JP2023061776A - ポリスチレン基材、積層体、およびポリスチレン基材の製造方法 - Google Patents

ポリスチレン基材、積層体、およびポリスチレン基材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面自由エネルギーが小さい樹脂を用いて得られる樹脂成形体によって構成されており、金属皮膜との接着強度に優れる樹脂基材を提供する。【解決手段】本発明に係るポリスチレン基材は、接着性を有するポリスチレン基材であって、前記ポリスチレン基材は、シンジオタクチックポリスチレンを主成分として含む樹脂成形体によって構成されており、1,3,5-トリアジンとアルコキシシリル基またはシラノール基とを有する、分子接合剤に由来する分子接合剤成分が、アミノ基を介して前記樹脂成形体の表面に結合しており、ATR-IR測定において902cm-1におけるピーク強度I902と906cm-1におけるピーク強度I906との強度比I902/I906が1.0未満である、ポリスチレン基材である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリスチレン基材、積層体およびポリスチレン基材の製造方法に関する。
近年、情報・通信機器分野における伝送情報量の大容量化にともない、取り扱われる信号帯域の高周波化が進んでいる。これまでGHz帯域を超えるような高周波信号は、レーダーおよび衛星通信等の用途に用いられてきた。しかしながら最近では、スマートフォンおよびタブレット型コンピュータ等をはじめとする携帯端末および無線LAN(Local Area Network)等で、極めて身近に用いられるようになってきた。
また、コンピュータおよび通信機器の高速化・高機能化にともない、これらの機器間の情報伝送に用いられる信号も、高周波化されてきている。
従来、電子回路の形成に用いられるフレキシブルプリント配線基板用材料として、主にポリイミドフィルムが用いられてきた。しかしながら、ポリイミドフィルムは、高周波帯域における誘電特性が悪く、伝送損失が大きい等の理由で高周波回路に用いることができなかった。また、ポリイミドは、吸湿による寸法変化が大きな材料であり、回路の高密度化に対して、加工パターン精度の安定性、および電気特性において障害となるといった問題があった。
この問題に対し、環状ポリオレフィン、およびシンジオタクチックポリスチレン等といった分極した官能基を持たない樹脂が優れた電気特性を有することから、これらの樹脂が高周波帯域用の基板用材料として提案され、近年研究開発が行われている。非特許文献1には、シンジオタクチックポリスチレンは、低誘電率、低誘電正接であり、かつ吸湿寸法安定性および透明性に優れることが記載されている。
シンジオタクチックポリスチレンの5G分野における最新応用事例:日本工業出版、プラスチックス8月号 23~28 (2020)
しかしながら、環状ポリオレフィンおよびシンジオタクチックポリスチレン等の電気特性の優れた材料は、表面自由エネルギーが小さく接着剤等にて金属と接着させた場合には接着強度が低いという問題がある。
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面自由エネルギーが小さい樹脂を用いて得られる樹脂成形体によって構成されており、金属皮膜との接着強度に優れる樹脂基材を提供することにある。
本発明に係るポリスチレン基材は、接着性を有するポリスチレン基材であって、前記ポリスチレン基材は、シンジオタクチックポリスチレンを主成分として含む樹脂成形体によって構成されており、1,3,5-トリアジンとアルコキシシリル基またはシラノール基とを有する、分子接合剤に由来する分子接合剤成分が、アミノ基を介して前記樹脂成形体の表面に結合しており、ATR-IR測定において902cm-1におけるピーク強度I902と906cm-1におけるピーク強度I906との強度比I902/I906が1.0未満である、ポリスチレン基材である。
本発明によれば、表面自由エネルギーが小さい樹脂を用いて得られる樹脂成形体によって構成されており、金属皮膜との接着強度に優れる樹脂基材を提供することができる。
本実施形態に係るポリスチレン基材をATR-IR測定によって測定して得られたスペクトルを示す図である。温度はポリスチレン基材を製造する過程の冷却工程における冷却温度を示す。
以下、本発明を実施するための一実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<ポリスチレン基材>
本実施形態に係るポリスチレン基材は、分子接合剤によって表面を処理された樹脂成形体によって構成されている。
(樹脂成形体)
本実施形態における樹脂成形体は、シンジオタクチックポリスチレンを主成分として含む。
ここでいう「主成分」とは、樹脂成形体を形成する樹脂全体におけるシンジオタクチックポリスチレンの割合が50質量%以上であることを意味する。また、樹脂成形体を形成する樹脂全体におけるシンジオタクチックポリスチレンの割合は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。
樹脂成形体を形成する材料となる樹脂(以下、「材料樹脂」と称する)は、シンジオタクチックポリスチレンを主成分として含んでいればよく、樹脂成形体にその他の樹脂を含んでもよい。例えば、ポリエチレンおよびポリスチレン等のポリオレフィンおよびポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、またはそれらの樹脂の不飽和基を水素により還元したものを、含んでいてもよい。
また、樹脂成形体は、材料樹脂以外にガラス、炭酸カルシウム、シリカおよびタルク等の無機フィラーならびにエラストマー等の添加剤を本願発明の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。
