JP2023036344A - SARS-CoV-2の型を判定する方法、前記方法に用いるプローブセット及び前記方法に用いるプライマープローブセット - Google Patents

SARS-CoV-2の型を判定する方法、前記方法に用いるプローブセット及び前記方法に用いるプライマープローブセット Download PDF

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Keita Yamashita
重彦 宮本
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Abstract

【課題】本明細書は、SARS-CoV-2の型を判定する方法であって、限られた種類のプローブを用い、多くの型の判定が可能な方法を開示する。【解決手段】本発明の一以上の実施形態はSARS-CoV-2の型を判定する方法であって、被検ウイルス由来のスパイクタンパク質遺伝子におけるN(Nは2以上の整数)個の変異位置を含む塩基配列を含む核酸と、N種のプローブとを接触させ、前記核酸と、前記N種のプローブのそれぞれとのハイブリダイゼーションの有無を検出することを含み、前記N種のプローブの各々である第nプローブは、第n変異位置が野生型塩基である前記遺伝子、及び、第n変異位置が変異型塩基である前記遺伝子の一方のみとハイブリダイズすることができる。【選択図】なし

Description

本明細書は、SARS-CoV-2の型を判定する方法、前記方法に用いるプローブセット及び前記方法に用いるプライマープローブセットを開示する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的流行を引き起こした新規感染症である。COVID-19は、コロナウイルスであるSARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2))を原因とする感染症であることが判明している。
SARS-CoV-2は、ウイルス表面に、スパイクと呼ばれる突起を構成するスパイクタンパク質を有する。SARS-CoV-2のウイルス表面のスパイクは、ヒト細胞の表面の受容体(アンジオテンシン変換酵素2)に結合し、この結合がSARS-CoV-2のヒトへの感染の起点となる。
SARS-CoV-2は、スパイクタンパク質遺伝子の多型に基づいた型に分類される。最初に報告されたSARS-CoV-2のスパイクタンパク質のアミノ酸配列(野生型)は配列番号2に示す通りである。配列番号2のアミノ酸配列をコードするのが、一本鎖プラス鎖ゲノムRNA NCBI Reference Sequence:NC_045512.2の第21563位から第25384位までの領域であり、該領域のDNA塩基配列を配列番号1に示す。
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の変異に関して、アルファ株はE501Yを有し、ベータ株はK417N、E484K、E501Yを有し、ガンマ株はE484K、E501Yの変異を有し、デルタ株はL452R、P681Rを有し、カッパ株はL452R、E484Q、P681Rを有する。ここでアルファ株等の呼称は、PANGO系統により分類された変異株の世界保健機関(WHO)ラベルである。
Figure 2023036344000001
日本の国立感染症研究所は、SARS-CoV-2の変異株を、変異リスクの評価に基づいて「懸念される変異株(VOC)」と「注目すべき変異株(VOI)」に分類している。2021年6月6日時点では、アルファ株、ベータ株、ガンマ株及びデルタ株はVOC、カッパ株はVOIとされている。
非特許文献1によれば、日本国内における2021年6月28日時点での累計症例数は、アルファ株24,359例、ベータ株22例、ガンマ株89例、デルタ株317例、カッパ株7例であり、この5種で78%を占めていた。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000803147.pdf
SARS-CoV-2が野生株、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、カッパ株のいずれであるかの型を判定することは、治療法の決定や感染状況の調査の目的で非常に重要である。
従来のSARS-CoV-2の型の判定方法としては、複数の変異箇所に対して一塩基置換を判別可能な蛍光プローブを設計し、これらを組み合わることによってタイピングを行う方法がある。
SARS-CoV-2の型の判定方法の一例では、3つの変異位置のアミノ酸変異に対応するスパイクタンパク質遺伝子上の一塩基置換をそれぞれ検出する3つのプローブを用いる。この方法では、型判別できるのは4パターンのみである。また、野生株とデルタ株とカッパ株とは同一の検出パターンとなるため、それらを区別して判定することができない。
型判定方法の別の一例では、8つの変異位置のアミノ酸変異に対応するスパイクタンパク質遺伝子上の一塩基置換をそれぞれ検出する8つのプローブを用いる。この方法では、SARS-CoV-2を10パターンに型判別することが可能である。しかしながらこの方法は、内部標準系を含めて5Plex反応を2回に分けて行う必要があるため、操作が煩雑であることに加え、使用機器が限られるという問題があった。
型判定方法の更に別の一例では、2つの変異位置のアミノ酸変異に対応するスパイクタンパク質遺伝子上の一塩基置換及び野生型配列をそれぞれ検出する4つのプローブを用いる。この方法では、型判別できるのは4パターンのみである。また、野生株とアルファ株とは同一の検出パターンとなるため、それらを区別して判定することができない。
そこで本明細書では、SARS-CoV-2の型を判定する方法であって、限られた種類のプローブを用い、多くの型の判定が可能な方法を開示する。本明細書ではまた、前記方法に用いるプローブセット及び前記方法に用いるプライマープローブセットを開示する。
本明細書では以下の1以上の実施形態を開示する。
[1]
SARS-CoV-2の型を判定する方法であって、
被検SARS-CoV-2に由来する、スパイクタンパク質遺伝子におけるN(Nは2以上の整数)個の変異位置を含む塩基配列を含む核酸と、N種のプローブとを接触させ、前記核酸と、前記N種のプローブのそれぞれとが形成するハイブリダイゼーション複合体の有無を検出すること、並びに
前記検出の結果に基づいて、前記被検SARS-CoV-2の型を判定すること
を含み、
前記N種のプローブは、前記遺伝子における前記N個の変異位置の各々に対して設計された、第1プローブから第Nプローブまでを含み、
前記N種のプローブの各々である第nプローブ(nは1からNまでの整数)は、第n変異位置が野生型塩基である前記遺伝子の前記野生型塩基を含む部分、及び、第n変異位置が変異型塩基である前記遺伝子の前記変異型塩基を含む部分の一方のみとハイブリダイズすることができ、
前記第nプローブの少なくとも1つは、第n変異位置が野生型塩基である前記遺伝子の前記野生型塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、前記第nプローブの少なくとも1つは、第n変異位置が変異型塩基である前記遺伝子の前記変異型塩基を含む部分とハイブリダイズすることができる、
ことを特徴とする方法。
[2]
前記Nは2以上4以下の整数である、[1]に記載の方法。
[3]
前記遺伝子の野生型のDNA塩基配列は、配列番号1に示す塩基配列であり、
前記Nは3であり、
第1変異位置は配列番号1に示す塩基配列の第1355位であり、
第2変異位置は配列番号1に示す塩基配列の第1450位であり、
第3変異位置は配列番号1に示す塩基配列の第1501位であり、
第1プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基tが第1変異型塩基gに置換された第1変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
第2プローブは、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、第1450位の第2野生型塩基g又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列における第1450位の前記第2野生型塩基gが他の第2変異型塩基に置換された第2変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第2変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
第3プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1501位の第3野生型塩基aが第3変異型塩基tに置換された第3変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3変異型塩基又はその相補配列を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができない、
[2]に記載の方法。
[4]
前記第1プローブは、
(1a)前記第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列1a、
(1b)前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、前記第1変異型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列1aと同一である塩基配列1b、
(1c)前記塩基配列1aにおいて、前記第1変異型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列1c、
(1d)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、又は、前記塩基配列1cの相補配列である塩基配列1d、或いは
(1e)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、前記塩基配列1c、又は、前記塩基配列1dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列1e
を含み、
前記第2プローブは、
(2a)配列番号1に示す塩基配列に含まれる、前記第2野生型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列2a、
(2b)前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、前記第2野生型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列2aと同一である塩基配列2b、
(2c)前記塩基配列2aにおいて、前記第2野生型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列2c、
(2d)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、又は、前記塩基配列2cの相補配列である塩基配列2d、或いは
(2e)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、前記塩基配列2c、又は、前記塩基配列2dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列2e
を含み、
前記第3プローブは、
(3a)前記第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基tを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列3a、
(3b)前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、前記第3変異型塩基tに対応する塩基が前記塩基配列3aと同一である塩基配列3b、
(3c)前記塩基配列3aにおいて、前記第3変異型塩基tに対応する塩基以外の1~3
個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列3c、
(3d)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、又は、前記塩基配列3cの相補配列である塩基配列3d、或いは
(3e)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、前記塩基配列3c、又は、前記塩基配列3dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列3e
を含む、
[3]に記載の方法。
[5]
前記塩基配列1aは、前記第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基g、前記第1変異型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第1変異型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第1コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
前記塩基配列1bは、前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、前記第1コア部分に対応する塩基が前記塩基配列1aと同一であり、
前記塩基配列1cは、前記塩基配列1aにおいて、前記第1コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されており、
前記塩基配列2aは、配列番号1に示す塩基配列に含まれる、前記第2野生型塩基g、前記第2野生型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第2野生型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第2コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
前記塩基配列2bは、前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、前記第2コア部分に対応する塩基が前記塩基配列2aと同一であり、
前記塩基配列2cは、前記塩基配列2aにおいて、前記第2コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されており、
