JP2023028050A - セメントクリンカの製造方法、及びセメントクリンカ製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アンモニアを利用して二酸化炭素の排出量を削減しつつ、高いエネルギー効率でセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカ製造装置を提供すること。【解決手段】仮焼炉30とロータリーキルンとを備えるセメントクリンカ製造装置であって、仮焼炉30はアンモニアガスを含む熱エネルギー原料を導入する第1導入口10を有し、仮焼炉30においてアンモニアガスを燃焼する、セメントクリンカ製造装置を提供する。【選択図】図2
Description
本開示は、セメントクリンカの製造方法、及びセメントクリンカ製造装置に関する。
セメントクリンカ製造装置は、ロータリーキルンを有する焼成炉においてセメント原料を焼成してセメントクリンカを生成する。二酸化炭素の発生量を低減するため、焼成炉に、重油等の化石燃料、廃棄物及びバイオマス等に加えてアンモニアを供給することが試みられている。例えば、特許文献1では、二酸化炭素の排出量削減のため、化石燃料、及び廃プラスチック等の可燃性廃棄物等とともに、アンモニアと空気を含むアンモニア含有ガスをバーナ部から噴射して、ロータリーキルン内で燃焼する技術が提案されている。
セメントクリンカを製造する際、ロータリーキルンにアンモニアを供給することは、ロータリーキルンから発生する二酸化炭素を削減するうえで有効である。一方で、ロータリーキルンにアンモニアを供給した場合に、ロータリーキルンでセメント原料の温度が上がり難くなり、セメントクリンカの性状が安定しなかったり、燃料の消費量が増加したりする場合がある。そこで、本開示では、アンモニアを利用して二酸化炭素の排出量を削減しつつ、高いエネルギー効率でセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカ製造装置を提供する。
NSPキルンの場合、セメント原料は、サスペンションプレヒータ、仮焼炉及びロータリーキルンにおいて加熱される。このとき、セメント原料は、熱伝導、対流伝熱及び放射伝熱(輻射伝熱)によって加熱されるが、熱放射線の発散による熱エネルギー量は、絶対温度の3~4条に比例する。このため、温度が高いロータリーキルンでの伝熱は放射伝熱が主体となる。これに対し、ロータリーキルンよりも温度が低い仮焼炉及びサスペンションプレヒータでの伝熱は、対流伝熱が主体となる。
化石燃料(重油、石油コークス及び石炭)のみ、及び化石燃料とアンモニアの混焼によるフレアを比較すると、化石燃料とアンモニアの混焼の場合は放射伝熱が小さいため、アンモニアをロータリーキルンの熱エネルギー原料として用いると、セメント原料の加熱が不足する傾向にある。この原因としては、アンモニアを燃焼すると、燃焼排ガスの組成が変化し、燃焼排ガスの放射率に寄与するCO2濃度が減少することが考えられる。
そこで、本開示は、仮焼炉とロータリーキルンとを備えるNSPキルンを用いてセメントクリンカを製造するセメントクリンカの製造方法であって、仮焼炉に設けられた第1導入口からアンモニアガスを含む熱エネルギー原料を導入する導入工程と、仮焼炉においてアンモニアガスを燃焼する燃焼工程を有する、セメントクリンカの製造方法を提供する。
NSPキルンの仮焼炉は、ロータリーキルンよりも温度が低い。このため、セメント原料への伝熱における放射伝熱の割合は、仮焼炉よりもロータリーキルンの方が高く、対流伝熱の割合はロータリーキルンよりも仮焼炉の方が高い。上記製造方法では、対流伝熱の割合がセメントキルンよりも高い仮焼炉においてアンモニアガスを燃焼していることから、アンモニアガスを熱エネルギー原料として効率よく活用することができる。このようにアンモニアガスを仮焼炉の熱エネルギー原料として用いることによって、二酸化炭素の削減を図りつつ、高いエネルギー効率でセメントクリンカを製造することができる。また、アンモニアガスの一部が未燃である場合、脱硝によって、排ガスに含まれる窒素酸化物を低減することもできる。
上記製造方法において、導入工程で第1導入口から導入される熱エネルギー原料は固形分を含むことが好ましい。これによって、十分な熱量を確保し仮焼炉においてセメント原料を十分に加熱することができる。
