JP2023031219A - ポリマー、ポリマー溶液、感光性樹脂組成物、および硬化物 - Google Patents

ポリマー、ポリマー溶液、感光性樹脂組成物、および硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】感度が良好であり、高いアルカリ溶解性を有し、黄色化が低減された感光性樹脂組成物を提供する。【解決手段】単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される炭素数1~30の1~6価の有機基と、ノルボルネン誘導体由来の構造単位と、Nが炭素数1~30の有機基で置換されていても良いモノマレイミド由来の構造単位と、無水マレイン酸からなる共重合体の酸無水物基を、グリシジル(メタ)アクリレートと水酸基含有(ポリ)(メタ)アクリレートで開環したポリマーである。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリマー、当該ポリマーを含むポリマー溶液、当該ポリマー溶液を含む感光性樹脂組成物、および当該感光性樹脂組成物の硬化物に関する。
液晶表示装置や固体撮像素子は、通常、カラーフィルタやブラックマトリクスを備えている。カラーフィルタやブラックマトリクスは、基板上に着色パターンや保護膜等の構造物が形成された構成となっている。これらの構造物のうち、着色パターンや保護膜の形成方法としては、感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーにより形成する方法が主流となっている。感光性樹脂組成物に関しては、従来より種々の検討がなされており、例えば、特許文献1では、少なくとも側鎖に、酸性基を有する基および2種以上の互いに異なる重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、ならびに、光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物が記載されている。また、特許文献1の実施例には、アルカリ可溶性樹脂として、メタクリル酸/メタクリル酸アリル/グリシジル付加体を合成し、これを用いて感光性樹脂組成物を調製したことが記載されている。
国際公開第2012/147706号
カラーフィルタやブラックマトリクスを形成するための感光性樹脂組成物には、光により重合反応が起こって硬化する性質を備える樹脂が用いられる。カラーフィルタやブラックマトリクスは、感光性樹脂組成物を、露光、現像によりパターニングした後、これを硬化することにより作製される。感光性樹脂組成物において、「高感度化」は一般的な課題にも思われるが、表示装置や撮像装置の複雑化や普及などに伴い、一層高いレベルの高感度化が求められている。感光性樹脂組成物の感度が高いほど、露光に必要な時間は短くなり、生産性を向上させることができる。
また、カラーフィルタやブラックマトリクスを形成する際には、特に感光性樹脂組成物中の顔料の含有量が高い場合に、顔料の塩基性現像液への溶解性が低いため、感光性樹脂組成物の現像にかかる時間が長くなる。そのため、従来の塩基性現像液と比べて現像速度が速い強塩基性現像液を用いる必要がある。しかしながら、ポリマーのアルカリ溶解性が高いと、顔料や光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物のアルカリ溶解速度が速すぎたり、顔料と樹脂組成物との溶解速度の差が大きくなりすぎたりすることから、露光、現像後のパターンが、設計通りの形状とならない場合があった。
さらに、感光性樹脂組成物を基板等に塗布し、得られた塗布膜を露光し、現像することによりパターンを形成する場合、製品の歩留まりや製品信頼性の観点から基板等に対して密着性に優れていることが要求され、感光性樹脂組成物の硬化物には、高い透明性を備えることが求められる。
本発明者は、強塩基性現像液を用いる場合において、露光、現像後のパターンを設計通りの形状とするためには、感光性樹脂組成物に含まれるポリマーのアルカリ溶解性を調整しつつ、感度を維持向上させ、基板への密着性に優れ、さらに高い透明性を備える必要があることを見出した。さらに、本発明者らは、ポリマー構造を改良することにより当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
式(NB)で表される構造単位と、
式(MI)で表される構造単位と、
式(1-1)で表される構造単位と、
式(1-2)で表される構造単位と、
単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される炭素数1~30の1~6価の有機基と、
を含むポリマーであって、
Figure 2023031219000001
式(NB)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、aは0、1または2であり、
Figure 2023031219000002
式(MI)中、R11は、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基であり、
Figure 2023031219000003
式(1-1)中、
Zは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基であり、
Qは、水素原子、または置換もしくは未置換の炭素数1~6のアルキル基であり、
Xは、酸素原子、置換もしくは未置換の炭素数1~4のアルキレン基を表し、
Qが前記アルキル基であり、Xが前記アルキレン基である場合、QとXが縮合して環式基を形成してもよく、
21は、水素原子または炭素数1~3の有機基であり、
Figure 2023031219000004
式(1-2)中、
は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する基であり、
22は、水素原子または炭素数1~3の有機基であり、
式(8)中、
は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する基であり、
Zは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基であり、
Qは、水素原子、または置換もしくは未置換の炭素数1~6のアルキル基であり、
Xは、酸素原子、置換もしくは未置換の炭素数1~4のアルキレン基を表し、
Qが前記アルキル基であり、Xが前記アルキレン基である場合、QとXが縮合して環式基を形成してもよい、
ポリマーが提供される。
また本発明によれば、上記ポリマーを含む、ポリマー溶液が提供される。
また本発明によれば、上記ポリマー溶液と、光重合開始剤と、を含む感光性樹脂組成物が提供される。
また本発明によれば、上記感光性樹脂組成物の硬化物が提供される。
本発明によれば、感度が良好であるとともに、高いアルカリ溶解性を有し、よって現像性に優れるとともに、黄色化が低減された感光性樹脂組成物、およびこれに用いるためのポリマーが提供される。
液晶表示装置および/または固体撮像素子の構造の一例を模式的に示す図(断面図)である。 原料ポリマー4の13C-NMRチャートである。 原料ポリマー6の13C-NMRチャートである。 調製例11で得られたポリマーP11のH-NMRチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なおすべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」を意味する。例えば、「5~90%」とは「5%以上90%以下」を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
特に、本明細書における「(メタ)アクリロイル基」とは、-C(=O)-CH=CHで表されるアクリロイル基と、-C(=O)-C(CH)=CHで表されるメタクリロイル基とを包含する概念を表す。
[ポリマーP]
(第一の実施形態)
第一の実施形態において、本実施形態のポリマー(本明細書中、「ポリマーP」と称する)は、
下記式(NBm)で表されるモノマーと、下記式(MIm)で表されるモノマーと、下記式(MAm)で表されるモノマーとを含むモノマー組成物を、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物の存在下で重合させて原料ポリマーを調製する工程(工程I)と、
この原料ポリマーを、塩基性触媒の存在下で、ヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と反応させて、第一のポリマー前駆体を得る工程(工程IIa)と、
前記第一のポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させる工程(工程III)、
により得られるポリマーである。
Figure 2023031219000005
式(NBm)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、aは0、1または2である。
Figure 2023031219000006
式(MIm)中、R11は、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
Figure 2023031219000007
式(MAm)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
本実施形態のポリマーPは、上述の工程Iで使用される原料モノマー由来の構造単位(すなわち、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物由来の構造単位、式(NBm)で表されるノルボルネンモノマー由来の構造単位、式(MIm)で表されるマレイミドモノマー由来の構造単位、および式(MAm)で表される無水マレイン酸モノマー由来の構造単位)から構成される原料ポリマーに、上述の工程IIaで使用されるヒドロキシ基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(本明細書中、「多官能(メタ)アクリル化合物」と称する)から誘導される側鎖が導入された構造と、上述の工程IIIで使用されるエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物から誘導される側鎖が導入された構造とを有する。ここで、多官能(メタ)アクリル化合物から誘導される側鎖とは、この多官能(メタ)アクリル化合物のヒドロキシ基から水素原子を除いた残基であり、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する基である。またここでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物から誘導される側鎖とは、このエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のエポキシ基が開環して生じる基であり、エポキシ基に由来するヒドロキシ基と1つの(メタ)アクリロイル基とを有する基である。
本実施形態のポリマーPは側鎖に、多官能(メタ)アクリル化合物およびエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物から誘導される、(メタ)アクリロイル基を含む有機基を有する。(メタ)アクリロイル基により硬化反応(重合反応)が促進されるため、ポリマーPは優れた感度を有するとともに、高いアルカリ溶解性を有する。よって、本実施形態のポリマーPを含む感光性樹脂組成物は、優れたアルカリ溶解性と感度とを両立して備え、その結果、トラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)溶液等の強塩基性現像液を用いる場合において、露光、現像後のパターンを設計通りの形状とすることができる。
本実施形態のポリマーPは、上述の工程Iで使用される単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導されるチオエーテル基をその構造中に含む。ポリマーPは、チオエーテル基を有することにより、フォトリソグラフィー法において優れた感度を有するとともに、より高いアルカリ溶解性を有し、よって現像性により優れた樹脂硬化物を提供することができる。また、ポリマーPは、チオエーテル基を含むことにより、黄色化が低減され透明性に優れた樹脂硬化物を提供することができる。
また本実施形態のポリマーPは、上述の工程Iで使用される式(NBm)で表されるノルボルネン由来の構造単位を有する。ノルボルネンモノマー由来の構造単位は、化学的に堅牢である。そのため、これを構造単位として含むポリマーPは、加熱処理に供された際に重量減少が小さく、安定である。
また本実施形態のポリマーPは、式(MIm)で表されるマレイミド由来の構造単位を有する。マレイミド由来の構造単位は、黄色化が低減され透明性に優れる。また、マレイミド由来の構造単位により、耐熱性が改善される。そのため、これを構造単位として含むポリマーPは、加熱処理に供された際の着色が低減されるとともに、耐熱性が優れる。よって、ポリマーPを含む感光性樹脂組成物は、耐熱性が要求される液晶表示装置や固体撮像素子に用いるためのフィルムやフィルタを製造するために好適に用いることができる。
一実施形態において、第一のポリマー前駆体を得る工程IIaは、原料ポリマーを、塩基性触媒の存在下で、上述のヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(多官能(メタ)アクリル化合物)と、ヒドロキシル基および1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(本明細書中、「単官能(メタ)アクリル化合物」と称する)との両方を反応させる工程であってもよい。これにより、得られる第一のポリマー前駆体および第一のポリマー前駆体を経由して得られるポリマーPは、多官能(メタ)アクリル化合物から誘導される側鎖と、単官能(メタ)アクリル化合物から誘導される側鎖との両方を有する。
通常の感光性樹脂組成物の設計においては、感度を上げようと硬化性を高めた場合には硬化が進みすぎて現像性が悪くなりがちであり、一方で現像性を改良しようとした場合には硬化が不十分となりがちであるため、ポリマーPは、単官能(メタ)アクリル化合物から誘導される側鎖を含むことが好ましく、これにより感度と現像性の双方を良好なバランスで両立することができる。
(第二の実施形態)
第二の実施形態において、ポリマーPは、
下記式(NBm)で表されるモノマーと、下記式(MIm)で表されるモノマーと、下記式(MAm)で表されるモノマーとを含むモノマー組成物を、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物の存在下で重合させて原料ポリマーを調製する工程(工程I)と、
前記原料ポリマーを、塩基性触媒の存在下で、ヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と反応させて、第一のポリマー前駆体を得る工程(工程IIa)と、
前記第一のポリマー前駆体を、触媒の存在下、水で処理することにより、第二のポリマー前駆体を得る工程(工程IIb)と、
前記第二のポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させる工程(工程III)、により得られるポリマーである。
Figure 2023031219000008
式(NBm)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、aは0、1または2である。
Figure 2023031219000009
式(MIm)中、R11は、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
Figure 2023031219000010
式(MAm)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
第二の実施形態におけるポリマーPは、上述の第一の実施形態におけるポリマーPを構成する構造単位に加え、工程IIaで得られた第一のポリマー前駆体に含まれる式(MAm)で表される無水マレイン酸モノマー由来の構造単位が、工程IIbの処理により水で開環された構造単位(ジカルボン酸構造単位)を有する。このようなポリマーPは、高いアルカリ溶解性を有し得、その結果、ポリマーPを含む感光性樹脂組成物は、アルカリ水溶液を現像液として用いるフォトリソグラフィー法に供された場合に、優れた現像性を有する。
一実施形態において、第一のポリマー前駆体を得る工程IIaは、原料ポリマーを、塩基性触媒の存在下で、上述のヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(多官能(メタ)アクリル化合物)と、ヒドロキシル基および1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(本明細書中、「単官能(メタ)アクリル化合物」と称する)との両方を反応させる工程であってもよい。これにより、得られる第一のポリマー前駆体および第一のポリマー前駆体を経由して得られるポリマーPは、多官能(メタ)アクリル化合物から誘導される側鎖と、単官能(メタ)アクリル化合物から誘導される側鎖との両方を有する。
(第三の実施形態)
第三の実施形態において、ポリマーPは、
式(NB)で表される構造単位と、
式(MI)で表される構造単位と、
式(1-1)で表される構造単位と、
式(1-2)で表される構造単位と、
単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される炭素数1~30の1~6価の有機基と、
を含むポリマーである。
Figure 2023031219000011
式(NB)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、aは0、1または2である。
Figure 2023031219000012
式(MI)中、R11は、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
Figure 2023031219000013
式(1-1)中、
Zは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基であり、
Qは、水素原子、または置換もしくは未置換の炭素数1~6のアルキル基であり、
Xは、酸素原子、置換もしくは未置換の炭素数1~4のアルキレン基を表し、
Qが前記アルキル基であり、Xが前記アルキレン基である場合、QとXが縮合して環式基を形成してもよく、
21は、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
Figure 2023031219000014
式(1-2)中、
は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する基であり、
22は、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
第三の実施形態において、ポリマーPは、式(P)で表される構造を有していてもよい。ポリマーPは、式(P)中、「Y」として表される、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される炭素数1以上30以下の1~6価の有機基に、典型的には構造単位A、構造単位Bおよび構造単位Cから構成されるポリマー鎖が結合した構造を有する。
Figure 2023031219000015
式(P)において、
mは、0~5の整数であり、好ましくは、0または1であり、より好ましくは、0である。
nは、1~6の整数であり、好ましくは、2~6であり、より好ましくは、3~6である。
m+nは、1~6であり、好ましくは、2~6であり、より好ましくは、3~6である。
p、qおよびrはそれぞれ、n個の[ ]内のポリマー鎖毎に含まれるA、BおよびCのモル含有率を示し、p、q、およびrは、n個の[ ]内のポリマー鎖毎に同一でも異なっていてもよく、
p+q+r=1であり、pは0以上であり、qは0以上であり、rは0以上であり
当該ポリマーに含まれる各構造単位A、B、およびCのモル含有率を、それぞれ、p、q、およびrとすると、p+q+r=1であり、
は0より大きく、好ましくは、0.25~0.75であり、より好ましくは、0.3~0.65であり、より好ましくは、0.35~0.60である。
は0より大きく、好ましくは、0.10~0.6であり、より好ましくは、0.2~0.50であり、より好ましくは、0.25~0.45である。
は0より大きく、好ましくは、0.05~0.3であり、より好ましくは、0.06~0.28であり、特に好ましくは0.07~0.25である。
Xは、水素または炭素数1以上30以下の有機基である。
Yは、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される炭素数1以上30以下の1~6価の有機基である。
Aは、式(NB)で表される構造単位を表す。
Bは、式(1-1)で表される構造単位と、式(1-2)で表される構造単位とを含む。
Cは、式(MI)で表される構造単位を表す。
複数存在するA同士、B同士、C同士は同一であっても異なっていてもよい。
Dは、[ ]n内の構造とは異なる任意の構造であり、例えば、上述のA、B、およびCのうちの1つまたは2つである。
Figure 2023031219000016
式(NB)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、aは0、1または2である。
Figure 2023031219000017
式(1-1)において、
Zは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。
Qは、水素原子、または置換もしくは未置換の炭素数1~6のアルキル基である。
Xは、酸素原子、置換もしくは未置換の炭素数1~4のアルキレン基を表し、
Qが前記アルキル基であり、Xが前記アルキレン基である場合、QとXが縮合して環式基を形成してもよい。
21は、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
Figure 2023031219000018
式(1-2)中、
は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する基であり、
22は、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
Figure 2023031219000019
式(MI)中、R11は、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
一実施形態において、ポリマーPは、式(P')で表される構造を有していてもよい。ここで、式(P')は、上記式(P)において、mが0である態様に相当する。
Figure 2023031219000020
式(P')において、