前記塩基配列3aは、前記第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基t、前記第3変異型塩基tの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第3変異型塩基tの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第3コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
前記塩基配列3bは、前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、前記第3コア部分に対応する塩基が前記塩基配列3aと同一であり、
前記塩基配列3cは、前記塩基配列3aにおいて、前記第3コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されている、
[4]に記載の方法。
[6]
前記N種のプローブの各々は、互いに異なる波長の蛍光を発するレポーター蛍光物質により標識されている、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
前記被検SARS-CoV-2に由来する、スパイクタンパク質遺伝子におけるN個の変異位置を含む塩基配列を含む前記核酸と、前記N種のプローブとを接触させ、前記核酸と、前記N種のプローブのそれぞれとが形成するハイブリダイゼーション複合体の有無を検出することが、
前記被検SARS-CoV-2のスパイクタンパク質遺伝子の一本鎖RNAから誘導されたDNAを鋳型とし、前記DNAにおける前記N個の変異位置を含む塩基配列を増幅する一対のプライマーセットを用い、前記N種のプローブの存在下で核酸増幅反応を行うこと、並びに
前記核酸増幅反応の進行中又は完了後に、前記核酸増幅反応による増幅産物と、前記N種のプローブのそれぞれとが形成するハイブリダイゼーション複合体の有無を検出すること
を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
前記被検SARS-CoV-2に由来する核酸において、ヌクレオカプシドタンパク質遺伝子の塩基配列を検出することを更に含む、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
第1プローブ、第2プローブ、及び、第3プローブを含み、
前記第1プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基tが第1変異型塩基gに置換された第1変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
前記第2プローブは、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、第1450位の第2野生型塩基g又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列における第1450位の前記第2野生型塩基gが他の第2変異型塩基に置換された第2変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第2変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
前記第3プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1501位の第3野生型塩基aが第3変異型塩基tに置換された第3変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3変異型塩基又はその相補配列を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができない、
ことを特徴とする、SARS-CoV-2の型を判定するためのプローブセット。
[10]
前記第1プローブは、
(1a)前記第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列1a、
(1b)前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、前記第1変異型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列1aと同一である塩基配列1b、
(1c)前記塩基配列1aにおいて、前記第1変異型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列1c、
(1d)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、又は、前記塩基配列1cの相補配列である塩基配列1d、或いは
(1e)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、前記塩基配列1c、又は、前記塩基配列1dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列1e
を含み、
前記第2プローブは、
(2a)配列番号1に示す塩基配列に含まれる、前記第2野生型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列2a、
(2b)前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、前記第2野生型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列2aと同一である塩基配列2b、
(2c)前記塩基配列2aにおいて、前記第2野生型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列2c、
(2d)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、又は、前記塩基配列2cの相補配列である塩基配列2d、或いは
(2e)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、前記塩基配列2c、又は、前記塩基配列2dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列2e
を含み、
前記第3プローブは、
(3a)前記第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基tを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列3a、
(3b)前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、前記第3変異型塩基tに対応する塩基が前記塩基配列3aと同一である塩基配列3b、
(3c)前記塩基配列3aにおいて、前記第3変異型塩基tに対応する塩基以外の1~3
個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列3c、
(3d)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、又は、前記塩基配列3cの相補配列である塩基配列3d、或いは
(3e)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、前記塩基配列3c、又は、前記塩基配列3dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列3e
を含む、
[9]に記載のプローブセット。
[11]
前記塩基配列1aは、前記第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基g、前記第1変異型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第1変異型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第1コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
前記塩基配列1bは、前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、前記第1コア部分に対応する塩基が前記塩基配列1aと同一であり、
前記塩基配列1cは、前記塩基配列1aにおいて、前記第1コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されており、
前記塩基配列2aは、配列番号1に示す塩基配列に含まれる、前記第2野生型塩基g、前記第2野生型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第2野生型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第2コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
前記塩基配列2bは、前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、前記第2コア部分に対応する塩基が前記塩基配列2aと同一であり、
前記塩基配列2cは、前記塩基配列2aにおいて、前記第2コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されており、
前記塩基配列3aは、前記第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基t、前記第3変異型塩基tの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第3変異型塩基tの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第3コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
前記塩基配列3bは、前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、前記第3コア部分に対応する塩基が前記塩基配列3aと同一であり、
前記塩基配列3cは、前記塩基配列3aにおいて、前記第3コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されている、
[10]に記載のプローブセット。
[12]
前記第1プローブ、前記第2プローブ、及び、前記第3プローブの各々は、互いに異なる波長の蛍光を発するレポーター蛍光物質により標識されている、[9]~[11]のいずれかに記載のプローブセット。
[13]
[9]~[12]のいずれかに記載のプローブセット、及び、
配列番号1に示す塩基配列を含むDNAのうち、配列番号1に示す塩基配列の第1355位から第1501位までを少なくとも含む部分を、核酸増幅反応により増幅可能な一対のプライマーセット
を含む、プライマープローブセット。
[14]
[9]~[12]のいずれかに記載のプローブセット、又は、[13]に記載のプライマープローブセットを含む、キット。
本発明の一以上の実施形態によれば、SARS-CoV-2の型を判定する方法であって、限られた種類のプローブを用い、多くの型の判定が可能な方法が提供される。
本発明の一以上の実施形態によれば、前記方法に用いるプローブセット及び前記方法に用いるプライマープローブセットが提供される。
<用語>
本発明の一以上の実施形態において核酸、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドという用語は、DNA又はRNAを指し、典型的にはDNAである。また核酸、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドという用語は、塩基数は特に限定するものではない。本発明の一以上の実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブ、オリゴヌクレオチドプライマー、核酸増幅反応の鋳型となる標的核酸、標的核酸の相補鎖及びポリヌクレオチドは、典型的には、天然のヌクレオチドの重合体である。天然のヌクレオチドとは、天然のアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシルの塩基、および、デオキシリボース又はリボースの糖部、および、リン酸基から構成されるヌクレオチドのことであり、各部分が人工的な修飾を受けていないヌクレオチドのことである。天然のヌクレオチドは通常はD型ヌクレオチドである。D型ヌクレオチドとは、糖部分がD型のデオキシリボースもしくはリボースからなるヌクレオチドを示す。
本発明の一以上の実施形態において「標的核酸」とは、検出及び/又は増幅しようとする塩基配列を含む核酸、或いは、検出及び/又は増幅しようとする塩基配列の相補塩基配列を含む核酸を指す。標的核酸はその相補鎖とともに二本鎖として存在していてもよい。二本鎖として存在する標的核酸の一方の鎖を指して「標的核酸」と称してもよい。検出しようとする核酸と、その相補鎖とのどちらを「標的核酸」と称しても良い。すなわち、本発明の一以上の実施形態において「標的核酸を検出する」又は「標的核酸を増幅する」とは、標的核酸自体を目的として標的核酸を検出又は増幅することと、標的核酸の相補鎖又は標的核酸と相補鎖との二本鎖核酸の検出又は増幅を目的として、標的核酸、標的核酸の相補鎖、又は、標的核酸と相補鎖との二本鎖核酸を検出又は増幅することの両方を包含する。
本発明の一以上の実施形態において核酸増幅反応の鋳型となる核酸は、標的核酸及び/又はその相補鎖を一部に含む限りDNAであってもよいし、RNAであってもよい。通常、核酸増幅反応の鋳型となる核酸は、標的核酸を少なくとも一部に含むポリヌクレオチド鎖と、該ポリヌクレオチド鎖の相補鎖との、二本鎖DNAである。
鋳型となる核酸は、天然のものであってもよく、人工的に合成されたものであってもよい。例えば、生体試料から抽出された天然の核酸であってもよく、PCR等により増幅されたものや、逆転写反応により合成されたcDNA等であってもよい。
本発明の一以上の実施形態においてプローブセット、プライマーセット及びプライマープローブセットを構成するオリゴヌクレオチドの製造方法は特に限定されず、ポリヌクレオチド合成装置を利用して製造してもよいし、受託合成サービスを利用して製造してもよい。
1.SARS-CoV-2の型を判定する方法
本発明のSARS-CoV-2の型を判定する方法の一以上の実施形態は、
