JP2023057061A - 顔料染色繊維材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維からの顔料の脱落を防止する効果である優れた摩擦堅牢度と、撥水性及び耐水性に優れる効果を同時に得られる繊維材料を提供する。【解決手段】繊維基材が顔料で染色された繊維材料であって、合成繊維を含む繊維基材に、カチオン性顔料とアニオン性ポリウレタンと非フッ素系撥水剤が付着している、顔料染色繊維材料。【選択図】なし

Description

本発明は、顔料で染色された繊維材料に関する。
布帛等の繊維材料の染色には主に染料が用いられてきたが、近年、耐光性や耐薬品性の向上を目的として顔料が各種繊維材料等の染色に使用されるようになってきている。繊維材料に対して顔料を用いて染色を行った場合、顔料が繊維の表面に物理的に付着した状態となり、使用時の摩擦や洗濯等により顔料が脱落し易いため、これを防止するための検討が種々行われている(特許文献1~5等)。
特開平10-310718号公報 特開2007-254929号公報 特開2010-255164号公報 特開平10-259579号公報 特開2007-16368号公報
例えば、特許文献1~3には、カチオン性顔料を用いて繊維材料を染色した後に合成樹脂成分を付着させる方法が記載されている。特許文献4、5には、カチオン化処理された繊維材料を、顔料と合成樹脂成分やカチオン性染色助剤等を含む染色処理液を用いて染色加工する方法が記載されている。
これらの方法を用いて顔料染色された繊維材料においては、繊維が綿や麻などのセルロース系繊維や、羊毛や絹などの動物由来の繊維に代表される天然繊維や、レーヨンやキュプラ、リヨセルなどの天然繊維に由来する再生繊維である場合には、繊維からの顔料の脱落を防止する効果がある程度認められるものではあったが、繊維がポリエステルやナイロンなどの合成繊維である場合には、その効果は満足できるものではなかった。
また、このような顔料染色された繊維材料が多用される屋外用途や各種作業用途など、耐光性や耐薬品性が求められる用途においては、同時に繊維材料に、水に濡れ難い性質である撥水性や、水を通しにくい性質である耐水性を具備していることを求められる場合が多い。一般に、繊維材料に撥水性や耐水性を付与するためには、炭化水素系化合物、シリコーン系化合物、フッ素系化合物等の撥水性化合物を含む撥水剤を繊維材料の表面上に付与し、繊維表面の表面張力を水の表面張力よりも下げることが行われる。これらの撥水性化合物の中でもフッ素系化合物は、繊維材料に高い撥水性や耐水性を付与できる撥水成分として多用されてきたが、近年は、環境や人体に影響を及ぼすPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(パーフルオロオクタン酸)が撥水剤中に不純物として含まれる、もしくは環境中で分解生成する懸念や、難分解性のフッ素系化合物が環境中に残留することに対する懸念があるため、PFOSやPFOAを含まず、更には、フッ素系化合物自体を含まない撥水剤(非フッ素系撥水剤)が用いられることが多くなってきている。
このような事情を勘案し、合成繊維を含有し顔料染色された繊維材料に撥水性や耐水性を付与するために、特許文献1~5等に記載される方法で得られた顔料染色繊維材料の表面上に非フッ素系撥水剤を付与したとしても、繊維からの顔料の脱落を防止する効果と耐水性や撥水性に優れる効果を同時に満足することはできなかった。
そこで本発明は、合成繊維を含有し顔料染色された繊維材料であって、繊維からの顔料の脱落を防止する効果である優れた摩擦堅牢度と、撥水性及び耐水性に優れる効果を同時に得られる繊維材料とその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題は、繊維基材が顔料で染色された繊維材料であって、合成繊維を含む繊維基材に、カチオン性顔料とアニオン性ポリウレタンと非フッ素系撥水剤が付着していることを特徴とする顔料染色繊維材料により基本的に解決される。ここで、アニオン性ポリウレタンの酸価が5~25mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。非フッ素系撥水剤が、炭素数7~40の炭化水素基を有する撥水性化合物を含有する撥水剤であることが好ましく、炭素数7~40の炭化水素基を有する撥水性化合物が、炭素数7~40の炭化水素基を有する炭化水素系化合物、炭素数7~40の炭化水素基を有するイソシアネート反応性化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物、炭素数7~40の炭化水素基を有するシリコーン系化合物の少なくとも1種であることがより好ましい。
また上記課題は、合成繊維を含む繊維基材が顔料で染色された繊維材料の製造方法であって、染色工程において、カチオン性顔料とアニオン性ポリウレタンを含有する染色処理液を用いることにより、繊維基材への顔料染色とアニオン性ポリウレタンの付着処理を行い、その後の工程として、非フッ素系撥水剤の付着処理を行うことを特徴とする顔料染色繊維材料の製造方法によっても基本的に解決される。ここで、アニオン性ポリウレタンの酸価が5~25mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。非フッ素系撥水剤が、炭素数7~40の炭化水素基を有する撥水性化合物を含有する撥水剤であることが好ましく、炭素数7~40の炭化水素基を有する撥水性化合物が、炭素数7~40の炭化水素基を有する炭化水素系化合物、炭素数7~40の炭化水素基を有するイソシアネート反応性化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物、炭素数7~40の炭化水素基を有するシリコーン系化合物の少なくとも1種であることがより好ましい。繊維基材の形状が糸であり、染色工程がチーズ染色により行われ、染色時のチーズの巻き密度が0.1~0.5g/cm3であり、染色時の染色処理液の流量が糸1Kg当たり5~30L/分であることが好ましい。
本発明により、合成繊維を含有し顔料染色された繊維材料であって、繊維からの顔料の脱落を防止する効果である優れた摩擦堅牢度と、撥水性及び耐水性に優れる効果を同時に得られる繊維材料とその製造方法を提供することができる。
本発明の顔料染色繊維材料は、合成繊維を含む繊維基材に、カチオン性顔料とアニオン性ポリウレタンと非フッ素系撥水剤が付着している。
