JP2023043530A - 寿命推定方法、寿命推定装置及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを蓄積し、所定部位の故障時期又は故障確率を算出することができる寿命推定方法を提供する。【解決手段】産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを取得し、取得した物理量データ及び物理量データの取得時を示す時間データを対応付けて記憶し、取得した物理量データ及び時間データに基づいて、所定部位の寿命と相関のあるパラメータ値の経時変化を推定するための関数を算出し、算出した関数を用いて所定部位の故障時期又は故障確率を算出する。【選択図】図6
Description
本発明は、寿命推定方法、寿命推定装置及びコンピュータプログラムに関する。
射出成形機は、成形材料を溶融して射出する射出装置及び型締装置を備える。射出装置は、先端部にノズルを有する加熱シリンダと、当該加熱シリンダ内に周方向と軸方向とに回転可能に配されたスクリュとを備える。スクリュは駆動機構によって回転方向と軸方向とに駆動する。駆動機構は、射出用サーボモータの回転駆動力をスクリュの軸方向への駆動力に変換して伝達するボールねじを備える(例えば、特許文献1)。
ところで、射出成形機の使用条件と使用時間からボールねじの点検目安の時期を表示することが行われている。しかし、同じように点検目安時期に到達してもボールねじの損傷具合は射出成形機毎に差がある。その結果、点検目安時期になっても射出成形機の点検が実施されるケースは少ない。
本発明の目的は、産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを蓄積し、所定部位の故障時期又は故障確率を算出することができる寿命推定方法、寿命推定装置及びコンピュータプログラムを提供することにある。
本発明の一態様に係る寿命推定方法は、産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを取得し、取得した前記物理量データ及び該物理量データの取得時を示す時間データを対応付けて記憶し、取得した前記物理量データ及び前記時間データに基づいて、前記所定部位の寿命と相関のあるパラメータ値の経時変化を推定するための関数を算出し、算出した前記関数を用いて前記所定部位の故障時期又は故障確率を算出する。
本発明の一態様に係る寿命推定装置は、産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを取得する取得部と、取得した前記物理量データ及び該物理量データの取得時を示す時間データを対応付けて記憶する記憶部と、取得した前記物理量データ及び前記時間データに基づいて、前記所定部位の寿命と相関のあるパラメータ値の経時変化を推定するための関数を算出し、算出した前記関数を用いて前記所定部位の故障時期又は故障確率を算出する演算部とを備える。
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを取得し、取得した前記物理量データ及び該物理量データの取得時を示す時間データを対応付けて記憶し、取得した前記物理量データ及び前記時間データに基づいて、前記所定部位の寿命と相関のあるパラメータ値の経時変化を推定するための関数を算出し、算出した前記関数を用いて前記所定部位の故障時期又は故障確率を算出する処理をコンピュータに実行させる。
上記によれば、産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを蓄積し、所定部位の故障時期又は故障確率を算出することができる。
本発明の実施形態に係る射出成形機(寿命推定装置)、寿命推定方法及びコンピュータプログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1は、実施形態1に係る射出成形機1の構成例を示す模式図である。本実施形態1に係る射出成形機1は、金型21を型締めする型締装置2と、成形材料を溶融して射出する射出装置3と、制御装置4とを備える。制御装置4は、本実施形態1に係る寿命推定装置として機能する。
型締装置2はベッド20上に固定された固定盤22と、ベッド20上をスライド可能に設けられた型締ハウジング23と、ベッド20上を同様にスライドする可動盤24とを備える。固定盤22と型締ハウジング23は複数本、例えば4本のタイバー25、25、…によって連結されている。可動盤24は、固定盤22と型締ハウジング23の間でスライド自在に構成されている。型締ハウジング23と可動盤24の間には型締機構26が設けられている。型締機構26は、例えばトグル機構から構成されている。なお、型締機構26は、直圧式の型締機構、つまり型締シリンダによって構成してもよい。固定盤22と可動盤24にはそれぞれ固定金型28と、可動金型27が設けられ、型締機構26を駆動すると金型21が型開閉されるようになっている。
射出装置3は、基台30上に設けられている。射出装置3は、先端部にノズル31aを有する加熱シリンダ31と、当該加熱シリンダ31内に周方向と軸方向とに回転可能に配されたスクリュ32とを備える。加熱シリンダ31の内部又は外周には、成形材料を溶融させるためのヒータが設けられている。スクリュ32は駆動装置5によって回転方向と軸方向とに駆動する。
