以下、図面を参照して本実施形態による照明システムおよび照明方法について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
さらに、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、本実施形態およびその具体例や変形例で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することがある。
図1~図22は、本開示の一実施の形態を説明するための図であって、照明システム及び照明方法のいくつかの具体例を示している。このうち、図1は、一実施の形態による照明システム10の一具体例を示す斜視図である。また、図2は、図1の照明システム10を示す平面図である。以下に説明する一実施の形態による照明システム10は、発光面を有した照明装置を含み、空間Sに光を射出する。照明システム10は、空間Sに滞在する利用者Hの心理状態に働きかけ、利用者Hに望ましい心理状態を生じさせることができる。とりわけ、以下に説明する照明システムは、空間の利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことを可能とするための工夫がなされている。より詳しくは、利用者Hの状態に応じて照明態様を変化させることで、利用者Hの状態に応じた適切な心理作用を及ぼすことが可能となっている。
以下、図示された具体例を参照しながら、一実施の形態に係る照明システム10及び照明方法について説明する。
図1及び図2に示された例において、照明システム10は、空間Sを照明および演出する。図示された空間Sは、第1~第4の壁W1~W4、天井CEおよび床Fによって区画されている。空間Sは、直方体状の空間となっている。この空間Sは、人間によって利用されることを意図されている部屋または室の内部空間である。より具体的には、会議室や執務室、教室、勉強部屋、自習室の内部空間等を、照明システム10によって照明される空間Sとして例示することができる。図示された例において、空間Sの中央には、テーブルT及び椅子Cが設けられている。椅子は、テーブルTと第2の壁W2との間に配置された第1椅子C1と、テーブルTと第1の壁W1との間に配置された第2椅子C2と、を含んでいる。第4の壁W4には、出入口Dが設けられている。出入口Dを介して、空間Sへ入ること、空間Sから出ることが可能となる。
利用者Hは、一般的な部屋や室と同様に、空間S内において特定の位置に留まるようになる。具体的には、利用者Hは、第1椅子C1又は第2椅子C2に座り、テーブルTを利用して何らかの作業や会議を行うことになる。すなわち図示された例において、利用者は、第1の壁W1に対面するようにして第1椅子C1に座って、又は、第2の壁W2に対面するようにして第2椅子C2に座って、一定の時間を空間Sで過ごすことになる。照明システム10は、空間S内の特定の位置に特定の姿勢で一定の時間を過ごす利用者Hに対して、心理効果を及ぼすことを意図されている。
照明システム10は、図1に示すように、ベース照明装置13及び照明装置20を有している。また、照明システム10は、空間Sの利用者Hの状態を検出する検出センサ18と、検出センサ18での検出結果に基づいて照明装置20による制照明方法を調節する制御装置15と、を更に有している。
図1及び図2に示すように、ベース照明装置13は、天井CEに取り付けられ、照明光Lxを空間Sに上方から放出する。ベース照明装置13は、天井CEに固定されていてもよいし、天井CEから吊り下げられていてもよい。ベース照明装置13は、人の視覚を通した空間S内の把握を補助するものである。したがって、ベース照明装置13として、一般的な、室内照明用の器具を用いることができる。ベース照明装置13から射出する照明光Lxは、特に限定されないが、白色系とすることで自然な照明を可能とすることができる。
照明装置20は、壁Wの表面を形成する化粧シート40と、化粧シート40を照明する面光源装置50と、を有している。化粧シート40は、面光源装置50の光射出面50aに対面する照明装置20の発光面EPを形成する。空間Sの明るさ向上を主目的としたベース照明装置13とは別途に、照明装置20によって、壁Wの表面を発光面EPとして機能させることで、有限な空間Sに対して広がりを付与することができる。とりわけ、壁Wの表面の限られた範囲を発光面EPとし、さらに、照明装置20の光源となる面光源装置50を化粧シート40で隠蔽することができる。この工夫により、光源の存在感を効果的に薄めた状態にて、空間Sを演出することができ、これにより、空間Sの雰囲気を効果的に高めることを可能としている。
図2に示すように、照明装置20は、第1~第4の照明装置21~24を含んでいる。第1照明装置21は、第1の壁W1に設けられ、空間Sに光を射出する。第2照明装置22は、第2の壁W2に設けられ、空間Sに光を射出する。第3照明装置23は、第3の壁W3に設けられ、空間Sに光を射出する。第4照明装置24は、第4の壁W4に設けられ、空間Sに光を射出する。第1照明装置21は、第1椅子C1に着座した利用者Hの正面に配置されている。第2照明装置22は、第2椅子C2に着座した利用者Hの正面に配置されている。
第1~第4の照明装置21~24は、設置位置が異なるが、同一の構成を有し得る。したがって、以下において、第1~第4の照明装置21~24に関して共通する説明については、「20」の符号を用いて、第1~第4の照明装置21~24を区別することなく、照明装置20に関する説明として記載する。
照明装置20は、前述したように、主たる構成要素として、化粧シート40及び面光源装置50を有している。図示された具体例において、照明装置20は、全体として板状に形成され、その一部またはその全部により建材パネルBPを構成する。図2に示すように、建材パネルBPは、壁本体WBに重ねられ、壁本体WBとともに、構造体の壁Wをなすようにしてもよい。このような例において、照明装置20の構成要素の全部または一部が、建材パネルBPや構造体を作製するための組立キットとして取り扱われ、流通や販売されるようにしてもよい。或いは、建材パネルBPが、単独で、建物等をなす構造体の壁Wを形成するようにしてもよい。
図3に示された一具体例において、照明装置20は、化粧シート40及び面光源装置50に加え、補助建材27、留具28及びボード30を有している。図4は、図3に示された面光源装置50を示す縦断面図である。以下、図3及び図4を主として参照しながら、照明装置20について説明する。
最初に、化粧シート40について説明する。化粧シート40は、空間Sに露出している。化粧シート40は、照明装置20の最出光側の面を形成する。すなわち、化粧シート40は、照明装置20の発光面EPを形成する。化粧シート40として、建築物の壁紙、床及び天井等の内装材、車両等の移動体の内装材、家具や電気機器等の最表面を形成する部材等を用いることができる。
化粧シート40は、第1領域Z1及び第1領域Z1に隣接する第2領域Z2を含んでいる。化粧シート40の第1領域Z1は、面光源装置50の光射出面50aに対面する領域である。すなわち、化粧シート40の第1領域Z1は、照明装置20の発光面WPを形成する領域である。第2領域Z2は、化粧シート40のうちの光射出面50aに対面する位置からずれた領域である。
化粧シート40は、少なくとも発光面WPを形成する第1領域Z1において、可視光透過性を有している。このため、面光源装置50の光射出面50aから射出した光の少なくとも一部が、化粧シート40の第1領域Z1を透過することができる。このように化粧シート40は透過照明されることから、透過率の比較的高い白色系の壁紙が化粧シート40として好適に用いられる。ただし、透過率の比較的低い壁紙、例えば木目調の壁紙でも十分有効に透過照明されて後述する作用効果を奏することができ、化粧シート40の柄等は特に限定されるものではない。化粧シート40の第1領域Z1における可視光域での可視光線透過率は、1.0%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。可視光線透過率は、赤外可視紫外分光光度計((株)島津製作所社製 UV3100PC)を使用し、JIS A5759-2008に従い380nm以上780nm以下の波長域における分光透過率を測定し、同規格に規定される算出式により算出したものである。
図3に示すように、第1領域Z1及び第2領域Z2は、一軸方向に配列されている。第1領域Z1は、一軸方向における一方の側に位置し、第2領域Z2は、一軸方向における他方の側に位置している。より具体的には、第1領域Z1及び第2領域Z2は、第1方向d1に配列されている。この第1方向d1は、図示された具体例において、鉛直方向に沿っている。第1領域Z1は、第1方向d1における第1側s1に位置し、第2領域Z2は、第1方向d1における第2側s2に位置している。第1方向d1における第1側s1は、鉛直方向における上側となっており、第1方向d1における第2側s2は、鉛直方向における下側となっている。すなわち、図示された例において、照明装置20の発光面EPは、天井CEと床Fとの間において天井CEに近接する側に位置している。言い換えると、照明装置20の発光面EPは、壁Wのうちの鉛直方向において上側に位置している。
次に、ボード30について説明する。図3に示すように、ボード30は、板状の部材である。ボード30は、少なくとも化粧シート40の第2領域Z2に対面して配置される。化粧シート40は、ボード30に貼合されていてもよい。この場合、ボード30によって、化粧シート40を安定して支持することができる。
図3に示された例において、ボード30は、第2領域Z2及び第1領域Z1の両方に対面して配置されている。このボード30は、第1領域Z1に対面する位置に凹部31を設けられている。ボード30の凹部31内に、面光源装置50が収容されている。図3の例によれば、ボード30によって、面光源装置50を安定して支持することができる。留具28は、ボード30に設けられており、ボード30上に面光源装置50を固定する。また、留具28に加えて又は留具28に代えて、接着剤や粘着剤などを含む接合層によって、ボード30と面光源装置50とを固定するようにしてもよい。
面光源装置50の光射出面50aは、化粧シート40の第2領域Z2に対面するボード30の表面30aと、同一面上に位置していることが好ましい。このように位置決めされたボード30及び面光源装置50上に、化粧シート40が積層される。この場合、ボード30の表面30aと面光源装置50の光射出面50aとの間に段差が形成されにくくなり、化粧シート40越しにこの段差が視認されることに起因した化粧シート40の意匠性低下を効果的に抑制することができる。
ボード30は、化粧シート40の用途に応じて決定される。化粧シート40が、壁、床、天井等の表面を加飾する部材をなす場合、一例として、ボード30は、種樹木の木材からなる単板、合板、集成材、パーチクル板、纖維板等の木製板材、コンクリート、モルタル等のセメント系材料、石膏ボード、珪酸カルシウム等からなる無機非金屬板、或いは鉄、アルミニウム等からなる金屬板となる。化粧シート40が、車両等の移動体の内装材をなす場合、ボード30は、例えば樹脂製板材、或いは金屬板となる。化粧シート40が、家具や電気製品をなす場合、ボード30は、例えば木製板材や樹脂製板材となる。なお、照明装置20の建材パネルBPへの適用において、ボード30は、耐燃性や耐火性を有していることが好ましい。
なお、図3では、留具28の図示にともなって、化粧シート40が、ボード30及び面光源装置50との間に隙間を空けて図示されている。しかしながら、隙間をあけることなくボード30及び面光源装置50に貼合されるようにしてもよい。
補助建材27は、天井CEと壁Wとの取り合い部又は入隅部に設ける部材である。補助建材27は、天井CEと壁Wとのつなぎ目を覆い、意匠性を向上させる。補助建材27として、「回り縁」や「幅木」と呼ばれる部材を用いることができる。ただし、補助建材27を省略することも可能である。補助建材27は、第1方向d1と直交する方向に延びている。補助建材27は、固定されていてもよいし、交換のために取り外し可能に構成されていてもよい。
