JP2023050412A - 絶縁熱伝導性フィラー、及びその製造方法 - Google Patents

絶縁熱伝導性フィラー、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フィラー表面の形状を改良し、熱伝導率を効果的に向上させることが可能な絶縁熱伝導性フィラー、及びその製造方法を提供すること。【解決手段】本発明の絶縁熱伝導性フィラー5は、平均粒子径D50が10μm~40μmの粒子が複数個、凝集してなることを特徴とする。或いは、本発明の絶縁熱伝導性フィラー5は、フィラー表面に、複数のこぶ状突起3が設けられており、こぶ状突起3の曲率半径は、5μm~20μmであることを特徴とする。本発明では、平均粒子径D50が10μm~40μmの複数の粒子を、焼結して凝集させたことを特徴とする。或いは、平均粒子径D50が5μm~30μmのAl粒子と、平均粒子径D50が10μm~40μmのAlNからなる希釈材とを用い、窒素雰囲気下にて燃焼合成法で合成したことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、AlNなどの絶縁熱伝導性フィラー、及びその製造方法に関する。
例えば、窒化アルミニウム(以下、AlNと記す)は、高絶縁性と高熱伝導性を有するため、高放熱フィラーなどとして応用されている。近年の半導体素子の小型化、高機能化に伴い、電子部品からの発熱量は増大する傾向にあり、電子部品などにおける放熱部材の性能も更なる向上が求められている。
例えば、径が異なる複数種のフィラーを混合した複合材料において、充填率を上げることで、複合材料の熱伝導率を向上させることができる。ここで、径が大きいメインフィラーには、充填性に優れた特許文献1に記載の球状粉や、平面を有する粒状粉が使用されている。
特開2005-104818号公報
メインフィラーに比べて径が小さいサブフィラーに球状紛を用いて、球状や平面状のメインフィラーと混合すると、メインフィラーとサブフィラーとの接触点は、1点だけになる。
このようにフィラー間の接触点が1点であるため、フィラー間の伝熱面積は小さい。また、球状や平面状のメインフィラーを使用した複合材料では、例えば、メインフィラーの間にサブフィラーが入り込むと、サブフィラーの大きさ分、メインフィラー同士の距離は離れるため、フィラー間距離は広くなる。以上により、熱抵抗が増加し、メインフィラーとサブフィラーとを充填した複合材料の熱伝導率を十分高めることができなかった。
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、フィラー表面の形状を改良し、熱伝導率を効果的に向上させることが可能な絶縁熱伝導性フィラー、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、絶縁熱伝導性フィラーであって、平均粒子径が10μm~40μmの粒子が複数個、凝集してなることを特徴とする。
本発明では、SEMにて、10個の前記絶縁熱伝導性フィラーを抽出し、当該抽出した前記絶縁熱伝導性フィラー中、5個以上が、平均粒子径10μm~40μmの粒子を3個以上100個以下にて結合した凝集粒子であることが好ましい。
本発明は、絶縁熱伝導性フィラーであって、フィラー表面に、複数のこぶ状突起が設けられており、前記こぶ状突起の表面は曲面状であり、前記こぶ状突起の曲率半径は、5μm~20μmであることを特徴とする。
本発明では、前記絶縁熱伝導性フィラーの平均粒子径D50は、60μm~150μmであることが好ましい。
本発明では、前記絶縁熱伝導性フィラーのタップ密度は、1.2(g/cc)~1.8(g/cc)であることが好ましい。
本発明では、前記絶縁熱伝導性フィラーの比表面積は、0.08(m/g)~0.20(m/g)であることが好ましい。
本発明では、前記絶縁熱伝導性フィラーは、AlNフィラーであることが好ましい。
本発明における絶縁熱伝導性フィラーの製造方法は、平均粒子径D50が10μm~40μmの粒子を複数個、焼結して凝集させたことを特徴とする。
本発明は、平均粒子径D50が5μm~30μmのAl粒子と、平均粒子径D50が10μm~40μmのAlNからなる希釈材とを用い、窒素雰囲気下にて燃焼合成法で合成したことを特徴とする。
