JP2023037319A - 軸受装置用保持器およびそれを備える車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボールをポケットに挿入する際の柱部の変形量を抑制しつつ、ボールの組み込み時における当該ボールの落下を防止できる軸受装置用保持器およびそれを備える車輪用軸受装置を提供する。【解決手段】爪部7eの先端部には、ポケットPtへボール8を挿入する際に当該ボール8を誘導する誘導面7fが形成され、誘導面7fには、軸方向視でボール8の中心Pまでの距離が誘導面7fにおいて最小となる突起部7jが形成され、誘導面7fは、軸方向における基部7a側に向かうに従って、軸方向視で誘導面7fからボール8の中心Pまでの距離を半径とする仮想円Cが小さくなるように形成されている、とした。【選択図】図6
Description
本発明は、軸受装置用保持器およびそれを備える車輪用軸受装置に関する。
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置は、複数のボールを介してハブ輪を含む内方部材が外方部材に回転自在に支持されている。複数のボールは、保持器によって周方向に等配されるとともに、隣り合うボール同士の接触が防止された状態で保持されている。
このような車輪用軸受装置において、隣り合うボール同士を仕切っている保持器の柱部の周方向の厚さを薄くするとともに、柱部に切り欠き部を形成してボールの個数を増やすことで、保持器を強度不足の問題ないものとしつつ、軸受寿命の増大を可能としたものが知られている。例えば、特許文献1および特許文献2に記載の如くである。
特許文献1に記載の車輪用軸受装置には、隣り合うボール同士を仕切っている保持器の柱部の周方向の厚さを薄くするとともに、隣り合うボール同士が最も近接している部分に切り欠き部が形成されている。つまり、隣り合うボール同士がもっとも近接している部分に柱部が介在していない。これにより、保持器は、ボールのピッチ円直径を大きくすることなく、保持器に組み込むボールの個数を増やすことができる。
特許文献2に記載の車輪用軸受装置には、保持器の爪部の先端部が、軸方向視でボール中心を中心として円環状の範囲に含まれる形状になっており、円環状の範囲がボールの直径の0.8倍以上1倍未満の範囲である。これにより、軸方向視で爪部とボールとの重複する範囲が制限されるので、保持器のポケットにボールを挿入する際に、保持器の柱部の変形量が抑制される。これにより、保持器に組み込むボールの個数を増やしつつ、ボールの組み込み性を向上することができる。
上記特許文献1に記載の保持器において、柱部の周方向の厚さが薄くなっているため、保持器の剛性が低下する。そのため、ボールをポケットに挿入する際に、挿入方向への保持器の変形が生じて、ボールの組み込み性が低下する場合がある。上記特許文献2に記載の保持器において、ボールの組み込み性を向上させるため、軸方向視で保持器の爪部とボールとの重複する範囲が制限される形状となっている。これにより、保持器のポケットにボールを挿入する際の柱部の変形量を抑制することができる。しかし、軸方向視で爪部とボールとの重複する範囲が従来の保持器よりも狭くなり、ボールの組み込み時に保持器から当該ボールが落下するおそれがある。
そこで、本発明においては、ボールをポケットに挿入する際の柱部の変形量を抑制しつつ、ボールの組み込み時における当該ボールの落下を防止できる軸受装置用保持器およびそれを備える車輪用軸受装置を提供する。
即ち、第一の発明は、樹脂部材によって環状に形成される基部および前記基部から周方向に一定の間隔で軸方向に延びる複数の柱部と、隣り合う前記柱部と前記基部とによってボールの外周面に沿うように形成される曲面を有し、前記ボールを保持するポケットと、を備え、前記柱部は、隣り合う前記柱部に向かって突出する爪部を有し、前記爪部の先端部が、軸方向視で前記ボールの中心を中心とする所定半径の基準仮想円と前記ボールの外周円とに囲まれる円環状の範囲に含まれ、前記所定半径の基準仮想円の直径が、前記ボールの直径の0.8倍以上1倍未満である軸受装置用保持器であって、前記爪部の先端部には、前記ポケットへ前記ボールを挿入する際に当該ボールを誘導する誘導面が形成され、前記誘導面には、軸方向視で前記ボールの中心までの距離が前記誘導面において最小となる突起部が形成され、前記誘導面は、軸方向における前記基部側に向かうに従って、軸方向視で前記誘導面から前記ボールの中心までの距離を半径とする仮想円が小さくなるように形成されている、としたものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、第一の発明によれば、軸方向視で保持器の爪部とボールとが重複する範囲を制限しつつ、誘導面の基部側において爪部とボールとが重複する範囲を従来よりも広く確保することができる。従って、ボールをポケットに挿入する際の柱部の変形量を抑制しつつ、ボールの組み込み時における当該ボールの落下を防止できる。
