JP2023026143A - 注液キャップおよび方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明の目的は、単純な構成でかつ合理的な注液キャップを実現することにある。【解決手段】 注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの先端部にフランジ部が設けられている、前記注液キャップ。【選択図】 なし
Description
本発明は、注液キャップおよび方法に関する。
近年、損傷した組織等の修復のために、種々の細胞を移植する試みが行われている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患により損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、ES細胞、心筋細胞等の利用が試みられている。このような試みの一環として、スキャフォールドを利用して形成した細胞構造物や、細胞をシート状に形成したシート状細胞培養物が開発されてきた。
これらの細胞培養物は、従来、細胞培養センター(CPC : Cell Processing Center)と呼ばれるクリーンルームにおいて専門の知識を有する作業者による手作業で製造されており、このような細胞培養物の製造費用および製造にかかる労力は大きく、その効率化が望まれている。そこで、これらの細胞の培養に関する作業を多関節型ロボットにより行う自動細胞培養装置が提案されている(特許文献1)。
上記のような自動培養において注液作業を迅速化するために、本発明者らは、注液容器に装着して用いるデバイスを提案した(特許文献2)。かかるデバイスは、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体に設けられた第1貫通孔に嵌入可能な注液チューブと、蓋体に設けられた第2貫通孔に嵌入可能な吸気チューブとを含み、吸気チューブにチェックバルブを設けることで、注液容器の外側からの空気は通すが、注液容器の内側からの液体は通さないように構成されている
本発明者らは、注液作業を迅速化するための手段を開発するにあたり、注液作業を繰り返す際に、注液量が不安定になる、液だれが発生するなどの問題に直面した。したがって、本発明の目的は、そのような問題を解決し、単純な構成でかつ合理的な注液キャップを実現することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進める中で、注液量が不安定になるのは、吸気チューブ内に液体が入り込む(目詰まり)ことや、チェックバルブの挙動が不安定になることなどが原因であることに着眼した。また、液だれが発生するのは、注液チューブ内に液体が入り込む(目詰まり)ことや、注液チューブの先端部に液体が付着することなどが原因であることに着眼した。
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、吸気チューブの流路内に段差部が設けられている、前記注液キャップ。
[2]吸気チューブの吸気孔の内径が、吸気チューブの内径より小さい、[1]に記載の注液キャップ。
[3]吸気チューブの吸気孔の内径が、好ましくは0.5mm~3.0mm、より好ましくは1.0mm~2.0mm、さらに好ましくは1.1mm~1.6mm、最も好ましくは1.2mm~1.4mmである、[1]または[2]に記載の注液キャップ。
[4]吸気チューブの内径が、好ましくは2.0mm~10.0mm、より好ましくは2.0mm~7.0mm、さらに好ましくは2.0mm~4.0mmである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[5]蓋体から延伸する吸気チューブの長さが、好ましくは5~100mm、より好ましくは10~50mm、さらに好ましくは10~20mmである、[1]~[4]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[1]注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、吸気チューブの流路内に段差部が設けられている、前記注液キャップ。
[2]吸気チューブの吸気孔の内径が、吸気チューブの内径より小さい、[1]に記載の注液キャップ。
[3]吸気チューブの吸気孔の内径が、好ましくは0.5mm~3.0mm、より好ましくは1.0mm~2.0mm、さらに好ましくは1.1mm~1.6mm、最も好ましくは1.2mm~1.4mmである、[1]または[2]に記載の注液キャップ。
[4]吸気チューブの内径が、好ましくは2.0mm~10.0mm、より好ましくは2.0mm~7.0mm、さらに好ましくは2.0mm~4.0mmである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[5]蓋体から延伸する吸気チューブの長さが、好ましくは5~100mm、より好ましくは10~50mm、さらに好ましくは10~20mmである、[1]~[4]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[6]吸気チューブを蓋体から下方に延伸する延長チューブをさらに含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[7]延長チューブの内径が、好ましくは2.0mm~10.0mm、より好ましくは2.0mm~7.0mm、さらに好ましくは2.0mm~4.0mmである、[1]~[6]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[8]延長チューブの長さが、好ましくは5~100mm、より好ましくは10~50mm、さらに好ましくは15~30mmである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[9]液体の注液を行うための方法であって、(a)液体を収容した注液容器を用意するステップ、(b)注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、吸気チューブの流路内に段差部が設けられている、注液キャップを注液容器に装着するステップ、(c)注液容器を下方へ傾斜させて、注液チューブを介して液体を注液するステップ、および(d)注液容器の下向への傾斜を解除して、注液を終了するステップを含む、前記方法。