本発明の絶縁熱伝導性フィラーによれば、他のフィラーとの接触点を増やすことができ、フィラー間距離を縮めることができ、複合材料の熱伝導率を効果的に向上させることができる。
(a)(b)は、比較例におけるメインフィラーと、サブフィラーとの接触状態を示す模式図であり、(c)は、本実施の形態におけるメインフィラーと、サブフィラーとの接触状態を示す模式図である。 本実施例の粒度分布図である。 本実施例におけるAlNフィラーのSEM画像である。 比較例におけるAlNフィラーのSEM画像である。 焼結法により製造した本実施例におけるAlNフィラーのX線回折チャート図である。 燃焼合成法により製造した本実施例におけるAlNフィラーのX線回折チャート図である。
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、「~」の表記は、下限値及び上限値の双方の数値を含む。
<従来における絶縁熱伝導性フィラーの問題点>
例えば、樹脂やゴムに充填した放熱シートやエポキシ樹脂に充填させた放熱性接着剤等の放熱材料には、絶縁熱伝導性フィラーが充填される。
絶縁熱伝導性フィラーとして、例えば、AlNフィラーは、高い絶縁性と高い熱伝導性を有しており、高放熱フィラーとして用いられる。フィラーの径が大きいほど、複合材料(粒子径が異なる複数種のフィラーを混合したもの)の熱伝導性を向上させることができるため、例えば、メインフィラーには60~150μmの大径を用いる。「メインフィラー」とは、添加されるフィラーの中で、最も大きい質量比率を持つフィラーを指す。従来においては、充填性が優れる球状紛や平面形状を持つ粒状粉が使用されていた。
図1(a)(b)は、比較例であり、図1(c)は、本実施の形態を示すフィラーの模式図である。図1(a)~図1(c)には、2つのメインフィラー1と1つのサブフィラー2を示した。なお、「サブフィラー」は、メインフィラー1以外のフィラーを指し、メインフィラー1より平均粒子径D50が小さい。
図1(a)に示すように、メインフィラー1及びサブフィラー2がともに球状である場合、各メインフィラー1とサブフィラー2の接触点は、夫々、1点のみである。また、図1(b)に示すように、メインフィラー1が平面状であり、サブフィラー2が球状である場合も、各メインフィラー1とサブフィラー2の接触点は、夫々、1点のみである。
このように、図1(a)(b)では、メインフィラー1とサブフィラー2間の接触点は1点のみであるため、メインフィラー1とサブフィラー2間の伝熱面積は非常に小さい。
また、図1(a)(b)に示すように、メインフィラー1間にサブフィラー2が介在すると、メインフィラー1間の距離L1は、メインフィラー1の粒子径とサブフィラー2の粒子径とを足した大きさになり、距離L1が広くなる。
そこで、本発明者は、平均粒子径D50が大きいメインフィラーの開発において、フィラー表面を改良して、効果的に熱伝導性を向上させる絶縁熱伝導性フィラーを発明するに至った。
<本実施の形態の絶縁熱伝導性フィラーの概要>
本実施の形態における絶縁熱伝導性フィラーは、平均粒子径D50が10μm~40μmの粒子が複数個、凝集してなることを特徴とする。
図1(c)に示すように、本実施の形態における絶縁熱伝導性フィラー(以下、メインフィラーと称する場合もある)5は、フィラー表面に丸みを帯びた複数のこぶ状突起3を有しており、複数のこぶ状突起3と、各こぶ状突起3の間の窪み4とにより、フィラー表面は、連続した曲面状の凹凸形状となっている。
図1(c)に示す各こぶ状突起3は、平均粒子径が10μm~40μmの粒子であり、これら粒子が凝集したことで、図1(c)に示すように、フィラー表面は、曲面状の凹凸形状を構成している。
また、本実施の形態では、各こぶ状突起3の表面は、丸みを帯びた曲面状であり、こぶ状突起3の曲率半径は、5μm~20μmであることを特徴とする。本実施の形態の絶縁熱伝導性フィラー5は、平均粒子径D50が10μm~40μmの球状粒子を凝集させた凝集粒子であるため、各こぶ状突起3は丸みを帯びた滑かな表面を有している。
