===第1実施形態===
<印刷システム100の基本的な構成>
図1は、本実施形態の印刷システム100の概要説明図である。図2は、印刷システム100のブロック図である。
以下の説明では、キャリッジ21の移動方向を「走査方向」又は「左右方向」と呼ぶことがある。また、媒体Mの移動方向を「搬送方向」と呼び、媒体Mの供給側を「上流(上流側)」と呼び、印刷後の媒体Mの排出側を「下流(下流側)」と呼ぶことがある。
印刷システム100は、媒体Mにインク滴を吐出して印刷を行うためのシステムである。印刷システム100は、印刷装置1と、コンピューター70とを有する。但し、コンピューター70の果たす機能を印刷装置1が実現することによって、印刷システム100が印刷装置単体で構成されても良い。
コンピューター70は、印刷装置1を制御するための印刷制御装置である。コンピューター70は、印刷装置1を制御するための指令コードを生成し、その指令コードを印刷装置1に送信する。コンピューター70から指令コードを受信した印刷装置1は、指令コードに沿って各部を制御して、媒体Mへの印刷を行うことになる(後述)。コンピューター70は、例えば汎用のパーソナルコンピューター70であり、印刷制御プログラム(いわゆるプリンタドライバ)がインストールされている。コンピューター70のCPUは、印刷制御プログラム(いわゆるプリンタドライバ)を実行することにより、指令コードを生成する印刷制御部として機能する。
印刷装置1は、媒体Mにインク滴を吐出して印刷を行うための装置である。本実施形態の印刷装置1は、媒体Mに紫外線硬化型インク(いわゆるUVインク)を吐出し、媒体M上に形成されたドットに紫外線を照射してドットを硬化させるUVプリンタである。本実施形態の印刷装置1は、キャリッジ部20と、搬送部30と、印刷部40と、照射部50と、コントローラー60と、を備えている。
キャリッジ部20は、キャリッジ21を走査方向(左右方向)に往復移動させるためのユニットである。キャリッジ部20は、キャリッジ21と、キャリッジ用モーター22と、キャリッジガイド24とを有する。キャリッジ21は、走査方向に往復移動する部材である。キャリッジ21には、ヘッド41及び照射部50が搭載されており、キャリッジ21が走査方向に往復移動することによって、ヘッド41及び照射部50を走査方向に往復移動させることができる。キャリッジ用モーター22は、キャリッジ21を走査方向に移動させるための駆動部である。キャリッジガイド24は、キャリッジ21を走査方向に案内するための部材(ガイド)である。キャリッジガイド24は、走査方向に沿ったレール状の部材として構成されている。コントローラー60は、キャリッジ用モーター22の駆動を制御することによって、キャリッジ21の移動を制御することになる。
搬送部30は、媒体Mを搬送するための機構である。搬送対象となる媒体Mは、ロール紙のような長尺状の印刷媒体でも良いし、単票用紙でも良い。また、媒体Mは、紙に限られるものではなく、フィルムや布などの媒体でも良い。
図3Aは、搬送部30(及び照射部50)の概略説明図である。搬送部30は、搬送ローラー31と、搬送用モーター32とを有する。搬送ローラー31は、媒体Mをプラテン上で搬送するための回転ローラーである。搬送ローラー31とピンチローラー34との間に媒体Mを挟んだ状態で搬送ローラー31を回転させることによって、媒体Mを搬送方向に搬送することができる。搬送用モーター32は、搬送ローラー31を回転させるための駆動部である。コントローラー60は、搬送用モーター32の駆動を制御することによって、媒体Mの搬送を制御することになる。なお、搬送部30は、搬送ローラー31を用いた構成に限られるものではない。例えば、短尺の媒体Mを載置台(フラットベッド)に載置させ、載置台を搬送方向に移動させることによって、媒体Mを搬送方向に搬送しても良い。
印刷部40は、媒体Mにインク滴を吐出するためのユニットである。印刷部40は、ヘッド41と、ヘッド駆動部42とを有する。ヘッド41は、インクを吐出するための複数のノズル列44(図3B参照)を有している。ヘッド駆動部42は、ヘッド41の各ノズ
ルからのインク滴の吐出/非吐出を行わせる駆動部である。ヘッド駆動部42は、例えばヘッド41がピエゾ式であればピエゾ素子を駆動する駆動部である。ヘッド41は、キャリッジ21に搭載されており、キャリッジ21とともに走査方向に移動可能である。コントローラー60は、ヘッド駆動部42を制御することによって、ヘッド41からのインク滴の吐出を制御することになる。
図3Bは、ヘッド41のノズル列44と照射部50の配置の説明図である。
ヘッド41は、ノズル列44を複数有している。複数のノズル列44は、走査方向に並んで配置されている。それぞれのノズル列44は、搬送方向に並ぶ複数のノズル45から構成されている(図3Bの点線領域の拡大図参照)。以下の説明では、ノズル列44の搬送方向の長さをL1とする。
ヘッド41は、カラーインクを吐出する複数のカラーインクノズル列と、特殊インクを吐出する特殊インクノズル列とを有している。カラーインクは、媒体Mにカラー画像を印刷するためのインクであり、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどの有色インクが含まれる。また、カラーインクノズル列には、シアンインクを吐出するシアンインクノズル列、マゼンタインクを吐出するマゼンタインクノズル列、イエローインクを吐出するイエローインクノズル列、ブラックインクを吐出するブラックインクノズル列などが含まれる。特殊インクには、クリアーインクのような透明(半透明も含む)なインクや、白インク・銀インクなどが含まれる。特殊インクであるクリアーインクには、画像の光沢を制御するためのグロスインクや、媒体Mの下地を調整するプライマーインク(下地調整インク)などが含まれる。特殊インクノズル列には、グロスインクノズル列や、プライマーインクノズル列などが含まれる。
本実施形態では、ヘッド41から吐出されるインクは、光硬化型インクである。光硬化型インクは、光が照射されると硬化するインクである。ここでは、光硬化型インクは、紫外線硬化型インク(UVインク)であるが、他の波長の光が照射されて硬化するインクであっても良い。光硬化型インクは、光の照射前には流動性を有しているが、所定の照射量の光が照射されると硬化する性質を有する。完全に硬化しない程度の照射量で光硬化型インクに光が照射されると、内部は未硬化であるが、表面は硬化した状態となる。以下の説明では、完全に硬化する前の状態(内部は未硬化であるが、表面は硬化した状態)のことを「半硬化」又は「半硬化状態」と呼ぶことがある。
照射部50は、光硬化型インクを硬化させるための光を照射するユニットである。本実施形態では、照射部50は、紫外線を照射するLEDランプで構成されている。但し、照射部50は、紫外線以外の光を照射しても良いし、LEDランプ以外の構成であっても良い。
照射部50は、ノズル列44よりも搬送方向に長い領域に光を照射可能に構成されている。照射部50は、LEDアレイ50Aと、レンズアレイ50Bと、枠体50Cとを有する(図3A参照)。LEDアレイ50Aは、複数のLEDランプ(発光部)を搬送方向に配列させて構成されている。レンズアレイ50Bは、レンズを搬送方向に配列させて構成されている。LEDアレイ50Aから照射された光は、レンズアレイ50Bを介して媒体Mに照射されることになる。枠体50Cは、LEDアレイ50Aとレンズアレイ50Bを収容する収容体である。枠体50Cは、所定の領域(照射部50に対向する領域)の外側に光が漏洩することを抑制する機能も有する。以下の説明では、照射部50の搬送方向の長さ(照射部50の照射領域(後述)の搬送方向の長さ)をL2とする。なお、照射部50の長さL2は、ノズル列44の長さL1の1.5倍より長く2.0倍未満であり、具体的には、ノズル列44の長さL1の1.7~1.9倍に設定されている。照射部50の上
流側の一部(後述する上流側照射部52及び中間照射部53)は、ノズル列44と走査方向に並ぶように配置されている。照射部50の下流側の一部(後述する下流側照射部54)は、ノズル列44の下流端よりも搬送方向の下流側に突出するように、配置されている。なお、照射部50の長さは、ランプの開口の長さでなくても良く、ランプが照射する範囲(照射エリア)の長さでも良い。
照射部50は、キャリッジ21に搭載されており、キャリッジ21(及びヘッド41)とともに走査方向に移動可能である。キャリッジ21には一対の照射部50が搭載されており、一対の照射部50は、走査方向からヘッド41を挟むように、ヘッド41の左右にそれぞれ配置されている。コントローラー60は、照射部50の点灯と消灯を制御可能である。
コントローラー60は、印刷装置1の制御を司る制御部である。コントローラー60は、コンピューター70からの指令コードに基づいて、印刷装置1の駆動部(キャリッジ用モーター22、搬送用モーター32、ヘッド駆動部42など)を制御する。
<ドット形成の様子について>
図4A~図4Fは、ドット形成の様子の説明図である。後述するように、本実施形態では、ドットの形成と並行して照射部50から光を照射することも行われるが、まず、ドットの形成のみに着目して説明する。また、ヘッド41には複数のノズル列44が設けられているが、ここでは、説明の簡素化のため、1つのノズル列44のドットの形成を説明する。
図4A及び図4Bに示すように、コントローラー60は、キャリッジ21を走査方向に移動させ、ヘッド41(ノズル列44)を走査方向に移動させながらノズルからインクを吐出させて、媒体Mにドットを形成する。以下の説明では、キャリッジ21を走査方向に移動させる動作のことを「パス」と呼ぶことがある。図4Bには、1回のパスでドットを形成可能な領域(印刷領域)がハッチングで示されている。印刷領域は、キャリッジ21が媒体Mを横切るように走査方向に移動する間に、ノズル列44が対向する領域である。
コントローラー60は、キャリッジ21を走査方向に移動させた後(ドットを形成した後)、図4C及び図4Dに示すように、媒体Mを搬送方向に搬送させる。以下の説明では、この動作のことを「搬送動作」と呼ぶことがある。搬送動作によって、直前のパスの印刷領域の下流側は、次のパス(図4E及び図4F参照)の印刷領域外に排出されるとともに、媒体Mの未印刷の領域が次の印刷領域の上流側に供給されることになる。
コントローラー60は、搬送動作の後、図4E及び図4Fに示すように、次のパスを行わせる。このように、コントローラー60は、パスと搬送動作とを交互に繰り返し、媒体Mにドットを形成することになる。搬送動作時の搬送長さ(搬送量)が、印刷領域の搬送方向の長さよりも短い場合には、図4Fに示すように、印刷領域は、前回のパスの印刷領域(図4B参照)の一部と重複することになる。