n、ならびにp、qおよびrは、式(P)における定義と同じであり、X、Y、A、BおよびCは、式(P)における定義と同じである。
ポリマーPを構成する上記式(NB)で表される構造単位において、R~Rを構成し得る炭素数1~30の有機基としては、置換または無置換の、直鎖または分岐鎖の炭素数1~30のアルキルが挙げられ、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、カルボキシ基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
式(NB)で表される構造単位における、R、R、RおよびRとしては水素またはアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。
なお、R、R、RおよびRの炭素数1~30の有機基中の水素原子は、任意の原子団により置換されていてもよい。例えば、フッ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基などで置換されていてもよい。より具体的には、R、R、RおよびRの炭素数1~30の有機基として、フッ化アルキル基などを選択してもよい。
式(NB)で表される構造単位において、aは好ましくは0または1、より好ましくは0である。
ポリマーPを構成する全構造単位中の、式(NB)で表される構造単位の割合は、好ましくは25~75モル%、より好ましくは30~65モル%、さらに好ましくは35~60モル%である。
ポリマーPを構成する上記式(MI)で表される構造単位において、R12およびR13を構成し得る炭素数1~3の有機基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。R12およびR13は、水素原子であることが好ましい。
式(MI)中のR11を構成し得る炭素数1~30の有機基としては、置換または無置換の、直鎖または分岐鎖の炭素数1~30のアルキルが挙げられ、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、カルボキシ基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
式(MI)で表される構造単位におけるR11としては、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基が好ましい。
式(MI)で表される構造単位中のR11、R12およびR13を適宜選択することにより、特に、R11を選択することにより、得られるポリマーPのアルカリ溶解性を調整することができる。例えば、R11を水素原子とすることにより、得られるポリマーPのアルカリ溶解性を向上させることができる。またR11をアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基とすることにより、得られるポリマーPのアルカリ溶解性を抑制することができる。式(MI)で表される構造単位中のこれらの置換基は、ポリマーPの用途に所望されるアルカリ溶解性に応じて選択することができる。
なお、R11の炭素数1~30の有機基中の水素原子は、任意の原子団により置換されていてもよい。例えば、フッ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基などで置換されていてもよい。より具体的には、R11を炭素数1~30の有機基として、フッ化アルキル基などを選択してもよい。
ポリマーPを構成する全構造単位中の式(MI)で表される構造単位の割合は、好ましくは5~30モル%、より好ましくは6~28モル%、さらに好ましくは7~25モル%である。ポリマーP中の式(MI)で表される構造単位の割合を上記範囲とすることにより、ポリマーPの感度、アルカリ溶解性および耐熱変色性のバランスを高度なレベルで改善することができる。
ポリマーPを構成する上記式(1-1)で表される構造単位において、
Zは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基である。
Qは、水素原子、または置換もしくは未置換の炭素数1~6のアルキル基である。このアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を挙げることができる。置換された炭素数1~6のアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、メルカプト基等を挙げることができる。
Xは、酸素原子、置換もしくは未置換の炭素数1~4のアルキレンを表す。Xを構成するアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基を挙げることができる。置換された炭素数1~4のアルレン基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、メルカプト基等を挙げることができる。
Qが前記アルキル基であり、Xが前記アルキレン基である場合、Qのアルキル基とXのアルキレン基の何れかの炭素原子とが結合して環を形成してもよい。環構造としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、デカリン環、ベンゼン環、ナフタレン環等を挙げることができる。
式(1-1)において、Xが炭素数1~4のアルキレンであり、かつZが(メタ)アクリロイルオキシ基である態様、またはXが酸素原子であり、かつZが(メタ)アクリロイル基である態様が好ましく用いられる。
Xが炭素数1~4のアルキレンであり、かつZが、下記式(1a)で表される(メタ)アクリロイルオキシ基である態様、またはXが酸素原子であり、かつZが(メタ)アクリロイル基である態様が好ましく用いられる。
Figure 2023031219000021
式(1a)中、Rは、水素原子またはメチル基である。
ポリマーPの全構造単位中の、式(1-1)で表される構造単位の割合は、好ましくは0.5~20モル%、より好ましくは1~15モル%である。
ポリマーPを構成する上記式(1-2)で表される構造単位において、Rは、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を含む基を表す。好ましくは、Rは、2~9の(メタ)アクリロイル基を含む基であり、より好ましくは、3~6の(メタ)アクリロイル基を含む基である。(メタ)アクリロイル基の数を最適にすることで、得られるポリマーPのフォトリソグラフィー法における感度を高めることができる。また感度と現像性とをより高度なバランスで両立することができ、さらに耐熱性を改善することができる。
ポリマーPの全構造単位中の、式(1-2)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~30モル%、より好ましくは2~20モル%である。
式(1-2)で表される構造単位において、Rは、2以上の(メタ)アクリロイル基を含む基であり、好ましくは2~6の(メタ)アクリロイル基を含む基であり、より好ましくは3~5の(メタ)アクリロイル基を含む基である。Rが含む(メタ)アクリロイル基の数を最適にすることで、これを含むポリマーPの露光処理における感度をより高めることができる。また、ポリマーPの感度とアルカリ溶解性とをより高度に両立させやすくなる。さらに、ポリマーPの耐熱性を改善することができる。
式(1-2)におけるRは、式(1b)で表される基、式(1c)で表される基、または式(1d)で表される基であることが好ましく、これらから選択される少なくとも1種を含む。このような基であることで、上記の各種効果を得やすい傾向がある。
Figure 2023031219000022
式(1b)中、
kは2または3であり、
Rは水素原子またはメチル基であり、複数のRは同じでも異なっていてもよく、
は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)であり、複数存在するXは同一であっても異なっていてもよく、
'は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-X'-Z'-で表される基(X'は炭素数1~6のアルキレン基であり、Z'は-O-または-COO-である)であり、
は炭素数1~12の(k+1)価の有機基である。
Rは、感度の一層の向上(重合のしやすさ)などから、水素原子が好ましい。
kは、2でも3でもよいが、原料の入手容易性や感度の一層の向上の点からは、好ましくは3である。
が炭素数1~6のアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状であっても分枝状であってもよい。
が炭素数1~6のアルキレン基である場合、Xは好ましくは直鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは-CH-(メチレン基)である。
が-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)場合の、Xの炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
Xの炭素数1~6のアルキレン基は、好ましくは直鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは-CH-CH-(エチレン基)または-CH-CH(CH)-である。
'が炭素数1~6のアルキレン基である場合、その具体的態様についてはXと同様である。
'が-X'-Z'-で表される基である場合、X'の具体的態様については上記Xと同様である。
の炭素数1~12の(k+1)価の有機基としては、任意の有機化合物から(k+1)個の水素原子を除いた任意の基を挙げることができる。ここでの「任意の有機化合物」としては、例えば分子量300以下、好ましくは200以下、より好ましくは100以下の有機化合物である。
は、例えば、炭素数1~12(好ましくは炭素数1~6)の直鎖状または分枝状炭化水素から(k+1)個の水素原子を除いた基である。より好ましくは、炭素数1~3の直鎖状炭化水素から(k+1)個の水素原子を除いた基である。なお、ここでの炭化水素は、酸素原子(例えばエーテル結合やヒドロキシ基など)を含んでもよい。また、炭化水素は飽和炭化水素であることが好ましい。
別の態様として、Xは、環状構造を含む基であってもよい。環状構造を含む基としては、脂環構造を含む基、複素環構造(例えば、イソシアヌル酸構造)を含む基などを挙げることができる。
Figure 2023031219000023
式(1c)中、
k、R、XおよびXは、それぞれ、式(1b)におけるR、k、XおよびXと同義であり、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数1~6の2価の有機基であり、
およびXは、それぞれ独立に、単結合または炭素数1~6の2価の有機基であり、
は、炭素数1~6の2価の有機基である。
R、k、XおよびXの具体的態様、好ましい態様などについては、式(1b)で説明したものと同様である。
およびXの炭素数1~6の2価の有機基としては、例えば、炭素数1~6の直鎖状または分枝状炭化水素から2個の水素原子を除いた基を挙げることができる。なお、ここでの炭化水素は、酸素原子(例えばエーテル結合やヒドロキシ基など)を含んでもよい。また、炭化水素は飽和炭化水素であることが好ましい。
およびXの炭素数1~6の2価の有機基としては、直鎖状または分枝状アルキレン基を挙げることができる。直鎖状または分枝状アルキレン基の炭素数は好ましくは1~3である。
Figure 2023031219000024
式(1d)中、nは、2~5の整数であり、好ましくは、2または3である。
Rの具体的態様、好ましい態様などについては、式(1b)で説明したものと同様である。
ポリマーPは、構造単位Bとして、式(1-1)で表される構造単位および式(1-2)で表される構造単位からなる下記式(8)で表される構造単位を含むことができる。
Figure 2023031219000025
式(8)中、Q、X、Zは式(1-1)と同義であり、Rは式(1-2)と同義である。
ポリマーPの全構造単位中の、式(8)で表される構造単位の割合は、好ましくは0.25~17モル%、より好ましくは0.5~12モル%である。
式(P)で表される構造を有するポリマーPは、構造単位Bとして、式(1-3)で表される構造単位を含んでもよい。
Figure 2023031219000026
式(1-3)中、
は、1つの(メタ)アクリロイル基を有する基であり、
22は、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
式(1-3)中のRは、例えば、以下式(2a)で表される基である。
Figure 2023031219000027
式(2a)において、X10は2価の有機基であり、Rは水素原子またはメチル基である。X10の総炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20である、さらに好ましくは1~10である。
10の2価の有機基としては、例えばアルキレン基が好ましい。このアルキレン基中の一部の-CH-はエーテル基(-O-)となっていてもよい。アルキレン基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、直鎖状であることがより好ましい。
10の2価の有機基としてより好ましくは、総炭素数3~6の直鎖状アルキレン基である。X10の炭素数(X10の鎖長)を適切に選択することで、式(1-3)で表される構造単位が架橋反応に一層関与しやすくなり、感度を高めることができる。
10の2価の有機基(例えばアルキレン基)は、任意の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基などを挙げることができる。
また、X10の2価の有機基は、アルキレン基以外の任意の基であってよい。例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシ基等から選ばれる1種又は2種以上の基を連結して構成される2価の基であってもよい。
上記のとおり、式(1-3)中、Rは、(メタ)アクリロイル基を1つのみ含む基である。特に、通常の感光性樹脂組成物の設計においては、感度を上げようと硬化性を高めた場合には硬化が進みすぎて現像性が悪くなりがちであり、一方で現像性を改良しようとした場合には硬化が不十分となりがちであるため、ポリマーPは、さらに式(1-3)で表される構造単位を含むことが好ましく、これにより感度と現像性の双方を良好なバランスで両立することができる。
ポリマーPの全構造単位中の、式(1-3)で表される構造単位の割合は、好ましくは5~40モル%、より好ましくは10~30モル%である。
ポリマーPは、構造単位Bとして、式(1-1)で表される構造単位および式(1-3)で表される構造単位からなる下記式(9)で表される構造単位を含むことができる。
Figure 2023031219000028
式(9)中、Z、Q、Xは式(1-1)と同義であり、Rは式(1-3)と同義である。
ポリマーPが式(9)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、式(9)で表される構造単位の割合は、好ましくは0.25~17モル%、より好ましくは0.5~12モル%である。
式(P)で表される構造を有するポリマーPは、構造単位Bとして、式(1-4)で表される構造単位を含んでもよい。
Figure 2023031219000029
式(1-4)中、R22は、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
ポリマーPが式(1-4)の構造単位を含む場合、ポリマーPは、式(1-1)として表される(メタ)アクリロイル基(式(1-1)中、「-Z」基)を含む構造単位と、式(1-4)として表されるカルボキシル基を有する構造単位の両方を有することとなる。この(メタ)アクリロイル基は、重合性炭素-炭素二重結合を含む。このようにポリマーPは、重合性基とカルボキシル基とが同一ポリマー分子内に存在することにより、これらの両方を比較的大きな値に設計することができる。なお、(メタ)アクリル樹脂などの他の樹脂では、重合性基とカルボキシル基との両方の含有量を高めることは難しい。ポリマーPは、このような構造を有することにより、高いレベルで、感度と現像性を両立することができる。
式(P)で表される構造を有するポリマーPは、構造単位Bとして、式(3)で表される構造単位を含んでもよい。ポリマーPが、式(1-1)で表される構造単位および式(1-2)で表される構造単位に加えて式(3)で表される構造単位を含むことにより、ポリマーPのアルカリ溶解性を調整することができる。その結果、ポリマーPを含む感光性樹脂組成物は、強塩基性現像液を用いるフォトリソグラフィー処理に供された場合においても、感度および現像性のバランスに優れる。
Figure 2023031219000030
式(3)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
ポリマーPが式(3)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、一(3)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~15モル%、より好ましくは2~10モル%である。
ポリマーPは、構造単位Bとして、式(1-1)で表される構造単位と式(1-4)で表される構造単位とからなる下記式(5)で表される構造単位を含むことができる。当該構造単位を含むことにより、感度と現像性の双方をより良好なバランスで両立することができる。
Figure 2023031219000031
式(5)中、Z、X、Qは式(1-1)と同義である。
ポリマーPが式(5)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、式(5)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~12モル%、より好ましくは1~9モル%である。
ポリマーPは、本発明の効果の観点から、さらに、構造単位Bとして、式(1-1)で表される2つの構造単位からなる下記式(6)で表される構造単位を含むことができる。当該構造単位を含むことにより、感度をより改善することができる。
Figure 2023031219000032
式(6)中、Z、X、Qは式(1-1)と同義である。複数存在するZ同士、複数存在するQ同士、複数存在するX同士は、同一でも異なっていてもよい。
ポリマーPが式(6)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、式(6)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~10モル%、より好ましくは1~8モル%である。
式(P)で表される構造を有するポリマーPは、構造単位Bとして、式(1)で表される構造単位を含んでもよい。
Figure 2023031219000033
式(1)中、Rは、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する基であり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
ポリマーPが式(1)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、式(1)で表される構造単位の割合は、好ましくは0.5~25モル%、より好ましくは1~18モル%である。
式(P)で表される構造を有するポリマーPは、構造単位Bとして、式(2)で表される構造単位を含んでもよい。
Figure 2023031219000034
式(2)中、Rは、1つの(メタ)アクリロイル基を有する基であり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
ポリマーPが式(2)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、式(2)で表される構造単位の割合は、好ましくは0.5~35モル%、より好ましくは2~25モル%である。
式(P)で表される構造を有するポリマーPは、構造単位Bとして、式(MA)で表される構造単位を含んでもよい。
Figure 2023031219000035
式(MA)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である。
式(MA)で表される構造単位は、アルカリ現像液により開環して、2つのカルボキシル基を生じる。そのため、当該構造単位を含むポリマーPは、優れた現像性を備える。ポリマーPが、式(MA)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、式(MA)で表される構造単位は、好ましくは、1~35モル%、より好ましくは、2~30モル%である。
式(P)において、Xは、水素または炭素数1以上30以下の有機基である。炭素数1以上30以下の有機基は、上述の式(NB)におけるR~Rを構成する炭素数1以上30以下の有機基と同様である。
式(P)において、Yは、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)(本明細書中、「有機基(i)」と称する)である。本実施形態において、価数は、官能基数(チオール基の数)である。すなわち、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物は、1個または2個以上のチオール基を含み、有機基(i)は当該チオール基から誘導される1~6個のチオエーテル基を介して[ ]n内の構造単位および[ ]m内の構造単位と結合する。有機基(i)は、[ ]n内の構造単位および[ ]m内の構造単位との結合に関与しないチオール基を有していてもよく、ポリマーPは、n+mの数(結合数)が1~6個のそれぞれの樹脂の混合物として得ることができる。
炭素数1以上30以下の前記有機基(i)は、単官能または2官能以上であり、好ましくは、2官能以上であり、より好ましくは、3官能以上である。上限値は特に限定されないが、6官能以下である。
炭素数1以上30以下の前記有機基(i)の価数は、本発明の効果の観点から、例えば、1~6価であり、好ましくは、2~6価であり、より好ましくは、3~6価である。
炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)は、O、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい。炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)としては、例えば、1~6個のチオエーテル基(-S-*(*は結合手))を有する、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基およびヘテロ環基が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、アリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。
アルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。
アルカリル基としては、例えば、トリル基、キシリル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、およびn-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えば、エポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
式(P)中のYを誘導し得る単官能または2官能以上のチオール基含有化合物としては、下記化学式(s-1)~(s-21)で表される化合物が挙げられる。すなわち、ポリマーPは、以下に代表される単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される炭素数1~30の1~6価の有機基(i)を含む。
Figure 2023031219000036
Figure 2023031219000037
Figure 2023031219000038
Figure 2023031219000039
Figure 2023031219000040
Figure 2023031219000041
Figure 2023031219000042
Figure 2023031219000043
Figure 2023031219000044
Figure 2023031219000045
Figure 2023031219000046
Figure 2023031219000047
Figure 2023031219000048
Figure 2023031219000049
Figure 2023031219000050
Figure 2023031219000051
Figure 2023031219000052
Figure 2023031219000053
Figure 2023031219000054
Figure 2023031219000055
Figure 2023031219000056
2官能以上のチオール基含有化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、一分子中に3~6のチオール基を有する、3~6官能(3~6価)のチオール基含有化合物を用いることが、他のモノマーに対する反応性が優れる点で好ましい。
本実施形態において、単官能または2官能以上の前記チオール基含有化合物は、前記化学式(s-1)~(s-21)で表される化合物の中でも、化学式(s-1)~(s-3)、(s-5)および(s-8)~(s-10)で表される化合物を含むことがより好ましく、化学式(s-1)~(s-3)、(s-5)および(s-9)で表される化合物を含むことが特により好ましい。
炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)は、これらのチオール基含有化合物のチオール基から誘導されたチオエーテル基(-S-*(*は結合手))を末端に有し、チオエーテル基を介して[ ]n内の構造単位および[ ]m内の構造単位と結合する。前記有機基(i)は、[ ]n内の構造単位および[ ]m内の構造単位との結合に関与しないチオール基を有していてもよい。
本実施形態のポリマーPは、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物として上述の式(s-2)で表される4官能(4価)のチオール基含有化合物を用いた場合、例えば、以下の式(I)で表されるような構造を有することができる。
Figure 2023031219000057
式(I)中、A、B、C、X、p、qおよびrは、式(P)におけるものと同義である。4個の[ ]内の構造単位に含まれるA、B、C、X、p、qおよびrは、各々同一でも異なっていてもよい。
式(I)において、A、BおよびCの結合順序は特に限定されず、A、BおよびCのいずれがチオエーテル基と結合していてもよい。また、式(I)においては、化学式(s-2)で表される化合物の4つのメルカプト基から誘導されたチオエーテル基を介して4個の[ ]内の構造単位と結合している例によって示したが、4つのメルカプト基から誘導されたチオエーテル基に[ ]内の構造単位が1~3個結合し、残りのチオエーテル基に[ ]内の構造単位とは異なる有機基が結合した構造であってもよい。本実施形態においては、ポリマーPは、[ ]内の構造が1~4個結合している化合物を少なくとも1つ含む混合物として得ることができる。
なお、ポリマーP中に含まれる各構造単位の含有量(比率)は、ポリマーPを合成する際に用いる原料の仕込み量(モル量)、合成後に残存する原料の量、各種スペクトル(例えば、IRスペクトル、H-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトル)のピークの存在、およびピーク面積などから推定/算出することができる。
本実施形態のポリマーPの重量平均分子量Mwは、2,000~80,000である。ポリマーPの重量平均分子量は、好ましくは、4,000~70,000であり、より好ましくは6,000~60,000であり、さらに好ましくは、7,000~50,000である。重量平均分子量を適切に調整することで、感度やアルカリ現像液に対する溶解性を調整することができる。
また、ポリマーPの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、好ましくは1.0~5.0であり、より好ましくは1.25~4.5であり、さらに好ましくは1.5~4.0である。分散度を適切に調整することで、ポリマーPの物性を均質にすることができる。なお、これらの値は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。
ポリマーPのガラス転移温度は、好ましくは150~250℃、より好ましくは170~230℃である。ポリマーPは、式(NB)で表される構造単位を含むことにより、比較的高いガラス転移温度を有する。このことは、液晶表示装置や固体撮像素子の製造に当たって、基板上に形成されたパターンが安定に存在できるという点で好ましい。なお、ガラス転移温度は、例えば、示差熱分析(differential thermal analysis:DTA)により求めることができる。
本実施形態のチオエーテル基含有(メタ)アクリル樹脂(a)中に含まれる各構造単位の含有量(比率)は、ポリマー合成時の原料の仕込み量(モル量)、合成後に残存する原料の量、各種スペクトルのピーク面積(例えば、H-NMRのピーク面積)などから推定/算出することができる。
ポリマーPの酸価は、50mgKOH/g以上、150mgKOH/g以下、好ましくは55mgKOH/g以上、140mgKOH/g以下である。また、ポリマーPの二重結合当量は、100g/mol以上、700g/mol以下、好ましくは、200g/mol以上、650g/mol以下、より好ましくは250g/mol以上、600g/mol以下である。
ポリマーPの酸価が50mgKOH/g以上であることで、良好な現像性を得ることができる。また、二重結合当量が700g/mol以下であることで、ポリマーPを含む感光性樹脂組成物の感度を高くすることができる。
なお、ポリマーPの酸価が大きすぎると、アルカリ現像液での現像の際に、露光部分が溶解しやすくなり光硬化に必要な露光量が多くなってしまったり、パターン形状が不十分になったりする懸念がある。よって、本実施形態では、酸価の上限値を150mgKOH/gとしている。
また、ポリマーPの二重結合当量が小さすぎると(すなわち、ポリマー中の二重結合の密度が大きすぎると)、アルカリ現像液での現像時に、未露光部や低露光部が溶解しにくくなる傾向があり、現像時に残膜が発生しがちとなる。また、二重結合当量が小さすぎると、架橋により分子量が過度に増大し、溶解性の過度な低下などが懸念される。よって、本実施形態では、二重結合当量の下限値を100g/molとしている。
ポリマーPの酸価および/または二重結合当量を調整することで、より一層高いレベルで感度と現像性を両立させることができる。
ポリマーPの酸価および二重結合当量は、スペクトル測定などにより求めることができる。例えば、以下のような手順で求めることができる(より具体的には実施例を参照されたい)。
(1)ポリマーのH-NMRチャートから、カルボキシ基の水素原子や、重合性炭素-炭素二重結合近傍の水素原子に対応するピークの面積(積分値)を求める。
(2)(1)で求めた面積を、標準物質に由来するピークの面積から、カルボキシ基の量および炭素-炭素二重結合の量を求める。
(3)(2)で求めたカルボキシ基の量を、酸価(mgKOH/g)に換算する。また、(2)で求めた重合性炭素-炭素二重結合の量を、二重結合当量(g/mol)に換算する。
ポリマーPの酸価および二重結合当量は、ポリマーPに導入される構造単位の比率、特に式(1)~(3)で表される構造単位に含まれる(メタ)アクリロイル基が有する重合性炭素-炭素二重結合の数を適切に設計することで、所望の値に調整することができる。
本実施形態のポリマーP中に含まれる各構造単位の含有量(比率)は、ポリマー合成時の原料の仕込み量(モル量)、合成後に残存する原料の量、各種スペクトルのピーク面積(例えば、H-NMRのピーク面積)などから推定/算出することができる。
[ポリマーPの製造方法]
本実施形態のポリマーPの製造方法について、ポリマーPが式(P)で表される構造を有する場合を例に説明する。
本実施形態のポリマーPは、以下の工程I~IIIにより製造することができる。
工程I:式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、式(MA)で表される構造単位、および炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)とを含む原料ポリマーを準備する工程、および
工程IIa:工程Iで得られた原料ポリマーと、ヒドロキシ基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(多官能(メタ)アクリル化合物)とを、塩基性触媒の存在下で反応させて、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)、および式(1-2)で表される構造単位を含み、場合によりさらに式(MA)で表される構造単位を含む第一のポリマー前駆体(a)を調製する工程。
工程III:工程IIaで得られた第一のポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させて、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)、式(1-1)で表される構造単位、および式(1-2)で表される構造単位を含み、場合によりさらに式(MA)で表される構造単位を含むポリマーPを調製する工程。
ポリマーPが、式(1-3)で表される構造単位をさらに含む場合、工程IIaに続いて、以下の工程IIbが実施される。
工程IIb:工程IIaで得られたポリマー前駆体を含む反応混合物に、ヒドロキシ基および1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(単官能(メタ)アクリル化合物)を反応させて、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)、式(1-2)で表される構造単位、および式(1-3)で表される構造単位を含み、場合によりさらに式(MA)で表される構造単位を含む第一のポリマー前駆体(b)を得る工程。
ポリマーPが、式(3)で表される構造単位をさらに含む場合、以下の工程IIcが実施される。
工程IIc:工程IIaまたは工程IIbにおいて得られたポリマー前駆体(a)または(b)を、塩基触媒の存在下、水で処理して、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)、式(1-2)で表される構造単位、および式(1-3)で表される構造単位、および式(3)で表される構造単位を含み、場合によりさらに式(MA)で表される構造単位を含む第一のポリマー前駆体(c)を得る工程。
以下、各工程について説明する。
(工程I)
工程(I)における、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、式(MA)で表される構造単位、および炭素数1以上30以下の1~6価の有機基(i)を含む原料ポリマーを準備する工程は、式(NBm)で表されるモノマーと、式(MIm)で表されるモノマーと、式(MAm)で表されるモノマーとを含むモノマー組成物を、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物の存在下で重合(付加重合)することで実施することができる。ここで、式(NBm)におけるR、R、RおよびRならびにaの定義は、式(NB)のものと同様である。また、式(MIm)におけるR10、R11、R12およびR13の定義は、式(MI)におけるものと同様である。また、式(MAm)におけるR21およびR22の定義は、式(MA)におけるものと同様である。
Figure 2023031219000058
式(NBm)で表されるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-エン(慣用名:2-ノルボルネン)、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-アリル-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-エチニル-2-ノルボルネン、5-ベンジル-2-ノルボルネン、5-フェネチル-2-ノルボルネン、2-アセチル-5-ノルボルネン、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。重合の際、式(NBm)で表されるモノマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2023031219000059
Figure 2023031219000060
単官能または2官能以上のチオール基含有化合物としては、上記式(s-1)~(s-21)で表される化合物が挙げられるがこれらに限定されない。単官能または2官能以上のチオール基含有化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
重合の方法については限定されないが、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合が好ましい。重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物などを使用できる。
アゾ化合物として具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などを挙げることができる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、ジ-tert-ブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)などを挙げることができる。
重合開始剤については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合反応に用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を用いることができる。重合溶媒は単独溶剤でも混合溶剤でもよい。
原料ポリマーの合成は、式(NBm)で表されるモノマー、式(MIm)で表されるモノマー、式(MAm)で表されるモノマー、および重合開始剤を溶媒に溶解させて、反応容器に仕込み、その後、加熱して、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物を滴下しながら、付加重合を進行させることにより実施される。加熱温度は例えば50~80℃であり、加熱時間は例えば5~20時間である。
反応容器に仕込む際の、式(NBm)で表されるモノマーと、式(MIm)で表されるモノマーと式(MAm)で表されるモノマーと合計量のモル比(MIm+MAm)は、(NBm):(MIm+MAm)=0.5:1~1:0.5であることが好ましい。分子構造制御の観点から、モル比は1:1であることが好ましい。式(MIm)で表されるモノマーと式(MAm)で表されるモノマーとのモル比は、(MIm):(MAm)=0.5:9.5~5:5であることが好ましく、1:9~4:6であることがより好ましい。
また、得られる原料ポリマー中のチオエーテル基含有量、および原料ポリマーの分子量制御の観点から、反応容器に仕込む際の、式(NBm)で表されるモノマーと、式(MIm)で表されるモノマーと、式(MAm)で表されるモノマーとの合計モル量に対し、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物の仕込み量は0.5~10モル%であることが好ましく、1~8モル%であることがより好ましく、1.5~6モル%であることがさらにより好ましい。
このような工程により、「原料ポリマー」を得ることができる。
なお、原料ポリマーは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、周期共重合体などのいずれであってもよい。典型的にはランダム共重合体または交互共重合体である。なお、一般に、無水マレイン酸は交互共重合性が強いモノマーとして知られている。
なお、原料ポリマーの合成後に、未反応モノマー、オリゴマー、残存する重合開始剤などの低分子量成分を除去する工程を行ってもよい。
具体的には、合成された原料ポリマーと低分子量成分とが含まれた有機相を濃縮し、その後、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒と混合して溶液を得る。そして、この溶液を、メタノールなどの貧溶媒と混合し、モノマーを沈殿させる。この沈殿物を濾取して乾燥させることで、原料ポリマーの純度を上げることができる。
(工程IIa)
工程IIaでは、工程Iで得られた原料ポリマーと、多官能(メタ)アクリル化合物とを、塩基性触媒の存在下で反応させることで、原料ポリマーに含まれる式(MA)で表される構造単位の一部が開環して、式(1-2)で表される構造単位および式(1-4)で表される構造単位を含む式(1)で表される構造単位が形成されて、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、および式(1)で表される構造単位を含み、場合により式(MA)で表される構造単位を含む構造単位が、炭素数1以上30以下の前記有機基(i)に1~6個のチオエーテル基を介して結合した構造を含むポリマー前駆体(a)が得られる。
より具体的には、まず、原料ポリマーを適当な有機溶剤に溶解させた溶液を準備する。有機溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)などの単独溶剤または混合溶剤を用いることができるが、これらのみには限定されず、有機化合物や高分子の合成で用いられる種々の有機溶剤を用いることができる。
ここで用いることができる多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば式(1b-m)で表される化合物、式(1c-m)で表される化合物、および式(1d-m)で表される化合物が挙げられる。式(1b-m)におけるk、R、X、X'およびXの定義および具体的態様は、上述の式(1b)におけるものと同様である。また式(1c-m)におけるk、R、X、X、X、X、XおよびXの定義および具体的態様は、上述の式(1c)におけるものと同様である。式(1d-m)におけるnおよびRは、上記の式(1d)におけるものと同様である。
Figure 2023031219000061
Figure 2023031219000062
Figure 2023031219000063
(工程IIb)
工程IIbは必要に応じて実施される工程である。
工程IIbでは、工程IIaで得られたポリマー前駆体(a)に、単官能(メタ)アクリル化合物を、塩基性触媒の存在下で反応させることで、ポリマー前駆体(a)に含まれる式(MA)で表される構造単位の一部が開環して、式(1-3)で表される構造単位および式(1-4)で表される構造単位を含む式(2)で表される構造単位が形成されて、式(NB)の構造単位、式(MI)の構造単位、式(1)の構造単位、および式(2)の構造単位、場合により式(MA)で表される構造単位を含む構造単位が、炭素数1以上30以下の前記有機基(i)と1~6個のチオエーテル基を介して結合した構造を含むポリマー前駆体(b)を得ることができる。
工程IIbで用いられる塩基性触媒としては、有機合成の分野で公知のアミン化合物や含窒素複素環化合物等を適宜用いることができる。例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物または含窒素複素環化合物を触媒として用いることができる。
上記溶液を、好ましくは60~80℃で、3~9時間程度加熱することで、原料ポリマー中に含まれる式(MA)の構造単位の開環/式(2)の構造単位の形成がなされる。
反応の立体障害などの点から、ヒドロキシ基を有する単官能(メタ)アクリル化合物のほうが、ヒドロキシ基を有する多官能(メタ)アクリル化合物よりも、原料ポリマーと反応しやすい傾向にある。よって、式(2)の構造単位を有するポリマー前駆体を調製する場合には、工程IIaの後、または工程IIaの間にヒドロキシ基を有する単官能(メタ)アクリル化合物を、工程IIaの反応系中に追添することが好ましい。
ヒドロキシ基を有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば以下式(2a-m)で表される化合物が挙げられる。
式(2a-m)において、X10およびRの定義については式(2a)におけるものと同様である。
Figure 2023031219000064
式(2a-m)で表される化合物の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸などを挙げることができる。
(工程IIc)
工程IIcは必要に応じて実施される工程である。
工程IIcでは、工程IIaで得られたポリマー前駆体(a)または工程IIbで得られたポリマー前駆体(b)を、塩基性触媒の存在下、水で処理する工程が実施される。工程IIcにより、工程IIaまたはIIbで得られたポリマー前駆体(a)または(b)に含まれる式(MA)で表される構造単位が開環し、式(3)で表される構造単位が形成されて、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、式(1)で表される構造単位および/または式(2)で表される構造単位、ならびに式(3)で表される構造単位が、炭素数1以上30以下の前記有機基(i)と1~6個のチオエーテル基を介して結合した構造を含むポリマー前駆体(c)を製造することができる。式(MA)で表される構造単位の一部が開環し、式(MA)の構造単位の一部が開環せずに残る場合には、ポリマー前駆体(c)は、式(MA)で表される構造単位をさらに含む。
