JP2023065154A - 衛生用不織布及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な肌触りを有し、肌に触れたときに冷感を知覚させることができる衛生用不織布及びその製造方法を提供すること。【解決手段】本発明の衛生用不織布は、熱伝導率が0.11W/mK以上である熱可塑性樹脂を含有する熱伝導性繊維を構成繊維として含む。前記衛生用不織布は、その一方の面から深さ0.05mmまでの表面領域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率が60%以上である領域を有する。前記表面領域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率が、前記衛生用不織布を厚み方向に三等分したときの厚み方向中央域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率よりも高い。【選択図】図2

Description

本発明は、衛生用不織布及びその製造方法に関する。
冷感を知覚させることができる構成を有する繊維や物品が提案されている。例えば特許文献1には、夏場の暑熱感を解消するための衣料に用いられることを目的とした快適性布帛が開示されている。この布帛は、20℃から30℃における繊維軸方向の熱伝導率が5W/mK以上の有機高分子繊維を少なくとも1種類含み、20℃から30℃における布帛の厚み方向の熱伝導率が0.08W/mK以上で、接触冷温感が0.13W/cm以上であることも同文献に開示されている。
特許文献2には、吸収体の横方向両側部から外側に延出するサイドフラップに冷感剤が塗布された吸収性物品が開示されている。
特許文献3には、吸湿性及び接触冷感を発現させることを目的として、鞘部ポリマーがポリアミド、芯部ポリマーがポリエーテルエステルアミド共重合体で構成され、無機粒子を繊維全体で0.1~5重量%含有する繊維及びこれを用いた布帛が開示されている。
また特許文献4には、鞘層がポリエチレンで、芯層がナイロン又はポリエステルである複合繊維の糸を編立てたニット生地が開示されている。
特開2010-236130号公報 特開2016-120208号公報 特開2016-204784号公報 実用新案登録第3226090号公報
生理用ナプキンやパンティライナー等の身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品や、目を覆うアイマスクや口や鼻を覆うフェイスマスク等の衛生用物品などの衛生品は、不織布を含む複数の構成部材を組み合わせて構成されるところ、このような物品が使用前又は着用時に肌に触れると、使用者に温感を知覚させ、使用時の蒸れ等の不快感を想起させることがある。このことは、特に暑熱環境下において顕著となり得る。そのため、衛生品における肌と接触する部位は、風合いが良好であり、且つ冷感を知覚させる構成が望まれる。
しかし、特許文献1、2及び4に記載の技術は、衣類などの衛生品以外の物品に適用されるものであり、衛生品への適用については何ら検討されていない。
特許文献3に記載の技術は冷感剤を用いるものであるため、冷感を知覚させることについて遅効性であり、また手の平など皮膚の厚い部位で接触した場合には、冷感を感じにくい。
したがって、本発明は、良好な肌触りを有し、肌に触れたときに冷感を知覚させることができる衛生用不織布に関する。
本発明は、一方の面と、該面と反対側に位置する他方の面とを有する衛生用不織布に関する。
前記衛生用不織布は、熱伝導率が0.11W/mK以上である熱可塑性樹脂を含有する熱伝導性繊維を構成繊維として含むことが好ましい。
前記衛生用不織布は、第1面の表面から深さ0.05mmまでの表面領域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率が60%以上である領域を有することが好ましい。
前記表面領域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率が、前記衛生用不織布を厚み方向に三等分したときの厚み方向中央域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率よりも高いことが好ましい。
また本発明は、前記衛生用不織布の製造方法に関する。
前記製造方法は、熱伝導率が0.11W/mK以上である熱可塑性樹脂を含有する第1繊維ウエブを作製する工程を含むことが好ましい。
第1繊維ウエブにエアスルー処理を行った中間体を備える繊維集合体を得る工程を含むことが好ましい。
前記製造方法は、前記繊維集合体を一対の平板間又は一対のロール間に導入して、該繊維集合体を加熱しながら加圧する圧密化工程を含むことが好ましい。
前記製造方法は、加熱及び加圧後の前記繊維集合体を、冷却された一対の平板間又は一対のロール間に導入して、該繊維集合体を冷却しながら加圧する冷却加圧工程を含むことが好ましい。
本発明によれば、良好な肌触りを有し、肌に触れたときに冷感を知覚させることができる衛生用不織布が提供される。
図1は、実施例1の衛生用不織布の断面における走査型電子顕微鏡像である。 図2(a)は、実施例2の衛生用不織布の断面における走査型電子顕微鏡像であり、図2(b)は同断面の表面領域を拡大した走査型電子顕微鏡像である。 図3(a)は、実施例3の衛生用不織布の断面における走査型電子顕微鏡像であり、図3(b)は同断面の表面領域を拡大した走査型電子顕微鏡像である。 図4は、比較例1の衛生用不織布の断面における走査型電子顕微鏡像である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の衛生用不織布は、衛生品の構成部材として好適に用いられる。衛生品の典型例は、フェイスマスクやアイマスク等の衛生用物品や、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の尿や経血等の体液を吸収する吸収性物品等の衛生品であり、好ましくは吸収性物品である。
衛生用不織布は、衛生品の着用時において使用者の肌と当接する面である肌当接面側に配されたり、あるいは、衛生品を取り扱う際に使用者の手等に触れる部位に配されたりする。
衛生用不織布は、ここに記載された用途に特に限定されず適用可能である。
本発明の衛生用不織布は、所定の熱伝導率を有する熱可塑性樹脂を含有する繊維を構成繊維として含む繊維集合体を備えたシート状物である。衛生用不織布は、一方の面である第1面と、当該面と反対側に位置する他方の面である第2面とを有する。
以下の説明では、説明の便宜上、所定の熱伝導率を有する熱可塑性樹脂を「熱伝導性樹脂」ともいい、所定の熱伝導率を有する樹脂を含有する繊維を「熱伝導性繊維」ともいう。
衛生用不織布は、熱伝導性繊維が単独で、あるいは他の繊維と混綿されて単一の繊維層からなる繊維集合体として構成されていてもよい。これに代えて、衛生用不織布は、熱伝導性繊維を含む繊維集合体の層と、熱伝導性繊維を含む繊維層以外の他の繊維集合体の層とが積層されて複数の繊維層からなる繊維集合体として構成されていてもよい。熱伝導性繊維以外の他の繊維が含まれる場合、他の繊維は、熱伝導性繊維の構成樹脂よりも融点が高い樹脂を含んで構成されていることが好ましい。
本発明の衛生用不織布の構成繊維どうしは、融着によって繊維シートの形態を維持している。具体的には、風合いや通気性を更に向上させる観点から、衛生用不織布の構成繊維は、これらの繊維どうしが融着した融着点を有することが好ましい。
融着とは、複数の繊維に熱のみ又は熱及び圧力を付与して、繊維が溶融する等して、繊維間の境界が不明瞭となった態様である。融着点を有するように構成するためには、例えば後述するように、繊維ウエブに熱風の吹き付けを行うことによって形成することができる。
衛生用不織布を構成する繊維は、上述のとおり、所定の熱伝導率を有する熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂が有する熱伝導率は、冷感を知覚させやすくする観点から高ければ高いほど好ましいが、好ましくは0.11W/mK以上、より好ましくは0.12W/mK以上、更に好ましくは0.13W/mK以上であり、0.20W/mK以下が現実的である。熱伝導率は熱の移動の度合いを示す指標であり、熱伝導率が高いほど、熱の移動が速く、冷感を知覚しやすい。熱伝導率の測定は、例えば以下の方法で測定することができる。まず、測定対象となる不織布又は繊維を、コールドスプレー等を用いて製品から剥離したり、あるいは繊維を採取するなどしたりして、分離する。次いで、分離した不織布又は繊維を、プレス機等の加温加圧設備に導入して、不織布又は繊維原料の融点以上の温度で加熱しながら加圧し、厚み1mm程度のフィルム状試料とする。このとき、試料中に空気が残存しないように、加圧条件を適宜調整する。
そして、定常熱伝導率測定装置(KES-F6、カトーテック株式会社製)を用いて、30℃の熱板から試料を介して20℃の熱板へ移動した熱移動量に基づいて、熱伝導率を測定する。この測定を一つのフィルム状試料につき10箇所測定し、これらのうち最も高い熱伝導率の値を、本発明における熱伝導率(W/mK)とする。
上述した物性を有する熱伝導性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して若しくは組み合わせて用いることができる。
ポリエチレン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、並びにエチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。高い熱伝導率を有し、使用者に対して冷感をより強く知覚させることを可能にする観点から、ポリエチレン樹脂としてHDPEを含むことが好ましい。
ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン等が挙げられる。繊維形成の容易性の観点から、ポリアミド樹脂としてナイロン6を用いることが好ましい。
本発明の衛生用不織布に含まれる構成繊維の熱伝導性樹脂の存在態様としては、一本の構成繊維に着目したときに、(i)繊維の構成樹脂が1種の熱伝導性樹脂のみである態様や、(ii)熱伝導性樹脂からなる樹脂成分と、該樹脂成分とは異なる樹脂成分とを含む繊維などが挙げられる。
前記(ii)の具体例としては、(a)複数種類の熱伝導性樹脂を含む樹脂が混合された樹脂からなる繊維、(b)第1樹脂からなる芯と、その芯の表面を覆う第2樹脂とからなる芯鞘複合繊維や、(c)第1樹脂と第2樹脂とを有し、第1樹脂からなる繊維表面の少なくとも一部に第2樹脂が繊維長さ方向に沿って連続して存在するサイドバイサイド複合繊維等が挙げられる。
