JP2023034340A - 船外機 - Google Patents
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Abstract
【課題】ロワーユニットがロワーユニットよりも上方の構造物に対して相対回動可能な構成において、ロワーユニット内の電気部品に接続されたハーネスの取り回しが考慮された新規な構造を有する船外機を提供する。【解決手段】船外機1は、エンジン10から下方へ延びるドライブシャフト11を覆うドライブシャフトカバー16と、ドライブシャフトカバー16に対して相対回動可能なロワーユニット40と、ハーネス50とを含む。ロワーユニット40のロワーハウジング12は、ドライブシャフト11の下部11Aと、電気部品の一例であるシフトアクチュエータ28とを収容している。ハーネス50は、ドライブシャフトカバー16に設けられたアッパー空間16Bと、ロワーハウジング12においてアッパー空間16Bに下方から連通するロワー空間12Bとを通ってシフトアクチュエータ28に接続されている。【選択図】図1
Description
本発明は、船外機に関する。
特許文献1に記載の船外機は、船外機本体と、船外機本体を船体に取り付ける取付装置とを含む。船外機本体は、エンジンを収容した上部ケースと、上部ケースから下方へ延びるドライブシャフトと、後端にプロペラが取り付けられたプロペラシャフトと、ドライブシャフトの下部及びプロペラシャフトを収容したギヤケースとを含む。ギヤケース内には、ドライブシャフトの下端に取り付けられたピニオンギヤと、ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うフロントベベルギヤ及びリバースベベルギヤと、プロペラシャフトに取り付けられたクラッチと、クラッチを動かすシフト用モータとが配置されている。
フロントベベルギヤ及びリバースベベルギヤは、ドライブシャフトの回転に応じて互いに逆方向に回転する。シフト用モータがクラッチをフロントベベルギヤまで動かすと、プロペラシャフト及びプロペラは、船体が前進する方向に回転する。シフト用モータがクラッチをリバースベベルギヤまで動かすと、プロペラシャフト及びプロペラは、反対方向に回転する。クラッチは、フロントベベルギヤ及びリバースベベルギヤとともに、いわゆるドッグクラッチを構成している。スライダがドッグクラッチと呼ばれる場合もある。そこで、この明細書では、動力伝達のためにプロペラシャフト等の軸方向に移動する部材をドッグクラッチということにする。
船外機本体は、上部ケースとギヤケースとを連結する連結機構を含む。連結機構によって、ギヤケースは、上部ケースに対して、ドライブシャフトまわりに左右に揺動自在である。
特許文献1のようにギヤケース及びその収容物によって構成されたロワーユニットがロワーユニットよりも上方の構造物に対して相対回動可能な構成において、当該構造物からのハーネスをシフト用モータのような電気部品に接続する場合が想定される。この場合においてハーネスが船外機の外に露出されると、ハーネスによって船外機の外観が損なわれる場合があるし、ハーネスによってロワーユニットの回動可能範囲が制限される場合がある。そのため、ハーネスの取り回しを考慮する必要がある。
そこで、本発明の一実施形態は、ロワーユニットがロワーユニットよりも上方の構造物に対して相対回動可能な構成において、ロワーユニット内の電気部品に接続されたハーネスの取り回しが考慮された新規な構造を有する船外機を提供する。
本発明の一実施形態は、エンジンと、前記エンジンから下方へ延びるドライブシャフトと、前記ドライブシャフトにおいて前記ドライブシャフトの下部よりも上方の部分を覆うドライブシャフトカバーと、ロワーユニットと、ハーネスと、を含む、船外機を提供する。前記ドライブシャフトは、前記エンジンの動力によって回転する。前記ドライブシャフトカバーには、前記ドライブシャフトまわりの周方向に沿って延びるアッパー空間が設けられている。前記ロワーユニットは、前記ドライブシャフトと同軸の転舵軸線まわりに前記周方向に沿って前記ドライブシャフトカバーに対して相対回動可能に結合されている。前記ロワーユニットは、プロペラと、前記プロペラとともに回転するプロペラシャフトと、前記ドライブシャフトの回転を前記プロペラシャフトに伝達する伝達機構と、電気部品と、ロワーハウジングと、を有する。前記ロワーハウジングは、前記プロペラシャフトと前記伝達機構と前記ドライブシャフトの下部と前記電気部品とを収容する。前記ロワーハウジングには、前記アッパー空間に下方から連通するロワー空間が設けられている。前記ハーネスは、前記アッパー空間と前記ロワー空間とを通って前記ロワーハウジング内の前記電気部品に接続されている。
この構成により、船外機では、ロワーユニットが、その上方の構造物であるドライブシャフトカバーに対して、ドライブシャフトと同軸の転舵軸線まわりに相対回動可能である。そして、ロワーユニットのロワーハウジング内の電気部品に接続されたハーネスにおいてロワーハウジングとドライブシャフトカバーとに跨る部分(以下「中継部分」という。)は、ドライブシャフトカバーのアッパー空間と、ロワーハウジングのロワー空間とを通っている。アッパー空間は、ドライブシャフトカバーにおいてドライブシャフトまわりの周方向に沿って延びていて、ロワー空間は、アッパー空間に下方から連通している。この場合、ロワーユニットが相対回動すると、ハーネスの中継部分は、アッパー空間及びロワー空間に配置された状態で、ロワーユニットの相対回動に追従するように変形する。これにより、ハーネスでは、ロワーハウジング内で電気部品に接続された下部分だけでなく、中継部分も、ロワーユニットの相対回動を邪魔しないように船外機内に配置できる。このようにハーネスにおいてロワーユニットの周辺の部分を船外機内に配置すれば、船外機の外観を向上できる。さらに、ロワーユニットの回動可能範囲がハーネスによって制限されることを抑制できる。以上により、ロワーユニット内の電気部品に接続されたハーネスの取り回しが考慮された新規な構造を有する船外機を提供できる。
本発明の一実施形態においては、前記ロワーユニットが前記ドライブシャフトカバーに対して、所定の回動範囲で相対回動可能であり、前記回動範囲内のいずれの回動位置においても、前記アッパー空間と前記ロワー空間とが互いに連通している。
