JP2023028533A - 窒化鋼部材並びに窒化鋼部材の製造方法 - Google Patents

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【課題】 中等度の硬さと十分な耐食性とを備えた窒化鋼部材、及び、そのような窒化鋼部材を製造するための製造方法を提供すること。【解決手段】 本発明は、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼を母相とする窒化鋼部材であって、少なくとも一部の表面に、窒化化合物層を備え、前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から2μm~40μmの厚さを有し、前記窒化化合物層は、クロム窒化物を実質的に含んでおらず、前記窒化化合物層の硬さは、前記母相の硬さよりも高いことを特徴とする窒化鋼部材である。【選択図】 図1

Description

本発明は、窒化鋼部材並びに窒化鋼部材の製造方法に関する。
金属部材の窒化処理方法として、金属部材にアンモニアガスを作用させて窒化を行うガス窒化処理方法、シアン酸ナトリウムまたはシアン酸カリウムを含む塩浴中に金属部材を浸漬して窒化を行う塩浴窒化処理方法、窒素と水素との混合ガスを用いたプラズマ状態の下で金属部材の窒化を行うプラズマ窒化処理方法、が実用化されている。
これらのうち、量産性に優れ、雰囲気制御によってフレキシブルに窒化品質を調整できるガス窒化処理方法が、もっとも広く普及している。
一方、金属部材のうち、ステンレス鋼が、耐食性に優れているため、化学プラントや原子力施設などの構造部材として広く使用されている。ステンレス鋼は、材質的に軟らかいために摩耗や疲労に対して弱いという欠点があるが、これらの欠点は、ステンレス鋼の表面に窒化処理を施すことで改善されることが知られている。
例えば、特許文献1には、ステンレス鋼の表面にガス窒化処理方法を適用することが記載されている。具体的には、常温常圧で気体である炭素供給化合物とアンモニアとの混合気体を加熱炉内で加熱し、当該加熱された混合気体中でステンレス鋼(及び/または金属製の炉内壁や金属製の治具)の触媒作用によりHCNを生成させ、当該生成されたHCNをステンレス鋼の表面に作用させることで、ステンレス鋼の表面が活性化され、これにより、当該ステンレス鋼の表面の窒化が可能となり、均一な窒化層が形成され得る。
従来、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼に対する窒化処理において採用されている窒化温度は、高温域での耐摩耗性を考慮して、520℃程度が採用されていた。クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼の硬さの強化のみを目的とした窒化処理であれば、このような高温での窒化処理が推奨される。
しかしながら、本件発明者は、このような高温での窒化処理では、窒化層内にCrNなどの窒化物が形成されて(母相内のCr濃度が低下して)、不動態被膜が表面に形成されることが抑制されて、耐食性の観点で好ましくないことを知見した。
520℃以下の温度範囲での窒化処理に関して、特許文献2は、オーステナイト系ステンレス鋼に対する380℃~440℃の温度範囲での窒化処理を開示している。これによれば、拡張オーステナイト相が得られて、耐食性と耐摩耗性が多少は改善する。
非特許文献1は、フェライト系ステンレス鋼に対する400℃での窒化処理を開示している。これによれば、耐食性と耐摩耗性が多少は改善する。
一方で、本件発明者は、用途によっては、硬さが高すぎることも問題となり得ることを知見した。具体的には、相手材のビッカース硬さが1200HV以下であるような用途においては、窒化鋼部材のビッカース硬さも1200HV以下である方が、相手材の摩耗量を抑制することができて好適であることを知見した。
特許第4861703号 特許第3174422号
「熱処理」、39巻、5号、248~256頁(「イオン窒化処理したステンレス鋼の腐食特性」:曽根匠、市井一男、上田順弘)
本件発明者は、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼に対して300℃~370℃の温度範囲で窒化処理を実施することで、多少長い窒化処理時間を要するものの、中等度の硬さ(母相の硬さより高く、1200HV以下)と、十分な耐食性と、を実現できることを知見した。
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、中等度の硬さと十分な耐食性とを備えた窒化鋼部材、及び、そのような窒化鋼部材を製造するための製造方法を提供することである。
本発明は、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼を母相とする窒化鋼部材であって、少なくとも一部の表面に、窒化層を備え、前記窒化層は、当該窒化鋼部材の表面から2μm~40μmの厚さを有し、前記窒化層は、クロム窒化物を実質的に含んでおらず、前記窒化層の硬さは、前記母相の硬さよりも高いことを特徴とする窒化鋼部材である。窒化層は、窒化処理時の治具を工夫することで、窒化鋼部材の露出面の全体に形成され得る。載置台に載置された状態で窒化される場合には、窒化層は載置面には形成されない。また、マスキング部材が用いられる場合、特定の局所的な表面にのみ窒化層が形成され得る。
本発明によれば、窒化層がクロム窒化物を実質的に含んでいないため、母相内に十分にクロムが残留しており、不動態被膜が表面に形成されることが抑制されず、耐食性の観点で好ましい。一方、窒化層により、窒化による硬さの強化がある程度得られており、中等度の硬さ(母相の硬さより高く、例えば1200HV以下)が実現されている。
あるいは、本発明は、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼を母相とする窒化鋼部材であって、少なくとも一部の表面に、窒化層を備え、前記窒化層は、当該窒化鋼部材の表面から2μm~40μmの厚さを有し、前記窒化層のX線回折プロファイルは、CrNの(111)回折ピークを有しておらず、前記窒化層の硬さは、前記母相の硬さよりも高いことを特徴とする窒化鋼部材である。
本発明によれば、窒化層のX線回折プロファイルがCrNの(111)回折ピークを有していないため、窒化層がクロム窒化物を実質的に含んでいないと考えられ、すなわち、母相内に十分にクロムが残留していて、不動態被膜が表面に形成されることが抑制されないと考えられ、耐食性の観点で好ましい。一方、窒化層により、窒化による硬さの強化がある程度得られており、中等度の硬さ(母相の硬さより高く、例えば1200HV以下)が実現されている。
以上の各発明において、好適な窒化化合物層の中等度の硬さとは、窒化鋼部材の表面(窒化層の表面)から試験荷重0.98Nで測定したビッカース硬さが、1200HV以下である。
また、以上の各発明において、前記フェライト系ステンレス鋼は、例えばSUS430である。
あるいは、以上の各発明において、前記フェライト系ステンレス鋼は、SUS405、SUS410L、SUS429、SUS430F、SUS434、SUS436L、SUS430LX、SUS444、SUSXm27、または、SUS447J1、である。
これらのステンレス鋼のうち、クロムの含有量は、SUS405で最小で11.50~14.50%であり、SUS447J1で最大で28.50~32.00%である。後述の実施例によって示されるように、SUS405からSUS447J1に至る広いクロムの含有量範囲において、本発明が有効であることが確認された。
また、本発明は、窒化鋼部材の製造方法として認識することも可能である。すなわち、本発明は、窒化処理炉を用いてクロムを含有するフェライト系ステンレス鋼を母相とする窒化鋼部材を製造する方法であって、窒化処理時において、前記窒化処理炉内の温度範囲が、300℃~370℃に制御されることを特徴とする窒化鋼部材の製造方法である。
本発明の窒化鋼部材の製造方法によれば、
クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼を母相とする窒化鋼部材であって、少なくとも一部の表面に、窒化化合物層を備え、前記窒化化合物層は、当該窒化鋼部材の表面から2μm~40μmの厚さを有し、前記窒化化合物層は、クロム窒化物を実質的に含んでおらず、前記窒化化合物層の硬さは、前記母相の硬さよりも高いことを特徴とする窒化鋼部材
を製造することができる。
前記窒化処理時において、前記窒化処理炉内の窒化ポテンシャルが、1.0以下の範囲に制御されることが好ましい。
本発明の窒化鋼部材によれば、窒化鋼部材として十分な中等度の硬さを提供しつつ、耐腐食性を改善することができる。