加熱シリンダ31の後端部近傍には、成形材料が投入されるホッパ33が設けられている。また、射出成形機1は、射出装置3を前後方向(図1中左右方向)に移動させるノズルタッチ装置34を備える。ノズルタッチ装置34を駆動すると、射出装置3が前進して加熱シリンダ31のノズル31aが固定盤22の密着部にタッチするように構成されている。
制御装置4は、型締装置2及び射出装置3の動作を制御するコンピュータであり、ハードウェア構成としてプロセッサ(演算部)41、記憶部42、操作部43、取得部44及び表示部45等を備える。なお、制御装置4は、ネットワークに接続されたサーバ装置であっても良い。また、制御装置4は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
プロセッサ41は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural Processing Unit)等の演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子、計時部等を有する。プロセッサ41は、後述の記憶部42が記憶するコンピュータプログラム(プログラム製品)42aを実行することにより、本実施形態1に係る制御方法を実施する。
記憶部42は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部42は、ボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム42aを記憶している。
本実施形態1に係るコンピュータプログラム42aは、記録媒体6にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部42は、読出装置によって記録媒体6から読み出されたコンピュータプログラム42aを記憶する。記録媒体6はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体6はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでも良い。更に、記録媒体6は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であっても良い。更にまた、通信網に接続されている外部サーバから本実施形態1に係るコンピュータプログラム42aをダウンロードし、記憶部42に記憶させても良い。
操作部43は、タッチパネル、ソフトキー、ハードキー、キーボード、マウス等の入力装置である。
取得部44は、後述のエンコーダ50dから出力される回転角信号、加速度センサ5aから出力される加速度信号をAD変換し、回転角データ及び加速度データを取得する。
表示部45は、液晶パネル、有機ELディスプレイ、電子ペーパ、プラズマディスプレイ等である。表示部45は、プロセッサ41から与えられた画像データに応じた各種情報を表示する。
取得部44は、後述のエンコーダ50dから出力される回転角信号、加速度センサ5aから出力される加速度信号をAD変換し、回転角データ及び加速度データを取得する。
表示部45は、液晶パネル、有機ELディスプレイ、電子ペーパ、プラズマディスプレイ等である。表示部45は、プロセッサ41から与えられた画像データに応じた各種情報を表示する。
射出成形機1には、射出開始時点、金型内樹脂温度、ノズル温度、シリンダ温度、ホッパ温度、型締力、射出速度、射出加速度、射出ピーク圧力、射出ストローク等の成形条件を定める設定値が設定される。また射出成形機1には、シリンダ先端樹脂圧、逆防リング着座状態、保圧切替圧力、保圧切替速度、保圧切替位置、保圧完了位置、クッション位置、計量背圧、計量トルク等の成形条件を定める設定値が設定される。更に射出成形機1には、計量完了位置、スクリュ32後退速度、サイクル時間、型閉時間、射出時間、保圧時間、計量時間、型開時間等の成形条件を定める設定値が設定される。そして、これらの設定値が設定された射出成形機1は、当該設定値に従って動作する。
図2は、実施形態1に係る射出成形機1の駆動装置5の構成例を示す断面図である。駆動装置5は、スクリュ32を軸方向に駆動するための射出用サーボモータ50及びボールねじ51を備える。射出用サーボモータ50には、回転角を検出し、回転角を示す回転角信号を制御装置4へ出力するエンコーダ50dが設けられている。制御装置4はエンコーダ50dから出力される回転角信号に基づいて、射出用サーボモータ50の回転を制御する。射出用サーボモータ50の出力軸には、小プーリ50aが設けられている。
ボールねじ51は、ボールねじ軸51aと、ボールねじ軸51aに螺合したナット51bとを備える。ボールねじ軸51aの基端部は、孔部及び軸受け座を有する第1プレート52にベアリング52aを介して回転可能に支持されている。ボールねじ軸51aの基端部には大プーリ50cが設けられている。小プーリ50aと、大プーリ50cは、はタイミングベルト50bにより連結されており、小プーリ50aの回転力が大プーリ50cに減速伝達され、ボールねじ軸51aが回転する。
