JP2023025502A - 電波吸収体、および電波吸収体の製造方法 - Google Patents

電波吸収体、および電波吸収体の製造方法 Download PDF

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Masayuki Toyoda
真男 藤田
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Abstract

【課題】電波干渉型吸収体において、抵抗皮膜の表面に抵抗被膜を保護する保護層を形成した場合でも、吸収電波を良好に吸収する電波吸収体及び製造方法を実現する。【解決手段】抵抗皮膜1と誘電体層2と電波遮蔽層3とが順次積層され、抵抗皮膜上に、誘電率が2以上20以下、厚さが10μm以上200μm以下の保護層4を備えたミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波干渉型吸収体であって、電波吸収体の抵抗値補正率の値と保護層の厚みの値を示すグラフの座標と、抵抗被膜の表面抵抗値が基準値で保護層の厚みが0(μm)の座標である基準点とを結ぶ直線の傾きを直線近似で求め、その直線の傾きの値と吸収電波の周波数(GHz)の値とを示す点が、直線の傾きを縦軸、吸収電波の周波数を横軸とするグラフにおいて、y=-8E-4x+0.02(式1)の直線とy=-1E-3x-0.04(式2)の直線間に位置する。【選択図】図1

Description

本開示は、不所望な電波を吸収する電波吸収体に関し、特に、いわゆる電波干渉型の電波吸収体であり、電波が入射する表面に抵抗皮膜を保護する保護層を備えた電波吸収体とその製造方法に関する。
電気回路などから外部へと放出される漏洩電波や、不所望に反射した電磁波の影響を回避するために、電波を吸収する電波吸収体が用いられている。
近年は、携帯電話などの移動体通信や無線LAN、料金自動収受システム(ETC)などで、数ギガヘルツ(GHz)の周波数帯域を持つセンチメートル波、さらには、30ギガヘルツから300ギガヘルツの周波数を有するミリ波帯、ミリ波帯域を超えた高い周波数帯域の電波としてテラヘルツ(THz)帯域の周波数を有する電波を利用する技術の研究も進んでいる。
このような高い周波数の電波を利用する技術トレンドに対応して、不要な電波を吸収する電波吸収体に対しても、ミリ波帯域からそれ以上の高い周波数帯域の電波を吸収可能とするものへの要望がより強くなることが考えられる。
不要な電波の反射を抑えて吸収する電波吸収体としては、誘電体層の電波入射側表面に抵抗皮膜が設けられ、反対側の裏面には電波を反射する電波遮蔽層が設けられて、電波遮蔽層で反射して外部に放射される電波の位相を抵抗皮膜表面で反射する電波の位相から1/2波長分ずらすことで、電波吸収体から反射する電波を打ち消しあって吸収するいわゆる電波干渉型(λ/4型、反射型とも言う)のものが知られている。電波干渉型の電波吸収体は、磁性体粒子によって磁気的に電波を吸収するタイプの電波吸収体と比べて軽量であり、容易に製造することができるため低コスト化が可能という利点を有している。
発明者らは、薄型に形成された電波干渉型の電波吸収体である電波吸収シートとして、誘電体層の表面に形成される抵抗皮膜に導電性有機高分子膜を採用することで、所望する周波数帯域の電波を良好に吸収することができるとともに高い可撓性を備えた、取り扱いの容易な電波吸収シートを提案している(特許文献1参照)。
国際公開番号WO2018/088492号公報
一般に、電波吸収体や電波吸収シートでは、その使用環境や目的に応じて当該電波吸収体や電波吸収シートに吸収させる電波(以下、「吸収電波」と称する)の周波数が設定される。上述の電波干渉型の電波吸収シートの場合、誘電体層の厚さを上記吸収電波の周波数に基づいて算出された所定の厚さとすることによって、電波吸収シートによる電波吸収特性のピークを吸収電波の周波数に一致させることができる。
また、電波干渉型の電波吸収シートでは、シート表面での反射波と電波遮蔽層の表面での反射波との打ち消し合いによって電波を吸収するものであるため、特に空気中を伝搬してきた電波が電波吸収シートの表面で乱反射されることなく電波吸収シート内に入射することが重要となる。このため、電波吸収シートの電波入射面に配置される抵抗皮膜では、その表面抵抗値を空気中(より正確には真空中)のインピーダンスである377Ω/sqとするインピーダンス整合が行われている。
一方で、上記従来の電波吸収シートのように抵抗皮膜を導電性被膜で構成している場合は、抵抗皮膜の表面が傷付いてしまうと抵抗被膜の表面抵抗値が変化してしまう。このことを防止するために、抵抗皮膜の表面を保護する保護層を設けることが有効となる。
ところが、発明者らの検討の結果、保護層を設けた場合には、抵抗皮膜の表面抵抗値を377Ω/sq以外の値とした場合に、電波吸収シートでの電波吸収能力がより高くなることが確認できた。
本開示は、上記従来の電波吸収シートの課題を解決し、いわゆる電波干渉型の電波吸収体において、抵抗皮膜の表面に抵抗被膜を保護する保護層を形成した場合でも、吸収電波を良好に吸収することができる電波吸収体、およびこの電波吸収体の製造方法を実現することを目的とする。
上記課題を解決するため本願で開示する電波吸収体は、抵抗皮膜と誘電体層と電波遮蔽層とが順次積層されて形成され、前記電波吸収体に吸収させる吸収電波がミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波であり、前記抵抗皮膜上に、誘電率が2以上20以下、厚さが10μm以上200μm以下の保護層をさらに備えた電波干渉型の電波吸収体であって、前記抵抗被膜の表面抵抗値の基準値に対する補正後の抵抗値の割合である抵抗値補正率(%)を縦軸、前記保護層の厚さ(μm)を横軸とするグラフ上において、当該電波吸収体の前記抵抗値補正率の値と前記保護層の厚みの値とを示す座標と、前記抵抗被膜の表面抵抗値が前記基準値で前記保護層の厚みが0(μm)の座標である基準点とを結ぶ直線の傾きを直線近似で求め、前記求めた直線の傾きの値と前記吸収電波の周波数(GHz)の値とを示す点が、前記直線の傾きを縦軸、前記吸収電波の周波数を横軸とするグラフにおいて、下記に示す式1の直線と式2の直線との間の領域に位置することを特徴とする
式1 y=-8×10-4x+0.02
式2 y=-1×10-3x-0.04。
また、本願で開示する電波吸収体の製造方法は、抵抗皮膜と誘電体層と電波遮蔽層とが順次積層されて形成され、前記電波吸収体に吸収させる吸収電波がミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波であり、前記抵抗皮膜上に、誘電率が2以上20以下、厚さが10μm以上200μm以下の保護層をさらに備えた電波干渉型の電波吸収体の製造方法であって、前記抵抗被膜の表面抵抗値の基準値に対する補正後の抵抗値の割合である抵抗値補正率(%)を縦軸、前記保護層の厚さ(μm)を横軸とするグラフ上において、当該電波吸収体の前記抵抗値補正率の値と前記保護層の厚みの値とを示す座標と、前記抵抗被膜の表面抵抗値が前記基準値で前記保護層の厚みが0(μm)の座標である基準点とを結ぶ直線の傾きを直線近似で求め、前記求めた直線の傾きの値と前記吸収電波の周波数(GHz)の値とを示す点が、前記直線の傾きを縦軸、前記吸収電波の周波数を横軸とするグラフにおいて、下記に示す式1の直線と式2の直線との間の領域に位置するように設定することを特徴とする
式1 y=-8×10-4x+0.02
式2 y=-1×10-3x-0.04。
本願で開示する電波吸収シートは、抵抗皮膜の表面に保護層を備え、保護層の膜厚に応じて抵抗被膜の表面抵抗値を抵抗値補正率に応じた値とする。この時、保護層の膜厚と抵抗値補正率との関係を示す一次関数における傾きと、電波吸収体で吸収する吸収電波の周波数とを示す点が、傾きと吸収電波の周波数との関係を示すグラフ上の2つの直線の間の領域に位置することで、良好なインピーダンス整合を実現して、電波吸収体における電波吸収特性を向上させることができる。
また、本願で開示する電波吸収体の製造方法は、保護層の膜厚と抵抗値補正率との関係を示す一次関数における傾きと、電波吸収体で吸収する吸収電波の周波数とを示す点が、傾きと吸収電波の周波数との関係を示すグラフ上の2つの直線の間の領域に位置するようにする。このため、抵抗被膜を保護する保護層を備えると同時に、所望する吸収電波を良好に吸収する電波吸収体を製造することができる。
本実施形態にかかる電波吸収シートの構成を説明する断面図である。 保護層の厚さに対応して、抵抗被膜の良好な表面抵抗値を求めるシミュレーションの原理を説明する図である。 周波数が28.5GHzの吸収電波に対する、保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す図である。 周波数が110GHzの吸収電波に対する、保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す図である。 周波数が200GHzの吸収電波に対する、保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す図である。 周波数が414GHzの吸収電波に対する、保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す図である。 抵抗値補正率と保護層の厚みとの関係を示すグラフにおける、対象となる電波吸収体の抵抗値補正率と保護層の厚みとを示す座標と基準点とを結んだ線の傾きと、電波吸収体での吸収電波の周波数との関係を示す図である。
