JP2023031374A - 横圧測定データの処理方法及び横圧測定データの処理装置 - Google Patents

横圧測定データの処理方法及び横圧測定データの処理装置 Download PDF

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Abstract

Figure 2023031374000001
【課題】簡単な装置構成により輪重に起因する横圧の誤差を低減可能な横圧測定データの処理方法等を提供する。
【解決手段】横圧測定データの処理方法を、鉄道車両1の車輪110とレールRとの間で作用する輪重及び横圧を測定する輪重横圧測定装置によって輪重測定データ及び横圧測定データを取得し、輪重測定データ、横圧測定データ、及び、予め取得された車輪の形状に関するデータに基づいて、車輪におけるレールとの接触位置の所定の基準位置からのまくらぎ方向変位量の下限値である接触位置下限値を求め、接触位置下限値及び輪重測定データを用いて、横圧測定データを補正する構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉄道車両の車輪とレールとの間に作用する横圧測定データの処理方法及び横圧測定データの処理装置に関する。
鉄道車両の走行安全性評価を行うために、PQ輪軸を用いた輪重(P)・横圧(Q)測定走行試験が行われる。
PQ輪軸とは、車輪に貼付したひずみゲージを用いて、車輪とレールとの間に作用する力を測定する輪軸である。
一般的なPQ輪軸においては、車輪の板部に生じる曲げに伴うひずみを計測することで横圧を評価している。
非特許文献1には、このようなPQ輪軸を用いた輪重、横圧測定に関する技術が記載されている。
車輪とレールとの接触状態が走行安全性評価に及ぼす影響の例の一つとして、PQ輪軸を用いて輪重、横圧を測定し、脱線係数を算出する場合に、車輪の踏面上でレールとの接触位置がまくらぎ方向(横方向)に変化することによって生じる「みかけの横圧」がある。
例えば横圧がゼロであっても、接触位置(より一般的には荷重中心)が、踏面の中心からまくらぎ方向に移動すると、輪重作用による車輪板部の曲げ変形が生じるため、横圧測定用ひずみ測点にひずみが生じる。
「みかけの横圧」とは、このように、輪重作用に由来する車輪板部の曲げ変形によって生じる横圧測定用ひずみゲージ信号である。
従来の走行安全性評価においては、みかけの横圧の影響により、曲線外軌側車輪に作用する横圧を過大に見積もる場合があった。
すなわち、真の横圧を算出するためには、輪重に起因する曲げモーメントを除去することで、横圧測定データを補正する必要がある。
この補正を行わない場合、本来安全であるにも関わらず危険と判定される場合がある。
一方、輪重に起因する曲げモーメントの大きさは、左右方向の接触位置の影響を受けるため、通常のPQでは横圧測定データを補正することができない。
これに対し、特許文献1には、PQ輪軸にさらに接触位置測定用のひずみゲージを設け、測定された接触位置に基づいて横圧測定データを補正することが記載されている。
また、特許文献2には、走行中の鉄道車両の車輪とレール間の接触位置を数値的に特定する装置において、放射熱を検知できる赤外線サーモグラフィカメラを鉄道車両の台車部品に取り付けることが記載されている。
また、特許文献3には、状態推定理論を用いて接触位置を推定することが記載されている。
また、非特許文献2には、輪重測定点のせん断ひずみを利用することで、輪重に起因する曲げモーメントの影響を低減することが記載されている。
特開2007-331492号公報 特開2016- 97868号公報 特開2019-119306号公報
石田,他:鉄道車両の新しい輪重,横圧,脱線係数連続測定法(測定装置の開発),日本機械学会論文集C 編,Vol. 63,No. 614,pp. 97-103,1993. 本堂 貴敏,他:PQ輪軸の輪重測定点のせん断ひずみを活用した横圧測定法,交通・物流部門大会講演論文集,DOI: 10.1299/jsmetld.2020.29.1201,2020
特許文献1に記載された技術のように、PQ輪軸に接触位置測定用の追加のひずみゲージを設ける場合、PQ輪軸の構成が複雑となってコストがかかるほか、通常の走行安全性評価では使用されない多チャンネルの信号伝送装置が必要となる。
また、特許文献2に記載された技術のように、PQ輪軸とは別に接触位置測定用の機材を用いる場合にも、装置構成が複雑となりコストが高くなってしまう。
さらに、特許文献3に記載された技術のように、状態推定理論を用いて接触位置を推定する場合、車両のばね系のパラメータや、接触力学に関するパラメータを把握する必要があるほか、車両の運動を記述する微分方程式をリアルタイムに解く必要があって演算負荷が膨大となる。
また、非特許文献1に記載されたように、PQ輪軸の輪重測定点のせん断ひずみを利用する技術の場合、輪重の影響の低減効果が小さく、さらなる精度改善が求められている。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、簡単な装置構成により輪重に起因する横圧の誤差を低減可能な横圧測定データの処理方法及び横圧測定データの処理装置を提供することである。
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る横圧測定データの処理方法は、鉄道車両の車輪とレールとの間で作用する輪重及び横圧を測定する輪重横圧測定装置によって輪重測定データ及び横圧測定データを取得し、前記輪重測定データ、前記横圧測定データ、及び、予め取得された前記車輪の形状に関するデータに基づいて、前記車輪における前記レールとの接触位置の所定の基準位置からのまくらぎ方向変位量の下限値である接触位置下限値を求め、前記接触位置下限値及び前記輪重測定データを用いて、前記横圧測定データを補正することを特徴とする。
これによれば、車輪の形状に関するデータが既知であれば、一般的なPQ輪軸やPQモニタリング台車等の輪重横圧測定装置から取得することが可能な輪重測定データ、横圧測定データを用いて接触位置下限値を求め、接触位置下限値及び輪重測定データに基づいて横圧測定データの補正を行うことができる。
これにより、接触位置測定用として専用のひずみゲージ、ブリッジ回路や、その他の測定機器等を設ける必要がなく、さらに状態推定理論を用いた複雑な方程式を解く必要もないことから、処理自体や装置構成を簡素化することができる。
なお、このようにして得られる補正値は、みかけの横圧の影響を完全には除去できないとはいえ、脱線係数の算出等、車両の走行安全性評価を行う場合には、本来危険であるものを安全と誤判定することはないため、実用上は問題ないと言える。
本発明において、前記接触位置における接線力の法線力に対する比がゼロであると仮定し、前記輪重測定データと前記横圧測定データとの比に基づいて物理的に可能な接触勾配の下限値を求め、前記接触勾配の下限値、及び、前記車輪の形状に基づいて、前記接触位置下限値を求める構成とすることができる。
これによれば、アタック角が正となる場合(典型的には曲線外軌側)において、物理的に正値でなければならない接線力の法線力に対する比をゼロと仮定することにより、接触勾配の下限値を簡単な演算により確実に設定することができる。
本発明において、前記車輪が踏面部及びフランジ部の2点で前記レールと接触する2点接触状態を判別した場合に、前記踏面部における接触位置及び前記フランジ部における接触位置における接線力の法線力に対する比がゼロであると仮定し、各接触位置における接触勾配を用いて各接触位置で定義される脱線係数に基づいて、各接触位置の間に存在する荷重中心位置の所定の基準位置からのまくらぎ方向変位量の下限値である荷重中心位置下限値を求め、前記荷重中心位置下限値及び前記輪重測定データを用いて、前記横圧測定データを補正する構成とすることができる。
これによれば、2点接触状態であっても、走行試験においては輪重及び横圧のみを測定することで、適切に横圧測定データの補正を行うことができる。
この場合、前記踏面部における接触位置と前記フランジ部における接触位置の位置及び接触勾配を、予め接触幾何計算により求める構成とすることができる。
2点接触状態は車輪のレールに対するアタック角及びまくらぎ方向変位が特定の条件を満たす場合にのみ発生することから、予めこのような条件での踏面部、フランジ部における接触位置とその接触勾配を接触幾何計算により求めておくことにより、走行試験時における演算負荷を抑制しつつ上述した効果を適切に得ることができる。
本発明において、前記補正後における前記横圧測定データ、及び、前記輪重測定データを用いて、脱線係数を求める構成とすることができる。
これにより、みかけの横圧の影響を低減し、例えば脱線係数の算出をより精度よく行い、車両の走行安全性評価を適切に行うことができる。
また、輪重による横圧成分を完全には除去できないものの、本来危険であるものを安全と誤判定することはなく、実用上問題となることはない。
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る横圧測定データの処理装置は、鉄道車両の車輪とレールとの間で作用する輪重及び横圧を測定する輪重横圧測定装置から輪重測定データ及び横圧測定データを取得するデータ取得部と、予め取得された前記車輪の形状に関するデータを保持する車輪形状データ保持部と、前記輪重測定データ、前記横圧測定データ、及び、前記車輪の形状に関するデータに基づいて、前記車輪における前記レールとの接触位置の所定の基準位置からのまくらぎ方向変位量の下限値である接触位置下限値を求める接触位置下限値算出部と、前記接触位置下限値及び前記輪重測定データを用いて、前記横圧測定データを補正する横圧測定データ補正部とを備えることを特徴とする。