次に、化粧シート40を背面から照明する面光源装置50について詳述する。面光源装置50は、面状光を射出する光射出面50aを有している。図示された例において、面光源装置50は、その光射出面50aが化粧シート40の一部分のみに対面するように、位置決めされている。面光源装置50として、面状光を射出可能な種々の装置を用いることができる。例えば、光源51と、光源51から射出した光を面状光に変換する光学部材55と、を有する装置を、面光源装置50として用いることができる。
ここで、主に図4を参照して、面光源装置50の具体例について説明する。図4に示された面光源装置50は、エッジライト型の面光源装置として構成されている。この面光源装置50は、光源51と、光学部材55としての光拡散シート56、反射シート57及び導光板60と、を有している。
光源51は、光を発光する発光体52を有している。発光体52は、特に限定されることなく、光を発光する種々の部材を広く用いることができる。具体的には、例えば、冷陰極管、点状の発光ダイオード(LED)、白熱電球、レーザー発振装置等を、光源51の発光体52として、用いることができる。図示された例において、光源51は、複数の点状の発光体52を有している。この発光体52は、例えば発光ダイオードによって構成される。図示された例において、複数の発光体52は、補助建材27によって保持されている。複数の発光体52は、補助建材27の長手方向である図2に示された第2方向d2に沿って、間隔をあけて配列されている。なお、第2方向d2は、導光板60一つの側縁に沿っており、導光板60の板面と平行に水平方向に延びている。補助建材27が取り外し可能な場合、補助建材27とともに複数の発光体52を壁Wから取り外し、複数の発光体52の一部又は全部の交換作業を行うことができる。
なお、照明システム10から射出した照明光の色が、人間の心理状態に影響を及ぼすことが知られている。例えば、若草色の照明光や赤紫色の照明光を用いて空間Sを照明した場合、空間Sの利用者Hに活気を生じさせるとされている。同様に、藤色の照明光やあやめ色の照明光を用いた場合、利用者Hから眠気を取り除く効果があるとされている。また、肌色の照明光を用いた場合、利用者Hに集中を引き起こす効果があるとされている。さらに、檸檬色の照明光や肌色の照明光を用いた場合、利用者Hに快適さを付与して利用者Hをリラックス状態とする効果があるとされている。本実施の形態の照明システム10は、このような照明光によって利用者Hの心理状態に積極的に働きかけ、利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことを目的としている。
図示された例では、面光源装置50の光源51から射出する光が、照明装置20による照明光となる。したがって、所望の心理状態を利用者Hに生じさせることができるよう、光源51の発光体52は、所望する心理状態に対応した波長域の光を射出できるよう、選択される。とりわけ、所望の色の光で照明を行うことができるよう、光源51から放出される光の色が選択可能となっていることが好ましい。一例として、光源51が、互いに異なる波長域の光を発光可能な複数種類の発光体52を有するようにしてもよい。この場合、各発光体52の出力を調整することで、加法混色により、種々の色の照明光で照明を行うことが可能となる。典型的には、光源51が、赤色の光を射出可能な発光体と、緑色の光を射出可能な発光体と、青色の光を射出可能な発光体と、を含むことで、照明装置20での照明光の色を、色度図上の全範囲の色から選択可能とすることが可能となる。
導光板60は、一対の主面60a,60bと、一対の主面60a,60b間に位置する側面と、を有した板状の部材である。一方の主面が出光面60aをなし、他方の主面が裏面60bをなしている。主面60a,60bは、典型的には、平面視矩形形状となる。主面60a,60bは、第1方向d1に沿って延びる一対の側縁と、第1方向d1に直交する第2方向d2に沿って延びる一対の側縁と、を有している。側面は、第1方向d1に対向する入光面60c及び反対面60d(図20参照)を含んでいる。
図4に示すように、入光面60cは、第1方向d1における第1側s1に位置している。入光面60cは、補助建材27に沿うようにして第2方向d2に延びている。そして、入光面60cは、補助建材27に保持された複数の発光体52に対面している。複数の発光体52は、入光面60cの長手方向である第2方向d2に沿って、間隔をあけて配列されている。
図4に示すように、光源51から射出した光は、導光板60に入射して導光板60内を進む。導光板60は、取出要素61を含んでいる。取出要素61は、導光板60内を進む光L41,L42の進行方向を変化させる。この面光源装置50において、光源51から射出した光は、導光板60に入光面60cから入射し、反射とりわけ全反射することで当該導光板60内を進む。導光板60内を進む光L41,L42は、取出要素61によって進行方向を変化させること、とりわけ散乱することで、導光板60の一対の主面60a,60bに全反射臨界角度未満の入射角度で入射して導光板60から出射することが可能となる。
取出要素61で進行方向を変えられた光は、一対の主面60a,60bのいずれかを介して、導光板60から出射する。導光板60の出光面60aに対面して、光拡散シート56が設けられている。導光板60の出光面60aから出射した光L41,L42は、次に、この光拡散シート56に入射する。光拡散シート56は、光拡散機能を有しており、透過光に起因した輝度角度分布を整えることができる。光拡散シート56は、面光源装置50の光射出面50aを形成している。光拡散シート56で拡散された光は、面光源装置50から射出して化粧シート40に向かう。光拡散シート56には、光拡散機能を発揮し得る種々の構成を採用することができる。光拡散シート56が有する拡散特性は、等方性であってもよいし、異方性であってもよい。
導光板60の裏面60bに対面して、反射シート57が設けられている。反射シート57は、裏面60bから出射する光を反射して、導光板60及び光拡散シート56へ向けることができる。反射シート57を設けることで、面光源装置50の光射出面50aからの出射光量を増大させることができる。これにより、光源51から射出した光の利用効率を向上させることができる。反射シート57には、光反射機能を発揮し得る種々の構成を採用することができる。反射シート57の反射特性は、正反射であってもよいし、拡散反射であってもよい。反射シート57が有する拡散反射特性は、等方性であってもよいし、異方性であってもよい。
取出要素61として、導光板60内を進む光の進行方向を変更し得る種々の要素を用いることができる。図4に示された例において、導光板60は、板状の導光板本体65を有している。導光板本体65は、導光板60の一方の主面60bを形成するようになる面として、凹凸面65aを有している。図示された例において、導光板60の裏面60bが、この凹凸面65aによって形成されている。凹凸面65aは、導光板本体65に凹部65bを設けることで形成されている。この例において、導光板本体65は、可視光透過性を有した樹脂から形成され得る。
他の例として、取出要素61は、図5に示すように、導光板本体65に積層された光散乱層66とすることができる。図5に示された例において、導光板60は、導光板本体65および光散乱層66を有している。光散乱層66は、バインダーとして機能する支持層66aと、支持層66a内に分散した光散乱要素66bと、を有している。支持層66aは、可視光透過性を有した樹脂から形成され得る。光散乱要素66bは、反射、屈折、回折等によって、光散乱層66内を進行する光の進行方向を変化させる機能を有している。光散乱要素66bは、支持層66aと異なる屈折率を有していてもよいし、金属等の光反射性を有した材料によって形成されていてもよい。光散乱要素66bの具体例として、金属化合物、気体を含有した多孔質物質、金属化合物を周囲に保持した樹脂ビーズ、白色微粒子、気泡、周囲と屈折率が異なる粒子が、例示され得る。図5に示された例において、出光面60a及び裏面60bでの反射により導光板60内を進む光L51,L52は、光散乱層66内で光散乱要素66bと衝突することで進行方向を変化させ、その後、導光板60から出射することが可能となる。
なお、図5の例において、光散乱層66の支持層66aの屈折率は、導光板本体65の屈折率以上となっていることが好ましい。光散乱層66の支持層66aの屈折率が導光板本体65の屈折率よりも低いと、導光板本体65内を進む光L53が、導光板本体65と光散乱層66との界面で全反射して、光散乱層66に入射できない可能性がある。このような光L53は、入光面60cから導光板60に入射した後、導光板本体65内を反対面60dまで進むことになる。このような光の存在は、光源51のエネルギー効率が低下させてしまうことになる。支持層66aの屈折率を導光板本体65の屈折率以上とすることで、導光板本体65と光散乱層66との界面での全反射を効果的に防止して、光散乱層66が取出要素61としてより効果的に機能し得る。
さらに他の例として、図6に示すように、取出要素61として機能する光散乱要素67が、導光板本体65内に分散していてもよい。図6に示された導光板60では、導光板本体65内を進む光L61が、光散乱要素67に衝突することで散乱し、導光板60から出射することができる。光散乱要素67としては、上述した光散乱要素66bと同様に構成され得る。
また、導光板60は、複数種類の取出要素61を含むようにしてもよい。図6に示された例において、導光板60の導光板本体65は、光散乱要素67を含有し、さらに導光板60の裏面60bを構成する凹凸面65aを有している。
さらに、導光板60の各領域での取出要素61に起因した光散乱能は、一定ではなく、異なっていてもよい。すなわち、導光板60の光散乱能が、板面に沿った各領域で変化するようにしてもよい。さらに言い換えると、導光板60の或る領域での光散乱能は、当該領域から板面に沿ってずれた他の領域での光散乱能と異なっていてもよい。導光板60のパネル面に沿った各領域での光散乱能を変化させることにより、各領域からの出射光量を調節することが可能となる。
光散乱能は、導光板60がその内部を通過する光を散乱させる性能の強さのことである。光散乱能の程度は、一例として、JIS-K7361-1に準拠して測定されるヘイズ値[%]を用いて評価することができ、ヘイズ値[%]が高いと光散乱能が高いということになる。したがって、図示された例では、導光板60の板面への法線方向に透過する透過ヘイズ値が、導光板60の各領域で一定ではなく、異なる値を持つようにしてもよい。ヘイズ値[%]は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM-150)を用いてJIS K7136に準拠した方法により測定することができる。
図4に示すように、取出要素61が、導光板60の主面60a,60bに設けられた凹凸である場合には、板面に沿った単位面積のうちの凹凸が設けられている面積の割合、すなわち面積比を高くすることで、光散乱能を高くすることができる。また、取出要素61が、凹部65bまたは凸部によって形成された凹凸面65aである場合には、凹部65bの深さH1又は凸部の高さの導光板60の厚さH2に対する比の値、すなわちH1/H2の値を大きくすることで、光散乱能を高くすることができる。取出要素61が、導光板60に含有される光散乱要素66b,67を含む場合には、導光板60内における光散乱要素66b,67の体積比を高めること、粒子密度を高めること、粒径を大きくすること、光散乱要素66b,67が形成する界面の屈折率差を大きくすることで、光散乱能を高くすることができる。
ところで、本実施の形態では、照明装置20の発光面EPのうち、空間Sに向けて光を実際に放出している発光領域LZを変更することができる。とりわけ本実施の形態では、空間Sの利用者Hの状態、例えば心理状態、作業状態等に応じて発光領域LZを変更することで、利用者Hの状態に応じた適切な心理作用を及ぼすことが可能となっている。