工程(IIc)で使用される塩基性触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物または含窒素複素環化合物が挙げられる。
工程IIcでは、工程IIaまたは工程IIbで得られたポリマー前駆体(a)または(b)を含む反応系に、水を添加し、得られた反応溶液を、好ましくは60~80℃で、0.25~6時間程度加熱することで、このポリマー前駆体(a)または(b)に含まれる式(MA)の構造単位が開環して、式(3)で表される構造単位が生成する。塩基性触媒は、工程IIa(または実施する場合は、工程IIb)で得られた反応系に残存している触媒をそのまま使用することができる。そのため、工程IIIcは、工程IIaまたは工程IIbで得られた反応混合物に何ら後処理を行うことなく、インサイチュで、この反応混合物に水を追添することにより実施することが好ましい。
(工程III)
工程IIIでは、工程IIaで得られたポリマー前駆体(a)、工程IIbで得られたポリマー前駆体(b)、または工程IIcで得られたポリマー前駆体(c)を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させることにより、ポリマー前駆体(a)~(c)のカルボキシル基と前記エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のエポキシ基との反応により、式(1-1)で表される構造単位が形成されて、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、式(1-1)で表される構造単位、および式(1-2)で表される構造単位、ならびに場合により式(MA)で表される構造単位を含む構造単位が、炭素数1以上30以下の前記有機基(i)に1~6個のチオエーテル基を介して結合した構造を有する、本実施形態のポリマーPが生成する。
工程IIIは、工程IIaで得られたポリマー前駆体(a)、工程IIbで得られたポリマー前駆体(b)、または工程IIcで得られたポリマー前駆体(c)を含む反応系に、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物を追添することにより実施することが好ましい。
ポリマー前駆体と、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物との反応は、塩基性触媒の存在下で進行する。塩基性触媒は、工程IIで得られた反応系に残存している触媒をそのまま使用することができる。そのため、工程IIIは、工程IIで得られたポリマー前駆体を含む反応混合物からポリマー前駆体を単離精製したり、当該混合物中に含まれる塩基性触媒を中和したりすることなく、インサイチュで、工程IIで得られたポリマー前駆体を含む反応混合物にエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物を追添することにより実施することが好ましい。
具体的には、ポリマー前駆体を含む反応混合物にエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物を追添して得られる反応溶液を、好ましくは60~80℃で、1~9時間程度加熱することで、ポリマー前駆体のカルボキシル基とエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のエポキシ基との反応により、式(1-1)で表される構造単位が形成され、ポリマーPが生成する。
エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物としては、メタクリル酸グリシジル(GMA)、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、アクリル酸グリシジル等を挙げることができ、これから選択される1種または2種以上を用いることができる。
エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物の添加量は、ポリマー前駆体のカルボキシル基1モルに対して0.1~3.0モルであることが望ましい。
ポリマーPが、ポリマー前駆体(a)を経由して得られるポリマーである場合、ポリマーPは、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、式(8)で表される構造単位、式(1)で表される構造単位、および式(MA)で表される構造単位を含むポリマー鎖が、炭素数1以上30以下の前記有機基(i)と1~6個のチオエーテル基を介して結合した構造を含む。
ポリマーPが、ポリマー前駆体(b)を経由して得られるポリマーである場合、ポリマーPは、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、式(8)で表される構造単位、式(9)で表される構造単位、式(1)で表される構造単位、式(2)で表される構造単位、および式(MA)で表される構造単位を含むポリマー鎖が、炭素数1以上30以下の前記有機基(i)と1~6個のチオエーテル基を介して結合した構造を含む。
ポリマーPが、ポリマー前駆体(c)を経由して得られるポリマーである場合、ポリマーPは、式(NB)で表される構造単位、式(MI)で表される構造単位、式(8)で表される構造単位、式(9)で表される構造単位、式(5)で表される構造単位、式(6)で表される構造単位、式(1)で表される構造単位、式(2)で表される構造単位、式(3)で表される高単位、および式(MA)で表される構造単位を含むポリマー鎖が、炭素数1以上30以下の前記有機基(i)と1~6個のチオエーテル基を介して結合した構造を含む。
工程IIIの後、所望のポリマーP以外の不要な成分の除去などのため、更に以下の工程を適宜行うことが好ましい。
まず、上記で、有機溶剤で希釈し、また、酸(例えば、ギ酸、クエン酸など)を加えた反応溶液を、分液漏斗で少なくとも3分間激しく攪拌する。これを30分以上静止して、有機相と水相に分け、水相を除去する。このようにしてポリマーPの有機溶液を得る。
得られたポリマーPの有機溶液に、過剰量のトルエンを加えてポリマーPを再沈殿させる。また、再沈殿により得られたポリマー粉末をさらに数回(例えば、2回)、トルエンで洗浄する。
さらに、酸や塩基性触媒の除去のため、得られたポリマー粉末を、イオン交換水で洗浄する操作を数回(例えば、3回)繰り返す。
イオン交換水で洗浄後のポリマー粉末を、例えば30~60℃で16時間以上乾燥させることで、高純度の本実施形態のポリマーPを得ることができる。
[ポリマー溶液]
本実施形態のポリマー溶液は、上述のポリマーPを含む。
本実施形態のポリマー溶液は、ポリマーPとともに、多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
(多官能(メタ)アクリル化合物)
本実施形態のポリマー溶液に含まれ得る多官能(メタ)アクリル化合物、または単官能(メタ)アクリル化合物は、ポリマーPの製造における上記工程IIaまたは工程IIbにおいて使用された(メタ)アクリル化合物の未反応物であってもよいし、別途添加されたものであってもよい。
ポリマー溶液に配合することができる多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、以下の式(1b-p)で表される化合物、式(1c-p)で表される化合物、および式(1d-p)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 2023031219000065
Figure 2023031219000066
Figure 2023031219000067
式(1b-p)におけるk、R、X、X'およびXの定義および具体的態様は、上述の式(1b)におけるものと同様である。また式(1c-p)におけるk、R、X、X、X、X、XおよびXの定義および具体的態様は、上述の式(1c)におけるものと同様である。
式(1b-p)、式(1c-p)および式(1d-p)におけるYは、水素原子または(メタ)アクリロイル基、あるいはそれらの組み合せである。
式(1b-p)、式(1c-p)および式(1d-p)においてYが水素原子である化合物は、未反応モノマー(すなわち、式(1b-p)、式(1c-p)および式(1d-p)で表される化合物)であってもよく、別途添加することもできる。
式(1d-p)におけるnは、2以上の整数であり、好ましくは、2~5の整数であり、より好ましくは2~3の整数である。
本実施形態のポリマー溶液に、ポリマーPの製造において使用された多官能(メタ)アクリル化合物の未反応物とは別に多官能(メタ)アクリル化合物が配合される場合、その配合量は、当該ポリマー溶液のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおける多官能(メタ)アクリル化合物に由来するピーク面積が、ポリマーPのピーク面積に対し、好ましくは30%以下、より好ましくは27.5%以下、さらに好ましくは25%以下となる量で配合することができる。
(単官能(メタ)アクリル化合物)
本実施形態のポリマー溶液に配合される単官能(メタ)アクリル化合物としては、以下の式(2a-m)で表される化合物が挙げられる。式(2a-m)において、X10およびRの定義については式(2a)におけるものと同様である。
Figure 2023031219000068
本実施形態のポリマー溶液に、ポリマーPの製造において使用された単官能(メタ)アクリル化合物の未反応物とは別に単官能(メタ)アクリル化合物が配合される場合、その配合量は、当該ポリマー溶液のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおける単官能(メタ)アクリル化合物に由来するピーク面積が、ポリマーPのピーク面積に対し、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下となる量で配合することができる。
本実施形態のポリマー溶液は、典型的には、有機溶剤を含み、液体またはワニスの形態で提供される。有機溶剤としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1種または2種以上を用いることができる。
有機溶剤の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ-ブチルラクトン、N-メチルピロリドンおよびシクロヘキサノン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤の使用量は特に限定されないが、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
[ポリマー溶液の製造]
本実施形態のポリマー溶液は、上記成分を、公知の方法で混合することにより作製することができる。本実施形態のポリマー溶液は、以下で説明する感光性樹脂組成物の樹脂材料として用いられる。
[感光性樹脂組成物]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述のポリマーPと、光重合開始剤とを含む。すなわち、本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述の本実施形態のポリマー溶液と、光重合開始剤とを含む。以下に各成分について説明する。
(光重合開始剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができ、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-〔(4-メチルフェニル)メチル〕-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボキニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2-トリクロロメチル-5-(2'-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2'-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等が挙げられる。光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光ラジカル重合開始剤は、ポリマー100質量部に対し、例えば、1~20質量部の量で、好ましくは、3~10質量部の量で用いられる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記成分を含むことにより、フォトリソグラフィー処理において高い感度を有するとともに、すぐれたアルカリ溶解性を有する。そのため、感光性樹脂組成物は、フォトリソグラフィー法において優れた現像性、優れた加工性を備える。
(着色剤)
一態様として、感光性樹脂組成物は着色剤を含んでもよい。着色剤を含むことで、液晶表示装置や固体撮像素子のカラーフィルタの形成材料として好ましく用いることができる。着色剤としては、種々の顔料または染料を用いることができる。
顔料としては有機顔料や無機顔料を用いることができる。
有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キサンテン系顔料、ピロメテン系顔料、染料レーキ系顔料等を使用することができる。
無機顔料としては、白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)を使用することができる。
染料としては、例えば、特開2003-270428号公報や特開平9-171108号公報、特開2008-50599号公報等に記載されている公知の染料を使用することができる。
感光性樹脂組成物が着色剤を含む場合、感光性樹脂組成物は着色剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
着色剤(特に顔料)は、目的や用途に応じて、適切な平均粒子径を有するものを使用できるが、特にカラーフィルタのような透明性が要求される場合は、0.1μm以下の小さい平均粒子径が好ましく、その他、塗料などの隠蔽性が必要とされる場合は、0.5μm以上の大きい平均粒子径が好ましい。
着色剤は、目的や用途に応じて、ロジン処理、界面活性剤処理、樹脂系分散剤処理、顔料誘導体処理、酸化皮膜処理、シリカコーティング、ワックスコーティングなどの表面処理がなされていてもよい。
感光性樹脂組成物が着色剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、着色濃度と着色剤の分散安定性との両立などから、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤を除く成分)全体に対して、好ましくは3~70質量%であり、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
(界面活性剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含むことができ、界面活性剤としては非イオン性界面活性剤が好ましい。
非イオン性界面活性剤を含むことにより、前記感光性樹脂組成物を基材上に塗布して樹脂膜を得る際の塗布性が良好となり、均一な厚みの塗布膜を得ることができる。また、塗布膜を現像する際の残渣やパターン浮き上がりを防止することができる。
非イオン性界面活性剤は、たとえばフッ素基(たとえば、フッ素化アルキル基)もしくはシラノール基を含む化合物、またはシロキサン結合を主骨格とする化合物である。本実施形態においては、非イオン性界面活性剤として、フッ素系界面活性剤またはシリコーン系界面活性剤を含むものを用いることがより好ましく、フッ素系界面活性剤を用いることがとくに好ましい。フッ素系界面活性剤としては例えば、DIC(株)製のメガファックF-171、F-173、F-444、F-470、F-471、F-475、F-482、F-477、F-554、F-556、およびF-557、住友スリーエム(株)製のノベックFC4430、及びFC4432等が挙げられるが、これらに限定されない。
界面活性剤を使用する場合の界面活性剤の配合量としては、樹脂100質量部に対して、0.01~10重量%が好ましい。
(溶剤)
感光性樹脂組成物は、典型的には、溶剤を含むことができる。溶剤としては有機溶剤が好ましく用いられる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1種または2種以上を用いることができる。
溶剤の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン(NMP)、メチル-n-アミルケトン(MAK)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、またはこれらの混合物を挙げることができる。
溶剤の使用量は特に限定されないが、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
(遮光剤)
本実施形態の樹脂組成物は、遮光剤を含むことができる。感光性樹脂組成物は遮光剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
感光性樹脂組成物が遮光剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、遮光性能と遮光剤の分散安定性との両立などから、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤を除く成分)全体に対して、好ましくは3~70質量%であり、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
(架橋剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、架橋剤を含むことができる。
架橋剤は、光重合開始剤から発生する活性化学種の作用によりポリマーを架橋可能なもの(ポリマーと化学結合することができるもの)であれば、特に限定されない。
架橋剤は、ポリマーとのみ化学結合するのではなく、架橋剤同士で反応して結合形成してもよい。
架橋剤は、例えば、一分子中に2以上の重合性二重結合を有する多官能化合物が好ましく、一分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル化合物であることがより好ましい(ただし、架橋剤は、前述のポリマーには該当しない)。ポリマーが有する架橋性基(重合性二重結合)と同種の架橋性基を有する架橋剤を用いることが、均一な硬化性、感度の更なる向上などの点で好ましい。
架橋剤一分子あたりの官能数(重合性二重結合の数)の上限は特にないが、例えば8以下、好ましくは6以下である。
架橋剤として具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、多官能(メタ)アクリレート類;
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の、多官能ビニルエーテル類;
(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等の、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の、多官能アリルエーテル類;
(メタ)アクリル酸アリル等の、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;
トリアリルイソシアヌレート等の、多官能アリル基含有イソシアヌレート類;
トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;
ジビニルベンゼン等の、多官能芳香族ビニル類;
等を挙げることができる。
なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の六官能(メタ)アクリレートが好ましい。
感光性樹脂組成物が架橋剤を含む場合、感光性樹脂組成物は架橋剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。感光性樹脂組成物が架橋剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよい。一例として、架橋剤の量は、感光性樹脂100質量部に対して通常30~70質量部、好ましくは40~60質量部程度とすることができる。
(その他の添加剤)
感光性樹脂組成物は、各種目的や要求特性に応じて、フィラー、上述のポリマー以外のバインダー樹脂、酸発生剤、耐熱向上剤、現像助剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤、シランカップリング剤、多価フェノール化合物等の成分を含んでもよい。
[用途]
上述の感光性樹脂組成物を用いて膜形成し、その膜を露光・現像してパターンを形成することにより、パターン付フィルムを得ることができる。このフィルムは、カラーフィルタやブラックマトリクスなどに適用される。つまり、着色剤を含む感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成することで、カラーフィルタを得ることができる。また、遮光剤を含む感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成することで、ブラックマトリックスを得ることができる。そして、カラーフィルタやブラックマトリクスを備える液晶表示装置や固体撮像素子を製造することができる。
パターンを形成する典型的な手順を説明する。
(感光性樹脂膜の形成)
例えば、上記の感光性樹脂組成物を、任意の基板上に塗布し、必要に応じて乾燥させることで、まず、感光性樹脂膜を得る。
組成物を塗布する基板は特に限定されない。例えば、ガラス基板、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板、SiCウエハー、GaNウエハー、銅張積層板などが挙げられる。
基板は、未加工の基板であっても、電極や素子が表面に形成された基板であってもよい。接着性の向上のために表面処理さていてもよい。
感光性樹脂組成物の塗布方法は特に限定されない。スピナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング、インクジェット法などにより行うことができる。
基板上に塗布した感光性樹脂組成物の乾燥は、典型的にはホットプレート、熱風、オーブン等で加熱処理することで行われる。加熱温度は、通常80~140℃、好ましくは90~120℃である。また、加熱の時間は、通常30~600秒、好ましくは30~300秒程度である。
感光性樹脂膜の膜厚は、特に限定されず、最終的に得ようとするパターンに応じて適宜調整すればよいが、通常0.5~10μm、好ましくは1~5μmである。なお、膜厚は、感光性樹脂組成物中の溶剤の含有量や塗布方法などにより調整可能である。