上記製造方法は、固形分を、アンモニアガスを含むガスで搬送する搬送工程を有し、導入工程では、アンモニアガスの圧力によって固形分を第1導入口から仮焼炉内に吐出することが好ましい。これによって、固形分の搬送ガスとして燃焼に寄与しない過剰な空気又は窒素等のガスを用いて搬送する場合に比べて、エネルギー効率を向上することができる。
上記製造方法は、排ガスの流通方向を基準としたときに第1導入口よりも下流側の排ガスの流路に設けられる第2導入口からアンモニアガスを導入して排ガスを脱硝する脱硝工程を有することが好ましい。第1導入口よりも下流側に設けられる第2導入口からアンモニアガスを導入すれば、低温度域にアンモニアガスが供給されることになるため、アンモニアの燃焼反応よりも脱硝反応が促進される。これによって、窒素酸化物の脱硝が効率よく進行する。したがって、排ガスに含まれる窒素酸化物を十分に低減することができる。また、脱硝に用いるアンモニアの量を削減することもできる。
上記製造方法において、第1導入口から導入されるアンモニアガスを含む熱エネルギー原料が仮焼炉の運転中に連続して供給されることが好ましい。これによって、二酸化炭素の排出量を十分に削減しつつ、排ガスに含まれる窒素酸化物も安定的に低減することができる。
本開示は、仮焼炉とロータリーキルンとを備えるセメントクリンカ製造装置であって、仮焼炉はアンモニアガスを含む熱エネルギー原料を導入する第1導入口を有し、仮焼炉においてアンモニアガスを燃焼する、セメントクリンカ製造装置を提供する。
上記セメントクリンカ製造装置では、セメントキルンよりも対流伝熱の割合が高い仮焼炉においてアンモニアガスを燃焼していることから、アンモニアガスを熱エネルギー原料として効率よく活用することができる。このようにアンモニアガスを仮焼炉で燃焼させることによって、二酸化炭素の削減を図りつつ、高いエネルギー効率でセメントクリンカを製造することができる。また、アンモニアガスの一部が未燃である場合、脱硝によって、排ガスに含まれる窒素酸化物を低減することもできる。
上記セメントクリンカ製造装置の第1導入口から導入される熱エネルギー原料は固形分を含むことが好ましい。これによって、十分な熱量を確保し仮焼炉においてセメント原料を十分に加熱することができる。
上記セメントクリンカ製造装置は、固形分を、アンモニアガスを含むガスで搬送する搬送部を有し、アンモニアガスの圧力によって固形分を第1導入口から仮焼炉内に吐出することが好ましい。これによって、固形分の搬送ガスとして燃焼に寄与しない過剰な空気又は窒素等のガスを用いて搬送する場合に比べて、エネルギー効率を向上することができる。
上記セメントクリンカ製造装置は、排ガスの流通方向を基準としたときに、第1導入口よりも下流側の排ガスの流路にアンモニアガスを導入する第2導入口を有し、第2導入口から導入されるアンモニアガスによって燃焼排ガスを脱硝することが好ましい。第1導入口よりも下流側の排ガスの流路にアンモニアガスを導入する第2導入口を有することによって、第1導入口よりも低温度域にアンモニアガスが供給される。これによって、アンモニアの燃焼反応よりも脱硝反応が促進され、窒素酸化物の脱硝が効率よく進行する。したがって、排ガスに含まれる窒素酸化物を十分に低減することができる。また、脱硝に用いるアンモニアの量を削減することもできる。
アンモニアを利用して二酸化炭素の排出量を削減しつつ、高いエネルギー効率でセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカ製造装置を提供することができる。
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、セメントクリンカ製造装置の一実施形態を模式的に示す図である。セメントクリンカ製造装置100は、所謂NSPキルンとも称される装置である(NSP:ニューサスペンションプレヒータ付きキルン)。セメントクリンカ製造装置100は、セメント原料を予熱する4つのサイクロンC1,C2,C3,C4(プレヒータ)と、セメント原料を仮焼する仮焼炉30と、予熱及び仮焼されたセメント原料を焼成してセメントクリンカを生成するロータリーキルン40と、ロータリーキルン40で生成したセメントクリンカを冷却し、冷却されたセメントクリンカを導出するクリンカクーラ50とを備える。
ロータリーキルン40の窯尻42と仮焼炉30はライジングダクト34で接続されている。ライジングダクト34には、ライジングダクト34内のキルン排ガスを抽気するプローブ36が接続されている。プローブ36の下流には、クーラー及びバグフィルタ等を有する塩素バイパス設備(不図示)が設置されており、プローブ36で抽気された抽気ガス(キルン排ガス)に含まれるダストが回収されるようになっている。このような塩素バイパス設備を有することによって、セメントクリンカ製造装置100内から、塩素系化合物及びアルカリ等の揮発分を低減することができる。なお、変形例では、プローブ36は窯尻42に接続されていてもよいし、ライジングダクト34と窯尻42の境界部分に接続されていてもよい。
