JP2023040731A - 化粧シート及び化粧材 - Google Patents

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Keisuke Tsuruta
寛詠 臼井
Kanei Usui
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Abstract

【課題】木質素材が有する触感及びマット感を再現できるとともに、耐汚染性に優れる化粧シート、及び、該化粧シートを備える化粧材を提供する。【解決手段】基材と、基材の少なくとも一方の面側に設けられた接着層と、接着層の基材が設けられた面の他方の面側に設けられた表面保護層と、を備え、表面保護層は、不織布と、不織布の繊維間の空隙の少なくとも一部に充填された樹脂を含む樹脂部と、を含み、表面保護層の接着層が設けられた面と他方の面は、JIS Z 8741:1997に準拠して測定される85度グロス値が3.0以上6.0以下であり、表面保護層の接着層が設けられた面と他方の面における純水の接触角度が、80度以上である、化粧シート。【選択図】図1

Description

本開示は、化粧シート及びこれを備える化粧材に関する。
従来より、建築物の内装部材や外装部材、自動車等車両の内装部材や外装部材、あるいは、家具、造作部材、家電製品等の表面を装飾したり保護したりするために、化粧シートが用いられている。近年では、伐採により天然木材が入手しにくくなっていることから、木目調柄を有し、木質素材に近い触感やマット感を得ることができる化粧シートの需要が高まってきている。
このような化粧シートとして、例えば特許文献1に、基材上に、装飾層と、パターン状に形成された盛上げ層と、基材及び盛上げ層を被覆する表面保護層とを設けた化粧シートが開示されている。特許文献1の化粧シートでは、盛上げ部により優れた触感を付与することができる。また、表面保護層を電離放射線硬化性樹脂組成物から形成することにより、化粧シートに耐汚染性や耐傷性等の各種機能を付与することができる。
また、木目模様を有する化粧シートの中には、一般消費者が自ら建築内装材や家具等の表面を塗装すること(DIY:Do It Yourself)に対応できるように、ステイン塗料を用いた塗装が可能な化粧シート(ステイナブル性を有する化粧シート)が提案されている(特許文献2など)。特許文献2の化粧シートは、紙基材と不織布とを接着剤で貼り合わせた構成を有し、不織布の基材と反対側は、繊維間の空隙を維持された繊維部であり、ステイン塗料等の着色剤が入り込む着肉性を確保している。
特開2015―171811号公報 特開2019―64131号公報
しかしながら、特許文献1の化粧シートでは、樹脂により盛上げ層を形成しているため、木質素材と同等の触感を得ることには限界があった。特に、合板や天然木の繊維による触感を表現することが困難であった。
特許文献2のようなステイナブル性を有する化粧シートは、着色することを前提としており、耐汚染性とは逆の効果を有するものである。また、特許文献2の化粧シートでは、表面に空隙を有する繊維部が露出するため、耐傷性等の表面の機械的性質に劣り、加工時や運送時などに損傷しやすいことが問題となっていた。
本開示は上記課題に鑑みなされたものであり、木質素材が有する触感及びマット感を再現できるとともに、耐汚染性に優れる化粧シート、及び、該化粧シートを備える化粧材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1] 基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた接着層と、前記接着層の前記基材が設けられた面の他方の面側に設けられた表面保護層と、を備え、前記表面保護層は、不織布と、前記不織布の繊維間の空隙の少なくとも一部に充填された樹脂を含む樹脂部と、を含み、前記表面保護層の前記接着層が設けられた面と他方の面は、JIS Z 8741:1997に準拠して測定される85度グロス値が3.0以上6.0以下であり、前記表面保護層の前記接着層が設けられた面と他方の面における純水の接触角度が、80度以上である、化粧シート。
[2] 前記85度グロス値が、4.0以上5.6以下である、[1]に記載の化粧シート。
[3] 前記樹脂部のナノインデンテーション法によって測定された硬度が、150MPa以上である、[1]または[2]に記載の化粧シート。
[4] 前記樹脂部のナノインデンテーション法によって測定された硬度が、240MPa未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の化粧シート。
[5] 前記樹脂部が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の化粧シート。
[6] 前記表面保護層の厚みが、35μm以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の化粧シート。
[7] 前記表面保護層の厚みが、250μm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の化粧シート。
[8] 前記基材と前記接着層との間に、装飾層を更に含む、[1]~[7]のいずれかに記載の化粧シート。
[9] 前記装飾層が、木目模様を含む、[8]に記載の化粧シート。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の化粧シートと、被着材とを有する化粧材。
本開示によれば、木質素材に近い触感及びマット感を再現でき、更に耐汚染性に優れる化粧シート及び化粧材を得ることができる。
本開示の化粧シートの一例の断面概略図である。
[化粧シート]
本開示の化粧シートは、基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた接着層と、前記接着層の前記基材が設けられた面の他方の面側に設けられた表面保護層と、を備え、前記表面保護層は、不織布と、前記不織布の繊維間の空隙の少なくとも一部に充填された樹脂を含む樹脂部と、を含み、前記表面保護層の前記接着層が設けられた面と他方の面は、JIS Z 8741:1997に準拠して測定される85度グロス値が3.0以上6.0以下であり、前記表面保護層の前記接着層が設けられた面と他方の面における純水の接触角度が、80度以上である。
<85度グロス値について>
本開示の化粧シートにおいて、表面保護層の接着層が設けられた面と他方の面(以下、単に「表面保護層の表面」という。)は、JIS Z 8741:1997に準拠して測定される85度グロス値(以下、単に「85度グロス値」という。)が3.0以上6.0以下であることを要する。本明細書において、85度グロス値は、10箇所の測定値の平均値を意味する。
85度グロス値は、不織布への樹脂の充填度合いを示す指標となる。樹脂の充填度合いと85度グロス値との関係は、以下のように推測される。
不織布の空隙体積に対して樹脂量が少なすぎると、樹脂の充填度合いが不十分となる。この場合、表面保護層の内部の空隙は樹脂で充填されるが、表面保護層の表面に、空隙に樹脂が充填されていない不織布が露出する。この場合、表面保護層の表面では、不織布の繊維のランダムな配向によって入射光が散乱するため、85度グロス値が低くなる。このような化粧シートでは、表面保護層の表面で露出する不織布の空隙内に汚れや着色剤などが入り込むので、十分な耐汚染性を得ることができない。
