JP2023028125A - 位相変調層の設計方法、及び、発光素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ノイズを低減可能な位相変調層の設計方法を提供する。【解決手段】半導体発光素子1Aの位相変調層15Aの設計方法は、位相変調層15Aの設計パターンを生成する工程S101~S104を備える。位相変調層15Aは、基本層15aと当該位相変調層15Aの厚さ方向に垂直な面内において二次元状に分布する複数の異屈折率領域15bと、を含む。工程S103では、異屈折率領域15bの分布が所望の光像に応じた分布となるように異屈折率領域15bを設計するためのパターンであって、当該光像の輝点に対応する輝点を含むパターンP10を生成する。工程S104では、パターンP10を複数の領域R4に分割し、それぞれの当該領域R4に含まれる複数の波数データCLのうちの少なくとも1つの波数データCLを間引く処理を行うことにより、パターンP10からパターンP20を生成する。【選択図】図37

Description

本開示は、位相変調層の設計方法、及び、発光素子の製造方法に関する。
二次元状に配列された複数の発光点から出射される光の位相分布及び強度分布を制御することにより任意の光像を出力する半導体発光素子が研究されている。このような半導体発光素子の構造の1つとして、活性層と光学的に結合された位相変調層を有する構造がある。位相変調層は、基本層と、基本層とは屈折率が異なる複数の異屈折率領域とを有し、位相変調層の厚さ方向に垂直な面内において仮想的な正方格子を設定した場合に、各異屈折率領域の重心位置が、光像に応じて仮想的な正方格子の格子点位置からずれている。このような半導体発光素子はS-iPM(Static-integrable Phase Modulating)レーザと呼ばれ、位相変調層が設けられた基板の主面に垂直な方向およびこれに対して傾斜した方向をも含む2次元的な任意形状の光像を出力する。非特許文献1には、S-iPMレーザに関する技術が記載されている。
Yoshitaka Kurosaka et al., "Phase-modulating lasers toward on-chip integration", Scientific Reports, 6:30138 (2016)
上述したような半導体発光素子は、一例として3D計測に応用され得る。上述した半導体発光素子を3D計測に応用する場合、正弦波縞状のパターンを有する光像を出射させることが考えられる。この場合、3D計測の精度向上のため、ノイズが低減されたパターンを有する光像の出射が望ましい。一方、3D計測及び縞状パターンに限らず、ノイズの低減が望まれている。
本開示は、ノイズを低減可能な位相変調層の設計方法、及び、発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
本開示に係る位相変調層の設計方法は、発光部と発光部に光学的に結合された位相変調層とを含むiPMSELとしての発光素子の位相変調層の設計方法であって、位相変調層の設計パターンを生成する生成工程を備え、位相変調層は、基本層と、基本層とは屈折率が異なり当該位相変調層の厚さ方向に垂直な面内において二次元状に分布する複数の異屈折率領域と、を含み、生成工程は、異屈折率領域の分布が発光素子の出力する光像に応じた分布となるように異屈折率領域を設計するためのパターンであって、光像の輝点に対応する輝点を含む第1設計パターンを生成する第1工程と、第1工程で生成された第1設計パターンを複数の領域に分割し、それぞれの当該領域に含まれる複数の輝点のうちの少なくとも1つの輝点を間引く処理を行うことにより、第1設計パターンから第2設計パターンを生成する第2工程と、を含む。
この設計方法では、iPMSEL(Static-integrable PhaseModulating Surface Emitting Lasers)である発光素子の位相変調層の設計に際して、まず、位相変調層の異屈折率領域の分布が発光素子の出力する光像に応じた分布となるように、異屈折率領域を設計するためのパターンであって、光像の輝点に対応する輝点を含む第1設計パターンを生成する。そして、第1設計パターンを複数の領域に分割し、それぞれの当該領域に含まれる複数の輝点のうちの少なくとも1つの輝点を間引く処理を行うことにより、第1設計パターンから第2設計パターンを生成する。このように生成された第2設計パターンに基づいて位相変調層を形成すると、発光素子から出力される光像のノイズを低減可能である。これは、設計パターン上で輝点の間引きを行うことにより、実際の光像において隣り合う輝点同士が干渉することが避けられることが一因と考えられる。
本開示に係る位相変調層の設計方法では、第1設計パターンは、光像に対応する波数空間上のパターンであり、第2工程では、波数空間上において二次元的に隣り合う4つの輝点を1つの領域とし、当該4つの輝点のうちの2つの輝点を間引いて第2設計パターンを生成してもよい。
或いは、本開示に係る位相変調層の設計方法では、第1設計パターンは、光像に対応する波数空間上のパターンであり、第2工程では、波数空間上において2次元的に隣り合う4つの輝点を1つの領域とし、当該4つの輝点のうちの3つの輝点を間引いて第2設計パターンを生成してもよい。これらのように、生成工程で生成される設計パターンは、発光素子から出力される所望の光像に対応した波数空間上のパターンで有り得る。そして、第2設計パターンの生成に際して、波数空間上の4つのまとまった輝点から2つ又は3つの輝点を間引くことにより、ノイズを低減できる。なお、波数空間上においてある輝点を間引くとは、当該パターンを構成するあるデータを相対的に小さくする(例えば0とする)ことを意味する。
本開示に係る位相変調層の設計方法では、第1工程では、第1設計パターンにおいて、光像のうちの1次光に対応する設計領域と光像のうちの-1次光に対応する設計領域とを分離させてもよい。この場合、さらにノイズを低減可能である。
本開示に係る発光素子の製造方法は、基板上に発光部を形成する第1形成工程と、上記のいずれかの位相変調層の設計方法により生成された第2設計パターンに基づいて、発光部に光学的に結合された位相変調層を形成する第2形成工程と、を備えてもよい。この場合、ノイズを低減可能な発光素子を製造できる。
本開示に係る発光素子の製造方法では、第1工程では、面内において仮想的な正方格子を設定した場合に、異屈折率領域のそれぞれの重心が、対応する格子点から離れて配置されるとともに、該格子点周りに光像に応じた位相分布に従う回転角度を有し、且つ、仮想的な正方格子の格子間隔aと発光部の発光波長λとがM点発振の条件を満たすように、第1設計パターンを生成し、第2形成工程では、位相変調層の逆格子空間上において、光像の角度広がりに対応した波数拡がりをそれぞれ含む4方向の面内波数ベクトルを形成し、該面内波数ベクトルのうち少なくとも1つの大きさが2π/λよりも小さくなるように、上記位相分布としての第1位相分布に別の第2位相分布を重畳し、当該重畳された位相分布を用いて複数の異屈折率領域を含む位相変調層を形成してもよい。この場合、発光素子から出力される光像から0次光を取り除くことが可能である。
本開示によれば、ノイズを低減可能な位相変調層の設計方法、及び、発光素子の製造方法を提供することできる。
本開示の一実施形態に係る発光装置として、半導体発光素子1Aの構成を示す斜視図である。 半導体発光素子1Aの積層構造を示す断面図である。 半導体発光素子1Aの積層構造を示す断面図である。 位相変調層15Aの平面図である。 位相変調層15Aの一部を拡大して示す図である。 位相変調層の特定領域内にのみ図4の屈折率略周期構造を適用した例を示す平面図である。 半導体発光素子1Aの出力ビームパターンが結像して得られる光像と、位相変調層15Aにおける回転角度分布φ(x,y)との関係を説明するための図である。 球面座標(r,θrottilt)からXYZ直交座標系における座標(ξ,η,ζ)への座標変換を説明するための図である。 各異屈折率領域15bの配置を決める際に、一般的な離散フーリエ変換(或いは高速フーリエ変換)を用いて計算する場合の留意点を説明するための図である。 Γ点で発振するPCSELのフォトニック結晶層に関する逆格子空間を示す平面図である。 図10に示された逆格子空間を立体的に見た斜視図である。 M点で発振するPCSELのフォトニック結晶層に関する逆格子空間を示す平面図である。 Γ点で発振するS-iPMSELの位相変調層に関する逆格子空間を示す平面図である。 図13に示された逆格子空間を立体的に見た斜視図である。 M点で発振するS-iPMSELの位相変調層に関する逆格子空間を示す平面図である。 面内波数ベクトルK6~K9に対して或る一定の大きさ及び向きを有する回折ベクトルVを加える操作を説明するための概念図である。 ライトラインLLの周辺構造を模式的に説明するための図である。 回転角度分布φ2(x,y)の一例を概念的に示す図である。 一実施例に係る位相変調層15Aの回転角度分布φ(x,y)を示す図である。 図19に示された部分Sを拡大して示す図である。 図19に示された回転角度分布φ(x,y)を有する半導体発光素子1Aから出力されるビームパターン(光像)を示す。 図21に示されたビームパターンの模式図である。 ビームパターンの(a)模式図及び(b)位相分布を示す図である。 ビームパターンの(a)模式図及び(b)位相分布を示す図である。 ビームパターンの(a)模式図及び(b)位相分布を示す図である。 4方向の面内波数ベクトルK6~K9から波数拡がりΔkを除いたものに対して回折ベクトルVを加える操作を説明するための概念図である。 第2変形例に係る位相変調層15Bの平面図である。 位相変調層15Bにおける異屈折率領域15bの位置関係を示す図である。 (a)~(g)異屈折率領域15bのXY平面内の形状の例を示す平面図である。 (a)~(k)異屈折率領域15bのXY平面内の形状の例を示す平面図である。 (a)~(k)異屈折率領域15bのXY平面内の形状の別の例を示す平面図である。 異屈折率領域のXY平面内の形状の別の例を示す平面図である。 第4変形例による発光装置1Bの構成を示す図である。 本実施形態に係る位相変調層の設計方法の一工程を示す図である。 本実施形態に係る位相変調層の設計方法の一工程を示す図である。 本実施形態に係る位相変調層の設計方法の一工程を示す図である。 図36に示された工程S104を説明するための図である。 本実施形態に係る位相変調層の設計方法の一工程を示す図である。 本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を示す図である。 本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を示す図である。 本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を示す図である。 本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を示す図である。 本実施形態に係る設計方法の作用効果を説明するための図ある。 本実施形態に係る設計方法の作用効果を説明するための図ある。 位相変調層の設計方法の変形例を説明するための図ある。
以下、添付図面を参照しながら発光素子に係る一実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[発光素子の一実施形態]
図1は、一実施形態に係る半導体発光素子1Aの構成を示す斜視図である。図2は、半導体発光素子1Aの積層構造を示す断面図である。なお、半導体発光素子1Aの中心を通り半導体発光素子1Aの厚さ方向に延びる軸をZ軸とするXYZ直交座標系を定義する。半導体発光素子(発光素子)1Aは、XY面内方向において定在波を形成し、位相制御された平面波をZ軸方向に出力するS-iPMSELであって、後述するように、半導体基板10の主面10aに垂直な方向(すなわちZ軸方向)またはこれに対して傾斜した方向、或いはその両方を含む二次元的な任意形状の光像を出力する。
図1及び図2に示されるように、半導体発光素子1Aは、半導体基板10上に設けられた発光部としての活性層12と、活性層12を挟む一対のクラッド層11及び13と、クラッド層13上に設けられたコンタクト層14と、を備える。これらの半導体基板10及び各層11~14は、例えばGaAs系半導体、InP系半導体、もしくは窒化物系半導体といった化合物半導体によって構成される。クラッド層11のエネルギーバンドギャップ、及びクラッド層13のエネルギーバンドギャップは、活性層12のエネルギーバンドギャップよりも大きい。半導体基板10及び各層11~14の厚さ方向は、Z軸方向と一致する。
半導体発光素子1Aは、活性層12と光学的に結合された位相変調層15Aを更に備える。本実施形態では、位相変調層15Aは活性層12とクラッド層13との間に設けられている。必要に応じて、活性層12とクラッド層13との間、及び活性層12とクラッド層11との間のうち少なくとも一方に、光ガイド層が設けられてもよい。位相変調層15Aの厚さ方向は、Z軸方向と一致する。なお、光ガイド層は、キャリアを活性層12に効率的に閉じ込めるためのキャリア障壁層を含んでも良い。
図3に示されるように、位相変調層15Aは、クラッド層11と活性層12との間に設けられてもよい。
位相変調層15Aは、第1屈折率媒質からなる基本層15aと、第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなり、基本層15a内に存在する複数の異屈折率領域15bとを含んで構成されている。複数の異屈折率領域15bは、略周期構造を含んでいる。モードの等価屈折率をnとした場合、位相変調層15Aが選択する波長λ0(=(√2)a×n、aは格子間隔)は、活性層12の発光波長範囲内に含まれている。位相変調層15Aは、活性層12の発光波長のうちの波長λ0近傍のバンド端波長を選択して、外部に出力することができる。位相変調層15A内に入射したレーザ光は、位相変調層15A内において異屈折率領域15bの配置に応じた所定のモードを形成し、所望のパターン(光像)を有するレーザビームとして、半導体発光素子1Aの表面から外部に出射される。
半導体発光素子1Aは、コンタクト層14上に設けられた電極16と、半導体基板10の裏面10b上に設けられた電極17とを更に備える。電極16はコンタクト層14とオーミック接触を成しており、電極17は半導体基板10とオーミック接触を成している。更に、電極17は開口17aを有する。電極16は、コンタクト層14の中央領域に設けられている。コンタクト層14上における電極16以外の部分は、保護膜18(図2を参照)によって覆われている。なお、電極16と接触していないコンタクト層14は、取り除かれても良い。半導体基板10の裏面10bのうち電極17以外の部分(開口17a内を含む)は、反射防止膜19によって覆われている。開口17a以外の領域にある反射防止膜19は取り除かれてもよい。
電極16と電極17との間に駆動電流が供給されると、活性層12内において電子と正孔の再結合が生じ、活性層12が発光する。この発光に寄与する電子及び正孔、並びに発生した光は、クラッド層11及びクラッド層13の間に効率的に閉じ込められる。
活性層12から出射された光は、位相変調層15Aの内部に入射し、位相変調層15Aの内部の格子構造に応じた所定のモードを形成する。位相変調層15Aから出射したレーザ光は、直接に、裏面10bから開口17aを通って半導体発光素子1Aの外部へ出力されるか、または、電極16において反射したのち、裏面10bから開口17aを通って半導体発光素子1Aの外部へ出力される。このとき、レーザ光に含まれる信号光は、主面10aに垂直な方向及びこれに対して傾斜した方向を含む二次元的な任意方向へ出射する。所望の光像を形成するのは信号光である。信号光は、主に、1次光及び-1次光である。後述するように、本実施形態の位相変調層15Aからは、0次光は出力されない。
