JP2023053690A - 制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関の始動時の燃料の燃焼不安定に起因する異音または振動の発生を有効に回避する。【解決手段】内燃機関及びこれに歯車機構を介して接続された回転電機を制御する制御装置であって、停止した内燃機関を始動するにあたり、回転電機がモータトルクを発生させて内燃機関を回転駆動するモータリングを実行し、それから内燃機関の気筒において燃料を燃焼させエンジントルクを発生させるファイアリングを実行するものであり、ファイアリングの開始直後の時期に、回転電機がモータトルクを出力しかつ内燃機関がエンジントルクを出力して回転数をその目標値に追従させる過渡制御を実施し、その過渡制御の後に、回転電機がモータトルクを出力せず内燃機関がエンジントルクを出力する状態へと遷移する制御装置を構成した。【選択図】図5

Description

本発明は、動力源として車両に搭載される内燃機関及びこれに機械的に接続された回転電機の制御、特に内燃機関の始動時の制御に関する。
近時、内燃機関及び回転電機(電動機)の二種の動力源を備えるハイブリッド車両が一定の普及を見ている。シリーズ方式のハイブリッド車両(例えば、下記特許文献を参照)は、内燃機関により回転電機である発電用モータジェネレータを駆動して発電を行い、発電した電力を蓄電装置、即ちリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等のバッテリ及び/またはキャパシタに蓄えるとともに、回転電機である走行用モータジェネレータに供給する。そして、走行用モータジェネレータによって車両の駆動輪を回転させて走行する。
発電用モータジェネレータのみならず、走行用モータジェネレータもまた、回生制動により発電を行い、発電した電力を蓄電装置に蓄えることができる。蓄電装置の容量一杯まで既に電荷が蓄えられている場合には、回生制動により得られる電力を敢えて発電用モータジェネレータに供給し、これを電動機として作動させて内燃機関を回転駆動するモータリングを行うことで、余剰の電力を消費する。
シリーズ方式のハイブリッド車両にあって、発電用モータジェネレータは、停止した内燃機関を始動する準備として内燃機関をモータリング(クランキング)、つまり内燃機関の回転軸であるクランクシャフトを回転駆動する役割を兼ねる。そのときには、蓄電装置から電力の供給を受ける。
ハイブリッド車両では、気筒において燃料を燃焼させて内燃機関を運転するファイアリングを行なわずとも、走行用モータジェネレータが蓄電装置に蓄えた電荷を消費して回転駆動力を出力し、車両を走行させることが可能である。よって、車両の運用中であっても、内燃機関の回転を停止している状態が継続することがある。
蓄電装置に蓄えている電荷の量が減少したときや、走行用モータジェネレータに対する要求出力が大きいときには、内燃機関を始動しその気筒に燃料を供給して燃焼させ、内燃機関の出力する回転駆動力により発電用モータジェネレータを駆動し、発電を実行して蓄電装置を充電、または走行用モータジェネレータに供給する電力を増強する。
特開2020-156134号公報
一般に、停止している内燃機関を始動するには、内燃機関をモータリングしつつ、吸気通路上のスロットルバルブの開度を拡大させ、エンジン回転数がある程度以上上昇してからファイアリングを開始する。
図6に模式的に示すように、内燃機関と回転電機との間には、両者の回転軸同士を機械的に接続する歯車機構7が介在する。モータリング中は、回転電機が電動機として作動してモータトルクを出力し、これを歯車機構7を介して内燃機関に伝達する。このとき、図6(A)の如く、噛合する歯車71、72のうちの回転電機側の歯車72が駆動歯車、内燃機関側の歯車71が従動歯車となり、前者の歯車72の歯が後者の歯車71の歯を押す。
ファイアリングを開始すると、モータリングを終了する。即ち、回転電機が電動機として作動しなくなり(回転電機は発電機として作動することになる)、モータトルクが出力されなくなる。そして、内燃機関がエンジントルクを出力し、これを歯車機構7を介して回転電機に伝達する。このときには、図6(B)の如く、内燃機関側の歯車71が駆動歯車、回転電機側の歯車72が従動歯車となり、前者の歯車71の歯が後者の歯車72の歯を押す。
