JP2023051585A - フラックス入りワイヤ及び溶接継手の製造方法 - Google Patents

フラックス入りワイヤ及び溶接継手の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安価で、極低温靭性が優れた溶接金属が得られると共に、ヒューム及びスパッタの発生量が低減できるフラックス入りワイヤ及び当該フラックス入りワイヤを用いた溶接継手の製造方法を用いた溶接継手の製造方法の提供。【解決手段】鋼製外皮と前記鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備え、鋼製外皮及びワイヤが所定の化学成分を有し、Ti酸化物のTiO2換算値の合計、Si酸化物のSiO2換算値の合計、Zr酸化物のZrO2換算値の合計、Al酸化物のAl2O3換算値の合計、K2SiF6、K2ZrF6、NaF、Na3AlF6、CaF2、及びMgF2のいずれか1種以上の弗化物の合計、Na酸化物、NaF、及びNa3AlF6のいずれか1種以上のNa含有化合物の合計、K酸化物、K2SiF6、及びK2ZrF6のいずれか1種以上のK含有化合物の合計を所定量含むフラックス入りワイヤ。【選択図】なし

Description

本開示は、フラックス入りワイヤ及び溶接継手の製造方法に関する。
近年、地球温暖化の問題による二酸化炭素排出量規制強化により、石油及び石炭などに比べて二酸化炭素の排出がない水素燃料、並びに二酸化炭素の排出が少ない天然ガスの需要が高まっており、それに伴い液体水素タンクおよびLNGタンク建造の需要も世界的に高まっている。液体水素タンクおよびLNGタンクに使用される鋼材には、-196℃の極低温度での極靭性確保の要求から、6~9%Niを含むNi系低温用鋼が使用されている。
そして、これらNi系低温用鋼の溶接には、優れた低温靭性の溶接金属が得られるオーステナイト系のフラックス入りワイヤが用いられている。このフラックス入りワイヤは、主に、Ni含有量を70%で設計されている。
例えば、Ni含有量70%のフラックス入りワイヤとして、特許文献1には、「Ni含有量が35~70%であり、フラックス中にワイヤ全質量に対して、TiO、SiO及びZrOを総量で4.0質量%以上含み、さらに、Mn酸化物をMnO換算で0.6~1.2質量%含み、かつ、TiO、SiO、ZrO及びMnO(換算量)の含有量を質量%で、それぞれ、[TiO]、[SiO]、[ZrO]及び[MnO]としたとき、[TiO]/[ZrO]が2.3~3.3、[SiO]/[ZrO]が0.9~1.5、及び、([TiO]+[SiO]+[ZrO])/[MnO]が5~13である、Ni基合金を外皮とするフラックス入りワイヤ」が開示されている。
しかし、溶融金属の低温靭性を確保するための、Ni含有量が70%で設計されたワイヤは、非常に高価であり、安価なものが求められている。
例えば、Ni含有量を低減したフラックス入りワイヤとして、特許文献2には、「鋼製外皮と、鋼製外皮の内部に充填されたフラックスと、を備えるフラックス入りワイヤであって、フラックスが、所定の弗化物と、Ti酸化物と、所定の酸化物と、炭酸塩と、を所定量で含み、フラックス入りワイヤの化学成分が、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、C:0.003~0.150%、Si:0.35~1.00%、Mn:2.00超10.00%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.001~0.500%、Ni:0~10.00%、Cr:0~5.00%、Mg:0.10~0.90%、Ti:0~0.10%、B:0~0.0200%、Mo:0~1.00%、Cu:0~0.50%、Nb:0~0.20%、V:0~0.20%、Bi:0~0.030%、Ca:0~0.50%、及びREM:0~0.010%を含み、残部がFe及び不純物からなるフラックス入りワイヤ」が開示されている。
特許文献2のフラックス入りワイヤにおいて、鋼製外皮の化学成分は、「C:0~0.1%、Si:0~0.10%、Mn:0~3.00%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0~0.1%、及びN:0~0.030%を含み、残部が鉄及び不純物を含む」ことが開示されている。
また、特許文献3には、「鋼製外皮と、鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備えるフラックス入りワイヤであって、フラックスが、所定の弗化物と、酸化物と、鉄粉と、を所定量で含み、フラックス入りワイヤの化学成分が、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、C:0.003~0.080%、Si:0.21~2.00%、Mn:0.81~3.50%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Ni:5.0~15.0%、を含有し、残部がFeおよび不純物からなるフラックス入りワイヤ。」が開示されている。
特許文献3のフラックス入りワイヤにおいて、鋼製外皮の化学成分は、「C:0.002%、Si:0.02%、Mn:0.1%、P:0.002%、S:0.002%、及びAl:0.005%を含有し、残部が鉄及び不純物からなる」ことが開示されている。
また、特許文献4には、「鋼製外皮と、鋼製外皮の内部に充填されたフラックスと、を備えるフラックス入りワイヤであって、フラックスが、所定の弗化物と、Ti酸化物と、所定の酸化物と、炭酸塩と、を所定量で含み、フラックス入りワイヤの化学成分が、フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、C:0.003~0.150%、Si:0.35~1.00%、Mn:0.01~2.00%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Cu:1.00~5.00%、Ni:0~10.00%、Cr:10.00~20.00%、Mo:0~5.00%、Ti:0~0.10%、Nb:0.001~0.500%、Al:0.001~0.500%、Mg:0~0.90%、B:0~0.0200%、V:0~0.20%、Bi:0~0.030%、Ca:0~0.25%、及びREM:0~0.010%を含み、残部がFe及び不純物からなることを特徴とするフラックス入りワイヤ。」が開示されている。
特許文献5のフラックス入りワイヤにおいて、鋼製外皮の化学成分は、「C:0~0.1%、Si:0~0.10%、Mn:0~3.00%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0~0.1%、及びN:0~0.030%を含み、残部が鉄及び不純物を含む」ことが開示されている。
特開2008-246507号公報 特開2019-25524公報 特開2017-164768公報 特開2019-48323公報
特許文献2~4のフラックス入りワイヤは、-30~0℃での低温靭性に優れた溶接金属が得られる。
しかし、上述のように、液体水素タンクおよびLNGタンクに使用される鋼材を溶接するフラックス入りワイヤには、-196℃の極低温度での溶接金属の靭性確保が求められる。そのため、Ni含有量を低減しても、-196℃の極低温靭性に優れた溶接金属が得られるフラックス入りワイヤが求められている。
一方、高価なNiは、オーステナイト安定化元素として知られているが、低廉なMnも同様の効果がある。そのため、Ni含有量を低減し、Mn含有量を高めれば、安価で、低温靭性が優れた溶接金属が得られる。ただし、Mnを高めただけではヒュームが多量に発生する。ヒュームが多くなると溶融金属やアーク状態の視認性が悪化し、溶接欠陥を発生させる要因となる。
加えて、フラックス入りワイヤには、スパッタ低減も求められる。
そこで、本発明の課題は、安価で、極低温靭性が優れた溶接金属が得られると共に、ヒューム及びスパッタの発生量が低減できるフラックス入りワイヤ、及び、当該フラックス入りワイヤを用いた溶接継手の製造方法を提供することである。
課題を解決するための手段は、次の態様を含む。
<1>
鋼製外皮と前記鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備える溶接用のフラックス入りワイヤであって、
前記鋼製外皮全質量に対する質量%で、前記鋼製外皮の化学成分が、
C :0~0.100%、
Si:0~0.10%、
Mn:0~1.00%、
P :0~0.050%、
S :0~0.050%、
Al:0~0.100%、
Ti:0~0.100%、
N :0~0.0100%、並びに
残部:Fe及び不純物であり、かつ前記C、Si、Mn、P、S、Al、Ti、及びNの総含有量が1.5000%以下であり、
前記フラックス入りワイヤ全質量に対する質量%で、酸化物、弗化物、窒化物、及び金属炭酸塩を除く前記フラックス入りワイヤの化学成分が、
C :0.020~0.500%、
Si:0.20~0.80%、
Mn:1.50~30.00%、
P :0~0.050%、
S :0~0.050%、
Cu:0~10.0%、
Ni:5.0~20.0%、
Cr:2.0~10.0%、
Mo:0~10.0%、
Nb:0~5.0%、
V :0~5.0%、
W :0~10.0%、
Mg:0~1.00%、
Al:0~3.000%、
Ca:0~0.100%、
Ti:0~3.000%、
B:0~0.1000%、
REM:0~0.100%、
Bi:0~0.050%、
N :0.050~1.000%、並びに
残部:Fe及び不純物であり、
Ti酸化物のTiO換算値の合計が3.00~8.00%であり、
Si酸化物のSiO換算値の合計が0.10~1.00%であり、
Zr酸化物のZrO換算値の合計が0~0.80%であり、
Al酸化物のAl換算値の合計が0~0.80%であり、
SiF、KZrF、NaF、NaAlF、CaF、及びMgFのいずれか1種以上の弗化物を含有しその合計が0.10~2.00%であり、