図5Aは、図4A~図4Fのドット形成の様子を別の方法で示した説明図である。図5Aには、媒体Mに対する各パスのノズル列44の位置(相対位置)が示されている。既に説明したように、ヘッド41は走査方向に移動するだけで搬送方向には移動しないが、図5Aに示すように、媒体Mに対するノズル列44の位置を変化させることによって、各パスのドット形成の様子を示すことが可能である。
図5Bは、マルチパス印刷の説明図である。マルチパス印刷とは、媒体Mの各領域に対して複数回のパスを行う印刷である。図5Bには、媒体Mの各領域に対して4回のパスを
行う4パス印刷の様子が示されている。
図5Bの「領域1」は、1回分のパス(4回目のパス)で印刷された領域である。4パス印刷の場合、領域1には、およそ1/4のドットが形成されている。図5Bの「領域2」は、2回分のパス(3、4回目のパス)で印刷された領域である。4パス印刷の場合、領域2には、およそ半分のドットが形成されている。図5Bの「領域3」は、3回分のパス(2~4回目のパス)で印刷された領域である。4パス印刷の場合、領域3には、およそ3/4のドットが形成されている。図5Bの「領域4」は、4回分のパス(1~4回目のパス)で印刷された領域である。「領域4」には、各パス(1~4回目のパス)で形成されたドットが搬送方向に分散して配置されている。このように、マルチパス印刷は、各パスで形成されるドットを搬送方向に分散させることができるという特徴がある。4パス印刷の場合、領域4には、形成すべきドットが全て形成されている。4パス印刷の場合、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)は、印刷領域の搬送方向の長さの約1/4となる。このため、ノズル列44の全てのノズルからインクを吐出させると、4パス印刷の場合、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)は、ノズル列44の長さL1の約1/4となる。
図6は、ノズル列44の半分を用いた4パス印刷を行った場合の説明図である。図中には、ノズル列44のうちのインクを吐出する部位にハッチングを施している。なお、ハッチングの無い部位のノズルは不使用であり、ハッチングの無い部位のノズルからはインクは吐出されないものとする。
本実施形態では、それぞれのノズル列44は、上流側ノズル列441と下流側ノズル列442の2つに分けられており、コントローラー60は、2分割された上流側ノズル列441と下流側ノズル列442のそれぞれのインクの吐出を制御可能である。上流側ノズル列441は、2分割されたノズル列44のうちの搬送方向上流側のノズル列である。下流側ノズル列442は、2分割されたノズル列44のうちの搬送方向下流側のノズル列であり、上流側ノズル列441の搬送方向下流側のノズル列である。なお、上流側ノズル列441と下流側ノズル列442は互いに隣接しているため、上流側ノズル列441と下流側ノズル列442との間に別のノズル列は介在していない。
上流側ノズル列441と下流側ノズル列442は、ほぼ均等に分割されている。例えば、ノズル列44が180個のノズルから構成されている場合、上流側ノズル列441は、上流側の90個のノズルから構成されている。例えば、ノズル列44が180個のノズルから構成されている場合、下流側ノズル列442は、下流側の90個のノズルから構成されている。以下の説明では、上流側ノズル列441の搬送方向の長さ(又は下流側ノズル列442の搬送方向の長さ)をL11とする。
図6に示すように、ノズル列44の半分を用いて4パス印刷を行う場合においても、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)は、印刷領域の搬送方向の長さの約1/4となる。但し、実質的にノズル列44の長さが半分になるため、ノズル列44の半分のノズルからインクを吐出させると、4パス印刷の場合、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)は、ノズル列44の長さL1の約1/8となる。つまり、ノズル列44の半分を用いて4パス印刷を行う場合、ノズル列44の全てのノズルからインクを吐出させたときと比べて、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)は、約1/2になる。
図7Aは、全てのノズルを用いて4パス印刷を行う場合のn回目(n>4)のパスのドット形成の様子の説明図である。図7Bは、ノズル列44の半分を用いて4パス印刷を行う場合のn回目(n>4)のパスのドット形成の様子の説明図である。図に示すように、4回目以降のパスで印刷される印刷領域を4つの領域に分割し、搬送方向上流側から「領域1」、「領域2」、「領域3」、「領域4」とする。この場合においても、「領域1」
は、1回分のパスで印刷された領域となり、およそ1/4のドットが形成される。同様に、「領域2」は、2回分のパスで印刷された領域となり、およそ半分のドットが形成される。「領域3」は、3回分のパスで印刷された領域となり、およそ3/4のドットが形成される。「領域4」は、4回分のパスで印刷された領域となり、形成すべきドットが全て形成されている。また、領域4の搬送方向下流側に、領域5以降の各領域は、「領域4」と同様に、4回分のパスで印刷された領域となり、形成すべきドットが全て形成されている。各領域の搬送方向の長さ(幅)は、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)に相当する。以下の説明では、図7Aや図7Bに示すように或るパスのドット形成の様子を図示するだけで、図5Bや図6に示すマルチパス印刷を説明することがある。
<照射部50について>
図3Bに示すように、本実施形態では、照射部50は、上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54の3つに分割されており、コントローラー60は、3分割された上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54のそれぞれの点灯と消灯を制御可能である。
上流側照射部52は、3分割された照射部50のうちの搬送方向上流側の照射部である。上流側照射部52は、上流側ノズル列441と走査方向に並んで配置されている。上流側照射部52は、上流側ノズル列441の搬送方向の範囲と重複している。このため、上流側照射部52は、上流側ノズル列441によって形成された直後のドットに光を照射可能である(上流側ノズル列441の印刷領域に光を照射可能である)。
中間照射部53は、3分割された照射部50のうち、上流側照射部52の搬送方向下流側に隣接した照射部である。中間照射部53は、下流側ノズル列442と走査方向に並ぶように配置されている。中間照射部53は、下流側ノズル列442の搬送方向の範囲と重複しており、下流側ノズル列442によって形成された直後のドットに光を照射可能である。なお、中間照射部53は上流側照射部52と隣接しているため、上流側照射部52と中間照射部53との間に別の照射部は介在していない。
上流側照射部52及び中間照射部53を合わせて、印刷領域照射部51と呼ぶことがある。印刷領域照射部51は、照射部50のうちの搬送方向上流側の照射部である。印刷領域照射部51は、ノズル列44と走査方向に並んで配置されている。印刷領域照射部51は、ノズル列44の搬送方向の範囲と重複している。このため、印刷領域照射部51は、ノズル列44によって形成された直後のドットに光を照射可能である。
下流側照射部54は、3分割された照射部50のうち、中間照射部53の搬送方向下流側に隣接した照射部である。下流側照射部54は、下流側ノズル列442の搬送方向の範囲と重複しておらず、下流側ノズル列442よりも搬送方向下流側に配置されている。なお、下流側照射部54は中間照射部53と隣接しているため、下流側照射部54と中間照射部53との間に別の照射部は介在していない。下流側照射部54のことを非印刷領域照射部55と呼ぶことがある。
上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54は、ほぼ均等に分割されている。以下の説明では、上流側照射部52(又は中間照射部53又は下流側照射部54)の搬送方向の長さをL21とする。本実施形態では、上流側照射部52の長さL21は、上流側ノズル列441の長さL11(ノズル列44の長さLの半分)よりも若干長い(L21>L11)。
図8は、照射部50の照射強度のグラフである。グラフの横軸は、搬送方向の位置を示している。グラフの縦軸は、単位面積当たりの光の照射強度(単位:mW/cm2)を示
している。
照射部50の全ての領域から光を照射した場合、実線のグラフに示すように、照射部50の中央部において、照射強度が最大値Pmaxになる。図中では、最大値Pmaxの半値をP1としている。ここでは、半値幅が、照射部50の搬送方向の長さに相当するように設定されている。照射強度がP1となる搬送方向上流側の位置(グラフの丸1の位置)は、上流側照射部52の上流端の位置に相当する。照射強度がP1となる搬送方向下流側の位置(グラフの丸2の位置)は、下流側照射部54の下流端の位置に相当する。P1は、光硬化型インクを硬化(半硬化を含む)させることが可能な照射強度を有する。このため、照射部50の全ての領域から光を照射した場合、照射部50と対向する領域は、光硬化型インクを硬化(又は半硬化)させることが可能な光が照射されることになる。
なお、照射部50の照射領域とは、狭義には、光を照射したときに所定の照射強度(ここではP1)以上になる領域を意味し、ここでは照射部に対向する領域になるが、広義には、光を照射したときに光の照射される領域を意味する。
照射部50の全ての領域から光を照射した場合に、照射強度がP1となる位置での照射強度の変化(グラフの丸1、丸2の位置での傾き)は、比較的急峻である。これは、図3Aに示すように、照射部50の枠体50Cが、照射領域(照射部50に対向する領域)の外側に光が漏洩することを抑制しているためである。このため、照射領域(照射部50に対向する領域)の外側に光が漏洩する領域は、僅かである。
印刷領域照射部51(上流側照射部52及び中間照射部53)を点灯させつつ、下流側照射部54を消灯させた場合、照射強度がP1となる搬送方向上流側の位置(グラフの丸1の位置)は、上流側照射部52の上流端の位置に相当する。この位置での照射強度の変化(グラフの丸1の位置での傾き)は、比較的急峻である。このため、上流側照射部52よりも上流側に光が漏洩する領域は、僅かである。照射強度がP1となる搬送方向下流側の位置(グラフの丸3の位置)は、中間照射部53の下流端の位置に相当し、中間照射部53と下流側照射部54との境界部の位置に相当する。この位置での照射強度の変化(グ