樹脂成形体は、溶融押出により成形可能なものであればその形態は特に制限されず、シート状、フィルム状、丸棒および角棒等が挙げられる。
シンジオタクチックポリスチレンは結晶性樹脂である。シンジオタクチックポリスチレンの一般的な基板は、一般的には、アニーリングされた状態で提供される。そのため、基板におけるジオタクチックポリスチレンの結晶化度は高くなっている。一方、本実施形態の樹脂成形体の表面は非晶リッチな状態である。ここでいう「非晶リッチな状態」とは、樹脂成形体表面の樹脂の結晶化度を測定した場合に、非晶状態の樹脂がα晶状態の樹脂よりも多い状態のことを指す。樹脂成形体の表面が非晶リッチな状態であるか否かは、ATR-IR測定によって得られたスペクトルから求めることができる。
一般的には、結晶化度は、得られたスペクトルを波形分離することで求められる。具体的には、得られたスペクトルを925cm-1、917cm-1、890cm-1、885cm-1にて3次スプライン曲線でベースライン補正し、901.9±0.1cm-1、906.9±0.1cm-1、911.5±0.1cm-1を頂点とし半値幅が同一のガウス曲線にLevenberg Marquardt法を適用して波形分離する。波形分離によって得られたピークは、それぞれシンジオタクチックポリスチレンのα晶、非晶、β晶に相当する。結晶化度は、下記式により求められる。
結晶化度=(901.9のピーク面積)+(911.9のピーク面積)}/(全ピーク面積)
しかしながら、上述の算出方法は、波形分離が煩雑である。β晶の寄与が10%以下であることからも、本実施形態では、簡易的な評価指標として、波形分離を行わず、得られたスペクトルにおけるα晶状態を示す902cm-1のピーク強度I902と非晶状態の樹脂を示す906cm-1のピーク強度I906と、の強度比I902/I906を結晶化度の指標として使用している。
本実施形態において、強度比I902/I906が1.0未満であれば、樹脂成形体は非晶リッチな状態である。強度比I902/I906は1.0未満であることが好ましく、0.90未満であることが特に好ましい。また、シンジオタクチックポリスチレンを用いた樹脂成形体において非晶リッチな状態を実現する観点から、強度比I902/I906は0.5以上であってもよい。表面が非晶リッチな状態である樹脂成形体を用いたポリスチレン基材は、強度比I902/I906が1.0以上の非晶リッチな状態ではないポリスチレン基材と同一プロセスによりポリスチレン基材を金属皮膜に接着させて積層体を作製したときに、積層体の剥離強度が高くなる。
ポリスチレン基材をATR-IR測定に供することで、樹脂成形体の結晶度を測定することができる。ポリスチレン基材の表面は、分子接合剤によって処理されているが、分子接合剤に由来する成分は十分に薄い層として形成されているため、樹脂成形体の結晶化度測定には影響しない。
後述する通り、ポリスチレン基材の製造工程の冷却工程において、冷却温度がシンジオタクチックポリスチレンの冷結晶化温度(Tcc)である140℃以下であることにより、樹脂成形体の表面の結晶化度を低下させることができる。図1に示す通り、冷却温度が140℃以下の80℃および120℃の場合、強度比I902/I906は1未満であり、非晶リッチな状態である。しかしながら、冷却温度が140℃以上の160℃および180℃の場合は強度比I902/I906は1より大きく、結晶化度が高い。なお、本実施形態のポリスチレン基材における樹脂成形体表面は非晶リッチな状態であるが、熱プレスによりポリスチレン基材と金属皮膜とを接着させて積層体とした後においては、樹脂成形体の表面の結晶化度は高くなっていてもよい。
剥離強度をより高める観点から、冷却後の樹脂成形体の表面におけるシンジオタクチックポリスチレンの結晶化度は、積層体に後述するアニール処理を施す場合には、積層体とした後の樹脂成形体の表面における結晶性樹脂の結晶化度の70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
(分子接合剤)
本実施形態において、ポリスチレン基材は、上述の樹脂成形体の表面を分子接合剤によって処理することで得られる。
本実施形態における分子接合剤は、1,3,5-トリアジン環と、アジド基と、アルコキシシリル基またはシラノール基と、を有する。分子接合剤のアジド基が樹脂成形体の樹脂と反応して、樹脂成形体表面の樹脂と共有結合を形成する。一方、分子接合剤のアルコキシシリル基またはシラノール基は金属皮膜の金属と反応して、金属と混合酸化物を形成する。このようにして、樹脂成形体と金属皮膜とが分子接合剤を介して結びつくことで、金属皮膜と樹脂成形体とが接着した状態とすることができる。なお、分子接合剤の金属皮膜および樹脂成形体への結合は、分子接合剤一分子によって結合する場合に限らず、分子接合剤同士が反応して結合し、その結合分子によって金属皮膜および樹脂成形体へ結合するものであってもよい。
分子接合剤は、樹脂成形体または金属皮膜との結合がより強固なものとなるように、上述の構成に加えて、任意の基としてQを有していてもよい。例えば、Qを1,3,5-トリアジン環の置換基として有していてもよい。また、Qは、アジド基または-NR基を含んでいることが好ましい。ここで、RおよびRは、それぞれ独立に、H、炭素数1~24の炭化水素基、または-R-SiR (OA)3-nである。Rは、炭素数1~12の鎖状の2価の炭化水素基であり、Rは、炭素数1~4の鎖状の炭化水素基である。Aは、Hまたは炭素数1~4の鎖状の炭化水素基であり、nは0~3の整数である。Qがアジド基である場合、分子接合剤と樹脂成形体との結合箇所が増える。また、Qが-NR基である場合、分子接合剤と金属皮膜との結合箇所が増える。
分子接合剤は、1,3,5-トリアジン環と、アジド基と、アルコキシシリル基またはシラノール基とを有する化合物である限り特に制限はないが、以下の一般式(I)で表される化合物が好適に用いられる。
Figure 2023061776000001