[10]注液容器の傾斜が、注液容器を所定の軸周りに回転させることにより行われる、[9]に記載の方法。
[11]ステップ(c)およびステップ(d)を繰り返して、複数回の注液作業を連続的におこなうステップ(e)をさらに含む、[9]または[10]に記載の方法。
[12](f)注液時間から注液量を判定するステップをさらに含む、[9]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]注液キャップが、吸気チューブを蓋体から下方に延伸する延長チューブをさらに含む、[9]~[12]のいずれか一稿に記載の方法。
[14]注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの先端部にフランジ部が設けられている、前記注液キャップ。
[15]注液チューブの本体部の内径が、好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmである、[14]に記載の注液キャップ。
[16]吸気孔の内径と、注液孔の内径との比率が、好ましくは1.0:2.8~1.0:3.2、より好ましくは、1.0:2.9~1.0:3.1である、[14]または[15]に記載の注液キャップ。
[17]フランジ部の外径が、好ましくは8.0~12.0mm、より好ましくは9.0~10.0mmである、[14]~[16]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[18]注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの本体部の内径が、好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmである、前記注液キャップ。
[19]液体の注液を行うための方法であって、(a)液体を収容した注液容器を用意するステップ、(b)注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの先端部にフランジ部が設けられている、注液キャップを注液容器に装着するステップ、(c)注液容器を下方へ傾斜させて、注液チューブを介して液体を注液するステップ、および(d)注液容器の下向への傾斜を解除して、注液を終了するステップを含む、前記方法。
[20]液体の注液を行うための方法であって、(a)液体を収容した注液容器を用意するステップ、(b)注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの本体部の内径が好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmである、注液キャップを注液容器に装着するステップ、(c)注液容器を下方へ傾斜させて、注液チューブを介して液体を注液するステップ、および(d)注液容器の下向への傾斜を解除して、注液を終了するステップを含む、前記方法。
[7]延長チューブの内径が、好ましくは2.0mm~10.0mm、より好ましくは2.0mm~7.0mm、さらに好ましくは2.0mm~4.0mmである、[1]~[6]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[8]延長チューブの長さが、好ましくは5~100mm、より好ましくは10~50mm、さらに好ましくは15~30mmである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[9]液体の注液を行うための方法であって、(a)液体を収容した注液容器を用意するステップ、(b)注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、吸気チューブの流路内に段差部が設けられている、注液キャップを注液容器に装着するステップ、(c)注液容器を下方へ傾斜させて、注液チューブを介して液体を注液するステップ、および(d)注液容器の下向への傾斜を解除して、注液を終了するステップを含む、前記方法。
[10]注液容器の傾斜が、注液容器を所定の軸周りに回転させることにより行われる、[9]に記載の方法。
[11]ステップ(c)およびステップ(d)を繰り返して、複数回の注液作業を連続的におこなうステップ(e)をさらに含む、[9]または[10]に記載の方法。
[12](f)注液時間から注液量を判定するステップをさらに含む、[9]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]注液キャップが、吸気チューブを蓋体から下方に延伸する延長チューブをさらに含む、[9]~[12]のいずれか一稿に記載の方法。
[14]注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの先端部にフランジ部が設けられている、前記注液キャップ。
[15]注液チューブの本体部の内径が、好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmである、[14]に記載の注液キャップ。
[16]吸気孔の内径と、注液孔の内径との比率が、好ましくは1.0:2.8~1.0:3.2、より好ましくは、1.0:2.9~1.0:3.1である、[14]または[15]に記載の注液キャップ。
[17]フランジ部の外径が、好ましくは8.0~12.0mm、より好ましくは9.0~10.0mmである、[14]~[16]のいずれか一項に記載の注液キャップ。
