以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。
図1は、本実施形態に係る印刷システム100の正面図である。図2は、本実施形態に係る印刷システム100のブロック図である。以下の説明において、前、後、左、右、上、下とは、印刷システム100の印刷装置1を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。本実施形態では、符号Yは走査方向を示し、符号Xは搬送方向を示している。走査方向Yは、後述するキャリッジ21(図1参照)の移動方向のことであり、ここでは左右方向である。搬送方向Xは、媒体M(図1参照)の移動方向のことであり、ここでは前後方向である。搬送方向Xは、平面視において走査方向Yと直交する。本実施形態では、媒体Mの供給側を「上流側」と呼び、印刷後の媒体Mの排出側を「下流側」と呼ぶ。搬送方向Xは、上流側から下流側(または下流側から上流側)に向かう方向である。媒体Mは、印刷時に上流側から下流側に向かって搬送される。なお、これら方向は、便宜上定めた方向に過ぎず、印刷システム100の設置態様を何ら限定するものではない。
図1に示すように、印刷システム100は、媒体Mにインクを吐出して印刷を行うためのシステムである。媒体Mは、例えばロール状の記録紙である。しかしながら、媒体Mの種類は特に限定されない。媒体Mは、例えば普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛であってもよい。
印刷システム100は、印刷装置1と、コンピュータ110とを備えている。ただし、コンピュータ110が印刷システム100において果たす機能を印刷装置1が有している場合、コンピュータ110は省略され、印刷システム100は印刷装置1単体で構成されていてもよい。
図2に示すように、コンピュータ110は、印刷装置1を制御するための印刷制御装置である。コンピュータ110は、印刷装置1を制御するための指令コードを生成し、指令コードを印刷装置1に送信する。コンピュータ110から指令コードを受信した印刷装置1は、指令コードに従った制御を行い、印刷装置1による媒体Mへの印刷が行われる。なお、コンピュータ110の種類は特に限定されない。例えばコンピュータ110は、汎用のパーソナルコンピュータによって実現される。コンピュータ110には、印刷制御プログラムがインストールされている。この印刷制御プログラムは、いわゆるプリンタドライバである。コンピュータ110は、CPUを備えている。CPUは、印刷制御プログラムを実行することで、指令コードを生成する印刷制御部として機能する。本実施形態では、コンピュータ110には、例えば表示画面111、および、利用者がコンピュータ110に対して入力の操作などをするマウスやキーボードなどの入力装置112が接続されている。
図1に示すように、印刷装置1は、媒体Mにインクを吐出して印刷を行う装置である。印刷装置1は、例えばインクジェット式のプリンタである。
印刷装置1は、ケーシングを有する本体10と、脚11と、操作パネル12とを備えている。脚11は、本体10の下部に設けられ、本体10から下方に向かって延びている。操作パネル12は、利用者が印刷に関する操作を行うものである。操作パネル12は、例えば本体10の前面に設けられている。
図3は、印刷装置1の右側面図であり、かつ、概略図である。図3に示すように、印刷装置1は、プラテン15を備えている。プラテン15は、本発明の「支持台」の一例である。プラテン15は、媒体Mを支持している。プラテン15上にて媒体Mへの印刷が行われる。プラテン15の上面は、走査方向Yおよび搬送方向Xに広がる平らな面である。
本実施形態では、印刷装置1は、搬送機構16を備えている。搬送機構16は、プラテン15に支持された媒体Mを搬送方向Xの上流側から下流側(ここでは後ろから前)へ搬送する機構である。なお、搬送機構16の構成は特に限定されない。例えば搬送機構16は、グリットローラ17と、ピンチローラ18と、搬送モータ19(図2参照)とを有している。図3では、グリットローラ17は、プラテン15の後方に配置されているが、上部が露出するようにプラテン15に埋設されていてもよい。ピンチローラ18は、グリットローラ17と共に媒体Mを挟み込むものである。ピンチローラ18は、グリットローラ17の真上に配置されている。搬送モータ19は、グリットローラ17に接続されている。
ここでは、搬送モータ19が駆動することで、グリットローラ17が回転する。グリットローラ17が回転すると、グリットローラ17とピンチローラ18とに挟み込まれた媒体Mは、搬送方向X(ここでは下流側に向かう方向)に搬送される。なお、グリットローラ17の数、および、ピンチローラ18の数は特に限定されず、共に複数であってもよい。例えばグリットローラ17の数が複数の場合、複数のグリットローラ17は、走査方向Yに並んで配置される。
図1に示すように、印刷装置1は、ガイドレール20と、キャリッジ21とを備えている。ガイドレール20は、プラテン15(図3参照)の上方において走査方向Yに延びている。ガイドレール20は、本体10に固定されている。ガイドレール20には、キャリッジ21が摺動自在に係合している。なお、図3においてガイドレール20は省略されている。図3に示すように、キャリッジ21は、プラテン15よりも上方に配置されている。キャリッジ21は、ガイドレール20に沿って走査方向Yに移動可能である。
本実施形態では、図2に示すように、印刷装置1は、移動機構25を備えている。移動機構25は、キャリッジ21を走査方向Yに移動させる機構である。なお、移動機構25の構成は特に限定されない。本実施形態では、移動機構25は、左右のプーリ(図示せず)と、ベルト(図示せず)と、キャリッジモータ26とを有している。詳しい図示は省略するが、左のプーリは、ガイドレール20の左端に配置され、右のプーリは、ガイドレール20の右端に配置されている。ベルトは、例えば無端状であり左右のプーリに巻き掛けられている。ベルトには、キャリッジ21が固定されている。キャリッジモータ26は、例えば右のプーリに接続されており、プーリやベルトを介してキャリッジ21に接続されている。本実施形態では、キャリッジモータ26が駆動すると右のプーリが回転し、一対のプーリの間をベルトが走行する。これにより、キャリッジ21が主走査方向Yに移動する。
図1に示すように、印刷装置1は、記録ヘッド41と、光照射装置50と、を備えている。図3に示すように、記録ヘッド41は、プラテン15よりも上方に配置されている。ここでは、記録ヘッド41は、キャリッジ21に搭載されており、キャリッジ21と共に走査方向Yに移動可能である。
記録ヘッド41は、プラテン15に支持された媒体Mにインクを吐出する。図4は、記録ヘッド41のノズル列44と、光照射装置50との位置関係を示す底面図である。本実施形態では、記録ヘッド41は、インクを吐出する複数のノズル45(図4の点線領域の拡大部分参照)を有している。複数のノズル45の一部は、搬送方向Xに並んで配置されている。ここでは、搬送方向Xに並んだ複数のノズル45の列のことをノズル列44という。ノズル列44は、記録ヘッド41の下面に複数設けられている。複数のノズル列44は、走査方向Yに並んで配置されている。複数のノズル列44のそれぞれの上流端の位置、および、下流端の位置は、同じである。また、複数のノズル列44の搬送方向Xの長さはそれぞれ同じであり、長さL1である。
なお、本実施形態では、図2に示すように、記録ヘッド41には、ヘッド駆動部42が接続されている。ヘッド駆動部42は、ノズル列44を構成する複数のノズル45からのインク滴の吐出または非吐出を行わせる駆動部である。ヘッド駆動部42の種類は特に限定されない。ヘッド駆動部42は、例えば記録ヘッド41がピエゾ式である場合、ピエゾ素子を駆動するものである。