或る例では、半導体基板10はGaAs基板であり、クラッド層11、活性層12、クラッド層13、コンタクト層14、及び位相変調層15Aは、それぞれIII族元素およびV族元素により構成される化合物半導体層である。一実施例では、クラッド層11はAlGaAs層であり、活性層12は多重量子井戸構造(障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs)を有し、位相変調層15Aの基本層15aはGaAsであり、異屈折率領域15bは空孔であり、クラッド層13はAlGaAs層であり、コンタクト層14はGaAs層である。
上記の場合、半導体基板10の厚さは50~300(μm)であり、一実施例では150μmである。素子を分離することが可能なのであれば半導体基板はこれより厚くてもよいし、逆に、別途支持基板を有する構造とする場合には必ずしも半導体基板は必要ではない。クラッド層11の厚さは500~10000(nm)であり、一実施例では2000(nm)である。活性層12の厚さは100~300(nm)であり、一実施例では175(nm)である。位相変調層15Aの厚さは100~500(nm)であり、一実施例では280(nm)である。クラッド層13の厚さは500~10000(nm)であり、一実施例では2000(nm)である。コンタクト層14の厚さは50~500(nm)であり、一実施例では150(nm)である。
AlGaAsにおいては、Alの組成比を変更することで、容易にエネルギーバンドギャップと屈折率を変えることができる。AlxGa1-xAsにおいて、相対的に原子半径の小さなAlの組成比xを減少(増加)させると、これと正の相関にあるエネルギーバンドギャップは小さく(大きく)なり、GaAsに原子半径の大きなInを混入させてInGaAsとすると、エネルギーバンドギャップは小さくなる。すなわち、クラッド層11,13のAl組成比は、活性層12の障壁層(AlGaAs)のAl組成比よりも大きい。クラッド層11,13のAl組成比は例えば0.2~1.0に設定され、一実施例では0.4である。活性層12の障壁層のAl組成比は例えば0~0.3に設定され、一実施例では0.15である。
別の例では、半導体基板10はInP基板であり、クラッド層11、活性層12、位相変調層15A、クラッド層13、及びコンタクト層14は、例えばInP系化合物半導体からなる。一実施例では、クラッド層11はInP層であり、活性層12は多重量子井戸構造(障壁層:GaInAsP/井戸層:GaInAsP)を有し、位相変調層15Aの基本層15aはGaInAsPまたはInPであり、異屈折率領域15bは空孔であり、クラッド層13はInP層であり、コンタクト層14はGaInAsP、GaInAsまたはInPである。
また、更に別の例では、半導体基板10はInP基板であり、クラッド層11、活性層12、位相変調層15A、クラッド層13、及びコンタクト層14は、例えばInP系化合物半導体からなる。一実施例では、クラッド層11はInP層であり、活性層12は多重量子井戸構造(障壁層:AlGaInAs/井戸層:AlGaInAs)を有し、位相変調層15Aの基本層15aはAlGaInAsまたはInPであり、異屈折率領域15bは空孔であり、クラッド層13はInP層であり、コンタクト層14はGaInAsまたはInP層である。この材料系や前の段落で述べたGaInAsP/InPを用いた材料系では、1.3/1.55μm帯の光通信波長に適用できると共に、1.4μmより長波長のアイセーフ波長の光を出射することもできる。
また、更に別の例では、半導体基板10はGaN基板であり、クラッド層11、活性層12、位相変調層15A、クラッド層13、及びコンタクト層14は、例えば窒化物系化合物半導体からなる。一実施例では、クラッド層11はAlGaN層であり、活性層12は多重量子井戸構造(障壁層:InGaN/井戸層:InGaN)を有し、位相変調層15Aの基本層15aはGaNであり、異屈折率領域15bは空孔であり、クラッド層13はAlGaN層であり、コンタクト層14はGaN層である。
クラッド層11には半導体基板10と同じ導電型が付与され、クラッド層13及びコンタクト層14には半導体基板10とは逆の導電型が付与される。一例では、半導体基板10及びクラッド層11はn型であり、クラッド層13及びコンタクト層14はp型である。位相変調層15Aは、活性層12とクラッド層11との間に設けられる場合には半導体基板10と同じ導電型を有し、活性層12とクラッド層13との間に設けられる場合には半導体基板10とは逆の導電型を有する。なお、不純物濃度は例えば1×1016~1×1021/cm3である。活性層12は、いずれの不純物も意図的に添加されていない真性(i型)であり、その不純物濃度は1×1016/cm3以下である。なお、位相変調層15Aの不純物濃度については、不純物準位を介した光吸収による損失の影響を抑制する必要がある場合等には、真性(i型)としてもよい。
上述の構造では、異屈折率領域15bが空孔となっているが、異屈折率領域15bは、基本層15aとは屈折率が異なる半導体が空孔内に埋め込まれて形成されてもよい。その場合、例えば基本層15aの空孔をエッチングにより形成し、有機金属気相成長法、スパッタ法又はエピタキシャル法を用いて半導体を空孔内に埋め込んでもよい。例えば、基本層15aがGaAsからなる場合、異屈折率領域15bはAlGaAsからなってもよい。また、基本層15aの空孔内に半導体を埋め込んで異屈折率領域15bを形成した後、更に、その上に異屈折率領域15bと同一の半導体を堆積してもよい。なお、異屈折率領域15bが空孔である場合、該空孔にアルゴン、窒素といった不活性ガス又は水素や空気などのガスが封入されてもよい。
反射防止膜19は、例えば、シリコン窒化物(例えばSiN)、シリコン酸化物(例えばSiO2)などの誘電体単層膜、或いは誘電体多層膜からなる。誘電体多層膜としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、二酸化シリコン(SiO2)、一酸化シリコン(SiO)、酸化ニオブ(Nb25)、五酸化タンタル(Ta25)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化セリウム(CeO2)、酸化インジウム(In23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)などの誘電体層群から選択される2種類以上の誘電体層を積層した膜を用いることができる。例えば、波長λの光に対する光学膜厚で、λ/4の厚さの膜を積層する。また、保護膜18は、例えばシリコン窒化物(例えばSiN)、シリコン酸化物(例えばSiO2)などの絶縁膜である。半導体基板10及びコンタクト層14がGaAs系半導体からなる場合、電極16は、Cr、Ti、及びPtのうち少なくとも1つと、Auとを含む材料により構成されることができ、例えばCr層及びAu層の積層構造を有する。電極17は、AuGe及びNiのうち少なくとも1つと、Auとを含む材料により構成されることができ、例えばAuGe層及びAu層の積層構造を有する。なお、電極16,17の材料は、オーミック接合が実現できればよく、これらの範囲に限定されない。
なお、電極形状を変形し、コンタクト層14の表面からレーザ光を出射することもできる。すなわち、電極17の開口17aが設けられず、コンタクト層14の表面において電極16が開口している場合、レーザビームはコンタクト層14の表面から外部に出射する。この場合、反射防止膜は、電極16の開口内及び周辺に設けられる。
図4は、位相変調層15Aの平面図である。位相変調層15Aは、第1屈折率媒質からなる基本層15aと、第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなる複数の異屈折率領域15bとを含む。ここで、位相変調層15Aに、XY面内における仮想的な正方格子を設定する。正方格子の一辺はX軸と平行であり、他辺はY軸と平行であるものとする。このとき、正方格子の格子点Oを中心とする正方形状の単位構成領域Rが、X軸に沿った複数列及びY軸に沿った複数行にわたって二次元状に設定され得る。それぞれの単位構成領域RのXY座標をぞれぞれの単位構成領域Rの重心位置で与えられることとすると、この重心位置は仮想的な正方格子の格子点Oに一致する。複数の異屈折率領域15bは、各単位構成領域R内に例えば1つずつ設けられる。異屈折率領域15bの平面形状は、例えば円形状である。格子点Oは、異屈折率領域15bの外部に位置しても良いし、異屈折率領域15bの内部に含まれていても良い。
1つの単位構成領域R内に占める異屈折率領域15bの面積Sの比率は、フィリングファクタ(FF)と称される。正方格子の格子間隔をaとすると、異屈折率領域15bのフィリングファクタFFはS/a2として与えられる。SはXY平面における異屈折率領域15bの面積であり、例えば異屈折率領域15bの形状が真円形状の場合には、真円の直径dを用いてS=π(d/2)2として与えられる。また、異屈折率領域15bの形状が正方形の場合には、正方形の一辺の長さLAを用いてS=LA2として与えられる。
図5は、位相変調層15Aの一部(単位構成領域R)を拡大して示す図である。図5に示されるように、異屈折率領域15bのそれぞれは重心Gを有する。ここで、格子点Oから重心Gに向かうベクトルとX軸との成す角度をφ(x,y)とする。xはX軸におけるx番目の格子点の位置、yはY軸におけるy番目の格子点の位置を示す。回転角度φが0°である場合、格子点Oと重心Gとを結ぶベクトルの向きはX軸の正方向と一致する。また、格子点Oと重心Gとを結ぶベクトルの長さをr(x,y)とする。一例では、r(x,y)はx、yによらず(位相変調層15A全体にわたって)一定である。
図4に示されるように、格子点Oと重心Gとを結ぶベクトルの向き、すなわち異屈折率領域15bの重心Gの格子点O周りの回転角度φは、所望の光像に応じた位相パターンに従って各格子点O毎に個別に設定される。位相パターンすなわち回転角度分布φ(x,y)は、x,yの値で決まる位置毎に特定の値を有するが、必ずしも特定の関数で表わされるとは限らない。すなわち、回転角度分布φ(x,y)は、所望の光像をフーリエ変換して得られる複素振幅分布のうち位相分布を抽出したものから決定される。なお、所望の光像から複素振幅分布を求める際には、ホログラム生成の計算時に一般的に用いられるGerchberg-Saxton(GS)法のような繰り返しアルゴリズムを適用することによって、ビームパターンの再現性が向上する。
図6は、位相変調層の特定領域内にのみ図4の屈折率略周期構造を適用した例を示す平面図である。図6に示す例では、正方形の内側領域RINの内部に、目的となるビームパターンを出射するための略周期構造(例:図4の構造)が形成されている。一方、内側領域RINを囲む外側領域ROUTには、正方格子の格子点位置に、重心位置が一致する真円形の異屈折率領域が配置されている。例えば、外側領域ROUTにおけるフィリングファクターFFは、12%に設定される。また、内側領域RINの内部も、外側領域ROUT内においても、仮想的に設定される正方格子の格子間隔は同一(=a)である。この構造の場合、外側領域ROUT内にも光が分布することにより、内側領域RINの周辺部において光強度が急激に変化することで生じる高周波ノイズ(いわゆる窓関数ノイズ)の発生を抑制することが出来るという利点がある。また、面内方向への光漏れを抑制することができ、閾値電流の低減が期待できる。
図7は、半導体発光素子1Aの出力ビームパターンが結像して得られる光像と、位相変調層15Aにおける回転角度分布φ(x,y)との関係を説明するための図である。なお、出力ビームパターンの中心Qは半導体基板10の主面10aに対して垂直な軸線上に位置するとは限らないが、垂直な軸線上に配置させることもできる。ここでは説明のため、中心Qが主面10aに対して垂直な軸線上にあるものとする。図7には、中心Qを原点とする4つの象限が示されている。図7では例として第1象限および第3象限に光像が得られる場合を示したが、第2象限および第4象限或いは全ての象限に像を得ることも可能である。本実施形態では、図7に示されるように、原点に関して点対称な光像が得られる。図7は、例として、第3象限に文字「A」が、第1象限に文字「A」を180度回転したパターンが、それぞれ得られる場合について示している。なお、回転対称な光像(例えば、十字、丸、二重丸など)である場合には、重なって一つの光像として観察される。
半導体発光素子1Aの出力ビームパターンの光像は、スポット、直線、十字架、線画、格子パターン、写真、縞状パターン、CG(コンピュータグラフィクス)、及び文字のうち少なくとも1つを含んでいる。ここで、所望の光像を得るためには、以下の手順によって位相変調層15Aの異屈折率領域15bの回転角度分布φ(x、y)を決定する。
本実施形態においては、以下の手順によって回転角度分布φ(x,y)を決定することにより、所望の光像を得ることができる。まず、第1の前提条件として、法線方向に一致するZ軸と、複数の異屈折率領域15bを含む位相変調層15Aの一方の面に一致した、互いに直交するX軸およびY軸を含むX-Y平面と、により規定されるXYZ直交座標系において、該X-Y平面上に、それぞれが正方形状を有するM1(1以上の整数)×N1(1以上の整数)個の単位構成領域Rにより構成される仮想的な正方格子が設定される。
第2の前提条件として、XYZ直交座標系における座標(ξ,η,ζ)は、図8に示されたように、動径の長さrと、Z軸からの傾き角θtiltと、X-Y平面上で特定されるX軸からの回転角θrotと、で規定される球面座標(r,θrottilt)に対して、以下の式(1)~式(3)で示された関係を満たしているものとする。なお、図8は、球面座標(r,θrottilt)からXYZ直交座標系における座標(ξ,η,ζ)への座標変換を説明するための図であり、座標(ξ,η,ζ)により、実空間であるXYZ直交座標系において設定される所定平面上の設計上の光像が表現される。半導体発光素子から出力される光像に相当するビームパターンを角度θtiltおよびθrotで規定される方向に向かう輝点の集合とするとき、角度θtiltおよびθrotは、以下の式(4)で規定される規格化波数であってX軸に対応したKx軸上の座標値kと、以下の式(5)で規定される規格化波数であってY軸に対応するとともにKx軸に直交するKy軸上の座標値kに換算されるものとする。規格化波数は、仮想的な正方格子の格子間隔に相当する波数2π/aを1.0として規格化された波数を意味する。このとき、Kx軸およびKy軸により規定される波数空間において、光像に相当するビームパターンを含む特定の波数範囲が、それぞれが正方形状のM2(1以上の整数)×N2(1以上の整数)個の画像領域FRで構成される。なお、整数M2は、整数M1と一致する必要はない。同様に、整数N2は、整数N1と一致する必要もない。また、式(4)および式(5)は、例えば、Y. Kurosaka et al.," Effects of non-lasing bandintwo-dimensional photonic-crystal lasers clarified using omnidirectionalbandstructure," Opt. Express 20, 21773-21783 (2012)に開示されている。
Figure 2023028125000002