前記(a)及び(b)の場合、それぞれ独立して、第1樹脂及び第2樹脂は互いに異なる樹脂であり、第1樹脂及び第2樹脂のうち少なくとも一方は熱伝導性樹脂である。また前記(a)及び(b)の場合、第1樹脂及び第2樹脂のうち融点が低い樹脂成分が繊維表面に存在することが、融着点の形成の容易性、並びに肌触り及び冷感の向上の観点から好ましい。
本発明に用いられる繊維は、中実であってもよく、中空であってもよい。熱伝導性を高めて使用者に冷感を知覚させやすくする観点から、好ましくは中実の繊維である。
繊維における構成樹脂の存在態様として、熱伝導性樹脂を含む複合繊維であることが好ましく、繊維の外部に熱伝導性樹脂を含む複合繊維であることがより好ましく、繊維の少なくとも外表面全域に、熱伝導性樹脂を含む複合繊維であることが更に好ましい。また複合繊維である場合には、互いに異なる2種の樹脂として、一方の樹脂と、該樹脂よりも融点の低い他方の樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
これによって、熱伝導性の高い樹脂が使用者の肌に直接接触するので、使用者に冷感を強く知覚させることができる。また熱伝導性樹脂が有する低い剛性及び吸湿性等の良好な性質を繊維に発現させることができ、不織布の風合いや肌触りが更に向上する。
また、融点の異なる2種以上の熱伝導性樹脂を用いることで、繊維どうしを完全に融着させずに不織布化することができ、製造時における加工性が向上し、得られる不織布の風合いが向上する。また複合繊維に捲縮を発現させて、風合いを更に高めることができる。これに加えて、不織布がさらさらとした良好な触感になり、不織布を触れたときに冷感を知覚した場合でも、使用者に不快な濡れ感を感じにくくさせることができる。
融点の異なる2種以上の熱伝導性樹脂を用いた実施形態として、衛生用不織布の構成繊維は、該繊維の表面にHDPEが存在する繊維を含むことが好ましく、芯がポリアミド樹脂であり且つ鞘がHDPEからなる芯鞘構造を有する複合繊維を含むことがより好ましい。これによって、冷感をより効果的に知覚させることができる。
特に、後者の複合繊維を含む形態では、汗、尿、経血、呼気等の体液に起因する水分によりポリアミド樹脂が吸湿してもポリアミド樹脂が使用者の肌に直接触れないので、不快な湿り感を防止することができる。また、製造時において繊維の交点のみで融着させやすくすることができるので、触感が向上する。その結果、衛生用不織布は、良好な風合いを維持しつつ、その表面がさらさらとした良好な触感を有し、心地よい冷感を使用者に知覚させることができる。
また本発明の好適な態様として、鞘の構成樹脂が芯の構成樹脂よりも融点が低いものを用いて構成された芯鞘複合繊維を用いることによって、例えば衛生用不織布をエアスルー法で製造したときに、繊維の構成樹脂が過度に溶融して繊維形状を維持できなかったり、得られる不織布に穴あきが生じたりするなどの不具合が生じづらくなり、製造の安定性が更に向上する。これに加えて、上述の芯鞘繊維を用いてエアスルー法に供することによって、繊維の交点のみを融着しやすくなり、繊維どうしを完全に融着させずに不織布化でき、風合いが更に良好な不織布が得られる。これに加えて、不織布がさらさらとした触感になり、不織布を触れたときに冷感を知覚した場合でも、使用者に不快な濡れ感を感じにくくさせることができる。
本発明では、熱伝導性樹脂以外の熱可塑性樹脂が更に用いられていてもよい。このような樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン等のポリエチレン樹脂以外のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等のポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルやポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリパーフルオロエチレン等のフッ素樹脂などの各種の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、必要に応じて、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの樹脂は、熱伝導性樹脂とともに一本の繊維内に含まれた態様で存在してもよく、熱伝導性樹脂以外の樹脂からなる他の繊維として存在していてもよい。
本発明の衛生用不織布に含まれる繊維の全質量に対する熱伝導性樹脂の含有量は、冷感の向上の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、一層好ましくは60質量%以上、更に一層好ましくは70質量%以上、特に一層好ましくは90質量%以上である。
構成繊維にポリエチレン樹脂を含む場合、衛生用不織布に含まれる繊維の全質量に対するポリエチレン樹脂の含有量は、冷感の向上の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
構成繊維にポリアミド樹脂を含む場合、衛生用不織布に含まれる繊維の全質量に対するポリアミド樹脂の含有量は、冷感の向上の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましく40質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
構成繊維に熱伝導性樹脂以外の樹脂を含む場合、衛生用不織布に含まれる繊維の全質量に対する熱伝導性樹脂以外の樹脂の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、一層好ましくは10質量%以下である。
構成繊維にポリエチレン樹脂及びポリアミド樹脂を含む場合、本発明の衛生用不織布に含まれるポリエチレン樹脂に対するポリアミド樹脂の質量比(ポリアミド樹脂/ポリエチレン樹脂)は、冷感と優れた風合いとを両立して発現する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、一層好ましくは0.5以上、更に一層好ましくは0.8以上であり、不織布加工性の観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下である。
繊維中の構成樹脂の種類は、示差走査熱量測定によって、繊維の構成する樹脂の融点を確認するとともに、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴法(NMR)の一種以上を用いて樹脂種を確認する。これに加えて、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、繊維の表面形状・断面形状から、紡糸方法を推定し、繊維中の樹脂の種類を特定する。
構成樹脂の含有量は、まず、測定対象の不織布の質量と、無荷重下での厚みを測定する。その後、液体窒素等を用いて繊維構造を固定して、繊維の長手方向に直交する方向に繊維断面が観察できるように不織布の断面を作製し、SEM等を用いて体積比を確認する。得られた体積比と樹脂の比重から、樹脂の含有量を算出する。測定対象の不織布が衛生品に組み込まれている場合には、コールドスプレーで衛生用品から不織布を剥離して測定に供する。
衛生用不織布は、その構成繊維として熱融着性繊維を含むことが好ましい。これによって、衛生用不織布の表面及びその近傍が繊維どうしの融着によって密な構成となりやすく、肌との接触面積が向上しやすい。その結果、使用者に冷感を効果的に知覚させることができる。
熱融着性繊維としては、例えば上述した各種の熱可塑性樹脂を含む繊維が挙げられる。熱融着性繊維は上述した所定の熱伝導性を有していてもよく、有していなくてもよい。具体例として、熱融着性繊維が熱伝導性繊維そのものであってもよく、熱伝導性繊維とは異なる他の繊維として熱融着性繊維が含まれていてもよい。
製造時の利便性を高め、接触面に均一に冷感を知覚させやすくする観点から、熱融着性繊維が熱伝導性繊維そのものであること、すなわち、衛生用不織布の構成繊維として、好ましくは0.11W/mK以上の熱伝導率を有する熱融着性繊維が含まれることがより好ましい。
衛生用不織布は、その構成繊維として短繊維を含むことが好ましい。本明細書における短繊維とは、その繊維長が60mm以下であることをいう。これによって、衛生用不織布全体を圧縮回復性に優れた構成とすることができ、不織布の風合い及び柔軟性が向上する。また、不織布の表面及びその近傍が繊維どうしの融着によって密な構成となりやすく、肌との接触面積が向上しやすい。その結果、使用者に冷感を効果的に知覚させることができる。
上述した短繊維は、不織布の製造時において用いられる繊維ウエブを、カード法等の短繊維の製造方法を採用して製造すればよい。
衛生用不織布に含まれ得る短繊維は、上述した所定の熱伝導性を有していてもよく、有していなくてもよい。具体例として、短繊維が熱伝導性繊維そのものであってもよく、熱伝導性繊維とは異なる他の繊維として短繊維が含まれていてもよい。
製造時の利便性を高め、冷感の効果的な知覚と風合いの向上とを兼ね備える観点から、短繊維が熱伝導性繊維そのものであること、すなわち、衛生用不織布の構成繊維として、好ましくは0.11W/mK以上の熱伝導率を有する短繊維が含まれることがより好ましい。
衛生用不織布の構造に関する説明に戻ると、本発明の衛生用不織布は、その一方の面(例えば第1面又は第2面)の表面から、該不織布の厚み方向に沿う深さ0.05mmまでの領域(以下、これを「表面領域」ともいう。)において、その構成繊維が比較的密となった構造を有する。
衛生用不織布を構成する繊維は、上述した表面領域内において、その繊維径での断面形状が扁平状となっているものが存在していることが好ましい。このような構成となっていることで、不織布の表面及びその近傍に熱伝導性繊維が占める面積百分率が高い部位が形成されやすく、肌との接触面積や、構成繊維どうしの接触度合いが向上しやすい。その結果、熱を効率的に不織布側に伝達させて、使用者に冷感を効果的に知覚させることができる。
上述した構成は、例えば後述する製造方法のように、衛生用不織布の製造過程において得られる繊維集合体を加圧処理等することによって得ることができる。
また、表面領域内に存在する樹脂については、好ましくはポリエチレン樹脂を含み、より好ましくはHDPEを含む。HDPE等のポリエチレン樹脂は、他の熱可塑性繊維と比較して熱伝導率が高いので、このような樹脂が不織布の表面及びその近傍に存在することで、不織布と使用者の肌との接触時により強い冷感を知覚させることができる。
熱伝導率の低い空気の含有量を低減し、該不織布の熱伝導率を向上させる観点から、衛生用不織布全体における体積充填率が、好ましくは2.0%以上、より好ましくは3.0%以上、更に好ましくは3.5%以上、一層好ましくは7.0%以上、より一層好ましくは10.0%以上、更に一層好ましくは12.0%以上であり、特に一層好ましくは14.0%以上である。
