JP2023060985A - シリンダブロックの冷却構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】ウォータージャケットの内部での所定の箇所における冷却作用を十分に減じ、あるいは必要とする保温性を十分に得ること。【解決手段】スペーサ4は、複数のシリンダ2の配列方向に長いシート部6を有し、シート部6のうち、少なくともシリンダ2の外周壁面に接触する箇所が、その外周壁面の形状に倣って変形する柔軟性を有する柔軟材によって構成され、シート部6の長手方向の両端部に係合部5が設けられ、係合部5を長手方向に対して係合させてシート部6に引張力を作用させることにより柔軟材をシリンダ2の外周壁面に押し付ける一対の止め部11がウォータージャケット3の内部に設けられている。【選択図】図1
Description
本発明は、複数のシリンダが形成されているシリンダブロックを冷却するための構造に関し、特にシリンダの外周側に設けたウォータージャケットに通水するように構成した冷却構造に関するものである。
この種の冷却構造は、内燃機関において従来一般に採用されており、その一例が特許文献1に記載されている。内燃機関におけるシリンダの冷却の必要性は、シリンダの上下方向で一律ではなく、例えばシリンダの上端側は大きく冷却する必要があり、これに対して上下方向での中間部や下端側は、上端側ほど冷却する必要はなく、あるいは相対的には保温性が求められる。このように相異なる要求に応じた冷却を行うために、従来、特許文献1に記載されているように、ウォータージャケットの内部にシート状の介在物を挿入し、その介在物によってウォータージャケットの内部の一部を占めることにより、冷却水の流通容量を調整している。
この種の介在物はスペーサと称されており、特許文献1に記載されたスペーサは、ウォータージャケットへの挿入操作性を向上させるために、概略、以下のような構成としている。特許文献1には、直線上に配列されている複数のシリンダの外周側を囲うウォータージャケットが記載されており、スペーサは、そのウォータージャケットの内部に上端側の開口部から挿入するように、全体として環状に構成されている。その環状のスペーサのうち、シリンダの配列方向での両端部の内面に、弾性体からなる突起部が取り付けられている。スペーサは、その突起部をウォータージャケットの内側側壁(シリンダの外周壁面)に接触させることにより、ウォータージャケットの内部に所定の姿勢で装着されている。また、その突起部が接触する面は、ウォータージャケットの下側でシリンダから遠ざかる傾斜面とされている。すなわち、ウォータージャケットの上端側の開口部は、環状をなすスペーサに対して広く口を開けた状態となっており、スペーサをその開口部から差し込んでウォータージャケットの下側に挿入するのに従ってスペーサをその外側に押し広げて所定の形状となるように構成している。したがって、特許文献1に記載された構造では、ウォータージャケットがスペーサに対して相対的に大きく口を開いているので、スペーサをウォータージャケットに対して挿入する操作が容易になる、とされている。
特許文献1に記載されたスペーサは、ウォータージャケットの開口幅方向(シリンダの半径方向)での中間部に配置されることにより、冷却水の流路幅を減じて冷却水の流通容量を調整するように構成されている。すなわち、特許文献1に記載された構造では、ウォータージャケットのシリンダ側の壁面(内側側壁)とスペーサとの間、およびウォータージャケットのこれとは反対側の壁面(外側側壁)とスペーサとの間に流路が確保されており、シリンダの上下方向(中心軸線に沿う方向)での中間部では、スペーサの厚さが厚くなっていることにより、この部分での中間流路は幅が狭くなっていて、冷却水の流量が少なくなるように構成されている。このような構成では、冷却水の流量が少なくなる分、中間部での冷却が低下する。しかしながら、冷却水が流れているのであるから、熱が連続的に運び去られて冷却が継続的に行われ、しかも流通することに伴って冷却水がいわゆる撹拌状態になってその部分での熱伝達率が大きくなる。そのため、特許文献1に記載された構成では、冷却量の調整が必ずしも十分に行われず、シリンダの上下方向でのいわゆる中間部が過度に冷却され、あるいはその部分の保温性が不十分になる可能性がある。
