JP2023050060A - モータの制御装置、モータの制御方法、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置 - Google Patents

モータの制御装置、モータの制御方法、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】運転者が感じ得る操舵感を改善することが可能な制御装置を提供する。【解決手段】モータの制御装置は、操舵トルクに基づいて動作し、モータである制御対象に入力を与えるトルク制御器210と、制御対象からの出力に基づいて補正トルクを生成し、制御対象の入力を補正トルクによって補正するモデルフォロイング制御器230Aと、を備える。モデルフォロイング制御器230Aは、第1カットオフ周波数を有するハイパスフィルタ233、および第1カットオフ周波数よりも大きい第2カットオフ周波数を有するローパスフィルタ232を含み、ローパスフィルタ232およびハイパスフィルタ233の伝達関数を、それぞれ、Q(s)およびHPF(s)とするとき、Q(s)・HPF(s)のゲイン特性におけるゲインが1である周波数帯域において、制御対象の伝達関数がノミナルモデルに拘束されるように構成されている。【選択図】図4

Description

本開示は、モータの制御装置、モータの制御方法、モータモジュールおよび電動パワーステアリング装置に関する。
一般の自動車は、電動モータ(以降、単に「モータ」と表記する。)およびモータの制御装置を備える電動パワーステアリング装置(EPS)を搭載している。電動パワーステアリング装置は、運転者のハンドル(またはステアリングホイール)操作を、モータを駆動することによりアシストする装置である。従来、トルク制御によって操舵トルクに応じたモータ出力が実現され、これにより、ハンドル操作のアシストが行われる。
特許文献1および2は、それぞれ、外乱オブザーバ制御に関する技術を開示している。特許文献1では、外乱または制御対象のパラメータ変動が操舵制御に与える影響を低減するためのロバスト制御器が用いられる。特許文献2では、サスペンション前後方向共振点で励起される共振点外乱を抑圧するために、外乱オブザーバで構成した共振点外乱制御器が用いられる。特許文献3は、操舵機構の内部摩擦によって生じる摩擦トルクを消去して、路面反力に応じた違和感のない適度な操舵反力を生成する技術を開示している。
特開平06-219310号公報 国際公開第2016/208665号 特開2005-88610号公報
運転者のハンドル操作のアシストを行うときに運転者が感じ得る操舵感を改善することが望まれる。
近年、自動車の快適性の評価に用いる1つの基準であるNVH(騒音・振動・ハッシュネス)に対する市場の要求がますます厳しくなってきている。しかし、従来のトルク制御は、とりわけ、高周波外乱の影響を受け易く、高周波のトルク変動を抑制できず、そのため、市場の要求に応えることが困難になりつつある。
従来、モータの角速度ωの関数とする摩擦モデルを構築し、構築したモデルを用いて摩擦補償制御が行われていた。しかし、一般的な摩擦特性において、モータの角速度ωがゼロとなる付近で急激に摩擦トルクの符号が反転することにより、チャタリングが起きやすいという課題があった。
本発明は上記の課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであり、モデルフォロイング制御および/または摩擦補償制御をトルク制御に適用することにより、運転者が感じ得る操舵感を改善することが可能なモータの制御装置、当該制御装置を備えるモータモジュール、当該モータモジュールを備える電動パワーステアリング装置、および、モータの制御方法を提供することを目的とする。
本開示の制御装置は、非限定的で例示的な実施形態において、モータを備える電動パワーステアリング装置に用いられる、前記モータを制御するための制御装置であって、操舵トルクに基づいて動作し、前記モータである制御対象に入力を与えるトルク制御器と、前記制御対象からの出力に基づいて補正トルクを生成し、前記制御対象の入力を前記補正トルクによって補正するモデルフォロイング制御器と、を備え、前記モデルフォロイング制御器は、第1カットオフ周波数を有するハイパスフィルタ、および前記第1カットオフ周波数よりも大きい第2カットオフ周波数を有するローパスフィルタを含み、前記ローパスフィルタおよび前記ハイパスフィルタの伝達関数を、それぞれ、Q(s)およびHPF(s)とするとき、Q(s)・HPF(s)のゲイン特性におけるゲインが1である周波数帯域において、前記制御対象の伝達関数がノミナルモデルに拘束されるように構成されている。
本開示のモータモジュールは、非限定的で例示的な実施形態において、モータと、上記の制御装置と、を備える。
本開示の電動パワーステアリング装置は、非限定的で例示的な実施形態において、上記のモータモジュールを備える。
本開示の制御方法は、非限定的で例示的な実施形態において、モータを備える電動パワーステアリング装置の前記モータを制御するための、コンピュータに実装される方法であって、操舵トルクを取得することと、前記操舵トルクに基づいて操作量を決定し、前記モータである制御対象に入力することと、第1カットオフ周波数を有するハイパスフィルタ、および前記第1カットオフ周波数よりも大きい第2カットオフ周波数を有するローパスフィルタを含むモデルフォロイング制御器であって、前記ローパスフィルタおよび前記ハイパスフィルタの伝達関数を、それぞれ、Q(s)およびHPF(s)とするとき、Q(s)・HPF(s)のゲイン特性におけるゲインが1である周波数帯域において、前記制御対象の伝達関数をノミナルモデルに拘束するモデルフォロイング制御器を用いて、前記制御対象からの出力に基づいて補正トルクを生成し、前記制御対象の入力を前記補正トルクによって補正することと、をコンピュータに実行させる。
本開示の例示的な実施形態によると、モデルフォロイング制御および/または摩擦補償制御をトルク制御に適用することにより、運転者が感じ得る操舵感を改善することが可能なモータの制御装置、当該制御装置を備えるモータモジュール、当該モータモジュールを備える電動パワーステアリング装置、および、モータの制御方法が提供される。