例えば、図示された照明装置20は、エッジライト型の面光源装置として構成されている。上述したように、導光板60内を第1方向d1における一側s1から他側s2に向けて進む光L41,L42,L51,L52は、取出要素61から作用を及ぼされて、導光板60から射出する。このような面光源装置50では、光源51から導光板60内へ入射する光量が少ないと、光は、導光板60の反対面60dまで到達しない。すなわち、光源51の発光体52からの光量を調節することで、発光面EPのうちの発光領域LZの大きさを調節することができる。
より具体的には、光源51の発光体52の出力が高いと、導光板60内に多量の光が入り、導光板60の出光面60aの全域から光が出射する。このとき、発光面EPの全域を、発光領域LZとすることができる。一方、光源51の発光体52の出力が低いと、導光板60内に小量の光が入り、導光板60の出光面60aのうちの第1方向d1における一側s1の領域のみから光が出射する。このとき、発光面EPのうちの第1方向d1における一側s1の領域のみを、発光領域LZとすることができる。すなわち、図示された照明装置20では、光源51の発光体52からの出射光量を制御することで、発光領域LZを、発光面EPの第1方向d1における一側s1の端から、第1方向d1におけるどの位置までとするかを、制御することができる。さらに以下えると、発光面EPの第1方向d1における一側s1の端からはじまる発光領域LZの第1方向d1に沿った長さを、発光体52からの出射光量を調節することで、制御することができる。
また、図示された面光源装置50を用いた場合、光射出面50aの或る一定面積の領域から射出する出射光量が、光射出面50a上で分布を持つようにすることができる。これにともなって、発光面EPの或る一定面積の領域から射出する出射光量が、発光面EP上で分布を持つことになる。出射光量の発光面EP上で分布は、上述した取出要素61の光散乱能を導光板60内で変化させることにより、制御可能である。一例として、発光面EPの一定面積の領域からの出射光量は、第1方向d1における光源51に近接する一側s1において多くなる。逆に、発光面EPの一定面積の領域からの出射光量は、第1方向d1における光源51から離間する他側s2において少なくなる。すなわち、発光面EPの或る一定面積の領域からの出射光量は、当該領域よりも空間Sを区画する天井CEに近接する発光面EPの他の或る一定面積の領域からの出射光量よりも少なくなる。さらには、発光面EPの任意に選択される一定面積の領域からの出射光量は、当該領域よりも空間Sを区画する天井CEに近接する発光面EPの他の一定面積の領域からの出射光量以下となる。
なお、発光面EPの一定面積の領域から射出する光の光量は、発光面EP上にセンサを密着させて測定される照度[lx]の測定結果によって評価することができる。照度の測定には、(株)ティアンドデイ社製照度計TR-74Uiを用いる。
次に、制御装置15及び検出センサ18について説明する。図7は、照明システム10を示すブロック図である。図7に示すように、検出センサ18は、制御装置15と電気的に接続している。また、制御装置15は、第1~第4照明装置21~24とも電気的に接続している。制御装置15は、検出センサ18での検出結果に基づいて第1~第4照明装置21~24を制御する。
まず、検出センサ18は、空間Sの利用者Hの状態を検出する。利用者Hの状態としては、心理状態や作業状態を例示することができる。心理状態としては、眠気を生じている状態、集中している状態、気が散って散漫になっている状態、警戒または緊張した状態、リラックスまたは落ち着いている状態等を例示することができる。また、作業状態としては、コンピュータ等の小型機器を操作している状態や勉強している状態、本を読んでいる状態、会話、議論、打ち合わせを行っている状態等を例示することができる。
検出センサ18として、利用者Hの瞬きの動作、瞬き回数、瞳孔の状態、視線の方向、顔の動作の一以上を検出する。瞳孔の状態を検出することで、利用者Hが眠気を生じている状態や集中している状態を把握することができる。瞬きの動作、瞬き回数、視線の向き、を検出することで、利用者Hの気が散って散漫になっている状態や、利用者が警戒または緊張している状態を検出することができる。視線の方向や顔の動作等を検出することで、利用者Hが集中している状態を検出することができる。瞳孔の状態、視線の方向、顔の動作等を検出することで、利用者Hがリラックスまたは落ち着いている状態を検出することができる。また、視線の方向や顔の動作等を検出することで、利用者の作業内容を把握することができる。
このような検出センサ18として、利用者Hを撮像する撮像装置を用いることができる。撮像装置としては、カメラやスマートグラスを用いることができる。撮像装置によれば、上述した利用者Hの動作に加えて、顔色の変化、体温、心拍数等を検出することも可能となる。図1及び図2に示された例では、天井CE及び第1~第4の壁W1~W4の各々に、検出センサ18が設けられている。例えば、複数の検出センサ18は、第1椅子C1及び第2椅子C2に着座した利用者Hの状態を検出可能となっている。
また、検出センサ18として、視線の向きを検出する視線センサや、脳波を検出する脳波計を利用することができる。脳波計は、脳波に基づき好奇心、ストレス、集中、沈静、快適、嫌悪、爽快等の感性を分析する感性アナライザとして機能させることができる。複数種類のセンサを、検出センサ18として、照明装置20に組み込むことにより、利用者Hの状態をより正確に把握することができる。さらに、検出センサ18として、人間の状態、例えば体調を検出する種々の手段、例えば、心拍数、脈拍、筋電位等を測定する手段を用いることができる。そして、検出センサ18は、空間Sの利用者Hに装着または搭載されるようにしてもよい。
また、図示された例において、検出センサ18は、空間S内における利用者Hの有無を検出可能となっている。検出センサ18は、利用者Hの顔や姿を撮像することや、利用者Hの体温を検出することで、利用者Hの有無を検出することができる。
次に、制御装置15について説明する。制御装置15は、照明装置20の照明光の射出を制御する。とりわけ本実施の形態において、制御装置15は、発光領域LZの大きさを制御することができる。制御装置15は、例えば、図示しない電源から面光源装置50の各発光体52に供給される電力を制御することで、各発光体52からの出力を制御することができる。
図示された照明装置20において、発光面EPのうちの、第1方向d1における一側s1となる端部から第1方向d1に沿った或る長さまでの領域が、実際に発光する発光領域LZとなる。そして、各発光体52の出力を調整することで、発光領域LZの第1方向d1に沿った長さを調節することができる。具体的には、各発光体52の出力を上げることで、発光領域LZの第1方向d1に沿った長さが長くなり、各発光体52の出力を下げることで、発光領域LZの第1方向d1に沿った長さが短くなる。
また、制御装置15は、各発光体52の出力を調節することで、照明光の色を制御することができる。上述したように、照明装置20の光源51が、異なる波長域の光を発光可能な複数種類の発光体52を含んでいる。この場合、加法混色により、照明光の色を種々の色に制御することができる。したがって、制御装置15が各発光体52の出力を調節することで発光色を変化させ、発光面EPの発光領域LZを所望とする色で色付かせることができる。既に言及したように、照明光の色に応じて、利用者Hに所定の心理状態を引き起こすことができる。
制御装置15の具体的な態様は特に限定されない。一例として、図7に示される制御装置15は、記憶部15aと、計算部15bと、射出制御部15cと、を有している。記憶部15aには、制御装置15が照明装置20による光の射出を制御するために用いる情報が記憶されている。例えば、記憶部15aには、利用者Hの各状態に応じた好ましい発光領域LZの大きさや、利用者Hの各状態に応じた好ましい照明光の色等が記憶されていてもよい。計算部15bは、記憶部15aに記憶されている情報に基づいて、照明装置20に含まれる各発光体52の発光出力を計算する。射出制御部15cは、計算部15bで計算された発光出力で発光体52が発光するよう、照明装置20の発光体52への供給電源を調節する。
制御装置15は、例えば、電源から光源51の発光体52に電力を供給する電気回路に組み込まれ、電気回路の回路素子の動作を制御する制御回路や、制御回路の処理に用いるデータが記憶された記憶装置などのハードウェアで構成される。制御装置15の少なくとも一部をソフトウェアで構成してもよい。
制御装置15は、その全てが建材パネルBPの外部に設けられていてもよく、あるいは、その少なくとも一部が建材パネルBPの内部や天井CE裏に設けられていてもよい。また、制御装置15は、その一部の構成部が、他の構成部との間でネットワークを通じた通信によって連携可能であってもよい。また、制御装置15は、その一部の構成部が、他の構成部との間で外部ネットワークを通じて通信可能な装置、例えばクラウド上のサーバやデータベース上にあってもよい。さらに、制御装置15が、互いに異なる空間Sを照明する複数の照明装置20と、インターネット等のネットワークを通じて接続されていてもよい。この例において、一つの制御装置15が、互いに離間した空間Sでの照明を制御することができる。
次に、以上の構成からなる照明システム10の照明方法について説明する。
本実施の形態では、空間Sの利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの実際に発光している発光領域LZが、利用者Hが第1状態とは異なる第2状態にある場合に発光面EPのうちの実際に発光している発光領域LZと異なるようになる。
照明装置20の照明光の色は空間Sの利用者Hの心理状態に影響を及ぼし得ることが知られている。例えば、若草色や赤紫色は、「活気」や「積極性」を引き起こすよう人間の心理状態に作用する。また、藤色やあやめ色は、「眠気」を取り除くよう人間の心理状態に作用する。
さらに、本件発明者らが検討を重ねたところ、人間が照明装置20の発光面EP上の色を意識できる場合、すなわち人間が発光面EPの色に気付くことができる場合に、人間の心理状態に大きな影響をもたらし、当該人間の心理状態を目標とする心理状態に迅速に導くことができた。その一方で、人間が色を意識できる発光面EP上の意識影響範囲XAだけでなく、意識影響範囲XA以外となる発光面EP上の領域、すなわち無意識影響範囲YAから射出する光の色によっても、人間の心理状態に影響を及ぼし得ることが確認された。人間は、眼にたどり着いた照明光Lyの色によって、無意識的に影響を受け、当該照明光Lyの色に対応した所定の心理状態に導かれるようになる。そして、発光面EP上の発光領域LZを無意識影響範囲YA内のみとした場合、目標とする心理状態が得られた後に、当該心理状態を継続して維持することに極めて有効であった。また、無意識影響範囲YAのみから照明光Lyを射出する場合、人間は発光面EP上の色付いた範囲を視界に入れることがなく、気が散ってしまうことも効果的に防止することができる。
したがって、照明装置20によって照明される空間Sの利用者Hの状態に応じて、発光面EPのうちの発光領域LZの大きさを変更することで、当該利用者Hの心理状態に対して効果的に働きかけていくことができる。
以下、いくつかの具体例に基づいて、本実施の形態の照明方法について更に詳述する。ただし、以下に説明する複数の具体例において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することがある。
なお、以下に説明する具体例は、上述してきた照明装置20を用いた照明方法である。ただし、以下の説明および以下の説明で参照する図では、第1椅子C1の着座した利用者Hの心理状態に対し、当該利用者に対面して配置された第1照明装置21を用いて働きかける例を示す。これらの例において、第2~第4照明装置22~第4照明装置24は、第1照明装置21と同一の大きさの発光領域LZから、第1照明装置21と同一の色で光を射出するようにしてもよい。或いは、第2~第4照明装置22~第4照明装置24からは、光の射出を停止するようにしてもよい。
