JP6072530B2 - 軟窒化処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ステンレス鋼等の鉄鋼材料の表面に軟窒化処理を施して表面を強化するとともに、耐食性を始め、表面硬さ、耐摩耗性、耐疲労性等の物性の向上を図ることができる軟窒化処理方法に関する。
一般に、窒化処理方法としては、アンモニアガスを作用させて窒化を行うガス窒化処理方法、シアン酸ナトリウム又はシアン酸カリウムを含む塩浴中に浸漬して窒化を行う塩浴窒化処理方法、窒素と水素の混合ガスを用いてプラズマ状態で窒化を行うプラズマ窒化処理方法等が実用化されている。
一方、ステンレス鋼は耐食性に優れていることから、化学プラント、原子力施設などの構造部材として広く使用されているが、材質的に軟らかいことから焼付きを生じやすく、疲労に対しても弱いので、これらの特性を強化することが望まれている。そのため、ステンレス鋼の表面に窒化処理を施す技術が適用される。
例えば、オーステナイト系ステンレス鋼表面の窒化処理方法が特許文献1に開示されている。すなわち、この窒化処理方法は、オーステナイト系ステンレス鋼の表面に、ショットピーニング加工による加工変質層を形成し、かつその粗面の表面粗さを5.0〜40.0μmとし、次いでアンモニアガスの雰囲気中において400〜650℃に加熱して窒化処理を行うものである。この窒化処理方法によれば、オーステナイト系ステンレス鋼表面の窒化処理を簡単に行うことができるとともに、表面に十分な厚さと硬さを有する窒化層を形成することができる。
特開平9−78224号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている従来構成の窒化処理方法においては、窒化処理に先立ってステンレス鋼の表面に加工変質層を形成するショットピーニング加工という特殊な前処理を施さなければならなかった。しかも、その前処理によるステンレス鋼表面の表面粗さが5.0〜40.0μmという特定範囲に設定されている。このため、ステンレス鋼の表面に予め特定範囲の表面粗さを有する加工変質層を形成する前処理は煩雑であるとともに、加工変質層が窒化処理に及ぼす影響についても検討しなければならないという問題があった。
オーステナイト系ステンレス鋼のその他の窒化処理方法として、ハロゲン化物による表面活性化を行う手法がある。しかし、この手法では、環境負荷物質であるハロゲン化物供給設備の管理負担や、軟窒化処理のための浸炭ガスを供給するための変成炉などの付属設備も必要となり、排ガス処理装置もエネルギー消費量が多い燃焼式の除外方法が使用されるなど、環境負荷物質の管理やエネルギー消費量が多い付属設備が必要となるなどの課題があった。
本発明はこのような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、軟窒化処理に先立って鉄鋼材料の表面に特別な前処理を施すことなく軟窒化処理を行うことができるとともに、鉄鋼材料の耐食性等の物性を維持又は向上させることができる軟窒化処理方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の軟窒化処理方法は、尿素を含む窒化剤を加熱して熱分解し、その分解ガスにより軟窒化処理温度で鉄鋼材料の軟窒化処理を行う軟窒化処理方法において、前記軟窒化処理温度の下限は400℃であり、軟窒化処理温度の上限は440℃から400℃の範囲で少なくとも2段階で低下するように設定されているとともに、前処理を施すことなく軟窒化処理を行い、化合物層のない拡散層のみの軟窒化層を形成することを特徴とする。
請求項に記載の発明の軟窒化処理方法は、請求項1に係る発明において、前記軟窒化処理温度の下限は軟窒化処理時間に拘らず400℃であり、軟窒化処理温度の上限は総軟窒化処理時間が3〜5時間までは440℃、その後総軟窒化処理時間が6〜10時間までは420℃であることを特徴とする。