一方、不織布の空隙体積に対して樹脂量が多すぎると、不織布が樹脂に埋没し、表面保護層の表面で不織布の繊維による凹凸が小さくなるか、繊維による凹凸が消失する。この場合、表面保護層の表面の85度グロス値は高くなる。このような化粧シートでは、十分な触感を得ることができない。また、艶が高くなりすぎ、木質素材が有するマット感を表現することができない。
不織布の空隙体積に対して樹脂量が適切である場合、不織布の空隙に樹脂が充填され、表面保護層の表面では不織布の繊維による凹凸が確保されるように、不織布が樹脂で被覆された状態となる。このような化粧シートでは、表面保護層の表面の85度グロス値が3.0以上6.0以下の範囲内となる。このような化粧シートは、触感及びマット感に優れ、木質素材に近い意匠性が表現される。更に、汚れや着色剤等が入り込む空隙が少ないため、耐汚染性に優れる。また、空隙に樹脂が充填されるために表面保護層の硬度が上昇し、優れた耐傷性を得ることもできる。85度グロス値は、下限が3.5以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、上限が5.8以下であることが好ましく、5.6以下であることがより好ましい。
<接触角度について>
本開示において、表面保護層の接着層が設けられた面と他方の面における純水の接触角度(以下、単に「接触角度」という。)は、80度以上である。表面保護層の表面における接触角度が80度未満であると、表面保護層に汚れが付着しやすく、付着した汚れが拭き取りにくいため、十分な耐汚染性を得ることができない。すなわち、接触角度が80度以上であることにより、表面保護層への汚れを付きにくくし、かつ、ついた汚れを拭き取りやすくすることができる。当該接触角度は、82度以上であることがより好ましく、83度以上であることが更に好ましい。上限としては、88度以下であることが好ましい。
本明細書において、接触角度は、JIS R 3257:1999に規定される静滴法に準拠して測定される値であり、任意の10か所における測定結果の平均値である。
<ナノインデンテーション法による硬度について>
本開示の化粧シートにおいて、樹脂部のナノインデンテーション法によって測定された硬度(以下、単に「硬度」と称する場合がある。)は、150MPa以上であることが好ましい。表面保護層の樹脂部の硬度が150MPa以上であると、表面保護層自体の硬度が十分となり、優れた耐傷性を有する化粧シートを得ることができる。樹脂部の硬度は、160MPa以上であることが好ましく、170MPa以上であることがより好ましい。一方、化粧シートの取り扱い性を考慮すると、化粧シートは可撓性に優れることが好ましい。樹脂部の硬度が高すぎ、可撓性が不十分であると、製造過程や被着材への貼り付け時等において化粧シートに変形が与えられた際に、表面保護層にクラックが発生する虞がある。このような表面保護層の表面を擦ったり、該表面に他の物品を押し付けたりした際に、クラックに起因した傷が付きやすくなる。すなわち、十分な耐傷性を得られない虞がある。また、クラックによって化粧シートが白化して見えることがある。このため、樹脂部の硬度は、240MPa未満であることが好ましく、220MPa以下であることがより好ましい。
なお、本開示における樹脂部の硬度は、不織布等を含まない、樹脂自体の硬度である。
樹脂部の硬度は、以下の手順で測定される。まず、化粧シートの各層の断面が露出するように切断したサンプルを作製する。得られたサンプルを微小領域機械特性評価装置(HYSITRON TI950 TriboIndenter、BRUKER社製)に設置する。下記圧子を約5μm角の範囲で走査させ、画像を取得する。得られた画像において、不織布の繊維及びフィラーと認められる箇所から1μm以上離れた箇所を測定点とする。測定点において、以下の測定条件にてバーコビッチ圧子(材質:ダイヤモンド三角錐)にて、硬度の測定を行う。本明細書において、樹脂部の硬度は、表面保護層表面の任意の5箇所の測定点での硬度値の平均値を意味する。
(測定条件)
・使用圧子:バーコビッチ圧子(型番:TI-0039、BRUKER社製)
・押し込み条件:変位制御方式
・最大押込み深さ:100nm
・荷重印加時間:10秒間(速度:10nm/sec)
・保持時間:5秒間
・荷重除荷時間:10秒間(速度:10nm/sec)
<化粧シートの積層構成>
本開示の化粧シートを、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の化粧シートの一例の断面概略図である。図1の化粧シート10は、基材20と、装飾層30と、接着層40と、表面保護層50とを備える。装飾層30、接着層40、及び、表面保護層50は、基材20の一方の面20a側に、この順で積層される。
表面保護層50は、不織布51と、不織布51を構成する繊維の間の空隙内に充填される樹脂を含む樹脂部52とを含む。樹脂は、空隙の少なくとも一部に充填される。
図1において、装飾層30は、着色層31と絵柄層32とを有する。
<基材>
基材は、他の層を設けるための支持体としての機能を果たす。
基材としては、紙基材、樹脂基材等から制限なく採用することが可能である。価格の低減、環境問題を目的として、紙基材が好ましく採用される。
紙基材としては、例えば、上質紙、薄葉紙、リンター紙、クラフト紙、紙間強化紙、樹脂含浸紙、壁紙用裏打紙、これらの紙に難燃剤を混抄又は含侵してなる難燃紙等を用いることができる。紙基材は、必要に応じて難燃剤、無機質剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色剤、サイズ剤、定着剤等の添加剤を適宜添加したものであってもよい。
紙基材の場合、厚さ(すなわち坪量)には、特に制限はないが、化粧シートの耐久性、取り扱い性等を考慮すると、坪量が20g/m以上150g/m以下の範囲であることが好ましく、25g/m以上120g/m以下の範囲であることがより好ましく、35g/m以上100g/m以下の範囲であることが更に好ましく、40g/m以上60g/m以下の範囲であることがより更に好ましい。
樹脂基材としては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等のオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、エチレンナフタレート-イソフタレート共重合樹脂等のポリエステル樹脂;ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂等のアクリル樹脂;ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース樹脂、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられる。樹脂基材は、必要に応じて難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を適宜添加したものであってもよい。
樹脂基材の厚みには、特に制限はないが、化粧シートの耐久性、取扱い性等を考慮すると、50μm以上250μm以下であることが好ましく、80μm以上230μm以下であることがより好ましく、100μm以上200μm以下であることが更に好ましい。
上記各基材はそれぞれ単独で使用してもよいが、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。例えば、異なる種類の紙基材同士の積層体、異なる種類の樹脂基材同士の積層体、紙基材及び樹脂基材の積層体などであってもよい。基材が積層体である場合は、積層体のそれぞれの層間に接着層を更に設ける構成であってもよい。
<装飾層>
本開示の化粧シートは、意匠性を向上させるため、装飾層を有することが好ましい。装飾層は、基材と表面保護層との間に設ければよく、基材と接着層との間に設けることが好ましい。