Na酸化物、NaF、及びNaAlFのいずれか1種以上のNa含有化合物を含有しその合計(ただしNa酸化物はNaO換算値)が0.01~2.00%であり、
K酸化物、KSiF、及びKZrFのいずれか1種以上のK含有化合物を含有しその合計(ただしK酸化物はKO換算値)が0.01~2.00%であるフラックス入りワイヤ。
<2>
下記式Aによって算出されるX値が0.10~160.00である<1>に記載のフラックス入りワイヤ。
X=(8×CaF+5×MgF+5×NaF+5×KSiF+5×KZrF+NaAlF)/(SiO+Al+ZrO+0.5×MgO+CaO+0.5×NaO+0.5×KO+MnO+FeO) ・・・・式A
式A中、CaF、MgF、NaF、KSiF、KZrF、及びNaAlFは、各化学式で示される化合物の、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量である。また、SiOはSi酸化物のSiO換算値の合計を示し、AlはAl酸化物のAl換算値の合計を示し、ZrOはZr酸化物のZrO換算値の合計を示し、MgOはMg酸化物のMgO換算値の合計を示し、CaOはCa酸化物のCaO換算値の合計を示し、NaOはNa酸化物のNaO換算値の合計を示し、KOはK酸化物のKO換算値の合計を示し、MnOはMn酸化物のMnO換算値の合計を示し、FeOはFe酸化物のFeO換算値の合計を示す。
なお、式Aにおける前記SiO換算値、前記Al換算値、前記ZrO換算値、前記MgO換算値、前記CaO換算値、前記NaO換算値、前記KO換算値、前記MnO換算値、及び前記FeO換算値はフラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で表す。
<3>
前記フラックス入りワイヤの化学成分において、Mn含有量とNi含有量との質量比(Mn/Ni)が、0.30~4.00である<1>又は<2>に記載のフラックス入りワイヤ。
<4>
鋼製外皮は、前記鋼製外皮の継目に溶接部を有しない<1>~<3>のいずれか1項に記載のフラックス入りワイヤ。
<5>
鋼製外皮は、前記鋼製外皮の継目に溶接部を有する<1>~<3>のいずれか1項に記載のフラックス入りワイヤ。
<6>
表面にポリテトラフルオロエチレン油及びパーフルオロポリエーテル油の一方又は両方が塗布されている<1>~<5>のいずれか1項に記載のフラックス入りワイヤ。
<7>
<1>~<6>のいずれか1項に記載のフラックス入りワイヤを用いて、鋼材を溶接する工程を備える溶接継手の製造方法。
本開示によれば、安価で、極低温靭性が優れた溶接金属が得られると共に、ヒューム及びスパッタの発生量が低減できるフラックス入りワイヤ、及び、当該フラックス入りワイヤを用いた溶接継手の製造方法が提供できる。
本開示の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値に「超」及び「未満」が付されていない場合は、これらの数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これらの数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、含有量について、「%」は「質量%」を意味する。
含有量(%)として「0~」は、その成分は任意成分であり、含有しなくてもよいことを意味する。
<フラックス入りワイヤ>
本開示に係るフラックス入りワイヤ(以下、単に「ワイヤ」と称する場合がある。)は、鋼製外皮(以下、単に「外皮」とも称する場合がある)と、鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備える。
本開示に係るフラックス入りワイヤは、鋼製外皮の化学成分が所定の組成であり、酸化物、弗化物、窒化物、及び金属炭酸塩を除くフラックス入りワイヤの化学成分が所定の組成であり、Ti酸化物、Si酸化物、弗化物、Na含有化合物、K含有化合物を所定量で含み、Zr酸化物、Al酸化物を含まないか又は所定量で含む。
本開示に係るフラックス入りワイヤは、上記構成により、安価で、極低温靭性に優れた溶接金属が得られると共に、ヒューム及びスパッタの発生量が低減できるワイヤとなる。
そして、本開示に係るフラックス入りワイヤは、次の知見により見出された

発明者らは、Ni含有量を低減し、Mn含有量を高めても、溶接金属の極低温靭性が向上し、かつヒューム及びスパッタの発生量が低減できるワイヤを得る技術について検討した。その結果、次の知見を得た。
ヒュームは、溶融プールから発生した金属蒸気がアーク力によって空気中に放出され、これが固化した物である。このアーク力を制御すれば、ヒュームの発生量を低減できる。アーク力は溶接条件だけでなく、鋼製外皮の成分によって変わる。具体的には、鋼製外皮として、ヒュームの原因となるMn含有量を低減した軟鋼外皮を適用することで、ワイヤ全体でのNi含有量を低減し、Mn含有量を高めても、アーク力が緩和され、極低温靭性に優れた溶接金属が得られると共に、ヒュームの発生量も低減できる。そして、鋼製外皮として、スパッタの要因となるC、Si、Mn、P、S、Al、Ti、及びNの総含有量(特に、C含有量)を極力低減した軟鋼外皮を適用することで、スパッタの発生量も低減できる。
また、Ni及びMnに加え、固溶強化元素として機能するNをワイヤに多く含ませることで、強度が向上する。
加えて、ワイヤ中の、酸化物、弗化物、Na含有化合物、及びK含有化合物についても、発明者らは検討した結果、それらの量を制御することで、さらに、極低温靭性が向上することを知見した。
以上の知見から、本開示に係るフラックス入りワイヤは、安価で、極低温靭性が優れた溶接金属が得られると共に、ヒューム及びスパッタの発生量が低減できるワイヤとなることが見出された。
以下、本開示に係るフラックス入りワイヤを構成する要件(任意要件も含む要件)の限定理由について具体的に説明する。
(鋼製外皮の化学成分)
以下、鋼製外皮の化学成分について詳細に説明する。
なお、鋼製外皮の化学成分の説明において、「%」は、特に説明がない限り、「鋼製外皮の化学成分の全質量に対する質量%」を意味する。
鋼製外皮の化学成分は、
C :0~0.100%、
Si:0~0.10%、
Mn:0~1.00%、
P :0~0.050%、
S :0~0.050%、
Al:0~0.100%、
Ti:0~0.100%、
N :0~0.0100%、並びに
残部:Fe及び不純物であり、かつ前記C、Si、Mn、P、S、Al、Ti、及びN(以下、これら元素を「外皮合金元素」とも称する)の総含有量が1.5000%以下である。
(C :0~0.100%)
Cは、スパッタを発生させる元素である。スパッタの発生量低減には、外皮のC含有量は低ければ低いほど有利である。加えて、スパッタの要因となる外皮合金元素の総含有量を低減する必要があるため、外皮のC含有量も低減する必要がある。
よって、外皮のC含有量は、0~0.100%とする。
外皮のC含有量の上限は、好ましくは、0.095%、0.090%、0.080%、又は0.070%である。
なお、外皮のC含有量の下限は、0%が理想的だが、0%にするのは容易でない点、脱Cコストが上がる点から、0.001%、0.002%、又は0.003%が好ましい。
(Si:0~0.10%)
Siは、脱酸元素である。一方で、スパッタの要因となる外皮合金元素の総含有量を低減する必要があるため、外皮のSi含有量も低減する必要がある。
よって、外皮のSi含有量は、0~0.10%とする。
外皮のSi含有量の上限は、好ましくは、0.09%、0.08%、又は0.07%である。
なお、外皮のSi含有量の下限は、0%が理想的だが、0%にするのは容易でない点、脱Siコストが上がる点から、0.01%、0.02%、又は0.03%が好ましい。
(Mn:0~1.00%)
Mnは、ヒュームの発生量増大の原因となる元素である。ヒュームの発生量低減には、外皮のMn含有量は、低ければ低いほど有利である。加えて、スパッタの要因となる外皮合金元素の総含有量を低減する必要があるため、外皮のMn含有量も低減する必要がある。
外皮のMn含有量の上限は、好ましくは、0.95%、0.90%、0.80%、又は0.70%である。
なお、外皮のMn含有量の下限は、0%が理想的だが、0%にするのは容易でない点、脱Mnコストが上がる点から、0.01%、0.02%、0.03%、又は0.05%が好ましい。
(P :0~0.050%)
Pは、不純物元素であり、溶接金属の靱性を低下させるので、外皮のP含有量は極力低減させることが好ましい。加えて、スパッタの要因となる外皮合金元素の総含有量を低減する必要があるため、外皮のP含有量も低減する必要がある。
よって、外皮のP含有量は、0~0.050%とする。
外皮のP含有量の上限は、0.040%、0.030%、0.020%、0.015%、又は0.010%が好ましい。
なお、脱Pコストの低減の観点から、外皮のP含有量の下限は、0.003%がよい。
(S :0~0.050%)
Sは、不純物元素であり、溶接金属の靱性を低下させるので、外皮のS含有量は極力低減させることが好ましい。
よって、外皮のS含有量は、0~0.050%とする。
外皮のS含有量の上限は、0.040%、0.030%、0.020%、0.015%、又は0.010%が好ましい。
なお、脱Sコストの低減の観点から、外皮のS含有量の下限は、0.003%がよい。
(Al:0~0.100%)
Alは、脱酸元素であり、溶接欠陥抑制、及び溶接金属の清浄度向上のため、外皮に含有させてもよい。一方、外皮のAl含有量が過剰であると、鉄製外皮中に粗大介在物が生成され、芯線加工が困難になる。加えて、スパッタの要因となる外皮合金元素の総含有量を低減する必要があるため、外皮にAlを含有させる場合でも、Al含有量を低減する必要がある。
よって、外皮のAl含有量は、0~0.100%とする。
外皮のAl含有量の下限は、好ましくは、0.010%、0.020%、又は0.030%である。