以下、ボールねじ軸51aの基端部側の方向を(図1中、右側)を後退方向、その反対側の方向(図1中、左方向)を前進方向と呼ぶ。また、前進方向及び後退方向を合わせて進退方向と呼ぶ。射出用サーボモータ50が駆動して大プーリ50c及びボールねじ軸51aが回転すると、その回転方向に応じてナット51bは前進方向及び後退方向へ移動する。
以下、ボールねじ軸51aの基端部側の方向を(図1中、右側)を後退方向、その反対側の方向(図1中、左方向)を前進方向と呼ぶ。また、前進方向及び後退方向を合わせて進退方向と呼ぶ。射出用サーボモータ50が駆動して大プーリ50c及びボールねじ軸51aが回転すると、その回転方向に応じてナット51bは前進方向及び後退方向へ移動する。
ナット51bの前進方向側の面には、ロードセル53が設けられ、ロードセル53の前進方向側の面は第2プレート54に固定されている。第2プレート54には複数の貫通孔が形成されており、貫通孔にはガイド軸55が挿通している。第2プレート54は、ガイド軸55によって案内され進退方向へ移動する。第1プレート52の前進方向側には、第3プレート56が設けられており、ガイド軸55の一端部及び他端部はそれぞれ第1プレート52及び第3プレート56に支持されている。ボールねじ軸51aが回転すると、ナット51b、ロードセル53及び第2プレート54は、ガイド軸55に沿って進退方向へ一体的に移動する。
第2プレート54には孔部及び軸受け座が設けられており、孔部にベアリング54aを介して出力軸58が支持されている。出力軸58には可塑化用プーリ57が設けられている。可塑化用プーリ57は不図示のタイミングベルトを介して、不図示のスクリュ32回転用モータに取り付けられたプーリに連結されている。出力軸58の回転中心はボールねじ軸51aの回転中心と一致している。出力軸58は、ナット51bが進退移動した際に、ボールねじ軸51aの先端部が侵入する凹部が形成されている。また、出力軸58には中心軸が一致するようにスクリュ32の一端が固定されている。第3プレート56には、スクリュ32が挿通する貫通孔が形成されている。第3プレート56の貫通孔を挿通したスクリュ32が加熱シリンダ31内を軸方向に移動できるように、加熱シリンダ31の一端部が第3プレート56に固定されている。
また、ボールねじ51のナット51bには、ナット51bの振動を検出する加速度センサ5aが取り付けられている。加速度センサ5aは、検出した加速度信号を制御装置4へ出力する。制御装置4のプロセッサ41は加速度センサ5aから出力された加速度信号を取得部44にて加速度データにAD変換して取得する。制御装置4は、加速度データに基づいてボールねじ51の寿命を推定することができる。
成形工程サイクルの概要は以下の通りであり、制御装置4は、繰り返される成形工程サイクルにおいて、ナット51bの進退移動範囲を逐次移動させる処理を行う。射出成形に際しては、周知の型閉工程、型締工程、射出ユニット前進工程、射出工程、計量工程、射出ユニット後退工程、型開工程及びエジェクト工程が順次に行われる。
図3は、実施形態1に係るプロセッサ41の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ41は取得部44を介して、加速度センサ5aからボールねじ51の状態を示す加速度データを取得する(ステップS111)。
そして、演算部は、取得した加速度データと、当該加速度データを取得した時間を示す時間データとを対応付けて記憶部42に記憶する(ステップS112)。時間データは、計時部から得られる。
次いで、演算部は、記憶部42が記憶する加速度データ及び時間データに基づいて、ボールねじ51の寿命と相関のある加速度ピーク値の経時変化を推定するための第1関数を算出する(ステップS113)。加速度ピーク値は、ボールねじ51の寿命と相関のあるパラメータ値の一例である。
図4は、ボールねじ51の寿命と相関のある振動加速度ピーク値の経時変化を推定するための関数の算出方法を示す説明図である。図4に示すグラフの横軸は時間、縦軸は加速度ピーク値を示している。横軸の時間は、ボールねじ51の稼働時間に相当し、加速度ピーク値は、ボールねじ51の故障度に対応する。プロセッサ41は、所定期間にわたって記憶部42に蓄積された加速度データ及び時間データに基づいて、加速度ピーク値の経時変化を示す第1関数を最尤推定法にて求める。
例えば、第1関数は、例えば下記式で表される。
P=a×ebt+c…(1)
但し、
P:加速度ピーク値
t:時間
a,b,c:係数
P=a×ebt+c…(1)
但し、
P:加速度ピーク値
t:時間
a,b,c:係数
プロセッサ41は、平均二乗誤差が最小となる係数a,b,cを算出することによって、第1関数を求める。