(露光)
露光は、典型的には、適当なフォトマスクを介して活性光線を感光性樹脂膜に当てることで行う。
活性光線としては、例えばX線、電子線、紫外線、可視光線などが挙げられる。波長でいうと200~500nmの光が好ましい。パターンの解像度や取り扱い性の点で、光源は水銀ランプのg線、h線又はi線であることが好ましく、特にi線が好ましい。また、2つ以上の光線を混合して用いてもよい。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション又はステッパ-が好ましい。
露光の光量は、感光性樹脂膜中の感光剤の量などにより適宜調整すればよいが、例えば100~500mJ/cm程度である。
なお、露光後、必要に応じて、感光性樹脂膜を再度加熱してもよい(露光後加熱:Post Exposure Bake)。その温度は、例えば70~150℃、好ましくは90~120℃である。また、時間は、例えば30~600秒、好ましくは30~300秒である。露光後加熱をすることで、光ラジカル重合開始剤から発生したラジカルによる反応が促進され、硬化反応が一層促される。
(現像)
露光された感光性樹脂膜を、適当な現像液により現像することで、パターンを得ること、また、パターンを備えた基板を製造することができる。
本実施形態のポリマー溶液を含む感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜は、基板への密着性に優れることから、現像工程においてパターンの剥離が抑制される。
現像工程においては、適当な現像液を用いて、例えば浸漬法、パドル法、回転スプレー法などの方法を用いて現像を行うことができる。現像により、感光性樹脂膜の露光部(ポジ型の場合)又は未露光部(ネガ型の場合)が溶出除去され、パターンが得られる。
使用可能な現像液は特に限定されない。例えば、アルカリ水溶液や有機溶剤が使用可能である。
アルカリ水溶液として具体的には、(i)水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ水溶液、(ii)エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン水溶液、(iii)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩の水溶液などが挙げられる。
本実施形態のポリマーは、アルカリ溶解性が調整され、感度に優れることから、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)溶液等の強塩基性現像液を用いる場合において、露光、現像後のパターンを設計通りの形状とすることができる。
有機溶剤として具体的には、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)や酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、等が挙げられる。
現像液には、例えばメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や、界面活性剤などが添加されていてもよい。
本実施形態においては、現像液としてアルカリ水溶液を用いることが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。
アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは0.01~10質量%であり、更に好ましくは0.5~5質量%である。
以上の工程により、パターンを得ること/パターンを備えた基板を製造することができるが、現像の後、様々な処理を行ってもよい。
例えば、現像の後、リンス液によりパターンおよび基板を洗浄してもよい。リンス液としては、例えば蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、得られたパターンを加熱して十分に硬化させるようにしてもよい。加熱温度は、典型的には150~400℃、好ましくは160~300℃、より好ましくは200~250℃である。加熱時間は特に限定されないが、例えば15~300分の範囲内である。この加熱処理は、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンなどにより行うことが出来る。加熱処理を行う際の雰囲気気体としては、空気であっても、窒素、アルゴンなどの不活性ガスであってもよい。また、減圧下で加熱してもよい。
カラーフィルタおよび/またはブラックマトリクスを備える、液晶表示装置および/または固体撮像素子の構造の一例について、図1に模式的に示す。
基板10上には、ブラックマトリクス11とカラーフィルタ12が形成されている。また、このブラックマトリクス11とカラーフィルタ12の上部に保護膜13および透明電極層14が設けられている。
基板10は、通常、光を通過する材料により構成されるものであり、たとえば、ガラスの他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、環状オレフィンの重合体などにより構成される。基板10は、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、薬液処理等が施されたものであってもよい。
基板10は、好ましくはガラスより構成される。
ブラックマトリクス11は、たとえば、遮光剤を含む感光性樹脂組成物の硬化物によって構成される。
カラーフィルタ12としては、通常、赤、緑、青の三色が存在する。カラーフィルタ12は、各色に応じた着色剤を含む感光性樹脂組成物の硬化物により構成される。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下に、本発明のさらなる実施形態の例を付記する。
[1] 下記式(NBm)で表されるモノマーと、下記式(MIm)で表されるモノマーと、下記式(MAm)で表されるモノマーとを含むモノマー組成物を、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物の存在下で重合させて原料ポリマーを調製する工程と、
前記原料ポリマーを、塩基性触媒の存在下で、ヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と反応させて、第一のポリマー前駆体を得る工程と、
前記第一のポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させてポリマーを得る工程と、を含む、ポリマーの製造方法であって、
Figure 2023031219000069
式(NBm)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、aは0、1または2であり、
Figure 2023031219000070
式(MIm)中、R11は、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基であり、
Figure 2023031219000071
式(MAm)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である、
ポリマーの製造方法。
[2] 項目[1]に記載のポリマーの製造方法であって、
第一のポリマー前駆体を得る前記工程が、前記原料ポリマーを、塩基性触媒の存在下で、ヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、およびヒドロキシル基および1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物と反応させる工程を含む、ポリマーの製造方法。
[3] 下記式(NBm)で表されるモノマーと、下記式(MIm)で表されるモノマーと、下記式(MAm)で表されるモノマーとを含むモノマー組成物を、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物の存在下で重合させて原料ポリマーを調製する工程と、
前記原料ポリマーを、塩基性触媒の存在下で、ヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と反応させて、第一のポリマー前駆体を得る工程と、
前記第一のポリマー前駆体を、触媒の存在下、水で処理することにより、第二のポリマー前駆体を得る工程と、
前記第二のポリマー前駆体を、触媒の存在下、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物と反応させてポリマーを得る工程と、を含む、ポリマーの製造方法であって、
Figure 2023031219000072
式(NBm)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、aは0、1または2であり、
Figure 2023031219000073
式(MIm)中、R11は、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基であり、
Figure 2023031219000074
式(MAm)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である、
ポリマーの製造方法。
[4] 項目[3]に記載のポリマーの製造方法であって、
第一のポリマー前駆体を得る前記工程が、前記原料ポリマーを、塩基性触媒の存在下で、ヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、およびヒドロキシル基および1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物と反応させる工程を含む、ポリマーの製造方法。
[5] 項目[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリマーの製造方法であって、
前記単官能または2官能以上のチオール基含有化合物が、式(s-1)~式(s-21)から選択される少なくとも1つの化合物である、ポリマーの製造方法。
Figure 2023031219000075
[6] 前記ポリマーの重量平均分子量が2,000以上80,000以下である、項目[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
[7] 項目[1]乃至[6]のいずれかに記載のポリマーの製造方法により得られたポリマーを含む、ポリマー溶液。
[8] 項目[7]に記載のポリマー溶液であって、
多官能(メタ)アクリル化合物もしくは単官能(メタ)アクリル化合物、またはこれらの組み合わせをさらに含む、ポリマー溶液。
[9] 項目[7]または[8]に記載のポリマー溶液であって、
カラーフィルタまたはブラックマトリクスの形成に用いられる、ポリマー溶液。
[10] [1]乃至[6]のいずれかに記載のポリマーの製造方法により得られたポリマーと、
光ラジカル重合開始剤と、を含む、
感光性樹脂組成物。
[11] 項目[10]に記載の感光性樹脂組成物より形成される、硬化物。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例中の使用化合物については、以下の略号または商品名で示す場合がある。
・MA:無水マレイン酸
・NB:2-ノルボルネン
・PhMI:N-フェニルマレイミド
・CyHMI:N-シクロヘキシルマレイミド
・HMI:マレイミド
・MEK:メチルエチルケトン
・PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
・4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・GMA:メタクリル酸グリシジル
・A-TMM-3LM-N:以下2種の化合物の混合物、ガスクロマトグラフ測定に基づく混合物中の左の化合物の量は約57%(新中村化学工業株式会社製)
Figure 2023031219000076
<原料ポリマーの合成>
(原料ポリマー1の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸353.02g(3.6モル)と、2-ノルボルネン338.94g(3.6モル)と、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)41.45g(0.180モル)とを計量して入れた。これらを、メチルエチルケトン578.98gおよびトルエン113.0gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、30分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度63℃で9.5時間加熱することで、無水マレイン酸と、2-ノルボルネンとを重合させ、重合溶液を作製した。
上記で得られた重合溶液をメチルエチルケトン712.92gで希釈した後、メタノール8519.9gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー1)550.4gを得た。
得られたポリマーをGPC測定した結果、重量平均分子量Mwは11,600であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.79であった。
(原料ポリマー2の合成)
撹拌機および冷却管および滴下漏斗を備えた反応容器内に、2-ノルボルネンの75%トルエン溶液602.56g(NB換算451.92g、4.8モル)、無水マレイン酸(MA、470.69g、4.8モル)およびメチルエチルケトン(MEK)2238.50gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温が80℃に到達したところで、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、44.21g、0.19モル)およびペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PEMP、140.73g、0.29モル)をMEK189.74gに溶解させた溶液を1時間かけて添加した。その後、さらに80℃で7時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。上記で得られた重合溶液を、メタノール3686.4gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール3686.4gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー8)908.1gを得た。
得られたポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは2700であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.57であった。
(原料ポリマー2に含まれるチオエーテル構造の確認)
以下の化学式で示されるPEMP単体の13C-NMR測定により、炭素a由来のピークaが19.0ppm付近に、炭素b由来のピークbが62.0ppm付近に確認された。
Figure 2023031219000077
PEMPを使用して合成した原料ポリマー2の13C-NMR測定において、62.0ppm付近に、炭素b由来のピークbの出現を確認した。反応溶液のGPC測定で、PEMP単体のピークが認められず、未反応のPEMPが残っていないことから、PEMPが原料ポリマー2中に取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー2の13C-NMR測定では、炭素a由来のピークaが確認されず、代わりに28ppm付近にチオエーテル(R-S-R')に対応するピークcが出現した。このピークcの積分値はピークbの積分値のおよそ2倍になっていることから、原料ポリマー2は下記のようなチオエーテル基を有する骨格を備えており、チオール基は消失していた。
Figure 2023031219000078
13C-NMR測定の条件は以下の通りである。
(試験条件)測定サンプルは、秤量した試料に測定溶媒を加えて濃度調製した後、NMR測定用試料管に規定分量注いで作製した。
・測定装置:日本電子JNM-ECA400超伝導FT-NMR装置
・共鳴周波数:100.53MHz
・測定核:13
・測定法:NNE測定(インバースゲートデカップリング法)
・パルス幅:3.83μsec
・パルス繰り返し待ち時間:30s
・積算回数:4096回
・測定温度:室温
・測定溶媒:DMSO-d(重水素化ジメチルスルホキシド)
・試料濃度:20%(w/v)
得られたポリマー中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、ポリマー中に硫黄元素が存在していることを確認した。またメタノール滴下前の反応溶液のGPC測定においてもPEMP由来のピークが消失しており、原料ポリマー2中にPEMPが取り込まれたことを確認した。
(原料ポリマー3の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸90.22g(0.920モル)と、2-ノルボルネンの75%トルエン溶液144.36g(2-ノルボルネン換算108.27g、1.150モル)、N-フェニルマレイミド39.83g(0.230モル)とを計量して入れた。これらを、メチルエチルケトン178.40gに溶解させ、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、30分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、加温し、内温が80℃に到達したところで、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、10.59g、0.046モル)をMEK132.39gに溶解させた溶液を1時間かけて添加した。その後、さらに80℃で7時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却することで、無水マレイン酸と、2-ノルボルネンと、N-フェニルマレイミドとを重合させ、重合溶液を作製した。
上記で得られた重合溶液を、メタノール2607.05gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール651.7gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、N-フェニルマレイミドに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー3)200.1gを得た。
得られた原料ポリマー3をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは7,200であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は2.07であった。
(原料ポリマー4の合成)
撹拌機および冷却管および滴下漏斗を備えた反応容器内に、2-ノルボルネンの75%トルエン溶液144.36g(2-ノルボルネン換算108.27g、1.150モル)、無水マレイン酸(MAN)90.22g(0.920モル)、N-フェニルマレイミド39.83g(0.230モル)、メチルエチルケトン(MEK)122.77gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温が80℃に到達したところで、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、10.59g、0.046モル)およびPEMP(22.48g、0.046モル)をMEK91.11gに溶解させた溶液を1時間かけて添加した。その後、さらに80℃で7時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。上記で得られた重合溶液を、メタノール2457.3gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール614.3gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、N-フェニルマレイミドに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー4)209.9gを得た。
得られたポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは3,700であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は2.74であった。原料ポリマー4について、13C-NMRにより算出した原料ポリマー中に実際に導入された各モノマー由来の構造の比率はノルボルネン::N-フェニルマレイミド:無水マレイン酸=52.0%:11.6%:36.4%であり、原料ポリマー中に実際に導入されたPEMP量は各モノマーの合計量に対し、2.3モル%であった。
得られた原料ポリマー4中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、原料ポリマー4中に硫黄元素が存在していることを確認した。またメタノール滴下前の反応溶液のGPC測定においてもPEMP由来のピークが消失しており、ポリマー中にPEMPが取り込まれたことを確認した。
(原料ポリマー4の構造の確認)
原料ポリマー4における、PEMP由来の構造単位、N-フェニルマレイミド(PhMI)由来の構造単位(式(MI)の構造単位)、無水マレイン酸由来の構造単位(式(MA)の構造単位)、およびノルボルネン由来の構造(式(NB)の構造単位)の量(モル分率、モル%)を、13C-NMRの積分値解析により算出した。13C-NMRチャートは図2に示す。
13C-NMRチャートの化学シフトを、以下のとおり各構造単位に帰属し、対応する積分値を測定した。
・PEMPのk(4C):62.0~64.0ppm
・PhMI芳香環(6C):126.0~134.0ppm
・無水マレイン酸エステル(2C)+PEMPのg(4C):170.0~174.7ppm
・マレイン酸エステル(2C)(無水マレイン酸が開環した構造):174.7~178.0ppm
・アルキル鎖:20~60ppm
・DMSO:40ppm付近
・ノルボルネン(7C)=アルキル鎖-DMSO-PEMP(9C、h+i+j)-無水マレイン酸(2C)-マレイン酸(2C)-PhMI(2C)
ここで原料ポリマー中に実際に導入された無水マレイン酸由来の構造比率は、式(MA)の構造単位に加え、無水マレイン酸が開環したマレイン酸の構造も含めて、算出した。
(原料ポリマー5の合成)