これにおいても、上述した横圧測定データの処理方法に係る発明の効果と同様の効果を得ることができる。
以上のように、本発明によれば、簡単な装置構成により輪重に起因するみかけの横圧の影響を抑制可能な横圧測定データの処理方法及び横圧測定データの処理装置を提供することができる。
本発明を適用した横圧測定データの処理方法等の実施形態の適用対象となる鉄道車両及び軌道の構成を模式的に示す図である。 実施形態の横圧測定データの処理方法等で用いるPQ輪軸の車輪の構成を示す図である。 図2の車輪における輪重測定用ブリッジ回路の結線を示す図である。 図2の車輪における横圧測定用ブリッジ回路の結線を示す図である。 実施形態における荷重中心位置の下限値推定に基づく横圧補正のコンセプトを示す図である。 測定した踏面形状データから接触勾配を計算する手順を示す図である。 レール形状の実測データ及び計算された接触勾配の一例を示す図である。 計測脱線係数が0.1から1.2の範囲について、計測された脱線係数と荷重中心位置の下限値及び脱線係数補正量の関係をプロットしたものである。 計測された脱線係数と実施形態における補正後の脱線係数との関係を示す図である。 油性マーカを用いた接触位置測定を行った車輪の一例を示す写真である。 測定した形状データ、及び、形状データから計算した接触勾配データを示す図である。 推定した荷重中心位置の下限値と、荷重中心位置の実測値との関係を、計測された脱線係数をパラメータとして示す図である。 実験値が推定下限値を上回った試番と下回った試番における作用力移動平均値計算結果例を示す図である。 実験値が推定下限値を下回った試番における荷重中心位置測定結果を示す写真である。 2点接触状態における作用力の定義を示す図である。 実際に生じ得る2点接触状態の一例を示す図である。 無次元荷重中心位置と合力から定義される限界脱線係数の関係の試算例を示す図である。 計測された脱線係数と実施形態における補正後の脱線係数の関係の試算例を示す図である。 実施形態の横圧測定データの処理方法の概要を示すフローチャートである。
以下、本発明を適用した横圧測定データの処理方法及び横圧測定データの処理装置の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した横圧測定データの処理方法等の実施形態の適用対象となる鉄道車両及び軌道の構成を模式的に示す図である。
実施形態において、鉄道車両1は、一例として、車体前後に2軸ボギー台車を有する電車等の旅客車である。
図1に示すように、鉄道車両1は、車体10、台車枠20、まくらばね30、上下動ダンパ40、軸箱50、軸箱支持装置60、PQ輪軸100等を有して構成されている。
車体10は、内部に乗客等が収容される空間部を有する構造物である。
車体10は、下部に設けられ床板が取り付けられる台枠、台枠の側端部、前後端部から上方へ立ち上げられた側構、妻構、上部に設けられた屋根構等を有し、実質的に六面体状に形成されている。
台車枠20は、車体10の下部に取り付けられる2軸ボギー台車の本体部を構成する部材である。
台車枠20は、上方から見た平面形が実質的に矩形状となる枠体として形成されている。
台車枠20は、車体10に対してボギー角付与可能なよう、鉛直軸周りに相対回転可能であり、かつ、車体10に対して上下方向に相対変位可能に取り付けられている。
車体10と台車枠20との前後方向相対変位は、図示しない牽引装置により拘束されている。
台車枠20には、図示しないブレーキ装置や、電動車の場合には主電動機等が搭載される。
まくらばね30は、車体10の下部と台車枠20の上部との間に設けられた空気ばねである。
まくらばね30は、車体10を支持して荷重を台車枠20に伝達するとともに、車体10と台車枠20との上下方向の相対変位に応じたばね反力を発生する。
まくらばね30は、例えば台車枠20の前後方向中央部において、まくらぎ方向に離間して一対が設けられる。
上下動ダンパ40は、車体10と台車枠20との上下方向相対速度に応じた減衰力を発生する油圧ダンパ等の減衰要素である。
上下動ダンパ40は、台車枠20の左右にそれぞれ設けられる。
軸箱50は、後述するPQ輪軸100を回転可能に支持するものである。
軸箱50は、車軸120の両端部に形成されたジャーナル部を回転可能に支持する軸受、及び、その潤滑装置や、車軸120の回転速度を検出する図示しない車速発電機等を有して構成されている。
また、軸箱50には、PQ輪軸100に設けられた各ブリッジ回路に入力電圧を与え、また、出力電圧を抽出するため、図示しないスリップリング装置が設けられている。
軸箱支持装置60は、台車枠20に取り付けられ、軸箱50及びPQ輪軸100を台車枠20に対して相対変位可能に支持するものである。
軸箱支持装置60は、台車枠20に対する軸箱50の上下方向相対変位を許容するとともに、PQ輪軸100が台車枠20に対して鉛直軸周りに相対回転(ヨーイング)する操舵動作も許容する。
軸箱支持装置60は、軸ばり61、軸ばね62、軸ダンパ63等を有して構成されている。
軸ばり61は、一方の端部が台車枠20に対して揺動可能に接続されたアーム状の部材である。
軸箱50は、軸ばり61の台車枠20側とは反対側の端部に取り付けられている。
軸ばり61と台車枠20との接続部には、弾性体ブッシュ61aが設けられ、その弾性変形によって、輪軸100の操舵を許容するようになっている。
軸ばね62は、台車枠20に対する軸箱50の上下方向変位に応じたばね反力を発生するばね要素である。
軸ばね62は、軸箱50の上部に設けられ、上端部、下端部をそれぞれ台車枠20、軸箱50に接続されている。
軸ダンパ63は、台車枠20に対する軸箱50の上下方向相対速度に応じた減衰力を発生する油圧ダンパ等の減衰要素である。
軸ダンパ63は、軸ばね62の側方に並行して配置され、上端部、下端部をそれぞれ台車枠20、軸箱50に接続されている。
軌道は、レールR、まくらぎS、バラストB等を有して構成されている。
レールRは、車輪110が載置される部材であって、左右一対が所定の軌間だけ離間させて実質的に平行に配置されている。
まくらぎSは、レールRの下部に配置され、レールRの軌間保持や、レールRから道床への荷重伝達を担う部材である。
まくらぎSは、例えばプレストレストコンクリートまくらぎ(PCまくらぎ)であって、車両の進行方向に所定の間隔で離散して複数配置されている。
レールRは、図示しない弾性締結装置を介してまくらぎSに取り付けられている。
また、レールRの下面部とまくらぎSの上面部との間には、図示しない軌道パッドが配置されている。
バラストBは、例えば砕石等であって、まくらぎSが載置される道床を構成するものである。
実施形態の横圧測定データの処理方法等においては、輪重測定データ、横圧測定データを取得するため、車軸120の左右両端部にひずみゲージが貼付された車輪110を取り付けたPQ輪軸(輪重・横圧測定用輪軸)100を有する輪重横圧測定装置を用いる。
図2は、実施形態の横圧測定データの処理方法等で用いるPQ輪軸の車輪の構成を示す図である。
図2(a)は車輪の回転中心軸方向かつ車幅方向外側から見た図であり、図2(b)は図2(a)のb-b部矢視断面図である。
なお、図2(a)には、周上における位置を示す符号としてイ、ロ、ハ・・・コの32文字を、車輪110の中心回りに等間隔(中心角にして10°間隔)に分散して付している。
PQ輪軸100は、左右一対の車輪110を、車軸120の両端部近傍に圧入し、固定して構成されている。
車軸120の両端部に設けられたジャーナル部は、軸箱支持装置60を介して、台車枠20に対して、上下方向及びヨー方向(ステア方向)に相対変位可能に支持されている。
図2に示すように、車輪110は、ハブ部111、リム部112,踏面113,フランジ114、板部115等を一体に形成した一体車輪である。
ハブ部111は、車輪110の中心部に設けられ、車軸120が挿入され、圧入により固定される部分である。
ハブ部111は、板部115に対して、回転軸方向(車軸120の長手方向)の厚みを増して形成され、その中心部には車軸120が圧入されるボス孔が形成されている。
リム部112は、車輪110の外周縁部に設けられ、車軸120と同心の円環状に形成された部分である。
リム部112は、レールに当接して転動するいわゆるタイヤ部分を構成する。
リム部112は、板部115に対して回転軸方向の厚みを増して形成されている。
踏面113は、リム部112の外周面部に形成され、レールR(図1参照)の上面と当接する面部である。
踏面113には、曲線通過時に左右車輪の回転半径差をもたせて曲線を円滑に通過させるため、所定の踏面勾配が設けられている。
フランジ114は、踏面113の内側の端部近傍から外径側につば状に張り出した部分である。
フランジ114は、PQ輪軸100の軌道に対する左右移動量を規制し、脱輪を防止する機能を有する。
フランジ114は、曲線通過時においては、外軌側においてレールの側面と当接し、PQ輪軸100の左右方向(まくらぎ方向)変位を規制する機能を有する。
板部115は、ハブ部111の外周面とリム部112の内周面とを接続する、実質的に平板状の部分である。
板部115には、開口116が形成されている。
開口116は、板部115を車軸方向に貫通して形成された円形のものである。
開口116は、板部115の周方向に実質的に等間隔に分散して、例えば8個が設けられている。