被検SARS-CoV-2に由来する、スパイクタンパク質遺伝子におけるN(Nは2以上の整数)個の変異位置を含む塩基配列を含む核酸と、N種のプローブとを接触させ、前記核酸と、前記N種のプローブのそれぞれとが形成するハイブリダイゼーション複合体の有無を検出すること、並びに
前記検出の結果に基づいて、前記被検SARS-CoV-2の型を判定すること
を含み、
前記N種のプローブは、前記遺伝子における前記N個の変異位置の各々に対して設計された、第1プローブから第Nプローブまでを含み、
前記N種のプローブの各々である第nプローブ(nは1からNまでの整数)は、第n変異位置が野生型塩基である前記遺伝子の前記野生型塩基を含む部分、及び、第n変異位置が変異型塩基である前記遺伝子の前記変異型塩基を含む部分の一方のみとハイブリダイズすることができ、
前記第nプローブの少なくとも1つは、第n変異位置が野生型塩基である前記遺伝子の前記野生型塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、前記第nプローブの少なくとも1つは、第n変異位置が変異型塩基である前記遺伝子の前記変異型塩基を含む部分とハイブリダイズすることができる、
ことを特徴とする。
ここで「被検SARS-CoV-2」とは、型判定の対象とするSARS-CoV-2を指し、新型コロナウイルスの感染が疑われる被検者又は新型コロナウイルスに感染した患者から取得されたSARS-CoV-2が例示できる。
「被検SARS-CoV-2に由来する、スパイクタンパク質遺伝子におけるN(Nは2以上の整数)個の変異位置を含む塩基配列を含む核酸」としては、被検SARS-CoV-2がゲノムとして有する一本鎖RNA又は当該一本鎖RNAから誘導されたDNA(cDNA)の、スパイクタンパク質をコードする塩基配列のうち、N個の変異位置を含む塩基配列を含む部分が例示できる。即ち核酸とはRNAであってもよく、DNAであってもよいが、好ましくはDNAである。一本鎖RNAから誘導されたDNA(cDNA)とは、一本鎖RNAから逆転写酵素を用いた逆転写反応によって得たDNAや、当該DNAを核酸増幅反応により増幅して得たDNA、又はそれらの断片が例示できる。
前記N種のプローブは、それぞれ、オリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブを構成するヌクレオチドは、天然に存在する構造のヌクレオチドであってもよいし、一部又は全部が化学的に修飾されたヌクレオチドであってもよい。化学的に修飾されたヌクレオチドとしてはLNA(Locked Nucleic acid)が例示できる。オリゴヌクレオチドプローブはまた、MGB(Minor Groove Binder)により修飾されたものであってもよい。LNAを含むオリゴヌクレオチドプローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション複合体、及び、MGB修飾されたオリゴヌクレオチドプローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション複合体は、どちらも、天然型のヌクレオチドのみからなりMGB修飾されていないオリゴヌクレオチドプローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション複合体と比較して、熱融解点(Tm)が高いため、特異的な検出が容易である。
被検SARS-CoV-2に由来する、スパイクタンパク質遺伝子におけるN個の変異位置を含む塩基配列を含む核酸と、N種のプローブとを接触させ、前記核酸と、前記N種のプローブのそれぞれとが形成するハイブリダイゼーション複合体の有無を検出する。ハイブリダイゼーション複合体とは、核酸とプローブとが、ストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズして形成する複合体である。ここで、「ストリンジェントな条件」は、当分野で周知のように、一般的には低イオン強度および高温のハイブリダイゼーション条件を示す。例えば、本明細書に参照により組み込む、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(2001);Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.編,J.Wiley&Sons Inc.,New York,1997)参照。一般には、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにおける特定の配列を含むハイブリダイゼーション複合体のための熱融解点(Tm)よりも約5~30℃低くなるように選択される。別法として、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHにおいて特定の配列につきTmよりも約5~15℃低くなるように選択される。
前記核酸と、前記N種のプローブとの接触、及び、前記ハイブリダイゼーション複合体の検出の好ましい実施形態は、
前記被検SARS-CoV-2のスパイクタンパク質遺伝子の一本鎖RNAから誘導されたDNAを鋳型とし、前記DNAにおける前記N個の変異位置を含む塩基配列を増幅する一対のプライマーセットを用い、前記N種のプローブの存在下で核酸増幅反応を行うこと、及び
前記核酸増幅反応の進行中又は完了後(好ましくは進行中)に、前記核酸増幅反応による増幅産物と、前記N種のプローブのそれぞれとが形成するハイブリダイゼーション複合体の有無を検出すること
を包含する。
前記核酸増幅反応は、耐熱性ポリメラーゼを用いる核酸増幅反応であってもよいし、鎖置換型ポリメラーゼを用いる核酸増幅反応であってもよい。ポリメラーゼは核酸ポリメラーゼを指し、DNAポリメラーゼ又はRNAポリメラーゼであり、好ましくはDNAポリメラーゼである。
耐熱性ポリメラーゼを用いる核酸増幅反応としてはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)が挙げられる。耐熱性ポリメラーゼとしては、市販のDNAポリメラーゼを利用することが可能であり、例えばTaKaRa Ex Taq(登録商標)等を好適に利用することができる。また、温度、時間、緩衝液の組成等は、用いるDNAポリメラーゼや、各プライマーの濃度等に応じて、適宜選択することができる。PCR法での変性、アニーリング、伸長の各工程の時間、温度、緩衝液組成、基質ヌクレオチド濃度、サイクル数等の各条件は選択したDNAポリメラーゼ、プライマー配列、標的核酸の塩基数、鋳型濃度等の要素を考慮して適宜設定することができる。
鎖置換型ポリメラーゼは、標的核酸を含む二本鎖核酸の水素結合を自ら解離しつつ、新しいDNA鎖を合成する酵素であり、例えば、φ29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ・フラグメント、Vent DNAポリメラーゼ、Vent(Exo-)DNAポリメラーゼ、DeepVent DNAポリメラーゼ、DeepVent(Exo-)DNAポリメラーゼ、96-7 DNAポリメラーゼ、Aac DNAポリメラーゼ及びCsa DNA ポリメラーゼ等を挙げることができる。鎖置換型ポリメラーゼは、二本鎖の解離のための熱変性を必要としないため、等温での核酸増幅が可能である。
鎖置換型ポリメラーゼを用いる核酸増幅反応としては、等温核酸増幅法が好ましく、RPA法(Recombinase Polymerase Amplification)、TRIAmp法(Tandem Repeat-mediated Isothermal Amplification)等の方法が例示できる。RPA法及びTRIAmp法では標的核酸を増幅するために少なくとも一対のプライマーセットが用いられる。
鎖置換型ポリメラーゼを用いる等温核酸増幅法は、標的核酸を含む鋳型核酸、プライマー、鎖置換型ポリメラーゼ、及び、基質ヌクレオチド、並びに、必要に応じて他の酵素(例えばRPA法では、他の酵素としてリコンビナーゼ及び一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を用いる)を共存させ、増幅プライマーが鋳型核酸と安定な塩基対結合を形成することができ、且つ、酵素活性を発揮しうる温度でインキュベートすることで進行する。等温核酸増幅法による核酸増幅反応の温度、緩衝液組成、基質ヌクレオチド濃度、反応時間等の各条件は、選択した鎖置換型ポリメラーゼ、プライマー配列、標的核酸の塩基数、鋳型核酸濃度等の要素を考慮して適宜設定することができる。RPA法に用いるリコンビナーゼとしては、例えば、UvsX、RecAおよびそれらのアナログが挙げられる。
前記核酸増幅反応は、被検SARS-CoV-2がゲノムとして有する一本鎖RNAを、逆転写酵素を用いた逆転写反応によりDNAに変換して鋳型DNAを得る工程を更に含んでもよい。この態様に係る前記核酸増幅反応の一例はDNAポリメラーゼ及び逆転写酵素を用いる逆転写PCRである。逆転写PCRに用いる試薬の例は後述する通りである。
前記核酸増幅反応におけるアニーリング工程で、前記核酸増幅反応による増幅産物と、前記N種のプローブのそれぞれとのハイブリダイゼーション複合体が形成され得る。アニーリング工程は上記のストリンジェントな条件で行うことができる。
ハイブリダイゼーション複合体を検出する目的で、N種のプローブの各々は、増幅産物のリアルタイム検出において通常用いられている標識物質で標識化されていることが好ましい。例えば、プローブの一方の端(好ましくは5’末端)にレポーター蛍光物質が連結され、他方の端(好ましくは3’末端)にクエンチャー(消光物質)が連結される。レポーター蛍光物質としては、カルボキシフルオレセイン(FAM)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、Cy(登録商標)(例えば、Cy3(登録商標)、Cy5(登録商標)、Cy5.5(登録商標)、Cy7(登録商標)、Cy7.5(登録商標))、VIC(登録商標)、BODIPY(登録商標)、Yakima Yellow(登録商標)、LightCycler(登録商標)Yellow555等が例示できる。クエンチャーとして、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)等の蛍光を発するクエンチャー、Black Hole Quencher(登録商標)(例えば、BHQ(登録商標)1、BHQ(登録商標)2、BHQ(登録商標)3)、Iowa Black(登録商標)(例えば、IBRQ、IBFQ)、4-(4-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、4-[[2-クロロ-4-ニトロ-フェニル]-アゾ]-アニリン(Eclipse(登録商標))等のNFQ(Non Fluorescent Quencher)(ダーククエンチャーともいう)等が例示できる。
一以上の実施形態では、前記N種のプローブの各々は、互いに異なる波長の蛍光を発するレポーター蛍光物質により標識されていることが好ましい。この実施形態によれば、前記N種のプローブの各々が標的核酸と形成するN種のハイブリダイゼーション複合体をそれぞれ区別して検出することができるため、1つの反応系での検出が可能である。
野生型のSARS-CoV-2の、スパイクタンパク質遺伝子のDNA塩基配列を、配列番号1に示し、配列番号1に示す塩基配列がコードする野生型スパイクタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号2に示す。SARS-CoV-2のゲノムは一本鎖プラス鎖RNAであり、配列番号1に示す塩基配列においてtがuに置換されたRNA塩基配列を、スパイクタンパク質遺伝子として有する。配列番号1に示す塩基配列がRNAに含まれる塩基配列を指す場合、tをuに読み替える。
配列番号2に示す野生型スパイクタンパク質のアミノ酸配列において、既知のアミノ酸変異位置は、第417位、第452位、第484位、第501位、第681位である。このうち配列番号2の第417位KのNへの変異を引き起こす配列番号1の塩基配列での変異が第1251位gのtへの変異であり、配列番号2の第452位LのRへの変異を引き起こす配列番号1の塩基配列での変異が第1355位tのgへの変異であり、配列番号2の第484位EのK又はQへの変異を引き起こす配列番号1の塩基配列での変異が第1450位gのa又はcへの変異であり、配列番号2の第501位NのYへの変異を引き起こす配列番号1の塩基配列での変異が第1501位aのtへの変異であり、配列番号2の第681位PのRへの変異を引き起こす配列番号1の塩基配列での変異が第2042位cのgへの変異である。
本発明の一以上の実施形態では、スパイクタンパク質遺伝子における2以上の変異位置の各々に対して設計された2種以上(N種)のプローブを用いる。そして、前記N種のプローブの各々である第nプローブを、第n変異位置が野生型塩基であるスパイクタンパク質遺伝子の前記野生型塩基を含む部分、及び、第n変異位置が変異型塩基であるスパイクタンパク質遺伝子の前記変異型塩基を含む部分の一方のみとハイブリダイズすることができるように設計する。すなわち、スパイクタンパク質遺伝子の塩基配列上のN個の変異位置のそれぞれについて、野生型塩基配列及び変異型塩基配列の一方のみにハイブリダイズするプローブを設計することにより、1つの変異位置について、野生型塩基配列にハイブリダイズするプローブと、変異型塩基配列にハイブリダイズするプローブとを設計する従来技術と比較して、プローブの数を少なくすることができる。
本発明の一以上の実施形態では更に、前記第nプローブの少なくとも1つを、第n変異位置が野生型塩基であるスパイクタンパク質遺伝子の前記野生型塩基を含む部分とハイブリダイズするよう設計し、前記第nプローブの少なくとも1つを、第n変異位置が変異型塩基であるスパイクタンパク質遺伝子の前記変異型塩基を含む部分とハイブリダイズするように設計することを特徴とする。SARS-CoV-2のタイピングの従来技術として、スパイクタンパク質遺伝子の塩基配列上の1つ以上の変異位置について、変異型塩基配列にハイブリダイズするプローブのみを用いる例や、同じ変異位置について野生型塩基配列にハイブリダイズするプローブと変異型塩基配列にハイブリダイズするプローブとを組み合わせて用いる例は存在するが、1以上の変異位置の野生型塩基配列のみにハイブリダイズするプローブと、別の1以上の変異位置の変異型塩基配列のみにハイブリダイズするプローブとを組み合わせて用いる例は存在しない。