本実施形態では、複数のノズル列44のそれぞれから吐出されるインクの色は特に限定されない。ここでは、ノズル列44は、カラーノズル列44aと、ホワイトノズル列44bと、クリアノズル列44cと、プライマーノズル列44dとを有している。カラーノズル列44aは、カラー画像を印刷するためのノズル列である。カラーノズル列44aは、プロセスカラーインク(以下、カラーインクともいう。)を吐出する。カラーインクには、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどの有色インクが含まれる。カラーインクには、その他にライトシアンインク、ライトマゼンタインクおよびライトイエローインクなどが含まれていてもよい。
ホワイトノズル列44bは、ホワイトインクを吐出するノズル列である。ホワイトインクは、印刷画像の白色の部分を表現する際に使用されるインクである。クリアノズル列44cは、クリアインクを吐出するノズル列である。クリアインクは、透明なインクであってもよいし、半透明なインクであってもよい。クリアインクは、例えばカラーインクなどで印刷されたカラー画像をコーティングする目的で使用されるものである。クリアインクは、例えばカラー画像の表面を光沢にする際に使用される。
プライマーノズル列44dは、プライマーインクを吐出するノズル列である。プライマーインクは、例えば下地インクとも呼ばれるものであり、媒体Mに直接吐出されるインクである。プライマーインクは、例えば媒体Mと、カラー画像への印刷で使用されるカラーインクとの間に位置するインクである。プライマーインクは、カラーインクの媒体Mへの密着性を高めるためのインクである。
本実施形態では、ホワイトインク、クリアインクやプライマーインクのことを総称して、特殊インクと呼ぶ。特殊インクには、例えばシルバーインクも含まれる。なお、ノズル列44には、ホワイトインク、クリアインクおよびプライマーインク以外の特殊インクを吐出するノズル列が含まれていてもよい。
本実施形態では、記録ヘッド41のノズル列44を構成するノズル45から吐出されるインクは、光硬化型インクである。光硬化型インクは、光が照射されると硬化が促進されるインクである。ここでは、光硬化型インクは、紫外線硬化型インク(例えばUVインク)であるが、他の波長の光が照射されて硬化するインクであってもよい。光硬化型インクは、光の照射前には流動性を有しているが、所定の照射量の光が照射されると硬化する性質を有する。
以下の説明では、完全に硬化する前の状態(例えば内部は未硬化であるが、表面は硬化した状態)のことを「半硬化」又は「半硬化状態」と呼ぶことがある。また、以下の説明では、光硬化型インクのことを適宜インクともいう。また、以下の説明では、媒体Mに吐出された1滴のインクのことをインクのドット、または、単にドットという。
次に、光照射装置50について説明する。光照射装置50は、プラテン15に支持された媒体Mに吐出されたインクに光を照射するものである。ここでは、光照射装置50は、紫外線を照射する。図3に示すように、光照射装置50は、プラテン15よりも上方に配置されている。本実施形態では、光照射装置50は、キャリッジ21に搭載されている。光照射装置50は、キャリッジ21および記録ヘッド41と共に走査方向Yに移動可能である。
光照射装置50の数は特に限定されず、図1に示すように、ここでは2つである。左の光照射装置50は、キャリッジ21の左側に設けられており、記録ヘッド41の左方に配置されている。右の光照射装置50は、キャリッジ21の右側に設けられており、記録ヘッド41の右方に配置されている。記録ヘッド41は、2つの光照射装置50に挟まれるように配置されている。なお、左の光照射装置50および右の光照射装置50の何れか一方は省略されてもよい。本実施形態では、キャリッジ21が走査方向Yの右から左へ移動する際には、少なくとも右の光照射装置50から光が照射される。キャリッジ21が走査方向Yの左から右へ移動する際には、少なくとも左の光照射装置50から光が照射される。
光照射装置50は、図4に示すように、ノズル列44よりも搬送方向Xに長い領域に光を照射可能に構成されている。なお、光照射装置50の構成は特に限定されない。本実施形態では、図3に示すように、1つの光照射装置50は、光源50Aと、レンズ50Bと、ケース50Cとを有している。光源50Aは、光を発するものであり、例えば紫外線を発する。なお、光源50Aの種類は特に限定されない。ここでは、光源50Aは、LED(Light Emitting Diode)アレイである。LEDアレイは、搬送方向Xに沿って配列された複数のLEDによって構成されている。
レンズ50Bは、搬送方向Xに延びたものである。レンズ50Bは、複数のレンズが搬送方向Xに配列されて構成されていてもよいし、搬送方向Xに延びた1枚のレンズによって構成されていてもよい。レンズ50Bは、光源50Aの真下に配置されている。光源50Aから照射された光は、レンズ50Bを介して媒体Mに照射される。
ケース50Cは、光源50Aおよびレンズ50Bを収容するものである。図4に示すように、ケース50Cの下面には、搬送方向Xに延びた照射口50Dが1つ形成されている。光源50Aから発せられた光は、照射口50Dを通って、プラテン15に支持された媒体Mに照射される。本実施形態では、ケース50Cは、所定の領域(例えば光照射装置50に対向する媒体Mの領域)の外側に光が漏洩することを抑制する機能を有する。
本実施形態では、1つの光照射装置50の搬送方向Xの長さを長さL2とする。ここで、光照射装置50の長さL2とは、プラテン15に支持された媒体Mに光照射装置50が光を照射したときに、光が照射された媒体Mの照射領域の搬送方向Xの長さのことである。上記照射領域の搬送方向Xの長さと、照射口50Dの搬送方向Xの長さとが同じ場合、光照射装置50の長さL2とは、照射口50Dの搬送方向Xの長さのことである。
本実施形態では、光照射装置50の長さL2は、ノズル列44の長さL1の3倍、または、3倍よりも長く、5倍未満である。光照射装置50の上流側の一部は、ノズル列44と走査方向Yに並ぶように配置されている。光照射装置50の下流側の一部は、ノズル列44の下流端よりも搬送方向Xの下流側に突出するように配置されている。
本実施形態では、1つの光照射装置50は、上流側照射部52と、中間照射部53と、下流側照射部54とを有している。光照射装置50の照射部は、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54のエリアに分けられる。ここで、上流側照射部52と中間照射部53と下流側照射部54は、物理的に分けられるものではなく、点灯および消灯の制御に応じて概念的に分けられるものである。本実施形態では、光照射装置50を搬送方向Xに3分割したとき、上流側から順に上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54となる。ここで3分割とは、例えば3等分のことである。本実施形態では、光照射装置50から光が照射された媒体Mの照射領域を搬送方向Xに3分割する。3分割した照射領域の最も上流側の領域に光を照射する光照射装置50の部分を、上流側照射部52という。3分割した照射領域の中間に位置する領域に光を照射する光照射装置50の部分を、中間照射部53という。3分割した照射領域の最も下流側の領域に光を照射する光照射装置50の部分を、下流側照射部54という。
上流側照射部52は、光照射装置50を搬送方向Xに3分割したときに、最も上流側に位置する光照射装置50の部分を構成している。上流側照射部52は、各ノズル列44と走査方向Yに並んで配置されている。上流側照射部52は、ノズル列44と搬送方向Xで重複している。上流側照射部52の搬送方向Xの範囲の位置(言い換えると、上流側照射部52の搬送方向Xの位置)は、各ノズル列44の搬送方向Xの範囲の位置(言い換えると、各ノズル列44の搬送方向Xの位置)と重複している。そのため、上流側照射部52は、ノズル列44のノズル45から吐出されたインクのドットであって、媒体Mに着弾した直後のインクのドットに光を照射することが可能である。言い換えると、上流側照射部52は、ノズル列44から吐出されたインクの領域である印刷領域について、この印刷領域にインクが吐出された直後に、光を照射することが可能である。
