JP2023063171A - バリア性基材、バリア性積層体及び包装容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】延伸ポリプロピレン基材上に蒸着膜及びバリアコート層が順に形成されたバリア性基材であって、加熱処理後においてもガスバリア性の大きな低下が抑制されたバリア性基材を提供する。【解決手段】ポリプロピレン基材と、蒸着膜と、バリアコート層とを厚さ方向にこの順に備えるバリア性基材であって、ポリプロピレン基材が、延伸処理が施された基材であり、蒸着膜が、無機酸化物から構成されており、バリアコート層が、少なくとも、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、3官能型シラン化合物とから形成された層である、バリア性基材。【選択図】なし

Description

本開示は、バリア性基材、バリア性積層体及び包装容器に関する。
ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからなる基材(以下「ポリエステル基材」ともいう)は、機械的特性、化学的安定性、耐熱性及び透明性に優れると共に、安価である。そのため、従来、ポリエステル基材は、包装容器の作製に使用される積層体を構成する基材として使用されている。
包装容器に充填される内容物によっては、包装容器には酸素バリア性及び水蒸気バリア性などのガスバリア性が要求される。この要求を満たすべく、ポリエステル基材表面に、アルミナ又はシリカなどを含む蒸着膜、さらに必要に応じて蒸着膜上にバリアコート層が形成されている(例えば、特許文献1参照)。近年、ポリエステル基材に代わる基材が模索されており、例えば、ポリオレフィン基材、特にポリプロピレン基材を使用することが検討されている。
特開2005-053223号公報
本開示者らは、従来のポリエステル基材に代えて、延伸処理されたポリプロピレン基材(以下「延伸ポリプロピレン基材」ともいう)を使用することを検討した。検討の結果、本開示者らは、延伸ポリプロピレン基材は、ポリエステル基材と比較して、加熱した際に伸びる傾向にあること(加熱時の伸び率が高い傾向にあること)、したがって包装容器の加熱時等の当該伸びによって、延伸ポリプロピレン基材上に形成された蒸着膜及びバリアコート層が劣化し、ガスバリア性が低下しえることを見出した。
本開示の解決課題の一つは、延伸ポリプロピレン基材上に蒸着膜及びバリアコート層が順に形成されたバリア性基材であって、加熱処理後においてもガスバリア性の大きな低下が抑制されたバリア性基材を提供することにある。
本開示のバリア性基材は、ポリプロピレン基材と、蒸着膜と、バリアコート層とを厚さ方向にこの順に備え、ポリプロピレン基材が、延伸処理が施された基材であり、蒸着膜が、無機酸化物から構成されており、バリアコート層が、少なくとも、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、3官能型シラン化合物とから形成された層である。
本開示によれば、延伸ポリプロピレン基材上に蒸着膜及びバリアコート層が順に形成されたバリア性基材であって、加熱処理後においてもガスバリア性の大きな低下が抑制されたバリア性基材を提供できる。
図1は、バリア性基材の一実施形態を示す模式断面図である。 図2は、バリア性基材の一実施形態を示す模式断面図である。 図3は、蒸着装置の一実施形態を示す概略断面図である。 図4は、蒸着装置の一実施形態を示す概略断面図である。 図5は、蒸着装置の別の一実施形態を示す概略断面図である。 図6は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。 図7は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。 図8は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。 図9は、包装容器の一実施形態を示す正面図である。 図10は、包装容器の一実施形態を示す斜視図である。
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施することが可能であり、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さ及び形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
以下の説明において、登場する各成分(例えば、ポリプロピレン、α-オレフィン、樹脂材料、添加剤及び無機酸化物、その他、各成分)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
[バリア性基材]
本開示のバリア性基材は、ポリプロピレン基材と、蒸着膜と、バリアコート層とを厚さ方向にこの順に備える。バリア性基材は、ポリプロピレン基材と蒸着膜との間に、アンカーコート層をさらに備えてもよい。
図1に示すバリア性基材1は、ポリプロピレン基材10と、蒸着膜12と、バリアコート層14とを厚さ方向にこの順に備える。図2に示すバリア性基材1は、ポリプロピレン基材10と蒸着膜12との間に、アンカーコート層11をさらに備える。
(ポリプロピレン基材)
ポリプロピレン基材は、延伸処理が施された基材である。以下、延伸処理に言及する場合を除き、単に「ポリプロピレン基材」というときは、延伸処理が施されたポリプロピレン基材を意味する。
ポリプロピレン基材は、ポリプロピレンにより構成される。バリア性基材が、ポリプロピレン基材を備えることにより、例えば、バリア性基材を使用して作製される包装容器の耐油性を向上できる。
ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー及びプロピレンブロックコポリマーのいずれでもよく、これらから選択される2種以上の混合物でもよい。
プロピレンホモポリマーとは、プロピレンのみの重合体である。プロピレンランダムコポリマーとは、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィン等とのランダム共重合体である。プロピレンブロックコポリマーとは、プロピレンからなる重合体ブロックと、少なくともプロピレン以外のα-オレフィン等からなる重合体ブロックとを有する共重合体である。後者の重合体ブロックは、プロピレンと、プロピレン以外のα-オレフィンとからなる重合体ブロックでもよい。
α-オレフィンとしては、例えば、炭素数2以上20以下のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及び6-メチル-1-ヘプテンが挙げられる。
ポリプロピレンの中でも、透明性の観点からは、ホモポリマー又はランダムコポリマーを使用することが好ましい。包装容器の剛性及び耐熱性を重視する場合は、ホモポリマーを使用することが好ましい。包装容器の耐衝撃性を重視する場合は、ランダムコポリマーを使用することが好ましい。
ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性及び加工適性という観点から、一実施形態において、0.1g/10分以上50g/10分以下でもよく、0.3g/10分以上30g/10分以下でもよい。ポリプロピレンのMFRは、ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
ポリプロピレンとしては、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクル又はケミカルリサイクルされたポリプロピレンを使用してもよい。
ポリプロピレン基材におけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上である。
ポリプロピレン基材は、ポリプロピレン以外の樹脂材料を含有してもよい。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステル及びアイオノマー樹脂が挙げられる。
ポリプロピレン基材は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料及び改質用樹脂が挙げられる。
ポリプロピレン基材は、延伸処理が施された基材である。これにより、例えば、バリア性基材の耐熱性、耐衝撃性、耐水性及び寸法安定性を向上できる。このようなバリア性基材を備えるバリア性積層体は、例えば、ボイル処理又はレトルト処理がなされる包装容器を構成する包装材料として好適である。
延伸処理は、1軸延伸でもよく、2軸延伸でもよい。一実施形態において、ポリプロピレン基材は、2軸延伸ポリプロピレン基材である。
縦方向(基材の流れ方向、MD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上15倍以下、より好ましくは5倍以上13倍以下である。横方向(MD方向に対して垂直な方向、TD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上15倍以下、より好ましくは5倍以上13倍以下である。延伸倍率を2倍以上とすることにより、ポリプロピレン基材の強度及び耐熱性をより向上でき、また、ポリプロピレン基材への印刷適性を向上できる。ポリプロピレン基材の破断限界という観点からは、延伸倍率は15倍以下であることが好ましい。