Figure 2023028125000003


Figure 2023028125000004


Figure 2023028125000005


Figure 2023028125000006


a:仮想的な正方格子の格子定数
λ:半導体発光素子1Aの発振波長
第3の前提条件として、波数空間において、Kx軸方向の座標成分k(0以上M2-1以下の整数)とKy軸方向の座標成分k(0以上N2-1以下の整数)とで特定される画像領域FR(k,k)それぞれを、X軸方向の座標成分x(0以上M1-1以下の整数)とY軸方向の座標成分y(0以上N1-1以下の整数)とで特定されるX-Y平面上の単位構成領域R(x,y)に二次元逆離散フーリエ変換することで得られる複素振幅F(x,y)が、jを虚数単位として、以下の式(6)で与えられる。また、この複素振幅F(x,y)は、振幅項をA(x,y)とするとともに位相項をP(x,y)とするとき、以下の式(7)により規定される。更に、第4の前提条件として、単位構成領域R(x,y)が、X軸およびY軸にそれぞれ平行であって単位構成領域R(x,y)の中心となる格子点O(x,y)において直交するs軸およびt軸で規定される。
Figure 2023028125000007


Figure 2023028125000008

上記第1~第4の前提条件の下、位相変調層15Aは、以下の第1および第2条件を満たすよう構成される。すなわち、第1条件は、単位構成領域R(x,y)内において、重心Gが、格子点O(x,y)から離れた状態で配置されていることである。また、第2条件は、格子点O(x,y)から対応する重心Gまでの線分長r2(x,y)がM1個×N1個の単位構成領域Rそれぞれにおいて共通の値に設定された状態で、格子点O(x,y)と対応する重心Gとを結ぶ線分と、s軸と、の成す角度φ(x,y)が、以下の関係を満たすように、対応する異屈折率領域15bが単位構成領域R(x,y)内に配置されることである。
φ(x,y)=C×P(x,y)+B
C:比例定数であって例えば180°/π
B:任意の定数であって例えば0
フーリエ変換で得られた複素振幅分布から強度分布と位相分布を得る方法として、例えば強度分布I(x,y)については、MathWorks社の数値解析ソフトウェア「MATLAB(登録商標)」のabs関数を用いることにより計算することができ、位相分布P(x,y)については、MATLABのangle関数を用いることにより計算することができる。
ここで、光像のフーリエ変換結果から回転角度分布φ(x,y)を求め、各異屈折率領域15bの配置を決める際に、一般的な離散フーリエ変換(或いは高速フーリエ変換)を用いて計算する場合の留意点を述べる。フーリエ変換前の光像を図9(a)のようにA1,A2,A3,及びA4といった4つの象限に分割すると、得られるビームパターンは図9(b)のようになる。つまり、ビームパターンの第1象限には、図9(a)の第1象限を180度回転したものと図9(a)の第3象限が重畳したパターンが現れ、ビームパターンの第2象限には図9(a)の第2象限を180度回転したものと図9(a)の第4象限が重畳したパターンが現れ、ビームパターンの第3象限には図9(a)の第3象限を180度回転したものと図9(a)の第1象限が重畳したパターンが現れ、ビームパターンの第4象限には図9(a)の第4象限を180度回転したものと図9(a)の第2象限が重畳したパターンが現れる。
従って、フーリエ変換前の光像(元の光像)として第1象限のみに値を有するものを用いた場合には、得られるビームパターンの第3象限に元の光像の第1象限が現れ、得られるビームパターンの第1象限に元の光像の第1象限を180度回転したパターンが現れる。
このように、半導体発光素子1Aにおいては、波面が位相変調されていることによって所望のビームパターンが得られる。このビームパターンは、一対の単峰ビーム(スポット)であるばかりでなく、前述したように、文字形状、2以上の同一形状スポット群、或いは、位相、強度分布が空間的に不均一であるベクトルビームなどとすることも可能である。
なお、基本層15aの屈折率は3.0~3.5、異屈折率領域15bの屈折率は1.0~3.4であることが好ましい。また、基本層15aの孔内の各異屈折率領域15bの平均半径は、940nm帯の場合、例えば20nm~90nmである。各異屈折率領域15bの大きさが変化することによって回折強度が変化する。この回折効率は、異屈折率領域15bの形状をフーリエ変換した際の係数で表される光結合係数に比例する。光結合係数については、例えばY. Liang et al., “Three-dimensionalcoupled-wave analysis for square-lattice photoniccrystal surface emittinglasers with transverse-electric polarization:finite-size effects,”Optics Express 20, 15945-15961 (2012)に記載されている。
次に、本実施形態の位相変調層15Aの特徴について詳細に説明する。本実施形態では、仮想的な正方格子の格子間隔aと活性層12の発光波長λとがM点発振の条件を満たす。更に、位相変調層15Aにおいて逆格子空間を考えるとき、回転角度分布φ(x,y)による位相変調を受け、光像の角度広がりに対応した波数拡がりをそれぞれ含む定在波を形成する4方向の面内波数ベクトルが形成される。そして、該面内波数ベクトルのうち少なくとも1つの大きさが、2π/λ(ライトライン)よりも小さい。以下、これらの点に関して詳細に説明する。
まず、比較のためΓ点で発振するフォトニック結晶レーザ(PCSEL)について説明する。PCSELは、活性層と、複数の異屈折率領域が二次元状に周期的に配列されてなるフォトニック結晶層を有し、フォトニック結晶層の厚さ方向に垂直な面内において異屈折率領域の配列周期に応じた発振波長でもって定在波を形成しつつ、半導体基板の主面に垂直な方向にレーザ光を出力する半導体素子である。また、Γ点発振のためには、仮想的な正方格子の格子間隔a、活性層12の発光波長λ、及びモードの等価屈折率nがλ=naといった条件を満たすとよい。
図10は、Γ点で発振するPCSELのフォトニック結晶層に関する逆格子空間を示す平面図である。この図は、複数の異屈折率領域が正方格子の格子点上に位置する場合を示し、図中の点Pは逆格子点を表す。また、図中の矢印B1は基本逆格子ベクトルを表し、矢印B2はそれぞれ基本逆格子ベクトルB1の2倍の逆格子ベクトルを表す。また、矢印K1,K2,K3,及びK4は4つの面内波数ベクトルを表す。4つの面内波数ベクトルK1,K2,K3,及びK4は、90°及び180°の回折を介して互いに結合し、定在波状態を形成している。ここで、逆格子空間において互いに直交するΓ-X軸及びΓ-Y軸を定義する。Γ-X軸は正方格子の一辺と平行であり、Γ-Y軸は正方格子の他辺と平行である。面内波数ベクトルとは、波数ベクトルをΓ-X・Γ-Y平面内に投影したベクトルである。すなわち、面内波数ベクトルK1はΓ-X軸正方向を向き、面内波数ベクトルK2はΓ-Y軸正方向を向き、面内波数ベクトルK3はΓ-X軸負方向を向き、面内波数ベクトルK4はΓ-Y軸負方向を向く。図10から明らかなように、Γ点で発振するPCSELにおいては、面内波数ベクトルK1~K4の大きさ(すなわち面内方向の定在波の大きさ)は、基本逆格子ベクトルB1の大きさと等しい。なお、面内波数ベクトルK1~K4の大きさをkとすると、下記式(8)となる。
Figure 2023028125000009

