以下、図面を参照して本実施形態による照明システムおよび照明方法について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
さらに、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、本実施形態およびその変形例で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することがある。
(照明システム1)
図1~図23は、本実施形態の複数の例を示す図である。このうち、図1は、本実施形態による照明システム1を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態による照明システム1を示す平面図である。本実施形態による照明システム1は、空間に光を射出することで空間の利用者に望ましい心理状態を生じさせるように空間の雰囲気を演出するために用いることができる。
具体的には、本実施形態による照明システム1は、構造体の一例である第1~第4の壁W1~W4、天井CEおよび床Fで区画された部屋内の空間Sを照明および演出するために用いることができる。なお、図2に例示される部屋は、隣り合う4つの壁W1~W4で仕切られた矩形の部屋である。また、部屋の中央にはテーブルTが設置されている。また、第4の壁W4には、出入口Dが設けられている。照明システム1は、矩形以外の部屋の演出にも有効に適用することができる。
照明システム1は、空間Sに照明光を照射するベース照明装置3と、照明装置の一例である第1~第4の面光源装置21~24と、制御部の一例である制御装置4とを備える。図3は、本実施形態による照明システム1に含まれる面光源装置21~24の一例を示す断面図である。図3に示すように、面光源装置21~24は、ボード5、化粧シート6、補助建材7および留具9とともに、照明システム1に含まれる建材パネル20を構成する。図1に示すように、面光源装置21~24は、空間Sの利用者に直接視認されないように化粧シート6によって空間Sから隠蔽されている。ただし、化粧シート6は本開示に必須の構成ではなく、必要に応じて除去することができる。
(面光源装置21~24)
以下、面光源装置21~24について詳しく説明する。第1の面光源装置21は、第1の壁W1に設けられ、空間Sに光を射出する。図1に示すように、第1の面光源装置21は、床Fから鉛直方向d1の上方d11に向かって延在する第1の壁W1のうち、上端側の位置に設けられている。第1の面光源装置21の位置は、例えば、第1の壁W1に対向する第2の壁W2を背にして図2に示されるテーブルTの着席位置P1に着席した利用者が、水平方向よりも下方に視線を向けたときに視界に入らず、水平方向よりも上方に視線を向けたときに視界に入る位置である。
第2の面光源装置22は、第2の壁W2に設けられ、空間Sに光を射出する。図1に示すように、第2の面光源装置22は、床Fから鉛直方向d1の上方d11に向かって延在する第2の壁W2のうち、上端側の位置に設けられている。第2の面光源装置22の位置は、例えば、第1の壁W1を背にして図2に示されるテーブルTの着席位置P2に着席した利用者が、水平方向よりも下方に視線を向けたときに視界に入らず、水平方向よりも上方に視線を向けたときに視界に入る位置である。
第3の面光源装置23は、第3の壁W3に設けられ、空間Sに光を射出する。図1に示すように、第3の面光源装置23は、床Fから鉛直方向d1の上方d11に向かって延在する第3の壁W3のうち、上端側の位置に設けられている。第3の面光源装置23の位置は、例えば、着席位置P1、P2に着席した利用者が、それぞれの正面方向に視線を向けたときに視界に入らず、第3の壁W3が位置する前方に水平方向よりも上向きで視線を向けたときに視界に入る位置である。
第4の面光源装置24は、第4の壁W4に設けられ、空間Sに光を射出する。第4の面光源装置24は、床Fから鉛直方向d1の上方d11に向かって延在する第4の壁W4のうち、上端側の位置に設けられている。第4の面光源装置24の位置は、例えば、着席位置P1、P2に着席した利用者が、それぞれの正面方向に視線を向けたときに視界に入らず、第4の壁W4が位置する後方に水平方向よりも上向きで視線を向けたときに視界に入る位置である。
このような位置に配置されていることで、面光源装置21~24は、利用者が会議のために正面に視線を向けているときや資料やPCを見るために手元に視線を向けているときなどの集中時においては、集中を妨げないように面光源装置21~24の隠遁性を確保しながら空間を効果的に演出することができ、利用者が視線を上に向けた非集中時においては、面光源装置21~24の演出効果を更に高めることができる。
ただし、面光源装置21~24の配置位置は、図1に示される例に限定されない。例えば、面光源装置21~24は、壁W1~W4の下端側の位置に設けられていてもよく、または、壁W1~W2の鉛直方向d1における中央側の位置に設けられていてもよい。
図3に示すように、面光源装置21~24は、発光面210aを有し、光源の一例である発光体220から射出した光を面状光に変換する光学部材210を備える。発光面210aの或る位置からの出射光量は、当該位置よりも発光面210aに沿った鉛直方向d1における上方d11に位置する発光面210aの他の或る位置からの出射光量よりも少なくてもよい。このようにすることで、空間Sの雰囲気を効果的に高めることが可能となる。とりわけ、発光面210aの鉛直方向d1における下方d12の縁部での発光量を低減することで、発光面210aと発光面210aの外側の領域との間における光の継ぎ目を目立たなくすることができる。これにより、空間Sの雰囲気をより効果的に高めることが可能となる。
面光源装置21~24の更に具体的な構成について説明すると、面光源装置21~24は、建材パネル20の最前面となる化粧面を形成する化粧シート6を有している。化粧シート6は、光学部材210の発光面210aに対面する発光領域Z1と、発光領域Z1に隣接する非発光領域Z2と、を含んでいる。このように、空間Sの明るさ向上を主目的としたベース照明装置3とは別途に、面光源装置21~24によって化粧シート6を透過照明することで、有限な空間Sに対して広がりを付与することができる。とりわけ、化粧シート6の発光領域Z1を限られた範囲とし、さらに、光学部材210の発光面210aを化粧シート6で隠蔽することで、化粧シート6上の光の継ぎ目すなわち発光領域Z1と非発光領域Z2との継ぎ目は、発光面210aが剥き出しの場合の発光面210aとその外側領域との継ぎ目よりも更に目立たなくなる。この工夫により、光源の存在感を効果的に薄めた状態にて、空間Sを演出することができ、これにより、空間Sの雰囲気を更に効果的に高めることができる。
面光源装置21~24は、主たる構成要素として、上述したように、化粧シート6及び光学部材210を有している。図示された具体例において、面光源装置21~24は、全体として板状に形成され、その一部またはその全部により建材パネル20を構成する。図3に示すように、建材パネル20は、壁W1~W4に重ねられた状態で部屋の内壁材として機能してもよい。このような例において、建材パネル20の構成要素の全部または一部が、建材パネル20を作製するための組立キットとして取り扱われ、流通や販売されるようにしてもよい。或いは、建材パネル20が単独で、部屋の内壁をなすようにしてもよい。