[18]注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの本体部の内径が、好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmである、前記注液キャップ。
[19]液体の注液を行うための方法であって、(a)液体を収容した注液容器を用意するステップ、(b)注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの先端部にフランジ部が設けられている、注液キャップを注液容器に装着するステップ、(c)注液容器を下方へ傾斜させて、注液チューブを介して液体を注液するステップ、および(d)注液容器の下向への傾斜を解除して、注液を終了するステップを含む、前記方法。
[20]液体の注液を行うための方法であって、(a)液体を収容した注液容器を用意するステップ、(b)注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの本体部の内径が好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmである、注液キャップを注液容器に装着するステップ、(c)注液容器を下方へ傾斜させて、注液チューブを介して液体を注液するステップ、および(d)注液容器の下向への傾斜を解除して、注液を終了するステップを含む、前記方法。
本発明によれば、注液量が不安定になることを防止することができ、効率よく迅速で精度の高い連続的な注液作業が可能である。また、チェックバルブを使用しない単純な構造を有するため、安価に製造することができる。
本発明によれば、収容容器に対して正確に照準を合わせて注液作業を行うことができ、液だれの発生を最小限に抑えることができるため、クリーンルームなどにおける細胞培養物の製造に適している。さらに、注液速度を速くすることで吸気チューブの目詰まりをより確実に抑えることができる。
本発明によれば、注液チューブ内での液体の目詰まりや、先端部への液体の付着を最小限にし、液だれの発生を最小限に抑えることができるため、クリーンルームなどにおける細胞培養物の製造に適している。
本発明によれば、収容容器に対して正確に照準を合わせて注液作業を行うことができ、液だれの発生を最小限に抑えることができるため、クリーンルームなどにおける細胞培養物の製造に適している。さらに、注液速度を速くすることで吸気チューブの目詰まりをより確実に抑えることができる。
本発明によれば、注液チューブ内での液体の目詰まりや、先端部への液体の付着を最小限にし、液だれの発生を最小限に抑えることができるため、クリーンルームなどにおける細胞培養物の製造に適している。
本発明における液体を構成する成分は、例えば、水、生理食塩水、生理緩衝液(例えば、HBSS、PBS、EBSS、Hepes、重炭酸ナトリウム等)、培地(例えば、DMEM(DME)、MEM、F12、DMEM/F12、RPMI1640、MCDB、L15、SkBM、RITC80-7、IMDM等)、糖液(スクロース溶液、Ficoll-paque(登録商標)PLUS等)、海水、血清含有溶液、レノグラフィン(登録商標)溶液、メトリザミド溶液、メグルミン溶液、グリセリン、エチレングリコール、アンモニア、ベンゼン、トルエン、アセトン、エチルアルコール、ベンゾール、オイル、ミネラルオイル、動物脂、植物油、オリーブ油、コロイド溶液、流動パラフィン、テレピン油、アマニ油、ヒマシ油などが挙げられる。
本発明における収容容器は、とくに限定されないが、例えば、細胞培養容器、接着細胞用の細胞培養フラスコ、浮遊細胞用の細胞培養フラスコなどが挙げられる。細胞培養フラスコとは、略矩形の本体部分を有し、本体部分の平坦な面の少なくとも1つに細胞培養に必要となる表面処理が施されており、細胞培養面を下にして複数個重ねることで、多段培養が可能な容器をいう。
本発明における注液容器は、収容容器に注液する培地などを収容できる容器であれば、とくに限定されないが、例えば、シェイカーフラスコ、三角フラスコ、ローラーボトル、注液ボトル、ビーカー、培地瓶、角型培地瓶、滅菌瓶、滅菌ボトルなどが挙げられる。
本発明における注液容器は、収容容器に注液する培地などを収容できる容器であれば、とくに限定されないが、例えば、シェイカーフラスコ、三角フラスコ、ローラーボトル、注液ボトル、ビーカー、培地瓶、角型培地瓶、滅菌瓶、滅菌ボトルなどが挙げられる。
本発明におけるロボットは、とくに限定されないが、例えば、直動・回転装置、マニピュレータ、多関節ロボットなどが挙げられる。多関節ロボットとしては、2軸多関節ロボット、3軸多関節ロボット、4軸多関節ロボット、5軸多関節ロボット、6軸多関節ロボット、7軸多関節ロボットなどが挙げられる。
本発明において「所定の軸」とは、注液容器を回転する際の回転中心となる軸をいい、注液容器が一般的な縦長の容器の場合は、所定の軸は容器の長軸に垂直な軸として設定される。
本発明において「TCP」とは、ツールセンターポイント(Tool Center Point)をいい、ロボット先端部に位置するツール、グリッパ、作業対象物などの制御対象物の位置、姿勢を表現するための座標系をいう。TCPは、例えば、エンドエフェクタ(グリッパ、ツールなど)や作業対象物(フラスコ、ボトルなど)などの任意の位置、姿勢(動作、制御に都合の良い位置、姿勢)に設定でき、6軸多関節ロボットであれば、通常、ロボット第6軸の座標系に対して定義する。
本発明において「TCP」とは、ツールセンターポイント(Tool Center Point)をいい、ロボット先端部に位置するツール、グリッパ、作業対象物などの制御対象物の位置、姿勢を表現するための座標系をいう。TCPは、例えば、エンドエフェクタ(グリッパ、ツールなど)や作業対象物(フラスコ、ボトルなど)などの任意の位置、姿勢(動作、制御に都合の良い位置、姿勢)に設定でき、6軸多関節ロボットであれば、通常、ロボット第6軸の座標系に対して定義する。
