JP2023032973A - 化学強化光学ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の光学ガラスに求められる屈折率、アッベ数、透過率を維持しつつ、耐衝撃性を向上させた硬度の高い化学強化光学ガラスの提供。【解決手段】表面に圧縮応力層を有し、酸化物換算の質量%で、SiO2成分を20.0~50.0%、TiO2成分を10.0~45.0%、Na2O成分を0.1~20.0%含有し、屈折率(nd)が1.65~1.85であり、16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、8cm以上の耐衝撃性を備えることを特徴とする化学強化光学ガラス。【選択図】図1

Description

本発明は表面に圧縮応力層を有する化学強化光学ガラスに関する。
近年、プロジェクター付眼鏡、眼鏡型ディスプレイ、ゴーグル型ディスプレイ、仮想現実表示装置、拡張現実表示装置、虚像表示装置等のAR(仮想現実)やVR(バーチャル・リアリティ)等に利用するウェアラブル端末、車載用カメラ等が注目されている。
このようなウェアラブル端末や車載用カメラ等は過酷な外部環境下で使用されることが想定されるため、従来の光学ガラスに求められる高い屈折率、アッベ数を維持しつつ、これらの機器がより過酷な使用に耐え得るよう、耐衝撃性が高く割れ難い、より高い硬度を有する光学ガラスが求められている。
特許文献1には、光学機器のデジタル化や高精細化を課題とした、屈折率(nd)が1.7以上、アッベ数(νd)が20以上30以下の高屈折率高分散ガラスが開示されているが、過酷な外部環境において使用されることは想定されておらず、耐衝撃性を課題とした硬度の高い光学ガラスについては開示されていない。また、特許文献1の出願等時には、VRやAR等の現代の最先端テクノロジーが一般的に普及されておらず、さらに、自動車の自動運転や安全性確保の「周辺認知用センサ」の主役となる車載用カメラの普及も近年急増してきた用途であることから、特許文献1の出願時には耐衝撃性を向上させた硬度の高い光学ガラスは想定されていなかった。
さらに、耐衝撃性を向上させた高強度の光学ガラスであれば、光学レンズに使用するガラスを薄くすることが可能となるため、光学レンズを薄型化、小型化することができる。
特開2009-203134
本発明は、従来の光学ガラスに求められる屈折率、アッベ数を維持しつつ、耐衝撃性を向上させた硬度の高い光学ガラスを得ることにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、光学ガラスに化学強化を施すことで表面に圧縮応力層を有するガラス基板が、16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、8cm以上の耐衝撃性を備える高硬度の光学ガラスを得るのに適したガラス組成と配合を見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、光学ガラスに化学強化を施すことで表面に圧縮応力層を有するガラス基板が16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、
[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化後)]-[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化前)]≧2.0cm
となる高硬度の光学ガラスを得るのに適したガラス組成と配合を見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下を提供する。
(1)
表面に圧縮応力層を有し、
酸化物換算の質量%で、
SiO成分を20.0~50.0%、
TiO成分を10.0~45.0%、
NaO成分を0.1~20.0%含有し、
屈折率(nd)が1.65~1.85であり、
16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、8cm以上の耐衝撃性を備えることを特徴とする化学強化光学ガラス。
(2)
表面に圧縮応力層を有し、
酸化物換算の質量%で、
SiO成分を20.0~50.0%、
TiO成分を10.0~45.0%、
NaO成分を0.1~20.0%含有し、
屈折率(nd)が1.65~1.85であり、
16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、
[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化後)]-[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化前)]≧2.0cm
の耐衝撃性を備えることを特徴とする化学強化光学ガラス。
(3)
酸化物換算の質量%で、
Nb成分を3.0~20.0%、
BaOを0~20.0%さらに含有する、(1)または(2)に記載の化学強化光学ガラス。
(4)
酸化物換算の質量%で、
Alを0~15.0%、
ZrOを0~15.0%、
LiOを0~10.0%、
Oを0~15.0%、
Sbを0~1.0%さらに含有する、(1)から(3)に記載の化学強化光学ガラス。
(5)
アッベ数(νd)が20.0~33.0であることを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載の化学強化光学ガラス。
本発明によれば、高い屈折率、アッベ数を維持しつつ、耐衝撃性を向上させた硬度の高い、圧縮応力層を有する化学強化光学ガラスを提供することができる。
実施例5-Aの破断面のEDX線分析結果 実施例7-Bの破断面のEDX線分析結果