また、本発明の窒化鋼部材の製造方法によれば、中等度の硬さ及び耐腐食性を有する窒化鋼部材を製造することができる。
本発明の一実施形態による窒化鋼部材の断面光学顕微鏡写真である。 図1の窒化鋼部材のX線回折プロファイルを示す図である。 比較例の窒化鋼部材の断面光学顕微鏡写真である。 比較例の窒化鋼部材のX線回折プロファイルを示す図である。 本発明の一実施形態による窒化鋼部材の製造装置の概略図である。 循環型処理炉(横型ガス窒化炉)の概略断面図である。 本発明の窒化処理方法の一実施形態の工程図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(窒化鋼部材の一実施形態の構成、特性及び製法)
図1は、本発明の一実施形態の窒化鋼部材110(具体的には後述する実施例1-4)の断面光学顕微鏡写真である。図1に示すように、本実施形態の窒化鋼部材110は、表面に、約11μmの厚さの窒化層111が形成されている。本実施形態の母相(母材)112は、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼であるSUS430である。
図1において、窒化層111に対して母相112が黒く見えているのは、組織観察用の腐食液によって強く腐食されたためである。
図2は、図1の窒化鋼部材110のX線回折プロファイルを示す図である。具体的には、Rigaku製の「MiniFlex600」を用いて、Co管球(Kα線)、管電圧40kV、管電流15mA、という条件下で、窒化鋼部材110の表面に対してX線回折を行った結果である。
図2に示すように、CrN(111)面のピークは視認できない(図4参照)。また、CrN(200)面のピークに影響されてα-Fe(110)面のピーク幅が広がるという事象も視認できない(図4参照)。すなわち、窒化層111は、クロム窒化物を含んでいない(少なくとも実質的に含んでいない)と考えられる。
そして、実際の耐腐食性試験においても、良好な結果を示した。具体的には、JIS Z2371:2015(ISO 9227:2012)に準拠した中性塩水噴霧試験が168時間実施され、外観上に錆が生じなかった。
また、本実施形態の窒化鋼部材110は、マイクロビッカース硬さ試験(窒化鋼部材110の平坦な表面部に対して荷重0.98Nで測定)によるビッカース硬さが、1020HVであった。
以上のような本実施形態の窒化鋼部材110は、後述の循環型処理炉を用いて、処理温度:370℃、窒化ポテンシャル:0.3、処理時間:15時間、という処理条件で窒化処理されることで製造され得る。
(窒化鋼部材の比較例の構成、特性及び製法)
図3は、比較例の窒化鋼部材310(具体的には後述する比較例1-4)の断面光学顕微鏡写真である。図3に示すように、窒化鋼部材310は、表面に、約20μmの厚さの窒化層311が形成されている。本実施形態の母相(母材)312は、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼であるSUS430である。
図3においても、窒化層311に対して母相312が黒く見えているのは、組織観察用の腐食液によって強く腐食されたためである。
図4は、図3の窒化鋼部材310のX線回折プロファイルを示す図である。具体的には、Rigaku製の「MiniFlex600」を用いて、Co管球(Kα線)、管電圧40kV、管電流15mA、という条件下で、窒化鋼部材310の表面に対してX線回折を行った結果である。
図4に示すように、CrNの(111)回折ピークが視認される。また、CrNの(200)回折ピークとα-Feの(110)回折ピークの位置が近いため、2種類の結晶面からの回折ピークによる複合ピークが観察される。すなわち、窒化層311は、クロム窒化物を含んでいると考えられる。(図4では、参考のため、窒化前のSUS430のX線回折プロファイルも破線で示している。窒化鋼部材のα-Feのピーク位置が窒化前より少し低角側に移動しているのは、表面側において窒素を含有したことによるひずみが原因と考えられる。)
そして、実際の耐腐食性試験においても、不良な結果を示した。具体的には、JIS Z2371:2015(ISO 9227:2012)に準拠した中性塩水噴霧試験が168時間実施され、外観上に赤錆が生じた。
また、本実施形態の窒化鋼部材310は、マイクロビッカース硬さ試験(窒化鋼部材310の平坦な表面部に対して荷重0.98Nで測定)によるビッカース硬さが、1250HVであった。
以上のような本実施形態の窒化鋼部材310は、後述の循環型処理炉を用いて、処理温度:400℃、窒化ポテンシャル:0.3、処理時間:12時間、という処理条件で窒化処理されることで製造され得る。
(窒化鋼部材の製造装置の構成)
続いて、窒化鋼部材の製造装置について説明する。まず、ガス窒化処理の基本的事項について化学的に説明すれば、ガス窒化処理では、被処理品が配置される処理炉(ガス窒化炉)内において、以下の式(1)で表される窒化反応が発生する。
NH3→[N]+3/2H2 ・・・(1)
このとき、窒化ポテンシャルKNは、以下の式(2)で定義される。
KN=PNH3/PH2 3/2 ・・・(2)
ここで、PNH3は炉内アンモニア分圧であり、PH2は炉内水素分圧である。窒化ポテンシャルKNは、ガス窒化炉内の雰囲気が有する窒化能力を表す指標として周知である。
一方、ガス窒化処理中の炉内では、当該炉内へ導入されたアンモニアガスの一部が、式(3)の反応にしたがって水素ガスと窒素ガスとに熱分解する。
NH3→1/2N2+3/2H2 ・・・(3)
炉内では、主に式(3)の反応が生じており、式(1)の窒化反応は量的にはほとんど無視できる。したがって、式(3)の反応で消費された炉内アンモニア濃度または式(3)の反応で発生された水素ガス濃度が分かれば、窒化ポテンシャルを演算することができる。すなわち、発生される水素及び窒素は、アンモニア1モルから、それぞれ1.5モルと0.5モルであるから、炉内アンモニア濃度を測定すれば炉内水素濃度も分かり、窒化ポテンシャルを演算することができる。あるいは、炉内水素濃度を測定すれば、炉内アンモニア濃度が分かり、やはり窒化ポテンシャルを演算することができる。
なお、ガス窒化炉内に流されたアンモニアガスは、炉内を循環した後、炉外へ排出される。すなわち、ガス窒化処理では、炉内の既存ガスに対して、フレッシュ(新た)なアンモニアガスを炉内へ絶えず流入させることにより、当該既存ガスが炉外へ排出され続ける(供給圧で押し出される)。
ここで、炉内へ導入されるアンモニアガスの流量が少なければ、炉内でのガス滞留時間が長くなるため、分解されるアンモニアガスの量が増加して、当該分解反応によって発生される窒素ガス+水素ガスの量は増加する。一方、炉内へ導入されるアンモニアガスの流量が多ければ、分解されずに炉外へ排出されるアンモニアガスの量が増加して、炉内で発生される窒素ガス+水素ガスの量は減少する。
さて、図5は、本発明の一実施形態による窒化鋼部材を製造するための製造装置を示す概略図である。図5に示す製造装置1は、循環型処理炉2を備えており、当該循環型処理炉2内へ導入する窒化処理用のガスとして、アンモニアとアンモニア分解ガスの2種類のみを用いている。アンモニア分解ガスとは、AXガスとも呼ばれるガスで、1:3の比率の窒素と水素とからなる混合ガスである。もっとも、窒化処理用の導入ガスとしては、(1)アンモニアガスのみ、(2)アンモニアとアンモニア分解ガスの2種類のみ、(3)アンモニアと窒素ガスの2種類のみ、または、(4)アンモニアとアンモニア分解ガスと窒素ガスの3種類のみ、から選択され得る。
また、図5に示す製造装置1では、300℃~370℃の範囲内で窒化処理を実施する際、循環型処理炉2内へアセチレンを導入できるようになっており、また、窒化処理後の降温工程時に、循環型処理炉2内へ窒素を導入できるようになっている(詳しくは、図7を参照して後述する)。
循環型処理炉2の断面構造例を、図6に示す。図6において、ヒータ(加熱装置)201hが内蔵された炉壁(ベルとも呼ばれる)201の中に、レトルトと呼ばれる円筒202が配置され、更にその内側に内部レトルトと呼ばれる円筒204(φ700mm×1000mm)が配置されている(図6において、ヒータ201hは概念的に例示されており、実際の配置態様は様々である)。ガス導入管205から供給される導入ガスは、図中の矢印に示されるように、被処理品としての金属部材の周囲を通過した後、攪拌扇203の作用によって2つの円筒202、204間の空間を通過して循環する。206は、フレア付きのガス排気装置であり、207は、熱電対であり、208は冷却作業用の蓋であり、209は、冷却作業用のファンである。当該循環型処理炉2は、横型ガス窒化炉とも呼ばれており、その構造自体は公知のものである。