本願で開示する電波吸収体は、抵抗皮膜と誘電体層と電波遮蔽層とが順次積層されて形成され、前記電波吸収体に吸収させる吸収電波がミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波であり、前記抵抗皮膜上に、誘電率が2以上20以下、厚さが10μm以上200μm以下の保護層をさらに備えた電波干渉型の電波吸収体であって、前記抵抗被膜の表面抵抗値の基準値からの減少度合い(%)を縦軸、前記保護層の厚さ(μm)を横軸とするグラフ上において、当該電波吸収体の前記減少度合いの値と前記保護層の厚みの値とを示す座標と、前記抵抗被膜の表面抵抗値が前記基準値で前記保護層の厚みが0(μm)の座標である基準点とを結ぶ直線の傾きを直線近似で求め、前記求めた直線の傾きの値と前記吸収電波の周波数(GHz)の値とを示す点が、前記直線の傾きを縦軸、前記吸収電波の周波数を横軸とするグラフにおいて、下記に示す式1の直線と式2の直線との間の領域に位置する
式1 y=-8×10-4x+0.02
式2 y=-1×10-3x-0.04。
このようにすることで、本願で開示する電波吸収体は、保護層によって抵抗皮膜の耐候性や物理的な衝撃に対する耐性を向上できるとともに、保護層を形成していても空気中のインピーダンスとの整合を取ることができ、高い電波吸収特性を備えた電波吸収体を実現することができる。
上記電波吸収体において、前記抵抗皮膜が導電性有機高分子膜で形成されていることが好ましい。また、前記抵抗皮膜がカーボンマイクロコイル、カーボンナノチューブ、グラフェンの少なくとも一つを含むことが好ましい。このようにすることで、抵抗皮膜を容易に形成することができるとともに、電波吸収体が変形した場合でもその表面抵抗値を維持することができる。
さらに、前記保護層、抵抗被膜、誘電体層がいずれも透光性を有する部材で形成され、かつ、前記電波遮蔽層が金属メッシュにより構成されていて、電波吸収体全体の全光線透過率が30%以上であることが好ましい。このようにすることで、電波吸収体を通してその向こう側を視認することができ、輻射電波を遮蔽する電波発生源や、外部からの電波から保護する被遮蔽機器の様子を容易に観察することができる。
さらにまた、前記電波遮蔽層の背面に接着層をさらに備えることが好ましい。このようにすることで、電波吸収体を所望の位置に容易に配置することができる。
また、前記保護層、前記抵抗皮膜、前記誘電体層、前記電波遮蔽層がいずれも薄膜状に作製され、全体として可撓性を有するシート状に形成されることが好ましい。このようにすることで、取り扱いのような電波吸収体を実現することができる。
本願で開示する電波吸収体の製造方法は、抵抗皮膜と誘電体層と電波遮蔽層とが順次積層されて形成され、前記電波吸収体に吸収させる吸収電波がミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波であり、前記抵抗皮膜上に、誘電率が2以上20以下、厚さが10μm以上200μm以下の保護層をさらに備えた電波干渉型の電波吸収体の製造方法であって、前記抵抗被膜の表面抵抗値の基準値に対する補正後の抵抗値の割合である抵抗値補正率(%)を縦軸、前記保護層の厚さ(μm)を横軸とするグラフ上において、当該電波吸収体の前記抵抗値補正率の値と前記保護層の厚みの値とを示す座標と、前記抵抗被膜の表面抵抗値が前記基準値で前記保護層の厚みが0(μm)の座標である基準点とを結ぶ直線の傾きを直線近似で求め、前記求めた直線の傾きの値と前記吸収電波の周波数(GHz)の値とを示す点が、前記直線の傾きを縦軸、前記吸収電波の周波数を横軸とするグラフにおいて、下記に示す式1の直線と式2の直線との間の領域に位置するように設定する
式1 y=-8×10-4x+0.02
式2 y=-1×10-3x-0.04。
このようにすることで、本願で開示する電波吸収体の製造方法は、誘電体層により形成される保護層の影響により生じる電波吸収体全体における入力インピーダンスの変化に対応し、入力インピーダンスを空気中のインピーダンス値と整合させて、吸収電波に対して良好な電波吸収特性を発揮する電波吸収体を容易に製造することができる。
(実施の形態)
以下、本願で開示する電波吸収体について、図面を参照して説明する。
ここでは、本願で開示する電波吸収体として、主面積に対して厚さが十分に小さくシートとして把握できる電波吸収シートを例示して説明する。このように、本願で開示する電波吸収体とは、その表面積と厚さとの関係でシートとして捉えられる電波吸収シートと、相対的に厚さが厚く全体がブロック形状として把握される電波吸収ブロックとを含む概念である。
なお、後述するように、電波干渉型の電波吸収体の誘電体層の厚さは吸収する電波の周波数の逆数である波長に比例することから、吸収する電波の周波数がミリ波帯域以上の高い周波数の電波吸収体では誘電体層の厚さはそれほど厚くはならない。また、例えば、ノイズ源となる電子機器の表面に隙間無く配置する場合や、外殻を構成する筐体の内部に配置された電子機器を不所望な外部電波から保護する場合などの用途の場合、電波吸収体が一定以上の表面積を有していることが実用上有効である。このため、本願で開示する電波吸収体は、一定の表面積を有し厚さが小さいシート状の形態を採ることがより一般的であると考えられる。
(実施の形態)
図1は、本実施形態にかかる電波吸収シート(電波吸収体)の構成を示す断面図である。
なお、図1は、本実施形態にかかる電波吸収シートの構成を理解しやすくするために記載された図であり、図中に示された部材の大きさ、特に厚さに関しては現実に即して表されたものではない。
[電波吸収シートの全体構成]
本実施形態で例示する電波吸収シートは、抵抗皮膜1、誘電体層2、電波遮蔽層3がこの順に積層され、さらに抵抗皮膜1の電波が入射される側の表面、すなわち、抵抗皮膜1において誘電体層2が配置されている側とは反対側の面に保護層4が形成されている。なお、図1に例示する電波吸収シートでは、電波遮蔽層3の背面側、すなわち、電波遮蔽層3において誘電体層2が配置されている側とは反対側の表面に、接着層5が積層形成されている。
本実施形態にかかる電波吸収シートは、電波干渉型(λ/4型、反射型とも称される)であり、抵抗皮膜1側から誘電体層2に入射した電波11が、誘電体層2の背面側に配置されている電波遮蔽層3との界面で反射されて、反射波13として再び外部へと放出される。このとき、誘電体層2の厚さdを入射した電波の波長λの1/4とする(d=λ/4)ことで、電波吸収シートの表面で反射した一次反射波12と電波遮蔽層3の表面で反射した二次反射波13との位相が半波長(180°)分ずれることで打ち消しあって、見かけ上電波吸収シートによって電波が吸収されたようになる。なお、図1に点線で示す三次反射波、四次反射波以降の高次の反射波は、それぞれ一次反射波、二次反射波と同位相であるために重畳されるが、エネルギーが小さいため影響は少ない。
ここで、d=λ/4となるのは、誘電体層2として誘電率ε=1の物質が用いられる場合であり、誘電体層2に用いられる誘電体の誘電率がεrである場合には、d=λ/(4(εr-1/2)となって誘電体層2の厚さdを、1/(εr-1/2だけ薄くすることができる。誘電体層2を薄く形成することで、電波吸収シート全体の薄型化を実現でき、電波吸収シートの低コスト化が図れ、さらには可撓性を有する電波吸収シートや弾性を有する電波吸収シートをより容易に実現することができるようになる。
一方で上述した電波干渉型の電波吸収体における電波吸収の原理から、電波干渉型の電波吸収体では誘電体層2の厚さdを、その誘電率εrを踏まえて当該電波吸収体で吸収させたい電波である吸収電波の周波数から求められた厚さとすることが重要となる。
誘電体層2の背面側に積層して形成される電波遮蔽層3は、誘電体層2との境界面である誘電体層2側の表面で、入射してきた電波を反射する層である。このため、電波遮蔽層3は、反射層と称されることもある。
本実施形態にかかる電波干渉型の電波吸収シートにおける電波吸収の原理から、電波遮蔽層3は電波を反射する反射層として機能すれば良く、金属板で形成された金属層として容易に実現可能である。なお、取り扱いを容易とするためにシートとして電波吸収体が可撓性を有するようにするためには、電波遮蔽層3として金属箔や、樹脂などの非金属製材料からなる薄膜上に金属材料を蒸着して形成された金属薄膜を用いることがより好ましい。
また、抵抗皮膜、誘電体層、後述する保護層を、光を透過させる材料で構成して電波吸収シート全体として所定の透光性(一例として実用上有効と考えられる全光線透過率30%以上)を有する構成とする場合には、電波遮蔽層3にも透光性を備えさせるために、電波遮蔽層3を金属ワイヤや導電性部材がコーティングされた導電性繊維により形成された導電性メッシュで形成することが好ましい。