(第1例)
まず、図8~図10を参照して、第1例について説明する。
図8及び図9に示された第1例において、検出センサ18は、まず、空間S内における利用者Hの有無を検出することができる。また、検出センサ18は、第1状態として、空間Sの利用者Hが眠気を感じている状態を検出する。検出センサ18は、一例として、瞼の位置や瞼の動きを観察することによって、眠気を感じているか否かを検出することができる。
制御装置15は、空間S内に利用者Hが居ることを検出センサ18が検出した場合、ベース照明装置13及び照明装置20を点灯する。このとき、ベース照明装置13は、一例として、自然光と同一色の照明光Lxを射出する。これにより、空間S内は、自然な感じで明るくなる。一方、照明装置20は、目標とする心理状態を引き起こす色の照明光Lyを発光面EPから射出する。本例では、照明装置20は、眠気を取り除く効果が有るとされる藤色の光またはアヤメ色の光を射出するよう、各発光体52の出力を調整する。
なお、空間S内を明るくすることを目的としたベース照明装置13からの出射光量は、利用者Hの心理に働きかけて利用者Hに目標とする心理状態を生じさせることを目的とした照明装置20からの出射光量よりも多く設定される。
制御装置15は、利用者Hが第1状態にあり眠気を感じていることを検出センサ18が検出した場合、検出センサ18が利用者Hが眠気を感じているとは検出していない第2状態と異なる大きさに発光領域LZを設定する。とりわけ第1例において、制御装置15は、図8に示すように、利用者Hが眠気を感じている第1状態にある場合、発光面EPのうちの第1発光領域LZ1から照明光Lyを射出する。制御装置15は、図9に示すように、利用者Hが眠気を感じていない第2状態にある場合、発光面EPのうちの第2発光領域LZ2から照明光Lyを射出する。
第1発光領域LZ1及び第2発光領域LZ2は、第1の壁W1に沿って広がる領域である。図8及び図9に示すように、第1発光領域LZ1及び第2発光領域LZ2は、第1方向d1に沿って広がっている。第1発光領域LZ1の第1方向d1に沿った長さは、第2発光領域LZ2の第1方向d1に沿った長さよりも長くなっている。また、第1発光領域LZ1及び第2発光領域LZ2は、図8及び図9における紙面の奥行き方向に沿った第2方向d2にも広がっている。第1発光領域LZ1の第2方向d2に沿った長さは、第2発光領域LZ2の第2方向d2に沿った長さと同一となっている。結果として、第1発光領域LZ1は、第2発光領域LZ2よりも広くなっている。
ここで、図8及び図9、並びに、後述する図11~16には、第1椅子C1に着座した利用者Hが、発光面EP上において色を意識することができる範囲である意識影響範囲XAが示されている。また、これらの図では、色を意識することができる角度範囲が、二つの直線La,Lbで挟まれた範囲として示されている。利用者Hは、空間S内における各状態において、意識影響範XA内での色の変化に気付くことができる。逆に、意識影響範囲XA外となる無意識影響範囲YAでの色の変化に、利用者Hは気付くことはできない。図8及び図9に示すように、眠気のある第1状態での意識影響範囲XAと、眠気のない第2状態での意識影響範囲XAは、異なっている。眠気のある第1状態での意識影響範囲XAは、本件発明者らが実験を行ったところ、利用者の眼の位置から水平方向を基準として仰角10°以下且つ俯角10°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができた。また、眠気のない通常状態としての第2状態での意識影響範囲XAは、利用者の眼の位置から水平方向を基準として仰角30°以下且つ俯角30°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができた。
そして、図8に示すように、眠気を感じる第1状態において、発光領域LZは意識影響範囲XA内まで広がっている。すなわち、眠気を感じている利用者Hは、発光面EP内における照明光Lyに起因して発光面EPの色付きに気付くことができる。本件発明者らが検討を重ねたところ、人間が照明装置20の発光面EP上の色を意識できる場合、すなわち人間が発光面EPの色に気付くことができる場合に、人間の心理状態に大きな影響をもたらし、当該人間の心理状態を目標とする心理状態に迅速に導くことができた。したがって、利用者Hが第1状態にある場合、利用者Hは、照明光Lyの色に起因した心理効果を強く受けるようになる。つまり、図示された例においては、眠気を感じている利用者Hから、眠気を積極的に取り除くことが可能となる。
その一方で、本件発明者らが検討を重ねたところ、人間が色を意識できる発光面EP上の意識影響範囲XAだけでなく、意識影響範囲XA以外となる発光面EP上の領域、すなわち無意識影響範囲YAから射出する光の色によっても、人間の心理状態に影響を及ぼし得ることが確認された。無意識影響範囲YAから射出した光も、反射等によって、利用者Hの眼にたどり着くことができる。利用者Hは、眼にたどり着いた照明光Lyの色によって、無意気的に影響を受け、当該照明光の色に対応した所定の心理状態に導かれるようになる。とりわけ発光面EP上の発光領域LZを無意識影響範囲YA内のみとした場合、目標とする心理状態が得られた後に、当該心理状態を継続して維持することに極めて有効であった。また、無意識影響範囲YAのみから照明光を射出する場合、人間は発光面EP上の色付いた範囲を視界に入れることがない。このことから、気が散ってしまうことも効果的に防止することができる。つまり、図示された例においては、眠気を感じていない利用者Hが、眠くなることを効果的に継続して防止することが可能となる。
図8及び図9に示された第1例においては、利用者Hの第1状態及び第2状態との間での意識影響範囲XAの変動にともなって、発光領域LZも変動している。より正確には、利用者Hの第1状態及び第2状態との間での意識影響範囲XAの第1方向d1における一側s1縁の変動にともなって、第1状態から第2状態へと意識影響範囲XAの第1方向d1における他側s1縁が変動している。結果として、利用者Hの第1状態から第2状態へと意識影響範囲XAが広がる一方で、第1状態から第2状態へと発光領域LZは狭くなっている。
なお、図9に示すように、利用者Hの第1状態及び第2状態との間での意識影響範囲XAの第1方向d1における一側s1縁の変動量AC1は、第1状態から第2状態へと発光領域LZの第1方向d1における他側s1縁の変動量AC2よりも小さくなっている。これにより、第1状態で意識影響範囲XA内に位置しいていた発光領域LZの第1方向d1における他側s1縁は、第1状態で意識影響範囲XA外に位置するようになる。
ところで、照明装置20からの出射光量が多いと、発光領域LZを無意識影響範囲YA内のみに設定したとしても、利用者Hは照明光Lyから色味を感じ、顔や視線を動かして、発光面EPを目視確認することにもなる。そこで、空間S内におけるテーブルT上で照度測定を行った場合、空間Sに設置されたすべての照明装置20,21~24からの照明光Lyに起因した照度が、ベース照明装置13からの照明光Lxに起因した照度よりも低いことが好ましく、ベース照明装置13からの照明光Lxに起因した照度の30%以下であることが好ましく、さらにはベース照明装置13からの照明光Lxに起因した照度の15%以下であることがより好ましい。同様に、空間S内において利用者Hが滞在することが予定された位置で照度測定を行った場合、空間Sに設置されたすべての照明装置20,21~24からの照明光Lyに起因した照度が、ベース照明装置13からの照明光Lxに起因した照度よりも低いことが好ましく、ベース照明装置13からの照明光Lxに起因した照度の30%以下であることが好ましく、さらにはベース照明装置13からの照明光Lxに起因した照度の15%以下であることがより好ましい。なお、空間S内において利用者Hが滞在することが予定された位置とは、図示された例において、利用者Hが第1椅子C1や第2椅子C2に着座した場合における利用者Hの顔の位置を例示することができる。また、空間Sに設置されたすべての照明装置20,21~24からの照明光Lyに起因した照度は、照明装置20,21~24以外の照明器具類を消灯し、照明装置20,21~24のみを点灯した状態で測定された輝度である。同様に、ベース照明装置13からの照明光Lxに起因した照度は、ベース照明装置13以外の照明器具類を消灯し、ベース照明装置13のみを点灯した状態で測定された輝度である。
加えて、照明装置20の発光面EPが空間S内の家具等に映り込むと、発光領域LZを無意識影響範囲YA内のみに設定したとしても、利用者Hが映り込んだ発光領域LZを観察することも考えられる。したがって、空間Sに配置される家具、典型的には、テーブルTの天板表面での光沢度が、0以上70以下となっていることが好ましく、0以上30以下となっていることがより好ましい。ここで、光沢度とは、JISZ8741に準拠して日本電色工業製の(光沢計VG7000)を用いて測定された値である。光沢度をこのように設定することで、意図せず、利用者Hが発光領域LZの色を意識してしまうことを防止することができる。
ここで、図10は、第1例における照明システム10の動作を説明するためのフローチャートである。図10を参照して、照明システム10の動作例について説明する。
上述したように、利用者Hが空間Sに滞在している場合、まず、制御装置15は、照明光Lxを射出するようにベース照明装置13を制御する。次に、図10に示すように、ステップS1において、利用者Hが第1状態であるか否かを判断する。具体的には、検出センサ18の検出結果に基づき、利用者Hが第1状態にあるか否かを判断する。この判断は、例えば、制御装置15の計算部15bが、検出センサ18での検出結果と、制御装置15の記憶部15aに記憶された判断基準情報と、に基づいて行う。
なお、図示された例では、会議室を構成する空間S内において、利用者Hは、通常であれば、第1椅子C1または第2椅子C2に着座し、テーブルTを用いて何らかの作業を行う。したがって、第1椅子C1または第2椅子C2に着座した利用者Hの瞬きや瞼の位置を確認することで、利用者Hが眠気を生じた第1状態にあるか否かを判断することができる。
次に、ステップS1で、利用者Hが第1状態にあると判断された場合、制御装置15の射出制御部15cが、照明装置20の発光体52に電力を供給して、照明装置20の発光領域LZのうちの第1発光領域LZ1から照明光Lyを射出させるようにする。このときの照明光Lyは、目標とする心理状態を生じさせる色となるよう、調節される。眠気を取り除くことを目標とする図示の例では、一例として、藤色やあやめ色の照明光Lyが光源51から射出される。
その後、ステップS3として、利用者Hが空間Sに滞在している否かを判断する。ステップS3は、ステップS2が終了した後に、所定時間の経過を待って実行される。具体的には、検出センサ18の検出結果に基づき、利用者Hが空間Sに滞在しているか否かを判断する。この判断は、例えば、制御装置15の計算部15bが、検出センサ18での検出結果と、制御装置15の記憶部15aに記憶された判断基準情報と、に基づいて行う。図示された例では、会議室を構成する空間S内において、利用者Hは、通常であれば、第1椅子C1または第2椅子C2に着座し、テーブルTを用いて何らかの作業を行う。したがって、第1椅子C1または第2椅子C2に着座した利用者Hの有無を検出することによって、利用者Hの有無を判断することができる。
次に、ステップS3で、利用者Hが空間Sに滞在していると判断された場合、ステップS4に進む。ステップS4では、再度、利用者Hが第1状態にあるか否かを判断する。ステップS4で利用者Hが第1状態にあると判断された場合、例えば所定時間が経過した後、再度、ステップS3が実行され、利用者Hの有無が確認される。