以下に、図1と図2とを用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。
図1に示すように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2、内方部材であるハブ輪3、内輪4、転動列である二列のインナー側ボール列5、アウター側ボール列6、シール部材であるインナー側シール部材9、シール部材であるアウター側シール部材16を具備する。インナー側シール部材9およびアウター側シール部材16は、車輪用軸受シールである。ここで、本明細書において、インナー側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。また、車輪用軸受装置1の回転軸と平行な方向を「軸方向」、車輪用軸受装置1の回転軸に直交する方向を「径方向」、車輪用軸受装置1の回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」と表す。また、回転軸に沿って車輪用軸受装置1の内部から遠ざかる側を「軸方向外側」、回転軸に沿って車輪用軸受装置1の内部に近づく側を「軸方向内側」と表す。
外輪2は、インナー側ボール列5およびアウター側ボール列6を介してハブ輪3と内輪4を支持するものである。外輪2は、略円筒状に形成されている。外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材9が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材16が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。
外輪2の内周面には、インナー側の外側軌道面2cとアウター側の外側軌道面2dとが設けられている。外輪2の外周面には、図示しない懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体に形成されている。
ハブ輪3は、図示しない車両の車輪を回転自在に支持するものである。ハブ輪3は、円柱状に形成されている。ハブ輪3のインナー側端部には、外周面に縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、円周等配位置にハブボルト3dが挿通されている。また、ハブ輪3は、アウター側の内側軌道面3cが外輪2のアウター側の外側軌道面2dに対向するように配置されている。ハブ輪3の内周は、トルク伝達用のセレーション(またはスプライン)が形成されている。ハブ輪3には、小径段部3aに内輪4が嵌合されている。
内輪4は、インナー側ボール列5とアウター側ボール列6とに予圧を与えるものである。内輪4の外周面には、周方向に環状の内側軌道面4aが形成されている。内輪4は、かしめによりハブ輪3のインナー側端部に固定されている。つまり、ハブ輪3のインナー側には、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。内輪4は、その内側軌道面4aが外輪2のインナー側の外側軌道面2cに対向するように配置されている。
インナー側ボール列5とアウター側ボール列6とは、転動体である複数のボール8が保持器7によって環状に保持されている。インナー側ボール列5は、内輪4の内側軌道面4aと、外輪2のインナー側の外側軌道面2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側ボール列6は、ハブ輪3の内側軌道面3cと、外輪2のアウター側の外側軌道面2dとの間に転動自在に挟まれている。つまり、インナー側ボール列5とアウター側ボール列6とは、外輪2に対してハブ輪3と内輪4とを回転自在に支持している。車輪用軸受装置1は、外輪2と、ハブ輪3または内輪4と、その間に挟まれているインナー側ボール列5とアウター側ボール列6とから複列アンギュラ玉軸受が構成されている。車輪用軸受装置1は、インナー側ボール列5とアウター側ボール列6とによって外輪2と内輪4とが相対回転自在に構成されている。