図1は、本開示の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成例を模式的に示す図である。 図2は、本開示の実施形態に係る制御装置の構成の典型例を示すブロック図である。 図3は、本開示の実施形態に係るモータの制御を行うためのプロセッサの機能を例示する機能ブロック図である。 図4は、第1の実装例におけるモデルフォロイング制御器の構成例を示す機能ブロック図である。 図5は、Q(s)・HPF(s)のゲイン特性T(s)、および、プラントとノミナルモデルP(s)とのモデル化誤差Δ(s)の逆数のゲイン特性を例示するグラフである。 図6は、トルク制御器における位相補償器の伝達関数C(s)のゲイン線図を例示するグラフである。 図7は、ハイパスフィルタの伝達関数HPF(s)のゲイン線図を例示するグラフである。 図8は、ノミナルモデルP(s)のゲイン線図を例示するグラフである。 図9は、モデルフォロイング制御を適用しない場合の操舵角およびトーショントルクの測定結果を示すグラフである。 図10は、モデルフォロイング制御を適用した場合の操舵角およびトーショントルクの測定結果を示すグラフである。 図11は、モデルフォロイング制御を適用しない場合、および、モデルフォロイング制御を適用した場合のそれぞれの操舵角の時間変化の測定結果を示すグラフである。 図12は、第2の実装例におけるモデルフォロイング制御器の構成例を示す機能ブロック図である。 図13は、摩擦補償制御を適用しない場合、および、摩擦補償制御を適用する場合の操舵角および操舵トルクのシミュレーション結果を示すグラフである。 図14は、従来の摩擦補償制御を適用した場合、および、第2の実装例による摩擦補償制御を適用した場合の操舵角および操舵トルクのシミュレーション結果を示すグラフである。
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の電動パワーステアリング装置に搭載されるモータの制御装置、モータの制御方法、当該制御装置を備えるモータモジュール、および、当該モータモジュールを備える電動パワーステアリング装置の実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
以下の実施形態は、例示であり、本開示による電動パワーステアリング装置に搭載されるモータの制御装置、モータの制御方法は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、ステップ、そのステップの順序等は、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。以下に説明する実施形態または実施例は、あくまでも例示であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の組み合わせが可能である。
[1.電動パワーステアリング装置1000の構成]
図1に、本開示の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1000の構成例を模式的に示す。
電動パワーステアリング装置1000(以降、「EPS」と表記する。)は、ステアリングシステム520、および補助トルクを生成する補助トルク機構540を有する。EPS1000は、運転者がハンドルを操作することによって発生するステアリングシステムの操舵トルクを補助する補助トルクを生成する。補助トルクにより、運転者の操作の負担が軽減される。
ステアリングシステム520は、例えば、ハンドル521、ステアリングシャフト522、自在軸継手523A、523B、回転軸524、ラックアンドピニオン機構525、ラック軸526、左右のボールジョイント552A、552B、タイロッド527A、527B、ナックル528A、528B、および左右の操舵車輪529A、529Bを備える。
補助トルク機構540は、例えば、操舵トルクセンサ541、舵角センサ542、自動車用電子制御ユニット(ECU)100、モータ543、減速ギア544、インバータ545およびトーションバー546を備える。操舵トルクセンサ541は、トーションバー546の捩じれ量を検出することにより、ステアリングシステム520における操舵トルクを検出する。舵角センサ542は、ハンドルの操舵角を検出する。なお、操舵トルクは、操舵トルクセンサの値ではなく、演算より導出される推定値であってもよい。操舵角は角度センサの出力値に基づいて演算することも可能である。
ECU100は、操舵トルクセンサ541、舵角センサ542、車両に搭載された車速センサ(不図示)などによって検出される検出信号に基づいてモータ駆動信号を生成し、インバータ545に出力する。例えば、インバータ545は、直流電力を、U相、V相およびW相の擬似正弦波である三相交流電力にモータ駆動信号に従って変換し、モータ543に供給する。モータ543は、例えば表面磁石型同期モータ(SPMSM)またはスイッチトリラクタンスモータ(SRM)であり、三相交流電力の供給を受けて操舵トルクに応じた補助トルクを生成する。モータ543は、減速ギア544を介してステアリングシステム520に生成した補助トルクを伝達する。以降、ECU100を、EPSの制御装置100と記載することとする。
制御装置100とモータとはモジュール化され、モータモジュールとして製造および販売される。モータモジュールはモータおよび制御装置100を備え、EPSに好適に利用される。または、制御装置100は、モータとは独立して、EPSを制御するための制御装置として製造および販売され得る。
[2.制御装置100の構成例]
図2に、本開示の実施形態に係る制御装置100の構成の典型例を示す。制御装置100は、例えば、電源回路111と、角度センサ112と、入力回路113と、通信I/F114と、駆動回路115と、ROM116と、プロセッサ200とを備える。制御装置100は、それらの電子部品を実装したプリント配線基板(PCB)として実現され得る。制御装置100は、モータを備える電動パワーステアリング装置のモータを制御するために用いられる。
車両に搭載された車速センサ300、操舵トルクセンサ541および舵角センサ542が、プロセッサ200に通信可能に接続され、車速センサ300、操舵トルクセンサ541および舵角センサ542からプロセッサ200に、それぞれ、車速、操舵トルクおよび操舵角が送信される。
