JP2023058199A - 殺菌用組成物、殺菌用組成物の製造方法、および殺菌方法 - Google Patents

殺菌用組成物、殺菌用組成物の製造方法、および殺菌方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一般消費者を含む使用者が除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行うのに適し、保存安定性が高い殺菌用組成物を提供する。【解決手段】水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、強酸を含有せず、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHが10.8以上であり、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、pHが下記式1の数式で求めたpHよりも高い、殺菌用組成物である。y=-71.311x2+37.203x+7.74 (ここで、yは、pH、xは、有効臭素濃度[%]を表す。) (式1)【選択図】なし

Description

本発明は、殺菌対象物の除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行うための殺菌用組成物、その殺菌用組成物の製造方法、およびその殺菌用組成物を用いて殺菌対象物の除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行う殺菌方法に関する。
2019年末から現在にかけて急拡大している新型コロナウイルス(CoVid-19)は歴史的なパンデミックとなっている。この事象により、消費者行動が大きく変わり、特に家庭内や飲食店等では、住宅の壁、ドア、床、家具、台所流し台、洗濯機、浴室、厨房、飲食用テーブル、椅子等、ありとあらゆる箇所の除菌、抗菌、消毒、または殺菌を自ら率先して行うようになった。
有効な除菌、抗菌、消毒、または殺菌方法として、日本においては、十分な供給が可能であり、かつ有効な効果のある化学物質として、次亜塩素酸ナトリウムやエタノールが挙げられる。さらに、日本の製品評価技術基盤機構(NITE:National Institute of Technology and Evaluation)が2020年6月に公表した「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(最終報告)」において、各種界面活性剤や石けん、次亜塩素酸水、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等も有効であるとされている。
しかしながら、一般消費者を含む使用者がこれらの物質を自ら取扱う場合、様々なリスクがある。例えば、エタノールは、新型コロナウイルス(CoVid-19)のようなエンベロープを有するウイルスには有効であるが、エンベロープを有さない、例えば、ノロウイルスには有効に働かない。
次亜塩素酸ナトリウムに関しては、市販されているものは、有効塩素濃度が6~12重量%(60,000~120,000mgCl/L)程度のものが多く、一般消費者を含む使用者がこれを使用する場合は、酸との混合による塩素ガスの発生のリスクや、水による希釈においても濃度調整ミスにより、低濃度による効果不足、または高濃度による各種弊害が生じるリスクがある。高濃度による弊害としては、密閉空間の塩素ガス臭気による不快性、金属物への接触による腐食、人体への皮膚刺激等が挙げられる。また、次亜塩素酸ナトリウムを、日本の経済産業省が2020年7月6日に公表した「新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌方法(一覧)」で推奨される0.05重量%(500mgCl/L)以上に濃度調整することができたとしても、拭き掃除のときに塩素ガス臭気による不快性が生じるリスクがある。
固形物であるジクロロイソシアヌル酸ナトリウムに関しては、本質的には次亜塩素酸ナトリウムと同じリスクがある。次亜塩素酸水に関しては、NITEの上記報告において、有効塩素濃度35mgCl/L以上で、新型コロナウイルス(CoVid-19)に有効であるとされているが、市販の次亜塩素酸水は、有効塩素濃度35mgCl/L以上を長期的に安定させることが困難であり、効果不足となる濃度となるリスクがあること、また経産省の上記報告において、次亜塩素酸水を用いた「拭き掃除」においては、その有効塩素濃度を80mgCl/L以上で推奨しているが、実際上は有効塩素濃度を80mgCl/L以上に保ちながらの供給は非常に困難であるという問題がある。
界面活性剤や石けんは、ある程度の効果が認められるものの、効果が認められる使用濃度が0.1重量%程度以上と高く、また瞬時に除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行うことが困難であり、さらにその廃水が環境負荷を大きくかけることから使用が好ましいとは言えない。
このように、一般消費者を含む使用者が除菌、抗菌、消毒、または殺菌を目的に、既存で推奨されている化学物質を使用する場合は、なんらかのリスクや問題を抱えていた。
一方、特許文献1には、次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤よりも、臭素系酸化剤は金属腐食性が緩和されることについて記載されている。さらに臭素系酸化剤のpHが14以上であれば臭素酸の発生量が5mg/L以下に抑制が可能であったが、最終組成物のpHがpH10.1とpHが低い場合、臭素酸が発生している。すなわち酸性条件下では製品自体の安定性が悪く、排水規制物質でもある臭素酸を発生してしまうことがわかる。