一方、ステップS1及びステップS4において、利用者Hが第1状態ではないと判断された場合、ステップS5として、制御装置15の射出制御部15cが、照明装置20の発光体52に電力供給を調節して、照明装置20の発光領域LZのうちの第2発光領域LZ2から照明光Lyを射出させるようにする。このときの照明光Lyは、目標とする心理状態を生じさせる色に、調整される。眠気を取り除くことを目標とする図示の例では、一例として、第1発光領域LZ1から照明光Lyを射出させる場合と同様に、藤色やあやめ色の照明光Lyを第2発光領域LZ2から射出する。
その後、ステップS6として、利用者Hが空間Sに滞在している否かを判断する。ステップS6は、ステップS5が終了した後に、所定時間の経過を待って実行される。ステップS6で、利用者Hが空間Sに滞在していると判断された場合、ステップS7に進む。ステップS7では、再度、利用者Hが第1状態にあるか否かを判断する。ステップS7で利用者Hが第1状態にないと判断された場合、例えば所定時間が経過した後、再度、ステップS6が実行され、利用者Hの有無が確認される。ステップS7で利用者Hが第1状態にある判断された場合、ステップS1で利用者Hが第1状態にある判断された場合と同様に、ステップS2が実行される。これにより、発光面EP上の発光領域LZが、第2発光領域LZ2から第1発光領域LZ1へと切り替えられる。
一方、ステップS3及びステップS6において、利用者Hが空間Sに居ないと判断された場合、ステップS8において、照明装置20の発光面EPからの照明光Lyの射出が停止する。具体的には、制御装置15の射出制御部15cが、照明装置20の発光体52への電力供給を停止する。
以上に説明した第1例によれば、空間利用者Hの状態に応じて、発光面EP上の発光している発光領域LZが変化する。発光領域LZの大きさに応じて、空間利用者Hの心理状態への影響の及ぼし方が変わる。したがって、利用者Hの状態に応じた適切な心理作用を空間利用者Hに及ぼすことができる。これにより、例えばこの空間S内での利用者Hの作業効率を向上させることができる。
なお、上述の説明では、検出センサ18が眠気のある第1状態を検出する例を示したが、これに限られない。検出センサ18が、眠気のある第1状態に代えて又は眠気のある第1状態に加えて、眠気のない第2状態を検出可能としてもよい。
また、以上の説明において、空間Sの利用者Hは、一人で、第1椅子C1に着座している例とした。そして、第1椅子C1に着座した利用者Hの意識影響範囲XAが広がる第1照明装置21の発光面EPでの発光領域LZを、当該利用者Hの状態に応じて変化させるようにした。この例において、第2~第4照明装置22~24の発光面EPでの発光領域LZは、利用者Hの状態に応じて変化させるようにしてもよいし、或いは、利用者Hの状態に依らずに一定としてもよいし、あるいは、第2~第4照明装置22~24を消灯してもよい。ただし、第2~第4照明装置22~24の発光面EPの少なくとも一部が意識影響範囲XAに位置するのであれば、上述した第1照明装置21と同様にして、第2~第4照明装置22~24の発光領域LZを意識影響範囲XA及び無意識影響範囲YAに対して変化させることが好ましい。なお、第2~第4照明装置22~24の取り扱いについては、後述する他の例においても、第1例と同様にすることができる。
(第2例)
次に、図11及び図12を参照して、第2例について説明する。第2例は、主として、検出されるべき利用者Hの状態、利用者に生じさせることを目標とする心理状態、各状態での発光領域LZが、第1例と異なり、その他の点において、第1例と同一とすることができる。以下では、第1例と異なる点について主として説明する。
図11及び図12に示された第2例において、検出センサ18は、第1状態として、集中した状態を検出することができる。検出センサ18は、一例として、瞼等の顔の動きや視線の向き等を観察することによって、利用者Hが集中しているか否かを検出することができる。照明装置20は、目標とする心理状態を引き起こす色の照明光Lyを発光面EPから射出する。本例では、照明装置20は、集中している場合に集中を継続することを目的として、集中していない場合に集中を促すことを目的として、肌色の照明光Lyを射出するよう、各発光体52の出力を調整する。
第2例においても、制御装置15は、図11に示すように利用者Hが第1状態にある場合に第1発光領域LZ1から照明光Lyを射出し、図12に示すように利用者Hが第2状態にある場合に第2発光領域LZ2から照明光Lyを射出する。図11及び図12に示すように、第1発光領域LZ1の第1方向d1に沿った長さは、第2発光領域LZ2の第1方向d1に沿った長さよりも長くなっている。すなわち、第2例において、第1発光領域LZ1は、第2発光領域LZ2よりも広くなっている。
図11及び図12に示すように、集中した第1状態での利用者Hの意識影響範囲XAと、通常状態にある又は散漫した状態にある第2状態での意識影響範囲XAは、異なっている。集中状態である第1状態での意識影響範囲XAは、本件発明者らが実験を行ったところ、利用者の眼の位置から水平方向を基準として仰角10°以下且つ俯角10°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができた。また、通常状態または散漫状態である第2状態での意識影響範囲XAは、利用者の眼の位置から水平方向を基準として仰角30°以下且つ俯角30°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができた。
図11に示すように、集中した第1状態において、発光領域LZは意識影響範囲XA内まで広がっておらず、無意識影響範囲YA内のみに位置している。すなわち、集中状態にある利用者Hは、発光面EP内における照明光Lyに起因した色付きに気付かない。したがって、利用者Hは発光面EP上の色付いた範囲を視界に入れることがなく、気が散ってしまうことも効果的に防止することができる。
その一方で、利用者Hは、眼にたどり着いた照明光Lyの色によって、無意気的に影響を受け、当該照明光Lyに色に対応した所定の心理状態に導かれるようになる。とりわけ発光面EP上の発光領域LZが無意識影響範囲YA内のみとなっているので、目標とする心理状態が得られた後に、当該心理状態を継続して維持することに極めて有効である。つまり、図示された例においては、集中した利用者Hが、集中した状態を効果的に継続して維持することが可能となる。
図12に示すように、通常状態または散漫した第2状態において、発光領域LZは意識影響範囲XA内まで広がっている。このとき、利用者Hは、発光面EP内における照明光Lyに起因した色付きに気付くことができる。したがって、利用者Hが第2状態にある場合、利用者Hは、照明光Lyの色に起因した心理効果を強く受けるようになる。つまり、図示された例において、利用者Hは、集中した状態に有効に導かれることになる。
図11及び図12に示された第2例では、第1例と同様に、利用者Hの第1状態から第2状態へと意識影響範囲XAが広がる一方で、第1状態から第2状態へと発光領域LZは狭くなっている。ただし、第1例とは異なり、第2例では、発光領域LZの変化量は小さくなっている。図12に示すように、利用者Hの第1状態及び第2状態との間での意識影響範囲XAの第1方向d1における一側s1縁の変動量AC1は、第1状態から第2状態へと発光領域LZの第1方向d1における他側s1縁の変動量AC2よりも大きくなっている。これにより、第1状態で意識影響範囲XA外に位置しいていた発光領域LZの第1方向d1における他側s1縁は、第2状態で意識影響範囲XA内に位置するようになる。
以上に説明した第2例によれば、空間利用者Hの状態に応じて、発光面EP上の発光している発光領域LZが変化する。発光領域LZの大きさに応じて、空間利用者Hの心理状態への影響の及ぼし方が変わる。したがって、利用者の状態に応じた適切な心理作用を空間利用者に及ぼすことができる。これにより、例えばこの空間S内での利用者Hの作業効率を向上させることができる。
なお、上述の説明では、検出センサ18が集中状態にある第1状態を検出する例を示したが、これに限られない。検出センサ18が、集中状態にある第1状態に代えて又は集中状態にある第1状態に加えて、通常状態または散漫状態にある第2状態を検出可能としてもよい。
また、照明システム10の詳細な動作および照明方法については、第1例において図10を参照しながら詳述した動作および方法と同様とすることができる。
(第3例)
次に、図13及び図14を参照して、第3例について説明する。第3例は、主として、検出されるべき利用者Hの状態、利用者に生じさせる目標とする心理状態、各状態での発光領域LZが、第1例及び第2例と異なり、他の点において、第1例又は第2例と同一とすることができる。以下では、第1例及び第2例と異なる点について主として説明する。
図13及び図14に示された第3例において、検出センサ18は、第2状態として、警戒または緊張した状態を検出することができる。検出センサ18は、一例として、顔の動きや視線の向き等を観察することによって、利用者Hが警戒または緊張しているか否かを検出することができる。照明装置20は、目標とする心理状態を引き起こす色の照明光Lyを発光面EPから射出する。本例では、照明装置20は、警戒または緊張している場合に警戒または緊張から解放してリラックスさせることを目的として、警戒または緊張していない場合にリラックスした状態を維持することを目的として、檸檬色の照明光Lyを射出するよう、各発光体52の出力を調整される。
第3例においても、制御装置15は、図13に示すように利用者Hが第1状態にある場合に第1発光領域LZ1から照明光Lyを射出し、図14に示すように利用者Hが第2状態にある場合に第2発光領域LZ2から照明光Lyを射出する。図13及び図14に示すように、第1発光領域LZ1の第1方向d1に沿った長さは、第2発光領域LZ2の第1方向d1に沿った長さよりも短くなっている。すなわち、第3例において、第1発光領域LZ1は、第2発光領域LZ2よりも狭くなっている。
図13及び図14に示すように、リラックスした第1状態での利用者Hの意識影響範囲XAと、警戒または緊張した状態にある第2状態での意識影響範囲XAは、異なっている。リラックスした第1状態での意識影響範囲XAは、本件発明者らが実験を行ったところ、利用者の眼の位置から水平方向を基準として仰角30°以下且つ俯角30°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができた。また、警戒または緊張した第2状態での意識影響範囲XAは、利用者の眼の位置から水平方向を基準として仰角40°以下且つ俯角40°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができた。
図13に示すように、リラックスした第1状態において、発光領域LZは意識影響範囲XA内まで広がっておらず、無意識影響範囲YA内のみに位置している。すなわち、リラックスした状態にある利用者Hは、発光面EP内における照明光Lyに起因した色付きに気付かない。したがって、利用者Hは発光面EP上の色付いた範囲を視界に入れることがなく、気が散ってしまうことも効果的に防止することができる。
その一方で、利用者Hは、眼にたどり着いた照明光Lyの色によって、無意気的に影響を受け、当該照明光に色に対応した所定の心理状態に導かれるようになる。とりわけ発光面EP上の発光領域LZが無意識影響範囲YA内のみとなっているので、目標とする心理状態が得られた後に、当該心理状態を継続して維持することに極めて有効である。つまり、図示された例においては、リラックスした利用者Hが、リラックスした状態を効果的に継続して維持することが可能となる。
図14に示すように、警戒または緊張した第2状態において、発光領域LZは意識影響範囲XA内まで広がっている。このとき、利用者Hは、発光面EP内における照明光Lyに起因した発光面EPの色付きに気付くことができる。したがって、利用者Hが第2状態にある場合、利用者Hは、照明光Lyの色に起因した心理効果を強く受けるようになる。つまり、図示された例においては、利用者Hは、警戒や緊張から解放されてリラックスした状態に有効に導かれることになる。