次いで、プロセッサ41は、図4中破線で示すように、第1関数を用いて算出される加速度ピーク値に対して、正規分布の標準偏差(所定偏差)を加算した値の経時変化を推定するための第2関数を算出する(ステップS114)。具体的には、プロセッサ41は、複数の時点における第1関数を用いて算出される加速度ピーク値(平均値)と、記憶部42が記憶する標本データとしての加速度データ及び時間データとに基づいて、複数の各時点における標準偏差を算出する。そして、各時点の加速度ピーク値(平均値)それぞれに、当該時点における標準偏差を加算した値を求める。そして、プロセッサ41は、算出された値の経時変化を示す第2関数を最尤推定法にて算出する。第2関数も上記式(1)に示すような指数関数を用いて表される。
また、プロセッサ41は、複数の時点メータ値に対して、正規分布の記標準偏差を減算した値の経時変化を推定するための第3関数を算出する(ステップS115)。第3関数の算出方法は、第2関数の算出方法と同様である。
次いで、プロセッサ41は、第1関数を用いてボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出する(ステップS116)。同様に、プロセッサ41は、第2関数を用いてボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出する(ステップS117)。また、プロセッサ41は、第3関数を用いてボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出する(ステップS118)。
図5は、ボールねじ51の寿命の故障確率及び故障時期の算出方法を示す説明図である。プロセッサ41は、例えば、図5Aに示すように、第1関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率が50%(第1確率)となる故障時期として算出する。故障判定閾値は、予め記憶部42が記憶しておいてもよいし、プロセッサ41が操作部43にてオペレータから受け付けるように構成してもよい。
また、プロセッサ41は、第2関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率が16%(第2確率)となる故障時期として算出する。
更に、プロセッサ41は、第3関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率が84%(第3確率)となる故障時期として算出する。
また、プロセッサ41は、第2関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率が16%(第2確率)となる故障時期として算出する。
更に、プロセッサ41は、第3関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率が84%(第3確率)となる故障時期として算出する。
なお、上記の例では、第1関数、第2関数及び第3関数と、故障判定閾値とが交わる点から、故障時期を推定する例を説明したが、図5Bに示すように、特定の推定基準時点における故障確率を算出するように構成してもよい。プロセッサ41は、第1関数を用いて特定の推定基準時点における加速度ピーク値(平均値)を求める。そして、プロセッサ41は、加速度ピーク値の平均値と、記憶部42が記憶する標本としての加速度データ及び時間データとに基づいて、当該推定基準時点における分散又は標準偏差を算出し、当該推定基準時点において加速度ピーク値が故障判定閾値となる確率を算出すればよい。つまり、当該推定基準時点において加速度ピーク値は正規分布に従っているものと仮定し、加速度ピーク値が故障判定閾値となる確率を求めればよい。
次いで、プロセッサ41は、実測値グラフ45a及び推定値グラフ45b,45c,45d等を表示部45に表示し(ステップS119)、処理を終える。
図6は、推定結果の表示画面例を示す模式図である。プロセッサ41は、グラフの横軸及び縦軸を表示部45に表示し、実測値グラフ45a及び推定値グラフ45b,45c,45dのグラフ線を表示する。
横軸は経過時間に相当する稼働時間を示し、縦軸は加速度ピーク値に相当する故障度を示す。実測値グラフ45aは、記憶部42が記憶する加速度データ及び時間データに基づく、加速度ピーク値の経時変化の実測値を示すグラフである。推定値グラフ45b,45c,45dは、それぞれ第1関数、第2関数、第3関数で求められる加速度ピーク値の経時変化を示すグラフである。
また、プロセッサ41は、故障判定閾値を示す閾値線画像45fを表示部45に表示する。更に、プロセッサ41は、現時点からの経過時間とボールねじ51の故障確率を示す正規分布画像45eを表示する。
横軸は経過時間に相当する稼働時間を示し、縦軸は加速度ピーク値に相当する故障度を示す。実測値グラフ45aは、記憶部42が記憶する加速度データ及び時間データに基づく、加速度ピーク値の経時変化の実測値を示すグラフである。推定値グラフ45b,45c,45dは、それぞれ第1関数、第2関数、第3関数で求められる加速度ピーク値の経時変化を示すグラフである。
また、プロセッサ41は、故障判定閾値を示す閾値線画像45fを表示部45に表示する。更に、プロセッサ41は、現時点からの経過時間とボールねじ51の故障確率を示す正規分布画像45eを表示する。
射出成形機1のオペレータは表示部45に表示される実測値グラフ45a及び推定値グラフ45b,45c,45dから、現在のボールねじ51の実際の状態、故障時期及び故障確率を視覚的に認識することができる。