また、本実施の形態では、走査電子顕微鏡写真(SEM写真)にて、10個の絶縁熱伝導性フィラー5を抽出し、当該抽出した絶縁熱伝導性フィラー5中、5個以上が、平均粒子径10μm~40μmの粒子を3個以上100個以下にて結合した凝集粒子であることが好ましい。換言すれば、絶縁熱伝導性フィラー5のフィラー表面には、曲率半径5μm~20μmのこぶ状突起3が3個以上100個以下にて設けられている。平均粒子径10μm~40μmの粒子を3個以上凝集させることで、絶縁熱伝導性フィラー5全体として丸みを帯びた形状にすることが可能である。また、平均粒子径10μm~40μmの粒子を100個以下凝集させることで、絶縁熱伝導性フィラー5が極端に巨大化することを防ぎ、後述するように、平均粒子径D50を、60μm~150μmの範囲内に適切に収めることができ、且つ比表面積の増大を抑え高い充填性を維持することを可能とする。
図1(c)に示す本実施の形態のように、メインフィラー5のフィラー表面が、曲面状の滑らかな凹凸形状であることで、各メインフィラー5とサブフィラー2との接触点が2点以上となる確率が上昇する。これにより、メインフィラー5とサブフィラー2間の伝熱面積を増加させることができる。
また、図1(c)に示すように、本実施の形態では、メインフィラー5の窪み4に、少なくとも、サブフィラー2の一部を介在させることができ、メインフィラー5間の距離L2を、図1(a)(b)に示す比較例のフィラー間距離L1よりも近くすることができる。以上により、熱抵抗の低減が可能になる。
一方、図1(c)では、絶縁熱伝導性フィラー(メインフィラー)5のフィラー表面が凹凸形状であるため、絶縁熱伝導性フィラー5をマトリクス(樹脂)中に充填した際に、マトリクスとの摩擦が増え、充填性が低下する恐れがある。このため、本実施の形態では、こぶ状突起3の表面を滑らかな凹凸形状とするとともに、絶縁熱伝導性フィラー5の外周全体に丸みを持たせた。これにより、マトリクスとの摩擦を抑制し、充填性の低下を抑制することができる。
本実施の形態では、絶縁熱伝導性フィラー5の平均粒子径D50は、60μm~150μmであることが好ましい。平均粒子径D50は、例えば、レーザ回折粒度分布測定装置(HORIBA製 LA-950)にて測定することができる。「D50」とは、累積個数が、全粒子数の50%となる粒径を指す。
本実施の形態では、絶縁熱伝導性フィラー5のアスペクト比は、0.5~1程度であることが好ましく、0.7~1程度であることがより好ましい。アスペクト比は、例えば、SEM(Phenom ProX、Phonom World社製)により観察を行い、解析ソフト(Particle Metric)にて、400個の絶縁熱伝導性フィラーのアスペクト比(短径/長径)を測定して得られた平均アスペクト比である。
また、本実施の形態では、絶縁熱伝導性フィラー5のタップ密度は、1.2(g/cc)~1.8(g/cc)であることが好ましく、1.5(g/cc)~1.7(g/cc)であることがより好ましい。タップ密度は、JIS K 5101-12-2:2004に準じて測定することができる。
また、本実施の形態では、絶縁熱伝導性フィラー5の比表面積は、0.08(m/g)~0.20(m/g)であることが好ましく、0.10(m/g)~0.18(m/g)であることがより好ましい。比表面積は、BET法により求めることができる。BET比表面積の測定には、例えば、BELSORP(登録商標)-mini II(日本ベル(株)製)を用いることができる。
本実施の形態では、後述の実験に示すように、平面形状の比較例の絶縁熱伝導性フィラーに比して、表面に凹凸が多い本実施の形態では、タップ密度が低下し、比表面積も増加しているが、その変化量は非常に小さい。このため、本実施の形態における絶縁熱伝導性フィラー5はその表面が滑らかな凹凸形状を持ち、表面形状による充填性への影響が小さいことがわかっている。
本実施の形態における絶縁熱伝導性フィラー5は、材質を限定するものではないが、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、シリカ(SiO)などを例示できる。この中でも、高い絶縁性と熱伝導性を合わせ持つAlNであることが好ましい。
本実施の形態では、絶縁熱伝導性フィラー5を、焼結法或いは直接窒化法などで形成することができる。このうち、焼結法により本実施の形態のAlNフィラーを製造すると、組成としては、AlNの他に粒界成分(焼結助剤)であるYAM(YAl)などの2相から構成される。また、直接窒化法の一つである燃焼合成法により本実施の形態のAlNフィラーを製造すると、焼結助剤を使用しない故、高純度のAlN単相で形成することができる。
