皮膚に適用する工程とを、この順で又は逆の順で有する、皮膚上への被膜の製造方法。
(c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
(d)水酸基を2個有するポリオール
<2>成分(a)が、C1~C6一価アルコールを含む揮発性物質が好ましく、エタノールを含む揮発性物質がより好ましい<1>記載の被膜の製造方法。
<3>組成物Xが、成分(a)を30質量%以上97質量%以下、好ましくは55質量%以上94質量%以下、より好ましくは60質量%以上92質量%以下含有し、成分(b)を2質量%以上50質量%以下、好ましくは4質量%以上43質量%以下、より好ましくは6質量%以上36質量%以下含有する<1>又は<2>記載の被膜の製造方法。
<4>工程Aで皮膚表面に形成される被膜が、多孔性被膜であり、繊維の堆積物からなる多孔性被膜であるのが好ましい<1>~<3>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<5>組成物Xが、更に20℃で液体のポリオール及び20℃で液体の油成分から選ばれる成分を含有する<1>~<4>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<6>組成物Yに用いられる水不溶性ポリマー(c)のガラス転移点が、-20℃以上20℃以下が好ましく、-20℃以上10℃以下がより好ましく、-15℃以上5℃以下が更に好ましい<1>~<5>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<7>(c)水不溶性ポリマーが、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、アクリル系ポリマー及びウレタン系ポリマーから選ばれる1種又は2種以上、又は非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー及び両性ポリマーから選択される少なくとも1種であって、成分(b)のポリマー以外のポリマーである<1>~<6>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<8>(c)水不溶性ポリマーが、アクリル系ポリマーが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系ポリマーがより好ましい<1>~<7>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<9>水不溶性ポリマー(c)は、組成物Y中にエマルジョンとして含有しているのが好ましく、エマルジョンの平均粒子径が、10nm以上400nm以下が好ましく、10nm以上300nm以下がより好ましく、20nm以上200nm以下が更に好ましい<1>~<8>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<10>組成物Y中の水不溶性ポリマー(c)の含有量が、固形分換算で、1.5質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましく、2.5質量%以上8質量%以下が更に好ましい<1>~<9>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<11>成分(d)が、炭素数2~6の脂肪族炭化水素基を1又は2個有するジオール及び炭素数3~6の環式脂肪族炭化水素基を1又は2個有するジオールから選ばれる1種又は2種以上であるのが好ましく、アルキレングリコール類及びジアルキレングリコール類から選ばれる1種又は2種以上であるのがより好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール及びジプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上が更に好ましく、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及び1,3-ブタンジオールから選ばれる1種又は2種以上がより更に好ましい<1>~<10>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<12>組成物Y中の成分(d)の含有量が、0.2質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上10質量%以下が更に好ましく、1質量%以上8質量%以下がより更に好ましい<1>~<10>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<13>組成物Y中の成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が、0.28以上2以下が好ましく、0.3以上2以下がより好ましい<1>~<12>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<14>組成物Yが、更に(e)炭化水素油、エステル油及びエーテル油から選ばれる1種又は2種以上の液状油を0.2質量%以下含有する<1>~<13>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<15>工程Bが、組成物Yを静電スプレー以外の手段で皮膚に適用する工程である<1>~<14>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<16>組成物Yが、水系組成物であるのが好ましい<1>~<15>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<17>工程A)及び工程B)の前又は後に、粉体を含有する化粧料を皮膚に塗付する工程を更に行う、<1>~<16>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<18>工程A)が、