電波干渉型の電波吸収シートにおいて、抵抗皮膜1は、誘電体層2の前面側である吸収する電波が入射する側において、電波吸収シートと空気との間のインピーダンス整合を行う。
空気中を伝搬してきた電波が電波吸収シートに入射する際、電波吸収シートの入力インピーダンス値が空気のインピーダンス値と異なる値であると、電波吸収シートに入射する電波の量が少なくなって、電波吸収シートの電波吸収特性を低下させることとなる。このため、電波吸収シートの入力インピーダンスを空気のインピーダンス(正確には真空のインピーダンス値)と等しい377Ω/sqとして、電波吸収シートへの電波の入射を増やすことが重要となる。以下、本明細書では、上記377Ω/sqをインピーダンス整合における基準値と称することとする。
なお、本実施形態で説明する電波吸収シートでは、抵抗皮膜1上に形成された保護層4の影響を考慮して、抵抗皮膜1の表面抵抗値を基準値である377Ω/sqよりも低い値としている。抵抗皮膜1の表面抵抗値の具体的な決め方については、後に詳述する。
本実施形態の電波吸収シートでは、抵抗皮膜1を導電性有機高分子の膜として形成することで、電波吸収シートとしての可撓性を確保するとともに、電波吸収シートが強く折り曲げられた場合でも抵抗皮膜1のひび割れなどが生じず、表面抵抗値が変化せずに良好なインピーダンス整合を維持することができる。なお、抵抗被膜1を導電性有機高分子膜とすることは本願で開示する電波吸収シートにおいて必須ではなく、電波吸収シートの厚さが厚い場合や、電波吸収シートの使用場所が平坦な面である場合など、電波吸収シートに可撓性が求められない場合には、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物、金属窒化物ないしはこれらの混合体を、イオンプレーティング法、蒸着法、スパッタリング法などによって形成する、従来の硬質の抵抗皮膜1を採用することができる。
保護層4は、抵抗皮膜1の表面、すなわち、電波吸収シートにおいて電波が入射する側の最表面に形成され、抵抗皮膜1を保護する部材である。電波吸収シートの抵抗皮膜1は、表面に水分が付着するとその表面抵抗値が変化する場合がある。また、特に、抵抗皮膜1として導電性有機高分子膜を採用した場合は、表面に尖った部材が接触した場合や硬い材質のもので擦られた場合に傷がついてしまい、やはり抵抗皮膜1の表面抵抗値が変化してしまうおそれがある。このため、抵抗皮膜1の表面を保護層4で覆うことで、抵抗被膜1を保護して、インピーダンス整合状態を維持することが重要である。
一方、発明者らは、保護層4を設けた場合と保護層4を設けていない場合において、電波吸収シートの電波吸収特性が変化すること、より具体的には、同じ抵抗皮膜1と誘電体層2と電波遮蔽層3を有する電波吸収シートでも、抵抗皮膜1上に保護層4を形成すると電波吸収シートでの電波減衰量が変化することを発見した。そしてこの電波吸収特性の変化が、保護層4設けることでたことによって電波吸収シートに電波が入射する際の入力インピーダンスが変化することによるものであることが確認できた。
そこで、本願実施形態で示す電波吸収シートでは、抵抗皮膜1の表面抵抗値を基準値である377Ω/sqに対して所定の割合で減少させる補正を行う。このようにすることで、表面に保護層4が形成されている状態での保護層4と抵抗被膜1とのトータルの入力インピーダンスが、空気中のインピーダンスである377Ω/sqとなるように調整されて、保護層4を設けた電波吸収シートに入射する電波の拡散や乱反射を抑えて、良好な電波吸収特性を有する電波吸収シートを実現できる。この抵抗皮膜1における表面抵抗値を基準値から減少させた補正後の抵抗値の基準値に対する割合である抵抗値補正率については、後に詳述する。
接着層5は、電波吸収シートを所定の場所に容易に貼り付けることができるように、電波遮蔽層3の背面側に形成される層である。接着層5は、粘着性の樹脂ペーストを塗布することで容易に形成できる。
なお、接着層5は、本実施形態にかかる電波吸収シートにおいて必須の部材ではない。電波吸収シートを所定の場所に配置するに当たっては、電波吸収シートが貼り付けられる部材側に接着のための部材が配置されていてもよく、また、電波吸収シートを所定の場所に配置する際に、電波吸収シートと配置場所との間に接着剤を供給する、または、両面テープを用いるなどの接着方法を採用することができる。
[各部材の詳細について]
次に、本実施形態にかかる電波吸収シートとして、抵抗皮膜を導電性有機高分子で形成して、全体として可撓性を有するようにした電波吸収シートを構成する各部材について詳述する。
<抵抗皮膜>
本実施形態にかかる電波吸収シートにおいて、抵抗皮膜は、導電性有機高分子で構成される。
導電性有機高分子としては、共役導電性有機高分子が用いられ、ポリチオフェンやその誘導体、ポリピロールやその誘導体を用いることが好ましい。
本実施形態にかかる電波吸収シートの抵抗皮膜に用いられることが好適なポリチオフェン系導電性高分子の具体例としては、ポリ(チオフェン)、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)等が挙げられる。
また、抵抗皮膜に用いられることが好適なポリピロール系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)等が挙げられる。
この他にも、抵抗皮膜としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子を使用することができ、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、および、これらの共重合体等を用いることができる。
なお、抵抗皮膜に用いられる導電性有機高分子として、ポリアニオンをカウンターアニオンとして用いることができる。ポリアニオンとしては特に限定されないが、上述した抵抗皮膜1に用いられる共役導電性有機高分子に、化学酸化ドープを生じさせることができるアニオン基を含有するものが好ましい。このようなアニオン基としては、例えば、一般式-O-SO3X、-O-PO(OX)2、-COOX、-SO3Xで表される基等(各式中、Xは水素原子またはアルカリ金属原子を示す。)が挙げられ、中でも、共役導電性有機高分子へのドープ効果に優れることから、-SO3X、および、-O-SO3Xで表される基が特に好ましい。
上記導電性有機高分子は、1種を単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
また、上記例示した材料の中でも、透明性と導電性とがより高くなることから、ポリピロール、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)から選ばれる1種または2種からなる重合体が好ましい。
特に、共役系の導電性有機高分子とポリアニオンの組み合わせとしては、ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフェン:PEDOT)と、ポリスチレンスルホン酸(PSS)を用いることが好ましい。
また、本実施形態にかかる電波吸収シートの抵抗皮膜においては、導電性有機高分子の電気伝導度を制御して、電波吸収シートの入力インピーダンスを空気中のインピーダンス値と整合させるために、ドーパントを併用することができる。ドーパントとしては、ヨウ素、塩素等のハロゲン類、BF3、PF5等のルイス酸類、硝酸、硫酸等のプロトン酸類や、遷移金属、アルカリ金属、アミノ酸、核酸、界面活性剤、色素、クロラニル、テトラシアノエチレン、TCNQ等が使用できる。抵抗皮膜の表面抵抗値は、導電性有機高分子とドーパントとの配合割合によって調整することができる。導電性有機高分子とドーパントとの好ましい配合割合は、一例として質量比で導電性高分子:ドーパント=1:2~1:4とすることができる。
さらに、抵抗皮膜を形成する材料としては、他にポリフッ化ビニリデン、水溶性ポリエステルを含むことが好ましい。これらを含むことで、抵抗皮膜の耐候性が向上するため、抵抗皮膜の表面抵抗値の経時的な変化を抑えることができ、抵抗被膜を保護する保護層の材料や厚さの設計裕度を広げることができる。
ポリフッ化ビニリデンは、導電性有機高分子をコーティングする際の組成物に加えることで、導電性有機高分子膜の中でバインダーとしての機能を果たし、成膜性を向上させるとともに基材との密着性を高めることができる。
また、水溶性ポリエステルは導電性高分子との相溶性が高いため、抵抗皮膜を形成する導電性有機高分子のコーティング組成物に水溶性ポリエステルを加えることで抵抗皮膜1内において導電性高分子を固定化させ、より均質な皮膜を形成することができる。この結果、水溶性ポリエステルを用いることで、より厳しい高温高湿環境下におかれた場合でも表面抵抗値の変化が小さくすることができる。
