JP2023036307A - 発光性ナノ粒子複合体、インク組成物、光変換層およびカラーフィルタ - Google Patents

発光性ナノ粒子複合体、インク組成物、光変換層およびカラーフィルタ Download PDF

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Masahito Igari
栄志 乙木
Eiji Otogi
麻里子 利光
Mariko TOSHIMITSU
方大 小林
Masahiro Kobayashi
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Abstract

【課題】大気保管安定性および耐光性に優れ、特に外部量子効率の維持安定性に優れる発光性ナノ粒子複合体を提供すること。また、かかる発光性ナノ粒子複合体を含有する、分散性に優れ、発光特性の低下を防止し得るインク組成物、発光特性に優れる光変換層およびカラーフィルタを提供すること。【解決手段】発光性ナノ粒子の表面に有機リガンドを有する発光性ナノ粒子複合体であって、前記発光性ナノ粒子は、コアにインジウムおよびリンを含有するコアシェル構造型発光性ナノ粒子であり、前記発光性ナノ粒子において、インジウムに対する塩素のモル比が0.80未満であり、前記有機リガンドは、メルカプト基を1つ以上有するメルカプト化合物を1種以上含有する、発光性ナノ粒子複合体。【選択図】なし

Description

本発明は、発光性ナノ粒子複合体、インク組成物、光変換層およびカラーフィルタに関する。
液晶表示装置は、携帯端末、テレビ、モニター等の用途に広く用いられている。これらの液晶表示装置に使用されるカラーフィルタは、ブラックマトリクスと、赤色、緑色および青色の画素パターンとを形成するフォトリソグラフィ法によって製造されている。具体的には、フォトリソグラフィ法では、顔料や染料等の色材を含有する感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥後、UV照射でマスク露光し、アルカリ現像により未硬化部分を除去した後、焼成することが行われる。また、近年は、白色光を発光する有機EL素子とカラーフィルタとを組み合わせた自発光表示装置も、テレビ、モニター等の用途に広く用いられている。
しかしながら、これらのカラーフィルタを使用した表示装置では、原理的に少なくとも67%の光がカラーフィルタで吸収されるため、カラーフィルタ自体の透過率の向上による低消費電力化には根本的な限界があった。
この低消費電力化に対する課題を解決するため、近年、従来のカラーフィルタに代わって、発光性ナノ結晶粒子である量子ドットを、光変換層に使用する方法が注目されている。
この光変換層は、ブラックマトリクスを形成した基板上に、青色光により励起され、赤色の蛍光を発する赤色発光性量子ドット層と、青色光により励起され、緑色の蛍光を発する緑色発光性量子ドット層と、青色光を透過する青色光透過層とを形成してなる。かかる光変換層と、青色発光するLEDバックライトや青色発光する有機EL素子と組み合わせることにより、液晶表示装置や自発光表示装置が構成されている。
このような光変換層を備える表示装置では、従来のカラーフィルタを備える表示装置よりも光利用効率を高めることができる。また、量子ドットから発せられる半値幅の小さいスペクトルを有する蛍光を、そのまま表示装置の色表示に利用できるため、色再現範囲の広い表示装置とすることができる。
例えば、光変換層を、量子ドットを含む感光性樹脂組成物を用いて、基板の一方の面側に塗膜を形成し、フォトリソグラフィ法によりパターニングした後、得られた塗膜を加熱処理により硬化させて製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、フォトリソグラフィ法によれば、工程数が多く煩雑であり、また、アルカリ現像により除去される感光性樹脂組成物が発生することから、原材料の無駄が必然的に生じることになる。
原材料の無駄を低減できる手法として、インクジェット法による製造方法が知られている。インクジェット法によれば、光変換層における赤色発光性量子ドット層と緑色発光性量子ドット層とを同時に形成することができるため、製造効率を高められる。また、吐出されたインク(感光性樹脂組成物)の全てを使用することができるため、フォトリソグラフィ法のような原材料の無駄も生じ難い。例えば、量子ドットを分散させたインクジェットインクとしては、青色発光する有機EL素子との組み合わせで使用される光変換層のパターニングに使用する例が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、光変換層の光学特性(例えば、外部量子効率(EQE)を向上させる)観点から、発光性ナノ結晶粒子の含有量を高めたインク組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、発光性ナノ結晶粒子を特定の化合物で表面処理し、その表面の少なくとも一部に当該化合物をリガンドとして有することで、分散安定性や光学特性を改良し得ることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2016-53716号公報 国際公開第2008/001693号 国際公開第2020/162552号 特開2020-105491号公報
量子ドットを含有するインク組成物やその製膜品は、大気に含まれる酸素や水分が原因で劣化する問題がある。量子ドットを含有するインク組成物を大面積の領域に供給して塗布物や印刷物を製造する際に、これらを完全に大気から隔離することは、塗布装置や印刷装置の大部分を高純度の不活性ガス雰囲気下に配置せざるを得ず、巨額の設備投資等が必要となる。
また、光変換層、特に画素部は光に曝される環境で使用されるため、光によって外部量子効率が低下しないこと(光安定性)が求められるが、従来の発光性ナノ粒子を含むインク組成物を使用した場合、必ずしも充分な光安定性を有する画素部が得られるとは言えない。
本発明者らの検討によると、発光性ナノ結晶粒子である量子ドットを特定の化合物で表面処理する手法につき、含硫黄化合物はカルボン酸系化合物に比べて量子ドットの大気保管安定性が向上し、外部量子効率が維持される傾向となる。しかしながら、耐光性、特に青色光に対する外部量子効率の向上については、なお改善の余地があることが判明した。
本発明の目的は、大気保管安定性および耐光性に優れ、特に外部量子効率の維持安定性に優れる発光性ナノ粒子複合体を提供することにある。また、本発明の目的は、かかる発光性ナノ粒子複合体を含有する、分散性に優れ、発光特性の低下を防止し得るインク組成物、発光特性に優れる光変換層およびカラーフィルタを提供することにある。
本発明は、下記(1)~(17)に関する。
(1)発光性ナノ粒子の表面に有機リガンドを有する発光性ナノ粒子複合体であって、
前記発光性ナノ粒子は、コアにインジウムおよびリンを含有するコアシェル構造型発光性ナノ粒子であり、
前記発光性ナノ粒子において、インジウムに対する塩素のモル比が0.80未満であり、
前記有機リガンドは、メルカプト基を1つ以上有するメルカプト化合物を1種以上含有する、発光性ナノ粒子複合体。
(2)前記メルカプト化合物の溶解度パラメータ(SP値)δが9.0cal0.5cm1.5以上である、(1)の発光性ナノ粒子複合体。
(3)前記メルカプト化合物のpKaが8.1以上である、(1)または(2)の発光性ナノ粒子複合体。
(4)前記メルカプト化合物の分子量が250より大きい、(1)~(3)のいずれかの発光性ナノ粒子複合体。
(5)(1)~(4)のいずれかの発光性ナノ粒子複合体と、光重合性化合物とを含有する、インク組成物。
(6)前記光重合性化合物が、光ラジカル重合性化合物である、(5)のインク組成物。
(7)前記光重合性化合物が、アルカリ不溶性である、(5)または(6)のインク組成物。
(8)さらに、酸化防止剤を含有する、(5)~(7)のいずれかのインク組成物。
(9)さらに、亜鉛を中心金属として有し、該亜鉛に配位する2つの配位子を有する亜鉛化合物を含有する、(5)~(8)のいずれかのインク組成物。
(10)インクジェット方式による液滴吐出法に用いられる、(5)~(9)のいずれかのインク組成物。
(11)カラーフィルタ用である、(5)~(10)のいずれかのインク組成物。
(12)(5)~(11)のいずれかのインク組成物の硬化物からなる光変換層。
(13)(5)~(11)のいずれかのインク組成物の硬化物からなる光変換層がアルカリ不溶性である、光変換層。
(14)複数の画素部を備える光変換層であって、前記複数の画素部は、(5)~(11)のいずれかのインク組成物の硬化物を含む画素部を有する、光変換層。
(15)前記複数の画素部間に設けられた遮光部を更に備え、
前記複数の画素部は、前記硬化物を含み、且つ、前記発光性ナノ粒子複合体として、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する発光性ナノ粒子複合体を含有する、第1の画素部と、
前記硬化物を含み、且つ、前記発光性ナノ粒子複合体として、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する発光性ナノ粒子複合体を含有する、第2の画素部と、
を有する、(12)~(14)のいずれかの光変換層。
(16)前記複数の画素部は、420~480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上である第3の画素部を更に有する、(12)~(15)のいずれかの光変換層。
(17)(12)~(16)のいずれかの光変換層を備える、カラーフィルタ。
本発明によれば、大気保管安定性および耐光性に優れ、特に外部量子効率の維持安定性に優れる発光性ナノ粒子複合体、かかる発光性ナノ粒子複合体を含有する、分散性に優れ、発光特性の低下を防止し得るインク組成物、発光特性に優れる光変換層およびカラーフィルタを提供できる。
本発明の一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
本発明は、発光性ナノ粒子の表面に有機リガンドを有する発光性ナノ粒子複合体であって、前記発光性ナノ粒子は、コアにインジウム(In)およびリン(P)を含有するコアシェル構造型発光性ナノ粒子であり、
前記発光性ナノ粒子において、Inに対するClのモル比が0.80未満であり、
前記有機リガンドは、メルカプト基を1つ以上有するメルカプト化合物を1種以上含有する、発光性ナノ粒子複合体である。
本発明の発光性ナノ粒子複合体は、例えば、カラーフィルタ等が有する光変換層の画素部を形成するためのインク組成物に用いられる。すなわち、本発明の発光性ナノ粒子複合体は、光変換層形成用(例えば、カラーフィルタ画素部の形成用)のインク組成物に使用することが好ましい。かかるインク組成物は発光性ナノ粒子複合体の分散性に優れ、かつ光学特性の低下を防止することができる。
上記効果が得られる理由は、明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察している。
メルカプト化合物は金属元素との共有結合性が高く、金属元素を含有する半導体材料を表面に有する発光性ナノ粒子への配位能(結合力)が大きい。そのため、発光性ナノ粒子の表面が有機リガンドにより十分に覆われることで、大気に含まれる酸素や水分による酸化が抑制され、大気下においても高い外部量子効率を維持することができる。
また、発光性ナノ粒子表面に結合した有機リガンドは、結晶内部の電荷状態にも影響しており、有機リガンドの種類や有機リガンドの脱着によっても発光性ナノ粒子の発光特性は変化しうる。とくに、発光性ナノ粒子の結晶内部にClが含まれると、光照射下において、硫黄元素の酸化状態の変化などによるメルカプト化合物の脱着に伴いIn―ClまたはZn-Clの結合力が弱まり、結晶内部にダングリングボンドなどの欠陥を発生する。そのため、Clが一定量未満の発光性ナノ粒子は、結晶内の欠陥に起因する劣化が抑制され、光照射下における外部量子効率の安定性に優れる。
本発明の発光性ナノ粒子複合体はコアシェル構造型である。コアにInおよびPを構成元素として含むのでバンドギャップが狭いことから、可視光を発光する用途に好適に用いることができる。
また、有機リガンドとして、特定の溶解度パラメータを有するメルカプト化合物を選択することにより、発光性ナノ粒子および光重合性化合物との双方との親和性が高まり、これらがインク組成物中に均一に分布することができる。
このため、インク組成物中において、発光性ナノ粒子複合体が均一に分散するとともに、発光性ナノ粒子の劣化を防止することができる。
その結果、本発明によれば、発光性ナノ粒子複合体の分散性に優れ、かつ光学特性の低下を十分に防止できるインク組成物を得られると考えられる。かかる光学特性の低下防止効果は、インク組成物の保管時、画素部の作製時等において好適に発揮される。
また、本発明の発光性ナノ粒子複合体を含有するインク組成物からは、優れた外部量子効率を有する画素部が得られる。さらに、本発明のインク組成物によれば、発光性ナノ粒子が均一に分散するため、インクジェット方式による液滴吐出法(以下、「インクジェット法」とも記載する。)において優れた吐出安定性が得られ易い。すなわち、本発明のインク組成物は、インクジェット法に好適に使用することができる。
さらに、本発明のインク組成物によれば、発光性ナノ粒子複合体が特定のメルカプト化合物を有することにより、光による外部量子効率の低下が抑制される。すなわち、本発明のインク組成物によれば、耐光性(光安定性)に優れる画素部を形成し易い。
一実施形態のインク組成物は、カラーフィルタの製造用のインクとして適用が可能であるが、比較的高額である発光性ナノ粒子、溶剤等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけで、画素部(光変換層)を形成できる点においても、フォトリソグラフィ法よりインクジェット法に適合するように適切に調製して用いることが好ましい。かかるインク組成物は、発光性ナノ粒子複合体および光重合性化合物に加えて、必要に応じて、後述する光散乱性粒子、高分子分散剤、有機溶剤等の他の成分をさらに含有することができる。
[発光性ナノ粒子複合体]
まず、本発明の発光性ナノ粒子複合体を構成する、発光性ナノ粒子および有機リガンドについて説明する。
[発光性ナノ粒子]
一般に、発光性ナノ粒子は、励起光を吸収して蛍光または燐光を発するナノサイズの結晶体である。この発光性ナノ粒子は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