本発明の一以上の実施形態において、前記Nは好ましくは2以上4以下の整数であり、より好ましくは3又は4であり、特に好ましくは3である。1つの系中において、複数のプローブとそれらの標的核酸とが形成する、複数のハイブリダイゼーション複合体の有無を検出するには、複数のハイブリダイゼーション複合体の形成に伴って生じるシグナル(例えば、プローブがレポーター蛍光物質により標識されている場合、前記レポーター蛍光物質が発する蛍光)をそれぞれ区別して検出する必要がある。リアルタイムPCR用検出装置として、レポーター蛍光物質による蛍光を検出できるチャネル数が4であるものが広く普及している。このため、前記Nが2、3又は4である場合、前記チャネル数4の一般的なリアルタイムPCR用検出装置を用いて1回の反応で、N種全てのハイブリダイゼーション複合体の有無を検出することが可能である。
本発明のSARS-CoV-2の型を判定する方法の、特に好ましい実施形態では、
前記Nは3であり、
第1変異位置は配列番号1に示す塩基配列(スパイクタンパク質遺伝子の野生型のDNA塩基配列)の第1355位であり、
第2変異位置は配列番号1に示す塩基配列の第1450位であり、
第3変異位置は配列番号1に示す塩基配列の第1501位であり、
第1プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基tが第1変異型塩基gに置換された第1変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
第2プローブは、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、第1450位の第2野生型塩基g又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列における第1450位の前記第2野生型塩基gが他の第2変異型塩基に置換された第2変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第2変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
第3プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1501位の第3野生型塩基aが第3変異型塩基tに置換された第3変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3変異型塩基又はその相補配列を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができない。
ここで「ハイブリダイズすることができる」とは、各プローブと標的核酸とが、ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができることを指す。「ストリンジェントな条件」とは上記の通りであり、具体的なストリンジェントな条件としては、例えば、各プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション工程では、ナトリウム濃度が25~500mM、好ましくは25~300mMであり、温度が40~68℃、好ましくは40~65℃の条件が挙げられる。より具体的には、各プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションを、1~7×SSC、0.02~3%SDS、温度40~60℃で行うことができる。また、ハイブリダイゼーションの後に洗浄工程を行っても良く、洗浄工程は、例えば0.1~2×SSC、0.1~0.3%SDS、温度50~65℃で行うことができる。
前記第1プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基tが第1変異型塩基gに置換された、アミノ酸変異L452Rを有するスパイクタンパク質をコードする第1変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1変異型塩基又はその相補塩基を含む部分のみとハイブリダイズ複合体を形成することができる。前記第1プローブは、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とはハイブリダイゼーション複合体を形成することができない。
前記第2プローブは、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、第1450位の第2野生型塩基g又はその相補塩基を含む部分のみとハイブリダイゼーション複合体を形成することができる。前記第2プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1450位の第2野生型塩基gがaに置換された、アミノ酸変異E484Kを有するスパイクタンパク質をコードする第2変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸、及び、前記第2野生型塩基gがcに置換された、アミノ酸変異E484Qを有するスパイクタンパク質をコードする第2変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記変異塩基を含む部分とハイブリダイゼーション複合体を形成することができない。
前記第3プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1501位の第3野生型塩基aが第3変異型塩基tに置換された、アミノ酸変異N501Yを有するスパイクタンパク質をコードする第3変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3変異型塩基又はその相補塩基を含む部分のみとハイブリダイゼーション複合体を形成することができる。前記第3プローブは、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とはハイブリダイゼーション複合体を形成することができない。
前記第1プローブ、前記第2プローブ及び前記第3プローブを用いた本実施形態の方法によれば、SARS-CoV-2のアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、カッパ株及び野生株はそれぞれ、各プローブによるハイブリダイゼーション複合体の有無が、下記表に示すパターンで検出される。各プローブによるハイブリダイゼーション複合体が検出される場合をP(陽性)、検出されない場合をN(陰性)とする。
本実施形態によれば、下記表に示すように、わずか3種のプローブを用いることにより、アルファ株(NPP)、ベータ株/ガンマ株(NNP)、デルタ株(PPN)、カッパ株(PNN)、野生株(NPN)を、5つの異なる検出パターンにより区別して検出することができる。なお、ベータ株とガンマ株は同じ検出パターン(NNP)となるため相互に区別することができないが、日本国内において上記の通りベータ株及びガンマ株の検出頻度は小さいため実用上支障とはならない。
Figure 2023036344000002
本発明のSARS-CoV-2の型を判定する方法の別の好ましい実施形態は、Nが4であり、前記第1プローブ、前記第2プローブ及び前記第3プローブに加えて、更に第4プローブを用いた方法である。
前記第4プローブの一例は、配列番号1に示す塩基配列における第1251位の第4野生型塩基gが第4変異型塩基tに置換された、アミノ酸変異K417Nを有するスパイクタンパク質をコードする第4変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第4変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第4野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とはハイブリダイズできないものである。
前記第4プローブの別の一例は、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第4野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、前記第4変異塩基配列又はその相補塩基配列を含む核酸の、前記第4変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とはハイブリダイズすることができないものである。
前記第4プローブは、アミノ酸変異K417Nを有するベータ株のスパイクタンパク質遺伝子の塩基配列を含む核酸、及び、アミノ酸変異K417Nを有さないガンマ株のスパイクタンパク質遺伝子の塩基配列を含む核酸のうち、一方のみとハイブリダイゼーション複合体を形成し、他方とはハイブリダイゼーション複合体を形成しない。このため、前記第1プローブ、前記第2プローブ、前記第3プローブ及び前記第4プローブを用いる実施形態によれば、4種のプローブを用いて、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、カッパ株、野生株を、6つの異なる検出パターンにより区別して検出することが可能である。
本発明のSARS-CoV-2の型を判定する方法の更に別の好ましい実施形態は、前記被検SARS-CoV-2に由来する核酸において、ヌクレオカプシドタンパク質遺伝子(N遺伝子)の塩基配列を検出することを更に含む。N遺伝子は、SARS-CoV-2に特異的な配列を有するため、N遺伝子の塩基配列が検出されることは、前記被検SARS-CoV-2が、確かにSARS-CoV-2であることの指標となる。
2.プローブセット
本発明の別の一以上の実施形態は、前記第1プローブ、前記第2プローブ及び前記第3プローブを含むSARS-CoV-2の型を判定するためのプローブセットに関する。
プローブセットは、前記第1プローブ、前記第2プローブ及び前記第3プローブを含む一体の組成物であってもよいし、3種のプローブをそれぞれ含む3種の組成物のキットであってもよいし、3種のプローブのうち1種以上を含む複数の組成物のキットであってもよい。
本発明のSARS-CoV-2の型を判定する方法の、前記第1プローブ、前記第2プローブ及び前記第3プローブを用いる実施形態における、各プローブのより好ましい実施形態を以下に説明する。
前記第1プローブは、
(1a)配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基tが第1変異型塩基gに置換された第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列1a、
(1b)前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、前記第1変異型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列1aと同一である塩基配列1b、
(1c)前記塩基配列1aにおいて、前記第1変異型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列1c、
(1d)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、又は、前記塩基配列1cの相補配列である塩基配列1d、或いは
(1e)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、前記塩基配列1c、又は、前記塩基配列1dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列1e
を含むことが好ましく、前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、前記塩基配列1c、又は、前記塩基配列1dを含むことがより好ましく、前記塩基配列1dを含むことが特に好ましい。
この実施形態に係る前記第1プローブの塩基配列は、前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、前記塩基配列1c、前記塩基配列1d、又は、前記塩基配列1eのみからなるものであることが好ましいが、その一端又は両端に更に別の塩基配列が付加された塩基配列であってもよい。別の塩基配列としては、合計で10塩基以下の任意の塩基配列が例示できる。
前記塩基配列1aにおける「10塩基以上40塩基以下」はより好ましくは「10塩基以上30塩基以下」であり、より好ましくは「15塩基以上25塩基以下」、より好ましくは「17塩基以上20塩基以下」である。
前記塩基配列1aは、より好ましくは、前記第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基g、前記第1変異型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第1変異型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第1コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である。塩基数の好ましい範囲は上記の通りである。
前記第1コア部分は、より好ましくは、前記第1変異型塩基g、前記第1変異型塩基gの5’側に隣接する5塩基の部分、及び、前記第1変異型塩基gの3’側に隣接する5塩基の部分を含み、更に好ましくは、前記第1変異型塩基g、前記第1変異型塩基gの5’側に隣接する6塩基の部分、及び、前記第1変異型塩基gの3’側に隣接する6~11塩基の部分を含む。
前記第1コア部分の塩基配列は、好ましくは、配列番号5に示す塩基配列の第7~20位の塩基配列の相補配列、又は配列番号8に示す塩基配列の第3~16位の塩基配列の相補配列である。
前記塩基配列1aは、好ましくは前記第1変異塩基配列に含まれる、配列番号5に示す塩基配列の相補配列(配列番号1の第1349~1370位に対応)、又は配列番号8に示す塩基配列の相補配列(配列番号1の第1349~1366位に対応)を少なくとも含む、連続した40塩基以下、好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下、特に好ましくは20塩基以下の部分塩基配列であり、特に好ましくは、配列番号5又は配列番号8に示す塩基配列の相補配列である。
本明細書において、配列同一性の値は、複数の塩基配列間の同一性を演算するソフトウェア(例えば、FASTA、DANASYS、及びBLAST)を用いてデフォルトの設定で算出した値を示す。塩基配列の同一性の値は、一致度が最大となるように一対の塩基配列をアライメントした際に一致する塩基の数を算出し、当該一致する塩基の数の、比較した塩基配列の全塩基数に対する割合として算出される。同一性の決定方法の詳細については、例えばAltschul et al, Nuc. Acids. Res. 25, 3389-3402, 1977及びAltschul et al, J. Mol. Biol. 215, 403-410, 1990を参照されたい。