保持器7は、ボール8を保持するものである。保持器7は、耐油性、耐摩耗性、潤滑性に優れた合成樹脂(樹脂部材)であるポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等から構成されている。また、補強材として、樹脂の中にグラスファイバ(GF)またはカーボンファイバ(CF)等が含まれていてもよい。
図2に示すように、保持器7は、基部7aと、柱部7bとから形成されている。基部7aは、環状に形成されている。柱部7bは、基部7aから軸方向に突出している。柱部7bは、基部7aの周方向に沿って等間隔に配置されている。保持器7には、ボール8を独立して保持するポケットPtが隣り合う柱部7bの間に等間隔で形成されている(図3参照)。
ボール8は、外輪2と内輪4との間に充填されている潤滑材であるグリースを介して保持器7のポケットPtに回転自在に保持されている。
図1に示すように、インナー側シール部材9は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材9は、例えば二枚のシールリップ12を接触させる2サイドリップタイプのパックシールから構成されている。インナー側シール部材9は、略円筒状のシール板10と略円筒状のスリンガ13とを具備する。
図2に示すように、略円筒状の芯金11にシールリップ12(薄墨部分参照)が、固着されることでシール板10が構成される。芯金11は金属製であり、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)、オーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)から構成されている。芯金11は、軸方向断面視で略L字状に形成されている。シールリップ12は、例えば、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムから構成されている。シール板10は、外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されている。
スリンガ13は、例えば、シール板10と同じ材質の鋼板から構成されている。スリンガ13は、軸方向断面視で略L字状に形成されている。スリンガ13は、内輪4に嵌合されている。スリンガ13は、シール板10に対向した状態でシール板10のインナー側に配置されている。
このように、インナー側シール部材9は、外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されたシール板10と内輪4に嵌合されたスリンガ13とからパックシールを構成している。シール板10のシールリップ12は、油膜を介してスリンガ13に接触または近接し、主に車輪用軸受装置1の内部のグリースの外部への漏れまたは外部から泥水等の内部への入り込みを防止している。なお、以下の実施形態においてインナー側シール部材9は、単数または複数のシールリップ12を備えるパックシールであればよい。
図1に示すように、アウター側シール部材16は、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間を塞ぐものである。アウター側シール部材16は、略円筒状の芯金15にシールリップ14が固着されている。
アウター側シール部材16の芯金15は、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)、オーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)から構成されている。芯金15は、軸方向断面視で略L字状に形成されている。シールリップ14は、例えば、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムから構成されている。
芯金15は、外輪2のアウター側開口部2bに嵌合されている。この際、アウター側シール部材16は、シールリップ14がハブ輪3のシール摺動面に油膜を介して接触するように配置されている。アウター側シール部材16は、シール摺動面に対して摺動可能に構成されている。これにより、シールリップ14は、外輪2のアウター側開口部2bからの潤滑グリースの漏れおよび外部からの雨水または泥水等の入り込みを防止する。