被処理品Sは、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼であって、例えば、自動車用の部品、産業機械用の部品、家電製品用の部品、排ガス処理装置用の部品、等である。もっとも、以下の実施例では、SUS430等のフェライト系ステンレス鋼の棒材から切り出された試験片(φ30mm×10mmL)が用いられている。
また、図5に示す製造装置1の処理炉2には、炉開閉蓋7と、攪拌ファン8と、攪拌ファン駆動モータ9と、雰囲気ガス濃度検出装置3と、窒化ポテンシャル調節計4と、プログラマブルロジックコントローラ31と、炉内導入ガス供給部20と、が設けられている。
攪拌ファン8は、処理炉2内に配置されており、処理炉2内で回転して、処理炉2内の雰囲気を攪拌するようになっている。攪拌ファン駆動モータ9は、攪拌ファン8に連結されており、攪拌ファン8を任意の回転速度で回転させるようになっている。
雰囲気ガス濃度検出装置3は、処理炉2内の水素濃度またはアンモニア濃度を炉内雰囲気ガス濃度として検出可能なセンサにより構成されている。当該センサの検出本体部は、雰囲気ガス検出配管12を介して処理炉2の内部と連通している。雰囲気ガス検出配管12は、雰囲気ガス濃度検出装置3のセンサ本体部と処理炉2とを直接連通させる経路で形成され、途中で排ガス燃焼分解装置41へ繋がる炉内ガス廃棄配管40が接続されている。これにより、雰囲気ガスは、廃棄されるガスと雰囲気ガス濃度検出装置3に供給されるガスとに分配される。
また、雰囲気ガス濃度検出装置3は、炉内雰囲気ガス濃度を検出した後、当該検出濃度を含む情報信号を、窒化ポテンシャル調節計4へ出力するようになっている。
窒化ポテンシャル調節計4は、炉内窒化ポテンシャル演算装置13と、ガス流量出力調整装置30と、を有している。また、プログラマブルロジックコントローラ31は、ガス導入量制御装置14と、パラメータ設定装置15と、を有している。
炉内窒化ポテンシャル演算装置13は、雰囲気ガス濃度検出装置3によって検出される水素濃度またはアンモニア濃度に基づいて、処理炉2内の窒化ポテンシャルを演算するようになっている。具体的には、実際の炉内導入ガスに応じてプログラムされた窒化ポテンシャルの演算式が組み込まれており、炉内雰囲気ガス濃度の値から窒化ポテンシャルを演算するようになっている。
パラメータ設定装置15は、例えばタッチパネルからなり、炉内導入ガスの総流量、ガス種、処理温度、目標窒化ポテンシャル、等をそれぞれ設定入力できるようになっている。設定入力された各設定パラメータ値は、ガス流量出力調整装置30へ伝送されるようになっている。
そして、ガス流量出力調整装置30が、炉内窒化ポテンシャル演算装置13によって演算された窒化ポテンシャルを出力値とし、目標窒化ポテンシャル(設定された窒化ポテンシャル)を目標値とし、アンモニアガスとアンモニア分解ガスの各々の導入量を入力値とした制御を実施するようになっている。より具体的には、例えば、アンモニアガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との総流量を一定として互いの導入比を変更する制御を実施できるようになっている。ガス流量出力調整装置30の出力値は、ガス導入量制御装置14へ伝達されるようになっている。
ガス導入量制御装置14は、各ガスの導入量を実現するべく、アンモニアガス用の第1供給量制御装置22(具体的にはマスフローコントローラ)とアンモニア分解ガス用の第2供給量制御装置26(具体的にはマスフローコントローラ)とにそれぞれ制御信号を送るようになっている。
炉内導入ガス供給部20は、アンモニアガス用の第1炉内導入ガス供給部21と、第1供給量制御装置22と、第1供給弁23と、を有している。また、本実施形態の炉内導入ガス供給部20は、アンモニア分解ガス(AXガス)用の第2炉内導入ガス供給部25と、第2供給量制御装置26と、第2供給弁27と、を有している。
第1炉内導入ガス供給部21は、例えば、第1炉内導入ガス(本例ではアンモニアガス)を充填したタンクにより形成されている。
第1供給量制御装置22は、マスフローコントローラにより形成されており、第1炉内導入ガス供給部21と第1供給弁23との間に介装されている。第1供給量制御装置22の開度が、ガス導入量制御装置14から出力される制御信号に応じて変化する。また、第1供給量制御装置22は、第1炉内導入ガス供給部21から第1供給弁23への供給量を検出し、この検出した供給量を含む情報信号をガス導入量制御装置14へ出力するようになっている。当該制御信号は、ガス導入量制御装置14による制御の補正等に用いられ得る。
第1供給弁23は、ガス導入量制御装置14が出力する制御信号に応じて開閉状態を切り換える電磁弁により形成されており、第1供給量制御装置22の下流側に設けられている。
第2炉内導入ガス供給部25は、例えば、第2炉内導入ガス(本例ではアンモニア分解ガス)を充填したタンクにより形成されている。あるいは、第2炉内導入ガス供給部25は、アンモニアガスを熱分解してアンモニア分解ガスを生成する熱分解炉から配設される配管であってもよい。
第2供給量制御装置26は、マスフローコントローラにより形成されており、第2炉内導入ガス供給部25と第2供給弁27との間に介装されている。第2供給量制御装置26の開度が、ガス導入量制御装置14から出力される制御信号に応じて変化する。また、第2供給量制御装置26は、第2炉内導入ガス供給部25から第2供給弁27への供給量を検出し、この検出した供給量を含む情報信号をガス導入量制御装置14へ出力するようになっている。当該制御信号は、ガス導入量制御装置14による制御の補正等に用いられ得る。
第2供給弁27は、ガス導入量制御装置14が出力する制御信号に応じて開閉状態を切り換える電磁弁により形成されており、第2供給量制御装置26の下流側に設けられている。
また、図5に示すように、アンモニアガス用の第1供給量制御装置22の上流側に脱湿装置331が設けられ、アンモニア分解ガス用の第2供給量制御装置26の上流側に脱湿装置335が設けられている。(第2炉内導入ガス供給部25が、アンモニアガスを熱分解してアンモニア分解ガスを生成する熱分解炉から配設される配管である場合には、当該熱分解炉の上流側に脱湿装置を設けてもよい(アンモニア分解ガスの原料であるアンモニアガスが脱湿される)。第1供給量制御装置22の上流側の脱湿装置で脱湿された後のアンモニアガスが当該熱分解炉に分配供給される場合には、脱湿装置は当該1つの脱湿装置で足りる。)
また、炉内導入ガス供給部20は、アセチレンガス用の第3炉内導入ガス供給部361と、第3供給量制御装置362と、第3供給弁363と、を有している。更に、本実施形態の炉内導入ガス供給部20は、窒素ガス用の第4炉内導入ガス供給部461と、第4供給量制御装置462と、第4供給弁463と、を有している。
第3炉内導入ガス供給部361は、例えば、第3炉内導入ガス(本例ではアセチレンガス)を充填したタンクにより形成されている。
第3供給量制御装置362も、マスフローコントローラにより形成されており、第3炉内導入ガス供給部361と第3供給弁363との間に介装されている。第3供給量制御装置362の開度が、ガス導入量制御装置14から出力される制御信号に応じて変化する。また、第3供給量制御装置362は、第3炉内導入ガス供給部361から第3供給弁363への供給量を検出し、この検出した供給量を含む情報信号をガス導入量制御装置14へ出力するようになっている。当該制御信号は、ガス導入量制御装置14による制御の補正等に用いられ得る。
第3供給弁363は、ガス導入量制御装置14が出力する制御信号に応じて開閉状態を切り換える電磁弁により形成されており、第3供給量制御装置362の下流側に設けられている。
第4炉内導入ガス供給部461は、例えば、第4炉内導入ガス(本例では窒素ガス)を充填したタンクにより形成されている。
第4供給量制御装置462も、マスフローコントローラにより形成されており、第4炉内導入ガス供給部461と第4供給弁463との間に介装されている。第4供給量制御装置462の開度が、ガス導入量制御装置14から出力される制御信号に応じて変化する。また、第4供給量制御装置462は、第4炉内導入ガス供給部461から第4供給弁463への供給量を検出し、この検出した供給量を含む情報信号をガス導入量制御装置14へ出力するようになっている。当該制御信号は、ガス導入量制御装置14による制御の補正等に用いられ得る。
第4供給弁463は、ガス導入量制御装置14が出力する制御信号に応じて開閉状態を切り換える電磁弁により形成されており、第4供給量制御装置462の下流側に設けられている。