請求項に記載の発明の軟窒化処理方法は、請求項1又は請求項に係る発明において、前記窒化剤は尿素のみにより構成されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明の軟窒化処理方法は、請求項1から請求項のいずれか一項に係る発明において、前記鉄鋼材料はステンレス鋼であることを特徴とする。
請求項に記載の発明の軟窒化処理方法は、請求項に係る発明において、前記ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の軟窒化処理方法では、尿素を含む窒化剤を加熱して熱分解し、その分解ガスにより軟窒化処理温度で鉄鋼材料の軟窒化処理を行うに際し、軟窒化処理温度の下限は400℃であり、軟窒化処理温度の上限は440℃から400℃の範囲で少なくとも2段階で低下するように設定されている。このため、尿素が軟窒化処理温度で熱分解されてアンモニアガス、シアン化水素ガス、浸炭性ガス(一酸化炭素)等の分解ガスが生成し、その分解ガスの存在下に鉄鋼材料の軟窒化処理が行われる。
この軟窒化処理においては、分解ガスとして窒化性のアンモニアガス、還元性のシアン化水素ガス、浸炭性の一酸化炭素ガスなどが生成し、これらのガスはさらに分解して活性化窒素や活性化炭素を生じ、鉄鋼材料の表面から内部へ拡散して軟窒化層が形成される。同時に、シアン化水素などは鉄鋼材料表面の酸化膜を活性化することにより軟(浸炭)窒化反応が進行する。これらの軟窒化反応が、クロムを含む複合窒化物による化合物層の形成を抑えた状態で優先的に進行することから、鉄鋼材料の耐食性の低下が抑制される。
従って、本発明の軟窒化処理方法によれば、軟窒化処理に先立って鉄鋼材料の表面に特別な前処理を施すことなく軟窒化処理を行うことができるとともに、鉄鋼材料の耐食性等の物性を維持又は向上させることができるという効果を奏する。
本発明を具体化した実施形態における窒化処理装置の概略を示す断面図。 実施形態における軟窒化処理時間と軟窒化処理温度との関係を示すグラフ。 実施例1における軟窒化処理時間と軟窒化処理温度との関係を示すグラフ。 実施例1で得られた母材表面の軟窒化層を示す断面図。
以下、本発明を具体化した実施形態に関し、図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
まず、本実施形態の軟窒化処理方法を実施するための窒化処理装置について説明する。図1に示すように、窒化処理槽11は有底筒状に形成され、その内側下部には支持板12が架設され、被窒化処理物としての鉄鋼材料を収容するカゴ13が支持されている。被窒化処理物としては、ステンレス鋼のほか、軟鋼、金型鋼等が使用される。これらの鉄鋼材料のうちステンレス鋼は耐食性に優れているため化学装置、原子力設備等の構造材料として好適に用いられている。
しかし、ステンレス鋼は材質的に軟らかいことから焼付きを生じやすく、疲労に対しても弱いことから、これらの特性を向上させるために表面に浸炭処理や窒化処理が施される。ステンレス鋼としては、例えばオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)が挙げられる。窒化処理槽11には、窒化剤としての尿素を窒化処理槽11内の底部に導く導入流路14が導入用バルブ15を介して接続されている。
該導入流路14の上流部にはスクリューコンベア16が配設され、その入口側に設けられた投入口17から前記尿素が投入され、スクリューコンベア16により尿素が導入流路14に供給されるように構成されている。窒化剤は、尿素〔CO(NH〕を含むものであり、尿素のほか、尿素樹脂、メラミン、メラミン樹脂等が含まれていてもよい。尿素としては、入手の容易性や安価な点で粒状尿素を用いることが好ましい。前記スクリューコンベア16には置換ガス導入口18が接続され、窒素ガス等の置換ガスが導入流路14に導入されるようになっている。