ポリプロピレン基材は、加熱処理を受けることで、伸びる傾向にある。例えば基材のMD方向及びTD方向の伸び率(%)を、JIS K7197に準拠した熱機械分析(TMA)法により測定する。30℃から160℃に昇温させた際のポリプロピレン基材の伸び率の最大値は、MD方向及びTD方向それぞれ独立に、例えば0.2%以上1.5%以下であり、特にMD方向では、例えば0.3%以上1.5%以下、又は0.5%以上1.5%以下である。これに対して、同条件下におけるポリエチレンテレフタレートフィルムの伸び率の最大値は、0.1%程度である。
包装容器は、例えば、ボイル処理や、より高温のレトルト殺菌処理を受けることがある。ポリプロピレン基材を備える包装容器にこのような処理を行うと、上述した伸びの発生により、ポリプロピレン基材上に形成された蒸着膜及びバリアコート層が劣化し、ガスバリア性が低下することがある。この点は、バリアコート層形成時の加熱処理においても発生しうる。しかしながら、本開示のバリア性基材においては、蒸着膜上に特定のバリアコート層を設けていることから、このような蒸着膜及びバリアコート層の劣化、したがってガスバリア性の低下を抑制できる。
ポリプロピレン基材には、一実施形態において、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、ポリプロピレン基材と他の層との密着性を向上できる。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス及び/又は窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理;並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
ポリプロピレン基材の表面に、易接着層を設けてもよい。
ポリプロピレン基材は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
ポリプロピレン基材の厚さは、好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上50μm以下、さらに好ましくは15μm以上25μm以下である。厚さが下限値以上であると、例えば、バリア性基材の強度及び耐熱性をより向上できる。厚さが上限値以下であると、例えば、バリア性基材の加工適性をより向上できる。
バリア性基材は、ポリプロピレン基材の表面に印刷層を有してもよい。印刷層に形成される画像は、特に限定されず、文字、柄、記号及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。印刷層形成は、バイオマス由来のインキを用いて行うこともできる。これにより、環境負荷をより低減できる。
印刷層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法及びフレキソ印刷法などの従来公知の印刷法が挙げられる。これらの中でも、環境負荷低減という観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
(アンカーコート層)
本開示のバリア性基材は、一実施形態において、ポリプロピレン基材と無機酸化物蒸着膜との間に、アンカーコート層を備える。これにより、ポリプロピレン基材と無機酸化物蒸着膜との密着強度が高められ、また、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層からなる無機酸化物蒸着膜が得られる。
したがって、高いガスバリア性が得られ、且つ、フィルムの変形や屈曲に伴う無機酸化物蒸着膜及びバリアコート層の破断、並びにそれによるガスバリア性の低下を抑制できる。アンカーコート層を設けることにより、ボイル処理及びレトルト殺菌処理にも耐え得る耐熱性、耐油性に優れるバリア性基材を得ることができる。
アンカーコート層を形成するためのアンカーコート剤は、一実施形態において、官能基含有(メタ)アクリル樹脂と、硬化剤としてのイソシアネート化合物と、シランカップリング剤とを含有する。
官能基含有(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、カルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂、エポキシ基含有(メタ)アクリル樹脂、及びアミノ基含有(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。これらの中でも、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂は、反応速度の制御が容易であるため、特に好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂は、一実施形態において、中性モノマーと、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとから製造される。
中性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、スチレン、ビニルトルエン及び酢酸ビニルが挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂以外の官能基含有(メタ)アクリル樹脂は、一実施形態において、上記中性モノマーと、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びイタコン酸などのカルボキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;又は(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどの含窒素モノマーとから製造できる。
以下、主として水酸基含有(メタ)アクリル樹脂を用いる場合について説明する。
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50℃以上200℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下である。Tgが50℃以上であると、例えば、ブロッキングを抑制できる。Tgが200℃以下であると、例えば、硬化性に優れる。Tgは、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる。
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量は、好ましくは10,000以上100,000以下である。数平均分子量が10,000以上であると、例えば、ブロッキングを抑制できる。数平均分子量が100,000以下であると、例えば、塗工適性に優れる。数平均分子量は、JIS K7252-1(2008)に準拠したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリスチレン換算値である。
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂の水酸基価は、好ましくは20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である。水酸基価が20mgKOH/g以上であると、例えば、層間密着性に優れ、ガスバリア性も向上できる。水酸基価は、JIS K0070に準拠して測定される。
硬化剤としてのイソシアネート化合物は、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂と反応してウレタン結合を形成する化合物であって、イソシアネート硬化剤として知られる任意の化合物である。例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及び4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートモノマー;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートモノマー;並びにこれらの重合体又は誘導体が挙げられる。
シランカップリング剤は、無機物と反応する加水分解基と、有機物と反応する有機官能基との両方を一分子中にもつ有機ケイ素化合物である。無機物と反応する加水分解基としては、例えば、メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基並びにクロロ基が挙げられる。有機物と反応する有機官能基としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂中の水酸基又はイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基が好ましく、例えば、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基及びメルカプト基が挙げられ、また、ビニル基及びメタクリルオキシ基などであってもよい。