無水マレイン酸の量を67.67g(0.690モル)、N-フェニルマレイミドの量を79.66g(0.460モル)、PEMPの量を11.24g(0.023モル)にした以外は原料ポリマー4と同様にして2-ノルボルネンに由来する構造単位と、N-フェニルマレイミドに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー5)118.0gを得た。得られた原料ポリマー5をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは5,300であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.76であった。
得られた原料ポリマー5中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、原料ポリマー5中に硫黄元素が存在していることを確認した。またメタノール滴下前の反応溶液のGPC測定においてもPEMP由来のピークが消失しており、原料ポリマー5中にPEMPが取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー5の13C-NMR測定により、PEMPが原料ポリマー5中に取り込まれたことを確認した。
(原料ポリマー6の合成)
N-フェニルマレイミド39.83g(0.230モル)をN-シクロヘキシルマレイミド41.22g(0.230モル)に変えた以外は原料ポリマー4と同様にして2-ノルボルネンに由来する構造単位と、N-シクロヘキシルマレイミドに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー6)226.1gを得た。
得られたポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは4,300であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.79であった。原料ポリマー6について、13C-NMRにより算出した原料ポリマー中に実際に導入された各モノマー由来の構造の比率はノルボルネン::N-シクロヘキシルマレイミド:無水マレイン酸=48.8%:6.2%:45%であり、原料ポリマー中に実際に導入されたPEMP量は各モノマーの合計量に対し、2.2モル%であった。
得られた原料ポリマー6中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、原料ポリマー6中に硫黄元素が存在していることを確認した。またメタノール滴下前の反応溶液のGPC測定においてもPEMP由来のピークが消失しており、ポリマー中にPEMPが取り込まれたことを確認した。
(原料ポリマー6の構造の確認)
原料ポリマー6における、PEMP由来の構造単位、N-シクロヘキシルマレイミド(CyHMI)由来の構造単位(式(MI)の構造単位)、無水マレイン酸由来の構造単位(式(MA)の構造単位)、およびノルボルネン由来の構造(式(NB)の構造単位)の量(モル分率、モル%)を、13C-NMRの積分値解析により算出した。13C-NMRチャートは図3に示す。
13C-NMRチャートの化学シフトを、以下のとおり各構造単位に帰属し、対応する積分値を測定した。
・PEMPのk(4C):62.0~64.0ppm
・無水マレイン酸エステル(2C)+PEMPのg(4C):170.0~174.7ppm
・マレイン酸エステル(2C)(無水マレイン酸が開環した構造):174.7~178.0ppm
・CyHMIエステル(2C):178.0~180.0ppm
・アルキル鎖:20~60ppm
・DMSO:40ppm付近
・ノルボルネン(7C)=アルキル鎖-DMSO-PEMP(9C、h+i+j)-無水マレイン酸(2C)-マレイン酸(2C)-CyHMI(2C)
ここで原料ポリマー中に実際に導入された無水マレイン酸由来の構造比率は、式(MA)の構造単位に加え、無水マレイン酸が開環したマレイン酸の構造も含めて、算出した。
(原料ポリマー7の合成)
撹拌機および冷却管および滴下漏斗を備えた反応容器内に、2-ノルボルネンの75%トルエン溶液144.36g(2-ノルボルネン換算108.27g、1.150モル)、無水マレイン酸(MAN、90.22g(0.920モル)、マレイミド(HMI)22.33g(0.230モル)、メチルエチルケトン(MEK)204.95gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温が80℃に到達したところで、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、10.59g、0.046モル)およびPEMP(22.48g、0.046モル)をMEK108.96gに溶解させた溶液を1時間かけて添加した。その後、さらに80℃で7時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。上記で得られた重合溶液を、メタノール2457.3gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール614.3gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、マレイミドに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー7)190.2gを得た。
得られたポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは3,600であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.62であった。
[原料ポリマー7の構造解析]
原料ポリマー7の合成は、反応開始時においては、溶剤中にモノマーおよびPEMPが溶解した状態でスタートし、その後、反応が進行してポリマーが生成する。反応溶液および得られたポリマーのそれぞれについて分析したところ、以下の結果が得られた。
(a)反応溶液の分析
再沈殿精製前の反応溶液のGPC測定で、PEMP単体のピークが認められなかった。すなわち、反応溶液中にPEMPが残存していないことが確認された。また、再沈殿精製前の反応溶液のGC(ガスクロマトグラフィー)測定で、反応前と比べ、反応後の反応溶液中のノルボルネン単体、マレイミド単体、無水マレイン酸単体のピークが減少しており、ノルボルネン単体、マレイミドおよび無水マレイン酸が反応し、ポリマーを形成していることが確認された。
(b)ポリマーの分析
再沈殿精製後のポリマーのGPC測定で、PEMP単体、ノルボルネン単体、マレイミド単体、無水マレイン酸単体のピークが認められなかった。すなわち、ポリマー中にPEMP、ノルボルネン単体、マレイミド単体および無水マレイン酸単体が残存していないことが確認された。
得られた原料ポリマー7中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、原料ポリマー7中に硫黄元素が存在していることを確認した。またメタノール滴下前の反応溶液のGPC測定においてもPEMP由来のピークが消失しており、ポリマー中にPEMPが取り込まれたことを確認した。
(原料ポリマー8の合成)
撹拌機および冷却管および滴下漏斗を備えた反応容器内に、2-ノルボルネンの75%トルエン溶液144.36g(2-ノルボルネン換算108.27g、1.150モル)、無水マレイン酸(MAN)101.49g(1.035モル)、N-フェニルマレイミド19.91g(0.115モル)、メチルエチルケトン(MEK)501.04gを加え、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去したのち、加温し、内温が80℃に到達したところで、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬工業製,商品名:V-601、10.59g、0.046モル)およびPEMP(22.48g、0.046モル)をMEK117.53gに溶解させた溶液を1時間かけて添加した。その後、さらに80℃で7時間反応させた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。上記で得られた重合溶液を、メタノール2457.3gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール614.3gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、N-フェニルマレイミドに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー8)125.0gを得た。得られた原料ポリマー8をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは3,000であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.86であった。
得られた原料ポリマー8中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、原料ポリマー8中に硫黄元素が存在していることを確認した。またメタノール滴下前の反応溶液のGPC測定においてもPEMP由来のピークが消失しており、原料ポリマー8中にPEMPが取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー8の13C-NMR測定により、PEMPが原料ポリマー8中に取り込まれたことを確認した。
(原料ポリマー9の合成)
無水マレイン酸の量を107.14g(1.093モル)、N-フェニルマレイミドの量を9.96g(0.058モル)にした以外は原料ポリマー8と同様にして、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、N-フェニルマレイミドに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー9)133.0gを得た。得られた原料ポリマー9をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは2,900であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.79であった。
得られた原料ポリマー9中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、原料ポリマー9中に硫黄元素が存在していることを確認した。またメタノール滴下前の反応溶液のGPC測定においてもPEMP由来のピークが消失しており、原料ポリマー9中にPEMPが取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー9の13C-NMR測定により、PEMPが原料ポリマー9中に取り込まれたことを確認した。
(原料ポリマー10の合成)
無水マレイン酸の量を107.13g(1.093モル)、N-フェニルマレイミドをN-シクロヘキシルマレイミド(CyHMI)10.31g(0.058モル)にした以外は原料ポリマー8と同様にして、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、N-フェニルマレイミドに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー10)145.1gを得た。得られた原料ポリマー10をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは3,000であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.96であった。
得られた原料ポリマー10中の硫黄量を、フラスコ燃焼、イオンクロマト法による元素分析により確認し、原料ポリマー10中に硫黄元素が存在していることを確認した。またメタノール滴下前の反応溶液のGPC測定においてもPEMP由来のピークが消失しており、原料ポリマー10中にPEMPが取り込まれたことを確認した。
また、原料ポリマー10の13C-NMR測定により、PEMPが原料ポリマー10中に取り込まれたことを確認した。
原料ポリマー3~10について、ガスクロマトグラフィー(GC)測定により、反応前後での反応溶液中の各モノマー量を測定し、各モノマーの消費量を算出することで、原料ポリマー中に導入された各モノマーの比率を算出した。
以下の表1に、原料ポリマーの合成に使用したモノマーの仕込み比率、GC測定により算出した原料ポリマー中に導入されたモノマーの比率、原料ポリマーの重量平均分子量(Mw)および他分散度(Mw/Mn)を示す。
ガスクロマトグラフィー測定の測定条件は下記の通りである。
・GC装置:GC-2030(株式会社島津製作所)
・キャリアガス:N
・検出器:水素炎イオン化(FID)検出器 、FID温度:300℃
・カラム:SH-RXi-1HT、内径0.25、長さ30m、膜厚0.25μm(株式会社島津ジーエルシー)
・気化室温度:210℃
・カラム流量:0.64mL/min
・カラム昇温条件:50℃5minホールド、20℃/minで300℃まで昇温、300℃10minホールド
Figure 2023031219000079
<ポリマーPの合成>
以下の方法を用いて、ポリマーPを作製した。
(調製例1)
原料ポリマー1のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環したポリマーP1を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 60g(原料ポリマー1の仕込み量から算出でMA換算0.312モル)に対して、MEK 100.30gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
相を除去した。その後、以下手順の再沈殿法を用いてポリマーを精製した。
(再沈殿法)
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー1中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環したポリマーP1を得た。
ポリマーP1のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP1には、未反応の(メタ)アクリル化合物も、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。
H-NMR測定により、ポリマーP1が、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環された構造を有することを確認した。
(調製例2)
原料ポリマー1のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させてポリマーP2を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 60g(原料ポリマー1の仕込み量から算出でMA換算0.312モル)に対して、MEK 100.80gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 13.50g(0.094モル)を加え、温度70℃で4時間反応させた。さらにその後、GMA 13.31g(0.094モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、調製例1と同様の再沈殿法を用いてポリマーを精製した。
以上により、原料ポリマー1中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環し、GMAと反応させたポリマーP2を得た。
ポリマーP2のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP2には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のいずれもが含まれないことを確認した。
また開環反応前後、及びGMA付加反応の前後での反応溶液のGPC測定において、開環前後で3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)由来のピークが減少し、GMA付加反応前後でGMA由来のピークが減少したことからも、A-TMM-3LM-N、及びGMAがポリマー中に導入されたことを確認した。
(調製例3)
原料ポリマー1のMA単位を、単官能(メタ)アクリル化合物(HEMA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて、ポリマーP3を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 60g(原料ポリマー1の仕込み量から算出でMA換算0.312モル)に対して、MEK 111.43gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、HEMA 25.38g(0.195モル)を加え、その後、トリエチルアミン6.00g(0.059モル)を加え、温度70℃で6時間反応させた。さらにその後、GMA 13.31g(0.094モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、調製例1と同様の再沈殿法を用いてポリマーを精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、HEMAで開環し、GMAと反応させたポリマーP3を得た。
ポリマーP3のGPC測定により、使用した単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP3には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のいずれもが含まれないことを確認した。
(調製例4)
原料ポリマー2のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて、ポリマーP4を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー2 60g(原料ポリマー2の仕込み量から算出でMA換算0.312モル)に対して、MEK 100.14gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、温度70℃で4時間反応させた。さらにその後、GMA 26.62g(0.187モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、調製例1と同様の再沈殿法を用いてポリマーを精製した。
以上により、原料ポリマー2中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環し、GMAと反応させたポリマーP4を得た。
ポリマーP4のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP4には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のいずれもが含まれないことを確認した。
(調製例5)
原料ポリマー3のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて、ポリマーP5を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー3 60g(原料ポリマー3の仕込み量から算出でMA換算0.232モル)に対して、MEK 102.63gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 27.01g(0.187モル)を加え、温度70℃で4時間反応させた。さらにその後、GMA 13.31g(0.094モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、調製例1と同様の再沈殿法を用いてポリマーを精製した。
以上により、原料ポリマー3中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環し、GMAと反応させたポリマーP5を得た。
ポリマーP5のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP5には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のいずれもが含まれないことを確認した。
(調製例6)
原料ポリマー3のMA単位を、単官能(メタ)アクリル化合物(HEMA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて、ポリマーP6を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー3 60g(原料ポリマー3の仕込み量から算出でMA換算0.232モル)に対して、MEK 111.43gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、HEMA 25.38g(0.195モル)を加え、その後、トリエチルアミン6.00g(0.059モル)を加え、温度70℃で6時間反応させた。さらにその後、GMA 13.31g(0.094モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、調製例1と同様の再沈殿法を用いてポリマーを精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、HEMAで開環し、GMAと反応させたポリマーP6を得た。
ポリマーP6のGPC測定により、使用した単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP6には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のいずれもが含まれないことを確認した。
(調製例7)
原料ポリマー3のMA単位を、単官能(メタ)アクリル化合物で開環したポリマーP7を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー3 10.00g(原料ポリマー3の仕込み量から算出でMA換算0.039モル)に対して、MEK 18.44gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、4-HBA 9.38g(0.065モル)を加え、その後、トリエチルアミン3.00g(0.030モル)を加え、温度70℃で6時間反応させ、反応溶液を作製した。
得られた反応溶液をMEKで希釈し、クエン酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、調製例1と同様の再沈殿法を用いてポリマーを精製した。
以上により、原料ポリマー3中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、4-HBAで開環した、ポリマーP7を8.7g得た。
またポリマーP7のGPC測定により、使用した単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP7には、未反応の単官能(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