本発明において、繊維基材は合成繊維を含有する。合成繊維としては、ポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、ポリアクリルニトリル、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド等の繊維が挙げられ、なかでも、ポリエステル系繊維あるいはナイロン系繊維である場合には、本発明の効果がより顕著になるため好ましい。ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、常圧可染タイプのポリエチレンテレフタレート等の繊維が挙げられ、ナイロン系繊維としては、ナイロン6、ナイロン66等の繊維が挙げられる。また、繊維基材は、合成繊維が天然繊維や天然繊維由来の再生繊維と混紡された繊維(例えば、T/C混紡繊維:ポリエステルと綿の混紡繊維)を含むものであってもよいが、繊維中の合成繊維の含有割合が高いほど本発明の効果が顕著になり、天然繊維や再生繊維を含まない場合には、本発明の効果が最も顕著になる。繊維基材の形態、形状に制限はなく、ステープル、フィラメント、トウ、糸等の様な原材料形状に限らず、織物、編み物、詰め綿、不織布、紙、シート、フィルム等の多様な加工形態のものも本発明で使用できる。
繊維基材には予めアニオン化処理剤によるアニオン化処理が行われていてもよい。アニオン化処理剤としては、エマルジョンアニオン化剤(例えば、ポリオレフィンエマルジョンやポリエステルエマルジョンであるアニオン化剤)を用いることができる。このようなアニオン化処理剤としては、公知のものや市販のものを好ましく用いることができ、市販のものとしては、例えば、山陽色素株式会社製のCTI1201が挙げられる。アニオン化処理剤は、浸染処理によって繊維基材に予め付与することが好ましい。また、必要に応じて、染色工程等の処理液に添加するなどして顔料染色繊維材料に付与することもできる。
本発明においては、繊維基材へのアニオン化処理の前に、カチオン化処理剤によるカチオン化処理が行われていることがより好ましい。カチオン化処理剤としては、アミン系カチオン化剤、例えば、第一級アミノ基、第三級アミノ基又は第四級アンモニウム基を含むカチオン化剤が好ましく使用できる。カチオン化処理は、それだけ独立して実施しても良いが、アニオン化処理を行う浴において、アニオン化処理剤の添加前にカチオン化処理剤を添加して実施しても良い。
繊維材料を顔料により着色する場合、一般的に顔料は繊維に化学的に吸着する性質がないことから、顔料は繊維の表面に物理的に付着した状態となり、顔料染色繊維材料の使用時の摩擦や洗濯等により顔料が脱落し易い。そこで、繊維基材を改質したり、顔料表面に化学的な変性を行うなどして、繊維や顔料に吸着する性質を持たせることで、染料を用いて繊維材料を染色するのと同様の手法を用いて顔料による繊維材料の着色を行うことができる。よって、本発明においても、繊維と吸着する性質を持つ顔料による繊維材料の着色を、顔料による染色と呼ぶ。
本発明に用いるカチオン性顔料としては、高吸着性の観点から、カチオン性分散剤を含有する顔料を用いることができる。このようなカチオン性分散剤は、顔料との相溶性と、昇温下で分散性が低下する観点から、第三級アミン分散剤であることが好ましい。例えば、
(a)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの重合体、例えば、ジメチル又はジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド又はジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の重合体;
(b)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの重合体、例えば、ジメチル又はジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート又はジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の重合体;
(c)アクリルアミド・スチレン共重合体;
(d)第三級アミノ基含有ウレタン系重合体等を挙げることができる。
本発明のカチオン性分散剤を含有する顔料は水などの液状媒体に分散することができる。カチオン性顔料に含まれるカチオン性分散剤は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
このようなカチオン性顔料としては、特許文献1や特許文献5等に記載される公知のものや、市販のものを好ましく用いることができ、市販のものとしては、例えば、山陽色素株式会社製のEMACOL(登録商標)CTシリーズが挙げられる。顔料染色繊維材料におけるカチオン性顔料の付着量は後述する染色処理液のカチオン性顔料含有量によって適宜調整でき、繊維基材の材質や形態や形状、目付、処理液の濃度、吸尽割合、目的とする染色濃度等によって変わるが、染色処理液のカチオン性顔料含有量は0.03~7%o.w.f.(繊維基材に対する質量比)であることが好ましい。本発明の顔料染色繊維材料において、繊維基材に付着しているカチオン性顔料は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
本発明に用いるアニオン性ポリウレタンとしては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及びアニオン性基を有する化合物を反応させることにより得られる、ポリマー構造中にアニオン性基を有するポリウレタン樹脂であれば特に制限されない。
ポリオール化合物は2個以上のヒドロキシ基を有する化合物であって、本発明においては、ポリウレタン樹脂を得るために用いられる公知の化合物を用いることができ、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、シリコーンポリオール等が挙げられる。ポリオール化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物は2個以上のイソシアネート基を有する化合物であって、本発明においては、ポリウレタン樹脂を得るために用いられる公知の化合物を用いることができ、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アニオン性基を有する化合物は、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基等のアニオン性基を有し、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物と反応してポリウレタンのポリマー構造に組み込まれる化合物であって、本発明においては、アニオン性ポリウレタン樹脂を得るために用いられる公知の化合物を用いることができ、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸やその塩、2,2-ジメチロールブタン酸やその塩、2-(2-アミノエチルアミノ)-エタンスルホン酸やその塩、2-(3-アミノプロピルアミノ)-エタンスルホン酸やその塩、2,4-ジアミノベンゼンスルホン酸やその塩等が挙げられる。