このように構成される車輪用軸受装置1には、ハブ輪3と内輪4とが、保持器7によって複数のボール8が均等な間隔で保持されているインナー側ボール列5とアウター側ボール列6とを介して回転自在に支持されている。また、車輪用軸受装置1は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間がインナー側シール部材9で塞がれ、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間がアウター側シール部材16で塞がれている。これにより、車輪用軸受装置1は、内部からの潤滑グリースの漏れおよび外部からの雨水または泥水等の入り込みを防止している。
以下に、図2から図5を用いて、本発明に係る軸受装置用保持器の一実施形態である保持器7について詳細に説明する。なお、以下の説明において、径方向とは、保持器7の基部7aの径方向を示すものとする。軸方向とは、基部7aの軸方向を示すものとする。周方向とは、基部7aの周方向を示すものとする。
図2に示すように、基部7aは、ボール8のピッチ円PCDよりも内径側に位置している。本実施形態では、基部7aの全体がピッチ円PCDよりも内径側に位置しているが、基部7aの一部がピッチ円PCDよりも外径側に位置していてもよい。なお、図2において、DPCDが、ボール8のピッチ円PCDを示している。
各柱部7bの内径面は、軸方向に延びている。柱部7bの外径面は、基部7aの先端から当該基部7aの外周面よりも外径側に傾斜して延びる第1部分と、第1部分から軸方向に水平に延びる第2部分とを有している。つまり、柱部7bは、基部7aから先端に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる部分を有している。柱部7bの外径面は、柱部7bの内径面よりも軸方向外側に突出している。
図3に示すように、隣り合う柱部7bの対向する側面の基部7a側と、その間の基部7aとから構成される部分には、曲面7cが基部7aを底部とする略半球状に形成されている。曲面7cは、中心が所定位置P(図2参照)にくるように配置したボール8の外周面に沿うように形成されている。さらに、柱部7bには、半球状の曲面7cの縁から柱部7bの先端に向かって軸方向に延びる案内面7dが形成されている。案内面7dは、軸方向視で曲面7cの縁の曲率と同一の曲率で湾曲している。案内面7dは、ボール8を柱部7bの先端から曲面7cに囲まれた空間に導くように構成されている。これにより、保持器7には、隣り合う柱部7bの間に曲面7cと案内面7dとからボール8を保持するポケットPtが等間隔に形成されている。
図4に示すように、ボール8が柱部7bの内面に接することで、ピッチ円PCD上における隣り合うボール8間の最小間隔が規制される。柱部7bの厚さは、ピッチ円PCD上で最も薄く、それよりも内径側および外径側に離れるにしたがい、次第に厚くなる。
図4と図5とに示すように、柱部7bの曲面7cおよび案内面7dは、軸方向視で柱部7bの径方向幅の略中央部分を底として湾曲している。隣り合う柱部7b同士の間隔は、内径側端同士の間隔Wiと外径側端同士の間隔Woとが径方向略中央同士の間隔Wcよりも小さくなるように形成されている。これにより、柱部7bは、ポケットPtの内部に配置されているボール8の内径側および外径側への移動を規制している。柱部7bの先端部分には、隣り合う柱部7b(ポケットPt側)に向かって突出している爪部7eが形成されている。つまり、爪部7eは、柱部7bの先端部分から周方向両側にそれぞれ突出している。
図6に示すように、爪部7eの先端部は、軸方向視で所定位置Pを中心とする直径D1の基準仮想円C1と直径D0のボール8の外周円C0とに囲まれた径方向幅R1の円環状の範囲(薄墨部分)に含まれるように形成されている。基準仮想円C1はボール8の外周円C0と同心であり、基準仮想円C1の直径D1は外周円C0の直径D0よりも小さい。具体的には、基準仮想円C1の直径D1は、ボール8の直径D0の0.8倍以上、1倍未満に設定されている。
図2に示すように、柱部7bの径方向幅の略中央部分には、柱部7bの先端から基部7a側に向かって所定の径方向幅、軸方向長さのスリット7gαと所定の半径の曲面7gβとを有する切り欠き部7gが形成されている。切り欠き部7gは、外径側部分の柱(以下、単に「外側柱7h」と記す)と内径側部分の柱(以下、単に「内側柱7i」と記す)とを分岐させるものであり、柱部7bの径方向幅の略中央部分における部材を除去して形成されている。例えば、切り欠き部7gは、曲面7cおよび案内面7d(図3参照)によって柱部7bの厚さが最も薄くなる部分を中心に、必要な強度を有していない部分を除去するように形成されている。切り欠き部7gの底部は、ボール8の中心Pよりも軸方向内側に位置している。また、切り欠き部7gの径方向幅の範囲内にボール8の中心Pが位置している。つまり、柱部7bは、ボール8の中心Pと周方向に重ならないように形成されている。このように構成することで、保持器7は、ボール8の間隔が小さくなり、保持するボール8の個数を増やすことができる。