前記窒化処理槽11の周囲には加熱装置19が配置されている。この加熱装置19によって窒化処理槽11内を加熱することにより、尿素を分解して軟窒化処理用のガスすなわちアンモニアガス(NH)、シアン化水素ガス(HCN)、一酸化炭素ガス(CO)等の分解ガスを発生させるとともに、その分解ガスに基づく軟窒化反応により鉄鋼材料の軟窒化処理を行うようになっている。
窒化処理槽11の頂壁には置換ガス導入管20が連結され、窒化処理槽11内に置換ガスを導入できるように構成されている。また、窒化処理槽11の頂壁には撹拌機21が取付けられ、窒化処理槽11内において軟窒化処理用の分解ガスを撹拌して鉄鋼材料に均一に供給するようになっている。
前記加熱装置19によって窒化処理槽11内の温度(軟窒化処理温度)が400〜440℃に設定され、鉄鋼材料表面に軟窒化処理が施されるように構成されている。軟窒化処理温度の下限は400℃であり、軟窒化処理温度の上限は440℃から400℃に亘って段階的に低下するように設定される。軟窒化処理温度の上限は440℃から400℃に亘って少なくとも2段階で低下するように設定されることが好ましい。
図2の実線及び二点鎖線に示すように、具体的には、軟窒化処理温度の下限は軟窒化処理時間に拘らず400℃であり、軟窒化処理温度の上限は総軟窒化処理時間が3〜5時間までは440℃、その後総軟窒化処理時間が15〜17時間までは420℃、その後は軟窒化処理温度の下限と同じ400℃であることが好ましい。すなわち、軟窒化処理時間に対して軟窒化処理温度は、図2の斜線で示す低温の温度領域R内で推移するように設定することが望ましい。軟窒化処理温度がこの温度領域R内で推移すれば軟窒化処理時間は制限されず、いずれの軟窒化処理時間に軟窒化処理を停止しても差し支えない。
前記加熱時の温度が温度領域Rの下限を外れて400℃より低い場合には、軟窒化処理において窒素原子による軟窒化層(拡散層)の形成が十分に行われなくなる。その一方、温度領域Rの上限を外れて440℃より高い場合には、鉄鋼材料の表面に窒化物に基づく化合物層が形成され、鉄鋼材料の耐食性が低下し、非磁性材料であるオーステナイト系ステンレス鋼が磁性材料となる傾向を示す。上記軟窒化層(化合物層のない拡散層のみの軟窒化層)は8時間程度の処理で鉄鋼材料の表面から通常15μmを超える深さに形成される。
前記尿素は、400〜440℃に加熱することにより熱分解し、アンモニア(NH)ガス、シアン化水素(HCN)ガス等の分解ガスを発生する。この分解ガスを利用して軟窒化反応を行い、鉄鋼材料の軟窒化処理を実施することができる。
前記窒化処理槽11の上部において、導入流路14と反対側には導出流路22が接続され、該導出流路22には導出用バルブ23と並列し、軟窒化処理中の圧力調整を行うリリーフ機構25が設けられている。この導出流路22の端部には、排ガス処理装置24が配置され、窒化処理槽11内の排ガスを燃焼又は触媒処理させて脱臭、無害化するように構成されている。
前記排ガス処理装置24は筒状に形成され、その内部の下流側には触媒反応温度が300℃程度の白金触媒やアンモニア用触媒等による触媒層26が設けられている。排ガス処理装置24の上流部にはヒータ27が埋設され、排ガス処理装置24内を加熱できるようになっている。また、排ガス処理装置24の上流部には燃焼用空気導入管28が接続されるとともに、排ガス処理装置24の中央部には希釈空気導入管29が接続されている。
そして、軟窒化処理時には、リリーフ機構25から漏れた400℃程度の排ガスの排熱温度を活用し、希釈空気導入管29から導入される少量の希釈空気で希釈し、触媒反応温度が300℃程度である触媒層26を活用して触媒処理が行われる。軟窒化処理の終了後には、導出用バルブ23を開けることにより、排ガスが排ガス処理装置24内に導かれ、ヒータ27で加熱されるとともに、燃焼用空気導入管28から燃焼用空気が導入されて燃焼処理が行われる。従って、このような触媒処理と燃焼処理とを行う排ガス処理装置24は、省エネタイプの排ガス処理機構である。