発光性ナノ粒子は、例えば、所定の波長の光を吸収することにより、吸収した波長とは異なる波長の光(蛍光または燐光)を発することができる。発光性ナノ粒子は、波長605~665nmの範囲に発光ピークを有する光(赤色光)を発する、赤色発光性ナノ結晶粒子であってよく、波長500~560nmの範囲に発光ピークを有する光(緑色光)を発する、緑色発光性ナノ結晶粒子であってよく、波長420~480nmの範囲に発光ピークを有する光(青色光)を発する、青色発光性ナノ結晶粒子であってもよい。
また、発光性ナノ粒子が吸収する光は、例えば、波長400nm以上500nm未満(特に、波長420~480nm)の範囲の光(青色光)、または波長200nm~400nmの範囲の光(紫外光)であってよい。
なお、発光性ナノ粒子の発光ピークの波長は、例えば、分光蛍光光度計を用いて測定される蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて確認することができる。
赤色発光性ナノ結晶粒子は、波長665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下または630nm以下の範囲に発光ピークを有することが好ましく、波長628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上または605nm以上の範囲に発光ピークを有することが好ましい。
なお、これらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値および下限値は、任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性ナノ結晶粒子は、波長560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下または530nm以下の範囲に発光ピークを有することが好ましく、波長528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上または500nm以上の範囲に発光ピークを有することが好ましい。
青色発光性ナノ結晶粒子は、波長480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下または450nm以下の範囲に発光ピークを有することが好ましく、波長450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上または420nm以上の範囲に発光ピークを有することが好ましい。
発光性ナノ粒子が発する光の波長(発光色)は、井戸型ポテンシャルモデルのシュレディンガー波動方程式の解によれば、発光性ナノ粒子のサイズ(例えば、粒子径)に依存するが、発光性ナノ粒子が有するエネルギーギャップにも依存する。そのため、使用する発光性ナノ粒子の構成材料およびサイズを変更することにより、発光色を選択(調節)することができる。
発光性ナノ粒子は、半導体材料を含む発光性ナノ粒子(発光性半導体ナノ粒子)であってよい。かかる発光性ナノ粒子としては、量子ドット、量子ロッド等が挙げられる。これらの中でも、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、発光性ナノ粒子としては量子ドットが好ましい。
本発明の発光性ナノ粒子複合体を構成する発光性ナノ粒子は、コアにインジウム(In)およびリン(P)を含有する、コアシェル構造型の発光性ナノ粒子である。
すなわち、発光性ナノ粒子の構造は、第1半導体材料としてInおよびPを含むコアと、このコアの少なくとも一部を被覆し、第1半導体材料と異なる第2半導体材料を含むシェルとを有する。
また、発光性ナノ粒子は、第2半導体材料を含むシェル(第1シェル)の他に、このシェルの少なくとも一部を被覆し、第1および第2半導体材料と異なる第3半導体材料を含むシェル(第2シェル)をさらに有していてもよい。換言すれば、発光性ナノ粒子の構造は、コアと第1シェルと第2シェルとからなる構造(コア/シェル/シェル構造)であってもよい。
さらにコアおよびシェルのそれぞれは、2種以上の半導体材料を含む混晶(例えば、InP+GaP、ZnS+ZnSe等)であってもよい。
本発明の発光性ナノ粒子複合体はコアにInおよびPを構成元素として含むのでバンドギャップが狭いことから、可視光を発光する用途に好適に用いることができる。シェルをバンドギャップの大きい半導体材料とすることで、光励起によって生成された励起子(電子-正孔対)はコア内に閉じ込められる。その結果、発光性ナノ粒子表面での無輻射遷移の確率が減少し、外部量子効率の安定性が向上する。
前記発光性ナノ粒子のコアを構成する、InおよびPを含有する第1半導体材料としては、例えば、InP、InNP、InPAs、InPSb、GaInP、GaInNP、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlPAsおよびInAlPSbが挙げられる。
前記発光性ナノ粒子のシェルを構成する、第2半導体材料または第3半導体材料は、II-VI族半導体、III-V族半導体、I-III-VI族半導体、IV族半導体およびI-II-IV-VI族半導体からなる群より選択される少なくとも1種の半導体材料を含むことが好ましい。
具体的な半導体材料としては、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaInP、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe、AgInSe、CuGaSe、CuInS、CuGaS、CuInSe、AgInS、AgInGaS、AgGaSe、AgGaS、C、SiおよびGe等が挙げられる。
発光性ナノ粒子は、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させ得る観点から、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、InP、InAs、InSb、GaP、GaAs、GaSb、AgInS、AgInSe、AgInTe、AgInGaS、AgGaS、AgGaSe、AgGaTe、CuInS、CuInSe、CuInTe、CuGaS、CuGaSe、CuGaTe、Si、C、GeおよびCuZnSnSからなる群より選択される少なくとも1種の半導体材料を含むことが好ましい。
本発明の発光性ナノ粒子複合体を構成する発光性ナノ粒子として具体的には、例えば、InPのコアおよびZnSのシェルを備えるコア/シェル構造のナノ粒子、InPのコアおよびZnSとZnSeとの混晶のシェルを備えるコア/シェル構造のナノ粒子、InPのコア、ZnSeの第1シェルおよびZnSの第2シェルを備えるコア/シェル/シェル構造のナノ粒子、InPのコア、ZnSとZnSeとの混晶の第1シェルおよびZnSの第2シェルを備えるコア/シェル/シェル構造ナノ粒子等が挙げられる。これらは赤色発光性ナノ結晶粒子、緑色発光性ナノ結晶粒子、および青色発光性ナノ結晶粒子として用いることができる。
また、本発明の発光性ナノ粒子複合体を構成する発光性ナノ粒子において、Inに対するClのモル比は、0.80未満である。Inに対するClのモル比は、0.50未満であるのが好ましく、0.20未満であるのがより好ましい。また、Inに対するClのモル比は、所望の発光特性が得られ易い観点から、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。
Clはコアおよびシェルの少なくとも一方に含有されていてもよく、両方に含有されていてもよい。発光性ナノ粒子における、Inに対するClのモル比が前記を満足すると、大気保管安定性および耐光性に優れ、特に外部量子効率の維持安定性に優れる。
なお、Inに対するClのモル比は蛍光X線分析装置(XRF)により検出されたInおよびClの濃度比から求められる。
なお、発光性ナノ粒子は、同一の化学組成で、それ自体の平均粒子径を調整することにより、発光性ナノ粒子から発光させるべき色を赤色にも緑色にも変更することができる。
また、発光性ナノ粒子は、それ自体として、人体等に対する悪影響が極力低いものを使用することが好ましい。したがって、カドミウム、セレン等が極力含まれない発光性ナノ粒子を単独で使用するか、上記元素(カドミウム、セレン等)を含有する発光性ナノ粒子を使用する場合、これらの元素が極力少なくなるように、その他の発光性ナノ粒子と組み合わせることが好ましい。
発光性ナノ粒子の形状は、特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。発光性ナノ粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等であってもよい。
ただし、発光性ナノ粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を使用することが、後述する、本発明の発光性ナノ粒子複合体を含有するインク組成物の均一性および流動性をより高められる点で好ましい。
発光性ナノ粒子の平均粒子径(体積平均径)は、所望の波長の発光が得られ易い観点、分散性および保存安定性に優れる観点から、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましい。
また、発光性ナノ粒子の平均粒子径は、所望の波長の発光が得られ易い観点から、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。
なお、発光性ナノ粒子の平均粒子径(一次粒子径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)により、任意の複数個の発光性ナノ粒子を直接観察し、投影二次元映像よる長短径比からそれぞれの粒子径を算出し、その平均値を求められる。なお、発光性ナノ粒子の大きさや形状は、その化学組成、構造、製造方法や製造条件等に依存すると考えられる。
発光性ナノ粒子は、有機溶剤、光重合性化合物等の中にコロイド形態で分散可能な粒子を好適に使用することができる。有機溶剤は、後述する通りである。
発光性ナノ粒子としては、市販品を用いることもできる。発光性ナノ粒子の市販品としては、例えば、NN-ラボズ社製のインジウムリン/硫化亜鉛、D-ドット、アルドリッチ社製のInP/ZnS等が挙げられる。
[有機リガンド]
本発明の発光性ナノ粒子複合体を構成する有機リガンドは、メルカプト基を1つ以上有するメルカプト化合物(以下、単に「メルカプト化合物」とも記す。)を1種以上含有する。本発明の発光性ナノ粒子複合体は、前記した、コアにInおよびPを含有する、コアシェル構造型の発光性ナノ粒子の表面(シェル部)が、メルカプト化合物によってパッシベーション(修飾)されている。
この有機リガンドとしてのメルカプト化合物は、メルカプト基(-SH)を有するので発光性ナノ粒子の表面に配位結合することができる。
メルカプト化合物は、好適には、下記一般式で示される構造を有する。
一般式:
-[O-(X)-R]-[O-(X)-R]-(X)-Y-(X)-R-SH

上記一般式中、Rは炭素数1~10の炭化水素基を表し、R、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1~5の2価の炭化水素基を表し、Xはカルボニル基を表し、Yは-O-または-NH-を表す。a、b、cおよびdはそれぞれ独立して0または1を表す。mは0~20の正数を表す。nは1~20の正数を表す。
が表す炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基等が挙げられる。中でも、Rは、メチル基、フェニル基またはベンジル基であることが好ましい。
、RおよびRがそれぞれ独立して表す炭素数1~5の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。中でも、RおよびR3は、エチレン基またはメチルエチレン基であることが好ましく、Rは、エチレン基またはトリメチレン基であることが好ましい。
mは0~20の正数を表し、0以上5以下であるのがより好ましい。
nは1~20の正数を表し、1以上10以下であるのがより好ましい。
メルカプト化合物は、光重合性化合物や有機溶剤等との親和性を確保する観点から、上記のとおり脂肪族炭化水素基を有していてよい。かかる脂肪族炭化水素基は置換または無置換であってよく、直鎖状または分岐状でも、飽和または不飽和でもよい。
なお、置換の脂肪族炭化水素は、脂肪族炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子で置換された基であってもよい。置換の脂肪族炭化水素基は、例えば、(ポリ)オキシアルキレン基を含んでいてよい。ここで、「(ポリ)オキシアルキレン基」とは、オキシアルキレン基、および2以上のアルキレン基がエーテル結合で連結したポリオキシアルキレン基の少なくとも1種を意味する。
メルカプト化合物は、その溶解度パラメータ(SP値)δが9.0cal0.5cm1.5以上であるのが好ましく、9.0~11.0cal0.5cm1.5の範囲であるのがより好ましい。
ここで、溶解度パラメータδの値は、コンピュータソフトウェア(Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP))を使用して推算したδD、δPおよびδHを用いて、下式にて求めることができる。
Figure 2023036307000001
かかる溶解度パラメータを有するメルカプト化合物を有機リガンドとして使用することにより、発光性ナノ粒子および光重合性化合物との双方との親和性が高まり、これらがインク組成物中に均一に分布することができる。このため、インク組成物中において、発光性ナノ粒子複合体が均一に分散するとともに、発光性ナノ粒子の劣化を防止することができる。
その結果、本発明によれば、発光性ナノ粒子複合体の分散性に優れ、かつ光学特性の低下を十分に防止できるインク組成物を得られると考えられる。かかる光学特性の低下防止効果は、インク組成物の保管時、画素部の作製時等において好適に発揮される。
メルカプト化合物のpKaは、8.1以上であるのが好ましく、9.0以上であるのがより好ましい。メルカプト化合物のpKaは11.2以下であるのが好ましく、10.3以下であるのがより好ましい。
有機リガンドとしてのメルカプト化合物のpKaが大きいと、金属元素との共有結合性が強くなり、金属元素を含有する半導体材料を表面に有する発光性ナノ粒子への配位能(結合力)が大きくなる。このため、有機リガンドの発光性ナノ粒子表面からの脱着が抑制され、耐光性が改善される傾向となる。
メルカプト化合物のpKaは、CAS SciFinderで化学物質検索により確認可能な、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs) Softwareによる計算値を用いることができる。記載のない化合物についてのpKaは、滴定により求めることができる。
