JP5758278B2 - 窒化処理方法 - Google Patents
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請求項3に記載の発明の窒化処理方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記尿素は肥料用尿素であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明の窒化処理方法は、請求項4に係る発明において、前記ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明の窒化処理方法では、尿素を含む窒化剤を450〜600℃に加熱して熱分解し、その分解ガスにより420〜450℃で鉄鋼材料の窒化処理が行われる。このため、尿素が熱分解されてアンモニアガス、シアン化水素ガス等の分解ガスが生成し、その分解ガスが窒化処理に利用される。窒化処理は、その分解ガスの存在下に鉄鋼材料が420〜450℃に加熱されることにより行われる。
まず、本実施形態の窒化処理方法を実施するための窒化処理装置について説明する。図1に示すように、窒化処理槽11は有底筒状に形成され、その内部には支持部材12が突設され、被窒化処理物としての鉄鋼材料13が支持されている。鉄鋼材料13としては、ステンレス鋼のほか、軟鋼、金型鋼等が使用される。これらの鉄鋼材料13のうちステンレス鋼は耐食性に優れているため化学装置、原子力設備等の構造材料として好適に用いられている。
さて、図1に示すように、ステンレス鋼等の鉄鋼材料13の窒化処理を行う場合には、窒化処理槽11内の支持部材12に鉄鋼材料13を支持するとともに、スクリューコンベア21に所定量の尿素20を投入して熱分解炉18の尿素収容凹部19内に供給する。続いて、熱分解炉18を加熱し、尿素収容凹部19の温度を450〜600℃に上昇させると、尿素20は熱分解してアンモニアガス、シアン化水素ガス等の分解ガスが発生する。そして、前記導入流路14の導入用バルブ15を開けると、分解ガスは導入流路14を経て窒化処理槽11内に導かれる。
(1)本実施形態における窒化処理方法では、尿素20を含む窒化剤を450〜600℃に加熱して熱分解し、生成した分解ガスにより420〜450℃で鉄鋼材料13の窒化処理が行われる。この場合、尿素20が熱分解されて生成するアンモニアガス、シアン化水素ガス等の分解ガスが利用される。すなわち、分解ガスとして窒化性のアンモニアガス及び還元性のシアン化水素ガスにより、鉄鋼材料13の表面から内部に窒素原子が拡散し、窒化物による化合物層が形成されることなく、前記窒素原子に基づく窒化層が形成される。
(2)前記窒化剤が尿素のみにより構成されていることにより、その熱分解によって窒化性のアンモニアガスと還元性のシアン化水素ガスを生成させることができ、特にシアン化水素ガスを十分に生成させることができ、鉄鋼材料13の表面に窒素原子の拡散層を形成することができる。
(3)前記尿素20は肥料用尿素であることにより、尿素20を安価で容易に入手することができ、取り扱いも簡単である。
(4)前記鉄鋼材料13はステンレス鋼である。このため、ステンレス鋼のもつ耐食性を保持しつつ、ステンレス鋼表面の硬さ等の物性を向上させることができる。
(5)前記ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼である。そのため、窒化処理により、オーステナイト系ステンレス鋼のもつ優れた耐食性を保持しつつ、耐磨耗性、耐疲労性(耐久性)の向上を図ることができる。
(6)前記分解ガスはアンモニアガス及びシアン化水素ガスを含有する。従って、窒化処理時においてアンモニアはさらに分解されて発生期の窒素を生成して窒化層を形成する一方、シアン化水素は鉄鋼材料13表面の酸化膜を破って窒素原子の拡散を促すことができる。
(7)本実施形態の窒化処理方法では、窒化処理の温度が450℃以下で実施できることから、従来の例えば570℃で行うガス窒化処理方法に比べて、加熱温度が低く、省エネルギー化を図ることができる。
(参考例1及び比較参考例1、シアン化水素ガスの発生確認)