次に、上記のように構成された窒化処理槽11を用いた軟窒化処理方法を作用とともに説明する。
さて、図1に示すように、ステンレス鋼等の鉄鋼材料の軟窒化処理を行う場合には、窒化処理槽11内の支持板12上のカゴ13内に鉄鋼材料を配置するとともに、スクリューコンベア16の投入口17に所定量の尿素を投入し、スクリューコンベア16を回転させ、導入流路14を介して窒化処理槽11内に供給する。次いで、導入流路14の導入用バルブ15を閉じるとともに、導出流路22の導出用バルブ23を閉じる。その状態で、加熱装置19により窒化処理槽11内を加熱する。
このとき、図2の実線及び二点鎖線に示すように、窒化処理槽11内の軟窒化処理温度は総軟窒化処理時間が3〜5時間までは440℃、その後総軟窒化処理時間が15〜17時間までは420℃、その後は400℃に設定される。このように、窒化処理槽11内の軟窒化処理温度を440℃から段階的に400℃まで低下させることにより、尿素の熱分解反応と、その熱分解反応で生成した分解ガスによる窒化反応とをバランス良く進行させ、前記窒化物に基づく化合物層の生成を抑制することができる。
すなわち、窒化処理槽11内の温度を440℃に上昇させると、尿素は熱分解してアンモニアガス、シアン化水素ガス、一酸化炭素ガス等の分解ガスが発生する。アンモニアガス及び一酸化炭素等は、鉄鋼材料の表面で活性化窒素及び活性化炭素となり、内部へ拡散して浸炭窒化拡散層が形成される。同時に、分解ガスのうち還元性のシアン化水素などは鉄鋼材料表面の酸化膜を活性化し、浸炭や窒化が困難とされているオーステナイト系ステンレス鋼についても、窒素原子及び炭素原子が鉄鋼材料の表面から内部に拡散浸透する軟窒化処理を可能とする。
このとき、窒化処理槽11内の軟窒化処理温度が初期には高く、その後段階的に低くなるように設定されていることから、副反応が抑えられ、前記分解ガスによる軟窒化反応が優位に進行し、鉄鋼材料表面が軟窒化層により強化されるとともに、クロムを含む複合窒化物による化合物層の形成が抑えられ、鉄鋼材料の耐食性の低下が抑制される。
以上の窒化処理後においては、導出流路22の導出用バルブ23を開いて窒化処理槽11内のガスを導出流路22から排ガス処理装置24に導き、そこで排ガスを燃焼又は触媒処理させて脱臭及び無害化処理が行われる。
以上詳述した実施形態によって発揮される効果を以下にまとめて記載する。
(1)本実施形態における軟窒化処理方法では、尿素を加熱して熱分解し、その分解ガスにより鉄鋼材料の軟窒化処理を行うに際し、軟窒化処理温度の下限が400℃であり、上限が440℃から400℃に亘って段階的に低下するように設定されている。このため、軟窒化処理は軟窒化処理温度の下限と上限との間の低温で行われ、尿素が熱分解されてアンモニアガス、シアン化水素ガス、一酸化炭素ガス等の分解ガスが生成し、その分解ガスにより、前記化合物層の形成を抑制しつつ、鉄鋼材料の軟窒化処理を効率良く実施することができる。
従って、本実施形態の軟窒化処理方法によれば、軟窒化処理に先立って鉄鋼材料の表面に特別な前処理を施すことなく軟窒化処理を行うことができるとともに、鉄鋼材料の耐食性、表面の硬さ、耐摩耗性、耐疲労性等の物性を向上させることができるという効果を奏する。
(2)前記軟窒化処理温度の上限は440℃から400℃に亘って少なくとも2段階で低下するように設定されている。このため、尿素の分解による窒素原子の生成及びその窒素原子による窒化反応の促進と、窒化物に基づく化合物層の生成反応の抑制とを効果的に行うことができる。
(3)前記軟窒化処理温度の下限は軟窒化処理時間に拘らず400℃であり、軟窒化処理温度の上限は総軟窒化処理時間が3〜5時間までは440℃、その後総軟窒化処理時間が6〜10時間までは420℃である。この場合には、窒化反応の促進と、前記化合物層の生成反応の抑制とを一層効果的に行うことができる。