メルカプト化合物の分子量は、250より大きいことが好ましく、270より大きいことがより好ましい。また、メルカプト化合物の分子量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られ易い観点から、1000以下であるのが好ましく、800以下であるのがより好ましく、350以下であるのがさらに好ましい。
分子量が250より大きいメルカプト化合物を有機リガンドとして使用することにより、インク組成物の保管時における増粘を防止できるインク組成物を得られると考えられる。
なお、メルカプト化合物の分子量はGC-MS、GPCまたはHNMRで求められる。分子量分布を持つメルカプト化合物の分子量はHNMRで求めるのが好ましく、数平均分子量は250より大きいことが好ましい。
好適なメルカプト化合物として、具体的には、例えば下記の化合物が挙げられる。
Figure 2023036307000002
本発明の発光性ナノ粒子複合体は、前記した発光性ナノ粒子とメルカプト化合物を、好適には後述する有機溶剤中で混合することで得られる。
有機リガンドとしてのメルカプト化合物の使用量は、得られる発光性ナノ粒子複合体の分散安定性の観点および発光特性維持の観点から、発光性ナノ粒子100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上または40質量部以上であってよい。また、メルカプト化合物の使用量は、発光性ナノ粒子100質量部に対して、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下または30質量部以下であってよい。
これらの観点から、メルカプト化合物の使用量は、発光性ナノ粒子100質量部に対して、例えば、10~50質量部であってもよく、20~40質量部であってもよい。
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、溶解度パラメータδが上記範囲から逸脱するメルカプト化合物や、他の有機リガンドを併用してもよい。かかる他の有機リガンドとしては、例えば、TOP(トリオクチルホスフィン)、TOPO(トリオクチルホスフィンオキシド)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、グルコン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、N-ラウロイルサルコシン、N-オレイルサルコシン、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、フェニルホスホン酸、およびオクチルホスフィン酸(OPA)が挙げられる。
以下では、本発明の発光性ナノ粒子複合体および光重合性化合物を含有する、本発明のインク組成物の構成について説明する。なお、本発明はこれらの構成に限定されず、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてもよい。
なお、本明細書において、「インク組成物の硬化物」とは、インク組成物(インク組成物が溶剤成分を含む場合には、乾燥後のインク組成物)中の硬化性成分を硬化させて得られる硬化物である。なお、乾燥後のインク組成物の硬化物中には、溶剤成分が含まれなくてよい。
[光重合性化合物]
光重合性化合物は、光の照射によって重合する化合物であり、例えば、光ラジカル重合性化合物または光カチオン重合性化合物である。光重合性化合物は、光重合性モノマーまたは光重合性オリゴマー(以下、これらを総称して「光重合性モノマー」とも記載する。)のいずれであってもよい。
これらの光重合性化合物は、好ましくは光重合開始剤とともに使用される。光ラジカル重合性化合物は、光ラジカル重合開始剤とともに使用され、光カチオン重合性化合物は、光カチオン重合開始剤とともに使用される。換言すれば、光重合性化合物は、光重合性化合物および光重合開始剤を含有することができる。
なお、光重合性化合物には、光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物とを併用してもよく、光ラジカル重合性と光カチオン重合性を具備した化合物を使用してもよい。また、光重合開始剤には、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤とを併用してもよい。
光ラジカル重合性化合物としては、例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマー(以下、「エチレン性不飽和モノマー」とも言う。)、イソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
ここで、エチレン性不飽和モノマーとは、エチレン性不飽和結合(炭素-炭素二重結合)を有するモノマーを意味する。エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基のようなエチレン性不飽和基を有するモノマーが挙げられる。なお、これらの基を有するモノマーは、「ビニルモノマー」と称される場合がある。
エチレン性不飽和モノマーにおけるエチレン性不飽和結合の数(例えば、エチレン性不飽和基の数)は、1~3であることが好ましい。エチレン性不飽和モノマーは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和モノマーは、優れた吐出安定性と優れた硬化性とを両立させる観点、および外部量子効率がより向上する観点から、エチレン性不飽和基を1つまたは2つ有するモノマーと、エチレン性不飽和基を2つまたは3つ有するモノマーとを含んでいてよい。すなわち、エチレン性不飽和モノマーは、単官能モノマーと2官能モノマーとの組み合わせ、単官能モノマーと3官能モノマーとの組み合わせ、および2官能モノマーと3官能モノマーとの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの組み合わせとすることができる。
エチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基およびビニリデン基の他、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」およびそれに対応する「メタクリレート」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」、「(メタ)アクリロイル」との表現についても同様である。
光重合性化合物は、エチレン性不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、4-アクリロイルモルホリン、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-t-オクチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ドデシル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。
これらの中でも、ドデシル(メタ)アクリレート等の直鎖脂肪族(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
エチレン性不飽和基を2個有するモノマー(2官能モノマー)としては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート[ネオペンチルグリコールエチレンオキシド2モル付加物をジアクリレート化した化合物]、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート[ネオペンチルグリコールプロピレンオキシド2モル付加物をジアクリレート化した化合物]等のグリコール(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレ-ト、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2個の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、
ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドを付加して得られるジオールの2個の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、
変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドを付加して得られるトリオールの2個の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドを付加して得られるジオールの2個の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;
N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド;2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル、フタル酸ジアリル、1,3-ジアリルオキシ-2-プロパノールなどが挙げられる。
これらの中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐のアルキレンエーテルジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等の直鎖または分岐の脂肪族ジ(メタ)アクリレート、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル等のアリルエーテル化合物が好ましく用いられる。
エチレン性不飽和基を3個有するモノマー(3官能モノマー)の具体例としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ化合物、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等の脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物として市販品を使用することもでき、例えば、ダイセル化学工業株式会社製の「セロキサイド2000」、「セロキサイド3000」、「セロキサイド4000」等が挙げられる。
カチオン重合性のオキセタン化合物としては、2―エチルヘキシルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-n-ブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン等が挙げられる。
オキセタン化合物として市販品を使用することも可能である。オキセタン化合物の市販品としては、例えば、東亜合成株式会社製のアロンオキセタンシリーズ(「OXT-101」、「OXT-212」、「OXT-121」、「OXT-221」等);ダイセル化学工業株式会社製の「セロキサイド2021」、「セロキサイド2021A」、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2080」、「セロキサイド2081」、「セロキサイド2083」、「セロキサイド2085」、「エポリードGT300」、「エポリードGT301」、「エポリードGT302」、「エポリードGT400」、「エポリードGT401」および「エポリードGT403」;ダウ・ケミカル日本株式会社製の「サイラキュアUVR-6105」、「サイラキュアUVR-6107」、「サイラキュアUVR-6110」、「サイラキュアUVR-6128」、「ERL4289」および「ERL4299」などを用いることができる。また、公知のオキセタン化合物(例えば、特開2009-40830等に記載のオキセタン化合物)を使用することもできる。
ビニルエーテル化合物としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルモノエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
また、光重合性化合物として、N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリジノン等の、窒素原子と当該窒素原子に直接結合するビニル基とを有するN-ビニル化合物や、特開2013-182215号公報の段落0042~0049に記載の光重合性化合物を用いることもできる。
光重合性化合物は、信頼性に優れる画素部(インク組成物の硬化物)が得られ易い観点から、アルカリ不溶性であることが好ましい。
ここで、本明細書において、光重合性化合物がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における光重合性化合物の溶解量が、光重合性化合物の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。
なお、光重合性化合物の溶解量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
インク組成物における光重合性化合物の含有量は、発光性ナノ粒子複合体の分散安定性を高め、インクジェットインクとして適正な粘度が得られ易い観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、形状安定性に優れる画素部を作製し易い観点、ならびに画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性および耐磨耗性が向上する観点から、有機溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。
光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られ易い観点、およびより優れた発光特性(例えば、外部量子効率)が得られる観点から、有機溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、例えば、光ラジカル重合開始剤または光カチオン重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤が好適である。
分子開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド等が好適に使用可能である。
これら以外の分子開裂型の光ラジカル重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンおよび2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンを併用してもよい。
水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド等が挙げられる。