また、使用者の肌と接触する使い捨て衛生用材料として用いる場合に、風合いを良好にする観点から、衛生用不織布全体における体積充填率が、好ましくは60.0%以下、より好ましくは50.0%以下、更に好ましくは45.0%以下、一層好ましくは35.0%以下、より一層好ましくは33.0%以下である。
衛生用不織布全体が上述した体積充填率を有していることによって、熱伝導性の低い空気の含有量が衛生用不織布内で少なくなるので、熱の移動性を高めることができ、これに起因して、使用者に冷感をより強く知覚させることができる。
これに加えて、本発明の衛生用不織布及び該不織布を組み込んだ衛生品としての風合いを十分に発現させることができる。
上述した構成は、例えば後述する製造方法のように、衛生用不織布の製造過程において得られる繊維集合体を加圧処理等することによって得ることができる。
本発明における体積充填率は、実体積に対する見かけ体積の百分率として表すことができる。詳細には、測定対象の衛生用不織布を所定面積切り取って測定サンプルとし、その質量(g)を測定する。測定サンプルを切り取る際の所定面積は10cm四方が好ましいが、その寸法にて測定サンプルを切り出せない場合は、測定対象となる衛生用不織布の坪量が目視にて均一である領域の中で、できる限り大きな領域となる幅及び長さで切り取る。そして、測定サンプルの坪量A(g/cm)を算出する。
また、測定サンプルの厚みB(cm)の測定方法は以下のとおりである。まず、12.59g(直径55mm)のプレートのみをレーザー変位計(株式会社キーエンス製、LK-080。本明細書におけるレーザー変位計は全てこれである。)に載置して、測定された厚みをゼロとしてゼロ点調整を行う。そして、測定サンプルの上に前記プレートを載置し、その状態での厚みを、レーザー変位計を用いて測定し、これを測定サンプルの厚みB(cm)とする。厚みBの測定では、プレートの載置によって、4.9mN/cmの荷重が測定サンプルに付与されている。
そして、繊維の構成成分の比重C(g/cm)を用いて、以下の式(I)から、体積充填率(%)を算出する。複合繊維等の二種以上の樹脂が含まれている繊維である場合は、各構成成分の質量割合に基づく比重の和を比重Cとして用いる。例えば、比重C1(g/cm)の構成成分と、比重C2(g/cm)の構成成分とが30:70の質量割合である二成分系の繊維を含んでいる場合は、比重C(g/cm)は、「0.3×比重C1+0.7×比重C2」と算出される。
体積充填率(%)=100×(A)/(B×C) ・・・(I)
測定対象の衛生用不織布が吸収性物品等の衛生品に組み込まれている場合は、該衛生品にコールドスプレーを吹きかけ、ホットメルト接着剤を固化させてから、測定対象の衛生用不織布を丁寧に剥がす。また、後述する第2繊維集合体等といった他の部材と融着などによって接合されている場合も同様に、コールドスプレーや液体窒素等を用いて構造を固定してから、測定対象を剥がして測定する。この手段は本明細書の他の測定においても共通である。
衛生用不織布は、上述した表面領域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率が好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは75%以上である領域(表面高密度領域)を有することが好ましい。更に、衛生用不織布は、上述した表面領域の厚み方向の断面における全構成繊維が占める面積百分率が好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは75%以上である領域(表面高密度領域)を有することが好ましい。この表面高密度領域は表面領域内の一部の領域にのみ形成されていてもよく、表面領域内の全域に形成されていてもよい。つまり、後者の場合は、上述の表面領域が表面高密度領域に相当する。
このような構成となっていることで、不織布の表面及びその近傍に熱伝導性繊維が占める面積百分率が高い部位が形成されやすく、肌との接触面積や、構成繊維どうしの接触度合いが向上しやすい。その結果、熱を効率的に不織布側に伝達させて、使用者に冷感を効果的に知覚させることができる。
表面領域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維又は全構成繊維が占める面積百分率は、例えば後述する測定方法で測定することができる。
衛生用不織布は、表面領域の厚み方向の断面と、該衛生用不織布を厚み方向に仮想的に三等分したときの中央の領域である厚み方向中央域の厚み方向の断面とを比較したときに、各領域の熱伝導性繊維が占める面積百分率が異なっていることが好ましい。詳細には、表面領域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維が占める面積百分率T1は、厚み方向中央域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維が占める面積百分率T2よりも高いことが好ましい。
より詳細には、厚み方向中央域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維が占める面積百分率T2に対する表面領域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維が占める面積百分率T1の比(T1/T2)は、好ましくは1.0超、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上、一層好ましくは1.3以上であり、搬送時や使用時に生じる外力に対する強度保持の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは6.0以下である。
更に、表面領域の厚み方向の断面における全構成繊維が占める面積百分率T3が、厚み方向中央域の厚み方向の断面における全構成繊維が占める面積百分率T4よりも高いことが好ましい。具体的には、厚み方向中央域の厚み方向の断面における全構成繊維が占める面積百分率T4に対する表面領域の厚み方向の断面における全構成繊維が占める面積百分率T3の比(T3/T4)は、好ましくは1.0超、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上、一層好ましくは1.3以上であり、搬送時や使用時に生じる外力に対する強度保持の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは6.0以下である。
このような構成となっていることで、肌との接触面となり得る不織布の表面及びその近傍では、高い熱伝導性を有する繊維を有しつつ熱伝導性の低い空気を含まない構造となって、冷感を更に高めることができる。これに加えて、不織布の内部は空気を多く含む疎な構造となるため、圧縮変形性に優れ、柔軟性及び風合いが向上する。また柔軟性の向上に伴って、使用者の手や肌の形状に追従して変形して、使用者との接触面積を高めて、冷感をより強く感じさせることができる。
衛生用不織布は、上述した厚み方向中央域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維が占める面積百分率が好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上、また好ましくは75%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下、一層好ましくは30%以下である領域を有する。このような構成となっていることで、厚み方向中央域が空気を多く含む疎な構造となることから、衛生用不織布は圧縮変形性に優れ、柔軟性及び風合いが向上する。また柔軟性の向上に伴って、使用者の手や肌の形状に追従して変形して、使用者との接触面積を高めて、冷感をより強く感じさせることができる。
厚み方向中央域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維又は全構成繊維が占める面積百分率は、例えば後述する測定方法で測定することができる。
また、衛生用不織布の厚み方向中央域に着目すると、熱伝導性繊維が不均一に存在することが好ましい。より詳細には、該厚み方向中央域の厚み方向の断面において、熱伝導性繊維が占める面積百分率が異なる領域を2つ以上有することが好ましい、具体的には、熱伝導性繊維が占める面積百分率が低い領域である中央域低密度領域と、該低密度領域よりも熱伝導性繊維が占める面積百分率が高い領域である中央域高密度領域との2つが少なくとも存在することが好ましい。
このような構成となっていることで、衛生用不織布は、圧縮変形性に優れ、柔軟性及び風合いが向上する。また柔軟性の向上に伴って、使用者の手や肌の形状に追従して変形して、使用者との接触面積を高めて、冷感をより強く感じさせることができる。
表面領域及び厚み方向中央域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維が占める面積百分率は、以下の方法で測定することができる。
まず、測定対象の衛生用不織布を、コールドスプレー又は液体窒素などを用いて、無荷重状態で凍結して構造を固定し、その状態でカッター刃を用いて切断して、断面を露出させる。
次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、作製した不織布断面の厚み全体が観察像内に入るように拡大倍率を調整し、その状態でSEM観察像を得る。またその観察像に基づいて、不織布の一方の面から厚み方向に沿う深さ0.05mmまでの領域を表面領域の厚み方向の断面として画定する。そして、表面領域内の異なる3箇所の部位について倍率300倍にて観察し、観察像をそれぞれ得る。同様に、衛生用不織布を厚み方向に仮想的に三等分して、そのときの中央の領域を厚み方向中央域の厚み方向の断面として画定した後、同様の方法で、厚み方向中央域内の異なる3箇所の部位の観察像をそれぞれ得る。
続いて、画像処理ソフト(例えばWinroof 2018など)を用いて、得られた表面領域の厚み方向の断面の観察像について、256階調に基づいて二値化処理して、二値化画像を得る。二値化処理は、観察像内に存在する繊維のみが着色されるようにしきい値(100~150程度)を設定して行う。そして、この二値化画像に基づいて、着色された面積を画像全体の面積で除した百分率を測定、算出する。得られた百分率の算術平均値を、表面領域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維が占める面積百分率T1(%)とする。