柱部7bは、切り欠き部7gによって外側柱7hと内側柱7iとに分岐されている。外側柱7hの先端部には、上記の爪部7eが形成されている。切り欠き部7gは、柱部7bの厚さが最も薄くなる径方向略中央部分を中心に、必要な強度を有していない部分を除去するように形成されている。
次に、図6と図7とを用いて、第一実施形態に係る保持器7の特徴点とその効果について説明する。
図6に示すように、爪部7eの先端部には、ポケットPtへボール8を挿入する際に当該ボール8を誘導する誘導面7fが形成されている。誘導面7fは、爪部7eの先端部のポケットPt側に形成されている。誘導面7fは、直径D1の基準仮想円C1よりも大きく直径D0のボール8の外周円C0よりも小さい任意の直径の仮想円Cに沿って形成されている。なお、誘導面7fは、仮想円Cに沿う曲面に形成されているが、仮想円Cに近似する平面でもよい。
誘導面7fは、隣り合う柱部7bに向かって突出している部分である突起部7jが形成されている。突起部7jは、軸方向視でボール8の中心Pまでの距離Db/2(仮想円Cbの半径)が誘導面7fにおいて最小となっており、ボール8の中心Pから爪部7eの軸方向端面S1(図7参照)までの距離Da/2(仮想円Caの半径)よりも距離Db/2が短い。つまり、誘導面7fは、軸方向における基部7a側に向かうに従って、仮想円Cが小さくなるように形成されている。これにより、軸方向視で爪部7eとボール8とが重複している範囲を制限しつつ、誘導面7fの基部7a側において爪部7eとボール8とが重複する範囲を従来よりも広く確保することができる。従って、保持器7は、ボール8をポケットPtに挿入する際の柱部7bの変形量を抑制しつつ、ボール8の組み込み時における当該ボール8の落下を防止できる。
図2および図6に示すように、内側柱7iの軸方向端面S1は、外側柱7hの軸方向端面S2よりもボール8の中心P側にオフセットしている。仮想円Caは、隣り合う内側柱7iと爪部7e(具体的には、誘導面7f)とをボール8が同時に接触する点を通ることで規定されている。このように、外側柱7hの軸方向端面S2よりもボール8の中心P側にオフセットした内側柱7iと爪部7eとによって仮想円Caが設定されるため、外側柱の軸方向端面と軸方向位置が一致した軸方向端面を有する内側柱と爪部とによって仮想円を規定する構成と比べて、仮想円Caの直径Daを大きくすることができる。よって、内側柱7iの軸方向位置を規定することで、当該仮想円Caをボール8の直径D0と同じ大きさまで設定し易くなり、爪部7eの先端部の設計自由度を向上することができる。従って、上記の突起部7j、後述のアール部7p、テーパ部7qを有する誘導面7fを形成し易くなる。
図7に示すように、爪部7eは、突起部7jの基部7a側に規制面7mが形成されている。規制面7mは、突起部7jから爪部7eの基端部側に傾斜して延びている。規制面7mは、保持器7に組み込まれたボール8の外周面に接触するように構成されている。これにより、ポケットPt内に配置されているボール8の軸方向への移動が規制される。従って、保持器7は、保持器7からのボール8の落下を防止できる。
誘導面7fは、軸方向における基部7a側に向かうに従って、隣り合う柱部7bに徐々に近接するように湾曲するアール部7pが形成されている。誘導面7fは、断面円弧状であり、軸方向における基部7a側に向かうに従って、軸方向に対する角度が大きくなるように爪部7eの軸方向端面S3から突起部7jに向かって延びている。これにより、アール部7pがボール8を挿入する際のガイドとなる。従って、保持器7は、ポケットPtへのボール8の挿入が容易となる。