ファイアリングの開始後、気筒において燃料が適正に燃焼する場合には、内燃機関(または、回転電機)の回転数を問題なくその目標値に制御できる。
しかし、燃料の燃焼が不安定、ないしは失火が発生すると、回転数がその目標値に向かって適切に上昇せず、回転数が低落することもあり得る。そのような場合には、回転電機に通電して内燃機関に対する負荷トルクを軽減し、またはこれを再度電動機として作動させてモータトルクを発生させ、内燃機関の回転をアシストすることになる。この過程で、
・ファイアリングを開始してモータリングを終了すると、図6(B)の状態となるが、
・ファイアリング中の燃焼不安定ないし失火により回転数と目標値との偏差が大きくなると、回転電機に通電するので再び図6(A)の状態となり、
・回転数と目標値との偏差が小さくなると、回転電機への通電を遮断するので図6(B)の状態に復帰し、
・それでもなお依然として燃焼が不安定であり回転数と目標値との偏差が大きくなると、またもや回転電機に通電して図6(A)の状態となる
というような反復が起こり、回転電機側の歯車72の歯と内燃機関側の歯車71の歯とが反復的に打ち合ってしまう。その歯打ち音が、運転者を含む車両の搭乗者に知覚され得る異音または振動として、車室内に伝わる可能性がある。この事象は、車両のNV(Noise and Vibration)性能の低下に繋がる。
本発明は、以上の問題に初めて着目してなされたものであり、内燃機関の始動時の燃料の燃焼不安定に起因する異音または振動の発生を回避することを所期の目的とする。
本発明では、内燃機関及びこれに歯車機構を介して接続された回転電機を制御する制御装置であって、停止した内燃機関を始動するにあたり、回転電機がモータトルクを発生させて内燃機関を回転駆動するモータリングを実行し、それから内燃機関の気筒において燃料を燃焼させエンジントルクを発生させるファイアリングを実行するものであり、ファイアリングの開始直後の時期に、回転電機がモータトルクを出力しかつ内燃機関がエンジントルクを出力して回転数をその目標値に追従させる過渡制御を実施し、その過渡制御の後に、回転電機がモータトルクを出力せず内燃機関がエンジントルクを出力する状態へと遷移する制御装置を構成した。
加えて、前記過渡制御中、内燃機関の吸気通路上に設置されたスロットルバルブをある開度に操作し、前記過渡制御後、前記スロットルバルブの開度をそれよりも縮小することも好ましい。
本発明によれば、内燃機関の始動時の燃料の燃焼不安定に起因する異音または振動の発生を有効に回避できる。
本発明の一実施形態におけるシリーズ方式のハイブリッド車両及び制御装置の概略構成を示す図。 同実施形態のハイブリッド車両に搭載される内燃機関の概要を示す図。 同実施形態のハイブリッド車両に搭載される走行用モータジェネレータの要求出力の区分を示す図。 同実施形態の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。 同実施形態の制御装置が実施する内燃機関の始動時の制御の模様を示すタイミング図。 内燃機関と回転電機との間に介在する歯車機構を模式的に示す図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両の主要システムの概略構成を示す。本実施形態の車両は、二種類の動力源を搭載したハイブリッド車両である。内燃機関1と、内燃機関1により駆動されて発電を行う回転電機である発電用モータジェネレータ2と、発電用モータジェネレータ2が発電した電力を蓄える蓄電装置3と、発電用モータジェネレータ2及び/または蓄電装置3から電力の供給を受けて車両の駆動輪62を駆動する回転電機である走行用モータジェネレータ4とを備えている。