この構成により、ロワーユニットが回動範囲内のいずれの回動位置まで相対回動しても、ハーネスの中継部分は、互いに連通するアッパー空間及びロワー空間に配置された状態で、ロワーユニットの相対回動に追従するように変形する。これにより、ロワーユニットの回動位置を考慮しなくても、ハーネスの中継部分を、ロワーユニットの相対回動を邪魔しないように船外機内に配置できる。
本発明の一実施形態においては、前記ハーネスが、前記アッパー空間及び/又は前記ロワー空間において、前記周方向に延びて撓んでいる。
この構成により、ロワーユニットが相対回動したときに、ハーネスにおいてアッパー空間及び/又はロワー空間に配置された中継部分は、周方向に撓むことによって、ロワーユニットの相対回動に一層追従するように変形する。これにより、ハーネスの中継部分を、ロワーユニットの相対回動を一層邪魔しないように船外機内に配置できる。
本発明の一実施形態においては、前記ロワーユニットには、排気口が設けられている。前記エンジンからの排気ガスを前記排気口に導く排気通路が、前記ドライブシャフトカバー及び前記ロワーハウジングにわたって設けられている。前記アッパー空間及び前記ロワー空間が、前記排気通路の一部を区画している。
この構成により、排気通路の一部をアッパー空間及びロワー空間として利用することによって、ハーネスの中継部分を、ロワーユニットの相対回動を邪魔しないように船外機内に配置できる。
本発明の一実施形態においては、前記船外機は、前記アッパー空間及び前記ロワー空間の少なくとも一方に設けられ、前記ハーネスを覆うハーネスカバーをさらに含む。
この構成により、排気通路の一部であるアッパー空間及びロワー空間に配置されたハーネスの中継部分がハーネスカバーによって覆われるので、ハーネスの中継部分を、排気通路内の排気ガスが直接当たらないように保護することができる。
本発明の一実施形態においては、前記ドライブシャフトを収容するシャフト収容室が、前記ドライブシャフトカバー及び前記ロワーハウジングにわたって設けられている。前記アッパー空間及び前記ロワー空間は、前記シャフト収容室に対して径方向外方に区画されている。
この構成により、シャフト収容室に対して径方向外方に区画された部分をアッパー空間及びロワー空間として利用することによって、ハーネスの中継部分を、ロワーユニットの相対回動を邪魔しないように船外機内に配置できる。
本発明の一実施形態においては、前記エンジンを冷却する冷却水を流す冷却水路が、前記ドライブシャフトカバー及び前記ロワーハウジングにわたって設けられ、前記アッパー空間及び前記ロワー空間は、前記冷却水路の一部を区画している。
この構成により、冷却水路の一部をアッパー空間及びロワー空間として利用することによって、ハーネスの中継部分を、ロワーユニットの相対回動を邪魔しないように船外機内に配置できる。
本発明の一実施形態においては、前記伝達機構は、前記ドライブシャフトの回転に連動して回転する回転体と、前記プロペラシャフトと連動して回転するドッグクラッチと、を含む。前記ドッグクラッチは、前記回転体と噛み合う接続位置と、前記回転体から離れる切断位置との間において移動可能である。前記電気部品は、前記ドッグクラッチを移動させるシフトアクチュエータを含む。
この構成により、プロペラシャフトと連動して回転するドッグクラッチが切断位置に配置されて回転体から離れた状態では、ドライブシャフトの回転に連動して回転する回転体は、空転するので、ドライブシャフトの回転がプロペラシャフトに伝達されない。ドッグクラッチが切断位置から接続位置まで移動して回転体と噛み合うと、船外機がシフトインされる。すると、ドライブシャフトの回転が、回転体及びドッククラッチを介してプロペラシャフトに伝達されることにより、プロペラシャフトがプロペラと一体回転するので、プロペラが推進力を発生する。ロワーユニット内の電気部品がドッグクラッチを移動させるシフトアクチュエータである場合において、前述したように、シフトアクチュエータに接続されたハーネスの取り回しが考慮された新規な構造を有する船外機を提供できる。
本発明の一実施形態においては、前記アッパー空間及び前記ロワー空間は、前記周方向に沿って延びる環状空間である。
この構成により、ロワーユニットの回動範囲を360度以上にして、ロワーユニットが回動範囲内のいずれの回動位置まで相対回動しても、ロワー空間が常にアッパー空間に下方から連通する。そのため、ハーネスの中継部分は、常にアッパー空間及びロワー空間に配置された状態で、ロワーユニットの相対回動に追従するように変形する。これにより、ロワーユニットの回動位置を考慮しなくても、ハーネスの中継部分を、ロワーユニットの相対回動を邪魔しないように船外機内に配置できる。
本発明の一実施形態においては、前記ハーネスは、前記ロワー空間を通って前記ロワーハウジング内の前記電気部品に接続された第1ハーネスと、前記アッパー空間を通って前記ロワーハウジング外に配置された第2ハーネスとを含む。前記第2ハーネスは、コネクタを介して前記第1ハーネスに接続されている。前記ロワーハウジングの外壁には、前記ロワー空間に連通して前記第1ハーネスが挿通される挿通穴が設けられている。前記船外機は、前記挿通穴内における前記第1ハーネスのまわりの隙間を塞ぐシール部材をさらに含む。
この構成により、作業者は、第1ハーネスと第2ハーネスとをコネクタで接続することによってハーネスを完成させることができる。ロワーハウジングの外壁に設けられた挿通穴内における第1ハーネスのまわりの隙間がシール部材によって塞がれているので、船外機の周囲の水が、この隙間を通ってロワーハウジング内に浸入することを抑制できる。
本発明の一実施形態においては、前記シール部材は、前記挿通穴内における前記第1ハーネスのまわりに配置される複数の円弧状のグロメットを含む。前記船外機は、前記複数のグロメットを前記挿通穴内に押し込む押し込み部材をさらに含む。
この構成により、押し込み部材によって押し込まれた複数のグロメットは、隣り合うグロメット同士が密着した状態で、挿通穴内における第1ハーネスのまわりの隙間に圧入される。そのため、船外機の周囲の水が、この隙間を通ってロワーハウジング内に浸入することを抑制できる。
本発明の一実施形態においては、前記船外機は、前記ロワーユニットよりも上方のアッパーユニットを前記エンジン及び前記ドライブシャフトカバーとともに構成し、前記ロワーユニットを前記転舵軸線まわりに回動させる転舵アクチュエータをさらに含む。