同様に、得られた厚み方向中央域の厚み方向の断面の観察像についても二値化画像とし、着色された面積を画像全体の面積で除した百分率を測定、算出する。得られた百分率の算術平均値を、厚み方向中央域の厚み方向の断面における熱伝導性繊維が占める面積百分率T2(%)とする。
熱伝導性繊維が占める面積百分率の値が高いほど、観察領域内に繊維が占める割合が多く密な構造であることを意味する。熱伝導性繊維が占める面積百分率の値が低いほど、観察領域内に繊維が占める割合が少なく疎な構造であることを意味する。
本発明の衛生用不織布は、該不織布の風合いを向上する観点から、その全体の厚みが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは1.0mm以上、一層好ましくは2.0mm以上である。
また、本発明の衛生用不織布は、不織布内の空気の含有量を低減させて、熱伝導性を高める観点から、不織布全体の厚みが、好ましくは8.0mm以下、より好ましくは7.5mm以下、更に好ましくは7.0mm以下である。
上述した衛生用不織布の厚みは、4.9mN/cm(0.5gf/cm)荷重下において、レーザー変位計等を用いて測定したものとする。
本発明の衛生用不織布の厚みが上述した構成となっていることによって、衛生用不織布の熱容量を高めて、使用者に冷感を効率よく知覚させることができる衛生用不織布を効率よく製造することができる。
本発明の衛生用不織布は、その全体の坪量が、好ましくは10g/m以上、より好ましくは15g/m以上、更に好ましくは18g/m以上である。
また、本発明の衛生用不織布は、その全体の坪量が好ましくは200g/m以下、より好ましくは150g/m以下、更に好ましくは120g/m以下である。
上述した構成になっていることによって、衛生用不織布の坪量ムラに起因する冷感の知覚の違いを低減させることができるとともに、繊維どうしの融着や圧密化を効果的に行うことができ、所定の体積充填率を有する衛生用不織布を生産性高く製造することができる。
また衛生用不織布全体において、49mN/cm(5gf/cm)荷重下での圧縮変形量が、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1.1mm以上、一層好ましくは1.3mm以上のものである。また、同荷重下での衛生用不織布全体の圧縮変形量が、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下のものである。
このような構成となっていることによって、不織布全体に柔軟性を発現させて使用感を向上させることができるとともに、使用者への接触面積を高めて、冷感を使用者に効率的に知覚させることができる。
上述した圧縮変形量は、例えば、エアスルー法であれば、熱風の温度や風速を通常採用される条件よりも低くすることや、繊維本数を増加させたり、熱風の温度よりも融点が高い樹脂を含む繊維を用いたりすることで、繊維どうしの融着性を下げるように構成することで達成される。
これに加えて、又はこれに代えて、繊維層を2層以上設けて、一つの繊維層のみに他の繊維層よりも圧縮変形量が高い層を設けたり、一つの繊維層について坪量を他の繊維層よりも増加させたり、一つの繊維層について融点の高い繊維を混綿するなどといった構成を採用することによって、達成することができる。
圧縮変形量は、例えば、カトーテック株式会社製のKES‐FB-3圧縮試験機を用いて測定することができる。測定対象の衛生用不織布から一定の大きさの切片をサンプルとして用いる。サンプルを試験機の試験台に取り付け、面積2cmの円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。圧縮速度は0.02mm/sec、圧縮最大荷重は9.8mN/cm(1gf/cm)とする。無荷重時の厚みを厚みT0(mm)とし、49mN/cm(5gf/cm)荷重時の厚みを厚みTm(mm)としたときに、厚みT0から厚みTmを差し引いた圧縮変形量(mm)は、「T0-Tm」として算出することができる。
上述の説明では、説明の便宜上、衛生用不織布は、熱伝導性繊維を含有する単一の繊維層を有する態様(単一繊維のみからなるか、他の繊維との混綿であるかは問わない)を例にとり説明したが、この形態に限られない。以下に、本発明の衛生用不織布の別の実施形態を説明する。特に説明しない点については、上述した各実施形態の説明が適宜適用される。
衛生用不織布の別の実施形態として、例えば、熱伝導性繊維を含む繊維集合体の層(以下、これを第1繊維層ともいう)と、該繊維層に隣接して配された熱伝導性繊維以外の繊維を含む第2繊維を含む繊維集合体の層(以下、これを第2繊維層ともいう。)とを少なくとも備える態様が挙げられる。つまり、本実施形態は、複層構造の衛生用不織布である。ここで隣接とは、繊維層どうしが他の繊維層を介さずに隣り合っていることを意味し、繊維層間に接着剤が介在していることは許容される。繊維層の境界は、明瞭であってもよく、不明瞭であってもよい。
上述の場合、冷感の効果的な知覚の観点から、第1繊維層は、衛生用不織布の外面を構成することが好ましい。また同様の観点から、少なくとも第1繊維層は上述した衛生用不織布に係る各種の好ましい形態を満たすことが好ましく、衛生用不織布全体において上述の好適な形態を満たすことがより好ましい。
詳細には、複層構造の衛生用不織布は、例えば、熱伝導性繊維を含む第1繊維ウエブと、熱伝導性繊維以外の繊維を含む第2繊維ウエブとを積層した状態で、エアスルー加工あるいはスパンボンド加工を施すことによって得ることができる。この場合、各繊維層の境界は不明瞭であることが一般的であるが、該境界が明瞭である部分を含んでいてもよい。本形態の場合、各繊維層は、例えば絡合、融着及び圧着の少なくとも一つによって、繊維シートの形態を維持している。
複層構造の衛生用不織布の更に別の実施形態としては、熱伝導性繊維を含む第1繊維ウエブ又は第1繊維シートと、第1繊維以外の繊維を含む繊維ウエブ又は第2繊維シートとを、エアスルー加工若しくはスパンボンド加工を施すか、あるいは接着剤によって接着して接合することで、繊維シートの形態が維持された態様が挙げられる。この場合、各繊維層の境界は明瞭であってもよく、不明瞭であってもよい。
いずれの態様であっても、熱伝導性繊維以外の繊維としては、PET樹脂やPTT樹脂等の樹脂を含む繊維や、パルプ繊維、レーヨン繊維、その他の親水化処理済み繊維等の一種以上が挙げられる。
第1繊維層の坪量は、冷感を十分に知覚させる観点から、好ましくは10g/m以上、より好ましくは15g/m以上、更に好ましくは18g/m以上であり、また、好ましくは200g/m以下、より好ましくは150g/m以下、更に好ましくは100g/m以下である。
第2繊維層の坪量は、好ましくは10g/m以上、より好ましくは15g/m以上、更に好ましくは20g/m以上、また好ましくは140g/m以下、より好ましくは90g/m以下、更に好ましくは70g/m以下である。
以上の構成を有する衛生用不織布は、単層であるか複層であるかを問わず、熱伝導性繊維を用いるので、当該繊維と使用者の肌とが触れたときに、使用者の体温に起因する熱を、使用者から衛生用不織布に、あるいは使用者と接触していない他の繊維へ早く移動させることができる。その結果、使用者の肌が衛生用不織布に触れたときに、使用者に対して冷感を知覚させて、冷感に起因する心地よい使用感を与えることができる。また、熱伝導性樹脂が有する柔軟性や吸湿性を良好に発現させて、この点でも使用感の向上に寄与する。
これに加えて、衛生用不織布に繊維どうしの融着点が形成されやすくなるので、熱の伝達を他の繊維に容易に行うことができるとともに、繊維シートとしての良好な風合いを発現させて、使用感や快適性を向上させることができる。
また、衛生用不織布が繊維シートの形態で構成されていることによって、使用者の肌と衛生用不織布とが接触したときの接触面積を高めて、冷感を使用者により知覚させることができるとともに、不織布の構成に起因する柔軟性を発現させることができる。
上述した衛生用不織布は、これをこのままで用いてもよく、あるいは、衛生品の構成部材として該衛生用不織布を用い、該衛生用不織布を備える衛生品としてもよい。
また、本発明の衛生用不織布を衛生品に組み込む場合には、該不織布、あるいは該不織布の第1繊維層側が使用者の肌に対向する面を構成することが好ましい。
いずれの場合にも、それらは典型的には使い捨てである。
本発明の衛生用不織布を備える衛生品は、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、わき汗パッド、尿取りパッド、パンティライナー等の吸収性物品や、フェイスマスクやアイマスク等のマスク類等の衛生用物品が挙げられるが、衛生品はこれらに限定されるものではない。例えば、衛生用不織布を備える吸収性物品は、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
衛生用不織布は、吸収性物品等の構成部材として用いることができる。
吸収性物品は、典型的には、表面シートと、裏面シートとを備え、表面シートと裏面シートとの間に配された吸収体を備えており、これに加えて、又は表面シート若しくは裏面シートそのものとして衛生用不織布を配した状態で用いることができる。
衛生用不織布を吸収性物品等の構成部材として用いる場合、衛生用不織布は、吸収性物品等の衛生品の使用時、あるいは吸収性物品等の衛生品を包装から取り出す等の取扱い時において、使用者の肌に直接接触する部位に配することができる。つまり、衛生用不織布は、吸収性物品等の衛生品の外面に配されていることが好ましい。
吸収性物品等の衛生品の外面とは、パッケージを開封して吸収性物品等の衛生品を取り出した後に、使用者が手に触れることができる吸収性物品等の衛生品の面(表裏を含有しているが、厚み方向に進んだ内部の面ではなく、表面側)を意味する。これらの外面は、例えば、肌対向面や非肌対向面が挙げられる。
詳細には、衛生品の一実施形態である吸収性物品として、例えば使い捨ておむつに衛生用不織布を用いる場合、例えば表面シート、サイド不織布、腰回りギャザーや鼠径部近傍に配されるギャザー、並びに外装体等の構成部材として用いることができる。これらのうち、少なくとも外装体に衛生用不織布を用いることによって、吸収性物品等の衛生品を取り出したときに使用者が手に触れることができるので、肌触りが良好で、衛生品の優れた品質を使用者に想起させやすくすることができる。
また、衛生品の一実施形態である吸収性物品として、尿漏れパッド及び生理用ナプキンに衛生用不織布を用いる場合、例えば表面シートや、サイド不織布、ヒップガード、あるいは個包装用の袋等の構成部材として用いることができる。
