JP2023026319A - 多環芳香族化合物 - Google Patents

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Takuji Hatakeyama
孝弘 小林
Takahiro Kobayashi
裕之 田中
Hiroyuki Tanaka
彰英 水谷
Akihide Mizutani
健永 前田
Takenaga Maeda
真人 東
Masato Azuma
凌 南
Ryo Minami
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Abstract

【課題】有機EL素子等の有機デバイス用材料として有用な新規化合物を提供する。【解決手段】式(1-1)等で表される多環芳香族化合物、および該多環芳香族化合物を発光層に含む有機電界発光素子。TIFF2023026319000183.tif55170【選択図】なし

Description

本発明は、多環芳香族化合物に関する。本発明は特に、窒素とホウ素を含む多環芳香族化合物に関する。本発明はまた、上記多環芳香族化合物を含む有機デバイス用材料、有機電界発光素子、並びに、表示装置および照明装置に関する。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料から成る有機電界発光素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の1つである青色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
有機電界発光素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
その中で、特許文献1では、ホウ素を含有する多環芳香族化合物が、有機電界発光素子等の材料として有用であることが開示されている。この多環芳香族化合物を含有する有機電界発光素子は、良好な外部量子効率を有することが報告されている。特許文献2および特許文献3には、ベンゾチオフェン等のヘテロ環が縮合したホウ素を含有する多環芳香族化合物が開示されている。
国際公開第2015/102118号 国際公開第2020/111830号 国際公開第2020/251049号
上述のように、有機EL素子に用いられる材料としては種々の材料が開発されているが、有機EL素子用材料の選択肢を増やすために、従来とは異なる化合物からなる材料の開発が望まれている。
本発明は有機EL素子等の有機デバイス用材料として有用な新規化合物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、特許文献1に記載の化合物と類似の構造を有する多環芳香族化合物において、より発光特性に優れる新規多環芳香族化合物の製造に成功した。また、この多環芳香族化合物を含有する層を一対の電極間に配置して有機EL素子を構成することにより、優れた有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下のような多環芳香族化合物、さらには以下のような多環芳香族化合物を含む有機デバイス用材料等を提供する。
本発明は、具体的には以下の構成を有する。
<1> 下記式(1)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物;
Figure 2023026319000001
式(1)中、
A環、B環はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり;
C環は式(C)で表される環であり、
式(C)中、
cは>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-R、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換シクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、
いずれかの隣接する2つのZCはそれぞれY1またはX2のいずれかと直接結合している炭素であり、
その他のZCはそれぞれ独立して、NまたはC-RCであり、RCはそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルであり、前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよく、
隣接する2つのRCは互いに結合して、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成されているアリール環およびヘテロアリール環はそれぞれ無置換であるか、または少なくとも1つのRC2で置換されており、RC2はRCと同義であり、ただし、RC2は水素ではなく、かつ隣接する2つのRC2が互いに結合してアリール環またはヘテロアリール環を形成することはなく;
1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si-R、またはGe-Rであり、前記Si-Rおよび前記Ge-RのRは置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり;
1およびX2は、それぞれ独立して、>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-RのRは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>C(-R)2、および>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、また、前記>N-RのRおよび/または前記>C(-R)2のRは連結基または単結合によりA環および/もしくはB環、またはA環および/もしくはC環と結合していてもよく、
ただし、X1またはX2の少なくとも1つは>N-Gであり、Gは、式(G)で表される基であり、
式(G)中、
gはそれぞれ独立して、NまたはC-Rgであり、Rgはそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルであり、前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよく、
隣接する2つのRgは互いに結合して、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成されているアリール環およびヘテロアリール環はそれぞれ無置換であるか、または少なくとも1つのRg2で置換されており、Rg2はRgと同義であり、ただし、Rg2は水素ではなく、かつ隣接する2つのRg2が互いに結合してアリール環またはヘテロアリール環を形成することはなく、
*はNとの結合位置を表し;
前記構造における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置換されていていてもよく;
前記構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
<2> 式(1)で表される構造単位が、式(2)で表される構造単位である、<1>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2023026319000002
式(2)中、
a環およびb環において、Zはそれぞれ独立して、NもしくはC-R11であるか、またはZ=Zはそれぞれ独立して>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-R、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換シクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、
前記C-R11のR11はそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルであり、
前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは単結合または連結基を介して互いに結合していてもよく、
隣接する2つのR11は互いに結合して、a環またはb環とともにアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成されているアリール環およびヘテロアリール環はそれぞれ無置換であるか、または少なくとも1つのR11bで置換されており、R11bはR11と同義であり、ただし、R11bは水素ではなく、かつ隣接する2つのR11bが互いに結合してアリール環またはヘテロアリール環を形成することはなく、
C環は式(C)で表される環であり;
1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si-R、またはGe-Rであり、前記Si-Rおよび前記Ge-RのRは置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり;
1およびX2は、それぞれ独立して、>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-RのRは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>C(-R)2、および>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、また、前記>N-RのRおよび/または前記>C(-R)2のRは連結基または単結合によりa環および/もしくはb環、またはa環および/もしくはC環と結合していてもよく、ただし、X1またはX2の少なくとも1つは、>N-Gであり、前記>N-GのGは、式(G)で表される基であり;
前記構造における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置換されていてもよく;
前記構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
<3> 式(2)で表される構造単位が式(2a-1)で表される構造単位である、<2>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2023026319000003
式(2a-1)中、Y1、X1、X2、XCは、式(2)中の、Y1、X1、X2、XCとそれぞれ同義であり、R11b、RC2は、式(2)中のR11b、RC2とそれぞれ同義であり、
n1は0~4の整数であり、n2は0~4の整数であり、n3は0~3の整数であり、
前記構造中のアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、
前記構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
<4> 下記式のいずれか1つで表される、<3>に記載の多環芳香族化合物。
Figure 2023026319000004
Figure 2023026319000005
Figure 2023026319000006
Figure 2023026319000007
式中、Meはメチル、tBuはt-ブチル、Dは重水素である。
<5> 式(2)で表される構造単位が式(2a-2)で表される構造単位である、<2>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2023026319000008
式(2a-2)中、Y1、X1、X2、XCは、式(2)中の、Y1、X1、X2、XCとそれぞれ同義であり、R11b、RC2は、式(2)中のR11b、RC2とそれぞれ同義であり、
3およびX4はそれぞれ独立して、単結合、>O、>N-R、>C(-R)2、または>Sであり、ただし、X3およびX4が同時に単結合であることはなく、
n1は0~4の整数であり、n2は0~4の整数であり、n3は0~3の整数であり、n4は0~2の整数であり、
前記構造中のアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、
前記構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
<6> 下記式のいずれか1つで表される、<5>に記載の多環芳香族化合物。
Figure 2023026319000009
式中、Meはメチル、tBuはt-ブチル、Dは重水素である。
<7> 下記式で表される、<2>に記載の多環芳香族化合物。
Figure 2023026319000010
<8> <1>~<7>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。
<9> 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層とを含み、前記発光層が<1>~<7>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
<10> 前記発光層が、ホストと、ドーパントとしての前記多環芳香族化合物とを含む、<9> に記載の有機電界発光素子。
<11> 前記ホストが、アントラセン化合物、フルオレン化合物、またはジベンゾクリセン化合物である、<10>に記載の有機電界発光素子。
<12> <9>~<11>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
本発明により、有機電界発光素子等の有機デバイス用材料として有用な新規多環芳香族化合物が提供される。本発明の多環芳香族化合物は有機電界発光素子等の有機デバイスの製造に用いることができる。
有機電界発光素子の一例を示す概略断面図である。 一般的な蛍光ドーパントを用いたTAF素子のホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントのエネルギー関係を示すエネルギー準位図である。 本発明の一態様の有機電界発光素子における、ホスト、アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントのエネルギー関係の一例を示すエネルギー準位図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」、「炭素」は「炭素原子(C)」を意味する。本明細書において、有機電界発光素子を有機EL素子ということがある。
本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
本明細書に記載されている化学構造式(後述する式(1)のようにマーカッシュ構造式で描かれた一般式を含む)は平面構造式であるために、実際にはエナンチオ異性体、ジアステレオ異性体、また回転異性体のような種々の異性体構造が存在する場合がある。本明細書においては、特に断らない限りは、記載されている化合物はその平面構造式から考えうるいずれの異性体構造であってもよく、また可能な異性体から構成される任意の比率の混合物であってもよい。
本明細書では芳香族化合物の構造式について多数記載している。芳香族化合物は二重結合と単結合を組み合わせて記載しているが、実際にはπ電子が共鳴しているため単一の物質についても、二重結合と単結合が交互に入れ替わるなどする等価な共鳴構造が複数存在する。本明細書においては1つの物質につき1つの共鳴構造式しか記載しないが、特段断らない限りは、有機化学的に等価であるその他の共鳴構造式も含まれているものとする。このことは後述する「Z=Z」などの記載で参照される。すなわち、例えば後述する式(2)中の「Z=Z」に関しては例を示すと下記の通りになる。ただしこれに限定されず、記載されている1つの共鳴構造式だけではなく、考えられるそのほかの等価な共鳴構造式にも当然適用される。
Figure 2023026319000011
なお、本明細書では「~していてもよい」という表現をすることがあるが、「~していないか、または~している」と同じ意味である。
本明細書中において「隣接する」は、構造式中、共有結合で直接結合する2つの原子について、または共有結合で直接結合する2つの原子にそれぞれ結合している2つの基について用いられる。
本明細書において、置換基は、さらなる置換基で置換されていることがある。例えば、特定の置換基に関して、「置換もしくは無置換の」と説明がされることがある。これはその特定の置換基の少なくとも1つの水素がさらなる置換基で置換されているか、または置換されていないことを意味する。本明細書において、このときの上記特定の置換基を「第1の置換基」、上記のさらなる置換基を「第2の置換基」ということがある。
<1.多環芳香族化合物>
本発明の多環芳香族化合物は式(1)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物である。式(1)で表される基本骨格を有する化合物は従来から、発光半値幅が狭く、色純度に優れた素子を与えることができることが知られていたが、本発明者らは、さらに式(C)および式(G)で表される部分構造を有する化合物とすることにより、より低電圧、かつより高効率発光の有機電界発光素子を製造できることを見出した。
Figure 2023026319000012
式(1)において円内の「A」、「B」、「C」は各円で示される環構造を示す符号である。式(1)で表される構造単位は、A環、B環、およびC環にある少なくとも3つの芳香族環をホウ素、酸素、窒素、硫黄などのヘテロ元素で連結してさらに環構造が形成された構造を有する。形成されている環構造は少なくとも5つの環から構成される縮合環構造である。
式(1)中、C環は式(C)で表される環構造である。式(C)中、いずれかの隣接する2つのZCはY1またはX2のいずれかと結合している炭素である。具体的には、いずれかの隣接する2つのZCの一方がY1と結合し、他方がX2と結合している。以下で具体例を示す通り、c1環上のいずれかの隣接する2つのZCがY1およびX2と結合している炭素であってもよく、またc2環上で隣接する2つのZCがY1およびX2と結合している炭素であってもよい。
式(C)中、Xcは>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-R、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換シクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。これらの基は「置換もしくは無置換の」と説明されているが、置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、または置換シリルが好ましい。なお前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに結合していてもよい。この第1の置換基と第2の置換基の詳細と好ましい範囲については、後述の好ましい置換基に関する記載が参照できる。
式(C)中、Y1またはX2のいずれかと結合している炭素であるZC以外のZCはそれぞれ独立して、NまたはC-RCであり、RCはそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルである。なお前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに結合していてもよい。または、単結合もしくは連結基を介して連結している。
これらの基は「置換もしくは無置換の」と説明されているが、置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、または置換シリルが好ましい。なお前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい。この第1の置換基と第2の置換基の詳細と好ましい範囲については、後述の好ましい置換基に関する記載が参照できる。
1またはX2のいずれかと結合している炭素であるZC以外のZCが、いずれもC-RCであるとき、RCはいずれか1つが置換基であり、その他が水素であることが特に好ましい。置換基としては後述するtR(特に、t-ブチル)が好ましい。置換位置はXcのパラ位であることが好ましい。
式(C)中、隣接する2つのRCは互いに結合して(それらのRCが結合している2つの炭素とともに)アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。形成されたアリール環およびヘテロアリール環の少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、RCで置換されていているか、または置換されていない。またここで用いられた語句およびその好ましい範囲に関しては、明細書中の記載が参照できる。
式(C)中、Xcは>O、>N-R、または>Sであることが好ましく、>Sであることがより好ましい。式(C)のZCの好ましい範囲については、以下の具体例の記載を参照することができる。
式(1)中、A環およびB環はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール環、または置換もしくは無置換のヘテロアリール環である。A環は、その構造中のアリール環またはヘテロアリール環の環上で連続する3つの炭素に結合手を有する3価の基を形成している。この3つの結合手でそれぞれX1、X2、およびY1に結合する。A環中で上記の3つの結合手を有する炭素を環構成元素とする環は5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。この環はさらに他の環と縮合していてもよい。B環はいずれも、その構造中のアリール環またはヘテロアリール環の環上で互いに隣接する2つの炭素に結合手を有する2価の基を形成している。B環は上記の2つの結合手でX1およびY1に結合している。B環中で上記の2つの結合手を有する炭素を環構成元素とする環は5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。この環はさらに他の環と縮合していてもよい。
置換基としては、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルであり、前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに単結合もしくは連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに単結合もしくは連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに単結合もしくは連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合もしくは連結基を介して結合していてもよい。これらの基は「置換もしくは無置換の」と説明されているが、少なくとも1つの水素が置換される場合には、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、または置換シリルが好ましい。この第1の置換基と第2の置換基の詳細と好ましい範囲については、後述の好ましい置換基に関する記載が参照できる。
式(1)におけるX1およびX2は、それぞれ独立して、>O、>N-R、>Si(-R)2、>C(-R)2、>S、または>Seである。ただし、X1またはX2の少なくとも1つは>N-Gである。X1およびX2は、一方が>N-Gであり、他方が>N-R(>N-Gを含む)、>C(-R)2、または>Oであることが好ましく、一方が>N-Gであり、他方が>N-R(>N-G以外)であることがより好ましい。
式(1)において、X1またはX2である>N-RのRは、水素、置換されていてもよいアリール(ただし置換基としてアミノを除く)、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルである。X1およびX2である>Si(-R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルである。
式(1)において、X1またはX2である>Si(-R)2および>C(-R)2のRは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、2つのRは同一であることが好ましく、そして2つのRは結合して環を形成していてもよい。
式(1)において、X1またはX2である>N-R、>Si(-R)2、または>C(-R)2のRにおけるアリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキルについては、後述する各基のそれらの説明を参照できる。
式(1)において、X1またはX2である>N-RのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、または置換されていてもよいシクロアルキルであることが好ましく、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであることがより好ましい。シクロアルキルの例としては、後述する例があげられる。ここで、アリールとしては、フェニル、ビフェニリル(特に、2-ビフェニリル)、およびテルフェニリル(特に、テルフェニル-2’-イル)が好ましく、ヘテロアリールとしては、ベンゾチエニル(2-ベンゾチエニル、6-ベンゾチエニルなど)、ベンゾフラニル(2-ベンゾフラニル、3-ベンゾフラニル、5-ベンゾフラニルなど)、ジベンゾフラニル(2-ジベンゾフラニル、3-ジベンゾフラニル、4-ジベンゾフラニル、5-ジベンゾフラニルなど)などが好ましい。置換基としては下記式(tR)で表されるターシャリ-アルキル(特に、t-ブチル)、またはシクロアルキル(特に、アダマンチル)が好ましい。アリールおよびヘテロアリールにおける置換基数は0~2つが好ましく、1つまたは2つがより好ましく、1つがさらに好ましい。上記のアリールにおけるアリール環が後述のように置換されていてもよいシクロアルカンで縮合されている場合も好ましい。具体的なシクロアルカンとしては、後述されるものが参照できる。
式(1)において、X1またはX2である>N-RのRとして特に好ましい例としては、後述する>N-Gに加えて、その他の、置換されていてもよい2-ビフェニリル、置換されていてもよいテルフェニル-2’-イル、およびシクロアルカンで縮合されているアリール(置換されていてもよい)があげられる。置換されていてもよい2-ビフェニリルとしては、1~3つのt-ブチルで置換されている2-ビフェニリルが特に好ましい。置換されていてもよいテルフェニル-2’-イルとしては、無置換の[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-2’-イルが特に好ましい。シクロアルカンで縮合されているアリールとしては、特に以下が好ましい。
Figure 2023026319000013
(Meはメチル、tBuはt-ブチル、*は結合位置を示す。)
式(1)において、X1またはX2である>N-RのRは、シクロアルカンで縮合されているアリール(置換されていてもよい)であることも好ましい。
式(1)において、X1またはX2である>N-R、>Si(-R)2および>C(-R)2の少なくとも1つにおけるRは連結基または単結合によりA環およびB環のいずれか1つ、またはA環およびC環のいずれか1つと結合していてもよい。すなわち、X1である>N-R、>Si(-R)2および>C(-R)2の少なくとも1つにおけるRは連結基または単結合によりA環およびB環のいずれか1つと結合していてもよく、X2である>N-R、>Si(-R)2および>C(-R)2の少なくとも1つにおけるRは連結基または単結合によりA環およびC環のいずれか1つと結合していてもよい。連結基としては、-O-、-S-、または-C(-R132-が好ましい。前記「-C(-R132-」のR13は、水素、アルキルまたはシクロアルキルであるが、このアルキルまたはシクロアルキルとしてはそれぞれ第1の置換基として上述する基があげられる。特に炭素数1~5のアルキル(例えばメチル、エチルなど)または炭素数5~10のシクロアルキル(好ましくは、シクロヘキシルまたはアダマンチル)が好ましい。