上記有機ケイ素化合物は、無機物及び有機物のいずれとも反応しない、アルキル基やフェニル基を有してもよい。上記有機ケイ素化合物を、有機官能基を有しないケイ素化合物、例えば加水分解基のみを有するアルコキシシランのような化合物と混合してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂を溶解する溶剤としては、アンカーコート剤の塗工時の流動性を保って平滑なアンカーコート層を与えることができる、任意の溶剤を使用できる。このような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール及びイソブチルアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル及び酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;2-ブトキシエタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤;トルエン、キシレン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤が挙げられる。
アンカーコート剤における、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂中の水酸基に対する、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル比は、好ましくは0.3以上3.0以下である。これにより、例えば、硬化性及び耐ブロッキング性を向上できる。
アンカーコート剤における、シランカップリング剤の含有量は、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂の固形分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上80質量部以下である。これにより、例えば、層間密着性及び耐ブロッキングを向上できる。
例えば、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、イソシアネート化合物及びシランカップリング剤を、任意の配合比で混合したアンカーコート剤を調製し、これをポリプロピレン基材上にコーティングして、アンカーコート層を形成する。アンカーコート剤は、例えば、シランカップリング剤と水酸基含有(メタ)アクリル樹脂とを混合し、溶剤を加え、任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合することにより調製でき、又は予めシランカップリング剤を溶剤中に混合しておき、その後、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂及びイソシアネート化合物を任意の順序で混合することにより調製できる。
アンカーコート層は、アンカーコート剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート及びスプレーコート等の公知のコーティング法でコーティングし、溶剤又は希釈剤等を乾燥除去し、硬化させることにより、形成できる。
アンカーコート層の厚さは、好ましくは0.02μm以上5μm以下、より好ましくは0.05μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上1μm以下、よりさらに好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。厚さが下限値以上であると、例えば、蒸着膜の密着性をより向上でき、ガスバリア性をより向上でき、また、包装容器のラミネート強度をより向上できる。厚さが上限値以下であると、例えば、基材の加工適性及び包装容器のリサイクル適性をより向上できる。
(蒸着膜)
本開示のバリア性基材は、無機酸化物から構成される蒸着膜を備える。バリア性基材は、一実施形態において、アンカーコート層上に蒸着膜を備える。これにより、バリア性基材のガスバリア性、具体的には、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上できる。バリア性基材を用いて作製した包装容器は、包装容器内に充填された内容物の質量減少を抑えることができる。
無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化珪素(シリカ)、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム及び酸化炭化珪素(炭素含有酸化珪素)が挙げられる。これらの中でも、シリカ、酸化炭化珪素及びアルミナが好ましく、酸化炭化珪素がより好ましい。
一実施形態において、蒸着膜形成後のエージング処理が必要ないため、無機酸化物としては、シリカがより好ましい。一実施形態において、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できることから、無機酸化物としては、炭素含有酸化珪素がより好ましい。
蒸着膜の厚さは、好ましくは1nm以上150nm以下、より好ましくは5nm以上60nm以下、さらに好ましくは10nm以上40nm以下である。厚さが下限値以上であると、例えば、バリア性基材の酸素バリア性及び水蒸気バリア性をより向上できる。厚さが上限値以下であると、例えば、蒸着膜におけるクラックの発生を抑制でき、また、包装容器のリサイクル適性を向上できる。
蒸着膜には、一実施形態において、上記表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、蒸着膜と隣接する層との密着性を向上できる。
蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)が挙げられる。
蒸着膜は、1回の蒸着工程により形成される単層でもよく、複数回の蒸着工程により形成される多層でもよい。蒸着膜が多層である場合、各層は同一の無機酸化物から構成されてもよく、異なる無機酸化物から構成されてもよい。各層は、同一の方法により形成してもよく、異なる方法により形成してもよい。
PVD法による蒸着膜の形成方法に使用される装置として、プラズマアシスト付きの真空成膜装置を使用できる。プラズマアシスト付きの真空成膜装置を使用した蒸着膜の成膜方法の一実施形態を以下に記載する。
一実施形態において、真空成膜装置は、図3及び図4に示すように、真空容器A、巻出し部B、成膜用ドラムC、巻取り部D、搬送ロールE、蒸発源F、反応ガス供給部G、防着箱H、蒸着材料I及びプラズマガンJを備える。図3は、真空成膜装置のXZ平面方向の概略断面図である。図4は、真空成膜装置のXY平面方向の概略断面図である。
図3に示すように、真空容器A内の上部に、成膜用ドラムC法に巻き取られている基材Sが、蒸着膜の形成予定面が下向きとなるように配置されており、真空容器A内の成膜用ドラムCより下に、電気的に接地された防着箱Hが配置されている。防着箱Hの底面に、蒸発源Fが配置されている。蒸発源Fの上面と一定の間隔を空けて対向する位置に、成膜用ドラムCに巻き取られた基材Sが位置するように、真空容器A内に成膜用ドラムCが配置されている。巻出し部Bと成膜用ドラムCとの間、及び成膜用ドラムCと巻取り部Dとの間に、搬送ロールEが配置されている。真空容器Aは、図示せぬ真空ポンプと連結している。蒸発源Fは、蒸着材料Iを保持し、図示せぬ加熱装置を備える。反応ガス供給部Gは、蒸発した蒸着材料Iと反応する反応ガス(酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン及びこれらの混合ガスなど)を供給する部位である。
蒸発源Fから加熱され、蒸発した蒸着材料Iは、基材Sに向けて照射され、これと同時に、プラズマガンJからも基材Sに向けてプラズマが照射され、基材S上に蒸着膜が形成される。
上記成膜方法の詳細は、特開2011-214089号公報に開示されている。
プラズマ化学気相成長法に使用されるプラズマ発生装置としては、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマなどの発生装置を使用できる。2室以上の成膜室を有する装置を使用してもよい。このような装置は、真空ポンプを備え、各成膜室を真空に保持できることが好ましい。
各成膜室における真空度は、1×10~1×10-6Paであることが好ましい。
プラズマ発生装置を使用した蒸着膜の成膜方法の一実施形態を以下に記載する。
基材を成膜室へ送り出し、補助ロールを介して所定の速度で冷却・電極ドラム周面上に搬送する。次いで、ガス供給装置から、成膜室内へ、無機酸化物を含む成膜用モノマーガス、酸素ガス及び不活性ガスなどを含む混合ガス組成物を供給し、基材上に、グロー放電によりプラズマを発生させ、これを照射して、基材上に無機酸化物を含む蒸着膜を形成する。
上記成膜方法の詳細は、特開2012-076292号公報に開示されている。
図5は、CVD法に使用されるプラズマ化学気相成長装置を示す概略構成図である。