装飾層としては、基材を被覆するように設けられる着色層のみから構成される層であってもよいし、基材の一部分を被覆するように柄を形成するように設けられる絵柄層のみから構成される層であってもよいし、着色層と絵柄層とを組み合わせた層であってもよい。これらの層構成は、所望の模様に応じて決定すればよい。
装飾層により付与される模様としては、特に制限なく所望に応じて選択すればよいが、本開示においては木目模様が好ましい。木目模様には、柾目模様、板目模様、杢目模様、木口模様等があるが、いずれであってもよい。
装飾層の形成には、少なくともバインダー樹脂、並びに顔料及び染料等の着色剤を含む樹脂組成物が用いられることが好ましく、その他所望に応じて用いられる成分、例えば、艶消し剤、体質顔料、安定剤、溶剤、また紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤等を適宜混合したものを用いることができる。すなわち、装飾層は、少なくともバインダー樹脂、及び顔料及び染料等の着色剤を含むことが好ましい層であり、その他、上記の所望に応じて用いられる成分を含み得る層である。
バインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられる。また、例えばアクリルポリオール等の各種ポリオールを主剤とし、各種イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型樹脂等の硬化性樹脂を用いてもよい。これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
着色剤としては、例えば、チタン白、鉛白、カーボンブラック、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の公知のものから適宜選択して用いることができる。
装飾層の厚さは、特に制限はないが、意匠性を向上させるために、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、更に好ましくは7.5μm以下である。装飾層が2以上の層から形成される場合、各層の厚みの合計が上記範囲であることが好ましい。
<接着層>
接着層は、基材の少なくとも一方の面側に設けられる層であり、基材と不織布との接着のために設けられる。
接着層の形成に用いられる接着剤としては、特に制限されず、公知の接着剤を使用することができる。中でも、接着剤は、熱可塑性ウレタン樹脂を含む樹脂が好ましい。このような接着剤を用いることにより、基材と不織布との優れた接着性が得られる。
熱可塑性ウレタン樹脂は、架橋構造を持たないウレタン樹脂であって、その骨格構造が直線状又は枝分かれした構造を有するものであり、例えばイソシアネート基とアルコール基などの水酸基を有する化合物が縮合してできるウレタン結合でモノマーを共重合させた共重合体が挙げられる。このような熱可塑性ウレタン樹脂としては、水酸基を末端に有するポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させた線状高分子からなるウレタン樹脂を挙げることができる。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリウレタンポリオール等が挙げられる。
また、ポリイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、また1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環式)イソシアネートが挙げられる。また、ポリイソシアネートとしては、上記各種ポリイソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体等も挙げられる。
接着剤としては、基材と不織布との良好な接着性を確保できるのであれば、熱可塑性ウレタン樹脂以外の樹脂を含んでもよい。熱可塑性ウレタン樹脂と組み合わせて用い得る樹脂としては、例えば1液硬化型、2液硬化型等の硬化性ウレタン樹脂の他、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。特に密着性を向上させるため、接着剤に含まれる熱可塑性ウレタン樹脂の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上、特に好ましくは100質量%、すなわち熱可塑性ウレタン樹脂のみを用いることが特に好ましい。
本開示において、接着剤は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤等の添加物を適宜混合したものを使用することができる。すなわち、接着層は、上記樹脂に加えて、添加物を含む樹脂組成物により形成することができる。
本開示において、接着剤の一部は、表面保護層を構成する不織布の空隙内に入り込んでいてもよい。こうすることにより、基材と不織布との接着性が良好となる。なお、接着剤が不織布の繊維間の空隙内に入り込んだ領域は、表面保護層から除外され、接着層に組み込まれると解する。
接着層の厚さは、基材及び不織布の材質、また不織布の厚さ、不織布の空隙への侵入等を考慮して規定することができる。基材と不織布層との接着性等を考慮すると、接着層の厚さは、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上、より更に好ましくは8μm以上である。接着層の厚さの上限値は、化粧シート自体の強度などを考慮して、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、更に好ましくは23μm以下、より更に好ましくは20μm以下である。上述のように、不織布内に接着剤が入り込むことを考慮すると、接着層の厚さは、不織布の厚さ未満とすることが好ましい。なお、接着層の厚さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)等の各種電子顕微鏡を用いて撮影した断面の画像から任意の30箇所についての厚さを測定し、当該30箇所の厚さの平均値とする。
<表面保護層>
表面保護層は、基材の少なくとも一方の面側に設けられる層であり、最表面に位置する層であることが好ましい。表面保護層は、化粧シートに木質素材に近い触感及びマット感を与えるとともに、耐傷性及び耐汚染性などの表面特性を与える層である。
表面保護層は、不織布と、不織布を構成する繊維の間の空隙の少なくとも一部に充填される樹脂を含む樹脂部と、を含む。ここでの「樹脂」は、接着剤を構成する樹脂とは異なる。
不織布の空隙体積に対して樹脂量が少なく樹脂の充填度合いが不十分であり、85度グロス値が3.0未満となる場合、表面保護層の表面は不織布の繊維による起伏が大きく、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)が大きい傾向がある。一方、不織布の空隙体積に対して樹脂量が多すぎ85度グロス値が6.0を超える場合、表面では不織布が樹脂に埋没し、算術平均高さ(Ra)及び最大高さ(Rz)が小さくなる傾向がある。本開示において、表面保護層の表面は、算術平均粗さ(Ra)が2.7μm以上であることが好ましく、3.0μm以上であることがより好ましく、8.0μm以下であることが好ましく、7.0μm以下であることがより好ましい。また、最大高さ(Rz)は、21.0μm以上であることが好ましく、22.0μm以上であることが好ましく、50.0μm以下であることが好ましく、45.0μm以下であることがより好ましい。算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)が上記範囲であることにより、表面保護層の表面における85度グロス値が、3.0以上6.0以下の範囲内となりやすくなる。また、算術平均高さ(Ra)及び最大高さ(Rz)が上記範囲にあることにより、触感に優れる表面保護層を得ることができる。