(調製例8)
原料ポリマー3の代わりに、原料ポリマー4 10.00g(原料ポリマー4の仕込み量から算出でMA換算モル0.039モル)を用いた以外は調製例7と同様にして、原料ポリマー4のMA単位を、単官能(メタ)アクリル化合物で開環したポリマーP8を作製した。
またポリマーP8のGPC測定により、使用した単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP8には、未反応の単官能(メタ)アクリル化合物を含まれないことを確認した。
(調製例9)
原料ポリマー4のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物、単官能(メタ)アクリル化合物および水で開環したポリマーP9を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー4 60.00g(原料ポリマー4の仕込み量から算出でMA換算0.232モル)に対して、MEK 99.93gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 77.49gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
次いで、得られた反応溶液を後処理することなく、この反応溶液に水3.00g(0.167モル)を添加し、70℃で2時間反応させた。
得られた反応溶液をMEKで希釈し、クエン酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。さらに液液抽出、続いて溶媒置換を以下の手順で行った。
・液液抽出:反応溶液をMEKで希釈し、次いで水を加え、処理することで、反応溶液から水相を除去した後、さらに同様の操作を1回行った。
・溶媒置換:得られた反応混合物をロータリーエバポレーターにより、減圧下、50℃で溶媒の除去を行った。ポリマー溶液の固形分濃度が加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%になったのを確認し、溶媒除去の操作を中断した。その後、固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合した。同様の操作で減圧下、50℃で溶媒の除去を行い、固形分濃度を加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%に調製後、さらに固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合する操作をさらに2回繰り返した。その後、固形分濃度が30±3質量%になるように溶媒除去、もしくはPGMEAを加え、均一になるまで攪拌する操作を行った。以上の操作で反応に使用した溶媒が除去され、溶媒がPGMEAに置換される。その後、調製例1と同様の再沈殿法を用いてポリマーをさらに精製した。
以上により、原料ポリマー4中の無水マレイン酸由来の構造単位を、3官能(メタ)アクリル化合物、単官能(メタ)アクリル化合物および水で開環したポリマーP9を作製した。
またポリマーP9のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物、及び単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP9には、未反応の多官能(メタ)アクリル化合物も単官能(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。
また13C-NMR測定により、ポリマーP9が無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-N、4-HBAおよび水で開環した構造を有することを確認した。
(調製例10)
原料ポリマー4のMA単位を、単官能(メタ)アクリル化合物(HEMA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて、ポリマーP10を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー4 60g(原料ポリマー4の仕込み量から算出でMA換算0.232モル)に対して、MEK 252.42gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、 4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で6時間反応させた。さらにその後、GMA 13.31g(0.094モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、調製例1と同様の再沈殿法を用いてポリマーを精製した。
以上により、原料ポリマー4中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、4-HBAで開環し、GMAと反応させたポリマーP10を得た。
ポリマーP10のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP10には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のいずれもが含まれないことを確認した。
(調製例11)
原料ポリマー3の代わりに、原料ポリマー4 60g(原料ポリマー4の仕込み量から算出でMA換算0.232モル)を用いた以外は、調製例5と同様にして、原料ポリマー4中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環し、GMAと反応させたポリマーP11を得た。
ポリマーP11のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP11には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のいずれもが含まれないことを確認した。
図4にポリマーP11のH-NMRチャートを示す。図4のポリマーP11のH-NMRチャートに示されている5.8-6.7ppmのアクリロイル基(-CH=CH)の3Hに対応するピークに加え、×で示されている5.6-5.8ppm、及び6.0-6.1ppmにメタクリロイル基(-C(CH)=CHの2H(-C(CH)=CHのCH)に対応するピークが出現した。ポリマーP11のGPC測定において、未反応の3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)のピークが見られないことから、ポリマー中にアクリロイル基、及びGMA由来のメタクリロイル基が導入されたことがわかる。
また開環反応前後、及びGMA付加反応の前後での反応溶液のGPC測定において、開環前後で3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)由来のピークが減少し、GMA付加反応前後でGMA由来のピークが減少したことからも、A-TMM-3LM-N、及びGMAがポリマー中に導入されたことがわかる。
(調製例12)
原料ポリマー5のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて、ポリマーP12を作製した。
詳細には、原料ポリマー4の代わりに原料ポリマー5 60g(原料ポリマー5の仕込み量から算出でMA換算0.162モル)を使用し、A-TMM-3LM-Nを38.75g、4-HBA56.27g(0.390モル)、GMA19.97g(0.140モル)を使用したこと以外は、調製例11と同様にして、原料ポリマー5中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-N、4-HBAおよび水で開環し、GMAと反応させた、ポリマーP12を得た。
ポリマーP12のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP12には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のいずれもが含まれないことを確認した。
(調製例13)
原料ポリマー6のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)で開環し、さらに水を添加して開環させ、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて得られたポリマーP13を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー6 60g(原料ポリマー6の仕込み量から算出でMA換算0.230モル)に対して、MEK 297.25gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、水 0.60g(0.033モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、GMA 26.62g(0.187モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、調製例1と同様の再沈殿法を用いてポリマーを精製した。
以上により、原料ポリマー6中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび水で開環し、GMAと反応させたポリマーP13を得た。
ポリマーP13のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP13には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
(調製例14)
調製例12で得られたポリマーP12 100質量部と、A-TMM-3LM-N 10質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分(ポリマーP12とA-TMM-3LM-Nの合計量)濃度30質量%のポリマー溶液P14を得た。得られたポリマー溶液P14をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で分析して、溶液中に含まれるポリマーP12、遊離多官能(メタ)アクリル化合物の量、ならびにポリマーP12の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表2に示す。
なお、遊離(メタ)アクリル化合物の量は、樹脂混合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおけるポリマーP12のピーク面積に対する、遊離(メタ)アクリル化合物のピーク面積の割合(%)として示す。
(調製例15)
調製例13で得られたポリマーP13 100質量部と、A-TMM-3LM-N 20質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分(ポリマーP13とA-TMM-3LM-Nの合計量)濃度30質量%のポリマー溶液P15を得た。得られたポリマー溶液P15をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で分析して、溶液中に含まれるポリマーP13、遊離多官能(メタ)アクリル化合物の量、ならびにポリマーP13の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表2に示す。
なお、遊離(メタ)アクリル化合物の量は、樹脂混合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおけるポリマーP13のピーク面積に対する、遊離(メタ)アクリル化合物のピーク面積の割合(%)として示す。
(調製例16)
原料ポリマー7のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)および単官能(メタ)アクリル化合物(4-HBA)で開環し、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させて、ポリマーP16を作製した。
詳細には、原料ポリマー4の代わりに原料ポリマー7 60g(原料ポリマー7の仕込み量から算出でMA換算0.250モル)を使用し、A-TMM-3LM-Nを77.49g、4-HBA13.50g(0.094モル)、GMA26.62g(0.187モル)を使用したこと以外は、調製例11と同様にして、原料ポリマー7中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-N、4-HBAで開環し、GMAと反応させた、ポリマーP16を得た。
ポリマーP16のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP16には、未反応の(メタ)アクリル化合物、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物、未反応のエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物のいずれもが含まれないことを確認した。
(調製例17)
原料ポリマー4のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)開環させ、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させ、その後、水で開環させて、ポリマーP17を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー4 60g(原料ポリマー4の仕込み量から算出でMA換算0.232モル)に対して、MEK 297.25gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。その後、GMA 19.97g(0.140モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液およびクエン酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。さらに液液抽出、続いて溶媒置換を以下の手順で行った。
・液液抽出:反応溶液をMEKで希釈し、次いで水/メタノール混合溶媒を加え、処理することで、反応溶液から水相を除去した後、さらに同様の操作を1回行った。
・溶媒置換:得られた反応混合物をロータリーエバポレーターにより、減圧下、50℃で溶媒の除去を行った。ポリマー溶液の固形分濃度が加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%になったのを確認し、溶媒除去の操作を中断した。その後、固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合した。同様の操作で減圧下、50℃で溶媒の除去を行い、固形分濃度を加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%に調製後、さらに固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合する操作をさらに2回繰り返した。その後、固形分濃度が30±3質量%になるように溶媒除去、もしくはPGMEAを加え、均一になるまで攪拌する操作を行った。以上の操作で反応に使用した溶媒が除去され、溶媒がPGMEAに置換される。次いで、このポリマー溶液に、ポリマー固形分に対し30質量%の水を添加し、70℃で24時間反応させ、水加水分解を実施した。反応後の溶液について、続いて溶媒置換を以下の手順で行った。
・溶媒置換:得られた反応混合物の固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合した。その後、ロータリーエバポレーターにより、減圧下、50℃で溶媒の除去を行った。ポリマー溶液の固形分濃度が加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%になったのを確認し、溶媒除去の操作を中断した。同様の操作で固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合し、その後減圧下、50℃で溶媒の除去を行い、固形分濃度を加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%に調製する操作をさらに2回繰り返した。その後、固形分濃度が30±3質量%になるように溶媒除去、もしくはPGMEAを加え、均一になるまで攪拌する操作を行った。以上の操作で反応に使用した水が除去され、溶媒がPGMEAに置換される。
以上により、原料ポリマー4中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nで開環し、GMAと反応させ、その後水で開環したポリマーP17と、残存(遊離)A-TMM-3LM-Nとを含むポリマー溶液P17を得た。
得られたポリマー溶液P17をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で分析して、溶液中に含まれるポリマーP17、遊離多官能(メタ)アクリル化合物の量、ならびにポリマーP17の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表2に示す。
なお、遊離(メタ)アクリル化合物の量は、樹脂混合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおけるポリマーP17のピーク面積に対する、遊離(メタ)アクリル化合物のピーク面積の割合(%)として示す。
(調製例18)
原料ポリマー4を、原料ポリマー8 60.00g(原料ポリマー8の仕込み量から算出でMA換算0.270モル)に代え、水加水分解工程の時間を70℃で12時間にしたこと以外は、調製例17と同様にして、原料ポリマー8のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)開環させ、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させ、その後、水で開環させて、ポリマーP18と、残存(遊離)A-TMM-3LM-Nを含むポリマー溶液18を作製した。
得られたポリマー溶液P18をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で分析して、溶液中に含まれるポリマーP18、遊離多官能(メタ)アクリル化合物の量、ならびにポリマーP18の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表2に示す。
なお、遊離(メタ)アクリル化合物の量は、樹脂混合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおけるポリマーP18のピーク面積に対する、遊離(メタ)アクリル化合物のピーク面積の割合(%)として示す。
(調製例19)
原料ポリマー4を、原料ポリマー9 60.00g(原料ポリマー9の仕込み量から算出でMA換算0.291モル)に代えたこと以外は、調製例18と同様にして、原料ポリマー9のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)開環させ、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させ、その後、水で開環させて、ポリマーP19と、残存(遊離)A-TMM-3LM-Nを含むポリマー溶液19を作製した。
得られたポリマー溶液P19をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で分析して、溶液中に含まれるポリマーP19、遊離多官能(メタ)アクリル化合物の量、ならびにポリマーP19の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表2に示す。
なお、遊離(メタ)アクリル化合物の量は、樹脂混合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおけるポリマーP19のピーク面積に対する、遊離(メタ)アクリル化合物のピーク面積の割合(%)として示す。
(調製例20)
原料ポリマー4を、原料ポリマー10 60.00g(原料ポリマー10の仕込み量でMA換算0.290モル)に代えたこと以外は、調製例18と同様にして、原料ポリマー10のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物(A-TMM-3LM-N)開環させ、次いでエポキシ基含有(メタ)アクリル化合物(GMA)と反応させ、その後、水で開環させて、ポリマーP20と、残存(遊離)A-TMM-3LM-Nを含むポリマー溶液20を作製した。
得られたポリマー溶液P20をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で分析して、溶液中に含まれるポリマーP20、遊離多官能(メタ)アクリル化合物の量、ならびにポリマーP20の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表2に示す。
なお、遊離(メタ)アクリル化合物の量は、樹脂混合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおけるポリマーP20のピーク面積に対する、遊離(メタ)アクリル化合物のピーク面積の割合(%)として示す。
(物性測定)
(分子量)
得られたポリマーP1~P13、P16、ポリマー溶液P14、P15、P17~P20について、GPC測定を実施して、ポリマーの重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表2に示す。
(酸価)
ポリマーの酸価は以下の方法で測定した。
ポリマー約50mg及び内部標準物質としてテレフタル酸ジメチル約5mgを計量し、DMSO-d6に溶解させた。この溶液について、核磁気共鳴分光装置JNM-AL300(JEOL社製)を用いてH-NMRの測定を行った。H-NMR測定内標準のテレフタル酸ジメチルのフェニル基の4Hのピーク(8.1ppm付近)の積分値を基準にして、ポリマーのカルボキシ基(-COOH)のHのピーク(12.4ppm付近)の積分値からカルボキシ基の量を求める。そして、その量から酸価(mgKOH/g)が算出できる。酸価の値が大きいほど、ポリマー単位質量あたりのカルボキシ基の量が多いことを表す。
結果を表2に示す。酸価が50gKOH/g以上であることにより、ポリマーが十分な現像性を有するために必要なカルボキシ基がポリマー中に存在するとみなすことができる。
(二重結合当量)
ポリマーの二重結合当量を以下の方法で測定した。