なお、光重合開始剤としては、分子開裂型の光ラジカル重合開始剤と水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
光重合開始剤には市販品を使用することもでき、例えば、サンアプロ社製の「CPI-100P」のようなスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤、BASF社製の「Lucirin TPO」のようなアシルホスフィンオキシド化合物、BASF社製の「Irgacure 907」、「Irgacure 819」、「Irgacure 379EG」、「Irgacure 184」および「Irgacure PAG290」等が挙げられる。
インク組成物における光重合開始剤の含有量は、インク組成物の硬化性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましく、3質量部以上であることが特に好ましい。
光重合開始剤の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の経時安定性の観点から、光重合性化合物100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
本インク組成物において、光重合開始剤は重合促進剤と組み合わせて用いてもよい。
重合促進剤としては、例えばトリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N-ジメチルベンジルアミン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、光重合性化合物と反応性を有さないアミンが挙げられる。重合促進剤を用いる場合、その含有量は、光重合開始剤および重合促進剤の合計量に対し1~100質量%の範囲であることが好ましい。
[酸化防止剤]
インク組成物は、さらに、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤は、画素部に優れた外部量子効率の維持性能を付与する機能を有する化合物である。
酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。中でも、フェノール系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
フェノール系酸化防止剤は、一般的に、ヒンダードフェノール系化合物とも称される。
かかるフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-[3,5-ジ(t-ブチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオナート]、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス[(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサメチレンビス[(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサメチレンビス[(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス[3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-第二ブチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス[2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドルキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
中でも、フェノール系酸化防止剤としては、インク組成物への溶解性に優れることから、ペンタエリスリトールテトラキス[3-[3,5-ジ(t-ブチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオナート]が好ましい。
リン系酸化防止剤としては、亜リン酸トリエステル化合物が好ましい。
亜リン酸トリエステル化合物は、例えば、式:P(OR51)(OR52)(OR53)で表される化合物である。式中、R51、R52、R53は、それぞれ独立して1価の有機基を示す。また、R51、R52、R53のうちの2つが、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
1価の有機基は、光重合性化合物等の、インク組成物中の他の成分との親和性のような性能を十分に満たし、画素部の優れた外部量子効率を維持し得る観点から、好ましくは1価の炭化水素基である。
1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられる。1価の炭化水素基の炭素数は、1~30であることが好ましく、インク組成物への溶解性の観点から4~18であることがより好ましい。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。アルキル基としては、例えば、2-エチルヘキシル基、ブチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、t-ブチルフェニル基、ジ-t-ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、イソデシルフェニル基、イソデシルフェニル基、イソデシルナフチル基等が挙げられる。
1価の炭化水素基は、画素部の優れた外部量子効率を維持し得る観点から、アルキル基またはアリール基であることが好ましく、アルキル基またはフェニル基であることがより好ましい。
51、R52、R53のうちの少なくとも2つが互いに同一であることが好ましい。R51、R52、R53のうちの少なくとも1つがフェニル基であることが好ましく、少なくとも2つがフェニル基であることがより好ましい。
51、R52、R53のうちの少なくとも1つがフェニル基であり、1つがアルキル基(特に、分岐状のアルキル基)であることが好ましい。すなわち、亜リン酸トリエステル化合物は、少なくとも1つのフェニル基と1つのアルキル基とを有することが好ましい。
亜リン酸トリエステル化合物が上記官能基を有する場合、光重合性化合物等の、インク組成物中の他の成分との親和性のような性能を十分に満たし、画素部の外部量子効率の低下を抑制することができる。
上記式で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト等が挙げられる。
亜リン酸トリエステル系化合物は、室温(25℃)で液体であっても、固体であってもよいが、光重合性化合物等の、インク組成物中の他の成分との親和性のような性能を十分に満たし、画素部の外部量子効率の低下を抑制し得る観点から、室温(25℃)で液体であることが好ましい。
なお、亜リン酸トリエステル化合物の融点は、20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。
インク組成物における酸化防止剤の含有量は、画素部の外部量子効率の低下を抑制し得る観点から、光重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましく、1質量部以上であることが特に好ましく、2質量部以上であることが最も好ましい。
酸化防止剤は、少量添加するだけでも、画素部の外部量子効率の低下を効果的に抑制することができる。このため、酸化防止剤の含有量は、光重合性化合物100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
[光散乱性粒子]
インク組成物は、さらに、光散乱性粒子を含有していてもよい。光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機粒子である。インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合、画素部に照射された光源からの光を散乱させることができるため、優れた光学特性(例えば、外部量子効率)を得ることができる。
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金のような単体金属;酸化ケイ素、タルク、クレー、カオリン、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のような酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウムのような炭酸塩;水酸化アルミニウムのような水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムのような複合酸化物;硫酸バリウム、次硝酸ビスマスのような金属塩等が挙げられる。
光散乱性粒子は、インク組成物(インクジェットインク)の吐出安定性に優れる観点、および外部量子効率の向上効果により優れる観点から、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウムおよび酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛およびチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
光散乱性粒子の形状としては、例えば、球状、フィラメント状、不定形状等が挙げられる。ただし、光散乱性粒子の形状としては、方向性の少ない形状(例えば、球状、正四面体状等)であることが好ましい。かかる形状の光散乱性粒子を使用することにより、インク組成物の均一性、流動性および光散乱性をより高めることができ、優れた吐出安定性を確保することができる。
光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、インク組成物の吐出安定性に優れる観点および外部量子効率の向上効果により優れる観点から、0.05μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。
光散乱性粒子の平均粒子径は、インク組成物の吐出安定性に優れる観点から、1μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましく、0.4μm以下であることがさらに好ましい。
光散乱性粒子の平均粒子径は、0.05~1μm、0.05~0.6μm、0.05~0.4μm、0.2~1μm、0.2~0.6μm、0.2~0.4μm、0.3~1μm、0.3~0.6μmまたは0.3~0.4μmであることが好ましい。
本明細書において、光散乱性粒子の平均粒子径は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
インク組成物における光散乱性粒子の含有量は、画素部の外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物に含まれる有機溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。
光散乱性粒子の含有量は、インク組成物の吐出安定性に優れる観点および画素部の外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物に含まれる有機溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。
発光性ナノ粒子複合体の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ粒子複合体)は、画素部の外部量子効率の向上効果に優れる観点から、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。
上記質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ粒子複合体)は、画素部の外部量子効率の向上効果により優れ、インクジェット法での連続吐出性(吐出安定性)に優れる観点から、5以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
インク組成物における発光性ナノ粒子複合体と光散乱性粒子との合計量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られ易い観点から、インク組成物に含まれる有機溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。
インク組成物における発光性ナノ粒子複合体と光散乱性粒子との合計量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られ易い観点から、インク組成物に含まれる有機溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、75質量部以下であることが好ましく、65質量部以下であることがより好ましく、55質量部以下であることがさらに好ましい。
[高分子分散剤]
インク組成物は、さらに、高分子分散剤を含有していてもよい。高分子分散剤は、750以上の重量平均分子量を有し、かつ、光散乱性粒子に対して親和性を有する官能基を有する高分子化合物であることが好ましい。
高分子分散剤は、光散乱性粒子をインク組成物中で安定的に分散させる機能を有する。この高分子分散剤は、光散乱性粒子に対して親和性を有する官能基を介して光散乱性粒子に吸着し、高分子分散剤同士の静電反発および/または立体反発により、光散乱性粒子をインク組成物中に分散させる。
インク組成物が高分子分散剤を含有する場合、光散乱性粒子の含有量を比較的多くした場合(例えば、60質量%程度とした場合)であっても、光散乱性粒子を良好に分散させることができる。
高分子分散剤は、光散乱性粒子の表面に結合していることが好ましい。ただし、高分子分散剤は、発光性ナノ粒子複合体の表面に結合していてもよく、インク組成物中に遊離していてもよい。
光散乱性粒子に対して親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基および非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は、解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオンのような塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は、有機酸、無機酸のような酸により中和されていてもよい。