図6に示すように、突起部7jにおける仮想円Cbの直径Dbは、爪部7eの軸方向端面S3(図7参照)における仮想円Caの直径Daよりも小さい。つまり、誘導面7fは、ボール8に最も近接する部分(突起部7j)における仮想円Cbの直径Dbが、爪部7eの軸方向端面S3における仮想円Caの直径Daよりも小さい。これにより、仮想円Cbの直径Dbを、基準仮想円C1の直径D1よりも小さく形成することが可能であり、誘導面7fの基部7a側において爪部7eとボール8とが重複する範囲を従来よりも広く確保することができる。また、仮想円Cbの直径Dbを適宜設定することが可能であり、軸方向視で保持器7の爪部7eとボール8とが重複する範囲を制限することができる。従って、保持器7は、ボール8をポケットPtに挿入する際の柱部7bの変形量を抑制し、ボール8の組み込み性を向上することができる。
図7に示すように、誘導面7fの突起部7jは、爪部7eの軸方向中央よりも基部7aに近接する位置に設けられる。つまり、爪部7eの軸方向端面S3から突起部7jまでの軸方向長さFは、爪部7eの軸方向端面S3から爪部7eの基部7a側の端部7nまでの軸方向長さEに対して1/2以上である。これにより、基部7a側へ押し込む力を徐々に増加させながらポケットPtへボール8を誘導させることができる。従って、保持器7は、ポケットPtへのボール8の挿入が容易となる。
次に、図6と図8とを用いて、第二実施形態に係る保持器7の特徴点とその効果について説明する。ここでは、第一実施形態に係る保持器7と比較して異なる部分のみを説明する。
図8に示すように、誘導面7fは、軸方向における基部7a側に向かうに従って、隣り合う柱部7bに近接するように傾斜するテーパ部7qが形成されている。誘導面7fは、断面テーパ状であり、軸方向に対して一定の角度で爪部7eの軸方向端面S3から突起部7jに向かって延びている。これにより、テーパ部7qがボール8を挿入する際のガイドとなる。従って、保持器7は、ポケットPtへのボール8の挿入が容易となる。
テーパ部7qは、軸方向に対して30°以下に傾斜して形成されている。つまり、テーパ部7qのテーパ角度は、軸方向に対して30°以下である。これにより、基部7a側へ押し込む力を徐々に増加させながらポケットPtへボール8を誘導させることができる。従って、保持器7は、ポケットPtへのボール8の挿入が容易となる。
以上、本発明の実施形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。また、本実施形態において、車輪用軸受装置1は、ハブ輪3の外周に内側軌道面3cが直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置として構成されているがこれに限定するものではなく、ハブ輪に一対の内輪が圧入固定された第2世代構造、または、ナックルとハブ輪との間に複列のアンギュラ玉軸受を嵌合させた第1世代構造であってもよい。
1 車輪用軸受装置
2 外輪(外方部材)
2c 外側軌道面
2d 外側軌道面
3 ハブ輪(内方部材)
3c 内側軌道面
4 内輪(内方部材)
4a 内側軌道面
7 保持器(軸受装置用保持器)
7a 基部
7b 柱部
7c 曲面
7e 爪部
7f 誘導面
7g 切り欠き部
7h 外側柱
7i 内側柱
7j 突起部
7n 端部
7p アール部
7q テーパ部
8 ボール
C 仮想円
C0 外周円
C1 基準仮想円
Ca 爪部の軸方向端面における仮想円
Cb 突起部における仮想円
D0 ボールの直径
D1 ボールの直径の0.8倍
Da 爪部の軸方向端面における仮想円の直径
Db 突起部における仮想円の直径
P 中心
Pt ポケット
S1 内側柱の軸方向端面
S2 外側柱の軸方向端面
S3 爪部の軸方向端面
2 外輪(外方部材)
2c 外側軌道面
2d 外側軌道面
3 ハブ輪(内方部材)
3c 内側軌道面
4 内輪(内方部材)
4a 内側軌道面
7 保持器(軸受装置用保持器)
7a 基部
7b 柱部
7c 曲面
7e 爪部
7f 誘導面
7g 切り欠き部
7h 外側柱
7i 内側柱
7j 突起部
7n 端部
7p アール部
7q テーパ部
8 ボール
C 仮想円
C0 外周円
C1 基準仮想円
Ca 爪部の軸方向端面における仮想円
Cb 突起部における仮想円
D0 ボールの直径
D1 ボールの直径の0.8倍
Da 爪部の軸方向端面における仮想円の直径
Db 突起部における仮想円の直径
P 中心
Pt ポケット
S1 内側柱の軸方向端面
S2 外側柱の軸方向端面
S3 爪部の軸方向端面
Claims (7)
- 樹脂部材によって環状に形成される基部および前記基部から周方向に一定の間隔で軸方向に延びる複数の柱部と、隣り合う前記柱部と前記基部とによってボールの外周面に沿うように形成される曲面を有し、前記ボールを保持するポケットと、を備え、