上記の酸価の測定方法と同様に、H-NMRの測定を行った。得られたスペクトルチャートのアクリロイル基に由来するシグナル(5.6-5.8ppm、3H)と内部標準物質のフェニル基のシグナル(8.1ppm、4H)の積分比から、ポリマー中のアクリロイル基量(mol/g)を算出し、メタクリロイル基に由来するシグナル(5.6-5.8ppm、2H)と内部標準物質のフェニル基のシグナル(8.1ppm、4H)の積分比から、ポリマー中のメタクリロイル基量(mol/g)を算出した。ここで、6.0-6.1ppmのメタクリロイル基に由来するシグナルについては微小であり、アクリロイル基のシグナルとも重複するため、アクリロイル基のシグナルとして計算した。算出したポリマー中のアクリロイル基量(mol/g)とメタクリロイル基(mol/g)の合計から二重結合量(mol/g)を算出し、二重結合量より、二重結合当量(g/mol)を算出した。
結果を表2に示す。二重結合当量の値が小さいほど、ポリマー単位質量あたりのC=C二重結合の量が多いことを表す。またH-NMRにより算出した各構造単位の無水マレイン酸に対する導入比率(モル)を表2に示す。
Figure 2023031219000080
(実施例1~10、比較例1~10)
各実施例および比較例において、樹脂組成物および感光性樹脂組成物を作製し、以下の項目について評価した。
[樹脂組成物のアルカリ溶解速度]
調製例1~13、16で得られた、ポリマーP1~P13、P16を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分濃度30質量%の樹脂組成物1~13、16を作製した。
次いで、ウエハー上に上記樹脂組成物1~13、16、または調製例14、15、17~20で得られたポリマー溶液P14、P15、P17~P20からなる樹脂組成物14、15をスピンコートし、PGMEAを乾燥させ、そして温度100℃で2分間プリベークすることで、膜厚約2μmの樹脂膜を作製した。
この樹脂膜を、ウエハーごと、温度23℃の2.38質量%TMAH水溶液に浸漬し、樹脂膜の溶解速度を測定した。
溶解速度は、浸漬したウエハーを目視で観察して樹脂膜が溶解して干渉模様が見えなくなるまでの時間を測定し、その時間で膜厚を割り算することで算出した。結果を表3に示す。アルカリ溶解速度が、30nm/s以上、350nm/s以下であれば問題なく使用可能であり、50nm/s以上、250nm/s以下であれば現像性が良好であるとみなすことができ、60nm/s以上、200nm/s以下であれば現像性がより良好であるとみなすことができ、70nm/s以上、170nm/s以下であれば特に良好であるとみなすことができる。
[感光性樹脂組成物の感度評価1(残膜率が90%以上となる露光量)]
まず、全固形分濃度が30質量%になるように、以下成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解した感光性樹脂組成物を得た。
・ポリマーP1~P13、P16(それぞれ、調製例1~13、P16のポリマーP)または樹脂組成物14、15、17~20(それぞれ、調製例14、15、17~20のポリマー溶液P14、P15、P17~P20):100質量部
(ここで、樹脂組成物14、15、17~20については、固形分(ポリマーP14、P15、P17~P20)と多官能(メタ)アクリル化合物の合計量)が100質量部になるように秤量した。)
・多官能アクリレート(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業社製、A-DPH):50質量部
・光重合開始剤(BASF社製、Irgacure OXE01):5質量部
・密着助剤(信越化学工業株式会社製、KBM-403):1質量部
・界面活性剤(DIC株式会社製、F-556):0.5質量部
得られた感光性樹脂組成物を、HMDS(Hexamethyldisilazane)処理した3インチシリコンウェハー上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.3μm)の薄膜Aを得た。
この薄膜Aに、遮光率1~100%の階調を有するフォトマスクを介して、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F)にて100mJ/cmの露光量でg+h+i線を露光した。
露光後、薄膜を2.38質量%TMAH水溶液で23℃、10秒間現像(ウェハーごと浸漬)することで、1~100mJ/cmの各露光量で露光、現像された薄膜Bを得た。
上記の方法にて得られた薄膜A、薄膜Bの膜厚から、以下の式より残膜率を算出した。
残膜率(%)=(各露光量での薄膜Bの膜厚/薄膜Aの膜厚)×100
そして、残膜率が90%以上となる露光量を、各感光性樹脂組成物の感度とした。結果を表3に示す。残膜率が90%以上となる露光量が、20mJ/cm以下であれば、感光性組成物として問題なく使用することができ、18mJ/cm以下であれば感度が良好であるとみなすことができ、13mJ/cm以下であればより良好であるとみなすことができ、さらに8mJ/cm以下であれば特に良好であるとみなすことができる。
[感光性樹脂組成物の感度評価2(残膜率が95%以上となる露光量)]
上述の残膜率が90%以上となる露光量の測定と同様にして、残膜率が95%以上となる露光量を測定した。結果を、表3に示す。
残膜率が95%以上となる露光量が、20mJ/cm以下であれば、感光性組成物として問題なく使用することができ、18mJ/cm以下であれば感度が良好であるとみなすことができ、13mJ/cm以下であればより良好であるとみなすことができ、さらに8mJ/cm以下であれば特に良好であるとみなすことができる。
[感光性樹脂組成物の感度評価3(残膜率が99%以上となる露光量)]
上述の残膜率が90%以上となる露光量の測定と同様にして、残膜率が99%以上となる露光量を測定した。結果を、表3に示す。
残膜率が95%以上となる露光量が、25mJ/cm以下であれば、感光性組成物として問題なく使用することができ、20mJ/cm以下であれば感度が良好であるとみなすことができ、15mJ/cm以下であればより良好であるとみなすことができ、さらに10mJ/cm以下であれば特に良好であるとみなすことができる。
[感光性樹脂組成物のアルカリ溶解速度(2.38質量%TMAH水溶液)]
上述の感度評価1で調製した感光性樹脂組成物を、ウエハー上にスピンコートし、PGMEAを乾燥させ、そして温度100℃で2分間プリベークすることで、膜厚約2μmの樹脂膜を作製した。
この樹脂膜を、ウエハーごと、温度23℃の2.38質量%TMAH水溶液に浸漬し、樹脂膜の溶解速度を測定した。
溶解速度は、浸漬したウエハーを目視で観察して樹脂膜が溶解して干渉模様が見えなくなるまでの時間を測定し、その時間で膜厚を割り算することで算出した。結果を表3に示す。アルカリ溶解速度が、50nm/s以上、1,400nm/s以下であれば問題なく使用可能であり、70nm/s以上、1,000nm/s以下であれば現像性が良好であるとみなすことができ、80nm/s以上、700nm/s以下であればより良好であるとみなすことができ、100nm/s以上、600nm/s以下であれば特に良好であるとみなすことができる。
[イエローインデックス]
上述の感度評価1で調製した感光性樹脂組成物を、イーグルXGガラス(コーニング社製、厚み0.5mm)上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.1μm)の薄膜を得た。
この薄膜に、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-600F)にて100mJ/cmの露光量でg+h+i線を露光した。
露光後、薄膜を2.38質量%TMAH水溶液で23℃、60秒間現像(ウェハーごと浸漬)することで、100mJ/cmの露光量で露光、現像された薄膜を得た。
薄膜を230℃、30分間、空気下で加熱処理した。薄膜を室温空気下で冷却した後、再度薄膜を230℃、30分間、空気下で加熱処理した。同様の操作を繰り返し、30分間、空気下で加熱処理を合計で3回行った。
上記の方法にて得られた薄膜のイエローインデックス(YI)を色彩色差計CR-5(コニカミノルタ製)を用いて、測定箇所変えて3回測定し、その平均値をYIの値とした。測定タイプは透過測定、100%校正は未塗布のイーグルXGガラス(コーニング社製、厚み0.5mm)を使用した。結果を表3に示す。イエローインデックスが1.15以下であれば感光性材料として問題なく使用することができ、1.10以下であれば、耐熱変色性が良好であるとみなすことができ、さらに1.10以下であればより良好であるとみなすことができ、さらに0.80以下であれば特に良好であるとみなすことができる。
[現像時の密着性]
(ラインパターンに対する密着性)
感光性樹脂組成物を、イーグルXGガラス(コーニング社製、厚み0.5mm)上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.1μm)の薄膜を得た。
この薄膜に横幅40μm、縦幅400μmのガラス部(露光部)と横幅40μm、縦幅400μmのクロム部(遮光部)を交互に、計5か所のガラス部(露光部)有するフォトマスクを介して、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F)にて18mJ/cmの露光量でg+h+i線を露光した。この露光により、フォトマスクのガラス部は光を透過するため指定の露光量で露光され、クロム部は光を透過しないため、未露光部となり、露光部と未露光部を交互に有するラインパターンが得られた。露光後、薄膜を0.5質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液で23℃、10秒間現像(ウエハごと浸漬)することで、18mJ/cmの露光量で露光、現像された薄膜を得た。露光、現像後の計5か所の横幅40μm、縦幅400μmのラインパターンについて、ラインパターンの剥離の有無を顕微鏡で観察した。
(判定基準)
○:現像後のラインパターンは基板に密着しており、剥離している箇所は認められなかった。
×:現像後のラインパターンにおいて、基板から剥離している箇所が認められた。
(ドットパターンに対する密着性)
感光性樹脂組成物を、イーグルXGガラス(コーニング社製、厚み0.5mm)上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.1μm)の薄膜を得た。
この薄膜に横幅50μm、縦幅50μmのガラス部(露光部)とガラス部の周囲がクロム部(遮光部)になっているパターンを計3か所有するフォトマスクを介して、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F)にて18mJ/cmの露光量でg+h+i線を露光した。この露光により、フォトマスクのガラス部は光を透過するため指定の露光量で露光され、クロム部は光を透過しないため、未露光部となり、横幅50μm、縦幅50μmの露光分を有するドットパターンが得られた。露光後、薄膜を0.5質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液で23℃、10秒間現像(ウエハごと浸漬)することで、18mJ/cmの露光量で露光、現像された薄膜を得た。露光、現像後の計3か所の横幅50μm、縦幅50μmのドットパターンについて、ラインパターンの剥離の有無を顕微鏡で観察した。
(判定基準)
○:現像後のドットパターンは基板に密着しており、剥離している箇所は認められなかった。
×:現像後のドットパターンにおいて、基板から剥離している箇所が認められた。
結果を表3に示す。ラインパターンの密着性の判定が、「○」であれば、感光性材料として問題なく使用することができ、ドットパターンの密着性の判定が、「○」であれば、密着性が特に良好であると見なすことができる。
Figure 2023031219000081
エポキシ基含有(メタ)アクリル化合物が導入された構造を有し、さらに多官能(メタ)アクリル化合物で開環された構造を有するポリマーを含む実施例1~10の感光性樹脂組成物は、強塩基現像に適切な溶解性を有し、感度が良好であるとともに、黄色化が低減され透明性に優れ、さらに基板等への密着性に優れていた。ポリマーPにさらに多官能(メタ)アクリル化合物を添加した実施例4、5の感光性樹脂組成物、及びポリマー溶液中に遊離の多官能(メタ)アクリル化合物を含む実施例7~10の感光性樹脂背組成物は、特に基板への密着性により優れていた。
<カラーフィルタの作製>
実施例1~10で調製した感光性樹脂組成物に対し、さらに、顔料分散液NX-061(大日精化工業株式会社製、緑色)を適量加えた着色感光性樹脂組成物を調製した。
これを基板上に製膜し、露光、アルカリ現像処理などを行うことで、緑色のカラーフィルタを形成することができた。
また、顔料分散液として、NX-061の代わりに、同社製のNX-053(青色)、NX-032(赤色)などを用いて、青色または赤色のカラーフィルタを形成することができた。
<ブラックマトリクスの作製>
実施例1~10で調製した感光性樹脂組成物に対し、さらに、カーボンブラック分散液NX-595(大日精化工業株式会社製)を適量加えた黒色感光性樹脂組成物を調製した。
これを基板上に製膜し、露光、アルカリ現像処理などを行うことで、ブラックマトリクスを形成することができた。
10 基板
11 ブラックマトリクス
12 カラーフィルタ
13 保護膜
14 透明電極層

Claims (23)

  1. 式(NB)で表される構造単位と、
    式(MI)で表される構造単位と、
    式(1-1)で表される構造単位と、
    式(1-2)で表される構造単位と、
    単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される炭素数1~30の1~6価の有機基と、
    を含むポリマーであって、
    Figure 2023031219000082
    式(NB)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、aは0、1または2であり、
    Figure 2023031219000083
    式(MI)中、R11は、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基であり、
    Figure 2023031219000084
    式(1-1)中、
    Zは、1以上の(メタ)アクリロイル基を含む基であり、
    Qは、水素原子、または置換もしくは未置換の炭素数1~6のアルキル基であり、
    Xは、酸素原子、置換もしくは未置換の炭素数1~4のアルキレン基を表し、
    Qが前記アルキル基であり、Xが前記アルキレン基である場合、QとXが縮合して環式基を形成してもよく、
    21は、水素原子または炭素数1~3の有機基であり、
    Figure 2023031219000085
    式(1-2)中、
    は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する基であり、
    22は、水素原子または炭素数1~3の有機基である、
    ポリマー。
  2. 請求項1に記載のポリマーであって、
    1~6個のチオエーテル基を含有する炭素数1~30の有機基をさらに含む、ポリマー。
  3. 請求項1または2に記載のポリマーであって、
    式(1-3)で表される構造単位をさらに含み、
    Figure 2023031219000086
    式(1-3)中、
    は、1つの(メタ)アクリロイル基を有する基であり、
    22は、水素原子または炭素数1~3の有機基である、ポリマー。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のポリマーであって、
    式(1-4)で表される構造単位をさらに含み、
    Figure 2023031219000087
    式(1-4)中、
    22は、水素原子または炭素数1~3の有機基である、ポリマー。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のポリマーであって、
    式(1)で表される構造単位をさらに含み、
    Figure 2023031219000088
    式(1)中、Rは、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する基であり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である、ポリマー。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のポリマーであって、
    前記Bが、式(2)で表される構造単位をさらに含み、
    Figure 2023031219000089
    式(2)中、Rは、1つの(メタ)アクリロイル基を有する基であり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である、ポリマー。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のポリマーであって、
    式(3)で表される構造単位をさらに含み、
    Figure 2023031219000090
    式(3)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である、ポリマー。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載のポリマーであって、
    式(MA)で表される構造単位をさらに含み、
    Figure 2023031219000091
    式(MA)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3の有機基である、ポリマー。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載のポリマーであって、
    前記Rは、式(1b)で表される基、式(1c)で表される基、および式(1d)で表される基から選択される少なくとも1つであり、
    Figure 2023031219000092
    式(1b)中、
    kは2または3であり、
    Rは水素原子またはメチル基であり、複数のRは同じでも異なっていてもよく、
    は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)であり、複数存在するXは同一であっても異なっていてもよく、
    'は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-X'-Z'-で表される基(X'は炭素数1~6のアルキレン基であり、Z'は-O-または-COO-である)であり、
    は炭素数1~12の(k+1)価の有機基であり、
    Figure 2023031219000093
    式(1c)中、
    k、R、XおよびXは、それぞれ、式(1b)におけるR、k、XおよびXと同義であり、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよく、
    は、単結合、または炭素数1~6の2価の有機基であり、
    およびXは、それぞれ独立に、単結合または炭素数1~6の2価の有機基であり、
    は、炭素数1~6の2価の有機基であり、
    Figure 2023031219000094
    式(1d)中、
    nは、2~5の整数であり、
    Rは、独立して、水素原子またはメチル基である、
    ポリマー。
  10. 請求項3に記載のポリマーであって、
    前記Rは、式(2a)で表される基であり、
    Figure 2023031219000095
    式(2a)中、X10は、2価の有機基であり、Rは、水素原子またはメチル基である、
    ポリマー。
  11. 請求項1乃至10のいずれかに記載のポリマーであって、
    当該ポリマーは、式(P)で表される構造を有し、
    Figure 2023031219000096
    式(P)において、
    mは、0~5の整数であり、
    nは、1~6の整数であり、
    m+nは、2~6であり、
    p、qおよびrはそれぞれ、[ ]内のポリマー鎖に含まれる構造単位A、BおよびCのモル含有率を示し、
    p、q、およびrは、n個の[ ]内のポリマー鎖毎に同一でも異なっていてもよく、
    p+q+r=1であり、pは0以上であり、qは0以上であり、rは0以上であり
    当該ポリマーに含まれる各構造単位A、BおよびCのモル含有率を、それぞれ、p、q、およびrとすると、p+q+r=1であり、pは0より大きく、qは0より大きく、rは0より大きく、
    Xは、水素または炭素数1以上30以下の有機基であり、
    Yは、単官能または2官能以上のチオール基含有化合物から誘導される炭素数1以上30以下の1~6価の有機基であり、
    Aは、前記式(NB)で表される構造単位を表し、
    Bは、前記式(1-1)で表される構造単位、および前記式(1-2)で表される構造単位を含み、
    Cは、前記式(MI)で表される構造単位を表し、
    複数存在するA同士、B同士、C同士は同一であっても異なっていてもよく、
    Dは、[ ]n内の構造とは異なる構造を表す、ポリマー。
  12. 請求項11に記載のポリマーであって、
    前記Bは、前記式(1-3)で表される構造単位を含む、ポリマー。
  13. 請求項11または12に記載のポリマーであって、
    前記Bは、前記式(1-4)で表される構造単位を含む、ポリマー。
  14. 請求項11乃至13のいずれかに記載のポリマーであって、
    前記Bは、前記式(1)で表される構造単位を含む、ポリマー。
  15. 請求項11乃至14のいずれかに記載のポリマーであって、
    前記Bは、前記式(2)で表される構造単位を含む、ポリマー。
  16. 請求項11乃至15のいずれかに記載のポリマーであって、
    前記Bは、前記式(3)で表される構造単位を含む、ポリマー。
  17. 請求項11乃至16のいずれかに記載のポリマーであって、
    前記Bは、前記式(MA)で表される構造単位を含む、ポリマー。
  18. 重量平均分子量が2,000以上80,000以下である、請求項1乃至17のいずれかに記載のポリマー。
  19. 請求項1乃至18のいずれかに記載のポリマーを含む、ポリマー溶液。
  20. 請求項19に記載のポリマー溶液であって、
    多官能(メタ)アクリル化合物もしくは単官能(メタ)アクリル化合物、またはこれらの組み合わせをさらに含む、ポリマー溶液。
  21. 請求項19または20に記載のポリマー溶液であって、
    カラーフィルタまたはブラックマトリクスの形成に用いられる、ポリマー溶液。
  22. 請求項1乃至18のいずれかに記載のポリマーと、
    光ラジカル重合開始剤と、を含む、
    感光性樹脂組成物。
  23. 請求項22に記載の感光性樹脂組成物より形成される、硬化物。
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