また、上記規定は、下記式(1-3-2)で表される、>N-RであるX1が縮合環A’に取り込まれた環構造を有する化合物でも表現できる。すなわち、例えばベンゼン環であるA環に対してX1およびX2のいずれか1つを取り込むようにして他の環が縮合して形成されるA’環を有する化合物である。形成されてできた縮合環A’は例えば、カルバゾール環、フェノキサジン環、またはフェノチアジン環である。
Figure 2023026319000014
一例として、前記>N-RのRが置換されていてもよいシクロアルキルであり、かつA環、B環、またはC環と単結合で結合している形態も好ましい。シクロアルキルとしては、置換されていてもよいシクロペンチル、または置換されていてもよいシクロヘキシルが好ましい。
前述の様に形成されてできた縮合環の特に好ましい例として式(A11)で表される構造をあげることができる。式(A11)中、*は「X1またはX2である>N-R、>Si(-R)2および>C(-R)2の少なくとも1つにおけるRは連結基または単結合によりA環およびB環のいずれか1つ、またはA環およびC環のいずれか1つと結合していてもよい」という前記の規定において、単結合により結合している形態に対応している。前述の通り、この場合、メチルが置換している2つの炭素は不斉炭素であり、式(1)で表される化合物としてはジアステレオマーおよびエナンチオマーが存在しうるが、式(1)で表される化合物としてはそれらのいずれの異性体であってもよく、また可能な異性体が任意の比で混合されている形態であってもよい。
Figure 2023026319000015
式(A11)中、Meはメチルであり、*と**の位置でX1またはX2が結合する2つの環の一方の環に、***の位置で他方の環に結合している。
同様に、前記>N-RのRがフェニルであり、かつA環、B環、またはC環と単結合で結合している形態である以下の例があげられる。
Figure 2023026319000016
式(A12)中、*と**の位置でX1またはX2が結合する2つの環の一方の環に、***の位置で他方の環に結合している。
上記の好ましい範囲のRである>N-RをX1またはX2として有する本発明の化合物を発光材料として素子の製造に用いることにより、さらに発光効率や素子寿命を向上させることができる。
式(1)のX1またはX2である>Si(-R)2のRは、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルである。ここで、置換されているときの置換基としては上述した第2の置換基をあげることができる。このアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルとしてはそれぞれ第1の置換基として上述する基があげられる。特に炭素数6~10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数2~15のヘテロアリール(例えばカルバゾリルなど)、炭素数1~5のアルキル(例えばメチル、エチルなど)または炭素数5~10のシクロアルキル(好ましくはシクロヘキシルやアダマンチル)が好ましい。
式(1)のX1またはX2である>C(-R)2のRは、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルである。ここで、置換されているときの置換基としては上述した第2の置換基をあげることができる。このアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルとしてはそれぞれ第1の置換基として上述する基があげられる。特に炭素数6~10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数2~15のヘテロアリール(例えばカルバゾリルなど)、炭素数1~5のアルキル(例えばメチル、エチルなど)または炭素数5~10のシクロアルキル(好ましくはシクロヘキシルやアダマンチル)が好ましい。
次に式(1)において、X1またはX2の少なくとも1つは、>N-Gである。Gは、下記式(G)で表される1価の基である。
Figure 2023026319000017
式(G)において、Zgはそれぞれ独立して、NまたはC-Rgであり、前記C-RgのRgはそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルであり、前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよい。これらの基は「置換もしくは無置換の」と説明されているが、置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、または置換シリルが好ましい。なお前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに結合していてもよい。各置換基の詳細や好ましい例については後述の置換基についての説明を参照することができる。Rgは水素、アリール、ヘテロアリールまたはアルキル(特に後述するtR)であることが好ましく、水素またはアルキル(特に後述するtR)であることが最も好ましい。
式(G)において、隣接する2つのRgは互いに結合して(それらのRgが結合している2つの炭素とともに)アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成されているアリール環およびヘテロアリール環はそれぞれ無置換であるか、または少なくとも1つのRg2で置換されている。Rg2はRgと同義であり、ただし、Rg2は水素ではなくかつ隣接する2つのRg2が互いに結合してアリール環またはヘテロアリール環を形成することはない。
式(G)において、*はX1またはX2中のNとの結合位置を表す。
式(G)で表される1価の基の具体的例としては下記のものがあげられる。ただし、式(G)で表される1価の基の具体的な形態として、これらの例に限定されるものではない。なお、下記式中、Meはメチル、tBuはt-ブチル、*はNとの結合位置を表す。
Figure 2023026319000018
Figure 2023026319000019
Figure 2023026319000020
Figure 2023026319000021
Figure 2023026319000022
式(1)で表される構造単位の好ましい形態として、下記式(2)で表される構造単位があげられる。
Figure 2023026319000023
式(2)中のa環およびb環は、それぞれ、式(1)中のA環およびB環に対応する。すなわち、式(2)は、式(1)のA環およびB環として特定の環が選択された構造に対応する。その意味で、各式における各環を小文字の「a」および「b」で表した。
式(2)中、a環およびb環において、Zはそれぞれ独立して、NもしくはC-R11であるか、またはZ=Zはそれぞれ独立して>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-R、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換シクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。ここで、前記アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキルを第1の置換基と呼称する。これらの基は「置換もしくは無置換の」と説明されているが、少なくとも1つの水素が置換される場合には、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、または置換シリルが好ましい。これらの、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、置換シリルを第2の置換基と呼称する。なお前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい。
式(2)中、C-R11のR11はそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルであり、前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは連結基を介して互いに結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合もしくは連結基を介して結合していてもよい。これらの基は「置換もしくは無置換の」と説明されているが、置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、または置換シリルが好ましい。
11としては、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリ-ル、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、または置換シリルが好ましい。R11として水素以外の基については後述の好ましい置換基に関する記載も参照できる。なお前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい。これらの基は「置換もしくは無置換の」と説明されているが、置換基としては、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、または置換シリルが好ましい。
a環において、ZはいずれもC-R11であることが好ましい。このとき、Y1のパラ位のR11が水素または置換基であり、その他のR11が水素であることが好ましい。置換基としてはメチルまたはt-ブチルなどのアルキルが好ましい。b環において、ZがC-R11であるときのR11としては水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリ-ル、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルが好ましく、水素、置換もしくは無置換のジアリールアミノまたは置換もしくは無置換のアルキルがより好ましく、水素、置換もしくは無置換のジアリールアミノまたは無置換のアルキル(特に後述するtR)がさらに好ましい。ジアリールアミノが置換基を有するときの置換基としては無置換のアルキル(特に後述するtR)またはフェニルが好ましい。
次に、「Z=Zはそれぞれ独立して>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり」という記載について説明する。例えば、式(2)中のb環において、「Z=Z」の箇所が>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seに置き換わって得られる環としては、シクロペンタジエン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環などがあげられる。b環において、1つのZ=Zが>N-R、>O、>S、>C(-R)2であって、残りのZがC-Hである例、さらには1つのZ=Zが>N-R、>O、>S、>C(-R)2であって、かつ残りのZがC-R11であり、後述するように隣接するR11がベンゼン環を形成している例を以下に示す。ただし、b環などが取り得る形態としては、下記の例に限定されるわけではない。
Figure 2023026319000024
上記のように、芳香族化合物には有機化学的に全く等価な共鳴構造式が存在するので、可能ないずれの共鳴構造式を基礎にしてもよい。なお、Z=Zである前記>N-R、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換シクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。これらの基は「置換もしくは無置換の」と説明されているが、少なくとも1つの水素が置換される場合には、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、または置換シリルが好ましい。なお前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに結合していてもよい。この第1の置換基と第2の置換基に関して、またここで用いられた語句およびその好ましい範囲に関しては、明細書中の記載が参照できる。
なお、式(2)中、Zはそれぞれ独立してすべてC-R11であることが好ましい。
隣接する2つのR11は互いに結合して、a環またはb環とともにアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。形成されているアリール環およびヘテロアリール環はそれぞれ無置換であるか、または少なくとも1つのR11bで置換されている。R11bはR11と同義であり、ただし、R11bは水素ではなくかつ隣接する2つのR11bが互いに結合して、アリール環またはヘテロアリール環を形成することはない。R11bとしては、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリ-ル、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルが好ましく、置換もしくは無置換のジアリールアミノまたは置換もしくは無置換のアルキルがより好ましく、置換もしくは無置換のジアリールアミノまたは無置換のアルキル(特に後述するtR)がさらに好ましい。
a環またはb環とともに形成されるアリール環としてはナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、インデン環、9,10-ジヒドロアントラセン環(特に9,9,10,10-テトラメチル-9,10-ジヒドロアントラセン環)、ジヒドロアクリジン環、またはキサンテン環が好ましく、形成されるヘテロアリール環としては、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、またはカルバゾール環が好ましい。
隣接する2つのR11が互いに結合して、b環とともにアリール環またはヘテロアリール環を形成した例を以下に示す。なお、下記構造におけるベンゼン環はさらに少なくとも1つのR11bを置換基として有していてもよい。
Figure 2023026319000025
式(2)のさらに好ましい形態として、下記式(2a)、式(2b)、式(2c)、式(2d)、式(2e)、式(2f)、式(2g)および式(2h)があげられる。
Figure 2023026319000026
式(2a)、式(2b)、式(2c)、式(2d)、式(2e)、式(2f)、式(2g)および式(2h)中、Zcがそれぞれ独立してすべてC-R11である形態が好ましく、また式(2a)、式(2b)、式(2c)、式(2d)、式(2e)、式(2f)、式(2g)および式(2h)においては、c2環のZcがそれぞれ独立してすべてC-Rcであり、後述するように、隣接するRcが互いに結合を形成してアリール環(好ましくはベンゼン環)を形成している形態も好ましい。また、式(2a)、式(2b)、式(2c)、式(2d)、式(2e)、式(2f)、式(2g)および式(2h)においては、式(2a)、式(2b)が好ましく、式(2a)が最も好ましい。なお各符号、語句の説明に関しては、後述する本明細書の記載を参照することができる。
式(2c)、式(2d)、式(2e)、式(2f)、式(2g)および式(2h)においては、c2環のZCがいずれもC-RCであり、かつ隣接する2つのRCが互いに結合してアリール環またはヘテロアリール環(より好ましくはアリール環であり、さらに好ましくはベンゼン環)を形成していることが好ましい。この好ましい形態を下記に示す。式(2c-2)、式(2d-2)、式(2e-2)、式(2f-2)、式(2g-2)および式(2h-2)の各符号の定義、およびその好ましい範囲に関しては、式(2)の説明を参照することができる。
Figure 2023026319000027
さらに、式(2a)で表される構造単位としては、以下式(2a-1)または式(2a-2)で表される構造単位が好ましい。
Figure 2023026319000028
式(2a-1)または式(2a-2)中、Y1、X1、X2、XCは、式(1)中の、Y1、X1、X2、XCとそれぞれ同義であり、R11b、RC2は、式(2)中のR11b、RC2とそれぞれ同義である。X3およびX4はそれぞれ独立して、単結合、>O、>N-R、>C(-R)2、または>Sであり、ただし、X3およびX4が同時に単結合であることはない。n1は0~4の整数であり、n2は0~4の整数であり、n3は0~3の整数であり、n4は0~2の整数である。式(2a-1)または式(2a-2)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造中のアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
式(2a-1)および式(2a-2)において、Y1、X1、X2、およびXCの好ましい範囲は、式(1)中のY1、X1、X2、およびXCの好ましい範囲と同じである。式(2a-2)において、X3およびX4は一方が>C(-R)2であり、他方が>O、>N-R、または>C(-R)2であるか、一方が単結合であり他方が>Oまたは>N-Rであることが好ましい。また、式(2a-1)および式(2a-2)において、R11b、RC2の好ましい範囲は、式(1)または式(2)中の対応する環の置換基の好ましい範囲と同じである。n1は0~2が好ましく、0または1がより好ましい。n2は0~2が好ましく、0または1がより好ましい。n3は0または1が好ましい。n4は0が好ましい。R11b、RC2の好ましい置換位置についても、式(1)または式(2)での説明を参照することができる。上記のようにシクロアルカンでの縮合がある場合、式(2a-1)または式(2a-2)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造中のアリール環またはヘテロアリール環の1~4つがそれぞれ1つのシクロアルカンで縮合されていることが好ましい。
式(1)中、およびその好ましい形態である式(2)等において、Y1は、それぞれ独立して、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si-R、またはGe-Rであり、B、P=OまたはP=Sが好ましく、Bが最も好ましい。前記Si-RおよびGe-RのRは、炭素数6~12のアリール、炭素数1~6のアルキル、または炭素数3~14のシクロアルキルである。式(1)のY1におけるSi-RおよびGe-RのRは、アリール、アルキルまたはシクロアルキルであるが、このアリール、アルキルまたはシクロアルキルとしては上述する基があげられる。特に炭素数6~10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数1~5のアルキル(例えばメチル、エチルなど)または炭素数5~10のシクロアルキル(好ましくはシクロヘキシルやアダマンチル)が好ましい。
<構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物>
本発明の多環芳香族化合物は式(1)またはその好ましい形態である式(2)等で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物である。上記構造単位の1つからなる構造を有する多環芳香族化合物としては、式(1)(またはその好ましい形態である式(2)等)で表される構造を有する多環芳香族化合物があげられる。式(1)で表される構造単位の2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物としては、式(1)で表される構造単位として上記で説明した式で表される多環芳香族化合物の多量体に該当する化合物があげられる。多量体は、2~6量体が好ましく、2~3量体がより好ましく、2量体が特に好ましい。多量体は、1つの化合物の中に上記単位構造を複数有する形態であればよく、上記構造単位に含まれる任意の環(A環(a環)、B環(b環)またはC環(c1環、c2環、c3環))を複数の単位構造で共有するようにして結合した形態であってもよく、また、上記単位構造に含まれる任意の環(A環(a環)、B環(b環)またはC環(c1環、c2環、c3環))同士が縮合するようにして結合した形態であってもよい。また、上記単位構造が単結合、炭素数1~3のアルキレン、フェニレン、ナフチレンなどの連結基で複数結合した形態であってもよい。これらのうち、環を共有するようにして結合した形態が好ましい。
<シクロアルカン縮合>
式(1)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物、およびその好ましい形態におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。
シクロアルカンとしては、炭素数3~24のシクロアルカンであればよい。このときのシクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキルまたは炭素数3~24のシクロアルキルで置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置換されていてもよいが、すべてが-CH2-であるシクロアルカンが好ましい。
式(1)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造が少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されている場合、少なくとも1つのシクロアルカンは、炭素数3~20のシクロアルカンであって、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素が、炭素数6~16のアリール、炭素数2~22のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルで置換されていてもよいシクロアルカンであることが好ましい。
「シクロアルカン」としては、炭素数3~24のシクロアルカン、炭素数3~20のシクロアルカン、炭素数3~16のシクロアルカン、炭素数3~14のシクロアルカン、炭素数5~10のシクロアルカン、炭素数5~8のシクロアルカン、炭素数5~6のシクロアルカン、炭素数6のシクロアルカンなどがあげられる。
具体的なシクロアルカンとしては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、ノルボルネン、ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アダマンタン、ジアマンタン、デカヒドロナフタレンおよびデカヒドロアズレン、ならびに、これらの炭素数1~5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。
これらの中でも、例えば下記構造式に示すような、シクロアルカンのα位の炭素(アリール環またはヘテロアリール環に縮合するシクロアルキルにおいて、縮合部位の炭素に隣接する位置の炭素、ベンジル位に相当する)における少なくとも1つの水素が置換された構造が好ましく、α位の炭素における2つの水素が置換された構造がより好ましく、2つのα位の炭素における合計4つの水素が置換された構造がさらに好ましい。これは化学的に活性な部位を保護して、化合物の耐久性を向上させるためである。この置換基としては、炭素数1~5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。特に、アリール環またはヘテロアリール環において隣接する炭素に下記式(Z-11)で表される部分構造が結合した構造となっていることが好ましい。
Figure 2023026319000029
式(Z-11)中、Meはメチルを示し、*は結合位置を示す。
1つのアリール環またはヘテロアリール環に縮合するシクロアルカンの数は、1~4個が好ましく、1~3個がより好ましく、1個または2個がさらに好ましい。例えば1つのベンゼン環(フェニル)に1個または複数のシクロアルカンが縮合した例を以下に示す。*は結合位置を示し、その位置はベンゼン環を構成しかつシクロアルカンを構成していない炭素のいずれであってもよい。式(Cy-1-4)および式(Cy-2-4)のように縮合したシクロアルカン同士が縮合してもよい。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他のアリール環またはヘテロアリール環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2023026319000030
シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置換されていてもよい。例えば1つのベンゼン環(フェニル)に縮合したシクロアルカンにおける1個または複数の-CH2-が-O-で置換された例を以下に示す。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他の芳香族環または複素芳香族環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2023026319000031
シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、この置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、置換シリル、重水素、シアノまたはハロゲンがあげられ、これらの詳細は、本明細書中の第1の置換基の説明を引用することができる。ただし前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合もしくは連結基を介して結合していてもよい。これらの置換基の中でも、アルキル(例えば炭素数1~6のアルキル)、シクロアルキル(例えば炭素数3~14のシクロアルキル)、ハロゲン(例えばフッ素)および重水素などが好ましい。また、シクロアルキルが置換する場合はスピロ構造を形成する置換形態でもよく、この例を以下に示す。
Figure 2023026319000032
シクロアルカン縮合の形態としては、まず、式(1)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物におけるA環、B環およびC環中のアリール環またはヘテロアリール環がシクロアルカンで縮合された形態があげられる。特に、式(2)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物におけるa環、b環、c1環、c2環(またはc3環)がシクロアルカンで縮合された形態があげられる。
シクロアルカン縮合の他の形態としては、式(1)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物、およびその好ましい形態において、X1およびX2の1つである>N-Gの、G中のアリール環またはヘテロアリール環がシクロアルカンで縮合された形態、またシクロアルカンで縮合されたジアリールアミノ(2つのアリールは互いに結合していてもよい、このアリール部分へ縮合)、シクロアルカンで縮合されたカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)またはシクロアルカンで縮合されたベンゾカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)、シクロアルカンで縮合されたアリール、またはシクロアルカンで縮合されたヘテロアリールを有する例があげられる。ジアリールアミノ(前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに結合していてもよい)については「第1の置換基」として下記する基があげられる。