また、衛生品の一実施形態である吸収性物品として、尿漏れパッド及び生理用ナプキンに衛生用不織布を用いる場合、例えば表面シートや鼠径部近傍に配されるギャザー等の構成部材として用いることができる。
吸収性物品等の衛生品の使用時において、冷感を知覚させて、蒸れ等による不快感を低減させる観点から、衛生用不織布は、吸収性物品の衛生品を適正な位置で着用した場合において、吸収性物品の衛生品を着用する使用者の肌に対向する面(以下、これを「肌対向面」ともいう。)側に位置するように配されていることが好ましい。これに加えて、衛生用不織布における表面領域が存在する側の面が、肌対向面を構成するように配されていることがより好ましい。
吸収性物品に用いられる吸収体は、吸収性コアを備えている。吸収性コアは例えばパルプをはじめとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体、吸水性ポリマーの堆積体、2枚のシート間に吸水性ポリマーが保持された吸収性シートなどから構成され、典型的には親水性繊維と吸水性ポリマーとを含む。
吸収性コアは、コアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートの被覆態様としては、例えば、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。
衛生用不織布をマスクの態様として用いる場合、例えば、衛生用不織布を単独で、あるいは衛生用不織布に他の不織布を積層した積層体として用いることができる。これに加えて、衛生用不織布を含む部材に耳掛け部を設けて、衛生用不織布を含む部材を口、鼻あるいは目の被覆状態を保持できるように構成することができる。
この形態であっても、衛生用不織布は肌対向面に配されることが好ましく、使用者の肌と直接当接する部位に配されることが更に好ましい。
本発明の衛生用不織布を用いて衛生品とする場合、該衛生品は、熱伝導性繊維の集合体である衛生用不織布(以下、これを説明の便宜上「第1繊維集合体」ともいう。)に加えて、更に別の部材(以下、この部材を「第2部材」ともいう。)を備えていてもよい。
第2部材が配された衛生品の実施形態としては、例えば、第2部材として、吸水性ポリマー及び繊維を含有する吸収性シート、並びに吸水性ポリマー及び繊維を含有する吸収体、親水性不織布等の少なくとも一種を用いることができる。これらは衛生用不織布とは異なる繊維集合体の一例である。これらの第2部材を備える衛生品としては、上述の吸収性物品が好ましく挙げられる。
つまり、本実施形態においては、衛生品の構成部材として、第1繊維集合体である衛生用不織布と、衛生用不織布とは別体の第2部材である吸収性シート、吸収体及び/又は不織布とが配されているものである。第1繊維集合体及び第2部材は、互いに隣接して配されていることも好ましい。本実施形態における各繊維集合体は、互いに接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。
吸収性シートとしては、例えば特開平8-246395号公報に記載の吸収性シートなどを用いることができる。
衛生用不織布に用いられる繊維の繊維径は、構成繊維が肌にまとわりつかず、使用者の触感や使用感を良好に保つ観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは12μm以上である。
また、不織布における繊維間隙を小さくし、不織布中の空気の含有量を低減して、熱伝導性を高める観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは18μm以下である。
上述の繊維径は、不織布が第2部材を備える場合、第1繊維集合体の構成繊維において満たすことが好ましい。第2部材として、繊維を含有する吸収性シートを用いる場合、第2部材の構成繊維は、繊維間隙を大きくして圧縮変形性を高める観点から好ましくは19μm以上、より好ましくは22μm以上、更に好ましくは25μm以上である。また、不織布において同じ坪量であれば繊維径が太くなるほど繊維本数が少なくなり、繊維がまばらに存在して繊維がない場所ができてしまうことを防ぐ観点から好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、更により好ましくは30μm以下、一層好ましくは27μm以下である。
繊維の繊維径は、繊維の横断面形状における長軸及び短軸の各長さにおける測定方法と同様に、測定サンプルの作製及びSEM観察を行い、1サンプルあたり10本の繊維の繊維径を測定して、その算術平均値を本発明の繊維径とする。繊維が非真円形である場合には、繊維の長軸及び短軸の各長さを上述の方法で測定し、繊維一本での長軸長さと短軸長さとの算術平均値を繊維径とし、該繊維径の10本の算術平均値を、本発明における繊維の繊維径とする。
衛生用不織布に用いられる繊維の繊維長は、使用者の触感や使用感を良好に保つ観点から、短繊維である場合、好ましくは30mm以上、より好ましくは38mm以上である。また、熱伝導性を高める観点から、短繊維である場合、好ましくは40mm以上、より好ましくは45mm以上である。
上述の繊維長は、不織布が複層構造である場合には、第1繊維層の構成繊維において少なくとも満たすことが好ましい。
繊維の繊維長は、捲縮がかかった状態であった場合は捲縮を解除することなく、且つ、なるべく繊維の曲がりが生じないように静置し端点から端点までの距離を定規で10本測定した繊維長の算術平均値を、本発明の繊維の繊維長とする。
本発明の効果が奏される限りにおいて、本発明の衛生用不織布は、熱伝導率を高めるためのフィラーを更に含んでいてもよい。このようなフィラーとしては、例えば酸化チタン、アルミナ、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、シリカ、カーボンブラック、酸化亜鉛、及びカーボンナノチューブ等の少なくとも一種が挙げられる。フィラーは、繊維内に存在していてもよく、繊維どうしの間に存在していてもよく、繊維表面に一部露出し且つ繊維内部に繊維に埋め込まれて存在していてもよい。
以上は本発明の衛生用不織布及び該衛生用不織布を備える衛生品に関する説明であったところ、以下に本発明の衛生用不織布の好適な製造方法を説明する。
本製造方法は、熱伝導性繊維である第1繊維ウエブを作製する工程(第1ウエブ作製工程)を備えることが好ましい。
前記第1ウエブにエアスルー処理を行った中間体を備える繊維集合体を得る工程(エアスルー工程)を備えることが好ましい。
これに加えて、前記繊維集合体を一対の平板間又は一対のロール間に導入して、該繊維集合体を加熱しながら加圧する工程(圧密化工程)を備えることが好ましい。
更に、加熱及び加圧後の前記繊維集合体を、冷却された一対の平板間又は一対のロール間に導入して、該繊維集合体を冷却しながら加圧する工程(冷却加圧工程)を備えることが好ましい。
以下の説明では、熱伝導性繊維を含む単層構造の衛生用不織布を製造する方法(第1の方法)と、熱伝導性繊維及び熱伝導性繊維以外の繊維を用いて複層構造の衛生用不織布を製造する方法(第2の方法)とに大別して説明する。
いずれの場合であっても、得られる不織布における所定の体積充填率や熱伝導性繊維が占める面積百分率を容易に調整しやすくする観点から、熱伝導性繊維は、ポリエチレン樹脂及びポリアミド樹脂のうち少なくとも一方を含むことが好ましく、融点が互いに異なる樹脂としてポリエチレン樹脂及びポリアミド樹脂を用いることがより好ましく、ポリエチレン樹脂及びポリアミド樹脂の芯鞘複合繊維であることが更に好ましい。
以下に、1種の熱伝導性繊維のみを用いて衛生用不織布を製造する方法(第1の方法)を説明する。
まず、熱伝導性繊維を含む繊維ウエブを形成する。繊維ウエブは、例えば公知のカード機を用いたカード法によって形成することができる。熱伝導性繊維の短繊維化を効率的に行うことを目的として、カード法を複数回行って、熱伝導性繊維の繊維ウエブを形成してもよい。またこの繊維ウエブに熱伝導性繊維以外の繊維を含有させる場合、繊維どうしを混綿させればよい。
次に、得られた繊維ウエブに対して熱風を吹き付けるエアスルー処理を行って、熱伝導性繊維の集合体である中間体を得る。本工程は、繊維ウエブを不織布化する工程である。このように作製された繊維集合体は、一般的にエアスルー不織布と呼ばれるものである。本実施形態では、中間体そのものが、後述する各工程に供される繊維集合体である。
エアスルー工程は、例えば、エアスルー炉を用いてネットコンベア上の繊維ウエブに熱風を吹き付けて行うことができる。
一般的なエアスルー加工では、ネットコンベア上に配置された繊維ウエブに対して、ネットコンベア面に対向するように熱風を吹き付ける形態となっている。したがって、熱風が吹き付けられることによって、繊維ウエブはネットコンベア側に押し付けられるので、繊維ウエブにおけるネットコンベアとの接触面及びその近傍は、熱伝導性繊維が占める面積百分率が高くなりやすい。つまり、繊維ウエブの下面側に位置する表面領域に、目的とする衛生用不織布における熱伝導性繊維が占める面積百分率及び体積充填率が比較的高い領域が形成されることになる。
他方、繊維ウエブの厚み方向中央域や、繊維ウエブにおける熱風が吹き付けられる側の面は、熱風によって繊維の間隔が広がり、熱伝導性繊維が占める面積百分率が低くなりやすい。
このような機序によって、上述した衛生用不織布の特徴ある構造が効率的に得られやすくなる。このような構成は、エアスルー工程における熱風の温度や風速を制御することによって、良好な風合い及び強度を有するエアスルー不織布を効率よく製造できる。
エアスルー工程において繊維ウエブに吹き付ける熱風は、熱伝導性繊維が占める面積百分率の制御のしやすさの観点から、その温度及び風速を特定の範囲とすることが好ましい。詳細には、繊維ウエブに吹き付ける熱風の温度は、繊維ウエブを構成する繊維表面を構成する樹脂の融点Mp(℃)との関係において、繊維を完全にフィルム化させずに繊維の形態を維持して、得られる衛生用不織布の風合いを良好にする観点から、好ましくは融点Mp+10℃以下、より好ましくは融点Mp+9℃以下、更に好ましくは融点Mp+8℃以下の範囲とすることができる。
また、繊維ウエブを構成する繊維どうしを適度に融着させて、使用に耐え得る強度を衛生用不織布に発現させる観点から、繊維ウエブに吹き付ける熱風の温度は、好ましくは融点Mp-4℃以上、より好ましくは融点Mp-2℃以上、更に好ましくは融点Mpの温度以上の範囲とすることができる。
本製造方法において芯鞘複合繊維を用いる場合、芯鞘複合繊維における芯の構成樹脂の融点を鞘の構成樹脂の融点よりも高い構成とした繊維を用いることが、融着点の簡便な形成と、得られる不織布の風合いのさらなる向上と、冷感の知覚のさせやすさを兼ね備える点から好ましい。