制御装置100は、インバータ545(図1を参照)に電気的に接続される。制御装置100は、インバータ545が有する複数のスイッチ素子(例えばMOSFET)のスイッチング動作を制御する。具体的には、制御装置100は、各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御信号(以降、「ゲート制御信号」と表記する。)を生成してインバータ545に出力する。
制御装置100は、操舵トルクなどに基づいてトルク指令値を生成し、例えばベクトル制御によってモータ543のトルクおよび回転速度を制御する。制御装置100は、ベクトル制御に限らず、他のクローズドループ制御を行い得る。回転速度は、単位時間(例えば1分間)にロータが回転する回転数(rpm)または単位時間(例えば1秒間)にロータが回転する回転数(rps)で表される。ベクトル制御は、モータに流れる電流を、トルクの発生に寄与する電流成分と、磁束の発生に寄与する電流成分とに分解し、互いに直交する各電流成分を独立に制御する方法である。
電源回路111は、外部電源(不図示)に接続されており、回路内の各ブロックに必要なDC電圧を生成する。生成されるDC電圧は例えば3Vまたは5Vである。
角度センサ112は、例えばレゾルバまたはホールICである。または、角度センサ112は、磁気抵抗(MR)素子を有するMRセンサとセンサマグネットとの組み合わせによっても実現される。角度センサ112は、ロータの回転角を検出してプロセッサ200に出力する。制御装置100は、角度センサ112の代わりに、モータの回転速度、加速度を検出する速度センサ、加速度センサを備え得る。プロセッサ200は、モータの電気角θに基づいて角速度ω[rad/s]を演算することができる。
入力回路113は、電流センサ(不図示)によって検出されたモータ電流値(以下、「実電流値」と表記する。)を受け取って、実電流値のレベルをプロセッサ200の入力レベルに必要に応じて変換し、実電流値をプロセッサ200に出力する。入力回路113の典型例は、アナログデジタル変換回路である。
プロセッサ200は、半導体集積回路であり、中央演算処理装置(CPU)またはマイクロプロセッサとも称される。プロセッサ200は、ROM116に格納された、モータ駆動を制御するための命令群を記述したコンピュータプログラムを逐次実行し、所望の処理を実現する。制御装置100は、プロセッサ200に加えてまたは代えて、CPUを搭載したFPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ASSP(Application Specific Standard Product)、または、これら回路の中から選択される2つ以上の回路の組み合わせを有し得る。プロセッサ200は、実電流値およびロータの回転角などに従って電流指令値を設定してPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成し、駆動回路115に出力する。
通信I/F114は、例えば、車載のコントロールエリアネットワーク(CAN)に準拠してデータの送受信を行うための入出力インタフェースである。
駆動回路115は、典型的にはゲートドライバ(またはプリドライバ)である。駆動回路115は、ゲート制御信号をPWM信号に従って生成し、インバータ545が有する複数のスイッチ素子のゲートにゲート制御信号を与える。駆動対象が低電圧で駆動可能なモータであるとき、ゲートドライバは必ずしも必要とされない場合がある。その場合、ゲートドライバの機能は、プロセッサ200に実装され得る。
ROM116は、プロセッサ200に電気的に接続される。ROM116は、例えば書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ、EEPROM)または読み出し専用のメモリである。ROM116は、プロセッサ200にモータ駆動を制御させるための命令群を含む制御プログラムを格納している。例えば、制御プログラムはブート時にRAM(不図示)に一旦展開される。
図3に、本開示の実施形態に係るモータの制御を行うためのプロセッサ200の機能ブロックを示す。図示される実装例において、コンピュータであるプロセッサ200は、トルク制御器、モデルフォロイング制御器、減算器、および加算器を用いてモータの制御に必要な処理(またはタスク)を逐次実行する。
各機能ブロックは、ソフトウェア(またはファームウェア)および/またはハードウェアとしてプロセッサ200に実装される。各機能ブロックの処理は、典型的に、ソフトウェアのモジュール単位でコンピュータプログラムに記述され、ROM116に格納される。ただし、FPGAなどを用いる場合、これらの機能ブロックの全部または一部は、ハードウェア・アクセラレータとして実装され得る。また、本開示の実施形態によるモータの制御方法は、コンピュータに実装され、コンピュータに所望の動作を実行させることによって実施され得る。
制御装置100は、トルク制御器210、モデルフォロイング制御器230、減算器AD1および加算器AD2を備える。言い換えると、プロセッサ200に、トルク制御器210、モデルフォロイング制御器230、減算器AD1および加算器AD2のそれぞれに対応した機能が実装される。
トルク制御器210は、操舵トルクTに基づいて動作し、モータである制御対象220に入力を与える。例えば、操舵トルクセンサ541によって検出された操舵トルクTがトルク制御器210に入力する。トルク制御器210は、操舵周波数または操舵速が所定範囲内にあるときに操舵トルクTに位相補償を適用することによって目標モータトルク(またはトルク指令値)Trefを生成し、制御対象220に入力する。
図3に例示されるトルク制御器210は、ベースアシスト演算部211および位相補償器212を有する。
ベースアシスト演算部211は、操舵トルクTおよび車速を取得する。ベースアシスト演算部211は、操舵トルクTおよび車速に基づいてベースアシストトルクを生成する。例えば、ベースアシスト演算部211は、操舵トルクT、車速と、ベースアシストトルクとの対応を規定するルックアップテーブル(LUT)を有し得る。ベースアシスト演算部211は、LUTを参照して、操舵トルクTおよび車速に基づいて、対応関係にあるベースアシストトルクを決定することができる。さらに、ベースアシスト演算部211は、操舵トルクTの変動量に対するベースアシストトルクの変化量の比率によって規定される傾きに基づいてベースアシストゲインを決定することができる。