中間照射部53は、光照射装置50を搬送方向Xに3分割したときに、中間に位置する光照射装置50の部分を構成している。中間照射部53は、上流側照射部52の搬送方向Xの下流側に隣接している。このように、中間照射部53は上流側照射部52と隣接しているため、上流側照射部52と中間照射部53との間には、他の部材や部位が介在していない。中間照射部53の搬送方向Xの範囲の位置は、ノズル列44の搬送方向Xの範囲の位置と重複していない。言い換えると、中間照射部53は、各ノズル列44と搬送方向Xで重複していない。中間照射部53は、上流側照射部52およびノズル列44よりも下流側に配置されている。
下流側照射部54は、光照射装置50を搬送方向Xに3分割したときに、最も下流側に位置する光照射装置50の部位を構成している。下流側照射部54は、中間照射部53の搬送方向Xの下流側に隣接している。このように、下流側照射部54は中間照射部53と隣接しているため、下流側照射部54と中間照射部53との間には、他の部材や部位が介在していない。下流側照射部54の搬送方向Xの範囲の位置は、ノズル列44の搬送方向Xの範囲の位置と重複していない。言い換えると、下流側照射部54は、各ノズル列44と搬送方向Xで重複していない。下流側照射部54は、中間照射部53およびノズル列44よりも下流側に配置されている。
本実施形態では、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54の搬送方向Xの長さは、それぞれ長さL21、L22、L23である。長さL21、L22、L23は、同じ長さである。ここで、同じ長さには、厳密に同じ長さの他に、若干の誤差が含まれていてもよい。本実施形態では、上流側照射部52の長さL21は、各ノズル列44の長さL1よりも若干長い。同様に、L21>L1である。言い換えると、L22>L1であり、L23>L1である。
本実施形態では、光照射装置50の照射口50Dは、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54に亘るように光照射装置50に1つ形成されている。ここでは、照射口50Dにおける上流側照射部52内の領域50Daと、照射口50Dにおける中間照射部53内の領域50Dbとは連続している。領域50Daと領域50Dbとの間には、他の部材が配置されていない。同様に、照射口50Dにおける中間照射部53内の領域50Dbと、照射口50Dにおける下流側照射部54内の領域50Dcとは連続している。領域50Dbと領域50Dcとの間には、他の部材が配置されていない。
本実施形態では、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54は、それぞれ別々に点灯と消灯とを可能に構成されている。ここで、上流側照射部52の点灯および消灯とは、3分割した上記照射領域の最も上流側の領域に光を照射する光源50Aであって、上流側照射部52を構成する光源50Aの点灯および消灯のことをいう。中間照射部53の点灯および消灯とは、3分割した照射領域の中間の領域に光を照射する光源50Aであって、中間照射部53を構成する光源50Aの点灯および消灯のことをいう。下流側照射部54の点灯および消灯とは、同様に、3分割した照射領域の下流側の領域に光を照射する光源50Aであって、下流側照射部54を構成する光源50Aの点灯および消灯のことをいう。
図2に示すように、印刷装置1は、制御装置60を備えている。制御装置60は、印刷装置1の制御を司るものである。制御装置60の構成は特に限定されない。例えば制御装置60は、外部のコンピュータ110などから印刷データをコード化した指令コードなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置とを備えている。
制御装置60は、操作パネル12、搬送機構16の搬送モータ19、移動機構25のキャリッジモータ26、および、記録ヘッド41に接続されたヘッド駆動部42に接続されている。制御装置60は、コンピュータ110からの指令コードに基づいて搬送モータ19、キャリッジモータ26およびヘッド駆動部42を制御する。また、制御装置60は、光照射装置50(詳しくは、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54)に接続されており、光照射装置50の光源50Aの点灯および消灯を制御することが可能である。本実施形態では、制御装置60は、光照射装置50の上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54を、それぞれ独立して点灯と消灯とを制御可能に構成されている。
本実施形態では、制御装置60は、記憶部61と、印刷モード設定部62と、パス制御部63と、搬送制御部64と、第1光照射制御部65と、第2光照射制御部66と、第3光照射制御部67とを備えている。制御装置60は、更にカラー印刷制御部71と、グロス印刷制御部73と、平滑カラー印刷制御部75と、プライマー印刷制御部77と、を備えている。制御装置60のパス制御部63は、カラーパス制御部81と、クリアパス制御部83と、プライマーパス制御部85とを有している。なお、上述した制御装置60の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば、上述した各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
制御装置60の各部の詳しい制御については後述するが、例えば第1~第3光照射制御部65~67は、印刷モードに応じて上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54の点灯および消灯を制御する。第1光照射制御部65は、後述する平滑カラー印刷モード、または、プライマー印刷モードのときに、上流側照射部52を点灯し、中間照射部53を消灯し、下流側照射部54を点灯する制御を行う(図10A、図13A参照)。第2光照射制御部66は、カラー印刷モードのときに、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54のそれぞれを点灯する制御を行う(図8A参照)。第3光照射制御部67は、グロス印刷モードのときに、上流側照射部52および中間照射部53を消灯し、下流側照射部54を点灯する制御を行う(図9A参照)。
本実施形態では、パス動作と搬送動作とを交互に繰り返し行うことで媒体Mに対して印刷を行う。ここで、パス動作とは、記録ヘッド41および光照射装置50を一体的に走査方向Yに移動させながら、記録ヘッド41のノズル列44からプラテン15に支持された媒体Mにインクを吐出する動作のことである。ここで、双方向印刷(記録ヘッド41が走査方向Yに移動する毎、すなわち、右から左に移動するとき、および、左から右に移動するときの両方で印刷を行うもの)において、1回のパス動作とは、走査方向Yにおいて右から左、または、左から右へ1回移動する動作のことをいう。単方向印刷(記録ヘッド41が走査方向Yに移動する際、往路のみ、または、復路のみで印刷を行うもの)において、1回のパス動作とは、1往復動作のことをいう。1回のパス動作のことを1パスともいう。
本実施形態では、パス動作は、パス制御部63によって行われる。パス制御部63は、記録ヘッド41および光照射装置50を走査方向Yに移動させるように移動機構25を制御しながら、記録ヘッド41のノズル列44から、プラテン15に支持された媒体Mにインクを吐出するパス動作の制御を行うようにプログラムされている。本実施形態では、パス制御部63は、移動機構25のキャリッジモータ26の駆動を制御する。キャリッジモータ26が駆動することで、キャリッジ21が走査方向Yに移動する。キャリッジ21が移動することで、記録ヘッド41と2つの光照射装置50とが一体となって走査方向Yに移動する。