上述した熱風の温度は、熱風の吹き出し口の平面視における図心の位置且つネットコンベアの直上での温度とする。この温度は、例えば熱電対を用いて測定することができる。
繊維ウエブを構成する熱伝導性繊維として、例えば、繊維表面を構成する鞘がHDPE(融点Mp:130℃)であり、芯がポリアミド樹脂であるナイロン6(融点:225℃)によって構成された芯鞘複合繊維を用いる場合、熱風の温度は、好ましくは126℃以上、より好ましくは128℃以上、更に好ましくは130℃以上とすることができる。
また上述の条件における熱風の温度は、好ましくは140℃以下、より好ましくは139℃以下、更に好ましくは138℃以下とすることができる。
繊維ウエブを構成する繊維として熱伝導性樹脂からなる繊維を用いた場合、例えば、HDPE(融点Mp:130℃)からなる繊維であれば、熱風の温度は、好ましくは126℃以上、より好ましくは128℃以上、更に好ましくは130℃以上とすることができる。また上述の条件における熱風の温度は、好ましくは140℃以下、より好ましくは139℃以下、更に好ましくは138℃以下とすることができる。
また熱伝導性樹脂からなる繊維として、ナイロン6(融点Mp:225℃)からなる繊維であれば、熱風の温度は、好ましくは221℃以上、より好ましくは223℃以上、更に好ましくは225℃以上とすることができる。また上述の条件における熱風の温度は、好ましくは235℃以下、より好ましくは234℃以下、更に好ましくは233℃以下とすることができる。
また熱伝導性樹脂からなる繊維としてナイロン66(融点Mp:265℃)からなる繊維を用いた場合、熱風の温度は、好ましくは261℃以上、より好ましくは263℃、更に好ましくは265℃以上とすることができる。また上述の条件における熱風の温度は、好ましくは275℃以下、より好ましくは274℃以下、更に好ましくは273℃以下とすることができる。
繊維を構成する樹脂の融点Mpは、示差走査熱量測定計(日立ハイテクサイエンス株式会社製、DSC7000x)を用いて測定することができる。まず、細かく裁断した繊維試料(1mg)を用いて、該試料の熱分析を昇温速度10℃/分(20℃~350℃)で行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定する。融点は、一回目昇温時の融解ピーク温度で定義される。融点がこの方法で明確に測定できない場合、この樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。融点を持たない樹脂である場合、軟化点を融点Mpとする。
またエアスルー工程において、繊維ウエブに吹き付ける熱風の風速は、繊維ウエブの厚み方向に熱風を十分に通過させて、繊維どうしの融着を形成させやすくする観点から、好ましくは0.6m/秒以上、より好ましくは0.8m/秒以上である。
また同様の観点から、繊維ウエブに吹き付ける熱風の風速は、好ましくは2.0m/秒以下、より好ましくは1.8m/秒以下、更に好ましくは1.4m/秒以下である。
上述した温度及び風速の条件でエアスルー工程を行うことによって、繊維ウエブを構成する繊維表面に存在する樹脂を溶融又は軟化させて、繊維どうしが融着した融着点をランダムに形成することができるので、製造される衛生用不織布は、エアスルー不織布に起因する柔軟性及び良好な風合いを発現しつつ、使用に耐え得る強度が発現したものとなる。更に、厚み方向で熱伝導性繊維が占める面積百分率の高低差が存在するような構成を容易に形成することができる。
エアスルー工程における繊維ウエブの搬送速度は、上述の温度及び風速の範囲において、好ましくは3m/分以上、より好ましくは5m/分以上、更に好ましくは8m/分以上であり、好ましくは200m/分以下、より好ましくは160m/分以下、更に好ましくは100m/分以下、一層好ましくは60m/分以下である。
上述の工程を経て得られた繊維集合体は、不織布化されているので、これをこのまま本発明の衛生用不織布として用いてもよい。この衛生用不織布は、エアスルー不織布である。
熱伝導性繊維が占める面積百分率が厚み方向で異なるように繊維の疎密差を形成所定の体積充填率を有する衛生用不織布を容易に得る観点から、上述の工程を経て得られた繊維集合体に対して圧密化処理を更に行うことが好ましい(圧密化工程)。本工程における圧密化処理は、繊維集合体をその厚み方向に加熱しながら加圧して圧縮することができる方法を採用することができる。
圧密化処理としては、例えば一対の金属平板の間に繊維集合体を配して加圧する方法(以下、この方法を「プレス法」又は「プレス処理」ともいう。)や、周面がともに平滑な一対のロール間に繊維集合体を導入して加圧する方法(以下、この方法を「カレンダー法」又は「カレンダー処理」ともいう。)によって行うことができる。
圧密化処理は、一回のみ行ってもよく、必要に応じて、同一の又は異なる方法で複数回行ってもよい。
製造効率を高める観点から、カレンダー法を採用することが好ましく、加熱状態における圧密化を温度ムラなく効率的に行う観点から、周面が金属等で構成された一対のロールを用いてカレンダー法に供することがより好ましい。
圧密化処理の条件は、加熱状態で加圧することが好ましい。詳細には、圧密化処理における加圧条件は、繊維集合体を十分に圧密化させて、体積充填率の高い衛生用不織布を得やすくする観点から、プレス法を用いる場合、面圧で表して、好ましくは5MPa以上、より好ましくは7MPa以上である。
また、繊維集合体をフィルム化させずに繊維形状を保ちつつ、得られる衛生用不織布の風合いを良好なものとする観点から、圧密化処理における加圧条件は、プレス法を用いる場合、面圧で表して、好ましくは72MPa以下、より好ましくは32MPa以下とすることができる。
また、カレンダー法を採用したときの加圧条件は、繊維集合体を十分に圧密化させて、体積充填率の高い衛生用不織布を得やすくする観点から、線圧で表して、好ましくは78.4N/cm(8kgf/cm)以上、より好ましくは127.4N/cm(13kgf/cm)以上である。
また、繊維集合体をフィルム化させずに、構成繊維どうしの境界が明瞭となっている繊維形状を保ちつつ、得られる衛生用不織布の風合いを良好なものとする観点から、カレンダー法を採用したときの加圧条件は、線圧で表して、好ましくは686N/cm(70kgf/cm)以下、より好ましくは490N/cm(50kgf/cm)以下である。
また、圧密化処理における加熱温度は、繊維集合体を十分に圧密化させて、体積充填率の高い衛生用不織布を得やすくする観点から、プレス法及びカレンダー法のいずれの場合であっても、好ましくは融点Mp-80℃以上、より好ましくは融点Mp-70℃以上、更に好ましくは融点Mp-60℃以上の範囲とすることができる。
繊維集合体をフィルム化させずに繊維形状を保ちつつ、得られる衛生用不織布の風合いを良好なものとする観点から、プレス法及びカレンダー法のいずれの場合であっても、好ましくは融点Mp以下、より好ましくは融点Mp-20℃以下の範囲とすることができる。
圧密化処理において加熱する場合は、プレス法であれば金属平板を上述の温度範囲に加熱すればよく、カレンダー法であればロールの周面を上述の温度範囲に加熱すればよい。
圧密化処理における加圧時間は、繊維集合体を構成する繊維の繊維形状が保たれ、且つ圧密化可能な条件であれば、適宜設定可能である。
例えば、プレス法を用いた場合、上述した圧力及び温度条件における加圧時間は、一回の圧密化処理当たり、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上とすることができる。
また、プレス法を用いた場合、上述した圧力及び温度条件における加圧時間は、一回の圧密化処理当たり、好ましくは25秒以下、より好ましくは20秒以下とすることができる。
例えば、カレンダー法を用いた場合、上述した圧力及び温度条件における加圧時間は、一回の圧密化処理当たり、好ましくは0.01秒以上、より好ましくは0.04秒以上とすることができる。
また、カレンダー法を用いた場合、上述した圧力及び温度条件における加圧時間は、一回の圧密化処理当たり、好ましくは0.10秒以下、より好ましくは0.08秒以下とすることができる。
以上の条件で圧密化処理を行うことによって、繊維集合体を厚み方向に圧縮して、所定の体積充填率や熱伝導性繊維が占める面積百分率を有する繊維集合体を容易に得ることができる。
特に、上述した圧力及び加熱温度の範囲では、繊維の構成樹脂の溶融が生じにくい状態でありながら、熱処理による形態安定性及び寸法安定性を高めることができるので、製造後も繊維形状を維持しつつ、所定の体積充填率を維持できる。
また、横断面形状が真円形である繊維を用いた場合、圧密化処理によって、繊維の横断面形状を扁平にすることができるので、体積充填率を高めることができるという利点もある。
上述の方法によって得られた繊維集合体は、圧密化処理を経た場合でも、エアスルー不織布である。
また、エアスルー工程及び圧密化工程を経て得られた繊維集合体は、これに対して冷却処理を更に行うことが好ましい(冷却加圧工程)。本工程における冷却処理は、繊維集合体を積極的に冷却しながら、その厚み方向に加圧して圧縮することができる方法を採用することができる。
冷却加圧工程を行うことによって、エアスルー工程及び圧密化工程を経て得られた繊維集合体の構造を急冷固定できるので、熱伝導性繊維が占める面積百分率の差が存在する状態で繊維集合体の構造を維持することができ、また体積充填率が比較的高い領域を維持した状態で構造を固定できる。
冷却加圧工程における冷却処理としては、上述したプレス法又はカレンダー法を採用することができる。冷却処理は、一回のみ行ってもよく、必要に応じて、同一の又は異なる方法で複数回行ってもよい。
製造効率を高める観点から、カレンダー法を採用することが好ましく、冷却を温度ムラなく効率的に行う観点から、周面が平滑であり金属等で構成された一対のロールを用いてカレンダー法に供することがより好ましい。
冷却処理における加圧条件及び加圧時間は、プレス法又はカレンダー法のいずれを採用する場合であっても、上述した圧密化処理における圧力及び時間を採用することができる。
また、冷却処理における冷却温度は、繊維集合体を十分に急冷固化させて、熱伝導性繊維が占める面積百分率や体積充填率が維持された状態の衛生用不織布を得やすくする観点から、プレス法及びカレンダー法のいずれの場合であっても、圧密化処理によって付与された加熱温度よりも低い温度に積極的に冷却するものである。詳細には、冷却温度は、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは23℃以上であり、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下の範囲とすることができる。