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、ウォータージャケットの内部での所定の箇所における冷却作用を十分に減じ、あるいは必要とする保温性を十分に得ることのできるシリンダブロックの冷却構造を提供することを目的とするものである。
本発明は、上記の目的を達成するために、複数のシリンダが互いに隣接して配列され、前記シリンダの外周側に冷却水が流通するウォータージャケットが設けられ、前記ウォータージャケットの内部にスペーサが挿入されているシリンダブロックの冷却構造において、前記スペーサは、複数の前記シリンダの配列方向に長いシート部を有し、前記シート部のうち、少なくとも前記シリンダの外周壁面に接触する箇所が、前記外周壁面の形状に倣って変形する柔軟性を有する柔軟材によって構成され、前記シート部の長手方向の両端部に係合部が設けられ、前記係合部を前記長手方向に対して係合させて前記シート部に引張力を作用させることにより前記柔軟材を前記シリンダの外周壁面に押し付ける一対の止め部が前記ウォータージャケットの内部に設けられていることを特徴としている。
本発明では、前記シート部の前記シリンダの外周壁面に接触する箇所を含む全体が前記柔軟材によって構成されていてよい。
本発明では、前記シート部の表裏両面のうち、前記シリンダの外周壁面に接触する表面とは反対側の裏面に、前記シート部よりも低い柔軟性を有しかつ前記シート部の形状保持力を補強する形状保持材が設けられていてよい。
本発明では、前記シート部は、前記柔軟材としてのゴムシートであってよい。
本発明では、一対の前記止め部のそれぞれは、前記ウォータージャケットの内部で前記シリンダの配列方向に離隔して設けられるとともに、前記止め部のそれぞれは、前記係合部を接触させて前記引張力による前記係合部の移動を規制する係止面を有し、前記係止面は、前記シリンダの配列方向での前記係止面同士の間隔が前記ウォータージャケットの底部側で次第に広くなる傾斜面とされていてよい。
本発明によれば、複数のシリンダの外周側に設けられているウォータージャケットの内部にスペーサが挿入され、そのスペーサによってシリンダの外周壁面(すなわちシリンダの内側側壁面)に対する冷却水の接触状態が調整される。そのスペーサは、両端部に係合部が設けられたシート部を有しており、ウォータージャケットの内部に挿入された状態でその長手方向(シリンダの配列方向)に引張力を加えられることにより、その一部がシリンダの外周壁面に押し付けられる。すなわち、ウォータージャケットは、シリンダの外周壁面に沿うように、凹凸に湾曲した形状になっているので、シート部はその長手方向に引っ張られて平坦になろうとするので、シリンダの外周壁面のうち、シリンダの配列方向に対して直交する方向に凸となっている部分にシート部が押し付けられる。シート部のうち、少なくとも、このようにしてシリンダの外周壁面に接触する箇所が柔軟材によって構成されており、その柔軟材はシリンダの外周壁面の形状に倣って変形する柔軟性を有しているから、シリンダの外周壁面に隙間なく密着する。このようにして、当該箇所では冷却水の流れる流路が解消されるので、シリンダのうち当該箇所もしくはその近傍の保温性を向上させることができる。また、本発明では、係合部を介してシート部に引張力を付与することにより柔軟材をシリンダの外周壁面に密着させることができるので、シート部をシリンダの外周壁面に向けて押し付けるなどの特別な部材をシリンダごとに設ける必要がなく、冷却構造の全体としての構成を簡素化することができる。
また、本発明では、両端部に係合部が設けられているシート部の全体を柔軟材によって構成することにより、スペーサの構成を簡素化することができる。