本発明において、「所定の軸周りに回転させる」とは、対象物を所定の軸を中心に回転させることをいう。例えば、所定の軸を注液容器の開口部の一端に設定した場合は、かかる一端を中心にした回転動作だけで、注液容器内の液体の排出を行うことができる。また、例えば、所定の軸を注液容器の中心(重心)に設定した場合であっても、注液容器の中心軸まわりの回転動作と、円弧軌道の並進動作とを組み合わせて、上記のように注液容器の開口部の一端を中心に注液容器を回転させることもできる。
また、例えば、ロボットが、多関節ロボットである場合は、所定の軸と、TCPとを対応させることで、ロボット制御を効率化することができる。ロボットが、例えば6軸多関節ロボットである場合は、第6軸の回転軸と、TCPの回転軸とを平行にすることで、第6軸の回転動作と、第1~5軸の少しの動作で、上記のように注液容器を回転させることができ、さらに、第6軸の回転軸と、TCPの回転軸とを一致させた場合は、第6軸の回転動作だけで上記のように注液容器を回転させることができる。
本発明における細胞の例としては、限定されずに、接着細胞(付着性細胞)を含む。接着細胞は、例えば、接着性の体細胞(例えば、心筋細胞、筋芽細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞など)および幹細胞(例えば、間葉系幹細胞、心臓幹細胞などの組織幹細胞、胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞などの多能性幹細胞等)などを含む。体細胞は、幹細胞、特にiPS細胞から分化させたものであってもよい。シート状細胞培養物を形成し得る細胞の非限定例としては、例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞など)、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のものなど)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞など)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞など)、肝細胞(例えば、肝実質細胞など)、膵細胞(例えば、膵島細胞など)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞等が挙げられる。本発明においては、単層の細胞培養物を形成するもの、例えば、筋芽細胞または心筋細胞などが好ましく、とくに好ましくは骨格筋芽細胞またはiPS細胞由来の心筋細胞である。
以下、本発明の好適な実施態様について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
〔第1実施態様〕
本発明の一側面は、注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、吸気チューブの流路に段差部が設けられている、前記注液キャップに関する。
〔第1実施態様〕
本発明の一側面は、注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、吸気チューブの流路に段差部が設けられている、前記注液キャップに関する。
まず、本発明の第1実施態様について説明する。
図1は本発明の第1実施態様にかかる注液キャップ1の概略図、図2は、図1の注液キャップ1を使用した注液作業を説明する模式図、図3は、注液キャップ1の変形例の概略図を示す。本実施態様において、液体Lは、培地であり、注液容器5は、培地を収容する注液ボトルであり、収容容器6は、細胞培養フラスコであり、注液作業は、クリーンルーム内で行われるものとして説明する。
なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
図1は本発明の第1実施態様にかかる注液キャップ1の概略図、図2は、図1の注液キャップ1を使用した注液作業を説明する模式図、図3は、注液キャップ1の変形例の概略図を示す。本実施態様において、液体Lは、培地であり、注液容器5は、培地を収容する注液ボトルであり、収容容器6は、細胞培養フラスコであり、注液作業は、クリーンルーム内で行われるものとして説明する。
なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
図1および図2に示すように、本発明の第1実施態様に係る注液キャップ1は、液体L(培地)を収容した注液容器5の首部52に着脱自在に装着可能な蓋体2と、蓋体2の天板部20に設けられた第1貫通孔21と連通して上方に延伸する注液チューブ3と、天板部20に設けられた第2貫通孔22と連通して上方に延伸する吸気チューブ4とを含む。吸気チューブ4は、第2貫通孔22から上方に延伸する本体部43と、本体部43の先端部に設けられた吸気孔42とを含む。吸気孔42の内径は本体部43の内径より小さく、これにより吸気チューブ4の流路内に段差部41が形成されている。すなわち、段差部41とは、吸気チューブ4の内径が長軸方向において急峻に変化する部分をいう。
注液チューブ3の先端部は、注液容器5を傾ける側がより長くなるように縦軸に対して斜めにカットされており、液だれの発生を最小限に抑えるように構成されている。また、先端を斜めにカットすることで、注液後に先端に膜が形成されるなどの問題を最小限に抑えることができる。天板部20は、注液容器5の開口部を覆うことができる円盤状であり、その周縁部から垂下する筒状スカート壁23を有する。筒状スカート壁23の内周面には内ネジが設けられている。注液容器5は、液体Lを収容する有底筒状の本体部51と、本体部51の外径より小さな外径を有する首部52とを含み、首部52の先端部には開口部が設けられている。首部52の外周面に設けられた外ネジ(図示せず)は、筒状スカート壁23の内ネジと螺合させることができ、これにより、注液キャップ1を注液容器5に螺着させて密閉することができる。