図3に示された一具体例において、建材パネル20は、化粧シート6及び光学部材210に加え、補助建材7、留具9及びボード5を有している。
図1および図3に示すように、化粧シート6は、空間Sに露出している。そして、化粧シート6は、面光源装置21~24の最出光側の面を形成する。化粧シート6として、建築物の壁紙、床及び天井等の内装材、車両等の移動体の内装材、家具や電気機器等の最表面を形成する部材等を用いることができる。
上述のように、化粧シート6は、光学部材210の発光面210aに対面する発光領域Z1と、発光面210aに対面する位置からずれた非発光領域Z2と、を含んでいる。非発光領域Z2は、発光領域Z1に隣接している。化粧シート6は、発光領域Z1において、光学部材210により背面側から光を照射される。化粧シート6は、少なくとも発光領域Z1において、可視光透過性を有している。このため、光学部材210の発光面210aから射出した光の少なくとも一部が、化粧シート6の発光領域Z1を透過することができる。このように化粧シート6は透過照明されることから、透過率の比較的高い白色系の壁紙が化粧シート6として好適に用いられる。ただし、透過率の比較的低い壁紙、例えば木目調の壁紙でも十分有効に透過照明されて後述する作用効果を奏することができ、化粧シート6の柄等は特に限定されるものではない。化粧シート6の発光領域Z1における可視光線透過率は、1.0%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。可視光線透過率は、赤外可視紫外分光光度計((株)島津製作所社製 UV3100PC)を使用し、JIS A5759-2008に従い380nm以上780nm以下の波長域における分光透過率測定し、同規格に規定される算出式により算出したものである。
図3に示すように、発光領域Z1及び非発光領域Z2は、鉛直方向d1に配列されている。発光領域Z1は、鉛直方向d1における上方d11側に位置し、非発光領域Z2は、鉛直方向d1における下方D12側に位置している。
なお、面光源装置21~24による空間の雰囲気を高める効果を期待する観点から、化粧シート6の発光領域Z1及び非発光領域Z2の境界を目立たなくさせることが好ましい。この点から、化粧シート6は、発光領域Z1及び非発光領域Z2において、同一の構成を有していることが好ましい。
図3に示すように、ボード5は、板状の部材である。ボード5は、少なくとも化粧シート6の非発光領域Z2に対面して配置される。化粧シート6は、ボード5に貼合されていてもよい。この場合、ボード5によって、化粧シート6を安定して支持することができる。
図3に示された例において、ボード5は、非発光領域Z2及び発光領域Z1の両方に対面して配置されている。このボード5は、発光領域Z1に対面する位置に凹部51を設けられている。ボード5の凹部51内に、光学部材210が収容されている。図3の例によれば、ボード5によって、光学部材210を安定して支持することができる。留具9は、ボード5に設けられており、ボード5上に光学部材210を固定する。また、留具9に加えて又は留具9に代えて、接着剤や粘着剤などを含む接合層によって、ボード5と光学部材210とを固定するようにしてもよい。
光学部材210の発光面210aは、化粧シート6の非発光領域Z2に対面するボード5の表面5aと、同一面上に位置していることが好ましい。このように位置決めされたボード5及び光学部材210上に、化粧シート6が積層される。この場合、ボード5の表面5aと光学部材210の発光面210aとの間に段差が形成されにくくなり、化粧シート6越しにこの段差が視認されることに起因した化粧シート6の意匠性低下を効果的に抑制することができる。さらには、面光源装置21~24の発光時に光学部材210の存在を効果的に目立たなくさせることができ、面光源装置21~24による空間Sの雰囲気を高める効果がより顕著に奏されるようになる。
ボード5は、化粧シート6の用途に応じて決定される。化粧シート6が、壁、床、天井等の表面を加飾する部材をなす場合、一例として、ボード5は、種樹木の木材からなる単板、合板、集成材、パーチクル板、纖維板等の木製板材、コンクリート、モルタル等のセメント系材料、石膏ボード、珪酸カルシウム等からなる無機非金屬板、或いは鉄、アルミニウム等からなる金屬板となる。化粧シート6が、車両等の移動体の内装材をなす場合、ボード5は、例えば樹脂製板材、或いは金屬板となる。化粧シート6が、家具や電気製品をなす場合、ボード5は、例えば木製板材や樹脂製板材となる。なお、面光源装置21~24の建材パネル3への適用において、ボード5は、耐燃性や耐火性を有していることが好ましい。
なお、図3では、留具9の図示にともなって、化粧シート6が、ボード5及び光学部材210との間に隙間を空けて図示されている。しかしながら、隙間をあけることなくボード5及び光学部材210に貼合されるようにしてもよい。
補助建材7は、天井CEと壁W1~W4との取り合い部に設ける部材である。補助建材7は、天井CEと壁W1~W4とのつなぎ目を覆い、建材パネル20の意匠性を向上させる。補助建材7として、「回り縁」や「幅木」と呼ばれる部材を用いることができる。ただし、補助建材7を省略することも可能である。
図3に示すように、光学部材210は、面状光を射出する発光面210aを有している。光学部材210は、その発光面210aが化粧シート6の一部分のみに対面するように、位置決めされている。
ここで、面光源装置21~24の具体例について説明する。図4は、本実施形態による照明システム1に含まれる面光源装置21~24の一例を示す拡大断面図である。図4に示された面光源装置21~24は、エッジライト型の面光源装置21~24として構成されている。この面光源装置21~24は、発光体220と、光学部材210とを有している。光学部材210は、光拡散シート212と、反射シート213と、導光板211と、を有している。なお、面光源装置21~24は、例えば、直下型LEDを用いた面光源装置、EL(Electro Luminescence)シートを用いた面光源装置等を用いてもよいし、上記のいずれかとエッジライト方式の面光源装置との組合せにより構成されてもよい。
発光体220は、光を発光する。発光体220の具体的な態様は特に限定されることなく、光を発光する種々の部材を広く用いることができる。具体的には、例えば、冷陰極管、点状のフルカラー発光ダイオード(LED)、白熱電球、レーザー発振装置等を、発光体220として用いることができる。図3示された例において、発光体220は、補助建材7によって保持されている。発光体220は、補助建材7の長手方向である図2に示される水平方向d2に沿って、間隔をあけて複数配列されている。補助建材7が取り外し可能な場合、補助建材7とともに複数の発光体220を壁W1~W4から取り外し、複数の発光体220の一部又は全部の交換作業を行うことができる。