冷却の形態としては、プレス法又はカレンダー法で用いる平板やロールを水冷した状態で接触させる方法等が挙げられる。プレス法であれば金属平板を上述の温度範囲に冷却すればよく、カレンダー法であればロールの周面を上述の温度範囲に冷却すればよい。
以上の条件で冷却加圧工程を行うことによって、所定の体積充填率や熱伝導性繊維が占める面積百分率の分布の構造が固定された衛生用不織布を得ることができる。上述の方法によって得られた衛生用不織布は、冷却処理を経た場合でも、エアスルー不織布である。
このように得られた衛生用不織布は、その一方の面側の表面領域が所定の体積充填率及び熱伝導性繊維が占める面積百分率を有する構成となっており、またその表面は平滑となりやすい。
衛生用不織布の厚み方向中央域の厚み方向の断面は、熱伝導性繊維が占める面積百分率が一方の面側の表面領域の厚み方向の断面のそれよりも低く、疎な構造となっている。
衛生用不織布の他方の面は熱風の吹き付け面側であったので、衛生用不織布の他方の面を含む厚み方向の断面は、衛生用不織布の厚み方向中央域の厚み方向の断面と同等の熱伝導性繊維が占める面積百分率であるか、又は、熱伝導性繊維が占める面積百分率が一方の面側の表面領域の厚み方向の断面よりも低く、且つ厚み方向中央域の厚み方向の断面よりも高い構成となっている。
所定の体積充填率及び熱伝導性繊維が占める面積百分率を有する構成を、衛生用不織布の両面における各表面領域の厚み方向の断面に形成する場合には、エアスルー処理を行った中間体の熱風の吹き付け面側をネットコンベアに対向するように反転し、その状態で更にエアスルー処理を行えばよい。この場合であっても、得られる衛生用不織布の厚み方向中央域の厚み方向の断面は、熱伝導性繊維が占める面積百分率が一方の面側の表面領域の厚み方向の断面のそれよりも低く、疎な構造となっている。
以下に、複層構造の衛生用不織布を製造する方法(第2の方法)を説明する。本実施形態に関し、特に説明しない点は、上述した第1の方法に関する実施形態が適宜適用される。
本実施形態では、第1繊維として熱伝導性繊維を含む第1繊維ウエブと、熱伝導性繊維とは異なる第2繊維とを含む第2繊維ウエブとをそれぞれ形成する。これらの繊維ウエブは、上述したカード法等で形成することができる。
本実施形態における好適な態様としては、第1繊維として、融点が異なる2種の熱可塑性樹脂を含む繊維を用いることが好ましく、芯鞘複合繊維を用いることがより好ましい。これによって、繊維形状を維持した状態で、一方の面側の高密度化を達成することができ、冷感を更に高める構成が得られやすくなる。
また第2繊維の好適な態様としては、例えば熱伝導性樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む繊維が挙げられる。
次いで、得られた繊維ウエブに対してエアスルー処理を行い、中間体を含む繊維集合体を得る。中間体及び繊維集合体の形成態様としては、以下の(a)又は(b)の態様が挙げられる。このとき、エアスルー処理において吹き付ける熱風の温度は、最も融点の低い樹脂の融点を上述した融点Mpとして温度を決定することが、繊維の形状を維持して風合いを高められる点で好ましい。
(a)第1繊維ウエブに対してエアスルー処理して、中間体を得る。その後、エアスルー処理を行っていない第2繊維ウエブと、中間体とを積層して、繊維集合体を得る。すなわち、この方法で得られる繊維集合体は、不織布化された繊維シートである中間体と、繊維ウエブとの積層体である。
(b)第1繊維ウエブ及び第2繊維ウエブを積層して、繊維ウエブの積層体とする。そして、該積層体に対してエアスルー処理を施すことによって、複層構造の繊維集合体を得る。この方法で得られる繊維集合体は中間体そのものであり、不織布化された複層構造の繊維シートである。
上述の(a)の場合において、第2繊維ウエブは中間体における熱風の吹き付け面と対向するように積層されて、繊維集合体が形成されることが好ましい。このように積層することで、所定の体積充填率及び熱伝導性繊維が占める面積百分率を有する表面領域が積層体の外面に位置するので、得られる衛生用不織布においても当該表面領域が不織布の外面に位置するように構成できる。
また上述の(b)の場合において、エアスルー処理における熱風の吹き付けは、熱伝導性繊維が存在しない側の繊維ウエブ(すなわち第2繊維ウエブ)に対して吹き付けられるように繊維ウエブの積層体を配することが好ましい。このような方法を採用することによって、熱風の圧力によって、ネットコンベアに対向する側の面では、熱伝導性繊維どうしが熱融着しながら体積充填率が高い表面構造が形成されるとともに、第2繊維ウエブ側は嵩高さが維持されて圧縮変形性に優れた構造を有する衛生用不織布を得ることができる。
このような方法としては、例えば積層体における熱伝導性繊維ウエブが配された側をエアスルー装置のネットコンベアの下面側に配する等して、エアスルー処理を行えばよい。
続いて、上述した(a)又は(b)の繊維集合体に対して、圧密化工程及び冷却加圧工程をこの順で行う。
(a)の場合においては、不織布化された中間体と、これに積層された繊維ウエブとは一体化していない状態であるので、圧密化工程においては、繊維集合体を構成する樹脂のうち最も融点が低い樹脂の融点以上で加熱しながら加圧することが好ましい。
このときの加熱温度は、最も融点の低い樹脂の融点を融点Mp(℃)としたときに、好ましくは融点Mp以上、より好ましくは融点Mp+5℃以上、好ましくは融点Mp+15℃以下、より好ましくは融点Mp+10℃以下である。これによって、中間体と繊維ウエブとが融着により一体化した不織布となる。
圧密化工程における加圧条件、並びに冷却加圧工程における各種の条件は、上述した第1の方法と同様の条件を採用することができる。
(b)の場合においては、繊維集合体は各繊維層が一体化された状態となっているので、第1の方法と同様の条件で圧密化工程及び冷却加圧工程を行うことができる。
エンボスロールにおける温度は、好ましくは融点Mp-40℃以上、より好ましくは融点Mp-35℃以上、更に好ましくは融点-30℃以上の範囲とすることができる。
エンボスロールによる加圧条件は、エンボス部を十分に融着する観点から、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、更に好ましくは1.0MPa以上の範囲とすることができる。
また前記加圧条件は、過度の加圧による穴あきを生じさせない観点から、好ましくは40MPa以下、より好ましくは35MPa以下、更に好ましくは30MPa以下の範囲とすることができる。
目的とする衛生用不織布において、複層構造のものを製造する場合には、例えば、カード法によって形成した熱可塑性樹脂を含む第2繊維ウエブを、熱伝導性繊維のウエブに積層して、繊維ウエブの積層体とする。そして、該積層体に対して、上述した条件で加熱及び加圧による圧密化(熱圧着)を行えばよい。このように製造された衛生用不織布は、スパンボンド不織布である。
以上の工程を経て、本発明の衛生用不織布を得ることができる。この衛生用不織布は、好ましくは、以後の工程で、吸収性物品等の衛生品の構成部材として組み込まれる。
衛生用不織布を吸収性物品等の衛生品の構成部材とする場合、衛生品を製造する工程のうちのいずれかにおいて、上述の方法で製造された衛生用不織布を構成部材の一つとして用い、該衛生用不織布を切断する工程や、該衛生用不織布と衛生品を構成する他の構成部材(例えば吸収体やシート等)とを積層又は接合する等の各種操作を行う工程のうち一つ以上備えて、目的とする吸収性物品等の衛生品を製造することができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、圧密化工程及び冷却加圧工程は、それぞれ独立して、プレス法又はカレンダー法を採用することができる。具体的には、圧密化工程及び冷却加圧工程ともにプレス法を採用してもよく、圧密化工程及び冷却加圧工程ともにカレンダー法を採用してもよく、圧密化工程に一方の方法を採用し且つ冷却加圧工程に他方の方法を採用してもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。表中「-」で示す欄は、非含有又は非測定を意味する。
また以下の説明において、図1~図4のそれぞれにおいて、符号Aは表面領域を示し、符号Bは厚み方向中央域を示し、符号Fは不織布の一方の面を示し、符号Rは不織布の他方の面を示す。
〔実施例1〕
ナイロン6(熱伝導率0.13W/mK、50質量%)を芯とし、HDPE(熱伝導率0.14W/mK、50質量%)を鞘とした芯鞘複合繊維(繊維径17.2μm)を用いた。この芯鞘複合繊維は、熱融着性繊維である。
まず、カード法によって、短繊維の芯鞘複合繊維(繊維長51mm)からなる繊維ウエブを形成した。
次いで、以下の表1に示す坪量となるように調整した芯鞘複合繊維のウエブをエアスルー処理し、繊維集合体を得た。エアスルー処理の条件は、熱風の温度134℃、風速1.0m/秒、繊維ウエブの搬送速度を10m/分とした。
続いて、プレス法により、繊維集合体を加熱しながら加圧処理した。本工程のプレス法の条件は、温度80℃、圧力10MPaにて、15秒間行った。
最後に、プレス法により、加熱加圧処理後の繊維集合体を冷却しながら加圧した。本工程のプレス法の条件は、温度20℃(水冷)、圧力10MPaにて、1秒間行った。
これらの工程を経て、1種の熱伝導性繊維からなり、単層構造の衛生用不織布(坪量40g/m)を得た。この不織布の断面におけるSEM観察像を図1に示す。
〔実施例2〕
実施例1と同様の熱伝導性繊維を用いるとともに、熱伝導性繊維以外の繊維としてPTT樹脂繊維(繊維径27.3μm、繊維長81mm、融点230℃)を用いた。
まず、実施例1と同様に、カード法によって、短繊維の芯鞘複合繊維からなる第1繊維ウエブ(坪量40g/m)を形成した。これとは別に、カード法によって、PTT樹脂繊維からなる第2繊維ウエブ(坪量20g/m)を形成した。これらの繊維ウエブを積層し、積層体とした。
次いで、この積層体をエアスルー処理し、繊維集合体を得た。エアスルー処理は、積層体における第1繊維ウエブが下側に配され、第2繊維ウエブが上側に配されるように導入して行った。すなわち、熱風の吹き付け面は第2繊維ウエブ側とし、第1繊維ウエブはエアスルー装置のネット面に対向するように配した。エアスルー処理の条件は、実施例1と同様にした。
続いて、プレス法により、繊維集合体を加熱しながら加圧処理し、本工程のプレス法の条件は、温度140℃、圧力2MPaにて、1秒間行った。
更に、プレス法により、加熱加圧処理後の繊維集合体を冷却しながら加圧した。本工程のプレス法の条件は、温度20℃(水冷)、圧力10MPaにて、1秒間行った。
これらの工程を経て、熱伝導性繊維を含む繊維層と、熱伝導性繊維以外の繊維であるPTT樹脂繊維を含む層からなる2層構造の衛生用不織布(坪量60g/m)を得た。この不織布の断面におけるSEM観察像を図2に示す。