本発明の化学強化光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有量は、特に断りがない限り、全て酸化物換算組成の全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」は、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量数を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
[ガラス成分]
本発明の化学強化光学ガラスは、表面に圧縮応力層を有し、酸化物換算の質量%で、SiO成分を20.0~50.0%、TiO成分を10.0~45.0%、NaO成分を0.1~20.0%含有することを特徴とする。
[必須成分、任意成分について]
SiO成分は、ガラスの網目構造を形成する成分であり、光学ガラスとして好ましくない失透(結晶物の発生)を低減する成分であり、本発明の化学強化光学ガラスの必須成分である。
特に、SiO成分の含有量を20.0%以上にすることで、強度が高く、安定的な光学ガラスを作製することができる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは20.0%以上、より好ましくは23.0%以上、さらに好ましくは25.0%超を下限とする。
他方で、SiO成分の含有量を50.0%以下にすることで、過剰な粘性の上昇や熔融性の悪化を抑えられ、且つ屈折率の低下を抑制することが出来る。また、化学強化の低下を抑えることができる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは50.0%以下、より好ましくは47.0%以下、さらに好ましくは43.0%以下を上限とする。
TiO成分は、屈折率を高めるとともに化学的耐久性(耐酸性)を高める成分であり、本発明の化学強化光学ガラスの必須成分である。
特に、TiO成分の含有量を10.0%以上にすることで、所望のガラスの屈折率、アッベ数等を達成することができる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは10.0%以上、より好ましくは13.0%以上、さらに好ましくは15.0%超を下限とする。
他方で、TiO成分の含有量を45.0%以下にすることでガラスの失透性やガラスの可視光(特に波長500nm以下)に対する透過率の低下を抑えることができる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは45.0%以下、より好ましくは40.0%以下、さらに好ましくは35.0%以下、さらに好ましくは33.0%以下を上限とする。
NaO成分は、ガラスの熔融性を向上する成分であるとともに、後述するように化学強化におけるイオン交換に利用される成分であり、本発明の化学強化光学ガラス中の必須成分である。
特に、NaO成分の含有量を0.1%以上にすることで、溶融塩中のイオン半径の大きいカリウム成分(カリウムイオン)と基板中のイオン半径の小さいナトリウム成分(ナトリウムイオン)との交換反応が進行することにより、結果として基板表面に圧縮応力が形成される。従って、NaO成分の含有量は、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは5.0%以上を下限とする。
他方で、NaO成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減することができる。従って、NaO成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは17.0%以下、より好ましくは15.0%以下、さらに好ましくは14.0%未満を上限とする。
Nb成分は、屈折率を高めるとともに、ガラスを安定化する成分であり、本発明の化学強化光学ガラスの任意成分である。
特に、Nb成分の含有量を3.0%以上にすることで、耐失透性を高めることができる。また、化学強化時の塩浴による硬度低下を抑制することができる。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは3.0%以上、より好ましくは4.0%以上、より好ましくは5.0%超、さらに好ましくは6.0%以上を下限とする。
他方で、Nb成分の含有量を20.0%以下にすることで、過剰な含有による失透を低減できる。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは17.0%以下、より好ましくは15.0%以下、さらに好ましくは13.0%以下を上限とする。
O成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を調整しつつ、屈折率やアッベ数を調整する成分であり、化学強化においては、表面圧縮応力を向上させることができる成分である。従って、KO成分の含有量は、好ましくは0%以上、より好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは2.0%以上を下限とする。
他方で、KO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減できる。従って、KO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.5%以下を上限とする。
LiO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を調整しつつ、屈折率やアッベ数を調整する成分であり、化学強化におけるイオン交換に利用される成分である。従って、LiO成分の含有量は、好ましくは0%以上、より好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは0.5%以上を下限とする。
他方で、LiO成分の含有量を10.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられ、且つ過剰な含有による失透を低減できる。従って、LiO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.5%以下を上限とする。