なお、照明システム1から射出した照明光の色が、人間の心理状態に影響を及ぼすことが知られている。例えば、若草色の照明光や赤紫色の照明光を用いて空間Sを照明した場合、空間Sの利用者Hに活気を生じさせるとされている。同様に、藤色の照明光やあやめ色の照明光を用いた場合、利用者から眠気を取り除く効果があるとされている。また、肌色の照明光を用いた場合、利用者に集中を引き起こす効果があるとされている。さらに、檸檬色の照明光や肌色の照明光を用いた場合、利用者に快適さを付与して利用者をリラックス状態とする効果があるとされている。照明システム1は、このような照明光によって利用者の心理状態に積極的に働きかけ、利用者の心理状態に効果的に影響を及ぼすことを目的としている。
図示された例では、面光源装置21~24の各発光体220から射出する光が照明光となる。したがって、所望の心理状態を利用者に生じさせため、各発光体220は、所望する心理状態に対応した波長域の光を射出できるよう、光の色が選択可能となっている。一例として、各発光体220は、互いに異なる波長域の光を発光可能な複数種類の発光体220である。この場合、各発光体220の出力を調整することで、加法混色により、種々の色の照明光で照明を行うことが可能となる。典型的には、赤色の光を射出可能な発光体と、緑色の光を射出可能な発光体と、青色の光を射出可能な発光体と、を含むことで、面光源装置21~24での照明光の色を、色度図上の全範囲の色から選択可能とすることが可能となる。
導光板211は、一対の主面211a,211bと、一対の主面211a,211b間に位置する側面と、を有した板状の部材である。一方の主面が出光面211aをなし、他方の主面が裏面211bをなしている。主面211a,211bは、典型的には、平面視矩形形状となる。主面211a,211bは、鉛直方向d1の沿って延びる一対の側縁と、鉛直方向d1に直交する水平方向d2に沿って延びる一対の側縁と、を有している。
図4に示すように、導光板211は、鉛直方向d1における上端側に位置する入光面211dを有している。入光面211dは、補助建材7に沿うようにして水平方向d2に延びている。そして、入光面211dは、補助建材7に保持された発光体220に対面している。複数の発光体220は、入光面211dの長手方向である水平方向d2に沿って、間隔をあけて配列されている。
図4に示すように、発光体220から射出した光は、導光板211に入射して導光板211内を進む。導光板211の主面211bには、取出要素として機能する凹部211cが設けられている。凹部211cは、導光板211内を進む光L1,L2の進行方向を変化させる。発光体220から射出した光は、導光板211に入光面211dから入射し、反射とりわけ全反射することで当該導光板211内を進む。導光板211内を進む光L1,L2は、凹部211cによって進行方向を変化させること、とりわけ散乱することで、導光板211の一対の主面211a,211bに全反射臨界角度未満の入射角度で入射して導光板211から出射することが可能となる。
凹部211cで進行方向を変えられた光は、一対の主面211a,211bのいずれかを介して、導光板211から出射する。導光板211の出光面211aに対面して、光拡散シート212が設けられている。導光板211の出光面211aから出射した光L1,L2は、次に、この光拡散シート212に入射する。光拡散シート212は、光拡散機能を有しており、透過光に起因した輝度角度分布を整えることができる。光拡散シート212は、光学部材210の発光面210aを形成している。光拡散シート212で拡散された光は、光学部材210から射出して化粧シート6に向かう。光拡散シート212には、光拡散機能を発揮し得る種々の構成を採用することができる。光拡散シート212が有する拡散特性は、等方性であってもよいし、異方性であってもよい。
導光板211の裏面211bに対面して、反射シート213が設けられている。反射シート213は、裏面211bから出射する光を反射して、導光板211及び光拡散シート212へ向けることができる。反射シート213を設けることで、光学部材210の発光面210aからの出射光量を増大させることができる。これにより、発光体220から射出した光の利用効率を向上させることができる。反射シート213には、光反射機能を発揮し得る種々の構成を採用することができる。反射シート213の反射特性は、正反射であってもよいし、拡散反射であってもよい。反射シート213が有する拡散反射特性は、等方性であってもよいし、異方性であってもよい。
(ベース照明装置3)
次に、ベース照明装置3について説明する。図1および図3に示すように、ベース照明装置3は、天井CEに取り付けられ、照明光Lxを空間Sに上方から放出する。ベース照明装置3は、天井CEに固定されていてもよいし、天井CEから吊り下げられていてもよい。ベース照明装置3は、人の視覚を通した空間S内の把握を補助するものである。したがって、ベース照明装置3として、一般的な、室内照明用の器具を用いることができる。ベース照明装置3から射出する照明光Lxは、特に限定されないが、白色系とすることで自然な照明を可能とすることができる。
(制御装置4)
次に、制御装置4について説明する。図5は、本実施形態による照明システム1を示すブロック図である。制御装置4は、面光源装置21~24による光の射出を制御する装置である。
図3および図5の例において、制御装置4は、面光源装置21~24の発光体220に電気的に接続されている。制御装置4は、図示しない電源から発光体220に供給される電力を制御することで、発光体220の発光動作を制御する。発光体220の発光動作を制御することで、制御装置4は、面光源装置21~24による光の射出を制御する。具体的には、制御装置4は、面光源装置21から空間Sに射出される光の色および射出時間の少なくとも一方を制御する。
より具体的には、制御装置4は、空間の利用者に目標とする心理状態を生じさせるための第1の色の光と、空間の利用者に目標とする目標心理状態を生じさせるための第2の色の光と、を選択的に射出するように面光源装置21~24を制御する。以下、目標とする心理状態のことを、目標心理状態とも呼ぶ。
第1の色の光および第2の色の光は、目標心理状態に対応付けて予め制御装置4に設定されている。例えば、目標心理状態が「活気」の場合、第1の色の光は、若草色の光であってもよく、第2の色の光は、赤紫色の光であってもよい。また、目標心理状態が「眠気改善」の場合、第1の色の光は、藤色の光であってもよく、第2の色の光は、あやめ色の光であってもよい。
第2の色の光は、1色の光に限らず、異なる2色以上の光であってもよい。すなわち、制御装置4は、目標心理状態を生じさせるための3色以上の光を選択的に射出させる制御を行ってもよい。
制御装置4は、第1の色の光によって目標心理状態が持続する第1の持続時間以下の射出時間で第1の色の光を射出し、第2の色の光によって目標心理状態が持続する第2の持続時間以下の射出時間で第2の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する。