酸性官能基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、リン酸基(-OPO(OH))、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)等が挙げられる。
塩基性官能基としては、一級、二級および三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキサイド基、ホスフィンスルフィド基等が挙げられる。
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。
また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体のいずれであってもよい。高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。
高分子分散剤としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンのようなポリアミン、ポリイミド等が挙げられる。
高分子分散剤には、市販品を使用することもできる。高分子分散剤の市販品としては、例えば味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPBシリーズ、BYK社製のDISPER BYKシリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ等が挙げられる。
[亜鉛化合物]
インク組成物は、さらに、亜鉛を中心金属として有し、該亜鉛に配位する2つの配位子を有する亜鉛化合物を含有していてもよい。かかる亜鉛化合物が有する亜鉛原子の数は1つであり、亜鉛の価数が二価であることが好ましい。かかる亜鉛化合物をさらに含有する場合、画素部における変換光の波長シフト(画素部から出射する変換光の波長が発光性ナノ粒子複合体の発光波長よりも長波長側にシフトする現象)を低減できる。
この亜鉛化合物において、2つの配位子は、それぞれ硫黄原子を有し、且つ、当該硫黄原子が亜鉛に直接結合(例えばイオン結合)することにより亜鉛に配位している。2つの配位子は互いに同一であっても異なっていてもよい。
亜鉛化合物の分子量は700以下であるのが好ましい。亜鉛化合物の分子量が700以下であると、波長シフトの低減効果がより顕著に得られる傾向があり、画素部の初期の外部量子効率および光安定性により優れる傾向がある。亜鉛化合物の分子量は600以下であってもよく、500以下であってもよい。また、亜鉛化合物の分子量は、インク組成物への溶解性を高めやすい観点および波長シフトの低減効果を得やすい観点から、200以上であってもよい。
上記配位子は、硫黄原子を有する配位性官能基を有する化合物が好ましい。かかる配位子は、配位性官能基の硫黄原子が亜鉛に直接結合することで亜鉛に配位している。配位性官能基としては、チオール基(メルカプト基)、ジチオカルバミン酸基、ジチオカルボン酸基、チオカルボン酸基等が挙げられる。
これらの配位性官能基は、例えば、脱プロトン化されて亜鉛に結合する。すなわち、配位子は、イオン化された状態で亜鉛に配位していてよい。
上記配位性官能基を有する化合物としては、モノアルキルジチオカルバミン酸、ジアルキルジチオカルバミン酸、ジアリールジチオカルバミン酸、アルキルアリールジチオカルバミン酸、ジアラルキルジチオカルバミン酸等のジチオカルバミン酸類;2-メルカプトピリジン N-オキシド等のメルカプトピリジン類;2-メルカプトベンゾチアゾール等のメルカプトベンゾチアゾール類、2-メルカプトベンゾオキサゾール等のメルカプトベンゾオキサゾール類などが挙げられる。外部量子効率が更に向上する観点、光安定性が更に向上する観点および波長シフトの低減効果がより顕著に得られる観点から、2つの配位子の内の少なくとも一方がジチオカルバミン酸類(配位性官能基としてジチオカルバミン酸基を有する化合物)であることが好ましく、2つの配位子の両方がジチオカルバミン酸類(配位性官能基としてジチオカルバミン酸基を有する化合物)であることがより好ましい。
亜鉛化合物の具体例としては、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸亜鉛、ビス(2-メルカプトピリジン N-オキシド)亜鉛、(トルエン-3,4-ジチオラト)亜鉛、ビス(ジベンジルジチオカルバミン酸)亜鉛、ビス(ジブチルジチオカルバミン酸)亜鉛、ビス(ジエチルジチオカルバミン酸)亜鉛、ビス(N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸)亜鉛、ビス(2-メルカプトベンゾチアゾール)亜鉛等が挙げられる。
これらは市販品を使用することもでき、例えば大内新興化学工業株式会社製の商品名「ノクセラーBZ」、東京化成工業株式会社製の「ジンクピリチオン」等が挙げられる。
亜鉛化合物の含有量は、外部量子効率が更に向上する観点、光安定性が更に向上する観点および波長シフトの低減効果がより顕著に得られる観点から、インク組成物に含まれる有機溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。
また、同様の観点から、亜鉛化合物の含有量は、インク組成物に含まれる有機溶剤以外の成分の合計100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、7質量部以下であることがさらに好ましい。
[有機溶剤]
インク組成物は、必要に応じ、さらに有機溶剤を含有していてもよい。
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、1,4-ブタンジオールジアセテート、グリセリルトリアセテート等が挙げられる。
有機溶剤の沸点は、インク組成物(インクジェットインク)の連続吐出安定性の観点から、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。
また、画素部の形成時には、インク組成物の硬化前にインク組成物から有機溶剤を除去する必要があるため、有機溶剤を除去しやすい観点から、有機溶剤の沸点は300℃以下であることが好ましい。
有機溶剤は、沸点が150℃以上のアセテート化合物を含むことが好ましい。この場合、発光性ナノ粒子複合体と有機溶剤との間の親和性がより向上し、発光性ナノ粒子複合体が優れた発光特性を発揮し得る。
かかるアセテート化合物の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のモノアセテート化合物、1,4-ブタンジオールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のジアセテート化合物、グリセリルトリアセテート等が挙げられる。
本実施形態のインク組成物では、光重合性化合物が分散媒としても機能するため、無溶剤で、光散乱性粒子および発光性ナノ粒子複合体を分散させることが可能である。この場合、画素部を形成する際に有機溶剤を乾燥により除去する工程が不要となる利点を有する。
インク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した成分以外の成分、例えば紫外線吸収剤、表面張力調整剤、褪色防止剤、導電性塩類等の添加剤をさらに含有していてもよい。
インク組成物の吐出時の粘度は、例えば吐出安定性の観点から、2mPa・s以上、5mPa・s以上または7mPa・s以上であってもよい。吐出時の粘度は、20mPa・s以下、15mPa・s以下、12mPa・s以下であってもよい。
インク組成物の吐出時の粘度は、2~20mPa・s、2~15mPa・s、2~12mPa・s、5~20mPa・s、5~15mPa・s、5~12mPa・s、7~20mPa・s、7~15mPa・sまたは7~12mPa・sであることが好ましい。
本明細書において、インク組成物の吐出時の粘度は、E型粘度計を使用して吐出時と同一の温度下で測定された値である。
インク組成物の吐出時の粘度が2mPa・s以上である場合、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端におけるインク組成物のメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量および吐出のタイミングの制御)が容易となる。
一方、インク組成物の吐出時の粘度が20mPa・s以下である場合、インク吐出孔からインク組成物を円滑に吐出させることができる。
インク組成物の表面張力は、インクジェットインクに適した表面張力であることが好ましく、具体的には、20~40mN/mであることが好ましく、25~35mN/mであることがより好ましい。かかる範囲に表面張力を調整することにより、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量および吐出のタイミングの制御)が容易になるとともに、飛行曲がりの発生を抑制することができる。
なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のズレを生じることをいう。
表面張力が40mN/m以下である場合、インク吐出孔の先端におけるインク組成物のメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量および吐出のタイミングの制御)が容易となる。
一方、表面張力が20mN/m以上である場合、インク吐出孔の周辺がインク組成物で汚染されるのを防止できるため、飛行曲がりの発生を抑制できる。すなわち、着弾すべき画素部の形成領域に正確に着弾されず、インク組成物の充填が不充分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部の形成領域に隣接する画素部の形成領域(または画素部)にインク組成物が着弾し、色再現性が低下したりするのを防止できる。
本願明細書において、インク組成物の表面張力は、リング法(輪環法とも言う。)を使用して23℃で測定された値である。
本実施形態のインク組成物をインクジェットインクとして使用する場合、ピエゾ方式のインクジェット記録装置に適用することが好ましい。ピエゾ方式では、吐出に当たり、インク組成物が瞬間的に高温に晒されることがない。そのため、発光性ナノ粒子複合体の変質が起こり難く、画素部(光変換層)において、所望の発光特性がより容易に得られ易い。
以上、インク組成物の一実施形態について説明したが、上述した実施形態のインク組成物は、インクジェット法の他に、例えば、フォトリソグラフィ法で使用することもできる。この場合、インク組成物は、バインダーポリマーとしてアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
インク組成物をフォトリソグラフィ法で使用する場合、まず、インク組成物を基材上に塗布し、さらにインク組成物を乾燥させて塗布膜を形成する。得られた塗布膜は、アルカリ現像液に可溶性であり、アルカリ現像液で処理されることによりパターニングされる。この際、アルカリ現像液には、廃液処理の容易さ等の観点から、好適には水溶液が使用されるため、インク組成物の塗布膜は、水溶液で処理されることとなる。
一方、発光性ナノ粒子複合体(量子ドット等)を使用したインク組成物の場合、発光性ナノ粒子複合体が水に対して不安定であり、発光特性(例えば、蛍光特性)が水分により損なわれるおそれがある。本発明のインク組成物は、アルカリ現像液(水溶液)で処理する必要のない、インクジェット法での使用が好ましい。
また、インク組成物の塗布膜に対してアルカリ現像液による処理を行わない場合でも、インク組成物がアルカリ可溶性である場合、インク組成物の塗布膜が大気中の水分を吸収し易くなるため、経時的に発光性ナノ粒子複合体(量子ドット等)の発光特性(例えば、蛍光特性)が損なわれる恐れがある。
吸水による不都合の発生をより確実に低減する観点から、本実施形態においては、インク組成物の塗布膜は、アルカリ不溶性であることが好ましい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、アルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることが好ましい。
このようなインク組成物は、光重合性化合物として、アルカリ不溶性の光重合性化合物を使用することにより得ることができる。
ここで、インク組成物の塗布膜がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の塗布膜の溶解量が、インク組成物の塗布膜の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。上記溶解量は、10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
なお、インク組成物がアルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることは、インク組成物を基材上に塗布した後、80℃、3分の条件で乾燥して得られる厚さ1μmの塗布膜の、上記溶解量を測定することにより確認できる。
<インク組成物の製造方法>
本実施形態のインク組成物は、例えば、上述した構成成分(発光性ナノ粒子複合体と、光重合性化合物と、その他の任意成分)を混合する工程を備える。
インク組成物の製造方法は、上記構成成分の混合物の分散処理を行う工程をさらに備えてもよい。
以下では、一例として、光散乱性粒子を含有するインク組成物の製造方法を説明する。
光散乱性粒子を含有するインク組成物の製造方法は、例えば、光散乱性粒子の分散体を準備する第1工程と、光散乱性粒子の分散体と発光性ナノ粒子複合体とを混合する第2工程とを備える。
光散乱性粒子の分散体は、さらに、高分子分散剤を含有してもよい。この方法では、光散乱性粒子の分散体が、さらに、光重合性化合物を含有してよく、第2工程において、さらに、光重合性化合物を混合してもよい。
上記方法によれば、光散乱性粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部の光学特性(例えば、外部量子効率)を向上させることができるとともに、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
第1工程では、光散乱性粒子と、必要に応じて、高分子分散剤と、光重合性化合物とを混合し、分散処理を行うことにより、光散乱性粒子の分散体を調製してもよい。
混合および分散処理は、例えば、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星攪拌機、ジェットミルのような分散装置等を使用して行うことができる。光散乱性粒子の分散性が良好となり、光散乱性粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整し易い観点から、ビーズミルまたはペイントコンディショナーを使用することが好ましい。