式(I)中、Rは炭素数1~10のアルキレン基である。R~Rは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基または炭素数1~5のアルキル基であり、R~Rの少なくとも1つはヒドロキシ基または炭素数1~5のアルコキシ基である。
また、式(I)中、Qは、アジド基または-NRであり、RおよびRは、それぞれ独立に、H、炭素数1~24の炭化水素基、または-R-SiR (OA)3-nである。Rは、炭素数1~12の鎖状の2価の炭化水素基であり、Rは、炭素数1~4の鎖状の炭化水素基である。Aは、Hまたは炭素数1~4の鎖状の炭化水素基であり、nは0~3の整数である。Eは-NH-、-O-、-S-、または-NHCO-である。
としては、中でも、炭素数1~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~5のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~5のアルキレン基であることがさらに好ましい。
~Rとしては、中でも、ヒドロキシ基または炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~3のアルコキシ基であることがより好ましい。
およびRとしては、中でも、Hまたは炭素数1~8のアルキレン基であることが好ましく、Hであることがより好ましい。
としては、中でも、炭素数1~12のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~6のアルキレン基であることがさらに好ましい。
としては、中でも、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~2のアルキル基であることがより好ましい。
Aとしては、中でも、Hまたは炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、Hまたは炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましい。
nとしては、中でも、0、1または2であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることが最も好ましい。
Qとしては、中でも、アジド基であることが好ましい。
分子接合剤として最も好ましいのは、6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1、3、5-トリアジン-2、4-ジアジドである。
本実施形態のポリスチレン基材において、分子接合剤中のアジド基はアミノ基に変換された状態で存在する。すなわち、ポリスチレン基材において、分子接合剤に由来する1,3,5-トリアジンとアルコキシシリル基またはシラノール基とを有する分子接合剤成分が、樹脂成形体の表面にアミノ基を介して結合する。以下、分子接合剤に由来する成分のことを「分子接合剤成分」と称する。
なお、本明細書において「アミノ基」とは、-NHR(ここで、Rは水素原子以外)で表される基、すなわち第一級アミンから水素原子を取り除いた構造に対応する基も包含する意味で用いている。
樹脂成形体の表面を処理する分子接合剤としてR~Rがヒドロキシ基である化学式(I)の化合物を用いた場合、分子接合剤成分は、下記の化学式(II)として、ポリスチレン基材に存在する。
Figure 2023061776000002
式(II)中、R~R4、E、およびQの置換基は式(I)の化合物と同様の置換基である。
分子接合剤成分は、樹脂成形体と金属皮膜とを結合することができれば、任意の形態で存在してもよい。例えば、分子接合剤に由来する成分は、樹脂成形体の表面全体に隙間なく存在して膜構造を形成していてもよく、樹脂成形体の表面に分散していてもよく、あるいは海島状に存在していてもよい。
本実施形態における分子接合剤成分の厚みは、ポリスチレン基材の表面の窒素原子比率およびケイ素原子比率を分析することによって推定される。ポリスチレン基材の表面分析には、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)測定を用いることができる。この場合、窒素原子比率が5atom%以上であり、ケイ素原子比率が1atom%以上であることが、分子接合剤の樹脂成形体と金属皮膜との接合能力を発揮する上で好ましい。特に、窒素原子比率が5~25atom%であり、ケイ素原子比率が1~5atom%であることが好ましい。なお、本明細書において、窒素原子比率はN1sの比率を意図し、ケイ素原子比率はSi2pの比率を意図する。
ポリスチレン基材の表面における窒素およびケイ素の元素組成比は、X線光電子分光装置(例えば、JPS 9010series、日本電子製)を用いて測定することができる。
例えば、化合物(I)の例として、6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアジドの原子のみを検出する場合、XPS測定により求められる窒素原子比率およびケイ素原子比率は、それぞれ、28atom%程度および5atom%程度となる。すなわち、化合物1を分子接合剤として用いた時に、XPS測定により求められるポリスチレン基材の表面の窒素原子比率が5~25atom%であり、ケイ素原子比率が1~5atom%である場合、分子接合剤成分の原子のみならず、樹脂成形体表面の原子も検出していることを意味する。これは、分子接合剤成分の厚みが、XPS測定の測定深度である3nm以下であることを意味している。
<積層体>
本実施形態における積層体は、上述のポリスチレン基材と、分子接合剤成分を介してポリスチレン基材に接着する金属皮膜とを有する。本実施形態に係る積層体は、後述の本実施形態の製造方法に従って製造される。本実施形態に係る積層体は、ポリスチレン基材と金属皮膜の結合が強固なため、剥離強度が高い。