セメント原料は、例えば、焼却灰、石炭灰、石灰石、鉄源、及びスラグからなる群より選ばれる二種以上を含んでもよい。このようなセメント原料は、サイクロンC1とサイクロンC2との接続部から導入され、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、ライジングダクト34、仮焼炉30、サイクロンC4を流通しながら加熱され、ロータリーキルン40の窯尻42に導入される。窯尻42に導入される際、セメント原料は、例えば850~1000℃、好ましくは850~900℃に加熱されている。
ロータリーキルン40では、予熱及び仮焼されたセメント原料が、ロータリーキルン40の一端に設けられたバーナ44の燃焼によって加熱されてセメントクリンカとなる。ロータリーキルン40で生成したセメントクリンカは、クリンカクーラ50で、塩素バイパス設備から導出される脱塵排ガス及び外気等の冷却風によって冷却されてよい。セメントクリンカは、クリンカクーラ50で冷却された後、セメントクリンカ製造装置100から導出される。
ロータリーキルン40は、クリンカクーラ50側に燃料を燃焼するバーナ44を備える。バーナ44での燃焼によって、セメント原料は、ロータリーキルン40内で例えば1300~1450℃に加熱される。このような高温条件であるため、セメント原料は、対流伝熱よりも、放射伝熱によって加熱されることが好ましい。ロータリーキルン40内における、セメント原料への伝熱全体に対する放射伝熱の寄与率は、例えば60%以上であってよく、70%以上であってもよい。ロータリーキルン40内を、放射伝熱の寄与率が高くなるような運転条件とすることによって、エネルギー効率を向上することができる。
このような観点から、バーナ44で燃焼する熱エネルギー原料は炭素を含む化石燃料を含むことが好ましい。化石燃料としては、重油、石油コークス及び石炭(微粉炭)が挙げられる。化石燃料を用いることによって、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素の濃度が高くなり、放射伝熱の寄与率を十分に高くすることができる。バーナ44では、熱エネルギー原料としてアンモニアを燃焼してもよいし、バーナ44を複数設けて、化石燃料とアンモニアガスとを別々に導入してもよい。ただし、ロータリーキルン40へのアンモニアガスの導入量が増えると、燃焼排ガス中の二酸化炭素の濃度が下がって放射伝熱の寄与率が下がるため、エネルギー効率が低下する傾向にある。
エネルギー効率を十分に高くする観点から、ロータリーキルン40に導入されるアンモニアの量は少ない方が好ましい。例えば、ロータリーキルン40に導入されるアンモニアの量は、仮焼炉30に導入されるアンモニアの量よりも少ない方が好ましい。なお、ロータリーキルン40には、アンモニアが導入されなくてもよい。なお、ロータリーキルン40の休転後の運転開始の際には、熱エネルギー原料としてアンモニアガスを導入してもよい。このような運転開始の際には、温度を上昇させる必要があるため、定常運転時よりも化石燃料の消費量が多くなり、SOx(硫黄酸化物)が増加する傾向にある。そこで、例えばバーナ44からアンモニアガスを導入することによって、SOx濃度を低減することができる。
ロータリーキルン40で発生する、燃焼排ガスを含むキルン排ガスは、窯尻42及びライジングダクト34を通過して仮焼炉30に導入される。仮焼炉30には、図2に示すように、アンモニア含有ガスと固形分(固形の熱エネルギー原料)を含む熱エネルギー原料を仮焼炉30に導入する第1導入口10が設けられている。
第1導入口10は、搬送部12の先端に設けられている。管状の部材で構成される搬送部12では、アンモニアガスを含むアンモニア含有ガスが固形分を同伴しながら第1導入口10に向かって流通する。第1導入口10から、アンモニア含有ガスと固形分を含む熱エネルギー原料が仮焼炉30内に吐出される。これによって、アンモニアガスと固形分が仮焼炉30内において燃焼し、セメント原料が加熱される。固形分としては、微粉炭、廃プラスチック及び/又は都市ゴミを含む廃棄物等が挙げられる。