一実施形態において、プラズマ化学気相成長装置は、図5に示すように、真空容器A1内に配置された巻出し部B1から、基材Sを繰り出し、基材Sを、搬送ロールE1を介して所定の速度で冷却・電極ドラムC1周面上に搬送する。反応ガス供給部G1から酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン及びこれらの混合ガスを供給し、原料ガス供給部I1から成膜用モノマーガスなどを供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調製しながら原料供給ノズルH1を通して真空容器A1内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、冷却・電極ドラムC1周面上に搬送された基材S上に、グロー放電プラズマF1によってプラズマを発生させ、これを照射して、基材S上に蒸着膜を形成する。その際に、冷却・電極ドラムC1は、真空容器A1の外に配置されている電源K1から所定の電力が印加されており、冷却・電極ドラムC1の近傍には、マグネットJ1を配置してプラズマの発生を促進している。次いで、蒸着膜を形成した後、基材Sは、所定の巻き取りスピードで搬送ロールE1を介して巻取り部D1に巻き取られる。図5中、L1は、真空ポンプを表す。
蒸着膜の形成方法に使用される装置として、プラズマ前処理室及び成膜室を備える、連続蒸着膜成膜装置を使用できる。該装置を使用した蒸着膜の成膜方法の一実施形態を以下に記載する。
プラズマ前処理室において、プラズマ供給ノズルから、基材にプラズマが照射される。次いで、成膜室において、プラズマ処理された基材上に、蒸着膜が成膜される。
上記成膜方法の詳細は、国際公開第2019/087960号に開示されている。
バリア性基材における蒸着膜は、CVD法により形成された蒸着膜であることが好ましく、CVD法により形成された炭素含有酸化珪素蒸着膜であることがより好ましい。これにより、バリア性基材を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。
炭素含有酸化珪素蒸着膜は、珪素、酸素及び炭素を含む。
炭素含有酸化珪素蒸着膜の一実施形態において、炭素の割合Cは、珪素、酸素及び炭素の3元素の合計100%に対して、好ましくは3%以上50%以下、より好ましくは5%以上40%以下、さらに好ましくは10%以上35%以下である。炭素の割合Cを上記範囲とすることにより、例えば、バリア性基材を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。本明細書において、各元素の割合は、モル基準である。
炭素含有酸化珪素蒸着膜の一実施形態において、珪素の割合Siは、珪素、酸素及び炭素の3元素の合計100%に対して、好ましくは1%以上45%以下、より好ましくは3%以上38%以下、さらに好ましくは8%以上33%以下である。酸素の割合Oは、珪素、酸素及び炭素の3元素の合計100%に対して、好ましくは10%以上70%以下、より好ましくは20%以上65%以下、さらに好ましくは25%以上60%以下である。珪素の割合Si及び酸素の割合Oを上記範囲とすることにより、例えば、バリア性基材を屈曲させてもガスバリア性の低下をより抑制できる。
炭素含有酸化珪素蒸着膜の一実施形態において、酸素の割合Oは、炭素の割合Cよりも高いことが好ましく、珪素の割合Siは、炭素の割合Cよりも低いことが好ましい。酸素の割合Oは、珪素の割合Siよりも高いことが好ましい、すなわち、各割合は、割合O、割合C、割合Siの順に低くなることが好ましい。これにより、例えば、バリア性基材を屈曲させてもガスバリア性の低下をより抑制できる。
炭素含有酸化珪素蒸着膜における割合C、割合Si及び割合Oは、X線光電子分光法(XPS)により、以下の測定条件のナロースキャン分析によって測定できる。
(測定条件)
使用機器:「ESCA-3400」(Kratos製)
[1]スペクトル採取条件
入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)
X線出力:150W(10kV・15mA)
X線走査面積(測定領域):約6mmφ
光電子取込角度:90度
[2]イオンスパッタ条件
イオン種:Ar
加速電圧:0.2(kV)
エミッション電流:20(mA)
etch範囲:10mmφ
イオンスパッタ時間:30秒で実施し、スペクトルを採取
(バリアコート層)
本開示のバリア性基材は、蒸着膜上に、バリアコート層をさらに備える。すなわち、バリア性基材は、蒸着膜におけるポリプロピレン基材側の面とは反対側の面上に、バリアコート層をさらに備える。これにより、例えば、バリア性基材の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上できる。
バリアコート層は、少なくとも、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、3官能型シラン化合物とから形成された層である。一実施形態において、バリアコート層は、少なくとも、金属アルコキシドに由来する構造と、水溶性高分子に由来する構造と、3官能型シラン化合物に由来する構造とを含む。
一実施形態において、バリアコート層は、金属アルコキシドの加水分解生成物及び水溶性高分子を含み、さらに、3官能型シラン化合物の加水分解生成物、及び/又は金属アルコキシドと3官能型シラン化合物との加水分解生成物を含む組成物の硬化膜である。水溶性高分子は、金属アルコキシド及び/又は3官能型シラン化合物と反応していてもよい。
本開示において、上記特定組成のバリアコート層を形成することにより、バリア性基材が加熱処理を受けた場合においてもガスバリア性の低下を抑制できる。この理由は定かではないが、本開示者らは以下のように推測している。バリアコート層の耐熱性を挙げるためには、水溶性高分子等による有機成分に対して、テトラアルコキシシラン等による無機成分の割合を増やすことが考えられる。しかしながら、ポリプロピレン基材は加熱処理を受けると延びる傾向にあるので、無機成分の割合を増やすと、バリアコート層にクラック等が発生し、蒸着膜も劣化する傾向にある。ここで、3官能型シラン化合物を用いると、該化合物のうちケイ素の3本の手が無機成分の硬化系に参加でき、1本の手が無機成分の硬化系に参加せず残ることから、形成されるバリアコート層が柔軟になり、このようなクラック等の発生を抑制できるとともに、無機成分の割合を増やすことができ、耐熱性を向上できる。したがって、バリアコート層及び蒸着膜の劣化の抑制と、耐熱性の向上とを両立できる。2官能型シラン化合物の場合は、バリアコート層が充分に緻密にならず、耐熱性又はガスバリア性の向上が充分ではない傾向にある。なお、以上の説明は推測であって、何ら本開示を限定しない。
金属アルコキシドは、例えば、式(1)で表される。
1 nM(OR2m (1)
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1以上8以下の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す。ただし、金属アルコキシドからは、3官能型シラン化合物を除く。したがって、式(1)中、Mが珪素であり、nが1であり、mが3である場合を除く。
1及びR2における有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基及びn-オクチル基等の炭素数1以上8以下のアルキル基が挙げられる。
金属原子Mは、例えば、珪素、ジルコニウム、チタン又はアルミニウムである。
金属アルコキシドの中でも、テトラアルコキシランが好ましい。テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシランが挙げられる。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体等の水酸基含有高分子が挙げられる。酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐水性及び耐候性などの所望の物性に応じて、ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体のいずれか一方を用いてもよく、両者を併用してもよく、また、ポリビニルアルコールを用いて得られるバリアコート層及びエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いて得られるバリアコート層を積層してもよい。
水溶性高分子の平均重合度は、例えば500以上5,000以下でもよく、1,000以上4,000以下でもよい。水溶性高分子のケン化度は、例えば80モル%以上でもよく、90モル%以上でもよく、95モル%以上でもよい。これらの物性は、一実施形態において、JIS K6726に準拠して測定できる。
バリアコート層の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子との比(Si/C)が、一実施形態において、2.50以下でもよく、0.50以上2.20以下でもよく、0.90以上2.00以下でもよい。上記比が上限値以下であると、例えば、バリア性基材を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。上記比が下限値以上であると、例えば、バリア性積層体を用いて包装容器を作製する際に、ヒートシール等の加熱を行ってもガスバリア性の低下を抑制できる。
珪素原子と炭素原子との比の上記範囲は、水溶性高分子に対する金属アルコキシド及び3官能型シラン化合物の使用量を適宜調整することにより達成できる。本明細書において、珪素原子と炭素原子との比は、モル基準である。
X線光電子分光法(XPS)による珪素原子と炭素原子との比は、以下の測定条件のナロースキャン分析によって測定できる。