BaO成分は、0%超含有する場合にガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の化学強化光学ガラス中の任意成分である。また、0%超含有することで、化学強化時の塩浴による硬度低下を抑制することができる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは0%以上、より好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上を下限とする。
他方で、BaO成分の含有量を20.0%以下にすることで失透性の悪化、化学強化耐性の悪化を抑制し、ガラス表面が脆くなることを抑えることができる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下、さらに好ましくは12.0%以下を上限とする。
MgO成分、CaO成分及びSrO成分は、0%超含有する場合にガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の化学強化光学ガラス中の任意成分である。
他方で、MgO成分、CaO成分及びSrO成分のそれぞれの含有量を20.0%以下にすることで化学強化時の塩浴による硬度低下を抑制することができる。従って、MgO成分、CaO成分及びSrO成分のそれぞれの含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下、さらに好ましくは10.0%以下を上限とする。
特に、生産性という観点では、失透性の悪化を低減できるためCaO成分を好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.3%未満とすることが望ましい。
ZnO成分は、0%超含有する場合にガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の化学強化光学ガラス中の任意成分である。
他方で、ZnO成分の含有量を15.0%以下にすることで化学強化時の塩浴による硬度低下を抑制することができる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは8.0%未満を上限とする。
Al成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性を高め、熔融ガラスの耐失透性を向上するのに有効な成分であり、本発明の化学強化光学ガラス中の任意成分である。
他方で、Al成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの液相温度を下げて、過剰な含有による失透を低減することができる。従って、Al成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下を上限とする。
ZrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高める成分であり、本発明の化学強化光学ガラス中の任意成分である。
他方で、ZrO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ZrO成分の過剰な含有による失透を低減することができる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下を上限とする。
成分は、0%超含有する場合に、安定なガラスの形成を促し、耐失透性を高めることができる任意成分である。
他方で、B成分の含有量を15.0%以下にすることで、B成分の過剰な含有による失透を低減することができる。従って、B成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下を上限とする。
La成分、Gd成分、Y成分及びYb成分は、少なくともいずれかの成分を0%超含有することで、屈折率を高め、且つ部分分散比を小さくできる任意成分である。
他方で、La成分、Gd成分、Y成分及びYb成分は、多量に含有すると、液相温度が下がり、ガラスを失透させてしまう。
特に、La成分、Gd成分、Y成分及びYb成分のそれぞれの含有量を10.0%以下にすることで、失透を低減でき、且つ着色を低減できる。従って、La成分、Gd成分、Y成分及びYb成分のそれぞれの含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、最も好ましくは3.0%以下を上限とする。
WO成分は、屈折率を高めてアッベ数を低くし且つガラス原料の熔解性を高められる任意成分である。
他方で、WO成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの部分分散比を上昇し難くでき、且つ、ガラスの着色を低減して内部透過率を高められる。従って、WO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、最も好ましくは1.0%以下を上限とする。
成分は、ガラスの安定性を高められる任意成分である。
他方で、P成分の含有量を5.0%以下にすることで、P成分の過剰な含有による部分分散比の上昇を低減できる。従って、P成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
Ta成分は、屈折率を高め、アッベ数及び部分分散比を下げ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
特に、Ta成分の含有量を10.0%以下にすることで、希少鉱物資源であるTa成分の使用量が減り、且つガラスがより低温で熔解し易くなるため、ガラスの生産コストを低減できる。また、これによりTa成分の過剰な含有によるガラスの失透を低減できる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。特に、ガラスの材料コストを低減させる観点では、Ta成分を含有しなくてもよい。