また、発光性ナノ粒子複合体と光散乱性粒子とを混合する前に、光散乱性粒子と高分子分散剤とを混合することにより、光散乱性粒子をより十分に分散させることができる。そのため、優れた吐出安定性および優れた外部量子効率をより一層容易に得ることができる。
インク組成物の製造方法では、第2工程の前に、さらに、発光性ナノ粒子複合体と光重合性化合物とを含有する発光性ナノ粒子複合体の分散体を準備する工程を備えていてもよい。この場合、第2工程では、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ粒子複合体の分散体とを混合する。
発光性ナノ粒子複合体の分散体を準備する工程では、発光性ナノ粒子複合体と光重合性化合物とを混合し、分散処理を行うことにより、発光性ナノ粒子複合体の分散体を調製してよい。
混合および分散処理は、例えば、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星攪拌機、ジェットミルのような分散装置等を使用して行うことができる。発光性ナノ粒子複合体の分散性が良好となり、発光性ナノ粒子複合体の平均粒子径を所望の範囲に調整し易い観点から、ビーズミル、ペイントコンディショナーまたはジェットミルを使用することが好ましい。
かかる方法によれば、発光性ナノ粒子複合体を充分に分散させることができる。そのため、画素部の光学特性(例えば、外部量子効率)を向上させることができるとともに、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
上記製造方法において、酸化防止剤、有機溶剤等の他の成分を配合する場合、これらの成分は、発光性ナノ粒子複合体の分散体に混合してもよく、光散乱性粒子の分散体に混合してもよく、発光性ナノ粒子複合体の分散体と光散乱性粒子の分散体とを混合して得られる混合分散体に混合してもよい。
<インク組成物セット>
一実施形態のインク組成物セットは、上述した実施形態のインク組成物を備える。インク組成物セットは、上述した実施形態のインク組成物(発光性インク組成物)に加えて、発光性ナノ粒子複合体を含有しないインク組成物(非発光性インク組成物)を備えていてもよい。
非発光性インク組成物は、例えば、従来公知のインク組成物である。非発光性インク組成物は、発光性ナノ粒子複合体を含まない以外は、上述した実施形態のインク組成物(発光性インク組成物)と同様の組成とすることができる。
非発光性インク組成物は、発光性ナノ粒子複合体を含有しない。このため、非発光性インク組成物により形成された画素部(非発光性インク組成物の硬化物を含む画素部)に光を入射させた場合、画素部から出射する光は、入射光とほぼ同一の波長を有する。
したがって、非発光性インク組成物は、光源からの光と同色の画素部を形成するために好適に使用される。例えば、光源からの光が波長420~480nmの範囲の光(青色光)であれば、非発光性インク組成物により形成される画素部は、青色画素部となり得る。
非発光性インク組成物は、好ましくは光散乱性粒子を含有する。非発光性インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合、非発光性インク組成物により形成される画素部では、入射した光を散乱させることができる。これにより、画素部からの出射光の視野角における光強度差を低減することができる。
<光変換層およびカラーフィルタ>
次に、上述した実施形態のインク組成物セットを使用して得られる光変換層およびカラーフィルタの詳細について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一または相当要素には、同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。以下、説明の都合上、図1中の上側を「上」または「上方」とも言い、下側を「下」または「下方」とも言う。
図1に示すカラーフィルタ100は、基材40と、基材40上に設けられた光変換層30とを有している。光変換層30は、複数の画素部10と、遮光部20とを備えている。
光変換層30は、画素部10として、第1画素部10aと、第2画素部10bと、第3画素部10cとを有している。第1画素部10aと、第2画素部10bと、第3画素部10cとは、この順に繰り返すように格子状に配列されている。
遮光部20は、隣り合う画素部10同士の間、すなわち、第1画素部10aと第2画素部10bとの間、第2画素部10bと第3画素部10cとの間、第3画素部10cと第1画素部10aとの間に設けられている。換言すれば、隣り合う画素部10同士は、遮光部20によって隔てられている。
第1画素部10aおよび第2画素部10bは、それぞれ上述したインク組成物の硬化物を含む発光性の画素部(発光性画素部)である。硬化物は、発光性ナノ粒子複合体と、硬化成分と、光散乱性粒子とを含有する。
図1に示すように、第1画素部10aは、第1硬化成分13aと、第1硬化成分13a中に分散された第1発光性ナノ粒子複合体11aおよび第1光散乱性粒子12aとを含む。同様に、第2画素部10bは、第2硬化成分13bと、第2硬化成分13b中に分散された第2発光性ナノ粒子複合体11bおよび第2光散乱性粒子12bとを含む。
硬化成分は、光重合性化合物の重合によって得られた成分であり、光重合性化合物の重合体と、インク組成物中の有機成分(高分子分散剤、未反応の光重合性化合物等)が含まれていてもよい。
第1画素部10aおよび第2画素部10bにおいて、第1硬化成分13aと第2硬化成分13bとは、同一であっても、異なっていてもよい。また、第1光散乱性粒子12aと第2光散乱性粒子12bとは、同一であっても、異なっていてもよい。
第1発光性ナノ粒子複合体11aは、波長420~480nmの範囲の光を吸収して、波長605~665nmの範囲に発光ピークを有する光を発する赤色発光性ナノ粒子複合体である。すなわち、第1画素部10aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言うことができる。
また、第2発光性ナノ粒子複合体11bは、波長420~480nmの範囲の光を吸収して、波長500~560nmの範囲に発光ピークを有する光を発する緑色発光性ナノ粒子複合体である。すなわち、第2画素部10bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言うことができる。
発光性画素部における発光性ナノ粒子複合体の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点および優れた発光強度が得られる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましく、30質量%以上であることが最も好ましい。
発光性ナノ粒子複合体の含有量は、画素部の信頼性に優れる観点および優れた発光強度が得られる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
発光性画素部における光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。
光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点および画素部の信頼性に優れる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下、30質量%以下または25質量部%以下であることがさらに好ましく、20質量部%以下であることが特に好ましく、15質量%以下であることが最も好ましい。
第3画素部10cは、上述した非発光性インク組成物の硬化物を含む非発光性の画素部(非発光性画素部)である。硬化物は、発光性ナノ粒子複合体を含有せず、光散乱性粒子と、硬化成分とを含有する。
図1に示すように、第3画素部10cは、第3硬化成分13cと、第3硬化成分13c中に分散された第3光散乱性粒子12cとを含む。
第3硬化成分13cは、例えば、光重合性化合物の重合によって得られる成分であり、光重合性化合物の重合体を含む。
第3光散乱性粒子12cは、第1光散乱性粒子12aおよび第2光散乱性粒子12bと同一であっても、異なっていてもよい。
第3画素部10cは、例えば、波長420~480nmの範囲の光に対して、30%以上の透過率を有することが好ましい。この場合、第3画素部10cは、波長420~480nmの範囲の光を発する光源を使用すれば、青色画素部として機能することができる。
なお、第3画素部10cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
第3画素部(非発光性画素部)10cにおける光散乱性粒子の含有量は、視野角における光強度差をより低減する観点から、非発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。
光散乱性粒子の含有量は、光反射をより低減する観点から、非発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
画素部(第1画素部10a、第2画素部10bおよび第3画素部10c)の厚さは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。
画素部(第1画素部10a、第2画素部10bおよび第の画素部10c)の厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
遮光部20は、隣り合う画素部同士を隔てて混色(クロストーク)を防ぐ目的および光源からの光の漏れを防ぐ目的で設けられる隔壁部(ブラックマトリックス)である。
遮光部20の構成材料としては、特に限定されないが、クロム等の金属の他、バインダー樹脂と、カーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料のような遮光性粒子とを含む樹脂組成物等が挙げられる。
バインダー樹脂には、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の1種または2種以上を含む樹脂、感光性樹脂、O/Wエマルジョン樹脂(例えば、反応性シリコーンエマルジョン)等を使用することができる。
遮光部20の厚さは、1~30μmであることが好ましい。
基材40は、光透過性を有する透明基材である。基材40には、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英等で構成される透明なガラス基板、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルムのような透明なフレキシブル基材等を使用することができる。中でも、基材40には、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を使用することが好ましい。
無アルカリガラスの具体例としては、例えば、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」および「イーグルXG」、AGC社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA-10G」および「OA-11」が挙げられる。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れる。
以上の光変換層30を備えるカラーフィルタ100は、波長420~480nmの範囲の光を発する光源と組み合わせて好適に使用することができる。
カラーフィルタ100は、例えば、基材40上に遮光部20をパターン状に形成した後、基材40上の遮光部20で区画された画素部の形成領域に、画素部10を形成することにより製造することができる。
画素部10は、インク組成物(インクジェットインク)をインクジェット法により基材40上の画素部の形成領域に選択的に付着させる工程と、インク組成物に対して活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射し、インク組成物を硬化させる工程とを備える方法により形成することができる。
インク組成物として、上述した発光性インク組成物を使用すれば、発光性画素部が得られ、非発光性インク組成物を使用すれば、非発光性画素部が得られる。
遮光部20は、クロム等の金属薄膜または遮光性粒子を含む樹脂組成物の薄膜をパターニングすることにより、基材40の一方の面の複数の画素部同士の境界となる領域に形成することができる。
金属薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができる。また、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜は、例えば、塗布、印刷等の方法により形成することができる。
パターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、または圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
インク組成物が有機溶剤を含む場合、その乾燥においては、有機溶剤の少なくとも一部を除去することが好ましく、有機溶剤の全てが除去することがより好ましい。
インク組成物の乾燥方法は、減圧による乾燥(減圧乾燥)であることが好ましい。減圧乾燥は、通常、インク組成物の組成を制御する観点から、1.0~500Paの圧力下、20~30℃で3~30分間で行われる。
インク組成物の硬化は、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等を使用して行うことができる。
照射する光の波長は、200~440nmであることが好ましく、露光量は、10~4000mJ/cmであることが好ましい。
未反応物除去によるアウトガス低減や、熱架橋による密着性向上のため、硬化物の加熱処理(ポストベーク)を行う場合、加熱温度は、110~250℃であることが好ましい。加熱時間は、10~120分であることが好ましい。
以上、光変換層およびカラーフィルタ、ならびに、これらの製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、光変換層は、第3画素部10cに代えて、または第3画素部10cに加えて、青色発光性ナノ粒子複合体を含有する発光性インク組成物の硬化物を含む画素部(青色画素部)を備えていてもよい。
また、光変換層は、赤色、緑色、青色以外の他の色の光を発する発光性ナノ粒子複合体を含有する発光性インク組成物の硬化物を含む画素部(例えば、黄色画素部)を備えていてもよい。この場合、光変換層の各画素部に含有される発光性ナノ粒子複合体のそれぞれは、同一の波長の範囲に吸収極大波長を有することが好ましい。