(測定条件)
使用機器:「ESCA-3400」(Kratos製)
[1]スペクトル採取条件
入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)
X線出力:150W(10kV・15mA)
X線走査面積(測定領域):約6mmφ
光電子取込角度:90度
[2]イオンスパッタ条件
イオン種:Ar
加速電圧:0.2(kV)
エミッション電流:20(mA)
etch範囲:10mmφ
イオンスパッタ時間:30秒+30秒+60秒(トータル120秒)で実施し、
スペクトルを採取
本開示において、3官能型シラン化合物とは、-SiR3で表される基を1つ有する化合物を意味する。なお、上述したテトラアルコキシランは、3官能型シラン化合物には該当しない。Rは、それぞれ独立に、アルコキシ基、アセトキシ基又はハロゲン原子であり、好ましくはアルコキシ基である。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等の炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられ、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子が挙げられる。-SiR3で表される基は、好ましくは、トリメトキシシリル基及びトリエトキシシリル等のトリアルコキシシリル基、並びにトリクロロシリル基である。
3官能型シラン化合物としては、例えば、3官能型シランカップリング剤、アルキルトリアルコキシシラン、アリールトリアルコキシシラン及びハロゲン化アルキルトリアルコキシシランが挙げられる。
3官能型シランカップリング剤は、上記-SiR3で表される基と、有機物と反応する有機官能基との両方を一分子中にもつ有機ケイ素化合物である。有機物と反応する有機官能基としては、例えば、例えば、ビニル基、メタクリルオキシ基、アクリルオキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基、ウレイド基、シアノ基及びエステル基が挙げられる。
アルキルトリアルコキシシラン、アリールトリアルコキシシラン及びハロゲン化アルキルトリアルコキシシランは、例えば、R1-SiR3で表される化合物である。Rは、それぞれ独立に上記アルコキシ基である。R1は、アルキル基、アリール基又はハロゲン化アルキル基である。アルキル基及びハロゲン化アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下である。アリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば塩化アルキル基及びフッ化アルキル基が挙げられる。
3官能型シランカップリング剤は、例えば、R2-SiR3で表される化合物である。Rは、それぞれ独立に、アルコキシ基、アセトキシ基又はハロゲン原子である。R2は、上記有機官能基、又は上記有機官能基を有する有機基である。3官能型シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、及び3-(トリエトキシシリル)プロピオン酸エチルが挙げられる。
3官能型シランカップリング剤の中でも、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、及び3-(トリエトキシシリル)プロピオン酸エチルが好ましい。
アルキルトリアルコキシシラン、アリールトリアルコキシシラン及びハロゲン化アルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、及びトリフルオロプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
アルキルトリアルコキシシラン、アリールトリアルコキシシラン及びハロゲン化アルキルトリアルコキシシランの中でも、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、及びトリフルオロプロピルトリメトキシシランが好ましい。
バリアコート層は、例えば、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、3官能型シラン化合物とを混合し、必要に応じて水、有機溶剤及びゾルゲル法触媒を添加して得られたガスバリア性組成物(バリアコート剤)を、蒸着膜上に塗布し乾燥することにより形成される。バリアコート層は、上記金属アルコキシド等がゾルゲル法によって加水分解及び重縮合された加水分解重縮合物を含む。このようなバリアコート層を蒸着膜上に設けることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に抑制できる。
ガスバリア性組成物における水溶性高分子の使用量は、金属アルコキシド100質量部に対して、好ましくは1質量部以上500質量部以下、より好ましくは2質量部以上200質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上100質量部以下、よりさらに好ましくは5質量部以上50質量部以下である。
ガスバリア性組成物における3官能型シラン化合物の使用量は、金属アルコキシド100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは1質量部以上15質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上5質量部以下である。
ガスバリア性組成物は、金属アルコキシド1モルに対して、好ましくは0.1モル以上100モル以下、より好ましくは0.5モル以上60モル以下の割合の水を含んでもよい。水の含有量を下限値以上とすることにより、例えば、バリア性基材の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上できる。水の含有量を上限値以下とすることにより、例えば、加水分解反応を速やかに行うことができる。
ガスバリア性組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びn-ブチルアルコールが挙げられる。
ゾルゲル法触媒としては、酸又はアミン系化合物が好ましい。
酸としては、例えば、硫酸、塩酸及び硝酸等の鉱酸;並びに酢酸及び酒石酸等の有機酸が挙げられる。酸の使用量は、金属アルコキシド及び3官能型シラン化合物のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量1モルに対して、好ましくは0.001モル以上0.05モル以下である。
アミン系化合物としては、水に実質的に不溶であり、且つ有機溶剤に可溶な第3級アミンが好適であり、例えば、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びトリペンチルアミンが挙げられる。アミン系化合物の使用量は、金属アルコキシドと3官能型シラン化合物との合計量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上1.0質量部以下、より好ましくは0.03質量部以上0.3質量部以下である。
ガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコート及びアプリケータ等の塗布手段が挙げられる。
バリアコート層における無機成分と有機成分との質量比(無機成分/有機成分)は、一実施形態において、1.5以上5.0以下でもよく、2.0以上5.0以下でもよく、2.5以上4.5以下でもよい。これにより、例えば、バリアコート層の耐熱性を向上できる。無機成分とは、例えば、金属アルコキシドに由来するSiO2換算の無機部であり、有機成分とは、例えば、水溶性高分子に由来する成分である。
以下、バリアコート層の形成方法の一実施形態について説明する。
金属アルコキシド、水溶性高分子、3官能型シラン化合物、ゾルゲル法触媒、水、及び有機溶剤等を混合して、ガスバリア性組成物を調製する。組成物中では、次第に重縮合反応が進行する。蒸着膜上に、常法により、上記組成物を塗布し乾燥する。この乾燥により、金属アルコキシド、3官能型シラン化合物及び水溶性高分子の重縮合反応がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。上記操作を繰り返して、複数の複合ポリマー層を積層してもよい。例えば、塗布された上記組成物を好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは60℃以上130℃以下、さらに好ましくは80℃以上120℃以下の温度で、1秒以上10分以下加熱する。これにより、バリアコート層を形成できる。
バリアコート層の厚さは、好ましくは0.01μm以上100μm以下、より好ましくは0.1μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上5μm以下である。これにより、例えば、ガスバリア性を向上でき、蒸着膜におけるクラックの発生を抑制でき、また、包装容器のリサイクル適性を向上できる。
[バリア性積層体]