図13及び図14に示された第3例において、第1例及び第2例と異なり、利用者Hの第1状態から第2状態へと意識影響範囲XAが広がる一方で、第1状態から第2状態へと発光領域LZは狭くなっておらず、むしろ広がっている。また、第3例では、発光領域LZの変化量は非常に小さくなっている。第3例において、第1状態で意識影響範囲XA外に位置しいていた発光領域LZの第1方向d1における他側s1縁は、第2状態で意識影響範囲XA内に位置するようになる。
以上に説明した第3例によれば、空間利用者Hの状態に応じて、発光面EP上の発光している発光領域LZが変化する。発光領域LZの大きさに応じて、空間利用者Hの心理状態への影響の及ぼし方が変わる。したがって、利用者の状態に応じた適切な心理作用を空間利用者に及ぼすことができる。これにより、例えばこの空間S内での利用者Hの作業効率を向上させることができる。
なお、上述の説明では、検出センサ18が警戒または緊張した第2状態を検出する例を示したが、これに限られない。検出センサ18が、警戒または緊張した第2状態に代えて又は警戒または緊張した第2状態に加えて、リラックスした第1状態を検出可能としてもよい。
また、第3例における照明システム10の詳細な動作および照明方法については、ステップS1、ステップS4及びステップS7を空間Sの利用者Hが第2状態であるか否かを判断するステップに変更することで、第1例において図10を参照しながら詳述した動作および方法を採用することができる。
(第4例)
次に、図8及び図15を参照して、第4例について説明する。第4例は、眠気が生じていない第2状態においても、第1状態と同様に発光領域LZは意識影響範囲XA内まで広がっている点において第1例と異なり、その他の点において第1例と同様にすることができる。したがって、第4例において、眠気が生じている第1状態において、図8に示すように、発光領域LZは意識影響範囲XA内まで広がっている。
すなわち、第4例において、制御装置15は、利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第1発光領域LZ1の少なくとも一部が、第1状態にある利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる意識影響範囲XA内となり、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第2発光領域LZ2の少なくとも一部が、第2状態にある利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる無意識影響範囲YA内となるように、照明装置20を制御する。したがって、利用者Hが第1状態にある場合に、発光面EPの発光領域LZの少なくとも一部が意識影響範囲XA内に含まれることで、発光色に応じた目標とする心理状態を迅速に引き起こすことが可能となる。同様に、利用者Hが第2状態にある場合にも、発光面EPの発光領域LZの少なくとも一部が意識影響範囲XA内に含まれることで、発光色に応じた目標とする心理状態を迅速に引き起こすことが可能となる。この具体例によれば、利用者の状態に応じて発光領域LZを適切に変化させることができ、これにより、利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことができる。
(第5例)
次に、図9及び図16を参照して、第5例について説明する。第5例は、眠気が生じている第1状態においても、第2状態と同様に発光領域LZは無意識影響範囲YA内のみに広がっている点において第1例と異なり、その他の点において第1例と同様にすることができる。したがって、第5例において、眠気が生じていない第2状態において、図16に示すように、発光領域LZは無意識影響範囲YA内のみに広がっている。
すなわち、第4例において、制御装置15は、利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第1発光領域LZ1が、第1状態にある利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる意識影響範囲XA外となり、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第2発光領域LZ2が、第2状態にある利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる意識影響範囲XA外となるように、照明装置20を制御する。したがって、利用者Hが第1状態にある場合に、発光面EPの発光領域LZを無意識影響範囲YA内とすることで、発光色に応じた目標とする心理状態に長期間に亘って維持することが可能となる。同様に、利用者Hが第2状態にある場合にも、発光面EPの発光領域LZを無意識影響範囲YA内とすることで、発光色に応じた目標とする心理状態に長期間に亘って維持することが可能となる。この具体例によれば、利用者Hの状態に応じて発光領域LZを適切に変化させることができ、これにより、利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことができる。
(第6例)
次に、第6例について説明する。上述した第1~第5例では、発光領域LZが、利用者Hの心理状態に基づいて調整される例を示した。第6例では、検出センサ18が、利用者Hの心理状態ではなく、利用者Hの作業状態を検出し、制御装置15が、利用者Hの作業状態に応じて、発光領域LZの大きさを変更するようにしてもよい。
一具体例として、第1状態を、利用者Hがコンピュータ等のデスクワークに打ち込んでいる状態とし、第2状態を、利用者Hが会議をしている状態とすることができる。コンピュータ等のデスクワークに打ち込んでいる利用者Hの意識影響範囲XAは、利用者Hの眼の位置から水平方向を基準として仰角10°以下且つ俯角10°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができる。また、会議を行っている利用者Hの意識影響範囲XAは、利用者Hの眼の位置から水平方向を基準として仰角30°以下且つ俯角30°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができる。
一例として、第1状態における第1発光領域LZ1及び第2状態における第2発光領域LZ2を、第5例と同様に設定することができる。つまり、第1発光領域LZ1が、第1状態にある利用者Hの無意識影響範囲YA内のみに位置し、第2発光領域LZ2が、第2状態にある利用者Hの無意識影響範囲YA内のみに位置するようにしてもよい。
この具体例において、第1発光領域LZ1から射出する照明光Lyの色を第2例と同様に肌色として、デスクワークを行う利用者Hに集中を促すようにしてもよい。第1発光領域LZ1から射出する照明光Lyの色を第2例と同様に肌色として、デスクワークを行う利用者Hに集中を促すようにしてもよい。また、第2発光領域LZ2から射出する照明光Lyの色を若草色や赤紫色として、会議中の利用者Hに「活気」や「積極性」をもたらすようにしてもよい。すなわち、第1状態と第2状態との間で、発光領域LZを変更するとともに照明光Lyの色も変更し、利用者Hに生じる心理状態を第1状態と第2状態とで異なるようにしている。第1状態と第2状態との間で、照明光Lyの色を変更することで、利用者の作業状態に応じた適切な心理状態を引き起こすことができる。
以上に説明した第6例によれば、空間利用者Hの状態に応じて、発光面EP上の発光している発光領域LZが変化する。発光領域LZの大きさに応じて、空間利用者Hの心理状態への影響の及ぼし方が変わる。また、第6例によれば、空間利用者Hの状態に応じて、発光領域LZから射出する照明光Lyの色も変化する。したがって、利用者の状態に応じた適切な心理作用を空間利用者に及ぼすことができる。これにより、例えばこの空間S内での利用者Hの作業効率を向上させることができる。
以上において説明した一実施の形態において、照明システム10は、発光面EPを有し空間Sに光を射出する照明装置20と、照明装置20を制御する制御装置15と、を有している。制御装置15は、空間Sの利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第1発光領域LZ1が、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第2発光領域LZ2と異なるように、照明装置20を制御する。このような本実施の形態によれば、空間利用者Hの心理状態や作業状態に応じて、発光面EP上の発光している発光領域LZが変化する。発光領域LZの大きさに応じて、空間利用者Hの心理状態への影響の及ぼし方が変わる。すなわち、空間利用者Hが第1状態及び第2状態のいずれの状態にあるかに応じて、心理状態への影響の及ぼし方を変えることができる。したがって、利用者の状態に応じた適切な心理作用を空間利用者Hに及ぼすことができる。このように空間利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことができるので、例えばこの空間S内での利用者Hの作業効率を向上させることができる。
上述した一実施の形態の第1例~第3例において、制御装置15は、利用者Hが第1状態及び第2状態のうちのいずれか一方の状態にある場合に発光面EPのうちの発光している発光領域LZが、一方の状態にある利用者Hの意識影響範囲XA外となり、利用者Hが第1状態及び第2状態のうちのいずれか他方の状態にある場合に発光面EPのうちの発光している発光領域LZの少なくとも一部が、他方の状態にある利用者Hの意識影響範囲XA内となるように、照明装置20を制御する。したがって、利用者Hが一方の状態にある場合に、発光面EPの発光領域LZを無意識影響範囲YA内とすることで、発光色に応じた目標とする心理状態を長期間に亘って維持することが可能となる。一方、利用者Hが他方の状態にある場合に、発光面EPの発光領域LZの少なくとも一部が意識影響範囲XA内に含まれることで、発光色に応じた目標とする心理状態を迅速に引き起こすことが可能となる。この具体例によれば、利用者Hの状態に応じて発光領域LZを適切に変化させることができ、これにより、利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことができる。
上述した一実施の形態の第1例~第6例において、第1状態にある利用者Hの意識影響範囲XAは、第2状態にある利用者Hの意識影響範囲XAと異なっている。このように、空間利用者Hが発光面EP上の色を認識することができる意識影響範囲XAの大きさは、当該利用者Hの状態に応じて変化しやすい。上述した具体例では、意識影響範囲XAの大きさの変化にともなって、発光領域LZの大きさを調節することができる。これにより、空間利用者Hの状態変化に依らず、当該利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことができる。
上述した一実施の形態の第1例及び第2例において、第1状態にある利用者Hの意識影響範囲XAは、第2状態にある利用者Hの意識影響範囲XAよりも狭く、制御装置15は、利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第1発光領域LZ1が、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第2発光領域LZ2よりも広くなるように、照明装置20を制御する。この具体例によれば、意識影響範囲XAの大きさの変化にともなって、発光領域LZの大きさを適切に調節することができる。例えば、第2状態における第2発光領域LZ2が無意識影響範囲YA内のみとし、第1状態における第1発光領域LZ1の少なくとも一部が意識影響範囲XA内に位置するようにすることができる。また、第1状態における第1発光領域LZ1が無意識影響範囲YA内のみとし、第2状態における第2発光領域LZ2の少なくとも一部が意識影響範囲XA内に位置するようにすることができる。これにより、空間利用者Hの状態変化に依らず、当該利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことができる。