本ハイブリッド車両は、内燃機関1を発電にのみ使用するシリーズハイブリッド方式の電気自動車であり、車両の駆動輪62には専ら走行用モータジェネレータ4から走行のための駆動力を供給する。内燃機関1と駆動輪62との間は機械的に切り離されており、元来両者の間で回転駆動力の伝達がなされない。従って、内燃機関1は、走行用モータジェネレータ4及び駆動輪62から完全に独立して回転し、また完全に独立して停止することが可能である。従って、イグニッションスイッチ(パワースイッチ、またはイグニッションキー)がONに操作されている車両の運用中、運転者がアクセルペダルを踏むことで車両が走行可能な状態にあっても、蓄電装置3が十分な電荷を蓄え、かつブレーキブースタ15が十分な負圧を蓄えている状況下では、燃料の燃焼を伴う内燃機関1の運転を実施しないことがある。
内燃機関1の回転軸であるクランクシャフトは、発電用モータジェネレータ2の回転軸と歯車機構7を介して機械的に接続している(両者は常に接続しており、この接続が切り離されることはない。両者の間に断接切換可能なクラッチ等は存在しない)。そして、内燃機関1が出力する回転駆動力を発電用モータジェネレータ2に入力することで、発電用モータジェネレータ2が発電する。発電した電力は、蓄電装置3に充電し、及び/または、走行用モータジェネレータ4に供給する。また、発電用モータジェネレータ2は、自らが回転駆動力を発生させて内燃機関1のクランクシャフトを回転駆動するモータリング用の電動機としても機能する。例えば、発電用モータジェネレータ2は、停止している内燃機関1を始動する準備としてのクランキングを実行する。
走行用モータジェネレータ4は、車両の走行のための駆動力を発生させ、その駆動力を減速機61を介して駆動輪62に入力する。また、走行用モータジェネレータ4は、駆動輪62に連れ回されて回転することで発電し、車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収する。この回生制動により発電した電力は、蓄電装置3に充電する。
尤も、既に蓄電装置3の容量一杯まで電荷が蓄えられており、それ以上の充電が困難であるならば、走行用モータジェネレータ4が回生発電した電力を敢えて発電用モータジェネレータ2に供給し、発電用モータジェネレータ2を電動機として作動させて内燃機関1を回転駆動する。これにより、車両の制動性能を維持しながら、余剰の電力を消尽する。また、このとき、内燃機関1の回転が保たれることから、内燃機関1の気筒への燃料供給を一時的に停止する燃料カットを実行することができる。
発電機インバータ21は、発電用モータジェネレータ2が発電する交流電力を直流電力に変換する。そして、その直流電力を蓄電装置3または駆動機インバータ41に入力する。並びに、発電機インバータ21は、発電用モータジェネレータ2を電動機として作動させる際に、蓄電装置3及び/または駆動機インバータ41から供給される直流電力を交流電力に変換した上で発電用モータジェネレータ2に入力する。
駆動機インバータ41は、蓄電装置3及び/または発電機インバータ21から供給される直流電力を交流電力に変換した上で走行用モータジェネレータ4に入力する。並びに、駆動機インバータ41は、車両の回生制動を行うときに走行用モータジェネレータ4が発電する交流電力を直流電力に変換した上で蓄電装置3または発電機インバータ21に入力する。発電機インバータ21及び駆動機インバータ41は、PCU(Power Control Unit)02の一部をなす。
蓄電装置3は、バッテリ及び/またはキャパシタ等である。バッテリは、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等の、エネルギ密度の大きい高電圧の二次電池である。蓄電装置3は、発電用モータジェネレータ2及び走行用モータジェネレータ4の各々が発電する電力を充電して蓄える。並びに、蓄電装置3は、発電用モータジェネレータ2及び走行用モータジェネレータ4の各々を電動機として作動させるための電力を放電し、それらモータジェネレータ2、4に必要な電力を供給する。
図2に、本実施形態のハイブリッド車両に搭載される内燃機関1の概要を示している。内燃機関1は、例えば火花点火式の4ストロークレシプロエンジンであり、複数の気筒11(例えば、三気筒。図2には、そのうち一つを図示する)を包有している。各気筒11の吸気ポート近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ111を設けている。また、各気筒11の燃焼室の天井部に、点火プラグ112を取り付けてある。点火プラグ112は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。