本実施形態では、ノズル列44から吐出されるインクの種類に応じて、パス制御部63が有する異なる部が制御を行う。ここでは、パス制御部63のカラーパス制御部81は、パス動作の間、プロセスカラーインクおよびホワイトインクを吐出するようにヘッド駆動部42を制御する。詳しくは、カラーパス制御部81は、ノズル列44のカラーノズル列44aからプロセスカラーインクを吐出すると共に、ホワイトノズル列44bからホワイトインクを吐出して、パス動作の制御を行う。
パス制御部63のクリアパス制御部83は、パス動作の間、クリアインクを吐出するようにヘッド駆動部42を制御する。詳しくは、クリアパス制御部83は、ノズル列44のクリアノズル列44cからクリアインクを吐出して、パス動作の制御を行う。パス制御部63のプライマーパス制御部85は、パス動作の間、プライマーインクを吐出するようにヘッド駆動部42を制御する。詳しくは、プライマーパス制御部85は、ノズル列44のプライマーノズル列44dからプライマーインクを吐出して、パス動作の制御を行う。
搬送動作とは、パス制御部63によるパス動作の後、プラテン15に支持された媒体Mを搬送方向Xの下流側に搬送する動作のことである。本実施形態では、搬送動作は、搬送制御部64によって行われる。搬送制御部64は、パス動作の後、プラテン15に支持された媒体Mを搬送方向Xの下流側に、所定の距離、搬送する搬送動作の制御を行うようにプログラムされている。
この所定の距離は、言い換えると媒体Mの搬送量のことである。この所定の距離とは、ノズル列44の搬送方向Xの長さL1(図4参照)以下の距離である。例えば所定の距離は、ノズル列44の長さL1の1/4である。この所定の距離は、予め設定されているものであり、記憶部61に記憶されている。なお、搬送動作の後には、再びパス動作の制御が行われる。
上述のように、パス動作と搬送動作とを交互に行うことで媒体Mへの印刷が行われるが、本実施形態では、特にマルチパス印刷で印刷が行われる。マルチパス印刷とは、媒体Mにおける全体の印刷領域のうちの任意の位置の領域に対して、複数回のパス動作におけるパス動作毎にインクが吐出されることで上記任意の位置の領域の印刷が完成するような印刷のことをいう。言い換えると、マルチパス印刷とは、同一の印刷領域上を記録ヘッド41が複数回通過することで印刷が行われることをいう。
次に、マルチパス印刷について簡単に説明する。図5A~図5Fは、マルチパス印刷においてドット形成の様子を説明した説明図であり、ノズル列44と媒体Mとの位置関係を示す平面図である。図面によっては、ノズル列44は概念的に示されており、例えば矩形状に示されている。また図5A~図5Fでは、説明の簡素化のため、1つのノズル列44におけるマルチパス印刷について示されている。図5A~図5Fのノズル列44は、カラーノズル列44aであってもよいし、ホワイトノズル列44bであってもよいし、クリアノズル列44cであってもよいし、プライマーノズル列44dであってもよい。
図5Aおよび図5Bに示すように、パス制御部63によって1回のパス動作(ここでは、左から右へ向かう記録ヘッド41の移動(図5Aの矢印参照)におけるパス動作)が行われることで、媒体Mにインクのドットが形成される。図5Bの媒体Mには、1回目のパス動作でインクのドットが形成された領域であるパス印刷領域AR1がハッチングで示されている。パス印刷領域AR1は、キャリッジ21が媒体Mの真上を通過する間に、ノズル列44が対向する(言い換えると、ノズル列44の真下を通過する)媒体Mの領域である。
このように、パス制御部63による1回目のパス動作が行われた後、搬送制御部64によって媒体Mを搬送方向Xの下流側に搬送させる搬送動作が行われる(図5Cの矢印参照)。この搬送動作によって、直前のパス動作(ここでは1回目のパス動作)によって印刷されたパス印刷領域AR1の下流側は、ノズル列44よりも下流側に移動する(図5D参照)。
1回目の搬送動作の後、図5Eの矢印に示すように、パス制御部63によって2回目のパス動作(ここでは右から左に向かう方向へのパス動作)が行われる。このことで、図5Fに示すように、パス印刷領域AR2に対してインクのドットが形成される。以降、パス動作と搬送動作とを交互に繰り返すことで、媒体Mにインクのドットを順に形成する。図5Fに示すように、搬送動作時の媒体Mの搬送の距離(搬送量)が、パス印刷領域AR1の搬送方向Xの長さ、すなわち、ノズル列44の搬送方向Xの長さL1よりも短い場合には、パス印刷領域AR2は、前回のパス動作におけるパス印刷領域AR1の一部と重複する。図5Fでは、クロスハッチングされた部分が上記重複の領域である。このように、パス印刷領域AR1の一部とパス印刷領域AR2の一部とが重なる印刷のことをマルチパス印刷という。
図6は、光照射装置50の搬送方向Xの位置に応じた光の照射強度を示すグラフである。図6において、横軸は、光照射装置50の搬送方向Xの位置を示している。ここで、図6の左側が上流側であり、図6の右側が下流側である。縦軸は、単位面積当たりの光の照射強度(単位:mW/cm2)を示している。
図6のグラフ線G1は、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54の全てを点灯した場合の光の照射強度を示すグラフである。グラフ線G1に示すように、照射部52、53、54の全てを点灯した場合、光照射装置50の中央部において照射強度が最大値Pmaxになる。図6では、値P1とは、光硬化型インクを硬化または半硬化させることが可能な最低限の照射強度のことである。ここでは、グラフ線G1において、値P1以上の光の照射強度となる範囲の搬送方向Xの長さが、光照射装置50の搬送方向Xの長さL2(図4参照)に相当するように設定されている。照射強度が値P1となる光照射装置50の上流側の位置A1は、上流側照射部52の上流端の位置に相当する。照射強度が値P1となる光照射装置50の下流側の位置A2は、下流側照射部54の下流端の位置に相当する。
なお、本実施形態では、光照射装置50の照射領域とは、狭義には、光を照射したときに所定の照射強度(ここでは値P1)以上になる媒体Mの領域を意味する。上記照射領域とは、広義には、光を照射したときに光が照射される媒体Mの領域を意味する。
光照射装置50の照射部52、53、54の全てを点灯した場合に、照射強度が値P1となる位置A1、A2近傍での光の照射強度の変化(ここでは、位置A1、A2におけるグラフ線G1の傾き)は、比較的急峻である。これは、図3に示すように、光照射装置50のケース50Cが、照射領域(言い換えると、光照射装置50に対向する媒体Mの領域)の外側に光が漏洩することを抑制しているためである。このため、照射領域の外側に光の漏洩は僅かである。
図6において、グラフ線G2は、下流側照射部54を点灯させつつ、上流側照射部52および中間照射部53を消灯させた場合の光の照射強度を示している。グラフ線G2の場合、照射強度が値P1となる光照射装置50の下流側の位置A2は、下流側照射部54の下流端の位置に相当する。この位置A2での照射強度の変化(すなわち、位置A2におけるグラフ線G2の傾き)は、グラフ線G1と同じであり、比較的急峻である。このため、下流側照射部54よりも下流側に光が漏洩する領域は、僅かである。
一方、グラフ線G2において照射強度が値P1となる光照射装置50の上流側の位置A3は、中間照射部53の範囲内に位置する。この位置A3での照射強度の変化(すなわち、位置A3におけるグラフ線G2の傾き)は、位置A2と比較して比較的緩やかである。これは、図4に示すように、中間照射部53と下流側照射部54との境界部には、ケース50Cのように光を遮る部材が無いため、下流側照射部54から照射された光が、下流側照射部54よりも上流側(すなわち、中間照射部53と対向する領域)に漏洩するためである。このため、図6に示すように、下流側照射部54よりも上流側に光が照射される領域は、比較的広い領域であり、下流側照射部54よりも下流側に光が漏洩する領域よりも広い領域となる。