GeO成分は、屈折率を高め、且つ失透を低減できる任意成分である。GeO成分の含有量を10.0%以下にすることで、高価なGeO成分の使用量が低減されるため、ガラスの材料コストを低減できる。従って、GeO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
Ga成分は、屈折率を高め、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。
他方で、Ga成分の含有量を10.0%以下にすることで、Ga成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、Ga成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
Bi成分は、屈折率を高めてアッベ数を低くでき、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。Bi成分の含有量を10.0%以下にすることで、部分分散比を上昇し難くでき、且つ、ガラスの着色を低減して内部透過率を高めることができる。従って、Bi成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
TeO成分は、屈折率を高め、部分分散比を低くでき、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。TeO成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減して内部透過率を高めることができる。また、高価なTeO成分の使用を低減することで、より材料コストの安いガラスを得られる。従って、TeO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。特に、ガラスの材料コストを低減させる観点では、TeO成分を含有しなくてもよい。
SnOは、熔解したガラスを清澄(脱泡)でき、且つガラスの可視光透過率を高められる任意成分である。SnOの含有量を1.0%以下にすることで、熔融ガラスの還元によるガラスの着色や、ガラスの失透を生じ難くすることができる。また、SnOと熔解設備(特にPt等の貴金属)との合金化が低減されるため、熔解設備の長寿命化を図ることができる。従って、SnOの含有量は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下を上限とする。
Sb成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスを脱泡できる任意成分である。
他方で、Sb成分の含有量を1.0%以下にすることで、可視光領域の短波長領域における透過率の低下や、ガラスのソラリゼーション、内部品質の低下を抑えられる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは1.0%未満、より好ましくは0.7%未満、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.4%以下としてもよい。
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)は、含有量の和(質量和)が、5.0%以上含有する場合に、ガラスの熔融性を向上することができる。従って、RnO成分の和は、好ましくは5.0%以上、より好ましくは7.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上を下限とする。
他方で、RnO成分の含有量の和(質量和)は、30.0%以下とすることで、屈折率の低下を抑えられ、且つ過剰な含有による失透を低減できる。従って、好ましくは30.0%以下、より好ましくは25.0%以下、さらに好ましくは23.0%以下、最も好ましくは20.0%以下を上限とする。
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の和は、0%超とする場合に、低温熔融性を向上させることができる。従って、RO成分の含有量の和は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上を下限とする。
一方で、RO成分の含有量の和は、過剰な含有による耐失透性の低下を抑えるために、20.0%以下が好ましい。従って、RO成分の質量和は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下、より好ましくは14.0%以下、さらに好ましくは13.0%以下を上限とする。
Ln成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)は、含有量の和(質量和)が、0%超含有する場合に、高屈折率を得やすくすることができる。
他方で、Ln成分の含有量の和(質量和)は、15.0%以下とすることで、過剰な含有による失透を低減できる。従って、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下を上限とする。
質量和TiO+BaO+Nbは、30.0%以上とする場合に、屈折率を高めることができる。従って、質量和TiO+BaO+Nbは、好ましくは30.0%以上、より好ましくは33.0%以上、さらに好ましくは35.0%以上を下限とする。
一方で、質量和TiO+BaO+Nbは、60.0%以下とすることで、ガラスの可視光(特に波長500nm以下)に対する透過率の低下を抑えることができる。従って、質量和TiO+BaO+Nbは、好ましくは60.0%以下、より好ましくは57.0%以下、さらに好ましくは55.0%以下、最も好ましくは50.0%未満を上限とする。
質量比KO/NaOは、0超とする場合に、化学強化を進行しやすくすることができる。従って、質量比KO/NaOは、好ましくは0超、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上を下限とする。