ラフの丸3の位置での傾き)は、比較的緩やかとなる。これは、中間照射部53と下流側
照射部54との境界部には、枠体50Cのように光を遮る部材が無いため、中間照射部53から照射された光が、中間照射部53よりも搬送方向下流側(下流側照射部54と対向する領域)に漏洩するためである。このため、中間照射部53よりも下流側に光が照射される領域は、比較的広い領域(上流側照射部52よりも上流側に光が漏洩する領域よりも広い領域)となる。
非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を点灯させつつ、印刷領域照射部51(上流側照射部52及び中間照射部53)を消灯させた場合、照射強度がP1となる搬送方向下流側の位置(グラフの丸2の位置)は、下流側照射部54の下流端の位置に相当する。この位置での照射強度の変化(グラフの丸2の位置での傾き)は、比較的急峻である。このため、下流側照射部54よりも下流側に光が漏洩する領域は、僅かである。一方、照射強度がP1となる搬送方向上流側の位置(グラフの丸3の位置)は、下流側照射部54の上流端の位置に相当し、中間照射部53と下流側照射部54との境界部の位置に相当する。この位置での照射強度の変化(グラフの丸3の位置での傾き)は、比較的緩やかとなる。これは、中間照射部53と下流側照射部54との境界部には、枠体50Cのように光を遮る部材が無いため、下流側照射部54から照射された光が、下流側照射部54よりも搬送方向上流側(中間照射部53と対向する領域)に漏洩するためである。このため、下流側照射部54よりも上流側に光が照射される領域は、比較的広い領域(下流側照射部54よりも下流側に光が漏洩する領域よりも広い領域)となる。
上流側照射部52及び下流側照射部54を点灯させつつ、中間照射部53を消灯させた場合、照射部50の中央部において、照射強度がP1よりも小さくなる。ここでは、中間照射部53と対向する領域において、照射強度がP1よりも小さくなるように設定されている。中間照射部53の上流端の位置及び下流端の位置において、照射強度がP1となる。中間照射部53の上流端の位置及び下流端の位置での照射強度の変化は、比較的緩やかとなる。これは、上流側照射部52から光が漏洩するとともに、下流側照射部54から光が漏洩するためである。
<ノズル列44と照射部50との位置関係>
図9は、ノズル列44と照射部50との位置関係を示す図である。図中の右側にはノズル列44(上流側ノズル列441及び下流側ノズル列442)の位置が示されている。図中の中央には照射部50(上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54)の位置が示されている。図中の左側には、照射部50の照射強度のグラフが示されている。このグラフは、図8で示したものと同様である。
ノズル列44の上流端(ノズル列44を構成する複数のノズルのうちの最上流ノズル)の位置は、照射部50の上流端の位置に設定されている。このため、ノズル列44の上流端の位置における照射部50の照射強度は、P1(最大値Pmaxの半値)となるように設定されている。
ノズル列44(上流側ノズル列441及び下流側ノズル列442)は、印刷領域照射部51(上流側照射部52及び下流側照射部54)と走査方向に並ぶように配置されている。印刷領域照射部51の長さ(L21の2倍)は、ノズル列44の長さL1よりも長いため、印刷領域照射部51は、ノズル列44の搬送方向の範囲を包含するように配置されている。印刷領域照射部51を点灯させた場合、ノズル列44によって印刷される領域には、照射強度P1を越える光が照射されることになる。つまり、印刷領域照射部51を点灯させた場合、ノズル列44によって印刷される領域には、光硬化型インクを硬化させることが可能な光が照射されることになる。
上流側ノズル列441は、上流側照射部52と走査方向に並ぶように配置されている。上流側照射部52の長さL21は、上流側ノズル列441の長さL11よりも若干長いため、上流側照射部52は、上流側ノズル列441の搬送方向の範囲を包含するように配置されている。上流側照射部52を点灯させた場合、上流側ノズル列441によって印刷される領域には、光硬化型インクを硬化させることが可能な光(照射強度P1を越える光)が照射されることになる。
下流側ノズル列442は、中間照射部53と走査方向に並ぶように配置されている。下流側ノズル列442の上流端(下流側ノズル列442を構成する複数のノズルのうちの最上流ノズル)の位置は、中間照射部53の上流端の位置よりも若干上流側に位置している。但し、中間照射部53は、下流側ノズル列442の搬送方向の大部分の範囲を包含している。上流側照射部52を点灯させ、中間照射部53を消灯させた場合、下流側ノズル列442によって印刷される領域の大部分では、照射強度がP1以下となる。
本実施形態では、ノズル列44の下流端(ノズル列44を構成する複数のノズルのうちの最下流ノズル)の位置は、中間照射部53と下流側照射部54との境界部よりも搬送方向上流側に設定されている。つまり、印刷領域照射部51の搬送方向下流側の少なくとも一部(言い換えると、中間照射部53の搬送方向下流側の少なくとも一部)は、ノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されている。また、下流側照射部54は、ノズル列44の下流端から間隔をあけて搬送方向下流側に配置されている。このため、印刷領域照射部51を点灯させつつ下流側照射部54を消灯させた場合、ノズル列44の下流端
の位置における照射強度P2(図9の左側のグラフ参照)は、P1(最大値Pmaxの半値)を越えた値になる。また、印刷領域照射部51を消灯させつつ下流側照射部54を点灯させた場合、ノズル列44の下流端の位置における照射強度P3は、P1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になる。このように、本実施形態では、印刷領域照射部51を消灯させつつ下流側照射部54を点灯させたときのノズル列44の下流端における照射強度P3は、印刷領域照射部51を点灯させつつ下流側照射部54を消灯させたときの同位置の照射強度P2よりも小さい。
<カラー印刷モードとグロス印刷モード>
図10Aは、カラー印刷モード時のドット形成の様子の説明図である。ここでは、4パス印刷の様子が示されている。なお、図中には1つのカラーインクノズル列だけが示されているが、他のカラーインクノズル列もこのカラーインクノズル列と同様にカラーインクを吐出することになる。
カラー印刷モードでは、コントローラー60は、各パスにおいて、カラーインクノズル列の全てのノズルからカラーインクを吐出させるとともに、印刷領域照射部51(上流側照射部52及び中間照射部53)を点灯させる。なお、カラー印刷モードでは、平滑化の要請がなく、ドットを硬化させれば良いため、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を点灯させても良い。そして、コントローラー60は、このようなパスと、搬送動作とを交互に行わせることになる。「領域1」~「領域4」では、カラーインクによって媒体Mにカラードットが形成されるとともに、形成直後のカラードットに印刷領域照射部51から光が照射され、カラードットが硬化(又は半硬化)することになる。「領域2」~「領域4」では、直前のパスでカラードットが形成された領域に、更にカラードットが形成されることになる。但し、直前のパスで形成されたカラードットは、形成直後に光を照射されて硬化しているため、「領域2」~「領域4」で更にカラードットを形成したときに、カラードットが滲みにくい状態にできる。
本実施形態のカラー印刷モードでは、コントローラー60は、印刷領域照射部51だけでなく、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)も点灯させている。これにより、「領域4」で硬化させたカラードットを、「領域5」以降においても非印刷領域照射部55から照射された光によって、更に硬化させることができる。但し、カラードットに照射される光エネルギーが十分であれば、コントローラー60は、カラー印刷モードの際に非印刷領域照射部55を消灯させても良い。
仮に非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を消灯させたとしても、本実施形態では、印刷領域照射部51の搬送方向下流側の少なくとも一部はノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されているため、ノズル列44の下流端の位置における照射強度P2(図9の左側のグラフ参照)はP1(最大値Pmaxの半値)を越えた値になるので、「領域4」にも比較的高い強度の光が照射されており、カラードットを硬化させることが可能である。
また、仮に非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を消灯させたとしても、本実施形態では、中間照射部53と下流側照射部54との境界部には、枠体50Cのように光を遮る部材が無いため、中間照射部53から照射された光が、中間照射部53よりも搬送方向下流側に漏洩する。このため、形成すべきカラードットが全て形成された後、「領域4」よりも搬送方向下流側の領域(例えば「領域5」)においても、中間照射部53から光が照射されるため、これによりカラードットを更に硬化させることが可能である。
図10Bは、グロス印刷モード時のドット形成の様子の説明図である。
グロス印刷モードでは、コントローラー60は、各パスにおいて、グロスインクノズル列の全てのノズルからグロスインクを吐出させるとともに、印刷領域照射部51を消灯させつつ非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を点灯させる。そして、コントローラー60は、このようなパスと、搬送動作とを交互に行わせることになる。「領域1」~「領域4」では、グロスインクによって媒体Mにグロスドットが形成されることになる。グロス印刷モードでは、印刷領域照射部51は消灯しているため、形成直後のグロスドットには光がほとんど照射されず、形成直後のグロスドットは硬化しない。この結果、媒体M上でグロスドットが徐々に濡れ広がり、平滑化することになる。「領域2」~「領域4」では、直前のパスでグロスドットが形成された領域に、更にグロスドットが形成されることになる。但し、直前のパスで形成されたグロスドットは未硬化であるため、「領域2」~「領域4」で更にグロスドットを形成したときに、未硬化のグロスインクが混ざり合い、連結する。隣り合うドットが連結すると、表面が平滑になる。この結果、「領域4」において形成すべきグロスドットが全て形成されたとき、表面の平滑なグロスインクの膜(光沢膜、光沢層)が形成される。そして、平滑な表面のグロスインクの膜は、「領域4」よりも搬送方向下流側の領域(例えば「領域5」)において、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)から光を照射されることによって、硬化されることになる。これにより、媒体M上に、平滑な表面の光沢層を形成できる。