注液チューブ3は、蓋体2からの長さを、特に限定されないが、好ましくは5~100mm、より好ましくは10~80mm、さらに好ましくは20~50mmとすることができる。また、内径は、好ましくは1~10mm、より好ましくは3~5mmとすることができる。注液チューブ3の単位時間当たりの流量は、1.0ml/s~20ml/s、好ましくは2.0ml/s~15ml/s、さらに好ましくは2.5ml/s~10.3ml/sとすることができる。注液チューブ3の内径と流量との組み合わせは、内径が3mm~5mmの範囲のとき、流量が2.0ml/s~10.0ml/sの範囲となるように設定することができる。さらに、内径の断面積に流量が比例すると仮定したら、内径が6mm~10mmの範囲のとき、流量が約15ml/s~40ml/sの範囲となるように設定することができる。注液チューブ3の長さ、内径、流量は、単位時間当たりの流量が一定になる限り、自由に選択および組み合わせることができる。
吸気チューブ4は、蓋体2から延伸する長さを、特に限定されないが、好ましくは5~100mm、より好ましくは10~50mm、さらに好ましくは10~20mmとすることができる。吸気チューブ4(本体部43)の内径は、好ましくは2.0mm~10.0mm、より好ましくは2.0mm~7.0mm、さらに好ましくは2.0mm~4.0mmとすることができる。吸気孔42の内径は、好ましくは0.5mm~3.0mm、より好ましくは1.0~2.0mm、さらに好ましくは1.1mm~1.6mm、最も好ましくは1.2mm~1.4mmとすることができる。蓋体2、注液チューブ3および吸気チューブ4は、射出成型などにより一体成型することができる。一体成型の場合、抜き勾配を形成するために、本体部43および吸気孔42の内径は緩やかなテーパー状にすることができる。
図2Aに示すように、注液キャップ1を使用する際は、液体Lを収容した注液容器5に注液キャップ1を取り付けて下方に傾斜させ、収容容器6に対して注液を行う。注液容器5を下方に傾斜させるとは、通常は作業台に対して垂直に配置されている注液容器5を傾斜させて水平にした状態から、さらに傾斜させて(すなわち、回転させて)、注液キャップ1が注液容器5より下側になるように配置することを意味する。このように下方に傾斜させると、注液チューブ3および吸気チューブ4の基端が共に液体Lに覆われることになるが、図2Aに示されるように、注液チューブ3が吸気チューブ4よりも下側になるように傾けることで、注液チューブ3からの液体Lの排出が先に促され、かかる液体Lの排出のために吸気チューブ4からの吸気が促される。これにより、注液作業中に吸気チューブ4では常に吸気が起こり、吸気孔42から液体Lが漏出するなどの問題を最小限に抑えることができる。
液体Lを注液する収容容器6の配置は、様々な形を取ることができる。例えば、収容容器6が細胞培養フラスコである場合、図2Aに示すように、主面61、62が、回転軸に平行になるように配置することが好ましい。また、収容容器6を傾斜した土台Sなどに設置して、注液チューブ3から排出された液体Lが収容容器6の傾斜面に沿って緩やかに流れ込むようにすることが好ましい。これにより、細胞の培養を阻害する恐れのある培地の泡立ちが最小限に抑えられる。また、図2Aに示すように、主面61、62の内、主面61(培養面)が主面62の上側になるように配置することで、液体Lが直接的に主面61(培養面)に当たり、細胞の培養を阻害するような問題を最小限に抑えることができる。
また、図2Bに示すように、吸気チューブ4(本体部43)の内側に一定の容積を有する空気A溜まり(空間)が形成され、かかる空気A溜まりの浮力が液体Lの圧力を押し返す。さらに、吸気チューブ4の先端部が小さな吸気孔42を有する蓋で覆われた形になっているため、空気Aの逃げ場がなくなり、液体Lの圧力に抗し続けることができる。そして、注液が行われている間は、吸気孔42から常に外気が入り込み、空気Aが押し出されて連続的な泡となるため、液体Lの圧力に抗し続けることができる。このように、吸気チューブ4の流路内に段差部41を設け、内径の大きな空気溜まり空間(本体部43の内側)と、内径の小さな吸気量の制限を行う部分(吸気孔42)とを構成することで、単位時間当たりの吸気量を一定に維持しながら、液体Lが吸気チューブ4に入り込む可能性を最小限に抑えることができる。
注液キャップ1の変形例として、図3に示すように、吸気チューブ4の吸気孔42の部分を上方に延伸することで、吸気孔42と蓋体2との距離をさらに長くすることもできる。これにより、仮に液体Lが吸気チューブ4に入り込んだ場合でも、液体Lが吸気孔42に到達するまで時間がかかり、この間にさらなる注液動作を行うことで吸気チューブ4に外気を取り込み、入り込んだ液体Lを押し戻すことができる。吸気孔42(上側)の内径は、吸気孔42(下側)の内径と同じかまたは小さく構成することができる。
注液チューブ3から液体Lが排出されることで注液容器5内に流入する空気の量は、細径の吸気孔42により制限されて一定となる。また、空気Aは注液容器5内で連続的な気泡となり、単位時間当たりの吸気量が一定になると、単位時間当たりの注液量も一定になる。この場合、注液作業における注液時間と注液量とが比例するため、注液量と注液に要する時間との関係を事前に測定しておき、測定結果に基づいて注液時間から注液量を判定することで、精度の高い注液作業を行うこともできる。注液容器5内に連続的な気泡をより長時間発生させ続けるために、吸気チューブ4は蓋体2の下方側、すなわち、注液容器5内には延伸しないように構成することもできる。
収容容器6内の注液量が所定量に達すると、注液容器5の傾斜を解除(例えば、注液容器5を水平状態にする、そこからさらに上方に傾斜させる、そこからさらに垂直配置に戻すなど(すなわち、逆回転))し、液体Lを蓋体2の反対側に移動させることで、液体Lの注液を終了する。そして、注液容器5の下方への傾斜およびその解除を繰り返すことで、複数回の注液作業を間断なく連続的におこなうことができる。吸気チューブ4の基端側(第2貫通孔22)の内径が小さい場合、蓋体2から液体Lを移動させる際に、空気Aの浮力が液体Lの圧力に抗することができず、吸気チューブ4の基端側(第2貫通孔22)を覆っていた液体Lが膜を形成し、目詰まりを起こすことがあったが、本発明の吸気チューブ4(本体部43)は、ある程度の大きな内径(すなわち、大きな開口面積)を有するため、膜が形成され難く、目詰まりの発生を最小限に抑えることができる。