以上の通り、本実施形態1に係る射出成形機1によれば、射出成形機1のボールねじ51の状態を示す加速度データを蓄積し、ボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出することができる。
具体的には、最尤推定法にて時間と加速度ピーク値との関係を示す第1関数を求め、第1関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率50%の故障時期として算出することができる。
また、第2関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率16%の故障時期として算出することができる。
更に、第3関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率84%の故障時期として算出することができる。
また、第2関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率16%の故障時期として算出することができる。
更に、第3関数を用いて算出される加速度ピーク値が所定の故障判定閾値に達する時点を、故障確率84%の故障時期として算出することができる。
また、実測値グラフ45a及び推定値グラフ45b,45c,45dを用いて、現在のボールねじ51の状態を表示することができる。
なお、本実施形態1では、ボールねじ51の振動に基づいて、ボールねじ51の故障時期及び故障確率を推定する例を説明したが、射出用サーボモータ50の電流又はトルクを示す物理量データを用いてもよい。プロセッサ41は、射出用サーボモータ50の電流又はトルクを示す物理量データに基づいて、電流又はトルクのピーク値の経時変化を示す関数を算出し、本実施形態1と同様にして、ボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出することができる。また、ボールねじ51の潤滑油に含まれる鉄粉濃度に基づいてボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出するように構成してもよい。
また、本実施形態1ではボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出する例を説明したが、型締装置2、射出装置3の故障時期及び故障確率を算出するように構成してもよい。
更に、産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを取得し、当該所定部位の故障時期及び故障確率を算出するように構成してもよい。
また、本実施形態1ではボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出する例を説明したが、型締装置2、射出装置3の故障時期及び故障確率を算出するように構成してもよい。
更に、産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを取得し、当該所定部位の故障時期及び故障確率を算出するように構成してもよい。
更にまた、本実施形態1では、加速度ピーク値の平均値に標準偏差を加算及び減算した値を推定する第2関数及び第3関数を例示したが、これに限定されるものではない。加速度ピーク値の平均値に任意の所定偏差を加減算した値を推定する関数を算出し、当該関数を用いて故障時期及び故障確率を推定するように構成してもよい。
(実施形態2)
実施形態2に係る射出成形機1は、ボールねじ軸51aの部位毎に故障時期及び故障確率を算出する点が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
実施形態2に係る射出成形機1は、ボールねじ軸51aの部位毎に故障時期及び故障確率を算出する点が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7は実施形態2に係る演算部の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ41は取得部44を介して、加速度センサ5aからボールねじ51の状態を示す加速度データを取得する(ステップS211)。また、プロセッサ41は取得部44を介して、エンコーダ50dから角度データ、言い換えるとナット51bの位置を示す位置データを取得する(ステップS211)。射出用サーボモータ50の回転角は、ボールねじ軸51aにおけるナット51bの位置に相当する。
そして、演算部は、取得した加速度データと、位置データと、当該加速度データ及び位置データを取得した時間を示す時間データとを対応付けて記憶部42に記憶する(ステップS212)。時間データは、計時部から得られる。
次いで、演算部は、記憶部42が記憶する加速度データ、位置データ及び時間データに基づいて、ボールねじ51の寿命と相関のある加速度ピーク値の経時変化を推定するための第1関数を、ボールねじ軸51aの部位毎に算出する(ステップS213)。
次いで、プロセッサ41は、第1関数を用いて算出される加速度ピーク値に対して、正規分布の標準偏差を加算した値の経時変化を推定するための第2関数を、ボールねじ軸51aの部位毎に算出する(ステップS214)。