本実施形態では、印刷領域照射部51の搬送方向下流側の少なくとも一部はノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されており、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)がノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されている。このため、ノズル列44の下流端の位置における照射強度P3(図9の左側のグラフ参照)はP1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になるため、「領域4(及び領域3)」に照射される光(非印刷領域照射部55である下流側照射部54から漏洩する光)は比較的弱い。したがって、「領域4」に形成されたグロスドットは、比較的硬化しにくい状態となる。このため、「領域4」に形成されたグロスドットは濡れ広がり平滑化しやすいので、表面の平滑なグロスインクの膜(光沢層)を安定して形成することができる。
なお、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)から上流側に漏洩した光は、下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)に照射されることになる(図9参照)。このため、「領域1」~「領域3」で形成されたグロスドットは、「領域3」及び「領域4」において非印刷領域照射部55からの漏洩光が2回照射される。一方、「領域4」で形成されたグロスドットは、「領域4」において非印刷領域照射部55からの漏洩光が1回照射される。つまり、「領域1」~「領域3」で形成されたグロスドットと、「領域4」で形成されたグロスドットとで、非印刷領域照射部55からの漏洩光の照射回数が異なることになる。仮に、照射回数が異なることによって、グロスドットの硬化度合いの差が大きくなってしまうと、グロスインクの膜に縞模様が形成されてしまうおそれがある。但し、本実施形態では、図8及び図9に示すように、非印刷領域照射部55から下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)に照射される光の照射強度は弱いため、照射回数の違いによるグロスドットの硬化度合いの差は小さい。加えて、本実施形態では、図8及び図9に示すように、下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)における照射強度の変化は比較的緩やかであり、且つ、本実施形態では照射回数の異なるグロスドットがマルチパス印刷によって分散されるため、グロスドットの硬化度合いの差は目立ちにくい。このような理由から、本実施形態では、非印刷領域照射部55である下流側照射部54から上流側に漏洩した光が下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)に照射されていても、グロスインクの膜に縞模様が形成されることを抑制できる。
<混在印刷モード>
本実施形態では、形成直後に硬化させたドットと、平滑化してから硬化させたドットと
を混在させて印刷する混在印刷モードを実現可能である。混在印刷モードには、光沢カラー印刷モードと、平滑カラー印刷モードと、プライマー印刷モードとが含まれる。いずれの混在印刷モードにおいても、コントローラー60は、各パスにおいて、上流側ノズル列441及び下流側ノズル列442からインクを吐出させつつ、上流側照射部52を点灯させ、中間照射部53を消灯させ、下流側照射部54を点灯させる。そして、コントローラー60は、このようなパスと搬送動作とを交互に行わせることになる。以下、各印刷モードについて説明する。
・光沢カラー印刷モード
図11は、光沢カラー印刷モード時のドット形成の様子の説明図である。光沢カラーモードは、カラードットで構成されたカラー画像の上に、グロスインクで光沢層を形成する印刷モードである。ここでは、4パス印刷による光沢カラー印刷モードが示されている。なお、各ノズル列44の半分を用いて4パス印刷が行われるため、ノズル列44の全てのノズルからインクを吐出させたときと比べて、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)は、約1/2になるものの、光沢層を印刷する際の逆搬送動作が不要となる。図中の右側には、領域2、領域4、領域6、領域8におけるドットの様子が示されている。
光沢カラー印刷モードでは、コントローラー60は、各パスにおいて、カラーインクノズル列の上流側ノズル列441からカラーインクを吐出させ、グロスインクノズル列の下流側ノズル列442からグロスインクを吐出させるとともに、上流側照射部52を点灯させ、中間照射部53を消灯させ、下流側照射部54(非印刷領域照射部55)を点灯させる。そして、コントローラー60は、このようなパスと搬送動作とを交互に行わせることになる。「領域1」~「領域4」では、カラーインクによって媒体Mにカラードットが形成されるとともに、形成直後のカラードットに上流側照射部52から光が照射され、カラードットが硬化(又は半硬化)することになる。「領域2」~「領域4」では、直前のパスでカラードットが形成された領域に、更にカラードットが形成されることになる。但し、直前のパスで形成されたカラードットは、形成直後に光を照射されて硬化しているため、「領域2」~「領域4」で更にカラードットを形成したときに、カラードットが滲みにくい状態にできる。つまり、カラードットから構成されるカラー画像の滲みを抑制できる。
形成すべきカラードットが全て形成された後、「領域5」~「領域8」において、グロスインクによって媒体Mにグロスドットが形成されることになる。中間照射部53は消灯しているため、形成直後のグロスドットには光がほとんど照射されず、形成直後のグロスドットは硬化しない。このため、「領域5」~「領域8」でグロスドットを形成したときに、未硬化のグロスインクが連結し、表面の平滑なグロスインクの膜(光沢膜、光沢層)が形成される。そして、平滑な表面のグロスインクの膜は、「領域8」よりも搬送方向下流側の領域(例えば「領域9」、「領域10」)において、下流側照射部54から光を照射されることによって、硬化されることになる。これにより、カラー画像の上に、平滑な表面の光沢層を形成できる。
なお、下流側ノズル列442の印刷領域に相当する「領域5」~「領域8」には、上流側照射部52や下流側照射部54から漏洩した光が照射されることになる(図8、図9参照)。但し、この領域の大部分における照射強度は、P1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になる。このため、「領域5」~「領域8」に形成されたグロスドットの大部分は硬化しにくい状態であるため、大部分のグロスドットは平滑化しやすい。
本実施形態では、印刷領域照射部51の搬送方向下流側の少なくとも一部はノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されており、下流側照射部54がノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されている。このため、ノズル列44の下流端の位置
における照射強度P3(図9の左側のグラフ参照)はP1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になるため、「領域8(及び領域7)」に照射される光(下流側照射部54から漏洩する光)は比較的弱い。したがって、「領域8」に形成されたグロスドットは、比較的硬化しにくい状態となる。これにより、表面の平滑なグロスインクの膜(光沢層)を安定して形成することができる。
ところで、「領域5」の上流側の一部の領域には、上流側照射部52から照射強度P1を越える光が照射されることになる。このため、「領域5」の上流側の一部の領域に形成されたグロスドットは、形成直後に上流側照射部52から照射強度P1を越える光が照射されるため、このグロスドットは形成直後に硬化(又は半硬化)することになる。但し、照射強度P1を越える光の照射される「領域5」の領域は僅かであること、また、この僅かな領域にマルチパス印刷によって搬送方向に分散してグロスドットが形成されることからすると、形成直後に硬化(又は半硬化)するグロスドットは僅かである。また、「領域6」~「領域8」において、「領域5」で硬化(又は半硬化)したグロスドットの上にグロスドットが形成されることになるため、このとき、「領域5」で硬化(又は半硬化)したグロスドットの上に表面の平滑なグロスインクの膜が形成されることになる。このため、本実施形態では、「領域5」の上流側の一部の領域に形成されたグロスドットは、形成直後に硬化(又は半硬化)することになるが、その影響は軽微である。
光沢カラー印刷モードにおいても、「領域5」~「領域8」に形成されたグロスドットへの照射回数の違いは生じることになる。但し、下流側照射部54から下流側ノズル列442の印刷領域(「領域5」~「領域8」)に照射される光の照射強度は弱いため、照射回数の違いによるグロスドットの硬化度合いの差は小さい。加えて、下流側ノズル列442の印刷領域(「領域5」~「領域8」)における照射強度の変化は比較的緩やかであり、且つ、照射回数の異なるグロスドットがマルチパス印刷によって分散されるため、グロスドットの硬化度合いの差は目立ちにくい。このような理由から、光沢カラー印刷モードにおいても、下流側照射部54から上流側に漏洩した光が下流側ノズル列442の印刷領域(「領域5」~「領域8」)に照射されていても、グロスインクの膜に縞模様が形成されることを抑制できる。
・平滑カラー印刷モード
図12は、平滑カラー印刷時のドット形成の様子の説明図である。平滑カラー印刷モードは、表面の平滑なカラー画像を形成する印刷モードである。ここでは、4パス印刷による平滑カラー印刷モードが示されている。