この構成により、転舵アクチュエータによってロワーユニットをアッパーユニットに対して相対回動させることができる。転舵アクチュエータが、ロワーユニットでなくアッパーユニットに設けられるので、ロワーユニット内の電気部品を少なくすることができる。これにより、ロワーユニット内の電気部品に接続されるハーネスの本数を最少限に抑えることができる。
本発明によれば、ロワーユニットがロワーユニットよりも上方の構造物に対して相対回動可能な構成において、ロワーユニット内の電気部品に接続されたハーネスの取り回しが考慮された新規な構造を有する船外機を提供できる。
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る船外機1の模式的な左側面図である。図1における左方が、船外機1の前方であり、図1における右方が、船外機1の後方である。図1の紙面に直交する方向における手前が、船外機1の左方であり、図1の紙面に直交する方向における奥が、船外機1の右方である。
船外機1は、船舶2の船体3のトランサム4に対して、取付機構5を介して取り付けられる。取付機構5は、トランサム4に固定されたクランプブラケット6と、水平に沿って左右方向に延びるチルトシャフト7を介してクランプブラケット6に連結されたスイベルブラケット8と含む。スイベルブラケット8は、船外機1に固定されている。これにより、船外機1は、概ね垂直な姿勢で、取付機構5によってトランサム4に取り付けられている。取付機構5を船外機1の一部とみなしてもよい。船外機1及びスイベルブラケット8は、クランプブラケット6に対して、チルトシャフト7まわりに上下方向に回動可能である。船外機1がチルトシャフト7まわりに回動されることにより、船外機1が、船体3及びクランプブラケット6に対して傾けられる。
船外機1は、縦長ボックス状のアッパーハウジング9と、アッパーハウジング9内に配置されたエンジン10と、アッパーハウジング9内でエンジン10から下方へ延びるドライブシャフト11とを含む。船外機1は、アッパーハウジング9の下方に配置された中空のロワーハウジング12と、ロワーハウジング12内に配置されたプロペラシャフト13及び伝達機構14とを含む。
アッパーハウジング9は、略上半分を占めるエンジンカバー15と、略下半分を占めるドライブシャフトカバー16とを有する。エンジンカバー15はボックス状であり、エンジン10を収容している。ドライブシャフトカバー16は、上下方向に延びる筒状であり、ドライブシャフト11の大部分、具体的には、ドライブシャフト11において、その下部11Aよりも上方の部分11Bを覆っている。エンジンカバー15とドライブシャフトカバー16とは、一体形成されてもよいし、互いに別部品であって組み合わされることによって一体化されてもよい。ドライブシャフトカバー16については、後で詳しく説明する。
エンジン10は、例えばガソリン等の燃料を燃焼させて動力を発生する内燃機関であり、燃焼室17と、燃焼室17内に配置されたピストン18と、ピストン18に連結されたクランクシャフト19とを内蔵している。クランクシャフト19は、上下方向に延びるクランク軸線19Aを有する。クランクシャフト19の下端部は、ドライブシャフト11の上端部に連結されている。燃焼室17内での混合気の燃焼によって、ピストン18が、クランク軸線19Aと直交する前後方向に往復直線移動する。
ドライブシャフト11は、プロペラシャフト13とエンジン10との間において上下方向に沿って延びている。そのため、ドライブシャフト11の軸方向Zは、上下方向である。ピストン18が往復直線移動すると、クランクシャフト19が、ドライブシャフト11を伴って、クランク軸線19Aまわりに駆動回転される。つまり、ドライブシャフト11は、エンジン10の動力によって回転する。上方から見た平面視において、クランクシャフト19及びドライブシャフト11の回転方向は、例えば時計回りの方向であり、ドライブシャフト11の中心軸線11Cは、クランク軸線19Aと一致する。
以下では、中心軸線11Cを基準とする径方向を、ドライブシャフト11の径方向Rという。径方向Rの外方(以下「径方向外方R1」という。)は、中心軸線11Cから離れる方向であり、径方向Rの内方(以下「径方向内方R2」という。)は、中心軸線11Cに接近する方向である。また、ドライブシャフト11まわりの周方向を「周方向S」という。
ロワーハウジング12は、プロペラシャフト13及び伝達機構14以外に、ドライブシャフト11の下部11Aも収容している。ロワーハウジング12については、後で詳しく説明する。
図2は、船外機1の下部の左側面図である。プロペラシャフト13は、ロワーハウジング12内で前後方向に延びている。そのため、プロペラシャフト13の軸方向Yは、前後方向である。ドライブシャフト11の下端部は、伝達機構14によってプロペラシャフト13の前端部に連結されている。プロペラシャフト13の後端部は、ロワーハウジング12から後方に突出している。
プロペラシャフト13の後端部には、単数又は複数のプロペラ20が取り付けられている。複数のプロペラ20が設けられる場合には、これらのプロペラ20は、前後方向に並んで配置される。それぞれのプロペラ20は、プロペラシャフト13の後端部に固定された内筒21と、内筒21を取り囲んだ円筒状の外筒22と、内筒21の外周面と外筒22の内周面とをつなぐ複数のリブ(図示せず)と、外筒22の外周面に設けられた複数の羽根23とを含む。プロペラシャフト13は、前後方向に延びる回転軸線13Aまわりにプロペラ20とともに回転する。
伝達機構14は、ドライブシャフト11の回転をプロペラシャフト13に伝達するための構成である。伝達機構14は、ドライブシャフト11の下端部に固定された駆動歯車25と、プロペラシャフト13の前端部に取り付けられた回転体26及びドッグクラッチ27とを含む。伝達機構14は、ロワーハウジング12内に収容されてプロペラシャフト13よりも前方に配置された電動のシフトアクチュエータ28も含む。
駆動歯車25は、傘歯車である。プロペラシャフト13は、駆動歯車25の下方に配置されている。回転体26は、プロペラシャフト13に沿って前後方向に並んで配置された第1回転体31及び第2回転体32を含む。第1回転体31及び第2回転体32は、例えば筒状の傘歯車である。
本実施形態では、第1回転体31が駆動歯車25よりも前方に配置され、第2回転体32が駆動歯車25よりも後方に配置されるが、第1回転体31と第2回転体32との前後の位置関係は、本実施形態と逆であってもよい。第1回転体31の後面において、テーパー状の外周部には歯部31Aが形成され、内周部には爪部31Bが形成されている。第2回転体32の前面において、テーパー状の外周部には歯部32Aが形成され、内周部には爪部32Bが形成されている。