図6において、グラフ線G3は、上流側照射部52および下流側照射部54を点灯させつつ、中間照射部53を消灯させた場合の光の照射強度を示している。なお、図6の上流側照射部52の上流側および下流側照射部54の下流側の範囲では、グラフ線G1とグラフ線G3とが重なっている。
グラフ線G3の場合、上流側照射部52の中央部52b、および、下流側照射部54の中央部において光の照射強度が最も強い。そして、上流側照射部52の中央部52b、および、下流側照射部54の中央部から離れるに従って光の照射強度は弱くなる。上流側照射部52の上流部52aおよび下流部52cの光の照射強度は、中央部52bの光の照射強度よりも弱い。
なお、本実施形態において、各印刷モードにおける具体的な説明では、4パス印刷を例にして説明している。そこで、4パス印刷におけるノズル列44を概念的に4つの分割ノズル列441~444に分割した状態に対応させて、上流側照射部52を搬送方向Xに概念的に4分割(例えば4等分)する。そして、上流側照射部52を搬送方向Xに4分割したときの最も上流側の部分を上流部52aとし、最も下流側の部分を下流部52cとする。そして、上流側照射部52における上流部52aおよび下流部52cを除いた部分を中央部52bとする。
図6に示すように、グラフ線G3の場合、中間照射部53の中央部において、照射強度が値P1よりも小さくなる。グラフ線G3において、中間照射部53の上流端の位置A4、および、中間照射部53の下流端の位置A5での照射強度の変化は、位置A1と比較して比較的緩やかである。これは、上流側照射部52から光が漏洩するとともに、下流側照射部54から光が漏洩するためである。
図7は、光照射装置50の搬送方向Xの位置に応じた光の照射強度と、ノズル列44の位置との関係を示す図である。図7では、光照射装置50とノズル列44との相対的な位置関係が示されている。図7の光の照射強度のグラフは、図6の光の照射強度のグラフと同じグラフである。
図7に示すように、ノズル列44の上流端(言い換えると、ノズル列44を構成する複数のノズル45のうちの最上流のノズル45)の搬送方向Xの位置は、光照射装置50の上流端、言い換えると上流側照射部52の上流端の搬送方向Xの位置と同じである。このため、ノズル列44の上流端の位置における光照射装置50の光の照射強度は、値P1となるように設定されている。本実施形態では、ノズル列44は、上流側照射部52と走査方向Yに並ぶように配置されている。上流側照射部52の長さL21は、ノズル列44の長さL1より若干長く、上流側照射部52は、ノズル列44の搬送方向Xの範囲を包含するように配置されている。上流側照射部52を点灯させた場合、ノズル列44によって印刷されるパス印刷領域には、照射強度が値P1以上の光が照射されることになる。すなわち、上流側照射部52を点灯させた場合、ノズル列44によって印刷される領域、すなわちインクのドットが形成される領域には、光硬化型インクを硬化させることが可能な光が照射されることになる。
本実施形態では、ノズル列44の下流端(言い換えると、ノズル列44を構成する複数のノズル45のうちの最下流のノズル45)の位置は、上流側照射部52と中間照射部53との境界部よりも上流側に設定されている。上流側照射部52の下流側の少なくとも一部は、ノズル列44の下流端よりも搬送方向Xの下流側に配置されている。また、中間照射部53は、ノズル列44の下流端から間隔を空けて、ノズル列44の下流端よりも下流側に配置されている。このため、上流側照射部52を点灯させつつ、中間照射部53を消灯させた場合、ノズル列44の下流端の位置における光の照射強度の値は、最大値Pmaxよりは小さいが、値P1よりも大きい値となる。
本実施形態では、光照射装置50の上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54のそれぞれの点灯および消灯の制御をしつつ、カラーノズル列44a、ホワイトノズル列44b、クリアノズル列44cおよびプライマーノズル列44dの吐出および非吐出を制御することで、様々な印刷モードを実現することができる。
以下では、マルチパス印刷のうち4パス印刷を例にして、印刷モードが有する各モードについて説明する。4パス印刷とは、4回のパス動作で4回同じ位置にインクが吐出されることで印刷が行われることをいう。4パス印刷のとき、搬送動作における媒体Mの搬送量は、ノズル列44の搬送方向Xの長さL1の1/4である。例えば図8Aなどにおいて、パス印刷領域AR100は、1回のパス動作でノズル列44から吐出される領域である。
ここでは、パス印刷領域AR100は、搬送方向Xに4つの分割領域AR101~AR104に分割される。また、ここでは、ノズル列44を搬送方向Xに4分割し、上流側から順に分割ノズル列441~444とする。4パス印刷の場合、分割領域AR101~AR104のそれぞれに対して、4回の印刷が行われる。例えば図8Aの分割領域AR101、AR102、AR103、AR104は、それぞれ1回、2回、3回、4回のパス動作で印刷が行われた領域を示している。例えば4回のパス動作で印刷が行われた分割領域AR104は、複数回の搬送動作を経て、図8Aの分割領域AR101の位置から順に下流側に搬送されている。分割領域AR104における1回目のパス動作では、図8Aの分割領域AR101の位置において、分割ノズル列441からインクが吐出される。その後、搬送動作によって図8Aの分割領域AR102の位置に移動する。2回目のパス動作では、図8Aの分割領域AR102の位置において分割ノズル列442からインクが吐出される。同様に、搬送動作を経て、分割領域AR104における3、4回目のパス動作では、それぞれ図8Aの分割領域AR103、AR104の位置において、分割ノズル列443、444からインクが吐出される。
4パス印刷の場合、図8Aの分割領域AR101は、1回分のパス(4回目のパス)で印刷された領域である。4パス印刷の場合、分割領域AR101には、およそ1/4のインクのドットが形成されている。図8Aの分割領域AR102は、2回分のパス(3、4回目のパス)で印刷された領域である。4パス印刷の場合、分割領域AR102には、およそ半分のインクのドットが形成されている。図8Aの分割領域AR103は、3回分のパス(2~4回目のパス)で印刷された領域である。4パス印刷の場合、分割領域AR103には、およそ3/4のインクのドットが形成されている。図8Aの分割領域AR104は、4回分のパス(1~4回目のパス)で印刷された領域である。分割領域AR104には、各パス(1~4回目のパス)で形成されたインクのドットが搬送方向Xに分散して配置されている。形成されている。このように、マルチパス印刷は、各パスで形成されるドットを搬送方向Xに分散させることができるという特徴がある。4パス印刷の場合、分割領域AR104には、形成すべきドットが全て形成されている。4パス印刷の場合、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)は、印刷領域の搬送方向Xの長さの約1/4となる。このため、ノズル列44の全てのノズル45からインクを吐出させると、4パス印刷の場合、搬送動作時の搬送長さ(搬送量)は、ノズル列44の長さL1の約1/4となる。
次に、本実施形態に係る印刷装置1が実行可能な印刷モードについて順に説明する。ここでは、印刷モードとして、カラー印刷モード、グロス印刷モード、平滑カラー印刷モードおよびプライマー印刷モードを選択することが可能である。本実施形態では、制御装置60の印刷モード設定部62(図2参照)が、印刷装置1がこれから実行する印刷モードを設定する。印刷モード設定部62は、利用者によって選択された印刷モードを、印刷装置1が実行する印刷モードとして設定する。