<充填性について>
本実施の形態の絶縁熱伝導性フィラーを用いた充填性について説明する。本実施の形態の絶縁熱伝導性フィラーは、平均粒子径D50が60μm~150μm程度のメインフィラーである。本実施の形態では、メインフィラーの他に、平均粒子径D50が異なる複数種のサブフィラーを添加する。すなわち、サブフィラーとして、例えば、中径サブフィラーと小径サブフィラーを添加する。限定するものではないが、中径サブフィラーの平均粒子径D50は、10μm~30μm程度である。また、小径サブフィラーの平均粒子径D50は、1μm~5μm程度である。また、中径サブフィラー及び小径サブフィラーの形状を限定するものではないが、球状粒子であることが充填性の観点より好ましい。
本実施の形態では、メインフィラーとして、平均粒子径D50が10μm~40μmの粒子が複数個、凝集してなる絶縁熱伝導性フィラー、或いは、フィラー表面に、複数のこぶ状突起が設けられており、こぶ状突起の表面は曲面状であり、こぶ状突起の曲率半径が、5μm~20μmである絶縁熱伝導性フィラーを用いることで、サブフィラーとの接触点を複数点にでき、熱抵抗の減少を図ることができる。このとき、熱抵抗の原因となる粒子界面数の低減の観点から、平均粒子径D50が10μm~30μmの中径サブフィラーを充填することが好ましい。すなわち、サブフィラーとして小径サブフィラーのみでは、メインフィラーとの間で粒子界面数が増加するため、粒子界面数を低減させて熱伝導率をより有効に向上させるには、サブフィラーとして中径サブフィラーと小径サブフィラーの平均粒子径D50が異なる複数種を添加する。本実施の形態では、表面に凹凸があるメインフィラーを用いることで、フィラー間の距離も近くなり、伝熱パスが有利となる。
また本実施の形態のメインフィラーは、その表面が凹凸形状であるため、マトリクスとの摩擦を抑制し、充填性の低下を抑制するために、メインフィラーの表面に形成された複数のこぶ状突起の表面に丸みを持たせて滑らかな凹凸形状としている。これにより、マトリクスとの摩擦を抑制し、充填性の低下を抑制することができる。
以上から、本実施の形態では、夫々、平均粒子径D50が異なるメインフィラー、中径サブフィラー及び小径サブフィラーを充填した複合材料のフィラー充填率を高めることができ、特に、フィラー充填率を70%以上にすることができる。フィラー充填率を70%以上とすることで、飛躍的に熱伝導率を向上させることが可能である。本実施の形態では、メインフィラーとして、比較例のように球状粉や平面を持つ粒状粉を使用した場合と同様の高いフィラー充填率を得ることができるとともに、熱抵抗を効果的に低減することができ、熱伝導率を飛躍的に向上させることができる。
<本実施の形態の絶縁熱伝導性フィラーの製造方法>
本実施の形態における絶縁熱伝導性フィラーは、以下の工程を経て形成することができる。すなわち、(1)焼結法、或いは、(2)直接窒化法にて製造することができる。以下では、絶縁熱伝導性フィラーをAlNフィラーとして説明する。
焼結法では、第一に、平均粒子径D50が10μm~40μmのAlN粒子を用意する。AlN粒子は既存の方法で製造できるが、例えば、燃焼合成法にてAlN粒子を製造することが好ましい。AlN粒子は、表面が丸みを持つ滑らかな粒子であることが好ましく、特に、球状粒子であることが好ましい。
次に、複数のAlN粒子と、焼結助剤とを混合し、混合紛を坩堝に充填し、カーボンヒーターを有する焼結炉で、窒素雰囲気下で焼結を行う。焼結温度は、1650~2000℃程度であり、焼結時間は、1~10時間程度であることが好ましい。焼結助剤の材質を限定するものではないが、例えば、Y、CaO、CaCO、SrCO、BaCO、La、CeO、PrO、Nd、Sm、Gd、Dy等を例示できる。
また、本実施の形態では、比較的、平均粒子径D50が大きい球状のAlN粒子を用いているため、比表面積が小さく、酸素量が低い。このため、焼結の際に、結合に必要なイットリウムアルミネート相が生成されにくい。そこで、焼結助剤として通常は添加されないAlを、結合に必要なイットリウムアルミネート相の組成比に近い混合比で添加することが好ましい。