本開示のバリア性積層体は、本開示のバリア性基材と、シーラント層とを厚さ方向にこの順に備える。本開示のバリア性積層体は、一実施形態において、第1の基材と、第2の基材と、シーラント層とを厚さ方向にこの順に備え、第1の基材及び第2の基材のいずれか一方が、本開示のバリア性基材であり、第1の基材及び第2の基材の他方が、ポリプロピレンにより構成される延伸基材である。第1の基材及び第2の基材のいずれも、本開示のバリア性基材であってもよい。
図6~図8は、バリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図6に示すバリア性積層体2は、バリア性基材1と、接着層20と、シーラント層30とを厚さ方向にこの順に備える。バリア性基材1は、ポリプロピレン基材10と、蒸着膜12と、バリアコート層14とを備える。この例では、バリアコート層14は、接着層20と接する。
図7に示すバリア性積層体2は、第1の基材としての延伸基材3と、接着層20Aと、第2の基材としてのバリア性基材1と、接着層20Bと、シーラント層30とを厚さ方向にこの順に備える。この例では、バリアコート層14は、接着層20Aと接し、ポリプロピレン基材10は、接着層20Bと接する。
図8に示すバリア性積層体2は、第1の基材としてのバリア性基材1と、接着層20Aと、第2の基材としての延伸基材3と、接着層20Bと、シーラント層30とを厚さ方向にこの順に備える。この例では、ポリプロピレン基材10は、バリア性積層体2の最外層を構成し、バリアコート層14は、接着層20Aと接する。
図6~図8に示すバリア性積層体2は、ポリプロピレン基材10と蒸着膜12との間に、アンカーコート層11をさらに備えてもよい。
本開示のバリア性積層体は、一実施形態において、バリア性基材及び延伸基材等の基材上に形成された印刷層をさらに備えてもよい。
本開示のバリア性積層体は、一実施形態において、第1の基材が、ポリプロピレンにより構成される延伸基材であり、第2の基材が、本開示のバリア性基材である(図7参照)。この実施形態では、バリア性積層体は、ポリプロピレンにより構成される延伸基材と、バリア性基材と、シーラント層とを厚さ方向にこの順に備える。このような構成のバリア性積層体は、熱処理等を受けた際に蒸着膜が適切に保護され、さらに高いガスバリア性を示す。
本開示において「ポリプロピレンにより構成されるAAA」という記載は、当該AAAの主成分がポリプロピレンであることを意味するが、当該AAAがポリプロピレンのみからなる構成に限定されない。当該AAAは、ポリプロピレン以外の他の成分を含有してもよい。具体的には、当該AAAにおけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上である。
<シーラント層>
本開示のバリア性積層体は、シーラント層を備える。
シーラント層は、一実施形態において、熱によって相互に融着し得る樹脂材料を含有する。熱によって相互に融着し得る樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィンが挙げられ、具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、メチルペンテンポリマー、並びに環状オレフィンコポリマーが挙げられる。
熱によって相互に融着し得る樹脂材料としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマー樹脂、ポリオレフィンを(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル及び(メタ)アクリル樹脂も挙げられる。
シーラント層は、一実施形態において、ポリプロピレンにより構成される。この実施形態では、シーラント層は、ポリプロピレン基材と同種の樹脂材料、すなわち、ポリプロピレンにより構成される。これにより、包装容器のモノマテリアル化を図ることができる。使用済みの包装容器を回収した後、基材とシーラント層とを分離する必要がなく、包装容器のリサイクル適性を向上できる。シーラント層をポリプロピレンにより構成することにより、バリア性積層体を用いて作製される包装容器の耐油性も向上できる。
シーラント層におけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上である。これにより、例えば、包装容器のリサイクル適性を向上できる。
シーラント層をポリプロピレンにより構成した場合において、バリア性積層体に含まれる樹脂材料の総量に対するポリプロピレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは88質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。これにより、例えば、バリア性積層体を用いてモノマテリアル化した包装容器を作製でき、包装容器のリサイクル適性を向上できる。
ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体等のプロピレンランダムコポリマー、及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のプロピレンブロックコポリマーが挙げられる。α-オレフィンの詳細は、上述したとおりである。ヒートシール性という観点から、ポリプロピレンの密度は、例えば0.88g/cm3以上0.92g/cm3以下である。密度は、JIS K7112、特にD法(密度勾配管法、23℃)、に準拠して測定される。環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のポリプロピレン及び/又はリサイクルされたポリプロピレンを用いてもよい。
シーラント層は、上記添加剤を含有してもよい。
シーラント層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
シーラント層の厚さは、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは20μm以上150μm以下である。厚さが下限値以上であると、例えば、バリア性積層体を備える包装容器のラミネート強度をより向上できる。厚さが上限値以下であると、例えば、バリア性積層体の加工適性をより向上できる。バリア性積層体からパウチ(特にレトルトパウチ)を作製する場合は、シーラント層の厚さは、さらに好ましくは30μm以上100μm以下である。
シーラント層は、ヒートシール性という観点から、好ましくは未延伸の樹脂フィルムであり、より好ましくは未延伸のポリプロピレンフィルムである。上記樹脂フィルムは、例えば、キャスト法、Tダイ法又はインフレーション法などを利用することにより作製できる。
例えば、シーラント層に対応する未延伸の樹脂フィルムを必要に応じて接着層を介してバリア性基材上に積層してもよく、熱によって相互に融着し得る樹脂材料をバリア性基材上に溶融押出しすることによりシーラント層を形成してもよい。接着層としては、例えば、以下の接着層が挙げられる。
<延伸基材>
延伸基材は、ポリプロピレンにより構成される。延伸基材としては、上述したポリプロピレン基材を用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。
<接着層>
バリア性積層体は、一実施形態において、バリア性基材とシーラント層との間に、接着層を備える。バリア性積層体は、一実施形態において、第1の基材と第2の基材との間に、第1の接着層を備える。バリア性積層体は、一実施形態において、第2の基材とシーラント層との間に、第2の接着層を備える。これにより、バリア性基材とシーラント層との密着性、第1の基材と第2の基材との密着性、及び第2の基材とシーラント層との密着性を向上できる。
接着層は、接着剤により構成される、接着剤は、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、及び非硬化型の接着剤のいずれでもよい。接着剤は、無溶剤型の接着剤でもよく、溶剤型の接着剤でもよい。
無溶剤型の接着剤、すなわちノンソルベントラミネート接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤及びウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤がより好ましい。
溶剤型の接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤及びウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤がより好ましい。
接着層の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下、好ましくは0.2μm以上8μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上6μm以下である。
[包装容器]
本開示のバリア性積層体は、包装材料用途に好適に使用できる。
包装材料は、包装容器を作製するために使用される。包装材料は、本開示のバリア性積層体を備える。本開示のバリア性積層体を備える包装材料を少なくとも用いることにより、包装容器を作製できる。
本開示の包装容器は、本開示のバリア性積層体(以下、単に「積層体」ともいう)を備える。包装容器としては、例えば、包装袋、チューブ容器、及び蓋付き容器が挙げられる。蓋付き容器は、収容部を有する容器本体と、収容部を封止するように容器本体に接合(ヒートシール)された蓋材とを備える。