車輪110には、輪重測定用のひずみゲージ131A,131B,132A,132B,133A,133B,134A,134B,135A,135B,136A,136B,137A,137B,138A,138B、及び、横圧測定用のひずみゲージ131a,131a’,133a,133a’,135a,135a’,137a,137a’が貼付されている。
輪重測定用のひずみゲージ131A,131B,132A,132B,133A,133B,134A,134B,135A,135B,136A,136B,137A,137B,138A,138Bは、開口116の内周面に、車輪110の周方向に順次貼付されている。
ひずみゲージ131A,131Bは、符号イに相当する箇所(車軸回りにおける位相・角度位置)に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ132A,132Bは、符号ホに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ133A,133Bは、符号リに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ134A,134Bは、符号ワに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ135A,135Bは、符号レに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ136A,136Bは、符号ナに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ137A,137Bは、符号ノに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ138A,138Bは、符号マに相当する箇所に設けられた開口116の内周面に、車輪110の周方向に対向して配置されている。
横圧測定用のひずみゲージ131a,131a’,133a,133a’,135a,135a’,137a,137a’は、板部115の表面(車輪110側面)であって、開口116よりも内径側の領域に配置されている。
ひずみゲージ131a,131a’は、ひずみゲージ131A,131Bが設けられた開口116の内径側に配置されている。
ひずみゲージ131aは、車輪110における車幅方向外側の面に貼付されている。
ひずみゲージ131a’は、車輪110における車幅方向内側の面に貼付されている。
ひずみゲージ131aとひずみゲージ131a’とは、板部115を挟み、車輪110の回転軸方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ133a,133a’は、ひずみゲージ133A,133Bが設けられた開口116の内径側に配置されている。
ひずみゲージ133aは、車輪110における車幅方向外側の面に貼付されている。
ひずみゲージ133a’は、車輪110における車幅方向内側の面に貼付されている。
ひずみゲージ133aとひずみゲージ133a’とは、板部115を挟み、車輪110の回転軸方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ135a,135a’は、ひずみゲージ135A,135Bが設けられた開口116の内径側に配置されている。
ひずみゲージ135aは、車輪110における車幅方向外側の面に貼付されている。
ひずみゲージ135a’は、車輪110における車幅方向内側の面に貼付されている。
ひずみゲージ135aとひずみゲージ135a’とは、板部115を挟み、車輪110の回転軸方向に対向して配置されている。
ひずみゲージ137a,137a’は、ひずみゲージ137A,137Bが設けられた開口116の内径側に配置されている。
ひずみゲージ137aは、車輪110における車幅方向外側の面に貼付されている。
ひずみゲージ137a’は、車輪110における車幅方向内側の面に貼付されている。
ひずみゲージ137aとひずみゲージ137a’とは、板部115を挟み、車輪110の回転軸方向に対向して配置されている。
図3は、図2の車輪における輪重測定用ブリッジ回路の結線を示す図である。
図2、図3に示すように、輪重測定用ブリッジ回路(輪重ブリッジ)は、p1系統、p2系統の2系統が設けられている。
p1系統、p2系統の輪重測定用ブリッジ回路は、これに含まれるひずみゲージの車軸120回りにおける角度位置が相互に90°ずれるように構成されている。
p1系統の輪重測定用ブリッジ回路は、ひずみゲージ131A,132A,136B,135B,132B,131B,135A,136Aを、順次環状に結線して構成されている。
p1系統の輪重測定用ブリッジ回路においては、ひずみゲージ132A,136Bの間と、ひずみゲージ131B,135Aの間とに入力電圧Vinを印可するとともに、ひずみゲージ131a,131a’の間と、ひずみゲージ135a,135a’の間との電圧を出力電圧Voutとする。
p2系統の輪重測定用ブリッジ回路は、ひずみゲージ133A,134A,138B,137B,134B,133B,137A,138Aを、順次環状に結線して構成されている。
p2系統の輪重測定用ブリッジ回路においては、ひずみゲージ134A,138Bの間と、ひずみゲージ133B,137Aの間とに入力電圧Vinを印可するとともに、ひずみゲージ133a,133a’の間と、ひずみゲージ137a,137a’の間との電圧を出力電圧Voutとする。
p1系統、p2系統の出力電圧Vout(p,p)は、図示しないスリップリング等を介して車上に設置された記録装置に伝達される。
図4は、図2の車輪における横圧測定用ブリッジ回路の結線を示す図である。
図2、図4に示すように、横圧測定用ブリッジ回路(横圧ブリッジ)は、q1系統、q2系統の2系統が設けられている。
q1系統、q2系統の横圧測定用ブリッジ回路は、これに含まれるひずみゲージの車軸120回りにおける角度位置が相互に90°ずれるように構成されている。
q1系統の横圧測定用ブリッジ回路は、ひずみゲージ131a,131a’,135a’,135aを順次環状に結線して構成されている。
q1系統においては、ひずみゲージ131a,135aの間と、ひずみゲージ131a’,135a’の間とに入力電圧Vinを印可するとともに、ひずみゲージ131a,131a’の間と、ひずみゲージ135a,135a’の間との電圧を出力電圧Voutとする。
q2系統の横圧測定用ブリッジ回路は、ひずみゲージ133a,133a’,137a’,137aを順次環状に結線して構成されている。
q2系統においては、ひずみゲージ133a,137aの間と、ひずみゲージ133a’,137a’の間とに入力電圧Vinを印可するとともに、ひずみゲージ133a,133a’の間と、ひずみゲージ137a,137a’の間との電圧を出力電圧Voutとする。
車輪とレールとの接触状態が走行安全性に及ぼす影響の例の一つとして、上述したようなPQ輪軸を用いて輪重・横圧を測定し、脱線係数を算出する場合に、まくらぎ方向の接触位置が変化することによって生じる「みかけの横圧」がある。
車輪板部に生じる曲げに伴うひずみを計測することで横圧を評価する場合、仮に実際には横圧がゼロである場合であっても、接触位置(より一般には荷重中心位置)が踏面中心からまくらぎ方向に移動すると、輪重作用による曲げ変形が生じるため、横圧測定用ひずみ測点にひずみが生じる。
輪重作用に由来する曲げ変形によって生じる横圧測定用ひずみゲージ信号を、本明細書等においては、「みかけの横圧」と定義する。
この影響により、従来の走行安全性評価では、曲線外軌側車輪に作用する横圧を過大に見積もる場合があった。
走行安全性評価を行ううえでは、横圧を過大評価することは、危険側の判断を招くため許容されないが、横圧を多少大きく見積もることは、安全性を確保する観点からは許容される。
すなわち、走行安全性評価の精度を高めるという観点からは、必ずしもみかけの横圧を完全に補正できる必要はなく、その下限値を何らかの方法で決定することができれば、安全側の範囲内でより判定精度を高められると考えられる。
図5は、実施形態における荷重中心位置の下限値推定に基づく横圧補正のコンセプトを示す図である。
本実施形態においては、みかけの横圧が、まくらぎ方向の荷重中心位置の変位量にほぼ比例することに着目し、荷重中心が存在するであろう領域の下限値(以下、荷重中心位置の下限値)を推定することで、みかけの横圧の下限値を推定する。
この下限値は、いくつかの前提条件の下では、法線力・接線力比が0の極限におけるNadalの式を用いて、みかけの横圧の影響を含む脱線係数測定値と、事前に得られる接触幾何情報のみから推定することができる。
すなわち、本実施形態では、上述したPQ輪軸の構成以外に、横圧を補正するための追加測点を必要としない。
以下、荷重中心位置の下限値推定に基づく横圧測定データの補正方法、及び、これを用いた場合の補正効果を試算した結果について説明する。
本実施形態においては、先ずNadalの式と脱線係数の実測値に基づいて、接触点における踏面勾配の下限値を推定する。
さらに、推定した勾配下限値と、車輪踏面形状情報を用いて、左右方向の荷重中心位置の下限値を推定する。
以下、それぞれの要素について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、乗り上がり脱線に対する安全性評価に焦点を絞って議論する。
Nadalの式によると、限界脱線係数λcrは、式1により表される。
Figure 2023031374000002