吸気を供給するための吸気通路13は、外部から空気を取り入れて各気筒11の吸気ポートへと導く。吸気通路13上には、エアクリーナ131、電子スロットルバルブ132、サージタンク133、吸気マニホルド134を、上流からこの順序に配置している。エアクリーナ131は、吸気通路13における最上流の、空気を取り入れる吸気口に所在する。吸気口は、冷たい空気を取り入れて内燃機関の充填効率を上げるために、車両の前方に開口している。
排気を排出するための排気通路14は、気筒11内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒11の排気ポートから外部へと導く。この排気通路14上には、排気マニホルド142及び排気浄化用の三元触媒141を配置している。
EGR装置12は、排気通路14と吸気通路13とを連通する外部EGR通路121と、EGR通路121上に設けたEGRクーラ122と、EGR通路121を開閉し当該EGR通路121を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ123とを要素とする。EGR通路121の入口は、排気通路14における触媒141の下流の箇所に接続している。EGR通路121の出口は、吸気通路13におけるスロットルバルブ132の下流の箇所(特に、サージタンク133または吸気マニホルド134)に接続している。
内燃機関1には、車両の制動時に必要となる操作力、即ちブレーキペダルの踏力を軽減するためのブレーキブースタ15が付帯している。ブレーキブースタ15は、吸気通路13におけるスロットルバルブ132の下流側の部位(または、サージタンク133)から吸気負圧を導き入れ、その負圧を用いてブレーキペダルの踏力を倍力する、この分野では広く知られているものである。ブレーキブースタ15は、負圧を蓄える定圧室(負圧室)と、大気圧が加わる変圧室(大気圧室)とを有し、定圧室が負圧管路151を介して吸気通路13に接続している。負圧管路151は、スロットルバルブ132の下流側の吸気負圧を定圧室へと導く。負圧管路151上には、負圧を定圧室内に留め、定圧室に正圧が加わることを防止するためのチェックバルブ152を設けてある。
運転者によりブレーキペダルが操作されていないとき、定圧室と変圧室とが連通し、かつ変圧室が大気圧から隔絶される。ブレーキペダルが操作されると、定圧室と変圧室との間が遮断され、かつ変圧室に大気が導入される。結果、定圧室と変圧室との圧力差が、ブレーキペダルの踏力を倍力する制御圧力となる。ブレーキブースタ15により増幅されたブレーキ踏力は、マスタシリンダ16において液圧力に変換される。マスタシリンダ16が出力するマスタシリンダ圧(マスタシリンダ16が吐出するブレーキ液の圧力)は、液圧回路を介してブレーキキャリパやホイールシリンダ等といったブレーキ装置に伝達され、当該ブレーキ装置による車両の制動に用いられる。
内燃機関1、発電用モータジェネレータ2、蓄電装置3、インバータ21、41及び走行用モータジェネレータ4等の制御を司る制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECU、即ち内燃機関1を制御するEFI(Electronic Fuel Injection)ECU01、モータジェネレータ2、4及びインバータ21、41を制御するMG(Motor Generator)ECU02、蓄電装置3を制御するBMS(Battery Management System)ECU03等、並びに、それらの制御を統括する上位のコントローラであるHV(Hybrid Vehicle)ECU00が、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものである。