そして、図5に示す製造装置1は、300℃~370℃の範囲内で窒化処理を実施する際、被処理品Sの表面を活性化するべく、第1炉内導入ガス(アンモニアガス)及び第2炉内導入ガス(アンモニア分解ガス)に加えて第3炉内導入ガス(アセチレンガス)を活性化雰囲気ガスとして処理炉2内に導入できるようになっている。アンモニアガスとアンモニア分解ガスとアセチレンガスとは、処理炉2内に入る前の炉内導入ガス導入配管29内で混合されるようになっている。
当該活性化処理は、窒化処理の全体時間の約1割程度の時間をかけて、窒化処理時と同じ温度で実施されるようになっている(ヒータ201hによって、処理炉2内の窒化雰囲気ガスが所定の処理温度に加熱される)(図7参照)。また、アセチレンガスの導入量は、アンモニアガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との合計流量に対して、約0.1%~約0.5%程度とされるようになっている。
また、図5に示す製造装置1は、窒化処理前の昇温工程時に、第1炉内導入ガス(アンモニアガス)のみを処理炉2内に導入できるようになっている(図7参照)。
一方、図5に示す製造装置1は、窒化処理後の降温工程時に、第1炉内導入ガス(アンモニアガス)及び第2炉内導入ガス(アンモニア分解ガス)に代えて、第4炉内導入ガス(窒素ガス)を処理炉2内に導入できるようになっている(図7参照)。
(窒化鋼部材の製造装置1の作用)
次に、製造装置1の作用について説明する。まず、炉開閉蓋7(金属部材投入機構)を介して、被処理品Sが循環型処理炉2内に水平方向に投入される。そして、ヒータ201hによって、循環型処理炉2が加熱される(昇温工程)。
この時、図7に示すように、第1炉内導入ガス(アンモニアガス)のみが設定流量で処理炉2内に導入される。この設定流量は、パラメータ設定装置15において設定入力可能であり、第1供給量制御装置22(マスフローコントローラ)によって制御される(例えば60L/min)。また、攪拌ファン駆動モータ9が駆動されて攪拌ファン8が回転し、処理炉2内の雰囲気を攪拌する。
処理炉2内が所望の窒化処理温度に到達すると、当該窒化処理温度が300℃~370℃の範囲内である場合、炉内導入ガス供給部20から、炉内導入ガス導入配管29(雰囲気ガス導入配管)を介して、活性化雰囲気ガスとしてアンモニアガスとアンモニア分解ガスとアセチレンガスとが設定流量で処理炉2内へ導入される(窒化処理(活性)工程)。
この設定流量は、パラメータ設定装置15において設定入力可能であり、第1供給量制御装置22(マスフローコントローラ)、第2供給量制御装置26(マスフローコントローラ)及び第3供給量制御装置362(マスフローコントローラ)によって制御される(例えば、アンモニアガス:40L/min、アンモニア分解ガス:40L/min、アセチレンガス:0.15L/min)。また、攪拌ファン駆動モータ9の駆動が継続されて攪拌ファン8の回転が継続し、処理炉2内の雰囲気の攪拌が継続する。
アセチレンガスの導入により、被処理品Sの表面を活性化することができる。具体的には、アセチレンガスとアンモニアガスと(アンモニア分解ガスと)の混合気体が循環型処理炉2内で加熱されることで、当該加熱された混合気体中でステンレス鋼(及び/または金属製の炉内壁や金属製の治具)の触媒作用によりHCNが生成される。
2NH3+C2H2→2HCN+3H2 ・・・(4)
そして、当該生成されたHCNがステンレス鋼の表面の不動態化皮膜を還元して、ステンレス鋼の表面が活性化される。これにより、当該ステンレス鋼の表面の効率的な窒化が可能となる。
Cr2O3+6HCN→2Cr(CN)3+3H2O ・・・(5)
窒化処理(活性)工程は、窒化処理の全体時間の約1割程度の時間をかけて、窒化処理時と同じ温度で実施される。
窒化処理温度が300℃~370℃の範囲内である場合には、窒化処理(活性)工程に続いて、窒化処理(制御)工程が実施される。(窒化処理温度が300℃~340℃の範囲内である場合には、窒化処理(活性)工程が省略され得て、すなわち、昇温工程に続いて窒化処理(制御)工程が実施され得る。)
窒化処理(制御)工程では、炉内導入ガス供給部20から、炉内導入ガス導入配管29(雰囲気ガス導入配管)を介して、窒化雰囲気ガスとしてアンモニアガスとアンモニア分解ガスとが処理炉2内へ導入される。
具体的には、炉内導入ガス供給部20からアンモニアガスとアンモニア分解ガスとの混合ガスが、窒化処理用の設定初期流量で処理炉2内へ導入される。この設定初期流量も、パラメータ設定装置15において設定入力可能であり、第1供給量制御装置22(マスフローコントローラ)及び第2供給量制御装置26(マスフローコントローラ)によって制御される。また、攪拌ファン駆動モータ9の駆動が継続されて攪拌ファン8の回転が継続し、処理炉2内の雰囲気の攪拌が継続する。
窒化ポテンシャル調節計4の炉内窒化ポテンシャル演算装置13は、炉内の窒化ポテンシャルを演算し(最初は極めて高い値である(炉内に水素が存在しないため)がアンモニアガスの分解(水素発生)が進行するにつれて低下してくる)、目標窒化ポテンシャルと基準偏差値との和を下回ったか否かを判定する。この基準偏差値も、パラメータ設定装置15において設定入力可能である。
炉内窒化ポテンシャルの演算値が目標窒化ポテンシャルと基準偏差値との和を下回ったと判定されると、窒化ポテンシャル調節計4は、ガス導入量制御装置14を介して、炉内導入ガスの導入量の制御を開始する。
窒化ポテンシャル調節計4の炉内窒化ポテンシャル演算装置13は、入力される水素濃度信号またはアンモニア濃度信号に基づいて炉内窒化ポテンシャルを演算する。そして、ガス流量出力調整装置30は、炉内窒化ポテンシャル演算装置13によって演算された窒化ポテンシャルを出力値とし、目標窒化ポテンシャル(設定された窒化ポテンシャル)を目標値とし、炉内導入ガスの導入量を入力値としたPID制御を実施する。具体的には、当該PID制御において、例えば、アンモニアガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との総流量を一定として互いの導入比を変更する制御が実施される。当該PID制御においては、パラメータ設定装置15にて設定入力された各設定パラメータ値が用いられる。この設定パラメータ値は、例えば、目標窒化ポテンシャルの値に応じて異なる値が用意されている。
そして、ガス流量出力調整装置30が、PID制御の結果として、炉内導入ガスの各々の導入量を制御する。具体的には、ガス流量出力調整装置30が、各ガスの流量を決定し、当該出力値がガス導入量制御装置14へ伝達される。
ガス導入量制御装置14は、各ガスの導入量を実現するべく、アンモニアガス用の第1供給量制御装置22とアンモニア分解ガス用の第2供給量制御装置26とにそれぞれ制御信号を送る。
以上のような制御により、炉内窒化ポテンシャルを目標窒化ポテンシャルの近傍に安定的に制御することができる。これにより、被処理品Sの表面に極めて高品質に窒化処理を行うことができる。
(窒化処理(制御)工程におけるフィードバック制御の態様)
なお、以上に説明した窒化処理(制御)工程では、アンモニアガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との総流量を一定として互いの導入比を変更する制御が実施されている。しかしながら、窒化処理(制御)工程におけるフィードバック制御の態様は、これに限定されない。例えば、アンモニアガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との比率を一定として、総流量を変更する制御が実施されてもよい。あるいは、アンモニアガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との一方を一定として、他方を変更する制御が実施されてもよい。
あるいは、窒化処理(制御)工程においても窒素ガスを導入し得て、この場合、アンモニアガスの導入量と窒素ガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との総流量を一定として、これらの互いの導入比を変更する制御が実施されてもよい。あるいは、この場合も、アンモニアガスの導入量と窒素ガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との比率を一定として、総流量を変更する制御が実施されてもよい。あるいは、アンモニアガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との一方を一定として、他方を変更する制御が実施されてもよい。