抵抗皮膜における導電性有機高分子の含有量は、抵抗皮膜組成物に含まれる固形分の全質量に対して、10質量%以上35質量%以下であることが好ましい。含有量が10質量%を下回ると、抵抗皮膜の導電性が低下する傾向にある。このため、インピーダンス整合をとるために抵抗皮膜の表面電気抵抗値を所定の範囲とした結果、抵抗皮膜の膜厚が大きくなることによって、電波吸収シート全体が厚くなったり光学特性が低下したりする傾向がある。一方、含有量が35質量%を超えると、導電性有機高分子の構造に起因して抵抗皮膜をコーティングする際の塗布適正が低下して、良好な抵抗皮膜を形成しづらくなり、抵抗皮膜のヘイズが上昇して、やはり光学特性が低下する傾向にある。
また抵抗被膜がカーボンマイクロコイル、カーボンナノチューブ、グラフェン等のカーボン材料を含む構成でも良い。
カーボンマイクロコイルは、主としてアセチレンの触媒活性化熱分解法によって得られる一種の気相成長カーボンファイバーであり、コイル径がミクロンオーダーの3D-ヘリカル/らせん構造をなしている材料である。コイル径は1~10μmであり、該コイルを形成するカーボンファイバー径は0.1~1μmであり、コイルの長さは1~10mmであることが好ましい。
カーボンナノチューブは、具体的には例えばアーク放電法、レーザー蒸発法、熱分解法等の気相成長法によって得ることができる。本実施形態にかかる電波吸収シートの抵抗皮膜として用いられるカーボンナノチューブとしては、単層および多層のいずれであってもよい。
グラフェンは、例えば剥離転写法、SiC熱分解法、化学気相成長法、カーボンナナノチューブを切開する方法等によって得ることができる。本実施形態にかかる電波吸収シートの抵抗皮膜として用いられるグラフェンとしては、所望するアスペクト比を容易に得られること、および、電磁波吸収シートにおける配向性の観点から、鱗片形状の紛体状グラフェンを用いることが好ましい。
なお、上記したカーボン材料を分散させる樹脂としては、水溶性ポリエステル樹脂を用いることができる。
また、抵抗皮膜は、上述のように抵抗皮膜の形成用塗料としてのコーティング組成物を基材の上に塗布して乾燥することにより形成することができる。
抵抗皮膜形成用塗料を基材の上に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、リバース法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法、ディッピング法、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法等の塗布方法を用いることができる。塗布後の乾燥は、抵抗皮膜形成用塗料の溶媒成分が蒸発する条件であればよく、100~150℃で5~60分間行うことが好ましい。溶媒が抵抗皮膜に残っていると強度が劣る傾向にある。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥法、加熱乾燥法、真空乾燥法、自然乾燥等により行うことができる。また、必要に応じて、塗膜にUV光(紫外線)やEB(電子線)を照射して塗膜を硬化させることで抵抗皮膜を形成してもよい。
なお、抵抗皮膜を形成するために用いられる基材としては特に限定されないが、透明性を有する透明基材が好ましい。このような透明基材の材質としては、例えば、樹脂、ゴム、ガラス、セラミックス等の種々のものが使用できる。
<誘電体層>
本実施形態にかかる電波吸収シートの誘電体層は、酸化チタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ガラス、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの誘電体で形成することができる。なお、誘電体層は、1種の材料で形成することができ、また、同種、異種の材料を2層以上積層した構成とすることもできる。誘電体層の形成には、塗布法やプレス成型法、押出成型法などを用いることができる。
上述のように、本実施形態にかかる電波吸収シートは、電波吸収シートに入射した電波と電波遮蔽層で反射された反射波との位相を1/2波長ずらすことで、入射波と反射波とが打ち消し合って電波を吸収する電波干渉型(λ/4型)の電波吸収シートである。このため、誘電体層の厚さ(図1におけるd)は、吸収しようとする電波の波長に対応して定められる。
なお、dの値は、抵抗皮膜と電波遮蔽層との間が空間となっている場合、すなわち、誘電体層が空気で形成されている場合は、d=λ/4が成り立つが、誘電体層を誘電率εrの材料で形成した場合には、d=λ/4(εr)-1/2となる。このことは、本実施形態にかかる電波吸収シートとして可撓性を有するものとする場合には、誘電体層が薄くなって電波吸収シート全体の厚さが薄くなり、容易に湾曲させることができてより好ましい。また、本実施形態にかかる電波吸収シートが、後述する接着層などを用いて電波漏洩を防ぎたい部材に貼着して使用されることが多いことを考慮すると、電波吸収シートの厚さが薄く容易に貼着部分の形状に沿うこと、また、シートがより軽量化されていることが好ましい。
<電波遮蔽層>
本実施形態にかかる電波吸収シートの電波遮蔽層は、誘電体層を介して電波吸収シートの反対側に配置された、抵抗皮膜側から入射した電波を反射させる部材である。
電波吸収シートとして可撓性を有するようにするために、電波遮蔽層を構成する材料としては金属箔が好ましく、銅箔、アルミ箔、金箔などの各種の金属箔を用いることができる。これらの中でも、コストと空気中での酸化の影響を考慮すると、電波遮蔽層としてアルミ箔を用いることが好ましい。電波遮蔽層を形成するアルミ箔などの金属箔は、金属材料を圧延することで容易に実現できる。また、非金属製材料の表面に金属を蒸着した蒸着膜で電波遮蔽層を形成する場合には、従来各種蒸着膜の形成に用いられている蒸着方法を、蒸着する金属材料と基材となる樹脂などの非金属性材料の耐熱温度などとを考慮して適宜選択することが好ましい。
電波遮蔽層の厚さは、可撓性を有する電波吸収シートとする場合としてアルミ箔を用いた場合には、1μm~20μmであることが好ましい。
また、本実施形態にかかる電波吸収シートにおいて、誘電体層の抵抗皮膜が形成されている側とは反対側の表面に直接金属材料の蒸着膜を形成することで、電波遮蔽層を金属などの導電性材料の蒸着膜のみで形成することができる。誘電体層の背面側に金属蒸着膜を形成した場合には、誘電体層と電波遮蔽層とを別々に形成してこれを密着配置させる場合と比較して、誘電体層と電波遮蔽層との間に間隙が生じない。このため、誘電体層を貫通した電波を誘電体層の背面側表面の位置で反射させることができ、誘電体層の厚さdによって吸収される電波の周波数を正確に制御することができる。
一方で、電波遮蔽層に金属箔を用いる場合と比較して、蒸着膜を用いる場合には、蒸着膜における導電性材料の密度を均一に、かつ十分に形成する必要がある。発明者らの検討結果によれば、電波遮蔽層の表面抵抗値は1×10-1Ω/sq以下となるようにすることが好ましく、金属蒸着膜の厚さを十分に制御して表面抵抗値を所望する値以下とすることが好ましい。
また、電波吸収シートとして可撓性とともに透光性を有するようにするためには、電波遮蔽層として、導電性の繊維により構成された導電性メッシュが採用できる。導電性メッシュは、一例としてポリエステルモノフィラメントで織ったメッシュに金属を付着させて導電性とすることで構成できる。金属としては、導電性の高い銅、銀などを用いることができる。また、メッシュの表面を覆う金属膜による反射を低減するために、金属膜のさらに外側に黒色の反射防止層を付与したものも製品化されている。
電波遮蔽層としては、他にも、直径が数十から数百μmの細い銅線などの金属線が、縦横に配置された導電性格子を用いることができる。
なお、上述のメッシュや導電性格子により電波遮蔽層を構成した場合には、可撓性と透光性とを確保するために、電波遮蔽層として求められる表面抵抗値を実現できる限りにおいて、最低限の厚さを有して構成されることとなる。
メッシュや導電性格子として形成される電波遮蔽層の開口率は、透光性を確保する観点からはより大きい方が、電波遮蔽層としてその表面で電波を確実に反射して電波吸収シートとしての電波吸収特性を高くする観点からはより小さい方が好ましい。発明者らの検討によると、開口率が35%以上85%以下であることが好ましく、開口率が35%以上75%以下であることがより好ましい。
<保護層>
本実施形態にかかる電波吸収シートでは、抵抗皮膜の表面である電波の入射面側に保護層が設けられている。
保護層を設けることで、抵抗皮膜として用いられている導電性有機高分子やカーボン材料が空気中の湿度の影響を受けてその表面抵抗値が変化することや、抵抗被膜である導電性有機高分子膜が物理的に傷つけられてしまうことを効果的に防止することができる。
本実施形態の電波吸収シートの保護層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の膜を用いることができ、例えば、表面被膜である導電性有機高分子膜上に所定の厚さでPET膜を塗布、乾燥することによって、表面被膜上に形成された保護層を得ることができる。また、他の所定の下地膜上にPET膜を等乾燥してポリエチレンテレフタレートの薄膜を形成し、これを下地膜から剥がして、抵抗皮膜の表面に貼り付けることによって、表面皮膜上に保護層を積層することができる。