ただし、μはフランジ摩擦係数、θはフランジ角度である。
この式は、輪重・横圧測定結果を用いて、フランジ接触が生じているかどうかを議論するために使用される。
すなわち、以下の条件が全て満たされるならば、車輪フランジはレールと接触しているといえる。

・摩擦係数μが既知であり、λcrの真値が正確にわかっている
・接線力(横クリープ力)が摩擦力に飽和している
・走行中の輪重・横圧比λがλcrに等しい
実際には、1点目の要件を満たすことが困難であるため、限界脱線係数λcrは、代表的な摩擦係数(例えば0.3程度)を代入して推定せざるを得ない。
したがって、たとえλ=λcrであったとしても、実際にフランジで接触しているとは限らない。
そのため、Nadalの式によるフランジ接触判定はあくまでも目安であり、走行安全性評価の目安として使用される限界脱線係数にも安全率が見込まれる。
一方、Nadalの式を、接触点における力の座標変換則を表す式だと考えると、法線力と接線力の比を
Figure 2023031374000003

として、式2が成立する。
Figure 2023031374000004

ただし、αは、接触点における踏面の勾配角である。
いま、接触点における勾配(以下、接触勾配と称する)をg=tanαとして、式2をgについて解くと、式3を得る。
Figure 2023031374000005

すなわち、接触点における勾配は、法線力・接線力比と、輪重・横圧比の関数となる。
このことを明示するために、
Figure 2023031374000006

と表記する。
乗り上がり脱線に対する走行安全性を議論する場合、通常は乗り上がり方向に接線力が作用している場合を考える。
すなわち、法線力・接触力比が正である場合を考える。実際、輪軸が曲線外方へ向かうようなアタック角がついている場合、法線力・接触力比は物理的に正値でなければならない。
ここで、
Figure 2023031374000007

の極限を考えると、式4のようになる。
Figure 2023031374000008
すなわち、法線力・接線力比がゼロに近い場合、輪重・横圧比が接触勾配そのものとなる。
このときの勾配値を便宜上g(0,λ)と表記すると、以下の命題1が成立する。

命題1.g(0,λ)は、物理的に可能な接触勾配の下限値である。

(証明)先に述べた前提条件より、
Figure 2023031374000009

である。
接触点勾配の法線力・接線力比に関する偏微分は、式5により表される。
Figure 2023031374000010

したがって、
Figure 2023031374000011

について
Figure 2023031374000012

であり、g(0、λ)は、物理的に可能な接触勾配の下限値である。
これまで議論したのは、任意の傾きαを持つ平面に2分力が作用した場合に、接触力が0となるようなαを求める問題である。
これを車輪踏面に当てはめると、接触勾配
Figure 2023031374000013

は、左右方向の接触位置yの関数Γ(y)となり、その関数形状は車輪踏面形状によって決まる。
したがって、荷重中心位置の存在領域の下限値を求める問題は、式4を満たすような勾配に対応する位置yを求める問題であり、以下の非線形方程式の求解問題に帰着される。

Γ(y)-λ=0 (式6)