(4)前記窒化剤が尿素のみにより構成されていることにより、その熱分解によって窒化性のアンモニアガス、浸炭性の一酸化炭素及び還元性のシアン化水素ガスを生成させることができ、鉄鋼材料の表面に窒素原子の拡散層を速やかに形成することができる。
(5)前記鉄鋼材料はステンレス鋼である。このため、ステンレス鋼のもつ耐食性を保持しつつ、ステンレス鋼表面の硬さ等の物性を向上させることができる。
(6)前記ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼である。そのため、本窒化処理により、非磁性のままオーステナイト系ステンレス鋼のもつ優れた耐食性を保持又は向上しつつ、耐磨耗性、耐疲労性(耐久性)の向上を図ることができる。
(7)窒化処理槽11内において、尿素の分解と軟窒化処理を同時に行うことから、浸炭ガス生成用の変成炉やハロゲン化物供給装置又は尿素の熱分解炉を窒化処理槽11とは別に設ける必要がなく、装置の構成を簡易にできるとともに、軟窒化処理を効率良く実施することができる。
(8)本実施形態の窒化処理方法では、軟窒化処理温度が440℃以下で実施できることと、プロパンガス等から浸炭性ガスを生成するための別置の変成炉での加熱処理が不要なため、従来の例えば570℃で行うガス窒化処理方法に比べて、加熱温度が著しく低く、省エネルギー化を図ることができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1及び比較例1)
鉄鋼材料として、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の板材を使用した。このステンレス鋼の組成は、炭素(C)0.06質量%、シリカ(Si)0.43質量%、マンガン(Mn)1.11質量%、リン(P)0.031質量%、硫黄(S)0.005質量%、ニッケル(Ni)8.04質量%、クロム(Cr)18.07質量%、残部鉄(Fe)であった。
そして、実施例1では、窒化処理槽11内のカゴ13中に鉄鋼材料としてステンレス鋼の板材を支持した。また、スクリューコンベア16の投入口17から尿素を投入し、その尿素を、導入流路14を介して窒化処理槽11内に供給した。続いて、加熱装置19で窒化処理槽11内を加熱し、窒化処理槽11内の軟窒化処理温度を図3に示すように変化させ、尿素の熱分解及びステンレス鋼の軟窒化処理を行った。すなわち、総軟窒化処理時間が4時間までは窒化処理槽11内の軟窒化処理温度が440℃、その後総軟窒化処理時間が8時間までは温度が420℃となるように設定した。
この軟窒化処理によって得られたステンレス鋼表面の軟窒化層(拡散層)の厚さを、次のような方法で測定した。
すなわち、軟窒化処理後のステンレス鋼を切断した状態で、マーブル腐食液(硫酸銅4g、塩酸20ml及び水20mlの割合の混合液)に浸漬した後、ステンレス鋼の表面から、切断面の色調が異なる境界部までの厚さを測定し、軟窒化層の厚さとした。なお、ステンレス鋼の母材は黒色系で軟窒化層は白色系になるため、境界部を判別することができる。その結果、図4に示すように、母材30の表面に厚さ16μmで、ほぼ均一な厚さの軟窒化層31が形成されていた。
また、比較例1では、鉄鋼材料として実施例1と同じステンレス鋼を使用し、実施例1の軟窒化処理を行わなかった。
実施例1で軟窒化処理後に得られたステンレス鋼及び比較例1のステンレス鋼について、耐食性の試験(硫酸腐食試験)をJIS−G0591に準拠し、ステンレス鋼を5質量%硫酸水溶液中に6時間浸漬することによって行った。
その結果、比較例1の未処理のステンレス鋼では質量減少が10.0(g/m・h)であったのに対し、実施例1で得られた軟窒化処理後のステンレス鋼では質量減少を2.6(g/m・h)に抑えることができ、耐食性は良好であることが示された。