静電スプレー装置を用いて皮膚に組成物Xを静電スプレーすることにより繊維の堆積物からなる被膜を形成する工程であり、静電スプレー装置が、前記組成物Xを収容する容器と、前記組成物Xを吐出するノズルと、前記容器中に収容されている前記組成物Xを前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを備える<1>~<17>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<19>静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する工程が、直接皮膚に静電スプレーして、被膜を形成する工程、又は使用者又は使用補助者が、組成物Xを皮膚以外の対象物に静電スプレーして繊維からなるシートを作製し、そのシートを皮膚に塗布する工程である<1>~<18>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<20>静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する前又はその後に、皮膚に適用して皮膚上に被膜を製造するために用いる組成物Yであって、成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有する組成物Y。
(c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
(d)水酸基を2個有するポリオール
<21>静電スプレーに用いる組成物が、成分(a)及び成分(b)を含有する組成物Xである<20>記載の組成物Y。
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
(b)被膜形成能を有するポリマー
<22>組成物Xと組成物Yとを含有する皮膚上に被膜を製造するためのキットであって、
組成物Xは、成分(a)及び成分(b)を含有し、静電スプレーして皮膚表面に被膜を形成するための組成物であり、
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
(b)被膜形成能を有するポリマー
組成物Yは、成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有し、組成物Xを静電スプレーすることによる皮膚上への被膜の形成の前又はその後に皮膚に適用するための組成物である、キット。
(c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
(d)水酸基を2個有するポリオール
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
合成例1(ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)変性シリコーンの製造)
硫酸ジエチル19.0g(0.12モル)と2-エチル-2-オキサゾリン81.0g(0.82モル)を脱水した酢酸エチル203.0gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、1100であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量32000、アミン当量2000)300gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン-ジメチルシロキサン共重合体を、淡黄色ゴム状固体(390g、収率97%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は質量75%であり、重量平均分子量は40000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、約20モル%のアミノ基が残存していることがわかった。このポリマーは、ガラス転移温度は45℃であった。
[試験1]
〔実施例1~7、比較例1~4〕
(1)噴霧用組成物の調製
噴霧用組成物として、表1の組成物を用いた。
(2)組成物Yの調製
表2記載の液剤(組成物Y)を用いた。
(3)評価ステップ
(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)の工程で皮膚に適用した。
ア.皮膚に市販のスキンケア剤を塗付した。
イ.組成物Yを塗布した(工程B)。
ウ.静電スプレー(工程A)を行った。
図1に示す構成を有し、図2に示す外観を有する静電スプレー装置10を用い、ヒトの頬と額に適用する場合は、皮膚に向けて静電スプレー法を30秒間行った。また、目元や鼻に適用する場合は、化粧用スポンジに10~15秒間静電スプレーし、その後、その化粧用スポンジを皮膚にのせて転写した。静電スプレー法の条件は以下に示すとおりとした。
・印加電圧:14.5kV
・ノズルと皮膚との距離:100mm
・噴霧用組成物の吐出量:
皮膚に直接静電スプレーする場合:7.9mL/h
スポンジに静電スプレーする場合 5.0mL/h
・環境:25℃、60%RH
この静電スプレーによって、皮膚の表面に繊維の堆積物からなる多孔性被膜が形成された。
エ.市販のパウダーファンデーション「エスト パウダーファンデーション シルキースムース」を塗付した。
その後、皮膚上に形成された被膜を、以下の基準で官能評価した。3名の専門パネラーが、「ファンデーションののせやすさ」「なめらかな仕上がり」、「頬につや感のある仕上がり」「なめらかさが持続する(塗布4時間後)」「頬のつや感が持続する(塗布4時間後)」「Tゾーンのテカリを抑制する(塗布4時間後)」を評価した。結果を3名の積算値で表2に示す。
〔評価〕
(1)ファンデーションののせやすさ
5:ファンデーションが非常に綺麗に密着する。
4:ファンデーションが綺麗に密着する。
3:ファンデーションがやや綺麗に密着する。
2:ファンデーションがあまり綺麗に密着しない。
1:ファンデーションが綺麗に密着しない。