その場合、全体が柔軟材となっているシート部のいわゆる裏面に形状保持材を設けることにより、スペーサの形状保持性が良好になる。そのため、スペーサをウォータージャケットに挿入する際に、シート部の形状をウォータージャケットの開口部の形状に倣った形状に湾曲させれば、スペーサ自体がその形状を保持するので、ウォータージャケットに挿入しやすくなり、作業性を向上させることができる。
さらに、本発明では、シート部の全体をゴムシートによって構成することにより、シート部がその長手方向へ弾性的に伸縮できるようになるので、ウォータージャケットの内部に組付けるのにあたって、係合部を介してシート部をその長手方向に引っ張った場合にシート部が直ちに破断するなどのことがなく、あるいは引張力を細かく調整する必要がないなど、スペーサのウォータージャケットに対する組付け性を向上させることができる。
そして、本発明では、一対の止め部の間隔がウォータージャケットの底部側で次第に拡大しているので、係合部をその止め部の上端側に係合させた状態から次第にウォータージャケットの内部に挿入することにより、スペーサを所定の引張力を付与した状態でウォータージャケットの内部に組み付けることができる。すなわち、スペーサをウォータージャケットに挿入する最初の時点では、スペーサに引張力を特には付与する必要がなく、したがってスペーサをウォータージャケットに挿入する作業性を向上させることができる。
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を具体化した場合の例に過ぎないのであって、本発明を限定するものではない。
図1は本発明の実施形態を示し、本発明を適用したシリンダブロック1をシリンダ2の上側から見た平面図である。ここに示すシリンダブロック1には、図1の左右方向に並んだ4本のシリンダ2が形成されており、さらにそれらのシリンダ2の外周側にそれらのシリンダ2を包囲するようにウォータージャケット3が形成されている。ウォータージャケット3は、従来知られているオープンデッキ構造であり、シリンダヘッド(図示せず)を取り付ける上面に開口しかつ底部を有する窪み部もしくは溝状の部分であり、図2にその断面形状を示してある。シリンダブロック1は、一例として、アルミニウム合金を高圧鋳造して造られ、それに伴ってウォータージャケット3には所定の抜き勾配が設定され、図2に示すように上側(シリンダ2の中心軸線方向での上側)での幅Wuが下側での幅Wbより広くなっている。また、図1に示す例では、ウォータージャケット3は、4本のシリンダ2の全体を取り囲まずに、シリンダ2の配列方向での左右両側と、その配列方向での一端部側とを囲んでいる。以下、仮に、ウォータージャケット3のうち図1の上側の部分を上ジャケット部3a、下側の部分を下ジャケット部3b、図1の左端部側の部分を端部ジャケット部3cとする。
ウォータージャケット3は、冷却水(図示せず)を流通させてシリンダ2を冷却するためのものであるから、シリンダ2の外周壁面に倣って凹凸(シリンダ2の半径方向での凹凸)に湾曲している。なお、特には図示していないが、ウォータージャケット3に対して冷却水を送り込む供給口がシリンダブロック1の所定の箇所に設けられており、また、シリンダブロック1の上面に密着して配置されるガスケットには、ウォータージャケット3の開口部に対応して冷却水の排出口が形成されている。
図1に示す例では、ウォータージャケット3のうち下ジャケット部3bの内部に、冷却水の流通を調整するためのスペーサ4が挿入されている。そのスペーサ4の一例を図3に示してある。スペーサ4は、全体として、上記のシリンダ2の配列方向(図1の左右方向)に長いシート状もしくは帯状の部材であり、その長手方向の両端部に、引き留めのための係合部5がそれぞれ設けられている。すなわち、スペーサ4は、両端部に係合部5が設けられているシート部6を有しており、そのシート部6は、ウォータージャケット3の湾曲形状に倣った形状になるように可撓性を有する薄い帯状の部分である。より具体的には、シート部6はゴム製(ゴムシート)であってよく、このような構成とした場合には、スペーサ4は弾性的に伸縮する伸縮性、およびウォータージャケット3の内側側壁(シリンダ2の外周壁)31の表面形状に倣って変形して密着する柔軟性を備えることになる。すなわち、シート部6を構成するゴムが本発明の実施形態における柔軟材に相当する。