上述した一実施の形態の第1例において、制御装置15は、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第2発光領域LZ2が、第2状態にある利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる意識影響範囲XA外となり、利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第1発光領域LZ1の少なくとも一部が、第1状態にある利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる範囲内となるように、照明装置20を制御する。一例として、眠気が生じた第1状態において、第1発光領域LZ1の藤色やあやめ色を利用者に意識させることで、眠気を迅速に取り除くことが可能となる。また、眠気が取り除かれた通常状態である第2状態において、無意識影響範囲YA内となる第2発光領域LZ2から射出した藤色やあやめ色の光から、利用者は、無意識のうちに、眠気が生じない作用を継続的に及ぼされ、眠気が取り除かれた状態に維持される。この例によれば、利用者Hは、空間S内において、高い生産性で活動することできる。なお、眠気が生じた第1状態での意識影響範囲XAは、利用者Hの眼の位置から仰角10°以下且つ俯角10°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができる。同様に、眠気が取り除かれた通常状態である第2状態での意識影響範囲XAは、利用者Hの眼の位置から仰角30°以下且つ俯角30°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができる。鋭意実験を繰り返したところ、このように意識影響範囲XAを設定することで、空間S内での生産性を改善する効果が有効に得られる得ることが確認された。
上述した一実施の形態の第2例において、制御装置15は、利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第1発光領域LZ1が、第1心理状態にある利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる意識影響範囲XA外となり、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPのうちの発光している領域の少なくとも一部が、第2状態にある利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる意識影響範囲XA内となるように、照明装置20を制御する。一例として、利用者Hが集中した状態にある第1状態において、利用者Hの気を散らすことのないよう、無意識影響範囲YA内となる発光領域LZから、集中の継続を促す肌色等の光を射出する。これにより、利用者Hは、無意識のうちに継続的に集中を促され、集中した状態に維持される。また、集中が切れて散漫した状態または通常状態である第2状態において、意識影響範囲XA内に位置する発光領域LZの肌色等を利用者に意識させることで、集中した状態へと迅速に誘導することが可能となる。この例によれば、利用者Hは、空間S内において、高い生産性で活動することできる。なお、集中した状態にある第1状態での意識影響範囲XAは、利用者Hの眼の位置から仰角10°以下且つ俯角10°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができる。同様に、集中が切れて散漫した状態または通常状態である第2状態での意識影響範囲XAは、利用者Hの眼の位置から仰角30°以下且つ俯角30°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができる。鋭意実験を繰り返したところ、このように意識影響範囲XAを設定することで、空間S内で生産性を改善する効果が有効に得られる得ることが確認された。
上述した一実施の形態の第3例において、第1状態にある利用者Hの意識影響範囲XAは、第2状態にある利用者Hの意識影響範囲XAよりも狭く、制御装置15は、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第2発光領域LZ2が、利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第1発光領域LZ1よりも広くなるように、照明装置20を制御する。この具体例によれば、意識影響範囲XAの大きさの変化にともなって、発光領域LZの大きさを適切に調節することができる。
例えば、第1状態における第1発光領域LZ1が無意識影響範囲YA内のみとし、第2状態における第2発光領域LZ2の少なくとも一部が意識影響範囲XA内に位置するようにすることができる。これにより、空間利用者Hの状態変化に依らず、当該利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことができる。
上述した一実施の形態の第3例において、制御装置15は、利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの発光している発光領域LZが、第1状態にある利用者Hの意識影響範囲XA外となり、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPのうちの発光している領域の少なくとも一部が、第2状態にある利用者Hの意識影響範囲XA内となるように、照明装置20を制御する。一例として、利用者Hがリラックスした状態にある第1状態において、利用者Hを警戒又は緊張させることのないよう、無意識影響範囲YA内となる発光領域LZから、リラックスの継続を促す檸檬色等の光を射出する。これにより、利用者Hは、無意識のうちに継続的に働きかけられることで、リラックスした状態に維持される。また、リラックスすることができず警戒または緊張した状態である第2状態において、意識影響範囲XA内に位置する発光領域LZの檸檬色等を利用者に意識させることで、リラックスした状態へと迅速に誘導することが可能となる。この例によれば、利用者Hは、空間S内において、快適に過ごすことできる。なお、リラックスした状態にある第1状態での意識影響範囲XAは、利用者Hの眼の位置から仰角30°以下且つ俯角30°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができる。同様に、リラックスすることができず警戒または緊張した状態である第2状態での意識影響範囲XAは、利用者Hの眼の位置から仰角40°以下且つ俯角40°以下で見込む範囲内に位置すると考えることができる。鋭意実験を繰り返したところ、このように意識影響範囲XAを設定することで、空間S内で快適性を改善する効果が有効に得られる得ることが確認された。
上述した一実施の形態の一具体例において、照明システム10は、利用者Hの状態を検出する検出センサ18を更に有し、制御装置15は、検出センサ18での検出結果に基づいて照明装置20を制御する。利用者Hの状態を検出する検出センサ18を用いることで、利用者Hの状態変化に迅速に対応して発光領域LZを調節することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、検出センサ18は、利用者Hの瞬き動作、瞬き回数、瞳孔の状態、視線の方向、顔の動作の少なくとも一つを検出する。このような検出センサ18の検出結果を用いることで、利用者Hの状態を適切に検出することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、検出センサ18は、利用者Hを撮像する撮像装置を有する。このような検出センサ18は簡易且つ安価である。また、既存の照明装置20への適用も可能である。
上述した一実施の形態の第6例において、制御装置15は、空間Sの利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPの発光色が、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPの発光色と異なるように、照明装置20を制御するようにした。発光色を制御することで、空間利用者Hの誘導目標となる心理状態を適宜変更することができる。したがって、利用者Hの状態に応じて照明をより適切なものとすることができ、これにより、利用者Hの心理状態により効果的に影響を及ぼすことができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、発光面EPは、空間Sを区画する壁Wに設けられているようにした。空間Sの利用者Hの意識影響範囲XAは、多くの場合、壁W上に広がる。したがって、壁Wに設けた発光面EPの発光領域LZを変更することで、利用者Hの状態に応じて照明をより適切なものとすることができる。これにより、利用者Hの心理状態により効果的に影響を及ぼすことができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、発光面EPの或る一定面積の領域からの出射光量は、当該領域よりも空間Sを区画する天井CEに近接する発光面EPの他の或る一定面積の領域からの出射光量よりも少なくなっている。さらには、発光面EPの任意に選択される一定面積の領域からの出射光量は、当該領域よりも空間Sを区画する天井CEに近接する発光面EPの他の一定面積の領域からの出射光量以下となるようにしてもよい。これらの具体例によれば、照明装置20の発光領域LZの大きさが調節可能であることに加え、発光領域LZ内における出射光量が調整され得る。したがって、利用者の心理状態により効果的に影響を及ぼすことが可能となる。また、照明光の有効利用の観点から、照明装置20の発光面EPは、壁Wのうちの天井CEに近接していることが好ましい。この場合、発光面EPのうちの天井CEから離間する領域が、意識影響範囲XA内となり、発光面EPのうちの天井CEに近接する領域は、無意識影響範囲YA内となりやすくなる。上述した具体例での出射光量の分布によれば、意識影響範囲XAからの出射光量を、無意識影響範囲YAからの出射光量よりも少なくすることができる。これにより、意識影響範囲XAからの光によって、空間利用者Hの心理状態に過度に働きかけることを効果的に防止することができる。また、無意識影響範囲YAからの光によって、空間利用者Hの心理状態に有効に働きかけることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる意識影響範囲XA内に位置する一定面積の領域からの出射光量は、利用者Hが発光面EP上の色を意識することができる意識影響範囲XA外に位置する一定面積の領域からの出射光量よりも少なくなっていることが好まし。つまり、意識影響範囲XAからの出射光量を、無意識影響範囲YAからの出射光量よりも少なくすることができる。これにより、意識影響範囲XAからの光によって、空間利用者Hの心理状態に過度に働きかけることを効果的に防止することができる。また、無意識影響範囲YAからの光によって、空間S利用者の心理状態に有効に働きかけることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、照明システム10は、空間Sを区画する天井CEに設けられたベース照明装置13を更に有している。別途にベース照明装置13が設けられていることから、照明装置20の発光面EPの位置や大きさを、空間利用者Hの心理状態に与える影響を考慮して、適宜設定することができる。これにより、利用者Hの心理状態により効果的に影響を及ぼすことができる。