アンモニア含有ガスは、アンモニアガスのみを含有していてもよいし、アンモニアガスと空気及びメタン等のその他のガスとの混合ガスであってもよい。固形分の搬送ガスとしてアンモニア含有ガスを用いることによって、燃焼に寄与しないガス(例えば搬送用の高圧空気の少なくとも一部)の導入量を低減できる。これによって、セメントクリンカ製造装置100のエネルギー効率を一層高くすることができる。搬送部12へのアンモニア含有ガスの供給圧力は、固形分を円滑に搬送する観点から、例えば0.1~0.3MPaであってよい。
なお、第1導入口10から固形分を導入することは必須ではない。例えば、第1導入口からアンモニア含有ガスのみを導入してもよい。この場合、第1導入口からアンモニアガスと燃焼用空気を導入することが好ましい。
仮焼炉30内の温度は、例えば850~1000℃、好ましくは850~900℃であり、ロータリーキルン40内の温度よりも低い。このため、仮焼炉30でセメント原料を加熱する際の放射伝熱による伝熱の割合は、ロータリーキルン40よりも低く、仮焼炉30では対流伝熱の割合が高い。このため、仮焼炉30で炭素を含有する化石燃料の少なくとも一部をアンモニアに置換しても、高いエネルギー効率を十分に維持することができる。また、二酸化炭素の排出量を十分に低減することができる。
搬送部12の先端部にはアンモニア含有ガスと固形分を含む熱エネルギー原料を燃焼するバーナが設けられていてもよい。これによって、アンモニアを速やかに燃焼することができる。アンモニア含有ガスと固形分とを一緒に仮焼炉30に導入することは必須ではなく、変形例ではアンモニア含有ガスを第1導入口10から導入し、固形分を別の導入口から導入してもよい。仮焼炉30には、第1導入口10以外の一つ以上の導入口が設けられていてもよい。このような導入口から、アンモニア含有ガス及び固形分以外の原料等が導入されてもよい。例えば熱エネルギー原料を代替する廃プラスチック及び都市ゴミ等の廃棄物、汚泥(下水汚泥、有機汚泥、調合汚泥)、及び肉骨粉等が導入されてよい。
第1導入口10から導入されるアンモニア含有ガスの一部は熱エネルギー原料に用いられ、別の一部は脱硝に用いられてもよい。すなわち、以下の式(1)のみならず、式(2)のように反応してもよい。
NH3+1/4O2 → 1/2N2+3/2H2O (1)
NH3+NO+1/4O2 → N2+3/2H2O (2)
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800℃を超えると燃焼反応(式(1))の方が優位となり、800℃未満になると脱硝反応(式(2))の方が優位となる。仮焼炉30は、燃焼反応と脱硝反応の両方が進み得る温度域にあるため、アンモニアの燃焼反応と脱硝反応の両方を行うことができる。これによって、二酸化炭素と窒素酸化物の両方の排出量を低減することができる。
第1導入口10から導入されるアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアが、仮焼炉30において燃焼及び脱硝の両方を行ってもよいし、第1導入口10からのアンモニアの全て又は大部分を燃焼反応に利用し、脱硝反応に用いられるアンモニアを第2導入口20から導入してもよい。第2導入口20から導入されるアンモニア含有ガスは、アンモニアのみを含んでいてもよいし、アンモニアガスと他のガスとの混合ガスであってもよい。
ライジングダクト34から仮焼炉30に導入されるキルン排ガスは、アンモニア及びその他の熱エネルギー原料の燃焼排ガスと混合されながら上昇し、セメント原料とともに仮焼炉30の上部に接続される接続部38を流通する。接続部38は、仮焼炉30と図1に示すサイクロンC4とを接続する、セメント原料を同伴する排ガスの流路である。このような排ガスの流通方向を基準としたときに、第2導入口20は、第1導入口10よりも下流側に設けられる。これによって、第2導入口20の方が、第1導入口10よりも低い温度領域(例えば800℃未満の領域)にアンモニア含有ガスを導入することができる。これによって、第2導入口20から導入されるアンモニアによる式(1)の脱硝反応を十分に促進することができる。
本実施形態では第2導入口20は接続部38に設けられているが、これに限定されない。例えば、第2導入口20は、仮焼炉30に設けられてもよいし、サイクロンC1~C4及びこれらの間の接続部のいずれかに設けられてもよい。なお、第2導入口20から導入されるアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアの全てが上記式(2)の脱硝反応に消費されることは必須ではなく、一部が上記式(1)のとおり燃焼してもよい。