ECU0に対しては、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関1のクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、運転者によるアクセルペダルの踏込量をアクセル開度(いわば、運転者が車両(の走行用モータジェネレータ4)に対して要求している駆動力)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、内燃機関1の気筒11に連なる吸気通路13(特に、サージタンク133または吸気マニホルド134)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関1の冷却水の温度を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、内燃機関1の気筒11を内包しているシリンダブロックの振動の大きさを検出する振動式のノックセンサから出力される振動信号f、蓄電装置3に蓄えている電荷量を検出するセンサ(特に、バッテリ電流及び/またはバッテリ電圧センサ)から出力されるバッテリSOC(State Of Charge)信号g、ブレーキブースタ15の定圧室に蓄えている負圧を検出する負圧センサから出力される負圧信号h等が入力される。
そして、ECU0は、各種センサを介してセンシングしている、運転者が操作するアクセルペダルの踏込量や、現在の車両の車速、蓄電装置3が蓄えている電荷の量、発電用モータジェネレータ2の発電電力等に応じて、走行用モータジェネレータ4が出力する回転駆動力、内燃機関1が出力する回転駆動力、及び発電用モータジェネレータ2が発電する電力の大きさ等を増減制御する。
原則として、蓄電装置3が現在十分な電荷を蓄えており、走行用モータジェネレータ4に対して要求される出力が小さいならば、内燃機関1への燃料の供給を遮断して内燃機関1を運転しない。翻って、蓄電装置3が蓄えている電荷の量が下限値を下回り、または走行用モータジェネレータ4に対して要求される出力が大きいならば、内燃機関1を始動し気筒11に燃料を供給してこれを燃焼させるファイアリングを実行し、内燃機関1の出力する回転駆動力により発電機モータジェネレータ2を駆動し、発電を実施して蓄電装置3を充電し、または走行用モータジェネレータ4に供給する電力を増強する。
図3に、車両の運転者が要求する出力と、内燃機関1及び発電用モータジェネレータ2の運転の要否との関係を示している。走行用モータジェネレータ4に対して要求される出力は、運転者が操作するアクセルペダルの踏込量及び車速によって決まる。駆動輪62に与えるべき駆動力は、アクセル開度が大きいほど大きくなる。その要求出力は、駆動輪62に与えるべき駆動力が大きいほど大きくなり、車速が高くなるほど大きくなる。図3上、右上方に向かうほど要求出力が大きいということになる。
ECU0は、駆動輪62に与えるべき駆動力が比較的小さく、車速も比較的低い低出力領域Iでは、内燃機関1に燃料を供給せずにそのファイアリング運転を停止し、発電用モータジェネレータ2を発電機として作動させない。低出力領域Iでは、走行用モータジェネレータ4が、蓄電装置3のみから電力供給を受けて、車両の走行のための駆動力を出力する。低出力領域Iは、典型的には、アクセル開度が0または所定値以下に小さいとき、あるいは車両の減速走行中である。
ECU0は、駆動輪62に与えるべき駆動力がある程度以上大きい、または車速がある程度以上高い中高出力領域II、IIIでは、内燃機関1に燃料を供給してこれをファイアリング運転し、発電用モータジェネレータ2を発電機として作動させる。要求出力が顕著に大きくない中出力領域IIでは、走行用モータジェネレータ4が、主として発電用モータジェネレータ2から電力供給を受けて、車両の走行のための駆動力を出力する。このとき、蓄電装置3からは、少量の電力供給を受けるか、または全く電力供給を受けない。要求出力が顕著に大きい高出力領域IIIでは、走行用モータジェネレータ4が、発電用モータジェネレータ2及び蓄電装置3の双方から電力供給を受けて、車両の走行のための駆動力を出力する。