あるいは、窒化処理(制御)工程においてアンモニア分解ガスに代えて窒素ガスと水素ガスとを独立に導入し得て、この場合、アンモニアガスの導入量と窒素ガスの導入量と水素ガスの導入量との総流量を一定として互いの導入比を変更する制御が実施されてもよい。あるいは、アンモニアガスの導入量と窒素ガスの導入量と水素ガスの導入量との比率を一定として、総流量を変更する制御が実施されてもよい。あるいは、この場合、アンモニアガスの導入量と窒素ガスの導入量との比率を一定として、総流量を変更する制御が実施されてもよいし、アンモニアガスの導入量と水素ガスの導入量との比率を一定として、総流量を変更する制御が実施されてもよい。あるいは、この場合も、アンモニアガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との一方を一定として、他方を変更する制御が実施されてもよい。
(具体的な実施例)
製造装置1を用いて、本発明の実施例と比較例とが実際に製造され、それらの特性が検証された。
被処理品Sとして、SUS430等の棒材から切り出された試験片(φ30mm×10mmL)が、1度の処理で5本ずつ、各々平面が側面となるよう縦向き姿勢で投入された。
全ての実施例及び比較例において、昇温工程時のアンモニアガスの導入量は、60L/minで一定とされ、降温工程時の窒素ガスの導入量は、50L/minで一定とされた。
全ての実施例及び比較例において、窒化処理(制御)工程時のアンモニアガスとアンモニア分解ガスとの各々の設定初期流量は、40L/minとされ、アンモニアガスの導入量とアンモニア分解ガスの導入量との総流量を一定として互いの導入比を変更する制御が実施された。
窒化処理温度が300℃~370℃の範囲内である実施例及び比較例においては、窒化処理の全体時間の約1割程度の時間をかけて、窒化処理(制御)工程と同じ温度で、窒化処理(活性)工程が実施された。当該窒化処理(活性)工程では、アンモニアガスの導入量は、40L/minで一定とされ、アンモニア分解ガスの導入量は、40L/minで一定とされ、、アセチレンガスの導入量は、0.15L/minで一定とされた。
SUS430に対する実施例1-1~1-13及び比較例1-1~1-4の各々について、窒化条件(窒化処理温度、窒化処理時間、目標窒化ポテンシャル)、窒化鋼としての特性(窒化層の厚さ、窒化層の表面硬さ、X線回折プロファイルによるクロム窒化物含有の判定、耐食性試験結果)が、以下の表1に記載されている。
<表1>
Figure 2023028533000002
窒化層の厚さは、断面光学顕微鏡写真を用いて測定された(図1及び図3参照)。
窒化層の表面硬さは、マイクロビッカース硬さ試験によるビッカース硬さとして測定された。具体的には、窒化層の厚さが4μm以下の被処理品Sの平坦な表面部に対しては、荷重25gで測定され、窒化層の厚さが4μmを超える被処理品Sの平坦な表面部に対しては、荷重100gで測定された。
X線回折プロファイルによるクロム含有の判定は、Rigaku製の「MiniFlex600」を用いて、Co管球(Kα線)、管電圧40kV、管電流15mA、という条件下で、被処理品Sの表面に対してX線回折を行った結果において、CrNの(111)回折ピークが視認できるか否かによって判定された。
耐食性試験結果は、JIS Z2371:2015(ISO 9227:2012)に準拠した中性塩水噴霧試験が168時間実施され、外観上に錆が生じたか否かによって評価された。
(実施例1-1)
実施例1-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:370℃、処理時間:30時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、1150HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-2)
実施例1-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:350℃、処理時間:40時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、850HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-3)
実施例1-3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:330℃、処理時間:50時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、670HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-4)
実施例1-4は、図1及び図2を用いて説明した窒化鋼部材110に相当しており、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:370℃、処理時間:15時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1020Hvであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-5)
実施例1-5は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:350℃、処理時間:20時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、790HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-6)
実施例1-6は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:300℃、処理時間:50時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、500HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-7)
実施例1-7は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:370℃、処理時間:3時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、1070HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-8)
実施例1-8は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:350℃、処理時間:4時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、810HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-9)
実施例1-9は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:330℃、処理時間:7時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、700HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-10)
実施例1-10は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:300℃、処理時間:10時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、590HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-11)
実施例1-11は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:350℃、処理時間:3.5時間、窒化ポテンシャル:4.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、815HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-12)
実施例1-12は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:350℃、処理時間:3.5時間、窒化ポテンシャル:8.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、833HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-13)
実施例1-13は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:350℃、処理時間:20時間、窒化ポテンシャル:2.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、805HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-14)