窒素酸化物が十分に低減されたセメント原料を同伴する排ガスは、接続部38を流通してサイクロンC4に導入されセメント原料と分離される。その後、熱交換によってセメント原料を予熱しながらサイクロンC3,C2,C1の順に流通する。その後、任意の排ガス処理設備を経て、大気に放出されてもよいし、他の用途に用いられてもよい。このような排ガスに含まれる窒素酸化物を十分に低減する観点から、仮焼炉30の運転中、第1導入口10及び第2導入口20の少なくとも一方から仮焼炉30にアンモニアを連続して供給することが好ましい。窒素酸化物と二酸化炭素の排出量の両方を十分に低減する観点から、仮焼炉30の運転中、第1導入口10から、アンモニアガスを含む熱エネルギー原料を連続して供給することが好ましい。これによって、二酸化炭素の排出量を十分に削減しつつ、排ガスに含まれる窒素酸化物も安定的に低減することができる。
一実施形態に係るセメントクリンカの製造方法は、セメントクリンカ製造装置100を用いる。すなわち、本実施形態の製造方法では、仮焼炉30とロータリーキルン40とを備えるセメントクリンカ製造装置100を用いてセメントクリンカを製造する。この製造方法は、搬送部12において熱エネルギー原料の一部である固形分をアンモニア含有ガスで搬送する搬送工程と、仮焼炉30に設けられた第1導入口10から、アンモニア含有ガスと固形分を含む熱エネルギー原料を導入する導入工程と、仮焼炉30においてアンモニアガスを燃焼する燃焼工程と、第2導入口20からアンモニアガスを導入して排ガスを脱硝する脱硝工程とを有する。
各工程は、上述のセメントクリンカ製造装置100の説明内容に基づいて行うことができる。したがって、セメントクリンカ製造装置100の説明内容は、本実施形態のセメントクリンカの製造方法にも適用される。導入工程では、アンモニア含有ガスの圧力によって固形分を第1導入口10から仮焼炉30内に吐出してもよい。これによって、燃焼に寄与しない過剰な搬送用高圧空気の使用量を削減し、エネルギー効率をさらに向上することができる。
上記実施形態に係るセメントクリンカ製造装置100及びセメントクリンカの製造方法、並びにこれらの変形例によれば、アンモニアを仮焼炉30の熱エネルギー原料として利用することによって二酸化炭素の排出量を削減することができる。そして、高いエネルギー効率でセメント原料を安定的に加熱して、性状のばらつきが十分に抑制されたセメントクリンカを製造することができる。
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、セメントクリンカの製造方法は、セメントクリンカ製造装置100とは異なるセメントクリンカ製造装置を用いて行ってもよい。セメントクリンカ製造装置において、セメント原料を予熱するサイクロンの数は特に限定されず、3基以下であってもよいし、5基以上であってもよい。
以下、参考例を挙げて本開示の内容を詳細に説明する。
(参考例1)
図1に示すようなセメントクリンカ製造装置の運転を行って、セメント原料からセメントクリンカを製造した。ロータリーキルンに備えられるバーナでは、微粉炭のみを用いて燃焼させた。このような運転中におけるロータリーキルン内の温度分布を調べた。
図1に示すようなセメントクリンカ製造装置の運転を行って、セメント原料からセメントクリンカを製造した。ロータリーキルンに備えられるバーナでは、微粉炭のみを用いて燃焼させた。このような運転中におけるロータリーキルン内の温度分布を調べた。
その結果、ロータリーキルンに導入されたセメント原料は、窯尻側からバーナ側に向かうにつれて、温度が高くなっていた。窯尻側のセメント原料の温度は約900℃であり、バーナ付近では1400℃以上の高温に到達していた。
ロータリーキルン内でのセメント原料への伝熱には、ガスから固形分(セメント原料)の表面への放射(輻射)による伝熱と、ガスから固形分表面への対流による伝熱と、ロータリーキルンの内壁面から固形分表面への放射による伝熱がある。そこで、ロータリーキルン内部の熱・物質収支を解いて、それぞれの伝熱による伝熱寄与割合を推定した。
その結果、ロータリーキルン内の伝熱の大部分は放射伝熱であり、その割合は、温度が高いほど高くなっていた。固形分への全伝熱に対する放射伝熱(ガスからの放射+内壁面から放射)の寄与率は最大で約87%であった。放射伝熱のうちガス放射による伝熱が8~9割を占めており、バーナの火炎から受ける放射伝熱がセメントクリンカの生成に大きな役割を果たしていることが確認された。一方、低温側に行くほど、対流伝熱の割合が高くなっており、窯尻近傍では全伝熱に対する対流伝熱の寄与率は約38%にまで上がっていた。