例えば図1に示すコンピュータ110に接続された表示画面111に印刷モードを選択する画面が表示される。利用者は、入力装置112を操作することで、カラー印刷モード、グロス印刷モード、平滑カラー印刷モードおよびプライマー印刷モードから1つの印刷モードを選択する。次に、コンピュータ110は、利用者に選択された印刷モードに関する印刷モード指令コードを生成し、印刷モード指令コードを印刷装置1に送信する。印刷モード設定部62は、印刷モード指令コードに従った印刷モードを、印刷装置1が実行する印刷モードに設定する。
以下、カラー印刷モード、グロス印刷モード、平滑カラー印刷モードおよびプライマー印刷モードの順に説明する。なお、図8A、図9A、図10A、図13Aにおいて上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54にハッチングが施されている場合、点灯していることを示している。一方、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54にハッチングが施されていない場合、消灯していることを示している。
図8Aは、カラー印刷モードにおける光照射装置50、カラーノズル列44a、ホワイトノズル列44bおよび媒体Mを概念的に示した平面図である。図8Bは、カラー印刷モードにおけるインクのドットの状態を示す図である。カラー印刷モードでは、制御装置60のカラー印刷制御部71(図2参照)による制御が行われる。カラー印刷制御部71は、カラーパス制御部81によるパス動作と、搬送制御部64による搬送動作とを交互に実行させるように制御する。また、カラー印刷制御部71は、カラーパス制御部81によるパス動作の間、第2光照射制御部66による光照射装置50の光源50Aの点灯および消灯の制御が行われる。なお、第2光照射制御部66による光照射装置50の制御は、搬送動作の間も行われてもよい。
カラー印刷モードでは、第2光照射制御部66は、図8Aに示すように、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54のそれぞれを点灯するように光照射装置50を制御する。そのため、図6におけるグラフ線G1のような光の照射強度の分布になる。
カラー印刷モードでは、カラーパス制御部81は、カラーノズル列44aのノズル45からカラーインクを吐出させるとともに、ホワイトノズル列44bのノズル45からホワイトインクを吐出させる。なお、カラーノズル列44aのノズル45からのカラーインクの吐出と、ホワイトノズル列44bのノズル45からのホワイトインクの吐出とは、同時に(以下、同時打ちという。)行われてもよいし、同時打ちでなくてもよい。例えばパス動作に応じて、カラーノズル列44aのノズル45、および、ホワイトノズル列44bのノズル45の一方からインクを吐出させてもよいし、いわゆるレイヤー印刷によって実現することができてもよい。例えば分割領域AR101、AR102では、ホワイトインクを吐出し、分割領域AR103、AR104では、カラーインクを吐出する。ただし、分割領域AR101、AR102では、カラーインクを吐出し、分割領域AR103、AR104では、ホワイトインクを吐出してもよい。
カラーパス制御部81による1回のパス動作によって、図8Aの分割領域AR101~AR104には、カラーインクおよびホワイトインクによってインクのドットが形成されると共に、分割領域AR101~AR104に吐出された直後のインクのドットに上流側照射部52から光が照射される。その結果、媒体Mに吐出されたインクのドットは硬化または半硬化する。
ここで、図8Bでは、1、2、3、4回目のパス動作で吐出されたインクのドットを、それぞれドットDt11、Dt12、Dt13、Dt14とする。分割領域AR102~AR104では、直前のパス動作でインクのドットが形成された領域に、更にインクのドットが形成される。例えば、分割領域AR102では、1回目のパス動作で吐出されたインクのドットDt11の間に、インクのドットDt12が形成される。ここで、直前のパス動作で形成されたインクのドットは、媒体Mへの吐出直後に光が照射されて硬化または半硬化している。そのため、分割領域AR102~AR104で更にインクのドットDt12~Dt14を形成したとき、インクのドットDt11~Dt14同士を滲み難くすることができる。
本実施形態のカラー印刷モードでは、第2光照射制御部66は、上流側照射部52のみではなく、中間照射部53および下流側照射部54も点灯させている。このことによって、媒体Mに吐出されたインクのドットを、中間照射部53および下流側照射部54から照射された光によって、更に硬化させることができる。ただし、上流側照射部52から照射される光エネルギーが、インクのドットを硬化させるために十分であれば、中間照射部53および下流側照射部54は消灯してもよい。
なお、仮に中間照射部53および下流側照射部54を消灯させた場合であっても、本実施形態では、図7に示すように、上流側照射部52の下流側の少なくとも一部は、ノズル列44(詳しくは、カラーノズル列44aおよびホワイトノズル列44b)の下流端よりも下流側に配置されている。そのため、ノズル列44の下流端の位置における照射強度は、値P1を越えた値になる。そのため、分割領域AR104にも比較的強い照射強度の光が照射されており、インクのドットを硬化させ易い。
また、仮に中間照射部53および下流側照射部54を消灯させた場合であっても、本実施形態では、上流側照射部52と中間照射部53との境界部には、ケース50Cのように光を遮る部材がないため、上流側照射部52から照射された光が、上流側照射部52よりも下流側に漏洩する。このため、印刷領域において形成すべきインクのドットが全て形成された後、すなわち、4パス印刷が完了した後、分割領域AR104が下流側に移動した場合であっても、インクのドットを更に硬化させることが可能である。
次に、グロス印刷モードについて説明する。図9Aは、グロス印刷モードにおける光照射装置50、クリアノズル列44cおよび媒体Mを概念的に示した平面図である。図9Bは、グロス印刷モードにおけるクリアインクのドットの状態を示す図である。グロス印刷モードでは、制御装置60のグロス印刷制御部73(図2参照)による制御が行われる。グロス印刷制御部73は、クリアパス制御部83によるパス動作と、搬送制御部64による搬送動作とを交互に実行させるように制御する。また、グロス印刷制御部73は、クリアパス制御部83によるパス動作の間、第3光照射制御部67による光照射装置50の光源50Aの点灯および消灯の制御が行われる。なお、第3光照射制御部67による制御は、搬送動作の間も行われてもよい。
グロス印刷モードでは、第3光照射制御部67は、図9Aに示すように、上流側照射部52および中間照射部53を消灯し、下流側照射部54を点灯するように光照射装置50を制御する。そのため、図6におけるグラフ線G2のような照射強度の分布になる。
グロス印刷モードでは、クリアパス制御部83は、パス動作において、クリアノズル列44cのノズル45からクリアインクを吐出させる。
グロス印刷モードにおいて、分割領域AR101~AR104には、クリアパス制御部83によってクリアインクのドットが形成される。グロス印刷モードでは、上流側照射部52は消灯しているため、分割領域AR101~AR104に吐出された直後のクリアインクのドットには光がほぼ照射されず、クリアインクのドットは硬化し難い。この結果、媒体M上でクリアインクのドットが徐々に濡れ広がり、平滑化することになる。
分割領域AR102~AR104では、直前のパス動作でクリアインクのドットが形成された領域に、更にクリアインクのドットが形成される。ただし、直前のパス動作で形成されたクリアインクのドットは未硬化の状態であるため、分割領域AR102~AR104で更にクリアインクのドットを形成したときに、未硬化のインクのドット同士が混ざり合い、連結する。隣り合うクリアインクのドットが連結すると、連結したインクのドットの表面が平滑化する。