アニオン性基を有する化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アニオン性ポリウレタンは、酸価が5~25mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。酸価とは、アニオン性基の含有量を示す指標となる値であり、遊離酸の状態のアニオン性基の量は、例えば、適当な溶媒に溶解したアニオン性ポリウレタンを水酸化カリウム等のアルカリで滴定することにより測定でき、あるいは、アニオン性ポリウレタンの合成に用いる原材料の使用量から算出することもできる。また、アニオン性ポリウレタンのポリマー中におけるウレタン基の濃度は1.10~2.20mmol/gの範囲にあることが好ましく、ウレア基の濃度は0.25~0.55mmol/gの範囲にあることが好ましい。これらも、アニオン性ポリウレタンの合成に用いる原材料の使用量から算出することができる。
本発明に用いるアニオン性ポリウレタンは公知の合成方法により得ることができ、水系乳化物とすることが好ましい。アニオン性ポリウレタン水系乳化物の濃度は、10~60質量%であることが好ましい。このようなアニオン性ポリウレタンの水系乳化物は市販もされており、それらを適宜用いることもできる。顔料染色繊維材料におけるアニオン性ポリウレタンの付着量は後述する染色処理液のアニオン性ポリウレタン含有量によって適宜調整でき、繊維基材の材質や形態や形状、目付、処理液の濃度、吸尽割合等によって変わるが、染色処理液のアニオン性ポリウレタン含有量は0.1~20%o.w.f.であることが好ましい。アニオン性ポリウレタンは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いる非フッ素系撥水剤は、撥水性化合物を含有する。撥水性化合物は、その分子構造中にフッ素を含まず、かつ繊維に付与した時に撥水性及び耐水性を発揮するものであれば特に制限されない。撥水性化合物としては、例えば、重合性化合物(単量体)としてステアリル基のような長鎖アルキル基を持つ(メタ)アクリレートを用いて重合したアクリル系共重合体に代表される炭素数7~40の炭化水素基を有する炭化水素系化合物、パラフィンワックス、メラミンワックス、高級脂肪酸エステル系化合物、高級脂肪酸アミド系化合物、炭素数7~40の炭化水素基を有するイソシアネート反応性化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物、アルキレン尿素系化合物、アルキルケテンダイマー、ジルコニウム系化合物の他、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アミノ変性シリコーン、炭素数7~40の炭化水素基を有する変性シリコーンのようなポリシロキサン構造を含むシリコーン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、炭素数7~40の炭化水素基を有する撥水性化合物であることが好ましく、炭素数7~40の炭化水素基を有する炭化水素系化合物、炭素数7~40の炭化水素基を有するイソシアネート反応性化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物、炭素数7~40の炭化水素基を有するシリコーン系化合物のいずれかであることがより好ましい。撥水性化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記の炭素数7~40の炭化水素基を有する炭化水素系化合物としては、好ましくは、下記一般式(1)で表される単量体を少なくとも構成単位に含む重合体である。
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R ・・・(1)
一般式(1)中、Xは、水素原子、1価の有機基(例えば、メチル基、エチル基など)、ハロゲン原子(フッ素原子を除く)、または基-CH2-C(=O)-Y-Rであり、Yは、-O-および-NH-から選択された少なくとも1つの基を有する2価~4価の連結基または-NR-であり、Rは、炭素数7~40の炭化水素基である。なお、YおよびRが、それぞれ分子中に複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい。
Rは、好ましくは炭素数7~40の直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、より好ましくは直鎖状の炭化水素基である。また、炭化水素基は脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくはアルキル基である。炭化水素基の炭素数としては10~30が好ましく、より好ましくは12~26、特に好ましくは16~24、最も好ましくは18~22である。例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどを好ましく使用できる。
また、α置換アクリレートも使用でき、例えば、ラウリルα-クロロアクリレート、ステアリルα-クロロアクリレート、イコシルα-クロロアクリレート、ベヘニルα-クロロアクリレートなどを好ましく使用することができる。
さらに、アミド基含有単量体のアクリル系のものも使用することができる。例えば、ラウリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ミリスチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ベヘニン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリルアミド、セチル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミドなどを好ましく使用できる。