また、特許文献2には、水と、水処理剤組成物全体の量に対する有効臭素濃度として1~16.5質量%の臭素系酸化剤と、臭素系酸化剤のモル量に対して0.7~2.0倍当量のスルファミン酸と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、pHが12.5以上であり、かつ水処理剤組成物全体の量に対する水分の濃度が54質量%以上である、臭素系酸化剤組成物が記載されている。
この臭素系酸化剤組成物の有効臭素濃度は、有効塩素濃度に換算すると4400mgCl/Lから73300mgCl/Lと高く、また組成物のpHは12.5以上である。pHが高いだけで殺菌力があるため、pHによる効果と酸化剤による相乗した消毒効果が見込めるが、pHが高いと一般消費者を含む使用者が除菌、抗菌、消毒、または殺菌として用いるには手荒れが生じる等のリスクがある。
このような高濃度の酸化剤を一般消費者を含む使用者に安全に届けるために、高濃度の酸化剤を低濃度に調整し、提供することが望ましいが、特許文献1には、次亜ハロゲン酸の水処理剤組成物は、一般消費者の使用に適したpH(12.5未満)での保存安定性について述べられておらず、さらに特許文献2には混合組成の割合を調整して凍結点が-5℃以下となる組成が記載されているが、保存安定性についての記載はなく、pH12.5未満の有効成分の安定性は述べられていない。
また、上記臭素系酸化剤組成物を所定の濃度に調整する場合において、アルカリ性酸化剤であるpH14の原料に対して、pH調整をするために強酸を添加してpH調整することは、強酸添加による中和熱の発生や、過剰な強酸添加によるハロゲンガスの発生等に繋がるため、望ましくない。
特許5918109号公報 特開2018-090513号公報
本発明の目的は、一般消費者を含む使用者が除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行うのに適し、保存安定性が高い殺菌用組成物、殺菌用組成物の製造方法、およびその殺菌用組成物を用いる殺菌方法を提供することにある。
本発明は、水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、強酸を含有せず、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHが10.8以上であり、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、pHが下記式1の数式で求めたpHよりも高い、殺菌用組成物である。
y=-71.311x+37.203x+7.74 (ここで、yは、pH、xは、有効臭素濃度[%]を表す。) (式1)
前記殺菌用組成物において、pHが12.5未満であることが好ましい。
前記殺菌用組成物において、前記臭素系酸化剤の当量に対して1.0~2.0倍当量の範囲の前記スルファミン酸化合物を含有することが好ましい。
前記殺菌用組成物において、30℃で1時間保管後のハロゲンガスの発生量が、0.05mg/L以下であることが好ましい。
前記殺菌用組成物において、前記臭素系酸化剤が、臭素であることが好ましい。
本発明は、水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、pHが12.5以上であり、かつ有効臭素濃度が1.4%から22.5%の範囲である水処理組成物を、強酸を含有せずに希釈して、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHを10.8以上にし、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、下記式1の数式で求めたpHよりも高くなるように調整する、殺菌用組成物の製造方法である。
y=-71.311x+37.203x+7.74 (ここで、yは、pH、xは、有効臭素濃度[%]を表す。) (式1)
前記殺菌用組成物の製造方法において、前記殺菌用組成物のpHが12.5未満であることが好ましい。
前記殺菌用組成物の製造方法において、前記殺菌用組成物は、前記臭素系酸化剤の当量に対して1.0~2.0倍当量の範囲の前記スルファミン酸化合物を含有することが好ましい。
前記殺菌用組成物の製造方法において、前記殺菌用組成物は、30℃で1時間保管後のハロゲンガスの発生量が、0.05mg/L以下であることが好ましい。
前記殺菌用組成物の製造方法において、前記臭素系酸化剤が、臭素であることが好ましい。
本発明は、前記殺菌用組成物、または前記殺菌用組成物の製造方法で得られる殺菌用組成物を用いて、全ハロゲン残留物が有効臭素濃度0.00002%から0.225%の範囲となるように殺菌対象物に添加し、殺菌対象物の除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行う、殺菌方法である。
本発明によって、一般消費者を含む使用者が除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行うのに適し、保存安定性が高い殺菌用組成物、殺菌用組成物の製造方法、およびその殺菌用組成物を用いる殺菌方法を提供することができる。
実施例1および比較例1における有効臭素濃度(%)とpHとの関係を示すグラフである。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<殺菌用組成物>