焼結後の混合紛は凝集した状態であるため、乳鉢やボールミルなどで軽く解砕を行うことが好ましい。これにより、平均粒子径D50が10μm~40μmの粒子が複数個、凝集してなる絶縁熱伝導性フィラー、或いは、フィラー表面に、複数のこぶ状突起が設けられており、こぶ状突起の表面は曲面状であり、こぶ状突起の曲率半径は、5μm~20μmである絶縁熱伝導性フィラーを、歩留まりよく製造することができる。
本実施の形態では、混合紛の焼結に、カーボンヒーター及びカーボン製坩堝を使用することが好ましい。これは、一般的なAlN焼結法である還元焼結法により粒界を減少させ、絶縁熱伝導性フィラーの熱伝導率を向上させるためである。ただし、カーボンヒーター及びカーボン製坩堝の使用に限定されるものではない。
本実施の形態では、絶縁熱伝導性フィラーの製造方法について、他にスパークプラズマシンタリング(SPS)など、粒子界面抵抗により発熱及び焼結させる方法等も考えられる。
本実施の形態では、焼結法に限定するものではなく、例えば直接窒化法にて、絶縁熱伝導性フィラーを製造することも可能である。直接窒化法には燃焼合成法を用いることが好ましい。
燃焼合成法では、生成熱を応用することで、表面に滑らかな凹凸形状を有する絶縁熱伝導性フィラーを容易に製造することが可能である。
例えば、平均粒子径D50が5μm~30μmのAl粒子と、平均粒子径D50が10μm~40μmのAlNからなる希釈材とを用い、窒素雰囲気下にて燃焼合成法で合成することができる。このとき、希釈材はいずれも表面が滑らかな粒子であり、特に、球状粒子であることが好ましい。なお本実施の形態では、希釈材を燃焼合成法で製造することができる。
希釈材を原料に混合するのは、Al粒子同士の溶着を抑えるためである。本実施の形態では、希釈材の平均粒子径D50は、10μm~40μm程度であり、Al粒子の平均粒子径D50よりも大きい。このように平均粒子径D50が大きい希釈材を用いることで、希釈材の表面に沿って複数のAlN粒子が、こぶ状突起に合成された凝集粒子を製造することができる。
上記した本実施の形態では、焼結前成型については、粉末をそのまま焼結しているが、圧粉成型後に焼結する方法や、転動造粒によりあらかじめ凹凸形状を作成してから焼結する方法、またその応用でスプレー造粒粉をお互いに結合させてから焼結することができる。
例えば、バインダーに加熱可塑化樹脂などを用い、造粒粉どうしを結合させる。結合剤としてはスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、酢酸ビニルなどを用いることができる。または、コアになる樹脂(結合剤)の周囲に転動造粒法により凝集粉を付着させ、焼結する方法などが考えられる。
本実施の形態の絶縁熱伝導性フィラーは、例えば、絶縁性の高放熱シートに適用することができる。この高放熱シートは、ヒートシンクと集積回路の間に入れられ、5G通信サーバ、AIや車の集積回路等に用いられる。
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例により、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
<焼結法による実施例のAlNフィラーの製造>
AlNフィラーを、以下の工程に基づき、焼結法にて製造した。ただし、以下に示す製造条件は一例である。
まず、平均粒子径D50が30μmの略球状のAlN粒子((株)燃焼合成製 AN-HF30LG-HTZ)90wt%に、焼結助剤であるY:5wt%、Al:3.5wt%、CaO:1.5wt%を添加し、ボールミルにて混合した。
次に、混合粉をカーボン製の坩堝に充填後、カーボンヒーターを有する焼成炉にて、窒素雰囲気の下(大気圧)、温度を1800℃、時間を5時間として焼結を行った。
焼結後の混合粉を、乳鉢やボールミルで軽く解砕した。解砕して得られたAlNフィラーを、篩にて分級を行い、平均粒子径D50が、60、80、及び100μmの粒度分布を得た(図2(a)~図2(c))。
<実施例のAlNフィラーのSEM画像>
図3は、本実施例のAlNフィラーのSEM(Phenom ProX、Phonom World社製)画像である。図3に示すAlNフィラーの平均粒子径D50は、80μmであった。図3に示すように、フィラー表面に、複数のこぶ状突起が形成されていることがわかった。こぶ状突起は、一つのAlNフィラーに3個以上、凝集していることがわかった。こぶ状突起の平均粒子径D50は、約30μmであり、また、こぶ状突起の表面は滑らかで丸みを帯びており、こぶ状突起の曲率半径は約15μmであった。なお、曲率半径は、SEMやレーザー顕微鏡、画像式 粒度・形状分布測定装置などの撮像法より得られた粒子外周形状から、凹凸部の始点、頂点、終点を近似円弧で結びその円弧半径と画像スケール尺度より求めることができる。