式(1)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物において、上記のシクロアルカン縮合は、A環、B環、またはC環に縮合がある形態(特に式(2)中の、a環、b環、c1環、c2環(またはc3環)に縮合している形態)が好ましく、B環またはC環中に縮合がある形態(特に、式(2)中の、b環、またはc1環に縮合している形態)がより好ましい。またB環およびC環の両方において縮合がある形態(特に、式(2)中の、b環およびc1環にそれぞれ縮合している形態)も好ましい。
なお、本発明の多環芳香族化合物にシクロアルカン構造を導入することによっては、融点や昇華温度の低下が期待できる。このことは、高い純度が要求される有機EL素子などの有機デバイス用材料の精製法としてほぼ不可欠な昇華精製において、比較的低温で精製することができるため材料の熱分解などが避けられることを意味する。またこれは、有機EL素子などの有機デバイスを作製するのに有力な手段である真空蒸着プロセスについても同様であり、比較的低温でプロセスを実施できるため、材料の熱分解を避けることができ、結果として高性能な有機デバイスを得ることができる。また、シクロアルカン構造の導入により有機溶媒への溶解性が向上するため、塗布プロセスを利用した素子作製にも適用することが可能となる。ただし、本発明は特にこれらの原理に限定されるわけではない。このことから式(1)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物、およびその好ましい形態においては、上記のシクロアルカン縮合が導入されていることが好ましい。
式(1)で表される構造単位、およびその好ましい形態、の1つまたは2つ以上からなる構造中の水素は、その全てまたは一部が重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
例えば、式(1)で表される構造単位、およびその好ましい形態の1つまたは2つ以上からなる構造においては、A環(a環)、B環(b環)、C環(c1環、c2環(、c3環))、A~C環における置換基、Y1がSi-RまたはGe-RであるときのR(=アルキル、シクロアルキル、アリール)、ならびに、X1およびX2のうちの1つの>N-RのR、またはX1およびX2のうちの1つの>N-Gの、Gにおける水素が重水素、シアノまたはハロゲンで置換されうるが、これらの中でもアリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部の水素が重水素、シアノ、またはハロゲンで置換された態様があげられる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素、または臭素、より好ましくはフッ素または塩素であり、フッ素がさらに好ましい。特に水素が重水素で置き換わる形態は、化合物の安定性を向上させるため好ましい。水素が重水素で置き換わる場合、1つの水素が重水素で置き換わっていればよいが、複数の水素が重水素で置き換わることが好ましく、芳香族部分のすべての水素が重水素で置き換わることがより好ましく、すべての水素が重水素で置き換わることがさらに好ましい。
<環および置換基の説明>
以下、本明細書において使用する環および置換基の詳細について、説明する。
本明細書における「アリール環」としては、例えば、炭素数6~30のアリール環があげられ、炭素数6~16のアリール環が好ましく、炭素数6~12のアリール環がより好ましく、炭素数6~10のアリール環が特に好ましい。
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、インデン環、三環系であるテルフェニル環(m-テルフェニル、o-テルフェニル、p-テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、アントラセン環、9,10-ジヒドロアントラセン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、クリセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。また、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、インデン環には、それぞれフルオレン環、ベンゾフルオレン環、シクロペンタン環などがスピロ結合した構造も含まれる。なお、フルオレン環、ベンゾフルオレン環およびインデン環としては、メチレンの2つの水素がそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置換して、ジメチルフルオレン環、ジメチルベンゾフルオレン環およびジメチルインデン環などとなっているものも含まれる。また、9,10-ジヒドロアントラセン環としては、2つのメチレンの4つの水素がそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置換して、9,9,10,10-テトラメチル-9,10-ジヒドロアントラセン環などとなっているものも含まれる。
「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2~25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2~20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環(フラザン環等)、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ジベンゾインドロカルバゾール環、ナフトベンゾフラン環、ジオキシン環、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環、ジベンゾジオキシン環などがあげられる。また、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環、は、メチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置換して、ジメチルジヒドロアクリジン環、ジメチルキサンテン環、ジメチルチオキサンテン環などとなっているものも好ましい。また二環系であるビピリジン環、フェニルピリジン環、ピリジルフェニル環、三環系であるテルピリジル環、ビスピリジルフェニル環、ピリジルビフェニル環も「ヘテロアリール環」としてあげられる。また、「ヘテロアリール環」にはピラン環も含まれるものとする。
また、下記式(BO)もヘテロアリール環に含む。
Figure 2023026319000033
上記「アリール環」または「ヘテロアリール環」における少なくとも1つの水素は、第1の置換基である、置換もしくは無置換の「アリール」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリール」、置換もしくは無置換の「ジアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「ジアリールボリル」、置換もしくは無置換の「アルキル」、置換もしくは無置換の「アルケニル」、置換もしくは無置換の「シクロアルキル」、置換もしくは無置換の「アルコキシ」、置換もしくは無置換の「アリールオキシ」、置換もしくは無置換の「アリールチオ」、または「置換シリル」で置換されていてもよい。なお、前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよい。
具体的に「アリール」としては、上述の「アリール環」より水素を1つ除いた1価の基であり、例えば、炭素数6~30のアリールがあげられ、炭素数6~24のアリールが好ましく、炭素数6~20のアリールがより好ましく、炭素数6~16のアリールがさらに好ましく、炭素数6~12のアリールが特に好ましく、炭素数6~10のアリールが最も好ましい。
また、「ヘテロアリール」としては、上述の「ヘテロアリール環」より水素を1つ除いた1価の基であり、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
第1の置換基としての「置換もしくは無置換のジアリールアミノ」、「置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ」、「置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ」、ただし前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよい。それぞれにおけるアリールやヘテロアリールとしては上述した「アリール」や「ヘテロアリール」として説明したものを、その好ましい範囲とともに引用することができる。
第1の置換基としてのジアリールアミノ、ただし前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、第1の置換基としてのジヘテロアリールアミノ、ただし前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、および第1の置換基としてのアリールヘテロアリールアミノ、ただし前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよいという記載における「連結基を介して結合していてもよい」という記載は、下記に示すように例えばジフェニルアミノの2つのフェニルが連結基で結合を形成することを表す。またこの説明はアリールやヘテロアリールで形成された、ジヘテロアリールアミノおよびアリールヘテロアリールアミノについても適用される。
Figure 2023026319000034
連結基としては具体的には、>O、>N-RX、>C(-RX2、-(C-RX)=(C-RX)-、>Si(-RX2、>S、>CO、>CS、>SO、>SO2、および>Seがあげられる。RXはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい。また、>C(-RX2、-(C-RX)=(C-RX)-、>Si(-RX2それぞれにおける2つのRXは、単結合または連結基XYを介して互いに結合して環を形成してもよい。XYとしては>O、>N-RY、>C(-RY2、>Si(-RY2、>S、>CO、>CS、>SO、>SO2、および>Seがあげられ、RYはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい。ただし、XYが>C(-RY2および>Si(-RY2の場合には、2つのRYは結合してさらに環を形成することはない。さらに連結基としては、アルケニレンもあげられる。該アルケニレンの任意の水素はそれぞれ独立してR2Xで置換されていてもよく、R2Xはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、置換シリル、アリールおよびヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、置換シリル、アリールで置換されていてもよい。-(C-RX)=(C-RX)-における2つのRXは、互いに結合してそれらが結合するC=Cとともにアリール(ベンゼン環など)またはヘテロアリール環を形成していてもよい。すなわち、-(C-RX)=(C-RX)-は、アリーレン(1,2-フェニレンなど)またはヘテロアリーレンとなっていてもよい。
なお、本明細書で単に「ジアリールアミノ」、「ジヘテロアリールアミノ」または「アリールヘテロアリールアミノ」と記載されている場合は、特に断りがない限りは、それぞれ「ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」、「前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」および「前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」という説明が加わっているものであるとする。
また第1の置換基としての「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルがあげられる。炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1~8のアルキル(炭素数3~8の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)が特に好ましく、炭素数1~5のアルキル(炭素数3~5の分岐鎖アルキル)が最も好ましい。
具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル(t-アミル)、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどがあげられる。また、例えば、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1,1,4-トリメチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルオクチル、1,1-ジメチルペンチル、1,1-ジメチルヘプチル、1,1,5-トリメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1-ジメチルヘキシルなどもあげられる。
上記の「アルキル」を含む置換基として、下記式(tR)で表されるターシャリ-アルキルは、A環、B環およびC環におけるアリール環またはヘテロアリール環への置換基として、特に好ましいものの1つである。このような嵩高い置換基により分子間距離が増加するため発光量子収率(PLQY)が向上するからである。また、式(tR)で表されるターシャリ-アルキルが第2の置換基として他の置換基に置換している置換基も好ましい。具体的には、(tR)で表されるターシャリ-アルキルで置換されたジアリールアミノ、(tR)で表されるターシャリ-アルキルで置換されたカルバゾリル(好ましくは、N-カルバゾリル)または(tR)で表されるターシャリ-アルキルで置換されたベンゾカルバゾリル(好ましくは、N-ベンゾカルバゾリル)があげられる。「ジアリールアミノ」については下記「第1の置換基」として説明する基があげられる。ジアリールアミノ、カルバゾリルおよびベンゾカルバゾリルへの式(tR)の基の置換形態としては、これらの基におけるアリール環またはベンゼン環の一部または全ての水素が式(tR)の基で置換された例があげられる。
Figure 2023026319000035
式(tR)中、Ra、Rb、およびRcはそれぞれ独立して炭素数1~24のアルキルであり、前記アルキルにおける任意の-CH2-は-O-で置換されていてもよく、式(tR)で表される基は*において式(1)で表される構造単位を含む構造における少なくとも1つの水素と置換する。
a、RbおよびRcの「炭素数1~24のアルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキル、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)があげられる。
式(1)の式(tR)におけるRa、Rb、およびRcの炭素数の合計は炭素数3~20が好ましく、炭素数3~10が特に好ましい。
a、Rb、およびRcの具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどがあげられる。
式(tR)で表される基としては、例えばt-ブチル、t-アミル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、1,1,4-トリメチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルオクチル、1,1-ジメチルペンチル、1,1-ジメチルヘプチル、1,1,5-トリメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1-ジメチルヘキシルなどがあげられる。これらのうち、t-ブチルおよびt-アミルが好ましい。
また第1の置換基としての「シクロアルキル」としては、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数3~16のシクロアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、炭素数5~8のシクロアルキル、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数5のシクロアルキルなどがあげられる。本明細書のシクロヘキシルとしては後述で列挙する通り、単環のシクロヘキシルなどのほか、アダマンチルのような多環式のものなども含む。
具体的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ノルボルネニル、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニル、およびこれらの炭素数1~5のアルキル(特にメチル)置換体などがあげられる。
第1の置換基としての「アルケニル」としては、2~24の直鎖アルケニルまたは炭素数4~24の分岐鎖アルケニルがあげられる。炭素数2~18のアルケニルが好ましく、炭素数2~12のアルケニルがより好ましく、炭素数2~6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2~4のアルケニルが特に好ましい。
具体的な「アルケニル」としては、ビニル、アリル、ブタジエニルなどがあげられる。
また第1の置換基としての「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1~24の直鎖または炭素数3~24の分岐鎖のアルコキシがあげられる。炭素数1~18のアルコキシ(炭素数3~18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1~12のアルコキシ(炭素数3~12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1~6のアルコキシ(炭素数3~6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1~5のアルコキシ(炭素数3~5の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、t-アミルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどがあげられる。
第1の置換基としての「アリールオキシ」としては、-OH基の水素がアリールで置換された基であり、このアリールおよびその好ましい範囲は上述で説明したものを引用することができる。
第1の置換基としての「アリールチオ」としては、-SH基の水素がアリールで置換された基であり、このアリールおよびその好ましい範囲は上述で説明したものを引用することができる。
また第1の置換基としての「置換シリル」としては、例えば、アルキル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される3つの置換基で置換されたシリルがあげられる。例えば、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、トリアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、およびアルキルジアリールシリルがあげられる。
「トリアルキルシリル」としては、シリルにおける3つの水素がそれぞれ独立してアルキルで置換された基があげられ、このアルキルおよびその好ましい範囲は上述した第1の置換基における「アルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアルキルは、炭素数1~5のアルキルであり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、t-アミルなどがあげられる。
具体的なトリアルキルシリルとしては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec-ブチルシリル、トリt-ブチルシリル、トリt-アミルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-アミルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec-ブチルジエチルシリル、t-ブチルジエチルシリル、t-アミルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec-ブチルジプロピルシリル、t-ブチルジプロピルシリル、t-アミルジプロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、エチルジイソプロピルシリル、ブチルジイソプロピルシリル、sec-ブチルジイソプロピルシリル、t-ブチルジイソプロピルシリル、t-アミルジイソプロピルシリルなどがあげられる。
「トリシクロアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してシクロアルキルで置換された基があげられ、このシクロアルキルおよびその好ましい範囲は上述した第1の置換基における「シクロアルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいシクロアルキルは、炭素数5~10のシクロアルキルであり、具体的にはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
具体的なトリシクロアルキルシリルとしては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびシクロアルキルから選択される基が置換したシリルがあげられる。
2つのアルキルと1つのアリールが置換したジアルキルアリールシリル、1つのアルキルと2つのアリールが置換したアルキルジアリールシリル、および3つのアリールが置換したトリアリールシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびアリールから選択される基が置換したシリルがあげられる。トリアリールシリルの具体例としては、特にトリフェニルシリルがあげられる。
また第1の置換基の「ジアリールボリル(2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよい)」中の「アリール」およびその好ましい範囲としては、上述したアリールの説明を引用できる。また、この2つのアリールは単結合または連結基(例えば>C(-R)2、>O、>Sまたは>N-R)を介して結合していてもよい。ここで、>C(-R)2および>N-RのRは、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1の置換基)であり、当該第1の置換基にはさらにアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2の置換基)が置換していてもよく、これらの基の具体例としては、上述した第1の置換基としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、またはアリールオキシの説明を引用できる。
第1の置換基である、置換もしくは無置換の「アリール」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリール」、置換もしくは無置換の「ジアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「ジアリールボリル」、置換もしくは無置換の「アルキル」、置換もしくは無置換の「シクロアルキル」、置換もしくは無置換の「アルケニル」、置換もしくは無置換の「アルコキシ」、置換もしくは無置換の「アリールオキシ」、置換もしくは無置換の「アリールチオ」、または、置換の「シリル」は置換または無置換と説明されているとおり、それらにおける少なくとも1つの水素が第2の置換基で置換されていてもよい。この第2の置換基としては、特段の記載がない場合は、好ましくは、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、または置換シリル(ただしただし前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)があげられ、それらの具体例は、第1の置換基としての「アリール」、「ヘテロアリール」、「ジアリールアミノ」(ただし前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、「アルキル」、「シクロアルキル」または「置換シリル」の説明を参照することができる。また、第2の置換基としてのアリールやヘテロアリールには、それらにおける少なくとも1つの水素が、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチル、t-ブチルなどのアルキル(具体例は上述した基)またはシクロヘキシルなどのシクロアルキル(具体例は上述した基)で置換された構造も第2の置換基としてのアリールやヘテロアリールに含まれる。その一例としては、第2の置換基がカルバゾリルの場合には、9位における少なくとも1つの水素が、フェニルなどのアリール、メチルなどのアルキルまたはシクロヘキシルなどのシクロアルキルで置換されたカルバゾリルも第2の置換基としてのヘテロアリールに含まれる。この記載は、本明細書中においてそのほかの第1の置換基と第2の置換基に関する説明にも適応できる。
第1の置換基の構造の立体障害性、電子供与性および電子求引性によって、発光波長を調整することができる。好ましくは以下の構造式で表される基であり、より好ましくは、メチル、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、ネオペンチル、アダマンチル、フェニル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6-ジメチルカルバゾリル、3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリルおよびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、ネオペンチル、アダマンチル、フェニル、o-トリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6-ジメチルカルバゾリルおよび3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリルである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、アダマンチル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、3,6-ジメチルカルバゾリルおよび3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリルが好ましい。
下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt-ブチル、「tAm」はt-アミル、「tOct」はt-オクチル、*は結合位置を表す。
Figure 2023026319000036
Figure 2023026319000037
Figure 2023026319000038
Figure 2023026319000039
Figure 2023026319000040
Figure 2023026319000041
Figure 2023026319000042
Figure 2023026319000043
Figure 2023026319000044
Figure 2023026319000045
Figure 2023026319000046
Figure 2023026319000047
Figure 2023026319000048
連続(隣接)する炭素原子に結合する2つまたは3つの水素が置換されているときの置換基としては以下のいずれかで表される基であってもよい。
Figure 2023026319000049