全体をゴム製とした上記のシート部6の表裏両面のうち裏面(シリンダ2側とは反対側の面)に形状保持材7が設けられている。シート部6をゴム製のシートとした場合、柔軟性に優れるものの、自らの形状を保持するいわゆる形状保持力が不足し、例えばスペーサ4をウォータージャケット3に挿入するべくウォータージャケット3の湾曲形状に曲げたとしてもその形状を維持することが困難であり、ウォータージャケット3に対する組付けあるいは挿入の作業が難しくなる。形状保持材7はこのような作業性の悪化を解消するために設けられており、したがって形状保持材7は、シート部6より柔軟性もしくは可撓性が低い素材によって造られている。例えば、形状保持材7は、アルミニウムや銅などの展延性があって塑性変形しやすい金属製の薄板であってよい。なお、この形状保持材7は、係合部5には連結されていないので、スペーサ4の全体としてはシート部6の長手方向での弾性を有している。
係合部5は、止めピンと称することのできる部分であって、要は、スペーサ4にその 長手方向の引張力が作用した場合に、その引張力をシリンダブロック1に伝達して長手方向の移動を阻止するための部分である。その一例を図4に示してある。ここに示す係合部5は、下側が細くなっているテーパ状の樹脂製ピンであり、その中心軸線に沿ってスリット8が形成されている。このスリット8は、上記のシート部6を差し込む部分であり、したがって、シート部6の厚さ程度の幅になっている。また、係合部5の長さ(図3および図4での上下方向での寸法)は、シート部6の幅(図3および図4での上下方向での寸法)より大きくなっている。一方、シート部6の端部には、スリット8の開口幅より大きい幅の頭部9がシート部6の幅方向の全長に亘って設けられている。すなわち、シート部6をスリット8に差し込んだ状態では、頭部9がスリット8の開口端に引っ掛かってシート部6と係合部5とが、シート部6の長手方向で一体化するようになっている。
さらに、係合部5の上端中央部には、細い軸部10が一体に設けられており、この軸部10の上端から係合部5の下端(テーパ状の部分の下端)までの寸法(軸長)がウォータージャケット3の深さ程度になっている。したがって、シート部6は、係合部5の上下方向での中央部に連結されているので、係合部5をウォータージャケット3の底部まで挿入した状態では、シート部6がウォータージャケット3の深さ方向(上下方向)での中間部に位置するようになっている。
上記の係合部5を引っ掛けてシート部6に引張力を付与した状態でスペーサ4をウォータージャケット3の内部に保持し、固定する一対の止め部11が、ウォータージャケット3に設けられている。この止め部11は、係合部5がシート部6の引張力によってその長手方向(係合部5同士が相互に接近する方向)に移動することを阻止する部分であり、上述した下ジャケット部3bの両端部(シリンダ2の配列方向である図1の左右方向での両端部)に設けられている。これらの止め部11は、ウォータージャケット3の一部の幅を上述した係合部5におけるテーパ状の部分の外径より小さくした部分であり、図5に示すように、ウォータージャケット3における前述した内側側壁31に対向する外側側壁32の一部を内側に突出させて、内側側壁31との間隔を狭くすることにより形成されている。なお、一対の止め部11は、互いに対称となる形状であり、図5はその一方のみを示してある。
止め部11における前記係合部5が接触する面は係合部5あるいはスペーサ4をウォータージャケット3の内部に固定するように機能する係止面11aであって、図6に示すように傾斜面となっている。図6は図5におけるVI-VI線に沿う断面図であって、係止面11aは、上述した外側側壁32のうち内側側壁31に向けて突出した部分の壁面であり、その傾斜方向は、ウォータージャケット3の上部開口端側が他方の止め部11側に寄っており、またウォータージャケット3の底部側が他方の止め部11から遠ざかっている向きである。言い換えれば、図1の左右両側の係止面11a同士の間隔(スペーサ4の長手方向もしくはシリンダ2の配列方向での間隔)は、上端部側での間隔Luが、下端部側の間隔Lbより小さくなっている。