平滑カラー印刷モードでは、コントローラー60は、各パスにおいて、カラーインクノズル列の上流側ノズル列441及び下流側ノズル列442からカラーインクを吐出させるとともに、上流側照射部52を点灯させ、中間照射部53を消灯させ、下流側照射部54(非印刷領域照射部55)を点灯させる。そして、コントローラー60は、このようなパスと搬送動作とを交互に行わせることになる。「領域1」及び「領域2」では、上流側ノズル列441から吐出されたカラーインクによって媒体Mにカラードットが形成されるとともに、形成直後のカラードットに上流側照射部52から光が照射され、カラードットが硬化(又は半硬化)することになる。「領域2」では、直前のパスでカラードットが形成された領域に、更にカラードットが形成されることになる。但し、直前のパスで形成されたカラードットは、形成直後に光を照射されて硬化しているため、「領域2」で更にカラードットを形成したときに、カラードットが滲みにくい状態にできる。
「領域3」及び「領域4」では、下流側ノズル列442から吐出されたカラーインクによって媒体Mにカラードットが形成されることになる。中間照射部53は消灯しているため、形成直後のカラードットには光がほとんど照射されず、形成直後のカラードットは硬
化しない。この結果、「領域3」及び「領域4」に形成されたカラードット(下流側ノズル列442によって形成されたカラードット)は、媒体M上で徐々に濡れ広がり、平滑化することになる。但し、「領域1」及び「領域2」で形成されたカラードットは既に硬化(又は半硬化)しているため、「領域3」及び「領域4」に吐出された未硬化のカラーインクは、「領域1」及び「領域2」で形成されたカラードットとは混ざらないため、滲みを抑制できる。また、「領域1」及び「領域2」で形成されたカラードットは既に硬化(又は半硬化)しているため、未硬化のカラーインクは、既に硬化したカラードットの間で濡れ広がり、平滑化することになる。「領域3」や「領域4」の未硬化のカラーインクは、「領域4」よりも搬送方向下流側の領域(例えば「領域5」)において、下流側照射部54(非印刷領域照射部55)から光を照射されることによって、硬化されることになる。これにより、媒体M上に、平滑な表面のカラー画像を形成できる。
なお、下流側ノズル列442の印刷領域に相当する「領域3」及び「領域4」には、上流側照射部52や下流側照射部54から漏洩した光が照射されることになる(図8、図9参照)。但し、この領域の大部分における照射強度は、P1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になる。このため、「領域3」及び「領域4」に形成されたカラードットの大部分は硬化しにくい状態であるため、大部分のカラードットは平滑化しやすい。
本実施形態では、印刷領域照射部51の搬送方向下流側の少なくとも一部はノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されており、下流側照射部54がノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されている。このため、ノズル列44の下流端の位置における照射強度P3(図9の左側のグラフ参照)はP1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になるため、「領域4」に照射される光(下流側照射部54から漏洩する光)は比較的弱い。したがって、「領域4」に形成されたカラードットは、比較的硬化しにくい状態となる。これにより、表面の平滑なカラーインクを安定して形成することができる。
ところで、「領域3」の上流側の一部の領域には、上流側照射部52から照射強度P1を越える光が照射されることになる。このため、「領域3」の上流側の一部の領域に形成されたカラードットは、形成直後に上流側照射部52から照射強度P1を越える光が照射されるため、このカラードットは形成直後に硬化(又は半硬化)することになる。但し、平滑カラー印刷モードでは、上流側ノズル列441の吐出するインクと下流側ノズル列442の吐出するインクが同じであるため、「領域3」の上流側の一部の領域のカラードット(形成直後に硬化するカラードット)は、「領域2」で形成されたカラードットとほとんど区別がつかない。このため、「領域3」の上流側の一部の領域のカラードットが、形成直後に硬化しても、カラー画像の画質への影響は無い。
平滑カラー印刷モードでは、「領域3」及び「領域4」に形成されたカラードットへの照射回数に違いが生じることになる。但し、下流側照射部54から下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)に照射される光の照射強度は弱いため、照射回数の違いによるカラードットの硬化度合いの差は小さい。加えて、下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)における照射強度の変化は比較的緩やかであり、且つ、照射回数の異なるカラードットがマルチパス印刷によって分散されるため、カラードットの硬化度合いの差は目立ちにくい。このような理由から、平滑カラー印刷モードにおいても、下流側照射部54から上流側に漏洩した光が下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)に照射されていても、カラー画像に縞模様が形成されることを抑制できる。
・プライマー印刷モード
図13は、プライマー印刷モード時のドット形成の様子の説明図である。プライマー印
刷モードは、媒体M上にプライマーインク(下地調整インク)を平滑に塗布する印刷モードである。ここでは、4パス印刷によるプライマー印刷モードが示されている。
プライマー印刷モードでは、コントローラー60は、各パスにおいて、プライマーインクノズル列の上流側ノズル列441及び下流側ノズル列442からプライマーインクを吐出させるとともに、上流側照射部52を点灯させ、中間照射部53を消灯させ、下流側照射部54(非印刷領域照射部55)を点灯させる。そして、コントローラー60は、このようなパスと搬送動作とを交互に行わせることになる。「領域1」及び「領域2」では、上流側ノズル列441から吐出されたプライマーインクによって媒体Mにドットが形成されるとともに、形成直後のドットに上流側照射部52から光が照射され、ドットが硬化(又は半硬化)することになる。
「領域3」及び「領域4」では、下流側ノズル列442から吐出されたプライマーインクによって媒体Mにドットが形成されることになる。中間照射部53は消灯しているため、形成直後のドットには光がほとんど照射されず、形成直後のドットは硬化しない。この結果、「領域3」及び「領域4」に形成されたドット(下流側ノズル列442によって形成されたドット)は、媒体M上で徐々に濡れ広がることになる。但し、「領域1」及び「領域2」で形成されたドットは既に硬化(又は半硬化)しているため、「領域3」及び「領域4」に吐出された未硬化のプライマーインクは、「領域1」及び「領域2」で形成されたドットとは混ざらずに、既に硬化したドットの間で濡れ広がることになる。「領域3」や「領域4」の未硬化のプライマーインクは、「領域4」よりも搬送方向下流側の領域(例えば「領域5」)において、下流側照射部54から光を照射されることによって、硬化されることになる。これにより、平滑に塗布したプライマーインク(下地調整インク)を媒体M上に定着させることができる。
なお、下流側ノズル列442の印刷領域に相当する「領域3」及び「領域4」には、上流側照射部52や下流側照射部54から漏洩した光が照射されることになる(図8、図9参照)。但し、この領域の大部分における照射強度は、P1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になる。このため、「領域3」及び「領域4」に形成されたドットの大部分は硬化しにくい状態であるため、大部分のドットは平滑化しやすい。
本実施形態では、印刷領域照射部51の搬送方向下流側の少なくとも一部はノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されており、下流側照射部54がノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されている。このため、ノズル列44の下流端の位置における照射強度P3(図9の左側のグラフ参照)はP1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になるため、「領域4」に照射される光(下流側照射部54から漏洩する光)は比較的弱い。したがって、「領域4」に形成されたドットは、比較的硬化しにくい状態となる。これにより、平滑にプライマーインクを塗布することができる。
ところで、「領域3」の上流側の一部の領域には、上流側照射部52から照射強度P1を越える光が照射されることになる。このため、「領域3」の上流側の一部の領域に形成されたドットは、形成直後に上流側照射部52から照射強度P1を越える光が照射されるため、このドットは形成直後に硬化(又は半硬化)することになる。但し、プライマー印刷モードでは、上流側ノズル列441の吐出するインクと下流側ノズル列442の吐出するインクが同じであるため、「領域3」の上流側の一部の領域のドット(形成直後に硬化するドット)は、「領域2」で形成されたドットとほとんど区別がつかない。このため、「領域3」の上流側の一部の領域のドットが、形成直後に硬化しても、媒体M上に定着させたプライマーインクの表面の凹凸に影響は無い。
プライマー印刷モードでは、「領域3」及び「領域4」に形成されたドットへの照射回
数に違いが生じることになる。但し、下流側照射部54から下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)に照射される光の照射強度は弱いため、照射回数の違いによるドットの硬化度合いの差は小さい。加えて、下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)における照射強度の変化は比較的緩やかであり、且つ、照射回数の異なるドットがマルチパス印刷によって分散されるため、ドットの硬化度合いの差は目立ちにくい。このような理由から、プライマー印刷モードにおいても、下流側照射部54から上流側に漏洩した光が下流側ノズル列442の印刷領域(「領域3」及び「領域4」)に照射されていても、媒体M上に定着させたプライマーインクの表面に縞模様が形成されることを抑制できる。
<終端処理>
媒体M上に全ドット(形成すべきドット)を形成した後、一部のドットは、未だ十分なエネルギーの光を照射されておらず、硬化が不足した状態である。このため、硬化不足のドットに対して、媒体M上に全ドットを形成した後においても、硬化不足のドットに対して光を照射する必要がある。このように、全ドットを形成後に硬化不足のドットに光を照射する処理のことを、以下の説明では「終端処理」と呼ぶことがある。
・参考例の終端処理
図14A~図14Cは、参考例の終端処理の説明図である。