外皮のAl含有量の上限は、好ましくは、0.090%、0.080%、又は0.070%である。
(Ti:0~0.100%)
Tiは、脱酸元素であり、溶接欠陥抑制、及び溶接金属の清浄度向上のため、外皮に含有させてもよい。一方、外皮のTi含有量が過剰であると、鉄製外皮中に粗大介在物が生成され、芯線加工が困難になる。加えて、スパッタの要因となる外皮合金元素の総含有量を低減する必要があるため、外皮にTiを含有させる場合でも、Ti含有量を低減する必要がある。
よって、外皮のTi含有量は、0~0.100%とする。
外皮のTi含有量の下限は、好ましくは、0.005%、0.010%、0.015%、0.020%、又は0.030%である。
外皮のTi含有量の上限は、好ましくは、0.095%、0.090%、0.080%、又は0.070%である。
(N :0~0.0100%)
Nは、不純物元素である。一方、スパッタの要因となる外皮合金元素の総含有量を低減する必要があるため、外皮のN含有量も低減する必要がある。
よって、外皮のN含有量は、0~0.0100%とする。
外皮のN含有量の上限は、0.0095%、0.0090%、0.0085%、0.0080%、又は0.0070%が好ましい。
なお、脱Nコストの低減の観点から、外皮のN含有量の下限は、0.0010%、0.0020%がよい。
(残部:Fe及び不純物)
外皮の化学成分におけるその他の残部成分は、Fe及び不純物である。
不純物とは、外皮を工業的に製造する際に、鉱石若しくはスクラップ等のような原料、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、ワイヤの特性に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
(外皮合金元素の総含有量)
外皮合金元素(C、Si、Mn、P、S、Al、Ti、及びNの元素)は、スパッタの発生量増大の原因となる元素である。スパッタの発生量低減には、外皮合金元素の総含有量は、低ければ低いほど有利である。
よって、外皮合金元素の総含有量は、1.5000%以下とする。
外皮合金元素の総含有量の上限は、好ましくは、1.4000%、1.2000%、1.0000%、又は0.8000%である。
なお、外皮合金元素の総含有量の下限は、0%が理想的だが、0%にするのは容易でない点、外皮合金元素の低減コストが上がる点から、0.0500%、0.1000%、0.2000%、又は0.3000%が好ましい。
(フラックス入りワイヤの化学成分)
以下、本開示に係るフラックス入りワイヤの化学成分について説明する。
なお、フラックス入りワイヤの化学成分の説明において、「%」は、特に説明がない限り、「フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%」を意味する。
フラックス入りワイヤの化学成分は、鋼製外皮に含まれてもよいし、フラックスに含まれてもよい。ただし、鋼製外皮の化学成分を上記範囲にするためには、フラックス入りワイヤの化学成分の大半は、フラックスに含まれることがよい。
また、本開示に係るフラックス入りワイヤが鋼製外皮の外表面にめっき層を有する場合は、めっき層に含まれてもよい。フラックス入りワイヤの化学成分の説明おいて、「窒化物、酸化物、弗化物、及び金属炭酸塩を除く化学成分」を単に「化学成分」と称する場合がある。
本開示に係るフラックス入りワイヤの、酸化物、弗化物、窒化物、及び金属炭酸塩を除く化学成分は、
C :0.020~0.500%、
Si:0.20~0.80%、
Mn:1.50~30.00%、
P :0~0.050%、
S :0~0.050%、
Cu:0~10.0%、
Ni:5.0~20.0%、
Cr:2.0~10.0%、
Mo:0~10.0%、
Nb:0~5.0%、
V :0~5.0%、
W :0~10.0%、
Mg:0~1.00%、
Al:0~3.000%、
Ca:0~0.100%、
Ti:0~3.000%、
B:0~0.1000%、
REM:0~0.100%、
Bi:0~0.050%、
N :0.050~1.000%、並びに
残部:Fe及び不純物である。
つまり、本開示に係るフラックス入りワイヤにおいて、上記成分は、酸化物、弗化物、窒化物、及び金属炭酸塩以外に含まれる成分の含有量である。
(C :0.020~0.500%)
Cは、溶接金属の強度を向上させる元素であり、溶接金属の強度を確保するための元素である。
一方で、ワイヤのワイヤのC含有量が過剰であると、溶接金属の強度上昇による、靭性を劣化させる影響が非常に大きく、溶接金属の極低温靭性が著しく低下する。
よって、ワイヤのC含有量は、0.020~0.500%とする。
ワイヤのC含有量の下限は、好ましくは、0.050%、0.100%、又は0.200%である。
ワイヤのC含有量の上限は、好ましくは、0.450%、0.400%、又は0.350%である。
(Si:0.20~0.80%)
Siは、溶接金属の清浄度を向上し、ブローホールなどの溶接欠陥の発生を抑制する。
一方で、ワイヤのSi含有量が過剰であると、Ni鋼、Ni基合金鋼の溶接においては、溶接金中でミクロ偏析しやすく、偏析部で顕著な脆化が生じる。
よって、ワイヤのSi含有量は、0.20~0.80%とする。
ワイヤのSi含有量の下限は、好ましくは、0.23%、0.25%、0.30%、又は0.35%である。
ワイヤのSi含有量の上限は、好ましくは、0.75%、0.70%、又は0.65%である。
(Mn:1.50~30.00%)
Mnは、オーステナイト安定化元素であり、溶接金属の極低温靭性を向上させる。また、Mnは、脱酸材として機能して溶接金属の清浄度を向上させる元素である。また、Mnは、MnSを形成することで、溶接金属中のSを無害化し、溶接金属の極低温靭性を向上させる元素である。加えて、Mnは高温割れを防ぐ効果も有する。
一方、ワイヤのMn含有量が過剰であると、Ni鋼、Ni基合金鋼の溶接においては、溶接金中でミクロ偏析しやすく、偏析部で顕著な脆化が生じる。
よって、ワイヤのMn含有量は、1.50~30.00%とする。
ワイヤのMn含有量の下限は、好ましくは、2.00%、5.00%、7.00%、又は9.00%である。
ワイヤのMn含有量の上限は、好ましくは、28.00%、25.00%、22.00%、又は20.00%である。
(P:0~0.050%)
Pは、不純物元素であり、溶接金属の靱性を低下させるので、ワイヤのP含有量は極力低減させることが好ましい。よって、ワイヤのP含有量の下限は、0%とする。ただし、脱Pコストの低減の観点から、P含有量は、0.003%以上がよい。
一方、ワイヤのP含有量が0.050%以下であれば、Pの靱性への悪影響が許容できる範囲内となる。溶接金属の靱性の低下を効果的に抑制するために、ワイヤのP含有量は、0.040%以下、0.030%以下、0.020%以下、0.015%以下、又は0.010%以下が好ましい。
(S:0~0.050%)
Sは、不純物元素であり、溶接金属の靱性を低下させるので、ワイヤのS含有量は極力低減させることが好ましい。よって、ワイヤのS含有量の下限は、0%とする。ただし、脱Sコストの低減の観点から、ワイヤのS含有量は、0.003%以上がよい。
一方、ワイヤのS含有量が0.050%以下であれば、Sの靱性への悪影響が許容できる範囲内となる。溶接金属の靱性の低下を効果的に抑制するために、ワイヤのS含有量は、0.040%以下、0.030%以下、0.020%以下、0.015%以下、又は0.010%以下が好ましい。
(Cu:0~10.0%)
Cuは、析出強化元素であり、溶接金属の強度向上のため、ワイヤに含有させてもよい。また、Cuは、オーステナイト安定化元素であり、溶接金属の極低温靭性向上のため、ワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのCu含有量が過剰であると、上記の効果が飽和する。
よって、ワイヤのCu含有量は、0~10.0%とする。
ワイヤのCu含有量の下限は、好ましくは、0.5%、0.7%、1.0%、又は2.0%である。
ワイヤのCu含有量の上限は、好ましくは、9.5%、9.0%、又は8.0%である。
(Ni:5.0~20.0%)
Niは、オーステナイト安定化元素である。ワイヤのNi含有量が低すぎると、ワイヤ全体のNi含有量が不足し、溶接金属のオーステナイト化が進行し難くなり、極低温靭性が劣化する。
一方、ワイヤのNi含有量を増やすと、ワイヤのコストが高くなる。
よって、ワイヤのNi含有量は、5.0~20.0%とする。
ワイヤのNi含有量の下限は、好ましくは、6.0%、7.0%、10.0%、又は12.0%である。
ワイヤのNi含有量の上限は、好ましくは、19.0%、18.0%、又は17.0%である。
(Cr:2.0~10.0%)
Crは、オーステナイト安定化元素である。ワイヤのCr含有量が低すぎると、ワイヤ全体のCr含有量が不足し、溶接金属のオーステナイト化が進行し難くなり、極低温靭性が劣化する。
一方、ワイヤのCr含有量が過剰であると、溶融金属における低融点化合物の量が増大し、さらに溶融金属の固液共存温度範囲が広がるので、高温割れを起こしやすくなる。
よって、ワイヤのCr含有量は、2.0~10.0%とする。
ワイヤのCr含有量の下限は、好ましくは、2.2%、2.5%、3.0%、又は3.5%である。
ワイヤのCr含有量の上限は、好ましくは、9.5%、9.0%、又は8.0%である。
(Mo:0~10.0%)
Moは、固溶強化元素、かつ析出強化元素であり、溶接金属の強度向上のために、ワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのMo含有量が過剰であると、溶接金属の強度が過剰となり、極低温靭性が低下する。
よって、ワイヤのMo含有量は、0~10.0%とする。
ワイヤのMo含有量の下限は、好ましくは、1.0%、2.0%、2.5%、又は3.0%である。
ワイヤのMo含有量の上限は、好ましくは、9.5%、9.0%、又は8.0%である。
(Nb:0~5.0%)
Nbは、溶接金属中で炭化物を形成し、溶接金属の強度を上昇させる元素であるため、ワイヤに含有させてもよい。