各式中、Meはメチルである。各式中、*で、A環、B環、C環中のいずれかのアリール環またはヘテロアリール環の環上で連続(隣接)する2つまたは3つの原子にそれぞれ結合していればよい。
式(1)で表される構造単位、およびその好ましい形態の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物は、上述の式(tR)で表されるターシャリ-アルキル(t-ブチルあるいはt-アミルなど)、ネオペンチルまたはアダマンチルを少なくとも1つ含む構造であることが好ましく、式(tR)で表されるターシャリ-アルキル(t-ブチルあるいはt-アミルなど)を含むことが好ましい。このような嵩高い置換基により分子間距離が増加するため発光量子収率(PLQY)が向上するからである。また、置換基としては、ジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)も好ましい。さらに、式(tR)の基で置換されたジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、式(tR)の基で置換されたカルバゾリル(好ましくは、N-カルバゾリル)または式(tR)の基で置換されたベンゾカルバゾリル(好ましくは、N-ベンゾカルバゾリル)も好ましい。ジアリールアミノ(ただし前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、カルバゾリルおよびベンゾカルバゾリルへの式(tR)の基の置換形態としては、これらの基におけるアリール環またはベンゼン環の一部または全ての水素が式(tR)の基で置換された例があげられる。
<本発明の多環芳香族化合物の具体例>
本発明の式(1)で表される多環芳香族化合物の更なる具体例としては、以下の化合物があげられる。下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt-ブチル、「D」は重水素を表す。なお、下記構造は一例である。
Figure 2023026319000050
Figure 2023026319000051
Figure 2023026319000052
Figure 2023026319000053
Figure 2023026319000054
Figure 2023026319000055
Figure 2023026319000056
Figure 2023026319000057
Figure 2023026319000058
本発明の多環芳香族化合物は、以下の手順で製造することができる。
<多環芳香族化合物の製造方法>
式(1)または式(2)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有するは、基本的には、まずA環(a環)とB環(b環)およびC環(c1環とc2環とからなる縮合環)とを結合基(X1やX2を含む基)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、A環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を結合基(Y1を含む基)で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えばエーテル化反応であれば、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的反応が利用でき、アミノ化反応で有ればブッフバルト-ハートウィッグ反応といった一般的反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。反応工程のどこかで、所望の縮合環を有する原料を用いたり、環を縮合する工程を追加したりすることで、A環、B環およびC環からなる群より選択される少なくとも1つの環が単環のアリール環、単環のヘテロアリール環、およびシクロペンタジエン環、からなる群より選択される2つ以上の環で構成される縮合環で化合物を製造することができる。
<中間体1を経由する製造方法>
本発明の多環芳香族化合物は以下の工程を含む製造方法で製造することができる。以下各工程については、国際公開第2015/102118号の記載を参照することができる。
有機アルカリ化合物を用いて下記中間体1におけるX1とX2の間のハロゲン原子(Hal)をメタル化する反応工程と、Y1のハロゲン化物、Y1のアミノ化ハロゲン化物、Y1のアルコキシ化物およびY1のアリールオキシ化物からなる群から選択される試薬を用いて前記メタルとY1とを交換する反応工程と、ブレンステッド塩基を用いて連続的な芳香族求電子置換反応により前記Y1でb環とC環とを結合する反応工程とを含む反応を以下に記す。
Figure 2023026319000059
これまで説明してきたスキームにおけるハロゲン-メタル交換反応で使用されるメタル化試薬としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム、塩化イソプロピルマグネシウム、臭化イソプロピルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウムおよびターボグリニャール試薬として知られている、塩化イソプロピルマグネシウムの塩化リチウム錯体などがあげられる。
また、これまで説明してきたスキームにおけるオルトメタル交換反応で使用されるメタル化試薬としては、上記の試薬に加えて、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、塩化リチウムテトラメチルピペリジニルマグネシウム・塩化リチウム錯体、トリ-n-ブチルマグネシウム酸リチウムなどの有機アルカリ化合物があげられる。
さらに、メタル化試薬としてアルキルリチウムを使用する場合に反応を促進させる添加剤としては、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N-ジメチルプロピレン尿素などがあげられる。
また、これまで説明してきたスキームで使用するルイス酸としては、AlCl3、AlBr3、AlF3、BF3・OEt2、BCl3、BBr3、GaCl3、GaBr3、InCl3、InBr3、In(OTf)3、SnCl4、SnBr4、AgOTf、ScCl3、Sc(OTf)3、ZnCl2、ZnBr2、Zn(OTf)2、MgCl2、MgBr2、Mg(OTf)2、LiOTf、NaOTf、KOTf、Me3SiOTf、Cu(OTf)2、CuCl2、YCl3、Y(OTf)3、TiCl4、TiBr4、ZrCl4、ZrBr4、FeCl3、FeBr3、CoCl3、CoBr3などがあげられる。また、これらのルイス酸を固体に担持したものも同様に使用することができる。
また、これまで説明してきたスキームで使用するブレンステッド酸としては、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、カルボラン酸、トリフルオロ酢酸、(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、塩化水素、臭化水素、フッ化水素などがあげられる。また固体ブレンステッド酸としてアンバーリスト(商品名:ダウ・ケミカル)、ナフィオン(商品名:デュポン)、ゼオライト、テイカキュア(商品名:テイカ株式会社)などがあげられる。
また、これまで説明してきたスキームで加えてもよいアミンとしては、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、2,6-ルチジン、2,6-ジ-t-ブチルアミンなどがあげられる。
また、これまで説明してきたスキームで使用する溶媒としては、o-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、ベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、デカリン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、1,2,4-トリメチルベンゼン、キシレン、ジフェニルエーテル、アニソール、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチル-t-ブチルエーテルなどがあげられる。
ここでは、Y1が、Bである例を記載したが、原料を適宜変更することで、Y1が、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si-RまたはGe-Rである化合物も合成することができる。
上記スキームでは、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応の促進のためにブレンステッド塩基またはルイス酸を使用してもよい。ただし、Y1の三フッ化物、Y1の三塩化物、Y1の三臭化物、Y1の三ヨウ化物などのY1のハロゲン化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素といった酸が生成するため、酸を捕捉するブレンステッド塩基の使用が効果的である。一方、Y1のアミノ化ハロゲン化物、Y1のアルコキシ化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、アミン、アルコールが生成するために、多くの場合、ブレンステッド塩基を使用する必要はないが、アミノやアルコキシの脱離能が低いために、その脱離を促進するルイス酸の使用が効果的である。
また、本発明の多環芳香族化合物には、少なくとも一部の水素原子が重水素やシアノで置換されている化合物やフッ素や塩素などのハロゲンで置換されている化合物も含まれるが、このような化合物などは所望の位置が重水素化、シアノ化、フッ素化または塩素化された原料を用いることで、上記と同様に合成することができる。
<2.有機デバイス>
本発明の多環芳香族化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。
本発明に係る多環芳香族化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられるが、有機電界発光素子であることが好ましい。本発明に係る多環芳香族化合物は、有機電界発光素子材料であることが好ましく、発光層用材料(発光材料)であることがより好ましく、発光層のドーパント材料であることが最も好ましい。
<2-1.有機電界発光素子>
<2-1-1.有機電界発光素子の構造>
図1は、有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
<2-1-2.有機電界発光素子における発光層>
本発明の多環芳香族化合物は、有機電界発光素子における、いずれか1つ以上の有機層を形成する材料として用いられることが好ましく、発光層を形成する材料として用いられることがより好ましい。発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であることが好ましい。本発明の多環芳香族化合物は、発光層用の材料として用いることができ、ドーパント材料として用いてもよく、ホスト材料として用いてもよいが発光層用の材料として用いることが好ましく、ドーパント材料として用いることがより好ましい。
なお、ドーパントとしては、アシスティングドーパントとエミッティングドーパントとを併用して用いる例があるが、本明細書において、単に、「ドーパント」と記載した場合には、単独で用いる発光ドーパントのことを指す。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。ドーパントを複数の組み合わせにする場合の、本発明の化合物と組み合わせるドーパントの具体例を下記に示す。下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt-ブチル、「D」は重水素を表す。
Figure 2023026319000060
Figure 2023026319000061
Figure 2023026319000062
Figure 2023026319000063
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50~99.999質量%であり、より好ましくは80~99.95質量%であり、さらに好ましくは90~99.9質量%である。
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001~50質量%であり、より好ましくは0.05~20質量%であり、さらに好ましくは0.1~10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
<ホスト材料>
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセン、ピレン、ジベンゾクリセンまたはフルオレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。
また、ホスト材料としては、例えば、下記式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
Figure 2023026319000064
式(H1)、(H2)および(H3)中、L1は炭素数6~24のアリーレン、炭素数2~24のヘテロアリーレン、炭素数6~24のヘテロアリーレンアリーレンおよび炭素数6~24のアリーレンヘテロアリーレンアリーレンであり、炭素数6~16のアリーレンが好ましく、炭素数6~12のアリーレンがより好ましく、炭素数6~10のアリーレンが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環およびフルオレン環などの二価の基があげられる。ヘテロアリーレンとしては、炭素数2~24のヘテロアリーレンが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリーレンがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリーレンがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリーレンが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環(フラザン環等)、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、およびチアントレン環などの二価の基があげられる。上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1~6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
好ましい具体例としては、以下に列挙したいずれかの構造式で表される化合物があげられる。なお、以下に列挙した構造式においては、少なくとも1つの水素が、ハロゲン、シアノ、炭素数1~4のアルキル(例えばメチルやt-ブチル)、フェニルまたはナフチルなどで置換されていてもよい。
Figure 2023026319000065
Figure 2023026319000066
Figure 2023026319000067
Figure 2023026319000068
<アントラセン化合物>
ホストとしてのアントラセン化合物としては、例えば式(3-H)で表される化合物および式(3-H2)で表される化合物があげられる。
Figure 2023026319000069
式(3-H)中、
XおよびAr4は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオまたは置換シリルであり、全てのXおよびAr4は同時に水素になることはなく、前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールおよびヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい。
式(3-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、重水素または置換されていてもよいヘテロアリールで置換されていているか、または置換されていない。
また、式(3-H)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(3-H)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
式(3-H)で表される化合物における各基の詳細は、上記の式(1)における説明を引用することができ、さらに以下の好ましい態様の欄で説明する。
上記アントラセン化合物の好ましい態様を以下に説明する。下記構造における符号の定義は上述する定義と同じである。
Figure 2023026319000070
式(3-H)では、Xはそれぞれ独立して式(3-X1)、式(3-X2)または式(3-X3)で表される基であり、式(3-X1)、式(3-X2)または式(3-X3)で表される基は*において式(3-H)のアントラセン環と結合する。好ましくは、2つのXが同時に式(3-X3)で表される基になることはない。より好ましくは2つのXが同時に式(3-X2)で表される基になることもない。
また、式(3-H)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(3-H)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
式(3-X1)および式(3-X2)におけるナフチレン部位は1つのベンゼン環で縮合されていてもよい。このようにして縮合した構造は以下のとおりである。
Figure 2023026319000071
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar1またはAr2が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-X1)または式(3-X2)中のナフタレン環と結合する。
Ar3は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar3が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-X3)中の直線で表される単結合と結合する。すなわち、式(3-H)のアントラセン環と式(A)で表される基が直接結合する。
また、Ar3は置換基を有していてもよく、Ar3における少なくとも1つの水素はさらに炭素数1~4のアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基(カルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)で置換されていてもよい。なお、Ar3が有する置換基が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-X3)中のAr3と結合する。
Ar4は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、または炭素数1~4のアルキル(メチル、エチル、t-ブチルなど)および/もしくは炭素数5~10のシクロアルキルで置換されているシリルである。
シリルに置換する炭素数1~4のアルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロブチルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数1~4のアルキルで置換されているシリル」としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec-ブチルシリル、トリt-ブチルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec-ブチルジエチルシリル、t-ブチルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec-ブチルジプロピルシリル、t-ブチルジプロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、エチルジイソプロピルシリル、ブチルジイソプロピルシリル、sec-ブチルジイソプロピルシリル、t-ブチルジイソプロピルシリルなどがあげられる。
シリルに置換する炭素数5~10のシクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(ノルボルニル)、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのシクロアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数5~10のシクロアルキルで置換されているシリル」としては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
置換されているシリルとしては、2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルもあり、置換するアルキルおよびシクロアルキルの具体例としては上述した基があげられる。
また、式(3-H)で表されるアントラセン化合物の化学構造中の水素は式(A)で表される基で置換されていてもよい。式(A)で表される基で置換される場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素と置換する。
式(A)で表される基は、式(3-H)で表されるアントラセン化合物が有しうる置換基の1つである。
Figure 2023026319000072
式(A)中、Yは-O-、-S-または>N-R29であり、R21~R28はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、置換されていてもよいアミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノであり、R21~R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、R29は水素または置換されていてもよいアリールである。
式(A)中のYは-O-であることが好ましい。
21~R28における「置換されていてもよいアルキル」の「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルがあげられる。炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)が特に好ましい。
具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどがあげられる。
21~R28における「置換されていてもよいシクロアルキル」の「シクロアルキル」としては、炭素数3~24のシクロアルキル、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数3~16のシクロアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、炭素数5~8のシクロアルキル、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数5のシクロアルキルなどがあげられる。
具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびこれらの炭素数1~4のアルキル(特にメチル)置換体や、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(ノルボルニル)、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
21~R28における「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6~30のアリールがあげられ、炭素数6~16のアリールが好ましく、炭素数6~12のアリールがより好ましく、炭素数6~10のアリールが特に好ましい。
具体的な「アリール」としては、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル、縮合二環系であるナフチル、三環系であるテルフェニリル(m-テルフェニリル、o-テルフェニリル、p-テルフェニリル)、縮合三環系である、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、縮合四環系であるトリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、縮合五環系であるペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。
21~R28における「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2~25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1~5個含有する複素環などがあげられる。
具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、インドリジニル、フリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ジベンゾチエニル、フラザニル、チアントレニル、ナフトベンゾフラニル、ナフトベンゾチエニルなどがあげられる。
21~R28における「置換されていてもよいアルコキシ」の「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1~24の直鎖または炭素数3~24の分岐鎖のアルコキシがあげられる。炭素数1~18のアルコキシ(炭素数3~18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1~12のアルコキシ(炭素数3~12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1~6のアルコキシ(炭素数3~6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1~4のアルコキシ(炭素数3~4の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的な「アルコキシ」としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどがあげられる。
21~R28における「置換されていてもよいアリールオキシ」の「アリールオキシ」としては、-OH基の水素がアリールで置換された基であり、このアリールは上述したR21~R28における「アリール」として説明した基を引用することができる。
21~R28における「置換されていてもよいアリールチオ」の「アリールチオ」としては、-SH基の水素がアリールで置換された基であり、このアリールは上述したR21~R28における「アリール」として説明した基を引用することができる。
21~R28における「トリアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してアルキルで置換された基があげられ、このアルキルは上述したR21~R28における「アルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアルキルは、炭素数1~4のアルキルであり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロブチルなどがあげられる。
具体的な「トリアルキルシリル」としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec-ブチルシリル、トリt-ブチルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec-ブチルジエチルシリル、t-ブチルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec-ブチルジプロピルシリル、t-ブチルジプロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、エチルジイソプロピルシリル、ブチルジイソプロピルシリル、sec-ブチルジイソプロピルシリル、t-ブチルジイソプロピルシリルなどがあげられる。