本発明の実施形態に係る殺菌用組成物は、水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、強酸を含有せず、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHが10.8以上であり、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、pHが下記式1の数式で求めたpHよりも高い組成物である。本実施形態に係る殺菌用組成物は、例えば、水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、pHが12.5以上であり、かつ有効臭素濃度が1.4%から22.5%の範囲である水処理組成物を、強酸を含有せずに希釈して、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHを10.8以上にし、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、pHを下記式1の数式で求めたpHよりも高くなるように調整した組成物である。
y=-71.311x+37.203x+7.74 (ここで、yは、pH、xは、有効臭素濃度[%]を表す。) (式1)
本発明者らは、鋭意検討の結果、水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、強酸を含有せず、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHが10.8以上であり、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、pHが上記式1の数式で求めたpHよりも高い組成物が十分な安定性を有することを見出した。また、本発明者らは、例えば、水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、pHが12.5以上であり、かつ有効臭素濃度が1.4%から22.5%の高濃度である水処理組成物を、強酸を含有せずに希釈して、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHを10.8以上にし、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、pHを上記式1の数式で求めたpHよりも高くなるように調整することによって、製造工程において酸を添加するというリスクを取らなくても、十分な安定性を有する組成物が得られることを見出した。
本実施形態に係る殺菌用組成物は、一般消費者を含む使用者が除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行うのに適する、pH10.8以上で、かつ安全性が高く、かつ保存安定性が高い組成物である。本実施形態に係る殺菌用組成物は、安定化された次亜臭素酸塩系溶液であり、従来の次亜塩素酸ナトリウム水溶液では達成し得なかった、長期の保存安定性を得ることができる。また、新型コロナウイルス(CoVid-19)のようなエンベロープを有するウイルスだけではなく、従来の高濃度エタノール溶液では達成できなかった、エンベロープを持たないノロウイルスのようなウイルスに対しても、非常に高い除菌効果、抗菌効果、消毒効果、または殺菌効果を有する。
「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む」とは、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物を含んでもよいし、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物を含んでもよい。
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩、次亜臭素酸等が挙げられる。次亜臭素酸は、臭化ナトリウム等の臭素化合物と次亜塩素酸等の塩素系酸化剤とを反応させて生成させたものであってもよい。
これらのうち、臭素を用いた「臭素とスルファミン酸化合物(臭素とスルファミン酸化合物の混合物)」または「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む組成物は、「臭素化合物と次亜塩素酸とスルファミン酸化合物」の組成物等に比べて、臭素酸の副生が少なく、金属に対する腐食性が低いため、殺菌用組成物としてはより好ましい。
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウムおよび臭化水素酸等が挙げられる。これらのうち、製剤コスト等の点から、臭化ナトリウムが好ましい。
塩素系酸化剤としては、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸またはその塩、亜塩素酸またはその塩、塩素酸またはその塩、過塩素酸またはその塩、塩素化イソシアヌル酸またはその塩等が挙げられる。これらのうち、塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウム等の亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケル等の他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウム等の塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩素系酸化剤としては、取り扱い性等の点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