一方で、ワイヤのNb含有量が過剰であると、溶接金属の高温割れが発生する懸念がある。
よって、ワイヤのNb含有量は、0~5.0%とする。
ワイヤのNb含有量の下限は、好ましくは、0.5%、1.0%、又は1.5%である。
ワイヤのNb含有量の上限は、好ましくは、4.5%、4.0%、又は3.5%である。
(V :0~5.0%)
Vは、溶接金属中で炭窒化物を形成し、溶接金属の強度を上昇させる元素であるため、ワイヤに含有させてもよい。
一方で、ワイヤのV含有量が過剰であると、溶接金属の高温割れが発生する可能性がある。
よって、ワイヤのV含有量は、0~5.0%とする。
ワイヤのV含有量の下限は、好ましくは、0.5%、1.0%、又は1.5%である。
ワイヤのV含有量の上限は、好ましくは、4.5%、4.0%、又は3.5%である。
(W :0~10.0%)
Wは、固溶強化元素であり、溶接金属の強度向上のために、ワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのW含有量が過剰であると、溶接金属の強度が過剰となり、靭性低下が発生する可能性がある。
よって、ワイヤのW含有量は、0~10.0%とする。
ワイヤのW含有量の下限は、好ましくは、0.5%、1.0%、2.0%、又は3.0%である。
ワイヤのW含有量の上限は、好ましくは、9.0%、8.0%、又は7.0%である。
(Mg:0~1.00%)
Mgは、脱酸元素であり、溶接金属の酸素を低減し、溶接金属の靭性の改善に効果があるため、ワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのMg含有量が過剰であると、アークが不安定化して、スパッタおよびブローホールが増加し、溶接作業性を劣化させる。
よって、ワイヤのMg含有量は、0~1.00%とする。
ワイヤのMg含有量の下限は、好ましくは、0.02%、0.05%、0.10%、又は0.20%である。
ワイヤのMg含有量の上限は、好ましくは、0.90%、0.80%、又は0.70%である。
(Al:0~3.000%)
Alは、脱酸元素であり、ブローホールなどの溶接欠陥の発生の抑制、及び溶接金属の清浄度向上等に効果があるため、ワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのAl含有量が過剰であると、Alが溶接金属中で窒化物又は酸化物を形成して、溶接金属の極低温靱性を低下する可能性がある。
よって、ワイヤのAl含有量は、0~3.000%とする。
ワイヤのAl含有量の下限は、好ましくは、0.010%、0.020%、又は0.050%である。
ワイヤのAl含有量の上限は、好ましくは、2.800%、2.500%、2.000%、又は1.500%である。
(Ca:0~0.100%)
Caは、溶接金属中で硫化物の構造を変化させ、また溶接金属中での硫化物及び酸化物のサイズを微細化する働きを有するので、溶接金属の延性及び靭性向上に有効である。そのため、Caをワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのCa含有量が過剰であると、硫化物及び酸化物の粗大化が生じ、溶接金属の極低温靭性の劣化を招く可能性がある。また、溶接ビード形状の劣化及びアークの不安定化による溶接性の劣化の可能性もある。
よって、ワイヤのCa含有量は、0~0.100%とする。
ワイヤのCa含有量の下限は、好ましくは、0.010%、0.020%、又は0.030%である。
ワイヤのCa含有量の上限は、好ましくは、0.095%、0.090%、又は0.085%である。
(Ti:0~3.000%)
Tiは、脱酸元素であり、ブローホールなどの溶接欠陥の発生の抑制、および清浄度向上等に効果があるため、ワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのTi含有量が過剰であると、溶接金属に炭化物が生成し、溶接金属の靭性を劣化させる可能性がある。
よって、ワイヤのTi含有量は、0~3.000%とする。
ワイヤのTi含有量の下限は、好ましくは、0.005%、0.008%、0.020%、0.050%、又は0.100%である。
ワイヤのTi含有量の上限は、好ましくは、2.500%、2.000%、又は1.500%である。
(B:0~0.1000%)
Bは、溶接金属の焼入れ性を向上させ、溶接金属の引張強さを一層高める効果があるため、ワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのB含有量が過剰であると、溶接金属中のBも過剰となり、粗大なBN又はFe23(C、B)等のB化合物を形成して、溶接金属の極低温靭性を劣化させる可能性がある。
よって、ワイヤのB含有量は、0~0.1000%とする。
ワイヤのB含有量の下限は、好ましくは、0.0010%、0.0020%、又は0.0030%である。
ワイヤのB含有量の上限は、好ましくは、0.0900%、0.0700%、0.0500%、又は0.0100%である。
(REM:0~0.100%)
REMは、アークを安定化させる元素であるので、ワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのREM含有量が過剰であると、スパッタが激しくなり、溶接作業性が劣悪となる可能性がある。
よって、ワイヤのREM含有量は、0~0.100%とする。
ワイヤのREM含有量の下限は、好ましくは、0.001%、0.002%、又は0.005%である。
ワイヤのREM含有量の上限は、好ましくは、0.090%、0.080%、又は0.070%である。
なお「REM」とは、Sc、Yおよびランタノイドからなる合計17元素を指し、上記「REM含有量」とは、これらの17元素の合計含有量を意味する。ランタノイドをREMとして用いる場合、工業的には、REMはミッシュメタルの形で含有される。
(Bi:0~0.050%)
Biは、スラグの剥離性を改善する元素であるため、ワイヤに含有させてもよい。
一方、ワイヤのBi含有量が過剰であると、溶接金属に凝固割れが発生する可能性がある。
よって、ワイヤのBi含有量は、0~0.050%とする。
ワイヤのBi含有量の下限は、好ましくは、0.005%、0.010%、又は0.020%である。
ワイヤのBi含有量の上限は、好ましくは、0.048%、0.045%、0.040%、又は0.035%である。
(N :0.050~1.000%)
Nは、オーステナイト安定化元素であり、かつ侵入型固溶強化元素でもある。また、Nは、溶接金属の強度上昇による、溶接金属の靭性への悪影響も、Cに比較して少ない元素である。ワイヤのN含有量が少ないと、溶接金属のオーステナイト化が進行し難くなり、溶接金属の低温靭性が劣化する。また、溶接金属の強度も不足する。
一方、ワイヤのN含有量が過剰であると、ブローの発生が増大し、溶接欠陥の原因となる。
よって、ワイヤのN含有量は、0.050~1.000%とする。
ワイヤのN含有量の下限は、好ましくは、0.070%、0.100%、又は0.150%である。
ワイヤのN含有量の上限は、好ましくは、0.950%、0.900%、又は0.850%である。
(残部:Fe及び不純物)
ワイヤの化学成分におけるその他の残部成分は、Feと不純物である。
残部のFeは、例えば鋼製外皮に含まれるFe、及びフラックス中に含有された合金粉中のFe(例えば鉄粉)等である。
また、不純物とは、ワイヤを工業的に製造する際に、原料に由来して、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、ワイヤに悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
(Mn含有量とNi含有量との質量比(Mn/Ni)
Mn及びNiは、各々、オーステナイト安定化元素であり、溶接金属の極低温靭性を向上させる。一方、Niは高価な金属であり、Mnはヒュームの発生量増大の原因となる元素である。
そのため、ワイヤのコストを抑えつつ、溶接金属の極低温靭性を向上し、かつヒュームの発生量を低減する観点から、ワイヤにおけるMn含有量とNi含有量との質量比(Mn/Ni)は、0.30~4.00が好ましい。
ワイヤにおけるMn含有量とNi含有量との質量比(Mn/Ni)の下限は、より好ましくは、0.40、0.50、又は0.60である。
ワイヤにおけるMn含有量とNi含有量との質量比(Mn/Ni)の上限は、より好ましくは、3.50、3.00、又は2.50である。
(Ti酸化物のTiO換算値の合計:質量%で3.00~8.00%)
Ti酸化物は、溶接金属の酸素量を増加させ、極低温靭性を劣化させる。
一方で、Ti酸化物は、スラグ成分であり、ビード全体を均一にスラグで被包させる作用を有する。また、Ti酸化物は、アークの持続を安定させ、スパッタ発生量を低減させる効果を有する。そのため、Ti酸化物を含有させると、溶接作業性(特に立向溶接性)が向上する。
Ti酸化物のTiO換算値の合計が3.00%未満であると、スラグ生成量が不足してビードを均一に被包できないので、スラグがビード表面に焼き付くことによってビード外観が不良になる。また、Ti酸化物のTiO換算値の合計が3.00%未満であると、アークを安定させる効果が無くなり、スパッタ発生量も増加する。また、溶接作業性(特に立向溶接性)が確保できない。
一方、Ti酸化物のTiO換算値の合計が8.00%を超えると、溶接金属の酸素量が増加し、極低温靭性が確保できない。また、Ti酸化物のTiO換算値の合計が8.00%を超えると、アークが安定することによってスパッタ発生量は減少するが、スラグの粘性が高まることによって、スラグが厚くなり、ビードの止端部が膨らんだ形状となる。また、Ti酸化物のTiO換算値の合計が8.00%を超えると、ピットが発生しやすくなる。また、スラグ巻き込みが発生する。
よって、Ti酸化物のTiO換算値の合計は、3.00~8.00%とする。
Ti酸化物のTiO換算値の合計の下限は、好ましくは、3.50%、4.00%、又は4.50%である。