前記塩基配列1bにおいて、配列同一性は、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上である。
前記塩基配列1bは、より好ましくは、前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、少なくとも前記第1コア部分に対応する塩基が前記塩基配列1aと同一である。
前記塩基配列1cにおいて、1~3個の塩基は、より好ましくは1又は2個の塩基であり、特に好ましくは1個の塩基である。
前記塩基配列1cは、より好ましくは、前記塩基配列1aにおいて、前記第1コア部分に対応する塩基以外の1~3個(より好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個)の塩基が他の塩基に置換されている。
前記塩基配列1dは特に好ましくは、配列番号5又は配列番号8に示す塩基配列である。
前記塩基配列1eにおける1以上のtは、全てのtであってもよいし、全てのtの一部、例えば1又は2個のtであってもよい。
前記第2プローブは、
(2a)配列番号1に示す塩基配列に含まれる、第1450位の第2野生型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列2a、
(2b)前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、前記第2野生型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列2aと同一である塩基配列2b、
(2c)前記塩基配列2aにおいて、前記第2野生型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列2c、
(2d)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、又は、前記塩基配列2cの相補配列である塩基配列2d、或いは
(2e)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、前記塩基配列2c、又は、前記塩基配列2dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列2e
を含むことが好ましく、前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、前記塩基配列2c、又は、前記塩基配列2dを含むことがより好ましく、前記塩基配列2a、前記塩基配列2b又は前記塩基配列2cを含むことが特に好ましい。
この実施形態に係る前記第2プローブの塩基配列は、前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、前記塩基配列2c、前記塩基配列2d、又は、前記塩基配列2eのみからなるものであることが好ましいが、その一端又は両端に更に別の塩基配列が付加された塩基配列であってもよい。別の塩基配列としては、合計で10塩基以下の任意の塩基配列が例示できる。
前記塩基配列2aにおける「10塩基以上40塩基以下」はより好ましくは「10塩基以上30塩基以下」であり、より好ましくは「13塩基以上25塩基以下」、より好ましくは「14塩基以上20塩基以下」、より好ましくは「14塩基以上18塩基以下」である。
前記塩基配列2aは、より好ましくは、配列番号1に示す塩基配列に含まれる、前記第2野生型塩基g、前記第2野生型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第2野生型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第2コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である。塩基数の好ましい範囲は上記の通りである。
前記第2コア部分は、より好ましくは、前記第2野生型塩基g、前記第2野生型塩基gの5’側に隣接する5塩基の部分、及び、前記第2野生型塩基gの3’側に隣接する5塩基の部分を含み、更に好ましくは、前記第2野生型塩基g、前記第2野生型塩基gの5’側に隣接する6~7塩基の部分、及び、前記第2野生型塩基gの3’側に隣接する6~8塩基の部分を含む。
前記第2コア部分の塩基配列は、好ましくは、配列番号6に示す塩基配列の第5~16位の塩基配列の相補配列、又は配列番号9に示す塩基配列の第3~14の塩基配列である。
前記塩基配列2aは、好ましくは配列番号1に示す塩基配列に含まれる、配列番号6に示す塩基配列の相補配列(配列番号1の第1440~1457位に対応)、又は配列番号9に示す塩基配列(配列番号1の第1442~1457位に対応)を少なくとも含む、連続した40塩基以下、好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下、特に好ましくは20塩基以下の部分塩基配列であり、特に好ましくは、配列番号6又は配列番号9に示す塩基配列である。
前記塩基配列2bにおいて、配列同一性は、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上である。
前記塩基配列2bは、より好ましくは、前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、少なくとも前記第2コア部分に対応する塩基が前記塩基配列2aと同一である。
前記塩基配列2cにおいて、1~3個の塩基は、より好ましくは1又は2個の塩基であり、特に好ましくは1個の塩基である。
前記塩基配列2cは、より好ましくは、前記塩基配列2aにおいて、前記第2コア部分に対応する塩基以外の1~3個(より好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個)の塩基が他の塩基に置換されている。
前記塩基配列2dは特に好ましくは、配列番号6又は配列番号9に示す塩基配列の相補配列である。
前記塩基配列2eにおける1以上のtは、全てのtであってもよいし、全てのtの一部、例えば1又は2個のtであってもよい。
前記第3プローブは、
(3a)配列番号1に示す塩基配列における第1501位の第3野生型塩基aが第3変異型塩基tに置換された第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基tを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列3a、
(3b)前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、前記第3変異型塩基tに対応する塩基が前記塩基配列3aと同一である塩基配列3b、
(3c)前記塩基配列3aにおいて、前記第3変異型塩基tに対応する塩基以外の1~3
個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列3c、
(3d)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、又は、前記塩基配列3cの相補配列である塩基配列3d、或いは
(3e)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、前記塩基配列3c、又は、前記塩基配列3dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列3e
を含むことが好ましく、前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、前記塩基配列3c、又は、前記塩基配列3dを含むことがより好ましく、前記塩基配列3dを含むことが特に好ましい。
この実施形態に係る前記第3プローブの塩基配列は、前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、前記塩基配列3c、前記塩基配列3d、又は、前記塩基配列3eのみからなるものであることが好ましいが、その一端又は両端に更に別の塩基配列が付加された塩基配列であってもよい。別の塩基配列としては、合計で10塩基以下の任意の塩基配列が例示できる。
前記塩基配列3aにおける「10塩基以上40塩基以下」はより好ましくは「10塩基以上30塩基以下」であり、より好ましくは「15塩基以上25塩基以下」、より好ましくは「18塩基以上22塩基以下」である。
前記塩基配列3aは、より好ましくは、前記第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基t、前記第3変異型塩基tの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第3変異型塩基tの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第3コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である。塩基数の好ましい範囲は上記の通りである。
前記第3コア部分は、より好ましくは、前記第3変異型塩基t、前記第3変異型塩基tの5’側に隣接する5塩基の部分、及び、前記第3変異型塩基tの3’側に隣接する5塩基の部分を含み、更に好ましくは、前記第3変異型塩基t、前記第3変異型塩基tの5’側に隣接する6~8塩基の部分、及び、前記第3変異型塩基tの3’側に隣接する6~9塩基の部分を含む。
前記第3コア部分の塩基配列は、好ましくは、配列番号7に示す塩基配列の第3~18位の塩基配列の相補配列である。
前記塩基配列3aは、好ましくは前記第3変異塩基配列に含まれる、配列番号7に示す塩基配列の相補配列(配列番号1の第1492~1511位に対応)を少なくとも含む、連続した40塩基以下、好ましくは30塩基以下、より好ましくは25塩基以下、特に好ましくは23塩基以下の部分塩基配列であり、特に好ましくは、配列番号7に示す塩基配列の相補配列である。
前記塩基配列3bにおいて、配列同一性は、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上である。
前記塩基配列3bは、より好ましくは、前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、少なくとも前記第3コア部分に対応する塩基が前記塩基配列3aと同一である。
前記塩基配列3cにおいて、1~3個の塩基は、より好ましくは1又は2個の塩基であり、特に好ましくは1個の塩基である。
前記塩基配列3cは、より好ましくは、前記塩基配列3aにおいて、前記第3コア部分に対応する塩基以外の1~3個(より好ましくは1又は2個、特に好ましくは1個)の塩基が他の塩基に置換されている。
前記塩基配列3dは特に好ましくは、配列番号7に示す塩基配列である。
前記塩基配列3eにおける1以上のtは、全てのtであってもよいし、全てのtの一部、例えば1又は2個のtであってもよい。
3.プライマープローブセット
本発明の更に別の一以上の実施形態は
前記プローブセット、及び、
配列番号1に示す塩基配列を含むDNAのうち、配列番号1に示す塩基配列の第1355位から第1501位までを少なくとも含む部分を、核酸増幅反応により増幅可能な一対のプライマーセット
を含む、プライマープローブセットに関する。
プライマープローブセットは、3種のプローブ及び一対のプライマーセットを全て含む一体の組成物であってもよいし、前記プローブセットを含む組成物と、前記プライマーセットを含む組成物とのキットであってもよい。
前記プライマーセットは、
(f)配列番号1に示す塩基配列のうち、第1355位よりも5’末端側に位置する部分塩基配列f1の相補塩基配列からなるオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができる塩基配列f2を3’末端側に含むオリゴヌクレオチドを含むフォワードプライマー、及び
(r)配列番号1に示す塩基配列のうち、第1501位よりも3’末端側に位置する部分塩基配列r1からなるオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができる塩基配列r2を3’末端側に含むオリゴヌクレオチドを含むリバースプライマー
の組み合わせであることが好ましい。
前記(f)において「配列番号1に示す塩基配列のうち、第1355位よりも5’末端側に位置する部分塩基配列f1」は、好ましくは、配列番号1の、第1348位よりも5’末端側に位置する部分塩基配列であり、特に好ましくは、配列番号1の第1300~1347位に含まれる連続した20塩基以上の部分塩基配列であり、最も好ましくは、配列番号1の第1318~1347位の部分塩基配列(配列番号3に示す塩基配列と一致する)、又は、配列番号1の第1318~1347位の部分塩基配列に含まれる、第1347位から5’末端側に連続した20塩基以上の部分塩基配列である。
前記(r)において「配列番号1に示す塩基配列のうち、第1501位よりも3’末端側に位置する部分塩基配列r1」は、好ましくは、配列番号1の、第1511位よりも3’末端側に位置する部分塩基配列であり、特に好ましくは、配列番号1の第1512~1620位に含まれる連続した20塩基以上の部分塩基配列であり、最も好ましくは、配列番号1の第1537~1562位の部分塩基配列(配列番号4に示す塩基配列の相補配列と一致する)、又は、配列番号1の第1537~1562位の部分塩基配列に含まれる、第1537から3’末端側に連続した20塩基以上の部分塩基配列である。
前記フォワードプライマーの塩基配列f2は、前記部分塩基配列f1と、3’末端から連続した好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは20塩基以上、特に好ましくは25塩基以上の部分が同一であり、該部分よりも5’末端側の部分は同一であってもよいし相同であってもよい。更に、前記塩基配列f2は、前記部分塩基配列f1と、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上の配列同一性を有する。特に好ましくは、前記フォワードプライマーの塩基配列f2は、前記部分塩基配列f1と同一である。