一方で、質量比KO/NaOを1.00以下とすることで、ガラスの失透を低減することができる。従って、質量比KO/NaOは、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.95以下、より好ましくは0.90以下を上限とする。
質量和Nb+BaOは、8.0%以上とする場合に、化学強化時の塩浴による硬度低下を抑制することができる。従って、質量和Nb+BaOは、好ましくは8.0%以上、より好ましくは10.0%超、より好ましくは13.0%以上、さらに好ましくは15.0%以上を下限とする。
一方で、質量和Nb+BaOは、30.0%以下とすることで、ガラスの失透性悪化を低減することができる。従って、質量和Nb+BaOは、好ましくは30.0%以下、より好ましくは27.0%以下、さらに好ましくは25.0%以下を上限とする。
質量和SiO+ROは、35.0%以上とする場合に、安定的な光学ガラスを作製することができる。従って、質量和SiO+ROは、好ましくは35.0%以上、より好ましくは38.0%以上、さらに好ましくは40.0%以上を下限とする。
一方で、質量和SiO+ROは、60.0%以下とすることで、屈折率の低下を抑制するとともに、化学強化を起こしやすくすることができる。従って、質量和SiO+ROは、好ましくは60.0%以下、より好ましくは57.0%以下、さらに好ましくは54.0%以下を上限とする。
質量和SiO+TiO+NaOは、50.0%以上とする場合に、高屈折率で且つ化学強化可能なガラスを安定して作製することができる。従って、質量和SiO+TiO+NaOは、好ましくは50.0%以上、より好ましくは55.0%以上、より好ましくは60.0%以上、さらに好ましくは63.5%以上を下限とする。
一方で、質量和SiO+TiO+NaOは、90.0%以下とすることで、ガラスの失透性悪化を低減することができる。従って、質量和SiO+TiO+NaOは、好ましくは90.0%以下、より好ましくは85.0%以下、さらに好ましくは81.0%以下を上限とする。
質量和SiO+NaO+BaOは、45.0%以上とする場合に、化学強化可能な光学ガラスを安定して作製することができる。従って、質量和SiO+NaO+BaOは、好ましくは45.0%以上、より好ましくは48.0%以上、より好ましくは50.0%以上、さらに好ましくは51.5%以上を下限とする。
一方で、質量和SiO+NaO+BaOは、70.0%以下とすることで、屈折率の低下を抑制することができる。従って、質量和SiO+NaO+BaOは、好ましくは70.0%以下、より好ましくは68.0%以下、さらに好ましくは65.0%以下を上限とする。
質量比(ZrO+NaO)/BaOは、0.20以上とする場合に、熔融性を向上させつつ、失透性の良い硝材となる。従って、質量比(ZrO+NaO)/BaOは、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.60以上、さらに好ましくは0.80以上を下限とする。
一方で、質量比(ZrO+NaO)/BaOを20.0以下とすることで、成分の過剰添加による失透性の悪化を防ぐことができる。従って、質量比(ZrO+NaO)/BaOは、好ましくは20.0以下、より好ましくは18.0以下、より好ましくは15.0以下、さらに好ましくは13.0以下を上限とする。
特に化学強化という観点では、化学強化による硬度上昇が起こりやすくなるため質量比(ZrO+NaO)/BaOを0.86超とすることが望ましい。
質量和SiO+NaOは、33.0%以上とする場合に、化学強化可能な光学ガラスを安定して作製することできる。従って、質量和SiO+NaOは、好ましくは33.0%以上、より好ましくは35.0%以上、さらに好ましくは38.0%以上を下限とする。
一方で、質量和SiO+NaOは、65.0%以下とすることで、屈折率の低下を抑制することができる。従って、質量和SiO+NaOは、好ましくは65.0%以下、より好ましくは60.0%以下、さらに好ましくは58.0%以下、最も好ましくは55.0%以下を上限とする。
[製造方法]
本発明の化学強化光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、酸化物、炭酸塩、硝酸塩及び水酸化物等の原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1200~1500℃の温度範囲で1~4時間熔融し、攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから金型に鋳込み、徐冷することにより作製され、その後化学強化される。
[化学強化]
ガラスにおける化学強化ガラスとは、化学強化法やケミカル強化法、またイオン交換強化法などと呼ばれる、ガラスの表面を強化するための方法により強化したガラスである。本発明に係る化学強化光学ガラスでは、ガラスの表面にイオン交換処理を施し、圧縮応力が残留する表面層(圧縮応力層)を形成させることで、ガラス表面を強化する。イオン交換は一般的に、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換によりガラス表面のイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン)をイオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的には、リチウムイオンに対してはナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、ナトリウムイオンに対してはカリウムイオン)に置換する。これにより、ガラスの表面に圧縮応力が残留し、ガラスの強度が向上する。
化学強化法は、例えば次のような工程で実施することができる。ガラス母材を、カリウムまたはナトリウムを含有する塩、例えば硝酸カリウム(KNO)、硝酸ナトリウム(NaNO)またはその混合塩や複合塩の溶融塩に接触または浸漬させる。この溶融塩に接触または浸漬させる処理(化学強化処理)は、1段階でもよく2段階で処理してもよい。