この結果、分割領域AR104において形成すべきクリアインクのドットが全て形成されたとき、表面の平滑なクリアインクのドットの膜(光沢膜、光沢層)Dt2(図9B参照)が形成される。そして、平滑な表面のクリアインクの膜Dt2は、分割領域AR104が下流側に移動したとき、下流側照射部54から光を照射されることによって、硬化される。このことによって、媒体M上に、平滑な表面のクリアインクの光沢層を形成することができる。
次に、平滑カラー印刷モードについて説明する。図10Aは、平滑カラー印刷モードにおける光照射装置50、カラーノズル列44a、ホワイトノズル列44bおよび媒体Mを概念的に示した平面図である。図10Bは、平滑カラー印刷モードにおけるインクのドットの状態を示す図である。平滑カラー印刷モードでは、媒体Mに吐出された直後に硬化させたインクのドットと、平滑化してから硬化させたインクのドットとを混在させてカラー印刷を行う。
平滑カラー印刷モードでは、制御装置60の平滑カラー印刷制御部75(図2参照)による制御が行われる。平滑カラー印刷制御部75は、カラーパス制御部81によるパス動作と、搬送制御部64による搬送動作とを交互に実行させるように制御する。また、平滑カラー印刷制御部75は、カラーパス制御部81によるパス動作の間、第1光照射制御部65による光照射装置50の光源50Aの点灯および消灯の制御が行われる。なお、第1光照射制御部65による制御は、搬送動作の間も行われてもよい。
平滑カラー印刷モードでは、第1光照射制御部65は、図10Aに示すように、上流側照射部52を点灯し、中間照射部53を消灯し、下流側照射部54を点灯するように光照射装置50を制御する。ここで、上流側照射部52を点灯し、中間照射部53を消灯し、下流側照射部54を点灯するようなパターンが、本発明の「点消灯パターン」に対応する。平滑カラー印刷モードでは、図6におけるグラフ線G3のような光の照射強度の分布になる。
平滑カラー印刷モードでは、カラーパス制御部81は、各パス動作において、カラーノズル列44aからカラーインクを吐出させると共に、ホワイトノズル列44bからホワイトインクを吐出させるが、同時打ちに限定されない点は、カラー印刷モードと同様である。
図11Aは、平滑カラー印刷モードにおいて、分割ノズル列441~444のそれぞれから吐出されたインクに対するパス数に応じた積算光量を示すグラフである。図11Bは、図11Aのグラフの1パス目~8パス目までを拡大して示したグラフである。図12Aは、カラー印刷モードにおいて、分割ノズル列441~444のそれぞれから吐出されたインクに対するパス数に応じた積算光量を示すグラフである。図12Bは、図12Aのグラフの1パス目~8パス目までを拡大して示したグラフである。図11A、図11B、図12Aおよび図12Bにおいて、積算光量の値Q1は、インクが硬化するのに必要な最低限の光量のことである。
例えばカラー印刷モードでは、図12Bに示すように、分割ノズル列441から吐出されたインクに対して、3パス目までの積算光量は、値Q1よりも少なく、4パス目の積算光量が値Q1よりも多くなる。そのため、カラー印刷モードでは、分割ノズル列441から吐出されたインクは、4パス目で硬化する。同様に、分割ノズル列442~444から吐出されたそれぞれのインクに対して、3パス目までの積算光量は、値Q1よりも少なく、4パス目で積算光量が値Q1よりも多くなる。よって、分割ノズル列442~444から吐出されたインクも、分割ノズル列441から吐出されたインクと同様に、4パス目で硬化する。
インクが硬化するまでのパス数は、インクが硬化するまでの時間のことであり、インクが硬化するまでのパス数に応じてインクのドットの濡れ広がり方が異なる。ここでは、インクが硬化するまでのパス数が多くなるほど、インクのドットが濡れ広がり易い。カラー印刷モードでは、分割ノズル列441~444から吐出されたインクが硬化するまでのパス数は比較的に少なく、かつ、当該パス数が同じであるため、図8Bに示すようなインクのドットDt11~Dt14の状態となる。
一方、平滑カラー印刷モードでは、図11Bに示すように、分割ノズル列441~444から吐出されたそれぞれのインクに対して、積算光量が値Q1に到達するまでのパス数が異なる。ここでは、分割ノズル列441、442から吐出されたインクに対して、3パス目までの積算光量は、値Q1よりも少なく、4パス目の積算光量が値Q1よりも多くなる。そのため、分割ノズル列441、442から吐出されたインクは、4パス目で硬化する。一方、分割ノズル列443から吐出されたインクに対してでは、5パス目までの積算光量は値Q1よりも少なく、6パス目の積算光量が値Q1よりも多い。よって、分割ノズル列443から吐出されたインクは、6パス目で硬化する。そして、分割ノズル列444から吐出されたインクに対してでは、6パス目までの積算光量が値Q1よりも少なく、7パス目で積算光量が値Q1よりも多くなる。よって、分割ノズル列444から吐出されたインクは、7パス目で硬化する。
このように、平滑カラー印刷モードでは、分割ノズル列441、442、443、444から吐出されたインクが硬化するまでのパス数は、それぞれ4パス目、4パス目、6パス目、7パス目となり、分割ノズル列441~444に応じてインクが硬化するまでの時間が異なる。これは、図6のグラフ線G3に示すような光の照射強度の分布であるためと考えられる。平滑カラー印刷モードでは、分割ノズル列441、442から吐出されたインクは、上流側照射部52の中央部52bの照射強度が強い光が照射された後に、照射強度が弱い中間照射部53の光が照射される。そのため、分割ノズル列441、442から吐出されたインクに対して、少ないパス数で積算光量が値Q1に到達することになる。一方、分割ノズル列444から吐出されたインクは、上流側照射部52の中央部52bの照射強度が強い光が照射されることなく、上流側照射部52の下流部52c、中間照射部53の照射強度が比較的に弱い光から照射されることになる。そのため、分割ノズル列444から吐出されたインクに対して、分割ノズル列441、442よりも多いパス数で積算光量が値Q1に到達することになる。
平滑カラー印刷モードでは、インクが硬化するまでのパス数が少ない分割ノズル列441、442から吐出されたインクのドットは、硬化するまでの時間が短いため、例えば図10Bに示すドットDt31となる。一方、インクが硬化するまでのパス数が多い分割ノズル列444から吐出されたインクのドットは、硬化するまでの時間が長いために濡れ広がり易く、例えば図10Bに示すドットDt32となり、平滑化された状態となる。以上のことにより、媒体M上に平滑な表面を有するカラー画像を形成することができる。
次に、プライマー印刷モードについて説明する。図13Aは、プライマー印刷モードにおける光照射装置50、プライマーノズル列44dおよび媒体Mを概念的に示した平面図である。図13Bは、プライマー印刷モードにおけるプライマーインクのドットの状態を示す図である。プライマー印刷モードでは、媒体Mに吐出された直後に硬化させたプライマーインクのドットと、平滑化してから硬化させたプライマーインクのドットとを混在させてプライマー印刷を行う。
プライマー印刷モードでは、制御装置60のプライマー印刷制御部77(図2参照)による制御が行われる。プライマー印刷制御部77は、プライマーパス制御部85によるパス動作と、搬送制御部64による搬送動作とを交互に実行させるように制御する。また、プライマー印刷制御部77は、プライマーパス制御部85によるパス動作の間、第1光照射制御部65による光照射装置50の光源50Aの点灯および消灯の制御が行われる。なお、第1光照射制御部65による制御は、搬送動作の間も行われてもよい。
プライマー印刷モードでは、第1光照射制御部65は、図13Aに示すように、上流側照射部52を点灯し、中間照射部53を消灯し、下流側照射部54を点灯するように光照射装置50を制御する。プライマー印刷モードでは、図6におけるグラフ線G3のような照射強度の分布になる。