なお、本明細書において、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)は、JIS B0601:2001に準拠して測定され、カットオフ値を2.5mmとしたときの算術平均粗さ及び最大高さであり、任意の10箇所における測定結果の平均値である。本明細書において、カットオフ値とは、粗さ曲線用のカットオフ値(λc)のことをいう。
樹脂は、不織布の繊維間の空隙の少なくとも一部に充填される。「繊維間の空隙の少なくとも一部に充填される」とは、(1)不織布の基材側にも十分浸透して表面保護層の内部に空隙がほとんどなく、一方で表面保護層の表面では繊維が樹脂に被覆されていても空隙が残存する状態、(2)不織布内で樹脂が完全に充填されていない空隙がランダムに存在する状態、が考えられる。本開示において、表面保護層内に空隙が残存することを許容するが、耐汚染性や耐傷性、表面保護層の表面の85度グロス値等を考慮すると、空隙への充填率は高い方が好ましい。充填率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
また、空隙への樹脂の充填度合いは、充填前後の算術平均粗さの比により表すこともできる。樹脂を充填する前の不織布の表面の算術平均粗さをRa、化粧シートの表面保護層の表面の算術平均粗さをRaとすると、充填前後の算術平均粗さの比は、Ra/Raで表される。上述のように、樹脂量が少なく空隙への樹脂の充填度合いが不十分である場合、不織布の起伏に起因して算術平均粗さRaが大きい傾向があるため、充填前後での算術平均粗さの変化量が小さい。このため、Ra/Raは1に近い値となる。一方、樹脂量が多すぎる場合、不織布が樹脂に埋没して算術平均粗さRaが小さくなる傾向があるため、Ra/Raが小さくなる傾向がある。また、樹脂が含浸しにくい場合にも、不織布が樹脂に埋没して算術平均粗さRaが小さくなる傾向があるため、Ra/Raが小さくなる傾向がある。Ra/Raは、0.15以上0.45以下の範囲内であることが好ましい。Ra/Raが上記範囲にあることにより、樹脂が不織布の繊維間の空隙に十分に充填されつつ、表面保護層の表面で不織布の繊維に起因する粗さを残すことができる。すなわち、Ra/Raが上記の範囲内であることにより、表面保護層の表面における85度グロス値が3.0以上6.0以下の範囲内を満たしやすくなり、触感に優れ、耐汚染性にも優れる化粧シートを得ることが可能となる。Ra/Raは、0.15以上0.35以下であることがより好ましく、0.15以上0.30以下であることが更に好ましい。なお、算術平均粗さRaは、JIS B0601:2001に準拠して測定され、カットオフ値を2.5mmとしたときの算術平均粗さであり、任意の10箇所における測定結果の平均値である。
表面保護層の厚さは、化粧シートの強度、質量、屈曲性等の物性、化粧シートの厚さなどを考慮して、設定することが好ましい。表面保護層の厚さは、好ましくは35μm以上、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは45μm以上である。表面保護層の厚さの上限は、好ましくは120μm以下、より好ましくは110μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
<<不織布>>
不織布は、化粧シートに木質繊維に近い触感を与えるとともに、繊維間に樹脂を担持する役割を果たす。
不織布を構成する繊維としては、特に制限はなく、例えば熱可塑性樹脂繊維、天然繊維、再生繊維、半合成繊維等が挙げられる。本実施形態において、当該繊維としては単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール(ブチラール樹脂);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系樹脂;ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂;ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、フッ素樹脂系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-4フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂により構成される熱可塑性樹脂繊維が好ましく挙げられる。これらの熱可塑性樹脂繊維の中では、形態安定性を考慮すると、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂により構成される熱可塑性樹脂繊維が好ましく、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂により構成される熱可塑性樹脂繊維が好ましい。
本実施形態において、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂は、一種単独で、又は複数種を組み合わせたものであってもよく、例えば、芯がポリエステル樹脂であり、鞘がポリオレフィン樹脂である、二重構造の繊維のような、複合繊維であってもよい。
また、天然繊維としては、コットン(cotton;木綿ともいう。)、羊毛、絹等の天然素材による繊維が挙げられ、再生繊維としては、レーヨン(rayon;人絹ともいう。)、キュプラ(cupra;銅アンモニアレーヨンともいう。)、リヨセル(lyocell)等が挙げられ、半合成繊維としては、トリアセテート、プロミックス(promix)等が挙げられる。
不織布を構成する繊維の繊維径は、特に制限はない。木材に酷似した触感を得やすいこと、後述する樹脂の含浸性等を考慮すると、不織布の平均繊維径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、上限として好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下であることが好ましい。この範囲の平均繊維径を有する繊維からなる不織布は、木材に酷似した触感を得やすい傾向にある。
不織布を構成する繊維の平均繊維径は、電子顕微鏡(300倍)を用いて、不織布の任意の箇所に存在する繊維30本の繊維の幅(直径)を測定し、得られた各測定結果の値を平均することで測定することができる。
不織布を構成する繊維は、例えば、スパンボンド法でフリースを形成し、形成したフリースをサーマルボンド法及びスパンレース法(水流絡合法)等で結合することで形成することができる。また、これらの方法により形成された不織布は、木材に酷似した触感が得られやすい。
不織布を構成する繊維の坪量(樹脂の含浸前)は、好ましくは10g/m以上、より好ましくは15g/m以上であり、上限として好ましくは40g/m以下、より好ましくは30g/m以下、更に好ましくは20g/m以下である。上記範囲の坪量である不織布を用いることにより、樹脂が不織布の内部まで含浸しやすくなり、表面保護層自体の強度を向上させることができる。また、85度グロス値を所定の範囲に調整しやすくできるとともに、化粧シートに優れた触感を与えることができる。