例えば2段階化学強化処理の場合、第1に370℃~550℃で加熱したナトリウム塩またはカリウムとナトリウムの混合塩に1~1440分、好ましくは90~800分接触または浸漬させる。続けて第2に350℃~550℃で加熱したカリウム塩またはカリウムとナトリウムの混合塩に1~1440分、好ましくは60~800分接触または浸漬させる。
1段階化学強化処理の場合、370℃~550℃で加熱したカリウムまたはナトリウムを含有する塩、またはその混合塩に1~1440分、好ましくは60~800分接触または浸漬させる。
熱強化法については、特に限定されないが、例えばガラス母材を、300℃~600℃に加熱した後に、水冷および/または空冷などの急速冷却を実施することにより、ガラス基板の表面と内部の温度差によって、圧縮応力層を形成することができる。なお、上記化学処理法と組み合わせることにより、圧縮応力層をより効果的に形成することもできる。
イオン注入法については、特に限定されないが、例えばガラス母材表面に任意のイオンを母材表面が破壊しない程度の加速エネルギー、加速電圧にて衝突させることで母材表面にイオンを注入する。その後必要に応じて熱処理を行うことにより、他方法と同様に表面に圧縮応力層を形成することができる。
[屈折率及びアッベ数]
本発明の化学強化光学ガラスは、高屈折率を有することが好ましい。特に、本発明の化学強化光学ガラスの屈折率(nd)は、好ましくは1.65以上、より好ましくは1.67以上、さらに好ましくは1.68以上を下限とする。
他方で、この屈折率の上限は、好ましくは1.85以下、より好ましくは1.83以下、より好ましくは1.80以下、さらに好ましくは1.79以下を上限とする。
また、本発明の化学強化光学ガラスのアッベ数(νd)は、好ましくは20.0以上、より好ましくは22.0以上、さらに好ましくは23.0以上を下限とする。他方で、このアッベ数の上限は、好ましくは33.0以下、より好ましくは30.0以下、さらに好ましくは28.0以下を下限とする。
本発明の光学ガラスは、可視光透過率、特に可視光のうち短波長側の光の透過率が高く、それにより着色が少ないことが好ましい。
特に、本発明の光学ガラスにおける厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す最も短い波長(λ)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは390nm以下、さらに好ましくは380nm以下を上限とする。
これらにより、ガラスの吸収端が紫外領域又はその近傍になり、可視光に対するガラスの透明性が高められるため、この光学ガラスを、レンズ等の光を透過させる光学素子に好ましく用いることができる。
[比重]
本発明の光学ガラスの比重は、光学素子や光学機器の軽量化に寄与する観点から、好ましくは4.00以下、より好ましくは3.80以下、より好ましくは3.50以下、さらに好ましくは3.30以下を上限とする。
他方で、本発明の光学ガラスの比重は、概ね2.00以上、より詳細には2.50以上、さらに詳細には3.00以上であることが多い。
結晶化ガラス基板について、以下の方法でサンドペーパーを用いた落球試験を行った。この落球試験はアスファルト上への落下を擬している。
SUS製の基台の上に粗さ#180のサンドペーパーを敷き、結晶化ガラス基板(φ36×2mm)を置いた。そして、16.0gのSUS製鉄球を、基板から60mm(6cm)の高さから基板に自由落下させた。落下後、基板が破壊しなければ、高さを20mm(2cm)高くし、同様の試験を結晶化ガラス基板が破壊するまで継続し目視で観察した。ここで破壊とは、目視で分断、亀裂、欠け、ひび(割れ)があることを示す。試験は各3回行い、破壊する前の高さの平均を算出した。
ウェアラブル端末や車載用カメラ等の耐衝撃性に寄与する観点から、本発明では、16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、ガラス基板が8cm以上の耐衝撃性を備えることが好ましい。したがって、本発明の化学強化光学ガラスは、16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、8cm以上、より好ましくは12cm以上、さらに好ましくは14cm以上の耐衝撃性を備える。
また、本発明の実施例の化学強化光学ガラスは、16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、
[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化後)]-[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化前)]≧2.0cm
の耐衝撃性があることが好ましい。
したがって、本発明の化学強化光学ガラスは、[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化後)]-[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化前)]が好ましくは2.0cm以上、より好ましくは2.5cm以上、より好ましくは3.0cm以上、さらに好ましくは4.0cm以上である。
以下の実施例では、本発明を例示の目的で詳細に示す。しかしながらこれらの実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく多くの改変が当業者によってなされるであろうことに留意されたい。