また、プロセッサ41は、複数の時点メータ値に対して、正規分布の記標準偏差を減算した値の経時変化を推定するための第3関数を、ボールねじ軸51aの部位毎に算出する(ステップS215)。
なお、第1関数~第3関数の算出方法は実施形態1と同様である。
また、プロセッサ41は、複数の時点メータ値に対して、正規分布の記標準偏差を減算した値の経時変化を推定するための第3関数を、ボールねじ軸51aの部位毎に算出する(ステップS215)。
なお、第1関数~第3関数の算出方法は実施形態1と同様である。
次いで、プロセッサ41は、第1関数を用いてボールねじ51の故障時期及び故障確率を、ボールねじ軸51aの部位毎に算出する(ステップS216)。同様に、プロセッサ41は、第2関数を用いてボールねじ51の故障時期及び故障確率を、ボールねじ軸51aの部位毎に算出する(ステップS217)。また、プロセッサ41は、第3関数を用いてボールねじ51の故障時期及び故障確率を、ボールねじ軸51aの部位毎に算出する(ステップS218)。
なお、第1関数~第3関数を用いた故障時期及び故障確率の算出方法は実施形態1と同様である。
なお、第1関数~第3関数を用いた故障時期及び故障確率の算出方法は実施形態1と同様である。
そして、プロセッサ41は、実測値グラフ45a及び推定値グラフ45b,45c,45d等を表示部45に表示し(ステップS219)、処理を終える。
本実施形態2に係る射出成形機1によれば、射出成形機1のボールねじ51の状態を示す加速度データを蓄積し、ボールねじ51の故障時期及び故障確率をボールねじ軸51aの部位毎に算出することができる。
(実施形態3)
実施形態3に係る射出成形機1は、機械学習によりボールねじ軸51aの故障時期及び故障確率を算出する点が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
実施形態3に係る射出成形機1は、機械学習によりボールねじ軸51aの故障時期及び故障確率を算出する点が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
図8は、実施形態3に係る制御装置4の構成例を示す模式図である。実施形態3に係る制御装置4のプロセッサ41は、機能部として学習処理部41aを備える。また、記憶部42は、ボールねじ51の故障時期及び故障確率を推定するための学習モデル42bを記憶する。なお、学習処理部41aはソフトウェアで実現してもよいし、ハードウェアで構成してもよい。また学習処理部41aの一部をハードウェアで構成してもよい。
プロセッサ41は、記憶部42から学習モデル42b及びコンピュータプログラム42aを読み出して実行する。
学習モデル42bは、振動加速度のピーク値と、ボールねじ51の稼働時間である経過時間が入力された場合に、故障確率を出力するニューラルネットワークである。学習モデル42bは、入力層と、隠れ層と、出力層とを備える。入力層は、振動加速度のピーク値及び経過時間が入力される複数のノードを有する。隠れ層は、複数のノードを有する中間層を複数備え、入力側の中間層のノードは入力層のノードと結合されている。出力層は、故障確率を出力するノードを有する。出力層の各ノードは、出力側の中間層のノードと結合されている。
学習モデル42bは、振動加速度のピーク値及び経過時間と、故障確率とを含む訓練データを用いて機械学習させることにより生成することができる。例えば、プロセッサ41の学習処理部41aは、訓練データを用いた誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等によって、学習モデル42bの重み係数を最適化することにより、学習モデル42bを機械学習させる。
なお、学習モデル42bは、複数の経過時間に相当するノードを出力層に備え、振動加速度のピーク値が入力された場合に、各経過時間に相当するノードから故障確率が出力されるように構成してもよい。
プロセッサ41は、現時点で検出した振動加速度のピーク値と、任意の経過時間とを学習モデル42bに入力することによって、ボールねじ51の故障確率を算出することができる。プロセッサ41は、学習モデル42bを用いて算出した経過時間と故障確率との関係を用いて、実施形態1と同様にして実測値グラフ45a及び推定値グラフ45b,45c,45dを表示部45に表示するとよい。
本実施形態3に係る射出成形機1によれば、実施形態1と同様、ボールねじ51の故障時期及び故障確率を算出し、実測値グラフ45a及び推定値グラフ45b,45c,45dを表示部45に表示することができる。
なお、本実施形態3ではニューラルネットワークを用いた学習モデル42bを説明したが、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク等のその他の公知の機械学習モデルを用いて故障時期及び故障確率を推定するように構成してもよい。
1 射出成形機
2 型締装置
3 射出装置
4 制御装置
5 駆動装置
5a 加速度センサ
6 記録媒体
31 加熱シリンダ
32 スクリュ
50 射出用サーボモータ