そして、各止め部11の上下方向での中間部もしくは下端に寄った箇所同士の間隔Lcは、各係合部5を互いに遠ざけてシート部6に長手方向の引張力を付与し、シート部6をいわゆる張った状態に設定する間隔としてある。なお、その係止面11aとシリンダ2の中心軸線に平行な軸線Aとの間の傾斜角度θは、上述した係合部5におけるテーパ角の半分の角度であることが好ましく、こうすることにより係合部5と係止面11aとを線接触もしくは面接触させることができる。
つぎに、上述したスペーサ4をウォータージャケット3に挿入する手順について説明すると、先ず、スペーサ4をウォータージャケット3の湾曲形状に合わせて湾曲させる。上述したスペーサ4では、ゴム製のシート部6にアルミニウムなどからなる形状保持材7がいわゆる裏打ちされているので、その形状保持材7をウォータージャケット3に倣って湾曲させることによりシート部6が所定の形状に湾曲し、かつその形状を保持する。なお、付言すると、その湾曲形状は、シリンダ2の外周側に位置する部分がシリンダ2の外周壁面に沿って円弧状に膨らみ、これに対してシリンダ2同士の間に位置する部分が、シリンダ2の間の部分に食い込むように小さい曲率半径で窪んだ形状である。
スペーサ4の形状を上記のように整えた状態で、シート部6の両端部に設けてある係合部5を上述した止め部11の係止面11aに沿わせてウォータージャケット3に差し込む。その場合、係止面11a同士の上端部付近での間隔Luは、上記のように形状を整えた状態における係合部5同士の間隔(内法としての間隔)より広くなっている。したがって、係合部5を止め部11に合わせるべくシート部6を引っ張ったり、それに伴ってシート部6の形が崩れたりすることがないので、スペーサ4をウォータージャケット3に容易に挿入することができる。言い換えれば、挿入作業性の良好な構造とすることができる。
スペーサ4をウォータージャケット3の内部に更に深く挿入し、例えば係合部5の下端がウォータージャケット3の底部に当接するまで挿入すると、止め部11の係止面11aに沿って係合部5がシート部6の長手方向で外側に向けてガイドされ、係合部5同士の間隔が拡がる。その場合、シート部6を上述したようにゴム製とすれば、シート部6自体が弾性を有しているので、シート部6をある程度強く引っ張ることになってもシート部6が破断するおそれがない。そのため、係合部5同士の間隔を正確に調整するなどの作業を解消できるので、スペーサ4の組付け(挿入)作業性が向上する。
係合部5同士の間隔が拡がると、シート部6に対して引張力が作用し、シート部6が平坦になろうとする。図1に示すように、シート部6のうちシリンダ2の外周壁面に対応する箇所(ウォータージャケット3の内側側壁31のうちシリンダ2の外周側に相当する箇所)は、両端部の係合部5を結んだ線に対して直交方向(図1の下側)に突き出ているから、引張力によって平坦になろうとするシート部6のうちシリンダ2の外周壁面に対向する箇所が、シリンダ2の外周壁面に押し付けられる。したがって、上述した構造では、シート部6をシリンダ2の外周壁面に向けて押すための突起部などの特別な構造を必要としないので、冷却構造の全体としての構成を簡素化することが可能である。
シート部6(スペーサ4)のうち、このようにしてシリンダ2の外周壁面に押し付けられる箇所は、シート部6の全体がゴム製であることにより、柔軟材となっている。その柔軟材は、シリンダ2の外周壁面の表面の局部的な異形や傷、付着した異物などによる凹凸に倣って変形するから、結局、シリンダ2の外周壁面のうちウォータージャケット3側に大きく突出している箇所にシート部6が密着する。その結果、当該箇所の表面がシート部6によって覆われて、冷却水が直接接触したり、当該箇所の表面を冷却水が流動したりすることが回避されるので、シリンダ2のうちシート部6が密着している上下方向での中間部の保温性が良好になる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないのであって、上述した実施形態の一部を変更して実施することができる。