第1の持続時間は、目標心理状態および第1の色の光に対応付けて予め設定されている既知の時間である。第1の持続時間は、第1の色の光に対する目視者の色順応に要する時間であってもよい。第2の持続時間は、目標心理状態および第2の色の光に対応付けて予め設定されている既知の時間である。第2の持続時間は、第2の色の光に対する目視者の色順応に要する時間であってもよい。
制御装置4は、面光源装置21~24による光の射出を制御できるものであれば、その具体的な態様は特に限定されない。一例として、図5に示される制御装置4は、記憶部41と、計算部42と、射出制御部43とを有する。記憶部41には、制御装置4が面光源装置21~24による光の射出を制御するために用いる情報が記憶されている。例えば、記憶部41には、目標心理状態と、目標心理状態に対応する第1の色および第1の持続時間と、目標心理状態に対応する第2の色および第2の持続時間とが記憶されていてもよい。計算部42は、記憶部41に記憶されている情報に基づいて、面光源装置21~24による光の射出を制御するためのプログラムを作成する。なお、計算部42は、デフォルトのプログラムの一部を更新することでプログラムを作成してもよい。射出制御部43は、計算部41で作成されたプログラムを実行することで、面光源装置21~24による光の射出を制御する。
制御装置4は、例えば、電源から発光体220に電力を供給する電気回路に組み込まれ、電気回路の回路素子の動作を制御する制御回路や、制御回路の処理に用いるデータが記憶された記憶装置などのハードウェアで構成される。制御装置4の少なくとも一部をソフトウェアで構成してもよい。
制御装置4は、その全てが建材パネル20の外部に設けられていてもよく、あるいは、その少なくとも一部が建材パネル20の内部に設けられていてもよい。また、制御装置4は、その一部の構成部が、他の構成部との間でネットワークを通じた通信によって連携可能であってもよい。また、制御装置4は、その一部の構成部が、他の構成部との間で外部ネットワークを通じて通信可能な装置、例えばクラウド上のサーバやデータベース上にあってもよい。
(照明方法)
以下、照明システム1を適用した照明方法の一例について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態による照明システム1の動作例を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
先ず、図6に示すように、制御装置4は、第1の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS1)。
面光源装置21~24の制御によって第1の色の光の射出が開始された後、制御装置4は、第1の色の光の射出時間が射出の開始から第1の持続時間に達したか否かを判定する(ステップS2)。この判定は、例えば、制御装置4のタイマ機能を用いて行ってもよいが、これに限定されない。
第1の色の光の射出時間が第1の持続時間に達した場合(ステップS2:Yes)、制御装置4は、第1の色の光の射出を終了させたうえで、第2の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS3)。
一方、第1の色の光の射出時間が第1の持続時間に達していない場合(ステップS2:No)、制御装置4は、第1の色の光の射出を継続させつつ第1の色の光の射出時間が第1の持続時間に達したか否かの判定を繰り返す(ステップS2)。
面光源装置21~24の制御によって第2の色の光の射出が開始された後、制御装置4は、第2の色の光の射出時間が射出の開始から第2の持続時間に達したか否かを判定する(ステップS4)。
第2の色の光の射出時間が第2の持続時間に達した場合(ステップS4:Yes)、制御装置4は、処理を終了する。
一方、第2の色の光の射出時間が第2の持続時間に達していない場合(ステップS4:No)、制御装置4は、第2の色の光の射出を継続させつつ第2の色の光の射出時間が第2の持続時間に達したか否かの判定を繰り返す(ステップS4)。
以上説明したように、本実施形態において、制御装置4は、第1の色の光によって目標心理状態が持続する第1の持続時間以下の射出時間で第1の色の光を射出し、第2の色の光によって目標心理状態が持続する第2の持続時間以下の射出時間で第2の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する。これにより、空間の利用者に目標心理状態を生じさせるために空間に照射した光に対して利用者の色順応が起きる前に、目標心理状態を生じさせる別の色の光の出射に切り替えることができる。この結果、空間に射出した光によって空間の利用者に生じた心理状態を十分に持続させることができる。
(第1の変形例)
次に、設定時間に対して持続時間以下の射出時間を割り当てる第1の変形例について説明する。なお、第1の変形例の照明システム1の基本構成は、図1~図5と同様であるので、第1の変形例は、図1~図5の符号を用いて説明する。
第1の変形例において、制御装置4は、予め設定された設定時間において、第1の持続時間以下の射出時間で第1の色の光を射出し、第2の持続時間以下の射出時間で第2の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する。
設定時間は、利用者が空間Sを利用する時間の一部または全部であって、利用者に目標心理状態を生じさせることを意図して設定された時間である。設定時間は、例えば、制御装置4の記憶部41に記憶されている。
例えば、第1の持続時間が第2の持続時間未満である場合、制御装置4は、設定時間が第1の持続時間未満である場合に、設定時間において第1の色の光のみを第1の持続時間未満の射出時間で射出するように面光源装置21~24を制御してもよい。または、制御装置4は、設定時間において第2の色の光のみを第2の持続時間未満の射出時間で射出するように面光源装置21~24を制御してもよい。これにより、第1の持続時間未満の設定時間において、光の色の切り替えを要することなく目標心理状態を持続させることができる。
また、制御装置4は、設定時間が第1の持続時間以上であって第1の持続時間と第2の持続時間との合計時間未満である場合には、設定時間において、第1の色の光を第1の持続時間で射出し、第2の色の光を第2の持続時間未満の射出時間で射出するように面光源装置21~24を制御してもよい。または、制御装置4は、設定時間において、第1の色の光を第1の持続時間未満の射出時間で射出し、第2の色の光を第2の持続時間で射出するように面光源装置21~24を制御してもよい。これにより、第1の持続時間と第2の持続時間との合計時間未満の設定時間において、第1の色の光と第2の色の光とを最小限の切替回数で切り替えることで、目標心理状態を持続させることができる。
また、制御装置4は、設定時間が第1の持続時間と第2の持続時間との合計時間以上である場合には、設定時間内に割り当てることが可能な合計時間の個数を算出してもよい。そして、制御装置4は、算出された合計時間の個数に応じた射出回数および射出時間で第1の色の光および第2の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御してもよい。これにより、第1の持続時間と第2の持続時間との合計時間以上の設定時間において、第1の色の光と第2の色の光との切替回数が最小限となるように光の色、射出回数および射出時間を割り当てることができる。