本開示の実施形態における位相補償器212は、運転者がハンドルを操作するときに操舵周波数が取り得る範囲内においてアシストゲインを調整し、トーションバーの剛性を補償する。本開示の実施形態において、上記の所定範囲の例は5Hz以下である。位相補償器212は、操舵周波数が5Hz以下であるときに操舵トルク(トーショントルク)に例えば1次の位相補償を適用してもよい。1次の位相補償は、例えば数1の数式の伝達関数によって表される。
Figure 2023050060000002
ここで、sはラプラス変換子であり、fは伝達関数のゼロ点の周波数(Hz)であり、fは伝達関数の極の周波数(Hz)である。ゲイン(またはループゲイン)を縦軸にとり、周波数の対数を横軸にとったグラフはゲイン線図と呼ばれる。ゲイン線図において、ゼロ点は、ゲインカーブと0dBを示す横軸との交点を意味し、極はゲインカーブの極大点を意味する。例えば、極の周波数を零点よりも大きくすることで位相進み補償を適用することができる。その周波数の間隔が大きいほど、位相進み量が多くなる。
位相補償器212は、ベースアシスト演算部211から出力されるベースアシストトルクおよびベースアシストゲインに基づいて目標モータトルクTrefを生成する。例えば、位相補償器212は安定化補償器であり、ベースアシストトルクに安定性位相補償を適用することができる。位相補償器212は、ベースアシストゲインに応じて周波数特性が可変である2次以上の伝達関数を有し得る。2次以上の伝達関数は、応答性のパラメータωおよびダンピングのパラメータζを用いて表される。2次以上の伝達関数は、例えば数2の数式によって表すことができる。伝達関数の次数を2次とすることで伝達関数の特性にダンピングを与えることができる。ダンピングを変えることで位相特性を調整することが可能となる。
Figure 2023050060000003
ここで、sはラプラス変換子であり、ωはゼロ点の周波数であり、ωは極の周波数であり、ζはゼロ点のダンピングであり、ζは極のダンピングである。極の周波数ωはゼロ点の周波数ωよりも小さい。
モデルフォロイング制御器230は、制御対象220からの出力であるモータの角速度ω(MR角速度)に基づいて外乱トルクを推定し、推定外乱トルクを算出して制御対象220の入力にフィードバックするように構成される。モデルフォロイング制御器230から制御対象220の入力にフィードバックされるトルクは、制御対象220の入力を補正する「補正トルク」に相当する。モデルフォロイング制御器230は、制御対象220の出力に基づいて当該補正トルクを生成する。モデルフォロイング制御器230の例は、モデルフォロイング制御を行うように構成されたモデルフォロイング制御器である。モデルフォロイング制御器230の具体的な構成については後で詳細に説明する。
減算器AD1は、目標モータトルクTrefから、モデルフォロイング制御器230から出力される推定外乱トルクを減算する。減算器AD1からの出力は、加算器AD2とモデルフォロイング制御器230とに入力される。加算器AD2は、減算器AD1からの出力に外乱トルクTを加算して制御対象220に出力する。ここで、本開示の実施形態における外乱の例は、モータ、減速ギアなどのメカに起因する摩擦、トルクリップルもしくはガタつき、セルフアライニングトルク、または、舗装されていないガタガタ道もしくは砂利道などを走行したときに生じ得る外乱である。ここで、セルフアライニングトルクは、ハンドルを切るときに捩じれるタイヤの弾性によってハンドルが戻る方向に働くトルクを意味する。
[第1の実装例]
モデルフォロイング制御器は、逆プラントモデル、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタ(またはQフィルタ)を有する。モデルフォロイング制御器は、ローパスフィルタおよびハイパスフィルタの伝達関数を、それぞれ、Q(s)およびHPF(s)とするとき、Q(s)・HPF(s)のゲイン特性におけるゲインが1である周波数帯域において、制御対象の伝達関数P(s)がノミナルモデルP(s)に拘束されるように構成されている。なお、本明細書において「制御対象の伝達関数がノミナルモデルに拘束される」とは、例えば、入出力関係を見たときに、制御対象の伝達関数が、見かけ上、ノミナルモデルの伝達関数に見えるように制御対象が制御されることを意味する。
図4に、第1の実装例におけるモデルフォロイング制御器230Aの構成例を示す。モデルフォロイング制御器230Aは、制御対象逆モデル231、ローパスフィルタ232、ハイパスフィルタ233および減算器SU1を有する。ハイパスフィルタ233は第1カットオフ周波数を有し、ローパスフィルタ232は第2カットオフ周波数を有する。
制御対象逆モデル231にモータの角速度ωが入力される。減算器SU1は、制御対象逆モデル231の出力から減算器AD1の出力を差し引いて推定外乱トルク^Tを生成する。推定外乱トルク^Tは、直列結合されたローパスフィルタ232およびハイパスフィルタ233によるフィルタ処理をこの順番で受け、減算器AD1に入力される。このように、モデルフォロイング制御器230Aは、推定外乱トルク^Tを制御対象220の入力にフィードバックする。なお、「^T」は、図4および図12に示すハット付きのTを意味する。
モデルフォロイング制御器230Aは、制御対象220であるモータの角速度ωを電流制御のアウターループに用いるフィードバックループを意味するモデルフォロイング制御を実行する。第1の実装例では、モデルフォロイング制御器230Aが形成するフィードバックループによって、角速度ωに依存するトルクリップルの補償を行うことが可能である。制御に用いる角速度ωの信号をモータの種別ごと補正することが可能であり、電流信号などに比べ角速度ωの信号の精度を高めることができる。その結果、精度の高いトルクリップルの補償をトルク制御に適用することが可能となる。