図11は、図10に示された逆格子空間を立体的に見た斜視図である。図11には、Γ-X軸及びΓ-Y軸の方向と直交するZ軸が示されている。このZ軸は、図1に示されたZ軸と同一である。図11に示されるように、Γ点で発振するPCSELの場合、回折によって面内方向の波数が0となり、面垂直方向(Z軸方向)への回折が生じる(図中の矢印K5)。従って、レーザ光は基本的にZ軸方向に出力される。
次に、M点で発振するPCSELについて説明する。M点発振のためには、仮想的な正方格子の格子間隔a、活性層12の発光波長λ、及びモードの等価屈折率nがλ=(√2)n×aといった条件を満たすとよい。図12は、M点で発振するPCSELのフォトニック結晶層に関する逆格子空間を示す平面図である。この図もまた、複数の異屈折率領域が正方格子の格子点上に位置する場合を示し、図中の点Pは逆格子点を表す。また、図中の矢印B1は図10と同様の基本逆格子ベクトルを表し、矢印K6,K7,K8,及びK9は4つの面内波数ベクトルを表す。ここで、逆格子空間において互いに直交するΓ-M1軸及びΓ-M2軸を定義する。Γ-M1軸は正方格子の一方の対角方向と平行であり、Γ-M2軸は正方格子の他方の対角方向と平行である。面内波数ベクトルとは、波数ベクトルをΓ-M1・Γ-M2平面内に投影したベクトルである。すなわち、面内波数ベクトルK6はΓ-M1軸正方向を向き、面内波数ベクトルK7はΓ-M2軸正方向を向き、面内波数ベクトルK8はΓ-M1軸負方向を向き、面内波数ベクトルK9はΓ-M2軸負方向を向く。図12から明らかなように、M点で発振するPCSELにおいては、面内波数ベクトルK6~K9の大きさ(すなわち面内方向の定在波の大きさ)は、基本逆格子ベクトルB1の大きさよりも小さい。なお、面内波数ベクトルK6~K9の大きさをkとすると、下記式(9)となる。
Figure 2023028125000010

回折は波数ベクトルK6~K9に逆格子ベクトルG(=2mπ/a、m:整数)のベクトル和の方向に生じるが、M点で発振するPCSELの場合、回折によって面内方向の波数が0となり得ず、面垂直方向(Z軸方向)への回折は生じない。従って、レーザ光は出力されないため、通常、PCSELにおいてM点発振は用いられない。
次に、Γ点で発振するS-iPMSELについて説明する。なお、Γ点発振の条件は前述したPCSELの場合と同様である。図13は、Γ点で発振するS-iPMSELの位相変調層に関する逆格子空間を示す平面図である。基本逆格子ベクトルB1はΓ点発振のPCSELと同様(図10を参照)であるが、面内波数ベクトルK1~K4は、回転角度分布φ(x,y)による位相変調を受け、光像の広がり角に対応した波数拡がりSPをそれぞれ有する。波数拡がりSPは、Γ点発振のPCSELにおける各面内波数ベクトルK1~K4の先端を中心とし、x軸方向及びy軸方向の辺の長さがそれぞれ2Δkxmax、2Δkymaxの矩形領域として表現できる。このような波数拡がりSPによって、各面内波数ベクトルK1~K4は(Kix+Δkx、Kiy+Δky)の矩形状の範囲に広がる(i=1~4、KixはベクトルKiのx方向成分、KiyはベクトルKiのy方向成分)。ここで、-Δkxmax≦Δkx≦Δkxmax、-Δkymax≦Δky≦Δkymaxとなる。なお、Δkxmax及びΔkymaxの大きさは、光像の広がり角に応じて定まる。言い換えると、Δkxmax及びΔkymaxの大きさは、半導体発光素子1Aに表示させようとする光像に依存する。
図14は、図13に示された逆格子空間を立体的に見た斜視図である。図14には、Γ-X軸及びΓ-Y軸の方向と直交するZ軸が示されている。このZ軸は、図1に示されたZ軸と同一である。図14に示されるように、Γ点で発振するS-iPMSELの場合、面垂直方向(Z軸方向)への0次光のみでなく、Z軸方向に対して傾斜した方向への1次光及び-1次光を含む2次元的な拡がりを有する光像(ビームパターン)LMが出力される。
次に、M点で発振するS-iPMSELについて説明する。なお、M点発振の条件は前述したPCSELの場合と同様である。図15は、M点で発振するS-iPMSELの位相変調層に関する逆格子空間を示す平面図である。基本逆格子ベクトルB1はM点発振のPCSELと同様(図12を参照)であるが、面内波数ベクトルK6~K9は、回転角度分布φ(x,y)による波数拡がりSPをそれぞれ有する。なお、波数拡がりSPの形状及び大きさは、上述したΓ点発振の場合と同様である。S-iPMSELにおいても、M点発振の場合には面内波数ベクトルK6~K9の大きさ(すなわち面内方向の定在波の大きさ)は基本逆格子ベクトルB1の大きさよりも小さい。従って、回折によって面内方向の波数が0となり得ず、面垂直方向(Z軸方向)への回折は生じない。従って、面垂直方向(Z軸方向)への0次光、並びにZ軸方向に対して傾斜した方向への1次光及び-1次光の双方が出力されない。
ここで、本実施形態においては、M点で発振するS-iPMSELにおいて次のような工夫を位相変調層15Aに施すことにより、0次光を出力しないまま、1次光及び-1次光の一部を出力する。具体的には、図16に示されるように、面内波数ベクトルK6~K9に対して或る一定の大きさ及び向きを有する回折ベクトルVを加えることにより、面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つ(図では面内波数ベクトルK8)の大きさを、2π/λよりも小さくする。言い換えると、回折ベクトルVが加えられた後の面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つ(面内波数ベクトルK8)は、半径2π/λの円状領域(ライトライン)LL内に収まる。なお、図16において破線で示される面内波数ベクトルK6~K9は回折ベクトルVの加算前を表し、実線で示される面内波数ベクトルK6~K9は回折ベクトルVの加算後を表す。ライトラインLLは全反射条件に対応しており、ライトラインLL内に収まる大きさの波数ベクトルは面垂直方向(Z軸方向)の成分を有することとなる。一例では、回折ベクトルVの方向はΓ-M1軸またはΓ-M2軸に沿っており、その大きさは2π/(√2)a-2π/λから2π/(√2)a+2π/λの範囲内となり、一例として、2π/(√2)aとなる。)
面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つをライトラインLL内に収めるための回折ベクトルVの大きさ及び向きについて検討する。下記の数式(10)~(13)は、回折ベクトルVが加えられる前の面内波数ベクトルK6~K9を示す。
Figure 2023028125000011


Figure 2023028125000012


Figure 2023028125000013


Figure 2023028125000014

なお、波数ベクトルの広がりΔkx及びΔkyは、下記の数式(14)及び(15)をそれぞれ満たし、面内波数ベクトルのx軸方向の広がりの最大値Δkxmax及びy軸方向の広がりの最大値Δkymaxは、設計の光像の角度広がりにより規定される。
Figure 2023028125000015


Figure 2023028125000016

ここで、回折ベクトルVを下記の数式(16)のように表したとき、回折ベクトルVが加えられた後の面内波数ベクトルK6~K9は下記の数式(17)~(20)となる。
Figure 2023028125000017


Figure 2023028125000018


Figure 2023028125000019


Figure 2023028125000020


Figure 2023028125000021

数式(17)~(20)において波数ベクトルK6~K9のいずれかがライトラインLL内に収まることを考慮すると、下記の数式(21)の関係が成り立つ。
Figure 2023028125000022