第1回転体31は、プロペラシャフト13の前端部において駆動歯車25よりも前方の部分を取り囲み、第2回転体32は、プロペラシャフト13の前端部において駆動歯車25よりも後方の部分を取り囲んでいる。第1回転体31及び第2回転体32は、互いの歯部31A及び32Aが前後方向に間隔を空けて向かい合うように配置され、駆動歯車25に噛み合っている。エンジン10の駆動に伴って駆動歯車25がドライブシャフト11と一体回転すると、駆動歯車25の回転が第1回転体31及び第2回転体32に伝達される。これにより、第1回転体31及び第2回転体32は、プロペラシャフト13の回転軸線13Aまわりに、互いに逆向きに回転する。このように、駆動歯車25に噛み合った回転体26(第1回転体31及び第2回転体32)は、ドライブシャフト11の回転に連動して、回転する。
ドッグクラッチ27は、第1回転体31及び第2回転体32の間に配置されている。ドッグクラッチ27は、例えば筒状であって、プロペラシャフト13の前端部を取り囲んでいる。ドッグクラッチ27の前端面には、第1爪部27Aが形成され、ドッグクラッチ27の後端面には、第2爪部27Bが形成されている。ドッグクラッチ27は、例えばスプライン(図示せず)によって、プロペラシャフト13の前端部に連結されている。したがって、ドッグクラッチ27は、プロペラシャフト13の前端部とともに回転する。つまり、ドッグクラッチ27は、プロペラシャフト13と連動して回転する。さらに、ドッグクラッチ27は、プロペラシャフト13の前端部に対して前後方向に移動可能である。つまり、ドッグクラッチ27は、プロペラシャフト13に対して一体回転可能かつ前後方向に沿って相対移動可能である。
シフトアクチュエータ28は、電動のモータ33と、モータ33の出力軸(図示せず)に連結されて下方へ延びるシフトロッド34とを含む電気部品である。シフトロッド34の下端部は、ドッグクラッチ27に連結されている。モータ33が作動すると、シフトロッド34は、シフトロッド34の軸線まわりに回動する。ドッグクラッチ27は、シフトロッド34が回動されることにより、切断位置と接続位置との間において前後方向に沿って移動される。
切断位置は、図2に示すようにドッグクラッチ27が第1回転体31及び第2回転体32から離れて、これらの回転体26のいずれにも噛み合わない位置である。ドッグクラッチ27が切断位置に配置されている状態では、ドライブシャフト11の回転が伝達される各回転体26は、空転するので、ドライブシャフト11の回転がプロペラシャフト13に伝達されない。以下、このときの船外機1のシフト位置を「ニュートラル」という。
接続位置は、ドッグクラッチ27が第1回転体31及び第2回転体32のどちらかと噛み合う位置である。接続位置は、ドッグクラッチ27の第1爪部27Aが第1回転体31の爪部31Bとだけ噛み合う第1接続位置と、ドッグクラッチ27の第2爪部27Bが第2回転体32の爪部32Bとだけ噛み合う第2接続位置とを含む。切断位置は、第1接続位置と第2接続位置との間の位置である。第1接続位置は、切断位置よりも前方であり、第2接続位置は、切断位置よりも後方である。
ドッグクラッチ27が第1接続位置に配置されて第1回転体31だけに連結された状態では、第1回転体31の回転がプロペラシャフト13に伝達されるので、船外機1のシフト位置は「前進」にシフトインされる。すると、ドライブシャフト11の回転が、第1回転体31及びドッグクラッチ27を介してプロペラシャフト13に伝達されることにより、プロペラ20が前進回転方向(例えば、後方から見て時計回り)に回転する。これにより、プロペラ20の羽根23が前進方向の推進力を発生する。
ドッグクラッチ27が第2接続位置に配置されて第2回転体32だけに連結された状態では、第2回転体32の回転がプロペラシャフト13に伝達されるので、船外機1のシフト位置は「後進」にシフトインされる。すると、ドライブシャフト11の回転が、第2回転体32及びドッグクラッチ27を介してプロペラシャフト13に伝達されることにより、プロペラ20が、前進回転方向とは反対の後進回転方向に回転する。これにより、プロペラ20の羽根23が後進方向の推進力を発生する。このように、本実施形態では、第1回転体31が前進用歯車であって第2回転体32が後進用歯車である。もちろん、第1回転体31が後進用歯車であって、第2回転体32が前進用歯車であってもよい。
船外機1は、船外機1の内部においてロワーハウジング12及びドライブシャフトカバー16にわたって設けられた排気通路36を含む。排気通路36は、例えばドライブシャフト11よりも後方に配置されていて上下方向に延びている。排気通路36の上端36Aは、エンジン10に接続されている(図1参照)。排気通路36は、プロペラ20に設けられた排気口36Bを含む。プロペラ20における内筒21と外筒22との間の隙間が、排気通路36の一部を構成しており、最後尾のプロペラ20の外筒22の後端面の開口が、排気通路36の排気口36Bを構成している。
船舶2が水に浮かべられてプロペラ20が水面よりも下方に位置する状態では、排気口36Bは、水中に位置しているので、排気口36Bを通過した水が、排気通路36の下流部に進入している。一方、エンジン10が高速回転しているときには、排気通路36内の水が、エンジン10からの排気ガスの圧力によって押されて、排気ガスとともに排気通路36によって排気口36Bに導かれ、排気口36Bから排出される。これにより、エンジン10で生成された排気ガスが水中に排出される。
ロワーハウジング12と、ロワーハウジング12に収容されたプロペラシャフト13、伝達機構14及びシフトアクチュエータ28と、ロワーハウジング12から後方に露出されたプロペラ20とは、ロワーユニット40を構成している。ロワーユニット40は、上下方向に延びる転舵軸線まわりに周方向Sに沿ってドライブシャフトカバー16に対して相対回動可能に結合されている。この転舵軸線は、ドライブシャフト11と同軸であり、厳密には、ドライブシャフト11の中心軸線11Cと一致している。つまり、中心軸線11Cを転舵軸線とみなすことができる。ロワーユニット40は、ドライブシャフトカバー16に対して、所定の回動範囲で相対回動可能である。