モデルフォロイング制御器230Aは、従来の外乱推定器(または外乱オブザーバ)と構成的には類似するが、狙う作用・効果が異なる。従来の外乱推定器は、逆プラントモデルをプラントモデルに近い値に選定することによって外乱トルクを推定し、予め外乱トルクを加減することで外乱の影響を低減する。この補償対象としている周波数帯域は、車両挙動で取り得る4Hz以下の低い周波数である。
本開示の実施形態によるモデルフォロイング制御は、フィードバックループによってプラントが逆プラントモデルで定義するノミナルモデルに拘束される効果を活用する。補償対象となり得る周波数帯域は、4Hzから150Hz程度であり、従来の外乱推定器の周波数帯域と異なる。例えば、トルクリップルが無いように逆プラントモデルを定義すれば、モデルフォロイング制御によって、プラントモデルはトルクリップルの無い特性に拘束され、その結果、トルクリップルの補償を適用することにより、トルクリップルを低減することが可能となる。その他にも慣性または粘性のモデルを構築し、そのモデルにプラントモデルを拘束することでプラントモデルの低慣性化または低粘性化を実現し得る。モデルフォロイング制御を実行することにより、モータのトルクリップルの補償に加え、例えばロストルク補償またはモータ慣性補償が行われる。
本明細書において、制御対象220、制御対象220を拘束するために用いるノミナルモデル(またはプラントモデル)、当該プラントモデルの逆プラントモデルで定義される制御対象逆モデル231、ローパスフィルタ232の伝達関数、およびハイパスフィルタ233の伝達関数を、それぞれ、P(s)、P(s)、P -1(s)、Q(s)およびHPF(s)と記載する。
プラントモデル(ノミナルモデル)は数3の数式で表され、逆プラントモデルは数4の数式で表される。JmnおよびBmnを適切に設定することによって、制御対象220のP(s)に所望の周波数特性を付与することができる。本実施形態においてプラントモデル(ノミナルモデル)は、1慣性系のモデルである。
Figure 2023050060000004
Figure 2023050060000005
モデルフォロイング制御器で構成されるインナーループの相補感度関数をT(s)とし、プラントモデルのモデル化誤差をΔ(s)とする。T(s)はQ(s)HPF(s)で表され、Δ(s)に関して、数5に示す関係が成り立つ。モデルフォロイング制御器のロバスト安定性は、T(s)とΔ(s)との間に数6の数式で示すスモールゲイン定理が成立するときに保証される。外乱抑制のためにはT(s)=1であればよいが、ロバスト安定性を考慮すると、数6の数式を満たす必要がある。このことから理解されるように、外乱抑制とロバスト安定性とは両立しない。
Figure 2023050060000006
Figure 2023050060000007
図5に、ステアリング系全体の伝達関数のゲイン線図を例示する。ゲイン線図における横軸は周波数〔Hz〕を示し、縦軸はゲイン〔dB〕を示す。第1の実装例では、周波数帯域によって外乱抑制を実現するために、周波数帯域を、T(s)=1となる、外乱抑制が必要な領域Iと、ロバスト安定性を確保するためにT(s)を下げる領域IIとに区分する。領域IIにおいて、1/Δ(s)>T(s)が成り立つ。
ステアリング系全体の伝達関数のゲイン特性は、例えば20Hz付近と50Hz付近とにピークを有し、モデル化誤差は、2つのピークのうちの50Hz付近のピークに現れる。すなわち、Δ(s)は50Hz付近にピークを有し、図5に示す1/Δ(s)は50Hz付近にボトムを有する。ゲイン特性の調整方法として、1/Δ(s)の調整、およびT(s)の折れ点の調整がある。1/Δ(s)の調整は、プラントモデルのJmnおよびBmnを調整することで行われ、T(s)の折れ点の調整は、ローパスフィルタ232の第2カットオフ周波数を調整することで行われる。さらに、操舵のアシスト量、操舵速または車速によって外乱に対する感度は調整され得る。モデル化誤差のボトムの周波数が、領域Iと領域IIとの境界の周波数に近い場合、対策として、ローパスフィルタ232の次数を上げて、外乱抑圧が必要な領域IおけるT(s)を急峻に立ち下げる方法がしばしば採用される。
制御装置100は、低周波のトルク信号に対してはトルク制御を行い、かつ、高周波の外乱に対しては角速度ω≒0となる制御を行うことによって、ハンドルが取られないように操舵の安定化を実現する。この目的を達成するために、制御装置100は、トルク制御器210を用いてトルク制御の高周波ゲインを下げること、および、モデルフォロイング制御器230Aを用いて、制御対象P(s)を高周波ゲインが下がる特性に拘束することを実行する。後者の処理を行う理由は、図4に示すTdのような外乱が制御対象220に入力されたときに制御対象220がその外乱に反応しないようにするためである。
図6に、トルク制御器210における位相補償器212の伝達関数C(s)のゲイン線図を例示する。図7に、ハイパスフィルタ233の伝達関数HPF(s)のゲイン線図を例示する。図8に、ノミナルモデルP(s)のゲイン線図を例示する。ゲイン線図における横軸は周波数〔Hz〕を示し、縦軸はゲイン〔dB〕を示す。例えば、図6に示す伝達関数C(s)のゲイン特性を有する位相補償器212を適用すれば、図8に示すように、ノミナルモデルP(s)のゲイン特性において高周波ゲインを下げることができる。伝達関数C(s)のゲイン線図におけるカットオフ周波数fcは、例えば2Hz以上10Hz以下であり、P(s)のゲイン線図におけるカットオフ周波数fcは、例えば2Hz以上20Hz以下である。
モデルフォロイング制御器230Aは、Q(s)・HPF(s)のゲイン特性におけるゲインが1である周波数帯域において、制御対象220の伝達関数P(s)がノミナルモデルP(s)に拘束されるように構成されている。逆プラントモデルP -1(s)は、拘束したい逆特性を与え、Q(s)・HPF(s)のゲイン特性を活かすように設計される。プラントモデルのJmnおよびBmnを適切に設計することによって、図8に示すように、高周波領域においてゲインが下がるノミナルモデルP(s)のゲイン特性が得られる。領域Iと領域IIとの境界の周波数(領域Iを規定する周波数範囲の下限値)は、運転者によって入力され得る最大周波数であり、一般に2Hzから10Hz程度である。この周波数は、ハイパスフィルタ233の第1カットオフ周波数に依存する。そのため、モデルフォロイング制御の有効範囲の下限周波数は、トルク制御を阻害しないように、ハイパスフィルタ233の第1カットオフ周波数を調整することによって決定される。