表面保護層の形成に用いる不織布の厚さは、特に制限はないが、化粧シートの強度、質量、屈曲性等の物性、化粧シートの厚さなどを考慮して、選定することが好ましい。また、接着層との接着工程や、樹脂が充填される工程を経ることにより、不織布の厚さが低減することを考慮して、用いる不織布の厚さを選定することが好ましい。不織布の厚さ(樹脂の含浸前)は、好ましくは80μm以上、より好ましくは90μm以上、更に好ましくは100μm以上である。不織布の厚さの上限は、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
不織布自体の85度グロス値、すなわち、樹脂を含浸する前の不織布の85度グロス値は、1.5以上4.0以下であることが好ましく、2.0以上3.0以下であることがより好ましい。上記の85度グロス値を有する不織布を用いることにより、樹脂を含浸させて表面保護層としたときに、85度グロス値を3.0以上6.0以下の範囲内に調整しやすくなる。
不織布自体の表面の算術平均粗さ(Ra)は、10μm以上30μm以下であることが好ましく、15μm以上30μm以下であることがより好ましい。また、不織布自体の表面の最大高さ(Rz)は、80μm以上160μm以下であることが好ましく、100μm以上140μm以下であることがより好ましい。上記の算術平均粗さ及び最大高さを有する不織布を用いることにより、化粧シートに優れた触感を付与することができる。なお、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)は、JIS B0601:2001に準拠して測定され、カットオフ値を2.5mmとしたときの算術平均粗さ及び最大高さであり、任意の10箇所における測定結果の平均値である。
<<樹脂部>>
樹脂部は、不織布の形状を維持するとともに、汚れや着色剤等の着肉を阻害し、化粧シートに耐汚染性を付与する役割を果たす。また、表面保護層に適切な硬度を付与し、耐傷性を担保する役割を果たす。また、更に、不織布と一体となって、化粧シートに木質素材に近いマット感を与える役割を果たす。
表面保護層の接触角度は、表面保護層に用いられる樹脂の選定等より調整することができる。一例として、表面保護層に用いられる樹脂中の官能基により、表面保護層の表面の親水性の度合いを変えることができ、この結果、接触角度を変えることができる。例えば、表面保護層を構成する樹脂に含まれる、極性の高い官能基の割合が低い程、表面保護層の表面が親油性となり接触角度が高くなる傾向がある。極性の高い官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などが挙げられる。一方、例えば、表面保護層を構成する樹脂に含まれる、極性の低い官能基あるいは無極性の官能基の割合が高い程、表面保護層の表面が親油性となり接触角度が高くなる傾向がある。極性の低い官能基及び無極性の官能基としては、フェニル基、メチル基などが挙げられる。また、極性の低いポリマー鎖が長い場合も、ポリマー鎖の極性が低くなり、接触角度が高くなる傾向がある。表面保護層を構成する樹脂の極性を変える方法としては、極性の高い官能基の含有量を低い樹脂を用いる、極性の低い官能基を有する樹脂を用いる、などが挙げられる。また、硬化性樹脂においては、架橋密度を高めることによって、表面保護層を形成する樹脂の極性を低減し、接触角度を大きくすることができる。複数の樹脂を縮合反応させて表面保護層を形成する樹脂を形成する場合には、極性の高い官能基が消費されるように、混合比率を設定することにより、接触角度を制御することもできる。
樹脂部に用いる樹脂の種類としては、表面保護層に十分な硬度を与えて耐傷性を確保することを考慮すると、硬化性樹脂を用いることが好ましい。硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。中でも、耐傷性及び生産性を考慮すると、電離放射線硬化性樹脂を用いることが特に好ましい。
樹脂部は、上述の樹脂の他、必要に応じて各種添加剤や溶剤を含んでいてもよい。すなわち、樹脂部の形成には、上記樹脂を含む樹脂組成物を用いることができる。従って、樹脂部は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが特に好ましい。
硬化性樹脂組成物の硬化物の含有量は、樹脂部の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら熱硬化性樹脂に加えて、必要に応じて硬化剤及び硬化触媒等が添加される。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電子線硬化性樹脂組成物及び紫外線硬化性樹脂組成物が代表的なものとして挙げられる。これらの中でも、重合開始剤が不要のため臭気が少なく、架橋密度を高くして耐傷性を良好にしやすいなどの理由から、電子線硬化性樹脂組成物が好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。
電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。また、電離放射線硬化性官能基としては、エポキシ基及びオキセタニル基も挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性化合物は、具体的には、電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマー(「重合性プレポリマー」と呼称されることもある)の中から適宜選択して用いることができる。
電離放射線硬化性化合物は、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物がさらに好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。エチレン性不飽和結合基の数は、樹脂部の硬度に影響を与える。エチレン性不飽和結合基の数が多い程、硬度が高い傾向がある。
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
樹脂の重量平均分子量は、不織布への樹脂の含浸性に影響を与える。具体的に、重量平均分子量が大きい樹脂は、粘度が高いため、不織布の空隙内に浸透しにくく高い充填率を得ることが難しい上、取り扱い性に劣る傾向がある。重量平均分子量が小さい樹脂は、不織布の空隙内に浸透しやすいが、硬化収縮が大きくなる傾向がある。ただし、不織布の繊維間の空隙の大きさ、不織布を構成する繊維の坪量、樹脂組成物中の溶剤の有無による粘度の調整なども、樹脂の含浸性に影響する因子である。また、樹脂の重量平均分子量は、樹脂部の硬度にも影響を与える。具体的に、重量平均分子量が高い程、樹脂部の硬度が低くなる傾向がある。樹脂部の硬度及び不織布の含浸性を考慮すると、重量平均分子量が、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、上限としては好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下である樹脂を選定するとよい。なお、本明細書における重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエ―ション・クロマトグラフィー)によって測定され、標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
上記電離放射線硬化性樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上述のように、エチレン性不飽和結合基の数や重量平均分子量は、樹脂部の硬度に影響を与える。エチレン性不飽和結合基の数及び重量分子量が異なる複数の化合物を混合することにより、樹脂部の硬度を所定の範囲に調整することができる。