関数Γ(y)の構成方法については、後に詳しく説明する。
命題1が成立するためには、前述の通り、アタック角の方向に注意する必要がある。
アタック角の方向を確認する方法としては、内軌側荷重・横圧比の符号による判定法や、接触位相差の符号による判定法が考えられる。
前者の内軌側荷重・横圧比による判定は、通常のPQ特定に含まれる測定項目であるため、容易に導入することができる。
ただし、内軌側荷重・横圧比には、みかけの横圧の影響が、輪重と接触位置シフト量に比例したオフセット誤差として重畳している。
また、摩擦係数が低い場合には、内軌側輪重・横圧比も小さくなるため、内軌側荷重・横圧比の測定結果の絶対値が小さい場合には、アタック角の符号判定を適切に行えない可能性がある。
その場合には、2点目の接触位相差の符号による判定を併用することが望ましいと考えらえる。
なお。
Figure 2023031374000014

の場合には、乗り上がり脱線ではなく滑り上がり脱線の目安値が適用される。
安全余裕は、乗り上がり脱線と比較して一般にはるかに大きく、横圧の測定誤差が問題となることはほとんどない。
したがって、繰り返しになるが、本実施形態では乗り上がり脱線に対する安全性評価
Figure 2023031374000015

に焦点を絞って議論する。
内軌側荷重・横圧比の符号による判定法についてさらに考察する。
内軌側横圧を測定するためのブリッジ出力
Figure 2023031374000016

は、内軌側輪重Pinの影響を受けて、横圧Qinのみが作用した場合に比べて小さく出力される。
すなわち、前後接線力の影響を無視すれば、
Figure 2023031374000017

が成立する。
ただし、αin及びβinは、それぞれ感度と交差感度を表す正数である。
ここでβinは、一般には左右方向荷重中心位置の関数となるが、接触点が反フランジ側へ移動する内軌側車輪については、みかけの横圧は、横圧測定値を減少させる方向に作用するので、形式上式7のように表現できる。
内軌側横圧の計測結果
Figure 2023031374000018

は、
Figure 2023031374000019

となり、計測値から計算される内軌側輪重・横圧比は、
Figure 2023031374000020

となる。
ここで、
Figure 2023031374000021

は計測値から計算される内軌側輪重・横圧比、κは真の内軌側輪重・横圧比、η>0は交差感度比である。
この式から明らかなように、内軌側では
Figure 2023031374000022

が基本的には成立するため、
Figure 2023031374000023

であれば、κ>0が成立する(逆は成立しないことに注意)。
すなわち、計測値
Figure 2023031374000024

が正値であることは、命題1の前提条件の十分条件であるため、走行安全性評価の多くの場面において、
Figure 2023031374000025

を用いることで、命題1の成立要件が確認できると考えられる。
公知の踏面形状測定装置を用いると、左右方向の位置に対する踏面の形状を測定することができ、さらにその測定された形状を用いて、左右方向の位置と接触勾配を対応づけることができる。
ここでは、踏面形状測定結果から勾配情報を算出し、関数Γ(y)を構成する手順の一例について説明する。
本実施形態で特に着目しているのは、荷重中心が踏面中心よりもフランジ側に存在する場合である。
そこで、勾配を計算する範囲を、踏面中心よりもフランジ側のみに限定する。
先ず踏面中心位置(y=0とする)における勾配を計算する。
図6は、測定した踏面形状データから接触勾配を計算する手順を示す図である。
図6に示すように、y=0を中心とする、幅wの領域内の形状データを線形近似し、その傾きを、y=0における勾配と定義する。
次に、線形近似の対象とする領域をw/2だけフランジ側にずらし、線形近似によってy=w/2における勾配を計算する。これを、測定した形状データの終端まで繰り返す。
実測した踏面形状データには、微小な凹凸が含まれ、単純に差分計算すると、左右方向の位置に対する勾配値の変動が大きくなりすぎるため、後述する非線形方程式の求解において不具合が生じる可能性がある。
一方、踏面形状の微小な凹凸は、たとえそれが計測上の誤差に起因するものではなく実際の形状に起因するものであったとしても、弾性接触により押し潰されるため、微小凹凸を厳密に考慮することには意味がない。
したがって、線形近似を適用する幅wは、数mm程度のオーダで十分であると考えられる。
一例として、w=2mmとして、実測データから接触勾配を計算した例を図7に示す。
図7は、レール形状の実測データ及び計算された接触勾配の一例を示す図である。
この計算において、左右方向の位置yは、1mm間隔で離散化される。離散化された点の間は、線形補間することで連続的に関数値を定義する。
上述したように、Nadalの式の極限を考えることにより、輪重・横圧比が与えられた際の接触勾配の下限値を計算できることを説明した。
また、上述したように、左右方向の荷重中心位置と接触勾配の関係が対応づけられ、これらを組み合わせることで、左右方向の荷重中心位置の下限値を計算することができる。
ただし、接触勾配の下限値計算に必要な輪重・横圧比は、輪重・横圧の計測結果から計算される。
この値にはみかけの横圧による誤差が含まれるため、これを補正する必要がある。
すなわち、輪重・横圧比の真値λを把握することができれば、式6によって接触勾配の下限値を計算することができるが、実際に把握できるのは、みかけの横圧が重畳した計測値
Figure 2023031374000026

である。
これら真値と計測値の関係は、先の内軌側輪重・横圧比に関する議論と同様の手順で、式10のように表せる。
Figure 2023031374000027

ただし、δ(y)は、左右方向の荷重中心位置yの関数としての交差感度比であり、本実施形態では式11の1次関数を想定する。
Figure 2023031374000028

式中のaとbは、検定試験結果から計算する。
式10より、
Figure 2023031374000029

なので、これを式6に代入すると、式12が得られる。
Figure 2023031374000030

式12をyについて解くことで、下限値を計算する。
関数Γ(y)は非線形性が強いうえに、上述した通り、線形補間を用いて区分的に定義される。
したがって、式12の解法として、本実施形態では二分法を採用する。
車輪踏面形状全体でみると、Γ(y)の逆関数Γ-1(y)は一意ではない。
具体的には、図7に示す範囲内で、接触勾配値が1に対応する位置yは2箇所存在する。
一方、多くの場合、yの下限値は、フランジ直線部よりも踏面側に存在すると考えられる。
フランジ領域に下限値が存在するためには、脱線係数が2程度でなければならず、この場合は明らかに目安値を大幅に超過している。
したがって、本実施形態で議論するような、脱線係数が目安値に近い領域での横圧補正を考える上では、踏面中心位置からフランジ直線部までの領域で方程式が解ければ十分である。
このような観点から、二分法の初期値は、最小値をy=0mm、最大値を接触勾配が最大となる位置に設定する。
以下、荷重中心存在領域の下限値推定に基づく脱線係数の補正量を、具体的な踏面形状と交差感度特性を想定して資産する。
ここで、踏面形状は図7に示した修正円弧踏面の実測形状を想定した。
また、交差感度特性は、実際のPQ輪軸の検定結果をもとに設定した。
この交差感度特性は、1つのブリッジ回路単体では、車輪円周方向の載荷位置の周期関数となるが、本実施形態においては公知の新連続法への適用を想定し、2系統のブリッジ回路の二乗和平方根の車輪1周分の平均値を用いて、定数a(=3.25×10-3mm-1)、b=(-3.25×10-3)を決定した。
計測結果から計算される脱線係数(以下、計測脱線係数と称する)
Figure 2023031374000031