〔実施例3〕
熱伝導性繊維として、HDPE(熱伝導率0.14W/mK)の単一繊維(繊維径16.5μm)を用いるとともに、熱伝導性繊維以外の繊維として、PET樹脂繊維(繊維径22.7μm、繊維長51mm、融点260℃)を用いた。
まず、カード法によって、短繊維のHDPEの単一繊維からなる第1繊維ウエブ(坪量40g/m)を形成した。これとは別に、カード法によって、PET樹脂繊維からなる第2繊維ウエブ(坪量20g/m)を形成した。
次いで、作製した繊維ウエブのうち、第1繊維ウエブのみをエアスルー処理し、不織布化した中間体を得た。エアスルー処理の条件は、実施例1と同様にした。この中間体は、その下面がエアスルー装置のネット面に対向するように配された面であり、その上面は熱風の吹き付け面である。その後、この中間体の上面に第2繊維ウエブを積層して、シートとウエブとの積層体である繊維集合体を得た。
続いて、プレス法により、繊維集合体を加熱しながら加圧処理した。プレス法の条件は、温度140℃、圧力2MPaにて、1秒間行った。
最後に、プレス法により、加熱加圧処理後の繊維集合体を冷却しながら加圧した。プレス法の条件は、温度20℃(水冷)、圧力2MPaにて、1秒間行った。
これらの工程を経て、熱伝導性繊維を含む繊維層と、熱伝導性繊維以外の繊維であるPET樹脂繊維を含む層からなる2層構造の衛生用不織布(坪量60g/m)を得た。この不織布の断面におけるSEM観察像を図3に示す。
〔比較例1〕
実施例1と同様の熱伝導性繊維を用い、実施例1と同様の条件で繊維ウエブの形成及びエアスルー処理を行い、不織布(坪量60g/m)を得た。本比較例では、圧密化処理及び冷却処理を行わなかった。この不織布の断面におけるSEM観察像を図4に示す。
〔比較例2〕
実施例1と同様の熱伝導性繊維を用い、温度140℃、圧力10MPaにて、5秒間で加熱圧縮し、フィルム化した。本比較例で得られたものは繊維界面が失われたフィルムである。
〔厚みの測定〕
実施例及び比較例の衛生用不織布又はフィルムについて、厚みを測定した。厚みの測定は、測定対象に4.9mN/cm(0.5gf/cm)の荷重を負荷した状態で、レーザー変位計を用いて、5箇所以上測定し、それらの算術平均値を厚み(mm)とする。結果を表1に示す。
〔体積充填率の測定〕
実施例及び比較例の衛生用不織布又はフィルムについて、上述の方法にて、全体の体積充填率(%)を算出した。結果を表1に示す。
〔繊維が占める面積百分率の測定〕
実施例及び比較例の衛生用不織布又はフィルムについて、上述の方法にて、表面領域の厚み方向の断面における繊維が占める面積百分率T1(%)、及び、厚み方向中央域の厚み方向の断面における繊維が占める面積百分率T2(%)をそれぞれ測定、算出した。結果を表1に示す。
〔圧縮変形量の測定〕
実施例及び比較例の衛生用不織布又はフィルムについて、上述の方法にて49mN/cm荷重下での圧縮変形量(mm)を算出した。圧縮変形量の値が大きいほど、柔軟性が高いことを示す。結果を表1に示す。
〔平均摩擦係数MIUの測定方法〕
実施例及び比較例の衛生用不織布又はフィルムについて、平均摩擦係数MIUをKES-FB4-A(カトーテック株式会社製)を使用して下記の方法で測定した。
まず、縦20cm×横10cmの試験片を切り出し、平滑な金属平面の試験台に取り付ける。次いで、試験片の長手方向に沿って、該試験片と接触子とを接触させながら、該接触子を往復移動させる。具体的には、接触子の接触面を49cNの力で試験片の肌当接面に圧着しながら、該試験片を0.1cm/secの一定速度で不織布の縦方向に水平に2cm走査する。この際、試験片には19.6cN/cmの一軸張力が加えられる。接触子は、0.5mm径のピアノ線を20本並べ幅10mmでU字状に曲げたものであり、重錘によって49cNの力で試験片を圧着する。この接触子による前記往復移動の往路及び復路それぞれの摩擦係数を測定し、下記式(II)から平均値を算出して、これを平均摩擦係数MIUとする。下記式(II)において、往路の摩擦係数がMIUMD1であり、復路の摩擦係数がMIUMD2である。
平均摩擦係数MIU={(MIUMD1 +MIUMD2 )/2}1/2 (II)
なお、衛生用品等の製品から不織布を剥がして測定する場合は、コールドスプレーを用いて他部材との接着部位を丁寧に剥がし、不織布の表面の性状を損なわないように試験片を得る。
前記の「縦」及び「横」は、衛生用品で使用される際に、一番長い辺を縦、縦と直交する方向を横とする。縦は人が無意識に触る方向であるため、この方向を測定する。例えばナプキンやおむつなどの吸収性物品の表面シートや外側シートでは、排泄部を中心として腹側と背側を結んだ方向に長い部材を配することが多く、この場合は、その方向が縦である。また、マスクやアイマスクでは顔の目と目を結んだ方向に長い部材を配することが多く、この場合は、その方向が縦である。
また、衛生用品等のサイズによっては、縦又は横の長さが規定の20cm×10cmに満たない場合があるところ、その場合には可能な縦・横の長さのサンプルを採取し、治具等やテープ等を用いて測定時にサンプルが動かないようにして測定する。
このようにして測定された平均摩擦係数MIUはその値が低いほど表面の平滑性が高く、不織布表面が良好な肌触りを有することを意味する。結果を表1に示す。
〔冷感の評価〕
実施例及び比較例の衛生用不織布又はフィルムについて、以下の方法で冷感の評価を行った。まず、20名の専門パネラーに、不織布の表面を手の平で触れさせて、不織布に触れたときの冷感を以下の基準で採点してもらい、その算術平均値を小数点第1位まで求め、冷感の評価値とした。結果を表1に示す。
5点:冷感に非常に優れる。
4点:冷感が良好である。
3点:冷感を知覚できる。
2点:冷感があまり感じられない。
1点:冷感が全く感じられない。
Figure 2023065154000002
表1に示すように、各実施例の衛生用不織布は、比較例のものと比較して、表面領域の厚み方向の断面と厚み方向中央域の厚み方向の断面とで繊維が占める面積百分率に高低差を有する。また、厚み方向中央域の厚み方向の断面においても繊維が占める面積百分に高低差を有する。その結果、肌触りが良好でありながら、柔軟性及び体積充填率がともに高く、冷感をより強く知覚できるものであることが判る。
特に実施例2及び3については、柔軟性、平滑性及び冷感の知覚を高いレベルで兼ね備えたものである。この理由として、PTT樹脂やPET樹脂を含む繊維は熱伝導性繊維と比較して剛性が高いので、繊維間の空隙をより大きくすることができる。また、第1繊維層と比較し、繊維径の大きな繊維を使用することで、繊維間の空隙が効果的に高められている。その結果、不織布の表面領域と厚み方向中央域とで繊維が占める面積百分率に高低差が更に生じやすくなったと考えられる。

Claims (13)

  1. 一方の面と、該面と反対側に位置する他方の面とを有する衛生用不織布であって、
    前記衛生用不織布は、熱伝導率が0.11W/mK以上である熱可塑性樹脂を含有する熱伝導性繊維を構成繊維として含み、
    前記衛生用不織布は、その一方の面の表面から深さ0.05mmまでの表面領域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率が、60%以上である領域を有し、
    前記表面領域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率が、前記衛生用不織布を厚み方向に三等分したときの厚み方向中央域の厚み方向の断面における前記熱伝導性繊維が占める面積百分率よりも高い、衛生用不織布。
  2. 前記表面領域の厚み方向の断面における全構成繊維が占める面積百分率が、60%以上である領域を有し、
    前記表面領域の厚み方向の断面における全構成繊維が占める面積百分率が、前記厚み方向中央域の厚み方向の断面における全構成繊維が占める面積百分率よりも高い、請求項1に記載の衛生用不織布。
  3. 前記構成繊維として熱融着性繊維を含む、請求項1又は2に記載の衛生用不織布。
  4. 前記構成繊維として短繊維を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の衛生用不織布。
  5. 前記表面領域における前記構成繊維の成分に高密度ポリエチレンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の衛生用不織布。
  6. 繊維径での断面形状が扁平状である繊維が前記表面領域に存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の衛生用不織布。
  7. 前記厚み方向中央域において、前記熱伝導性繊維が不均一に存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の衛生用不織布。
  8. 不織布全体の体積充填率が3.5%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の衛生用不織布。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の衛生用不織布を備える、衛生用品。
  10. 請求項1~8のいずれか一項に記載の衛生用不織布を備える、吸収性物品。
  11. 前記衛生用不織布における前記表面領域が存在する側の面が肌対向面を構成するように配されている、請求項10に記載の吸収性物品。
  12. 請求項1~8のいずれか一項に記載の衛生用不織布の製造方法であって、
    熱伝導率が0.11W/mK以上である熱可塑性樹脂を含有する第1繊維を含む第1繊維ウエブを作製し、
    第1繊維ウエブにエアスルー処理を行った中間体を備える繊維集合体を得て、
    前記繊維集合体を一対の平板間又は一対のロール間に導入して、該繊維集合体を加熱しながら加圧する圧密化工程を行い、然る後に、
    加熱及び加圧後の前記繊維集合体を、冷却された一対の平板間又は一対のロール間に導入して、該繊維集合体を冷却しながら加圧する冷却加圧工程を行う、衛生用不織布の製造方法。
  13. 前記第1繊維を含む第1繊維ウエブと、更に第1繊維とは異なる第2繊維を含む第2繊維ウエブとをそれぞれ作製し、
    第1繊維ウエブにエアスルー処理を行った前記中間体に、更にエアスルー処理を行わない第2繊維ウエブを積層して、前記繊維集合体を得るか、又は、
    第1繊維ウエブに、更に第2繊維ウエブを積層した状態で前記エアスルー処理を行って、前記繊維集合体を得て、然る後に、前記圧密化工程を行う、請求項12に記載の製造方法。
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