また、実施例1で得られた軟窒化処理後のステンレス鋼についてその表面から約10μmの深さの断面におけるビッカース硬さを測定した結果777HVで、表面は900〜1,000HVであった。
参考例1
前記実施例1において、窒化処理槽11内の軟窒化処理温度を終始400℃に保持した以外は、実施例1と同様にしてステンレス鋼の軟窒化処理を行った。その結果、得られたステンレス鋼表面の軟窒化層(拡散層)の厚さは、約1μmであった。この軟窒化処理後のステンレス鋼は、その表面に厚さ1μmの軟窒化層が形成されていることから、その表面における耐食性について実施例1とほぼ同等の効果が得られるものと推測される。
(比較例2及び3)
比較例2では、実施例1において、窒化処理槽11内の軟窒化処理温度を550℃の一定温度とした以外は実施例1と同様にして軟窒化処理を行った。比較例3では、比較例2おける浸炭窒化処理を行わなかった。そして、軟窒化処理後の比較例2のステンレス鋼及び未処理の比較例3のステンレス鋼について、下記に示す方法で耐食性の試験を行った。
すなわち、試験溶液として、濃度60質量%の濃硝酸を純水で希釈して濃度5質量%とした硝酸水を用いた。一方、ステンレス鋼の表面をアセトンで脱脂処理した。そして、ステンレス鋼を室温で濃度5質量%の硝酸水中に48時間浸漬し、浸漬前後の質量変化を測定した。
その結果、比較例3の未処理材ではステンレス鋼の質量減少が0.019(g/m・h)であったのに対し、比較例2ではステンレス鋼の質量減少が1.212(g/m・h)であった。従って、軟窒化処理温度を550℃という高温の一定温度で行った場合には、ステンレス鋼の表面に形成された軟窒化層(拡散層)の上に前記化合物層が形成されているため、耐食性が低下したものと考えられる。
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記窒化処理槽11内における軟窒化処理温度の上限を、前記温度領域R内において、440〜400℃に亘って3段階又は4段階以上に低下するように構成してもよい。
・ 前記窒化処理における軟窒化処理時間を、前記温度領域R内で適宜延長又は短縮するように設定してもよい。
・ 前記窒化処理槽11内におけるアンモニアガス、シアン化水素ガス又は一酸化炭素ガスの濃度を測定し、それらの濃度に基づいて温度領域R内で軟窒化処理温度や軟窒化処理時間を調整してもよい。
11…窒化処理槽、19…加熱装置、R…温度領域。

Claims (5)

  1. 尿素を含む窒化剤を加熱して熱分解し、その分解ガスにより軟窒化処理温度で鉄鋼材料の軟窒化処理を行う軟窒化処理方法において、
    前記軟窒化処理温度の下限は400℃であり、軟窒化処理温度の上限は440℃から400℃の範囲で少なくとも2段階で低下するように設定されているとともに、前処理を施すことなく軟窒化処理を行い、化合物層のない拡散層のみの軟窒化層を形成することを特徴とする軟窒化処理方法
  2. 前記軟窒化処理温度の下限は軟窒化処理時間に拘らず400℃であり、軟窒化処理温度の上限は総軟窒化処理時間が3〜5時間までは440℃、その後総軟窒化処理時間が6〜10時間までは420℃であることを特徴とする請求項1に記載の軟窒化処理方法。
  3. 前記窒化剤は尿素のみにより構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟窒化処理方法。
  4. 前記鉄鋼材料はステンレス鋼であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の軟窒化処理方法。
  5. 前記ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項4に記載の軟窒化処理方法。
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