スルファミン酸化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物である。
NSOH (1)
(式中、Rは独立して水素原子または炭素数1~8のアルキル基である。)
スルファミン酸化合物としては、例えば、2個のR基の両方が水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)の他に、N-メチルスルファミン酸、N-エチルスルファミン酸、N-プロピルスルファミン酸、N-イソプロピルスルファミン酸、N-ブチルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N,N-ジメチルスルファミン酸、N,N-ジエチルスルファミン酸、N,N-ジプロピルスルファミン酸、N,N-ジブチルスルファミン酸、N-メチル-N-エチルスルファミン酸、N-メチル-N-プロピルスルファミン酸等の2個のR基の両方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N-フェニルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数6~10のアリール基であるスルファミン酸化合物、またはこれらの塩等が挙げられる。スルファミン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩、アンモニウム塩およびグアニジン塩等が挙げられる。スルファミン酸化合物およびこれらの塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルファミン酸化合物としては、環境負荷等の点から、スルファミン酸(アミド硫酸)を用いるのが好ましい。
殺菌用組成物のpHは、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、10.8以上であり、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、上記式1の数式で求めたpHよりも高い。殺菌用組成物のpHは、12.5未満であることが好ましく、12.0以下であることがより好ましい。
有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間において殺菌用組成物のpHが10.8未満の場合、または有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間において殺菌用組成物のpHが上記式1で求めたpH以下の場合は、安定性は不良となるため、長期に渡り滞留する在庫品(例えば、在庫期間が3ヵ月以上)として、製品提供することは困難となる。そのような場合、希釈用の原料として、水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、pHが12.5以上であり、有効臭素濃度が1.4%から22.5%の高濃度である水処理組成物を用いて、組成中のアルカリの配合量を調整することによって、希釈した際に、実際のpHがpH10.8以上、または上記式1で求めたpHよりも上回ることが可能となり、そのような手段を用いてもよい。殺菌用組成物のpHが10.8未満であると、酸添加による中和熱の発生や、ハロゲンガス発生リスクが高まる可能性がある。殺菌用組成物のpHが12.5を超えると、取り扱いのときに手荒れ等が生じる場合があり、使用者環境として好ましくない。
なお、本明細書において殺菌用組成物が「強酸を含有しない」とは、意図せず強酸を含有しないことを指し、殺菌用組成物中に強酸を実質的に含有しないこと、具体的には、殺菌用組成物中の強酸の含有量が0.0001重量%未満であることを言う。また、ここで言う「強酸」とは、硫酸、塩酸、硝酸、ヨウ化水素、過塩素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過臭素酸等の無機酸である。
殺菌用組成物の密閉下、30℃で1時間保管後のハロゲンガスの発生量は、0.05mg/L以下であることが好ましく、0.025mg/L以下であることがより好ましい。
殺菌用組成物の有効臭素濃度は、有効塩素濃度換算では、30~2500mgCl/Lの範囲であり、好ましくは、50~1000mgCl/Lの範囲である。
なお、特許文献1に記載の水処理剤組成物において、有効臭素濃度として1~16.5質量%の臭素系酸化剤を含むが、臭素(Br)の分子量が159.8、塩素(Cl)の分子量が70.9であることから、有効塩素濃度に換算すると、有効臭素濃度1%は、有効塩素濃度が1÷159.8×70.9=0.44%となり、特許文献1の有効塩素濃度0.44%、比重は1.0g/mLであることから、0.44%の有効塩素濃度は(0.44wt%=0.44g/100g=0.44(g)×1000(mg))÷((100(g)/1.0(g/mL))/1000(L))=4400mgCl/L(有効数字2桁)となる。同様の計算をすると、有効臭素濃度として1から16.5質量%は、有効塩素濃度(mgCl/L)4400mgCl/Lから73300mgCl/Lとなる。
本実施形態に係る殺菌用組成物において、「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比は、1.0以上であることが好ましく、1.0以上2.0以下の範囲であることがより好ましく、1.05以上1.5以下の範囲であることがさらに好ましい。「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比が1.0未満であると、臭素濃度が著しく低下する場合があり、2.0を超えると、製造コストが増加する場合がある。