本開示の包装容器は、一実施形態において、高温処理を受けてもガスバリア性を維持できることから、電子レンジ用容器、又はレトルト容器として好適である。本開示の包装容器は、電子レンジ用レトルト容器としても好適である。本開示の包装容器は、レトルトパウチとして特に好適である。
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール及び超音波シールが挙げられる。
包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型及びガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。
包装容器は、易開封部を備えてもよい。易開封部としては、例えば、包装容器の引き裂きの起点となるノッチ部や、包装容器を引き裂く際の経路として、レーザー加工やカッターなどにより形成されたハーフカット線が挙げられる。
包装容器は、蒸気抜き機構を備えてもよい。蒸気抜き機構は、包装容器内の蒸気圧力が所定値以上となった際に、包装容器内部と外部とを連通させ、蒸気を逃がすと共に、蒸気抜き機構以外の箇所において蒸気が抜けることを抑制するように構成されている。
蒸気抜き機構は、例えば、側部シール部から包装容器の内側に向かって突出した蒸気抜きシール部と、蒸気抜きシール部によって、内容物収容部から隔離された非シール部とを備える。非シール部は、包装容器の外部に連通している。内容物が充填され、開口部がヒートシールされた包装容器を、電子レンジなどを用いて加熱する。これにより、内部の圧力が高まり、蒸気抜きシール部が剥離する。蒸気は、蒸気抜きシール部剥離箇所及び非シール部を通り、包装容器外部へ抜ける。
一実施形態において、本開示の積層体を、バリア性基材が外側、シーラント層が内側に位置するように二つ折にして重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。他の実施形態において、複数の本開示の積層体をシーラント層同士が対向するように重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。包装袋の全部が上記積層体で構成されてもよく、包装袋の一部が上記積層体で構成されてもよい。
一実施形態において、蓋付き容器における蓋材として、本開示の積層体が用いられる。
包装容器中に収容される内容物としては、例えば、液体、固体、粉体及びゲル体が挙げられる。内容物は、飲食品でもよく、化学品、化粧品及び医薬品等の非飲食品でもよい。包装容器中に内容物を収容した後、包装容器の開口部をヒートシールすることにより、包装容器を密封できる。
包装袋の具体例として、以下、小袋及びスタンディングパウチについて説明する。
小袋は、小型の包装袋であって、例えば1g以上200g以下の内容物を収容するために使用される。小袋中に収容される内容物としては、例えば、ソース、醤油、ドレッシング、ケチャップ、シロップ、料理用酒類、他の液体又は粘稠体の調味料;液体スープ、粉末スープ、果汁類;香辛料;液体飲料、ゼリー状飲料、インスタント食品、他の飲食品が挙げられる。
スタンディングパウチは、例えば50g以上2000g以下の内容物を収容するために使用される。スタンディングパウチ中に収容される内容物としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、ハンドソープ、ボディソープ、芳香剤、消臭剤、脱臭剤、防虫剤、洗剤;ドレッシング、食用油、マヨネーズ、他の液体又は粘稠体の調味料;液体飲料、ゼリー状飲料、インスタント食品、他の飲食品;クリームが挙げられる。
図9に、2枚の積層体を貼り合わせて得られる包装袋50を示す。斜線部分は、ヒートシールされた箇所を示す。包装袋50は、易開封部51を備えてもよい。易開封部51としては、例えば、引き裂きの起点となるノッチ部52や、引き裂く際の経路として、レーザー加工やカッターなどにより形成されたハーフカット線53が挙げられる。
図10に、スタンディングパウチの構成の一例を簡略に示す。斜線部分は、ヒートシールされた箇所を示す。スタンディングパウチ60は、一実施形態において、胴部(側面シート)61と、底部(底面シート)62とを備える。側面シート61と底面シート62とは、同一部材により構成されてもよく、別部材により構成されてもよい。底面シート62が側面シート61の形状を保持することにより、パウチに自立性が付与され、スタンディング形式のパウチとすることができる。側面シート61と底面シート62とによって囲まれる領域内に、内容物を収容するための収容空間が形成される。
スタンディングパウチ60は、蒸気抜き機構63を備えてもよい。蒸気抜き機構63は、側部シール部から包装容器の内側に向かって突出した蒸気抜きシール部63aと、蒸気抜きシール部63aによって、内容物収容部から隔離された非シール部63bとを備える。非シール部63bは、包装容器の外部に連通している。
スタンディングパウチにおいて、胴部のみが本開示の積層体により構成されてもよく、底部のみが本開示の積層体により構成されてもよく、胴部及び底部の両方が本開示の積層体により構成されてもよい。
一実施形態において、側面シートは、本開示の積層体が備えるシーラント層が最内層となるように製袋することにより形成できる。一実施形態において、側面シートは、本開示の積層体を2枚準備し、これらをシーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、両側の側縁部をヒートシールして製袋することにより形成できる。
他の実施形態において、側面シートは、本開示の積層体を2枚準備し、これらをシーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、重ね合わせた積層体の両側の側縁部における積層体間に、シーラント層が外側となるようにV字状に折った積層体2枚をそれぞれ挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。このような作製方法によれば、側部ガセット付きの胴部を有するスタンディングパウチが得られる。
一実施形態において、底面シートは、製袋された側面シート下部の間に本開示の積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。より具体的には、底面シートは、製袋された側面シート下部の間に、シーラント層が外側となるようにV字状に折った積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。
一実施形態において、上記積層体を2枚準備し、これらをシーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、次いで、もう1枚の上記積層体をシーラント層が外側となるようにV字状に折り、これを向かい合わせとなった積層体の下部に挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成する。次いで、底部に隣接する2辺をヒートシールすることにより、胴部を形成する。このようにして、一実施形態のスタンディングパウチを形成できる。
本開示は、例えば以下の[1]~[9]に関する。
[1]ポリプロピレン基材と、蒸着膜と、バリアコート層とを厚さ方向にこの順に備えるバリア性基材であって、ポリプロピレン基材が、延伸処理が施された基材であり、蒸着膜が、無機酸化物から構成されており、バリアコート層が、少なくとも、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、3官能型シラン化合物とから形成された層である、バリア性基材。
[2]蒸着膜が、酸化炭化珪素を含む、上記[1]に記載のバリア性基材。
[3]金属アルコキシドが、テトラアルコキシシランであり、3官能型シラン化合物が、3官能型シランカップリング剤、アルキルトリアルコキシシラン、アリールトリアルコキシシラン及びハロゲン化アルキルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種である、上記[1]又は[2]に記載のバリア性基材。
[4]バリア性基材が、ポリプロピレン基材と蒸着膜との間に、アンカーコート層をさらに備える、上記[1]~[3]のいずれかに記載のバリア性基材。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載のバリア性基材と、シーラント層とを備える、バリア性積層体。
[6]シーラント層が、ポリプロピレンにより構成される樹脂層である、上記[5]に記載のバリア性積層体。
[7]包装容器用途に用いられる、上記[5]又は[6]に記載のバリア性積層体。
[8]上記[5]~[7]のいずれかに記載のバリア性積層体を備える包装容器。
[9]レトルトパウチである、上記[8]に記載の包装容器。
以下、実施例に基づき本開示のバリア性基材について具体的に説明する。
[実施例1]
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(数平均分子量:25,000、ガラス転移温度:85℃、水酸基価:80mgKOH/g)及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(シランカップリング剤)を、メチルエチルケトンと酢酸エチルとの混合溶剤(混合比1:1)を用いて、液中の(メタ)アクリル樹脂固形分濃度が10質量%、シランカップリング剤濃度が1.5質量%となるように希釈することにより、主剤を調製した。