ファイアリング運転中の内燃機関1に対して要求される出力も、基本的には、走行用モータジェネレータ4に対して要求される出力が大きいほど大きくなる。但し、現在蓄電装置3が蓄えている電荷量にもよる。蓄電装置3の電荷量が欠乏したときには、可及的速やかにこれを充電する必要があり、たとえ走行用モータジェネレータ4に対する要求出力が小さくとも、発電のために内燃機関1に対する要求出力が大きくなることがある。
内燃機関1の気筒11に燃料を供給して内燃機関1を運転しておらず、走行用モータジェネレータ4により駆動輪62を駆動して車両を走行させている最中に、内燃機関1を始動して発電用モータジェネレータ2による発電を実行しようとするためには、まず、発電用モータジェネレータ2を電動機として作動させ、これにより内燃機関1の始動のためのモータリングを行う。そして、内燃機関1のクランクシャフトが所定回数以上または所定角度以上回転し、内燃機関1の各気筒11の現在の行程またはピストンの位置を知得する気筒判別が完了したならば、内燃機関1の各気筒11の行程に合わせて適切なタイミングで燃料を噴射し、かつ適切なタイミングで燃料を着火燃焼させるファイアリングを開始する。内燃機関1のクランクシャフトの回転角度及び回転速度即ちエンジン回転数は、発電用モータジェネレータ2に付帯するレゾルバを介して(MG ECU02において)検出することができ、内燃機関1に付帯するクランク角センサを介して(EFI ECU01において)検出することもできる。
内燃機関1が自立的に回転し発電のために必要な回転駆動力を出力可能となり、発電用モータジェネレータ2の出力を低減させてもなおエンジン回転数が上昇傾向を維持できるようになったならば、電動機として作動させている発電用モータジェネレータ2の出力を0まで低減させてモータリングを終了し、今度は内燃機関1により発電用モータジェネレータ2を回転駆動する。さらに、発電用モータジェネレータ2を発電機として作動させ、その発電電力を0から増大させる。
ECU0の一部をなすEFI ECU01は、内燃機関1の運転制御に必要な各種情報b、d、e、fを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒11に吸入される空気量を推算する。そして、吸入空気量に見合った(目標空燃比を具現するために必要な)要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量)等といった内燃機関1の運転パラメータを決定する。EFI ECU01は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを、出力インタフェースを介して点火プラグ112のイグナイタ、インジェクタ111、スロットルバルブ132、EGRバルブ123等に対して出力する。
車両が停車しまたは停車に近い低車速の状況から、運転者がアクセルペダルを踏み込み車両を発進させようとするときには、走行用モータジェネレータ4に対する要求出力が低出力領域Iから中高出力領域II、IIIに遷移することから、それまで停止していた内燃機関1を始動する。または、蓄電装置3に蓄えている電荷量(SOC)が所定値以下に減少したり、ブレーキブースタ15の定圧室に蓄えている負圧が所定値以下に減少したりしたときにも、内燃機関1を始動することになる。
図4に、内燃機関1の始動にあたってECU0が実行する処理の手順を示している。まず、発電用モータジェネレータ2により内燃機関1を回転駆動するモータリングを行い(ステップS1)、それから、内燃機関1のファイアリングを開始する(ステップS2、S4)。
内燃機関1を始動する当初、吸気通路13上のスロットルバルブ132の開度は、必要最低限の吸入空気量を確保できる最小開度、例えばいわゆるオープナ開度に縮小している。周知の通り、電子スロットルバルブ132は、吸気通路13を開閉するバタフライバルブの弁体をスロットルモータにより回動させることで、気筒11に流れ込む吸気の流量を増減調整する。オープナ開度は、スロットルモータに通電せず(電力を供給せず)スロットルモータから弁体に力を付与していないときの開度であり、全閉ではなく僅かながら開いている。スロットルバルブ132の弁体には、オープナスプリングが付設されており、そのスプリングが弁体を弾性付勢してオープナ開度を具現する角度(姿勢)に位置付ける。