本実施形態に係る殺菌用組成物において、さらにアルカリを配合する。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が挙げられる。低温の製品安定性等の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用してもよい。また、アルカリは、固形でなく、水溶液として用いてもよい。
菌やウイルス等が有機物等へ付着している場合等を鑑み、有機物等への安定化次亜臭素酸組成物の浸透性を高めるため、殺菌用組成物に助剤を配合することも有効である。助剤の代表的な化学物質としては、界面活性剤が挙げられる。安定化次亜臭素酸組成物の浸透性が高まることによって、除菌、抗菌、消毒、殺菌、不活性の効果を高めることができる。
配合される界面活性剤としては、従来から知られている物質を使用することができる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、従来から洗剤等において使用されるものが挙げられ、特に限定されるものではなく、各種のアニオン界面活性剤を使用することができる。例えば、以下のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
アニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸、アシル乳酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、直鎖アルキルナフタレンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩等のアルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩アルキルリン酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、N-デシル-N-イソノニル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩の他に、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、N-メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩等のアミン塩系、アルキルアミン塩酸塩、脂肪酸アミドアミン塩等のアミン塩類、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル型および多価アルコールアルキルエーテル型、脂肪酸アルカノールアミド、低級/高級アルコールのエチレンオキシド/プロピレンオキシド付加物、ショ糖脂肪酸塩エステル、アルカノールアミド等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルイミダゾリン型ベタイン等が挙げられる。
界面活性剤は、1種または2種以上の混合物として使用することができ、界面活性剤の添加量は、殺菌用組成物の全体量に対して例えば0.1~20重量%の範囲、好ましくは0.1~10重量%の範囲、より好ましくは0.1~5重量%の範囲となる量である。
本実施形態に係る殺菌用組成物は、上記各成分の残分として、水を含む。水としては、水道水、純水、超純水等が挙げられる。
<殺菌用組成物の製造方法>
本実施形態に係る殺菌用組成物の製造に用いる水処理組成物は、例えば、水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とアルカリとを混合することにより得られ、さらに界面活性剤を混合してもよい。例えば、得られた、水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、pHが12.5以上であり、かつ有効臭素濃度が1.4%から22.5%の範囲である水処理組成物を、強酸を含有せずに水で希釈して、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHを10.8以上にし、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、上記式1の数式で求めたpHよりも高くなるように調整することによって、本実施形態に係る殺菌用組成物を得ることができる。
臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌用組成物の製造方法としては、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程、または、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含むことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる、または、不活性ガス雰囲気下で添加することにより、殺菌用組成物中の臭素酸イオン濃度が低くなる。
用いる不活性ガスとしては限定されないが、製造等の面から窒素およびアルゴンのうち少なくとも1つが好ましく、特に製造コスト等の面から窒素が好ましい。
臭素の添加の際の反応器内の酸素濃度は6%以下が好ましいが、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。臭素の反応の際の反応器内の酸素濃度が6%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。