をパラメータとして、荷重中心位置の下限値と、脱線係数補正量δ(y)を計算した。
図8は、計測脱線係数が0.1から1.2の範囲について、計測された脱線係数と荷重中心位置の下限値及び脱線係数補正量の関係をプロットしたものである。
図9は、計測された脱線係数と実施形態における補正後の脱線係数との関係を示す図である。
例えば、計測された脱線係数が1の場合、少なくともy=33mmの位置よりもフランジ側で接触しており、脱線係数は最低でも0.1程度大きく見積もられていることがわかる。
この場合、真の脱線係数の推定最大値は0.9である。
脱線係数の目安値を、フランジ角度が例えば65°の日本の在来線の走行安全性評価で一般に使用される0.95に設定すると、計測脱線係数は目安値を超過しているため、目安超過継続時間を評価することになるが、本実施形態の補正を加えれば、目安超過継続時間を評価するまでもなく、安全と判定される。
図5においてハッチングを付した帯状の領域は、補正前は目安超過と判定されるが、補正することによって安全であると判定される領域を示している。
脱線係数補正量と計測脱線係数の関係は、踏面形状データと検定結果から事前に計算し、数表化することができるため、走行中に即座に補正することができる。
以下、クリープ力試験装置によるPQ輪軸の転走試験データを用いて、本実施形態の1点接触状態における荷重中心位置の下限値推定法の妥当性を検証する。
輪軸ヨー角(アタック角)及び輪重アンバランスを様々に変化させ、PQ輪軸の転走試験を行った。
輪軸ヨー角は、クリープ力試験装置に備え付けられている前後駆動用アクチュエータを伸縮させることで変化させた。また、輪重アンバランスは、同じくクリープ力試験装置に備え付けられている、各軸箱の上下荷重負荷用アクチュエータの負荷荷重を変化させることで付与した。
なお、アタック角もしくは輪重アンバランスを変化させた直後は、輪軸の位置、姿勢が安定しない。
後述するように、車輪・軌条輪間の左右方向の接触位置は、車輪踏面に塗布した塗料が剥離した位置として計測するため、輪軸の位置が転走中に変化すると、荷重中心位置(この場合接触位置と等しい)を精度よく測定することができない。
そこで、アタック角もしくは輪重アンバランスを変化させた後、一定時間空回しを行い、その後荷重中心位置測定用のマーカを車輪踏面に塗布し、検証用転走試験を行った。
なお、転走速度は、空回し、検証用転走試験ともに、約30km/h相当とした。
脱線係数は、転走対象のPQ輪軸を用いて計測した。
ただし、軌条輪試験においては、レール上の走行試験と比較してアタック角の付与に伴う接触点の前後移動量が大きくなりやすい。
脱線係数の計測に新連続法を適用すると、接触点前後移動の影響を強く受けて、脱線係数を精度よく測定できない可能性がある。
一方、上述した通り、本試験では定常状態に着目することから、必ずしも動的な脱線係数を評価する必要はない。
そこ、PQ輪軸のひずみ出力に対して、接触点前後移動の影響を補正可能な下記文献の方法を適用して、輪重及び横圧の車輪1回転移動平均値を算出し、それらを用いて、定常状態における平均的な脱線係数を算出した。

本堂.PQ 輪軸のひずみ出力に対する回転角度センサが不要な縦クリープ力車輪1 回転移動
平均値抽出手法,日本機械学会論文集,Vol. 87,No. 894,2021
転走中の荷重中心位置(接触位置)は、上述した通り、車輪踏面に塗布した塗料(油性マーカ)が剥離した位置として計測した。
図10は、油性マーカを用いた接触位置測定を行った車輪の一例を示す写真である。
図10に示すように、車輪が軌条輪と接触した領域では、転走前に塗布した塗料の剥離が見られる。
塗料が剥離した領域の両端の位置を専用の定規を用いて測定し、それらの平均値を接触位置として整理した。
上述した通り、本実施形態では、まくらぎ方向の接触位置と接触勾配を対応付けるために、車輪踏面の形状情報が必要である。
本実施形態においては、公知の車輪踏面形状測定装置を用いて測定した形状情報を使用した。
転走試験において、摩耗粉の発生が確認されたことから、車輪踏面形状は試験前と試験後の2回測定し、それぞれの形状を用いて、図8に示すような、脱線係数計測値と荷重中心位置下限値の関係を計算した。
図11は、測定した形状データ、及び、形状データから計算した接触勾配データを示す図である。
試験に伴い、Y=30mmから40mmの領域にかけて若干摩耗が進展しており、それに伴い、接触勾配の最大値が上昇していることがわかる。
図12は、推定した荷重中心位置の下限値と、荷重中心位置の実測値との関係を、計測された脱線係数をパラメータとして示す図である。
1つの実験結果を除いて、実験的に得られた荷重中心位置は、推定した荷重中心位置の下限値よりも大きく、下限値推定の妥当性が確認できる。
なお、実験結果が推定した下限値を下回った条件は、脱線係数計測値が約0.1、荷重中心位置の測定結果が約11mmである。この領域は、接触勾配が非常に小さく、脱線係数の変化に対する荷重中心位置の下限値の傾きが大きい領域であり、計測誤差の影響を受けやすい領域である。
図13は、実験値が推定下限値を上回った試番と下回った試番における作用力移動平均値計算結果例を示す図である。
当該試番においては、ひずみ波形に比較的大きな高周波ノイズが重畳している。その影響を受け、作用力の移動平均値算出結果も若干乱れていることがわかる。
図14は、実験値が推定下限値を下回った試番における荷重中心位置測定結果を示す写真である。
油性マーカを用いた荷重中心測定結果をみると、反フランジ側の境界がかすれており、完全な定常状態でなかった可能性がある。これらの理由により、実験結果が推定下限値を下回ったものと推測される。
脱線係数の計測誤差は走行試験においても生じ得ることから、実際に運用する場合には、所定の安全率を設定することが望ましい。
これまで説明したNadalの式を用いた荷重中心位置の下限値推定法は、左右方向の接触位置が、踏面上で定義される勾配と連続的に1対1に対応しているという前提を置いている。
すなわち、これまで説明した方法では、輪軸左右変位に対して、左右方向の接触位置が不連続にジャンプする2点接触状態を取り扱うことはできない。
2点接触状態においては、剛体的な接触幾何計算によって求められる2箇所の接触位置の間に、輪重の作用中心が存在すると考えられる。
以下、Nadalの式の考え方を採用し、2点接触状態における輪重の作用中心位置と脱線係数の関係を定式化する。
これをもとに、荷重中心位置の下限値を求める手法を提案する。
図15は、2点接触状態における作用力の定義を示す図である。
フランジ側と踏面側に2箇所の接触点を設定し、それぞれの左右方向位置を、車輪座標系でy,yとする。
2点接触状態は、ある特定のアタック角と左右変位の組み合わせでしか生じないため、車輪形状とレール形状が既知であれば、2点接触状態における接触点の位置は予め計算しておくことができる。
フランジ側、踏面側それぞれの接触点に対応する接触勾配をΓ,Γ,接触角をα,αとする。
以上のように定義される2箇所の接触点に作用する力と、それに関連する変数を以下のように定義する。
以下、添え字fはフランジに関する変数、添え字tは踏面に関する変数を表し、両者を一括で表現する場合には添え字にf/tと記す。

・Nf/t:法線力
・Ff/t:接線力
・Pf/t:各接触点における力を、輪重方向に座標変換した成分
・Qf/t:各接触点における力を、横圧方向に座標変換した成分
Figure 2023031374000032