以下、このように構成された本実施形態の第1の変形例の照明システム1の動作例について、図7~図9を参照して説明する。図7は、本実施形態の第1の変形例による照明システム1の動作例を示すフローチャートである。図8は、本実施形態の第1の変形例による照明システム1の動作例の一部を詳細に示すフローチャートである。図9は、本実施形態の第1の変形例による照明システム1の動作例を示す模式図である。図7のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
先ず、図7に示すように、制御装置4は、設定時間Tにおいて射出する光の色、射出時間および射出回数を設定する(ステップS5)。
具体的には、図8に示すように、先ず、制御装置4は、設定時間Tが第1の持続時間t1未満であるか否かを判定する(ステップS51)。
設定時間Tが第1の持続時間t1未満である場合(ステップS51:Yes)、制御装置4は、第1の色の光を第1の持続時間t1未満の射出時間で1回射出することを設定する(ステップS52)。
一方、設定時間Tが第1の持続時間t1未満でない場合(ステップS51:No)、制御装置4は、設定時間Tが第1の持続時間t1と第2の持続時間t2との合計時間t1+t2未満であるか否かを判定する(ステップS53)。
設定時間Tが合計時間t1+t2未満である場合(ステップS53:Yes)、制御装置4は、第1の色の光を第1の持続時間t1で1回射出することを設定するとともに、第2の色の光を第2の持続時間t2未満の射出時間で1回射出することを設定する(ステップS54)。
一方、設定時間Tが合計時間t1+t2未満でない場合(ステップS53:No)、制御装置4は、合計時間t1+t2を設定時間Tの中に何個割り当てることができるかを算出する(ステップS55)。なお、設定時間Tの中に割り当てることができる合計時間t1+t2の個数の算出は、ステップS5の最初に実行してもよい。その場合には、算出された合計時間t1+t2の個数がゼロである場合に、ステップS51を実行すればよい。
設定時間Tの中に割り当てることができる合計時間t1+t2の個数を算出した後、制御装置4は、算出された個数に応じた射出時間および射出回数を設定する(ステップS56)。例えば、設定時間Tの中に合計時間t1+t2を2個割り当てることができる場合、制御装置4は、図9に示すように、第1の色の光を第1の持続時間t1で2回射出し、第2の色の光を第2の持続時間t2で2回射出し、第1の色の光の射出と第2の色の光の射出とを3回切り替えることを設定する。
以上のようにして設定時間Tにおいて射出する光の色、射出時間および射出回数を設定した後、図7に示すように、制御装置4は、ステップS5で設定された設定情報に基づいて、第1の色の光を射出するか否かを判定する(ステップS6)。
第1の色の光を射出する場合(ステップS6:Yes)、制御装置4は、第1の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS1)。
面光源装置21~24の制御によって第1の色の光の射出が開始された後、制御装置4は、第1の色の光の射出時間が第1の持続時間t1以下の設定された射出時間に達したか否かを判定する(ステップS21)。
第1の色の光の射出時間が設定された射出時間に達した場合(ステップS21:Yes)、または、第1の色の光を射出しない場合(ステップS6:No)、制御装置4は、設定情報に基づいて、第2の色の光を射出するか否かを判定する(ステップS7)。
一方、第1の色の光の射出時間が設定された射出時間に達していない場合(ステップS21:No)、制御装置4は、第1の色の光の射出を継続させつつ第1の色の光の射出時間が設定された射出時間に達したか否かの判定を繰り返す(ステップS21)。
第2の色の光を射出する場合(ステップS7:Yes)、制御装置4は、第1の色の光の射出を終了させたうえで、第2の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS3)。
面光源装置21~24の制御によって第2の色の光の射出が開始された後、制御装置4は、第2の色の光の射出時間が第2の持続時間t2以下の設定された射出時間に達したか否かを判定する(ステップS41)。
第2の色の光の射出時間が設定された射出時間に達した場合(ステップS41:Yes)、または、第2の色の光を射出しない場合(ステップS7:No)、制御装置4は、設定時間Tに達したか否かを判定する(ステップS8)。
設定時間Tに達した場合(ステップS8:Yes)、制御装置4は、光の射出制御を終了する。
一方、設定時間Tに達していない場合(ステップS8:No)、制御装置4は、第1の色の光を出射するか否かの判定に移行する(ステップS6)。このとき、第1の色の光の射出回数の設定が2回以上である場合には、ステップS6の判定結果は肯定的:Yesとなる。
以上説明したように、第1の変形例において、制御装置4は、予め設定された設定時間において、第1の持続時間以下の射出時間で第1の色の光を射出し、第2の持続時間以下の射出時間で第2の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する。これにより、必要とされる時間において、空間に射出した光によって空間の利用者に生じた心理状態を十分に持続させることができる。
(第2の変形例)
次に、第1の色の光の射出と第2の色の光の射出との間に切り替え時間を設ける第2の変形例について説明する。なお、第2の変形例の照明システム1の基本構成は、図1~図5と同様であるので、第2の変形例は、図1~図5の符号を用いて説明する。
第2の変形例において、制御装置4は、予め設定された切り替え時間をかけて第1の色の光の射出および第2の色の光の射出の一方から他方に切り替えるように面光源装置21~24を制御する。
以下、このように構成された本実施形態の第2の変形例の照明システム1の動作例について、図10および図11を参照して説明する。図10は、本実施形態の第2の変形例による照明システム1の動作例を示すフローチャートである。図11は、本実施形態の第2の変形例による照明システム1の動作例を示す模式図である。図10のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
図10のフローチャートは、図7のフローチャートに対して、ステップS9、ステップS10およびステップS11が追加されている。
具体的には、制御装置4は、第1の色の光を射出する場合(ステップS6:Yes)、第1の色の光の射出が設定時間において2回目以降であるか否かを判定する(ステップS9)。
第1の色の光の射出が2回目以降である場合(ステップS9:Yes)、制御装置4は、第1の色の光の射出を切り替え時間ts待機し(ステップS10)、待機の後に、第1の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS1)。