実施例(No.1~No.9)及び比較例1として、表1に列挙されるような種々の組成のガラスを作製した。いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、メタ燐酸化合物等の通常の化学強化光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表1に示した各実施例の組成の割合になるように秤量して混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1200~1400℃の温度範囲で1~4時間にわたり熔解し、攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから金型等に鋳込み、徐冷して得たものである。これらのガラスそれぞれについて、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、透過率(λ5)、比重を測定したものを表1に示す。
ガラスの屈折率(nd)及びアッベ数(νd)は、JIS B 7071-2:2018に規定されるVブロック法に準じて、ヘリウムランプのd線(587.56nm)に対する測定値で示した。また、アッベ数(νd)は、上記d線の屈折率と、水素ランプのF線(486.13nm)に対する屈折率(n)、C線(656.27nm)に対する屈折率(n)の値を用いて、アッベ数(νd)=[(nd-1)/(n-n)]の式から算出した。
ここで、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)は、徐冷降温速度を-25℃/hrにして得られたガラスについて測定を行うことで求めた。
ガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02‐2019に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200~800nmの分光透過率を測定し、分光透過率が5%を示す波長(λ5)を求めた。
実施例及び比較例のガラスの比重ρは、日本光学硝子工業会規格JIS Z8807:2012「光学ガラスの比重の測定方法」に基づいて測定した。
ガラス基板を硝酸カリウム(KNO)浴(K浴)又は硝酸ナトリウム(NaNO)浴(Na浴)に、表2に記載される温度及び時間で浸漬させた。その後、ガラス基板の表面に表面圧縮応力層が形成されているか確認するため、ガラス基板の最表面から内部にかけて垂直深さ方向にEDX線分析を行った。EDX線分析には日本電子社製 走査型電子顕微鏡(JSM-IT700HR)を用いた。実施例5-A及び実施例7-BのEDX線分析結果のうち、ナトリウムとカリウムに起因する特性X線強度比(ratio)の変化を図1及び図2にそれぞれ示す。また、図1及び図2のそれぞれにおいて、横軸はガラス基板の表面からの深さを示す。カリウムに起因する特性X線強度比(ratio)は、ガラス基板の最表面が最も多く、深さ10μm程度までは減少していることが分かる。一方、ナトリウムに起因する特性X線強度は、ガラス基板の最表面から深さ10μm程度まで増加していることが分かる。図1及び図2のカリウム及びナトリウムに起因する特性X線強度比(ratio)の変化から、ガラス基板の最表面が塩浴によってイオン交換が行われていることが確認された。
また、これらのガラスのそれぞれについて、16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験の結果を表2に示す。

Figure 2023032973000002

Figure 2023032973000003

本発明の実施例の化学強化光学ガラスは、高い屈折率を示しながら、16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、8cm以上の耐衝撃性を備えることが明らかになった。
また、本発明の実施例の化学強化光学ガラスは、高い屈折率を示しながら、16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、
[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化後)]-[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化前)]≧2.0cm
の耐衝撃性を備えることが明らかになった。

Claims (5)

  1. 表面に圧縮応力層を有し、
    酸化物換算の質量%で、
    SiO成分を20.0~50.0%、
    TiO成分を10.0~45.0%、
    NaO成分を0.1~20.0%含有し、
    屈折率(nd)が1.65~1.85であり、
    16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、8cm以上の耐衝撃性を備えることを特徴とする化学強化光学ガラス。
  2. 表面に圧縮応力層を有し、
    酸化物換算の質量%で、
    SiO成分を20.0~50.0%、
    TiO成分を10.0~45.0%、
    NaO成分を0.1~20.0%含有し、
    屈折率(nd)が1.65~1.85であり、
    16.0gのSUS球を落下させるサンドペーパー落球試験において、
    [ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化後)]-[ガラス基板が破壊しない高さ(化学強化前)]≧2.0cm
    の耐衝撃性を備えることを特徴とする化学強化光学ガラス。
  3. 酸化物換算の質量%で、
    Nb成分を3.0~20.0%、
    BaOを0~20.0%さらに含有する、請求項1または2に記載の化学強化光学ガラス。
  4. 酸化物換算の質量%で、
    Alを0~15.0%、
    ZrOを0~15.0%、
    LiOを0~10.0%、
    Oを0~15.0%、
    Sbを0~1.0%さらに含有する、請求項1から3に記載の化学強化光学ガラス。
  5. アッベ数(νd)が20.0~33.0であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の化学強化光学ガラス。
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