ローパスフィルタ232とハイパスフィルタ233とは直列結合されている。ローパスフィルタ232は多段のLPFから構成され得る。つまり、Q(s)はn段LPF(nは1以上)の伝達関数として表され得る。第2カットオフ周波数は、第1カットオフ周波数よりも大きい。第1カットオフ周波数は、例えば2Hz以上10Hz以下であり、例えば5Hz以上7Hz以下であることが好ましい。第2カットオフ周波数は、例えば3Hz以上であり、好ましくは50Hz以下である。ただし、第2カットオフ周波数の上限は140Hzから200Hz程度に設定され得る。図8に示すノミナルモデルP(s)のゲイン特性のカットオフ周波数fcは、第1カットオフ周波数と第2カットオフ周波数とに依存し、例えば2Hz以上20Hz以下である。
本発明者等は、本開示の実施形態によるモデルフォロイング制御を適用して得られる効果を、実車測定を行うことで確認した。実車測定において、モデルフォロイング制御をトルク制御に適用することによる、トルクリップルおよびハンドルの取られを低減する効果を測定した。ここで、ハンドルの取られとは、手放しの状態で段差を乗り越えたときにハンドルが左右に振れることを意味する。
図9に、モデルフォロイング制御を適用しない場合の操舵角およびトーショントルクの測定結果を示す。図10に、モデルフォロイング制御を適用した場合の操舵角およびトーショントルクの測定結果を示す。グラフにおいて、横軸は操舵角〔deg〕を示し、縦軸はトーショントルク〔Nm〕を示す。グラフは、端から端まで(ハンドルを左一杯に切った状態から右一杯に切った状態、またはその逆)角速度180〔deg/s〕で操舵した時に計測された波形を示している。
モデルフォロイング制御を適用しない場合と比較して、モデルフォロイング制御を適用した場合、グラフの一点鎖線で囲う部分を拡大してみると、トルクリップルを抑制できていることがわかった。具体的には、トーショントルクの変動量が0.1[Nm]程度減少することがわかった。
図11に、モデルフォロイング制御を適用しない場合、および、モデルフォロイング制御を適用した場合のそれぞれの操舵角の時間変化の測定結果を示す。グラフにおいて、横軸は時間[sec]を示し、縦軸は操舵角[deg]を示す。車両が段差を乗り越えた時間の領域を破線の矩形で示している。モデルフォロイング制御をトルク制御に適用することによって、車両が段差を乗り越えたときの操舵角の変動が抑制され、ハンドルの取られを適切に低減できていることがわかった。
第1の実装例によれば、モデルフォロイング制御をトルク制御に適用することによって、外乱の高周波成分を低減することが可能となる。その結果、操舵するときに生じ得るトルクリップル、および、段差を車両が乗り越えるときに生じ得るハンドルの取られを適切に低減することが可能となる。
[第2の実装例]
次に、図12から図14を参照して、第2の実装例によるモデルフォロイング制御器を説明する。第2の実装例によるモデルフォロイング制御器は、摩擦補償算出器を有する点で、第1の実装例によるモデルフォロイング制御器と異なる。以下、第1の実装例によるモデルフォロイング制御器との差異点を主に説明する。
モデルフォロイング制御器が推定する外乱には、モータ、減速ギアなどのメカの摩擦が含まれるため、第2の実装例によるモデルフォロイング制御器は、推定外乱トルクから摩擦成分を取り出し、摩擦補償を推定外乱トルクに適用するように構成されている。摩擦補償の対象は、例えばモータの摩擦、減速ギアの摩擦または減速ギアの摩擦左右差である。
従来の摩擦補償制御を適用しようとすると、モータの角速度ωがゼロ付近では、チャタリング防止のためにモータの角速度ωに対する摩擦補償トルク(Nm)の変化を緩やかにせざるを得なくなり、結果として、高精度な摩擦補償制御が行えない場合があった。発明者の検討によれば、この課題を解決するためには、摩擦を逐次推定し、補償することが望ましい。
第2の実装例によるモデルフォロイング制御器は、外乱補償トルクを制御対象の入力にフィードバックするように構成されている。モデルフォロイング制御器は、具体的には、推定外乱トルクから低周波成分を除去するハイパスフィルタと、ハイパスフィルタに並列結合され、推定外乱トルクに摩擦補償を適用してメカの摩擦トルクの推定値を算出する摩擦補償算出器と、ハイパスフィルタによって低周波成分が除去された推定外乱トルクに、摩擦トルクの推定値を加算し、外乱補償トルクを生成する加算器とを有する。第2の実装例において、推定外乱トルクは「第1補正トルク」に相当し、外乱補償トルクは「第2補正トルク」に相当する。
図12に、第2の実装例におけるモデルフォロイング制御器230Bの構成例を示す。モデルフォロイング制御器230Bは、第1の実装例によるモデルフォロイング制御器230Aと同様にモデルフォロイング制御を行うように構成されている。ただし、モデルフォロイング制御の機能は必須でない。
モデルフォロイング制御器230Bは摩擦補償算出器250を有する。摩擦補償算出器250は、ハイパスフィルタ233に並列結合され、推定外乱トルク^Tに摩擦補償を適用してメカの摩擦トルクの推定値を算出する。摩擦補償算出器250は、減算器251、リミッタ252およびゲイン調整器253を有する。減算器251は、ローパスフィルタ232からの出力値からハイパスフィルタ233からの出力値を差し引く。リミッタ252は、減算器251からの出力値に制限をかける。リミッタ252は、入力値が上限または下限の閾値を越える場合、入力値を上限または下限の閾値にクリップする。
ゲイン調整器253はリミッタ252からの出力値にゲインKをかける。制御対象220の伝達関数がノミナルモデルに拘束される条件下でゲイン調整器253のゲインKの最大値は決定される。ゲインKの最大値は、例えば1から1.2程度に設定される。
推定外乱トルク^Tにはメカの摩擦が含まれる。外乱の推定において、モータの出力トルクの伝達経路から、先ず摩擦が推定され、次に、セルフアライニングトルクなどのモータに働くトルクが推定される。このため、摩擦補償算出器250は、最初に推定した外乱のうちの摩擦トルクに相当する値を摩擦トルクの推定値として算出する。一般に、適度な摩擦がEPSに必要とされるために、実際に働く摩擦力よりも小さい値を摩擦トルクの推定値とすることによって、適度な摩擦力を残しつつ、高精度な摩擦補償を実現することが可能となる。