Ti酸化物のTiO換算値の合計の上限は、好ましくは、7.50%、7.00%、又は6.50%である。
なお、Ti酸化物は、主に、フラックス中の、ルチル、酸化チタン、チタンスラグ、イルミナイト、チタン酸ソーダ、チタン酸カリ等として存在し得る。このため、主に、フラックスのTi酸化物の含有量を制御することにより、上記範囲のTi酸化物の含有量とすることができる。
ここで、Ti酸化物のTiO換算値の合計とは、ワイヤ中に含まれている全てのTi酸化物(例えば、TiO、TiO、Ti、Tiなどがあり、ルチル、酸化チタン、チタンスラグ、イルミナイト、チタン酸ソーダ、チタン酸カリ等として添加される。)をTiOに換算した場合の、TiOのワイヤ全質量に対する質量%である。
そして、Ti酸化物のTiO換算値の合計は、蛍光X線分析装置を用いて、ワイヤに酸化物として存在するTiの質量を分析する。具体的には、ワイヤを研磨してワイヤ径φの1/2位置の長手方向断面(ワイヤの長手方向に平行な断面:L断面)を露出させ、該断面を分析する。例えば、分析によってTiO、Ti、Tiが検出された場合であれば、各Ti酸化物の質量%を[TiO]、[Ti]、[Ti]で表し、Ti酸化物のTiO換算値の合計を[換算TiO]で表すと、以下の式1により計算される。
[換算TiO]=(0.60×[TiO]+0.67×[Ti]+0.64×[Ti])×1.67・・・式1
式1における係数(0.60、0.67、0.64)は、各酸化物中に含まれるTi量を算出するための係数であり、末尾の乗数(1.67)は、ワイヤに酸化物として存在するTiの総量からTiO換算値を算出するための乗数である。
ここで、係数の求め方について説明する。M(例;TiO、Ti、Ti)の酸化物が検出されたとすると、Mにかかる係数は下記式2で計算する。
[M元素の原子量]×x/([M元素の原子量]×x+[酸素の原子量]×y)・・・式2
式1における0.60、0.67、0.64が、上記式2で求められる係数に相当する。
また、換算値を算出するための乗数の求め方について説明する。M(例;TiO)に換算するための乗数は下記式3で計算する。
([M元素の原子量]×a+[酸素の原子量]×b)/([M元素の原子量]×a)・・・式3
式1における1.67が、上記式3で求められる乗数に相当する。
なお酸化物は、2種の金属元素と結合した化合物である場合も考えられる。その場合の係数の求め方は、M (例;TiO・Fe、つまりM=Ti、M=Fe、x=1、y=3、z=1の酸化物)が検出されたとすると、下記式4で計算する。
[M元素の原子量]×x/([M元素の原子量]×x+[酸素の原子量]×y+[M元素の原子量]×z)・・・式4
なお、Si酸化物のSiO換算値の合計、Zr酸化物のZrO換算値の合計、Al酸化物のAl換算値の合計、Mg酸化物のMgO換算値の合計、Na酸化物のNaO換算値の合計、K酸化物のKO換算値の合計、Ca酸化物のCaO換算値の合計、Mn酸化物のMnO換算値の合計、及びFe酸化物のFeO換算値の合計も、Ti酸化物のTiO換算値の合計と同様の計算により得られる。つまり、蛍光X線分析装置によってワイヤ径φの1/2位置の長手方向断面を分析し、検出された各種酸化物に応じて、前記式2、式3、式4に即して係数および乗数を算出し、前記式1と同様にして計算する。
分析によって検出される代表的な酸化物を、以下に列挙する。
Si酸化物;SiO、SiO、Si、Si
Zr酸化物;ZrO
Al酸化物;AlO、Al、Al
Mg酸化物;MgO、MgO、Mg
Na酸化物;NaO、Na
K酸化物 ;KO、KO
Ca酸化物;CaO、CaO
Mn酸化物;MnO、MnO、MnO
Fe酸化物;FeO、Fe、FeO
(Si酸化物のSiO換算値の合計:質量%で0.10~1.00%)
Si酸化物は、溶接金属の酸素量を増加させ、極低温靭性を劣化させる。
一方で、Si酸化物は、スラグ成分であり、溶融スラグの粘性を高め、スラグ剥離性を改善する作用を有する。
Si酸化物のSiO換算値の合計が0.10%未満では、スラグ被包状態が悪くスラグ剥離性が不良になり、ビード形状及びビード外観も不良になる。また、溶接作業性(特に立向溶接性)が確保できない。
一方、Si酸化物のSiO換算値の合計が1.00%を超えると、溶接金属の酸素量が増加し、極低温靭性が確保できない。また、Si酸化物のSiO換算値の合計が1.00%を超えると、スパッタ発生量が多くなる。さらに、Si酸化物のSiO換算値の合計が1.00%を超えると、ピット及びガス溝等が発生し易くなる。また、スラグ巻き込みが発生する。
よって、Si酸化物のSiO換算値の合計は、0.10~1.00%とする。
Si酸化物のSiO換算値の合計の下限は、好ましくは、0.15%、0.20%、又は0.25%である。
Si酸化物のSiO換算値の合計の上限は、好ましくは、0.95%、0.90%、又は0.85%である。
なお、Si酸化物は、主に、フラックス中の珪砂、ジルコンサンド、長石、珪酸ソーダ、珪酸カリ等として存在し得る。このため、主に、フラックスのSi酸化物の含有量を制御することにより、上記Si酸化物の含有量の範囲とすることができる。
(Zr酸化物のZrO換算値の合計:質量%で0~0.80%)
Zr酸化物は、溶接金属の酸素量を増加させ、極低温靭性を劣化させる。そのため、極低温靭性の観点からはZr酸化物は含まないことが好ましく、Zr酸化物のZrO換算値の合計の下限は0%とする。
ただし、Zr酸化物は、スラグ成分であり、水平すみ肉溶接でスラグ被包性を高めてビード形状を平滑にする作用を有するので、かかる観点から含有させてもよい。
一方で、Zr酸化物のZrO換算値の合計が0.80%を超えると、ビード形状が凸状になりやすい。また、スラグ巻き込みが発生する。
よって、Zr酸化物のZrO換算値の合計は、0~0.80%とする。
Zr酸化物のZrO換算値の合計の上限は、好ましくは、0.60%、0.40%、0.20%、又は0.10%である。
なお、Zr酸化物は、主に、フラックス中のジルコンサンド、酸化ジルコニウム等として存在し得るものであり、また、Ti酸化物に微量含有される場合もある。このため、主に、フラックスのZr酸化物の含有量を制御することにより、上記Zr酸化物の含有量の範囲とすることができる。
(Al酸化物のAl換算値の合計:質量%で0~0.80%)
Al酸化物は、酸素源となるので、Al酸化物を添加すると、溶接金属中の酸素量が増加し、靭性劣化の要因となる。そのため、極低温靭性の観点からはAl酸化物は含まないことが好ましく、Al酸化物のAl換算値の合計の下限は0%とする。
ただし、Al酸化物は、溶融スラグを構成した場合、スラグ被包性を良好にすることにより、すみ肉ビードの上脚側のアンダーカットを防止する作用を有するので、かかる観点から含有させてもよい。
一方、Al酸化物のAl換算値の合計が0.80%を超えると、すみ肉ビードの下脚側のビード止端部が膨らんだビード形状となる。また、スラグ巻き込みが発生する。
よって、Al酸化物のAl換算値の合計は、0~0.80%とする。
Al酸化物のAl換算値の合計の上限は、好ましくは、0.60%、0.20%、又は0.10%である。
なお、Al酸化物は、主にフラックス中のアルミナ、長石等の成分として存在する場合が多い。このため、主に、フラックスのAl酸化物の含有量を制御することにより、上記Al酸化物の含有量の範囲とすることができる。
(弗化物の合計:質量%で0.10~2.00%)
SiF、KZrF、NaF、NaAlF、CaF、及びMgF(以下、これらの弗化物を「特定弗化物」と称す場合がある)は、溶接金属の酸素量を低減する効果がある。
特定弗化物の合計が0.10%未満であると、溶接金属の酸素量が高くなり、低温靭性を確保できない。
一方、特定弗化物の合計が2.00%超えであると、溶接ヒュームが多量に発生し、溶接欠陥が発生する。
よって、特定弗化物のいずれか1種以上の弗化物を含有しその合計を、0.10~2.00%とする。
特定弗化物の合計の下限は、好ましくは、0.20%、0.30%、又は0.40%である。
特定弗化物の合計の上限は、好ましくは、1.90%、1.80%、又は1.70%である。
(Na含有化合物の合計:質量%で0.01~2.00%)
Na酸化物、NaF、及びNaAlF(以下、これらのNa含有化合物を「特定Na含有化合物」と称す場合がある)は、溶接時に分解しNaが、脱酸剤として作用し、溶接金属の酸素量を低減する。それにより、溶融金属の極低温靭性が向上する。
特定Na含有化合物の合計が0.01%未満であると、溶接金属の酸素量の低減作用が小さく、極低温靭性が確保できない。
一方、特定Na含有化合物の合計が2.00%超えであると、溶接スラグの凝固温度が低温化し、溶接作業性(特に立向溶接性)が劣化する。
よって、特定Na含有化合物のいずれか1種以上のNa含有化合物を含有しその合計を、0.01~2.00%とする。
特定Na含有化合物の合計の下限は、好ましくは、0.05%、0.15%、0.20%、又は0.30%である。
特定Na含有化合物の合計の上限は、好ましくは、1.90%、1.80%、1.70%、又は1.50%である。
なお、Na酸化物の含有量については、Na酸化物のNaO換算値の合計を意味する。
(K含有化合物の合計:質量%で0.01~2.00%)
K酸化物、KSiF、及びKZrF(以下、これらのK含有化合物を「特定K含有化合物」と称す場合がある)は、溶接時に分解したKが、脱酸剤として作用し、溶接金属の酸素量を低減する。それにより、溶融金属の極低温靭性が向上する。
特定K含有化合物の合計が0.01%未満であると、溶接金属の酸素量の低減作用が小さく、極低温靭性が確保できない。
一方、特定K含有化合物の合計が2.00%超えであると、溶接スラグの凝固温度が低温化し、溶接作業性(特に立向溶接性)が劣化する。
よって、特定K含有化合物のいずれか1種以上のK含有化合物を含有しその合計を、0.01~2.00%とする。
特定K含有化合物の合計の下限は、好ましくは、0.05%、0.20%、0.30%、又は0.40%である。