本実施形態にかかる電波吸収シートとして利用可能な保護層としては、上述したポリエチレンテレフタレート以外に、ポリエチレン2.0、ポリ塩化ビニル8.0などを用いることができる。
また、形成される保護層の膜厚は、10μm以上200μm以下とすることが好ましい。保護層の膜厚が10μmより薄いと、抵抗皮膜の表面を保護する保護機能が十分に果たせない可能性がある。保護層の厚さとして200μmあれば必要十分であり、200μmよりも厚い保護層を有する場合には、保護層によって電波吸収シートの可撓性が制限される弊害が生じる。また、保護層の厚さが必要以上に厚い場合には、抵抗皮膜の表面に保護層を積層・貼着する工程が大がかりなものとなる懸念があり、製造の容易性や製造コストの観点からも、必要以上に厚い保護層は好ましくないと考えられる。
<接着層>
本実施形態にかかる電波吸収シートを所定の位置に容易に配置できるように、電波遮蔽層の背面に接着層を形成することができる。
接着層としては、粘着テープなどの粘着層として利用される公知の材料、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができる。また被着体に対する粘着力の調節、糊残りの低減のために、粘着付与剤や架橋剤を用いることができる。被着体に対する粘着力は5N/10mm~12N/10mmが好ましい。粘着力が5N/10mmより小さいと、電波吸収シートが被着体から容易に剥がれてしまったり、ずれてしまったりすることがある。また、粘着力が12N/10mmより大きいと、電波吸収シートを被着体から剥離しにくくなる。
また接着層の厚さは、20μm~100μmが好ましい。接着層の厚さが20μmより薄いと、粘着力が小さくなり、電波吸収シートが被着体から容易に剥がれたり、ずれたりすることがある。接着層の厚さが100μmより大きいと、電波吸収シートを被着体から剥離しにくくなる。また接着層の凝集力が小さい場合は、電波吸収シートを剥離した場合、被着体に糊残りが生じる場合がある。また、電波吸収シート全体としての可撓性を低下させる要因となる。
なお、本実施形態にかかる電波吸収シートに用いられる接着層としては、電波吸収シートを被着物体に剥離不可能に貼着する接着層とすることができるとともに、剥離可能な貼着を行う接着層とすることもできる。また、前述のように、本実施形態にかかる電波吸収シートにおいて、接着層を備えた構成とすることは必須の要件ではなく、電波吸収シートを所望する部材に対して、従来一般的な各種の接着方法を用いて接着することができる。
(実施例)
以下、本実施形態にかかる電波吸収シートについて、保護層を設けた場合の入力インピーダンス値の変化について検討した結果について説明する。
<抵抗皮膜の表面抵抗値の減少率について>
上述のように、本実施形態にかかる電波吸収シートでは、抵抗皮膜の表面に保護層が形成されている。そして、抵抗皮膜の表面抵抗値を保護層の厚さに応じて空気中のインピーダンスである377Ω/sq(基準値)に対して所定の割合(抵抗値補正率)となるように減少させることで、保護層と抵抗被膜の合成膜としての入力インピーダンスを空気中のインピーダンス値である377Ω/sqと整合させて、電波吸収シートに入射する電波のシート表面での反射や散乱を抑え、電波吸収シートでの電波吸収特性を向上させるものである。
発明者らは、保護層を設けたことにより生じる電波吸収量の低下は、誘電体により形成された保護層が抵抗皮膜に積層されていることで、入射する電波が保護層を透過する際にその誘電率と厚さの影響を受けることによって生じると考えた。そこで、保護層が電波の入射側に形成されている電波吸収シートにおいて、ミリ波帯域以上の周波数の電波が入射した際の吸収割合を求め、抵抗皮膜の表面抵抗値として好ましい値を求めるシミュレーションを行った。このシミュレーションで、保護層を考慮した最適な抵抗被膜の表面抵抗値を求め、この値の空気中のインピーダンスである基準値377Ω/sqに対する割合をパーセントで表す、抵抗被膜の表面抵抗値の補正率を算出した。
<シミュレーションの詳細>
シミュレーションは、電波をZ(軸)正方向とZ(軸)負方向に伝搬する平面波と考え、この平面波が誘電率ε、透磁率μの均一な媒体中を伝播するときの伝搬定数をγ、波動インピーダンスをZとして行った。なお、Z正方向に伝搬する波とZ負方向に伝搬する波との両方が同時に存在するとし、Z方向における各位置の電磁界は電界成分と磁界成分との合成であるとした。
このとき、Z=dにおける平面波の電界成分をE1、磁界成分をH1、Z=0における平面波の電界成分をE2、磁界成分をH2とすると、基礎行列式(1)は以下のようになる。
Figure 2023025502000002
図2は、本実施形態で使用したシミュレーションにおける概念を説明する図である。図2(a)は、平面波が厚さdの媒質に入射している状態を示し、図2(b)は、抵抗被膜の上に誘電体からなる保護層が形成された電波吸収シートの等価回路を示している。
図2(a)に示すように、本実施形態で使用したシミュレーションでは、図中左側から厚さdの媒質に電波が入射(入射波)し、その一部が媒質を透過(透過波)する状態を扱う。また、媒質への入射面で反射される反射波も考慮する。
なお、媒質の入射面側(図2(a)の左側面)をZ=0、通過した電波の出射面側(図2(a)の右側面)をZ=dと考えることができ、入射面側(Z=0側)での電界をE2、磁界をH2、また、出射面側(Z=d側)での電界をE1、磁界をH1とすると、媒質領域は上記の基礎行列式(1)に基づいて、以下の式(2)に示す行列として示すことができる。なお、図2(a)に示すように、入射面側では電界、と磁界とが入射波と反射波との和であり、出射面側の電界と磁界は透過波のものとなる。
Figure 2023025502000003
このとき、媒質の入射面側から見た入力インピーダンスZinは、E1=Z0*H1を用いて、以下の式(3)で表すことができる。また、真空のインピーダンス(空気中も同じと考えられる)Z0は、真空中の誘電率ε0と透磁率μ0とを用いて下記の式(4)となる。
Figure 2023025502000004
本実施形態にかかる電波吸収シートの構成は、図1に示したように、電波の入射面側から、誘電体により形成された保護層4、抵抗層である抵抗被膜1、誘電体層2、金属層として把握できる電波遮蔽層3が順次積層されたものである。図2(b)は、この電波吸収シートの構成を等価回路として示したものである。
このときの電波吸収シート全体としての入力インピーダンスは、式(5)で表される。なお、保護層4は、Ah、Bh、Ch、Dhを使った行列式で表している。
Figure 2023025502000005
よって、電波吸収シート全体の電波入射側からの入力インピーダンスは、下記式(6)で表すことができる。
Figure 2023025502000006
ここで、入射波に対する反射波の減少度合いである反射減衰量をΓで表して式(6)を変換すると下記式(7)となる。
Figure 2023025502000007
これを変形して、E(1+Γ)=BH1、および、E(1-Γ)=Z0DH1となり、反射減衰率Γは以下式(9)のように求まる。
Figure 2023025502000008
なお、本実施形態では、電波吸収シートにおける電波吸収特性の評価値としての反射減衰量RLを、下記式(10)に示すように反射減衰率Γを用いてデシベルで表すこととする。
Figure 2023025502000009
<抵抗皮膜の抵抗値減少率>
上記のシミュレーションを用いて、抵抗皮膜上に保護層が形成された電波吸収シートに入射した電波の反射減衰量を求め、所定の周波数の電波が入射した際に反射減衰量が最大となる抵抗被膜の表面抵抗値を算出した。
保護層の誘電率は、上述例示したポリエチレンテレフタレートの誘電率が2.7であることと、その他保護層として利用可能となる各種材料の誘電率を考慮して、2以上20以下の範囲とした。一方、保護層の膜厚については、抵抗皮膜を保護することができる厚さという機能面と、特に電波吸収シートの場合に求められるシート全体の可撓性を著しく損なわないという観点、さらには容易に製造可能であることなどの製造条件面の観点とを考慮して、10μm以上200μm以下の範囲に設定した。
シミュレーションでは、特定の周波数の電波が保護層を有する電波吸収シートに入射した際の反射減衰量について、保護層の誘電率を2、3.3、5、10、20の5段階に設定し、保護層の厚さを10μm~200μmの間で変化させて、反射減衰量(RL)が最大となる抵抗被膜の表面抵抗値を求めた。さらに、求めた表面抵抗値について、基準値377Ω/sqに対する割合を保護層の影響を考慮した抵抗被膜の抵抗値を補正した後の補正率(抵抗値補正率)として%で表した。例えば、電波減衰量が最大となる表面抵抗値が約340Ω/sqである場合は、(1-(377-340)/377)×100の90.2(%)が基準値377Ω/sqに対する表面抵抗値の抵抗値補正率となる。なお、保護層の影響がほとんど無く、抵抗被膜の抵抗値の補正を行わなくてもよい場合は、抵抗被膜の抵抗値の、基準値である377Ω/sqに対する割合(抵抗値補正率)は100%となる。