50d エンコーダ
51 ボールねじ
41 プロセッサ
51 ボールねじ
51a ボールねじ軸
51b ナット
2 型締装置
3 射出装置
4 制御装置
5 駆動装置
5a 加速度センサ
6 記録媒体
31 加熱シリンダ
32 スクリュ
50 射出用サーボモータ
50d エンコーダ
51 ボールねじ
41 プロセッサ
51 ボールねじ
51a ボールねじ軸
51b ナット
Claims (10)
- 産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを取得し、
取得した前記物理量データ及び該物理量データの取得時を示す時間データを対応付けて記憶し、
取得した前記物理量データ及び前記時間データに基づいて、前記所定部位の寿命と相関のあるパラメータ値の経時変化を推定するための関数を算出し、
算出した前記関数を用いて前記所定部位の故障時期又は故障確率を算出する
寿命推定方法。 - 前記関数を用いて算出される前記パラメータ値が、故障判定閾値に達する時点を故障時期として算出する
請求項1に記載の寿命推定方法。 - 最尤推定法にて算出した前記関数を用いて算出される前記パラメータ値が前記故障判定閾値に達する時点を故障確率が50%の故障時期として算出する
請求項2に記載の寿命推定方法。 - 最尤推定法にて、前記パラメータ値の経時変化を推定するための第1関数を算出し、
前記第1関数を用いて算出される前記パラメータ値に対して所定偏差を加算した値の経時変化を推定するための第2関数を算出し、
前記第1関数を用いて算出される前記パラメータ値に対して前記所定偏差を減算した値の経時変化を推定するための第3関数を算出し、
前記第1関数を用いて算出される前記パラメータ値が前記故障判定閾値に達する時点を、故障確率が第1確率の場合の故障時期として算出し、
前記第2関数を用いて算出される前記パラメータ値が前記故障判定閾値に達する時点を、故障確率が第2確率の場合の故障時期として算出し、
前記第3関数を用いて算出される前記パラメータ値が前記故障判定閾値に達する時点を、故障確率が第3確率の場合の故障時期として算出する
請求項2に記載の寿命推定方法。 - 前記物理量データ及び前記時間データに基づく前記パラメータ値の経時変化を示す実測値グラフと、前記第1関数、前記第2関数及び前記第3関数を示す推定値グラフと、前記故障判定閾値とを表示する
請求項4に記載の寿命推定方法。 - 前記産業機械はボールねじを有する成形機であり、
前記ボールねじの故障時期又は故障確率を算出する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の寿命推定方法。 - 前記物理量データは、前記ボールねじの振動加速度、前記ボールねじを駆動するモータの電流又はトルクを示すデータであり、前記パラメータ値は、前記振動加速度、前記電流又は前記トルクのピーク値である
請求項6に記載の寿命推定方法。 - 前記成形機は、先端部にノズルを有するシリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられたスクリュを備え、前記ボールねじは、回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを有し、該ナットの進退により前記スクリュを前記軸方向に駆動するものであり、
前記ボールねじに対する前記ナットの位置を示す位置データと、該位置の前記ボールねじの状態を示す前記物理量データとを取得し、
取得した前記位置データ、前記物理量データ及び該物理量データの取得時を示す前記時間データを対応付けて記憶し、
取得した前記位置データ、前記物理量データ及び前記時間データに基づいて、前記ボールねじの寿命と相関のある前記パラメータ値の経時変化を推定するための前記関数を、前記ボールねじ軸の部位毎に算出する
請求項7に記載の寿命推定方法。 - 産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを取得する取得部と、
取得した前記物理量データ及び該物理量データの取得時を示す時間データを対応付けて記憶する記憶部と、
取得した前記物理量データ及び前記時間データに基づいて、前記所定部位の寿命と相関のあるパラメータ値の経時変化を推定するための関数を算出し、算出した前記関数を用いて前記所定部位の故障時期又は故障確率を算出する演算部と
を備える寿命推定装置。 - 産業機械を構成する所定部位の状態を示す物理量データを取得し、
取得した前記物理量データ及び該物理量データの取得時を示す時間データを対応付けて記憶し、
取得した前記物理量データ及び前記時間データに基づいて、前記所定部位の寿命と相関のあるパラメータ値の経時変化を推定するための関数を算出し、
算出した前記関数を用いて前記所定部位の故障時期又は故障確率を算出する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
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2021
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