:法線力・接線力比
例えば、
Figure 2023031374000033

・λf/t:各接触点における輪重方向の成分と横圧方向の成分の比
例えば、λ=Q/P
・P:輪重方向成分の合力P+P
・Q:横圧方向成分の合力Q+Q
・λ:輪重合力と横圧合力の比Q/P
それぞれの接触点に関してNadalの式と同様の座標変換を適用すると、式13,14が成立する。
Figure 2023031374000034

式15,16なので、合力としての輪重、横圧と、各接触点における法線力の関係は、各接触点における接線力、接線力比をパラメータとして、式17のように表せる。
Figure 2023031374000035

ただし、
Figure 2023031374000036

である。
式17を、N,Nについて解くと、式20,21を得る。
Figure 2023031374000037

一方、輪重の作用中心位置yは、輪重方向の合力と各接触点における輪重方向成分、及び、接触位置を用いて式22のように表せる。
Figure 2023031374000038
f/t=Nf/tであることに注意すると、式22は、式23のように表せる。
Figure 2023031374000039

ただし、
Figure 2023031374000040

である。
ここで、左右方向接触位置に関する、以下の無次元化変数ξを定義する。
Figure 2023031374000041

すなわち、2点接触状態から完全にフランジ1点接触状態に移行した場合、y=yであり、ξ=1となる。
逆に、踏面1点接触状態に移行した場合にはξ=0となる。
式23を用いて、無次元荷重中心位置を表すと、式26のようになる。
Figure 2023031374000042

ここで、
Figure 2023031374000043

なので、式26は、式28となる。
Figure 2023031374000044
式28をさらに式変形すると、式29となる。
Figure 2023031374000045

ここで、式30は、フランジ側、踏面側接触点それぞれにおける脱線係数の定義そのものであるから、式31が成立する。
式31を式29に代入すると、式32となる。
Figure 2023031374000046

すなわち、無次元荷重中心位置ξは、それぞれの接触点で定義された脱線係数λ,λと、輪重合力、横圧合力から定義される脱線係数λを用いて表現することができる。
ここで、実際に測定できるのはλのみであることに注意する。
式32の性質を詳しくみるために、式32を合力から定義される脱線係数λについて解くと、式33を得る。
Figure 2023031374000047

すなわち、合力から定義される脱線係数λは、各接触点で定義される脱線係数の重み付け和として表される。
完全にフランジ側に荷重中心が移動した場合、すなわちξ=1の場合には、λ=λとなり、合力から定義される脱線係数は、フランジ側接触点で定義される脱線係数と一致する。
逆に、ξ=0である場合には、λ=λとなる。
一般には、フランジにおける接触勾配は、踏面における接触勾配よりも大きいため、多くの車輪踏面とレールの組み合わせと摩擦状態においては、λ>λとなる。
したがって、2点接触状態にある場合、すなわち、0<ξ<1の場合には、合力から定義される脱線係数λは、λ<λ<λを満たす。
1点接触状態を扱うNadalの式では、クリープ力が摩擦力に飽和している場合(すなわち法線力・接線力比が摩擦係数と等しい場合)に、限界脱線係数が最も低くなる、すなわち、最も危険であると考えられている。
2点接触状態では、2箇所の接触点それぞれについて法線力・接線力比が定義されるため、限界脱線係数が最も低くなる条件を導くためには、それぞれの点における法線力・接線力比の大小と、脱線係数の大小の関係を調べる必要がある。
合力から定義される脱線係数λを、
Figure 2023031374000048

で偏微分すると、式34、式35を得る。
Figure 2023031374000049
2点接触状態では0<ξ<1であることに注意すると、これらの偏微分はいずれも負値であり、2箇所の接触点両方について、法線力・接線力比が大きいほど、脱線係数は小さくなる。
逆に、両方の接触点において法線力・接線力比が大きく、摩擦係数に飽和した場合に、合力から定義される脱線係数は最も大きくなる。
したがって、2点接触状態においても、法線力・接線力比に摩擦係数を代入することで、限界脱線係数を定義できる。
ただし、ここで定義される限界脱線係数は無次元荷重中心位置ξの関数であり、ξの限界値を別途定めることで、それに対応した限界脱線係数が計算される。
本実施形態における無次元荷重中心位置ξの関数としての脱線係数λには、各接触点における法線力・接線力比が大きいほど小さくなるという、1点接触状態を考慮したNadalの式を用いた脱線係数と同様の性質が備わっていることが明らかとなった。
したがって、荷重中心位置の下限値推定についても、同様の考え方を適用できる。
実際、ξを
Figure 2023031374000050

で偏微分すると、式36、式37を得る。
Figure 2023031374000051
0<ξ<1のときにλ<λ<λであり、かつ
Figure 2023031374000052

であることを考慮すると、
Figure 2023031374000053

である。
すなわち、
Figure 2023031374000054

のときに、ξは最小値を取る。
Figure 2023031374000055

のとき、各接触点で定義される脱線係数λf/tは、式38となる。

λf/t=Γf/t (式38)

式38を式32に代入することで、無次元荷重中心位置の下限値ξminは式39のように表される。
Figure 2023031374000056

これを有次元関数に変換し、さらにみかけの横圧の影響を考慮すると、式40となる。
Figure 2023031374000057

ただし、y0minは、有次元荷重中心位置の下限値である。
これをδ(y0min)=ay0min+bとして、y0minについて解くと、式41を得る。
Figure 2023031374000058
実際に式41を用いて荷重中心位置の下限値を評価するためには、事前に接触幾何計算を用いて、2点接触が生じた際の接触位置と、それぞれの接触位置における接触勾配を計算しておく必要がある。
さらに、式41が有効なのは、y<y0min<y、あるいは、λ<λ<λの場合に限定されることにも注意する。
次に、実際に2点接触が生じる具体例について考察する。
図16は、実際に生じ得る2点接触状態の一例を示す図である。
この条件において、いくつかの代表的な法線力・接線力比の組み合わせについて、それぞれの接触点で定義される脱線係数を計算すると表1のようになる。
Figure 2023031374000059
これらの数値を用いて、無次元荷重中心位置と合力から定義される脱線係数の関係を試算すると、図17のようになる。
図17は、無次元荷重中心位置と合力から定義される限界脱線係数の関係の試算例を示す図である。
図17に示すように、ξを固定した場合、
Figure 2023031374000060