船外機1は、ロワーユニット40をドライブシャフトカバー16に対して中心軸線11Cまわりに相対回動させる電動の転舵アクチュエータ41を含む。転舵アクチュエータ41の一例は、ドライブシャフトカバー16に設けられたモータ42と、モータ42から下方へ突出する出力軸43に取り付けられたピニオンギヤ44とを有する。ピニオンギヤ44は、ドライブシャフトカバー16の外壁の一部である下壁16Aの下面に露出されている。ロワーハウジング12の外壁の一部である上壁12Aの上面には、周方向Sに沿って延びるラックギヤ45が設けられていて、ピニオンギヤ44は、ラックギヤ45に噛み合っている。モータ42が作動すると、出力軸43及びピニオンギヤ44が回転することによって、ロワーユニット40が回動する。なお、転舵アクチュエータ41として、別の構成を採用してもよい(詳しくは後述する。)。また、図2以外の各図では、転舵アクチュエータ41の図示が省略される。
ドライブシャフトカバー16を含むアッパーハウジング9と、エンジン10と、転舵アクチュエータ41とは、ロワーユニット40よりも上方の構造物であるアッパーユニット46を構成している。本実施形態ではアッパーユニット46は、スイベルブラケット8に固定されることによって左右方向に回動できないので、船外機1では、ロワーユニット40だけが単独で左右方向に回動する。別の例として、アッパーユニット46は、上下方向に延びるステアリングシャフト47(図1参照)を介してスイベルブラケット8に連結されて、ステアリングシャフト47まわりに左右方向に回動できてもよい。この場合には、アッパーユニット46及びロワーユニット40の両方が、個別に回動することができる。
図3は、船外機1の下部の分解斜視図である。ドライブシャフトカバー16の下壁16Aの下面において前寄りの領域には、アッパー空間16Bが設けられている。アッパー空間16Bは、下壁16Aの下面から上方へ窪んで周方向Sに沿って延びる環状空間(詳しくは円環状の空間)である。ドライブシャフトカバー16には、アッパー空間16Bを上方から塞ぐ円環状の天面16Cが設けられている。天面16Cは、下壁16Aの一部である。天面16Cの中央には、天面16Cの内周縁を縁取りつつ下方へ延びる円管状のアッパーパイプ16Dが設けられている。
天面16Cには、アッパー空間16Bに上方から連通した挿通穴16E及び入口16Fが周方向Sに離れて設けられている。挿通穴16Eは、入口16Fよりも前方に配置されている。アッパーパイプ16Dの内部空間及び挿通穴16Eのそれぞれは、ドライブシャフトカバー16内、つまりドライブシャフトカバー16の内部空間16Gに下方から連通している。排気通路36においてドライブシャフトカバー16内に位置する部分は、入口16Fから上方へ延びている。
ロワーハウジング12の上壁12Aの上面において前寄りの領域には、ロワー空間12Bが設けられている。ロワー空間12Bは、上壁12Aから下方へ窪んで周方向Sに沿って延びる環状空間(詳しくは円環状の空間)である。ロワーハウジング12には、ロワー空間12Bを下方から塞ぐ円環状の底面12Cが設けられている。底面12Cは、上壁12Aの一部である。底面12Cの中央には、底面12Cの内周縁を縁取りつつ上方へ延びる円管状のロワーパイプ12Dが設けられている。
底面12Cには、ロワー空間12Bに下方から連通した挿通穴12E及び出口12Fが周方向Sに離れて設けられている。挿通穴12Eは、出口12Fよりも前方に配置されている。ロワーパイプ12Dの内部空間及び挿通穴12Eのそれぞれは、ロワーハウジング12内、つまりロワーハウジング12の内部空間12Gに上方から連通している。排気通路36においてロワーハウジング12内に位置する部分は、出口12Fから下方へ延びている。
ロワーユニット40がアッパーユニット46に組み付けられて船外機1が完成した状態では、ロワー空間12Bは、アッパー空間16Bに下方から対向して連通している(図2参照)。互いに連通した状態にあるアッパー空間16Bとロワー空間12Bとは、ドライブシャフトカバー16の入口16Fとロワーハウジング12の出口12Fとを中継する環状の中継空間48として一体化されることによって、排気通路36の一部を構成している。また、アッパーパイプ16Dの内部空間と、ロワーパイプ12Dの内部空間とが連通していて、ドライブシャフト11は、これらの内部空間を通っている(図2参照)。アッパー空間16Bとロワー空間12Bとでは、直径(アッパー空間16Bの円筒面16H及びロワー空間12Bの円筒面12Hのそれぞれの内径)が同じ又は略同じであることが好ましいが、上下方向の寸法は同じであってもよいし異なってもよい。中継空間48は、密閉されていてもよいし、船外機1の周囲からロワーハウジング12の上壁12Aとドライブシャフトカバー16の下壁16Aとの間を通った水が中継空間48に流入できてもよい。
船外機1は、アッパー空間16Bとロワー空間12Bとを通ってロワーハウジング12内のシフトアクチュエータ28に接続されたハーネス50を含む。ハーネス50は、信号線及び電力供給線の少なくともいずれかを含む。ハーネス50は、ロワー空間12Bを通ってロワーハウジング12内のシフトアクチュエータ28に接続された第1ハーネス51と、アッパー空間16Bを通ってロワーハウジング12外に配置された第2ハーネス52とを含む。第2ハーネス52は、コネクタ53を介して第1ハーネス51に接続されている。
コネクタ53は、第1ハーネス51側の第1コネクタ53Aと、第2ハーネス52側の第2コネクタ53Bとを含む。作業者は、第1コネクタ53Aと第2コネクタ53Bとを連結して第1ハーネス51と第2ハーネス52とを互いに接続することによってハーネス50を完成させることができる。第1ハーネス51は、ロワーハウジング12のロワー空間12B内の挿通穴12Eに挿通されてロワーハウジング12の内部空間12Gに引き込まれて、シフトアクチュエータ28に接続されている。第2ハーネス52は、ドライブシャフトカバー16のアッパー空間16B内の挿通穴16Eに挿通されてドライブシャフトカバー16の内部空間16Gに引き込まれて、船外機1の電子制御ユニット(図示せず)やバッテリ(図示せず)等に接続されている。コネクタ53は、ロワー空間12B及び/又はアッパー空間16Bに配置されてもよい。