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
樹脂部は、フィラーを含んでいても良い。フィラーは、表面保護層に艶消しの意匠を与えるとともに、表面保護層の耐摩耗性を向上させる効果を奏する。
フィラーとしては、シリカ、アルミナなどの無機粒子、アクリル樹脂などからなる樹脂ビーズ、などが挙げられる。耐摩耗性を考慮すると、フィラーは無機粒子であることが好ましく、シリカ粒子であることがより好ましい。フィラーの平均粒子径は、3μm以上20μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径は、レーザ光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50として測定したものを意味する。
フィラーの含有量は、艶消し効果及び耐摩耗性向上を考慮すると、樹脂100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。フィラーの含有量の上限としては、表面の耐傷性、耐汚染性、触感などを考慮し、樹脂100質量部に対して70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
<化粧シートの製造方法>
本開示の化粧シートは、基材上に接着層を設ける工程1、当該接着層と不織布とを接着する工程2、及び、不織布を構成する繊維間の空隙内に樹脂を充填し、表面保護層を形成する工程3を経て製造することができる。工程1は、基材上に装飾層を設ける工程1-1と、装飾層上に接着層を設ける工程1-2とを含んでもよい。
工程1-1において、基材に装飾層を設ける。装飾層を設けない場合は、工程1-1を省略することができる。
装飾層は、上記装飾層の形成に用いられる樹脂組成物を、好ましくはグラビア印刷、シルクスクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷等により形成することが好ましく、大ロットの場合はグラビア印刷、小ロットの場合はインキジェット印刷を採用することがより好ましい。
工程1-2において、装飾層の上に接着層を設ける。
例えば、接着層を形成し得る樹脂として例示した中から適宜選択し、当該樹脂を含む樹脂組成物を装飾層上に塗布して接着層を形成する。この場合、樹脂組成物の塗布方法は、上記装飾層における樹脂組成物の塗布方法として例示した公知の方法のいずれかを選択して行えばよい。
工程2において、接着層と不織布とを接着する。
工程1-2で形成した接着層上に、不織布を配置する。その後、押出ラミネート(サンドラミネート)、ドライラミネート、熱圧着等により、接着層と不織布とを接着する。この時、押圧力及び加熱温度等の条件を制御することにより、接着層の一部を基材側の不織布の一部の空隙に充填される。
工程3において、不織布の表面に樹脂部を形成する樹脂組成物を塗布する。塗布された樹脂組成物が不織布内に浸透する。これにより、不織布の空隙内に樹脂組成物が充填される。
表面保護層を形成する樹脂組成物の塗布は、上記装飾層における樹脂組成物の塗布方法として例示した公知の方法のいずれかを選択して行えばよい。樹脂組成物の塗布量は、不織布を構成する繊維の坪量、得られる表面保護層の85度グロス値、触感等を考慮して決定する。塗布性及び樹脂の含浸性のため、塗布液の粘度は、ザーンカップ417型 No.3(株式会社離合社製)を用いて測定した際に15秒以上40秒以下の範囲内になるように調整することが好ましい。
不織布の空隙内に樹脂組成物を充填させたのち、樹脂の種類に応じた方法により樹脂組成物を硬化させる。これにより、表面保護層が形成される。
[化粧材]
本開示の化粧材は、被着材と上述した本開示の化粧シートとを有するものである。本開示の化粧材は、例えば、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの表面保護層等が設けられた面と反対側の基材の面とを対向させて積層したものである。
<被着材>
被着材としては、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等が挙げられる。被着材の素材としては、木質部材、金属部材、窯業部材及び樹脂部材等が挙げられる。
木質部材の原料としては、杉、檜、松、ラワン等の各種木材が挙げられる。木質部材の形状としては、木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板、立体形状物品等が挙げられる。
金属部材の原料としては、鉄、アルミニウム等が挙げられる。金属部材の形状としては、板材、鋼板、立体形状物品、シート等が挙げられる。
窯業部材の原料としては、ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等が挙げられる。窯業部材の形状としては、板材、立体形状物品等が挙げられる。
樹脂部材の原料としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等が挙げられる。樹脂部材の形状としては、板材、立体形状物品、シート等が挙げられる。
被着材を構成する部材は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。本開示の化粧材は、被着材がポリプロピレン系樹脂を含む場合に、被着材の耐候性を良好にし得る点で好ましい。
被着材は、上記のなかから用途に応じて適宜選択すればよい。
なお、壁、天井、床等の建築物の内装又は外装用部材;窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具乃至造作部材;として被着材を用いる場合には、被着材の材質は、木質部材、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。また、玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具として被着材を用いる場合には、被着材の材質は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。
被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mmがより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
<化粧材用接着層>
被着材と化粧シートとは、優れた接着性を得るため、接着層(化粧材用接着層)を介して貼り合わせられることが好ましい。
化粧材用接着層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができ、例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が好ましく挙げられる。化粧材用接着層を構成する接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤も適用し得る。
また、化粧材用接着層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して用いることができる。
化粧材用接着層の厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得るために、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
次に、本開示を実施例により、さらに詳細に説明するが、本開示は、この例によってなんら限定されるものではない。
1.評価及び測定