すなわち、数式(21)を満たす回折ベクトルVを加えることにより、波数ベクトルK6~K9のいずれかがライトラインLL内に収まり、1次光及び-1次光の一部が出力される。
なお、ライトラインLLの大きさ(半径)を2π/λとしたのは次の理由による。図17は、ライトラインLLの周辺構造を模式的に説明するための図であって、Z軸方向に垂直な方向から見たデバイスと空気との境界を示している。真空中の光の波数ベクトルの大きさは2π/λとなるが、図17のようにデバイス媒質中を光が伝搬するとき、屈折率nの媒質内の波数ベクトルKaの大きさは2πn/λとなる。このとき、デバイスと空気の境界を光が伝搬するためには、境界に平行な波数成分が連続している必要がある(波数保存則)。図17で波数ベクトルKaとZ軸とが角度θをなす場合、面内に投影した波数ベクトル(すなわち面内波数ベクトル)Kbの長さは(2πn/λ)sinθとなる。一方で、一般に媒質の屈折率n>1の関係から、媒質内の面内波数ベクトルKbが2π/λより大きくなる角度では波数保存則が成立しなくなる。このとき、光は全反射し、空気側に取り出すことが出来ない。この全反射条件に対応する波数ベクトルの大きさがライトラインLLの大きさとなり、2π/λとなる。
面内波数ベクトルK6~K9に回折ベクトルVを加える具体的な方式の一例として、光像に応じた位相分布である回転角度分布φ1(x,y)(第1の位相分布)に対し、光像とは無関係の回転角度分布φ2(x,y)(第2の位相分布)を重畳する方式が考えられる。この場合、位相変調層15Aの回転角度分布φ(x,y)は、下記式として表される。
φ(x,y)=φ1(x,y)+φ2(x,y)
φ1(x,y)は、前に述べたように光像をフーリエ変換したときの複素振幅の位相に相当する。また、φ2(x,y)は、上記の数式(21)を満たす回折ベクトルVを加えるための回転角度分布である。図18は、回転角度分布φ2(x,y)の一例を概念的に示す図である。図18に示されるように、この例では、第1の位相値φAと、第1の位相値φAとは異なる値の第2の位相値φBとが市松模様に配列されている。一実施例では、位相値φAは0(rad)であり、位相値φBはπ(rad)である。すなわち、第1の位相値φAと、第2の位相値φBとがπずつ変化する。このような位相値の配列によって、Γ-M1軸またはΓ-M2軸に沿う回折ベクトルVを好適に実現することができる。前述の通り市松模様に配列した場合にはV=(±π/a,±π/a)のように図15の波数ベクトルK6~K9と丁度相殺する。また、位相値φA,φBの配列方向を45°から変化させることにより、回折ベクトルVの向きを任意の向きに調整することができる。なお、回折ベクトルVの角度分布θ(x,y)は、回折ベクトルV(Vx,Vy)と位置ベクトルr(x,y)との内積で表され、次式で与えられる。φ(x,y)=V・r=Vxx+Vyy。ビームの中心方向を面垂直方向にする場合、回折ベクトルVはM点の面内波数ベクトルK6~K9をキャンセルする必要があるため、V=(±π/a,±π/a)となる。一方でVをこの値から変化すると、面垂直方向から傾いたビームを出射することが出来る。
なお、上述の構造において、活性層12および位相変調層15Aを含む構成であれば、材料系、膜厚、層の構成は様々に変更され得る。ここで、仮想的な正方格子からの摂動が0の場合のいわゆる正方格子フォトニック結晶レーザに関してはスケーリング則が成り立つ。すなわち、波長が定数α倍となった場合には、正方格子構造全体をα倍することによって同様の定在波状態を得ることが出来る。同様に、本実施形態においても、波長に応じたスケーリング則によって位相変調層15Aの構造を決定することが可能である。従って、青色、緑色、赤色などの光を発光する活性層12を用い、波長に応じたスケーリング則を適用することで、可視光を出力する半導体発光素子1Aを実現することも可能である。
半導体発光素子1Aを製造する際、各化合物半導体層の成長には、有機金属気相成長(MOCVD)法若しくは分子線エピタキシー法(MBE)を用いる。AlGaAsを用いた半導体発光素子1Aの製造においては、AlGaAsの成長温度は500℃~850℃であって、実験では550~700℃を採用し、成長時におけるAl原料としてTMA(トリメチルアルミニウム)、ガリウム原料としてTMG(トリメチルガリウム)およびTEG(トリエチルガリウム)、As原料としてはAsH3(アルシン)、n型不純物用の原料としてSi26(ジシラン)、p型不純物用の原料としてDEZn(ジエチル亜鉛)を用いる。GaAsの成長においては、TMGとアルシンを用いるが、TMAを用いない。InGaAsは、TMGとTMI(トリメチルインジウム)とアルシンを用いて製造する。絶縁膜の形成は、その構成物質を原料としてターゲットをスパッタするか、またはPCVD(プラズマCVD)法により形成すればよい。
すなわち、上述の半導体発光素子1Aは、まず、n型の半導体基板10としてのGaAs基板上に、n型のクラッド層11としてのAlGaAs層、活性層12としてのInGaAs/AlGaAs多重量子井戸構造、位相変調層15Aの基本層15aとしてのGaAs層を、MOCVD(有機金属気相成長)法を用いて順次、エピタキシャル成長させる。
次に、基本層15aに別のレジストを塗布し、レジスト上に電子ビーム描画装置で2次元微細パターンを描画し、現像することでレジスト上に2次元微細パターンを形成する。その後、レジストをマスクとして、ドライエッチングにより2次元微細パターンを基本層15a上に転写し、孔(穴)を形成したのち、レジストを除去する。なお、レジスト形成前にSiN層やSiO2層をPCVD法で基本層15a上に形成し、その上にレジストマスクを形成し、反応性イオンエッチング(RIE)を使ってSiN層やSiO2層に微細パターンを転写し、レジストを除去してからドライエッチングしても良い。この場合、ドライエッチングの耐性を高めることができる。これらの孔を異屈折率領域15bとするか、或いは、これらの孔の中に、異屈折率領域15bとなる化合物半導体(AlGaAs)を孔の深さ以上に再成長させる。孔を異屈折率領域15bとする場合、孔内に空気、窒素、水素又はアルゴン等の気体を封入してもよい。次に、クラッド層13としてのAlGaAs層、コンタクト層14としてのGaAs層を順次MOCVDで形成し、電極16,17を蒸着法又はスパッタ法により形成する。また、必要に応じて、保護膜18及び反射防止膜19をスパッタやPCVD法等により形成する。
なお、位相変調層15Aを活性層12とクラッド層11との間に設ける場合には、活性層12の形成前に、クラッド層11上に位相変調層15Aを形成すればよい。
以上に説明した、本実施形態による半導体発光素子1Aによって得られる効果について説明する。この半導体発光素子1Aでは、複数の異屈折率領域15bの各重心Gが、仮想的な正方格子の対応する格子点Oから離れて配置されるとともに、該格子点O周りに光像に応じた回転角度を有する。このような構造によれば、S-iPMSELとして、半導体基板10の主面10aに垂直な方向(Z軸方向)または垂直な方向に対して傾斜した方向に任意形状の光像を出力することができる。また、この半導体発光素子1Aでは、仮想的な正方格子の格子間隔aと活性層12の発光波長λとが、M点発振の条件を満たす。通常、M点発振の定在波状態においては位相変調層15A内を伝搬する光が全反射してしまい、信号光(1次光及び-1次光)と0次光との双方の出力が抑制される。しかしながら、この半導体発光素子1Aでは、位相変調層15Aの逆格子空間上において、回転角度分布φ(x,y)による波数拡がりΔkをそれぞれ含む4方向の面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさが2π/λ(ライトラインLL)よりも小さくなっている。S-iPMSELでは、例えば回転角度分布φ(x,y)を工夫することにより、このような面内波数ベクトルK6~K9の調整が可能である。そして、少なくとも1つの面内波数ベクトルの大きさが2π/λよりも小さい場合、その面内波数ベクトルはZ軸方向の成分を有するので、結果的に信号光の一部が位相変調層15Aから出力されることとなる。但し、0次光は依然としてM点の定在波を形成する4つの波数ベクトル(±π/a、±π/a)のどれか1つと一致する方向で面内に閉じ込められるため、位相変調層15Aからライトライン内に出力されない。すなわち、本実施形態の半導体発光素子1Aによれば、S-iPMSELの出力に含まれる0次光をライトライン内から取り除き、信号光のみをライトライン内に出力することができる。
また、本実施形態のように、回転角度分布φ(x,y)は、光像に応じた回転角度分布φ1(x,y)と光像とは無関係の回転角度分布φ2(x,y)とが重畳されてなってもよい。その場合、回転角度分布φ2(x,y)は、位相変調層15Aの逆格子空間上において、回転角度分布φ1(x,y)による4方向の面内波数ベクトルK6~K9に対して或る一定の大きさ及び向きを有する回折ベクトルVを加えるための回転角度分布であってもよい。そして、4方向の面内波数ベクトルK6~K9に回折ベクトルVが加えられた結果、4方向の面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさが2π/λよりも小さくなってもよい。これにより、逆格子空間上において回転角度分布φ(x,y)による波数拡がりΔkx、Δkyをそれぞれ含む4方向の面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさが2π/λ(ライトライン)よりも小さい構成を容易に実現することができる。
また、本実施形態のように、回転角度分布φ2(x,y)は、互いに値が異なる位相値φA,φBが市松模様に配列されたパターンであってもよい。このような回転角度分布φ2(x,y)により、上述した回折ベクトルVを容易に実現することができる。
図19は、一実施例に係る位相変調層15Aの回転角度分布φ(x,y)を示す図である。また、図20は、図19に示された部分Sを拡大して示す図である。図19及び図20において、回転角度の大きさは色の濃淡で表されており、濃い領域ほど回転角度が大きい(すなわち位相角が大きい)ことを示している。図20を参照すると、互いに値が異なる位相値が市松模様に配列されたパターンが重畳されていることがわかる。図21は、図19に示された回転角度分布φ(x,y)を有する半導体発光素子1Aから出力されるビームパターン(光像)を示す。また、図22は、図21に示されたビームパターンの模式図である。図21及び図22の中心はZ軸に対応する。図21及び図22から明らかなように、半導体発光素子1Aは、Z軸に対して傾斜した第1方向に出力される第1光像部分LM1を含む1次光と、Z軸に関して第1方向と対称である第2方向に出力され、Z軸に関して第1光像部分LM1と回転対称である第2光像部分LM2を含む-1次光とを出力するが、Z軸上を進む0次光は出力しない。
本実施形態では、Z軸を含み、Z軸に関して対称なパターンを出力することもできる。このとき0次光がないため、Z軸上でもパターンの強度ムラを生じない。このようなビームパターンの設計例として、5×5の多点、メッシュ、及び1次元パターンがある。これらのビームパターンの模式図及び位相分布を図23、図24、及び図25に示す。このようなビームパターンは、例えば物体検知や3次元計測などに応用することができ、アイセーフ波長等を用いることで、目に安全な光源を提供することもできる。
[発光素子の第1変形例]
上述した実施形態では、光像の角度広がりに基づく波数広がりが、波数空間上の或る点を中心とする半径Δkの円に含まれる場合、次のように簡略に考えることもできる。4方向の面内波数ベクトルK6~K9に回折ベクトルVを加えることにより、4方向の面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさを2π/λ(ライトラインLL)よりも小さくする。これは、4方向の面内波数ベクトルK6~K9から波数拡がりΔkを除いたもの(すなわちM点発振の正方格子PCSELにおける4方向の面内波数ベクトル、図12を参照)に対して回折ベクトルVを加えることにより、4方向の面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさを、2π/λから波数拡がりΔkを差し引いた値{(2π/λ)-Δk}より小さくすると考えてもよい。
図26は、上記の操作を概念的に示す図である。同図に示されるように、波数拡がりΔkを除いた面内波数ベクトルK6~K9に対して回折ベクトルVを加えることにより、面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさを{(2π/λ)-Δk}よりも小さくする。図中において、領域LL2は半径が{(2π/λ)-Δk}の円状の領域である。なお、図26において破線で示される面内波数ベクトルK6~K9は回折ベクトルVの加算前を表し、実線で示される面内波数ベクトルK6~K9は回折ベクトルVの加算後を表す。領域LL2は全反射条件に対応しており、領域LL2内に収まる大きさの波数ベクトルは面垂直方向(Z軸方向)にも伝搬することとなる。
本変形例において、面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つを領域LL2内に収めるための回折ベクトルVの大きさ及び向きを説明する。下記の数式(22)~(25)は、回折ベクトルVが加えられる前の面内波数ベクトルK6~K9を示す。
Figure 2023028125000023


Figure 2023028125000024


Figure 2023028125000025


Figure 2023028125000026

ここで、回折ベクトルVを前述した数式(16)のように表したとき、回折ベクトルVが加えられた後の面内波数ベクトルK6~K9は下記の数式(26)~(29)となる。
Figure 2023028125000027


Figure 2023028125000028


Figure 2023028125000029


Figure 2023028125000030

数式(26)~(29)において面内波数ベクトルK6~K9のいずれかが領域LL2内に収まることを考慮すると、下記の数式(30)の関係が成り立つ。
Figure 2023028125000031

すなわち、数式(30)を満たす回折ベクトルVを加えることにより、波数拡がりΔkを除いた面内波数ベクトルK6~K9のいずれかが領域LL2内に収まる。このような場合であっても、0次光を出力しないまま、1次光及び-1次光の一部を出力することができる。
[発光素子の第2変形例]
図27は、上記実施形態の第2変形例に係る位相変調層15Bの平面図である。また、図28は、位相変調層15Bにおける異屈折率領域15bの位置関係を示す図である。図27及び図28に示されるように、本変形例の各異屈折率領域15bの重心Gは、直線D上に配置されている。直線Dは、各単位構成領域Rの対応する格子点Oを通り、正方格子の各辺に対して傾斜する直線である。言い換えると、直線Dは、X軸及びY軸の双方に対して傾斜する直線である。正方格子の一辺(X軸)に対する直線Dの傾斜角はθである。傾斜角θは、位相変調層15B内において一定である。傾斜角θは、0°<θ<90°を満たし、一例ではθ=45°である。または、傾斜角θは、180°<θ<270°を満たし、一例ではθ=225°である。傾斜角θが0°<θ<90°または180°<θ<270°を満たす場合、直線Dは、X軸及びY軸によって規定される座標平面の第1象限から第3象限にわたって延びる。或いは、傾斜角θは、90°<θ<180°を満たし、一例ではθ=135°である。或いは、傾斜角θは、270°<θ<360°を満たし、一例ではθ=315°である。傾斜角θが90°<θ<180°または270°<θ<360°を満たす場合、直線Dは、X軸及びY軸によって規定される座標平面の第2象限から第4象限にわたって延びる。このように、傾斜角θは、0°、90°、180°及び270°を除く角度である。ここで、格子点Oと重心Gとの距離をr(x,y)とする。xはX軸におけるx番目の格子点の位置、yはY軸におけるy番目の格子点の位置を示す。距離r(x,y)が正の値である場合、重心Gは第1象限(または第2象限)に位置する。距離r(x,y)が負の値である場合、重心Gは第3象限(または第4象限)に位置する。距離r(x,y)が0である場合、格子点Oと重心Gとは互いに一致する。傾斜角度は45°、135°、225°、275°が好適となり、これらの角度では、M点の定在波を形成する4つの波数ベクトル(例えば、面内波数ベクトル(±π/a、±π/a))の中の2つだけを位相変調し、その他の2つは位相変調しないため、安定した定在波を形成することができる。
図27に示される、各異屈折率領域の重心Gと、各単位構成領域Rの対応する格子点Oとの距離r(x,y)は、所望の光像に応じた位相パターンに従って各異屈折率領域15b毎に個別に設定される。位相パターンすなわち距離r(x,y)の分布は、x,yの値で決まる位置毎に特定の値を有するが、必ずしも特定の関数で表わされるとは限らない。距離r(x,y)の分布は、所望の光像を逆フーリエ変換して得られる複素振幅分布のうち位相分布を抽出したものから決定される。すなわち、図28に示される、或る座標(x,y)における位相P(x,y)がP0である場合には距離r(x,y)を0と設定し、位相P(x,y)がπ+P0である場合には距離r(x,y)を最大値R0に設定し、位相P(x,y)が-π+P0である場合には距離r(x,y)を最小値-R0に設定する。そして、その中間の位相P(x,y)に対しては、r(x,y)={P(x,y)-P0}×R0/πとなるように距離r(x,y)をとる。ここで、初期位相P0は任意に設定することができる。仮想的な正方格子の格子間隔をaとすると、r(x,y)の最大値R0は例えば下記式(31)の範囲である。
Figure 2023028125000032