本明細書において、「剥離強度」は、90°剥離試験による樹脂成形体と金属皮膜との剥離強度を意味する。90°剥離試験は、JIS C 6481-1996に従い実施した。なお、積層体の剥離強度が高い場合は、積層体に処理を加えずに90°剥離試験を行うと積層体が破断する虞があるため、2mm~5mm幅の切り込みを入れて剥離試験を行ってもよい。
「本実施形態の積層体の剥離強度が高い」とは、本発明の一実施形態のポリスチレン基材と、I902/I906が1.0以上のシンジオタクチックポリスチレン基材と、を同一プロセスによってそれぞれ積層体とした場合に、本発明の一実施形態のポリスチレン基材を用いて作製した積層体の方が剥離強度が高いことを意味する。
積層体の剥離強度は、積層体の製造方法にも影響を受ける。例えば、積層体を熱プレス工程およびめっき工程のどちらで製造したかによって、得られる積層体自体の特性が異なり、積層体の剥離強度も異なる。本実施形態のシンジオタクチックポリスチレン基材は、積層体の製造方法が同じ場合に、I902/I906が1.0以上のシンジオタクチックポリスチレン基材よりも高い剥離強度を有する。
(金属皮膜)
本実施形態の積層体が有する金属皮膜を形成する金属材料としては、各種の金属およびその合金等が挙げられる。金属の具体例としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ge、Sn、Pb、Sb、BiおよびNd等が挙げられる。中でも、電子回路基板に応用する観点から、Cu、Ni、Al、Cr、Zn、Agが好適に用いられる。Cu、NiおよびAlが基板として用いられ、これらの金属の表面をCr、またはZnによってコーティングしたものが特に好適に用いられる。
金属皮膜の厚みは、好適には36μm以下であり、より好適には25μm以下であり、さらに好適には18μm以下である。
一方、また十分な剥離強度を得る観点から、金属皮膜の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることがさらに好ましい。
<ポリスチレン基材の製造方法>
ポリスチレン基材は、シンジオタクチックポリスチレンを主成分として含む材料樹脂から樹脂成形体を形成する工程と、樹脂成形体の表面を分子接合剤で処理する工程と、を含む製造方法によって、製造される。樹脂成形体を形成する工程は、溶融押出工程および冷却工程を含む。
(溶融押出工程)
溶融押出工程では、材料樹脂を任意の押出成形機に供給し、シリンダー内で溶融させて、Tダイを用いて任意の形状に溶融押出することで、押出成形体を得る。押出成形機は、スクリュー押出成形機等、公知の装置を用いればよい。
材料樹脂を溶融押出する温度は275℃以上であればよく、280℃以上であることがより好ましい。また、溶融押出する温度は320℃以下であればよく、300℃以下であることがより好ましい。
押出成形体の厚みは、最終的に得られるポリスチレン基材の使用目的に応じて適宜決定すればよいが、厚みが小さいほど、次工程である冷却工程での押出成形体における冷却の速度が高まることとなる。
(冷却工程)
本実施形態では、溶融押出工程によって得られた押出成形体を、シンジオタクチックポリスチレンの冷結晶化温度以下の温度にて冷却して、樹脂成形体を形成する。これにより、樹脂成形体の表面における、結晶性樹脂の結晶化度を低く抑えることができる。冷却方法に特に制限はないが、押出成形体を液体冷媒または固体冷媒と接触させる方法が挙げられる。液体冷媒または固体冷媒と接触させる冷却では、気体との接触による冷却に比して、急速に冷却を行うことができ、押出成形体の表面における結晶性樹脂の非晶リッチな状態の割合を多くすることができる。一方で、押出成形体の内部が冷却されることを抑え、内部の結晶化度は高い状態に維持される。固体冷媒を用いた冷却方法としては、押出成形体をニップロールにて引き取りながらチルロール上に密着させ、チルロール上で当該冷却を行う方法が挙げられる。また、液体冷媒を用いた冷却方法としては、押出成形体を水と接触させて冷却する方法が挙げられる。
冷却温度は、シンジオタクチックポリスチレンの冷結晶化温度(Tcc)以下の温度、すなわち、140℃以下であれば特に制限はないが、好ましくは、120℃以下であり、より好ましくは、100℃以下であり、さらに好ましくは、80℃℃以下である。また、冷却温度の下限は特に制限はないが、例えば押出成形体の巻取り等の操作性の観点から、45℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
冷却工程において、冷却温度以外の条件、すなわち、冷却時間および冷媒の種類に代表される冷却工程の各種条件は、押出成形体が内部まで冷媒と同等程度の温度にまで冷却することができる範囲であれば、特に限定されず、適宜に設定すればよい。例えば、固体冷媒としてチルロールを用いた場合の冷却時間、ロール径および回転速度等は特に限定されない。
押出成形体の表面におけるシンジオタクチックポリスチレンの結晶化度は、使用する樹脂添加物、樹脂成形体を製造する際の溶融押出の条件によって変わり得る。しかしながら、同一の樹脂および同一の条件で押出成形体を製造した場合には、押出成形体の表面における結晶化度が低くなるほど、最終的な剥離強度が高まる。
(分子接合剤処理工程)
本実施形態では、冷却工程の後、樹脂成形体の表面に、上述の分子接合剤を含有する分子接合剤含有溶液を塗工し、乾燥させる。これにより、樹脂成形体の表面に、分子接合剤が供給され、ポリスチレン基材を作製できる。
分子接合剤含有溶液を塗工する方法は特に制限されず、例えば、コーター等で、樹脂成形体の表面に直接塗り付ける方法、樹脂成形体を接合剤含有溶液に浸漬させる方法、噴霧器等で、樹脂成形体の表面に分子接合剤含有溶液を吹き付ける方法等が挙げられる。分子接合剤含有溶液の塗工回数および塗工量は特に限定されず、積層体を製造する際の製造方法によって決定してもよい。例えば、本発明の一実施形態である積層体をめっき工程によって製造する場合、無電解めっき液中の触媒を樹脂成形体の表面に担持させるために、熱プレス工程と比較して多量の分子接合剤成分を樹脂成形体表面に結合させる必要がある。このため、めっき工程において、接着強度を高めるためではなく、触媒担持能を向上させることを目的として、分子接合剤を複数回繰り返して塗工を行ってもよい。