実施例及び比較例の化粧シートについて、以下の評価を行った。また、参考例として後述の不織布1について、下記と同様の評価(1-2、1-6以外)を行った。結果を表1に示す。
1-1.85度グロス値
実施例及び比較例の化粧シートについて、JIS Z 8741:1997に準拠して、85度グロス値を測定した。測定には、3角度表面光沢計(BYK-Gardner社製)を用いた。面内の任意の10箇所について測定を行い、得られた平均値を実施例、比較例及び参考例の85度グロス値とした。
1-2.接触角度
実施例及び比較例の化粧シートを、表面保護層が上面になるように水平面に静置した。水平面に対して垂直方向から、水滴を表面保護層上に滴下し、接触角計(全自動接触角計DMo-702、協和界面科学株式会社製)を用いて、以下に記載した条件で当該層と純水との接触角度を測定した。表面保護層の表面の任意の10箇所について、上記の測定を行い、その平均値を実施例及び比較例における表面保護層の接触角度とした。
・滴下量:2.0μL
・滴下後、測定までの待機時間:100秒
1-3.ナノインデンテーション法による硬度
実施例及び比較例の化粧シートから切断したサンプル(約約5mm×1.5mm)を、包埋板内に配置した。その後、包埋板内にエポキシ樹脂を流し込み、樹脂を硬化させ、ブロック状の包埋サンプルを作製した。ブロック状の包埋サンプルを垂直に切断し、化粧シート断面が露出した測定用サンプルを作製した。
前記測定用サンプルの表面保護層の樹脂部の硬度を、微小領域機械特性評価装置(HYSITRON TI950 TriboIndenter、BRUKER社製)を用いてナノインデンテーション法により測定した。上述の方法で測定点を5箇所選択した。各測定点において、表面保護層の表面に以下の測定条件にてバーコビッチ圧子(材質:ダイヤモンド三角錐)を押し込み、硬度の測定を行った。5箇所の測定点での硬度の平均値を、実施例及び比較例における表面保護層の樹脂部の硬度とした。
(測定条件)
・使用圧子:バーコビッチ圧子(型番:TI-0039、HYSITRON社製)
・押し込み条件:変位制御方式
・最大押込み深さ:100nm
・荷重印加時間:10秒間(速度:10nm/sec)
・保持時間:5秒間
・荷重除荷時間:10秒間(速度:10nm/sec)
1-4.表面粗さ
実施例及び比較例の化粧シートについて、JIS B0601:2001に準拠した方法により、形状解析レーザ顕微鏡(VK-X1000(制御部)/VK-X1050(測定部)、株式会社キーエンス製)を用い、下記の測定条件で表面保護層の表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)を測定した。測定条件は、カットオフ値2.5mmとした。表面保護層の任意の10か所について測定を行い、その平均値を各実施例及び比較例の算出平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)とした。また、参考例の算術平均粗さ(Ra)に対する各実施例及び比較例の算術平均粗さ(Ra)の比(Ra/Ra)を算出した。
1-5.触感
実施例及び比較例の化粧シートについて、任意の成人20人を被験者として触感評価を行った。試験では、表面保護層を手で触った際に触感を十分に感じられるかを被験者に評価させた。試験結果を、以下の指標により評価した。
:十分に触感があると答えた人が20人中20人であった。
A:十分に触感があると答えた人が20人中15人以上19人以下であった。
B:十分に触感があると答えた人が20人中11人以上14人以下であった。
C:十分に触感があると答えた人が20人中10人以下であった。
1-6.外観
実施例及び比較例の化粧シートについて、任意の成人20人を被験者として、目視により外観評価を行った。試験では、表面保護層側から化粧シートを観察したときに、天然木材に近い外観を有している場合を2点、艶が低く、本物とはやや異なる印象と感じられた場合を1点、艶が強すぎ本物と異なる印象と感じられた場合を0点として、被験者に採点させた。合計点を算出し、以下の指標により評価した。
A:合計点数が36点以上
B:合計点数が25~35点
C:合計点数が24点以下
1-7.耐傷性
実施例及び比較例で作製した化粧シートの基材側を、接着剤(2液硬化型水系接着剤、商品名「BA-10L」、ジャパンコーティングレジン社製)を介して、MDF(ホクシン社製、厚み2.7mm)に貼り付け、試験用化粧材を作製した。接着剤の塗布量は、65g/mから88g/mの範囲内となるように調製した。
試験用化粧材をスクラッチテスター試験機(名称:Balanced Beam Adhesion/Mar Tester、BYK-GARDNER社製)に配置した。試験用化粧材の化粧シート表面(表面保護層表面)に対して45°の角度で接するようにスクラッチ刃(φ7mmの円柱形の刃)をセットし、試験用化粧材上でスクラッチ刃を移動させた。100g荷重ずつ徐々に荷重(錘)を高めていき、化粧シート表面に擦り傷、圧痕等が生じるまで試験を繰り返し行い、以下の基準で評価した。
:荷重400gで化粧シート表面に擦り傷、圧痕等が生じた。
A:荷重300gで化粧シート表面に擦り傷、圧痕等が生じた。
B:荷重200gで化粧シート表面に擦り傷、圧痕等が生じた。
C:荷重100gで化粧シート表面に擦り傷、圧痕等が生じた。
1-8.耐汚染性
実施例及び比較例の化粧シートの表面保護層に、黒マジック(マジックインキ、寺西化学工業製、油性)でインクを塗布した。4時間経過後に、エタノールを染み込ませたティッシュで拭き取り、インクの残存を目視で下記の指標で採点した。
2点:インクの残存無し
1点:わずかにインクの残存が認められる
0点:ほとんどのインクが残存する
表面保護層の任意の10点について上記採点を行い、合計点数を算出し、以下の基準で耐汚染性を評価した。
A:合計点数が20点
B:合計点数が17~19点
C:合計点数が16点以下
2.化粧シートの作製
[実施例1]
紙基材(「HPT30(品番)」、北越紀州製紙株式会社製、厚さ:60μm、坪量:45g/m)上に、装飾層用インキ(アクリル系樹脂をバインダーとし、顔料としてカーボンブラックを含有するインキ)を用いてグラビア印刷により塗布し、厚さ2~6μmの木目模様の装飾層を形成した。
接着層を形成する樹脂の組成物(2液硬化型ウレタン系接着剤)を、グラビア印刷により塗布し、厚さ4μmの接着層を形成した。
接着層上に、不織布1(レーヨン繊維からなる不織布、金星製紙株式会社製、厚さ:80μm、坪量:17g/m)を載置した。その後、ドライラミネートにより、不織布と接着層とを接着した。
不織布1上に、下記処方の樹脂部用塗布液1(電離放射線硬化性樹脂組成物)をグラビア印刷により塗布し、不織布1に該塗布液を浸透させた。塗布量(ドライベース)は、8g/mとした。次いで、不織布1側から電子線(加速電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射して、樹脂部用塗布液を架橋硬化した。これにより、厚み40μmの表面保護層を形成し、実施例1の化粧シートを得た。
<樹脂部用塗布液1>
・6官能電子線硬化性ウレタンアクリレート 60質量部
・2官能電子線硬化性ウレタンアクリレート 40質量部
・球形シリカ粒子(平均粒子径4μm) 樹脂成分100質量部に対して20質量部
[実施例2]
樹脂部用塗布液1の塗布量を13g/mとし、厚み45μmの表面保護層を形成したこと以外は実施例と同様にして、実施例2の化粧シートを得た。
[実施例3]
不織布2(レーヨン繊維からなる不織布、金星製紙株式会社製、厚さ:60μm、坪量:10g/m)を用い、厚み30μmの表面保護層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