なお、所望の光像から複素振幅分布を求める際には、ホログラム生成の計算時に一般的に用いられるGerchberg-Saxton(GS)法のような繰り返しアルゴリズムを適用することによって、ビームパターンの再現性が向上する。
本変形例においては、位相変調層15Bの異屈折率領域15bの距離r(x,y)の分布を決定することにより、所望の光像を得ることができる。上記実施形態と同様の第1~第4の前提条件の下、位相変調層15Bは、以下の条件を満たすよう構成される。すなわち、格子点O(x,y)から対応する異屈折率領域15bの重心Gまでの距離r(x,y)が、以下の関係を満たすように、該対応する異屈折率領域15bが単位構成領域R(x,y)内に配置される。
r(x,y)=C×(P(x,y)-P0
C:比例定数で例えばR0/π
0:任意の定数であって例えば0
すなわち、距離r(x,y)は、或る座標(x,y)における位相P(x,y)がP0である場合には0に設定され、位相P(x,y)がπ+P0である場合には最大値R0に設定され、位相P(x,y)が-π+P0である場合には最小値-R0に設定される。所望の光像を得たい場合、該光像を逆フーリエ変換して、その複素振幅の位相P(x,y)に応じた距離r(x,y)の分布を、複数の異屈折率領域15bに与えるとよい。位相P(x,y)と距離r(x,y)とは、互いに比例してもよい。
上記実施形態と同様に、逆フーリエ変換で得られた複素振幅分布から強度分布と位相分布を得る方法として、例えば強度分布I(x,y)については、MathWorks社の数値解析ソフトウェア「MATLAB」のabs関数を用いることにより計算することができ、位相分布P(x,y)については、MATLABのangle関数を用いることにより計算することができる。なお、光像の逆フーリエ変換結果から位相分布P(x,y)を求め、各異屈折率領域15bの距離r(x,y)を決める際に、一般的な離散フーリエ変換(或いは高速フーリエ変換)を用いて計算する場合の留意点は、前述した実施形態と同様である。
本変形例においても、前述した実施形態と同様に、仮想的な正方格子の格子間隔aと活性層12の発光波長λとがM点発振の条件を満たす。更に、位相変調層15Bにおいて逆格子空間を考えるとき、距離r(x,y)の分布による波数拡がりをそれぞれ含む4方向の面内波数ベクトルのうち少なくとも1つの大きさが、2π/λ(ライトライン)よりも小さい。
詳述すると、本変形例においては、M点で発振するS-iPMSELにおいて次のような工夫を位相変調層15Bに施すことにより、0次光をライトライン内に出力しないまま、1次光及び-1次光の一部を出力する。具体的には、図16に示されたように、面内波数ベクトルK6~K9に対して或る一定の大きさ及び向きを有する回折ベクトルVを加えることにより、面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさを、2π/λよりも小さくする。言い換えると、回折ベクトルVが加えられた後の面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つは、半径2π/λの円状領域(ライトライン)LL内に収まる。すなわち、前述した数式(21)を満たす回折ベクトルVを加えることにより、面内波数ベクトルK6~K9のいずれかがライトラインLL内に収まり、1次光及び-1次光の一部が出力される。
或いは、前述した第1変形例の図26に示されたように、4方向の面内波数ベクトルK6~K9から波数拡がりΔkを除いたもの(すなわちM点発振の正方格子PCSELにおける4方向の面内波数ベクトル、図12を参照)に対して回折ベクトルVを加えることにより、4方向の面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさを、2π/λから波数拡がりΔkを差し引いた値{(2π/λ)-Δk}より小さくしてもよい。すなわち、前述した数式(30)を満たす回折ベクトルVを加えることにより、面内波数ベクトルK6~K9のいずれかが領域LL2内に収まり、1次光及び-1次光の一部が出力される。
面内波数ベクトルK6~K9に回折ベクトルVを加える具体的な方式の一例として、光像に応じた位相分布である距離分布r1(x,y)(第1の位相分布)に対し、光像とは無関係の距離分布r2(x,y)(第2の位相分布)を重畳する方式が考えられる。この場合、位相変調層15Bの距離分布r(x,y)は、下記式として表される。
r(x,y)=r1(x,y)+r2(x,y)
1(x,y)は、前に述べたように光像をフーリエ変換したときの複素振幅の位相に相当する。また、r2(x,y)は、上記の数式(30)を満たす回折ベクトルVを加えるための距離分布である。なお、距離分布r2(x,y)の具体例は、図18と同様である。
本変形例では、仮想的な正方格子の格子点Oを通り該正方格子に対して傾斜する直線D上に、各異屈折率領域15bの重心Gが配置されている。そして、各異屈折率領域15bの重心Gと、対応する格子点Oとの距離r(x,y)は光像に応じて個別に設定されている。このような構造によれば、各異屈折率領域15bの重心Gが各格子点O周りに光像に応じた回転角度を有する上記実施形態と同様に、S-iPMSELとして、Z軸方向およびZ軸方向に対して傾斜した方向に任意形状の光像を出力することができる。また、本変形例においても、仮想的な正方格子の格子間隔aと活性層12の発光波長λとがM点発振の条件を満たすとともに、位相変調層15Bの逆格子空間上において、距離r(x,y)の分布によって定在波を形成する平面波が位相変調され、光像の角度広がりによる波数拡がりΔkをそれぞれ含む4方向の面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさが2π/λ(ライトライン)よりも小さくなっている。または、4方向の面内波数ベクトルK6~K9から波数拡がりΔkを除いたものに対して回折ベクトルVを加えることにより、少なくとも1つの面内波数ベクトルの大きさが、2π/λから波数拡がりΔkを差し引いた値{(2π/λ)-Δk}より小さくなっている。従って、S-iPMSELの出力に含まれる0次光をライトライン内から取り除き、信号光のみを出力することができる。
[発光素子の第3変形例]
図29及び図30は、異屈折率領域15bのXY平面内の形状の例を示す平面図である。上記実施形態及び各変形例ではXY平面内における異屈折率領域15bの形状が円形である例が示されている。しかしながら、異屈折率領域15bは円形以外の形状を有してもよい。例えば、XY平面内における異屈折率領域15bの形状は、鏡像対称性(線対称性)を有してもよい。ここで、鏡像対称性(線対称性)とは、XY平面に沿った或る直線を挟んで、該直線の一方側に位置する異屈折率領域15bの平面形状と、該直線の他方側に位置する異屈折率領域15bの平面形状とが、互いに鏡像対称(線対称)となり得ることをいう。鏡像対称性(線対称性)を有する形状としては、例えば図29(a)に示された真円、図29(b)に示された正方形、図29(c)に示された正六角形、図29(d)に示された正八角形、図29(e)に示された正16角形、図29(f)に示された長方形、および図29(g)に示された楕円、などが挙げられる。このように、XY平面内における異屈折率領域15bの形状が鏡像対称性(線対称性)を有する。この場合、位相変調層の仮想的な正方格子の単位構成領域Rそれぞれにおいて、シンプルな形状であるため、格子点Oから対応する異屈折率領域15bの重心Gの方向と位置を高精度に定めることができるので、高い精度でのパターニングが可能となる。
また、XY平面内における異屈折率領域15bの形状は、180°の回転対称性を有さない形状であってもよい。このような形状としては、例えば図30(a)に示された正三角形、図30(b)に示された直角二等辺三角形、図30(c)に示された2つの円または楕円の一部分が重なる形状、図30(d)に示された楕円の長軸に沿った一方の端部近傍の短軸方向の寸法が他方の端部近傍の短軸方向の寸法よりも小さくなるように変形した形状(卵形)、図30(e)に示された楕円の長軸に沿った一方の端部を長軸方向に沿って突き出る尖った端部に変形した形状(涙形)、図30(f)に示された二等辺三角形、図30(g)に示された矩形の一辺が三角形状に凹みその対向する一辺が三角形状に尖った形状(矢印形)、図30(h)に示された台形、図30(i)に示された5角形、図30(j)に示された2つの矩形の一部分同士が重なる形状、および図30(k)に示された2つの矩形の一部分同士が重なり且つ鏡像対称性を有さない形状、等が挙げられる。このように、XY平面内における異屈折率領域15bの形状が180°の回転対称性を有さないことにより、より高い光出力を得ることができる。
図31及び図32は、XY平面内の異屈折率領域の形状の別の例を示す平面図である。この例では、複数の異屈折率領域15bとは別の複数の異屈折率領域15cが更に設けられる。各異屈折率領域15cは、基本層15aの第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなる。異屈折率領域15cは、異屈折率領域15bと同様に、空孔であってもよく、空孔に化合物半導体が埋め込まれて構成されてもよい。異屈折率領域15cは、異屈折率領域15bにそれぞれ一対一で対応して設けられる。そして、異屈折率領域15bおよび15cを合わせた重心Gは、仮想的な正方格子を構成する単位構成領域Rの格子点Oを横切る直線D上に位置している。なお、いずれの異屈折率領域15b、15cも仮想的な正方格子を構成する単位構成領域Rの範囲内に含まれる。単位構成領域Rは、仮想的な正方格子の格子点間を2等分する直線で囲まれる領域となる。
異屈折率領域15cの平面形状は例えば円形であるが、異屈折率領域15bと同様に、様々な形状を有し得る。図31(a)~図31(k)には、異屈折率領域15b,15cのXY平面内における形状および相対関係の例が示されている。図31(a)および図31(b)は、異屈折率領域15b,15cが同じ形状の図形を有する形態を示す。図31(c)および図31(d)は、異屈折率領域15b,15cが同じ形状の図形を有し、互いの一部分同士が重なる形態を示す。図31(e)は、異屈折率領域15b,15cが同じ形状の図形を有し、回転した形態を示す。図31(f)は、異屈折率領域15b,15cが互いに異なる形状の図形を有する形態を示す。図31(g)は、異屈折率領域15b,15cが互いに異なる形状の図形を有し、異屈折率領域15b,15cが離間した形態を示す。
また、図31(h)~図31(k)に示されるように、異屈折率領域15bは、互いに離間した2つの領域15b1,15b2を含んで構成されてもよい。このとき、領域15b1,15b2を合わせた重心が単一の異屈折率領域15bの重心に相当すると考えられる。また、この場合、図31(h)及び図31(k)に示されるように、領域15b1,15b2および異屈折率領域15cは、互いに同じ形状の図形を有してもよい。または、図31(i)及び図31(j)に示されるように、領域15b1,15b2および異屈折率領域15cのうち2つの図形が他と異なっていてもよい。
異屈折率領域のXY平面内の形状は、各格子点間で互いに同一であってもよい。すなわち、異屈折率領域が全ての格子点において同一図形を有しており、並進操作、または並進操作および回転操作により、格子点間で互いに重ね合わせることが可能であってもよい。その場合、形状のばらつきに起因する位相角のばらつきを抑制することができ、精度良くビームパターンを出射することができる。または、異屈折率領域のXY平面内の形状は格子点間で必ずしも同一でなくともよく、例えば図32に示されたように、隣り合う格子点間で形状が互いに異なっていてもよい。
[発光素子の第4変形例]
図33は、第4変形例による発光装置1Bの構成を示す図である。この発光装置1Bは、支持基板6と、支持基板6上に一次元又は二次元状に配列された複数の半導体発光素子1Aと、複数の半導体発光素子1Aを個別に駆動する駆動回路4とを備えている。各半導体発光素子1Aの構成は、上記実施形態と同様である。但し、複数の半導体発光素子1Aには、赤色波長域の光像を出力するレーザ素子と、青色波長域の光像を出力するレーザ素子と、緑色波長域の光像を出力するレーザ素子とが含まれても良い。赤色波長域の光像を出力するレーザ素子は、例えばGaAs系半導体によって構成される。青色波長域の光像を出力するレーザ素子、及び緑色波長域の光像を出力するレーザ素子は、例えば窒化物系半導体によって構成される。駆動回路4は、支持基板6の裏面又は内部に設けられ、各半導体発光素子1Aを個別に駆動する。駆動回路4は、制御回路7からの指示により、個々の半導体発光素子1Aに駆動電流を供給する。
本変形例のように、個別に駆動される複数の半導体発光素子1Aを設け、各半導体発光素子1Aから所望の光像を取り出すことによって、予め複数のパターンに対応した半導体発光素子を並べたモジュールについて、適宜必要な素子を駆動することによってヘッドアップディスプレイなどを好適に実現することができる。また、複数の半導体発光素子1Aに、赤色波長域の光像を出力するレーザ素子と、青色波長域の光像を出力するレーザ素子と、緑色波長域の光像を出力するレーザ素子とが含まれることにより、カラーヘッドアップディスプレイなどを好適に実現することができる。
本発明による発光装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態ではGaAs系、InP系、及び窒化物系(特にGaN系)の化合物半導体からなるレーザ素子を例示したが、本発明は、これら以外の様々な半導体材料からなるレーザ素子に適用できる。
また、上記実施形態では位相変調層と共通の半導体基板上に設けられた活性層を発光部とする例を説明したが、本発明においては、発光部は半導体基板から分離して設けられてもよい。発光部が位相変調層と光学的に結合され、位相変調層に光を供給するものであれば、そのような構成であっても上記実施形態と同様の効果を好適に奏することができる。
[発光素子の製造方法の一実施形態]
引き続いて、半導体発光素子1Aの製造方法の一実施形態について説明する。本実施形態に係る製造方法では、まず、位相変調層15Aの設計が行われる。すなわち、本実施形態に係る製造方法は、位相変調層15Aの設計方法を含む。
図34は、本実施形態に係る位相変調層の設計方法の一工程を示す図である。図34では、所定平面上の設計上の光像が示されている。図34の(a)は、投影する平面スクリーン上のX-Y平面上における設計上の光像である。設計上の光像とは、半導体発光素子1Aから出力する所望の光像であって、任意に設定可能である。換言すれば、本実施形態に係る設計方法では、まず、半導体発光素子1Aから出力する所望の光像を設定する(工程S101)。ここでは、(正弦波又は矩形波)縞状の光像(パターンP00)が設定される例を挙げる。ここでは、1次光のみが考慮されているが、-1次光をさらに考慮してもよい。パターンP00(光像)において、白く表示された部分が輝点の集合である。
本実施形態に係る設計方法では、続いて、実空間上のパターンP00を、図34の(b)に示されるように、角度空間におけるθ-θ平面上の光像(パターンP05)に変換する(工程S102)。距離Dの位置にある平面スクリーン上の座標Xs-Ysと角度空間θ-θは、上記式(1)~(3)に示されるZ軸からの傾き角θtilt及びX軸からの回転角θrotを用いて、下記式(32)により表される。このため、θx及びθyは、下記式(33)で表される。
Figure 2023028125000033