また、光変換層30の画素部10の少なくとも一部は、発光性ナノ粒子複合体以外の顔料を含有する組成物の硬化物を含んで構成されてもよい。
また、カラーフィルタ100は、遮光部20上に、遮光部20よりも幅の狭い撥インク性を有する材料からなる撥インク層を備えていてもよい。
さらに、撥インク層を設けるのではなく、画素部の形成領域を含む領域に、濡れ性可変層としての光触媒含有層をベタ塗り状に形成した後、光触媒含有層にフォトマスクを介して光を照射して露光を行い、画素部の形成領域の親インク性(濡れ性)を選択的に増大させてもよい。光触媒としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
カラーフィルタ100は、基材40と画素部10との間に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン等を含むインク受容層を備えていてもよい。
また、カラーフィルタは、画素部10上に保護層を備えていてもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化するとともに、画素部10に含まれる成分および光触媒含有層に含まれる成分の他の層への溶出を防止するために設けられる。
保護層の構成材料としては、カラーフィルタ100の保護層として使用されている公知の材料を使用することができる。
また、光変換層30およびカラーフィルタ100の製造では、インクジェット法ではなく、フォトリソグラフィ法で画素部を形成してもよい。
この場合、まず、基材40上にインク組成物を層状に塗工し、インク組成物層を形成する。次いで、インク組成物層に所定のパターンで露光した後、現像液を用いて現像する。これにより、インク組成物の硬化物からなる画素部10が形成される。
現像液は、通常、アルカリ性であるため、インク組成物の材料としてはアルカリ可溶性の材料が用いられる。ただし、材料の使用効率の観点では、インクジェット法がフォトリソグラフィ法よりも優れている。これは、フォトリソグラフィ法では、その原理上、材料のほぼ2/3以上を除去することとなり、材料が無駄になるからである。このため、本実施形態では、インク組成物をインクジェットインクとして用いて、インクジェット法により画素部を形成することが好ましい。
また、本実施形態の光変換層30の画素部10は、上記した発光性ナノ粒子複合体に加えて、発光性ナノ粒子複合体の発光色と概ね同色の顔料をさらに含有してもよい。顔料を画素部10に含有させるため、インク組成物に顔料を混合してもよい。
また、本実施形態の光変換層30中の赤色発光性画素部(R)、緑色発光性画素部(G)および青色発光性画素部(B)のうちの1種または2種の発光性画素部は、発光性ナノ粒子複合体を含まず、色材を含む画素部としてもよい。
ここで、使用可能な色材としては、例えば、赤色発光性画素部(R)には、ジケトピロロピロール顔料および/またはアニオン性赤色有機染料が挙げられる。緑色発光性画素部(G)には、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料とアゾ系黄色有機染料との混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。青色発光性画素部(B)には、ε型銅フタロシアニン顔料および/またはカチオン性青色有機染料が挙げられる。
これらの色材の使用量は、光変換層30に混合する場合、透過率の低下を防止できる観点から、画素部(インク組成物の硬化物)10の全質量を基準として、1~5質量%であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
本実施例等で使用した化合物を以下に示す。
<光重合性化合物>
・HDDMA:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート
(製品名「NKエステル HD-N」、新中村化学工業株式会社製)
・HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
(製品名「Miramer M200」、MIWON社製)
・DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート
(製品名「Miramer M222」、MIWON社製)
・DCPEA:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート
(製品名「ファンクリル FA-512AS」、昭和電工マテリアルズ株式会社製)
・DCPEM:ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート
(製品名「ファンクリル FA-512MT」、昭和電工マテリアルズ株式会社製)
・AOMA:2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル
(製品名「AOMA」、株式会社日本触媒製)
<光重合開始剤>
・TPO-H:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
(製品名「Omnirad TPO-H」、IGM Resins B.V.社製)
・819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
(製品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製)
<亜鉛化合物>
・ZDBC:ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛
(製品名「ノクセラー BZ-P」、大内新興化学工業株式会社製)
<酸化防止剤>
・剤1:ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト
(製品名「JPE-10」、城北化学工業株式会社製)
・剤2:ペンタエリスリトールテトラキス[3-[3,5-ジ(t-ブチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオナート]
(製品名「irganox 1010」、BASFジャパン株式会社製)
<発光性ナノ粒子の製造例>
[製造例1]
(1)<コア合成>
酢酸インジウム0.88g(3mmol)、酢酸亜鉛二水和物0.66g(3mmol)、1-オクタデセン(ODE)10gおよびラウリン酸3.16g(15.8mmol)を反応フラスコに添加した後、真空下で140℃にて2時間加熱した。
次いで、窒素雰囲気下として、混合物の温度を250℃に昇温した。この温度で、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMSP)0.25g(1mmol)を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を230℃に維持した。
5分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8mlおよびエタノール20mlをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行い、上澄みの傾瀉によってInPナノ粒子を得た。
次いで、得られたInPナノ粒子をODEに分散させた。これにより、InPナノ粒子を5質量%含有する分散液(ODE分散液)を得た。
(2)<シェル形成>
(2-1)酢酸亜鉛二水和物1.1g(5mmol)、オレイン酸2.8g(10mmol)およびODE7.1gを反応フラスコに添加した後、真空下で120℃にて2時間加熱し、0.4M亜鉛前駆体溶液1を調製した。
(2-2)上記(1)で得られたInPナノ粒子(InPコア)のODE分散液2.5g、およびODE2.5gを反応フラスコに添加し真空下で80℃にて30分間加熱した。
次いで、窒素雰囲気下として200℃に昇温した後、反応フラスコに、上記(2-1)で得た0.4M亜鉛前駆体溶液1を3mL、および1.0Mのセレン化トリオクチルホスフィン(TOPSe)0.8mLを添加し、200℃にて30分保持して、ZnSeシェルを形成させた。
続いて、温度を230℃に上げ、反応フラスコに上記(2-1)で得た0.4M亜鉛前駆体溶液1を1mLと、1.0Mの硫化トリオクチルホスフィン(TOPS)0.4mLを添加した後、230℃にて維持して、ZnSシェルを形成させた。
30分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8mlおよびエタノール20mlを反応溶液に添加した。続いて、遠心分離を行い、上澄みの傾瀉によって、コアがInおよびPを含み、ZnSeシェルおよびZnSシェルを有するコアシェル構造型(InP/ZnSe/ZnS)の発光性ナノ粒子1を得た。ここで、発光性ナノ粒子1はClを含まなかった(Cl/In=0.00)。
[製造例2]
上記製造例1(1)で得られたInPナノ粒子(InPコア)のODE分散液2.5g、塩化インジウム0.07g(0.3mmol)、オレイン酸0.25g(0.9mmol)およびODE2.5gを反応フラスコに添加し、窒素雰囲気下、80℃で30分間加熱した。
次いで200℃に昇温し、反応フラスコに、上記製造例1(2-1)で得た0.4M亜鉛前駆体溶液1を3mLと、1.0Mのセレン化トリオクチルホスフィン(TOPSe)0.8mLを添加し、200℃にて30分保持して、ZnSeシェルを形成させた。
続いて、温度を230℃に上げ、反応フラスコに上記製造例1(2-1)で得た0.4M亜鉛前駆体溶液1を1mLと、1.0MのTOPS0.4mLを添加した後、230℃にて維持して、ZnSシェルを形成させた。
30分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8mlおよびエタノール20mlを反応溶液に添加した。続いて、遠心分離を行い、上澄みの傾瀉によってコアがIn、PおよびClを含み、ZnSeシェルおよびZnSシェルを有するコアシェル構造型(InP/ZnSe/ZnS)の発光性ナノ粒子2を得た。ここで、InおよびClの濃度をリガク製蛍光X線分析装置PrimusIVで分析した結果、発光性ナノ粒子2のCl/In=1.00であった。
[製造例3]
製造例2において、塩化インジウム0.07g(0.3mmol)およびオレイン酸0.25g(0.9mmol)の代わりに、オレイン酸クロライド0.27g(0.9mmol)用いた以外は製造例2と同様にして、発光性ナノ粒子3を得た。ここで、発光性ナノ粒子3のCl/In=1.40であった。
[製造例4]
(1)<コア合成>
塩化インジウム0.66g(3mmol)、オレイルアミン2.7g(10mmol)およびトリオクチルホスフィン5.0gを反応フラスコに添加した後、真空下で80℃にて2時間加熱した。
次いで、窒素雰囲気下として、混合物の温度を180℃に昇温した。この温度で、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン2.5g(10mmol)を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を200℃に維持した。
10分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8mlおよびエタノール20mlをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行い、上澄みの傾瀉によってInPナノ粒子を得た。次いで、得られたInPナノ粒子をODEに分散させた。これにより、InPナノ粒子を5質量%含有する分散液(ODE分散液)を得た。
(2)<シェル形成>
上記(1)で得られたInPナノ粒子(InPコア)のODE分散液2.5gを用いた以外は、製造例1(2)と同様の操作を行い、コアシェル構造型(InP/ZnSe/ZnS)の発光性ナノ粒子4を得た。ここで、発光性ナノ粒子4のCl/In=0.10であった。
[製造例5]
塩化亜鉛0.83g(5mmol)、オレイルアミン2.7g(10mmol)およびODE7.2gを反応フラスコに添加した後、真空下で80℃にて2時間加熱して、0.4M亜鉛前駆体溶液2を調製した。
そして、製造例1(2)において、製造例1(1)で得られたInPナノ粒子(InPコア)のODE分散液の代わりに製造例4(1)で得られたInPナノ粒子(InPコア)のODE分散液を用い、0.4M亜鉛前駆体溶液1の代わりに0.4M亜鉛前駆体溶液2を用いた以外は、製造例1(2)と同様の操作を行い、コアシェル構造型(InP/ZnSe/ZnS)の発光性ナノ粒子5を得た。ここで、発光性ナノ粒子5のCl/In=0.50であった。
[製造例6]
塩化亜鉛0.83g(5mmol)、オクチルアミン1.3g(10mmol)およびODE8.6gを反応フラスコに添加した後、窒素バブリングを行いながら120℃で2時間加熱して、0.4M亜鉛前駆体溶液3を調製した。
そして、製造例1(2)において、製造例1(1)で得られたInPナノ粒子(InPコア)のODE分散液の代わりに製造例4(1)で得られたInPナノ粒子(InPコア)のODE分散液を用い、0.4M亜鉛前駆体溶液1の代わりに0.4M亜鉛前駆体溶液3を用いた以外は、製造例1(2)と同様の操作を行い、コアシェル構造型(InP/ZnSe/ZnS)の発光性ナノ粒子6を得た。ここで、発光性ナノ粒子6のCl/In=0.90であった。
[製造例7]
塩化亜鉛0.83g(5mmol)、オレイルアミン4.0g(15mmol)およびODE6.0gを反応フラスコに添加した後、真空下で80℃にて2時間加熱して、0.4M亜鉛前駆体溶液4を調製した。
そして、製造例1(2)において、製造例1(1)で得られたInPナノ粒子(InPコア)のODE分散液の代わりに製造例4(1)で得られたInPナノ粒子(InPコア)のODE分散液を用い、0.4M亜鉛前駆体溶液1の代わりに0.4M亜鉛前駆体溶液4を用いた以外は、製造例1(2)と同様の操作を行い、コアシェル構造型(InP/ZnSe/ZnS)の発光性ナノ粒子7を得た。ここで、発光性ナノ粒子7のCl/In=0.20であった。
<有機リガンド>
メルカプト化合物としてのチオール1~チオール9、およびカルボン酸1を以下のように準備した。
チオール1:
数平均分子量(Mn)が220であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル22g(100mmol、関東化学社製)、3-メルカプトプロピオン酸13g(120mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物0.38g(2mmol)およびトルエン50gを、ディーンスターク装置を備えた反応フラスコに添加した後、窒素雰囲気下で3時間加熱還流した。