臭素の添加率は、殺菌用組成物全体の量に対して25重量%以下であることが好ましく、1重量%以上22.5重量%以下であることがより好ましい。臭素の添加率が殺菌用組成物全体の量に対して25重量%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。1重量%未満であると、抗菌または除菌、消毒効果が劣る場合がある。
臭素添加の際の反応温度は、0℃以上25℃以下の範囲に制御することが好ましいが、製造コスト等の面から、0℃以上15℃以下の範囲に制御することがより好ましい。臭素添加の際の反応温度が25℃を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、0℃未満であると、凍結する場合がある。
<殺菌方法>
本実施形態に係る殺菌方法は、上記殺菌用組成物を用いて殺菌対象物の除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行う方法である。本明細書において、「殺菌用組成物」、「殺菌対象物」および「殺菌方法」等における「殺菌」には、ある物質または限られた空間等より微生物を除去、低減する「除菌」、製品等の表面上等における細菌の増殖を抑制する「抗菌」、微生物のうち病原性のあるものを殺滅、除去、低減する「消毒」、細菌等の微生物を死滅させる「殺菌」の他に、製品上等のウイルスの数を減少させる「抗ウイルス」、カビの生育を抑制する「防カビ」等も含まれる。なお、1999年5月20日に通商産業省生活産業局が発行した「抗菌加工製品ガイドライン 抗菌製品技術協議会」に各用語について定義等が記載されている。
殺菌対象物は、特に制限はなく、例えば、家庭内、飲食店、工場、オフィス等における、壁、ドア、床、家具、台所流し台、洗濯機、浴室、厨房、飲食用テーブル、椅子、オフィス用品、家庭用品、食品容器、繊維、室内空間、クリーニング工場、車両内外、食品工場、食肉工場、家畜場等の除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行うことができる。
例えば、本実施形態に係る殺菌方法は、殺菌対象物を除菌、抗菌、消毒、または殺菌することができればよく、特に制限はないが、例えば、殺菌用組成物を殺菌対象物へ噴霧する、清掃工程用の布等に染み込ませて拭き掃除を行う、さらに殺菌用組成物を希釈をして機器や殺菌対象物等を浸漬させる等の方法により行うことができる。
本実施形態に係る殺菌方法において、上記殺菌用組成物を用いて全ハロゲン残留物が例えば有効臭素濃度0.00002%から0.225%(FAC0.1~1000mg/L)の範囲となるように殺菌対象物の溶液に添加してもよい。ここで、FACとは、遊離塩素濃度(mg/L)のことである。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[薬剤A:安定化次亜臭素酸組成物の調製1]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物を調製した。安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であった。全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg-Cl/L)である。安定化次亜臭素酸組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
反応容器内の酸素濃度が1%に維持されるように、窒素ガスの流量をマスフローコントローラでコントロールしながら連続注入で封入した2Lの4つ口フラスコに1436gの水、361gの水酸化ナトリウムを加えて混合し、次いで300gのスルファミン酸を加え混合した後、反応液の温度が0~15℃になるように冷却を維持しながら、473gの液体臭素を加え、さらに48%水酸化カリウム溶液230gを加え、組成物全体の量に対する重量比でスルファミン酸10.7%、臭素16.9%、臭素の当量に対するスルファミン酸の当量比が1.04である、目的の安定化次亜臭素酸組成物を得た。生じた溶液のpHは、ガラス電極法にて測定したところ、14であった。生じた溶液の臭素含有率は、臭素をヨウ化カリウムによりヨウ素に転換後、チオ硫酸ナトリウムを用いて酸化還元滴定する方法により測定したところ16.9%であり、理論含有率(16.9%)の100.0%であった。また、臭素反応の際の反応容器内の酸素濃度は、株式会社ジコー製の「酸素モニタJKO-02 LJDII」を用いて測定した。なお、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
なお、pHの測定は、以下の条件で行った。
電極タイプ:ガラス電極式
pH測定計:東亜ディーケーケー社製、IOL-30型
電極の校正:関東化学社製中性リン酸塩pH(6.86)標準液(第2種)、同社製ホウ酸塩pH(9.18)標準液(第2種)の2点校正で行った
測定温度:25℃
測定値:測定液に電極を浸漬し、安定後の値を測定値とし、3回測定の平均値
[薬剤B~E:安定化次亜臭素酸組成物の調製2]
安定化次亜臭素酸組成物である薬剤A(オルガノ社製)の最終pHを13.2になるように調整したものを薬剤Bとした。
安定化次亜臭素酸組成物である薬剤A(オルガノ社製)の最終pHを12.6になるように調整したものを薬剤Cとした。
安定化次亜臭素酸組成物である薬剤B(オルガノ社製)の臭素に対するスルファミン酸のモル比が1.5倍量となるように製造し、最終pHを14になるように調整したものを薬剤Dとした。
安定化次亜臭素酸組成物である薬剤A(オルガノ社製)の臭素に対するスルファミン酸のモル比が1.5倍量となるように製造し、最終pHを14になるように調整したものを薬剤Eとした。
[薬剤F:安定化次亜臭素酸組成物の調製3]