の両方が大きいときに、限界脱線係数が小さく計算されることが確認できる。
図18は、計測された脱線係数と実施形態における補正後の脱線係数の関係の試算例を示す図である。
横圧の補正によって、従来の測定法では目安超過と判定されるデータであっても、安全と判定されるような領域が存在することは、1点接触の場合と同様である。
ただし、その領域の幅は1点接触の場合よりも狭く、2点接触を考慮した下限値推定法では、横圧の補正量がより小さく見積もられることがわかる。
例えば、1点接触を想定した方法では、上述した通り、脱線係数の計測値が1のときに、脱線係数補正量は約0.1となるが、2点接触を考慮した方法では、脱線係数補正量が約0.055となり、1点接触の場合の半分程度となる。
ただし、一般的な車輪、レール形状の組み合わせについては、車輪・レールがいずれも設計形状である場合には、2点接触を考える必要はないと考えらえれる。
摩耗した車輪・レール形状により2点接触が生じる場合や、設計段階で2点接触が生じるように考慮されている場合には、2点接触を考慮した横圧補正法を用いる必要がある。
図19は、実施形態の横圧測定データの処理方法の概要を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS01:輪重測定データ・横圧測定データ取得>
PQ輪軸100の輪重測定用ブリッジ回路、横圧測定用ブリッジ回路の出力に基づいて生成された輪重測定データ及び横圧測定データを取得する。
その後、ステップS02に進む。
<ステップS02:アタック角判断>
車輪110のレールRに対するアタック角が正値であるか否かを判別する。
例えば、曲線区間における外軌側においては、アタック角は正値であると推定される。
また、専用の機器類を用いて、アタック角を測定する構成としてもよい。
アタック角が正値である場合はステップS03に進み、その他の場合は一連の処理を終了する。
<ステップS03:2点接触状態判断>
車輪110のレールRに対するアタック角及びまくらぎ方向変位に基づいて、車輪とレールとが2点接触状態にあるか否かを判別する。
2点接触状態にある場合はステップS05に進み、その他の場合(1点接触)にはステップS04に進む。
<ステップS04:接触位置下限値推定>
上述した式12を用いて、接触位置下限値の推定を行う。
その後、ステップS06に進む。
<ステップS05:荷重中心位置下限値推定>
上述した式41を用いて、荷重中心位置下限値の推定を行う。
その後、ステップS06に進む。
<ステップS06:横圧補正量算出>
ステップS04において推定した接触位置下限値、又は、ステップS05において推定した荷重中心位置下限値を用いて、輪重に起因するみかけの横圧の推定値を算出する。
このみかけの横圧の推定値が横圧測定データの補正量となる。
その後、ステップS07に進む。
<ステップS07:横圧測定データ補正>
ステップS01において取得した横圧測定データから、ステップS06において算出した横圧補正量を減じる補正を行い、横圧測定データのみかけの横圧の影響を低減する。
この補正後の横圧測定データを用いて、脱線係数の演算等を行うことができる。
その後、一連の処理を終了する。
また、実施形態の横圧測定データの処理方法は、上述した横圧測定データの処理方法を実行するものである。
横圧測定データの処理装置として、例えば、実施形態の横圧測定データの処理方法を実行するプログラムがインストールされたコンピュータを設けることができる。
このようなコンピュータは、PQ輪軸100から輪重測定データ及び横圧測定データを取得するデータ取得部、予め計測された車輪の踏面部及びフランジ部の形状に関するデータを保持する車輪形状データ保持部、輪重測定データ、横圧測定データ、及び、車輪の形状に関するデータに基づいて接触位置下限値を求める接触位置下限値算出部、接触位置下限値及び輪重測定データを用いて横圧測定データを補正する横圧測定データ補正部としての機能を有する。
以上説明したように、本実施形態においては、既存の輪重・横圧測定において、輪重作用の影響によって、曲線外軌側の横圧が過大に見積もられる場合があるという課題に対して、接触位置の下限値、荷重中心位置の下限値を推定するというアプローチによる横圧データ補正を行っている。
この方法は、Nadalの式において、法線力・接線力比をゼロとした場合に、接触勾配の物理的な下限値が計算されることに着目した方法であり、接触力学に関する摩擦係数やクリープ係数などのパラメータは一切使用しないという特徴がある。
また、横圧補正量は、実際に補正すべき横圧よりも小さく見積もられるため、完全に誤差を補正することはできないものの、従来のPQ輪軸と完全に同一の構成で、追加機器や追加のひずみゲージを使用することなく横圧を補正することができる。
また、2点接触状態においても、輪重の作用中心位置をNadalの式を援用して定式化することにより、1点接触の場合と同様に横圧を補正することができる。
(他の実施形態)
なお、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
横圧測定データの処理方法、処理装置や、鉄道車両、PQ輪軸等の具体的構成は、適宜変更することができる。
例えば、PQ輪軸における各ひずみゲージの貼付位置や、ブリッジ回路の具体的構成は、実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
また、接触位置下限値、荷重中心位置下限値等を算出する各数式も、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
また、実施形態では、輪重横圧測定装置として、車輪に輪重測定用、横圧測定用のひずみゲージを設けた輪重横圧測定輪軸(PQ輪軸)を用いているが、本発明はこれに限らず、例えば車輪の曲げ変形を非接触センサで検出して横圧を測定し、軸ばねの変位量を検出して輪重を測定するPQモニタリング台車など、車輪の曲げ変形に基づいて横圧を測定する他種の輪重横圧測定装置にも適用することができる。
1 鉄道車両 10 車体
20 台車枠 30 まくらばね
40 上下動ダンパ 50 軸箱
60 軸箱支持装置 61 軸ばり
62 軸ばね 63 軸ダンパ
100 PQ輪軸 110 車輪
111 ハブ部 112 リム部
113 踏面 114 フランジ
115 板部 116 開口
120 車軸
131A~138A,131B~138B 輪重測定用のひずみゲージ
131a~137a,131a’~137a’ 横圧測定用のひずみゲージ
R レール S まくらぎ
B バラスト

Claims (6)

  1. 鉄道車両の車輪とレールとの間で作用する輪重及び横圧を測定する輪重横圧測定装置によって輪重測定データ及び横圧測定データを取得し、
    前記輪重測定データ、前記横圧測定データ、及び、予め取得された前記車輪の形状に関するデータに基づいて、前記車輪における前記レールとの接触位置の所定の基準位置からのまくらぎ方向変位量の下限値である接触位置下限値を求め、
    前記接触位置下限値及び前記輪重測定データを用いて、前記横圧測定データを補正すること
    を特徴とする横圧測定データの処理方法。
  2. 前記接触位置における接線力の法線力に対する比がゼロであると仮定し、前記輪重測定データと前記横圧測定データとの比に基づいて物理的に可能な接触勾配の下限値を求め、
    前記接触勾配の下限値、及び、前記車輪の踏面形状に基づいて、前記接触位置下限値を求めること
    を特徴とする請求項1に記載の横圧測定データの処理方法。
  3. 前記車輪が踏面部及びフランジ部の2点で前記レールと接触する2点接触状態を判別した場合に、
    前記踏面部における接触位置及び前記フランジ部における接触位置における接線力の法線力に対する比がゼロであると仮定し、各接触位置における接触勾配を用いて各接触位置で定義される脱線係数に基づいて、各接触位置の間に存在する荷重中心位置の所定の基準位置からのまくらぎ方向変位量の下限値である荷重中心位置下限値を求め、
    前記荷重中心位置下限値及び前記輪重測定データを用いて、前記横圧測定データを補正すること
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の横圧測定データの処理方法。
  4. 前記踏面部における接触位置と前記フランジ部における接触位置の位置及び接触勾配を、予め接触幾何計算により求めること
    を特徴とする請求項3に記載の横圧測定データの処理方法。
  5. 前記補正後における前記横圧測定データ、及び、前記輪重測定データを用いて、脱線係数を求めること
    を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の横圧測定データの処理方法。
  6. 鉄道車両の車輪とレールとの間で作用する輪重及び横圧を測定する輪重横圧測定装置から輪重測定データ及び横圧測定データを取得するデータ取得部と、
    予め取得された前記車輪の形状に関するデータを保持する車輪形状データ保持部と、
    記輪重測定データ、前記横圧測定データ、及び、前記車輪の形状に関するデータに基づいて、前記車輪における前記レールとの接触位置の所定の基準位置からのまくらぎ方向変位量の下限値である接触位置下限値を求める接触位置下限値算出部と、
    前記接触位置下限値及び前記輪重測定データを用いて、前記横圧測定データを補正する横圧測定データ補正部と
    を備えることを特徴とする横圧測定データの処理装置。
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