前記リバースプライマーの塩基配列r2は、前記部分塩基配列r1の相補配列と、3’末端から連続した好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは20塩基以上、特に好ましくは25塩基以上の部分が同一であり、該部分よりも5’末端側の部分は同一であってもよいし相同であってもよい。更に、前記塩基配列r2は、前記部分塩基配列r1の相補配列と、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上の配列同一性を有する。特に好ましくは、前記フォワードプライマーの塩基配列r2は、前記部分塩基配列r1の相補配列と同一である。
4.キット
本発明の更に別の一以上の実施形態は、
前記プローブセット又は前記プライマープローブセットを含む、キットに関する。
本発明の一以上の実施形態のキットにはさらに、バッファー成分、dNTPs、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、Uracil-N-glycosylase(UNG)、滅菌超純水等を含めることができる。バッファー成分、dNTPs、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素及びUNGからなる群より選択される少なくとも2つは、予め混合されたプレミックス試薬を構成することが好ましい。DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素を含み、UNGを含まないプレミックス試薬として、QuantiTect(登録商標)Probe RT-PCR Kit(QIAGEN社製)、EvoScript RNA Probes Master(ロシュ社製)等が例示できる。これらのプレミックス試薬を用いることにより、逆転写反応とPCRとを連続的に行うことができる。また、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素及びUNGを含むプレミックス試薬として、One Step PrimeScript(登録商標)III RT-qPCR Mix,with UNG(タカラバイオ株式会社製)、TaqPath(登録商標)1-Step Multiplex Master Mix(Thermo Fisher Scientific社製)等が例示できる。これらのプレミックス試薬を用いることにより、PCR増幅産物のキャリーオーバーによる偽陽性を防止しつつ、逆転写反応とPCRとを連続的に行うことができる。
以下の実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
1.実施例1
<方法>
1-1.プライマー及びプローブの設計
NCBIデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から取得したSARS-CoV-2の一本鎖プラス鎖ゲノムRNA(NCBI Reference Sequence: NC_045512.2)の塩基配列情報に基づき、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質遺伝子を標的とするプライマー及びプローブを設計した(表3)。
Figure 2023036344000003
表3中の「Fw」はフォワードプライマーを、「Rv」はリバースプライマーを示す。表3中の「L452R-P1」はL452R検出用プローブを、「E484-P1」はE484検出用プローブを、「N501Y-P」はN501Y検出用プローブを示す。表3中の各塩基配列において、左端は5’末端を、右端は3’末端を示す。
表3に示すフォワードプライマーは、配列番号3に示す塩基配列からなる。リバースプライマーは、配列番号4に示す塩基配列からなる。
表3に示すL452R検出用プローブは、配列番号5に示す塩基配列を有する。E484検出用プローブは、配列番号6に示す塩基配列を有する。N501Y検出用プローブは、配列番号7に示す塩基配列を有する。
表3に示す各々のプローブは、5’末端にレポーター蛍光物質を、3’末端にクエンチャー、更には必要に応じてMGB(Minor Groove Binder)を連結したTaqMan(登録商標)プローブを構成する。具体的には、L452R検出用プローブは、5’末端にVICを、3’末端にNFQ(Non Fluorescent Quencher)及びMGBを有する。E484検出用プローブは、5’末端にFAMを、3’末端にNFQ及びMGBを有する。N501Y検出用プローブは、5’末端にCy5(登録商標)を、3’末端にBHQ(登録商標)2を有する。レポーター蛍光物質としては、それぞれの蛍光のクロストークの影響を低減するため、互いに異なる波長の蛍光を発するものが採用されている。また、クエンチャーとしては、NFQのうち、対応するレポーター蛍光物質が発する蛍光を適切にクエンチング(消光)することができるものが採用されている。よって、これらのレポーター蛍光物質及びクエンチャーの組み合わせを有するプローブを使用することにより、マルチプレックスアッセイにおける測定時のバックグラウンドを低減し、ハイブリダイゼーション複合体の検出精度を向上することができる。
表3に示すL452R検出用プローブ及びE484検出用プローブは、3’末端側にMGBを有する。MGBが各プローブの標的核酸の副溝に入り込むことで、標的核酸との結合親和性を向上することができる。そのため、MGB修飾されたプローブを使用することにより、マルチプレックスアッセイにおける各々のハイブリダイゼーション複合体の検出精度を向上することができる。
1-2.RT-qPCR
表3に示す各プライマー及びプローブを用いて、One Step PrimeScript(登録商標)III RT-qPCR Mix,with UNG(タカラバイオ社製)のマニュアルに従い、以下の表4に示すマルチプレックスRT-qPCR用反応液を調製した。なお、One Step PrimeScript(登録商標)III RT-qPCR Mix,with UNGは、耐熱性逆転写酵素PrimeScript(登録商標)III RTase、耐熱性Taq DNAポリメラーゼ、dNTPs(dATP、dCTP、dGTP、dTTP及びdUTPを含有)、バッファー成分及びUracil-N-glycosylase(UNG)を含有する。
Figure 2023036344000004
鋳型RNAとして、市販の6種類の合成RNA(Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 2、Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 15、Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 16、Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 18(いずれもTwist BioScience社製)、及びSARS-CoV-2ガンマ株陽性コントロールRNA SC2VPC-G、SARS-CoV-2デルタ株陽性コントロールRNA SC2VPC-D(いずれも日本遺伝子研究所社製))を用いた。Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 2は、野生株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基t、第1450位の第2野生型塩基g、及び第1501位の第3野生型塩基aを有する。Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 15は、アルファ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基t、第1450位の第2野生型塩基g、及び第1501位の第3変異型塩基tを有する。Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 16は、ベータ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基t、及び第1501位の第3変異型塩基tを有し、第1450位の第2野生型塩基gを有しない(第2野生型塩基gがaに置換されている)。SARS-CoV-2 ガンマ株陽性コントロールRNAは、ガンマ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基t、及び第1501位の第3変異型塩基tを有し、第1450位の第2野生型塩基gを有しない(第2野生型塩基gがaに置換されている)。Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 18は、カッパ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1変異型塩基g、及び第1501位の第3野生型塩基aを有し、第1450位の第2野生型塩基gを有しない(第2野生型塩基gがcに置換されている)。SARS-CoV-2 デルタ株陽性コントロールRNAは、SARS-CoV-2のデルタ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1変異型塩基g、1450位の第2野生型塩基g、及び第1501位の第3野生型塩基aを有する。なお、陰性コントロールとして、前記鋳型RNAの代わりに滅菌超純水を用いた以外は同様の組成のマルチプレックスRT-qPCR用反応液を調製した。
マルチプレックスRT-qPCR用反応液を、リアルタイムPCR用検出装置(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社、LightCycler(登録商標)96 System)にセットし、RT-qPCR反応を行った。RT-qPCR反応条件は、52℃5分を1サイクル、95℃20秒を1サイクル、並びに95℃5秒及び60℃30秒を45サイクルとした。RT-qPCRにより得られた増幅曲線に基づき、検出パターンを解析した。
<結果>
得られた検出パターンを表5に示す。
Figure 2023036344000005
表5中の「L452R-P1」はL452R検出用プローブを、「E484-P1」はE484検出用プローブを、「N501Y-P」はN501Y検出用プローブを示す。表5中の「合成RNA2」は鋳型RNAのTwist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 2を、「合成RNA15」は鋳型RNAのTwist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 15を、「合成RNA16」は鋳型RNAのTwist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 16を、「合成RNASC2VPC-G」は鋳型RNAのSARS-CoV-2 ガンマ株陽性コントロールRNA SC2VPC-Gを、「合成RNA18」は鋳型RNAのTwist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 18を、「合成RNASC2VPC-D」は鋳型RNAのSARS-CoV-2 デルタ株陽性コントロールRNA SC2VPC-Dを示す。表5において、各プローブによるハイブリダイゼーション複合体が検出された場合は「P(陽性)」と、検出されなかった場合を「N(陰性)」と表記した。
表5に示すように、構築した検出系は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質遺伝子における第1355位及び第1501位の変異型塩基、並びに第1450位の野生型塩基の存在を特異的に検出可能であることが分かった。
以上より、3種のプローブを用いることにより、アルファ株、ベータ株/ガンマ株、デルタ株、カッパ株、野生株を、5つの異なる検出パターンにより区別して検出することができた。また、LightCycler(登録商標)96 Systemが有するチャネルのうち3つのチャネルを用いて、1回の反応で、3種全てのハイブリダイゼーション複合体の有無を検出することができた。
2.実施例2
<方法>
2-1.プライマー及びプローブの設計
NCBIデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から取得したSARS-CoV-2の一本鎖プラス鎖ゲノムRNA(NCBI Reference Sequence: NC_045512.2)の塩基配列情報に基づき、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質遺伝子を標的とするプライマー及びプローブを設計した(表6)。
Figure 2023036344000006
表6中の「Fw」はフォワードプライマーを、「Rv」はリバースプライマーを示す。表6中の「L452R-P2」はL452R検出用プローブを、「E484-P2」はE484検出用プローブを、「N501Y-P」はN501Y検出用プローブを示す。表6中の各塩基配列において、左端は5’末端を、右端は3’末端を示す。
表6に示すフォワードプライマーは、配列番号3に示す塩基配列からなる。リバースプライマーは、配列番号4に示す塩基配列からなる。
表6に示すL452R検出用プローブは、配列番号8に示す塩基配列を有する。E484検出用プローブは、配列番号9に示す塩基配列を有する。N501Y検出用プローブは、配列番号7に示す塩基配列を有する。
表6に示す各々のプローブは、5’末端にレポーター蛍光物質を、3’末端にクエンチャーを連結したTaqMan(登録商標)プローブを構成する。具体的には、L452R検出用プローブは、5’末端にHEXを、3’末端にIBFQを有する。E484検出用プローブは、5’末端にFAMを、3’末端にIBFQを有する。N501Y検出用プローブは、5’末端にCy5(登録商標)を、3’末端にBHQ(登録商標)2を有する。レポーター蛍光物質としては、それぞれの蛍光のクロストークの影響を低減するため、互いに異なる波長の蛍光を発するものが採用されている。また、クエンチャーとしては、NFQのうち、対応するレポーター蛍光物質が発する蛍光を適切にクエンチング(消光)することができるものが採用されている。よって、これらのレポーター蛍光物質及びクエンチャーの組み合わせを有するプローブを使用することにより、マルチプレックスアッセイにおける測定時のバックグラウンドを低減し、ハイブリダイゼーション複合体の検出精度を向上することができる。
表6に示すL452R検出用プローブ及びE484検出用プローブは、各々3つのLNAを含む。少なくとも1つのプローブにLNAを組み込むことにより、各々のプローブの標的核酸に対する結合親和性を制御することができるため、マルチプレックスアッセイにおける各々のハイブリダイゼーション複合体の検出精度を調整することができる。
2-2.RT-qPCR