図14Aは、媒体Mへの全ドットの形成を完了したときのパスの様子の説明図である。図中の「印刷完了領域」は、媒体M上に形成すべきドットが形成された領域であり、且つ、十分なエネルギーの光が照射されてドットが硬化した領域である。この印刷完了領域よりも搬送方向上流側には、ドットが硬化不足の領域(印刷完了領域と比べて照射された光のエネルギーの少ない領域)がある。以下の説明では、媒体M上に形成すべきドットが形成された領域であり、且つ、ドットが硬化不足の領域のことを、「硬化不足領域」と呼ぶことがある。「硬化不足領域」のうち、「印刷完了領域」に近い領域ほど、照射部50から光を照射された回数(パスの回数)が比較的多く、既に照射されたエネルギーが比較的多い。逆に、「硬化不足領域」のうち、「印刷完了領域」から遠い領域ほど、照射部50から光を照射された回数(パスの回数)が比較的少なく、既に照射されたエネルギーは比較的少ない。ここでは、「印刷完了領域」から近い方から順に、「1パス分」、「2パス分」、「3パス分」の「硬化不足領域」があるものとする。但し、マルチパス印刷におけるパス数や、印刷モードの種類、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)などに応じて、4パス以上分の「硬化不足領域」が存在することもある。各パス分の「硬化不足領域」の搬送方向の長さX(幅)は、媒体M上にドットを形成するときに行われた搬送動作時の搬送長さ(搬送量)に相当する。
終端処理では、図14Aに示す硬化不足領域に対して、照射部50から光を照射することになる。このとき、ドット形成時に照射部50から照射した光のエネルギーよりも強い光を照射させると、終端処理を早期に完了させることができる。但し、この場合、印刷完了領域への光の照射条件と、硬化不足領域への光の照射条件とが異なるため、印刷完了後の印刷完了領域の画質と硬化不足領域の画質とが異なり、印刷ムラが生じるおそれがある。例えば、印刷完了領域と硬化不足領域とで、ドットが形成されてから光が照射されるまでの時間が異なると、ドットの濡れ広がり方が異なり、ドットの形状が異なる結果、印刷完了後における印刷完了領域と硬化不足領域との画質に差が生じて、印刷ムラが生じるおそれがある。このため、終端処理では、印刷完了領域へ光を照射したときと同じ条件になるように、硬化不足領域に対して、照射部50から光を照射することが望ましい。
そこで、参考例の終端処理では、コントローラー60は、ドット形成時と同様の搬送動作(図14B参照)と、ドット形成時と同様のパス(図14C参照)とを繰り返す。ここ
では、コントローラー60は、ドット形成時と同様の搬送動作と、ドット形成時と同様のパスとを3回繰り返すことになる。なお、図14Cに示すように、キャリッジ21を走査方向に移動させるとき、コントローラー60は、ノズルからはインクを吐出させずに、照射部50を点灯させることになる。以下の説明では、このような終端処理に行われるパスのことを「終端用パス」と呼ぶことがある。ここでは、ドット形成時に下流側照射部54を点灯させていたものとし、終端用パスにおいても、下流側照射部54を点灯させるものとする。このような参考例の終端処理によれば、硬化不足領域への光の照射条件が、印刷完了領域への光の照射条件と同じ条件になるため、印刷完了後における印刷完了領域と硬化不足領域の画質が均一になり、印刷ムラを抑制できる。
一方、参考例の終端処理では、媒体Mへの全ドットの形成を完了した後も、更に搬送動作が繰り返されることになる。つまり、参考例の終端処理では、媒体Mへの全ドットの形成を完了した後も、媒体Mを搬送方向下流側へ搬送する必要がある。このため、参考例では、終端処理時に搬送された分の媒体Mを送り出すためのスペースが必要となる。
・本実施形態の終端処理
図15A~図15Cは、本実施形態の終端処理の説明図である。
図15Aは、媒体Mへの全ドットの形成を完了したときのパスの様子の説明図である。この図は、前述の参考例の図14Aと同様である。ここでは、「印刷完了領域」から近い方から順に、「1パス分」、「2パス分」、「3パス分」の「硬化不足領域」があるものとする。また、ここでは、ドット形成時に下流側照射部54を点灯させていたものとする。
本実施形態の終端処理では、コントローラー60は、直前のパス(図15A参照)の後、搬送動作を行わず、図15Bに示すように、1回分の搬送動作に相当する時間だけ待機する待機動作を行う。このような待機動作を設けることにより、硬化不足領域のドットが形成されてから光が照射されるまでの時間を調整できる。なお、この時間の調整は硬化不足領域への光の照射条件を印刷完了領域へ光を照射したときと同じ条件とするためのものであるが、硬化不足領域への光の照射量を確保すれば足りる場合は、上記待機動作は省略可能である。例えば、硬化不足領域において平滑化されている場合(ドットの濡れ広がりが完了している場合)は、平滑化のための待機時間は不要であるため、上記待機動作も不要となる。
待機動作の後、コントローラー60は、図15Cに示すように、キャリッジ21を走査方向に移動させ、ノズルからはインクを吐出させずに照射部50を点灯させる(終端用パス)。終端用パスでは、コントローラー60は、直前のパス(終端用パスを含む)と比べて、照射部50の点灯させる領域を変更させている。具体的には、直前のパスで点灯させた領域よりも、1回分の搬送長さXの分だけ搬送方向上流側になるように、照射部50の点灯させる領域を変更させている。例えば、図15Aに示すパスでは下流側照射部54を点灯させているため、図15Cに示す終端用パスでは、コントローラー60は、下流側照射部54よりも1回分の搬送長さXの分だけ搬送方向上流側となる長さL21の範囲を点灯させる。つまり、コントローラー60は、下流側照射部54の下流端から長さXの範囲を消灯させつつ、その消灯範囲よりも搬送方向上流側の下流側照射部54を点灯させるとともに、中間照射部53の下流側の長さXの範囲を点灯させることによって、下流側照射部54よりも1回分の搬送長さXの分だけ搬送方向上流側となる長さL21の範囲を点灯させる。これにより、媒体Mを搬送させなくても、図14Cの参考例の終端用パスと同様に、硬化不足領域に対して光を照射することができる。
本実施形態では、コントローラー60は、1回分の搬送動作に相当する時間だけ待機す
る待機動作と、直前のパス(終端用パスを含む)と比べて照射部50の点灯させる領域を変更させた終端用パスとを交互に繰り返す。ここでは、コントローラー60は、待機動作と、終端用パスとを3回繰り返すことになる。これにより、図15Aに示す硬化不足領域への光の照射条件が、印刷完了領域への光の照射条件と同じ条件になるため、印刷完了後における印刷完了領域と硬化不足領域の画質が均一になり、印刷ムラを抑制できる。本実施形態によれば、終端処理の際に媒体Mを搬送方向下流側に搬送しなくて済むため、参考例(図14A~図14C参照)と比べて、印刷装置1の省スペース化を図ることができる。
なお、本実施形態では、硬化不足領域の搬送方向の長さに適合させるように照射部50の点灯させる領域を設定しているが、これに限られず、硬化不足領域を含む範囲であれば、硬化不足領域より広い範囲において、照射部50の点灯させる領域を設定してもよい。例えば、硬化不足領域を含むことができる場合には、下流側照射部54の下流端から長さXの範囲を含む下流側照射部54を点灯させるとともに、中間照射部53の下流側の長さXの範囲を点灯させてもよい。すなわち、点灯範囲の変更には点灯範囲を移動(シフト)させるだけでなく、増加させてもよい。また、下流側を消灯させることなく、上流側を点灯させてもよい。また、例えば、硬化不足領域を含むことができる場合には、上流側照射部52及び中間照射部53を点灯させつつ下流側照射部54を消灯させても良い。この場合、印刷完了領域においても光照射が行われることもあるが、印刷完了領域において光照射が行われても印刷完了領域においては硬化が既に完了しているので、印刷品質に問題は生じにくい。一方、照射部50の点灯させる領域に対応させる制御が不要となるので、簡易な構成で印刷完了領域と硬化不足領域の画質が均一になり、印刷ムラを抑制できる。
<変形例の終端処理>
上述の終端処理では、下流側照射部54よりも1回分の搬送長さXの分だけ搬送方向上流側となる長さL21の範囲を点灯させている(図15C参照)。但し、終端処理で点灯させる領域は、これに限られるものではない。変形例では、点灯領域の範囲や長さを変更している。なお、図8に示すように、点灯領域の端部に枠体50Cのような光を遮る部材がある場合には、その位置での照射強度の変化は急峻になるが(例えば図8のグラフの丸2の位置での傾き参照)、点灯領域の端部に枠体50Cのような光を遮る部材が無い場合には、その位置よりも外側に光が漏洩するため、その位置での照射強度の変化(グラフの
丸3の位置での傾き)は、比較的緩やかになる。このため、図15Aに示すパス(ドット
形成時のパス)で下流側照射部54よりも下流側に光が漏洩する領域よりも、図15Cに示す終端用パス(1回目の終端用パス)で点灯領域よりも下流側に光が漏洩する領域の方が、広いと考えられる。この結果、図15Cの印刷完了領域の上流端では、光の照射量が若干過剰になりやすいと考えられる。
図16A~図16Cは、変形例の終端処理の説明図である。変形例においても、コントローラー60は、1回分の搬送動作に相当する時間だけ待機する待機動作と、直前のパス(終端用パスを含む)と比べて照射部50の点灯させる領域を変更させた終端用パスとを交互に繰り返す。
変形例の1回目の終端用パス(図16B参照)では、コントローラー60は、最後のドット形成時のパスで点灯させた非印刷領域照射部55(下流側照射部54)よりも(図16A参照)、1回分の搬送長さXの分だけ搬送方向上流側に、点灯させる領域を変更させる。但し、変形例では、コントローラー60は、非印刷領域照射部55の下流端の消灯させる範囲を、1回分の搬送長さXではなく、1回分の搬送長さXよりも若干長いX’とする。つまり、変形例では、1回目の終端用パスおいて、コントローラー60は、非印刷領域照射部55の下流端から長さX’の範囲を消灯させつつ、その消灯範囲よりも搬送方向上流側の非印刷領域照射部55を点灯させるとともに、中間照射部53の下流側の長さX
(1回分の搬送長さ)の範囲を点灯させることによって、非印刷領域照射部55よりも搬送方向上流側において、非印刷領域照射部55よりも若干短い長さL21’の範囲を点灯させる。なお、ドット形成時のパスの点灯領域(非印刷領域照射部55)の長さL21と比べて、終端用パスの点灯領域の長さL21’は若干短いが、終端用パスの点灯領域の下流端には枠体50Cのような光を遮る部材が無いため、点灯領域よりも下流側に光が漏洩するので、光の照射される範囲は、ドット形成時のパスとほぼ同等になる。これにより、変形例では、印刷完了領域の上流端への光の照射量が過剰になることを抑制できる。