分子接合剤含有溶液における接合剤の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.015質量%以上であることがさらに好ましい。また、分子接合剤含有溶液における接合剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。例えば、分子接合剤含有溶液における接合剤の含有量は、0.1質量%であることが特に好ましい。
分子接合剤溶液の溶媒としては、水、エタノール等のアルコール系溶媒、エーテル系溶媒およびケトン系溶媒、ならびにこれらの混合溶媒であり得る。
次いで、供給された分子接合剤を樹脂成形体の表面の樹脂と結合させて、ポリスチレン基材を作製する。分子接合剤を樹脂成形体の表面の樹脂に結合させる方法には紫外線照射または加熱が挙げられる。これらの処理によってアジド基から窒素分子が脱離し樹脂表面のC-H基にラジカル反応的に挿入される。その結果、分子接合剤成分はアミノ基を介して樹脂成形体が化学的に結合する。なお、これらの処理には、樹脂成形体表面の一部のみに対して行われる処理も含まれる。例えば、樹脂成形体表面の一部に金属マスクを行い、選択箇所にのみ紫外線照射を行う方法も含まれる。
紫外線照射を行う場合、紫外線の露光量(mJ/cm)は照度(mW/cm)と照射時間(sec)によって調整可能である。露光量は、分子接合剤が樹脂成形体の表面の樹脂と結合する反応を起こすことができる範囲であり、樹脂表面が紫外線により劣化しない範囲が望ましい。ここで使用する分子接合剤は235nmに極大吸収をもつため、210~260nmの紫外線が効率的に反応を起こすことできるが、吸収端は310nmまであるため260~310nmの紫外線を使用しても良い。照射される紫外線の露光量は10mJ/cm以上であってもよく、25mJ/cm以上であることが好ましい。また、照射される紫外線の露光量は1000mJ/cm以下であってもよく、200mJ/cm以下であることが好ましい。特に、50mJ/cmであることが好ましい。
加熱により樹脂成形体と分子接合剤とを結合させる場合、加熱温度は特に限定されないが、100℃以上であってもよく、120℃以上であることが好ましい。また、加熱温度は、140℃以下であってもよく、135℃以下であることが好ましい。加熱時間は5分以上であってもよく、10分以上であることが好ましい。また、加熱時間は60分以下であってもよく、20分以下であることが好ましい。
<積層体の製造方法>
次に、積層体の製造方法について説明する。なお、以下では、ポリスチレン基材がシート状の成形体である例を用いて説明するが、ポリスチレン基材の形状はこれに限定されるものではない。
(熱プレス工程)
本実施形態では、ポリスチレン基材と、金属皮膜とを重ね合わせ、熱プレスを行うことにより、ポリスチレン基材と金属皮膜とを接着させる。
熱プレスの温度は、樹脂成形体の材料樹脂のガラス転移温度以上で行えばよく、ガラス転移温度+50℃以上で行うことが好ましく、ガラス転移温度+80℃以上で行うことがより好ましい。本実施形態において、材料樹脂の主成分であるシンジオタクチックポリスチレンのガラス転移温度は90℃であるため、140℃以上で行うことが好ましく、170℃以上で行うことがより好ましい。
樹脂成形体の表面は、上述の冷却工程により結晶化度が低くなっている。この状態で上述の範囲の熱を加えることにより、金属皮膜をプレスした際に、金属皮膜表面と樹脂成形体表面との密着性が高まることとなる。金属皮膜表面と樹脂成形体表面との密着性が高まることにより、より多くの接合剤が金属皮膜表面に接し、より多くの接合剤にて金属皮膜との結合が生じる。その結果、積層体の剥離強度を高めることができる。
また、熱プレスの温度は、樹脂成形体の材料樹脂の融点未満で行えばよく、融点-5℃以下で行うことが好ましく、融点-40℃以下で行うことがより好ましい。本実施形態において、材料樹脂の主成分であるシンジオタクチックポリスチレンの融点は275℃であるため、270℃以下で行うことが好ましく、235℃以下で行うことがより好ましい。
熱プレスの温度を上述の範囲とすることにより、熱プレス時に樹脂成形体が溶融することを防ぐことができ、寸法安定性に優れた積層体を得ることができる。
本実施形態では、3MPa以上の圧力で熱プレスを実施してもよく、7MPa以上の圧力が好ましく、10MPa以上の圧力がより好ましい。熱プレスの圧力を高くすることにより、金属皮膜表面と樹脂成形体表面との密着性が高まり、より多くの接合剤が金属皮膜表面に接し、より多くの分子接合剤にて金属皮膜との結合が生じる。その結果、積層体の剥離強度を高めることができる。
なお、熱プレスの温度がシンジオタクチックポリスチレンのTcc温度よりも低い条件である場合は3Mpa以下のプレス条件においても、好ましい成形体が得られる。この場合、樹脂成形体表面が非晶リッチな状態のまま金属皮膜に密着されるため、樹脂成形体表面と金属皮膜との結合が強固になる。一方、3Mpa以下のプレス条件において、Tcc温度よりも高い温度でプレスした場合、樹脂成形体表面と金属皮膜とが密着する前に、樹脂成形体表面が結晶化する虞がある。このため、樹脂成形体表面と金属皮膜との結合が強固にならず、剥離強度も低い積層体となる。
熱プレスの圧力に上限はないが、使用する装置の特性から、例えば、30MPa以下であり得、あるいは20MPa以下であり得る。
〈めっきによる積層体の製造方法〉
次に、めっきによる積層体の製造方法について説明する。なお段落0048~0061に記載のポリスチレン基材の製造工程は熱プレス工程と同一である。
(めっき工程)