前記柱部は、隣り合う前記柱部に向かって突出する爪部を有し、前記爪部の先端部が、軸方向視で前記ボールの中心を中心とする所定半径の基準仮想円と前記ボールの外周円とに囲まれる円環状の範囲に含まれ、前記所定半径の基準仮想円の直径が、前記ボールの直径の0.8倍以上1倍未満である軸受装置用保持器であって、
前記爪部の先端部には、前記ポケットへ前記ボールを挿入する際に当該ボールを誘導する誘導面が形成され、前記誘導面には、軸方向視で前記ボールの中心までの距離が前記誘導面において最小となる突起部が形成され、前記誘導面は、軸方向における前記基部側に向かうに従って、軸方向視で前記誘導面から前記ボールの中心までの距離を半径とする仮想円が小さくなるように形成されている、ことを特徴とする軸受装置用保持器。 - 前記柱部は、切り欠き部よりも内径側に設けられた内側柱と、前記切り欠き部よりも外径側に設けられた外側柱と、を有し、
前記内側柱の軸方向端面は、前記外側柱の軸方向端面よりも前記ボールの中心側にオフセットしており、
前記仮想円は、前記ボールが隣り合う前記内側柱と前記爪部とを同時に接触する点を通る、ことを特徴とする請求項1に記載の軸受装置用保持器。 - 前記誘導面には、軸方向における前記基部側に向かうに従って、隣り合う前記柱部に近接するように湾曲するアール部、または、隣り合う前記柱部に近接するように傾斜するテーパ部が形成されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軸受装置用保持器。
- 前記テーパ部のテーパ角度は、軸方向に対して30°以下である、ことを特徴とする請求項3に記載の軸受装置用保持器。
- 前記突起部における前記仮想円の直径は、前記爪部の軸方向端面における前記仮想円の直径よりも小さい、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の軸受装置用保持器。
- 前記爪部の軸方向端面から前記突起部までの軸方向長さは、前記爪部の軸方向端面から前記爪部における前記基部側の端部までの軸方向長さに対して1/2以上である、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の軸受装置用保持器。
- 内周に複列の外側軌道面が形成された外方部材と、
前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面が形成された内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に介装された複列のボールと、
介装された前記ボールを保持する保持器と、を備え、
前記保持器は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の軸受装置用保持器である、ことを特徴とする車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021143982A JP2023037319A (ja) | 2021-09-03 | 2021-09-03 | 軸受装置用保持器およびそれを備える車輪用軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2021143982A JP2023037319A (ja) | 2021-09-03 | 2021-09-03 | 軸受装置用保持器およびそれを備える車輪用軸受装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2023037319A true JP2023037319A (ja) | 2023-03-15 |
Family
ID=85509258
Family Applications (1)
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JP2021143982A Pending JP2023037319A (ja) | 2021-09-03 | 2021-09-03 | 軸受装置用保持器およびそれを備える車輪用軸受装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2023037319A (ja) |
-
2021
- 2021-09-03 JP JP2021143982A patent/JP2023037319A/ja active Pending
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