加えて、ウレタン基またはウレア基を含有する単量体も使用することができる。例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドと長鎖アルキルイソシアネート(例えば、ラウリルイソシアネート、ミリスチルイソシアネート、セチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、ベヘニルイソシアネートなど)を反応させて得られる化合物、あるいは、側鎖にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2-メタクリロイルオキシエチルメタクリレートなど)と長鎖アルキルアミン(例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミンなど)または長鎖アルキルアルコール(例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなど)を反応させて得られる化合物が好ましく使用できる。
上記一般式(1)以外で、炭素数7~40の炭化水素基および炭素-炭素二重結合を有する単量体としては、例えば、ソルビタントリステアレートメタクリレート、ソルビタントリステアレートウレタンメタクリレート、ソルビタントリステアレートウレタンスチレンモノマー、ソルビタントリオレエートメタクリレートなどを好ましく使用することができる。その他、イタコン酸ジステアリルなども好ましく使用できる。
これらの単量体は1種または2種類以上を組み合わせて使用することができ、また含有量としては、目的の性能(摩擦堅牢度、撥水性及び耐水性に優れること)を達成できる範囲であれば特に限定されない。高い撥水性が求められる場合の前記単量体の含有量としては、20質量%以上であればよく、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。
炭素数7~40の炭化水素基を有する炭化水素系化合物は、その他の要求性能(例えば、撥水性の洗濯耐久性など)に応じて、その他の炭素-炭素二重結合を有する単量体の1種または2種以上を共重合させることができ、その様式としては、公知のランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などが挙げられる。
その他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~6のアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなど)、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン化オレフィン(例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど)等が挙げられる。
更に、その他の単量体としては、重合性基を有するシリコーン化合物を使用することができる。重合性基はシリコーン側鎖および/または末端に導入されたものを使用でき、片末端または両末端に重合性基が導入されていることが好ましく、特に好ましくは片末端である。例えば、特に限定されないが炭素-炭素二重結合を有するシリコーン化合物やメルカプト基を有するシリコーン化合物を使用することができる。また、汎用的に使用されているエチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどや、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロックドイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基等を有する単量体や、1分子中に重合性官能基を2個以上有する単量体や、反応性乳化剤などを使用することができる。
また、前記の炭素数7~40の炭化水素基を有するイソシアネート反応性化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物(これらを反応させることで得られる化合物)は、好ましくは、1分子中に炭素数7~40の炭化水素基を少なくとも1つ以上およびイソシアネート基と反応可能な官能基を少なくとも1つ以上有するイソシアネート反応性化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させることで得られる。イソシアネート反応性化合物としては、例えば、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
W[-A-R]a[-B]b ・・・(2)
一般式(2)において、Wは、(a+b)価の有機基である。Aは、Wに結合しており、-X-Y-または-Y-である。Bは、Wに結合しており、-X-Zまたは-Zである。aは、1以上の整数である。bは、1以上の整数である。(a+b)は、3~42である。Xは、2価のポリアルキレンエーテル基である。Yは、2価の基であって、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、又はチオウレタン基である。Rは、炭素数7~40の1価の炭化水素基である。Zは、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基またはチオール基である。ただし、Bが-X-Zの場合、Zは、ヒドロキシ基である。ここで、基Zのヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基またはチオール基が、イソシアネート基と反応可能な官能基となる。
Wは、多官能化合物の残基であることが好ましい。多官能化合物としては、好ましくは、多価アルコール化合物、多価アミン化合物、多価カルボン酸化合物、多価チオール化合物が挙げられる。Xの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどの単独の重合体、これらのうち2種類以上を組み合わせて得られるブロック共重合体、ランダム共重合体が挙げられる。Rは、好ましくは炭素数7~40の直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、より好ましくは直鎖状の炭化水素基である。また、炭化水素基は脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくはアルキル基である。当該炭化水素基の炭素数としては10~30が好ましく、より好ましくは12~26、特に好ましくは16~24、最も好ましくは18~22である。炭化水素基の具体例としては、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、ミリスチル基、ペンタデシル基、セチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ベヘニル基、オレイル基などが挙げられる。