表6に示す各プライマー及びプローブを用いて、One Step PrimeScript(登録商標)III RT-qPCR Mix,with UNG(タカラバイオ社製)のマニュアルに従い、以下の表7に示すマルチプレックスRT-qPCR用反応液を調製した。なお、One Step PrimeScript(登録商標)III RT-qPCR Mix,with UNGは、耐熱性逆転写酵素PrimeScript(登録商標)III RTase、耐熱性Taq DNAポリメラーゼ、dNTPs(dATP、dCTP、dGTP、dTTP及びdUTPを含有)、バッファー成分及びUracil-N-glycosylase(UNG)を含有する。
Figure 2023036344000007
鋳型RNAとして、市販の6種類の合成RNA(Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 2、Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 15、Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 16、Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 18(いずれもTwist BioScience社製))、及びSARS-CoV-2 ガンマ株陽性コントロールRNA SC2VPC-G、SARS-CoV-2 デルタ株陽性コントロールRNA SC2VPC-D(いずれも日本遺伝子研究所社製)を用いた。Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 2は、野生株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基t、第1450位の第2野生型塩基g、及び第1501位の第3野生型塩基aを有する。Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 15は、アルファ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基t、第1450位の第2野生型塩基g、及び第1501位の第3変異型塩基tを有する。Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 16は、ベータ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基t、及び第1501位の第3変異型塩基tを有し、第1450位の第2野生型塩基gを有しない(第2野生型塩基gがaに置換されている)。SARS-CoV-2 ガンマ株陽性コントロールRNAは、ガンマ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基t、及び第1501位の第3変異型塩基tを有し、第1450位の第2野生型塩基gを有しない(第2野生型塩基gがaに置換されている)。Twist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 18は、カッパ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1変異型塩基g、及び第1501位の第3野生型塩基aを有し、第1450位の第2野生型塩基gを有しない(第2野生型塩基gがcに置換されている)。SARS-CoV-2 デルタ株陽性コントロールRNAは、SARS-CoV-2のデルタ株のスパイクタンパク質遺伝子を模した合成RNAコントロールであり、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1変異型塩基g、1450位の第2野生型塩基g、及び第1501位の第3野生型塩基aを有する。なお、陰性コントロールとして、前記鋳型RNAの代わりに滅菌超純水を用いた以外は同様の組成のマルチプレックスRT-qPCR用反応液を調製した。
マルチプレックスRT-qPCR用反応液を、リアルタイムPCR用検出装置(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社、LightCycler(登録商標)96 System)にセットし、RT-qPCR反応を行った。RT-qPCR反応条件は、52℃5分を1サイクル、95℃20秒を1サイクル、並びに95℃5秒及び60℃30秒を45サイクルとした。RT-qPCRにより得られた増幅曲線に基づき、検出パターンを解析した。
<結果>
得られた検出パターンを表8に示す。
Figure 2023036344000008
表8中の「L452R-P2」はL452R検出用プローブを、「E484-P2」はE484検出用プローブを、「N501Y-P」はN501Y検出用プローブを示す。表8中の「合成RNA2」は鋳型RNAのTwist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 2を、「合成RNA15」は鋳型RNAのTwist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 15を、「合成RNA16」は鋳型RNAのTwist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 16を、「合成RNASC2VPC-G」は鋳型RNAのSARS-CoV-2 ガンマ株陽性コントロールRNA SC2VPC-Gを、「合成RNA18」は鋳型RNAのTwist Synthetic SARS-CoV-2 RNA control 18を、「合成RNASC2VPC-D」は鋳型RNAのSARS-CoV-2 デルタ株陽性コントロールRNA SC2VPC-Dを示す。表8において、各プローブによるハイブリダイゼーション複合体が検出された場合は「P(陽性)」と、検出されなかった場合を「N(陰性)」と表記した。
表8に示すように、構築した検出系は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質遺伝子における第1355位及び第1501位の変異型塩基、並びに第1450位の野生型塩基の存在を特異的に検出可能であることが分かった。
以上より、3種のプローブを用いることにより、アルファ株、ベータ株/ガンマ株、デルタ株、カッパ株、野生株を、5つの異なる検出パターンにより区別して検出することができた。また、LightCycler(登録商標)96 Systemが有するチャネルのうち3つのチャネルを用いて、1回の反応で、3種全てのハイブリダイゼーション複合体の有無を検出することができた。
3.実施例3
3-1.プライマープローブセット試薬及びキットの製造
以下の手順により、SARS-CoV-2の型を判定する方法に用いるプライマープローブセット試薬、及び当該プライマープローブセット試薬を含むキット(SARS-CoV-2型判別キット)を製造する。
表3又は表6に示すフォワードプライマー及びリバースプライマーを含むプライマーセット、並びに表3又は表6に示すL452R検出用プローブ、E484検出用プローブ及びN501Y検出用プローブを含むプローブセットを、TE緩衝液(10mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に溶解し、プライマーセット及びプローブセットを含む一体の組成物であるプライマープローブセット試薬を調製する。前記プライマープローブセット試薬と、RT-PCR酵素ミックス試薬(One Step PrimeScript(登録商標)III RT-qPCR Mix,with UNG(タカラバイオ株式会社製))と、滅菌超純水と、取扱説明書とを組み合わせて、SARS-CoV-2の型判別のためのキット(SARS-CoV-2型判別キット)を構成する。
3-2.プライマープローブセット試薬及びキットの使用
前記プライマープローブセット試薬及びSARS-CoV-2型判別キットは、以下の手順により使用することができる。
新型コロナウイルスに感染した患者から取得された唾液検体、鼻咽頭拭い液検体又は咽頭拭い液検体に由来するトータルRNAを鋳型として、前記SARS-CoV-2型判別キットを構成するプライマープローブセット試薬、RT-PCR酵素ミックス試薬及び滅菌超純水を用いてRT-qPCR反応を行う。リアルタイムPCR用検出装置は、LightCycler(登録商標)96 System(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を使用する。RT-qPCR反応条件は、52℃5分を1サイクル、95℃20秒を1サイクル、並びに95℃5秒及び60℃30秒を45サイクルとする。RT-qPCRにより得られる増幅曲線に基づき、検出パターンを解析することにより、唾液検体、鼻咽頭拭い液検体又は咽頭拭い液検体中に含まれるSARS-CoV-2の型を判定することができる。また、LightCycler(登録商標)96 Systemが有するチャネルのうち3つのチャネルを用いて、1回の反応で、3種全てのハイブリダイゼーション複合体の有無を検出することができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (13)

  1. SARS-CoV-2の型を判定する方法であって、
    被検SARS-CoV-2に由来する、スパイクタンパク質遺伝子におけるN(Nは2以上の整数)個の変異位置を含む塩基配列を含む核酸と、N種のプローブとを接触させ、前記核酸と、前記N種のプローブのそれぞれとが形成するハイブリダイゼーション複合体の有無を検出すること、並びに
    前記検出の結果に基づいて、前記被検SARS-CoV-2の型を判定すること
    を含み、
    前記N種のプローブは、前記遺伝子における前記N個の変異位置の各々に対して設計された、第1プローブから第Nプローブまでを含み、
    前記N種のプローブの各々である第nプローブ(nは1からNまでの整数)は、第n変異位置が野生型塩基である前記遺伝子の前記野生型塩基を含む部分、及び、第n変異位置が変異型塩基である前記遺伝子の前記変異型塩基を含む部分の一方のみとハイブリダイズすることができ、
    前記第nプローブの少なくとも1つは、第n変異位置が野生型塩基である前記遺伝子の前記野生型塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、前記第nプローブの少なくとも1つは、第n変異位置が変異型塩基である前記遺伝子の前記変異型塩基を含む部分とハイブリダイズすることができる、
    ことを特徴とする方法。
  2. 前記Nは2以上4以下の整数である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記遺伝子の野生型のDNA塩基配列は、配列番号1に示す塩基配列であり、
    前記Nは3であり、
    第1変異位置は配列番号1に示す塩基配列の第1355位であり、
    第2変異位置は配列番号1に示す塩基配列の第1450位であり、
    第3変異位置は配列番号1に示す塩基配列の第1501位であり、
    第1プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基tが第1変異型塩基gに置換された第1変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
    第2プローブは、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、第1450位の第2野生型塩基g又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列における第1450位の前記第2野生型塩基gが他の第2変異型塩基に置換された第2変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第2変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
    第3プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1501位の第3野生型塩基aが第3変異型塩基tに置換された第3変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3変異型塩基又はその相補配列を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができない、
    請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1プローブは、
    (1a)前記第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列1a、
    (1b)前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、前記第1変異型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列1aと同一である塩基配列1b、
    (1c)前記塩基配列1aにおいて、前記第1変異型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列1c、
    (1d)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、又は、前記塩基配列1cの相補配列である塩基配列1d、或いは
    (1e)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、前記塩基配列1c、又は、前記塩基配列1dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列1e
    を含み、
    前記第2プローブは、
    (2a)配列番号1に示す塩基配列に含まれる、前記第2野生型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列2a、
    (2b)前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、前記第2野生型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列2aと同一である塩基配列2b、
    (2c)前記塩基配列2aにおいて、前記第2野生型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列2c、