21~R28における「トリシクロアルキルシリル」としては、シリル基における3つの水素がそれぞれ独立してシクロアルキルで置換された基があげられ、このシクロアルキルは上述したR21~R28における「シクロアルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいシクロアルキルは、炭素数5~10のシクロアルキルであり、具体的にはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられる。
具体的な「トリシクロアルキルシリル」としては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびシクロアルキルから選択される基が置換したシリルがあげられる。
21~R28における「置換されていてもよいアミノ」の「置換されたアミノ」としては、例えば2つの水素がアリールやヘテロアリールで置換されたアミノがあげられる。2つの水素がアリールで置換されたアミノがジアリール(2つのアリールは互いに結合して連結基を介して結合していてもよい)置換アミノであり、2つの水素がヘテロアリールで置換されたアミノがジヘテロアリール置換アミノであり、2つの水素がアリールとヘテロアリールで置換されたアミノがアリールヘテロアリール置換アミノである。このアリールやヘテロアリールは上述したR21~R28における「アリール」や「ヘテロアリール」として説明した基を引用することができる。
具体的な「置換されたアミノ」としては、ジフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、フェニルナフチルアミノ、ジピリジルアミノ、フェニルピリジルアミノ、ナフチルピリジルアミノなどがあげられる。
21~R28における「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素があげられる。
21~R28として説明した基のうち、いくつかは上述するように置換されてもよく、この場合の置換基としてはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールがあげられる。このアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは上述したR21~R28における「アルキル」、「シクロアルキル」、「アリール」または「ヘテロアリール」として説明した基を引用することができる。
Yとしての「>N-R29」におけるR29は水素または置換されていてもよいアリールであり、このアリールとしては上述したR21~R28における「アリール」として説明した基を引用することができ、またその置換基としてはR21~R28に対する置換基として説明した基を引用することができる。
21~R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。環を形成しない場合が下記式(A-1)で表される基であり、環を形成した場合としては例えば下記式(A-2)~式(A-14)で表される基があげられる。なお、式(A-1)~式(A-14)のいずれかで表される基における少なくとも1つの水素はアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、ジアリール(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)置換アミノ、ジヘテロアリール置換アミノ、アリールヘテロアリール置換アミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノで置換されていてもよい。
Figure 2023026319000073
隣接する基が互いに結合してできた環としては、炭化水素環であれば例えばシクロヘキサン環があげられ、アリール環やヘテロアリール環としては上述したR21~R28における「アリール」や「ヘテロアリール」で説明した環構造があげられ、これらの環は式(A-1)における1つまたは2つのベンゼン環と縮合するように形成される。
式(A)で表される基は、式(A)のいずれかの位置の1つの水素を除いて得られる基であり、*が該位置を示す。すなわち、式(A)で表される基はいずれの位置を結合位置としていてもよい。例えば、式(A)の構造中の2つのベンゼン環上のいずれかの炭素原子、式(A)の構造中のR21~R28のうち隣接する基が互いに結合して形成されたいずれかの環上の原子、または式(A)の構造中のYとしての「>N-R29」におけるR29中のいずれかの位置、または「>N-R29」におけるN(R29が結合手となる)と直接結合する基となることができる。式(A-1)~式(A-14)のいずれかで表される基においても同様である。
式(A)で表される基としては、例えば式(A-1)~式(A-14)のいずれかで表される基があげられ、式(A-1)~式(A-5)および式(A-12)~式(A-14)のいずれかで表される基が好ましく、式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基がより好ましく、式(A-1)、式(A-3)および式(A-4)のいずれかで表される基がさらに好ましく、式(A-1)で表される基が特に好ましい。
式(A)で表される基としては、例えば以下の基があげられる。式中のYおよび*は上記と同じ定義である。
Figure 2023026319000074
Figure 2023026319000075
式(3-H)で表される化合物においては、式(A)で表される基は、式(3-X1)または式(3-X2)中のナフタレン環、式(3-X3)中の単結合および式(3-X3)中のAr3のいずれか1つと結合した形態が好ましい。
また、式(3-H)で表されるアントラセン化合物の化学構造中の水素は、その全てまたは一部が重水素であってもよい。
ホストとしてのアントラセン化合物は、例えば下記式(3-H2)で表される化合物であってもよい。
Figure 2023026319000076
式(3-H2)中、Arcは、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、Rcは、水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16、Ar17、およびAr18は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換されていてもよいシリルであり、式(3-H2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素で置換されていてもよい。
式(3-H2)中の、「置換されていてもよいアリール」、「置換されていてもよいヘテロアリール」、「置換されていてもよいジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)」、「置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)」、「置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)」、「置換されていてもよいアルキル」、「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいアルケニル」、「置換されていてもよいアルコキシ」、「置換されていてもよいアリールオキシ」、「置換されていてもよいアリールチオ」、または「置換されていてもよいシリル」の定義は上記式(3-H)でされたものと同様であり、式(3-H)における説明を引用することができる。
「置換されていてもよいアリール」としては、下記式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)のいずれかで表される基であることも好ましい。
Figure 2023026319000077
式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)において、*は結合位置を示す。式(3-H2-X1)~式(3-H2-X3)において、Ar21、Ar22、およびAr23は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、アントラセニル、または式(A)で表される基である。なお、式(3-H2)の説明において、式(A)で表される基は、式(3-H)で表されるアントラセン化合物において説明したものと同じである。
式(3-H2-X4)~式(3-H2-X8)において、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28、Ar29、およびAr30は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または式(A)で表される基である。また、式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)で表される基のそれぞれにおけるいずれか1つまたは2つ以上の水素は、炭素数1~6のアルキル(好ましくはメチルまたはt-ブチル)で置換されていてもよい。
さらに、「置換されていてもよいアリール」の好ましい例としては、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、および式(A)で表される基からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、テルフェニリル(特に、m-テルフェニル-5’-イル)があげられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」としては、式(A)で表される基もあげられる。そのほか、「置換されていてもよいアリール」および「置換されていてもよいヘテロアリール」の具体例としては、ジベンゾフリル、ナフトベンゾフリル、フェニル置換ジベンゾフリル等があげられる。
式(3-H2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素で置換されていてもよい。この場合の「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素があげられる。特に、式(3-H2)で表される化合物における全ての水素が重水素で置換された化合物が好ましい。
式(3-H2)中、Rcは水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、水素、メチル、またはt-ブチルであることが好ましく、水素であることがより好ましい。
式(3-H2)中、Ar11~Ar18の少なくとも2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであることが好ましい。すなわち、式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、アントラセン環に、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される置換基が少なくとも3つ結合した構造を有することが好ましい。
式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、Ar11~Ar18の2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、他の6つが水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、または置換されていてもよいアルコキシであることがより好ましい。すなわち、式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される置換基が、アントラセン環に3つ結合した構造を有することがより好ましい。
式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、Ar11~Ar18のいずれか2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、他の6つが水素、メチル、またはt-ブチルであることがより好ましい。
さらに、式(3-H2)中、Rcが水素であり、かつAr11~Ar18のいずれか6つが水素であることが好ましい。
式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は下記式(3-H2-A)、(3-H2-B)、(3-H2-C)、(3-H2-D)、または(3-H2-E)で表されるアントラセン化合物であることが好ましい。
Figure 2023026319000078
式(3-H2-A)、(3-H2-B)、(3-H2-C)、(3-H2-D)または(3-H2-E)中、Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基であり、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基で置換されていてもよい。ここで、フルオレニルおよびベンゾフルオレニルにおけるメチレンの水素がいずれもフェニルで置換されているときは、これらのフェニルは互いに単結合で結合していてもよい。Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’が結合していないアントラセン環の炭素原子には水素の代わりにメチルまたはt-ブチルが結合していてもよい。
Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’が、それぞれ置換もしくは無置換のフェニルまたは置換もしくは無置換のナフチルであるときは、上記の式(3-H2-X1)~式(3-H2-X7)のいずれかで表される基であることが好ましい。
Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル(特に、ビフェニル-2-イルまたはビフェニル-4-イル)、テルフェニリル(特に、m-テルフェニル-5’-イル)、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または、上記の式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基であることがより好ましく、このとき、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または、上記の式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。
また、式(3-H2-A)、(3-H2-B)、(3-H2-C)、(3-H2-D)、または(3-H2-E)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素置換されていてもよい。また重水素化された形態は好ましく、アントラセン環がすべて重水素化された形態、あるいはすべての水素原子が重水素化された形態が好ましい。
特に好ましい式(3-H2)で表されるアントラセン化合物として、下記式(3-H2-Aa)で表されるアントラセン化合物をあげることができる。
Figure 2023026319000079
式(3-H2-Aa)中、Arc’、Ar14’、およびAr15’はそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または上記式(A-1)~式(A-11)のいずれかで表される基であり、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または式(A-1)~式(A-11)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。ここで、フルオレニルおよびベンゾフルオレニルにおけるメチレンの水素がいずれもフェニルで置換されているときは、これらのフェニルは互いに単結合で結合していてもよい。また、Arc’、Ar14’、およびAr15’が結合していないアントラセン環上の炭素原子には水素の代わりにメチルまたはt-ブチルが置換していてもよい。式(3-H2-Aa)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、かつ式(3-H2-Aa)で表される化合物における少なくとも1つの水素は重水素で置換されている。
式(3-H2-Aa)中、Arc’、Ar14’、およびAr15’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または上記式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基であることが好ましく、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。
式(3-H2-Aa)で表される化合物においては、少なくとも、アントラセン環の10位の炭素(Arc’が結合する炭素を9位とする)に結合する水素が重水素に置換されていることが好ましい。すなわち、式(3-H2-Aa)で表される化合物は、下記式(3-H2-Ab)で表される化合物であることが好ましい。なお、式(3-H2-Ab)中、Dは重水素であり、Arc’、Ar14’、およびAr15’は式(3-H2-Aa)中の定義と同一である。式(3-H2-Ab)におけるDは少なくともこの位置が重水素であることを示し、式(3-H2-Ab)におけるその他のいずれか1つ以上の水素が同時に重水素であってもよく、式(3-H2-Ab)における水素がいずれも重水素であることも好ましい。
Figure 2023026319000080
また、アントラセン化合物の具体的な例としては、例えば、式(3-131-Y)~式(3-182-Y)で表される化合物、式(3-183-N)、式(3-184-Y)~式(3-284-Y)、および式(3-500)~式(3-557)、および式(3-600)~式(3-605)、および式(3-606-Y)~式(3-626-Y)で表される化合物があげられる。これら式中の水素原子は部分的に、またはすべて重水素で置換されていてもよいが、特に好ましい重水素置換の形態に関しては個別に列挙している。式中のYは-O-、-S-、>N-R29(R29は上記と同じ定義)または>C(-R302(R30は連結していてもよいアリール、またはアルキル)のいずれでもよく、R29は例えばフェニル、R30は例えばメチルである。式番号は、例えばYがOの場合は、式(3-131-Y)は式(3-131-O)とし、Yが-S-または>N-R29の場合はそれぞれ式(3-131-S)または式(3-131-N)とする。
Figure 2023026319000081
Figure 2023026319000082
Figure 2023026319000083
Figure 2023026319000084
Figure 2023026319000085
Figure 2023026319000086
Figure 2023026319000087
Figure 2023026319000088
Figure 2023026319000089
Figure 2023026319000090
Figure 2023026319000091
Figure 2023026319000092
Figure 2023026319000093
Figure 2023026319000094
Figure 2023026319000095
Figure 2023026319000096
Figure 2023026319000097
Figure 2023026319000098
Figure 2023026319000099
Figure 2023026319000100
上記式中、Dは重水素である。
これらの化合物の中でも、式(3-131-Y)~式(3-134-Y)、式(3-138-Y)、式(3-140-Y)~式(3-143-Y)、式(3-150-Y)、式(3-153-Y)~式(3-156-Y)、式(3-166-Y)、式(3-168-Y)、式(3-173-Y)、式(3-177-Y)、式(3-180-Y)~式(3-183-N)、式(3-185-Y)、式(3-190-Y)、式(3-223-Y)、式(3-241-Y)、式(3-250-Y)、式(3-252-Y)~式(3-254-Y)、式(3-270-Y)~式(3-284-Y)、式(3-501)、式(3-507)、式(3-508)、式(3-509)、式(3-513)、式(3-514)、式(3-519)、式(3-521)、式(3-538)~式(3-547)もしくは式(3-600)~式(3-605)、および式(3-606-Y)~式(3-626-Y)で表される化合物が好ましい。また、Yは、-O-または>N-R29が好ましく、-O-であることがより好ましい。また重水素置換の形態も好ましい。
上記のアントラセン化合物は、アントラセン骨格の所望の位置に反応性基を有する化合物と、式(3-H)で表されるアントラセン化合物であればX、Ar4および式(A)の構造などの部分構造に反応性基を有する化合物を出発原料として、鈴木カップリング、根岸カップリング、その他の公知のカップリング反応を応用して製造することができる。これらの反応性化合物の反応性基としては、ハロゲンやボロン酸などがあげられる。具体的な製造方法としては、例えば国際公開第2014/141725号の段落[0089]~[0175]における合成法を参考にすることができる。
<フルオレン化合物>
式(4-H)で表される化合物は基本的にはホストとして機能する。
Figure 2023026319000101
式(4-H)中、
1からR10は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して式(4-H)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、ジヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、アリールヘテロアリールアミノ(アリールおよびヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8またはR9とR10がそれぞれ独立して結合して縮合環またはスピロ環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、ジヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、アリールヘテロアリールアミノ(アリールおよびヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、式(4-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
式(4-H)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。
1からR10におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2~30のアルケニルがあげられ、炭素数2~20のアルケニルが好ましく、炭素数2~10のアルケニルがより好ましく、炭素数2~6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2~4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(4-Ar1)、式(4-Ar2)、式(4-Ar3)、式(4-Ar4)または式(4-Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2023026319000102
式(4-Ar1)から式(4-Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN-Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、式(4-Ar1)から式(4-Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、式(4-H)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(4-H)におけるフルオレン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-などがあげられる。
また、式(4-H)中のR1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7またはR7とR8がそれぞれ独立して結合して縮合環を、R9とR10が結合してスピロ環を形成していてもよい。R1からR8により形成された縮合環は、式(4-H)におけるベンゼン環に縮合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、式(4-H)におけるベンゼン環を含めた構造としてはナフタレン環やフェナントレン環などがあげられる。R9とR10により形成されたスピロ環は、式(4-H)における5員環にスピロ結合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、フルオレン環などがあげられる。
式(4-H)で表される化合物は、好ましくは、下記式(4-H-1)、式(4-H-2)または式(4-H-3)で表される化合物であり、それぞれ、式(4-H)においてR1とR2が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(4-H)においてR3とR4が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(4-H)においてR1からR8のいずれもが結合していない化合物である。
Figure 2023026319000103
式(4-H-1)、式(4-H-2)および式(4-H-3)におけるR1からR10の定義は式(4-H)において対応するR1からR10と同じであり、式(4-H-1)および式(4-H-2)におけるR11からR14の定義も式(4-H)におけるR1からR10と同じである。
式(4-H)で表される化合物は、さらに好ましくは、下記式(4-H-1A)、式(4-H-2A)または式(4-H-3A)で表される化合物であり、それぞれ、式(4-H-1)、式(4-H-2)または式(4-H-3)においてR9とR10が結合してスピロ-フルオレン環が形成された化合物である。
Figure 2023026319000104
式(4-H-1A)、式(4-H-2A)および式(4-H-3A)におけるR2からR7の定義は式(4-H-1)、式(4-H-2)および式(4-H-3)において対応するR2からR7と同じであり、式(4-H-1A)および式(4-H-2A)におけるR11からR14の定義も式(4-H-1)および式(4-H-2)におけるR11からR14と同じである。
また、式(4-H)で表される化合物における水素は、その全てまたは一部がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
本発明のホストとしてのフルオレン化合物のさらに具体的な例としては、以下の構造式で表される化合物があげられる。なお、「Me」はメチルを示す。
Figure 2023026319000105
<ジベンゾクリセン化合物>
ホストとしてのジベンゾクリセン化合物は、例えば下記式(5-H)で表される化合物である。
Figure 2023026319000106