内燃機関1の始動時には、発電用モータジェネレータ2によるモータリングに同期して、スロットルバルブ132の開度を最小開度から大きく拡開するように操作する。モータリングを通じてエンジン回転数がある程度以上加速したら、ファイアリング、即ちインジェクタ111による燃料噴射及び点火プラグ112による火花点火を開始し、エンジントルクの増大及びエンジン回転の加速を促進する。
その上で、本実施形態では、ファイアリングの開始直後の時期に、発電用モータジェネレータ2がモータリングを即時に停止せずモータトルクを出力し続け、かつ内燃機関1がエンジントルクを出力する状態をある程度の期間維持するという、過渡的な制御を実施する(ステップS2)。この過渡制御は、内燃機関1の気筒11における燃料の燃焼が十分に安定したと考えられるまで継続し(ステップS3)、しかる後発電用モータジェネレータ2がモータリングを停止、モータトルクの出力を0にする(ステップS4)。以後、発電用モータジェネレータ2は、内燃機関1により回転駆動されて発電することになる。
図4に、内燃機関1の始動の過程を示している。図4中、実線は本実施形態の制御の模様を表し、一点鎖線は従来の制御の模様を表している。時点t0は、ステップS1のモータリングを開始する時点であり、時点t1は、ステップS2のファイアリングを開始する時点である。時点t0から時点t1までは、モータリングのみを実行し、発電用モータジェネレータ2を電動機として作動させているが、内燃機関1では燃料噴射及び着火燃焼を行っていない。
そして、時点t1は、上述の過渡制御を開始する時点でもある。時点t2は、ステップS3の条件が成立して過渡制御を終了する時点である。時点t1から時点t2までが、モータリングとファイアリングとを並行する過渡制御の期間であり、発電用モータジェネレータ2を電動機として作動させながら、内燃機関1で燃料噴射及び着火燃焼を行う。
ステップS2の過渡制御中、内燃機関1の出力するエンジントルクの大きさは、そのエンジントルクのみでは所望の目標回転数を達成できず、電動機たる発電用モータジェネレータ2の出力するモータトルクと合わせてはじめて所望の目標回転数を達成できるような大きさに抑制する。過渡制御中は、内燃機関1及び発電用モータジェネレータ2の双方が回転軸を駆動することになる。
詳細には、過渡制御中のスロットルバルブ132の開度(実線)を、過渡制御を実施しない従来の制御におけるそれ(一点鎖線)よりも大きく開く。その帰結として、吸気通路13を通じて気筒11に吸入される空気量が増加し、それに合わせて燃料噴射量も増量することになるが、点火タイミング(実線)を従来(一点鎖線)及び平常よりも遅角させる補正を加えることで、内燃機関1の熱機械変換効率を敢えて低下させ、出力するエンジントルクを低減する。これは、気筒1のボア壁温を速やかに昇温させて燃焼の安定化を図ることの他、気筒1の燃焼室内で有害物質HCを確実に燃焼させること、NOxの発生を抑えること、排気通路14に排出されるガスを高温にして触媒141を速やかに昇温させ早期に活性化させることが狙いである。
また、ステップS2の過渡制御中、発電用モータジェネレータ2がモータトルクを出力し続けることで、内燃機関1と発電用モータジェネレータ2との間に介在する歯車機構7の歯車71、72を、図6(A)に示すような、発電用モータジェネレータ2側の歯車72の歯が内燃機関1側の歯車71の歯を押す状態に保つ。仮に、内燃機関1の気筒11において燃料の燃焼が不安定、ないしは失火が発生して、内燃機関1の出力するエンジントルクが低下したときには、発電用モータジェネレータ2が出力するモータトルクを増大させて、内燃機関1の回転数を所望の目標値に追従させるようにフィードバック制御する。
ステップS3の条件が成立した時点t2以降は、過渡制御を終了、ステップS4へと遷移する。つまり、発電用モータジェネレータ2を電動機として作動させることを止め、内燃機関1の出力するエンジントルクのみで所望の目標回転数を達成するよう、スロットルバルブ132の開度、燃料噴射量や点火タイミングを調整する。特に、時点t2以降、それまで遅角補正していた点火タイミング(実線)を平常のタイミングまで進角させつつ、それまで拡開していたスロットルバルブ132の開度(実線)を平常の開度まで縮小する。