    (2d)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、又は、前記塩基配列2cの相補配列である塩基配列2d、或いは
    (2e)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、前記塩基配列2c、又は、前記塩基配列2dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列2e
    を含み、
    前記第3プローブは、
    (3a)前記第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基tを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列3a、
    (3b)前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、前記第3変異型塩基tに対応する塩基が前記塩基配列3aと同一である塩基配列3b、
    (3c)前記塩基配列3aにおいて、前記第3変異型塩基tに対応する塩基以外の1~3
    個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列3c、
    (3d)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、又は、前記塩基配列3cの相補配列である塩基配列3d、或いは
    (3e)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、前記塩基配列3c、又は、前記塩基配列3dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列3e
    を含む、
    請求項3に記載の方法。
  5. 前記塩基配列1aは、前記第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基g、前記第1変異型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第1変異型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第1コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
    前記塩基配列1bは、前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、前記第1コア部分に対応する塩基が前記塩基配列1aと同一であり、
    前記塩基配列1cは、前記塩基配列1aにおいて、前記第1コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されており、
    前記塩基配列2aは、配列番号1に示す塩基配列に含まれる、前記第2野生型塩基g、前記第2野生型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第2野生型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第2コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
    前記塩基配列2bは、前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、前記第2コア部分に対応する塩基が前記塩基配列2aと同一であり、
    前記塩基配列2cは、前記塩基配列2aにおいて、前記第2コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されており、
    前記塩基配列3aは、前記第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基t、前記第3変異型塩基tの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第3変異型塩基tの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第3コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
    前記塩基配列3bは、前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、前記第3コア部分に対応する塩基が前記塩基配列3aと同一であり、
    前記塩基配列3cは、前記塩基配列3aにおいて、前記第3コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されている、
    請求項4に記載の方法。
  6. 前記N種のプローブの各々は、互いに異なる波長の蛍光を発するレポーター蛍光物質により標識されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記被検SARS-CoV-2に由来する、スパイクタンパク質遺伝子におけるN個の変異位置を含む塩基配列を含む前記核酸と、前記N種のプローブとを接触させ、前記核酸と、前記N種のプローブのそれぞれとが形成するハイブリダイゼーション複合体の有無を検出することが、
    前記被検SARS-CoV-2のスパイクタンパク質遺伝子の一本鎖RNAから誘導されたDNAを鋳型とし、前記DNAにおける前記N個の変異位置を含む塩基配列を増幅する一対のプライマーセットを用い、前記N種のプローブの存在下で核酸増幅反応を行うこと、並びに
    前記核酸増幅反応の進行中又は完了後に、前記核酸増幅反応による増幅産物と、前記N種のプローブのそれぞれとが形成するハイブリダイゼーション複合体の有無を検出すること
    を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記被検SARS-CoV-2に由来する核酸において、ヌクレオカプシドタンパク質遺伝子の塩基配列を検出することを更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 第1プローブ、第2プローブ、及び、第3プローブを含み、
    前記第1プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1355位の第1野生型塩基tが第1変異型塩基gに置換された第1変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第1野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
    前記第2プローブは、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、第1450位の第2野生型塩基g又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列における第1450位の前記第2野生型塩基gが他の第2変異型塩基に置換された第2変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第2変異型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができず、
    前記第3プローブは、配列番号1に示す塩基配列における第1501位の第3野生型塩基aが第3変異型塩基tに置換された第3変異塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3変異型塩基又はその相補配列を含む部分とハイブリダイズすることができ、且つ、配列番号1に示す塩基配列又はその相補配列を含む核酸の、前記第3野生型塩基又はその相補塩基を含む部分とハイブリダイズすることができない、
    ことを特徴とする、SARS-CoV-2の型を判定するためのプローブセット。
  10. 前記第1プローブは、
    (1a)前記第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列1a、
    (1b)前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、前記第1変異型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列1aと同一である塩基配列1b、
    (1c)前記塩基配列1aにおいて、前記第1変異型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列1c、
    (1d)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、又は、前記塩基配列1cの相補配列である塩基配列1d、或いは
    (1e)前記塩基配列1a、前記塩基配列1b、前記塩基配列1c、又は、前記塩基配列1dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列1e
    を含み、
    前記第2プローブは、
    (2a)配列番号1に示す塩基配列に含まれる、前記第2野生型塩基gを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列2a、
    (2b)前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、前記第2野生型塩基gに対応する塩基が前記塩基配列2aと同一である塩基配列2b、
    (2c)前記塩基配列2aにおいて、前記第2野生型塩基gに対応する塩基以外の1~3個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列2c、
    (2d)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、又は、前記塩基配列2cの相補配列である塩基配列2d、或いは
    (2e)前記塩基配列2a、前記塩基配列2b、前記塩基配列2c、又は、前記塩基配列2dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列2e
    を含み、
    前記第3プローブは、
    (3a)前記第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基tを含む連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列である塩基配列3a、
    (3b)前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、前記第3変異型塩基tに対応する塩基が前記塩基配列3aと同一である塩基配列3b、
    (3c)前記塩基配列3aにおいて、前記第3変異型塩基tに対応する塩基以外の1~3
    個の塩基が、他の塩基に置換されている塩基配列3c、
    (3d)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、又は、前記塩基配列3cの相補配列である塩基配列3d、或いは
    (3e)前記塩基配列3a、前記塩基配列3b、前記塩基配列3c、又は、前記塩基配列3dにおいて、1以上のtがuに置換されている塩基配列3e
    を含む、
    請求項9に記載のプローブセット。
  11. 前記塩基配列1aは、前記第1変異塩基配列に含まれる、前記第1変異型塩基g、前記第1変異型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第1変異型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第1コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
    前記塩基配列1bは、前記塩基配列1aと90%以上の配列同一性を有し、前記第1コア部分に対応する塩基が前記塩基配列1aと同一であり、
    前記塩基配列1cは、前記塩基配列1aにおいて、前記第1コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されており、
    前記塩基配列2aは、配列番号1に示す塩基配列に含まれる、前記第2野生型塩基g、前記第2野生型塩基gの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第2野生型塩基gの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第2コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
    前記塩基配列2bは、前記塩基配列2aと90%以上の配列同一性を有し、前記第2コア部分に対応する塩基が前記塩基配列2aと同一であり、
    前記塩基配列2cは、前記塩基配列2aにおいて、前記第2コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されており、
    前記塩基配列3aは、前記第3変異塩基配列に含まれる、前記第3変異型塩基t、前記第3変異型塩基tの5’側に隣接する4塩基の部分、及び、前記第3変異型塩基tの3’側に隣接する4塩基の部分を含む第3コア部分を少なくとも含む、連続した10塩基以上40塩基以下の部分塩基配列であり、
    前記塩基配列3bは、前記塩基配列3aと90%以上の配列同一性を有し、前記第3コア部分に対応する塩基が前記塩基配列3aと同一であり、
    前記塩基配列3cは、前記塩基配列3aにおいて、前記第3コア部分に対応する塩基以外の1~3個の塩基が他の塩基に置換されている、
    請求項10に記載のプローブセット。
  12. 前記第1プローブ、前記第2プローブ、及び、前記第3プローブの各々は、互いに異なる波長の蛍光を発するレポーター蛍光物質により標識されている、請求項9~11のいずれか1項に記載のプローブセット。
  13. 請求項9~12のいずれか1項に記載のプローブセット、及び、
    配列番号1に示す塩基配列を含むDNAのうち、配列番号1に示す塩基配列の第1355位から第1501位までを少なくとも含む部分を、核酸増幅反応により増幅可能な一対のプライマーセット
    を含む、プライマープローブセット。
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