本実施形態におけるめっき工程は、ポリスチレン基材を無電解(化学)めっき法により導体化処理を施し、次に電気めっき法により所定の厚さまで金属皮膜を厚膜化させる。その後、加熱処理により分子接合剤と金属皮膜との間に混合酸化物が形成され、これにより樹脂成形体と金属皮膜とを高強度で接着させる。
なお、めっき工程を行う場合、熱プレス工程を行う場合と比較して、樹脂成形体表面における触媒担持を増加させるために、多量の分子接合剤を樹脂成形体表面に塗布する必要がある。
無電解めっきを行う場合は、金属触媒溶液による触媒担持が行われる。金属触媒溶液には例えば一種類または二種類以上の金属(例えば、Sn,Pd,Cu,Ag,Au,Sn/Pdコロイド、Su/AgコロイドおよびSn/Ag/Pdコロイド)のハロゲン化物(塩化物、臭化物、およびヨウ化物)が含まれる。他にも、HCl、およびHNaSO等の酸が含まれる。浸漬により処理する場合は、例えば0~80℃(好ましくは、20~50℃)で1~5分間浸漬する。浸漬温度が上述の範囲であれば、無電解めっきを好適に行うことができ、かつ、樹脂成形体の表面を非晶リッチな状態に保つことができる。本処理は、キャタリスト-アクセラレータ法またはセンシタイザー-アクチベーター法等の名称で一般的に公知である。この前処理の詳細は省略するが、公知な技術のみに限定されるものではない。
無電解めっき液には金属塩および還元剤が含まれている。無電解めっき液としては、例えば無電解Ni-Pめっき液、無電解Ni-Bめっき液、無電解Ni-P複合めっき液、無電解銅ホルマリン液、無電解銅グリオキシル酸液、無電解パラジウムめっき液、および無電解コバルトめっき液等が知られているが、これらに限られない。
無電解めっき液に含まれている金属塩とは、例えば銀、銅、金、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、パラジウム、白金、真鍮、スズ、モリブデン、タングステン、パーマロイ、およびスチール等の金属塩である。具体的には、KAu(CN)、KAu(CN)、NaAu(SO、NaAu(S、NaAuCl、AuCN、Ag(NH)2NO、AgCN、AgNO、CuSO・5HO、CuEDTA、NiSO・7HO、NiCl、Ni(OCOCH、CoSO、CoCl、SnCl・7HO、およびPdCl等が挙げられる。金属塩の濃度は0.001~10mol/L(好ましくは、0.01~1mol/L)である。
還元剤は、金属塩を還元して金属を生成する作用を持つ化合物である。具体的には、KBH、NaBH、NaHPO、(CH)2NH・BH、NHNH、HNNH・HS、HNNH・HCl、HNNH・2HCl、HNNH・CHCOOH、ヒドロキシルアミン塩、N,N-エチルグリシン、グルコールソーダ、グリオキシル酸、グルコース、ホルムアルデヒド、およびバニリン等である。還元剤の濃度は0.001~5mol/L(好ましくは、0.01~1mol/L)である。
金属塩および還元剤の他に、錯化剤、およびpH調整剤等の各種の添加剤が含まれている。例えば、無電解めっき液の安定性(ポッドライフ)および還元効率の観点からの添加剤が含まれている。具体的には、塩基性化合物、無機塩、有機酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、水酸化アンモニア、EDTA、ジアミノエチレン、酒石酸ナトリウム、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量:200~400)、チオ尿素、トリアジンチオール、およびトリエタノールアミン等である。添加剤の濃度は0.00001~10mol/L(好ましくは、0.0001~1mol/L)である。
電気めっきに用いる電気めっき液には金属塩が含まれている。電気めっき液としては、例えば硫酸銅標準めっき液、硫酸銅ハイスローめっき液、シアン化銅めっき液、光沢シアン化銅めっき液、シアン化銅ストライクめっき液、ピロリン酸銅標準めっき液、ピロリン酸銅プリント基板用めっき液、ピロリン酸銅装飾用めっき液、ニッケル標準めっき液、ニッケルワットめっき液、光沢ニッケル標準めっき液、スルファミン酸ニッケルめっき液、六価クロム標準めっき液、三価クロム標準めっき液、亜鉛アルカリめっき液、塩化亜鉛めっき液、シアン化亜鉛めっき液、硫酸スズめっき液、メタンスルホン酸スズめっき液、アルカリ性スズめっき液、中性スズめっき液、弱酸性金めっき液、強酸性金めっき液、中性金めっき液、金めっきアルカリシアン液、金めっきアルカリ性亜硫酸液、銀ストライクめっき液、シアン化銀めっき液、チオ硫酸銀めっき液、コハク酸銀めっき液、白金めっき液、ロジュウムめっき液、およびパラジウムめっき液等が知られている。勿論、これらに限られない。
電気めっき液には、前記金属塩の他に、鉱酸、アルカリ、レベリング剤、光沢剤、および抑制剤等の添加剤が含まれている。具体的には、硫酸、塩酸、ホウ酸、シアン化ナトリウム、苛性カリ、アンモニア、硝酸カリ、ピロリン酸カリ、ロッシェル塩、チオシアン化カリ、サッカリン、クマリン、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アリルスルフォン酸、エチレンシアンヒドリン、ピリジニウムプロピルスルホネート、ナフタリンスルホン酸、1,4-ブタンチオール、鉛化合物、グルコン酸ナトリウム、オキシカルボン酸、界面活性剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびポリエチレングリコール(分子量:200~600)等である。
電気めっき処理が行われる温度(浴温度)は、例えば20~100℃(好ましくは、20~70℃)である。電流密度は、例えば0.1~15A/dm(好ましくは、1~7A/dm)である。浴温度が上述の範囲であれば、電気めっき処理を好適に行うことができ、かつ、樹脂成形体表面を非晶リッチな状態に保つことができる。