図4は、船外機1の下部における第1ハーネス51の周辺部分の斜視図である。船外機1は、ロワーハウジング12の挿通穴12E内における第1ハーネス51のまわりの隙間54(図3参照)を塞ぐシール部材55と、シール部材55を挿通穴12E内に押し込む押し込み部材56とを含む。シール部材55は、ゴム又は樹脂製であり、複数のグロメット55Aを含む。それぞれのグロメット55Aは、平面視で円弧状である(図5参照)。本実施形態では、2つのグロメット55Aが第1ハーネス51を挟むように組み合わされることによって円筒状のシール部材55を構成している。シール部材55には、その中心を通る貫通穴55Bが形成されていて、2つのグロメット55Aによって挟まれた第1ハーネス51は、貫通穴55Bを通っている(図6参照)。そのため、これらのグロメット55Aは、挿通穴12E内における第1ハーネス51のまわりに配置されている。シール部材55の外周面の下端部は、下方へ向けて細くなるテーパー面55Cである。これにより、作業者は、シール部材55を挿通穴12Eに円滑に嵌め込むことができる。
押し込み部材56の一例は、金属製の円環であって、ワッシャー等によって構成されている。押し込み部材56は、ロワーハウジング12のロワー空間12B内に配置されている。押し込み部材56は、ボルトやナット等の締結部材(図示せず)によってロワー空間12Bの底面12Cに固定されていて、シール部材55、つまり2つのグロメット55Aを上方から挿通穴12E内に押し込んでいる(図6参照)。第1ハーネス51は、押し込み部材56の中央の穴56Aに挿通されている。
このように、ロワーハウジング12の上壁12Aに設けられた挿通穴12E内における第1ハーネス51のまわりの隙間54がシール部材55によって塞がれている。特に、押し込み部材56によって押し込まれた複数のグロメット55Aは、隣り合うグロメット55A同士が密着した状態で、挿通穴12E内における第1ハーネス51のまわりの隙間54に圧入されている。そのため、船外機1の周囲からロワーハウジング12の上壁12Aとドライブシャフトカバー16の下壁16Aとの間を通ってロワー空間12Bに浸入した水が、この隙間54を通ってロワーハウジング12の内部空間12Gに浸入することを抑制できる。
船外機1は、ドライブシャフトカバー16の挿通穴16E内における第2ハーネス52のまわりの隙間57(図3参照)を塞ぐシール部材58と、シール部材58を挿通穴16E内に押し込む押し込み部材59とを含む。シール部材58は、前述したシール部材55と同様に構成されてもよいし、押し込み部材59は、前述した押し込み部材56と同様に構成されてもよい。
図7は、船外機1の要部の模式的な平面図である。図7では、便宜上、実線で示したロワーユニット40が、2点鎖線で示したアッパーユニット46よりも一回り大きく見えるように図示されている。図7に示すロワーユニット40は、その回動角度が零度である中立位置にある。ロワーユニット40が中立位置にあるときには、プロペラシャフト13の回転軸線13Aは、前後方向に沿って延びており、この状態の回転軸線13Aは、左右方向における船体3(図1参照)の中心を通る中心線と平行になっている。ハーネス50は、アッパー空間16B及び/又はロワー空間12Bにおいて、周方向Sに延びて撓んでいる。ハーネス50は、ドライブシャフト11を一周以上取り囲んでいてもよい。
図8は、ロワーユニット40が中立位置から右方に、例えば30度回動したときの船外機1を示している。ロワーユニット40が中立位置にあっても中立位置から回動しても、ロワー空間12Bは、引き続きアッパー空間16Bに下方から対向して連通している。つまり、ロワーユニット40が回動範囲内のいずれの回動位置にあっても、アッパー空間16Bとロワー空間12Bとが互いに連通している。
以上のように、この実施形態によれば、ハーネス50においてロワーハウジング12とドライブシャフトカバー16とに跨る中継部分50Aは、ドライブシャフトカバー16のアッパー空間16Bと、ロワーハウジング12のロワー空間12Bとを通っている。アッパー空間16Bは、ドライブシャフトカバー16においてドライブシャフト11まわりの周方向Sに沿って延びていて、ロワー空間12Bは、アッパー空間16Bに下方から連通している。この場合、ロワーユニット40が相対回動すると、ハーネス50の中継部分50Aは、アッパー空間16B及びロワー空間12Bに配置された状態で、ロワーユニット40の相対回動に追従するように変形する。
これにより、ハーネス50では、ロワーハウジング12内でシフトアクチュエータ28に接続された下部分50B(図2参照)だけでなく、中継部分50Aも、ロワーユニット40の相対回動を邪魔しないように船外機1内に配置できる。このようにハーネス50においてロワーユニット40の周辺の部分を船外機1内に配置することによって、船外機1の外観を向上できる。さらに、ロワーユニット40の回動可能範囲がハーネス50によって制限されることを抑制できる。以上により、ロワーユニット40内のシフトアクチュエータ28に接続されたハーネス50の取り回しが考慮された新規な構造を有する船外機1を提供できる。また、シフトアクチュエータ28をアッパーユニット46に設ける場合には、シフトアクチュエータ28の動力をアッパーユニット46からロワーユニット40に機械的に伝達するための複雑な機構が必要になる。しかし、この実施形態では、シフトアクチュエータ28がロワーユニット40に設けられるので、このような機構が不要である。
この実施形態においては、ロワーユニット40が回動範囲内のいずれの回動位置まで相対回動しても、ハーネス50の中継部分50Aは、互いに連通するアッパー空間16B及びロワー空間12Bに配置された状態で、ロワーユニット40の相対回動に追従するように変形する。これにより、ロワーユニット40の回動位置を考慮しなくても、ハーネス50の中継部分50Aを、ロワーユニット40の相対回動を邪魔しないように船外機1内に配置できる。
この実施形態においては、ハーネス50が、アッパー空間16B及び/又はロワー空間12Bにおいて、周方向Sに延びて撓んでいる。この構成により、ロワーユニット40が相対回動したときに、ハーネス50においてアッパー空間16B及び/又はロワー空間12Bに配置された中継部分50Aは、周方向Sに撓むことによって、ロワーユニット40の相対回動に一層追従するように変形する。これにより、ハーネス50の中継部分50Aを、ロワーユニット40の相対回動を一層邪魔しないように船外機1内に配置できる。