(参考例2)
小型工業炉を用いて、重油のみを燃焼した場合のフレーム(A)と、カロリー換算で重油70%とアンモニア30%の混合燃料を燃焼したときのフレーム(B)を比較した。その結果、燃焼に用いた熱エネルギー原料の総カロリーは同じであったにもかかわらず、フレーム(A)よりもフレーム(B)の方が、輝炎が小さく且つ輝度も低くなっていることが確認された。このことからも、アンモニアを混焼すると、輻射能が低下することが確認された。
小型工業炉を用いて、重油のみを燃焼した場合のフレーム(A)と、カロリー換算で重油70%とアンモニア30%の混合燃料を燃焼したときのフレーム(B)を比較した。その結果、燃焼に用いた熱エネルギー原料の総カロリーは同じであったにもかかわらず、フレーム(A)よりもフレーム(B)の方が、輝炎が小さく且つ輝度も低くなっていることが確認された。このことからも、アンモニアを混焼すると、輻射能が低下することが確認された。
仮焼炉では、ロータリーキルンよりも低い温度でセメント原料を加熱する。参考例1の結果によれば、ロータリーキルンよりも低い温度域では、ロータリーキルンの内部よりも、ガスからセメント原料表面への対流による伝熱の寄与率が高くなる。したがって、アンモニアガスを仮焼炉の熱エネルギー原料として用いることによって、ロータリーキルンのみで熱エネルギー原料としてアンモニアガスを用いる場合に比べて、エネルギー効率を向上することができる。
本開示によれば、アンモニアを利用して二酸化炭素の削減を図りつつ、高いエネルギー効率でセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカ製造装置を提供することができる。
10…第1導入口,12…搬送部,20…第2導入口,30…仮焼炉,34…ライジングダクト,36…プローブ,38…接続部,40…ロータリーキルン,42…窯尻,44…バーナ,50…クリンカクーラ,100…セメントクリンカ製造装置,C1,C2,C3,C4…サイクロン。
Claims (9)
- 仮焼炉とロータリーキルンとを備えるNSPキルンを用いてセメントクリンカを製造するセメントクリンカの製造方法であって、
前記仮焼炉に設けられた第1導入口からアンモニアガスを含む熱エネルギー原料を導入する導入工程と、
前記仮焼炉において前記アンモニアガスを燃焼する燃焼工程を有する、セメントクリンカの製造方法。 - 前記導入工程で前記第1導入口から導入される前記熱エネルギー原料は固形分を含む、請求項1に記載のセメントクリンカの製造方法。
- 前記固形分を、前記アンモニアガスを含むガスで搬送する搬送工程を有し、
前記導入工程では、前記ガスの圧力によって前記固形分を前記第1導入口から前記仮焼炉内に吐出する、請求項2に記載のセメントクリンカの製造方法。 - 排ガスの流通方向を基準としたときに、前記第1導入口よりも下流側の前記排ガスの流路に設けられる第2導入口からアンモニアガスを導入して前記排ガスを脱硝する脱硝工程を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のセメントクリンカの製造方法。
- 前記第1導入口から導入される前記アンモニアガスを含む前記熱エネルギー原料は前記仮焼炉の運転中に連続して供給される、請求項1~4のいずれか一項に記載のセメントクリンカの製造方法。
- 仮焼炉とロータリーキルンとを備えるセメントクリンカ製造装置であって、
前記仮焼炉はアンモニアガスを含む熱エネルギー原料を導入する第1導入口を有し、
前記仮焼炉において前記アンモニアガスを燃焼する、セメントクリンカ製造装置。 - 前記第1導入口から導入される前記熱エネルギー原料は固形分を含む、請求項6に記載のセメントクリンカ製造装置。
- 前記固形分を、前記アンモニアガスを含むガスで搬送する搬送部を有し、
前記アンモニアガスの圧力によって前記固形分を前記第1導入口から前記仮焼炉内に吐出する、請求項7に記載のセメントクリンカ製造装置。 - 排ガスの流通方向を基準としたときに、前記第1導入口よりも下流側の前記排ガスの流路にアンモニアガスを導入する第2導入口を有し、
前記第2導入口から導入される前記アンモニアガスによって前記排ガスを脱硝する、請求項6~8のいずれか一項に記載のセメントクリンカ製造装置。
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