一方、第1の色の光の射出が2回目以降でない場合(ステップS9:No)、制御装置4は、第1の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS1)。
また、制御装置4は、第2の色の光を射出する場合(ステップS7:Yes)、第2の色の光の射出を切り替え時間ts待機し(ステップS11)、待機の後に、第2の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS3)。
図11に示すように、制御装置4は、設定情報の設定時(ステップS5)に、第1の色の光の射出時間および第2の色の光の射出時間とともに、切り替え時間tsを設定してもよい。この場合、制御装置4は、設定時間T中に割り当てることができる第1の持続時間t1と切り替え時間tsと第2の持続時間t2との合計時間t1+ts+t2の個数を算出し、算出された個数に応じて、射出時間および射出回数を設定してもよい。
以上説明したように、第2の変形例において、制御装置4は、予め設定された切り替え時間をかけて第1の色の光の射出および第2の色の光の射出の一方から他方に切り替えるように面光源装置21~24を制御する。これにより、光の色が急激に切り替わることによって利用者に与える違和感を抑制することができる。
(第3の変形例)
次に、切り替え時間tsにおいて第1の色および第2の色の双方に近い色の光を射出する第3の変形例について説明する。なお、第3の変形例の照明システム1の基本構成は、図1~図5と同様であるので、第3の変形例は、図1~図5の符号を用いて説明する。
第3の変形例において、制御装置4は、切り替え時間tsに、色度図において第1の色と第2の色とを結ぶ直線上に位置する第3の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する。
以下、このように構成された本実施形態の第3の変形例による照明システム1の動作例について、図12および図13を参照して説明する。図12は、本実施形態の第3の変形例による照明システム1の動作例を示すフローチャートである。図13は、本実施形態の第3の変形例による照明システムの動作例を示す模式図である。
図12に示すように、制御装置4は、第1の色の光の出射を切り替え時間ts待機する(ステップS10)にあたって、先ず、図13に示すように、色度図において第1の色と第2の色とを結ぶ直線上に位置する第3の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS101)。
第3の色は、色度図において第1の色と第2の色とを結ぶ直線上に位置する固定色であってもよい。または、第3の色は、切り替え時間tsの経過にしたがって第1の色と第2の色とを結ぶ直線上を第1および第2の色のうちの切替元の色から切替先の色に向かって徐々に変動する可変色であってもよい。
制御装置4の制御によって第3の色の光の射出が開始された後、制御装置4は、待機の開始から切り替え時間tsが経過したか否かを判定する(ステップS102)。
切り替え時間tsが経過した場合(ステップS102:Yes)、制御装置4は、第3の色の光の射出を終了させたうえで、第1の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS1)。
一方、切り替え時間tsが経過していない場合(ステップS102:No)、制御装置4は、第3の色の光の射出を継続しつつ、切り替え時間tsに達したか否の判定を繰り返す(ステップS102)。
以上説明したように、第3の変形例において、制御装置4は、切り替え時間tsに、色度図において第1の色と第2の色とを結ぶ直線上に位置する第3の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する。これにより、第2の変形例と比較して、第1の色の光と第2の色の光とを切り替えるときの違和感を更に効果的に抑制することができる。
(第4の変形例)
次に、目標心理状態の変更を指示可能な第4の変形例について説明する。図14は、本実施形態の第4の変形例による照明システム1を示すブロック図である。
図14に示すように、本実施形態の第4の変形例による照明システム1は、図1の構成に加えて、更に、入力部の一例である入力装置8を有する。
入力装置8は、ユーザ操作に応じて、目標心理状態の変更の指示を制御装置4に入力する。
制御装置4は、入力装置8からの目標心理状態の変更の指示に応じて、目標心理状態と、利用者に目標心理状態を生じさせるための光の色とを変更する。制御装置4は、更に、射出時間および射出回数を変更してもよい。
入力装置8は、目標心理状態の変更の指示を、有線および無線のいずれの通信方式で制御装置4に入力してもよい。また、入力装置8は、目標心理状態の変更の指示を、キー操作入力および音声入力のいずれの入力方式で制御装置4に入力してもよい。また、目標心理状態の変更の指示は、現在の目標心理状態を生じさせるための光の射出を実行している期間中の任意のタイミングで入力可能であってもよい。また、入力装置8は、例えば、パソコンやスマートフォンで構成してもよい。
以下、このように構成された本実施形態の第3の変形例による照明システム1の動作例について、図15および図16を参照して説明する。図15は、本実施形態の第4の変形例による照明システム1の動作例の概要を示すフローチャートである。図16は、本実施形態の第4の変形例による照明システム1の動作例の詳細を示すフローチャートである。
先ず、制御装置4は、入力装置8によって目標心理状態の変更の指示が入力されたか否かを判定する(ステップS12)。
目標心理状態の変更の指示が入力されなかった場合(ステップS12:No)、制御装置4は、現在の目標心理状態を生じさせるための光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS13)。この制御は、例えば、図10に示されたフローチャートの実行の継続である。
一方、目標心理状態の変更の指示が入力された場合(ステップS12:Yes)、制御装置4は、変更後の目標心理状態を生じさせるための光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS14)。
ここで、図16のフローチャートは、変更後の目標心理状態を生じさせるための光の射出制御(ステップS14)の一例を示している。
図16のフローチャートは、基本的に図10のフローチャートと同様であり、目標心理状態の変更にともなって、複数の工程(S51、S61、S11、S22、S71、S31、S42)において、変更前の目標心理状態に変えて変更後の目標心理状態に応じた処理を行う点が図10と異なる。