モデルフォロイング制御に用いる推定外乱トルクに摩擦補償を適用するために、モデルフォロイング制御の安定性条件に留意する必要がある。この条件は、上述したスモールゲイン定理より、安定性を考慮した特性に拘束した摩擦補償算出器250の伝達関数のゲイン特性におけるゲインが1を越えないことである。これは、ローパスフィルタ232の設計条件から導かれる。第2の実装例ではこの条件を常に満足するように摩擦補償ゲイン、つまりゲインKの値を最大1とし、かつ、この条件下でゲイン特性におけるゲインが1となるようにリミッタ252の前段に減算器251を設けて減算処理を適用している。言い換えると、摩擦補償算出器250は、1-HPF(s)の伝達関数を有するローパスフィルタとして振る舞う。
推定外乱トルク^Tは、低周波成分^Td1、中周波成分^Td2、および高周波成分^Td3を含む。ローパスフィルタ232は、推定外乱トルク^Tから高周波成分^Td3を除去し、ハイパスフィルタ233は、さらに、推定外乱トルク^Tから低周波成分^Td1を除去する。このように、ハイパスフィルタ233の第1カットオフ周波数以上ローパスフィルタ232の第2カットオフ周波数以下の範囲にある推定外乱トルクの中周波成分^Td2だけが摩擦補償の対象となる。ただし、外乱に含まれる想定される摩擦は外乱のうちの低周波成分であるために、上記のフィルタ処理によると、低周波成分^Td1は摩擦補償の対象外となってしまう。そこで、摩擦補償算出器250をハイパスフィルタ233に並列結合することによって、ハイパスフィルタ233によるフィルタ処理を受け補償されなくなった外乱の低周波成分^Td1を推定外乱トルク^Tに再度加え、摩擦補償を実現している。より詳細には、摩擦補償算出器250において低周波成分^Td1にゲインKを乗じた値を中周波成分^Td2に加算することによって、外乱補償トルクが生成される。なお、「^Td1」は図12に示すハット付きのTd1を意味し、「^Td2」は図12に示すハット付きのTd2を意味し、「^Td3」は図12に示すハット付きのTd3を意味する。
EPSを搭載する車両は、自動運転モードおよび手動運転モードを有する走行モードに従って走行することが可能である。この場合、ゲイン調整器253のゲインKは、走行モードに応じて切り替えるようにしてもよい。ゲインKが大きいほど、摩擦の低減の程度が大きくなる。自動運転モード時に設定されるゲインKは、手動運転モード時に設定されるゲインKよりも大きいことが好ましい。これにより、摩擦の低減がより求められる自動運転モードに最適な摩擦補償を適用することができる。
モデルフォロイング制御器230Bは加算器AD3をさらに有する。加算器AD3は、ハイパスフィルタ233からの出力値に、ゲイン調整器からの出力値を加算する。加算器AD3からの出力は、外乱補償トルクとして制御対象220の入力にフィードバックされる。
高速道路を走行するときなどに白線または黄線などの車線を認識し、車線に追従した車両の自動走行をアシストする補助装置が開発されている。EPSおよび補助装置を搭載した車両において、減速ギアの摩擦に左右差があると、車線の中心に沿って車両を直進走行させる補助装置の制御に影響が及び得ることが知られている。本開示の実施形態による摩擦補償制御によれば、減速ギアの摩擦に左右差がある場合であっても、逐次摩擦トルクの推定値を算出することができるために、上記の課題を解決することが可能となる。なお、プラントモデルの出力であるモータの角速度ωは、減速ギアの摩擦の左右差に関する情報を含んでいる。
本発明者等は、ゲイン調整による摩擦補償制御を適用して得られる効果を、シミュレーションを行うことで確認した。シミュレーションによって、摩擦補償制御による摩擦の低減効果を測定した。
図13に、ゲイン調整による摩擦補償制御を適用しない場合、および、ゲイン調整による摩擦補償制御を適用する場合の操舵角および操舵トルクのシミュレーション結果を示す。グラフにおいて、横軸は操舵角[deg]を示し、縦軸は操舵トルク[Nm]を示す。破線で示すグラフは、摩擦補償制御を適用しない場合の波形を示し、実線で示すグラフは、摩擦補償制御を適用した場合の波形を示している。図中の矢印は操舵トルクの幅を表し、その幅が摩擦の大きさに相当する。摩擦補償制御を適用することによって摩擦を適切に低減できることが分かった。
図14に、従来の摩擦補償制御を適用した場合、および、ゲイン調整による摩擦補償制御を適用した場合の操舵角および操舵トルクのシミュレーション結果を示す。グラフにおいて、横軸は操舵角[deg]を示し、縦軸は操舵トルク[Nm]を示す。破線で示すグラフは、従来の摩擦補償制御を適用した場合の波形を示し、実線で示すグラフは、ゲイン調整による摩擦補償制御を適用した場合の波形を示している。従来の摩擦補償制御によれば、上述したように、モータの角速度ωがゼロ付近では、チャタリング防止のためにモータの角速度ωに対する摩擦補償トルク(Nm)の変化を緩やかにせざるを得なくなる。これに起因して、ハンドルを切り返すときに(図中の破線の丸で囲む部分を参照)、操舵トルクにスパイクが確認された。これに対し、ゲイン調整による摩擦補償制御を適用した場合には、スパイクは確認されず、摩擦が適切に低減できていることがわかった。
第2の実装例によれば、ゲイン調整による摩擦補償制御をトルク制御にさらに適用することによって、外乱の高周波成分を低減しつつ、摩擦を適切に低減することが可能となる。
[第3の実装例]
第3の実装例において制御対象は、ハンドル521と自在軸継手523A,523Bと回転軸524とトーションバー546とモータ543と減速ギア544とを有する。第3の実装例における制御対象はトーションバー546を介して互いに相対回転可能な部分を含んでいるため、制御対象の運動は、単純な1慣性系の運動方程式のみでは記述できない。第3の実装例における制御対象は、車両の運転者がハンドル521を握る強さによって、1慣性系と2慣性系との間で変化する。運転者がハンドル521を強く握るほど、制御対象は、1慣性系に近くなる。運転者がハンドルを弱く握るほど、制御対象は、2慣性系に近くなる。第3の実装例において、モデルフォロイング制御器には、制御対象の出力として、減速ギア544の角速度に相当する角速度が入力される。