本実施形態において電気めっき後の加熱は実施形態に限りはない。例えば、加熱を定温乾燥機中で実施する場合80~200℃で5~60分間実施する。加熱を熱プレスにより実施する場合は、80~200℃、1~10MPaで5~60分間実施する。低温であれば長時間、高温であれば短時間の実施で良く、例えば80℃であれば20分間、150℃であれば5分間程度実施する。
(その他の処理)
分子接合剤含有溶液を樹脂成形体の表面に塗工する前に、樹脂成形体の表面の濡れ性を高めるコロナ処理等を行ってもよい。また、樹脂成形体の表面の汚れを除去するために、分子接合剤含有溶液を樹脂成形体の表面に塗工する前に、エタノール等を用いた超音波洗浄を行うことが好ましい。
積層体を熱プレス工程またはめっき工程によって積層体を製造後に、積層体の任意の特性を向上させるために、任意の後処理を行ってもよい。例えば、後処理として、金属皮膜を樹脂成形体に接着させた後、アニール処理を行ってもよい。アニール処理を行うことにより、樹脂成形体における結晶化樹脂の結晶化が進行し、機械強度が向上する。また、めっき被膜の改質により耐食性が向上する。
<まとめ>
本態様1に係るポリスチレン基材は、接着性を有するポリスチレン基材であって、前記ポリスチレン基材は、シンジオタクチックポリスチレンを主成分として含む樹脂成形体によって構成されており、1,3,5-トリアジンとアルコキシシリル基またはシラノール基とを有する、分子接合剤に由来する分子接合剤成分が、アミノ基を介して前記樹脂成形体の表面に結合しており、ATR-IR測定において902cm-1におけるピーク強度I902と906cm-1におけるピーク強度I906との強度比I902/I906が1.0未満である。このようなポリスチレン基材は、その樹脂成形体の表面が非晶リッチな状態である。このため、金属皮膜と結合させて積層体を作製する際に、金属皮膜との結合が好適に形成される。
本態様2に係るポリスチレン基材は、前記態様1において、前記分子接合剤は、下記一般式(I)で表される化合物である。
Figure 2023061776000003
(式中、Rは炭素数1~10のアルキレン基であり、R~Rは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基または炭素数1~5のアルキル基であり、R~Rの少なくとも1つはヒドロキシ基または炭素数1~5のアルコキシ基であり、Qは、アジド基または-NRであり、RおよびRは、それぞれ独立に、H、炭素数1~24の炭化水素基、または-R-SiR (OA)3-nであり、Rは、炭素数1~12の鎖状の2価の炭化水素基であり、Rは、炭素数1~4の鎖状の炭化水素基であり、Aは、Hまたは炭素数1~4の鎖状の炭化水素基であり、nは0~3の整数であり、Eは-NH-、-O-、-S-、または-NHCO-である。)
本態様2に係るポリスチレン基材は、分子接合剤によって樹脂成形体と金属皮膜の結合を強固にすることができるため好ましい。
本態様3に係る積層体は、前記態様1または前記態様2に係るポリスチレン基材と、前記分子接合剤成分を介して前記ポリスチレン基材に接着する金属皮膜とを有する、積層体。本態様3のような積層体はポリスチレン基材と金属皮膜との剥離強度が高い。
本態様4に係るポリスチレン基材の製造方法は、前記態様1または前記態様2に係るポリスチレン基材の製造方法であり、275℃以上で溶融押出されたシンジオタクチックポリスチレンを主成分として含む樹脂を、140℃以下の固体冷媒または液体冷媒に直接接触させることにより冷却して、前記樹脂成形体を形成する工程と、前記分子接合剤を前記樹脂成形体に塗布したのち紫外線照射または加熱して、前記分子接合剤を前記樹脂成形体の表面に結合させる工程と、を含むポリスチレン基材の製造方法である。このような製造方法により、樹脂成形体表面が非晶リッチな状態のポリスチレン基材が製造できる。
〔実施例1〕
(シンジオタクチックポリスチレン基材の作製)
シンジオタクチックポリスチレンペレット(出光興産社製、商品名「ザレックS105」)を、短軸50φスクリュー押出機および幅350mmのTダイを用いて、シート状に溶融押出した。押出成形体をニップロールにて2.2m/minで引き取りながら80℃の金属製チルロール上に密着させて冷却し、厚み300μmのシート状の樹脂成形体を得た。樹脂成形体をATR-IR測定に供したところ、樹脂成形体のスペクトル強度比は、I902/I906=0.81であった。
6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1、3、5-トリアジン-2、4-ジアジド(いおう化学研究所)の0.1%エタノール溶液を、バーコーターで樹脂成形体に、厚み30μmのウェット層が形成されるように塗工した。塗工後、乾燥させ、メタルハライドランプを用いて紫外線を100mJ/cm(240~270nm)照射して、ポリスチレン基材(SPSシート1)を得た。
(熱プレス工程)
次いで、厚さ18μmの銅箔(三井金属鉱業社製、商品名「TQ-M4-VSP」)をこのSPSシート1に重ね合わせ、ヒータープレート成形機P4054-00(NPaシステム株式会社)にて140℃(<Tcc)、10MPaの条件で5分間の熱プレスを行い、積層体を作製した。
<分析>
(剥離強度測定)
積層体の剥離強度を測定するために、積層体に5mm幅の切り込みを入れて、金属皮膜を1cm引き剥がした。その後、JIS C 6481に準拠して、オートグラフ(AGS―J、島津製作所社製)を用いて50mm/minで90°剥離試験を行った。結果、本実施例の積層体の剥離強度は、9.5N/cmであった。
(全反射法フーリエ変換赤外吸収スペクトル(ATR-FTIR)測定)
PerkinElmer製spectrum 400 FT-IR/FT-NIR spectrometerを用い、ダイヤモンドプリズムを用い400~4000cm-1を4cm-1毎に8回の積算を行った。得られたスペクトルの902cm-1のピーク強度I902および906cm-1のピーク強度I906の強度比(I902/I906)を算出した。
(X線光電子分光法(XPS)測定)