また、SEM(Phenom ProX、Phonom World社製)により観察を行い、解析ソフト(Particle Metric)にて、400個のAlNフィラーのアスペクト比(短径/長径)を測定した結果、アスペクト比の平均値は、0.7であった。
<比較例のAlNフィラーについて>
比較例には、燃焼合成法により、希釈材の添加量を、5質量%~50質量%程度に低くし、燃焼温度を上げることにより、平均粒子径が50μm~300μmの結晶粒子を生成させ、さらにその粒子を破砕することにより平面形状が粒子表面に多くの面積を占めるAlNフィラーを製作し、それを用いた。
図4は、比較例のAlNフィラーのSEM画像である。図4に示すAlNフィラーの平均粒子径D50は80μmであった。
図4に示す比較例のAlNフィラーは、図3に示す実施例のAlNフィラーのように凹凸形状でなく、平面部分が多く見られた。
<実施例及び比較例のタップ密度と比表面積>
以下の表1では、AlNフィラーにおける、粒度分布範囲とタップ密度及び比表面積との関係を示す。なお、平均粒子径D50は、レーザ回折粒度分布測定装置(HORIBA製 LA-950)にて測定した。また、比表面積は、BELSORP(登録商標)-mini II(日本ベル(株)製)を用いBET法により求めた。
Figure 2023050412000002
表1に示す実施例のAlNフィラーは、上記した焼結法に基づいて製造した図2(a)~図2(c)の粒度分布を有するAlNフィラーである。
なお、各実施例及び各比較例で粒度分布の影響が小さくなるように、表1に示す表示内の粒度分布の範囲に粒度を調整した後、タップ密度及び比表面積の測定を行った。
表1に示すように、フィラー表面に平面部分が多い比較例に対し、フィラー表面に凹凸部分が多い実施例は、タップ密度が低下し、また、比表面積が増加していることがわかった。しかしながら、その変化量は比較例に比して僅かであり、このことから、本実施例のAlNフィラーは、表面が滑らかに変化する凹凸形状であり、この表面形状による充填性への影響を小さくできることがわかった。
<熱伝導率に関する実験>
次に、以下の表2に示す各サンプルを用い、熱伝導率及び粘度を測定した。表2に示すように、実施例では、メインフィラーとして、図2(a)~図2(c)に示す平均粒子径D50が、60、80、及び100μmのAlNフィラーを用いた。また、比較例では、メインフィラーとして、平均粒子径D50が60μmの平面状AlNフィラー、平均粒子径D50が80μmの平面状AlNフィラー、平均粒子径D50が100μmの平面状AlNフィラーを用いた。これら平面状AlNフィラーは、いずれも上記の<比較例のAlNフィラーについて>で説明した製造方法により製造されたものである。実施例及び比較例ともに、サブフィラーとして、平均粒子径D50が1μmのAlN小径フィラー(燃焼合成社製 AN-HF01LG-HT)、及び、平均粒子径D50が30μmのAlN中径フィラー(燃焼合成社製 AN-F30LG-HT)を用いた。
実験では、メインフィラーとサブフィラーとを、シリコーンオイル(信越化学工業社製 KF-96-20CS)に混合し、このとき、フィラーの充填量を70体積%或いは73体積%に固定した。また、実施例及び比較例ともに、小径サブフィラーを、フィラーの全質量中、25質量%に、中径サブフィラーを15質量%に固定した。
以下、表2には、実施例及び比較例における熱伝導率及び粘度を示す実験結果である。
Figure 2023050412000003
熱伝導率は、温度波測定法(ai-Phase)にて測定した。また、粘度は、B型粘度計を用いて25℃の粘度を測定した。
表2に示すように、実施例では、メインフィラーの平均粒子径D50、フィラー比率及びフィラー充填量が同じとなる実施例及び比較例で対比すると、全ての実施例は、対応する比較例に比べて熱伝導率が高いことがわかった。粘度に関し、実施例は、充填性に優れる平面状AlNフィラーを充填した比較例と同程度の値を示しており、充填性が高いことがわかった。