前述の熱分解炉18における温度とアンモニアガス及びシアン化水素ガスの発生量との関係について試験を行った。参考例1においては、図2に示すように、熱分解炉18の尿素収容凹部19内に尿素20を収容した状態で、熱分解炉18の温度を経過時間1時間で565℃まで上昇させ、その後その温度を維持するようにした。その結果、1時間経過まではアンモニア濃度(図2の○印)が84vol%でシアン化水素濃度(図2の□印)は0vol%であったが、2時間近く経過したとき、シアン化水素濃度が11vol%に達し、その後8vol%以上の濃度が維持された。
(実施例1及び2、表面硬さの評価)
鉄鋼材料13として、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)を使用した。このステンレス鋼の組成は、炭素(C)0.06質量%、シリカ(Si)0.43質量%、マンガン(Mn)1.11質量%、リン(P)0.031質量%、硫黄(S)0.005質量%、ニッケル(Ni)8.04質量%、クロム(Cr)18.07質量%、残部鉄(Fe)であった。実施例1においては厚さ3.0mm、長さ65mm、幅45mmの板材、実施例2では厚さ0.8mm、長さ90mm、幅65mmの板材を用いた。
(実施例3及び4、表面硬さの評価)
実施例3では、実施例1において、尿素量を3kgとし、アンモニアガスを置換ガス導入口23から尿素収容凹部19内に導入し、窒化処理時間を4時間とした以外は実施例1と同様に窒化処理を実施した。熱分解炉18の温度、窒化処理槽11の温度、尿素導入量及びアンモニアガス導入量を図5に示した。その結果、窒化処理後のステンレス鋼のビッカース硬さは、347HVであった。
(比較例1及び2)
比較例1では、実施例1において、尿素20を用いることなく、アンモニアガスを置換ガス導入口23から尿素収容凹部19内に導入し、窒化処理時間を4時間とした以外は実施例1と同様に窒化処理を実施した。窒化処理槽11の温度及びアンモニアガス導入量を図6に示した。その結果、窒化処理後のステンレス鋼のビッカース硬さは、338HVであった(母材のビッカース硬さは370HV程度であったため、それ以下の硬さは測定誤差である)。
(実施例5、6及び7、表面硬さの評価)
実施例5では、実施例1において、尿素20として肥料用尿素3kgとし、窒化処理時間を4時間とした以外は実施例1と同様に窒化処理を実施した。その結果、窒化処理後のステンレス鋼のビッカース硬さは、438HVであった。
(実施例8〜10及び比較例3,4、耐食性の評価)
実施例8では、実施例1において尿素量を50gとし、内容積が0.42Lの小型容器に試験片を入れ、窒化処理温度を420℃とし、窒化処理時間を4時間とした以外は実施例1と同様に窒化処理を実施した。実施例9では、実施例8において尿素量を40gとし、窒化処理温度を440℃とし、窒化処理時間を4時間とした以外は実施例8と同様に窒化処理を実施した。実施例10では、実施例8において尿素量を25gとし、窒化処理温度を440℃とし、窒化処理時間を7時間とした以外は実施例8と同様に窒化処理を実施した。
・ 前記窒化剤には、尿素のほかに、尿素樹脂、メラミン、メラミン樹脂等が含まれていてもよい。
・ 前記熱分解炉18における熱分解温度は450〜600℃に設定することは必要であるが、その温度に設定する時間は適宜定めることができる。
Claims (6)
- 尿素を含む窒化剤を450〜600℃に加熱して熱分解し、その分解ガスにより420〜450℃で鉄鋼材料の窒化処理を行うことを特徴とする窒化処理方法。
- 前記窒化剤は尿素のみにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の窒化処理方法。
- 前記尿素は肥料用尿素であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒化処理方法。
- 前記鉄鋼材料はステンレス鋼であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の窒化処理方法。
- 前記ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項4に記載の窒化処理方法。
- 前記分解ガスはアンモニアガス及びシアン化水素ガスを含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の窒化処理方法。
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