[実施例4]
下記処方の樹脂部用塗布液2(電離放射線硬化性樹脂組成物)を不織布に塗布し、厚み40μmの表面保護層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。
<樹脂部用塗布液2>
・6官能電子線硬化性ウレタンアクリレート樹脂 40質量部
・2官能電子線硬化性ウレタンアクリレート樹脂 60質量部
・球形シリカ粒子(平均粒子径4μm) 樹脂成分100質量部に対して20質量部
[比較例1]
実施例1と同様にして、基材上に装飾層、接着層及び不織布を積層した。
不織布上に、下記処方の樹脂部用塗布液3(2液硬化型樹脂組成物)をグラビア印刷により塗布し、不織布に該塗布液を浸透させた。塗布量は、12g/mとした。その後、70℃で48時間の養生を行った。これにより、厚み45μmの表面保護層を形成し、比較例1の化粧シートを得た。
<樹脂部用塗布液3>
・アクリルポリオール樹脂 100質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 5質量部
・球形シリカ粒子(平均粒子径5μm) 樹脂成分100質量部に対して15質量部
[比較例2]
樹脂部用塗布液1の塗布量を5g/mとし、厚み40μmの表面保護層を形成したこと以外は実施例と同様にして、比較例2の化粧シートを得た。
[比較例3]
樹脂部用塗布液1の塗布量を17g/mとし、厚み50μmの表面保護層を形成したこと以外は実施例と同様にして、比較例3の化粧シートを得た。
3.評価結果
評価結果を表1に示す。
Figure 2023040731000002
実施例1~4の化粧シートは、表面保護層の表面の85度グロス値が3.0から6.0の範囲内であった。実施例1~4の化粧シートは、いずれも、触感に優れ、天然木材に近い外観を有し、耐汚染性にも優れていた。この結果から、不織布の繊維間の空隙にインキが入り込まないように、空隙内に樹脂組成物が十分に充填されており、かつ、表面では不織布の繊維による凹凸が残るように樹脂組成物が不織布を被覆している、と言える。
また、実施例1~4の化粧シートは、接触角度が80度以上であり、耐汚染性に優れていた。
実施例1~3の結果から、不織布の坪量及び樹脂組成物の塗布量の組み合わせを適切に選定することにより、85度グロス値を3.0から6.0の範囲内に調整できることが示されている。
比較例1は、従来のステイナブル性を有する化粧シートである。比較例1は、実施例と不織布を同じとして、樹脂の種類を変えることによりの接触角度を変えた例であると言える。比較例1は、樹脂部用塗布液の塗布量が同程度である実施例2と特に対比できる。比較例1は接触角度が小さいため、耐汚染性に劣ることが理解できる。これは、比較例1ではインキがはじかれにくく、不織布内に残存する空隙にインキが染み込みやすかったためと考えられる。
また、比較例1は耐傷性に劣る結果となった。比較例1では表面保護層の白化が認められた。このことから、比較例1は表面保護層の樹脂の硬度が高く、表面保護層にクラックが発生したために、十分な耐傷性が得られなかったと考えられる。
実施例1,2、比較例2,3及び参考例は、同じ不織布に対して樹脂組成物の塗布量を変えた例である。参考例は、樹脂の塗布量が0g/mであることに相当する。これらの結果から、塗布量を増加させるに従い、85度グロス値が増加する傾向があることが理解できる。
比較例2は、85度グロス値が低い値となっている。比較例2の化粧シートは、参考例と同様に、触感に優れるものの、耐汚染性が悪かった。これらの結果から、樹脂塗布量が少ないと、不織布の空隙への樹脂の充填が不十分となり、特に表面で空隙に樹脂が充填されていない不織布が露出したため、85度グロス値が低くなったと言える。不織布に多くの空隙が残存し、インクが染み込みやすいという点で、比較例2は「ステイナブル性を有する」と言える。
なお、比較例2は接触角度が大きかった。参考例に示すように、不織布自体の接触角度が高かった。つまり、比較例2の結果は、樹脂の充填が不十分で不織布が露出したため、接触角度に不織布の影響が大きく表れたことを示している。
比較例3は、85度グロス値が高い値となっている。比較例3の化粧シートは、凹凸による触感がほとんど感じられず、算術平均粗さ及び最大高さも、実施例1等よりも低い結果となった。また、比較例3の化粧シートは、艶が高いとの評価結果が多かった。一方、耐汚染性は優れていた。これらの結果から、樹脂塗布量が多すぎると、不織布が樹脂に埋没し、表面保護層の表面の凹凸が小さくなったため、85度グロス値が上昇することが理解できる。
また、比較例3は、実施例1,2に比べて耐傷性が向上している。これは、比較例3では、上述のように不織布が埋没し、表面は電離放射線樹脂組成物の硬化物で覆われたためと考えられる。なお、比較例2及び参考例において耐傷性が良好である理由は、使用した不織布が柔軟であり、上記の評価では傷が付きにくいものであったためと考えられる。
10 化粧シート
20 基材
30 装飾層
31 着色層
32 絵柄層
40 接着層
50 表面保護層
51 不織布
52 樹脂部

Claims (10)

  1. 基材と、
    前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた接着層と、
    前記接着層の前記基材が設けられた面の他方の面側に設けられた表面保護層と、
    を備え、
    前記表面保護層は、不織布と、前記不織布の繊維間の空隙の少なくとも一部に充填された樹脂を含む樹脂部と、を含み、
    前記表面保護層の前記接着層が設けられた面と他方の面は、JIS Z 8741:1997に準拠して測定される85度グロス値が3.0以上6.0以下であり、
    前記表面保護層の前記接着層が設けられた面と他方の面における純水の接触角度が、80度以上である、化粧シート。
  2. 前記85度グロス値が、4.0以上5.6以下である、請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記樹脂部のナノインデンテーション法によって測定された硬度が、150MPa以上である、請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
  4. 前記樹脂部のナノインデンテーション法によって測定された硬度が、240MPa未満である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の化粧シート。
  5. 前記樹脂部が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化粧シート。
  6. 前記表面保護層の厚みが、35μm以上である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の化粧シート。
  7. 前記表面保護層の厚みが、250μm以下である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の化粧シート。
  8. 前記基材と前記接着層との間に、装飾層を更に含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の化粧シート。
  9. 前記装飾層が、木目模様を含む、請求項8に記載の化粧シート。
  10. 請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の化粧シートと、被着材とを有する化粧材。
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