プライマー印刷モードでは、プライマーパス制御部85は、各パス動作において、プライマーノズル列44dからプライマーインクを吐出させる。
図11Aおよび図11Bのグラフは、プライマー印刷モードに対する積算光量を示すグラフであるともいえる。プライマー印刷モードでは、平滑カラー印刷モードと同様に、分割ノズル列441、442から吐出されたインクが硬化するまでに要するパス数は少なく(例えば4パス数)、分割ノズル列444から吐出されたインクが硬化するまでに要するパス数は多くなる(例えば7パス数)。そして、分割ノズル列443から吐出されたインクが硬化するまでに要するパス数は、それらの間である(例えば6パス数)。よって、プライマー印刷モードでは、インクが硬化するまでのパス数が少ない分割ノズル列441、442から吐出されたインクのドットは、硬化するまでの時間が短いため、例えば図13Bに示すドットDt41となる。一方、プライマー印刷モードにおいて、インクが硬化するまでのパス数が多い分割ノズル列444から吐出されたインクのドットは、硬化するまでの時間が長いために濡れ広がり易く、例えば図13Bに示すドットDt42となり、平滑化された状態となる。以上のことにより、媒体M上に平滑な表面を有するプライマーインクの層を形成することができる。
以上、本実施形態では、図7のグラフ線G3に示すように、上流側照射部52が点灯し、中間照射部53が消灯していることで、上流側照射部52の中央部52bから照射される光の照射強度が強く、上流側照射部52の下流部52cの照射強度が比較的弱くなる。そのため、ノズル列44の上流側および中央部から吐出されたインクには、上流側照射部52の中央部52bの照射強度が強い光が照射されることになり、当該インクは硬化する。一方、ノズル列44の下流側から吐出されたインクは、上流側照射部52の下流部52cの照射強度が弱い光が照射されるため、完全には硬化せずに半硬化状態となる。この半硬化状態のインクは、下流側照射部54による光が照射されるまでは、完全に硬化せずに、濡れ広がり、その表面は平滑化される。そして、平滑化されたインクに対して下流側照射部54による光が照射されて硬化する。よって、本実施形態によれば、ノズル列44から吐出されたインクが硬化されるまでの時間を段階的に調整することで、照射部52~54を全て点灯する場合と比較して光沢のある印刷画像を媒体Mに印刷することができる。したがって、手間を掛ける時間を低減して、照射部52~54を全て点灯する場合と比較して光沢のある印刷画像を媒体Mに印刷することができる。
本実施形態では、平滑カラー印刷モードでは、カラーパス制御部81は、図10Aに示すように、カラーノズル列44aからプロセスカラーインクを吐出すると共に、ホワイトノズル列44bからホワイトインクを吐出して、パス動作の制御を行う。第1光照射制御部65は、カラーパス制御部81によるパス動作の間、上流側照射部52および下流側照射部54を点灯し、中間照射部53を消灯するように光照射装置50を制御する。このことによって、媒体Mに吐出された直後に硬化させたインク(ここではカラーインクおよびホワイトインク)のドットDt31(図10B参照)と、平滑化してから硬化させたインクのドットDt32(図10B参照)とを混在させてカラー印刷を行うことができる。よって、照射部52~54を全て点灯する場合と比較して光沢があるカラー印刷を実現することができる。
本実施形態では、プライマー印刷モードでは、プライマーパス制御部85は、図13Aに示すように、プライマーノズル列44dからプライマーインクを吐出して、パス動作の制御を行う。第1光照射制御部65は、プライマーパス制御部85によるパス動作の間、上流側照射部52および下流側照射部54を点灯し、中間照射部53を消灯するように光照射装置50を制御する。このことによって、媒体Mに吐出された直後に硬化させたプライマーインクのドットDt41(図13B参照)と、平滑化してから硬化させたプライマーインクのドットDt42(図13B参照)とを混在させてプライマー印刷を行うことができる。よって、比較的に光沢があるプライマー印刷を実現することができる。
本実施形態では、図4に示すように、上流側照射部52の搬送方向Xの長さL21は、ノズル列44の搬送方向Xの長さL1以上である。このことによって、例えば上流側照射部52のみを点灯する場合であっても、ノズル列44の上流端から下流端に至るまでの全てのノズル45から吐出されたインクに、光を確実に照射させることができる。よって、光照射装置50の全ての光源50Aを点灯させなくても、ノズル列44の全てのノズル45から吐出されたインクに光を照射させることができる。したがって、光照射装置50の光源50Aを点灯させることに要する消費電力を抑えることができる。
本実施形態では、図4に示すように、光照射装置50の照射口50Dは、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54に亘るようにケース50Cに1つ形成されている。ここでは、照射口50D内の領域のうち、上流側照射部52内の領域50Daと、中間照射部53内の領域50Dbとは連続している。これらによって、上流側照射部52の照射口50Dの領域50Daと、中間照射部53の照射口50Dの領域50Dbとの間には、他の部材が配置されていない。よって、図6のグラフ線G3に示すように、上流側照射部52を点灯し、中間照射部53を消灯することで、上流側照射部52の下流部52cから照射された光が、中間照射部53に広がり易くなる。したがって、上流側照射部52の下流部52cから照射される光の照射強度を弱くすることができる。そのため、ノズル列44の長さL1が上流側照射部52の長さL21以下の場合であっても、媒体Mに吐出された直後に硬化させたインクのドットと、平滑化してから硬化させたインクのドットとを混在させた平滑カラー印刷を実現することができる。
本実施形態では、カラー印刷モードのとき、第2光照射制御部66は、カラーパス制御部81のパス動作の間、図8Aに示すように、上流側照射部52、中間照射部53および下流側照射部54のそれぞれを点灯するように光照射装置50を制御する。このことによって、カラー印刷モードでは、媒体Mに吐出された直後にインクのドットが硬化する。そのため、吐出された直後に硬化されたインクのドットによって形成されたカラー印刷であって、光沢がないカラー印刷を媒体Mに印刷することができる。よって、本実施形態では、光照射装置50の照射部52、53、54の点灯および消灯を適宜制御することで、光沢があるカラー印刷と、光沢がないカラー印刷を選択して印刷することができる。
本実施形態では、グロス印刷モードのとき、クリアパス制御部83は、図9Aに示すように、クリアノズル列44cからクリアインクを吐出して、パス動作の制御を行う。第3光照射制御部67は、クリアパス制御部83のパス動作の間、上流側照射部52および中間照射部53を消灯し、下流側照射部54を点灯するように光照射装置50を制御する。このことによって、クリアノズル列44cから吐出されたクリアインクには、上流側照射部52および中間照射部53から光が照射されず、下流側照射部54から光が照射されることで硬化する。よって、クリアインクが硬化するまでの時間を確保することができるため、クリアインクのドットは、平滑化する。したがって、光沢があるクリアインクの印刷を実現することができる。本実施形態では、光照射装置50の照射部52、53、54の点灯および消灯を適宜制御することで、光沢がある平滑カラー印刷と、光沢のあるクリアインクの印刷を選択して媒体Mに印刷することができる。
なお、本実施形態では、光照射装置50の上流側照射部52の搬送方向Xの長さL21は、ノズル列44の搬送方向Xの長さL1よりも若干長かった。しかしながら、上流側照射部52の搬送方向Xの長さL21は、ノズル列44の搬送方向Xの長さL1と同じであってもよい。