このようなイソシアネート反応性化合物としては、特に限定されないが、汎用性の点で、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリベヘネート、ソルビタントリオレエートなど)、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールジステアレートなど)、クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリステアリルなど)等を好ましく使用することができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、前記のアニオン性ポリウレタンを得る際に用いられる化合物が挙げられる。
イソシアネート反応性化合物はポリイソシアネート化合物と反応させることで撥水性化合物となる。この撥水性化合物を含有する非フッ素系撥水剤を繊維基材に付着させるためには、例えば、イソシアネート反応性化合物とポリイソシアネート化合物(ブロックドイソシアネート化合物を含む)とを混合した後に繊維基材に処理し(付着させ)、熱処理により繊維基材上で2成分を反応させる方法が採用できる。あるいは、あらかじめ2成分を部分的又は完全に反応させた撥水性化合物を得た後、繊維基材に処理することも好ましい。
炭素数7~40のアルキル基を有するシリコーン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素数7~40の炭化水素基が導入されたジメチルシリコーン、シラノール末端ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルシリコーンなどのシリコーン化合物が挙げられる。
炭素数7~40の炭化水素基としては、好ましくは直鎖状または分岐状の炭化水素基であり、より好ましくは直鎖状の炭化水素基である。また、炭化水素基は脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくはアルキル基である。炭化水素基の炭素数としては10~32が好ましく、より好ましくは12~30、特に好ましくは16~28である。
前記シリコーン化合物としては、市販されているアルキル変性シリコーンやアルキル・アラルキル変性シリコーン、アルキル・ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸アミド変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーンなどを使用することができる。
本発明に用いる非フッ素系撥水剤に含まれる撥水性化合物は公知の合成方法により得ることができ、水系乳化物とすることが好ましい。水系乳化物においては、例えば乳化物を安定化させるためなどの必要に応じて、界面活性剤等の添加物を含むことができる。非フッ素系撥水剤水系乳化物の固形分(不揮発性成分)濃度は、10~60質量%であることが好ましい。このような非フッ素系撥水剤の水系乳化物は市販もされており、それらを適宜用いることもできる。顔料染色繊維材料における非フッ素系撥水剤の固形分付着量は、繊維基材の材質や形態や形状、目付、処理液の濃度等によって変わるが、0.01~10質量%であることが好ましい。非フッ素系撥水剤は、顔料染色繊維材料に付着した状態において架橋剤により架橋されていることが好ましく、架橋剤としてはブロックイソシアネートを用いることが好ましい。
本発明の顔料染色繊維材料の製造方法は、繊維材料の染色工程において、カチオン性顔料とアニオン性ポリウレタンを含む染色処理液を用いることにより、合成繊維を含む繊維基材への顔料染色とアニオン性ポリウレタンの付着処理を行い、その後の工程として、非フッ素系撥水剤の付着処理を行う。
染色工程は、通常の繊維材料に対して行われる染色方法を用いて行うことができる。必要に応じて精練やカチオン化処理やアニオン化処理等を行った合成繊維を含む繊維基材は、例えば、ワタ染機、チーズ染色機、液流染色機、ビーム染色機等を用いて、水、カチオン性顔料、アニオン性ポリウレタン、必要に応じてカチオン化処理剤やアニオン化処理剤等を含有する染色処理液を入れた染浴中に浸漬され、加温されることにより染色される。染浴の浴比(繊維基材質量(g):処理液容量(ml))は、例えば1:3~1:100の範囲が挙げられる。アニオン性ポリウレタンやカチオン化処理剤、アニオン化処理剤等は、染色工程の途中で染浴中の染色処理液に添加してもよい。
例えば、染色工程において繊維基材にカチオン性顔料を均一に吸着させるため、染色処理液中にカチオン化処理剤を含むことができる。カチオン化処理剤としては、(メタ)アクリル系重合体、アミノ基含有ウレタン系重合体などのカチオン性重合体を用いることができる。このようなカチオン化処理剤としては、特許文献1等に記載される公知のものや市販のものを好ましく用いることができ、市販のものとしては、例えば、山陽色素株式会社製のCTF1101が挙げられる。
染浴中の染色処理液におけるカチオン性顔料の含有量は0.1~30%o.w.f.であることが好ましく、アニオン性ポリウレタンの含有量は0.1~20%o.w.f.であることが好ましい。染色は、染色処理液の温度を室温から適宜昇温しながら35~70℃として10~30分間程度行い、アニオン性ポリウレタンの添加後は、液温を80~120℃に昇温して10分~1時間程度の処理を行うことが好ましい。染色工程の後は、染色された繊維基材に対し水洗、脱水、乾燥等を行うことが好ましい。
繊維基材の形状が糸である場合は、ロープ染め、スラッシャー染色、かせ染め、チーズ染色などの手法を用いることができる。本発明における染色工程としては、糸を染色用ボビンに巻き付けたチーズとした上でチーズ染色を行うことが好ましい。カチオン性顔料による染色ではチーズ内外の色差(色むら)が生じやすいことから、これを防止するために、チーズを巻き上げる際には、ソフト巻きワインダーなどを用いて、チーズが崩れない限りできるだけ緩く巻くことが好ましい。チーズの巻き密度としては、0.1~0.5g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.1~0.3g/cm3である。チーズ染色における染色処理液の流量(チーズの糸条を通過させる染色処理液の流量)は、チーズの糸質、量などに応じて適宜調整できるが、これも色むらを防止する観点からなるべく低くすることが好ましい。染色処理液の流量としては、糸1Kg当たり5~30L/分であることが好ましく、より好ましくは糸1Kg当たり5~15L/分である。