2回目以降の終端用パスでは、コントローラー60は、直前の終端用パスで点灯させた領域よりも、1回分の搬送長さXの分だけ搬送方向上流側になるように、照射部50の点灯させる領域を変更させることになる。例えば、図16Cに示す2回目の終端用パスでは、コントローラー60は、1回目の終端用パスと比べて1回分の搬送長さXの分だけ搬送方向上流側になるように、照射部50の長さL21’の範囲を点灯させることになる。また、図16Cに示す2回目の終端用パスでは、コントローラー60は、1回目の終端用パスの下流端側の消灯領域と比べて1回分の搬送長さXの分だけ下流端側の消灯領域を長くさせることになる。
変形例においても、媒体Mを搬送させなくても、図14Cの参考例の終端用パスと同様に、硬化不足領域に対して光を照射することができる。また、変形例においても、終端処理の際に媒体Mを搬送方向下流側に搬送しなくて済むため、参考例(図14A~図14C参照)と比べて、印刷装置1の省スペース化を図ることができる。
===第2実施形態===
図17は、第2実施形態の構成の説明図である。第2実施形態では、印刷領域照射部51’の長さがノズル列44’の長さと同じであり、上流側照射部52’の長さが上流側ノズル列441’の長さと同じであり、中間照射部53’の長さが下流側ノズル列442’の長さと同じである。このため、ノズル列44’の下流端の位置は、中間照射部53’と下流側照射部54’との境界部に設定されている。このため、前述の実施形態では、印刷領域照射部51の搬送方向下流側の少なくとも一部(言い換えると、中間照射部53の搬送方向下流側の少なくとも一部)がノズル列44の下流端よりも搬送方向下流側に配置されているのに対し、第2実施形態では、このような構成にはなっていない。
このような第2実施形態では、印刷領域照射部51’を点灯させつつ非印刷領域照射部55’(下流側照射部54’)を消灯させた場合、ノズル列44の下流端の位置における照射強度は、およそP1になる。また、印刷領域照射部51’を消灯させつつ非印刷領域照射部55’を点灯させた場合にも、ノズル列44’の下流端の位置における照射強度は、およそP1になる。このように、本実施形態では、印刷領域照射部51’を消灯させつつ非印刷領域照射部55’を点灯させたときのノズル列44’の下流端における照射強度は、印刷領域照射部51’を点灯させつつ非印刷領域照射部55’を消灯させたときの同位置の照射強度と、ほぼ同じP1になる。
第2実施形態においても、コントローラー60は、混在印刷モードの際に、上流側ノズル列441’及び下流側ノズル列442’からインクを吐出させつつ、上流側照射部52及び非印刷領域照射部55’(下流側照射部54’)を点灯させて中間照射部53を消灯させるパスと、搬送動作とを交互に行わせることになる(図11~図13参照)。第2実施形態では、ノズル列44’の下流端の位置における照射強度(P1)が、前述の第1実施形態での同位置での照射強度(P3)と比べて高くなる。このため、第2実施形態では、前述の第1実施形態と比べて、ノズル列44’の下流端において形成されたドットを平滑化させ難くなる。但し、第2実施形態においても、形成直後に硬化させたドットと、平滑化してから硬化させたドットとを混在させて印刷することができる。
===参考例===
<参考例のノズル列と照射部50との位置関係>
図18は、参考例のノズル列と照射部50の配置の説明図である。
ヘッド41は、カラーヘッド41Aと、特殊ヘッド41Bとを有する。カラーヘッド41Aは、カラーインクを吐出するカラーインクノズル列44Aを有する。特殊ヘッド41Bは、特殊インク(グロスインクやプライマーインクなどのクリアーインクや、白インク・銀インクなど)を吐出する特殊インクノズル列44Bを有する。カラーインクノズル列44A及び特殊インクノズル列44Bのそれぞれの搬送方向の長さは、同じ長さである。以下の説明では、カラーインクノズル列及び特殊インクノズル列のそれぞれの搬送方向の長さをL12とする(なお、長さL12は、前述の長さL11とほぼ同じである)。
参考例では、特殊ヘッド41Bは、カラーヘッド41Aよりも搬送方向上流側に配置されている。ここでは、カラーインクノズル列44Aの上流端(カラーインクノズル列44Aを構成する複数のノズルのうちの最上流ノズル)と、特殊インクノズル列44Bの下流端(特殊インクノズル列44Bを構成する複数のノズルのうちの最下流ノズル)は、搬送方向の位置がほぼ同じである。つまり、参考例では、カラーインクノズル列44Aと特殊インクノズル列44Bとがスタガ配置されている(これに対し、第1実施形態ではカラーインクノズル列と特殊インクノズル列とが走査方向に並んで配置されている)。
参考例においても、キャリッジ21の下面には照射部50が設けられている。参考例の照射部50は、第1実施形態の照射部50と同じ構成であり、LEDアレイ50Aと、レンズアレイ50Bと、枠体50Cとを有する(図3A参照)。照射部50の中央部(中間照射部53の中央部)、カラーインクノズル列44Aの上流端、及び、特殊インクノズル列44Bの下流端は、搬送方向の位置がほぼ同じである。
参考例においても、照射部50は、上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54の3つに分割されており、コントローラー60は、3分割された上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54のそれぞれの点灯と消灯を制御可能である。
参考例では、上流側照射部52及び中間照射部53を合わせると、特殊インクを吐出する特殊インクノズル列44Bの搬送方向の範囲を包含する。このため、参考例では、特殊インクノズル列44Bに対応する印刷領域照射部51は、上流側照射部52及び中間照射部53を合わせたものとなる。また、下流側照射部54は、特殊インクノズル列44Bの搬送方向の範囲と重複しておらず、特殊インクノズル列44Bよりも搬送方向下流側に配置されている。このため、参考例では、特殊インクノズル列44Bに対応する非印刷領域照射部55は、下流側照射部54となる。
図19は、ノズル列と照射部50との位置関係を示す図である。図中の右側にはカラーインクノズル列44A及び特殊インクノズル列44Bの位置が示されている。図中の中央には、照射部50(上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54)の位置が示されている。図中の左側には、照射部50の照射強度のグラフが示されている。照射部50の各領域をそれぞれ点灯又は消灯させたときの照射強度の分布は、前述の第1実施形態(図8参照)と同様である。
参考例では、照射部50(上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54)は、カラーインクノズル列44A及び特殊インクノズル列44Bから構成される全ノズル列の搬送方向の範囲を包含するように配置されている。また、ノズル列(カラーインクノ
ズル列44A及び特殊インクノズル列44B)の上流端の位置は、照射部50の上流端(上流側照射部52の上流端)の位置よりも搬送方向下流側に設定されている。また、ノズル列(カラーインクノズル列44A及び特殊インクノズル列44B)の下流端の位置は、照射部50の下流端(下流側照射部54の下流端)の位置よりも搬送方向上流側に設定されている。このため、上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54を全て点灯させた場合、カラーインクノズル列44A及び特殊インクノズル列44Bによって印刷される領域には、照射強度P1を越える光(最大値Pmaxに近い照射強度の光)が照射されることになる。つまり、上流側照射部52、中間照射部53及び下流側照射部54を全て点灯させた場合、カラーインクノズル列44A及び特殊インクノズル列44Bによって印刷される領域には、光硬化型インクを硬化させることが可能な光が照射されることになる。
また、参考例では、特殊インクノズル列44Bの下流端(特殊インクノズル列44Bを構成する複数のノズルのうちの最下流ノズル)の位置は、中間照射部53と下流側照射部54との境界部よりも搬送方向上流側に設定されている。つまり、印刷領域照射部51の搬送方向下流側の少なくとも一部(言い換えると、中間照射部53の搬送方向下流側の少なくとも一部)は、特殊インクノズル列44Bの下流端よりも搬送方向下流側に配置されている。また、下流側照射部54は、特殊インクノズル列44Bの下流端から間隔をあけて搬送方向下流側に配置されている。このため、参考例においても、印刷領域照射部51を消灯させつつ下流側照射部54を点灯させた場合には、特殊インクノズル列44Bの下流端の位置における照射強度P4は、P1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になる。なお、参考例の照射強度P4は、第1実施形態の照射強度P3よりも小さい値である(このため、参考例では、第1実施形態よりも、特殊インクで形成されたドットを平滑化させやすくなる)。
<参考例のカラー印刷モードと特殊印刷モード>
図20Aは、参考例のカラー印刷モード時のドット形成の様子の説明図である。ここでは、4パス印刷の様子が示されている。なお、図中には1つのカラーインクノズル列44Aだけが示されているが、他のカラーインクノズル列もこのカラーインクノズル列と同様にカラーインクを吐出することになる。
参考例においても、カラー印刷モードでは、コントローラー60は、各パスにおいて、カラーインクノズル列44Aの全てのノズルからカラーインクを吐出させるとともに、中間照射部53及び下流側照射部54(カラーインクノズル列44Aに対応する印刷領域照射部)を点灯させる。なお、カラー印刷モードでは、平滑化の要請がなく、ドットを硬化させれば良いため、上流側照射部52(カラーインクノズル列44Aに対応する非印刷領域照射部)を点灯させても良い。そして、コントローラー60は、このようなパスと、搬送動作とを交互に行わせることになる。「領域1」~「領域4」では、カラーインクによって媒体Mにカラードットが形成されるとともに、形成直後のカラードットに中間照射部53及び下流側照射部54から光が照射され、カラードットが硬化(又は半硬化)することになる。「領域2」~「領域4」では、直前のパスでカラードットが形成された領域に、更にカラードットが形成されることになる。但し、直前のパスで形成されたカラードットは、形成直後に光を照射されて硬化しているため、「領域2」~「領域4」で更にカラードットを形成したときに、カラードットが滲みにくい状態にできる。
参考例のカラー印刷モードでは、コントローラー60は、中間照射部53及び下流側照射部54(カラーインクノズル列44Aに対応する印刷領域照射部)だけでなく、上流側照射部52(カラーインクノズル列44Aに対応する非印刷領域照射部)も点灯させている。但し、カラードットに照射される光エネルギーが十分であれば、コントローラー60は、カラー印刷モードの際に上流側照射部52を消灯させても良い。