式(5-H)中、R1からR16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、ジヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてよい)、アリールヘテロアリールアミノ(アリールおよびヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、R1からR16のうち隣接する基同士が結合して縮合環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ(2つアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、ジヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、アリールヘテロアリールアミノ(アリール、ヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、式(5-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
式(5-H)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。
式(5-H)の定義におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2~30のアルケニルがあげられ、炭素数2~20のアルケニルが好ましく、炭素数2~10のアルケニルがより好ましく、炭素数2~6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2~4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(5-Ar1)、式(5-Ar2)、式(5-Ar3)、式(5-Ar4)または式(5-Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2023026319000107
式(5-Ar1)から式(5-Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN-Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、式(5-Ar1)から式(5-Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-などがあげられる。
式(5-H)で表される化合物は、好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13およびR16は水素である。この場合、式(5-H)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、式(5-Ar1)、式(5-Ar2)、式(5-Ar3)、式(5-Ar4)もしくは式(5-Ar5)の構造を有する1価の基(当該構造を有する1価の基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-を介して、式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであることが好ましい。
式(5-H)で表される化合物は、より好ましくは、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12、R13、R15およびR16は水素である。この場合、式(5-H)中のR3、R6、R11およびR14の少なくとも1つ(好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つ)は、単結合、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-を介した、式(5-Ar1)、式(5-Ar2)、式(5-Ar3)、式(5-Ar4)または式(5-Ar5)の構造を有する1価の基であり、前記少なくとも1つ以外(すなわち、前記構造を有する1価の基が置換した位置以外)は水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
また、式(5-H)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15として、式(5-Ar1)から式(5-Ar5)で表される構造を有する1価の基が選択された場合には、当該構造における少なくとも1つの水素は式(5-H)中のR1からR16のいずれかと結合して単結合を形成していてもよい。
本発明のホストとしてのジベンゾクリセン化合物のさらに具体的な例としては、以下の構造式で表される化合物があげられる。なお、「tBu」はt-ブチルを示す。
Figure 2023026319000108
Figure 2023026319000109
上述した発光層用材料(ホスト材料およびドーパント材料)は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、発光層用材料に用いることができる。
<アシスティングドーパントとエミッティングドーパントとを含む発光層>
有機電界発光素子における発光層は、第1成分としてのホスト化合物、第2成分としてのアシスティングドーパント(化合物)、および第3成分としてのエミッティングドーパント(化合物)を含むものであってもよい。本発明の多環芳香族化合物はエミッティングドーパントとして用いることも好ましい。アシスティングドーパント(化合物)としては熱活性型遅延蛍光体を用いることができる。
以下の説明では、熱活性型遅延蛍光体をアシスティングドーパントとして用いる有機電界発光素子を、「TAF素子」(TADF Assisting Fluorescence素子)ということがある。TAF素子における「ホスト化合物」とは、蛍光スペクトルのピーク短波長側の肩より求められる最低励起一重項エネルギー準位が、第2成分としての熱活性型遅延蛍光体、および、第3成分としてのエミッティングドーパントよりも高い化合物のことを意味する。
「熱活性型遅延蛍光体」とは、熱エネルギーを吸収して最低励起三重項状態から最低励起一重項状態への逆項間交差を起こし、その最低励起一重項状態から放射失活して遅延蛍光を放射しうる化合物のことを意味する。ただし、「熱活性型遅延蛍光」とは、最低励起三重項状態から最低励起一重項状態への励起過程で高次三重項を経るものも含む。例えば、Durham大学 Monkmanらによる論文(NATURE COMMUNICATIONS,7:13680,DOI: 10.1038/ncomms13680)、産業技術総合研究所 細貝らによる論文(Hosokai et al., Sci. Adv. 2017;3: e1603282)、京都大学 佐藤らによる論文(Scientific Reports,7:4820, DOI:10.1038/s41598-017-05007-7)および、同じく京都大学 佐藤らによる学会発表(日本化学会第98春季年会、発表番号:2I4-15、DABNAを発光分子として用いた有機電界発光における高効率発光の機構、京都大学大学院工学研究科)などがあげられる。本発明では、対象化合物を含むサンプルについて、300Kで蛍光寿命を測定したとき、遅い蛍光成分が観測されたことをもって該対象化合物が「熱活性型遅延蛍光体」であると判定することとする。ここで、遅い蛍光成分とは、蛍光寿命が0.1μsec以上であるもののことを言う。蛍光寿命の測定は、例えば蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、C11367-01)を用いて行うことができる。
本発明の多環芳香族化合物は、エミッティングドーパントとして機能させることができ、「熱活性型遅延蛍光体」は、本発明の多環芳香族化合物の発光をアシストするアシスティングドーパントとして機能させることができる。
図2に一般的な蛍光ドーパントをエミッティングドーパント(ED)に用いたTAF素子の発光層のエネルギー準位図を示す。図中、ホストの基底状態のエネルギー準位をE(1,G)、ホストの蛍光スペクトルの短波長側の肩より求められる最低励起一重項エネルギー準位をE(1,S,Sh)、ホストのリン光スペクトルの短波長側の肩より求められる最低励起三重項エネルギー準位をE(1,T,Sh)、第2成分であるアシスティングドーパントの基底状態のエネルギー準位をE(2,G)、第2成分であるアシスティングドーパントの蛍光スペクトルの短波長側の肩より求められる最低励起一重項エネルギー準位をE(2,S,Sh)、第2成分であるアシスティングドーパントのリン光スペクトルの短波長側の肩より求められる最低励起三重項エネルギー準位をE(2,T,Sh)、第3成分であるエミッティングドーパントの基底状態のエネルギー準位をE(3,G)、第3成分であるエミッティングドーパントの蛍光スペクトルの短波長側の肩より求められる最低励起一重項エネルギー準位をE(3,S,Sh)、第3成分であるエミッティングドーパントのリン光スペクトルの短波長側の肩より求められる最低励起三重項エネルギー準位をE(3,T,Sh)、正孔をh+、電子をe-、蛍光共鳴エネルギー移動をFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)とする。TAF素子において、一般的な蛍光ドーパントをエミッティングドーパント(ED)として用いた場合、アシスティングドーパントでアップコンバージョンされたエネルギーはエミッティングドーパントの最低励起一重項エネルギー準位E(3,S,Sh)に移り発光する。しかし、アシスティングドーパント上の一部の最低励起三重項エネルギーE(2,T,Sh)がエミッティングドーパントの最低励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)に移動したり、エミッティングドーパント上で最低励起一重項エネルギー準位E(3,S,Sh)から最低励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)への項間交差が起こり、引き続いて基底状態E(3,G)へ熱的に失活する。この経路により一部のエネルギーは発光に利用されず、エネルギーの無駄が生じる。
これに対して、本態様の有機電界発光素子では、アシスティングドーパントからエミッティングドーパントに移動したエネルギーを効率よく発光に利用することができ、これにより高い発光効率を実現することができる。これは、以下の発光メカニズムによるものと推測される。
本態様の有機電界発光素子における好ましいエネルギー関係を図3に示す。本態様の有機電界発光素子においては、エミッティングドーパントとしての、ホウ素原子を有する化合物が高い最低励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)を有する。そのため、アシスティングドーパントでアップコンバージョンされた最低励起一重項エネルギーが、例え、エミッティングドーパントで最低励起三重項エネルギー準位E(3,T,Sh)へ項間交差した場合にも、エミッティングドーパント上でアップコンバージョンされるか、アシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体)上の最低励起三重項エネルギー準位E(2,T,Sh)へ回収される。したがって、生成した励起エネルギーを無駄なく発光に使用することができる。また、アップコンバージョンおよび発光の機能をそれぞれが得意な2種の分子に分けることで、高いエネルギーの滞留時間が減少し、化合物への負担が減少すると予想される。
本態様において、ホスト化合物としては、公知のものを用いることができ、例えばカルバゾール環およびフラン環の少なくとも一方を有する化合物をあげることができ、中でも、フラニルおよびカルバゾリルの少なくとも一方と、アリーレンおよびヘテロアリーレンの少なくとも一方とが結合した化合物を用いることが好ましい。具体例として、mCPやmCBPなどがあげられる。
ホスト化合物の燐光スペクトルのピーク短波長側の肩より求められる最低励起三重項エネルギー準位E(1,T,Sh)は、発光層内でのTADFの発生を阻害せず促進させる観点から、発光層内において最も高い最低励起三重項エネルギー準位を有するエミッティングドーパントまたはアシスティングドーパントの最低励起三重項エネルギー準位E(2,T,Sh)、E(3,T,Sh)に比べて高い方が好ましく、具体的には、ホスト化合物の最低励起三重項エネルギー準位E(1,T,Sh)はE(2,T,Sh)、E(3,T,Sh)に比べて、0.01eV以上が好ましく、0.03eV以上がより好ましく、0.1eV以上がさらに好ましい。また、ホスト化合物にTADF活性な化合物を用いてもよい。
ホスト化合物には、例えば、上記式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
<熱活性型遅延蛍光体(アシスティングドーパント)>
TAF素子で用いる熱活性型遅延蛍光体(TADF化合物)は、ドナーと呼ばれる電子供与性の置換基とアクセプターと呼ばれる電子受容性の置換基を用いて分子内のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)を局在化させて、効率的な逆項間交差(reverse intersystem crossing)が起きるようにデザインされた、ドナー-アクセプター型熱活性型遅延蛍光体(D-A型TADF化合物)であることが好ましい。ここで、本明細書中において「電子供与性の置換基」(ドナー)とは、熱活性型遅延蛍光体分子中でHOMO軌道が局在する置換基および部分構造のことを意味し、「電子受容性の置換基」(アクセプター)とは、熱活性型遅延蛍光体分子中でLUMO軌道が局在する置換基および部分構造のことを意味することとする。
一般的に、ドナーやアクセプターを用いた熱活性型遅延蛍光体は、構造に起因してスピン軌道結合(SOC: Spin Orbit Coupling)が大きく、かつ、HOMOとLUMOの交換相互作用が小さくΔE(ST)が小さいために、非常に速い逆項間交差速度が得られる。一方、ドナーやアクセプターを用いた熱活性型遅延蛍光体は、励起状態での構造緩和が大きくなり(ある分子においては、基底状態と励起状態では安定構造が異なるため、外部刺激により基底状態から励起状態への変換が起きると、その後、励起状態における安定構造へと構造が変化する)、幅広な発光スペクトルを与えるため、発光材料として使うと色純度を低下させる可能性がある。
しかし、本発明の多環芳香族化合物等の適切なエミッティングドーパントとともに、ドナーやアクセプターを用いた熱活性型遅延蛍光体をアシスティングドーパントとして用いることにより、高い色純度を与えることができる。
TADF材料は、その発光スペクトルが本発明の多環芳香族化合物の吸収スペクトルと少なくとも一部重なる化合物であればよい。本発明の多環芳香族化合物とTADF材料とはいずれも同じ層に含まれていてもよく、隣接する層に含まれていてもよい。
TAF素子における熱活性型遅延蛍光体として、例えばドナーおよびアクセプターが直接またはスペーサーを介して結合している化合物を用いることができる。本発明の熱活性型遅延蛍光体に用いられる電子供与性基(ドナー性の構造)および電子受容性基(アクセプター性の構造)としては、例えば、Chemistry of Materials, 2017, 29, 1946-1963に記載の構造を用いることができる。ドナー性の構造としては、カルバゾール、ジメチルカルバゾール、ジ-tert-ブチルカルバゾール、ジメトキシカルバゾール、テトラメチルカルバゾール、ベンゾフルオロカルバゾール、ベンゾチエノカルバゾール、フェニルジヒドロインドロカルバゾール、フェニルビカルバゾール、ビカルバゾール、ターカルバゾール、ジフェニルカルバゾリルアミン、テトラフェニルカルバゾリルジアミン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、フェノチアジン、ジメチルジヒドロアクリジン、ジフェニルアミン、ビス(tert-ブチルフェニル)アミン、N1-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)-N4,N4-ジフェニルベンゼン-1,4-ジアミン、ジメチルテトラフェニルジヒドロアクリジンジアミン、テトラメチル-ジヒドローインデノアクリジンおよびジフェニルージヒドロジベンゾアザシリンなどがあげられる。アクセプター性の構造としては、スルホニルジベンゼン、ベンゾフェノン、フェニレンビス(フェニルメタノン)、ベンゾニトリル、イソニコチノニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、パラフタロニトリル、ベンゼントリカルボニトリル、トリアゾール、オキサゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾビス(チアゾール)、ベンゾオキサゾール、ベンゾビス(オキサゾール)、キノリン、ベンゾイミダゾール、ジベンゾキノキサリン、ヘプタアザフェナレン、チオキサントンジオキシド、ジメチルアントラセノン、アントラセンジオン、5H-シクロペンタ[1,2-b:5,4-b’]ジピリジン、フルオレンジカルボニトリル、トリフェニルトリアジン、ピラジンジカルボニトリル、ピリミジン、フェニルピリミジン、メチルピリミジン、ピリジンジカルボニトリル、ジベンゾキノキサリンジカルボニトリル、ビス(フェニルスルホニル)ベンゼン、ジメチルチオキサンテンジオキシド、チアンスレンテトラオキシドおよびトリス(ジメチルフェニル)ボランがあげられる。特に、TAF素子における熱活性型遅延蛍光を有する化合物は、部分構造として、カルバゾール、フェノキサジン、アクリジン、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、チオキサンテン、ベンゾニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、ジフェニルスルホン、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールおよびベンゾフェノンから選択される少なくとも1つを有する化合物であることが好ましい。
TAF素子における発光層の第2成分として用いる化合物は、熱活性型遅延蛍光体であって、その発光スペクトルがエミッティングドーパントの吸収ピークと少なくとも一部重なる化合物であることが好ましい。以下において、TAF素子における発光層の第2成分(熱活性型遅延蛍光体)として用いることができる化合物を例示する。ただしTAF素子において熱活性型遅延蛍光体として用いることができる化合物は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。下記式において、Meはメチルを表し、tBuはt-ブチルを表し、波線は結合位置を表す。
Figure 2023026319000110
Figure 2023026319000111
Figure 2023026319000112
Figure 2023026319000113
Figure 2023026319000114
さらに、熱活性型遅延蛍光体として、下記式(AD1)、(AD2)および(AD3)のいずれかで表される化合物も用いることができる。
Figure 2023026319000115
上記式(AD1)、(AD2)および(AD3)中、Mは、それぞれ独立して、単結合、-O-、>N-Arまたは>CAr2であり、形成する部分構造のHOMOの深さおよび最低励起一重項エネルギー準位および最低励起三重項エネルギー準位の高さの観点から、好ましくは、単結合、-O-または>N-Arである。Jはドナー性の部分構造とアクセプター性の部分構造を分けるスペーサー構造であり、それぞれ独立して、炭素数6~18のアリーレンであり、ドナー性の部分構造とアクセプター性の部分構造から染み出す共役の大きさの観点から、炭素数6~12のアリーレンが好ましい。より具体的には、フェニレン、メチルフェニレンおよびジメチルフェニレンがあげられる。Qは、それぞれ独立して、=C(-H)-または=N-であり、形成する部分構造のLUMOの浅さおよび最低励起一重項エネルギー準位および最低励起三重項エネルギー準位の高さの観点から、好ましくは、=N-である。Arは、それぞれ独立して、水素、炭素数6~24のアリール、炭素数2~24のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~18のシクロアルキルであり、形成する部分構造のHOMOの深さおよび最低励起一重項エネルギー準位および最低励起三重項エネルギー準位の高さの観点から、好ましくは、水素、炭素数6~12のアリール、炭素数2~14のヘテロアリール、炭素数1~4のアルキルまたは炭素数6~10のシクロアルキルであり、より好ましくは、水素、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ビフェニル、ピリジル、ビピリジル、トリアジニル、カルバゾリル、ジメチルカルバゾリル、ジ-tert-ブチルカルバゾリル、ベンゾイミダゾリルまたはフェニルベンゾイミダゾリルであり、さらに好ましくは、水素、フェニルまたはカルバゾリルである。mは、1または2である。nは、(6-m)以下の整数であり、立体障害の観点から、好ましくは、4~(6-m)の整数である。さらに、上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
本態様の第2成分として用いる化合物は、より具体的に言えば、4CzBN、4CzBN-Ph、5CzBN、3Cz2DPhCzBN、4CzIPN、2PXZ-TAZ、Cz-TRZ3、BDPCC-TPTA、MA-TA、PA-TA、FA-TA、PXZ-TRZ、DMAC-TRZ、BCzT、DCzTrz、DDCzTRz、spiroAC-TRZ、Ac-HPM、Ac-PPM、Ac-MPM、TCzTrz、TmCzTrzおよびDCzmCzTrzであることが好ましい。
本態様の第2成分として用いる化合物は、1つのドナーDと1つのアクセプターAが直接結合または連結基を介して結合しているD-Aで表されるドナーアクセプター型TADF化合物でもよいが、1つのアクセプターAに複数のドナーDが直接結合または連結基を介して結合している下記式(DAD1)で表される構造を有するものであることが、有機電界発光素子の特性がより優れたものになるため好ましい。

(D1-L1)n-A1 (DAD1)

式(DAD1)には、下記式(DAD2)で表される化合物が含まれる。

2-L2-A2-L3-D3 (DAD2)

式(DAD1)および式(DAD2)において、D1、D2およびD3はそれぞれ独立してドナー性基を表す。ドナー性基としては、上記のドナー性の構造を採用することができる。A1およびA2はそれぞれ独立してアクセプター性基を表す。アクセプター性基としては、上記のアクセプター性の構造を採用することができる。L1、L2およびL3はそれぞれ独立して単結合または共役連結基を表す。共役連結基はドナー性基とアクセプター性基を分けるスペーサー構造であり、炭素数6~18のアリーレンであることが好ましく、炭素数6~12のアリーレンがより好ましい。L1、L2およびL3は、それぞれ独立してフェニレン、メチルフェニレンまたはジメチルフェニレンであることがさらに好ましい。式(DAD1)におけるnは2以上であって、A1が置換しうる最大数以下の整数を表す。nは例えば2~10の範囲内で選択したり、2~6の範囲内で選択したりしてもよい。nが2であるとき、式(DAD2)で表される化合物になる。n個のD1は同一であっても異なっていてもよく、n個のL1は同一であっても異なっていてもよい。式(DAD1)および式(DAD2)で表される化合物の好ましい具体例として、2PXZ-TAZや下記の化合物をあげることができるが、本発明で採用することができる第2成分はこれらの化合物に限定されない。
Figure 2023026319000116
本態様において、発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよい。また、ホスト化合物、熱活性型遅延蛍光体および本発明の多環芳香族化合物は、同一の層内に含まれていてもよく、複数層に少なくとも1成分ずつ含まれていてもよい。発光層が含むホスト化合物、熱活性型遅延蛍光体および本発明の多環芳香族化合物は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントは、マトリックスとしてのホスト化合物中に、全体的に含まれていてもよいし、部分的に含まれていてもよい。アシスティングドーパントおよびエミッティングドーパントがドープされた発光層は、ホスト化合物とアシスティングドーパントとエミッティングドーパントを三元共蒸着法によって成膜する方法、ホスト化合物とアシスティングドーパントとエミッティングドーパントを予め混合してから同時に蒸着する方法、ホスト化合物とアシスティングドーパントとエミッティングドーパントを有機溶媒に溶解して調製した発光層形成用組成物(塗料)を塗布する、湿式成膜法等により形成することができる。
ホスト化合物の使用量はホスト化合物の種類によって異なり、そのホスト化合物の特性に合わせて決めればよい。ホスト化合物の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の40~99質量%であり、より好ましくは50~98質量%であり、さらに好ましくは60~95質量%である。上記の範囲であれば、例えば、効率的な電荷の輸送と、ドーパントへの効率的なエネルギーの移動の点で好ましい。
アシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体)の使用量はアシスティングドーパントの種類によって異なり、そのアシスティングドーパントの特性に合わせて決めればよい。アシスティングドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の1~60質量%であり、より好ましくは2~50質量%であり、さらに好ましくは5~30質量%である。上記の範囲であれば、例えば、効率的にエネルギーをエミッティングドーパントへ移動させられるという点で好ましい。
エミッティングドーパント(ホウ素原子を有する化合物)の使用量はエミッティングドーパントの種類によって異なり、そのエミッティングドーパントの特性に合わせて決めればよい。エミッティングドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001~30質量%であり、より好ましくは0.01~20質量%であり、さらに好ましくは0.1~10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
エミッティングドーパントの使用量は低濃度である方が濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。アシスティングドーパントの使用量が高濃度である方が熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは好ましい。さらには、アシスティングドーパントの熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは、アシスティングドーパントの使用量に比べてエミッティングドーパントの使用量が低濃度である方が好ましい。
<2-1-3.有機電界発光素子における基板>
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
<2-1-4.有機電界発光素子における陽極>
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および輸送層104のいずれか1つが設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3-メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100~5Ω/□、好ましくは50~5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50~300nmの間で用いられることが多い。