この実施形態においては、アッパー空間16B及びロワー空間12Bが、排気通路36の一部を区画している(図2参照)。この構成により、排気通路36の一部をアッパー空間16B及びロワー空間12Bとして利用することによって、ハーネス50の中継部分50Aを、ロワーユニット40の相対回動を邪魔しないように船外機1内に配置できる。
この場合、ハーネス50を覆うハーネスカバー60(図2参照)が、アッパー空間16B及びロワー空間12Bの少なくとも一方に設けられるとよい。ハーネスカバー60は、アッパー空間16B及びロワー空間12Bにおいて出口12Fと入口16Fとによって挟まれた空間X(図2参照)からハーネス50を隔離する仕切りである。この構成により、排気通路36の一部であるアッパー空間16B及びロワー空間12Bに配置されたハーネス50の中継部分50Aがハーネスカバー60によって覆われるので、ハーネス50の中継部分50Aを、排気通路36内で空間Xを流れる排気ガスが直接当たらないように保護することができる。
この実施形態においては、アッパー空間16B及びロワー空間12Bは、周方向Sに沿って延びる環状空間である。この構成により、ロワーユニット40の回動範囲を360度以上にして、ロワーユニット40が回動範囲内のいずれの回動位置まで相対回動しても、ロワー空間12Bが常にアッパー空間16Bに下方から連通する。そのため、ハーネス50の中継部分50Aは、常にアッパー空間16B及びロワー空間12Bに配置された状態で、ロワーユニット40の相対回動に追従するように変形する。これにより、ロワーユニット40の回動位置を考慮しなくても、ハーネス50の中継部分50Aを、ロワーユニット40の相対回動を邪魔しないように船外機1内に配置できる。
この実施形態においては、転舵アクチュエータ41が、ロワーユニット40でなくアッパーユニット46に設けられるので(図2参照)、ロワーユニット40内における電気部品を少なくすることができる。これにより、ロワーユニット40内における電気部品に接続されるハーネス50の本数を最少限に抑えることができる。
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では、アッパー空間16B及びロワー空間12Bは、排気通路36の一部を区画している。つまり、排気通路36という船外機1における必須空間を利用してアッパー空間16B及びロワー空間12Bが設けられている。そのため、アッパー空間16B及びロワー空間12Bのための専用空間を船外機1内に設けなくても済むので、船外機1の大型化を抑制できる。
排気通路36以外の必須空間が船外機1に存在する場合には、アッパー空間16B及びロワー空間12Bは、以下に説明する第1変形例及び第2変形例のように構成されてもよい。第1変形例及び第2変形例に関し、既に説明した部分と機能的に同じ部分には同一番号を付して、当該部分についての詳細な説明は省略する。
図9は、第1変形例に係る船外機1の下部の左側面図である。船外機1には、上下方向に延びてドライブシャフト11を収容するシャフト収容室61が、ドライブシャフトカバー16及びロワーハウジング12にわたって設けられている。前述したロワーパイプ12D及びアッパーパイプ16Dのそれぞれの内部空間は、シャフト収容室61の途中部分である。第1変形例では、アッパー空間16B及びロワー空間12Bは、ロワーパイプ12D及びアッパーパイプ16Dを取り囲むように、シャフト収容室61に対して径方向外方R1に区画されている。アッパー空間16B及びロワー空間12Bのそれぞれは、シャフト収容室61に連通していてもよい。
第1変形例では、シャフト収容室61に対して径方向外方R1に区画された部分をアッパー空間16B及びロワー空間12Bとして利用する。これによって、ハーネス50の中継部分50Aを、ロワーユニット40の相対回動を邪魔しないように船外機1内に配置できる。
図10は、第2変形例に係る船外機1の下部の左側面図である。船外機1には、エンジン10を冷却する冷却水を流す冷却水路62が、ドライブシャフトカバー16及びロワーハウジング12にわたって設けられている。冷却水路62は、ドライブシャフト11から前後左右の少なくともどちらかに離れた位置で上下方向に延びている。冷却水路62の下端は、吸込口62Aとしてロワーハウジング12の表面において開口している。例えば、ドライブシャフトカバー16内における冷却水路62には、ポンプ63が設けられている。ポンプ63は、ドライブシャフト11の回転に連動して作動する機械式のポンプであってもよいし、電動のポンプであってもよい。ポンプ63が作動すると、船外機1の周囲の水が吸込口62Aから吸い込まれて冷却水路62を流れ、冷却水としてエンジン10に供給される。
第2変形例では、アッパー空間16B及びロワー空間12Bは、冷却水路62の途中に介在されることによって冷却水路62の一部を区画している。この構成により、冷却水路62の一部をアッパー空間16B及びロワー空間12Bとして利用することによって、ハーネス50の中継部分50Aを、ロワーユニット40の相対回動を邪魔しないように船外機1内に配置できる。
前述した実施形態のように、ハーネス50が、排気通路36の一部に設けられたアッパー空間16B及びロワー空間12Bを通っている場合において、排気通路36内の排気ガスの温度を検出する温度スイッチ64が、船外機1に設けられてもよい(図2参照)。排気ガスの温度が所定の閾値まで上昇すると、温度スイッチ64が作動することによって、船外機1ではエンジン10のオーバーヒート防止のための処理(例えば冷却水を増量するためのポンプ63の運転)が実行される。この閾値、つまり温度スイッチ64の作動開始温度は、ハーネス50が排気ガスの影響を受け得る温度以下に設定されてもよい。この場合、温度スイッチ64が作動すると、排気ガスの温度がこれ以上上昇しないので、ハーネス50が排気ガスの熱等によって傷むことを防止できる。
プロペラ20が複数設けられて前後方向に並ぶ場合において、これらのプロペラ20の間隔を変更する電動のアクチュエータ(図示せず)が、前述した電気部品の一例としてロワーハウジング12内に設けられてもよい。電気部品についての他の例として、センサを挙げることができる。
ロワーユニット40を回動させるための構成として、前述した実施形態では、アッパーユニット46に設けられた転舵アクチュエータ41と、転舵アクチュエータ41のピニオンギヤ44に噛み合うロワーユニット40側のラックギヤ45を例示した。別の構成として、例えば、ラックギヤ45に相当するギヤがロワーハウジング12のロワーパイプ12D(図3参照)の外周面に設けられてもよい。その場合、ロワーパイプ12Dは、アッパーパイプ16D内に挿通されて、ロワーパイプ12Dの外周面のギヤ(図示せず)が、ドライブシャフトカバー16内でピニオンギヤ44に噛み合う。