注液容器5の傾斜は、ロボットにより注液容器5を所定の軸周りに回転させることにより行うこともできる。例えば、かかる所定の軸を注液容器5に取り付けた注液チューブ3の先端に設定し、回転装置などを使用して軸周りに回転(傾斜)させるだけで、連続的な注液作業を自動で行うこともできる。そして、収容容器6への所望の注液量とその注液に要する注液時間とを予め測定しておき、測定された注液時間をロボットのメモリに記憶させ、プログラムにより注液容器5の傾斜動作およびその解除動作を繰り返させるだけで、精度の高い注液作業を自動化することもできる。また、所定の軸と、TCPとを対応させ、6軸多関節ロボットの第6軸の回転軸と、TCPの回転軸とを一致させ、第6軸の回転動作だけで上記のような注液容器5の回転(傾斜)を行うこともできる。
従来、例えば、75mlの培地を培養フラスコに注液する場合、注液ボトルにピペットを挿入して培地を吸引し、75mlの分量を目視で確認した上で、ピペットを移動して培養フラスコに注液するという煩雑な作業を繰り返す必要があった。一方で、本発明を用いることで、例えば、480ml程度の培地を収容した注液容器5に注液キャップ1を取り付け、事前に測定した75mlの注液に要する時間分だけ注液動作を行い、これを6つの別々の収容容器6を交換しながら連続的(6回分)に行うことができる。これにより、従来の煩雑な作業を、注液容器5の傾斜動作を繰り返すという単純な作業に置き換えることができ、ピペットの操作、移動、分量の目視確認などが不要になり、注液作業に係る時間を大幅に短縮することができる。
また、従来、ピペットを使用する場合、培地の吸引と排出が1つの流路を介して行われていたため、誤操作などにより液だれが発生していた。一方で、本発明を用いることで、培地の吸引作業が不要になり、培地の排出と、空気の吸気が別々の流路で行われるため、液だれの発生を最小限に抑えることができる。さらに、本発明を用いることで、培地の注液がチューブを介して行われるため、培地の注液方向や注液範囲が、チューブの突出方向や口径によって制限される。これにより、注液の照準の精度が向上し、細胞培養フラスコの首部63のような、小さな開口部を有する収容容器6に対して正確に照準を合わせて注液作業を行うことができ、液だれの発生を最小限に抑えることができる。
以上、本発明によれば、注液量が不安定になることを防止することができ、効率よく迅速で精度の高い連続的な注液作業が可能である。また、チェックバルブを使用しない単純な構造を有するため、安価に製造することができる。
また、本発明によれば、収容容器に対して正確に照準を合わせて注液作業を行うことができ、液だれの発生を最小限に抑えることができるため、クリーンルームなどにおける細胞培養物の製造に適している。
また、本発明によれば、収容容器に対して正確に照準を合わせて注液作業を行うことができ、液だれの発生を最小限に抑えることができるため、クリーンルームなどにおける細胞培養物の製造に適している。
〔第2実施態様〕
次に、本発明の第2実施態様について説明する。
図4は、本発明の第2実施態様にかかる注液キャップ1’の概略図、図5は、図4の注液キャップ1’を使用した注液作業を説明する模式図、図6は、図5の注液原理を説明する模式図を示す。
次に、本発明の第2実施態様について説明する。
図4は、本発明の第2実施態様にかかる注液キャップ1’の概略図、図5は、図4の注液キャップ1’を使用した注液作業を説明する模式図、図6は、図5の注液原理を説明する模式図を示す。
図4に示すように、本発明の第2実施態様にかかる注液キャップ1’は、蓋体2と、蓋体2の天板部20に設けられた第1貫通孔21と連通して上方に延伸する注液チューブ3と、天板部20に設けられた第2貫通孔22と連通して上方に延伸する吸気チューブ4とを含む。吸気チューブ4は、第2貫通孔22から上方に延伸する本体部43と、本体部43の先端部に設けられた吸気孔42とを含む。吸気孔42の内径は本体部43の内径より小さく、これにより吸気チューブ4の流路内に段差部41が形成されている。本実施態様において、注液キャップ1’は、第2貫通孔22と連通して下方に延伸する延長チューブ44をさらに含む(図4B)。すなわち、吸気チューブ4は、蓋体から下方に延長チューブ44を介して延伸している。
延長チューブ44は、蓋体2から延伸する長さを、特に限定されないが、好ましくは5~100mm、より好ましくは10~50mm、さらに好ましくは15~30mmとすることができる。延長チューブ44の内径は、好ましくは2.0mm~10.0mm、より好ましくは2.0mm~7.0mm、さらに好ましくは2.0mm~4.0mmとすることができる。延長チューブ44は、射出成型などにより本体部43と一体成型することができる。また、蓋体2の内面に第2貫通孔22を取り囲むように環状の溝を設け、かかる環状の溝に延長チューブ44を差し込むことで、吸気チューブ4を下方に延伸させてもよい。
図5Aは、第1実施態様にかかる注液キャップ1を、図5Bは、第2実施態様にかかる注液キャップ1’をそれぞれ液体Lを収容した注液容器5に取り付けて、同じ角度で傾斜(回転)させた場合を示す。図5Aに示されるように、注液チューブ3が吸気チューブ4よりも下側になるように傾けることで、注液チューブ3からの液体Lの排出が先に促され、かかる液体Lの排出のために吸気チューブ4からの吸気が促される。これにより、注液作業中に吸気チューブ4では常に吸気が起こり、吸気孔42から液体Lが漏出するなどの問題を最小限に抑えることができる。