<2-1-5.有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N-アリールカルバゾール)またはビス(N-アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(4,4’,4"-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン、芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチル-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン、N,N’-ジナフチル-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン、N4,N4'-ジフェニル-N4,N4'-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、N4,N4,N4',N4'-テトラ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、4,4’,4"-トリス(3-メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6-テトラフルオロテトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005-167175号公報)。本発明の多環芳香族化合物は正孔注入層形成用材料または正孔輸送層形成用材料として用いてもよい。
<2-1-6.有機電界発光素子における電子阻止層>
正孔注入・輸送層と発光層との間には発光層からの電子の拡散を防ぐ電子阻止層を設けてもよい。電子阻止層の形成には、上述の式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。本発明の多環芳香族化合物は電子阻止層形成用材料として用いてもよい。
<2-1-7.有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層>
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4’-ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、アリールニトリル誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3-ビス[(4-t-ブチルフェニル)1,3,4-オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N-ナフチル-2,5-ジフェニル-1,3,4-トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2’-ビス(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-9,9’-スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3-ビス(2,2’:6’,2”-テルピリジン-4'-イル)ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1-ナフチル)-4-(1,8-ナフチリジン-2-イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、インドール誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体などがあげられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノール系金属錯体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体が好ましい。
本発明の多環芳香族化合物は電子注入層形成用材料または電子輸送層形成用材料として用いてもよい。
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0~2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
<2-1-8.有機電界発光素子における陰極>
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム-リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
<2-1-9.各層で用いてもよい結着剤>
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
<2-1-10.有機電界発光素子の作製方法>
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm~5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50~+400℃、真空度10-6~10-3Pa、蒸着速度0.01~50nm/秒、基板温度-150~+300℃、膜厚2nm~5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を-の極性として印加すればよく、電圧2~40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
<2-1-11.有機電界発光素子の応用例>
有機EL素子は表示装置または照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよびセグメント方式のいずれか1つなどがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、有機EL素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
<2-2.その他の有機デバイス>
本発明に係る多環芳香族化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。
有機電界効果トランジスタは、電圧入力によって発生させた電界により電流を制御するトランジスタのことであり、ソース電極とドレイン電極の他にゲート電極が設けられている。ゲート電極に電圧を印加すると電界が生じ、ソース電極とドレイン電極間を流れる電子(あるいはホール)の流れを任意にせき止めて電流を制御することができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、単なるトランジスタ(バイポーラトランジスタ)に比べて小型化が容易であり、集積回路などを構成する素子としてよく用いられている。
有機電界効果トランジスタの構造は、通常、本発明に係る多環芳香族化合物を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極およびドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造があげられる。
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極
このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。
有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。本発明に係る多環芳香族化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。本発明に係る多環芳香族化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
<3.波長変換材料>
本発明の多環芳香族化合物は、波長変換材料として使用することができる。
現在、色変換方式によるマルチカラー化技術を、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、照明などへ応用することが盛んに検討されている。色変換とは、発光体からの発光をより長波長の光へと波長変換することであり、例えば、紫外光や青色光を緑色光や赤色発光へと変換することを表す。この色変換機能を有する波長変換材料をフィルム化し、例えば青色光源と組み合わせることにより、青色光源から、青、緑、赤色の3原色を取り出すこと、すなわち白色光を取り出すことが可能となる。このような青色光源と色変換機能を有する波長変換フィルムを組み合わせた白色光源を光源ユニットとし、液晶駆動部分と、カラーフィルターと組み合わせることで、フルカラーディスプレイの作製が可能になる。また、液晶駆動部分が無ければ、そのまま白色光源として用いることができ、例えばLED照明などの白色光源として応用できる。また、青色有機EL素子を光源として、青色光を緑色光および赤色光に変換する波長変換フィルムと組み合わせて用いることでメタルマスクを用いないフルカラー有機ELディスプレイの作製が可能になる。さらに、青色マイクロLEDを光源として、青色光を緑色光および赤色光に変換する波長変換フィルムと組み合わせて用いることで低コストのフルカラーマイクロLEDディスプレイの作製が可能になる。
本発明の多環芳香族化合物は、この波長変換材料として使用することができる。本発明の多環芳香族化合物を含む波長変換材料を用いて、紫外光やより短波長の青色光を生成する光源や発光素子からの光を、表示装置(有機EL素子を利用した表示装置や液晶表示装置)での利用に適した色純度の高い青色光や緑色光に変換することができる。変換される色の調整は、本発明の多環芳香族化合物の置換基、後述の波長変換用組成物で用いるバインダー樹脂等を適宜選択することにより行うことができる。波長変換材料は本発明の多環芳香族化合物を含む波長変換用組成物として調製することができる。また、この波長変換用組成物を用いて波長変換フィルムを形成してもよい。
波長変換用組成物は、本発明の多環芳香族化合物のほか、バインダー樹脂、その他の添加剤、および溶媒を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、例えば国際公開第2016/190283号の段落0173~0176に記載のものを用いることができる。その他の添加剤としては、国際公開第2016/190283号の段落0177~0181に記載の化合物を用いることができる。溶媒としては、上記の発光層形成用組成物に含まれる溶媒の記載を参照することができる。
波長変換フィルムは波長変換用組成物の硬化により形成される波長変換層を含む。波長変換用組成物からの波長変換層の作製方法としては公知のフィルム形成方法を参照することができる。波長変換フィルムは本発明の多環芳香族化合物を含む組成物から形成される波長変換層のみからなっていてもよく、他の波長変換層(例えば、青色光を緑色光や赤色光に変換する波長変換層、青色光や緑色光を赤色光に変換する波長変換層)を含んでいてもよい。さらに波長変換フィルムは基材層や、色変換層の酸素、水分、または熱による劣化を防ぐためのバリア層を含んでいてもよい。
以下,実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが,本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例(1):化合物(1-1)の合成
Figure 2023026319000117
窒素雰囲気下、中間体(X-1)(57.8g)、1-t-ブチル-3,4,5-トリクロロベンゼン(23.8g)、パラジウム触媒としてジクロロビス[ジ-t-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)(Pd-132、0.909g)、ナトリウム-t-ブトキシド(NaOtBu、14.4g)およびトルエン(500ml)をフラスコに入れ、110℃で5時間加熱した。反応終了後、反応液に水と酢酸エチルを加え撹拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートパスカラム(溶離液:ヘプタン)で精製することで、中間体(X-2)を69.2g得た。
Figure 2023026319000118
窒素雰囲気下、中間体(X-2)(39.0g)、中間体(X-3)(25.9g)、パラジウム触媒としてPd-132(0.719g)、NaOtBu(7.21g)およびトルエン(300ml)をフラスコに入れ、110℃で3時間加熱した。反応終了後、反応液に水と酢酸エチルを加え撹拌した後、有機層を分離して水洗した。その後、有機層を濃縮して得た粗生成物をシリカゲルショートパスカラム(溶離液:トルエン/ヘプタン=1/9(容量比))で精製することで、中間体(X-4)を55.2g得た。
Figure 2023026319000119
中間体(X-4)(12.60g)およびtert-ブチルベンゼン(tBu-benzene、100ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、0℃で、1.60Mのtert-ブチルリチウムペンタン溶液(tBuLi、12.5ml)を加えた。滴下終了後、70℃まで昇温して0.5時間撹拌した後、tert-ブチルベンゼンより低沸点の成分を減圧留去した。-50℃まで冷却して三臭化ホウ素(2.51g)を加え、室温まで昇温して0.5時間撹拌した。その後、再び0℃まで冷却してN,N-ジイソプロピルエチルアミン(EtNiPr2、1.29g)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、100℃まで昇温して1時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却し、氷浴で冷やした酢酸ナトリウム水溶液、次いで酢酸エチルを加えて分液した。有機層を濃縮後に、シリカゲルショートパスカラム(溶離液:クロロベンゼン)で精製した。得られた粗生成物をトルエンから再結晶させることで、化合物(1-1)を3.10g得た。
Figure 2023026319000120
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1233.82の目的物である化合物(1-1)を確認した。
また1H-NMRでも構造を確認した。
1H-NMR(CDCl3):δ=8.6(s,1H),7.9(d,1H),7.7(s,1H),7.6(m,6H),7.5(d,2H),7.4(m,3H),7.3(s,1H),7.3(d,1H),7.0(t,1H),7.0(d,2H),7.0(s,1H),6.3(s,1H),6.1(s,1H),2.5(s,3H),2.2(s,3H),1.8-1.7(m,8H),1.6(s,3H),1.5(s,3H),1.5(s,6H),1.4(s,9H),1.3(s,3H),1.3(s,3H),1.2(s,9H),1.1(d,6H),1.0(s,9H),0.9(s,18H)
合成例(2):化合物(1-4)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-4)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-4)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1248.86の目的物である化合物(1-4)を確認した。
Figure 2023026319000121
合成例(3):化合物(1-7)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-7)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-7)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1287.86の目的物である化合物(1-7)を確認した。
また1H-NMRによっても構造を確認した。
1H-NMR(CDCl3):δ=8.6(s,1H)、7.9(d,1H)、7.8-7.7(m,2H)、7.7(s,1H)、7.7(d,1H)、7.5-7.4(m,4H)、7.4-7.3(m,4H)、7.1-7.0(m,3H)、6.8(d,1H)、6.7(br,1H)、6.4(br,1H)、6.3(br,1H)、2.2(s,3H)、2.2(s,3H)、1.9-1.7(m,11H)、1.6-1.5(m,4H)、1.5(m,9H)、1.4(s,6H)、1.4(s,6H)、1.3(s,3H)、1.3(s,3H)、1.3(s,9H)、1.2(s,3H)、1.2(s,3H)、1.1(s,9H)、1.0(s,18H).
Figure 2023026319000122
合成例(4):化合物(1-9)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-9)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-9)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1341.91の目的物である化合物(1-9)を確認した。
Figure 2023026319000123
合成例(5):化合物(1-15)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-15)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-15)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1225.75の目的物である化合物(1-15)を確認した。
Figure 2023026319000124
合成例(6):化合物(1-16)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-16)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-16)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1159.67の目的物である化合物(1-16)を確認した。
Figure 2023026319000125
合成例(7):化合物(1-17)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-17)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-17)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1384.86の目的物である化合物(1-17)を確認した。
Figure 2023026319000126
合成例(8):化合物(1-19)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-19)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-19)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1188.73の目的物である化合物(1-19)を確認した。
Figure 2023026319000127
合成例(9):化合物(1-22)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-22)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-22)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1098.59の目的物である化合物(1-22)を確認した。
Figure 2023026319000128
合成例(10):化合物(1-23)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-23)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-23)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1267.76の目的物である化合物(1-23)を確認した。
Figure 2023026319000129
合成例(11):化合物(1-24)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-24)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-24)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1255.80の目的物である化合物(1-24)を確認した。
Figure 2023026319000130
合成例(12):化合物(1-31)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-31)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-31)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1142.76の目的物である化合物(1-31)を確認した。
Figure 2023026319000131
合成例(13):化合物(1-36)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-36)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-36)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1135.67の目的物である化合物(1-36)を確認した。
Figure 2023026319000132
合成例(14):化合物(1-39)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-39)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-39)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1209.69の目的物である化合物(1-39)を確認した。
Figure 2023026319000133
合成例(15):化合物(1-46)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-46)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-46)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1217.84の目的物である化合物(1-46)を確認した。
Figure 2023026319000134
合成例(16):化合物(1-47)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-47)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-47)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1268.89の目的物である化合物(1-47)を確認した。
Figure 2023026319000135
合成例(17):化合物(1-48)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-48)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-48)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1173.72の目的物である化合物(1-48)を確認した。
Figure 2023026319000136
合成例(18):化合物(1-50)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-50)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-50)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1201.91の目的物である化合物(1-50)を確認した。
Figure 2023026319000137
合成例(19):化合物(1-60)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-60)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-60)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1231.80の目的物である化合物(1-60)を確認した。
また1H-NMRによっても構造を確認した。
1H-NMR(CD2Cl2):δ=8.5(d,1H)、7.9(s,1H)、7.8(d,2H)、7.7(d,1H)、7.7-7.6(m,4H)、7.5(q,3H)、7.4-7.3(m,2H)、7.3(d,1H)、7.0(d,1H)、7.0(d,2H)、6.6(d,1H)、6.4(s,1H)、6.3(d,1H)、6.3(s,1H)、2.5(s,3H)、2.3(s,3H)、1.9-1.8(m,4H)、1.8(s,3H)、1.7(s,3H)、1.5(s,2H)、1.5(s,3H)、1.5(s,3H)、1.4(s,6H)、1.4-1.3(m,18H)、1.2(s,9H)、1.1(s,3H)、1.1(s,3H)、0.9(s,9H)、0.9(s,9H).
Figure 2023026319000138
合成例(20):化合物(1-61)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-61)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-61)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1293.82の目的物である化合物(1-61)を確認した。
また1H-NMRによっても構造を確認した。
1H-NMR(CDCl3):δ=8.56(s,1H)、7.87(d,2H)、7.65-7.50(m,6H)、7.45-7.41(m,4H)、7.32(d,1H)、7.21-7.18(m,6H)、6.98-6.94(m,3H)、6.59(s,2H)、6.27(s,2H)、2.29(s,2H)、1.84-1.80(m,4H)、1.73(s,3H)、1.66(s,4H)、1.49(t,8H)、1.37(s,6H)、1.35(s,3H)、1.33(s,9H)、1.29(dd,6H)、1.19(s,9H)、1.08(m,6H)、0.92(s,9H)、0.90(s,9H).
Figure 2023026319000139
合成例(21):化合物(1-62)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-62)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-62)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1267.80の目的物である化合物(1-62)を確認した。
また1H-NMRによっても構造を確認した。
1H-NMR(CDCl3):δ=8.58(d,1H)、8.24(d,1H)、7.85-7.76(m,6H)、7.69-7.65(m,2H)、7.54-7.44(m,4H)、7.45(d,1H)、7.34(s,1H)、7.33-7.27(m,1H)、7.23(dd,1H)、7.02(t,1H)、6.99(d,2H)、6.54(d,1H)、6.34(s,1H)、6.05(s,1H)、5.96(s,1H)、2.29(s,3H)、1.88-1.61(m,12H)、1.55-1.42(m,6H)、1.40-1.25(m,24H)、1.20(s,9H)、1.11-1.05(m,6H)、0.94-0.85(s,18H).