本発明においては、染色工程の後の工程として非フッ素系撥水剤の付着処理を行う。染色工程を終えて取り出した染色された繊維基材への非フッ素系撥水剤の付着処理は、非フッ素系撥水剤を含有する処理液を用いて公知の方法で行うことができる。処理液に含有する非フッ素系撥水剤の固形分濃度は、0.01~30質量%であることが好ましい。処理方法としては例えば、連続法やバッチ法などが挙げられる。連続法としては、まず、非フッ素系撥水剤の水系乳化物をそのまま、または水に希釈して処理液を調製する。次に、処理液で満たされた含浸装置に、基材を連続的に送り込み、基材に処理液を含浸させた後、不要な処理液を除去するDIP-NIP処理を行う。含浸装置としては特に限定されず、パッダ、キスロール式付与装置、グラビアコーター式付与装置、スプレー式付与装置、フォーム式付与装置、コーティング式付与装置等が好ましく採用できる。続いて、乾燥機を用いて基材に残存する水を除去する操作を行う。乾燥機としては、特に限定されず、ホットフルー、テンター等の拡布乾燥機が好ましい。該連続法は、基材が織物等の布帛状の場合に採用することが好ましい。バッチ法は、前記の染色工程と同様にして処理液に浸漬する工程、処理を行った基材に残存する水を除去する工程からなる。該バッチ法は、基材が布帛状でない場合、たとえばバラ毛、トップ、スライバ、かせ、トウ、糸等の場合、または編物等連続法に適さない場合に採用することが好ましい。水を除去する操作においては、チーズ乾燥機、ビーム乾燥機、タンブルドライヤー等の温風乾燥機、高周波乾燥機等を用いることができる。
非フッ素系撥水剤を付着させ水を除去した後には、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の温度としては、100~180℃が好ましい。加熱処理の時間としては、10秒間~3分間が好ましい。加熱処理の方法としては、特に限定されないが、基材が布帛状である場合にはテンターが好ましい。このように非フッ素系撥水剤の付着処理を行って、顔料染色繊維材料を得ることができる。
非フッ素系撥水剤を含有する処理液には、前記した架橋剤の他に、本発明の効果を生じる限りにおいて任意の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば、界面活性剤、無機系滑脱防止剤、柔軟剤、SR剤、防しわ剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱剤等の繊維用薬剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、金属粉顔料、レオロジーコントロール剤、硬化促進剤、消臭剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。処理液に含まれる固形分(水を主体とする媒体以外の不揮発性成分)濃度としては、付着処理方法や目的とする固形分付着量に応じて適宜調整することができ、例えば0.01~50質量%程度が挙げられる。
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。なお実施例において、特に断りがない限り「%」は質量%を意味する。
<材料の説明>
・CTF1101:カチオン化処理剤
第四級アンモニウム基を有するアクリルアミド系高分子化合物
固形分濃度15.5%の水系乳化物 山陽色素株式会社製
・CTI1201:アニオン化処理剤
ポリエステル系エマルジョン処理剤
固形分濃度25.5%の水系乳化物 山陽色素株式会社製
・EMACOL CT BLUE 4824E:カチオン性顔料
顔料分濃度15.5%の水系分散液 山陽色素株式会社製
・EMACOL CT RED 4318N:カチオン性顔料
顔料分濃度20.0%の水系分散液 山陽色素株式会社製
・EMACOL CT YELLOW 4631N:カチオン性顔料
顔料分濃度18.0%の水系分散液 山陽色素株式会社製
・アニオン性ポリウレタン1:ポリカーボネート系アニオン性ポリウレタン
主のポリオール化合物としてポリカーボネートジオール、アニオン性基を有する化合物として2,2-ジメチロールプロピオン酸塩、ポリイソシアネート化合物として脂肪族ジイソシアネートを用いて合成して得た。固形分濃度30%の水系乳化物
酸価21mgKOH/g、ポリマー中のウレタン基濃度2.13mmol/g(12.4質量%)、ポリマー中のウレア基濃度0.29mmol/g(1.6質量%)
・アニオン性ポリウレタン2:ポリカーボネート系アニオン性ポリウレタン
主のポリオール化合物としてポリカーボネートジオール、アニオン性基を有する化合物として2,2-ジメチロールプロピオン酸塩、ポリイソシアネート化合物として芳香脂肪族ジイソシアネートを用いて合成して得た。固形分濃度30%の水系乳化物
酸価15mgKOH/g、ポリマー中のウレタン基濃度1.85mmol/g(10.7質量%)、ポリマー中のウレア基濃度0.39mmol/g(2.2質量%)
・アニオン性ポリウレタン3:ポリエステル系アニオン性ポリウレタン
主のポリオール化合物としてポリエステルジオール、アニオン性基を有する化合物として2,2-ジメチロールプロピオン酸塩、ポリイソシアネート化合物として脂肪族ジイソシアネートを用いて合成して得た。固形分濃度30%の水系乳化物
酸価7mgKOH/g、ポリマー中のウレタン基濃度1.20mmol/g(6.9質量%)、ポリマー中のウレア基濃度0.32mmol/g(1.8質量%)
・アニオン性ポリウレタン4:ポリカーボネート系アニオン性ポリウレタン
主のポリオール化合物としてカプロラクトン変性ポリカーボネートジオール、アニオン性基を有する化合物として2,2-ジメチロールプロピオン酸塩、ポリイソシアネート化合物として脂肪族ジイソシアネートを用いて合成して得た。固形分濃度30%の水系乳化物
酸価10mgKOH/g、ポリマー中のウレタン基濃度1.24mmol/g(7.2質量%)、ポリマー中のウレア基濃度0.50mmol/g(2.8質量%)
・アニオン性ポリウレタン5:ポリカーボネート系アニオン性ポリウレタン
主のポリオール化合物としてカプロラクトン変性ポリカーボネートジオール、アニオン性基を有する化合物として2,2-ジメチロールプロピオン酸塩、ポリイソシアネート化合物として脂肪族ジイソシアネートを用いて合成して得た。固形分濃度30%の水系乳化物