Figure 2023028125000034

続いて、図35に示されるように、角度空間上のパターンP05(光像)を、波数空間におけるK-K平面上のパターンP10に変換する(工程S103)。なお、図35の(b)は、図35の(a)の拡大図である。K軸及びK軸により規定される波数空間とXYZ座標系及び球面座標系との関係は、上記式(1)~(5)に示されるとおりである。この波数空間上のパターンP10が、位相変調層15Aにおける異屈折率領域15bの分布を設計するための設計パターンの1つである。
すなわち、本実施形態に係る設計方法は、位相変調層15Aの設計パターンを生成する工程(工程S101~S103及び後述する工程S104:生成工程)を備える。より具体的には、ここでは、異屈折率領域15bの分布が半導体発光素子1Aの出力する光像(パターンP00)に応じた分布となるように異屈折率領域15bを設計するためのパターンであって、光像(パターンP00)の輝点に対応する輝点を含む第1設計パターン(パターンP10)を生成する(工程S103:第1工程)。
このとき、工程S103では、X-Y平面内において仮想的な正方格子を設定した場合に、異屈折率領域15bのそれぞれの重心Gが、対応する格子点Oから離れて配置されるとともに、該格子点O周りに光像に応じた位相分布に従う回転角度φを有し、且つ、仮想的な正方格子の格子間隔aとの発光波長λとがM点発振の条件を満たすように、パターンP10を生成することができる。
上記の半導体発光素子1Aに係る実施形態の例では、この波数空間上のパターンP10に対して上記式(6)で示される二次元逆離散フーリエ変換を施して複素振幅F(x,y)を算出すると共に、当該複素振幅F(x,y)のうちの位相項P(x,y)を用いて、異屈折率領域15bの回転角度分布φ(x,y)を取得し、この回転角度分布φ(x,y)に応じた異屈折率領域15bを有する位相変調層15Aを作製する。
これに対して、本実施形態に係る設計方法では、輝点の間引きを行うことにより、ノイズ低減を図る。すなわち、この設計方法では、続く工程において、図36に示されるように、パターンP10に含まれる輝点のうちの一部の輝点を間引きすることにより、波数空間上の新たなパターン(第2設計パターン)P20を生成する(工程S104:第2工程)。図36では、輝点の間引きにより生成された新たなパターンが示されている。図36の(b)は、図36の(a)の拡大図である。パターンP20では、パターンP10の一部の輝点が間引かれることにより、図示では全体的に暗くなっている。
この工程S104について、より具体的に説明する。この工程S104では、パターンP10を複数の領域に分割し、それぞれの当該領域に含まれる複数の輝点のうちの少なくとも1つの輝点を間引く処理を行うことにより、パターンP10からパターンP20を生成する。図37の(a)の例では、パターンP10を、波数空間上で二次元的に隣り合う4つの輝点を示す波数データCLから構成される領域R4に分割する。領域R4は、K軸及びK軸に沿った2×2の波数データCL(画素)からなる領域である。そして、この例では、当該領域RAの波数データCLのうちの2つを間引いてパターンP20を生成している。
これにより、パターンP20では、1つの領域R4に2つの輝点APが残存することとなる。特に、図37の(a)の例では、K-K平面内において、K軸及びK軸に交差する方向に輝点APが並んで残存するように輝点の間引きが行われている。なお、輝点を間引くとは、パターンP10において、パターンP00の輝点に相当する波数データCLの値を相対的に小さくする(例えば0とする)ことを意味する。
図37の(b)の例でも、図37の(a)と同様に、パターンP10を、波数空間上で二次元的に隣り合う4つの輝点を示す波数データCLから構成される領域R4に分割する。そして、当該領域R4の波数データCLのうちの3つを間引いている。これにより、パターンP20では、1つの領域R4に1つの輝点APが残存することとなる。なお、領域R4の大きさは、上記の2×2に限定されず、3×3や他の任意の大きさが選択され得る。また、間引きの間隔等についても任意である。一方で、間引けば間引くほど元のパターンP10の情報が欠落してしまい、間引きに起因する輝度ムラや、光量の低下があるため、領域R4における間引きは無制限に行えば良いものではない。図37に示す2×2では好適な結果が得られる。
本実施形態に係る設計方法は、以上の工程S101~S104を有している。引き続いて、本実施形態に係る設計方法で得られた設計パターンに基づいて位相変調層15A及び半導体発光素子1Aを製造する。
本実施形態に係る製造方法では、工程S104の後に、工程S104で得られたパターンP20(図36の(b))に対して逆フーリエ変換を施す。このため、続く工程では、図38の(a)に示されるように、予め象限の入れ替えを行う(工程S105)。ここでは、図36に示されるパターンP20に対して、第1象限を第3象限に、第2象限を第4象限に入れ替えるように、パターンP20の折り返しを行う。
続いて、本実施形態に係る製造方法では、図38の(b)に示されるように、工程S105により得られた新たなパターンP20に対して、上記式(6)で示される二次元離散逆フーリエ変換を施すことにより、複素振幅F(x,y)を算出する(工程S106)。なお、このとき、ホログラム生成の計算時に一般的に用いられるGerchberg-Saxton(GS)法のような繰り返しアルゴリズムを適用することによって、ビームパターンの再現性を向上させることもできる。その後、図39に示されるように、工程S106により得られた複素振幅F(x,y)に対して、第3象限を第1象限に、第4象限を第1象限に入れ替えるように折り返しを行う(工程S107)。
続いて、図40の(a)に示されるように、複素振幅F(x,y)から、位相分布である回転角度分布φ1(x,y)を抽出する(工程S108)。回転角度分布φ(x,y)は、上述したように、複素振幅F(x,y)の位相項P(x,y)を用いてφ(x,y)=C×P(x,y)+Bとして表される。逆フーリエ変換で得られた複素振幅分布から強度分布と位相分布を得る方法として、例えば強度分布I(x,y)については、MathWorks社の数値解析ソフトウェア「MATLAB」のabs関数を用いることにより計算することができ、位相分布P(x,y)については、MATLABのangle関数を用いることにより計算することができる。
続く工程では、上述したように、M点での発振を実現するため、上記の面内波数ベクトルK6~K9に回折ベクトルVを加える具体的な方式の一例として、光像に応じた位相分布である回転角度分布φ1(x,y)(第1位相分布)に対し、光像とは無関係の回転角度分布φ(x,y)(第2位相分布)を重畳する。この場合、位相変調層15Aの回転角度分布φ(x,y)は、φ(x,y)=φ1(x,y)+φ2(x,y)として表される。
φ(x,y)は、上記式(21)を満たす回折ベクトルVを加えるための回転角度分布である。ここでは、図40の(b)に示されるように、回転角度分布φ(x,y)の一例として、図18の例と同様の第1の位相値と第2の位相値とが市松模様に配列されて構成されるものを準備する(工程S108)。第1の位相値は0、第2の位相値はπとするとビームの中心方向が面垂直方向と一致して好適である。そして、φとφとを重畳することにより、位相変調層15Aにおける回転角度分布φ(x,y)が得られる。なお、一般には回折ベクトルVの角度分布φ(x,y)は、回折ベクトルV(Vx,Vy)と位置ベクトルr(x,y)との内積で表され、次式で与えられる。φ(x,y)=V・r=Vxx+Vyy。ビームの中心方向を面垂直方向にする場合、回折ベクトルVはM点の面内波数ベクトルK6~K9をキャンセルする必要があるため、V=(±π/a,±π/a)となる。一方でVをこの値から変化すると、面垂直方向から傾いたビームを出射することが出来る。
すなわち、この工程S108では、位相変調層15Aの逆格子空間上において、光像の角度広がりに対応した波数拡がりをそれぞれ含む4方向の面内波数ベクトルK6~K9を形成し、該面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさが2π/λよりも小さくなるように、φ(x,y)にφ(x,y)を重畳してφ(x,y)を構成する。
なお、図41の(a)に示されるように、工程S106の逆フーリエ変換に代えてGerchberg-Saxton(GS)法を利用して、工程S105により得られたパターンP20から回転角度分布φ(x,y)を取得し、図41の(b)に示されるように折り返した後に、図40の(b)に示されたφ(x,y)と重畳してφ(x,y)を算出してもよい。
以上により、位相変調層15Aの異屈折率領域15bの回転角度分布φ(x,y)が得られる。本実施形態に係る製造方法では、この回転角度分布φ(x,y)に基づいて位相変調層15Aを形成する。本実施形態に係る製造方法では、位相変調層15Aの形成に先立って、図42の(a)に示されるように、半導体積層体1Cを用意する。すなわち、半導体基板10の主面10a上に、クラッド層11、活性層12、及び、基本層15aを形成する。各化合物半導体層の成長には、有機金属気相成長(MOCVD)法若しくは分子線エピタキシー法(MBE)を用いることができる。このように、本実施形態に係る製造方法では、まず、半導体基板10上に発光部としての活性層12を形成する(工程S109:第1形成工程)。
これと共に、上述した設計方法により間引きされたパターンP20を生成すると共に、このパターンP20に基づいて回転角度分布φ(x,y)を算出する(予め算出されていてもよい)。そして、本実施形態に係る製造方法では、この回転角度分布φ(x,y)に基づいて、活性層12に光学的に結合された位相変調層15Aを形成する(工程S110:第2形成工程)。
より具体的には、工程S110では、基本層15aにレジストを塗布し、レジスト上に電子ビーム描画装置で2次元微細パターンを描画し、現像することでレジスト上に2次元微細パターンを形成する。この2次元微細パターンが、回転角度分布φ(x,y)に応じて異屈折率領域15bが分布するように形成される。その後、レジストをマスクとして、ドライエッチングにより2次元微細パターンを基本層15a上に転写し、孔(穴)を形成したのち、レジストを除去する。これにより、回転角度分布φ(x,y)に応じた異屈折率領域15bを有する位相変調層15Aが得られる。なお、レジスト形成前にSiN層やSiO層をPCVD法で基本層15a上に形成し、その上にレジストマスクを形成し、反応性イオンエッチング(RIE)を使ってSiN層やSiO層に微細パターンを転写し、レジストを除去してからドライエッチングしても良い。この場合、ドライエッチングの耐性を高めることができる。