<吸収する電波の周波数が異なる場合の抵抗値減少率と保護膜膜厚との関係>
発明者らは、上記シミュレーションを用いて、吸収される電波の周波数として、414GHz、200GHz、110GHz、28.5GHzとして、それぞれの周波数の電波に対する抵抗被膜の厚みと反射減衰特性が最大となる抵抗被膜の表面抵抗値を求めた。
なお、本願で開示する電波吸収体(電波吸収シート)は、ミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波を吸収させるものである。ミリ波帯域以上の高周波数帯域とは、とは、定義上は約30GHzより高い周波数帯域の電波を意味するが、本明細書では、現在主流になりつつある通信規格である5Gで用いられる28.5GHzの電波もミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波に含まれるものとする。また、将来使用されることが見込まれる7Gの規格で想定される、400GHzを超えた周波数帯域の電波も、本明細書におけるミリ波帯域以上の高周波数帯域に含まれる。
図3は、吸収される電波の周波数が414GHzである場合における、保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す図である。
図3において、符号31で示す黒丸が誘電率2の場合、符号32で示す黒三角が誘電率3.3の場合、符号33で示す菱形が誘電率5の場合、符号34で示す白丸が誘電率10の場合、符号35で示す白四角が誘電率20の場合をそれぞれ示している。
また、図3において、符号36で示す実線が、保護層の誘電率が2の場合における保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す直線であり、符号37で示す破線が、保護層の誘電率が20の場合における保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す直線であり、いずれの直線も最小二乗法による直線近似で求めた。それぞれの直線を表す式は、誘電率2の場合の直線36がy=-0.32x+100であり、誘電率20の場合の直線37がy=-0.44x+100であった。なお、相関係数Rを二乗したR2は、直線36がR2=0.9612、直線37がR2=0.937であり、それぞれの式が十分高い相関を示していることが確認できた。
図4は、吸収される電波の周波数が200GHzである場合における、保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す図である。
図4において、符号41で示す黒丸が誘電率2の場合、符号42で示す黒三角が誘電率3.3の場合、符号43で示す菱形が誘電率5の場合、符号44で示す白丸が誘電率10の場合、符号45で示す白四角が誘電率20の場合をそれぞれ示している。
また、図4において、符号46で示す実線が、保護層の誘電率が2の場合における保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す最小二乗法により求めた直線であり、符号47で示す破線が、保護層の誘電率が20の場合における保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す最小二乗法により求めた直線である。それぞれの直線を表す式は、誘電率2の場合の直線46がy=-0.15x+100であり、誘電率20の場合の直線47がy=-0.28x+100であった。なお、相関係数Rを二乗したR2は、直線46がR2=0.9631、直線47がR2=0.9886であり、それぞれの式が十分高い相関を示していることが確認できた。
図5は、吸収される電波の周波数が110GHzである場合における、保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す図である。
図5において、符号51で示す黒丸が誘電率2の場合、符号52で示す黒三角が誘電率3.3の場合、符号53で示す菱形が誘電率5の場合、符号54で示す白丸が誘電率10の場合、符号55で示す白四角が誘電率20の場合をそれぞれ示している。
また、図5において、符号56で示す実線が、保護層の誘電率が2の場合における保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す最小二乗法により求めた直線であり、符号57で示す破線が、保護層の誘電率が20の場合における保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す最小二乗法により求めた直線である。それぞれの直線を表す式は、誘電率2の場合の直線56がy=-0.06x+100であり、誘電率20の場合の直線57がy=-0.17x+100であった。なお、相関係数Rを二乗したR2は、直線36がR2=0.9385、直線37がR2=0.9972であり、それぞれの式が十分高い相関を示していることが確認できた。
図6は、吸収される電波の周波数が28.5GHzである場合における、保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す図である。
図6において、符号61で示す黒丸が誘電率2の場合、符号62で示す白丸が誘電率20の場合をそれぞれ示している。
また、図6において、符号63で示す実線が、保護層の誘電率が2の場合における保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す最小二乗法により求めた直線であり、符号64で示す破線が、保護層の誘電率が20の場合における保護層の厚みと抵抗値補正率との関係を示す最小二乗法により求めた直線である。それぞれの直線を表す式は、誘電率2の場合の直線63がy=-0.006x+100であり、誘電率20の場合の直線64がy=-0.04x+100であった。なお、相関係数Rを二乗したR2は、直線63がR2=0.8916、直線64がR2=0.9768であり、それぞれの式が十分高い相関を示していることが確認できた。
図3から図6に示された、各周波数の電波が入射した場合の保護層の厚さと抵抗被膜の最適な補正後の表面抵抗値の値である抵抗値補正率との関係から、保護層の厚みが厚くなるにつれて最適な抵抗皮膜の表面抵抗の値が小さくなり、抵抗値補正率がほぼ直線的に変化する、すなわち変化の割合を示す関数が一次関数となることがわかる。また、入射する電波の周波数が高いほど保護層の厚みが厚くなった場合の表面抵抗値の補正の度合いが大きくなり、補正後の抵抗値の割合を示す抵抗値補正率の値が小さくなっていること、すなわち、変化の割合を示す直線の傾きの値が大きくなっていることがわかる。
さらに、いずれの周波数においても、抵抗被膜の誘電率が高い値になるにつれて、補正後の表面抵抗値が小さくなっていること、すなわち、変化の割合を示す直線の傾きの値が大きくなっていることがわかる。
なお、保護層が形成されていない場合、すなわち、保護層の厚みが0(μm)の場合には、抵抗皮膜の表面抵抗値は基準値である377Ω/sqとなる。このため、図3から図6に示した保護層の厚みと抵抗皮膜の抵抗値補正率との関係を表す式(36、37、46、47、56、57、63、64)は、x=0の時のy軸切片の値を減少率100%(=377Ω/sq)として求めている。
したがって、保護層を有している電波吸収シートでは、保護層の厚みと抵抗値補正率で表された抵抗被膜の表面抵抗値とを示す点と、保護層が無い場合、すなわち、保護層の厚みが0μmで抵抗被膜の抵抗値が基準値である377Ω/sqである点(以下、適宜この点を「基準点」と称する)とを結んで、図3から図6に示した、縦軸に抵抗値補正率を%で、横軸に保護層の厚みをμmでそれぞれ表したグラフ上の傾きを求め、この傾きが、それぞれの周波数における上限の値と下限の値との間の値となるようにすることで、良好な電波吸収特性を実現した電波吸収シートとして実現できることがわかる。
図7は、図3から図6に示した、縦軸が抵抗被膜の抵抗値補正率(%)、横軸が保護層の厚さ(μm)であるグラフ上の傾きの値と、電波吸収シートで吸収させる吸収電波の周波数(GHz)との関係を示すグラフである。
図7は、特定の周波数の電波を吸収電波とする電波吸収シートについてのシミュレーション結果を示した図3から図6の抵抗値補正率と保護層の厚みとの関係を示す直線の傾きと周波数とに基づいて、以下のようにしてプロットした。
各周波数(414GHz、200GHz、110GHz、28.5GHz)において、誘電率が2の場合に得られた傾きが最大(負の数値である傾きの絶対値が最小)の直線の傾きを、横軸に周波数、縦軸に最大の傾きをプロットし(符号71)、プロットした各点に基づいて近似直線を示した(符号73)。この直線の式(式1)はY=-8×10-4X+0.02、R2=0.9975である。