図20Bは、参考例の特殊印刷モード時のドット形成の様子の説明図である。
特殊印刷モードでは、コントローラー60は、各パスにおいて、特殊インクノズル列44Bの全てのノズルから特殊インクを吐出させるとともに、特殊インクノズル列44Bに対応する印刷領域照射部51(上流側照射部52及び中間照射部53)を消灯させつつ下流側照射部54を点灯させる。そして、コントローラー60は、このようなパスと、搬送動作とを交互に行わせることになる。「領域1」~「領域4」では、特殊インクによって媒体Mに特殊ドットが形成されることになる。特殊印刷モードでは、印刷領域照射部51は消灯しているため、形成直後の特殊ドットには光がほとんど照射されず、形成直後の特殊ドットは硬化しない。この結果、媒体M上で特殊ドットが徐々に濡れ広がり、平滑化することになる。「領域2」~「領域4」では、直前のパスで特殊ドットが形成された領域に、更に特殊ドットが形成されることになる。但し、直前のパスで形成された特殊ドットは未硬化であるため、「領域2」~「領域4」で更に特殊ドットを形成したときに、未硬化の特殊インクが混ざり合い、連結する。隣り合うドットが連結すると、表面が平滑になる。この結果、「領域4」において形成すべき特殊ドットが全て形成されたとき、表面の平滑な特殊インクの膜(光沢膜、光沢層)が形成される。そして、平滑な表面の特殊インクの膜は、「領域4」よりも搬送方向下流側の領域(例えば「領域7」や「領域8」)において、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)から光を照射されることによって、硬化されることになる。これにより、媒体M上に、平滑な表面の光沢層を形成できる。
参考例では、印刷領域照射部51の搬送方向下流側の少なくとも一部は特殊インクノズル列44Bの下流端よりも搬送方向下流側に配置されており、下流側照射部54が特殊インクノズル列44Bの下流端よりも搬送方向下流側に配置されている。このため、特殊インクノズル列44Bの下流端の位置における照射強度P4(図19の左側のグラフ参照)はP1(最大値Pmaxの半値)よりも小さい値になるため、「領域4(及び領域3)」に照射される光(非印刷領域照射部55である下流側照射部54から漏洩する光)は比較的弱い。したがって、「領域4」に形成された特殊ドットは、比較的硬化しにくい状態となる。このため、「領域4」に形成された特殊ドットは濡れ広がり平滑化しやすいので、表面の平滑な特殊インクの膜(光沢層)を安定して形成することができる。
上記の参考例では、カラーインクノズル列44Aと特殊インクノズル列44Bとをスタガ配置させることによって、ノズル数を削減しつつ、カラー印刷モードと特殊印刷モードとを両立させることができる。また、参考例では、特殊インクノズル列44Bがカラーインクノズル列44Aよりも搬送方向上流側に配置されるようなスタガ配置を採用することによって、カラー印刷モード時の形成直後のカラードットに光を照射する下流側照射部54を、特殊印刷モード時に非印刷領域照射部55として利用することができる。
<参考例の終端処理>
図21A~図21Cは、参考例の終端処理の説明図である。
参考例の終端処理においても、コントローラー60は、直前のパス(図21A参照)の後、搬送動作を行わず、図21Bに示すように、1回分の搬送動作に相当する時間だけ待機する待機動作を行う。このような待機動作を設けることにより、硬化不足領域のドットが形成されてから光が照射されるまでの時間を調整できる。なお、この時間の調整は硬化不足領域への光の照射条件を印刷完了領域へ光を照射したときと同じ条件とするためのものであるが、硬化不足領域への光の照射量を確保すれば足りる場合は、上記待機動作は省略可能である。例えば、硬化不足領域において平滑化されている場合(ドットの濡れ広がりが完了している場合)は、平滑化のための待機時間は不要であるため、上記待機動作も不要となる。
待機動作の後、コントローラー60は、図21Cに示すように、キャリッジ21を走査方向に移動させ、ノズルからはインクを吐出させずに照射部50を点灯させる(終端用パス)。終端用パスでは、コントローラー60は、直前のパス(終端用パスを含む)と比べて、照射部50の点灯させる領域を変更させている。具体的には、直前のパスで点灯させた領域よりも、1回分の搬送長さXの分だけ搬送方向上流側になるように、照射部50の点灯させる領域を変更させている。これにより、参考例の終端処理においても、第1実施形態の終端処理と同様に、媒体Mを搬送させなくても、硬化不足領域に対して光を照射することができる。
なお、参考例の終端処理においても、第1実施形態の終端処理と同様に、硬化不足領域の搬送方向の長さに適合させるように照射部50の点灯させる領域を設定しているが、これに限られず、硬化不足領域を含む範囲であれば、硬化不足領域より広い範囲において、照射部50の点灯させる領域を設定してもよい。この場合、印刷完了領域においても光照射が行われることもあるが、印刷完了領域において光照射が行われても印刷完了領域においては硬化が既に完了しているので、印刷品質に問題は生じにくい(特に、ドットの平滑化を行う特殊印刷モード時には、印刷品質に問題は生じにくくなる)。一方、照射部50の点灯させる領域に対応させる制御が不要となるので、簡易な構成で印刷完了領域と硬化不足領域の画質が均一になり、印刷ムラを抑制できる。
===小括===
上記の第1実施形態(及び第2実施形態)の印刷装置1は、搬送部30と、ヘッド41と、照射部50と、コントローラー60(制御部)とを備えている。照射部50は、ノズル列44よりも搬送方向に長い領域に光を照射可能であり、コントローラー60は、照射部50を上流側照射部52、中間照射部53及び非印刷領域照射部55(下流側照射部54)に分けて、それぞれの点灯と消灯とを制御可能である。本実施形態では、図9(及び図17)に示すように、上流側照射部52は、上流側ノズル列441の搬送方向の範囲と重複しており、中間照射部53は、下流側ノズル列442の搬送方向の範囲と重複している。一方、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)は、下流側ノズル列の搬送方向の範囲と重複せずに、下流側ノズル列よりも搬送方向下流側に配置されている(図9、図17参照)。このような構成において、第1実施形態(及び第2実施形態)のコントローラー60は、混在印刷モードの際に(図11~図13参照)、上流側ノズル列441及び下流側ノズル列442からインクを吐出させつつ、上流側照射部52及び非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を点灯させて中間照射部53を消灯させるパスと、搬送動作とを交互に行わせている。これにより、形成直後に硬化させたドットと、平滑化してから硬化させたドットとを混在させて印刷することができる。また、上記の第1実施形態(及び第2実施形態)では、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)は、下流側ノズル列442の搬送方向の範囲と重複せずに下流側ノズル列442よりも搬送方向下流側に配置されているので、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を点灯した場合であっても、非印刷領域照射部55(下流側照射部54)は、下流側ノズル列442の搬送方向の範囲と重複する場合に比べて、上流側ノズル441列及び下流側ノズル列442(特に下流側ノズル列442)により形成されたドットには、光を照射しにくい。よって、下流側ノズル列442と並ぶ中間照射部53を消灯させることにより、下流側ノズル列442によって形成されたドットは、その形成直後に光がほとんど照射されない。したがって、中間照射部53と対向する領域において、媒体M上でドットが徐々に濡れ広がり、平滑化することができ、平滑化されたドットを、非印刷領域照射部55の光により、硬化させることができる。
前述の実施形態のコントローラー60は、光沢カラー印刷モードの際に(図11参照)、カラーノズル列の上流側ノズル列441からカラーインクを吐出させるとともに、特殊
インクノズル列(例えばグロスインクノズル列等の透明インクノズル列)の下流側ノズル列442から特殊インク(例えばグロスインク等の透明インク)を吐出させつつ、上流側照射部52及び非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を点灯させて中間照射部53を消灯させるパスと、搬送動作とを交互に行わせている。これにより、カラードットから構成されるカラー画像の滲みを抑制しつつ、カラー画像の上に、平滑な表面の光沢層を形成できる。
前述の実施形態のコントローラー60は、平滑カラー印刷モード(図12参照)及びプライマー印刷モード(図13参照)の際に、同じノズル列の上流側ノズル列441及び下流側ノズル列442から同じインクを吐出させつつ、上流側照射部52及び非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を点灯させて中間照射部53を消灯させるパスと、搬送動作とを交互に行わせている。このため、下流側ノズル列442によって形成されたドットの一部が形成直後に硬化しても、上流側ノズル列441によって形成されたドット(形成直後に硬化するドット)と区別がつかないため、画質への影響が無くて済む。
前述の実施形態のコントローラー60は、平滑カラー印刷モード(図12参照)の際に、カラーノズル列の上流側ノズル列441及び下流側ノズル列442からカラーインクを吐出させつつ、上流側照射部52及び非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を点灯させて中間照射部53を消灯させるパスと、搬送動作とを交互に行わせている。これにより、カラードットの滲みを抑制しつつ、平滑な表面のカラー画像を形成できる。
前述の実施形態のコントローラー60は、プライマー印刷モード(図13参照)の際に、プライマーインクノズル列の上流側ノズル列441及び下流側ノズル列442からプライマーインクを吐出させつつ、上流側照射部52及び非印刷領域照射部55(下流側照射部54)を点灯させて中間照射部53を消灯させるパスと、搬送動作とを交互に行わせている。これにより、硬化したドットの間でプライマーインクが濡れ広がることによって、平滑に塗布したプライマーインク(下地調整インク)を媒体M上に定着させることができる。
===その他の実施形態===
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。