また、これらの孔を異屈折率領域15bとしてもよいし、或いは、これらの孔の中に、異屈折率領域15bとなる化合物半導体(AlGaAs)を孔の深さ以上に再成長させてもよい。孔を異屈折率領域15bとする場合、孔内に空気、窒素、水素又はアルゴン等の気体を封入してもよい。その後、上述したように、クラッド層13、コンタクト層14を順次MOCVDで形成し、電極16,17を蒸着法又はスパッタ法により形成する。また、必要に応じて、保護膜18及び反射防止膜19をスパッタやPCVD法等により形成する。以上により、半導体発光素子1Aが製造される。
以上説明したように、本実施形態に係る位相変調層15Aの設計方法では、iPMSELである半導体発光素子1Aの位相変調層15Aの設計に際して、まず、位相変調層15Aの異屈折率領域15bの分布が半導体発光素子1Aの出力する光像(パターンP00)に応じた分布となるように、異屈折率領域15bを設計するためのパターンであって、パターンP00の輝点に対応する輝点を含む第1設計パターン(パターンP10)を生成する。そして、パターンP10を複数の領域に分割し、それぞれの領域に含まれる複数の輝点のうちの少なくとも1つの輝点を間引く処理を行うことにより、パターンP10から第2設計パターン(パターンP20)を生成する。
このように生成されたパターンP20に基づいて位相変調層15Aを形成すると、半導体発光素子1Aから出力される光像のノイズを低減可能である。これは、設計パターン上で輝点の間引きを行うことにより、実際の光像において隣り合う輝点同士が干渉することが避けられることが一因と考えられる。
図43は、半導体発光素子から出力された光像の矩形の縞パターンを示す図である。図43の(a)は、パターンP10に対して間引き処理を行わない場合の比較例の縞パターンLiであり、図43の(b)は、パターンP10に対して図37の(a)の間引きを行った場合の縞パターンLaを示し、図43の(c)は、パターンP10に対して図37の(b)の間引きを行った場合の縞パターンLbを示す。図43の縞パターンLiと縞パターンLa,Lbとを比較すると、縞パターンLa,Lbでは、ノイズの低減により輝度ムラが抑制されていることが理解される。実際に、半導体発光素子の駆動電流を0.5Aとした場合、縞パターンLiでは、輝度ムラが30.6%であったのに対し、縞パターンLa,Lbでは、それぞれ、輝度ムラが21.8%及び24.3%に抑えられた。なお、ここでの輝度ムラとは、矩形の縞パターンの同一面積の明るい領域における輝度値の標準偏差を輝度値の平均値で除した値である。
図44は、半導体発光素子から出力された光の遠視野像を示す図である。図44の例では、半導体発光素子1Aから出力する所望の光像がLine&Spaceパターンに設定されている。図44の(a)は、パターンP10に対して間引きを行わない場合の比較例のパターンRiを示し、図44の(b)は、パターンP10に対して1点ごとに間引き処理を行った場合のパターンRaを示している。パターンRiでは、輝点APが密集し、輝点AP同士の干渉によりパターンがぼやけ、輝度ムラも生じている。一方、パターンRaでは、輝点APが分離されて輝点AP同士の干渉が抑制される結果、パターンが先鋭化されていることが理解される。
また、本実施形態に係る位相変調層15Aの設計方法では、パターンはP10、実空間上の光像に対応する波数空間上のパターンであり、工程S104では、波数空間上において二次元的に隣り合う4つの輝点を示す波数データCLを1つの領域R4とし、当該4つの波数データCLのうちの2つを間引いてパターンP20を生成してもよい(図37の(a))。
或いは、本実施形態に係る位相変調層15Aの設計方法では、パターンP10は、実空間上の光像に対応する波数空間上のパターンであり、工程S104では、波数空間上において2次元的に隣り合う4つの輝点を示す波数データCLを1つの領域とし、当該4つの波数データCLのうちの3つを間引いてパターン20を生成してもよい(図37の(b))。これらのように、パターンP10は、半導体発光素子1Aから出力される所望の光像に対応した波数空間上のパターンで有り得る。そして、パターン20の生成に際して、波数空間上の4つのまとまった輝点(波数データCL)から2つ又は3つを間引くことにより、確実にノイズを低減できる。
また、本実施形態に係る半導体発光素子1Aの製造方法は、半導体基板10上に活性層12を形成する工程S109と、上記の位相変調層15Aの設計方法によりパターンP20を生成すると共に、当該パターンP20に基づいて、活性層12に光学的に結合された位相変調層15Aを形成する工程S110と、を備えている。このため、ノイズを低減可能な発光素子が製造される。
さらに、本実施形態に係る半導体発光素子1Aの製造方法では、X-Y平面内において仮想的な正方格子を設定した場合に、異屈折率領域15bのそれぞれの重心Gが、対応する格子点Oから離れて配置されるとともに、該格子点O周りに光像に応じた位相分布に従う回転角度φを有し、且つ、仮想的な正方格子の格子間隔aとの発光波長λとがM点発振の条件を満たすように、第1設計パターンを生成する。
また、半導体発光素子1Aの製造方法では、位相変調層15Aの逆格子空間上において、光像の角度広がりに対応した波数拡がりをそれぞれ含む4方向の面内波数ベクトルK6~K9を形成し、該面内波数ベクトルK6~K9のうち少なくとも1つの大きさが2π/λよりも小さくなるように、回転角度分布φ(x、y)に回転角度分布φ(x,y)を重畳し、当該重畳された回転角度分布φ(x、y)を用いて複数の異屈折率領域15bを含む位相変調層15Aを形成する。このため、発光素子から出力される光像から0次光を取り除くことが可能である。
なお、図45の(b)に示されるように、位相変調層15Aの設計方法では、パターンP10を生成する工程S101~S103において、パターンP10において、光像のうちの1次光に対応する設計領域R1aと光像のうちの-1次光に対応する設計領域R1bとを分離させてもよい。この場合、より確実にノイズを低減可能である。
図45の(a)は、±1次光の分離を行わなかった場合のパターンP10を示し、図45の(b)は、±1次光の分離を行った場合のパターンP10を示している。±1次光の分離を行わなかった場合には、領域RA内の輝度値の標準偏差が0.305であったのに対して、±1次光の分離行った場合には、領域RA内の輝度値の標準偏差が0.072となり、輝度ムラが低減されていることが理解される。このパターンP10における輝度ムラの低減が、光像でのノイズ低減につながると考えられる。なお、図45の例では、半導体発光素子1Aから出力する所望の光像が矩形パターンに設定されている。
以上の実施形態は、本開示に係る位相変調層の設計方法、及び、半導体発光素子の製造方法の一例を示したものであり、任意に変形され得る。例えば、所望の光像は、正弦波又は矩形波の縞状のパターンや、Line&Spaceパターンに限らず、任意のパターンに設定することが可能である。また、M点発振や±1次光分離のための処理は必須ではない。
1A…半導体発光素子(発光素子)、12…活性層(発光部)、15A…位相変調層、15a…基本層、15b…異屈折率領域、AP…輝点、P00…パターン(光像)、P10…パターン(第1設計パターン)、P20…パターン(第2設計パターン)、R1a,R1b…設計領域、R4…領域。

Claims (6)

  1. 発光部と前記発光部に光学的に結合された位相変調層とを含むiPMSELとしての発光素子の前記位相変調層の設計方法であって、
    前記位相変調層の設計パターンを生成する生成工程を備え、
    前記位相変調層は、基本層と、前記基本層とは屈折率が異なり当該位相変調層の厚さ方向に垂直な面内において二次元状に分布する複数の異屈折率領域と、を含み、
    前記生成工程は、
    前記異屈折率領域の分布が前記発光素子の出力する光像に応じた分布となるように前記異屈折率領域を設計するためのパターンであって、前記光像の輝点に対応する輝点を含む第1設計パターンを生成する第1工程と、
    前記第1工程で生成された第1設計パターンを複数の領域に分割し、それぞれの当該領域に含まれる複数の輝点のうちの少なくとも1つの輝点を間引く処理を行うことにより、前記第1設計パターンから第2設計パターンを生成する第2工程と、
    を含む、
    位相変調層の設計方法。
  2. 前記第1設計パターンは、前記光像に対応する波数空間上のパターンであり、
    前記第2工程では、前記波数空間上において二次元的に隣り合う4つの輝点を1つの前記領域とし、当該4つの輝点のうちの2つの輝点を間引いて前記第2設計パターンを生成する、
    請求項1に記載の位相変調層の設計方法。
  3. 前記第1設計パターンは、前記光像に対応する波数空間上のパターンであり、
    前記第2工程では、前記波数空間上において2次元的に隣り合う4つの輝点を1つの前記領域とし、当該4つの輝点のうちの3つの輝点を間引いて前記第2設計パターンを生成する、
    請求項1に記載の位相変調層の設計方法。
  4. 前記第1工程では、前記第1設計パターンにおいて、前記光像のうちの1次光に対応する設計領域と前記光像のうちの-1次光に対応する設計領域とを分離させる、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の位相変調層の設計方法。
  5. 基板上に発光部を形成する第1形成工程と、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の位相変調層の設計方法により生成された前記第2設計パターンに基づいて、前記発光部に光学的に結合された前記位相変調層を形成する第2形成工程と、
    を備える発光素子の製造方法。
  6. 前記第1工程では、前記面内において仮想的な正方格子を設定した場合に、前記異屈折率領域のそれぞれの重心が、対応する格子点から離れて配置されるとともに、該格子点周りに前記光像に応じた位相分布に従う回転角度を有し、且つ、前記仮想的な正方格子の格子間隔aと前記発光部の発光波長λとがM点発振の条件を満たすように、前記第1設計パターンを生成し、
    前記第2形成工程では、前記位相変調層の逆格子空間上において、前記光像の角度広がりに対応した波数拡がりをそれぞれ含む4方向の面内波数ベクトルを形成し、該面内波数ベクトルのうち少なくとも1つの大きさが2π/λよりも小さくなるように、前記位相分布としての第1位相分布に別の第2位相分布を重畳し、当該重畳された位相分布を用いて前記複数の異屈折率領域を含む前記位相変調層を形成する、
    請求項5に記載の発光素子の製造方法。
JP2021133627A 2021-08-18 2021-08-18 位相変調層の設計方法、及び、発光素子の製造方法 Pending JP2023028125A (ja)

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