本実験では、メインフィラーの他に、中径サブフィラーを添加するが、図1(c)に示すように、中径のサブフィラーが、メインフィラー間に介在する際、本実施例では、凹凸形状の窪みの部分に入り込み接触点が複数点になるとともに、フィラー間距離を縮めることができ、熱抵抗の低減を図ることができ、熱伝導率を高めることができる。
一方、比較例では、メインフィラーである平面状AlNフィラーの間に、球状の中径サブフィラーが介在することで、メインフィラー間が本実施例よりも広がり、熱伝導率が低下する。以上により、実施例のように、フィラー表面が滑らかな凹凸形状のメインフィラーを用いることで、熱伝導率を効果的に高められることを確認することができた。
<組成分析について>
上記に挙げた焼結法により製造されたAlNフィラーのX線回折チャートと、燃焼合成法により製造されたAlNフィラーのX線回折チャートとを図5、6に示す。
燃焼合成法では、平均粒子径D50が15μmのAl粒子と、平均粒子径D50が30μmのAlNからなる希釈材とを用い、0.9MPaの窒素雰囲気の下にて合成を実施した。
得られた燃焼合成後の混合粉を、乳鉢やボールミルで軽く解砕した。解砕して得られたAlNフィラーを、篩にて分級を行い、平均粒子径D50が、60、80、及び100μmの粒度分布を得た。
図5に示すように、焼結法では、AlNと粒界成分(焼結助剤)であるYAM(YAl)との2相から構成されることがわかった。
一方、図6に示すように、燃焼合成法では、焼結助剤を使用しないため、AlN単相であり不純物を含まない高純度な組成物を得ることができた。
このように、X線回折チャートによる組成分析から、焼結法或いは燃焼合成法のいずれで製造されたかを予測することができる。
本発明の絶縁熱伝導性フィラーは、優れた熱伝導性と高い充填性とを併せ持ち、また安価に製造することが可能であり、樹脂封止材に使用される高熱伝導フィラー等に有用である。
2 サブフィラー
3 こぶ状突起
4 窪み
5 絶縁熱伝導性フィラー(メインフィラー)

Claims (9)

  1. 絶縁熱伝導性フィラーであって、
    平均粒子径D50が10μm~40μmの粒子が複数個、凝集してなることを特徴とする絶縁熱伝導性フィラー。
  2. SEMにて、10個の前記絶縁熱伝導性フィラーを抽出し、当該抽出した前記絶縁熱伝導性フィラー中、5個以上が、平均粒子径10μm~40μmの粒子を3個以上100個以下にて結合した凝集粒子であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁熱伝導性フィラー。
  3. 絶縁熱伝導性フィラーであって、
    フィラー表面に、複数のこぶ状突起が設けられており、前記こぶ状突起の曲率半径は、5μm~20μmであることを特徴とする絶縁熱伝導性フィラー。
  4. 前記絶縁熱伝導性フィラーの平均粒子径D50は、60μm~150μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに絶縁熱伝導性フィラー。
  5. 前記絶縁熱伝導性フィラーのタップ密度は、1.2(g/cc)~1.8(g/cc)であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の絶縁熱伝導性フィラー。
  6. 前記絶縁熱伝導性フィラーの比表面積は、0.08(m/g)~0.20(m/g)であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の絶縁熱伝導性フィラー。
  7. 前記絶縁熱伝導性フィラーは、AlNフィラーであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の絶縁熱伝導性フィラー。
  8. 平均粒子径D50が10μm~40μmの複数の粒子を、焼結して凝集させたことを特徴とする絶縁熱伝導性フィラーの製造方法。
  9. 平均粒子径D50が5μm~30μmのAl粒子と、平均粒子径D50が10μm~40μmのAlNからなる希釈材とを用い、窒素雰囲気下にて燃焼合成法で合成したことを特徴とする絶縁熱伝導性フィラーの製造方法。

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