すなわち、図5Aにおいては、注液容器5内の液体Lは、先ず注液チューブ3の基端部(第1貫通孔21)に到達し、さらに傾斜させると、液面Lは、吸気チューブ4の基端部(第2貫通孔22)に到達する。一方で、図5Bに示されるように、吸気チューブ4が下方に延伸(延長)されている場合、同じ角度で傾斜させると、液体Lは吸気チューブ4の基端部(延長チューブ44の基端部)には到達しない。すなわち、吸気チューブ4を下方(注液容器5方向)に延伸させることで、液体Lが吸気チューブ4に到達する時間を遅らせることができる。これにより、液体Lの注液チューブ3からの排出速度(吸気チューブ4からの吸気速度)がある程度速くなった段階で、液体Lが吸気チューブ4に到達するため、吸気チューブ4の目詰まりをより確実に抑えることができる。
図6は、図5の注液原理を説明する模式図を示す。ベルヌーイの定理を適用して、注液チューブ3からの排出速度(流速)vは、チューブ3の先端部と吸気チューブ4の基端部との高さの差h(すなわち、流線)を用いて計算することができる。第1実施態様にかかる注液キャップ1を使用した場合の流速v1(図5A)、第2実施態様にかかる注液キャップ1’を使用した場合の流速v2(図5B)は、次式で与えられる。
ここで、図5Aおよび図5Bから明らかなように、h’<h’’であるから、v1<v2となる。すなわち、注液キャップ1’を使用した場合は、流速が速くなるため、吸気チューブ4の目詰まりをより確実に抑えることができる。一方で、注液キャップ1を使用して流速がより遅くなる場合でも、一定量の液体Lをゆっくりと注液することができるため、小容量の培養フラスコなどを使用する場合に、液体Lを入れ過ぎることがなく有利である。注液において液体Lの液面が吸気チューブ4に到達するまで(連続的な気泡が発生し続けるまで)、流速は一定であるため、延長チューブ44の長さは、例えば、注液容器5の首部52の長さより短く設定することで、一定の流速をより長い時間保つことができる。
以上、本発明によれば、注液量が不安定になることを防止することができ、効率よく迅速で精度の高い連続的な注液作業が可能である。また、チェックバルブを使用しない単純な構造を有するため、安価に製造することができる。
また、本発明によれば、収容容器に対して正確に照準を合わせて注液作業を行うことができ、液だれの発生を最小限に抑えることができるため、クリーンルームなどにおける細胞培養物の製造に適している。さらに、注液速度を速くすることで吸気チューブの目詰まりをより確実に抑えることができる。
また、本発明によれば、収容容器に対して正確に照準を合わせて注液作業を行うことができ、液だれの発生を最小限に抑えることができるため、クリーンルームなどにおける細胞培養物の製造に適している。さらに、注液速度を速くすることで吸気チューブの目詰まりをより確実に抑えることができる。
本発明に係る注液キャップについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
〔第3実施態様〕
次に、本発明の第3実施態様について説明する。
図7は、本発明の第3実施態様にかかる注液キャップ1’’の概略図を示す。図7に示すように、本発明の第3実施態様にかかる注液キャップ1’’において、注液チューブ3は、その基端部である第1貫通孔21から上方に延伸する本体部33と、本体部33の先端部に設けられた注液孔32と、注液孔32の半径方向に延伸するフランジ部31とを含む。
次に、本発明の第3実施態様について説明する。
図7は、本発明の第3実施態様にかかる注液キャップ1’’の概略図を示す。図7に示すように、本発明の第3実施態様にかかる注液キャップ1’’において、注液チューブ3は、その基端部である第1貫通孔21から上方に延伸する本体部33と、本体部33の先端部に設けられた注液孔32と、注液孔32の半径方向に延伸するフランジ部31とを含む。
注液チューブ3の本体部33の内径は、好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmとすることができる。すなわち、注液作業を繰り返すと、本体部33内に液溜まりが発生し、注液容器5の内圧が温度変化などにより高まると、液溜まりが注液孔32に向けて上昇して液だれが発生する場合がある。したがって、本体部33の内径をより太径にすることにより、本体部33内に液溜まりが発生した場合であっても、かかる液体が太径の本体部33内で拡がって薄い膜状になり、上昇中に破裂するなどしてその形状維持が難しくなくなるため、目詰まりや液だれを防止することができる。
吸気孔42の内径と、注液孔32の内径との比率は、好ましくは1.0:2.8~1.0:3.2、より好ましくは、1.0:2.9~1.0:3.1とすることができる。すなわち、吸気孔42の内径に対して、注液孔32の内径が大き過ぎると、注液孔32において液体の排出と気体の吸気が同時に発生してしまうため、吸気孔42からの吸気および注液孔32からの注液が独立して起こるように、吸気孔42の内径と、注液孔32の内径との比率を設定しておくことが好ましい。
注液孔32の内径は、好ましくは3.5~5.0mm、より好ましくは4.0~4.4mmとすることができる。フランジ部31の外径は、好ましくは8.0~12.0mm、より好ましくは9.0~10.0mm、フランジ部31の厚みは、好ましくは0.5~2.0mm、より好ましくは0.8~1.0mmとすることができる。すなわち、フランジ部31の外径や厚みが小さ過ぎると、液体がフランジ部31を簡単に乗り越え、フランジ部31の側面に付着して液だれが発生することを防ぐため、フランジ部31の外径や厚みを設定しておくことが好ましい。また、図7に示されるように、本体部33に対してフランジ部31が十分に突出するように、本体部33とフランジ部31との間を縮径させることが好ましい。
以上、本発明によれば、注液チューブ内での液体の目詰まりや、先端部への液体の付着を最小限にし、液だれの発生を最小限に抑えることができるため、クリーンルームなどにおける細胞培養物の製造に適している。
実施例1