キシリレンジイソシアネートを含有する酢酸エチル溶液(固形分75質量%)を硬化剤として、主剤に添加し、アンカーコート剤を得た。硬化剤の使用量は、主剤100質量部に対して、8質量部とした。
樹脂基材として、一方の面がコロナ処理された、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルムを準備した。該フィルムのコロナ処理面に、上記アンカーコート剤を塗布し、80℃で2秒間乾燥して、厚さ0.2μmのアンカーコート層を形成した。
アンカーコート層上に、実機である低温プラズマ化学気相成長装置を用いて、Roll to Rollにより、フィルムにテンションを与えながら、厚さ30nmの炭素含有酸化珪素蒸着膜を形成した(CVD法)。蒸着膜形成条件は、以下の通りとした。
(形成条件)
・ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1:10:10(単位:slm)
・冷却・電極ドラム供給電力:22kW
・ライン速度:100m/min
炭素含有酸化珪素蒸着膜における炭素の割合C、珪素の割合Si、及び酸素の割合Oを測定した。炭素の割合C、珪素の割合Si、及び酸素の割合Oは、珪素、酸素及び炭素の3元素の合計100%に対して、それぞれ、32.7%、29.8%及び37.5%であった。各元素の割合は、X線光電子分光法(XPS)により、上述した測定条件のナロースキャン分析によって測定した。
水47.69gと、イソプロピルアルコール22.8gと、0.5N塩酸1.13gとを混合して、溶液を得た。この溶液に、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン27.04gと、シランカップリング剤としてビニルトリメトキシシラン1.35gとを、10℃となるように冷却しながら混合して、溶液Aを得た。
水溶性高分子としてケン化度99%以上、重合度2,400のポリビニルアルコール4.14gと、水91.07gと、イソプロピルアルコール4.79gとを混合して、溶液Bを得た。
溶液Aと溶液Bとを、質量基準で溶液A/溶液Bが65.5/34.5となるように混合して、バリアコート剤を得た。蒸着膜上に、バリアコート剤をスピンコート法によりコーティングし、オーブンにて100℃で8秒間の加熱処理を施し、厚さ0.3μmのバリアコート層を形成した。
以上のようにして、バリア性基材を得た。
[実施例2~6、比較例1~4]
バリアコート剤における溶液Aの配合組成、溶液Aと溶液Bとの配合比、及び樹脂基材の種類を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、バリア性基材を得た。
樹脂基材として、それぞれ表1に記載のMD方向の伸び率及びTD方向の伸び率を有する、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)及びポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用いた。それぞれのフィルムの厚さは、20μmである。上記フィルムのMD方向及びTD方向の伸び率(%)は、JIS K7197に準拠した熱機械分析(TMA)法により測定した。測定条件は、荷重20mNとし、温度変化は、30℃から160℃に昇温させ、次いで20℃に降温させた。このときの正の伸び率の最大値を、各方向の伸び率として記載した。
[外観評価]
上記で得られたバリア性基材におけるバリアコート層表面の外観を目視にて観察し、また、バリア性基材の断面(よってバリアコート層の断面も)を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、バリアコート層におけるひび割れの有無を確認した。結果を表1に示す。
[ガスバリア性積層体の作製]
上記で得られたバリア性基材における2軸延伸ポリプロピレンフィルム面をコロナ処理して、濡れ張力を38dyn以上とした。第1の基材として厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製、P2171)を、第2の基材としてコロナ処理された上記バリア性基材を、シーラント層として厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工(株)製、ZK207)を、ポリエステルウレタン接着剤(ロックペイント製、RU-004/H-1(配合比7.5/1))を介してドライラミネートし、40℃にて72時間静置し、バリア性積層体を得た。ポリエステルウレタン接着剤により形成された接着層の厚さは、4μmであった。
[ガスバリア性評価]
上記で得られたバリア性基材を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、酸素透過度(cc/m2・day・atm)及び水蒸気透過度(g/m2・day)を、以下の方法により測定した。表1中では、単位の記載は省略する。
酸素透過度測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を用いて、試験片の基材側が酸素供給側になるようにセットして、JIS K 7126に準拠して、23℃、相対湿度90%RH環境下における酸素透過度を測定した。
水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、PERMATRAN-w 3/33)を用いて、試験片の基材側が水蒸気供給側になるようにセットして、JIS K 7129に準拠して、40℃、相対湿度90%RH環境下における水蒸気透過度を測定した。
[ガスバリア性評価(レトルト処理後)]
上記で得られたバリア性積層体を用いて、平状の包装袋を作製した。平状の包装袋の大きさは、B5サイズ(182mm×257mm)である。平状の包装袋の内部には、水150mLが充填されている。
平状の包装袋を、121℃で30分間、熱水でレトルト処理した。平状の包装袋からバリア性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度及び水蒸気透過度を測定した。
Figure 2023063171000001
1:バリア性基材、2:バリア性積層体、3:延伸基材、10:ポリプロピレン基材、11:アンカーコート層、12:蒸着膜、14:バリアコート層、20、20A、20B:接着層、30:シーラント層、
50:包装袋、51:易開封部、52:ノッチ部、53:ハーフカット線、
60:スタンディングパウチ、61:胴部(側面シート)、62:底部(底面シート)、63:蒸気抜き機構、63a:蒸気抜きシール部、63b:非シール部、
A:真空容器、B:巻出し部、C:成膜用ドラム、D:巻取り部、E:搬送ロール、F:蒸発源、G:反応ガス供給部、H:防着箱、I:蒸着材料、J:プラズマガン、S:基材、A1:真空容器、B1:巻出し部、C1:冷却・電極ドラム、D1:巻取り部、E1:搬送ロール、F1:グロー放電プラズマ、G1:反応ガス供給部、H1:原料供給ノズル、I1:原料ガス供給部、J1:マグネット、K1:電源、L1:真空ポンプ

Claims (9)

  1. ポリプロピレン基材と、蒸着膜と、バリアコート層とを厚さ方向にこの順に備えるバリア性基材であって、
    前記ポリプロピレン基材が、延伸処理が施された基材であり、
    前記蒸着膜が、無機酸化物から構成されており、
    前記バリアコート層が、少なくとも、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、3官能型シラン化合物とから形成された層である、
    バリア性基材。
  2. 前記蒸着膜が、酸化炭化珪素を含む、請求項1に記載のバリア性基材。
  3. 前記金属アルコキシドが、テトラアルコキシシランであり、
    前記3官能型シラン化合物が、3官能型シランカップリング剤、アルキルトリアルコキシシラン、アリールトリアルコキシシラン及びハロゲン化アルキルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種である、
    請求項1又は2に記載のバリア性基材。
  4. 前記バリア性基材が、前記ポリプロピレン基材と前記蒸着膜との間に、アンカーコート層をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のバリア性基材。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のバリア性基材と、
    シーラント層と
    を備える、バリア性積層体。
  6. 前記シーラント層が、ポリプロピレンにより構成される樹脂層である、請求項5に記載のバリア性積層体。
  7. 包装容器用途に用いられる、請求項5又は6に記載のバリア性積層体。
  8. 請求項5~7のいずれか一項に記載のバリア性積層体を備える包装容器。
  9. レトルトパウチである、請求項8に記載の包装容器。
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