特定K含有化合物の合計の上限は、好ましくは、1.95%、1.90%、1.80%、又は1.50%である。
なお、K酸化物の含有量については、K酸化物のKO換算値の合計を意味する。
(Mg含有化合物の合計:質量%で0.01~2.00%)
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、特定Na含有化合物、及び特定K含有化合物に加え、Mg酸化物、及びMgFのいずれか1種以上のMg含有化合物を含有してもよい。
Mg酸化物、及びMgF(以下、これらのMg含有化合物を「特定Mg含有化合物」と称す場合がある)は、溶接時に分解しMgが、脱酸剤として作用し、溶接金属の酸素量を低減する。それにより、溶融金属の極低温靭性が向上する。
特定Mg含有化合物の合計が0.01%以上であると、溶接金属の酸素量の低減作用が大きくなり、さらに極低温靭性が向上する。
一方、特定Mg含有化合物の合計が2.00%以下であると、溶接スラグの凝固温度が高温化し、さらに溶接作業性(特に立向溶接性)が向上する。
よって、特定Mg含有化合物のいずれか1種以上のMg含有化合物の含有量は、その合計を0~2.00%とすることが好ましく、Mg含有化合物を含有する場合は、その合計を0.01~2.00%とすることが好ましい。
特定Mg含有化合物の合計の下限は、より好ましくは、0.20%、0.30%、又は0.40%である。
特定Mg含有化合物の合計の上限は、より好ましくは、1.90%、1.80%、又は1.70%である。
なお、Mg酸化物の含有量については、Mg酸化物のMgO換算値の合計を意味する。
(特定Na含有化合物、及び特定K含有化合物をワイヤに含有させる他の意義)
特定Na含有化合物の含有量、及び特定K含有化合物の含有量を各々0.01%未満とし、脱酸剤として機能するCaを含むCaFを増加させても、スパッタの発生量が増加し、溶接作業性が劣化する。また、脱酸剤として機能する金属Mgを増加させても、金属Mgは溶接金属の拡散性水素量を増加させ、耐低温割れ性が劣化する。
そのため、溶接作業性(特に立向溶接性)に優れると共に、極低温靭性及び耐低温割れ性に優れた溶接金属を得るには、ワイヤに、特定Na含有化合物、及び特定K含有化合物を各々上記範囲で含ませる必要がある。
同様の観点から、ワイヤに、特定Mg含有化合物を上記範囲で含ませることも好ましい。
なお、特定Mg含有化合物、特定Na含有化合物、及び特定K含有化合物の含有量は、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量である。
(式Aによって算出されるX値)
本開示に係るフラックス入りワイヤにおいて、下記式Aによって算出されるX値は0.10~160.00であることが好ましい。
X=(8×CaF+5×MgF+5×NaF+5×KSiF+5×KZrF+NaAlF)/(SiO+Al+ZrO+0.5×MgO+CaO+0.5×NaO+0.5×KO+MnO+FeO) ・・・・式A
式A中、CaF、MgF、NaF、KSiF、KZrF、及びNaAlFは、各化学式で示される化合物の、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量である。また、SiOはSi酸化物のSiO換算値の合計を示し、AlはAl酸化物のAl換算値の合計を示し、ZrOはZr酸化物のZrO換算値の合計を示し、MgOはMg酸化物のMgO換算値の合計を示し、CaOはCa酸化物のCaO換算値の合計を示し、NaOはNa酸化物のNaO換算値の合計を示し、KOはK酸化物のKO換算値の合計を示し、MnOはMn酸化物のMnO換算値の合計を示し、FeOはFe酸化物のFeO換算値の合計を示す。なお、式Aにおける前記SiO換算値、前記Al換算値、前記ZrO換算値、前記MgO換算値、前記CaO換算値、前記NaO換算値、前記KO換算値、前記MnO換算値、及び前記FeO換算値はフラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で表す。
式Aにおいて、分子は、溶接時に分解して、脱酸剤として機能し、溶接金属の酸素量を低減する成分(Ca、Mg、Na、K、Si)と、溶接金属の拡散性水素量を低減するフッ素と、を含む化合物量の指標である。
一方、分母は、溶接金属の酸素量を増加する酸素(O)を含む化合物量の指標である。
つまり、X値が0.10以上であると、溶接金属の酸素量を増加する酸素(O)を含む化合物量が少なく、溶接金属の酸素量低減作用が大きくなり、さらに極低温靭性が向上する。
一方、X値が160.00以下であると、弗化物量が多すぎず、スラグ巻き込みが生じ難くなり、健全な継手を作製し易くなる。
よって、式Aによって算出されるX値は0.10~160.00とすることが好ましい。
X値の下限は、より好ましくは、1.00、5.00、又は10.00である。
X値の上限は、より好ましくは、130.00、100.00、70.00、50.00、又は20.00である。
(式Bによって算出されるCeq)
本開示に係るフラックス入りワイヤにおいて、式Bによって算出されるCeqは、0.30~0.75であることが好ましい。
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14 ・・・式B
式B中、元素記号は、酸化物、弗化物、窒化物、及び金属炭酸塩を除く化学成分として含まれる各元素の、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量である。
Ceqは、溶接金属の焼入性に影響する。Ceqが高い場合、溶接金属が硬化するので溶接金属の引張強さが向上するが、溶接金属の極低温靭性が低下する。
Ceqが0.30%以上である場合、溶接金属のCeqも充足し易くなり、溶接金属の引張強さが充足する傾向がある。
Ceqが0.75%以下である場合、溶接金属のCeqが過剰となることを抑制し易くなり、溶接金属の極低温靭性が充足し、かつ低温割れが抑制される傾向がある。
そのため、Ceqは、0.30~0.75が好ましい。
Ceqの下限は、より好ましくは、0.35、0.40、又は0.45である。
Ceqの上限は、より好ましくは、0.70、0.65、又は0.60である。
-その他酸化物の合計含有量:0~10.00%-
本開示に係るフラックス入りワイヤにおいて、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、及びAl酸化物以外の酸化物として、Fe酸化物、Mg酸化物、Na酸化物、K酸化物、Mn酸化物、及びCa酸化物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の酸化物を含む場合その合計含有量は、10.00%以下であることが好ましい。Fe酸化物、Mg酸化物、Na酸化物、K酸化物、Mn酸化物、及びCa酸化物からなる群に含まれる酸化物を単に「その他酸化物」と略す場合がある。またその他酸化物における各々の酸化物の含有量の合計値を、単に「その他酸化物の合計含有量」と略す場合がある。
本開示に係るフラックス入りワイヤが、上記その他酸化物の1種又は2種以上の酸化物を含む場合、上記その他酸化物の合計含有量は、Fe酸化物のFeO換算値、Mg酸化物のMgO換算値、Na酸化物のNaO換算値、K酸化物のKO換算値、Mn酸化物のMnO換算値、及びCa酸化物のCaO換算値の合計として求める。
なお、本開示に係るフラックス入りワイヤにおいて、その他酸化物は必須成分ではないので、フラックス入りワイヤにおける、その他酸化物の合計含有量の下限値は0%である。
一方、その他酸化物は、溶接ビード形状を良好に維持する効果と、立向溶接性を向上させる効果とを有する。また、Mg酸化物、及びFe酸化物等は、アークを安定させる効果も有する。そのような効果を得るためには、その他酸化物の合計含有量を0%超にしてもよい。これらの効果をより発揮させるために、その他酸化物の合計含有量の下限を、0.05%、0.10%、0.15%、又は0.20%としてもよい。一方、その他酸化物の合計含有量が10.00%以下であると、スラグの巻き込みの発生が抑制され、健全な継手を容易に作製できる。そのため、その他酸化物の合計含有量の上限値は10.00%とすることが好ましく、9.00%、8.00%、7.00%、6.00%、3.00%、2.00%、1.00%、0.50%又は0.30%としてもよい。
本開示に係るフラックス入りワイヤにおける、その他酸化物の含有量は、酸化物の種類ごとに限定する必要はない。
なお、その他酸化物における各々の酸化物の含有量及びその他酸化物の合計含有量は、前述したTi酸化物の含有量と同様に蛍光X線分析によって測定する。
(窒化物、金属炭酸塩)
窒化物(特にフラックス中の窒化物)は、溶接金属中の拡散性水素量を減少させて、溶接金属の耐低温割れ性を顕著に向上させる働きを有する。この理由は明らかではないが、窒化物中のNが溶接中に水素(H)と結合してアンモニア(NH)となり、このNHが溶接金属外に放出されることが理由の一つであると推測される。
そのため、本開示に係るフラックス入りワイヤは、窒化物を含んでもよい。
本開示に係るフラックス入りワイヤには窒化物として、例えば、AlN、BN、Ca、CeN、CrN、CuN、FeN、FeN、FeN、MgN、MoN、NbN、Si、TiN、VN、ZrN、MnN、及びMnNからなる群から選択される1種又は2種以上を含んでもよい。
金属炭酸塩は、アークによって電離し、COガスを発生させる。COガスは、溶接雰囲気中の水素分圧を下げ、溶接金属中の拡散性水素量を低減させる。
そのため、本開示に係るフラックス入りワイヤは、フラックス中に金属炭酸塩を含んでもよい。
本開示に係るフラックス入りワイヤには金属炭酸塩として、例えば、MgCO、NaCO、LiCO、CaCO、KCO、BaCO、FeCO、MnCO、及びSrCOからなる群から選択される1種又は2種以上を含んでもよい。
ただし、金属炭酸塩の種類及び組成は限定されない。
なお、窒化物及び金属炭酸塩の含有量は、前述したTi酸化物の含有量と同様に蛍光X線分析によって測定する。