(2)なめらかな仕上がり(ファンデーション塗布後)
5:非常になめらかな仕上がり
4:なめらかな仕上がり
3:ややなめらかな仕上がり
2:あまりなめらかな仕上がりでない
1:なめらかな仕上がりでない

(3)頬につや感のある仕上がり
5:非常につや感のある仕上がり
4:つや感のある仕上がり
3:ややつや感のある仕上がり
2:あまりつや感のない仕上がり
1:つや感のない仕上がり

(4)なめらかさが持続する(塗布4時間後)
5:なめらかさが非常に持続している
4:なめらかさが持続している
3:なめらかさがやや持続している
2:なめらかさがあまり持続していない
1:なめらかさが持続していない

(5)頬のつや感が持続する(塗布4時間後)
5:つや感が非常に持続している
4:つや感が持続している
3:つや感がやや持続している
2:つや感があまり持続していない
1:つや感が持続していない

(6)Tゾーンのテカリを抑制する(塗布4時間後)
5:テカリが見られない
4:テカリがあまり見られない
3:テカリがややみられる
2:テカリが見られる
1:テカリがかなりみられる
Figure 2023067516000001
Figure 2023067516000002
10 静電スプレー装置
11 低電圧電源
12 高電圧電源
13 補助的電気回路
14 ポンプ機構
15 容器
16 ノズル
17 管路
18 フレキシブル管路
19 電流制限抵抗
20 筐体

Claims (9)

  1. A)成分(a)及び成分(b)を含有する組成物Xを静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する工程と、
    (a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
    (b)被膜形成能を有するポリマー
    B)成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有する、組成物X以外の組成物Yを皮膚に適用する工程とを、この順で又は逆の順で有する、皮膚上への被膜の製造方法。
    (c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
    (d)水酸基を2個有するポリオール
  2. 組成物Y中の成分(d)の含有量が0.2質量%以上20質量%以下である請求項1記載の被膜の製造方法。
  3. 組成物Yが、更に(e)炭化水素油、エステル油及びエーテル油から選ばれる1種又は2種以上の液状油を0.2質量%以下含有する請求項1又は2記載の被膜の製造方法。
  4. 工程B)が、組成物Yを静電スプレー以外の手段で皮膚に適用する工程である請求項1~3のいずれか1項記載の皮膜の製造方法。
  5. 組成物Yが、水系組成物である請求項1~4のいずれか1項記載の被膜の製造方法。
  6. 工程A)で静電スプレーすることにより形成される被膜が多孔性被膜である請求項1~5のいずれか1項記載の被膜の製造方法。
  7. 静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成する前又はその後に、皮膚に適用して皮膚上に被膜を製造するために用いる組成物Yであって、成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有する組成物Y。
    (c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
    (d)水酸基を2個有するポリオール
  8. 静電スプレーに用いる組成物が、成分(a)及び成分(b)を含有する組成物Xである請求項7記載の組成物Y。
    (a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
    (b)被膜形成能を有するポリマー
  9. 組成物Xと組成物Yとを含有する皮膚上に被膜を製造するためのキットであって、
    組成物Xは、成分(a)及び成分(b)を含有し、静電スプレーすることにより皮膚表面に被膜を形成するための組成物であり、
    (a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
    (b)被膜形成能を有するポリマー
    組成物Yは、成分(c)及び成分(d)を、成分(d)と成分(c)の質量比((d)/(c))が0.25以上2.5以下となる量含有し、組成物Xを静電スプレーすることによる被膜の形成の前又はその後に皮膚に適用するための組成物である、キット。
    (c)ガラス転移点が-20℃以上25℃以下の水不溶性ポリマー 1質量%以上20質量%以下、
    (d)水酸基を2個有するポリオール
JP2021178842A 2021-11-01 2021-11-01 被膜の製造方法 Pending JP2023067516A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021178842A JP2023067516A (ja) 2021-11-01 2021-11-01 被膜の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021178842A JP2023067516A (ja) 2021-11-01 2021-11-01 被膜の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023067516A true JP2023067516A (ja) 2023-05-16

Family

ID=86325660

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021178842A Pending JP2023067516A (ja) 2021-11-01 2021-11-01 被膜の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023067516A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7169813B2 (ja) 被膜の製造方法
JP6203363B2 (ja) 被膜の製造方法
JP7272754B2 (ja) 被膜の製造方法
US20220305507A1 (en) Method for producing wearable coating
JPWO2018194140A1 (ja) 被膜の製造方法及び静電スプレー装置
JP7272753B2 (ja) 化粧被膜の製造方法
JP7137958B2 (ja) 被膜の製造方法
TWI793359B (zh) 塗層之製造方法
JP2023115047A (ja) 被膜の製造方法
JP2023067516A (ja) 被膜の製造方法
JP2022039066A (ja) 皮膚の凹凸をカバーする方法
WO2018194088A1 (ja) 被膜の製造方法
WO2023195457A1 (ja) 被膜形成用組成物