酸価30mgKOH/g、ポリマー中のウレタン基濃度1.84mmol/g(10.7質量%)、ポリマー中のウレア基濃度0.48mmol/g(2.7質量%)
・ノニオン性ポリウレタン:ポリエステル系ノニオン性ポリウレタン
主のポリオール化合物としてポリエステルジオール、ポリイソシアネート化合物として脂肪族ジイソシアネートを用いて合成して得た。固形分濃度30%の水系乳化物
酸価0mgKOH/g、ポリマー中のウレタン基濃度1.02mmol/g(5.9質量%)、ポリマー中のウレア基濃度0.24mmol/g(1.3質量%)
・カチオン性ポリウレタン:ポリカーボネート系カチオン性ポリウレタン
主のポリオール化合物としてポリカーボネートジオール、カチオン性基を有する化合物としてビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム塩、ポリイソシアネート化合物として脂肪族ジイソシアネートを用いて合成して得た。固形分濃度30%の水系乳化物
酸価0mgKOH/g、ポリマー中のウレタン基濃度2.09mmol/g(12.1質量%)、ポリマー中のウレア基濃度0.22mmol/g(1.2質量%)
・非フッ素系撥水剤1:アクリル-シリコーン系撥水剤
撥水性化合物として、炭素数が7~40の範囲にあるアルキル基を有するアクリル系共重合体とジメチルポリシロキサンとのグラフト共重合体を含有する非フッ素系撥水剤。
固形分濃度30%の水系乳化物
・非フッ素系撥水剤2:アクリル-塩ビ系撥水剤
撥水性化合物として、炭素数が7~40の範囲にあるアルキル基を有し、塩化ビニルが共重合されたアクリル系共重合体と、架橋性化合物としてブロックイソシアネート基を有するポリウレタン系架橋性化合物とを、1:1で含有する非フッ素系撥水剤。
固形分濃度20%の水系乳化物
・非フッ素系撥水剤3:アクリル-塩ビ系/シリコーン系撥水剤
撥水性化合物として、炭素数が7~40の範囲にあるアルキル基を有し、塩化ビニルが共重合されたアクリル系共重合体と、炭素数が7~40の範囲にあるアルキル基を有するアルキル変性シリコーンとを、8:2で含有する非フッ素系撥水剤。
固形分濃度30%の水系乳化物
・非フッ素系撥水剤4:ポリウレタン系/シリコーン系撥水剤
撥水性化合物として、炭素数7~40の範囲にある炭化水素基を有するイソシアネート反応性化合物(ソルビタントリステアレート)とポリイソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート多量体)との反応生成物であるポリウレタン系化合物と、炭素数が7~40の範囲にあるアルキル基を有するアルキル変性シリコーンとを、8:2で含有する非フッ素系撥水剤。
固形分濃度25%の水系乳化物
・非フッ素系撥水剤5:シリコーン系撥水剤
撥水性化合物として、炭素数3以上の炭化水素基を有さないアミノ変性シリコーンと炭素数3以上の炭化水素基を有さないシリコーンレジン(MQレジン)とを1:1で含有する非フッ素系撥水剤。
固形分濃度25%の水系乳化物
・フッ素系撥水剤
撥水性化合物として3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルメタクリレートを主モノマーとして重合したフッ素系アクリル共重合体を含有するフッ素系撥水剤。
固形分濃度20%の水系乳化物
・メイカネートPRO:ブロックイソシアネート
固形分濃度20%の水系乳化物 明成化学工業株式会社製
<実施例1>
繊維基材として、繊維を構成するポリマー成分がポリエステル100%の織物(ポリエステルタフタ)を用いた。まず、繊維基材に前処理(アニオン化処理)を行った。ミニカラー染色機を用いて、浴内にCTF1101を0.5%o.w.f.(固形分で0.078%o.w.f.)を添加し、80℃で20分間処理した。次いで、CTI1201を5.0%o.w.f.(固形分で1.28%o.w.f.)を追加で添加し、80℃で10分間処理した。次に、このアニオン化処理した繊維基材に対し顔料染色とポリウレタンの付着処理を行った。ミニカラー染色機を用いて、浴内にEMACOL CT BLUE 4824Eを10.0%o.w.f.(顔料分で1.55%o.w.f.)添加し、昇温して60℃になったところでCTF1101を0.5%o.w.f.(固形分で0.078%o.w.f.)添加し、続いてアニオン性ウレタン1を5.0%o.w.f.(固形分で1.50%o.w.f.)添加し、更に100℃に昇温して30分間処理し、排液後水洗を行い、脱水して風乾した。最後に、顔料染色しポリウレタンが付着した繊維基材に対し撥水剤の付着処理を行った。水を媒体とし非フッ素系撥水剤1を5.0%(固形分で1.50%)、メイカネートPROを1.0%(固形分で0.20%)含有する処理液を用いて、DIP-NIPにて付与した(絞り率30%)。その後、ピンテンターを用い、110℃で60秒間乾燥し、更に170℃で60秒間加熱処理を行ない、顔料染色繊維材料を得た。また、繊維基材をポリエステルタフタの代わりに、繊維を構成するポリマー成分がナイロン100%の織物(ナイロンタフタ)を用い、非フッ素系撥水剤付着処理時のDIP-NIP絞り率を38%とした以外は同様にして、顔料染色繊維材料を得た。
<実施例2~18、比較例1~11>
顔料染色/ポリウレタン付着処理及び撥水剤付着処理に用いた材料とそれらの使用濃度を表1、表2及び表3に記載するものとした以外は実施例1と同様にして、顔料染色繊維材料を得た。なお、実施例16~18においては、繊維基材への前処理(アニオン化処理)は行わなかった。比較例1においては、撥水剤の付着処理は行わず、比較例2~5、8、10及び11においては、染色処理液へのポリウレタンの添加は行わなかった。
<撥水性の評価>
得られた顔料染色繊維材料について、JIS L 1092:2009の7.2はっ水度試験(スプレー試験)に従って試験を行い、顔料染色繊維材料の試験面について下記の基準に従って評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、評価結果において、下記の基準で規定される状態よりもわずかに良好な場合は、評価値に「+」をつけ、わずかに劣る場合には評価値に「-」をつけた。撥水性は、「3-」以上であると実用に供することができる。
5:湿潤や水滴の付着が無い。
4:湿潤は無いが、小さな水滴が付着する。
3:離散した小さな湿潤が有る。
2:試験面表面の半分程度が湿潤を示し、湿潤の一部が裏面まで浸透している。
1:試験面表面全体が湿潤を示す。
<耐水性の評価>
得られた顔料染色繊維材料について、JIS L 1092:2009の7.1耐水度試験A法に従って評価した。結果を表1及び表2に示す。耐水性は、40cm以上であると実用に供することができる。