Figure 2023026319000140
合成例(22):化合物(1-63)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-63)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-63)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1405.94の目的物である化合物(1-63)を確認した。
Figure 2023026319000141
合成例(23):化合物(1-67)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-67)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-67)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1239.77の目的物である化合物(1-67)を確認した。
Figure 2023026319000142
合成例(24):化合物(1-68)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-68)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-68)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1213.76の目的物である化合物(1-68)を確認した。
Figure 2023026319000143
合成例(25):化合物(1-71)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-71)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-71)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1205.79の目的物である化合物(1-71)を確認した。
また1H-NMRによっても構造を確認した。
1H-NMR(CDCl3):δ=8.63(s,1H)、7.97(d,2H)、7.85-7.82(m,3H)、7.78―7.66(m,5H)、7.63-7.56(m,2H)、7.47-7.37(m,5H)、6.91-6.90(m,1H)、6.64(s,5H)、1.77-1.65(m,11H)、1.57-1.50(m,9H)、1.47(s,9H)、1.39(s,6H)、1.37-1.33(m,9H)、1.13―1.03(m,15H)、0.77(s,18H).
Figure 2023026319000144
合成例(26):化合物(1-73)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-73)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-73)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1213.76の目的物である化合物(1-73)を確認した。
Figure 2023026319000145
合成例(27):化合物(1-77)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-77)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-77)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1287.87の目的物である化合物(1-77)を確認した。
Figure 2023026319000146
合成例(28):化合物(1-79)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-79)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-79)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1428.92の目的物である化合物(1-79)を確認した。
Figure 2023026319000147
合成例(29):化合物(1-80)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-80)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-80)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1504.96の目的物である化合物(1-80)を確認した。
Figure 2023026319000148
合成例(30):化合物(1-85)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-85)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-85)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1229.94の目的物である化合物(1-85)を確認した。
Figure 2023026319000149
合成例(31):化合物(1-86)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-86)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-86)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1050.76の目的物である化合物(1-86)を確認した。
Figure 2023026319000150
合成例(32):化合物(1-87)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-87)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-87)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1217.79の目的物である化合物(1-87)を確認した。
Figure 2023026319000151
合成例(33):化合物(1-89)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-89)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-89)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1223.79の目的物である化合物(1-89)を確認した。
Figure 2023026319000152
合成例(34):化合物(1-90)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-90)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-90)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1412.94の目的物である化合物(1-90)を確認した。
Figure 2023026319000153
合成例(35):化合物(1-91)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-91)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-91)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1515.03の目的物である化合物(1-91)を確認した。
Figure 2023026319000154
合成例(36):化合物(1-92)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-92)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-92)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1213.96の目的物である化合物(1-92)を確認した。
Figure 2023026319000155
合成例(37):化合物(1-93)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-93)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1201.81の目的物である化合物(1-93)を確認した。
Figure 2023026319000156
合成例(38):化合物(1-94)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-94)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-94)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1034.78の目的物である化合物(1-94)を確認した。
Figure 2023026319000157
合成例(39):化合物(1-95)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-95)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-95)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1217.84の目的物である化合物(1-95)を確認した。
Figure 2023026319000158
合成例(40):化合物(1-96)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-96)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-96)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1332.88の目的物である化合物(1-96)を確認した。
Figure 2023026319000159
合成例(41):化合物(1-97)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-97)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-97)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1267.86の目的物である化合物(1-97)を確認した。
Figure 2023026319000160
合成例(42):化合物(1-98)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-98)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-98)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1180.87の目的物である化合物(1-98)を確認した。
Figure 2023026319000161
合成例(43):化合物(1-99)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-99)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-99)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1009.58の目的物である化合物(1-99)を確認した。
Figure 2023026319000162
合成例(44):化合物(1-100)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-100)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-100)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1277.84の目的物である化合物(1-100)を確認した。
Figure 2023026319000163
合成例(45):化合物(1-101)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-101)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-101)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1272.82の目的物である化合物(1-101)を確認した。
Figure 2023026319000164
合成例(46):化合物(1-102)の合成
化合物(X-4)を化合物(X-4-102)に変更した以外は合成例1と同様の手順で化合物(1-102)を得た。
MALDI-TOF-MSによりm/z(M+H)=1189.81の目的物である化合物(1-102)を確認した。
Figure 2023026319000165
原料の化合物を適宜変更することにより、上述した合成例に準じた方法で、本発明の他の化合物を合成することができる。
<基礎物性の評価方法>
<サンプルの準備>
評価対象の化合物の吸収特性と発光特性(蛍光と燐光)を評価する場合、評価対象の化合物を溶媒に溶解して溶媒中で評価する場合と薄膜状態で評価する場合がある。さらに、薄膜状態で評価する場合は、評価対象の化合物の有機EL素子における使用の態様に応じて、評価対象の化合物のみを薄膜化し評価する場合と評価対象の化合物を適切なマトリックス材料中に分散して薄膜化して評価する場合がある。ここでは、評価対象化合物のみを蒸着して得た薄膜を「単独膜」といい、評価対象化合物とマトリックス材料を含む塗工液を塗布、乾燥して得た薄膜を「塗膜」という。
マトリックス材料としては、市販のPMMA(ポリメチルメタクリレート)などを用いることができる。本実施例では、PMMAと評価対象の化合物をトルエン中で溶解させた後、スピンコーティング法により石英製の透明支持基板(10mm×10mm)上に薄膜を形成してサンプルを作製する。
また、マトリックス材料がホスト化合物である場合の薄膜サンプルは、以下のようにして作製する。石英製の透明支持基板(10mm×10mm×1.0mm)を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、ホスト化合物を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ドーパント材料を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着した後、真空槽を5×10-4Paまで減圧する。次に、ホスト化合物が入った蒸着用ボートとドーパント材料が入った蒸着用ボートを同時に加熱して、ホスト化合物とドーパント材料を適切な膜厚になるように共蒸着してホスト化合物とドーパント材料の混合薄膜(サンプル)を形成した。ここで、ホスト化合物とドーパント材料の設定質量比に応じて蒸着速度を制御する。
<吸収特性と発光特性の評価>
サンプルの吸収スペクトルの測定は、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所、UV-2600)を用いて行う。また、サンプルの蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルの測定は、分光蛍光光度計(日立ハイテク(株)製、F-7000)を用いて行う。
蛍光スペクトルの測定に対しては、室温で適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定する。燐光スペクトルの測定に対しては、付属の冷却ユニットを使用して、前記サンプルを液体窒素に浸した状態(温度77K)で測定する。燐光スペクトルを観測するため、光学チョッパを使用して励起光照射から測定開始までの遅れ時間を調整した。サンプルは適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定する。
また、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C9920-02G)を用いて蛍光量子収率(PLQY)を測定する。
次に、本発明の多環芳香族化合物の基礎物性評価について記載する。
<蛍光寿命(遅延蛍光)の評価>
蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C11367-01)を用いて300Kで蛍光寿命を測定した。具体的には、適切な励起波長で測定される極大発光波長において蛍光寿命の早い発光成分と遅い発光成分を観測した。蛍光を発光する一般的な有機EL材料の室温における蛍光寿命測定では、熱による3重項成分の失活により、燐光に由来する3重項成分が関与する遅い発光成分が観測されることはほとんどない。評価対象の化合物において遅い発光成分が観測された場合は、励起寿命の長い3重項エネルギーが熱活性化により1重項エネルギーに移動して遅延蛍光として観測されたことを示すことになる。
<エネルギーギャップ(Eg)の算出>
前述の方法で得られた吸収スペクトルの長波長末端A(nm)からEg=1240/Aで算出する。
<イオン化ポテンシャル(Ip)の測定>
ITO(インジウム・スズ酸化物)の蒸着された透明支持基板(28mm×26mm×0.7mm)を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、対象化合物を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着した後、真空槽を5×10-4Paまで減圧する。次に、蒸着用ボートを加熱して対象化合物を蒸発させ、対象化合物の単独膜(Neat膜)を形成する。
得られた単独膜をサンプルとし、光電子分光計(住友重機械工業株式会社 PYS-201)を用いて対象化合物のイオン化ポテンシャルを測定する。
<電子親和力(Ea)の算出>
前述の方法で測定したイオン化ポテンシャルと前述の方法で算出したエネルギーギャップとの差より、電子親和力を見積ることができる。
<最低励起一重項エネルギー準位E(S,Sh)、最低励起三重項エネルギー準位E(T,Sh)の測定>
ガラス基板上に形成した対象化合物の単独膜について、77Kで、吸収スペクトルの長波長側から2番めの吸収ピークを励起光に蛍光スペクトルを観測し、その蛍光スペクトルのピーク短波長側の肩より最低励起一重項エネルギー準位E(S,Sh)を求める。また、ガラス基板上に形成した対象化合物の単独膜に、77Kで、吸収スペクトルの長波長側から2番めの吸収ピークを励起光に燐光スペクトルを観測し、その燐光スペクトルのピーク短波長側の肩より最低励起三重項エネルギー準位E(T,Sh)を求める。
<有機EL素子の評価>
以上のように、本発明の化合物は、適切なエネルギーギャップ(Eg)、高い最低三重項励起エネルギー(ET)および小さいΔESTを特徴として有しているため、例えば発光層および電荷輸送層への適用が期待でき、特に発光層への適用が期待できる。
<評価項目および評価方法>
評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)などがある。これらの評価項目は、適切な発光輝度時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、電圧を印加することにより素子を発光させた。TOPCON社製分光放射輝度計SR-3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
次に、本発明の多環芳香族化合物を用いた有機EL素子の作製と評価について記載する。
<有機EL素子の構成>
本発明の多環芳香族化合物を用いて有機EL素子を製造した。
実施例1~46および比較例1~8の有機EL素子における各層の材料構成を下記表1に示す。
Figure 2023026319000166
Figure 2023026319000167
Figure 2023026319000168
表1、表2における、「HI」、「HAT-CN」、「HT-1」、「HT-2」、「BH」、「ET-1」、「ET-2」、「Liq」、「比較化合物(1)」、「比較化合物(2)」、「比較化合物(3)」、「比較化合物(4)」、「比較化合物(5)」、「比較化合物(6)」、「比較化合物(7)」および「比較化合物(8)」の化学構造を下記に示す。
Figure 2023026319000169
Figure 2023026319000170
(実施例1)
スパッタリングにより180nmの厚さに成膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI、HAT-CN、HT-1、HT-2、BH、化合物(1-1)、ET-1およびET-2をそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、Liq、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次に、HAT-CNを加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、次に、HT-1を加熱して膜厚45nmになるように蒸着し、次に、HT-2を加熱して膜厚10nmになるように蒸着して、4層からなる正孔層を形成した。次に、BHと化合物(1-1)を同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して発光層を形成した。BHと化合物(1-1)の質量比がおよそ97対3になるように蒸着速度を調節した。さらに、ET-1を加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、次に、ET-2とLiqを同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して、2層からなる電子層を形成した。ET-2とLiqの質量比がおよそ50対50になるように蒸着速度を調節した。各層の蒸着速度は0.01~1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。
(実施例2~46および比較例1~8)
化合物(1-1)の代わりに、表2に記載の化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2~46および比較例1~8の有機EL素子を得た。
<評価項目および評価方法>
評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)等がある。これらの評価項目は、例えば1000cd/m2発光時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、素子の輝度が1000cd/m2になる電圧を印加して素子を発光させる。TOPCON社製分光放射輝度計SR-3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定する。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とする。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
実施例1~46および比較例1~8の有機EL素子について、ITO電極を陽極、LiF/アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、1000cd/m2発光時の特性を測定した。
結果を表3に示す。
Figure 2023026319000171
Figure 2023026319000172
本発明の多環芳香族化合物は有機デバイス用材料、特に有機電界発光素子の発光層形成のための発光層用材料として有用である。本発明の多環芳香族化合物を発光層用ドーパントとして用いることで、低電圧、高効率発光の有機電界発光素子が得られる。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極

Claims (12)

  1. 下記式(1)で表される構造単位の1つまたは2つ以上からなる構造を有する多環芳香族化合物;
    Figure 2023026319000173
    式(1)中、
    A環、B環はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり;
    C環は式(C)で表される環であり、
    式(C)中、
    cは>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-R、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換シクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、
    いずれかの隣接する2つのZCはそれぞれY1またはX2のいずれかと直接結合している炭素であり、
    その他のZCはそれぞれ独立して、NまたはC-RCであり、RCはそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルであり、前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよく、
    隣接する2つのRCは互いに結合して、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成されているアリール環およびヘテロアリール環はそれぞれ無置換であるか、または少なくとも1つのRC2で置換されており、RC2はRCと同義であり、ただし、RC2は水素ではなく、かつ隣接する2つのRC2が互いに結合してアリール環またはヘテロアリール環を形成することはなく;
    1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si-R、またはGe-Rであり、前記Si-Rおよび前記Ge-RのRは置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり;
    1およびX2は、それぞれ独立して、>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-RのRは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>C(-R)2、および>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、また、前記>N-RのRおよび/または前記>C(-R)2のRは連結基または単結合によりA環および/もしくはB環、またはA環および/もしくはC環と結合していてもよく、
    ただし、X1またはX2の少なくとも1つは>N-Gであり、Gは、式(G)で表される基であり、
    式(G)中、
    gはそれぞれ独立して、NまたはC-Rgであり、Rgはそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルであり、前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよく、
    隣接する2つのRgは互いに結合して、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成されているアリール環およびヘテロアリール環はそれぞれ無置換であるか、または少なくとも1つのRg2で置換されており、Rg2はRgと同義であり、ただし、Rg2は水素ではなく、かつ隣接する2つのRg2が互いに結合してアリール環またはヘテロアリール環を形成することはなく、
    *はNとの結合位置を表し;
    前記構造における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置換されていていてもよく;
    前記構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
  2. 式(1)で表される構造単位が、式(2)で表される構造単位である、請求項1に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2023026319000174
    式(2)中、
    a環およびb環において、Zはそれぞれ独立して、NもしくはC-R11であるか、またはZ=Zはそれぞれ独立して>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-R、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換シクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、
    前記C-R11のR11はそれぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、または置換シリルであり、
    前記ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、前記ジアリールボリルの2つのアリールは単結合または連結基を介して互いに結合していてもよく、
    隣接する2つのR11は互いに結合して、a環またはb環とともにアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成されているアリール環およびヘテロアリール環はそれぞれ無置換であるか、または少なくとも1つのR11bで置換されており、R11bはR11と同義であり、ただし、R11bは水素ではなく、かつ隣接する2つのR11bが互いに結合してアリール環またはヘテロアリール環を形成することはなく、
    C環は式(C)で表される環であり;
    1は、B、P、P=O、P=S、Al、Ga、As、Si-R、またはGe-Rであり、前記Si-Rおよび前記Ge-RのRは置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり;
    1およびX2は、それぞれ独立して、>O、>N-R、>C(-R)2、>Si(-R)2、>S、または>Seであり、前記>N-RのRは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>C(-R)2、および>Si(-R)2のRはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>C(-R)2および前記>Si(-R)2の2つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、また、前記>N-RのRおよび/または前記>C(-R)2のRは連結基または単結合によりa環および/もしくはb環、またはa環および/もしくはC環と結合していてもよく、ただし、X1またはX2の少なくとも1つは、>N-Gであり、前記>N-GのGは、式(G)で表される基であり;
    前記構造における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置換されていてもよく;
    前記構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
  3. 式(2)で表される構造単位が式(2a-1)で表される構造単位である、請求項2に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2023026319000175
    式(2a-1)中、Y1、X1、X2、XCは、式(2)中の、Y1、X1、X2、XCとそれぞれ同義であり、R11b、RC2は、式(2)中のR11b、RC2とそれぞれ同義であり、
    n1は0~4の整数であり、n2は0~4の整数であり、n3は0~3の整数であり、
    前記構造中のアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、
    前記構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
  4. 下記式のいずれか1つで表される、請求項3に記載の多環芳香族化合物。
    Figure 2023026319000176
    Figure 2023026319000177
    Figure 2023026319000178
    Figure 2023026319000179
    式中、Meはメチル、tBuはt-ブチル、Dは重水素である。
  5. 式(2)で表される構造単位が式(2a-2)で表される構造単位である、請求項2に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2023026319000180
    式(2a-2)中、Y1、X1、X2、XCは、式(2)中の、Y1、X1、X2、XCとそれぞれ同義であり、R11b、RC2は、式(2)中のR11b、RC2とそれぞれ同義であり、
    3およびX4はそれぞれ独立して、単結合、>O、>N-R、>C(-R)2、または>Sであり、ただし、X3およびX4が同時に単結合であることはなく、
    n1は0~4の整数であり、n2は0~4の整数であり、n3は0~3の整数であり、n4は0~2の整数であり、
    前記構造中のアリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、
    前記構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。
  6. 下記式のいずれか1つで表される、請求項5に記載の多環芳香族化合物。
    Figure 2023026319000181
    式中、Meはメチル、tBuはt-ブチル、Dは重水素である。
  7. 下記式で表される、請求項2に記載の多環芳香族化合物。
    Figure 2023026319000182
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。
  9. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置された発光層とを含み、前記発光層が請求項1~7のいずれか1項に記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
  10. 前記発光層が、ホストと、ドーパントとしての前記多環芳香族化合物とを含む、請求項9に記載の有機電界発光素子。
  11. 前記ホストが、アントラセン化合物、フルオレン化合物、またはジベンゾクリセン化合物である、請求項10に記載の有機電界発光素子。
  12. 請求項9に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
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