すなわち、ステップS51は、図10のステップS5に対応し、目標心理状態の変更にともなって、変更後の目標心理状態に対応するように、第1および第2の色、射出時間および射出回数の設定を変更する工程である。ステップS61は、図10のステップS6に対応し、変更後の第1の色の光を射出するか否かを判定する工程である。ステップS11は、図10のステップS1に対応し、変更後の第1の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する工程である。ステップS22は、図10のステップS21に対応し、変更後の第1の色の光の射出時間が、変更後の第1の持続時間以下の設定された射出時間に達したか否かを判定する工程である。ステップS71は、図10のステップS7に対応し、変更後の第2の色の光を射出するか否かを判定する工程である。ステップS31は、図10のステップS3に対応し、変更後の第2の色の光を射出するように面光源装置21~24を制御する工程である。ステップS42は、図10のステップS41に対応し、変更後の第2の色の光の射出時間が、変更後の第2の持続時間以下の設定された射出時間に達したか否かを判定する工程である。
以上説明したように、第4の変形例において、照明システム1は、目標心理状態の変更の指示を制御装置4に入力する入力装置8を更に備え、制御装置4は、目標心理状態の変更の指示に応じて、目標心理状態と、利用者に目標心理状態を生じさせるための光の色とを変更する。これにより、ユーザの要求に適合するように目標心理状態を変更することができる。
(第5の変形例)
次に、設定時間の変更を指示可能な第5の変形例について説明する。なお、第5の変形例の照明システム1の基本構成は図14と同様であるので、第5の変形例は、図14の符号を用いて説明する。
第5の変形例において、入力装置8は、ユーザ操作に応じて、設定時間の変更の指示を制御装置4に入力する。制御装置4は、設定時間の変更の指示に応じて、設定時間と、設定時間における第1および第2の光の少なくとも一方の射出時間とを変更する。制御装置4は、第1および第2の光の少なくとも一方の射出時間の変更に代えて、または、第1および第2の光の少なくとも一方の射出時間の変更に加えて、第1および第2の光の少なくとも一方の射出回数を変更してもよい。
以下、このように構成された本実施形態の第5の変形例による照明システム1の動作例について、図17および図18を参照して説明する。図17は、本実施形態の第5の変形例による照明システム1の動作例の概要を示すフローチャートである。図18は、本実施形態の第5の変形例による照明システム1の動作例の詳細を示すフローチャートである。
先ず、制御装置4は、入力装置8によって設定時間の変更の指示が入力されたか否かを判定する(ステップS15)。
設定時間の変更の指示が入力されなかった場合(ステップS15:No)、制御装置4は、現在の設定時間において光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS16)。この制御は、例えば、図10に示されたフローチャートの実行の継続である。
一方、心理状態の設定時間の変更の指示が入力された場合(ステップS15:Yes)、制御装置4は、変更後の設定時間において光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS17)。
ここで、図18のフローチャートは、変更後の設定時間における光の射出制御(ステップS17)の一例を示している。
図18のフローチャートは、基本的に図10のフローチャートと同様であり、設定時間の変更にともなって、変更後の設定時間に対応するように光の色、射出時間および射出回数を設定する工程(ステップS52)が図10のステップS5と異なる。
以上説明したように、第5の変形例において、入力装置8は、設定時間の変更の指示を制御装置4に入力し、制御装置4は、設定時間の変更の指示に応じて、設定時間と、設定時間における第1および第2の色の光の少なくとも一方の射出時間および/または射出回数を変更する。これにより、ユーザの要求に適合するように目標心理状態の持続時間を変更することができる。
(第6の変形例)
次に、利用者による空間の利用状況に応じて心理状態の設定を変更する第6の変形例について説明する。図19は、本実施形態の第6の変形例による照明システム1を示すブロック図である。
図19に示すように、本実施形態の第6の変形例による照明システム1は、図14の構成に加えて、更に、検知部の一例であるセンサ9を有する。
センサ9は、利用者による空間の利用状況を検知する。制御装置4は、センサ9で検知された利用状況に応じて、目標心理状態と、利用者に目標心理状態を生じさせるための光の色とを変更する。更に、制御装置4は、射出時間および射出回数を変更してもよい。
空間の利用状況は、空間の利用者の外観および生体情報の少なくとも一方を含む。センサ9は、接触式のセンサおよび非接触式のセンサのいずれであってもよい。例えば、センサ9は、利用者の外観や、体温および心拍数などの利用者の生体情報を検知するカメラであってもよい。この他にも、センサ9としては、利用者の心拍数、血圧、脳波、及び脳血流などを検知するウェアラブル機器や、音声情報から空間の雰囲気や利用者の感情を検知する集音マイク、利用者の脳波から感情を検知するヘッドセット型の感性アナライザなどを好適に適用することができる。センサ9は、有線および無線のいずれの通信方式で検知情報を制御装置4に送信してもよい。また、センサ9は、検知情報を直接制御装置4に送信してもよく、または、入力装置8を介して制御装置4に送信してもよい。
制御装置4は、センサ9の検知情報が現在の目標心理状態に適合しないと判断される場合には、現在の目標心理状態から検知情報に応じた目標心理状態に変更する。例えば、制御装置4は、目標心理状態として「活気」を生じさせるための光の射出制御中に取得されたセンサ9の検知情報が、例えば閾値以上の心拍数の上昇量を示しているために利用者が疲労していると判断される場合には、目標心理状態を「疲れ改善」に変更してもよい。この場合、制御装置4は、第1の色の光として藤色の光を射出し、第2の色の光としてあやめ色の光を射出してもよい。
以下、このように構成された本実施形態の第6の変形例による照明システム1の動作例について、図20を参照して説明する。図20は、本実施形態の第6の変形例による照明システム1の動作例を示すフローチャートである。
先ず、制御装置4は、センサ9から検知情報を取得する(ステップS18)。
検知情報を取得した後、制御装置4は、検知情報に基づいて、目標心理状態の変更が必要か否かを判定する(ステップS19)。
目標心理状態の変更が不要である場合(ステップS19:No)、制御装置4は、現在の目標心理状態を生じさせるための光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS13)。この制御は、例えば、図10に示されたフローチャートの実行の継続である。
一方、目標心理状態の変更が必要である場合(ステップS19:Yes)、制御装置4は、変更後の目標心理状態を生じさせるための光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS14)。この制御は、例えば、図16に示されたフローチャートの実行である。