本開示に係るフラックス入りワイヤは、ワイヤ表面に塗布された潤滑剤をさらに備えてもよい。ワイヤ表面に塗布された潤滑剤は、溶接時のワイヤの送給性を向上させる効果を有する。溶接ワイヤ用の潤滑剤としては、様々な種類のもの(例えばパーム油等の植物油)を使用できるが、溶接金属の低温割れを抑制するためには、Hを含有しないポリテトラフルオロエチレン油(PTFE油)及びパーフルオロポリエーテル油(PFPE油)の一方又は両方を使用することが好ましい。また、上述したように、本開示に係るフラックス入りワイヤは、ワイヤ表面に形成されためっきをさらに備えてもよい。この場合、潤滑剤はめっきの表面に塗布される。
本開示に係るフラックス入りワイヤに含まれる水素量は特に限定されないが、溶接金属の拡散性水素量を低減するためには、フラックス入りワイヤの全質量に対して12ppm以下であることが好ましい。フラックス入りワイヤ中の水素量は、フラックス入りワイヤの保管の間に、フラックス入りワイヤ内に水分が侵入することにより増大するおそれがある。従って、ワイヤ製造からワイヤ使用までの期間が長い場合は、後述の手段によって水分の浸入を防止することが望ましい。
(ワイヤ形状)
次に、本開示に係るフラックス入りワイヤの形状(ワイヤ構造)について説明する。
通常、フラックス入りワイヤは、鋼製外皮の継目が溶接されているのでスリット状の隙間がない形状(シームレス形状)を有するワイヤ(鋼製外皮の継目に溶接部を有しないワイヤ)と、鋼製外皮の継目が溶接されていないのでスリット状の隙間を含む形状(シーム形状)を有するワイヤ(鋼製外皮の継目に溶接部を有するワイヤ)のいずれかに区別される。
本開示に係るフラックス入りワイヤでは、いずれの形状も採用することができる。しかしながら、溶接金属の低温割れの発生を抑制するためには、鋼製外皮にスリット状の隙間がないことが好ましい。溶接時に溶接部に侵入するH(水素)は、溶接金属及び被溶接材中に拡散し、応力集中部に集積して低温割れの発生原因となる。Hの供給源は様々であるが、溶接部の清浄度、及びガスシールドの条件が厳密に管理された状態で溶接が行われる場合、ワイヤ中に含まれる水分(HO)が主なHの供給源となり、この水分の量が、溶接継手の拡散性水素量に強く影響する。
鋼製外皮がシームを有する場合、大気中の水分がシームを通じてフラックス中に侵入しやすい。このため、鋼製外皮のシームを除去することにより、ワイヤ製造後からワイヤ使用までの間に、大気中の水分が鋼製外皮を通じてフラックス中に侵入することを抑制することが望ましい。鋼製外皮がシームを有し、且つワイヤ製造からワイヤ使用までの期間が長い場合は、水分等のHの供給源が侵入することを防止するために、フラックス入りワイヤ全体を真空包装するか、乾燥した状態で保持できる容器内でフラックス入りワイヤを保存することが望ましい。
(ワイヤ直径)
本開示に係るフラックス入りワイヤの直径は特に限定されないが、例えばφ1.0~φ2.0mmである。なお、一般的なフラックス入りワイヤの直径はφ1.2~φ1.6mmである。
(充填率)
本開示に係るフラックス入りワイヤの充填率は、上述された条件が満たされる限り、特に限定されない。一般的なフラックス入りワイヤの充填率に鑑みて、本開示に係るフラックス入りワイヤの充填率の下限値を、例えば8%、10%、又は12%としてもよい。また、本開示に係るフラックス入りワイヤの充填率の上限値を、例えば28%、25%、22%、20%、又は17%としてもよい。
<フラックス入りワイヤの製造方法>
次に、本開示に係るフラックス入りワイヤの製造方法について説明する。
なお、以下に説明する製造方法は一例であり、本開示に係るフラックス入りワイヤを製造する方法は、以下の方法に限定されるものではない。
(シームレス形状を有するフラックス入りワイヤの場合)
シームレス形状を有するフラックス入りワイヤの製造方法は、フラックスを調製する工程と、鋼帯を長手方向に送りながら、成形ロールを用いて成形してU字型のオープン管を得る工程と、オープン管の開口部を通じてオープン管内にフラックスを供給する工程と、オープン管の開口部の相対するエッジ部(周方向両端部)を突合せ溶接してシームレス管を得る工程と、シームレス管を伸線して所定の線径を有するフラックス入りワイヤを得る工程と、伸線する工程の途中又は完了後にフラックス入りワイヤを焼鈍する工程とを備える。
フラックスは、フラックス入りワイヤの各成分が上述された所定の範囲内になるように調製される。なお、鋼製外皮の材料である鋼帯の幅及び厚さ、並びにフラックスの充填量等によって決定されるフラックスの充填率も、フラックス入りワイヤの各成分量に影響することに留意する必要がある。
突合せ溶接は、電縫溶接、レーザ溶接、又はTIG溶接等により行われる。
また、伸線工程の途中又は伸線工程の完了後に、フラックス入りワイヤ中の水分を除去するために、フラックス入りワイヤは焼鈍される。フラックス入りワイヤのH含有量を12ppm以下とするためには、焼鈍温度は、650℃以上とし、焼鈍時間は、4時間以上とすることが好ましい。なお、フラックスの変質を防ぐために、焼鈍温度は900℃以下とすることが好ましい。
突合せシーム溶接された、スリット状の隙間がないフラックス入りワイヤの断面は、研磨して、エッチングすれば、溶接跡が観察されるが、エッチングしないと溶接跡は観察されない。そのため、上記のようにシームレスと呼ぶことがある。例えば、溶接学会編「新版 溶接・接合技術入門」(2008年)産報出版、p.111には、突合せシーム溶接された、スリット状の隙間がないフラックス入りワイヤは、シームレスタイプのワイヤと記載されている。フラックス入りワイヤの鋼製外皮の隙間をろう付けしても、スリット状の隙間がないフラックス入りワイヤが得られる。
(スリット状の隙間を有するフラックス入りワイヤの場合)
スリット状の隙間を有するフラックス入りワイヤの製造方法は、オープン管の周方向の両端部を突き合わせ溶接してシームレス管を得る工程の代わりに、オープン管を成形してオープン管の端部を突き合わせてスリット状の隙間有りの管を得る工程を有する点以外は、シームレス形状を有するフラックス入りワイヤの製造方法と同じである。スリット状の隙間を有するフラックス入りワイヤの製造方法は、突き合わせられたオープン管の端部をかしめる工程をさらに備えてもよい。
スリット状の隙間を有するフラックス入りワイヤの製造方法では、スリット状の隙間有りの管を伸線する。
<溶接継手の製造方法>
次に、本開示に係る溶接継手の製造方法(溶接方法)について説明する。
本開示に係る溶接継手の製造方法は、上述された本開示に係るフラックス入りワイヤを用いて、鋼材を、溶接する工程を備える。
本開示に係る溶接継手の製造方法において、溶接方式は、ガスシールドアーク溶接が好適である。
本開示に係る溶接継手の製造方法において、溶接継手の母材となる鋼材(被溶接材)の種類は特に限定されないが、例えば、PCM(溶接割れ感受性組成)が0.24%以上である低温割れ感受性が高い鋼材、特に、引張強さが590MPa以上1700MPa以下であり、板厚20mm以上の高強度鋼板を好適に用いることができる。
本開示に係る溶接継手の製造方法では、1パスから最終パスのいずれか1つ以上において、本開示に係るフラックス入りワイヤを用いて鋼材を溶接する工程を備えることがよい。溶接が1パスのみである場合、その1パスにおいて本開示に係るフラックス入りワイヤが用いられる。
フラックス入りワイヤの極性は、溶接金属の拡散性水素量及びスパッタ発生量に及ぼす影響が無視できる程度に小さいので、プラス及びマイナスのいずれであってもよいが、プラスであることが好ましい。
本開示に係る溶接継手の製造方法において用いられるシールドガスの種類は特に限定されない。本開示に係る溶接継手の製造方法は、シールドガスの種類に関わらず、優れた溶接作業性を発揮し、高強度、高靱性、及び高疲労強度を有する溶接継手を得ることができる。本開示に係る溶接継手の製造方法におけるシールドガスとして、一般的に多用されている100体積%の炭酸ガス、及びArと3~30体積%COとの混合ガス等を好ましく使用することができる。また、本開示に係るフラックス入りワイヤを用いた溶接の際のシールドガスは5体積%以下のOガスを含んでいてもよい。これらのガスは廉価であるので、これらのガスを用いた溶接は産業利用上有利である。
通常、これらのガスは、ルチル系フラックス入りワイヤと組み合わせて用いられた際に、多量のスパッタを生じさせて溶接作業性を悪化させる。しかしながら、本開示に係る溶接継手の製造方法は、スパッタ量を十分に抑制することができる本開示に係るフラックス入りワイヤを用いるので、これらのガスがシールドガスである場合でも、良好な溶接作業性を発揮することができる。
本開示に係る溶接継手の製造方法における溶接姿勢は特に限定されない。本開示に係る溶接継手の製造方法は、溶接姿勢が下向姿勢、横向姿勢、立向姿勢、及び上向姿勢のいずれであっても、良好な溶接作業性(特に立向溶接性)を発揮することができる。
本開示に係る溶接継手の製造方法によって得られる溶接継手は、母材となる鋼材と、溶接金属及び溶接熱影響部から構成される溶接部とを備える。本開示に係る溶接継手は、本開示に係るフラックス入りワイヤを用いて製造されるので、良好なビード形状を有する溶接金属を備える。得られる溶接金属の引張強さは、590~1200MPaの高強度となる。
次に、実施例及び比較例により、本開示の実施可能性及び効果についてさらに詳細に説明するが、下記実施例は本開示を限定するものではなく、前・後記の趣旨に徹して設計変更することはいずれも本開示の技術的範囲に含まれるものである。
(フラックス入りワイヤの製造)
実施例及び比較例のフラックス入りワイヤは、以下に説明する方法により製造した。
まず、表1に示す外皮の化学成分を有する鋼帯を長手方向に送りながら、成形ロールを用いて成形してU型のオープン管を得た。このオープン管の開口部を通じてオープン管内にフラックスを供給し、オープン管の開口部の相対するエッジ部を突合わせ溶接してシームレス管を得た。