実施例1-14は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:370℃、処理時間:15時間、窒化ポテンシャル:0.1、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、4μm~8μmであり、表面硬さは、877HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例1-15)
実施例1-15は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:350℃、処理時間:40時間、窒化ポテンシャル:0.05、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、649HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(比較例1-1)
比較例1-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:400℃、処理時間:20時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、1300HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例1-2)
比較例1-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:400℃、処理時間:12時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1250HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例1-3)
比較例1-3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:400℃、処理時間:5時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、1240HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例1-4)
比較例1-4は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430を母材として、処理温度:400℃、処理時間:20時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、1250HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
次に、SUS430以外の鋼種についての実施例及び比較例を示す。実施例2-1~11-2及び比較例2~11の各々について、鋼種、窒化条件(窒化処理温度、窒化処理時間、目標窒化ポテンシャル)、窒化鋼としての特性(窒化層の厚さ、窒化層の表面硬さ、X線回折プロファイルによるクロム窒化物含有の判定、耐食性試験結果)が、以下の表2に記載されている。
<表2>
Figure 2023028533000003

Figure 2023028533000004
(実施例2-1)
実施例2-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS405を母材として、処理温度:370℃、処理時間:20時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、951HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例2-2)
実施例2-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS405を母材として、処理温度:350℃、処理時間:15時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、680HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例2-3)
実施例2-3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS405を母材として、処理温度:350℃、処理時間:3時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、706HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例3-1)
実施例3-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS410Lを母材として、処理温度:370℃、処理時間:20時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、1013HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例3-2)
実施例3-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS410Lを母材として、処理温度:370℃、処理時間:12時間、窒化ポテンシャル:0.2、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、915HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例3-3)
実施例3-3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS410Lを母材として、処理温度:350℃、処理時間:3時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、723HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例4-1)
実施例4-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS429を母材として、処理温度:370℃、処理時間:25時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、1093HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例4-2)
実施例4-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS429を母材として、処理温度:370℃、処理時間:15時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、835HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例4-3)
実施例4-3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS429を母材として、処理温度:350℃、処理時間:5時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、791HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例5-1)
実施例5-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430Fを母材として、処理温度:300℃、処理時間:60時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、560HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例5-2)
実施例5-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430Fを母材として、処理温度:330℃、処理時間:30時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、610HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例5-3)