次亜塩素酸ナトリウム12重量%asCl40重量%に水0.4重量%を添加し、混合した。上記に40重量%臭化ナトリウム18.4重量%を添加し、混合完了後、さらにスルファミン酸ナトリウム溶液を40重量%添加し、混合した。最後に水酸化ナトリウム1.2重量%を添加し、混合した。
<実施例1~3、比較例1>
[保存安定性確認]
ポリエチレン製密閉容器に、安定化次亜臭素酸組成物である薬剤A(オルガノ社製)、薬剤Bおよび薬剤Cを表1に示す所定濃度になるように強酸を添加せずに水で希釈して調製した。また、安定化次亜臭素酸組成物である薬剤Dおよび薬剤Eを表2に示す濃度になるように強酸を添加せずに調製した。また、安定化次亜臭素酸組成物である薬剤Fを表3に示す濃度になるように強酸を添加せずに調製した。薬剤A~Fから得た殺菌用組成物は、意図せず強酸を含有しておらず、強酸を実質的に含有していない。薬剤A~Fから得た殺菌用組成物中の強酸の含有量は、0.0001重量%未満であった。
50℃で保管7日後の残存有効塩素量を全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)で測定し、有効塩素残存率(%)を求めた。結果を表1、表2、表3に示す。また、実施例1および比較例1における有効臭素濃度(%)とpHとの関係を図1に示す。
Figure 2023058199000001
Figure 2023058199000002
Figure 2023058199000003
薬剤Aを使用した保存安定性確認試験においては、有効臭素濃度0.007重量%から0.225重量%、すなわち有効塩素濃度として30~1000mgCl/Lの希釈液で、かつ有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHが10.8以上であり、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、pHが下記式1の数式で求めたpHよりも高い殺菌用組成物においては、ポリエチレン製密閉容器内の有効成分濃度が50℃で保管7日後でも、60%以上を保持していた。また、強酸を含有せずに、組成物Aを用いてpH11以下の組成物を調製することができなかった。
y=-71.311x+37.203x+7.74 (ここで、yは、pH、xは、有効臭素濃度[%]を表す。) (式1)
薬剤Bの希釈液における保存安定性確認試験においては、有効臭素濃度0.056重量%、すなわち有効塩素濃度として250mgCl/Lの希釈液においては、ポリエチレン製密閉容器内の有効成分濃度が50℃で保管7日後でも、70%以上を保持していた。
一方、薬剤Cの希釈液における保存安定性確認試験においては、有効臭素濃度0.007重量%から0.113重量%、すなわち有効塩素濃度として30mgCl/Lから500mgCl/Lの希釈液においては、ポリエチレン製密閉容器内の有効成分濃度が50℃で保管7日後でも、70%以上を保持していた。しかし、有効臭素濃度0.169重量%から0.338重量%、すなわち有効塩素濃度として1000~1500mgCl/Lの希釈液において、ポリエチレン製密閉容器内の有効成分濃度が50℃、保管7日後で、45%未満しか保持されていなかった。
以上のように、安定化次亜臭素酸組成物に強酸を含有せずに希釈する場合に、元の安定化次亜臭素酸組成物のpHや、臭素に対するスルファミン酸モル比等の物性が、希釈液の安定性に大きく作用することがわかった。このように、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHを10.8以上にし、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間において、下記式1の数式で求めたpHよりも高くなるように調整した組成物において、安定性の高い組成物を安全に提供できることを見出した。
y=-71.311x+37.203x+7.74 (ここで、yは、pH、xは、有効臭素濃度[%]を表す。) (式1)
なお、この式1は、実施例1-4、実施例1-10、実施例1-18、実施例1-20のy:pH、x:有効臭素濃度[%]から回帰分析によって(R=0.9994)求めた式である。
また、薬剤Dの希釈液における保存安定性確認試験においては、有効臭素濃度0.056重量%から0.113重量%、すなわち有効塩素濃度として250~500mgCl/Lの希釈液においてもポリエチレン製密閉容器内の有効成分濃度が50℃、保管7日後でも、80%以上を保持していた。
薬剤Eの希釈液における保存安定性確認試験においては、有効臭素濃度0.007重量%から0.169重量%、すなわち有効塩素濃度として30~750mgCl/Lの希釈液においてもポリエチレン製密閉容器内の有効成分濃度が50℃、保管7日後でも、75%以上を保持していた。
薬剤Fを使用した保存安定性確認試験においては、有効臭素濃度0.011重量%から0.169重量%、すなわち有効塩素濃度として50~750mgCl/Lの希釈液においては、ポリエチレン製密閉容器内の有効成分濃度が50℃で保管7日後でも、70%以上を保持していた。
このように、スルファミン酸の配合量が上昇すると保存安定性が微量ではあるが上昇し、保存安定性を向上させる方法として有効であることを見出した。
<実施例4>
[臭素ガス、塩素ガス発生の確認]
容量1.1リットルのポリエチレン製密閉容器に、フィルターで脱塩素処理した相模原井水に、薬剤A(オルガノ社製)(実施例4-1~4-4)を水で希釈して表4に示す所定濃度に調整した溶液1Lを入れ、所定のpHに調整し、スターラーにて150rpmになるように撹拌した。調製した溶液を1Lメスフラスコに入れ、30℃の恒温槽で1時間経過後、溶液中の全塩素濃度、メスフラスコの蓋を開封後すぐ、ヘッドスペース部分のハロゲンガス濃度を検知管式気体測定器(JIS K 0804:検知管式ガス測定器)の方法で検知管No.8Laを用いて測定した。結果を表4に示す。