上述した一実施の形態において、発光面EPを有する照明装置20を用いて空間Sを照明する照明方法は、空間Sの利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPを発光させて照明を行う工程と、空間Sの利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPを発光させて照明を行う工程と、を含んでいる。利用者Hが第1状態にある場合に発光面EPのうちの発光している発光領域LZ1と、利用者Hが第2状態にある場合に発光面EPのうちの発光している第2発光領域LZ2と、が異なっている。このような本実施の形態によれば、空間利用者Hの心理状態や動作状態に応じて、発光面EP上の発光している発光領域LZが変化する。発光領域LZの大きさに応じて、空間利用者Hの心理状態への影響の及ぼし方が変わる。したがって、空間利用者Hが第1状態及び第2状態のいずれの状態にあるかに応じて、心理状態への影響の及ぼし方を変えることができる。すなわち、利用者Hの状態に応じた適切な心理作用を空間利用者に及ぼすことができる。このように空間利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことができるので、例えばこの空間S内での利用者Hの作業効率を向上させることができる。
上述した一実施の形態において、照明システム10は、発光面EPを有し空間Sに光を射出する照明装置20と、照明装置20を制御する制御装置15と、を有している。制御装置15は、利用者Hが第1状態及び第2状態のうちのいずれか一方の状態にある場合に発光面EPのうちの発光している発光領域LZが、前記一方の状態にある利用者の意識影響範囲XA外となり、利用者Hが第1状態及び第2状態のうちのいずれか他方の状態にある場合に発光面EPのうちの発光している発光領域LZの少なくとも一部が、他方の状態にある利用者Hの意識影響範囲XA内となるように、照明装置20を制御する。このような本実施の形態によれば、利用者Hが一方の状態にある場合に、発光面EPの発光領域LZを無意識影響範囲YA内とすることで、発光色に応じた目標とする心理状態に長期間に亘って維持することが可能となる。一方、利用者Hが他方の状態にある場合に、発光面EPの発光領域LZの少なくとも一部が意識影響範囲XA内に含まれることで、発光色に応じた目標とする心理状態を迅速に引き起こすことが可能となる。したがって、利用者Hの状態に応じて発光領域を適切に変化させることができ、これにより、利用者Hの心理状態に効果的に影響を及ぼすことができる。なお、このような照明装置20において、発光領域LZが第1状態および第2状態の間で変化せず同一であるようにしてもよい。
一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した一実施の具体例においては、利用者Hが第1状態および第2状態のいずれにあるかに応じて、照明装置20による照明方法を変更する例を示したが、この例に限られない。例えば、利用者Hが三以上の状態のうちのいずれの状態にあるかに応じて、照明装置20による照明方法を変更するようにしてもよい。
また、上述した一実施の具体例において、照明装置20がエッジライト型の面光源装置50を含む例を示したが、この例に限られない。例えば、直下型の面光源装置50を照明装置20に組み込んでもよい。図17に示された面光源装置50は、光拡散シート56、反射シート57及び光学シート58を、光学部材55として、有している。光学シート58は、光拡散シート56と反射シート57との間に配置されている。光源51は、反射シート57と光学シート58との間に配置されている。光源51は、第1方向d1及び第2方向d2の両方向に配列された複数の発光体52を含んでいる。光学シート58は、一例として、複数の発光体52の配列に起因した照度分布を調節する機能、例えば均一化する機能を有している。図17に示された例において、光学シート58は、光拡散シート56側に突出したプリズムを有するプリズムシートによって構成されている。図17の面光源装置50において、光拡散シート56が光射出面50aを形成し、発光面EPを形成するようになる化粧シート40の第1領域Z1を面状に照明する面状光を放出することができる。図17に示された例においては、各発光体52の出力を調整することで、光射出面50aと重なる照明装置20の発光面EP内における発光領域LZの位置及び大きさを調節することができる。また、各発光体52の出力を調整することで、発光領域LZ内における一定面積の領域からの出射光量分布を制御することができる。さらに、光源51が、互いに異なる波長域の発光体52を含む場合には、各発光体52の出力を調整することで、発光領域LZから射出する照明光Lyの色を制御することもできる。
また、面光源装置50として、EL(Electro Luminescence)シート等の発光シート、面状発光体、シート光源を用いることも可能である。
さらに、照明装置の別の例として、図18に示すように、照明装置20が、化粧シート40と、化粧シート40上に光を照射する光源51と、を有するようにしてもよい。図18に示された例において、化粧シート40は、壁本体WB上に設けられている。光源51は、天井CEに形成された凹部内に配置されている。化粧シート40での反射によって、空間Sに照明光Lyを供給することができる。すなわち、図18に示された例において、発光面EPは、化粧シート40の表面のうちの、光源51から光を照射され得る領域となる。図18に示された例では、光源51から出射する光の配光特性、より具体的には光度角度分布を調節可能としておくことで、発光領域LZの位置及び大きさ、発光領域LZ内における一定面積の領域からの出射光量分布を調節することができる。また、光源51は、照明光Lyの色が切り替え可能となるよう、異なる波長域の光を射出可能となっていることが好ましい。
また、別の変形例として、図19に示すように、化粧シート40が、面光源装置50の二以上の面に対面して配置されるようにしてもよい。図19に示された例において、面光源装置50は、一対の主面50bと一対の主面50bの間に位置する側面50cとを有している。一方の主面50bが、光射出面50aを含んでいる。図示された例において、化粧シート40は、光射出面50aを含む一つの主面50bと、この主面50bに隣接する側面50cと、に対面している。より厳密には、図19に示された化粧シート40は、光射出面50aを含む一つの主面50bと、この主面50bに隣接する四つの側面50cと、を覆っている。図19に示された例では、化粧シート40及び面光源装置50を含む照明装置20が、一つの部材として、例えば発光パネル材として取り扱われ、構造体としての壁本体WBに取り付けられている。また、ボード30と、ボード30の一方の主面と側面とを覆う化粧シート40と、を含んでなるパネル材70が、照明装置20とともに、構造体としての壁本体WBに取り付けられている。図19に示された照明装置20は、形状や大きさを調節されたパネル材70との組み合わせにより、種々の大きさや形状の領域に対して設置可能となる。
なお、図20は、図19の照明装置20の分解斜視図を示している。図20に示された例において、照明装置20は、偏平した直方体形状を有するようになる。照明装置20は、面光源装置50の一方の主面50bに対応した領域40aと、面光源装置50の四つの側面50cにそれぞれ対応した四つ領域40bと、を有している。化粧シート40の領域40aのうちの光射出面50aに対面する部分が、発光面EPなするようになる第1領域Z1を形成しており、化粧シート40の領域40aのうちの光射出面50aに対面しない部分と、化粧シート40の領域40bとが、第2領域Z2を形成する。
面光源装置50は、反射シート57、導光板60、調整シート59及び光拡散シート56を有している。導光板60に対して第1方向d1における第1側s1から対向して発光体52が設けられている。調整シート59は、可視光透過性を有した透明な基材59aと、基材59a上に設けられた光吸収部59bと、を含んでいる。光吸収部59bは、例えば可視光吸収性を有した顔料を含んでおり、可視光吸収機能を有する。一例として、光吸収部59bは、カーボンブラックやチタンブラックを含む。
調整シート59は、第1方向d1における第2側s2に位置する第2領域Z2に近接する位置で化粧シート40からの出射光量を低下させるための層である。そして、調整シート59の各領域での光吸収能は、一様ではなく、変化する。例えば、調整シート59の或る領域での光吸収能を、当該領域よりも第1方向d1における第1側s1に位置して発光体52に近接する他の或る領域での調整シート59の光吸収能よりも強くすることで、第1方向d1における第2側s2に位置して第2領域Z2に近接する領域からの出射光量を低下させることができる。さらに、任意に選択される領域での調整シート59の光吸収能を、当該領域よりも第1方向d1における第1側s1に位置する他の領域での調整シート59の光吸収能以上とすることで、第1方向d1における第2側s2に位置する第2領域Z2に近接するにしたがい出射光量を低下させることが可能となる。なお、可視光吸収能は、顔料の含有密度、光吸収部59bの配置密度、光吸収部59bの厚さ等により調節することができる。この調整シート59は、上述してきた面光源装置50の他の例に対しても適用可能である。
図19及び図20に関連した変形例として、図21及び図22に示された変形例での照明装置20は、化粧シート40及び面光源装置50に加えて、面光源装置50を保持する支持フレーム34を有している。支持フレーム34は、面光源装置50を補強するとともに、壁W等の外部に面光源装置50を設置することを容易にする。化粧シート40は、面光源装置50に直接接合されていてもよいし、支持フレーム34に接合されて面光源装置50に対面するようにしてもよい。図21に示された例において、化粧シート40は、発光面EPを形成するようになるその第1領域Z1において、面光源装置50の支持フレーム34によって覆われていない領域に対面する。また、化粧シート40は、その第2領域Z2において、面光源装置50を覆う支持フレーム34に対面している。図22に示された例において、化粧シート40の第2領域Z2は、支持フレーム34を介して面光源装置50の側面に対面する領域にまで広がっている。さらに、図21及び図22に示された例において、照明装置20は、面光源装置50とともに支持フレーム34に支持された支持板35を有している。支持板35は、照明装置20に剛性を付与するための部材であり、例えばアルミニウム等の金属製の板材とすることができる。支持板35は、図21及び図22に示された例だけでなく他の例にも適用可能であるが、図21及び図22の例から省略することも可能である。
さらに、他の変形例として、上述してきた照明装置20は、ベース照明装置13と組み合わせることなく単独で用いることもできる。この例においても、照明装置20は、空間Sの雰囲気を演出することができ、さらに、空間Sを照明する機能を付与されてもよい。
さらに、上述してきた照明装置20は、建材パネルBPとして、壁Wを構成するものとして説明してきたが、これに限られず、天井CEを構成するようにしてもよいし、或いは、床Fを構成するようにしてもよい。
化粧シート40及び面光源装置50を含む照明装置20は、組立キットとして取り扱われても良い。すなわち、面光源装置50の光学部材55の少なくとも一部および化粧シート40の組み合わせが、組立キットとして流通または販売され、建物や移動体に設置されるようにしてもよい。この例において、組立キットを構成する化粧シート40や面光源装置50を順に建物や移動体に設置して構造体を作製するようにしてもよいし、或いは、まず、組立キットを構成する化粧シート40や面光源装置50を用いて照明装置20や建材パネルBPを組み立て、次に組み立てられた照明装置20や建材パネルBPを建物や移動体に設置して構造体を作製するようにしてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。