実施例5-3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430Fを母材として、処理温度:350℃、処理時間:5時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、816HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例6-1)
実施例6-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS434を母材として、処理温度:370℃、処理時間:30時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、1164HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例6-2)
実施例6-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS434を母材として、処理温度:370℃、処理時間:17時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1055HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例6-4)
実施例6-4は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS434を母材として、処理温度:350℃、処理時間:40時間、窒化ポテンシャル:0.5、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、866HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例6-5)
実施例6-5は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS434を母材として、処理温度:330℃、処理時間:7時間、窒化ポテンシャル:2.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、734HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例6-6)
実施例6-6は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS434を母材として、処理温度:370℃、処理時間:15時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1090HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例7-1)
実施例7-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS436Lを母材として、処理温度:350℃、処理時間:40時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、935HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例7-2)
実施例7-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS436Lを母材として、処理温度:370℃、処理時間:17時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1054HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例7-3)
実施例7-3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS436Lを母材として、処理温度:350℃、処理時間:5時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、812HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例8-1)
実施例8-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430LXを母材として、処理温度:350℃、処理時間:40時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、885HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例8-2)
実施例8-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430LXを母材として、処理温度:370℃、処理時間:15時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1037HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例8-3)
実施例8-3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430LXを母材として、処理温度:350℃、処理時間:5時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、825HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例9-1)
実施例9-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS444を母材として、処理温度:370℃、処理時間:30時間、窒化ポテンシャル:0.4、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、1211HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例9-2)
実施例9-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS444を母材として、処理温度:370℃、処理時間:15時間、窒化ポテンシャル:0.3、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1065HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例9-3)
実施例9-3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS444を母材として、処理温度:350℃、処理時間:7時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、891HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例9-4)
実施例9-4は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS444を母材として、処理温度:300℃、処理時間:13時間、窒化ポテンシャル:1.0、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、670HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例10-1)
実施例10-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUSXM27を母材として、処理温度:370℃、処理時間:25時間、窒化ポテンシャル:0.7、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1152HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例10-2)
実施例10-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUSXM27を母材として、処理温度:350℃、処理時間:12時間、窒化ポテンシャル:1.5、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、910HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例11-1)
実施例11-1は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS447J1を母材として、処理温度:370℃、処理時間:25時間、窒化ポテンシャル:0.7、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1205HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(実施例11-2)