第3の実装例では、プラントモデル(ノミナルモデル)を1慣性系と2慣性系との間の周波数特性を有するモデルとする。第3の実装例におけるプラントモデル(ノミナルモデル)の伝達関数P(s)は数7の数式で表され、逆プラントモデルの伝達関数P -1(s)は数8の数式で表される。
Figure 2023050060000008
Figure 2023050060000009
数7の数式および数8の数式において、sはラプラス変換子であり、JSTGnはノミナルモデルの慣性モーメントを表すパラメータであり、BSTGnはノミナルモデルの粘性摩擦係数を表すパラメータであり、ω1nは伝達関数P(s)のゼロ点の周波数であり、ω2nは伝達関数P(s)の極の周波数であり、ζ1nは伝達関数P(s)のゼロ点における減衰比であり、ζ2nは伝達関数P(s)の極における減衰比である。
第3の実装例においてノミナルモデルは、1慣性系と2慣性系との間の周波数特性を有するモデルである。上記のノミナルモデルの伝達関数P(s)を表す数7の数式は、2慣性系を表す式に減衰項を加えた式である。数7の数式において減衰項は、2ζ1nω1nsおよび2ζ2nω2nsである。これらの減衰項を数7の数式から除いた式が、2慣性系を表す式となる。第3の実装例においてノミナルモデルの伝達関数P(s)の次数は、3である。
第3の実装例においてノミナルモデルは、運転者(操舵者)がハンドル521を操舵する際の機械特性が考慮されたモデルである。制御対象は、運転者がハンドル521を強く握るほど1慣性系に近づき、運転者がハンドル521を弱く握るほど2慣性系に近づく。そのため、第3の実装例における制御対象の伝達関数P(s)は、運転者の腕からハンドル521にどのように力が加えられるかによって1慣性系と2慣性系との間で変化する。第3の実装例においては、ノミナルモデルを1慣性系と2慣性系との間の周波数特性を有するモデルとすることにより、制御対象の状態が1慣性系と2慣性系との間のいずれの状態であっても、ノミナルモデルの伝達関数P(s)と制御対象の伝達関数P(s)とのモデル化誤差Δ(s)が大きくなり過ぎないようにできる。したがって、運転者がハンドル521をどのように操舵したかに関わらず、ノミナルモデルを用いて好適に制御対象を制御できる。このように、第3の実装例において、ノミナルモデルは、運転者のハンドル521の握り方によって制御対象に与えられる機械特性を考慮したモデルとなっている。第3の実装例における制御装置100は、このようなノミナルモデルを内部モデルとして有することにより、制御対象の好適な制御を行うことができる。第3の実装例におけるその他の構成は、上述した他の実装例と同様にできる。
本開示の実施形態は、車両に搭載されるEPSを制御するためのモータの制御装置に利用され得る。
100:制御装置(ECU)、200:プロセッサ、210:トルク制御器、211:応答性位相補償部、212:位相補償器、220:制御対象、230、230A、230B:モデルフォロイング制御器、231:制御対象逆モデル、232:ローパスフィルタ、233:ハイパスフィルタ、250:摩補償算出器、250:摩擦補償算出器、251:減算器、252:リミッタ、253:ゲイン調整器、1000:電動パワーステアリング装置、AD1:減算器、AD2,AD3:加算器、SU1:減算器

Claims (7)

  1. モータを備える電動パワーステアリング装置に用いられる、前記モータを制御するための制御装置であって、
    操舵トルクに基づいて動作し、前記モータである制御対象に入力を与えるトルク制御器と、
    前記制御対象からの出力に基づいて補正トルクを生成し、前記制御対象の入力を前記補正トルクによって補正するモデルフォロイング制御器と、
    を備え、
    前記モデルフォロイング制御器は、
    第1カットオフ周波数を有するハイパスフィルタ、および前記第1カットオフ周波数よりも大きい第2カットオフ周波数を有するローパスフィルタを含み、
    前記ローパスフィルタおよび前記ハイパスフィルタの伝達関数を、それぞれ、Q(s)およびHPF(s)とするとき、Q(s)・HPF(s)のゲイン特性におけるゲインが1である周波数帯域において、前記制御対象の伝達関数がノミナルモデルに拘束されるように構成されている、制御装置。
  2. 前記第1カットオフ周波数は、2Hz以上10Hz以下である、請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記第2カットオフ周波数は、3Hz以上である、請求項2に記載の制御装置。
  4. 前記トルク制御器は、操舵周波数が所定範囲内にあるときに前記操舵トルクに位相補償を適用することによって目標モータトルクを生成し、前記制御対象に入力する、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
  5. モータと、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置と、
    を備えるモータモジュール。
  6. 請求項5に記載のモータモジュールを備える電動パワーステアリング装置。
  7. モータを備える電動パワーステアリング装置の前記モータを制御するための、コンピュータに実装される方法であって、
    操舵トルクを取得することと、
    前記操舵トルクに基づいて操作量を決定し、前記モータである制御対象に入力することと、
    第1カットオフ周波数を有するハイパスフィルタ、および前記第1カットオフ周波数よりも大きい第2カットオフ周波数を有するローパスフィルタを含むモデルフォロイング制御器であって、前記ローパスフィルタおよび前記ハイパスフィルタの伝達関数を、それぞれ、Q(s)およびHPF(s)とするとき、Q(s)・HPF(s)のゲイン特性におけるゲインが1である周波数帯域において、前記制御対象の伝達関数をノミナルモデルに拘束するモデルフォロイング制御器を用いて、前記制御対象からの出力に基づいて補正トルクを生成し、前記制御対象の入力を前記補正トルクによって補正することと、
    をコンピュータに実行させる方法。
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