<摩擦堅牢度の評価>
得られた顔料染色繊維材料の摩擦堅牢度(乾式、湿式)について、JIS L 0849:2013の摩擦試験機II形法に従って評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、評価結果において、例えば、「2-3」は評価値2と評価値3の中間の評価値であり、「2+」は評価値2よりも優れるが「2-3」よりも劣り、「3-」は評価値3よりも劣るが「2-3」より優れることを示す。摩擦堅牢度は、乾式で「2-3」以上であり、湿式で2以上であると実用に供することができる。
Figure 2023057061000001
Figure 2023057061000002
Figure 2023057061000003
<実施例19>
繊維基材として、繊維を構成するポリマー成分がポリエステル100%の糸(150デニール/48フィラメント)1Kgを用い、ソフト巻きワインダーを用いて管径60mmの染色用ボビンに巻き密度0.20g/cm3で巻いてチーズを作製した。このチーズをチーズ染色機にセットし、まず、繊維基材に前処理(アニオン化処理)を行った。CTF1101を0.5%o.w.f.(固形分で0.078%o.w.f.)で含有する処理液をイン-アウトで流量10L/分で循環し、80℃で20分間処理した。次いで、処理液にCTI1201を5.0%o.w.f.(固形分で1.28%o.w.f.)を追加で添加し、80℃で10分間処理した。次に、このアニオン化処理した繊維基材に対し顔料染色とポリウレタンの付着処理を行った。アニオン化処理したチーズをチーズ染色機にセットし、EMACOL CT BLUE 4824Eを10.0%o.w.f.(顔料分で1.55%o.w.f.)で含有する染色処理液をイン-アウトで流量10L/分で循環し、昇温して60℃になったところでCTF1101を0.5%o.w.f.(固形分で0.078%o.w.f.)添加し、続いてアニオン性ウレタン1を5.0%o.w.f.(固形分で1.50%o.w.f.)添加し、更に100℃に昇温して30分間処理し、排液後水洗を行い、脱水して風乾した。最後に、顔料染色しポリウレタンが付着した繊維基材に対し撥水剤の付着処理を行った。水を媒体とし非フッ素系撥水剤1を5.0%(固形分で1.50%)、メイカネートPROを1.0%(固形分で0.20%)含有する処理液を用いて、顔料染色とポリウレタン付着処理を行ったチーズを浸漬処理し、脱水した。その後、チーズ乾燥機を用い、100℃で20分間乾燥した。更に、糸をチーズ状態から解いてかせ状にした上で、熱風乾燥機を用い、170℃で60秒間加熱処理を行ない、実施例19の顔料染色繊維材料を得た。
得られた先染め糸条である顔料染色繊維材料は、チーズの内層に位置した部分とチーズの外層に位置した部分とを対比して色むらは認められなかった。この先染め糸条を経糸と緯糸として用い、常法に従い平織して布帛を作製した。この布帛の撥水性、耐水性、摩擦堅牢度を評価したところ、実施例1の顔料染色繊維材料(繊維基材:ポリエステル)と同様な結果であった。
<実施例20>
繊維基材として、ポリエステル糸の代わりに、繊維を構成するポリマー成分がナイロン100%の糸(150デニール/48フィラメント)を用いた以外は実施例19と同様にして、実施例20の顔料染色繊維材料を得た。得られた先染め糸条である顔料染色繊維材料は、チーズの内層に位置した部分とチーズの外層に位置した部分とを対比して色むらは認められなかった。この先染め糸条を経糸と緯糸として用い、常法に従い平織して布帛を作製した。この布帛の撥水性、耐水性、摩擦堅牢度を評価したところ、実施例1の顔料染色繊維材料(繊維基材:ナイロン)と同様な結果であった。
表1、表2及び表3の結果より、実施例と比較例を対比すると、本発明の顔料染色繊維材料は、繊維からの顔料の脱落を防止する効果である優れた摩擦堅牢度と、撥水性及び耐水性に優れる効果を同時に得られることが分かる。

Claims (9)

  1. 繊維基材が顔料で染色された繊維材料であって、
    合成繊維を含む繊維基材に、カチオン性顔料とアニオン性ポリウレタンと非フッ素系撥水剤が付着している、顔料染色繊維材料。
  2. 前記アニオン性ポリウレタンの酸価が、5~25mgKOH/gの範囲にある、請求項1に記載される顔料染色繊維材料。
  3. 前記非フッ素系撥水剤が、炭素数7~40の炭化水素基を有する撥水性化合物を含有する撥水剤である、請求項1または2に記載される顔料染色繊維材料。
  4. 前記炭素数7~40の炭化水素基を有する撥水性化合物が、炭素数7~40の炭化水素基を有する炭化水素系化合物、炭素数7~40の炭化水素基を有するイソシアネート反応性化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物、及び炭素数7~40の炭化水素基を有するシリコーン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項3に記載される顔料染色繊維材料。
  5. 合成繊維を含む繊維基材が顔料で染色された繊維材料の製造方法であって、
    繊維基材の染色工程において、カチオン性顔料とアニオン性ポリウレタンとを含有する染色処理液を用い、繊維基材への顔料染色とアニオン性ポリウレタンの付着処理を行い、その後の工程として、非フッ素系撥水剤の付着処理を行う、顔料染色繊維材料の製造方法。
  6. 前記アニオン性ポリウレタンの酸価が、5~25mgKOH/gの範囲にある、請求項5に記載される顔料染色繊維材料の製造方法。
  7. 前記非フッ素系撥水剤が、炭素数7~40の炭化水素基を有する撥水性化合物を含有する撥水剤である、請求項5または6に記載される顔料染色繊維材料の製造方法。
  8. 前記炭素数7~40の炭化水素基を有する撥水性化合物が、炭素数7~40の炭化水素基を有する炭化水素系化合物、炭素数7~40の炭化水素基を有するイソシアネート反応性化合物とポリイソシアネート化合物との反応生成物、炭素数7~40の炭化水素基を有するシリコーン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項7に記載される顔料染色繊維材料の製造方法。
  9. 前記繊維基材の形状が糸であり、前記染色工程がチーズ染色により行われ、染色時のチーズの巻き密度が0.1~0.5g/cm3であり、染色時の染色処理液の流量が糸1Kg当たり5~30L/分である請求項5~8のいずれか1項に記載される顔料染色繊維材料の製造方法。
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