また、各周波数(414GHz、200GHz、110GHz、28.5GHz)において、誘電率が20の場合に得られた傾きが最小(負の数値である傾きの絶対値が)の直線の傾きを、横軸に周波数、縦軸に最大の傾きをプロットし(符号72)、プロットした各点に基づいて近似直線を示した(符号74)。この直線の式(式2)はY=-1×10-3X-0.04、R2=0.966である。
したがって、電波吸収シートの保護膜の厚み(μm)を変化させた場合、各厚みでの抵抗被膜の抵抗値補正率の値(%)を示す点と、保護層の厚みが0μm、つまり抵抗値補正率が100%(表面抵抗値が377Ω/sq)の点である基準点とを結んで示した線の、縦軸に抵抗値補正率を%で、横軸に保護層の厚みをμmで、それぞれ表したグラフ上の傾きをもとめ、この傾きの値と当該電波吸収シートでの吸収電波の周波数(GHz)とを示す点が、上記式1で示される直線と式2で示される直線との間の領域にあれば、良好な電波吸収特性を備えた電波吸収シートであると言うことができる。
なお、上記良好な電波吸収特性を備えた電波吸収シートの吸収電波の周波数(GHz)は、本明細書におけるミリ波帯域の定義に含まれる28.5GHzから500GHzの範囲である。特に、吸収電波の周波数が28.5GHz以上414GHz以下であることがより好ましい。
<具体例>
次に、実際に電波吸収シートを作製する具体例について説明する。
上述してきたように、本願で開示する電波吸収体(電波吸収シート)では、保護層の影響を考慮して抵抗皮膜の表面抵抗値を、基準値である377Ω/sqに対して所定の抵抗値補正率の分小さくし、表面に保護層が形成された電波吸収体(電波吸収シート)としてのトータルの入力インピーダンスを、空気中のインピーダンス値に整合させることに特徴がある。
まず、抵抗皮膜の形成に当たって、以下の成分を添加、混合して抵抗皮膜液を調整した。
(1)導電性高分子分散体 36.7部
ヘレウス社製導電性高分子(PEDOT-PSS):PH-1000(製品名)、
固形分濃度 1.2質量%
(2)PVDF分散液 5.6部
アルケマ社製:LATEX32(商品名)、
固形分濃度 20質量%、 溶媒 水
(3)水溶性ポリエステル水溶液 0.6部
互応化学工業社製:プラスコートZ561(商品名)
固形分濃度 25質量%
(4)有機溶媒(ジメチルスルホキシド) 9.9部
(5)水溶性溶媒(エタノール) 30.0部
(6)水 17.2部。
上記作製した抵抗皮膜液を、基材としての厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート上にバーコート法によって塗布し、その後150℃で5分加熱し成膜した。
なお、上記例示した各部材の混合割合は、表面抵抗値が377Ω/sqの抵抗被膜を形成する場合のものであり、後述するように抵抗値補正率に応じて抵抗被膜の表面抵抗値をより小さい値とする場合には、抵抗皮膜の膜厚をより厚くすることにより実現することができる。また、抵抗被膜を形成する抵抗皮膜液における導電性高分子分散体の含有量を減らすことによって、表面抵抗値を小さくすることもできる。
さらに、抵抗皮膜層に重ねて、誘電体層として日榮新化株式会社製の厚さ110μmのシリコーンOCAを貼り合わせた。電波遮蔽層は、セーレン株式会社製の導電メッシュSu-4X-13227(商品名)を用いて、誘電体層に積層した。このようにして、保護層としてのポリエチレンテレフタレート、抵抗被膜、誘電体層としてのシリコーンOCA、電波遮蔽層としての導電メッシュを積層した。なお、誘電体層として用いたシリコーンOCAの誘電率は2.7である。また、保護層として誘電率が3.3のポリエチレンテレフタレートを用い、保護層の厚みは50μmとした。
誘電体層の厚さは、作製する電波吸収シートが吸収する吸収電波の周波数に応じて変更し、実施例1の電波吸収シートでは吸収電波の周波数が414GHzであるから、誘電体層の厚さは110μm、実施例2の電波吸収シートでは吸収電波の周波数が200GHzであることから誘電体層の厚さを230μm、実施例3の電波吸収シート(吸収電波の周波数110GHz)では、誘電体層の厚さを415μmとした。
実施例1の電波吸収シートとして、電波吸収シートが吸収する吸収電波の周波数が414GHzのものを作製した。図7に基づいて、414GHzでの傾きの値は、-0.32~-0.46の範囲となる。保護層の厚さ0μm、抵抗値補正率100%の基準点から-0.32~-0.46の範囲の傾きで保護層の厚さ50μmでの抵抗値補正率を計算すると、77~84%となる。ここでは、図3に示すシミュレーション結果も参照して抵抗皮膜の抵抗値補正率を79%とした。具体的な抵抗皮膜の表面抵抗値は298Ω/sqとなる。
なお、保護層の厚み50(μm)、抵抗値補正率79(%)の点と基準点(0μm、100%)とを結ぶ直線の傾きの値は、-0.43となり、図7に示した符号73の直線(式1)と符号74の直線(式2)との間の領域に位置することが確認できた。
吸収電波の周波数が200GHzの電波吸収シート(実施例2)は、図7から200GHzでの傾きの値として-0.14~-0.24を読み取り、保護層の厚さ0μm、抵抗値補正率100%の基準点から-0.14~-0.24の範囲の傾きで保護層の厚さ50μmでの抵抗値補正率を計算すると、抵抗値補正率として88~93%を得る。ここでは図4に示すシミュレーション結果も参照して抵抗皮膜の抵抗値補正率を93%とした。そして、抵抗皮膜の表面抵抗値が351Ω/sqの電波吸収シートを作製した。
このとき、保護層の厚み50(μm)、抵抗値補正率93(%)の点と基準点(0μm、100%)とを結ぶ直線の傾きの値は、-0.15となり、図7に示した符号73の直線(式1)と符号74の直線(式2)との間の領域となることが確認できた。
吸収電波の周波数が110GHzの電波吸収シート(実施例3)の場合は、図7から110GHzの傾きの値として-0.06~-0.16を読み取り、保護層の厚さ0μm、抵抗値補正率100%の基準点から-0.06~-0.16の範囲の傾きで抵抗値補正率を計算すると、92~97%を得る。図5に示すシミュレーション結果も参照して、抵抗皮膜の抵抗値補正率を97%として、抵抗皮膜の表面抵抗値が366Ω/sqのものを作製した。
このとき、保護層の厚み50(μm)、抵抗値補正率97(%)の点と基準点(0μm、100%)とを結ぶ直線の傾きの値は、-0.06となり、図7に示した符号73の直線(式1)と符号74の直線(式2)との間の領域となる。
(電波吸収特性の測定)
上記作製した実施例1~実施例3の電波吸収シートの電波吸収特性について、アドバンステスト社のTHZ-TDS TAS7500SP(製品名)を用いて測定した。電波吸収特性は、上述したシミュレーションの結果と同様に、入射波に対する反射波の減衰量を反射減衰量として求め、dBで表示した。
抵抗値補正率を考慮して、抵抗被膜の表面抵抗値を298Ω/sqとして作製した実施例1の電波吸収シートでは、ビーク周波数の414GHzでの電波吸収量(反射減衰量)は-55dBであった。これに対し、比較例として作製した抵抗皮膜の表面抵抗値が補正されていない377Ω/sqの電波吸収シートでは、414GHzでの電波吸収量(反射減衰量)は-19dBに留まった。
また、抵抗値補正率を考慮して、抵抗被膜の表面抵抗値を351Ω/sqとして作製した実施例2の電波吸収シートでは、ビーク周波数の200GHzでの電波吸収量(反射減衰量)は-53dBであった。これに対し、比較例として作製した抵抗皮膜の表面抵抗値が補正されていない377Ω/sqの電波吸収シートでは、200GHzでの電波吸収量(反射減衰量)は-28dBに留まった。
抵抗値補正率を考慮して、抵抗被膜の表面抵抗値を366Ω/sqとして作製した実施例3の電波吸収シートでは、ビーク周波数の110GHzでの電波吸収量(反射減衰量)は-56dBであった。これに対し、比較例として作製した抵抗皮膜の表面抵抗値が補正されていない377Ω/sqの電波吸収シートでは、110GHzでの電波吸収量(反射減衰量)は-37dBに留まった。
なお、実施例として作製された電波吸収シートでは、厚さ50μmの保護層を備えることで、電波吸収シートの表面がこすられた場合でも抵抗皮膜の表面が削られることなくその表面抵抗値が維持できること、さらに、保護層自体もそのような摩擦に十分耐えうることが、白ネルの布をHEIDON社の摺動試験機にセットして、加重2000g、摺動速度4500mm/min、摺動幅25mm、摺動回数1000パス(約10分間)の条件で行った摺動試験の結果確認できた。
また、上記実施例として作製した電波吸収シートを、水平に配置された直径が6mmのアルミ製の円筒型棒(マンドレル)上に保護層の側が表向きになるようにして被せ、シートの両端に300gの錘を付けて30秒間維持する可撓性試験を行ったところ、試験の前後でのシート表面の見た目や表面抵抗値に変化は認められず、電波吸収特性の変化も生じなかった。このことから、上記実施例の電波吸収シートは、高い可撓性を有することが確認できた。