Figure 2023058199000004
安定化次亜臭素酸を用いた薬剤Aが、有効臭素濃度が0.011%から0.113%の範囲において、ハロゲンガス臭を抑えることが可能であった。
次亜塩素酸塩を有効塩素濃度としてpH11.5かつ250mgCl/Lに調整した薬剤を実施例4と同様にして測定したところ、次亜塩素酸塩では0.1mgCl/Lのハロゲンガスが発生した。
よって、安定化次亜臭素酸はハロゲンガスがほとんど発生せず、使用のときにおけるハロゲンガスによる不快な臭気の発生を抑制することができ、かつ、ハロゲンガスによる悪影響を抑制することができることがわかった。
<実施例5>
[殺菌効果の確認]
安定化次亜臭素酸組成物(有効臭素濃度が17%、オルガノ社製)を水で希釈調整した組成物(FAC80mg/L、pH11.5、有効臭素濃度0.018%)に、ネコカリシウイルス、ヒトコロナウイルスまたはインフルエンザウイルスのウイルス液を添加、混合し(以下「作用液」という。)、所定時間後に作用液中のウイルス感染価(logTCID50/mL)を測定した。また、あらかじめ予備試験を行い、ウイルス感染価の測定方法について検討した。結果を表5に示す。
なお、ネコカリシウイルスは細胞培養が困難なノロウイルスの代替ウイルスとして広く使用されており、ヒトコロナウイルスはコロナウイルスの代替ウイルスとして評価した。また、表5の「検体」とは、安定化次亜臭素酸組成物(FAC80mg/L、pH11.5、オルガノ社製、有効臭素濃度0.018%)にウイルス液を添加した作用液のことである。
Figure 2023058199000005
表5に示す通り、安定化次亜臭素酸組成物(FAC80mg/L、pH11.5、有効臭素濃度0.018%)によって、ヒトコロナウイルス、およびインフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスは30秒後に検出下限未満(<1.5)となり、ウイルス消毒性能があることを確認した。
以上の通り、実施例のように、一般消費者を含む使用者が除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行うのに適し、保存安定性が高い殺菌用組成物が得られた。

Claims (9)

  1. 水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、強酸を含有せず、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHが10.8以上であり、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、pHが下記式1の数式で求めたpHよりも高いことを特徴とする殺菌用組成物。
    y=-71.311x+37.203x+7.74 (ここで、yは、pH、xは、有効臭素濃度[%]を表す。) (式1)
  2. 請求項1に記載の殺菌用組成物であって、
    pHが12.5未満であることを特徴とする殺菌用組成物。
  3. 請求項1または2に記載の殺菌用組成物であって、
    前記臭素系酸化剤の当量に対して1.0~2.0倍当量の範囲の前記スルファミン酸化合物を含有することを特徴とする殺菌用組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の殺菌用組成物であって、
    30℃で1時間保管後のハロゲンガスの発生量が、0.05mg/L以下であることを特徴とする殺菌用組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の殺菌用組成物であって、
    前記臭素系酸化剤が、臭素であることを特徴とする殺菌用組成物。
  6. 水と、臭素系酸化剤と、スルファミン酸化合物と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの少なくとも1つを含むアルカリと、を含有し、pHが12.5以上であり、かつ有効臭素濃度が1.4%から22.5%の範囲である水処理組成物を、強酸を含有せずに希釈して、有効臭素濃度が0.007%から0.101%の間においては、pHを10.8以上にし、有効臭素濃度が0.101%から0.225%の間においては、下記式1の数式で求めたpHよりも高くなるように調整することを特徴とする殺菌用組成物の製造方法。
    y=-71.311x+37.203x+7.74 (ここで、yは、pH、xは、有効臭素濃度[%]を表す。) (式1)
  7. 請求項6に記載の殺菌用組成物の製造方法であって、
    前記殺菌用組成物のpHが12.5未満であることを特徴とする殺菌用組成物の製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の殺菌用組成物の製造方法であって、
    前記臭素系酸化剤が、臭素であることを特徴とする殺菌用組成物の製造方法。
  9. 請求項1~5のいずれか1項に記載の殺菌用組成物、または請求項6~8のいずれか1項に記載の殺菌用組成物の製造方法で得られる殺菌用組成物を用いて、全ハロゲン残留物が有効臭素濃度0.00002%から0.225%の範囲となるように殺菌対象物に添加し、殺菌対象物の除菌、抗菌、消毒、または殺菌を行うことを特徴とする殺菌方法。
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