日本電子製JPS-9010MCを用い、X線源としてMgKα線を単色光化せずに使用した。分析径3mmΦ、光電子取り出し角90°、パスエネルギー10eVとした。帯電対策として中和銃を2mA、2Vで照射し、測定後C1sスペクトルの最大ピークを284.8eVに補正した。
〔比較例1〕
押出成形体をチルロール温度150℃で成形して樹脂成形体を得た以外は実施例1と同じ工程によりSPSシート2を得て、積層体を作製した。SPSシート2および積層体に対して実施例1と同じ分析を実施した。この結果、SPSシート2のATR-IR測定によるスペクトル強度比I902/I906=1.54あり、積層体の接着強度は2.8N/cmであった。
〔実施例2〕
熱プレスを180℃(>Tcc)で実施して積層体を得た以外は、実施例1と同じ工程により積層体を得た。積層体の接着強度は11.2N/cmだった。
〔比較例2〕
熱プレスを180℃(>Tcc)で実施して積層体を得た以外は、比較例1と同じ工程により積層体を得た。積層体の接着強度は6N/cmだった。
〔実施例3〕
実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1、3、5-トリアジン-2、4-ジアジド(いおう化学研究所)の0.1%エタノール溶液を、バーコーターで樹脂成形体に、厚み30μmのウェット層が形成されるように塗工した。塗工後、乾燥させ、メタルハライドランプを用いて紫外線を100mJ/cm(240~270nm)照射した。この操作を3回繰り返し、3回目の紫外線照射後エタノール中で超音波洗浄を10分間行い、その後温風乾燥して、ポリスチレン基材(SPSシート3)を得た。
(めっき工程)
分子接着処理したSPSシート3をプレディップ液(ローム&ハース社、CATAPREP404)に室温で1分間浸漬し、次にキャタリスト液(ローム&ハース社、CATAPOSIT44)に50℃で1分間浸漬した。水洗後、アクセラレータ液(ローム&ハース社、CUPOSIT Accerarator19E)に室温で3分間浸漬した。水洗後、無電解ニッケルめっき液(日本カニゼン、S-680)に35℃で4分間浸漬し、次いで無電解銅めっき液(上村工業、スルカップPEA3)に35℃で1.5分間浸漬した。水洗、温風乾燥後80℃で20分間加熱を行った。その後、硫酸銅めっき浴により20μmまで銅めっきを厚膜化させ、水洗、温風乾燥後80℃で20分間加熱を行った。
<分析>
(接着強度)
積層体に2mm幅の切り込みを入れ、銅箔を1cm引き剥がし、オートグラフ(AGS J、島津)を用いて50mm/minで90°剥離試験を行ったところ、22.1N/cmの剥離強度だった。
(比較例3)
比較例1で作製したSPSシート2を用いた以外は実施例3と同じプロセスにより積層体を得た。接着強度は16.8N/cmであった。
(実施例4)
めっき工程中の加熱処理を180℃で実施した以外は実施例3と同じプロセスを実施した。接着強度は14.9N/cmだった。
(比較例4)
めっき工程中の熱処理を180℃で実施した以外は比較例3と同じプロセスを実施した。接着強度は11.3N/cmだった。
実施例1~4、比較例1~4において、積層体を製造する際の工程の条件と、積層体を分析した結果を表1に示す。
Figure 2023061776000004
表1より、実施例1~4において作製した積層体は、比較例1~4においてSPSシートを変更した以外は、実施例1~4のそれぞれと同様のプロセスによって作製した積層体と比較して、高い剥離強度を示していた。
本発明は、数GHz以上の高周波信号を利用するプリント配線板や、金属、および樹脂材料を組み合わせるマルチマテリアル技術に利用することができる。

Claims (4)

  1. 接着性を有するポリスチレン基材であって、
    前記ポリスチレン基材は、シンジオタクチックポリスチレンを主成分として含む樹脂成形体によって構成されており、
    1,3,5-トリアジンとアルコキシシリル基またはシラノール基とを有する、分子接合剤に由来する分子接合剤成分が、アミノ基を介して前記樹脂成形体の表面に結合しており、
    ATR-IR測定において902cm-1におけるピーク強度I902と906cm-1におけるピーク強度I906との強度比I902/I906が1.0未満である、
    ポリスチレン基材。
  2. 前記分子接合剤は、下記一般式(I)で表される化合物である、請求項1に記載のポリスチレン基材。
    Figure 2023061776000005

    (式中、Rは炭素数1~10のアルキレン基であり、R~Rは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基または炭素数1~5のアルキル基であり、R~Rの少なくとも1つはヒドロキシ基または炭素数1~5のアルコキシ基であり、Qは、アジド基または-NRであり、RおよびRは、それぞれ独立に、H、炭素数1~24の炭化水素基、または-R-SiR (OA)3-nであり、Rは、炭素数1~12の鎖状の2価の炭化水素基であり、Rは、炭素数1~4の鎖状の炭化水素基であり、Aは、Hまたは炭素数1~4の鎖状の炭化水素基であり、nは0~3の整数であり、Eは-NH-、-O-、-S-、または-NHCO-である。)
  3. 請求項1または2に記載のポリスチレン基材と、前記分子接合剤成分を介して前記ポリスチレン基材に接着する金属皮膜とを有する、積層体。
  4. 275℃以上で溶融押出されたシンジオタクチックポリスチレンを主成分として含む樹脂を、140℃以下の固体冷媒または液体冷媒に直接接触させることにより冷却して、前記樹脂成形体を形成する工程と、
    前記分子接合剤を前記樹脂成形体に塗布したのち紫外線照射または加熱して、前記分子接合剤を前記樹脂成形体の表面に結合させる工程と、を含む請求項1または2に記載のポリスチレン基材の製造方法。
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