なお、上記実施例1~実施例3の電波吸収シートを作製するに当たって、図7に示した吸収電波の周波数から、抵抗値補正率と保護層の厚みとの関係を示すグラフ上での傾きの値を求めるに際し、把握しているシミュレーション結果も参照した。しかし、本願で開示する電波吸収シートにおいて、保護層の影響を考慮した抵抗値補正率を求めるに当たっては、図7に示した2つの直線を表す式の範囲を選択することで十分であることは言うまでも無い。なお、図7として示す、吸収電波の周波数に対応する傾きの範囲を示す2つの式(式1(符号73として示す直線)、式2(符号74として示す直線))の元となった、所定の周波数の電波における抵抗値補正率と保護層の厚さとの関係を示す図3~図6のグラフから明らかなように、保護層の誘電率が数値範囲の最も小さい値である2に近いほど傾きの値が大きく(マイナスの値の絶対値として小さく)なり、保護層の誘電率が数値範囲の最も大きな値である20に近いほど傾きの値が小さく(マイナスの値の絶対値として大きく)なる。このため、電波吸収シートの設計時には、保護層として用いる材料の誘電率を考慮して、誘電率が小さい場合(2に近い値の場合)には、図7において符号73として示される式1の範囲に近い側の傾きの値を採用し、反対に、保護層として用いる材料の誘電率が大きい場合(20に近い値の場合)には、図7において符号74として示される式21の範囲に近い側の傾きの値を採用することが、より良好な電波吸収特性を備えた電波吸収シートの実現のために好ましいと考えられる。
また、電波吸収シートが本願で開示する電波吸収体の範囲に含まれるものであるか否かは、次のように測定を行って判断することができる。
まず、抵抗皮膜、誘電体層、電波遮蔽層が積層されている電波吸収体において、抵抗被膜の誘電体層とは反対側に保護層があることを確認する。次にこの保護層を取り出し、誘電率と厚さを測定する。保護層に抵抗被膜等が密着している場合、これらを除去する。誘電率は保護層を直接測定してもよいし、保護層を分析し、材質から誘電率の文献値を求めてもよい。厚さはマイクロゲージなどを使用して測定する。
抵抗被膜の表面抵抗値は、保護層、抵抗皮膜、誘電体層、電波遮蔽層が積層されている電波吸収体の保護層を除去し、あるいは、抵抗被膜と誘電体層を剥離し、抵抗被膜を露出させ、抵抗被膜の表面抵抗値を測定する。この表面抵抗値の基準値377Ω/sqに対する抵抗値補正率を、377Ω/sqを100%とする比率で計算する。
次に、横軸を保護層の厚み(μm)、縦軸を抵抗値補正率(%)とするグラフにおいて、保護層の厚みが0μm、抵抗値補正率が100%(377Ω/sq)の点と、上記で求めた保護層の厚み(μm)、抵抗値補正率(%)の点を結ぶ直線の傾きを、直線近似で求める。ここで求めた直線の傾きが、吸収電波の周波数(GHz)を変えたときの(式1)と(式2)との間の領域に位置するようになるか否かで判断する。
以上説明したように、本実施形態にかかる電波吸収シートは、抵抗被膜と誘電体層と電波遮蔽層とが順次積層されて形成され、吸収させる吸収電波がミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波である電波干渉型の電波吸収シートであり、抵抗皮膜の表面に誘電率が2以上20以下、厚さが10μm以上200μm以下の保護層を有している。このため、例えば抵抗皮膜として導電性高分子膜を用いて可撓性を有する電波吸収シートとした場合でも、保護層によって抵抗皮膜の表面抵抗値が変化してしまうことを防止できる。
さらに、保護層を有することで生じる、電波吸収シートとしての入射する電波に対するインピーダンスの変化を考慮して、抵抗被膜の表面抵抗値の基準値に対する補正後の抵抗値の割合である抵抗値補正率(%)を縦軸、保護層の厚さ(μm)を横軸とするグラフ上において、当該電波吸収体の抵抗値補正率の値と保護層の厚みの値とを示す座標と、抵抗被膜の表面抵抗値が基準値で保護層の厚みが0(μm)の座標である基準点とを結ぶ直線の傾きを直線近似で求め、求めた直線の傾きの値と吸収電波の周波数(GHz)の値とを示す点が、直線の傾きを縦軸、吸収電波の周波数を横軸とするグラフにおいて、y=-8×10-4x+0.02(式1)の直線と、y=-1×10-3x-0.04(式2)の直線との間の領域に位置することを特徴とする。
このようにすることで、インピーダンス整合がなされた表面での乱反射や散乱を抑えた高い電波吸収特性を有する電波吸収シートを実現することができる。
また、本願で開示する電波吸収シートは、抵抗皮膜を導電性有機高分子で構成することで、電波吸収シートを強く折り曲げた場合でも電波吸収特性を維持することができる、安定した高い電波吸収特性と可撓性を備えた電波吸収シートとして実現することができる。
さらに、表面積に対して所定の厚さを有する電波吸収体として実現する場合でも、全体として可撓性を有することができれば、電波吸収体を所定位置に配置する際の取り扱い性が向上し、実用性の高い電波吸収体とすることができる。
さらにまた、例えばタイル状に並べて配置する電波吸収体の場合には、上述したような全体として透光性を有する構成とすることで、窓や透明な壁などに配置して反対側を見通せる電波吸収ブロックとすることができる。この場合においても、抵抗皮膜と保護層との積層体して、空気中のインピーダンスとの整合が取られることで、高い電波吸収特性を実現することができる。
本願で開示する電波吸収体は、表面に保護層を有することで、高い電波吸収特性を安定して発揮することができる電波干渉型の電波吸収体として有用である。また、本願で開示する電波吸収体の製造方法は、保護層を備える電波吸収体において、保護層による入力インピーダンスの変化を考慮した抵抗皮膜の表面抵抗値を有することで、高い電波吸収特性を備えた電波吸収体を製造する上で有用である。
1 抵抗皮膜
2 誘電体層
3 電波遮蔽層
4 保護層
5 接着層

Claims (7)

  1. 抵抗皮膜と誘電体層と電波遮蔽層とが順次積層されて形成され、
    前記電波吸収体に吸収させる吸収電波がミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波であり、
    前記抵抗皮膜上に、誘電率が2以上20以下、厚さが10μm以上200μm以下の保護層をさらに備えた電波干渉型の電波吸収体であって、
    前記抵抗被膜の表面抵抗値の基準値に対する補正後の抵抗値の割合である抵抗値補正率(%)を縦軸、前記保護層の厚さ(μm)を横軸とするグラフ上において、当該電波吸収体の前記抵抗値補正率の値と前記保護層の厚みの値とを示す座標と、前記抵抗被膜の表面抵抗値が前記基準値で前記保護層の厚みが0(μm)の座標である基準点とを結ぶ直線の傾きを直線近似で求め、
    前記求めた直線の傾きの値と前記吸収電波の周波数(GHz)の値とを示す点が、前記直線の傾きを縦軸、前記吸収電波の周波数を横軸とするグラフにおいて、下記に示す式1の直線と式2の直線との間の領域に位置することを特徴とする、電波吸収体。
    式1 y=-8×10-4x+0.02
    式2 y=-1×10-3x-0.04
  2. 前記抵抗皮膜が導電性有機高分子膜で形成されている、請求項1に記載の電波吸収体。
  3. 前記抵抗皮膜がカーボンマイクロコイル、カーボンナノチューブ、グラフェンの少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の電波吸収体。
  4. 前記保護層、抵抗被膜、誘電体層がいずれも透光性を有する部材で形成され、かつ、前記電波遮蔽層が金属メッシュにより構成されていて、電波吸収体全体の全光線透過率が30%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の電波吸収体。
  5. 前記電波遮蔽層の背面に接着層をさらに備えた、請求項1~4のいずれかに記載の電波吸収体。
  6. 前記保護層、前記抵抗皮膜、前記誘電体層、前記電波遮蔽層がいずれも薄膜状に作製され、全体として可撓性を有するシート状に形成された、請求項1~5のいずれかに記載の電波吸収体。
  7. 抵抗皮膜と誘電体層と電波遮蔽層とが順次積層されて形成され、
    前記電波吸収体に吸収させる吸収電波がミリ波帯域以上の高周波数帯域の電波であり、
    前記抵抗皮膜上に、誘電率が2以上20以下、厚さが10μm以上200μm以下の保護層をさらに備えた電波干渉型の電波吸収体の製造方法であって、
    前記抵抗被膜の表面抵抗値の基準値に対する補正後の抵抗値の割合である抵抗値補正率(%)を縦軸、前記保護層の厚さ(μm)を横軸とするグラフ上において、当該電波吸収体の前記抵抗値補正率の値と前記保護層の厚みの値とを示す座標と、前記抵抗被膜の表面抵抗値が前記基準値で前記保護層の厚みが0(μm)の座標である基準点とを結ぶ直線の傾きを直線近似で求め、
    前記求めた直線の傾きの値と前記吸収電波の周波数(GHz)の値とを示す点が、前記直線の傾きを縦軸、前記吸収電波の周波数を横軸とするグラフにおいて、下記に示す式1の直線と式2の直線との間の領域に位置するように設定することを特徴とする、電波吸収体の製造方法。
    式1 y=-8×10-4x+0.02
    式2 y=-1×10-3x-0.04
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