ドライブシャフト11は、エンジン10から伝達機構14まで上下方向に沿って一直線に延びている1本のシャフトであるが、途中で複数の分割シャフト(図示せず)に分割されてもよい。その場合、これらの分割シャフトは、同軸に配置されてもよいし、前後方向及び/又は左右方向にずれて配置されてギヤ等を介して連結されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1:船外機、10:エンジン、11:ドライブシャフト、11A:下部、11B:ドライブシャフト11において下部11Aよりも上方の部分、11C:中心軸線、12:ロワーハウジング、12A:上壁、12B:ロワー空間、12E:挿通穴、13:プロペラシャフト、14:伝達機構、16:ドライブシャフトカバー、16B:アッパー空間、20:プロペラ、26:回転体、27:ドッグクラッチ、28:シフトアクチュエータ、36:排気通路、36B:排気口、40:ロワーユニット、41:転舵アクチュエータ、46:アッパーユニット、50:ハーネス、51:第1ハーネス、52:第2ハーネス、53:コネクタ、54:隙間、55:シール部材、55A:グロメット、56:押し込み部材、60:ハーネスカバー、61:シャフト収容室、62:冷却水路、R1:径方向外方、S:周方向
Claims (12)
- エンジンと、
前記エンジンから下方へ延び、前記エンジンの動力によって回転するドライブシャフトと、
前記ドライブシャフトまわりの周方向に沿って延びるアッパー空間が設けられ、前記ドライブシャフトにおいて前記ドライブシャフトの下部よりも上方の部分を覆うドライブシャフトカバーと、
プロペラと、前記プロペラとともに回転するプロペラシャフトと、前記ドライブシャフトの回転を前記プロペラシャフトに伝達する伝達機構と、電気部品と、前記アッパー空間に下方から連通するロワー空間が設けられて前記プロペラシャフトと前記伝達機構と前記ドライブシャフトの下部と前記電気部品とを収容するロワーハウジングと、を有し、前記ドライブシャフトと同軸の転舵軸線まわりに前記周方向に沿って前記ドライブシャフトカバーに対して相対回動可能に結合されたロワーユニットと、
前記アッパー空間と前記ロワー空間とを通って前記ロワーハウジング内の前記電気部品に接続されたハーネスと、
を含む、船外機。 - 前記ロワーユニットが前記ドライブシャフトカバーに対して、所定の回動範囲で相対回動可能であり、前記回動範囲内のいずれの回動位置においても、前記アッパー空間と前記ロワー空間とが互いに連通している、請求項1に記載の船外機。
- 前記ハーネスが、前記アッパー空間及び/又は前記ロワー空間において、前記周方向に延びて撓んでいる、請求項1又は2に記載の船外機。
- 前記ロワーユニットには、排気口が設けられ、
前記エンジンからの排気ガスを前記排気口に導く排気通路が、前記ドライブシャフトカバー及び前記ロワーハウジングにわたって設けられ、
前記アッパー空間及び前記ロワー空間は、前記排気通路の一部を区画している、請求項1~3のいずれか一項に記載の船外機。 - 前記アッパー空間及び前記ロワー空間の少なくとも一方に設けられ、前記ハーネスを覆うハーネスカバーをさらに含む、請求項4に記載の船外機。
- 前記ドライブシャフトを収容するシャフト収容室が、前記ドライブシャフトカバー及び前記ロワーハウジングにわたって設けられ、
前記アッパー空間及び前記ロワー空間は、前記シャフト収容室に対して径方向外方に区画されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の船外機。 - 前記エンジンを冷却する冷却水を流す冷却水路が、前記ドライブシャフトカバー及び前記ロワーハウジングにわたって設けられ、
前記アッパー空間及び前記ロワー空間は、前記冷却水路の一部を区画している、請求項1~3のいずれか一項に記載の船外機。 - 前記伝達機構は、
前記ドライブシャフトの回転に連動して回転する回転体と、
前記回転体と噛み合う接続位置と、前記回転体から離れる切断位置との間において移動可能であり、前記プロペラシャフトと連動して回転するドッグクラッチと、を含み、
前記電気部品は、前記ドッグクラッチを移動させるシフトアクチュエータを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の船外機。 - 前記アッパー空間及び前記ロワー空間は、前記周方向に沿って延びる環状空間である、請求項1~8のいずれか一項に記載の船外機。
- 前記ハーネスは、前記ロワー空間を通って前記ロワーハウジング内の前記電気部品に接続された第1ハーネスと、前記ロワーハウジング外に配置されてコネクタを介して前記第1ハーネスに接続された第2ハーネスとを含み、
前記ロワーハウジングの外壁には、前記ロワー空間に連通して前記第1ハーネスが挿通される挿通穴が設けられ、
前記挿通穴内における前記第1ハーネスのまわりの隙間を塞ぐシール部材をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の船外機。 - 前記シール部材は、前記挿通穴内における前記第1ハーネスのまわりに配置される複数の円弧状のグロメットを含み、
前記複数のグロメットを前記挿通穴内に押し込む押し込み部材をさらに含む、請求項10に記載の船外機。 - 前記ロワーユニットよりも上方のアッパーユニットを前記エンジン及び前記ドライブシャフトカバーとともに構成し、前記ロワーユニットを前記転舵軸線まわりに回動させる転舵アクチュエータをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の船外機。
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Also Published As
Publication number | Publication date |
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US20230066941A1 (en) | 2023-03-02 |
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