注液キャップ1を注液容器5に取り付けて、注液作業を実施した。吸気チューブ4(本体部43)の内径を3.0mmに設定し、注液キャップ1の吸気孔42の内径を変え(0.8mm~1.7mm)、液体Lとして培地を使用した場合、液体Lとして水を使用した場合において注液作業を行い、吸気チューブ4の吸気孔42からの漏出、すなわち、吸気チューブ4の目詰まりが発生しているかどうかを確認した。表1に示されるように、培地を使用した場合は、吸気孔42の内径が1.2mm~1.4mmの時に、漏出は発生しなかった。また、水を使用した場合は、吸気孔42の内径が1.1mm~1.6mmの時に、漏出は発生しなかった。
注液キャップ1を注液容器5に取り付けて、注液作業を実施した。吸気チューブ4(本体部43)の内径を3.0mmに設定し、注液キャップ1の吸気孔42の内径を変え(0.8mm~1.7mm)、液体Lとして培地を使用した場合、液体Lとして水を使用した場合において注液作業を行い、吸気チューブ4の吸気孔42からの漏出、すなわち、吸気チューブ4の目詰まりが発生しているかどうかを確認した。表1に示されるように、培地を使用した場合は、吸気孔42の内径が1.2mm~1.4mmの時に、漏出は発生しなかった。また、水を使用した場合は、吸気孔42の内径が1.1mm~1.6mmの時に、漏出は発生しなかった。
実施例2
注液キャップ1’’を注液容器5に取り付けて、注液作業を実施した。注液チューブ3は、本体部33の内径を9.0mm、注液孔32の内径を4.2mmとし、注液孔32と吸気孔42の内径比を3:1に設定した。またフランジ部31は、外径を9.0mm、厚みを1.0mmに設定し、1000mLの培地が入ったボトルから75mLの注液を13回行った(75mL×13回=975mL)。試験中に液だれが発生した時点で、NGとした。液だれ発生、あるいは13回の注液完了後は、注液キャップを水洗いして、再び試験実施し、これを2回行った。表2に示されるように、フランジ無しの場合は、1回目、2回目とも液だれが発生したが、フランジ有りの場合は、1回目、2回目とも液だれは発生しなかった。
注液キャップ1’’を注液容器5に取り付けて、注液作業を実施した。注液チューブ3は、本体部33の内径を9.0mm、注液孔32の内径を4.2mmとし、注液孔32と吸気孔42の内径比を3:1に設定した。またフランジ部31は、外径を9.0mm、厚みを1.0mmに設定し、1000mLの培地が入ったボトルから75mLの注液を13回行った(75mL×13回=975mL)。試験中に液だれが発生した時点で、NGとした。液だれ発生、あるいは13回の注液完了後は、注液キャップを水洗いして、再び試験実施し、これを2回行った。表2に示されるように、フランジ無しの場合は、1回目、2回目とも液だれが発生したが、フランジ有りの場合は、1回目、2回目とも液だれは発生しなかった。
1 注液キャップ
2 蓋体
21 第1貫通孔
22 第2貫通孔
23 筒状スカート壁
3 注液チューブ
31 フランジ部
32 注液孔
33 本体部
4 吸気チューブ
41 段差部
42 吸気孔
43 本体部
44 延長チューブ
5 注液容器
51 本体部
52 首部
6 収容容器
61 主面(培養面)
62 主面
63 首部
L 液体
A 空気
S 土台
2 蓋体
21 第1貫通孔
22 第2貫通孔
23 筒状スカート壁
3 注液チューブ
31 フランジ部
32 注液孔
33 本体部
4 吸気チューブ
41 段差部
42 吸気孔
43 本体部
44 延長チューブ
5 注液容器
51 本体部
52 首部
6 収容容器
61 主面(培養面)
62 主面
63 首部
L 液体
A 空気
S 土台
Claims (7)
- 注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの先端部にフランジ部が設けられている、前記注液キャップ。
- 注液チューブの本体部の内径が、好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmである、請求項1に記載の注液キャップ。
- 吸気孔の内径と、注液孔の内径との比率が、好ましくは1.0:2.8~1.0:3.2、より好ましくは、1.0:2.9~1.0:3.1である、請求項1または2に記載の注液キャップ。
- フランジ部の外径が、好ましくは8.0~12.0mm、より好ましくは9.0~10.0mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の注液キャップ。
- 注液容器に装着して用いる注液キャップであって、注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの本体部の内径が、好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmである、前記注液キャップ。
- 液体の注液を行うための方法であって、(a)液体を収容した注液容器を用意するステップ、(b)注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの先端部にフランジ部が設けられている、注液キャップを注液容器に装着するステップ、(c)注液容器を下方へ傾斜させて、注液チューブを介して液体を注液するステップ、および(d)注液容器の下向への傾斜を解除して、注液を終了するステップを含む、前記方法。
- 液体の注液を行うための方法であって、(a)液体を収容した注液容器を用意するステップ、(b)注液容器に着脱自在に装着可能な蓋体と、蓋体から上方に延伸する注液チューブおよび吸気チューブとを含み、注液チューブの本体部の内径が好ましくは6.0~12.0mm、より好ましくは8.0~10.0mmである、注液キャップを注液容器に装着するステップ、(c)注液容器を下方へ傾斜させて、注液チューブを介して液体を注液するステップ、および(d)注液容器の下向への傾斜を解除して、注液を終了するステップを含む、前記方法。
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