以上説明したように、第6の変形例において、照明システム1は、利用者による空間の利用状況を検知するセンサ9を更に備え、制御装置4は、検知された利用状況に応じて、目標心理状態と、利用者に目標心理状態を生じさせるための光の色とを変更する。これにより、利用状況に適合するように目標心理状態を変更することができる。
(第7の変形例)
次に、利用者による空間の利用状況に応じて設定時間を変更する第7の変形例について説明する。なお、第7の変形例の照明システム1の基本構成は図19と同様であるので、第7の変形例は、図19の符号を用いて説明する。
第7の変形例において、制御装置4は、センサ9で検知された空間の利用状況に応じて、設定時間と、設定時間における第1および第2の光の少なくとも一方の射出時間とを変更する。制御装置4は、第1および第2の光の少なくとも一方の射出時間の変更に代えて、または、第1および第2の光の少なくとも一方の射出時間の変更に加えて、第1および第2の光の少なくとも一方の射出回数を変更してもよい。
例えば、制御装置4は、センサ9の一例であるカメラの画像に基づいて、設定時間が経過しても利用者が部屋から退出していないと判断される場合には、設定時間を一定時間延長してもよい。また、部屋の利用時間の一部が、目標心理状態を「活気」とした会議のための設定時間として設定されている場合において、カメラの画像や音声入力情報に基づいて、設定時間が経過しても会議が続行中であると判断される場合には、設定時間を延長して活気を生じさせるための光射出制御を継続してもよい。
以下、このように構成された本実施形態の第7の変形例による照明システム1の動作例について、図21を参照して説明する。図21は、本実施形態の第7の変形例による照明システム1の動作例を示すフローチャートである。
先ず、制御装置4は、センサ9から検知情報を取得する(ステップS18)。
検知情報を取得した後、制御装置4は、検知情報に基づいて、設定時間の変更が必要か否かを判定する(ステップS20)。
設定時間の変更が不要である場合(ステップS20:No)、制御装置4は、現在の設定時間において光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS16)。この制御は、例えば、図10に示されたフローチャートの実行の継続である。
一方、設定時間の変更が必要である場合(ステップS20:Yes)、制御装置4は、変更後の設定時間において光を射出するように面光源装置21~24を制御する(ステップS17)。この制御は、例えば、図18に示されたフローチャートの実行である。
以上説明したように、第7の変形例において、制御装置4は、センサ9で検知された利用状況に応じて、設定時間と、設定時間における第1および第2の色の光の少なくとも一方の射出時間および/または射出回数を変更する。これにより、利用状況に適合するように目標心理状態の持続時間を変更することができる。
(第8の変形例)
図4の例では、導光板211の取出要素として、凹部211cを例示した。他の例として、図22に示すように、取出要素は、導光板211に積層された光散乱層215とすることができる。光散乱層215は、バインダーとして機能する支持層215aと、支持層215a内に分散した光散乱要素215bと、を有している。支持層215aは、可視光透過性を有した樹脂から形成され得る。光散乱要素215bは、反射、屈折、回折等によって、光散乱層215内を進行する光の進行方向を変化させる機能を有している。光散乱要素215bは、支持層215aと異なる屈折率を有していてもよいし、金属等の光反射性を有した材料によって形成されていてもよい。光散乱要素215bの具体例として、金属化合物、気体を含有した多孔質物質、金属化合物を周囲に保持した樹脂ビーズ、白色微粒子、気泡、周囲と屈折率が異なる粒子が、例示され得る。図22の例において、導光板211内を進む光L1,L2は、光散乱層215内で光散乱要素215bと衝突することで進行方向を変化させ、その後、導光板211から出射することが可能となる。
なお、光散乱層215の支持層215aの屈折率は、導光板211の屈折率以上となっていることが好ましい。光散乱層215の支持層215aの屈折率が導光板211の屈折率よりも低いと、導光板211内を進む光L3が、導光板211と光散乱層215との界面で全反射して、光散乱層215に入射できない可能性がある。このような光L3は、入光面211dから導光板211に入射した後、導光板211内を反対面211eまで進むことになる。このような光の存在は、発光体220のエネルギー効率が低下させてしまうことになる。支持層215aの屈折率を導光板211の屈折率以上とすることで、導光板211と光散乱層215との界面での全反射を効果的に防止して、光散乱層215が取出要素としてより効果的に機能し得る。
(第9の変形例)
さらに他の例として、図23に示すように、取出要素として機能する光散乱要素215bが、導光板本体65内に分散していてもよい。図23に示された導光板211では、導光板211内を進む光Lが、光散乱要素215bに衝突することで散乱し、導光板211から出射することができる。光散乱要素215bとしては、上述した光散乱要素215bと同様に構成され得る。
また、導光板211は、複数種類の取出要素を含むようにしてもよい。図23に示された例において、導光板211は、光散乱要素215bを含有し、さらに、凹部211cを有している。
さらに、導光板211の各領域での凹部211cに起因した光散乱能は、一定ではなく、異なっていてもよい。すなわち、導光板211の光散乱能が、板面に沿った各領域で変化するようにしてもよい。さらに言い換えると、導光板211の或る領域での光散乱能は、当該領域から板面に沿ってずれた他の領域での光散乱能と異なっていてもよい。導光板211のパネル面に沿った各領域での光散乱能を変化させることにより、各領域からの出射光量を調節することが可能となる。
光散乱能は、導光板211がその内部を通過する光を散乱させる性能の強さのことである。光散乱能の程度は、一例として、JIS-K7361-1に準拠して測定されるヘイズ値[%]を用いて評価することができ、ヘイズ値[%]が高いと光散乱能が高いということになる。したがって、図示された例では、導光板211の板面への法線方向に透過する透過ヘイズ値が、導光板211の各領域で一定ではなく、異なる値を持つようになる。ヘイズ値[%]は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM-150)を用いてJIS K7136に準拠した方法により測定することができる。
また、本開示の照明システム1は、建物の部屋以外にも、車室や船室などの移動体の部屋内の空間の演出にも適用することができる。
なお、以上において一実施の形態に対する具体例および変形例を説明してきたが、当然に、複数の例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、開示の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本開示の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された本開示とその均等の範囲に含まれるものである。