反応溶液を室温まで冷却した後、酢酸エチル120gを添加し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて2回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮することでチオール1を得た。
チオール2:
Mnが550であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル100mmol(東京化成社製)、3-メルカプトプロピオン酸120mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物2mmolおよびトルエン50gを用い、チオール1の製造と同様にしてチオール2を得た。
チオール3:
トリエチレングリコールモノメチルエーテル100mmol(東京化成社製)、3-メルカプトプロピオン酸120mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物2mmolおよびトルエン50gを用い、チオール1の製造と同様にしてチオール3を得た。
チオール4:ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール(Mn=800)、メルク社製。
チオール5:
Mnが220であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル100mmol(関東化学社製)、メルカプト酪酸120mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物2mmolおよびトルエン50gを用い、チオール1の製造と同様にしてチオール5を得た。
チオール6:
Mnが220であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル100mmol(関東化学社製)、2-メルカプトプロピオン酸120mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物2mmolおよびトルエン50gを用い、チオール1の製造と同様にしてチオール6を得た。
チオール7:
ジエチレングリコールモノメチルエーテル100mmol(東京化成社製)、メルカプト酢酸120mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物2mmolおよびトルエン50gを用い、チオール1の製造と同様にしてチオール7を得た。
チオール8:
ジエチレングリコールモノメチルエーテル100mmol(東京化成社製)、3-メルカプトプロピオン酸120mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物2mmolおよびトルエン50gを用い、チオール1の製造と同様にしてチオール8を得た。
チオール9:
ジエチレングリコールモノフェニルエーテル100mmol(東京化成社製)、3-メルカプトプロピオン酸120mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物2mmolおよびトルエン50gを用い、チオール1の製造と同様にしてチオール9を得た。
得られたチオール1~9の化学構造式を示す。
Figure 2023036307000003
カルボン酸1:
トリエチレングリコールモノメチルエーテル18g(110mmol、関東化学社製)、コハク酸無水物10g(100mmol)、トリエチルアミン11g(110mmol)およびトルエン50gを反応フラスコに添加した後、窒素雰囲気下で室温にて3時間撹拌した。
反応溶液に酢酸エチル50gを添加し、1N塩酸100mLを用いて1回洗浄し、飽和食塩水を用いて2回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮してカルボン酸1を得た。
[発光性ナノ粒子複合体の製造]
[実施例1]
発光性ナノ粒子1を1.0g、有機リガンドとしてチオール1を0.8g、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)8.2gを反応フラスコに添加した後、窒素雰囲気下で80℃にて3時間撹拌した。
反応溶液を室温まで冷却した後、アセトン10mlおよびヘプタン60mlを添加した。続いて遠心分離を行い、上澄みの傾瀉によって発光性ナノ粒子複合体A-1を得た。
[実施例2~9、比較例1~4]
発光性ナノ粒子および有機リガンドの種類を表1に示すとおり変化させた以外は、実施例1と同様の操作を行い、発光性ナノ粒子複合体A-2~A-9、B-1~B-3、C-1を得た。表1に、用いた有機リガンドの溶解度パラメータ(SP値)、pKa、分子量を併せて示す。
SP値は、HSPiPの推算値から求めた。
pKaは、CAS SciFinderの化学物質検索により確認した計算値を用いた。記載のない化合物についてのpKaは、滴定により求めた。
分子量分布を持つ有機リガンドの数平均分子量は、HNMRの積分比から求めた。
Figure 2023036307000004
<光散乱性粒子分散体の製造>
アルゴンガスで満たした容器内で、酸化チタン(製品名:CR-60-2、石原産業株式会社製、平均粒子径(体積平均径):210nm)を33.0gと、高分子分散剤(アジスパーPB-821、味の素ファインテクノ株式会社製)を1.0gと、1,4-ブタンジオールジアクリレートを26.0gとを混合した。
その後、得られた混合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm)を加え、ペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせることで混合物を分散処理し、ポリエステルメッシュフィルターにてジルコニアビーズを除去することで光散乱性粒子分散体(酸化チタン含有量:55質量%)を得た。
1.インク組成物の調製
<インク組成物1>
発光性ナノ粒子複合体A-1と、光重合性化合物と、光重合開始剤、光散乱性粒子分散体および酸化防止剤とを、各成分の含有量が表2に示す量(単位:質量部)となるように配合し、アルゴンガスで満たした容器内で均一に混合した。
その後、グローブボックス内で、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過した。
さらに、アルゴンガスを得られたろ過物を入れた容器内に導入し、容器内をアルゴンガスで飽和させた。
次いで、減圧してアルゴンガスを除去することにより、インク組成物1を得た。
<インク組成物2~19>
各発光性ナノ粒子複合体、光重合性化合物、光重合開始剤、光散乱性粒子分散体、ジチオカルバミン酸系化合物および酸化防止剤を、各成分の含有量が表2に示す量(単位:質量部)となるように配合し、インク組成物1と同様にして、インク組成物2~19を得た。
2.インク組成物の評価
2-1.外部量子効率評価用試料の作製
各インク組成物を、ガラス基板上に、膜厚が10μmとなるように、スピンコーターにて大気中で塗布した。
塗布膜を窒素雰囲気下、主波長395nmのLEDランプを用いたUV照射装置で積算光量1000mJ/cmになるようにUVを照射して硬化させた後、窒素雰囲気下のグローブボックス中に設置した180℃のホットプレート上に移し、30分間加熱し、ガラス基板上にインク組成物の硬化物からなる層(光変換層)を形成した。これにより、光変換層を有する基材である、評価用試料を作製した。
2-2.外部量子効率(EQE)の測定
面発光光源として、波長450nmに発光ピークを有する光を発する青色LED(シーシーエス株式会社製)を用いた。測定装置は、放射分光光度計(大塚電子株式会社製、「MCPD-9800」)に積分球を接続し、青色LEDの上側に積分球を設置した。
青色LEDと積分球との間に、2-1.で作製した各評価用試料を挿入し、青色LEDを点灯させて観測されるスペクトル、各波長における照度を測定した。
上記測定装置で測定されるスペクトルおよび照度より、以下のようにして外部量子効率(EQE)を求めた。
EQEは、光変換層に入射した光(光子)のうち、どの程度の割合で蛍光として観測者側に放射されるかを示す値である。したがって、この値が大きければ光変換層が発光特性に優れていることを示しており、重要な評価指標である。
EQE(%)=P1(Green)/E(Blue)×100
ここで、E(Blue)およびP1(Green)は、それぞれ以下の値を表す。
E(Blue)は、波長380~490nmの範囲における「照度×波長÷hc」の合計値を表す。
P1(Green)は、波長500~650nmの範囲における「照度×波長÷hc」の合計値を表す。
これらの値は、観測した光子数に相当する値である。なお、hは、プランク定数、cは光速を表す。
2-3.大気安定性
2-1.で作製した各評価用試料を、大気中、イエロールームの照明灯の下で24時間放置した後、2-2.と同様にしてEQEを測定した。照射前のEQEに対する照射後のEQEの維持率を下式にて求め、以下の基準に従って大気安定性を評価した。
維持率=[24時間後のEQE]/[初期のEQE]×100
[評価基準]
◎:95%以上
〇:90%以上、95%未満
△:80%以上、90%未満
×:80%未満
2-4.耐光性(耐青色光性)
2-1.で作製した評価用試料の光変換層上に、光重合開始剤としてTPO-Hを1.0質量%溶解させたトリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート溶液を30μL滴下した。
次いで、上からカバーガラスを貼り合わせ、主波長395nmのLEDランプを用いたUV照射装置で積算光量1500mJ/cmになるようにUVを照射して硬化させることで、両面をガラスで封止された封止試料を作製した。
続いて、作製した封止試料に主波長450nmのLED照射装置を用いて、400mW/cmの強度で150時間青色光を照射した。照射前後のEQEを2-2.と同様にして測定して、EQEの維持率を下式にて求め、以下の基準に従って耐光性(耐青色光性)を評価した。
維持率=[青色光照射後のEQE]/[青色光照射前のEQE]×100
[評価基準]
◎:95%以上
〇:90%以上、95%未満
△:80%以上、90%未満
×:80%未満
2-5.インク組成物の保管安定性
1で作製したインク組成物を、40℃に保った恒温試験機内で2週間保管した後、インク組成物の粘度を測定し、インク組成物の増粘率を下式にて求め、以下の基準に従って保存安定性を評価した。
増粘率=([2週間後の粘度]-[初期の粘度])/[初期の粘度]×100
[評価基準]
◎:増粘が3%以下
〇:増粘が3%超、5%以下
△:増粘が5%超
×:増粘が10%超
以上の評価結果を表2に示す。
Figure 2023036307000005
本発明の発光性ナノ粒子複合体は大気保管安定性および耐光性に優れる。かかる発光性ナノ粒子複合体を含有するインク組成物からは、発光特性に優れる光変換層や、携帯端末、テレビ、モニター等に使用されるカラーフィルタを提供でき、液晶表示装置や自発光表示装置として有用である。
10 画素部
10a 第1画素部
10b 第2画素部
10c 第3画素部
11a 第1発光性ナノ粒子複合体
11b 第2発光性ナノ粒子複合体
12a 第1光散乱性粒子
12b 第2光散乱性粒子
12c 第3光散乱性粒子
20 遮光部
30 光変換層
40 基材
100 カラーフィルタ

Claims (17)

  1. 発光性ナノ粒子の表面に有機リガンドを有する発光性ナノ粒子複合体であって、
    前記発光性ナノ粒子は、コアにインジウムおよびリンを含有するコアシェル構造型発光性ナノ粒子であり、
    前記発光性ナノ粒子において、インジウムに対する塩素のモル比が0.80未満であり、
    前記有機リガンドは、メルカプト基を1つ以上有するメルカプト化合物を1種以上含有する、発光性ナノ粒子複合体。
  2. 前記メルカプト化合物の溶解度パラメータ(SP値)δが9.0cal0.5cm1.5以上である、請求項1に記載の発光性ナノ粒子複合体。
  3. 前記メルカプト化合物のpKaが8.1以上である、請求項1または2に記載の発光性ナノ粒子複合体。
  4. 前記メルカプト化合物の分子量が250より大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の発光性ナノ粒子複合体。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の発光性ナノ粒子複合体と、光重合性化合物とを含有する、インク組成物。
  6. 前記光重合性化合物が、光ラジカル重合性化合物である、請求項5に記載のインク組成物。
  7. 前記光重合性化合物が、アルカリ不溶性である、請求項5または6に記載のインク組成物。
  8. さらに、酸化防止剤を含有する、請求項5~7のいずれか1項に記載のインク組成物。
  9. さらに、亜鉛を中心金属として有し、該亜鉛に配位する2つの配位子を有する亜鉛化合物を含有する、請求項5~8のいずれか1項に記載のインク組成物。
  10. インクジェット方式による液滴吐出法に用いられる、請求項5~9のいずれか1項に記載のインク組成物。
  11. カラーフィルタ用である、請求項5~10のいずれか1項に記載のインク組成物。
  12. 請求項5~11のいずれか1項に記載のインク組成物の硬化物からなる光変換層。
  13. 請求項5~11のいずれか1項に記載のインク組成物の硬化物からなる光変換層がアルカリ不溶性である、光変換層。
  14. 複数の画素部を備える光変換層であって、
    前記複数の画素部は、請求項5~11のいずれか1項に記載のインク組成物の硬化物を含む画素部を有する、光変換層。
  15. 前記複数の画素部間に設けられた遮光部を更に備え、
    前記複数の画素部は、前記硬化物を含み、且つ、前記発光性ナノ粒子複合体として、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する発光性ナノ粒子複合体を含有する、第1の画素部と、
    前記硬化物を含み、且つ、前記発光性ナノ粒子複合体として、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する発光性ナノ粒子複合体を含有する、第2の画素部と、
    を有する、請求項12~14のいずれか1項に記載の光変換層。
  16. 前記複数の画素部は、420~480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上である第3の画素部を更に有する、請求項12~15のいずれか1項に記載の光変換層。
  17. 請求項12~16のいずれか1項に記載の光変換層を備える、カラーフィルタ。

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