すなわち、本発明の冷却構造では、スペーサのうちシリンダの外周壁面に接触する箇所が、当該外周面の表面の状態に倣って変形する柔軟性を有していればよく、したがってシート部の全体を柔軟材によって構成する代わりに、シリンダの外周壁面に接触する箇所のみを柔軟材によって構成してもよい。その場合、当該柔軟材を取り付けるシート部はウォータージャケットの形状に沿うように変形できる可撓性を有していればよく、弾性はその素材の元来の弾性であってよく、あるいはメッシュシートのように伸縮性を有するものであってもよい。また、本発明における係合部は、止め部における傾斜面に線接触もしくは面接触するように傾斜した面を有していることが好ましいが、必ずしもテーパ形状である必要はない。さらに、その係合部にシート部を連結する構成は、上述したスリットとそのスリットに差し込まれるシート部における頭部とによる構成に限られないのであり、シート部や係合部の素材の性質あるいは特性などに応じて適宜の構成を採用してよい。またさらに、スペーサは、上述したいわゆる下ジャケット部3bに限らず上ジャケット部3aに設けてもよく、あるいはウォータージャケットの全体に設けてもよい。
1 シリンダブロック
2 シリンダ
3 ウォータージャケット
3a 上ジャケット部
3b 下ジャケット部
3c 端部ジャケット部
4 スペーサ
5 係合部
6 シート部
7 形状保持材
8 スリット
9 頭部
10 軸部
11 止め部
11a 係止面
31 内側側壁
32 外側側壁
2 シリンダ
3 ウォータージャケット
3a 上ジャケット部
3b 下ジャケット部
3c 端部ジャケット部
4 スペーサ
5 係合部
6 シート部
7 形状保持材
8 スリット
9 頭部
10 軸部
11 止め部
11a 係止面
31 内側側壁
32 外側側壁
Claims (5)
- 複数のシリンダが互いに隣接して配列され、前記シリンダの外周側に冷却水が流通するウォータージャケットが設けられ、前記ウォータージャケットの内部にスペーサが挿入されているシリンダブロックの冷却構造において、
前記スペーサは、複数の前記シリンダの配列方向に長いシート部を有し、
前記シート部のうち、少なくとも前記シリンダの外周壁面に接触する箇所が、前記外周壁面の形状に倣って変形する柔軟性を有する柔軟材によって構成され、
前記シート部の長手方向の両端部に係合部が設けられ、
前記係合部を前記長手方向に対して係合させて前記シート部に引張力を作用させることにより前記柔軟材を前記シリンダの外周壁面に押し付ける一対の止め部が前記ウォータージャケットの内部に設けられている
ことを特徴とするシリンダブロックの冷却構造。
- 請求項1に記載のシリンダブロックの冷却構造において、
前記シート部の前記シリンダの外周壁面に接触する箇所を含む全体が前記柔軟材によって構成されていることを特徴とするシリンダブロックの冷却構造。
- 請求項2に記載のシリンダブロックの冷却構造において、
前記シート部の表裏両面のうち、前記シリンダの外周壁面に接触する表面とは反対側の裏面に、前記シート部よりも低い柔軟性を有しかつ前記シート部の形状保持力を補強する形状保持材が設けられている
ことを特徴とするシリンダブロックの冷却構造。
- 請求項2または3に記載のシリンダブロックの冷却構造において、
前記シート部は、前記柔軟材としてのゴムシートであることを特徴とするシリンダブロックの冷却構造。
- 請求項1ないし4のいずれか一項に記載のシリンダブロックの冷却構造において、
一対の前記止め部のそれぞれは、前記ウォータージャケットの内部で前記シリンダの配列方向に離隔して設けられるとともに、
前記止め部のそれぞれは、前記係合部を接触させて前記引張力による前記係合部の移動を規制する係止面を有し、
前記係止面は、前記シリンダの配列方向での前記係止面同士の間隔が前記ウォータージャケットの底部側で次第に広くなる傾斜面とされている
ことを特徴とするシリンダブロックの冷却構造。
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