ステップS3が成立したと判断する条件は、幾つか考えられる。列挙すると、
・過渡制御の開始時点t1から経過した時間が所定時間を超えたならば、ステップS3が成立したとして過渡制御を終了する。ここに言う所定時間は、恒常的に一定値でもよいし、現在の内燃機関1の冷却水温等に応じて増減させてもよい。例えば、冷却水温が低いほど、所定時間を長く設定する
・過渡制御中の発電用モータジェネレータ2が出力するエンジントルクのフィードバック補正量が所定値以下に小さくなったならば、内燃機関1のみで回転を維持できるようになった、即ちステップS3が成立したとして過渡制御を終了する
・気筒11の燃焼室内温度(筒内温)若しくは燃焼室内圧力(筒内圧)、または燃料の燃焼中に気筒11の燃焼室内で発生するイオン電流を計測するセンサ類が内燃機関1に実装されている場合、その筒内温、筒内圧またはイオン電流の推移を基に、燃焼が安定しているか否かを判定する。燃焼が安定していると判定したならば、ステップS3が成立したとして過渡制御を終了する
本実施形態では、内燃機関1及びこれに歯車機構7を介して接続された回転電機2を制御する制御装置0であって、停止した内燃機関1を始動するにあたり、回転電機2がモータトルクを発生させて内燃機関1を回転駆動するモータリングを実行し、それから内燃機関1の気筒11において燃料を燃焼させエンジントルクを発生させるファイアリングを実行するものであり、ファイアリングの開始直後の時期に、回転電機2がモータトルクを出力しかつ内燃機関1がエンジントルクを出力して回転数をその目標値に追従させる過渡制御を実施し、その過渡制御の後に、回転電機2がモータトルクを出力せず内燃機関1がエンジントルクを出力する状態へと遷移する制御装置0を構成した。
過渡制御中は、内燃機関1の吸気通路13上に設置されたスロットルバルブ132をある開度に操作し、過渡制御後は、スロットルバルブ132の開度をそれよりも縮小する。
本実施形態によれば、内燃機関1の始動に際して、回転電機2側の歯車72の歯と内燃機関1側の歯車71の歯とが反復的に打ち合う問題を有効に回避でき、車両のNV性能のより一層の向上に寄与し得る。
本実施形態は、制御装置0のプログラム(制御ロジック)の改変のみで実現が可能である。吸音材やその他新規のハードウェアの追加が不要で、コストの高騰を招かない。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、本発明の適用対象は、シリーズ方式のハイブリッド車両には限定されない。
その他、各部の具体的な構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
0…制御装置(ECU)
1…内燃機関
11…気筒
111…インジェクタ
112…点火プラグ
13…吸気通路
132…スロットルバルブ
2…回転電機(発電用モータジェネレータ)
7…歯車機構
71…内燃機関側の歯車
72…回転電機側の歯車

Claims (2)

  1. 内燃機関及びこれに歯車機構を介して接続された回転電機を制御する制御装置であって、
    停止した内燃機関を始動するにあたり、回転電機がモータトルクを発生させて内燃機関を回転駆動するモータリングを実行し、それから内燃機関の気筒において燃料を燃焼させエンジントルクを発生させるファイアリングを実行するものであり、
    ファイアリングの開始直後の時期に、回転電機がモータトルクを出力しかつ内燃機関がエンジントルクを出力して回転数をその目標値に追従させる過渡制御を実施し、その過渡制御の後に、回転電機がモータトルクを出力せず内燃機関がエンジントルクを出力する状態へと遷移する制御装置。
  2. 前記過渡制御中、内燃機関の吸気通路上に設置されたスロットルバルブをある開度に操作し、
    前記過渡制御後、前記スロットルバルブの開度をそれよりも縮小する請求項1記載の制御装置。
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