このシームレス管を伸線して、スリット状の隙間がないフラックス入りワイヤを得た。ただし、一部の試料は、シーム溶接をしないスリット状の隙間有りの管とし、それを伸線した。
このようにして、最終のワイヤ径がφ1.2mmのフラックス入りワイヤを試作した。 なお、これらフラックス入りワイヤの伸線作業の途中で、フラックス入りワイヤを650~950℃の温度範囲内で4時間以上焼鈍した。試作後、ワイヤ表面には潤滑剤を塗布した。これらフラックス入りワイヤの構成を表2A~表2Dに示す。
表1~表2に示された、外皮の化学成分の含有量、ワイヤの化学成分の含有量、酸化物の含有量、弗化物の含有量、Na含有化合物の含有量、K含有化合物の含有量及び鉄粉の含有量の単位は、フラックス入りワイヤ全質量に対する質量%である。表中において「鋼製外皮全質量に対する質量%」及び「フラックス入りワイヤ全質量に対する質量%」は、共に、「質量%」と略し、「酸化物、弗化物、窒化物、及び金属炭酸塩を除くワイヤの化学成分」は、「ワイヤの化学成分」と略した。
Figure 2023051585000001
Figure 2023051585000002
Figure 2023051585000003
Figure 2023051585000004
Figure 2023051585000005
表1に示された鋼製外皮の残部(すなわち、表に示された各成分以外の成分)、及び表2に示されたフラックス入りワイヤの残部(すなわち、表に示された各成分以外の成分)は、鉄及び不純物である。
表2に示されたフラックス入りワイヤのうち、「ワイヤ構造」欄で「シームレス」と記載されたフラックス入りワイヤは、シームレス形状を有し、「備考」欄で特に断りが無い限り、潤滑剤としてパーム油が塗布されたワイヤである。また、「ワイヤ構造」欄で「スリット状隙間有」と記載されたフラックス入りワイヤは、スリット状の隙間を有するワイヤであり、「備考」欄で「PTFE塗布」と記載されたワイヤは、PTFE油が塗布されたワイヤである。
表2に示されたフラックス入りワイヤに含まれる各元素は、鋼製外皮又は金属粉の形態である。
なお、表1~表2においては、本開示で規定される範囲から外れる数値に下線を付してある。
また、表1~表2において、化学成分や化合物などの含有量に係る表中の空欄は、その化学成分や化合物などが意図的に含有されていないことを意味する。これらの化学成分や化合物などが不可避的に混入されるか生成することもある。
[評価]
実施例及び比較例のフラックス入りワイヤを用いて、立向上進溶接で、ガスシールドアーク溶接することにより評価を行った。具体的には、以下に説明する方法により評価された。
溶接する鋼板として板厚が50mmである引張強さ780MPa級鋼を用い、評価の際の溶接ガスの種類は、Ar-20%COガスとした。また、評価の際に、溶接電流は全て直流とし、ワイヤの極性は全てプラスとした。
なお、評価する際の溶接条件は、表3に記載の条件とした。
Figure 2023051585000006
(ヒューム量の評価)
実施例及び比較例のフラックス入りワイヤを用いてガスシールドアーク溶接する際のヒューム量を評価した。
溶接により発生するヒューム量の測定は、JIS Z3930:2013(アーク溶接のヒューム発生量測定方法)に準拠したハイボリウムエアサンプライヤーによる全量捕集方法によって実施した。ヒューム量が1000mg/min以下となるフラックス入りワイヤを、ヒューム量に関し「合格」とした。
(スパッタ量の評価)
実施例及び比較例のフラックス入りワイヤを用いてガスシールドアーク溶接する際のスパッタ量を評価した。
溶接により発生するスパッタ量は、アーク点から飛散したスパッタを捕集箱で集め、単位時間当たりの重量を測定した。溶接条件は表3を適用した。スパッタ量が2000mg/min以下となるフラックス入りワイヤを、スパッタ量に関し「合格」とした。
(極低温靭性の評価)
実施例及び比較例のフラックス入りワイヤを用いて、鋼板をガスシールドアーク溶接し、溶着金属の板厚方向中心から衝撃試験片(ノッチ深さ2mmのVノッチ試験片)を3本採取した。
3本の衝撃試験片に対して、-196℃でJIS Z2242:2005に準拠したシャルピー衝撃試験を実施した。
そして、3本の衝撃試験片の、-196℃でのシャルピー吸収エネルギー平均値が27J以上である場合を「合格」とし、27J未満である場合を「不合格」とした。
(総合評価)
ヒューム量の評価、スパッタ量及び極低温靭性の評価が、いずれも「合格」である場合を「合格」とし、いずれかが「不合格」である場合を「不合格」と評価した。
Figure 2023051585000007
実施例のフラックス入りワイヤは、ヒューム量及びスパッタ量が少なく、得られる溶接金属が極低温靭性に優れることがわかる。
一方、比較例は、本開示で規定する要件のいずれかを満たしていなかったので、1つ以上の評価項目において不合格となった。

Claims (7)

  1. 鋼製外皮と前記鋼製外皮の内部に充填されたフラックスとを備える溶接用のフラックス入りワイヤであって、
    前記鋼製外皮全質量に対する質量%で、前記鋼製外皮の化学成分が、
    C :0~0.100%、
    Si:0~0.10%、
    Mn:0~1.00%、
    P :0~0.050%、
    S :0~0.050%、
    Al:0~0.100%、
    Ti:0~0.100%、
    N :0~0.0100%、並びに
    残部:Fe及び不純物であり、かつ前記C、Si、Mn、P、S、Al、Ti、及びNの総含有量が1.5000%以下であり、
    前記フラックス入りワイヤ全質量に対する質量%で、酸化物、弗化物、窒化物、及び金属炭酸塩を除く前記フラックス入りワイヤの化学成分が、
    C :0.020~0.500%、
    Si:0.20~0.80%、
    Mn:1.50~30.00%、
    P :0~0.050%、
    S :0~0.050%、
    Cu:0~10.0%、
    Ni:5.0~20.0%、
    Cr:2.0~10.0%、
    Mo:0~10.0%、
    Nb:0~5.0%、
    V :0~5.0%、
    W :0~10.0%、
    Mg:0~1.00%、
    Al:0~3.000%、
    Ca:0~0.100%、
    Ti:0~3.000%、
    B:0~0.1000%、
    REM:0~0.100%、
    Bi:0~0.050%、
    N :0.050~1.000%、並びに
    残部:Fe及び不純物であり、
    Ti酸化物のTiO換算値の合計が3.00~8.00%であり、
    Si酸化物のSiO換算値の合計が0.10~1.00%であり、
    Zr酸化物のZrO換算値の合計が0~0.80%であり、
    Al酸化物のAl換算値の合計が0~0.80%であり、
    SiF、KZrF、NaF、NaAlF、CaF、及びMgFのいずれか1種以上の弗化物を含有しその合計が0.10~2.00%であり、
    Na酸化物、NaF、及びNaAlFのいずれか1種以上のNa含有化合物を含有しその合計(ただしNa酸化物はNaO換算値)が0.01~2.00%であり、
    K酸化物、KSiF、及びKZrFのいずれか1種以上のK含有化合物を含有しその合計(ただしK酸化物はKO換算値)が0.01~2.00%であるフラックス入りワイヤ。
  2. 下記式Aによって算出されるX値が0.10~160.00である請求項1に記載のフラックス入りワイヤ。
    X=(8×CaF+5×MgF+5×NaF+5×KSiF+5×KZrF+NaAlF)/(SiO+Al+ZrO+0.5×MgO+CaO+0.5×NaO+0.5×KO+MnO+FeO) ・・・・式A
    式A中、CaF、MgF、NaF、KSiF、KZrF、及びNaAlFは、各化学式で示される化合物の、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量である。また、SiOはSi酸化物のSiO換算値の合計を示し、AlはAl酸化物のAl換算値の合計を示し、ZrOはZr酸化物のZrO換算値の合計を示し、MgOはMg酸化物のMgO換算値の合計を示し、CaOはCa酸化物のCaO換算値の合計を示し、NaOはNa酸化物のNaO換算値の合計を示し、KOはK酸化物のKO換算値の合計を示し、MnOはMn酸化物のMnO換算値の合計を示し、FeOはFe酸化物のFeO換算値の合計を示す。
    なお、式Aにおける前記SiO換算値、前記Al換算値、前記ZrO換算値、前記MgO換算値、前記CaO換算値、前記NaO換算値、前記KO換算値、前記MnO換算値、及び前記FeO換算値はフラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で表す。
  3. 前記フラックス入りワイヤの化学成分において、Mn含有量とNi含有量との質量比(Mn/Ni)が、0.30~4.00である請求項1又は請求項2に記載のフラックス入りワイヤ。
  4. 鋼製外皮は、前記鋼製外皮の継目に溶接部を有しない請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のフラックス入りワイヤ。
  5. 鋼製外皮は、前記鋼製外皮の継目に溶接部を有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のフラックス入りワイヤ。
  6. 表面にポリテトラフルオロエチレン油及びパーフルオロポリエーテル油の一方又は両方が塗布されている請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のフラックス入りワイヤ。
  7. 請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のフラックス入りワイヤを用いて、鋼材を溶接する工程を備える溶接継手の製造方法。
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