実施例11-2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS447J1を母材として、処理温度:350℃、処理時間:12時間、窒化ポテンシャル:1.5、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚9は、2μm~4μmであり、表面硬さは、957HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「無」と判定され、耐食性試験結果では外観に「変化無し」(錆の発生が認められない)であった。
(比較例2)
比較例2は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS405を母材として、処理温度:400℃、処理時間:6時間、窒化ポテンシャル:0.5、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1254HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例3)
比較例3は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS410Lを母材として、処理温度:400℃、処理時間:9時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1262HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例4)
比較例4は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS429を母材として、処理温度:400℃、処理時間:12時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1284HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例5)
比較例5は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430Fを母材として、処理温度:400℃、処理時間:20時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、15μm~20μmであり、表面硬さは、1290HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例6)
比較例6は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS434を母材として、処理温度:400℃、処理時間:10時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、2μm~4μmであり、表面硬さは、1333HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例7)
比較例7は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS436Lを母材として、処理温度:400℃、処理時間:13時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1294HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例8)
比較例8は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS430LXを母材として、処理温度:400℃、処理時間:12時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1280HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例9)
比較例9は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS444を母材として、処理温度:400℃、処理時間:12時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1345HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例10)
比較例10は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUSXM27を母材として、処理温度:400℃、処理時間:18時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1409HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
(比較例11)
比較例11は、前述の循環型処理炉2を用いて、SUS447J1を母材として、処理温度:400℃、処理時間:18時間、窒化ポテンシャル:0.15、という窒化条件で製造された窒化鋼である。
窒化層厚さは、8μm~12μmであり、表面硬さは、1470HVであり、X線回折プロファイルによってクロム窒化物含有「有」と判定され、耐食性試験結果では外観に「赤さびが発生」した。
1 窒化鋼部材の製造装置(表面硬化装置)
2 循環型処理炉
3 雰囲気ガス濃度検出装置
4 窒化ポテンシャル調節計
7 炉開閉蓋
8 攪拌ファン
9 攪拌ファン駆動モータ
12 雰囲気ガス検出配管
13 炉内窒化ポテンシャル演算装置
14 ガス導入量制御装置
15 パラメータ設定装置(タッチパネル)
20 炉内導入ガス供給部
21 第1炉内導入ガス供給部
22 第1供給量制御装置
23 第1供給弁
25 第2炉内導入ガス供給部
26 第2供給量制御装置
27 第2供給弁
29 炉内導入ガス導入配管
30 ガス流量出力調整装置
31 プログラマブルロジックコントローラ
40 炉内ガス廃棄配管
41 排ガス燃焼分解装置
110 窒化鋼部材(実施例5)
111 窒化化合物層
112 母相
310 窒化鋼部材(比較例4)
311 窒化化合物層
312 母相
201h ヒータ
202 円筒
203 攪拌扇
204 円筒
205 ガス導入管
331 脱湿装置
335 脱湿装置
361 第3炉内導入ガス供給部
362 第3供給量制御装置
363 第3供給弁
461 第4炉内導入ガス供給部
462 第4供給量制御装置
463 第4供給弁

Claims (5)

  1. クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼を母相とする窒化鋼部材であって、
    少なくとも一部の表面に、窒化層を備え、
    前記窒化層は、当該窒化鋼部材の表面から2μm~40μmの厚さを有し、
    前記窒化層は、クロム窒化物を実質的に含んでおらず、
    前記窒化層の硬さは、前記母相の硬さよりも高い
    ことを特徴とする窒化鋼部材。
  2. クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼を母相とする窒化鋼部材であって、
    少なくとも一部の表面に、窒化層を備え、
    前記窒化層は、当該窒化鋼部材の表面から2μm~40μmの厚さを有し、
    前記窒化層のX線回折プロファイルは、CrNの(111)回折ピークを有しておらず、
    前記窒化層の硬さは、前記母相の硬さよりも高い
    ことを特徴とする窒化鋼部材。
  3. 前記窒化化合物層の当該窒化鋼部材の表面から測定したビッカース硬さが、1200HV以下である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の窒化鋼部材。
  4. 窒化処理炉を用いて、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼を母相とする窒化鋼部材を製造する方法であって、
    窒化処理時において、前記窒化処理炉内の温度範囲が、300℃~370℃に制御される
    ことを特徴とする窒化鋼部材の製造方法。
  5. 前記窒化処理時において、前記窒化処理炉内の窒化ポテンシャルが、1.0以下の範囲に制御される
    ことを特徴とする請求項4に記載の窒化鋼部材の製造方法。
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